特許異議申立
2024-700965
ガスバリアコーティング剤、積層体、及び包装材
- 審判番号
- 2024-700965
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-573421
- 登録番号
- 7468813
- 請求日
- 2024年10月03日
- 審決日
- 2025年07月31日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】DIC株式会社
- 【権利者代理人】廣田 浩一
- 【権利者代理人】加藤 いぶき
- 【権利者代理人】大野 孝幸
- 【権利者代理人】岩本 明洋
- 【権利者代理人】菅谷 英史
- 【権利者代理人】丹羽 雅裕
- 【異議申立人】平松 由紀子
- 審判長/審判官
- 審判長 関根 裕
- 審判官 弘實 由美子
- 審判官 渡辺 陽子
- 分類
- P651 .113-YAA(C09D) / P651 .121-YAA(C09D) / P651 .537-YAA(C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第113条第4号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許7468813号発明「ガスバリアコーティング剤、積層体、及び包装材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許7468813号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許7468813号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、令和5年8月24日(優先権主張令和4年9月6日 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和6年4月8日に特許権の設定登録がされ(請求項の数12)、同年4月16日に特許掲載公報が発行され、同年10月3日に特許異議申立人 平松 由紀子(以下「申立人」という。)により、請求項1~12(全請求項)に係る特許に対して特許異議の申立がされたものである。
その後、当審は、令和7年3月6日付けで取消理由を通知し、この取消理由通知に対し、特許権者は、その指定期間内である同年4月16日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正の内容を「本件訂正」という。)を行った。
当審は、同年5月1日付けで申立人に訂正請求があった旨を通知したが、申立人からの応答はなかった。
第2 本件訂正請求について
1 本件訂正
本件訂正は、次の訂正事項からなるものである。
<訂正事項>
特許請求の範囲の請求項1に、「分子量が100以上250以下の範囲内であるか、又は溶解度パラメータが29.5以下である水酸基を有する化合物(C)」と記載されているのを、「イソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールである化合物(C)」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~12も同様に訂正する)。
2 一群の請求項について
前記訂正事項は、訂正前に引用関係を有する請求項1~12に対して請求されたものである。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 訂正要件についての判断
(1) 訂正の目的について
前記訂正事項は、訂正前の請求項1に記載された「分子量が100以上250以下の範囲内であるか、又は溶解度パラメータが29.5以下である水酸基を有する化合物(C)」とあるのを、「イソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールである化合物(C)」に変更するものであり、訂正後に列挙された「化合物(C)」は、いずれも「水酸基」を有し、「分子量が100以上250以下の範囲内」又は「溶解度パラメータが29.5以下」のいずれかを充足するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
前記訂正事項は前記(1)のとおりであるので、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3)新規事項の追加の有無について
前記訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書の【0038】の「
前記化合物(C)は、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。中でも、前記活性水素基として水酸基を有する化合物(C)が好ましく、イソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましい。」との記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲のものと認められる。
したがって、訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(4)独立特許要件について
上記第1で述べたように、本件特許異議の申立ては、本件特許の全ての請求項に係る特許に対してなされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件が課される請求項はない。
(5)本件訂正の適否についての小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許の請求項1~12に係る発明は、その特許の特許請求の範囲の請求項1~12に記載された以下のとおりのものである(請求項1~12に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明12」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。
「【請求項1】
オルト配向性多価カルボン酸又はメタ配向性多価カルボン酸を必須として含有する酸成分とポリオール成分との反応物であるポリオール(A)と、
イソシアネート化合物(B)と、
イソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールである化合物(C)
を含有することを特徴とするガスバリアコーティング剤。
【請求項2】
前記化合物(C)の配合量が、前記コーティング剤の固形分に対し0.5質量%以上20質量%以下である請求項1に記載のガスバリアコーティング剤。
【請求項3】
前記ポリオール(A)のポリオール成分中にグリセロール10質量~100質量%含む請求項1に記載のガスバリアコーティング剤。
【請求項4】
イソシアネート化合物(B)が、芳香族環又は脂肪族環を有する請求項1に記載のガスバリアコーティング剤。
【請求項5】
板状無機化合物(E)をさらに含む請求項1に記載のガスバリアコーティング剤。
【請求項6】
基材と、前記基材上に配置されたバリアコート層とを含み、前記ガスバリアコート層が請求項1~5のいずれかに記載のガスバリアコーティング剤の硬化塗膜である積層体。
【請求項7】
基材と、ヒートシールフィルムと、前記基材の前記ヒートシールフィルム側の面に配置されたガスバリアコート層と、前記ガスバリアコート層と前記ヒートシールフィルムとの間に配置された接着層とを含み、前記ガスバリアコート層が請求項1~5のいずれかに記載のガスバリアコーティング剤の硬化塗膜である積層体。
【請求項8】
前記ガスバリアコート層と前記接着層との間に印刷層を含む、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記基材がポリオレフィンフィルムである請求項6に記載の積層体。
【請求項10】
前記基材がポリオレフィンフィルムである請求項7に記載の積層体。
【請求項11】
請求項6に記載の積層体を含む包装材。
【請求項12】
