特許異議申立
2025-700860
シーラントフィルム、包装材及び包装袋
- 審判番号
- 2025-700860
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-084945
- 登録番号
- 7658498
- 請求日
- 2025年09月02日
- 審決日
- 2026年06月09日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人創英
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【異議申立人】鈴木 多香子
- 【異議申立人】松井 佳章
- 【異議申立人】千野 肇
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 長清 吉範
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7658498号発明「シーラントフィルム、包装材及び包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7658498号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5、10~13〕について訂正することを認める。
特許第7658498号の請求項1、2、4~13に係る特許を維持する。
特許第7658498号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7658498号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和6年5月24日(優先権主張令和5年6月21日)に出願され、令和7年3月31日にその特許権の設定登録がされ、令和7年4月8日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~13に係る特許に対し、令和7年9月2日に特許異議申立人鈴木多香子(以下「申立人A」といい、特許異議申立書を「申立書A」という。)、令和7年10月6日に特許異議申立人松井佳章(以下「申立人B」といい、特許異議申立書を「申立書B」という。)、令和7年10月7日に特許異議申立人千野肇(以下「申立人C」といい、特許異議申立書を「申立書C」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされたものである。それ以降の経緯は以下のとおりである。
令和7年12月18日付け :取消理由通知書
令和8年 2月19日 :訂正請求書及び意見書(特許権者)
令和8年 4月 2日 :意見書(申立人B)
なお、令和8年2月27日付けで当審から申立人A~Cに対して訂正請求があった旨の通知を行い、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に申立人A、Cから意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
訂正請求書(訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7658498号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5、10~13について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、以下の訂正事項からなるものである。なお、下線は、当審において訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記シーラント層の前記リサイクル材含有層側とは反対側の表面の算術表面粗さが、0.5μm以上5μm以下である、シーラントフィルム。」とあるのを、
「前記シーラント層の前記リサイクル材含有層側とは反対側の表面の算術表面粗さが、0.5μm以上5μm以下であり、
前記シーラント層の前記表面における凸部の最大高さHが0.5μm以上10μm以下であり、当該最大高さHを有する凸部は、最大高さHの半分における幅Wと最大高さHとの比[W/H]が20以下である、シーラントフィルム。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2、4、5、10~13も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1~9のいずれか一項に記載のシーラントフィルムを備える、包装材。」とあるのを、
「請求項1~2、4~9のいずれか一項に記載のシーラントフィルムを備える、包装材。」に訂正する。
(請求項10の記載を引用する請求項11~13も同様に訂正する。)
(4)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~5、10~13は、請求項2~4、10~13が、本件訂正の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~5、10~13〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1に記載の「シーラント層」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0045】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、請求項10について、請求項3が削除されたことに伴い引用する請求項の数を減少させるものであるとともに、削除された請求項3を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
3 訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
