特許異議申立
2023-700030
積層フィルム及び食品包装袋
- 審判番号
- 2023-700030
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-504461外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7140105
- 請求日
- 2023年01月12日
- 審決日
- 2023年10月24日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7140105号発明「積層フィルム及び食品包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7140105号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
特許第7140105号の請求項2~13に係る特許を維持する。
特許第7140105号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7140105号の請求項1~13に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)2月22日(優先権主張 2017年3月7日)を国際出願日とするものであって、令和4年9月12日にその特許権の設定登録がされ、同年9月21日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 1月12日 :特許異議申立人加藤真弥(以下「申立人」という。)による請求項1~13に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 8月29日付け:取消理由通知書
同年 9月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年9月27日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)による訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に
「 前記表面層(A)に含まれる樹脂成分中の前記プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体の含有量が、15質量%以上である、請求項1に記載の積層フィルム。」
と記載されているのを、
「 表面層(A)、中間層(B)及びシール層(C)とが積層された無延伸の積層フィルムであって、
前記表面層(A)、中間層(B)及びシール層(C)がプロピレン系樹脂を含有し、
前記中間層(B)が植物由来のバイオマスポリエチレン(b1)及び化石燃料由来のポリエチレン(b2)を含有し、
前記中間層(B)に含まれる樹脂成分中の植物由来のバイオマスポリエチレン(b1)の含有量が、1質量%~35質量%であり、
前記表面層(A)にプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体を含有し、
積層フィルムの曇り度は10%以下であり、
前記表面層(A)に含まれる樹脂成分中の前記プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体の含有量が、15質量%以上であることを特徴とする積層フィルム。」
に訂正する(請求項2の記載を直接的ないし間接的に引用する請求項3~13も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1に記載の積層フィルム。」と記載されているのを、「請求項2に記載の積層フィルム。」に訂正する(請求項3の記載を直接的ないし間接的に引用する請求項4~13も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれかに記載の積層フィルム。」と記載されているのを、「請求項2~3のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する(請求項4の記載を直接的ないし間接的に引用する請求項5~13も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれかに記載の積層フィルム。」と記載されているのを、「請求項2~4のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する(請求項5の記載を直接的ないし間接的に引用する請求項6~13も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれかに記載の積層フィルム。」と記載されているのを、「請求項2~5のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する(請求項6の記載を直接的ないし間接的に引用する請求項7~13も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれかに記載の積層フィルム。」と記載されているのを、「請求項2~6のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する(請求項7の記載を直接的ないし間接的に引用する請求項8~13も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれかに記載の積層フィルム。」と記載されているのを、「請求項2~7のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する(請求項8の記載を直接的ないし間接的に引用する請求項9~13も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれかに記載の積層フィルム。」と記載されているのを、「請求項2~8のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する(請求項9の記載を直接的ないし間接的に引用する請求項10~13も同様に訂正する。)。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~9のいずれかに記載の積層フィルム。」と記載されているのを、「請求項2~9のいずれかに記載の積層フィルム。」に訂正する(請求項10の記載を直接的ないし間接的に引用する請求項11~13も同様に訂正する。)。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10の何れかに記載の積層フィルムを使用した食品包装袋。」と記載されているのを、「請求項2~10の何れかに記載の積層フィルムを使用した食品包装袋。」に訂正する(請求項11の記載を直接的ないし間接的に引用する請求項12~13も同様に訂正する。)。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