請求項7に記載の積層体を含む包装材。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~12に係る特許に対して、当審が令和7年3月4日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
取消理由1(新規性:特許法第113条第2号)
本件特許の請求項1~6、9、11に係る発明は、本件特許の優先日前に、日本国内又は外国において頒布され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の甲第1号証、又は引用文献6に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~6、9、11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
取消理由2(進歩性:特許法第113条第2号)
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の優先日前に、日本国内又は外国において頒布され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第1号証及び/又は引用文献6に記載された発明、並びに引用文献7に記載された事項に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由3(サポート要件:特許法第113条第4号)
本件特許は、本件発明1~12の化合物(C)として、本件発明の詳細な説明中に課題が達成されることが開示されているイソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、1,4-シクロヘキサンジメタノール以外について、技術常識を参酌しても課題が達成されるとはいえないから、本件発明は詳細な説明に記載された発明ではないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 甲号証等
甲第1号証 :国際公開第2021/100584号
引用文献6 :特開2006-193657号公報(当審で新たに追加した文献)
引用文献7 :特開2020-40255号公報(当審で新たに追加した文献)
以下、申立人が提示した甲第1号証を甲1などという。
3 甲号証等の記載について
(1) 甲1
「[請求項1]第一の基材と、シーラント層と、前記第一の基材と前記シーラント層との間に配置された接着層とを有する積層体の製造方法であって、前記シーラント層上に、ポリエステルポリオール(A)を含むポリオール組成物(I)と、ポリイソシアネート組成物(II)と、エステル系溶剤と、を含む2液型接着剤を塗布する工程と、
前記シーラント層を乾燥装置に搬送し、加熱して前記2液型接着剤から前記溶剤を蒸発させる工程と、
前記シーラント層と前記第一の基材とを貼り合わせる工程と、前記2液型接着剤を硬化させて前記接着層を形成する工程と、を含む積層体の製造方法。
[請求項2] 請求項1に記載の製造方法で製造された積層体。
[請求項3] 請求項2に記載の積層体からなる包装材。」
「[0007] 本発明の積層体の製造方法によれば、ガスバリア性に優れた積層体、当該積層体を用いた包装材を提供することが可能となる。・・・
[0010] 第一の基材層は化学的、物理的強度に優れるフィルム、シート(なお以下では特記しない限り、フィルムはフィルムとシートの総称でもある)であれば特に制限なく用いることができる。また、基材は単層フィルムであってもよいし、多層積層フィルムであってもよい。後述する包装材の内容物、種類、内容物充填後の加熱処理の有無等の使用条件に応じて適宜選択することができる。
[0011] 基材の具体例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、・・・等の樹脂フィルム、Kコート延伸ポリプロピレンフィルム、Kコート延伸ナイロンフィルム、これらの2以上のフィルムを積層した複合フィルムが例示されるがこれに限定されない。」
「[0031] ポリエステルポリオール(A)は多価カルボン酸と多価アルコールの反応生成物であり、さらにポリイソシアネートによりウレタン伸長されたものであってもよく任意の構造のものを用い得る。中でも3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールにカルボン酸無水物又はポリカルボン酸を反応させることにより得られるポリエステルポリオール(A1)、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)、グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール(A3)、オルト配向性多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A4)、イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)が好ましく用いられる。これらのポリエステルポリオール(A)は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。詳細は後述するが、これらのポリエステルポリオール(A)の硬化塗膜は特にガスバリア性に優れ、本発明の製造方法に特に好適である。なお本明細書において接着剤がガスバリア性を備えるとは、接着剤の5g/m2(固形分)で塗布した接着剤の硬化塗膜の酸素バリア性が300cc/m2/day/atm以下、または水蒸気バリア性が120g/m2/day以下の、少なくとも一方の条件を満足する場合をいう。
・・・
[0033] ポリエステルポリオール(A1)の調整に用いられる多価カルボン酸は、オルトフタル酸、オルトフタル酸無水物の少なくとも1種を含むことが好ましい。多価カルボン酸としてこれらの化合物を用いて得られるポリエステルポリオールはガスバリア性と接着性とに優れる。オルトフタル酸、オルトフタル酸無水物を用いることにより接着剤のガスバリア性が優れる理由は、オルトフタル酸やその酸無水物を用いて得られるポリエステル鎖の回転が抑制されるためと推察される。接着性が優れる理由は、ポリエステル鎖が非対称であることに起因して非結晶性を示し、十分な基材密着性が付与されるためと推察される。
・・・
[0036] ポリエステルポリオール(A1)の調整に用いられる多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、エチレングリコールを使用することが特に好ましい。
[0037] 三価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等が挙げられる。合成時のゲル化を防ぐ為には三価以上の多価アルコールとしては三価アルコールを用いることが好ましい。
[0038] 本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコールを共重合させてもよい。具体的には、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらのエチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族等の芳香族多価フェノール等を例示することができる。」
「[0075] イソシアヌル環を有するトリオールとしては、例えば、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシプロピル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
・・・
[0080] また、イソシアヌル環は3官能であるため、イソシアヌル環を樹脂骨格の中心とし、且つその分岐鎖に特定の構造のポリエステル骨格を有するポリエステルポリオール化合物は高い架橋密度を得ることができる。架橋密度を高めることで、酸素等のガスが通過する隙間を減らすことができると推定される。このように、イソシアヌル環は分子間水素結合を形成せずに高極性であり且つ高い架橋密度が得られるので、ガスバリア性と接着性とを担保できると推定している。
」
