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特許異議申立

2025-700797

硬化性樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物

審判番号
2025-700797
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-526893
登録番号
7632753
請求日
2025年08月06日
審決日
2026年04月30日
公報発行日
2026年08月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】DIC株式会社
  • 【権利者代理人】大野 孝幸
  • 【権利者代理人】岩本 明洋
  • 【権利者代理人】丹羽 雅裕
  • 【異議申立人】石川 竜郎
審判長/審判官
  • 審判長 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 藤井 勲
  • 審判官 辰己 雅夫
分類
P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F) / P1651.537-YAA(C08F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の8
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7632753号発明「硬化性樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7632753号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第7632753号の請求項1~5、8~10に係る特許を維持する。 特許第第7632753号の請求項6、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7632753号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許は、令和5年11月16日を国際出願日(以下「本件出願日」という。)とする特願2024-526893号に係る特許であって、令和7年2月10日に特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月19日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、同年8月6日に特許異議申立人 石川竜郎(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~10)がされたものである。 以降の手続は以下のとおりである。 令和7年10月 3日付け 取消理由通知 同年12月 1日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 同月16日付け 手続補正指令(方式) 令和8年 1月 9日 手続補正書(方式)の提出(特許権者) 同年 2月 3日付け 訂正請求があった旨の通知 なお、上記訂正請求があった旨の通知に対し申立人は意見書を提出しなかった。 第2 訂正請求書の補正の適否 令和8年1月9日提出の手続補正書(方式)による訂正請求書の補正(以下「本件補正」という。)は、令和7年12月16日付け手続補正指令により補正すべきことを命じられた事項についてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項ただし書第3号に該当する。 したがって、本件補正は適法なものである。 第3 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件補正により補正された令和7年12月1日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、「特許第7632753号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」ことを請求の趣旨とするものであって、その内容は以下のとおりである。 <訂正事項1> 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、 「以下の成分(A)~(C)を必須成分として含有し、前記成分(A)と前記成分(B)の質量比が99:1~10:90である硬化性樹脂組成物。 (A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂 (B)下記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体 【化1】 [図:0001438289000001.jpg] (上記一般式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、Yは単結合またはメチレン基のいずれか1種であり、Zは下記一般式(1-1)~(1-10)のいずれか1種であり、nは1~6を示す。なお、nが2~6の場合、複数のR1およびYは、同一であっても異なっていてもよい。) 【化2】 [図:0001438289000002.jpg] (上記一般式(1-1)~(1-10)中、R2は単結合、酸素原子またはメチレン基であり、R3は水素原子またはメチル基であり、R4は直接結合、単結合またはフェニル基を示す。) (C)ラジカル重合開始剤」とあるのを、 「以下の成分(A)~(C)を必須成分として含有し、前記成分(A)と前記成分(B)の質量比が99:1~10:90である硬化性樹脂組成物。 (A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂であって、下記一般式(2)および(3)で表される構造式を含有し、 【化3】 [図:0001438289000003.jpg] (上記一般式(2)および(3)中、R4は炭素数が1~12の有機基、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を示す。) 前記一般式(2)と前記一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5である (B)下記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体 【化1】 [図:0001438289000004.jpg] (上記一般式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、Yは単結合またはメチレン基のいずれか1種であり、Zは下記一般式(1-1)~(1-10)のいずれか1種であり、nは1~6を示す。なお、nが2~6の場合、複数のR1およびYは、同一であっても異なっていてもよい。) 【化2】 [図:0001438289000005.jpg] (上記一般式(1-1)~(1-10)中、R2は単結合、酸素原子またはメチレン基であり、R3は水素原子またはメチル基であり、R4は直接結合、単結合またはフェニル基を示す。) (C)ラジカル重合開始剤」と訂正する。 (請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5,8~10も同様に訂正する。) <訂正事項2> 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 <訂正事項3> 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 なお、訂正前の請求項1~10について、請求項2~10は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項1~10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の目的の適否についての判断 (1)訂正事項1 訂正事項1は、請求項1の「(A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂」との発明特定事項を、請求項6及び7に、それぞれ、 「【請求項6】 前記成分(A)が下記一般式(2)および(3)で表される構造式を含有する、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。 【化3】 [図:0001438289000006.jpg] (上記一般式(2)および(3)中、R4は炭素数が1~12の有機基、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を示す。)」、 「【請求項7】 前記成分(A)中、前記一般式(2)と前記一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5である、請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。」と記載されていることに基づいて、 「(A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂であって、下記一般式(2)および(3)で表される構造式を含有し、 【化3】 [図:0001438289000007.jpg] (上記一般式(2)および(3)中、R4は炭素数が1~12の有機基、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を示す。) 前記一般式(2)と前記一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5である」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。 (2)訂正事項2、3 訂正事項2、3は、それぞれ、請求項6、7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。 (3)独立特許要件について 本件においては、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~3につき、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 3 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを認める。 第4 本件発明について 上記第3のとおり、本件訂正が認められたため、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明10」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 以下の成分(A)~(C)を必須成分として含有し、前記成分(A)と前記成分(B)の質量比が99:1~10:90である硬化性樹脂組成物。 (A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂であって、下記一般式(2)および(3)で表される構造式を含有し、 【化3】 [図:0001438289000008.jpg] (上記一般式(2)および(3)中、R4は炭素数が1~12の有機基、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を示す。) 前記一般式(2)と前記一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5である (B)下記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体 【化1】 [図:0001438289000009.jpg] (上記一般式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、Yは単結合またはメチレン基のいずれか1種であり、Zは下記一般式(1-1)~(1-10)のいずれか1種であり、nは1~6を示す。なお、nが2~6の場合、複数のR1およびYは、同一であっても異なっていてもよい。) 【化2】 [図:0001438289000010.jpg] (上記一般式(1-1)~(1-10)中、R2は単結合、酸素原子またはメチレン基であり、R3は水素原子またはメチル基であり、R4は直接結合、単結合またはフェニル基を示す。) (C)ラジカル重合開始剤 【請求項2】 前記一般式(1)におけるnが1又は2である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 前記一般式(1)におけるR1は水素原子であり、Yは単結合またはメチレン基である、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項4】 前記一般式(1-1)および(1-4)におけるR2は、単結合または酸素原子である、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項5】 前記一般式(1-2)および(1-7)におけるR3は、水素原子である、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を備えた光導波路。 【請求項9】 請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物を含有した光学接着剤。 【請求項10】 請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物を含有した透明封止剤。」 なお、本件特許の願書に添付した明細書を、以下「本件明細書」という。 第5 特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要、証拠方法、取消理由通知書に記載した取消理由の概要 1 申立書に記載した申立ての理由の概要 申立書に記載した申立理由は、以下のとおりである。 (1)申立理由1(サポート要件)(申立書p.57~) 本件特許の請求項1~10に係る特許は、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 本件発明において、成分(A)と成分(B)の質量比が99:1~10:90とされているが、実施例に幅広い質量比で結果が開示されている(メタ)アクリル酸誘導体は(B13)のみであり、その他の(メタ)アクリル酸誘導体は、成分(A)と成分(B)の質量比が50:50の態様しか開示されておらず、下記の甲第5号証に示された技術常識に基づけば、成分(B)として(B13)以外の(メタ)アクリル酸誘導体を、成分(A)と成分(B)の質量比50:50以外の比率で使用した際に、本件発明の効果を奏するとはいえない。 