したがって、特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5、10~13〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1、2、4~13に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4~13に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルムであって、
前記リサイクル材に含まれる前記2種以上の樹脂のうちの含有比率が最も大きい樹脂が、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂であり、
前記シーラント層の前記リサイクル材含有層側とは反対側の表面の算術表面粗さが、0.5μm以上5μm以下であり、
前記シーラント層の前記表面における凸部の最大高さHが0.5μm以上10μm以下であり、当該最大高さHを有する凸部は、最大高さHの半分における幅Wと最大高さHとの比[W/H]が20以下である、シーラントフィルム。
【請求項2】
前記シーラント層の厚みが5μm以上70μm以下である、請求項1に記載のシーラントフィルム。」
「【請求項4】
前記リサイクル材含有層の他方の主面に積層された補助層を更に備える、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項5】
前記補助層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種のバージン樹脂を含有する、請求項4に記載のシーラントフィルム。
【請求項6】
2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルムであって、
前記シーラント層の前記リサイクル材含有層側とは反対側の表面の算術表面粗さが、0.5μm以上5μm以下である、
前記シーラント層の前記表面における凸部の最大高さHが0.5μm以上10μm以下であり、当該最大高さHを有する凸部は、最大高さHの半分における幅Wと最大高さHとの比[W/H]が20以下である、シーラントフィルム。
【請求項7】
前記シーラント層の厚みが5μm以上70μm以下である、請求項6に記載のシーラントフィルム。
【請求項8】
前記リサイクル材含有層の他方の主面に積層された補助層を更に備える、請求項6に記載のシーラントフィルム。
【請求項9】
前記補助層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種のバージン樹脂を含有する、請求項8に記載のシーラントフィルム。
【請求項10】
請求項1~2、4~9のいずれか一項に記載のシーラントフィルムを備える、包装材。
【請求項11】
前記リサイクル材に含まれるプラスチック材料の含有量が、包装材におけるプラスチック材料全量を基準として、10質量%以上である、請求項10に記載の包装材。
【請求項12】
請求項10に記載の包装材から製袋される包装袋。
【請求項13】
請求項11に記載の包装材から製袋される包装袋。」
第4 取消理由通知について
1 取消理由の概要
訂正前の特許請求の範囲の請求項1、2、4、5、10~13に対し、当審において通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(以下、申立人○が提出した甲第△号証を「甲○△」という。)
取消理由(進歩性)
本件特許の請求項1、2、4、5、10~13に係る発明は、甲B1に記載された発明及び周知技術、又は、甲C1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。
[引用文献一覧]
甲B1:特開2014-205500号公報
甲C1:特開2019-14055号公報
甲A2:特開2019-116025号公報(周知技術を示す文献)
甲A3:国際公開第2018/003978号(周知技術を示す文献)
甲A5:特開2017-13479号公報(周知技術を示す文献)
甲B2:特開2019-5904号公報(周知技術を示す文献)
2 当審における判断
当審合議体は以下のとおり、上記取消理由によっては、本件発明1、2、4、5、10~13に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
(1)引用文献の記載及び発明等
ア 甲B1
(ア)甲B1の記載
甲B1には以下の記載がある。なお下線は当審において付したものであり、「・・・」は省略を示す。以下同様。
「【請求項1】
ヒートシール性を有する表面層と基材層の少なくとも2層からなり、当該表面層面同士を130℃でヒートシールしたときの剥離荷重が0.7kgf/20mm巾以上であり、当該表面層面の接触角が60°以下であり、押込み荷重が1.2kgf以上であることを特徴とする食品包装用フィルム。」
「【0045】
実施例1:
表面層の樹脂組成物(A)として、エチレン-ブテン-1共重合体(融解熱量115J/g、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)2g/10分)95.8重量%と、防曇剤としてジグリセリンオレート3.7重量%、ポリグリセリンポリリシノレート0.5重量%を溶融混練した。一方、基材層を構成する樹脂組成物(B)としてはプロピレン単独重合体(メルトフローレート(JIS K 7210、230℃、荷重21.18N)4g/10分)100重量%と溶融混練し、Tダイ温度230℃で共押出キャスト成形により積層し、ロール延伸法にて108℃で縦一軸に3倍延伸し、総厚み30μm(5μm/25μm)の2層フィルム(サンプル)を得た。
【0046】
実施例2:
基材層の厚みを20μmにした以外は、実施例1と同様にして総厚み25μm(5μm/20μm)の2層フィルム(サンプル)を得た。
【0047】
実施例3:
中間層(表層と基材層の間)に実施例1で用いた樹脂組成物(A)および(B)からなるリサイクル材を積層し、延伸倍率を4倍とした以外は実施例2と同様にして、総厚み31μm(5μm/6μm/20μm)の3層フィルム(サンプル)を得た。」