「[0089] 2液型接着剤の一成分であるポリイソシアネート組成物(II)は、イソシアネート化合物を含む。イソシアネート化合物としては、従来公知のものを特に制限なく用いることができ、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の2量体、3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3-ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4-ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミンなどの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体が挙げられる。ポリエステルポリオール(A1)~(A5)とジイソシアネート化合物とを、水酸基とイソシアネート基の比率をイソシアネート過剰で反応させて得られるポリエステルポリイソシアネートを用いてもよい。これらは1種または2種以上を併用することができる。」
「[0097] 接着剤には、接着性およびガスバリア性(接着剤がガスバリア性を備える場合)を損なわない範囲で各種添加剤を配合してもよい。
[0098] このような添加剤として、無機充填剤を用いてもよい。無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等が挙げられる。特に無機充填剤として板状無機化合物を用いると、接着強度、ガスバリア性、遮光性等が向上するため好ましい。・・・」
「[0105] 必要に応じて、更に酸素捕捉機能を有する化合物等を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。」
「実施例
[0140] 以下、実施例と比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。配合組成その他の数値は特記しない限り質量基準である。
[0141] <接着剤の調整>
(ポリオール組成物の調整)
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、グリセロールを92.09部、無水フタル酸444.36部、エチレングリコール186.21部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.07部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量668.60、水酸基価250mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。
[0142] 撹拌機を備えた容器に上記で合成したポリエステルポリオール70部を仕込み、90℃で加熱撹拌しポリオールが十分に流動性を保つ状態とした。撹拌しながらHM6025(HENGHAO社製、天然マイカ/非膨潤性、板状、平均粒径10μm、アスペクト比100以上)30部を加え、90℃で均一となるまで撹拌した。これを冷却したものをポリオール組成物として用いた。
[0143] (ポリイソシアネート組成物の調整)
三井化学製「タケネートD-110N」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体 不揮発成分75.0% NCO% 11.5%)と三井化学製「タケネート500」(メタキシリレンジイソシアネート不揮発分>99%,NCO% 44.6%)を50/50(質量比)の割合で混合したものをポリイソシアネート組成物として用いた。ポリイソシアネート組成物の不揮発分は、87.5%、NCO%は28.05%である。
[0144] (接着剤の調整)
ポリオール組成物100部、ポリイソシアネート組成物28部、酢酸エチル140部をよく攪拌し、接着剤を調整した。
[0145] <積層体の製造>
(実施例1)
DL-600DXドライラミネータ(オリエント総業社製)を用いて実施例1の積層体を製造した。第1のフィルムW1として膜厚25μmのアルミ蒸着CPP(東レフィルム加工社製、VM-CPP、2203#25)を用い、第2のフィルムとして膜厚30μmのOPPフィルム(東洋紡社製、パイレンP2161)上に、フィナートR794 白G3を、乾燥塗膜の膜厚が1μmとなるよう塗工したものを用いた。第1のフィルムW1、第2のフィルムW2の搬送速度は120m/min、乾燥炉の温度は第1のフィルムW1の搬送方向の上流側からそれぞれ60℃、70℃、80℃、接着剤の塗布量(固形分)は3.5g/m2となるように設定した。
[0146] (実施例2)
第2のフィルムとして印刷を施さないものを用いた以外は実施例1と同様にして実施例2の積層体を製造した。
・・・
[0150] <評価>
(酸素透過率)
エージングが終了した積層体を10cm×10cmのサイズに調整し、OX-TRAN2/21(モコン社製:酸素透過率測定装置)を用い、JIS-K7126(等圧法)に準じ、23℃90%RHの雰囲気下で酸素透過率(OTR)を測定した。単位はcc/m2・day・atmである。なおRHとは、湿度を表す。結果を表1、表2にまとめた。」
(2) 引用文献6
「【請求項 1】
骨格構造中に含まれるメチレン鎖の連続数が4以下、かつ芳香族炭化水素基濃度が10重量%以上、かつ数平均分子量が10000以下であるポリウレタン樹脂(A)と、膨潤性無機層状化合物(B)とを含有することを特徴とするガスバリア性樹脂組成物。
【請求項 2】
前記ポリウレタン樹脂(A)が、ポリオール化合物(a)と、ポリイソシアネート化合物(b)と、アニオン性親水基及び2以上の活性水素を有する化合物(c)と中和剤(d)とを反応させてウレタンプレポリマーを得ると共に、前記中和剤(d)により中和した後もしくは中和と同時に、アンモニア、第一級アミン化合物、及び第二級アミン化合物の少なくとも一種以上から選択される末端封鎖剤(e)を添加し、前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート残基を封鎖して得たポリウレタン樹脂である請求項1に記載のガスバリア性樹脂組成物。
【請求項 3】
前記ポリウレタン樹脂(A)が、前記骨格構造中に含むエステル基濃度を5重量%以上とするポリエステル系ポリウレタン樹脂である請求項1又は2に記載のガスバリア性樹脂組成物。
【請求項 4】
前記ポリエステル系ポリウレタン樹脂において、下記(i)式もしくは下記(ii)式のいずれか一方または両方で示される骨格構造が、15重量%以上含まれている請求項3に記載のガスバリア性樹脂組成物。
【化1】
[図:0001425758000001.jpg]
【化2】
[図:0001425758000002.jpg]
【請求項 5】
前記ポリオール化合物(a)において、総ポリオール化合物中に下記(iii)式もしくは下記(iv)式のいずれか一方または両方で示されるポリオール化合物が、50重量%以上含まれている請求項2に記載のガスバリア性樹脂組成物。
【化3】
[図:0001425758000003.jpg]
【化4】
[図:0001425758000004.jpg]
」
「【0007】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、水分活性が高い物品、水分含量の多い食品等を包装する際の高湿度下でも優れたガスバリア性を発揮し、焼却時にダイオキシン等の有機塩素系化合物の発生を抑制可能なガスバリア性樹脂組成物と共に、当該ガスバリア性樹脂組成物を積層したガスバリアフィルムを提供する。」
「【0025】
また、ポリウレタン樹脂(A)が、ポリオール化合物(a)と、ポリイソシアネート化合物(b)と、アニオン性親水基及び2以上の活性水素を有する化合物(c)と中和剤(d)とを反応させてウレタンプレポリマーを得ると共に、前記中和剤(d)により中和した後もしくは中和と同時に、アンモニア、第一級アミン化合物、及び第二級アミン化合物の少なくとも一種以上から選択される末端封鎖剤(e)を添加し、前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート残基を封鎖して得たポリウレタン樹脂であるため、ポリウレタン樹脂自体の分子量は従前の樹脂よりも低分子化して、ガスバリア性を高めることとなる。」
「【0032】