訂正前の請求項1~13について、請求項2~12は、いずれも請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~13〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項に改めるものであって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2~10について
訂正事項2~10に係る訂正は、訂正事項11に係る訂正により、請求項1が削除されたことに伴い、当該請求項1を引用しないものとするものであって、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項11について
訂正事項11に係る訂正は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおり、訂正事項1~12に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項2~13に係る発明(以下「本件発明2~13」という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】 削除
【請求項2】
表面層(A)、中間層(B)及びシール層(C)とが積層された無延伸の積層フィルムであって、
前記表面層(A)、中間層(B)及びシール層(C)がプロピレン系樹脂を含有し、
前記中間層(B)が植物由来のバイオマスポリエチレン(b1)及び化石燃料由来のポリエチレン(b2)を含有し、
前記中間層(B)に含まれる樹脂成分中の植物由来のバイオマスポリエチレン(b1)の含有量が、1質量%~35質量%であり、
前記表面層(A)にプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体を含有し、
積層フィルムの曇り度は10%以下であり、
前記表面層(A)に含まれる樹脂成分中の前記プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体の含有量が、15質量%以上であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項3】
前記中間層(B)中の化石燃料由来のポリエチレン(b2)が直鎖低密度ポリエチレンである請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記中間層(B)に含まれる樹脂成分中の植物由来のバイオマスポリエチレン(b1)の含有量が1~35質量%、化石燃料由来のポリエチレン(b2)の含有量が3~30質量%である請求項2~3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記中間層(B)中が、プロピレン系樹脂として、プロピレン-エチレン共重合体樹脂を中間層(B)に含まれる樹脂成分中の5~30質量%含有する請求項2~4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記中間層(B)中のプロピレン系樹脂として、プロピレン単独重合体を中間層(B)に含まれる樹脂成分中の35~85質量%含有する請求項2~5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記表面層(A)及びシール層(C)が、それぞれ、プロピレン系樹脂として、プロピレン-エチレン共重合体樹脂を各層に含まれる樹脂成分中の50質量%含有する請求項2~6のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記表面層(A)及びシール層(C)が、ブテン系樹脂を含有する請求項2~7のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項9】
ヘイズ値が10%以下である請求項2~8のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記中間層(B)中の植物由来のバイオマスポリエチレン(b1)のメルトフローレートが0.50~5[g/10min]であり、化石燃料由来のポリエチレン(b2)のメルトフローレートが3~10[g/10min]である請求項2~9のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項11】
請求項2~10の何れかに記載の積層フィルムを使用した食品包装袋。
【請求項12】
ガゼット部を有する請求項11に記載の食品包装袋。
【請求項13】
パン包装に使用する請求項11又は12に記載の食品包装袋。」
第4 取消理由の概要
当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)本件の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
請求項1、3~13に対して、引用文献1~3
引用文献一覧
引用文献1:国際公開第2017/018283号(甲1)
引用文献2:特開2013-136689号公報(甲3、周知技術を示す例示文献)
引用文献3:特開2013-155343号公報(甲4、周知技術を示す例示文献)
第5 当審の判断
上記第2のとおり、本件訂正により、請求項1が削除され、取消理由を通知していない請求項2は独立形式請求項となり、請求項3~13は当該請求項2を直接的ないし間接的に引用し、請求項1を引用しないものとなったので、上記取消理由は解消された。
第6 取消理由通知で採用しなかった異議申立理由について
申立人は、本件発明2~13は、甲1(上記引用文献1)に記載された発明、甲2(特開2014-31221号公報)に記載された技術事項、及び、甲3(上記引用文献2)、甲4(上記引用文献3)に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨主張するので、以下検討する。
1 各甲号証の記載事項等
(1)甲1に記載された発明
甲1の請求項1、2、4、段落[0059]、[0060]、[0065]、及び段落[0071]の表1の記載を総合し、特に実施例1に着目すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「一方の表層が印刷層、他方の表層がシール層からなり、前記印刷層及びシール層の間に、中間層を有する積層フィルムであって、