(イ)甲B1に記載された発明
上記(ア)の記載を参酌し、特に実施例3について着目すると、甲B1には以下の発明(以下「甲B1発明」という。)が記載されている。
「ヒートシール性を有する表面層の樹脂組成物(A)として、エチレン-ブテン-1共重合体95.8重量%と、防曇剤としてジグリセリンオレート3.7重量%、ポリグリセリンポリリシノレート0.5重量%を溶融混練し、
一方、基材層を構成する樹脂組成物(B)としてはプロピレン単独重合体100重量%を溶融混練し、
表面層と基材層の間の中間層として、上記樹脂組成物(A)および(B)からなるリサイクル材を積層し、
Tダイ温度230℃で共押出キャスト成形により積層し、ロール延伸法にて108℃で縦一軸に4倍延伸して得た、総厚み31μm(5μm/6μm/20μm)の食品包装用フィルム。」
イ 甲C1
(ア)甲C1の記載
甲C1には以下の記載がある。
「【0097】
[第二実施例]
以下、本発明の第二実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
包装用シーラントフィルム1は、表面層6、中間層7、裏面層8の積層した3層構成のフィルムとした。熱可塑性樹脂2として、表面層6では直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.913g/cm3、MFR3.8)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用した。また、中間層7及び裏面層8では直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.931g/cm3、MFR3.2)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用した。さらに、表3、4に示すように、表面層6、中間層7及び裏面層8に、シリコーンガム3及び微粒子13を添加した。微粒子13には、アクリル架橋体微粒子を使用した。なお、比較例2-1、2-2はシリコーンガム3ではなく、滑剤として一般的なエルカ酸アミドを添加した。各層のシリコーンガム3の添加量及びエルカ酸アミドの添加量や、微粒子13の平均粒径及び添加量を様々変更し、各種実施例、比較例とした。詳細情報は表3、4にまとめている。
【0098】
上述の表面層6、中間層7及び裏面層8の各材料を単軸共押出機でそれぞれ260℃に加熱溶融し、Tダイキャスト法にて、表面層6の厚みを15μm、中間層7の厚みを42.5μm、裏面層8の厚みを42.5μmとし、トータル100μm厚みのシーラントフィルム1を製膜した。なお、冷却にはエアーチャンバー方式を採用した。」
「【0113】
(評価結果)
上各実施例及び各比較例のシーラントフィルム1及び包装材10の評価結果を表3~5に記載する。
【表3】
[図:0001439218000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001439218000002.jpg]
」
(イ)甲C1に記載された発明
上記(ア)を参照し、特に第二実施例及び【表3】の実施例2-1の算術平均粗さRaについて着目すると、甲C1には以下の発明(以下「甲C1発明」という。)が記載されている。
「包装用シーラントフィルム1は、表面層6、中間層7、裏面層8の積層した3層構成のフィルムであって、
表面層6では直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.913g/cm3、MFR3.8)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用し、
中間層7及び裏面層8では直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.931g/cm3、MFR3.2)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用し、
さらに、表面層6、中間層7及び裏面層8に、シリコーンガム3及び微粒子13を添加してなり、
上述の表面層6、中間層7及び裏面層8の各材料を単軸共押出機でそれぞれ260℃に加熱溶融し、Tダイキャスト法にて、表面層6の厚みを15μm、中間層7の厚みを42.5μm、裏面層8の厚みを42.5μm、トータル100μm厚みとして製膜してなり、
表面層6の表面4の算術平均粗さRaが1.20μmである、
包装用シーラントフィルム1。」
(2)甲B1を主引例とする進歩性について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲B1発明を対比する。
甲B1発明の「ヒートシール性を有する表面層の樹脂組成物(A)として、エチレン-ブテン-1共重合体95.8重量%と、防曇剤としてジグリセリンオレート3.7重量%、ポリグリセリンポリリシノレート0.5重量%を溶融混練し」てなる「表面層」は、本件発明1の「シーラント層」に相当する。
甲B1発明の「エチレン-ブテン-1共重合体95.8重量%と、防曇剤としてジグリセリンオレート3.7重量%、ポリグリセリンポリリシノレート0.5重量%を溶融混練し」てなる「表面層の樹脂組成物(A)」、及び「プロピレン単独重合体100重量%」である「樹脂組成物(B)」からなる「リサイクル材」は、主成分がそれぞれ「エチレン-ブテン-1共重合体」、「プロピレン単独重合体」である。そうすると、甲B1発明の「リサイクル材」による「中間層」は、「エチレン-ブテン-1共重合体」、「プロピレン単独重合体」の含有量がそれぞれ95.8重量%、100重量%であることも踏まえると、本件発明1の「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層」であって「前記リサイクル材に含まれる前記2種以上の樹脂のうちの含有比率が最も大きい樹脂が、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂であ」ることを満たす。