〔ポリオール化合物(a)〕
ポリオール化合物(a)としては、ガスバリア性の観点から、前記のとおり、メチレン鎖連続数を4以下とする低分子量グリコール、ポリエステルポリオールが用いられる。低分子量グリコールとしては、アルキレングリコールにおいて、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等のメチレン鎖連続数が4以下である直鎖状又は分岐鎖状アルキレングリコール等が使用される。また、(ポリ)オキシ4アルキレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール等)が使用される。
・・・
【0034】
好ましいポリエステルポリオール成分は、ポリエチレンテレフタレートポリオール、ポリエチレンイソフタレートポリオール、ポリエチレン-2,6-ナフタレートポリオール等の芳香族ポリエステルポリオールであり、ポリエチレンテレフタレートポリオール、ポリエチレンイソフタレートの最小単位である、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタル酸(BHET)、ビス(ヒドロキシエチル)イソフタル酸(BHEI)が特に好ましい。これらの芳香族ポリエステルポリオールは
単独もしくは二種以上を組み合わせて使用できる。」
「【0046】
〔末端封鎖剤(e)〕
末端封鎖剤(e)は、アンモニア、第一級アミン化合物、及び第二級アミン化合物の少なくとも一種以上から選択され、活性水素の存在を必要とする。末端封鎖剤(e)による末端封鎖はイソシアネート残基の一部であっても良い。後述するウレタンプレポリマー(A’)のイソシアネート残基の一部を封鎖し、さらに公知の鎖伸長剤を用いて鎖伸長反応を行うことによっても、数平均分子量を10000以下にすることが可能となる。
【0047】
末端封鎖剤(e)のアンモニア、第一級アミン化合物、及び第二級アミン化合物としては、例えば、アンモニアに加えて、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、ヒドロキシルアミン、モノエタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチルプロパン-1,3-ジオール等の第一級アミン化合物、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン等の第二級アミン化合物を挙げることができる。」
「【0077】
このとき、膨潤性無機層状化合物(B)の単位結晶面とポリウレタン樹脂(A)との間、及びポリウレタン樹脂(A)の各粒子間は、蒸発する溶媒の通り道として働くものと推察される。そして、乾燥の最終段階においてポリウレタン樹脂は互いに最密充填しようとして入り組み、重なり合った膨潤性無機層状化合物の単位結晶層間の間隙は小さくなる。ポリウレタン樹脂の末端は末端封鎖剤(e)の塩基性窒素原子を含むアンモニア等の塩基性化合物で封鎖され尿素基を形成するが、中性ないし弱いカチオン性を示すものと推測される。このような末端部位と、ポリウレタン樹脂中のアニオン性親水基(中和剤(d))、膨潤性無機層状化合物のアニオン性結晶面、膨潤性無機層状化合物の交換性カチオンとの間で、アニオン-カチオン相互作用効果が生じ、ポリウレタン樹脂同士、ポリウレタン樹脂と膨潤性無機層状化合物間、膨潤性無機層状化合物同士の凝集力を高める効果が発現するものと考えられる。」
「【0103】
[製造例5(ポリウレタン樹脂:PU5の調製)]
水素添加MDI(メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート))104.9g、BHEI(ビス(ヒドロキシエチル)イソフタル酸)177.9g、ジメチロールプロピオン酸26.8g、及び溶剤としてメチルエチルケトン167.4gを混合し、窒素雰囲気下70℃で3時間反応させた後、さらに水素添加MDIを157.3g滴下し混合して3時間反応させ、カルボキシル基含有のウレタンプレポリマーを得た。このカルボキシル基含有ウレタンプレポリマー溶液を30℃に保ち、アンモニアガスをゆっくりバブリングしながら加え、イソシアネート残基を封鎖し、同時にカルボキシル基の中和を行った。赤外吸収スペクトルによりイソシアネート基に由来する吸収が消失したことを確認した後、水934.6gを徐々に加えて乳化分散させ、2時間攪拌した。減圧下にて2時間かけて60℃まで昇温しながら、脱溶剤を行い、固形分25重量%水分散型ポリウレタン樹脂(PU5)を得た。」
「【0124】
[試作例1のガスバリア性樹脂組成物の調製]
前記の合成マイカを5重量%含み懸濁させた膨潤性無機層状化合物の水分散液50gに、製造例1のポリウレタン樹脂(PU1)100gを攪拌しながら添加し、合成マイカ及びポリウレタン樹脂の合計全固形分濃度が15重量%となるまで水を加え、試作例1のガスバリア性樹脂組成物(ガスバリア層塗剤)を調製した。
【0125】
[試作例2ないし7のガスバリア性樹脂組成物の調製]
上記試作例1のガスバリア性樹脂組成物の調製手法に準じ、ポリウレタン樹脂(PU1)を製造例2ないし7の調製により得たポリウレタン樹脂(PU2~PU7)に変更した。試作例2のガスバリア性樹脂組成物はポリウレタン樹脂(PU2)を用い、以下、樹脂の順通りに試作例3ないし7のガスバリア性樹脂組成物(ガスバリア層塗剤)を調製した。」
「【0134】
[ガスバリアフィルム試作:ガスバリア性樹脂組成物の積層]
上述の調製に得られた各試作例のガスバリア性樹脂組成物について、それぞれを基材フィルムの一面側に積層(塗布)した。基材フィルムには、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製QH-1,厚さ20μm,高防湿グレード)を用い、同二軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ放電処理面上に試作例1ないし7のガスバリア性樹脂組成物、ならびに試作例12ないし20のガスバリア性樹脂組成物のそれぞれについて、乾燥後の塗布厚さ(ガスバリア層の層厚)を2μmとなるようにグラビアコーターで塗布した。塗布後、120℃で5秒間乾燥し、試作例1ないし7のガスバリアフィルム、ならびに試作例12ないし20のガスバリアフィルムを試作した。」
「【0142】[結果・考察]
試作例1ないし21のガスバリアフィルムについて、含有されているポリウレタン樹脂の種別、使用物質と共に、酸素透過度、水蒸気透過度、ヘイズ値の測定結果を図2の表として示す。比較のため、二軸延伸ポリプロピレンフィルム単体の酸素透過度、水蒸気透過度、ヘイズ値も測定した。表中の「部」とは固形分換算の重量部を示す。表中の略号DMPAはジメチロールピロピオン酸、EGはエチレングリコール、AEEAは2-[(2ーアミノエチル)アミノ]エタノール、EDAはエチレンジアミン、NH3はアンモニア、BHETは(ビス(ヒドロキシエチル)テレフタル酸)、BHEIはビス(ヒドロキシエチル)イソフタル酸、TEAはトリエチルアミンである。・・・
[図:0001425758000005.jpg]
」
(3) 引用文献7
「【0037】
(包装材料用積層体)
本発明の包装材料用積層体16は、図3に示すように、基材17と、上記ヒートシール性積層体10とを備え、該基材がヒートシール性積層体のポリオレフィン樹脂層を構成するポリオレフィンと同一のポリオレフィンから構成される延伸樹脂フィルムであることを特徴とする。」
「【符号の説明】
【0157】
10:ヒートシール性積層体、11:ガスバリア性積層体、12:接着性樹脂層、13:ポリオレフィン樹脂層、14:第1のポリオレフィン樹脂層、15:第2のポリオレフィン樹脂層、16:包装材料用積層体、17:基材、18:蒸着膜、19:接着層」
「
[図:0001425758000006.jpg]
」
4 取消理由1、2について
(1)甲1を主引例とした場合の新規性・進歩性について
ア 甲1に記載された発明
[0145]の実施例1等で用いられている接着剤([0141]~[0144])に着目すると、引用文献1には次の発明(引用発明1)が記載されている。
(引用発明1)