前記印刷層は、プロピレン-エチレン共重合体(1)(融点:127℃、密度:0.90g/cm3、メルトインデックス(以下「MI」という。):5g/10分)40質量部、プロピレン-エチレン共重合体(2)(融点:136℃、密度:0.90g/cm3、MI:8g/10分)52質量部、エチレン-1-ブテン共重合体(密度:0.886g/cm3、MI:4g/10分)8質量部からなる樹脂混合物から形成され、
前記中間層は、プロピレン単独共重合体(密度:0.90g/cm3、MI:8g/10分)80質量部、プロピレン-エチレン共重合体(3)(密度:0.90g/cm3、MI:5g/10分)10質量部、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.905g/cm3、MI:4g/10分)10質量部からなる樹脂混合物から形成され、
前記シール層は、プロピレン-1-ブテン共重合体(密度:0.90g/cm3、MI:4g/10分)20質量部、プロピレン-エチレン共重合体(3)(密度:0.90g/cm3、MI:5g/10分)80質量部からなる樹脂混合物から形成され、
積層フィルムの曇り度が4.0%である積層フィルム。」
(2)甲2の記載事項
甲2には以下の記載がある(下線は当審が付加。以下同様。)。
・「【0004】
また、プラスチック製品は、一般に石油資源を原材料として製造されているが、石油資源の枯渇や、石油資源由来のプラスチックの製造及び廃棄に伴う環境への悪影響が問題視されている。そこで、石油資源由来のプラスチックに代えて、バイオマス由来のプラスチックを使用することが検討されている。バイオマス由来のプラスチックは、植物等の再生可能な有機性資源を元に製造されるため、前述のような問題を回避することができる。そのため、耐寒性と耐熱性を兼ね備える低温保存用食品容器において、構成樹脂として、バイオマス由来のプラスチックを比較的多く使用することができれば、環境への負荷の低減、資源の有効利用に資することにもなる。」
・「【0016】
本発明の低温保存用食品容器を形成する積層体の層構造の好適な例として、A層/B層/C層が順に積層された積層体、B層/A層/B層が順に積層された積層体等が挙げられる。特に、A層/B層/C層が順に積層された積層構造を含む積層体は、低温保存用食品容器に一層優れた耐寒性及び耐熱性を備え得るので、本発明において好適に使用される。なお、本発明の低温保存用食品容器を形成する積層体において、A層及びC層は、いずれもプロピレン系樹脂を含む層であり、これらは同一組成であってもよく、また異なる組成であってもよい。或いは、複数のA層、又は複数のC層を有する場合も、各層の組成が同一であっても異なっていてもよい。また、B層を複数含む場合についても、複数のB 層は同一組成であっても、異なる組成であってもよい。」
・「【0032】
また、B層においても、エチレン系樹脂としてバイオマス由来エチレン系樹脂を用いてもよい。・・・」
(3)甲3の記載事項
甲3には以下の記載がある。
・「【背景技術】
【0002】
近年、環境への負荷を低減する等の目的から、シーラント等のポリエチレン系樹脂フィルムの原料の一部を、石油由来のポリオレフィン系樹脂から、植物由来のポリオレフィン系樹脂に置き換えることが検討されている(特許文献1)。植物由来のポリオレフィン系樹脂は、従来の石油由来のポリオレフィン系樹脂と、化学構造的には変わらず、同等の物性を有することが期待されている。
【0003】
しかしながら、実際には、植物由来のポリオレフィン系樹脂を含む樹脂フィルムは、石油由来のポリオレフィン系樹脂のみからなる樹脂フィルムとは異なる性質を示す。
【0004】
特に、植物由来のポリオレフィン系樹脂を含む樹脂フィルムは、植物由来のポリオレフィン系樹脂の配合率が高くなるにつれて、シーラントとして使用する場合の耐衝撃性及び手切れ性が低下することが分かった。」
(4)甲4の記載事項
甲4には以下の記載がある。
・「【背景技術】
【0002】
近年、環境への負荷を低減するために、シーラントフィルム等のポリエチレン系樹脂フィルムの原料の一部を、石油由来のポリオレフィン系樹脂から、植物由来のポリオレフィン系樹脂に置き換えることが検討されている(特許文献1)。植物由来のポリオレフィン系樹脂は、従来の石油由来のポリオレフィン系樹脂と、化学構造的には変わりがなく、同等の物性を有することが期待されている。
【0003】
しかしながら、実際には、植物由来のポリオレフィン系樹脂を含む樹脂フィルムは、石油由来のポリオレフィン系樹脂のみからなる樹脂フィルムとは異なる性質を示す。
【0004】
特に、植物由来のポリオレフィン系樹脂を含む樹脂フィルムは、植物由来の樹脂の配合率が高くなるにつれて、シーラントフィルムとして使用する場合の手切れ性及び耐衝撃性が低下することが分かった。」
・「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、種々研究の結果、(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE) 20~70質量%、(b)密度0.920~0.933kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE) 15~65質量%、(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合体であって、且つ、密度0.914~0.937kg/m3及びMFR0.9~4.5g/10分の物性を有する、非植物由来のLLDPE 15~65質量%、並びに(d)添加剤 0~20質量%、からなり、ここで、(a)~(d)の合計は100質量%であることを特徴とする、フィルム用ポリエチレン系樹脂組成物が、上記の目的を達成することを見出した。」
(5)周知技術
甲3、甲4に示されるように、ポリエチレン系樹脂フィルムの一部を、植物由来のバイオマスポリエチレンに置き換えようとする際に、石油系由来のポリエチレンに対して、植物由来のバイオマスポリエチレンの配合率を高くすると耐衝撃性に劣るものとなることは、周知技術である。
2 対比・判断
(1)本件発明2について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
・後者の「印刷層」は前者の「表面層(A)」に相当し、以下同様に、「中間層」は「中間層(B)」に、「シール層」は、「シール層(C)」に、「積層フィルム」は「積層フィルム」に、それぞれ相当する。
そして、上記の相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