甲B1発明の「食品包装用フィルム」は「ヒートシール性を有する表面層」を有するから、本件発明1の「シーラントフィルム」に相当する。
甲B1発明の「ヒートシール性を有する表面層」は、その層構成からみて、「リサイクル材」である「中間層」と直接接して積層されているから、本件発明1の「シーラント層」が「前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層され」ている構成を満たす。
以上を総合すると、本件発明1と甲B1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点B1]
「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルムであって、
前記リサイクル材に含まれる前記2種以上の樹脂のうちの含有比率が最も大きい樹脂が、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂である、シーラントフィルム。」
[相違点B1-1]
本件発明1では、「前記シーラント層の前記リサイクル材含有層側とは反対側の表面の算術表面粗さが、0.5μm以上5μm以下である」のに対し、甲B1発明では、表面層の表面粗さが不明な点。
[相違点B1-2]
本件発明1では、「前記シーラント層の前記表面における凸部の最大高さHが0.5μm以上10μm以下であり、当該最大高さHを有する凸部は、最大高さHの半分における幅Wと最大高さHとの比[W/H]が20以下である」のに対し、甲B1発明では、「表面層」の凸部の高さや幅が不明な点。
(イ)判断
事案に鑑み相違点B1-2について検討する。
甲B1には、甲B1発明においてシーラント層に相当する表面層の表面凸部の高さや幅を調整することに関して記載も示唆もなく、ましてや、表面凸部の幅と高さの比に着目する記載も示唆もない。また、当該事項については、申立人A~Cが提出した他の証拠にも記載も示唆もなく、周知技術でもない。
そうすると、甲B1発明において、相違点B1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)申立人Bの主張
申立人Bは申立書B(19~20ページ)において、[W/H]が20程度の凸部とはほぼ平坦に近い形状であり、通常の凸部はほぼ含まれる程度の形状である旨主張する。
さらに、申立人Bは意見書(3~9ページ)において、[W/H]があまりに大きければ凹凸はブロードとなって接触面積が大きくなってブロッキング防止効果が得られないから、取消理由で引用された甲B1発明や甲B2において[W/H]を一定値以下とすることは内在する事項であるし、甲B2の【図1】、意見書Bに添付する参考文献1(特開2004-167956号公報)の図1及び参考資料2(甲B3)の図2から看取される事項である旨主張する。
しかしながら、甲B1や甲B2のほか、申立人A~Cが提出した何れの証拠にも、シーラント層の表面凸部の幅と高さの比に着目する記載も示唆もないし、それらの証拠において[W/H]が20以下とすべきことを定量的かつ合理的に立証できているともいえない。
したがって、申立人Bの上記主張は採用できない。
(エ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2、4、5、10~13について
本件発明2、4、5、10~13は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲B1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲C1を主引例とする進歩性について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲C1発明を対比する。
甲C1発明の「直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.913g/cm3、MFR3.8)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用し」てなる「表面層6」は、本件発明1の「シーラント層」に相当する。
甲C1発明の「直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.931g/cm3、MFR3.2)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用し」てなる「中間層7」は、本件発明1の「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層」であって「前記リサイクル材に含まれる前記2種以上の樹脂のうちの含有比率が最も大きい樹脂が、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂であ」ることと、「2種以上の樹脂が含まれる樹脂材を含有する樹脂材含有層」であって「前記樹脂材に含まれる前記2種以上の樹脂のうちの含有比率が最も大きい樹脂が、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂であ」る限りにおいて一致する。
甲C1発明の「包装用シーラントフィルム1」は本件発明1の「シーラントフィルム」に相当する。
甲C1発明の「表面層6」は、層構成からみて「中間層7」に直接積層されているから、本件発明1の「前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層」と、「前記樹脂材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層」である限りにおいて一致する。
甲C1発明の「表面層6の表面4の算術平均粗さRaが1.20μmである」ことは、本件発明1の「前記シーラント層の」「反対側の表面の算術表面粗さが、0.5μm以上5μm以下」であることを満たす。