「ポリオール組成物100部、ポリイソシアネート組成物28部、酢酸エチル140部からなる接着剤であって、ポリオール組成物は、グリセロールを92.09部、無水フタル酸444.36部、エチレングリコール186.21部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.07部を仕込み、エステル化反応して得た、数平均分子量668.60、水酸基価250mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/gのポリエステルポリオール組成物であり、ポリイソシアネート組成物は、三井化学製「タケネートD-110N」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体 不揮発成分75.0% NCO% 11.5%)と三井化学製「タケネート500」(メタキシリレンジイソシアネート不揮発分>99%,NCO% 44.6%)を50/50(質量比)の割合で混合した、不揮発分は87.5%、NCO%は28.05%であるポリイソシアネート組成物である、接着剤。」
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1
引用発明1の「無水フタル酸」「エチレングリコール」は本件発明1の「オルト配向性多価カルボン酸」「ポリオール成分」に相当することから、引用発明1の「ポリエステルポリオール組成物」は本件発明1の「オルト配向性多価カルボン酸又はメタ配向性多価カルボン酸を必須として含有する酸成分とポリオール成分との反応物であるポリオール(A)」に相当し、引用発明1の「ポリイソシアネート組成物」は本件発明1の「イソシアネート化合物(B)」に相当する。
また、引用発明1のポリエステルポリオール組成物は、グリセロール、無水フタル酸、エチレングリコールをエステル化した構造を含み、引用文献1の[0031]、[0033]及び[0036]にはこれらの構造を有するポリエステルポリオールの硬化皮膜はガスバリア性に優れることが記載されており、実際に、引用文献1の[0145]の実施例1等に記載されるように、フィルム間に層として塗布されるものであるから、引用発明1の「接着剤」は、「ガスバリアコーティング剤」であるとも解される。
そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「オルト配向性多価カルボン酸又はメタ配向性多価カルボン酸を必須として含有する酸成分とポリオール成分との反応物であるポリオール(A)と、イソシアネート化合物(B)と、を含有することを特徴とするガスバリアコーティング剤。」
<相違点1>
本件発明1では「イソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールである化合物(C)を含有すること」が記載されているが、引用発明1ではそのように特定されていない点。
相違点1について検討する。
甲1の段落[0031][0037][0075][0080]の記載からすると、ポリエステルポリオール(A)を構成するポリオール成分としてトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを用いるとガスバリア性に優れることが記載されているものの、ポリエステルポリオール(A)とは別成分としてトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを用いることについては記載も示唆もない。
また、同様に甲1段落[0037]には、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと置換可能な化合物として、トリメチロールプロパンやペンタエリスリトールが記載されているが、いずれもポリエステルポリオール(A)を構成するポリオール成分として記載されており、ポリエステルポリオール(A)とは別成分としてこれらを用いることについては記載も示唆もない。
また、甲1には、イソソルビドについて記載も示唆もないし、引用文献6、7においても相違点1の化合物(C)について記載も示唆もない。
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1発明、甲1、引用文献6、引用文献7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたとはいえない。
(イ) 本件発明2~12について
本件発明2~12は、本件発明1を直接的または間接的に引用した発明に該当するから、同様に甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1発明、甲1、引用文献6、引用文献7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたとはいえない。
(2) 引用文献6を主引例とした場合の新規性・進歩性
ア 引用文献6に記載された発明
引用文献6の請求項2(ポリウレタン樹脂(A)が、・・・請求項1に記載のガスバリア性樹脂組成物)の記載、製造例5(PU5の調製)の記載を参考にし、図2、【0124】【0125】の試作例5に基づいて認定すると、引用文献6には次の発明(引用発明6)が記載されている。
(引用発明6)
「合成マイカを5重量%含み懸濁させた膨潤性無機層状化合物の水分散液50gに、製造例5のポリウレタン樹脂(PU5)100gを攪拌しながら添加し、合成マイカ及びポリウレタン樹脂の合計全固形分濃度が15重量%となるまで水を加えて得た、試作例5のガスバリア性樹脂組成物であって、PU5は、水素添加MDI(メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート))104.9g、BHEI(ビス(ヒドロキシエチル)イソフタル酸)177.9g、ジメチロールプロピオン酸26.8g、及び溶剤としてメチルエチルケトン167.4gを混合し、窒素雰囲気下70℃で3時間反応させた後、さらに水素添加MDIを157.3g滴下し混合して3時間反応させ、カルボキシル基含有のウレタンプレポリマーを得、アンモニアガスをゆっくりバブリングしながら加え、イソシアネート残基を封鎖し、同時にカルボキシル基の中和を行い、得た固形分25重量%水分散型ポリウレタン樹脂(PU5)である、試作例5のガスバリア性樹脂組成物。」
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1
引用発明6の「BHEI(ビス(ヒドロキシエチル)イソフタル酸)」「水素添加MDI(メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート))」は、それぞれ本件発明1の「オルト配向性多価カルボン酸又はメタ配向性多価カルボン酸を必須として含有する酸成分とポリオール成分との反応物であるポリオール(A)」「イソシアネート化合物(B)」に相当し、引用文献6の【0134】には、「各試作例のガスバリア性樹脂組成物について、それぞれを基材フィルムの一面側に積層(塗布)した。」と記載されていることから、引用発明6の「ガスバリア性樹脂組成物」は面状に塗布されることから、本件発明1の「ガスバリアコーティング剤」に相当する。
そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「オルト配向性多価カルボン酸又はメタ配向性多価カルボン酸を必須として含有する酸成分とポリオール成分との反応物であるポリオール(A)と、イソシアネート化合物(B)と、を含有することを特徴とするガスバリアコーティング剤。」
<相違点6-1>
本件発明1では「イソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールである化合物(C)を含有すること」が記載されているが、引用発明6ではそのように特定されていない点。
相違点6-1について検討する。
引用文献6には、上記化合物(C)について記載も示唆もないし、引用文献7や甲1においても相違点1の化合物(C)について記載も示唆もない。
したがって、本件発明1は、引用文献6に記載された発明であるとはいえないし、引用発明6、引用文献6、7、甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたとはいえない。