イ 本件発明は、成分(A)~(C)以外の成分(以下「本件その他成分」という。)を含むことを許容するものであり、本件その他成分を多量に含む態様においてまで、本件発明の効果を奏するとはいえない。 (2)申立理由2(甲第1号証に基づく新規性、進歩性)(申立書p.60~) 本件特許の請求項1~3、6、8に係る発明は、本件特許の優先日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~3、6、8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由3(甲第2号証に基づく進歩性)(申立書p.63~) 本件特許の請求項1~4、6、8に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4、6、8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由4(甲第3号証に基づく新規性、進歩性)(申立書p.69~) 本件特許の請求項1~4、6、10に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4、6、10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由5(甲第8号証に基づく進歩性)(申立書p.73~) 本件特許の請求項1~4、6、8に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4、6、8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立書に添付した証拠方法 ・甲第1号証 国際公開第2015/111607号 ・甲第2号証 国際公開第2018/199305号 ・甲第3号証 特開2019-183137号公報 ・甲第4号証 共栄社化学(株)ライトアクリレートPOB-Aに関するインターネットページ(https://kyoeisha.co.jp/kinou―topics/2745/) ・甲第5号証 特開2009-51917号公報 ・甲第6号証 成形加工 第16巻第11号(2004) 「ポリマー光導波路とそのデバイス特性」 本文 ・甲第7号証 特開平6-172533号公報 ・甲第8号証 国際公開第2017/188047号 ・甲第9号証 日立化成テクニカルレポートNo.48(2007.1)「フィルム型光導波路材料」 本文 3 取消理由通知書に記載した取消理由の概要 当審において令和7年10月3日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 (1)取消理由1(甲第1号証に基づく新規性) 本件特許の請求項1~3、8に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~3、6、8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)取消理由2(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1~3、6、8に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~3、6、8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第6 当審の判断 1 請求項6、7に係る特許についての特許異議の申立の却下 本件訂正により、請求項6、7は削除されたため、申立人による請求項6、7に係る特許についての特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなった。 請求項6、7に係る特許についての申立人による特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。 2 取消理由1(甲第1号証に基づく新規性)、取消理由2(甲第1号証に基づく進歩性)、申立理由2(甲第1号証に基づく新規性、進歩性)について 取消理由1、2、申立理由2は、いずれも甲第1号証に基づくものであるから、これらをまとめて判断する。 (1)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証の[0110]~[0117]を参照の上、表1の実施例3として開示された組成物3に着目すると、 「PS-01を90重量部、1-ナフチルアクリレートを10重量部、光重合開始剤としての2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オンを6重量部、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド,1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンを3重量部、DAAを255重量部、PGMEAを97重量部を調合し、DFX-18を30ppm添加し、黄色灯下で混合、攪拌して均一溶液とした後、0.20μmのフィルターで濾過して調製された組成物3。」(以下「甲1発明」という。) が記載されている。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 (ア)甲1発明における「1-ナフチルアクリレート」は、本件発明1における「(B)一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体」のうち、R1が水素原子、Yが単結合、Zが一般式(1-3)、n=1の化合物に相当する。 (イ)また、甲1発明における2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オンは、甲1の[0058]、[0059]の記載から、ラジカルを発生させる重合開始剤であり、本件発明1における「ラジカル重合開始剤」に相当する。 (ウ)次に、甲1発明の「PS-01」は、甲1の[0092]、[0093]の記載より、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.03mol、カルボキシル基含有シラン化合物(A)0.04mol、1-ナフチルトリメトキシシラン0.03molを共重合してなる(b)ポリシロキサン化合物100重量部と酸化チタン-酸化ケイ素複合粒子である(a)金属化合物粒子150重量部を含むものであり、上記「(b)ポリシロキサン化合物」は、「3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン」由来のアクリロイル基を有することから、本件発明1の成分(A)と、「(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン樹脂」である限りにおいて一致する。 (エ)さらに、上記(ウ)に示した配合割合を勘案すれば、甲1発明における「(b)ポリシロキサン化合物」と、1-ナフチルアクリレートの量比は、90×100÷(100+150):10=36:10となり、本件発明1における「成分(A)と成分(B)の質量比が99:1~10:90」の範囲に含まれる。 (オ)そして、甲1の[0112]には、甲1発明を硬化した旨の記載があるから、甲1発明は「硬化性樹脂組成物」であり、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」と一致する。 (カ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致する。 「以下の成分(A)~(C)を必須成分として含有し、前記成分(A)と前記成分(B)の質量比が99:1~10:90である硬化性樹脂組成物。 (A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂 (B)下記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体 【化1】(略) (上記一般式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、Yは単結合またはメチレン基のいずれか1種であり、Zは下記一般式(1-1)~(1-10)のいずれか1種であり、nは1~6を示す。なお、nが2~6の場合、複数のR1およびYは、同一であっても異なっていてもよい。) 【化2】(略) (上記一般式(1-1)~(1-10)中、R2は単結合、酸素原子またはメチレン基であり、R3は水素原子またはメチル基であり、R4は直接結合、単結合またはフェニル基を示す。) (C)ラジカル重合開始剤」 (キ)そして、両者は以下の点で相違する。 <甲1相違点1> (A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂が、本件発明1は 「(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂であって、下記一般式(2)および(3)で表される構造式を含有し、 【化3】 [図:0001438289000011.jpg] (上記一般式(2)および(3)中、R4は炭素数が1~12の有機基、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を示す。) 前記一般式(2)と前記一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5である」のに対し、甲1発明の「PS-01」に含まれる「(b)ポリシロキサン化合物」は上記一般式(2)及び(3)で表される構造式を含有し、一般式(2)と一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5ではない点 イ 判断 (ア)まず、甲1相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明ではない。 (イ)次に、甲第1号証には「(A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂であって、下記一般式(2)および(3)で表される構造式を含有し、 【化3】 [図:0001438289000012.jpg] (上記一般式(2)および(3)中、R4は炭素数が1~12の有機基、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を示す。) 前記一般式(2)と前記一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5である」は記載されていない。このため、甲1発明における「(b)ポリシロキサン化合物」を、本件発明1で使用される成分(A)によって置き換える、もしくはこれをさらに追加することは容易に想到できない。 (ウ)また、申立人が提出した甲第2号証~甲第9号証にも、本件発明1で使用される成分(A)は記載されておらず、甲1発明において、「(b)ポリシロキサン化合物」を、本件発明1で使用される成分(A)に置き換える、もしくはこれをさらに追加することは容易に想到できない。 (エ)その他、本件優先日前に、甲1発明において、「(b)ポリシロキサン化合物」を、本件発明1で使用される成分(A)に置き換える、もしくはこれをさらに追加する動機付けとなる技術常識が存在したとも認められない。 (オ)したがって、甲1相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものでない。 (カ)また、本件発明1が、低光吸収損失で耐熱性が高く、UV硬化性に優れ、さらにハンドリング性にも優れることは、当業者が予測できない効果である。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明でなく、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明2~5、8~10 本件発明2~5、8~10は、本件発明1を直接ないし間接的に引用し、さらにこれを限定するものであるから、それぞれと甲1発明を対比すると、少なくとも、甲1相違点1が存在し、上記(2)イに示したとおり、当該相違点は実質的な相違点であって、当業者が容易に想到し得たものでない。 そうすると、本件発明2~5、8~10についても、甲第1号証に記載された発明でなく、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)その他の実施例について 甲第1号証に記載された実施例4、5を引用発明としても、上記(2)、(3)と同様に判断される。 (5)取消理由1、取消理由2、申立理由2(甲第1号証に基づく新規性、進歩性)のまとめ 上記(2)~(4)に示したとおり、本件発明1~5、8~10は、甲第1号証に記載された発明でなく、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 3 申立理由1(サポート要件)について (1)特許法第36条第6項第1号に規定する要件の判断基準 一般に、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、本件明細書のサポート要件の存在は、特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。 (2)本件発明が解決しようとする課題 本件明細書の【0010】を参照すると、本件発明が解決しようとする課題は、「光通信で使用される近赤外線領域において吸収が小さく(低光吸収損失)、耐熱性に優れることに加えて、生産性(UV硬化性)に優れた硬化物が得られる材料、及び該材料を使用してなる光導波路や光学接着剤を提供すること」であると認められる。 (3)判断 本件明細書の【0021】より、本件発明は、上記課題を解決するために、「特定の反応性基を有するポリシロキサン樹脂、特定の構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体、ラジカル重合剤、とを必須成分として含有」しているものと認められる。 そして、本件明細書には、特定の反応基を有するポリシロキサン樹脂として、メタクリロイル基を有するポリシロキサン樹脂、アクリロイル基を有するポリシロキサン樹脂、スチリル基を有するポリシロキサン樹脂を複数種類使用し、特定の構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体として、偏りなく多様な化学構造を有するアクリル酸誘導体(B1)~(B15)を使用し、成分(A):成分(B)の質量比50:50で配合した硬化性組成物により、本件課題を解決できたことが、具体的な実施例として開示されている(実施例1~15、21~27参照。)