・後者の「一方の表層が印刷層、他方の表層がシール層からなり、前記印刷層及びシール層の間に、中間層を有する積層フィルム」は共押出しで成形されるものであり(甲1[0060])、「本発明の積層フィルムの製造方法としては・・・共押出法が挙げられる。・・・当該製造方法により得られる積層フィルムは、実質的に無延伸の多層フィルムとして得られる」(甲1[0050])ものであるから、前者の「表面層(A)、中間層(B)及びシール層(C)とが積層された無延伸の積層フィルム」に相当する。
・後者の「印刷層」の「プロピレン-エチレン共重合体(1)」、「プロピレン-エチレン共重合体(2)」はプロピレン系樹脂である。また、後者の「中間層」の「プロピレン単独共重合体」、「プロピレン-エチレン共重合体(3)」もプロピレン系樹脂である。さらに、後者の「シール層」の「プロピレン-1-ブテン共重合体」、「プロピレン-エチレン共重合体(3)」もプロピレン系樹脂である。
そうすると、後者の
「前記印刷層は、プロピレン-エチレン共重合体(1)(融点:127℃、密度:0.90g/cm3、メルトインデックス(以下「MI」という。):5g/10分)40質量部、プロピレン-エチレン共重合体(2)(融点:136℃、密度:0.90g/cm3、MI:8g/10分)52質量部、エチレン-1-ブテン共重合体(密度:0.886g/cm3、MI:4g/10分)8質量部からなる樹脂混合物から形成され、
前記中間層は、プロピレン単独共重合体(密度:0.90g/cm3、MI:8g/10分)80質量部、プロピレン-エチレン共重合体(3)(密度:0.90g/cm3、MI:5g/10分)10質量部、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.905g/cm3、MI:4g/10分)10質量部からなる樹脂混合物から形成され、
前記シール層は、プロピレン-1-ブテン共重合体(密度:0.90g/cm3、MI:4g/10分)20質量部、プロピレン-エチレン共重合体(3)(密度:0.90g/cm3、MI:5g/10分)80質量部からなる樹脂混合物から形成され」
たことは、前者の「前記表面層(A)、中間層(B)及びシール層(C)がプロピレン系樹脂を含有し」ていることに相当する。
・後者の「前記中間層は、プロピレン単独共重合体(密度:0.90g/cm3、MI:8g/10分)80部、プロピレン-エチレン共重合体(3)(密度:0.90g/cm3、MI:5g/10分)10部、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.905g/cm3、MI:4g/10分)10部からなる樹脂混合物から形成され」ていることと、前者の「前記中間層(B)が植物由来のバイオマスポリエチレン(b1)及び化石燃料由来のポリエチレン(b2)を含有し」ていることとは、「前記中間層(B)がポリエチレンを含有し」ていることにおいて共通する。
以上のことから、本件発明2と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「表面層、中間層及びシール層とが積層された無延伸の積層フィルムであって、
前記表面層、中間層及びシール層がプロピレン系樹脂を含有し、
前記中間層がポリエチレンを含有している積層フィルム。」
〔相違点1〕
中間層がポリエチレンを含有していることに関し、本件発明2は、「植物由来のバイオマスポリエチレン(b1)及び化石燃料由来のポリエチレン(b2)を含有し、前記中間層(B)に含まれる樹脂成分中の植物由来のバイオマスポリエチレン(b1)の含有量が、1質量%~35質量%であ」るのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
〔相違点2〕
表面層に関し、本件発明2は、「プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体を含有し」、かつ、「前記表面層に含まれる樹脂成分中の前記プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体の含有量が、15質量%以上である」のに対し、甲1発明は、当該共重合体を含有していない点。
〔相違点3〕
本件発明2は、「積層フィルムの曇り度が10%以下である」のに対し、甲1発明は、「積層フィルムの曇り度が4.0%である」点。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
甲1の段落[0012]に「本発明の積層フィルムに使用する印刷層は、包装用フィルムの印刷が設けられる表層を構成する層である。当該印刷層はプロピレン系樹脂を主たる樹脂成分として含有し、当該プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等を使用できる。本発明においては、これらの中でも、中間層との密着性を得やすいことから、プロピレン-α-オレフィン共重合体を好ましく使用できる。」と記載され、同段落[0013]に「プロピレン-α-オレフィン共重合体としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体等が例示でき、これらは単独で使用してもよいし、併用してもよい。」と記載されている。
しかしながら、上記記載から、甲1発明の印刷層において、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体を含有させるようにすることまでは、想到できたとしても、その具体的な含有量を15質量%以上にすることについては、甲1には記載も示唆もない。また、甲2~甲4を検討しても(上記1(2)~(4)参照。)、上記相違点2に係る本件発明2に係る事項を容易想到とすることの記載も示唆もない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明、甲2に記載された技術事項、及び、甲3、甲4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明3~13について
本件発明3~13は、本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるので、上記(1)と同様の理由により、甲1発明、甲2に記載された技術事項、及び、甲3、甲4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 小括
以上のとおり、申立人が主張する特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項2~13に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり、請求項2~13に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項2~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700030