(イ) 本件発明2~12について
本件発明2~12は、本件発明1を直接的または間接的に引用した発明に該当するから、同様に引用文献6に記載された発明であるとはいえないし、引用発明6、引用文献6、7、甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたとはいえない。
(3) 小括
以上のとおりであるから、取消理由1,2によって、本件発明1~12に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
5 取消理由3について
取消理由3は上記第4 1に記載したとおり、本件発明1~12において、本件発明の詳細な説明中に課題が達成されることが開示されているイソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、1,4-シクロヘキサンジメタノール以外の化合物(C)について、技術常識を参酌しても課題が達成されるとはいえないから、本件発明は詳細な説明に記載された発明ではない、というものである。
この点に関し、本件訂正により、化合物(C)について「イソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールである化合物(C)」と訂正された。これにより、上記の取消理由は解消された。
よって、取消理由3によっても、本件発明1~12に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由ア-1~ア-3(進歩性)について
(1)申立理由ア-1について
申立人は、本件発明のうち化合物(C)がイソソルビドである発明において、甲1を主引用例とし、甲2、3を組み合わせて進歩性欠如を主張している(申立書31頁~33頁)。
ア 甲1、2、3に記載されている事項
(ア)甲1には、前記第4の3(1)のとおりの記載がある。
(イ)甲2には次の記載がある。
「【請求項1】
酸素吸収剤粉末と結合剤からなり、前記結合剤が繊維状樹脂および有機バインダーを含むことを特徴とする酸素吸収剤成形体。」
「【0001】
本発明は酸素吸収剤に関する。
なお、本明細書において「酸素吸収剤」とは、酸素を化学反応により吸収する酸素吸収成分を含む常温で固体または液体の酸素吸収組成物である。「酸素吸収剤粉末」とは、常温で固体である酸素吸収成分を含む粉末状の酸素吸収組成物、及び、常温で固体または液体である酸素吸収成分を含む酸素吸収組成物を担体粉末に担持または含浸させた粉末状の酸素吸収組成物を意味する。また「脱酸素剤」は、酸素吸収剤の包装体を意味する。また「結合剤」とは、粉末同士を物理的又は化学的な力、又は両者で結合させ、成形し易くするために添加される物質を意味する。」
「【0020】
本発明で用いられる酸素吸収剤粉末はまた、アスコルビン酸およびその塩、多価アルコール、還元糖、不飽和脂肪酸化合物、不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物から選ばれる少なくとも一種の酸素吸収剤が担体粉末に担持または含浸されたものを酸化反応主剤とすることができる。本発明の酸素吸収剤成形体は、著しい加熱を必要としないで製造できるため、従来の酸素吸収剤粉末と溶融状態の樹脂との混練により製造される成形体とは異なり、耐熱性の低い化合物を酸化反応主剤に用いた酸素吸収剤を使用することができる。
・・・
【0026】
繊維状樹脂(単に、樹脂と記載することがある)としては、酸素吸収剤成形体(単に、成形体と記載することがある)の製造に供する前から繊維状の樹脂を用いることもできるが、剪断力を与えることにより繊維状になる樹脂が、酸素吸収剤粉末と樹脂粉末の混練過程で樹脂が繊維化し、酸素吸収剤粉末を絡めて粉末同士を結合し、成形体を与えるため好ましい。このような樹脂の例としてはフッ素樹脂が挙げられ、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等が例示され、好ましくは、PTFEである。特に、乳化重合で作られた平均粒子径0.1~1μmのPTFEファインパウダーは、20℃以上、樹脂の融点未満の温度では小さな剪断力により容易に分子鎖の折りたたみが解け、柔らかく、よく塑性変形する繊維状となる性質があり好適である。なお、ここで言う繊維とは、断面積の形状(円形、楕円形、不定形等)を問わず、総じて細長い糸状の形態を有している物を意味する。また、直径とは繊維の断面の周囲上の最も離れた二点間の距離を意味する。」
(ウ)甲3には次の記載がある。
「【請求項1】
下記式1で表される繰り返し単位1;下記式2で表される繰り返し単位2および下記式3で表される繰り返し単位3からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、ASTM D6866に従ったバイオマス由来のバイオベース炭素含有量が80%以上である高バイオベースポリカーボネートエステル。
[図:0001425758000007.jpg]
」
「【0086】 1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール 1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソマンニド、イソソルビド、またはイソイジドであり得る。具体的には、イソソルビドであってもよい。
【0087】 一方、このようにして製造された高バイオベースポリカーボネートエステルの耐熱性、透 明性、機械的特性を向上させるためには、溶融重縮合に用いられる1,4:3,6-ジア ンヒドロヘキシトールの高純度を維持することが非常に重要である。1,4:3,6-ジ アンヒドロヘキシトールは、粉末、フレークまたは水溶液の形態で使用することができる 。しかし、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを長時間空気に曝すと、容易に酸化されて変色し、最終ポリマーの色および分子量が十分でないという問題が生じる。 したがって、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの空気への暴露を最小限にする必要がある。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを空気に曝露した後、脱酸素剤などの脱酸素剤と共に貯蔵することが好ましい。」
イ 対比・判断
甲1に記載の発明(引用発明1)は前記第4の4(1)アのとおりのものであり、本件発明1との相違点は次のものである。
<相違点1>
本件発明1では「イソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールである化合物(C)」を含有すること」が記載されているが、引用発明1ではそのように特定されていない点。
相違点1について検討する。
甲1にはビタミンC等の酸素捕捉機能を有する化合物を含有することが記載されている。しかしながら、甲1、甲2にはイソソルビドについて記載されていないし、ましてイソソルビドが酸素捕捉機能を有する化合物であることについて記載も示唆もない。また甲3には1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの一種としてイソソルビドが記載されているが、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールが酸素捕捉機能を有する化合物であることについて記載も示唆もない。
してみれば、甲1発明において、甲1、2、3の記載事項に基づいてイソソルビドを含有することは当業者が容易になしうるとはいえない。
ウ 本件発明2~12について
本件発明2~12は、本件発明1を直接的または間接的に引用した発明に該当するから、同様に甲1発明及び甲1~3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたとはいえない。
エ 申立人の主張