以上を総合すると、本件発明1と甲C1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点C1]
「2種以上の樹脂が含まれる樹脂材を含有する樹脂材含有層と、前記樹脂材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルムであって、
前記樹脂材に含まれる前記2種以上の樹脂のうちの含有比率が最も大きい樹脂が、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂であり、
前記シーラント層の前記樹脂材含有層側とは反対側の表面の算術表面粗さが、0.5μm以上5μm以下である、シーラントフィルム。」
[相違点C1-1]
樹脂材含有層が含有する樹脂材について、本件発明1では「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材」であるのに対し、甲C1発明の「中間層7」は、「直鎖状低密度ポリエチレン樹脂及び低密度ポリエチレン樹脂を95:5の割合でブレンドしたものを使用し」てなる点。
[相違点C1-2]
本件発明1では、「前記シーラント層の前記表面における凸部の最大高さHが0.5μm以上10μm以下であり、当該最大高さHを有する凸部は、最大高さHの半分における幅Wと最大高さHとの比[W/H]が20以下である」のに対し、甲C1発明では、「表面層6」の凸部の高さや幅が不明な点。
(イ)判断
事案に鑑み相違点C1-2について検討する。
甲C1には、甲C1発明においてシーラント層に相当する表面層6の表面凸部の高さや幅を調整することに関して記載も示唆もなく、ましてや、表面凸部の幅と高さの比に着目する記載も示唆もない。また、当該事項については、申立人A~Cが提出した他の証拠にも記載も示唆もなく、周知技術でもない。
そうすると、甲C1発明において、相違点C1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)申立人Cの主張
申立人Cは申立書C(11~12ページ)において、甲C2の請求項1に記載される突起の高さh(0.01~10μm)と直径d(0.4~10μm)の数値範囲からみて、甲C1発明において[W/H]が20以下であるようにすることは設計的事項である旨主張する。
しかしながら、甲C2のほか、申立人A~Cが提出した何れの証拠にも、シーラント層の表面凸部の幅と高さの比に着目する記載も示唆もないから、[W/H]を20以下とすることが設計的事項であるとはいえない。
したがって、申立人Cの上記主張は採用できない。
(エ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲C1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2、4、5、10~13について
本件発明2、4、5、10~13は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲C1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
申立書A~Cで申立人A~Cが主張する申立理由のうち、取消理由で採用しなかったものの概要は、以下のとおりである。
(1)申立理由1-A1(甲A1を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項1~13に係る発明は、甲A1に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。
(2)申立理由1-B1(甲B1を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項3、6~9に係る発明は、甲B1に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。
(3)申立理由1-B2(甲B2を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項1~13に係る発明は、甲B2に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。
(4)申立理由1-C1(甲C1を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項3、6~9に係る発明は、甲C1に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。
(5)申立理由2(明確性要件)(申立人A、B)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
ア 請求項1、6の「2種以上の樹脂」について、どの程度の相違があれば「異なる樹脂」と判定されるのか、本件明細書を参酌しても不明確であるから、本件発明は明確性要件を充足しない。(申立書Aの55~56ページ)
イ 請求項1の「含有比率が最も大きい樹脂」について、含有比率の算定方法、測定方法が不明であるから、本件発明は明確性要件を充足しない。(申立書Aの56~57ページ)
ウ 本件課題は「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材含有層」に凝集体が形成されることが前提となっているところ、本件発明1、6には凝集体が形成されることが特定されていないため、請求項1~13は、発明特定事項が不足していることは明らかである。(申立書Bの28ページ)
(6)申立理由3(サポート要件)(申立人B)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