。さらに、アクリル酸誘導体(B1)~(B15)のうち、特にアクリル酸誘導体(B13)について、成分(A):成分(B)の質量比99:1~10:90の範囲にわたって、本件課題を解決できたことも、具体的な実施例として開示されている(実施例15、17~19参照。)。 上記のとおり、本件明細書には、多様な成分(A)、多様な成分(B)を使用した実施例が開示されており、そのうちの代表例として(B13)については本件発明で特定される成分(A)と成分(B)の質量比全体にわたった実施例が開示されており、これらの結果を参酌すれば、(A)特定の反応性基を有するポリシロキサン樹脂、(B)特定の構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体、(C)ラジカル重合剤、とを必須成分として含み、成分(A)と成分(B)の質量比が99:1~10:90である本件発明1~5、8~10が、本件発明の課題を解決できると、当業者が認識し得るものと認められる。 (4)申立人の主張について 申立人は、申立書において、上記第5の1(1)ア、イに示した旨、主張している。 ア 主張アについて 申立人は、新たな実験結果等により本件発明が本件発明の課題を解決できないことを具体的に明らかにしてはおらず、申立書58頁下から5行~59頁の2行や59頁17~23行の主張をもって具体的に明らかにしたともいえない。これに対して、上記(3)に示したとおり、本件明細書が、多種多様な態様の実施例により、本件発明が本件発明の課題を解決できることを具体的に開示している事情を勘案すれば、申立人の主張アを採用することはできない。 イ 主張イについて 上記(3)に示したとおり、本件明細書には、本件発明が本件発明の課題を解決できることが、具体的な実施例とともに記載されている。当該記載から、「成分(A)~(C)を必須成分として含み、さらに、本件その他成分を含む硬化性樹脂組成物」と、「単に本件その他成分を含む硬化性樹脂組成物」を比較した際に、前者が後者に比べて本件発明の課題を解決できることは合理的に類推でき、これを否定する具体的な証拠等を申立人は提示していない。このため、申立人の主張イを採用することはできない。 (5)申立理由1(サポート要件)のまとめ 以上のとおり、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 4 申立理由3(甲第2号証に基づく進歩性)について (1)甲第2号証に記載された発明 甲第2号証の[0060]、[0061]、[0063]を参照の上、実施例1の光導波路形成用組成物1に着目すると、 「(a)反応性シルセスキオキサン化合物及び(c)(メタ)アクリレート化合物の混合物として製造例1で製造したSQ1/BnA溶液54.3質量部(SQ1 40.7質量部、BnA13.6質量部)、(b)フルオレン化合物としてFDA42.7質量部、(c)(メタ)アクリレート化合物としてBnA3.0質量部(上記SQ1/BnA溶液に含まれるBnAと併せて16.6質量部)、連鎖移動剤(反応促進剤)としてDDT0.5質量部、酸化防止剤としてI1010 0.5質量部、並びに重合開始剤としてI184 2質量部及びTPO 0.5質量部を、50℃で3時間撹拌混合し、さらに10分間撹拌脱泡することで調製された光導波路形成用組成物1。 <製造例1> 凝縮器を備えた200mLの反応フラスコに、TEAH2.97g(7.1mmol)、イオン交換水9.52g(528mmol)、及びTHF90gを仕込み、窒素バルーンを用いてフラスコ中の空気を窒素で置換した。ここへ、STMS39.6g(177mmol)、及びPTMS35.0g(177mmol)の混合物を、10分間で滴下した後、40℃で16時間撹拌した。次いで、この反応混合物に、予めTHFで洗浄した陽イオン交換樹脂[ダウ・ケミカル社製 アンバーリスト(登録商標)15JWET]7.9gを加え、1時間撹拌して反応を停止させた。これを室温(およそ23℃)に冷却した。その後、孔径0.2μmのメンブレンフィルタで陽イオン交換樹脂をろ過し、さらに酢酸エチル15gで洗い流した。このろ液及び洗浄液を併せた溶液に、BnA9.3gを加え、均一に混合した。その後、ロータリーエバポレーターを用いて、THF、酢酸エチル、残存した水、及びその他の揮発分を減圧留去し、SQ1/BnA溶液を得た。」(以下「甲2発明」という。) が記載されている。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 (ア)甲第2号証の[0060]によれば、甲2発明の「I184」は「1-ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)184]」であり、[0044]によれば、「光ラジカル重合開始剤」であることから、本件発明1の「(C)ラジカル重合開始剤」に相当する。 (イ)甲第2号証の[0060] によれば、甲2発明の「SQ1」は、STMS(トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン)とPTMS(トリメトキシ(フェニル)シランとの共重合体であることから、本件発明1における成分(A)と、「スチリル基を有するポリシロキサン樹脂」である限りにおいて一致する。 (ウ)甲第2号証の[0060]によれば、甲2発明の「BnA」は、ベンジルアクリレートであることから、本件発明1における成分(B)と、「(メタ)アクリル酸誘導体」である限りにおいて一致する。 (エ)甲2発明の「SQ1」と「BnA」の質量比は、40.7:16.6であることから、本件発明1における成分(A)と成分(B)の質量比「99:1~10:90」の範囲に含まれる。 (オ)甲第2号証の[0067]には、甲2発明を硬化した旨が記載されており、甲2発明は樹脂を含むことから、甲2発明は「硬化性樹脂組成物」であると認められ、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」と一致する。 (カ)そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致する。 「以下の成分(A)~(C)を必須成分として含有し、前記成分(A)と前記成分(B)の質量比が99:1~10:90である硬化性樹脂組成物。 (A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂 (B)(メタ)アクリル酸誘導体 (C)ラジカル重合開始剤」 (キ)そして、両者は以下の点で相違する。 <甲2相違点1> (A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂が、本件発明1は 「(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂であって、下記一般式(2)および(3)で表される構造式を含有し、 【化3】 [図:0001438289000013.jpg] (上記一般式(2)および(3)中、R4は炭素数が1~12の有機基、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を示す。) 