申立人は「甲2において、「酸素吸収剤」とは、酸素を化学反応により吸収する酸素吸収成分を含む常温で固体または液体の酸素吸収組成物と定義され、さらに、0036段落には、酸素吸収剤の例として、アスコルビン酸およびその塩、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール、グルコース、フルクトース、ソルビトール、キシロース等の還元糖、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、没食子酸、ピロガロールおよびトコフェロールなどのフェノール化合物、不飽和脂肪酸化合物、不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物から選ばれる少なくとも一種の酸素吸収剤が記載されています。そして、これらの化合物の性質は、甲1に記載の酸素捕捉機能を有する化合物としての、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物と共通します。さらに、甲3の記載によれば、イソマンニド、イソソルビド、またはイソイジド等の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを長時間空気に曝すと、容易に酸化されて変色すること、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを空気に曝露した後、脱酸素剤などの脱酸素剤と共に貯蔵することが好ましいことが公知であり、このような酸化されやすい性質は、上記甲1及び甲2に記載の上記の化合物と共通する性質(酸素を化学反応により吸収する性質)です。さらに、この酸化反応は甲2に記載の「酸素吸収剤」である酸素を化学反応により吸収する性質と共通します。よって、甲2(当審注:甲3の誤記)に記載の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(イソソルビドを含む)の性質は、イソソルビドが、甲1に記載の酸素捕捉機能を有する化合物として使用できることを示唆します。」と主張している。
しかしながら、甲2、3の記載から、ビタミンC等の酸素吸収剤が酸素を化学反応により吸収することが知られていたとしても、酸化されやすい性質を持つ化合物全てが酸素吸収剤として用いられることが技術常識であったとまではいえるものではないから、甲3に記載されているようにイソソルビドが酸素と容易に酸化されて変色することが知られていたとしても、直ちにイソソルビドが酸素吸収剤として用いることが自明であったとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(2)申立理由ア-2について
申立人は、本件発明において、甲4を主引用例とし進歩性欠如を主張している(申立書33頁~34頁)。
ア 甲4には次の記載がある。
「【請求項1】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと、鎖伸長剤との反応により得られる水性ポリウレタン樹脂が、水分散されてなるポリウレタンディスパージョンであって、
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーが、密着性を付与するための密着性ウレタンプレポリマーと、ガスバリア性を付与するためのガスバリア性ウレタンプレポリマーとを含むことを特徴とする、ポリウレタンディスパージョン。
【請求項2】
前記密着性ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、高分子量ポリオールを含むポリオール成分との反応により得られ、
前記ガスバリア性ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、高分子量ポリオールを含まず、低分子量ポリオールを含むポリオール成分との反応により得られていることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンディスパージョン。
【請求項3】
前記水性ポリウレタン樹脂が、前記密着性ウレタンプレポリマーおよび前記ガスバリア性ウレタンプレポリマーの混合物と、鎖伸長剤との反応により得られる密着性-ガスバリア性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンディスパージョン。
・・・
【請求項5】
前記密着性ウレタンプレポリマーを得るための前記ポリオール成分が、ポリエステルポリオール、および、ポリヒドロキシアルカン酸を含むことを特徴とする、請求項2に記載のポリウレタンディスパージョン。
・・・
【請求項8】
前記ポリエステルポリオールが、多塩基酸と、多価アルコールとの反応により得られ、
前記多塩基酸が、テレフタル酸、イソフタル酸およびオルソフタル酸からなる群から選択される少なくとも1種の多塩基酸であることを特徴とする、請求項5に記載のポリウレタンディスパージョン。」
「【0005】
しかし、ガスバリアフィルムに用いられるアンカーコート剤は、基材フィルムと蒸着膜との密着性を向上させるものの、ガスバリア性が十分ではなく、そのため、密着性とガスバリア性とをバランスよく兼ね備えるアンカーコート剤の開発が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、密着性とガスバリア性とをバランスよく兼ね備えるポリウレタンディスパージョンおよびその製造方法を提供することにある。」
「【0016】
本発明のポリウレタンディスパージョンは、密着性とガスバリア性とを兼ね備え、ガスバリア性積層フィルムにおいて、ポリエステルフィルムなどの熱可塑性樹脂からなるフィルムの少なくとも片面に無機蒸着膜を積層および貼着するためのアンカーコート剤として好適に用いられる。」
「【0022】
また、密着性ウレタンプレポリマーの合成に用いられるポリオール成分と、ガスバリア性ウレタンプレポリマーの合成に用いられるポリオール成分とを区別する場合には、密着性ウレタンプレポリマーの合成に用いられるポリオール成分を、密着性ポリオール成分とし、ガスバリア性ウレタンプレポリマーの合成に用いられるポリオール成分を、ガスバリア性ポリオール成分(後述)とする。
【0023】
密着性ポリイソシアネート成分としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
・・・
【0031】
密着性ポリオール成分としては、例えば、高分子量ポリオール(以下、マクロポリオールとする。)、低分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0032】
マクロポリオールは、数平均分子量400~10000のポリオールであって、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。
【0033】
ポリエステルポリオールは、公知のエステル化反応、すなわち、多塩基酸と多価アルコールとの縮合反応や、多塩基酸のアルキルエステルと多価アルコールとのエステル交換反応などにより、得ることができる。
【0034】
多塩基酸またはそのアルキルエステルとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸など、またはこれらのジアルキルエステル(例えば、炭素数1-6アルキルエステルなど)もしくはこれらの酸無水物、またはこれらの混合物などが挙げられる。」
「【0068】
ガスバリア性ウレタンプレポリマーは、本発明のポリウレタンディスパージョンに、ガスバリア性を付与するためのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーであって、ガスバリア性ポリイソシアネート成分と、ガスバリア性ポリオール成分とを、ガスバリア性ポリイソシアネート成分のイソシアネート基が、ガスバリア性ポリオール成分の水酸基に対して過剰となる割合で反応させることにより得ることができる。
これらガスバリア性ポリオール成分は、単独または2種以上併用することができる。」
「【0074】
ガスバリア性ポリオール成分として、好ましくは、低分子量ポリオールが挙げられ、より好ましくは、炭素数2~6のアルカンポリオールおよび/または炭素数2~6のポリオキシアルキレングリコールと、ポリヒドロキシアルカン酸との併用が挙げられる。
【0075】