本件課題は「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材含有層」に凝集体が形成されることが前提となっているところ、本件発明1、6には凝集体が形成されることが特定されていないため、本件発明1~13は発明の詳細な説明に記載されたものではない。(申立書Bの27~28ページ)
[証拠一覧]
申立人A~Cが申立書A~Cとともに提出した証拠は以下のとおりである。
甲A1:特開2002-52669号公報
甲A2:特開2019-116025号公報
甲A3:国際公開第2018/003978号
甲A4:特開2002-241514号公報
甲A5:特開2017-13479号公報
甲B1:特開2014-205500号公報
甲B2:特開2019-5904号公報
甲B3:特開2018-62541号公報
甲C1:特開2019-14055号公報
甲C2:特開平11-216829号公報
2 当審における判断
当審合議体は以下のとおり、上記申立理由1~3によっては、本件発明1、2、4~13に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
事案に鑑み、記載要件から判断する。
(1)申立理由2(明確性要件)について
ア 判断規範
特許請求の範囲の記載が、明確性要件を満たすか否かは、特許請求の範囲に記載された発明が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この点について検討する。
イ 第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確か否か
本件訂正後の請求項1、2、4~13の記載は、上記第3のとおりであるところ、その記載には文理上不明確なところはない。
そうすると、本件発明の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人A、Bは上記第5の1(3)ア~ウのとおり主張するところ、各主張について以下検討する。
(ア)「2種以上の樹脂」について
「2種以上の樹脂」とは【0010】の記載を踏まえると、異なる種別の樹脂とは、凝集体が形成され得る程度の、例えば、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」、「ポリエチレン」と「ポリプロピレン」と「ポリエステル」など、異なる一般名称で流通している樹脂を意味すると当業者は合理的に理解できる。
そして、本件明細書の【0123】~【0148】においては、LLDPEとPETとNyと接着剤を含むリサイクル材1、ポリエチレンと接着剤を含むリサイクル材2を用いた実施例1~11及び比較例1~5を記載しており、上記理解と整合している。
したがって、この点において不明確であるというべき事情はなく、申立人Aの上記主張は採用できない。
(イ)「含有比率が最も大きい樹脂」について
異なる種別の樹脂の混合体の各樹脂の含有比率は、本件明細書の【0026】に記載されている顕微赤外分光光度計などを用いることで確認し算出できることは技術常識である。
したがって、同様に申立人Aの上記主張は採用できない。
(ウ)凝集体が形成されるのか否かについて
本件発明1、6においては、「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層」が特定されており、その記載に不明確な点はない。また、上記(ア)のとおり合理的に解釈できることを踏まえると、申立人Bの上記主張は採用できない。
エ 明確性要件についての小括
よって、本件発明は、明確である。
(2)申立理由3(サポート要件)について
ア 判断規範
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件を満たすか否かは、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この点について検討する。
イ 当業者が発明の課題を解決できると認識できるか否か
本件発明の課題は「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有しつつ、十分なヒートシール時の信頼性及び製膜性を有するシーラントフィルム、包装材及び包装袋を提供すること」(【0009】)であり、本件課題を解決するための手段は、2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルムにおいて、「前記シーラント層の前記リサイクル材含有層側とは反対側の表面の算術表面粗さが、0.5μm以上5μm以下」(【0014】)とすることであり、当該手段により課題が解決される機序は、【0041】に記載されており、本件明細書の【0123】~【0148】には、2種以上の樹脂を含むリサイクル材1、2が含まれるリサイクル材含有層と、シーラント層を備えるシーラントフィルムにおいて、「前記シーラント層の前記リサイクル材含有層側とは反対側の表面の算術表面粗さが、0.5μm以上5μm以下」を満たす実施例1~11はシーラント時の信頼性(気泡の発生)、及び製膜性(折れやシワ)が比較的良好であり、一方、シーラント層の算術平均粗さが前記条件を満たさない比較例1~5は、前記評価項目の何れかが不良であったことが示されている。
そうすると、2種以上の樹脂を含むリサイクル材1、2が含まれるリサイクル材含有層と、シーラント層を備えるシーラントフィルムにおいて、「前記シーラント層の前記リサイクル材含有層側とは反対側の表面の算術表面粗さが、0.5μm以上5μm以下」であることを特定する本件発明は、本件課題を解決できることを当業者は認識できる。
そして、本件発明1、6において、当該課題解決手段が反映されていることは明らかである。
そうすると、本件の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
ウ 申立人の主張について
申立人は上記第5の1(4)のとおり主張する。