前記一般式(2)と前記一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5である」のに対し、甲2発明の「SQ1」は上記一般式(2)及び(3)で表される構造式を含有し、一般式(2)と一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5ではない点 <甲2相違点2> (B)(メタ)アクリル酸誘導体が、本件発明1は「一般式(1)で表される構造を有する」のに対し、甲2発明のBnAは異なる化学構造を有する点 イ 判断 (ア)甲第2号証には「(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂であって、下記一般式(2)および(3)で表される構造式を含有し、 【化3】 [図:0001438289000014.jpg] (上記一般式(2)および(3)中、R4は炭素数が1~12の有機基、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を示す。) 前記一般式(2)と前記一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5である」は記載されていないから、甲2発明における「SQ1」を本件発明1で使用される成分(A)に置き換える、もしくはこれをさらに追加することは容易に想到できない。 (イ)また、申立人が提出した甲第1号証、甲第3号証~甲第9号証にも、本件発明1で使用される成分(A)は記載されておらず、甲2発明において、「SQ1」を本件発明1で使用される成分(A)に置き換える、もしくはこれをさらに追加することは容易に想到できない。 (ウ)その他、本件優先日前に、甲2発明において、「SQ1」を本件発明1で使用される成分(A)に置き換える、もしくはこれをさらに追加する動機付けとなる技術常識が存在したとも認められない。 (エ)したがって、甲2相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものでない。 (オ)また、本件発明1が、低光吸収損失で耐熱性が高く、UV硬化性に優れ、さらにハンドリング性にも優れることは、当業者が予測できない効果である。 ウ 小括 そうすると、甲2相違点2について判断するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~5、8~10について 本件発明2~5、8~10は、本件発明1を直接ないし間接的に引用し、さらにこれを限定するものであるから、それぞれと甲2発明を対比すると、少なくとも、甲2相違点1が存在し、当該相違点に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものでない。 (4)申立理由3(甲第2号証に基づく進歩性)のまとめ 以上のとおり、本件発明1~5、8~10は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 5 申立理由4(甲第3号証に基づく新規性、進歩性)について (1)甲第3号証に記載された発明 甲第3号証の【0052】、【0057】、【0058】を参照の上、実施例1の被覆ジルコニア含有重合性組成物(1)に着目すると、 「以下に示す調製法により調製されたアクリルモノマー重合液(1)の2.6g、以下に示す調製法により調製された被覆ジルコニア分散液4.4gを秤量し、混練機(シンキー製、商品名「あわとり練太郎(AR-250)」)で混合5分・脱泡1分を実施して得られた、被覆ジルコニア含有重合性組成物(1)。 <アクリルモノマー重合液(1)の調製法> 単官能(メタ)アクリレートとして、ノルマルブチルアクリレート(和光純薬工業製)53.4g、多官能(メタ)アクリレートとして、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンとアクリル酸の反応生成物(新中村工業株式会社製、商品名「NKエステル A-BPEF」)5.4g、光重合開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(BASF製、商品名「Irgacure819」)1.2gを秤量し、ミックスローターを用いて混合し、アクリルモノマー重合液(1)を得た。 <被覆ジルコニア分散液の調製法> 2-エチルヘキサン酸ジルコニウムミネラルスピリット溶液(第一稀元素化学工業社製)(782g)に純水(268g)を混合した。当該混合物を撹拌機付きオートクレーブ内に仕込み、反応容器中の雰囲気を窒素ガスにより置換した。その後、反応溶液を180℃まで加熱し、16時間反応させることにより酸化ジルコニウムを合成した。180℃で反応した際の容器中圧力は1.03MPaであった。 反応後の溶液を取り出し、底部にたまった沈殿物を濾別してアセトンで洗浄した後に乾燥した。乾燥後の当該沈殿物(100g)をトルエン(800mL)に分散させたところ、白濁溶液となった。 次に、精製工程として定量濾紙(アドバンテック東洋社製、No.5C)にて再度濾過し、沈殿物中の粗大粒子などを除去した。次に、濾液を減圧濃縮したトルエンを除去することで白色の酸化ジルコニウムナノ粒子を回収した。 上記で得られた酸化ジルコニウムナノ粒子(10g)をトルエン(90g)に分散させ、透明分散液を得た。当該分散液に表面処理剤として3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(1.5g、信越化学工業社製、KBM-503)を添加し、90℃で1時間加熱還流した。次いで、還流処理後の分散液にn-ヘキサンを添加することで分散粒子を凝集させて分散液を白濁させた。白濁液から凝集粒子を濾紙により分離後、室温で加熱乾燥し、2-エチルヘキサン酸、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された酸化ジルコニウムナノ粒子を調製した。 上記で得られた2-エチルヘキサン酸、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された酸化ジルコニウムナノ粒子80質量%に対してフェノキシベンジルアクリレートを20質量%添加し、撹拌して被覆酸化ジルコニアナノ粒子を80質量%含有するモノマー分散液を得た。」(以下「甲3発明」という。) が記載されている。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3発明を対比する。 (ア)甲第3号証の【0052】によれば、甲3発明のアクリルモノマー重合液(1)には、「光重合開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(BASF製、商品名「Irgacure819」)」が含まれており、これは、本件明細書の【0072】に記載されるとおり、本件発明1の「ラジカル重合開始剤」に相当する。 (イ)甲3発明の被覆ジルコニア分散液には「フェノキシベンジルアクリレート」が含まれており、本件発明1の「(B)一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体」のうち、R1が水素原子、Yがメチレン基、Zが一般式(1-1)、R2が酸素原子、n=1の化合物に相当する。 (ウ)甲第3号証の【0061】、【0064】には、甲3発明を硬化した旨が記載されており、甲3発明は樹脂を含んでいることから、「硬化性樹脂組成物」であると認められ、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」と一致する。 (エ)そうすると、本件発明1と甲3発明とは以下の点で一致する。 「以下の成分(B)、(C)を含有する硬化性樹脂組成物。 (B)下記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体 【化1】(略) (上記一般式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、Yは単結合またはメチレン基のいずれか1種であり、Zは下記一般式(1-1)~(1-10)のいずれか1種であり、nは1~6を示す。なお、nが2~6の場合、複数のR1およびYは、同一であっても異なっていてもよい。) 【化2】(略) (上記一般式(1-1)~(1-10)中、R2は単結合、酸素原子またはメチレン基であり、R3は水素原子またはメチル基であり、R4は直接結合、単結合またはフェニル基を示す。) (C)ラジカル重合開始剤」 (オ)そして、両者は以下の点で相違する。 <甲3相違点1> 本件発明1は、 「(A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂であって、下記一般式(2)および(3)で表される構造式を含有し、 【化3】 [図:0001438289000015.jpg] (上記一般式(2)および(3)中、R4は炭素数が1~12の有機基、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を示す。) 前記一般式(2)と前記一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5である」 を、成分(A)と成分(B)の質量比が99:1~10:90となるように含むのに対し、甲3発明は、そのような構成を有しない点 イ 判断 (ア)まず、甲3相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲3発明ではない。 (イ)次に、甲第3号証には「下記一般式(2)および(3)で表される構造式を含有し、 【化3】 [図:0001438289000016.jpg] (上記一般式(2)および(3)中、R4は炭素数が1~12の有機基、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を示す。) 前記一般式(2)と前記一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5である、(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂」は記載されていないから、甲3発明に含まれるいずれかの成分を本件発明1で使用される成分(A)によって置き換える、もしくはこれをさらに追加することは容易に想到できない。 (ウ)また、申立人が提出した甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証~甲第9号証にも、本件発明1で使用される成分(A)は記載されておらず、甲3発明において、いずれかの成分を本件発明1で使用される成分(A)に置き換える、もしくはこれをさらに追加することは容易に想到できない。 (エ)その他、本件優先日前に、甲3発明において、いずれかの成分を本件発明1で使用される成分(A)に置き換える、もしくはこれをさらに追加する動機付けとなる技術常識が存在したとも認められない。 (オ)したがって、甲3相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものでない。 (カ)また、本件発明1が、低光吸収損失で耐熱性が高く、UV硬化性に優れ、さらにハンドリング性にも優れることは、当業者が予測できない効果である。 ウ 小括 そうすると、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明でなく、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明2~5、8~10について 本件発明2~5、8~10は、本件発明1を直接ないし間接的に引用し、さらにこれを限定するものであるから、それぞれと甲3発明を対比すると、少なくとも、甲3相違点1が存在し、当該相違点は実質的な相違点であって、当業者が容易に想到し得たものでない。 (4)その他の実施例について 甲第3号証に記載された実施例2~4を引用発明としても、上記(2)、(3)と同様に判断される。 (5)申立理由4(甲第3号証に基づく新規性、進歩性)のまとめ 以上のとおり、本件発明1~5、8~10は、甲第3号証に記載された発明でなく、甲第3号証に記載された発明、及び、甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 6 申立理由5(甲第8号証に基づく進歩性)について (1)甲第8号証に記載された発明 甲第8号証の[0197]、[0258]、[0271]の[表7]を参照の上、実施例31に着目すると、 「以下に示す合成法により合成されたポリシロキサンであるP-22を8重量%、ラジカル重合性基および芳香環を有する化合物であるBP-4EAを4.4重量%、感光剤であるOXE01を0.8重量%、金属化合物粒子であるD-1を9.7重量%、溶剤であるDAA/CP/PGMEを、それぞれ、30.8/23.1/23.1重量%、t-ブチルピロカテコールを0.1重量%、BYK-333を150ppm、を混合、攪拌し、均一溶液とした後、0.20μmのフィルターで濾過して調整した組成物31。 <P-22の合成法> 500mLの三口フラスコに、StTMSを29.47g(0.131mol)、MAcTMSを17.80g(0.072mol)、SuTMSを9.40g(0.036mol)、TBC(t-ブチルピロカテコール)の1重量%DAA溶液を1.47g、DAAを59.78g仕込み、室温で攪拌しながら、水13.54gにリン酸0.283g(仕込みモノマーに対して0.50重量%)を溶かしたリン酸水溶液を30分間かけて添加した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに浸けて90分間攪拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間過熱攪拌し(内温は100~110℃)、ポリシロキサン(P-22)の溶液を得た。なお、昇温および加熱攪拌中、窒素を0.05L(リットル)/分、流した。反応中に、副生成物であるメタノールと水が、合計29.37g留出した。得られたポリシロキサン(P-22)溶液の固形分濃度は40.6重量%であった。29Si-NMRで測定した、ポリシロキサン(P-22)中のスチリル基、(メタ)アクリロイル基、親水性基のモル量は、それぞれ55mol%、30mol%、15mol%であった。」(以下「甲8発明」という。) が記載されている。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲8発明とを対比する。 (ア)甲第8号証の [0171]より、甲8発明の「P-22」は、StTMS(スチリルトリメトキシシラン)とMAcTMS(γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)とSuTMS(3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物)を共重合して得られる、スチリル基55mol%、(メタ)アクリロイル基30mol%、親水性基15mol%を有するポリシロキサンであるから、本件発明1の成分(A)と「(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂」である限りにおいて、一致する。 (イ)甲8発明の「BP-4EA」は、本件発明1の成分(B)と「ラジカル重合性基および芳香環を有する化合物」である限りにおいて、一致する。 (ウ)甲8発明に含まれるP-22とBP-4EAの比率は8:4.4であり、本件発明1における成分(A)と成分(B)の質量比「99:1~10:90」の範囲内のものである。 (エ)甲第8号証の[0240]より、甲8発明の「OXE01」は「1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)」であり、[0122]より、光ラジカル重合開始剤と認められるから、本件発明1の「ラジカル重合開始剤」に相当する。 (オ)甲第8号証の[0259]には、甲8発明を硬化した旨が記載されており、甲8発明は樹脂を含んでいることから、「硬化性樹脂組成物」であると認められ、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当する。 (カ)そうすると、本件発明1と甲8発明とは以下の点で一致する。 「以下の成分(A)~(C)を必須成分として含有し、前記成分(A)と前記成分(B)の質量比が99:1~10:90である硬化性樹脂組成物。 (A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂 (B)ラジカル重合性基および芳香環を有する化合物 (C)ラジカル重合開始剤」 (キ)そして、両者は以下の点で相違する。 <甲8相違点1> (A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂が、本件発明1は 「(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂であって、下記一般式(2)および(3)で表される構造式を含有し、 【化3】 [図:0001438289000017.jpg] (上記一般式(2)および(3)中、R4は炭素数が1~12の有機基、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を示す。) 前記一般式(2)と前記一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5である」のに対し、甲8発明の「P-22」は上記一般式(2)及び(3)で表される構造式を含有し、一般式(2)と一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5ではない点 <甲8相違点2> (B)ラジカル重合性基および芳香環を有する化合物が、本件発明1は 「(B)下記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体 【化1】(略) (上記一般式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、Yは単結合またはメチレン基のいずれか1種であり、Zは下記一般式(1-1)~(1-10)のいずれか1種であり、nは1~6を示す。なお、nが2~6の場合、複数のR1およびYは、同一であっても異なっていてもよい。) 【化2】(略) (上記一般式(1-1)~(1-10)中、R2は単結合、酸素原子またはメチレン基であり、R3は水素原子またはメチル基であり、R4は直接結合、単結合またはフェニル基を示す。) 」であるのに対し、甲8発明の「BP-4EA」は、一般式(1)で表される構造を有するか不明である点 イ 判断 (ア)甲8相違点1につき、甲第8号証には「(A)(メタ)アクリロイル基、およびスチリル基からなる群から選ばれる1種以上の反応性基を有するポリシロキサン樹脂であって、下記一般式(2)および(3)で表される構造式を含有し、 【化3】 [図:0001438289000018.jpg] (上記一般式(2)および(3)中、R4は炭素数が1~12の有機基、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を示す。) 前記一般式(2)と前記一般式(3)のモル比が1:0.9~1:1.5である」は記載されておらず、甲8発明における「P-22」を、本件発明1で使用される成分(A)によって置き換える、もしくはこれをさらに追加することは容易に想到できない。 (イ)また、申立人が提出した甲第1号証~甲第7号証、甲第9号証にも、本件発明1で使用される成分(A)は記載されておらず、甲8発明において、P-22を、本件発明1で使用される成分(A)に置き換える、もしくはこれをさらに追加することは容易に想到できない。 (ウ)その他、本件優先日前に、甲8発明において、P-22を本件発明1で使用される成分(A)に置き換える、もしくはこれをさらに追加する動機付けとなる技術常識が存在したとも認められない。 (エ)したがって、甲8相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものでない。 ウ 小括 そうすると、甲8相違点2について判断するまでもなく、本件発明1は、甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 (3)本件発明2~5、8~10について 本件発明2~5、8~10は、本件発明1を直接ないし間接的に引用し、さらにこれを限定するものであるから、それぞれと甲8発明を対比すると、少なくとも、甲8相違点1が存在し、当該相違点に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものでない。 (4)申立理由5(甲第8号証に基づく進歩性)のまとめ 以上のとおり、本件発明1~5、8~10は、甲第8号証に記載された発明、及び、甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、申立書に記載した申立理由、及び、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、本件発明1~5、8~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~5、8~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、訂正により削除された請求項6、7に係る特許についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8において準用する同法第135条の規定により、却下する。 よって、上記結論のとおり決定する。

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2025-700797

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