しかしながら、本件発明1、6においては、「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層」が特定されているところ、上記(1)ウ(ア)のとおり、凝集体が形成され得るものであることは合理的に理解できる。また、そもそも本件発明1、6においては「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層・・・の算術表面粗さが、0.5μm以上5μm以下」と特定されているのだから、「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有しつつ、十分なヒートシール時の信頼性及び製膜性を有するシーラントフィルム、包装材及び包装袋を提供すること」(【0009】)という本件発明の課題は解決されるものである。
したがって、申立人Bの上記主張は採用できない。
エ サポート要件についての小括
よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(3)申立理由1-A1(甲A1を主引例とする進歩性)について
ア 甲A1に記載された発明
甲A1の請求項1、【0001】、【0096】~【0097】、【0103】、【0105】、【0106】【表2】、【0107】【表3】を参照し、特に実施例10に着目すると、甲A1には以下の発明(以下「甲A1発明」という。)が記載されている。
「密度が0.94g/cm3以下である線状低密度ポリエチレンまたは高圧ラジカル重合法エチレン系重合体を主成分とする樹脂材料(i)からなる第I層、第I層と第III層との間に設けられた、曲げ弾性率が2500kgf/cm2 以上であるポリオレフィン系樹脂材料(ii)からなる第II層、および密度が0.94g/cm3以下である線状低密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(iii)からなる第III層の3層からなる積層体であって、(請求項1)
エチレン共重合体であるLLDPE-1とHDPEを含有するリサイクル樹脂(RC)からなる第I層、MDPEからなる第II層、LLDPE-1からなる第III層をこの順に積層してなる、(実施例10)
積層体。」
イ 本件発明1、6について
(ア)対比
本件発明1、6と甲A1発明を対比する。
甲A1発明の「LLDPE-1からなる第III層」は本件発明1、6の「シーラントフィルム」に相当する。
甲A1発明の「LLDPE-1とHDPEを含有するリサイクル樹脂(RC)からなる第I層」は本件発明1、6の「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層」と、「リサイクル材を含有するリサイクル材含有層」の限りにおいて一致する。
甲A1発明の「LLDPE-1とHDPEを含有するリサイクル樹脂(RC)からなる第I層、MDPEからなる第II層、LLDPE-1からなる第III層をこの順に積層してなる、積層体」は、本件発明1、6の「リサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルム」と、「リサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルム」の限りにおいて一致する。
以上を総合すると、本件発明1、6と甲A1発明は、少なくとも以下の点で相違する。
[相違点A1]
リサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルムについて、本件発明1、6では、シーラント層が「リサイクル材含有層の一方の主面に積層され」ているのに対し、甲A1発明では、「LLDPE-1からなる第III層」と「リサイクル樹脂(RC)からなる第I層」の間に「MDPEからなる第II層」が介在する点。
(イ)判断
甲A1発明の課題は、「耐カール性、剛性、低温ヒートシール性、水蒸気バリア性、保香性、衛生性、耐熱性、耐ピンホール性に優れ、高いヒートシール強度を有する積層体およびこれを用いたパウチを提供すること」(【0006】)であり、その解決手段として、「第I層と第III層との間に設けられた、曲げ弾性率が2500kgf/cm2以上であるポリオレフィン系樹脂材料(II)からなる第II層」(【0007】)を必須の構成とするものである。そして、当該第II層により、積層体に「第II層:剛性、水蒸気バリア性、保香性」(【0069】)を付与するものである。
そうすると、甲A1発明において、第II層を除くことには阻害要因があるといえる。
よって、甲A1発明において、相違点A1に係る本件発明1、6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)申立人Aの主張
申立人Aは申立書(38ページの下から2~1行)において、「甲1の実施例10の積層体を構成するLLDPEを含有する第III層は、リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層(構成要件A-2.)に相当する。」と主張する。
しかしながら、この点は上記(イ)のとおりである。
(エ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1、6は、甲A1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2、4、5、7~13について
本件発明2、4、5、7~13は、本件発明1又は6の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記イと同様の理由により、甲A1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立理由1-B1(甲B1を主引例とする進歩性)について
ア 甲B1に記載された発明
甲B1に記載された甲B1発明は上記第4の2(1)ア(イ)のとおりである。
イ 本件発明3、6~9について
まず、本件訂正により請求項3は削除された。
次に、本件発明6と甲B1発明を対比すると、その相当関係は概略上記第4の2(2)ア(ア)と同様であるから、両者は少なくとも上記相違点B1-2において相違し、その判断についても上記第4の2(2)ア(イ)のとおりである。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲B1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに、本件発明7~9は、本件発明6の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記と同様の理由により、甲B1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立理由1-B2(甲B2を主引例とする進歩性)について
ア 甲B2に記載された発明
甲B2の請求項1、4、【0001】を参照すると、甲B2には以下の発明(以下「甲B2発明」という。)が記載されている。
「熱可塑性樹脂を主たる樹脂とし、
少なくとも一方の面には凹凸形状が形成され、JISB0601-1994で規定される前記凹凸形状の算術平均粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下であり、
前記凹凸形状の算術平均粗さRaと、JISB0601-1994で規定される前記凹凸形状の平均間隔Smとの比Ra/Smが、0.04以上0.12以下である包装材用フィルムと、(請求項1)
前記包装材用フィルムの前記凹凸形状が形成されていない面に、少なくとも基材層が積層されている、包装材。(請求項4)」
イ 本件発明1、6について
本件発明1、6と甲B2発明を対比する。
甲B2発明の「熱可塑性樹脂を主たる樹脂とし」た「包装材用フィルム」は、本件発明1、6の「シーラント層」に相当する。
甲B2発明の「基材層」は、本件発明1、6の「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層」と、「基材層」である限りにおいて一致する。
甲B2発明の「前記包装材用フィルムの前記凹凸形状が形成されていない面に、少なくとも基材層が積層されている」構成は、本件発明1、6の「前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層」と、「基材層と、基材層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルム」である限りにおいて一致する。
以上を総合すると、本件発明1、6と甲B2発明は、少なくとも以下の点で相違する。
[相違点B2]
基材層について、本件発明1、6では、「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層」であるのに対し、甲B2発明では、基材層がかかる構成を有するか不明な点。
(イ)判断
基材層について、甲B2には、「基材7は、包装材9の支持体として機能する層であり、プラスチックを主とするフィルムが用いられ、内容物の種類や充填後の加熱処理の有無など使用条件によって適宜選択される。基材の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどが使用されるが、特に限定されない。」(【0038】)と記載されているにとどまり、甲B2全体を参酌しても、2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有することについては記載も示唆もない。
そうすると、甲B2発明において、相違点B2に係る本件発明1、6の構成とすることには動機付けがない。
よって、甲B2発明において、相違点B2に係る本件発明1、6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)申立人Bの主張
申立人Bは申立書B(24ページ4~9行)において、「包装用フィルムの分野において、リサイクル樹脂を含むフィルムを使用することは通常行われていることであ」ると主張する。
しかしながら、仮にそうであったとしても、敢えて基材層にリサイクル樹脂を用いる動機付けは見いだせない。
(エ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1、6は、甲B2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2、4、5、7~13について
本件発明2、4、5、7~13は、本件発明1又は6の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記イと同様の理由により、甲B2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)申立理由1-C1(甲C1を主引例とする進歩性)について
ア 甲C1に記載された発明
甲C1に記載された甲C1発明は上記第4の2(1)イ(イ)のとおりである。
イ 本件発明3、6~9について
まず、本件訂正により請求項3は削除された。
次に、本件発明6と甲C1発明を対比すると、その相当関係は概略上記第4の2(3)ア(ア)と同様であるから、両者は少なくとも上記相違点C1-2において相違し、その判断についても上記第4の2(3)ア(イ)のとおりである。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲C1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに、本件発明7~9は、本件発明6の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記と同様の理由により、甲C1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1、2、4~13に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1、2、4~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700860