具体的には、炭素数2~6のアルカンポリオールとして、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。」
「【0087】
以下において、まず、密着性ウレタンプレポリマーおよびガスバリア性ウレタンプレポリマーの混合物と、鎖伸長剤とを反応させる方法について説明する。
・・・
【0092】
次いで、この方法では、密着性ウレタンプレポリマーおよびガスバリア性ウレタンプレポリマーを含む水分散液に、鎖伸長剤を配合し、鎖伸長反応させる。
【0093】
本発明において、鎖伸長剤としては、例えば、低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン、アミノアルコール類、ヒドラジンおよびその誘導体などが挙げられる。
【0094】
低分子量ポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールが挙げられる。」
「【0177】
[表1]
[図:0001425758000008.jpg]
【0178】
なお、表1中の略号および製品名を下記に示す。
【0179】
H12MDI:4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
H6XDI:1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)
IPDI:3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)
XDI:1,3-キシリレンジイソシアネート
エステルA:ポリエステルポリオール((テレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸=1/1/1(モル比))/(エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=1/1(モル比))、数平均分子量:3000)
エステルB:ポリエステルポリオール((イソフタル酸/セバシン酸=1/1(モル比))/(エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=1/3(モル比))、数平均分子量2500)
エステルC:ポリエステルポリオール(アジピン酸/(ネオペンチルグリコール/1,6-ヘキサンジオール=2/1(モル比))、数平均分子量2000)
PTG2000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:2000)
PC2000:ポリカーボネートグリコール(数平均分子量:2000)
EG:エチレングリコール
DEG:ジエチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
TEA:トリエチルアミン
MET:メチルエチルケトン
スタノクト:オクチル酸第1スズ
また、表1中、NCO基含有率は、JISK1556(2006)に準拠して測定した。
【0180】
3)ポリウレタンディスパージョンの調製
調製例1(ガスバリア性樹脂の水分散液)
イオン交換水700重量部に、合成例6により得られたガスバリア性ウレタンプレポリマー415.6重量部を配合し、ホモディスパー(プライミクス社製)にて5分間撹拌し、水分散させた。
【0181】
次いで、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン29.9重量部を添加して鎖伸長反応を行い、その後、メチルエチルケトンを留去し、ガスバリア性樹脂の水分散液(pH8.2、固形分30重量%、平均粒子径65nm、ウレタン・ウレア基濃度40.8重量%、樹脂酸価24.0mgKOH/g)として、ポリウレタンディスパージョンを調製した。
・・・
【0188】
調製例4~7(密着性-ガスバリア性樹脂の水分散液)
表2に示す配合処方にて反応させた以外は、調製例3と同様の方法により、調製例4~7のポリウレタンディスパージョンを調製した。
【0189】調整例1~7の配合処方を表2に示す。
【0190】
[表2]
[図:0001425758000009.jpg]
【0191】
4)アンカーコート剤の調製
実施例1
調製例1および調製例2のポリウレタンディスパージョンを、調製例2のポリウレタンディスパージョンの固形分に対する、調製例1のポリウレタンディスパージョンの固形分の重量比が3となるように配合し、次いで、水性ポリウレタン樹脂の固形分が5重量%となるようにイオン交換水に配合し、アンカーコート剤(AC1)を調製した。
【0192】
実施例2~6、および、比較例1~2
表3に示す配合処方でアンカーコート剤を調製した以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2~6、および、比較例1~2のアンカーコート剤を製造した。
【0193】
実施例1~6および比較例1~2のアンカーコート剤の配合処方を表3に示す。
【0194】
【表3】
[図:0001425758000010.jpg]
」
イ 甲4に記載されている発明
甲4の請求項1の記載、表1の合成例1及び合成例6を用いた表2の調整例3を参考にし、表3の実施例2に基づいて認定すると、甲4には次の発明(甲4発明)が記載されている。
(甲4発明)
「密着性ウレタンプレポリマー[4,4‘-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート93.4重量部,ポリエステルポリオール(テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールからなる)190.7重量部、ジエチレングリコール3.4重量部、ジメチロールプロピオン酸21.3重量部を重合反応させたもの]149.2部、ガスバリア性ウレタンプレポリマー[1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン82.3重量部、1,3-キシリレンジイソシアネート159.6重量部、エチレングリコール46.7重量部、ジメチロールプロピオン酸20.7重量部を反応させたもの]277.0重量部、及び鎖伸張剤(N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)22.9重量部から得られる密着性-ガスバリア性樹脂のディスパージョンからなるアンカーコート剤」
ウ 対比・判断
甲4発明と本件発明1との対比は次のとおりである。
甲4発明のガスバリア性ウレタンプレポリマーの成分である「1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン82.3重量部、1,3-キシリレンジイソシアネート159.6重量部」は、本件発明1の「イソシアネート化合物(B)」に相当し、甲4発明の密着性ウレタンプレポリマーの成分である「ポリエステルポリオール(テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールからなる)190.7重量部」は本件発明1の「オルト配向性多価カルボン酸又はメタ配向性多価カルボン酸を必須として含有する酸成分とポリオール成分との反応物であるポリオール(A)」に相当するし、甲4発明のアンカーコート剤はガスバリア性樹脂を含むことから、本件発明1の「ガスバリアコーティング剤」に相当する。
そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「オルト配向性多価カルボン酸又はメタ配向性多価カルボン酸を必須として含有する酸成分とポリオール成分との反応物であるポリオール(A)と、イソシアネート化合物(B)と、を含有することを特徴とするガスバリアコーティング剤。」
<相違点4>
本件発明1では「イソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールである化合物(C)」を含有すること」が記載されているが、甲4発明ではそのように特定されていない点。
相違点4ついて検討する。
甲4には、上記化合物をさらに含有することについて記載も示唆もないから、本件発明1は、甲4発明、甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたとはいえない。
エ 本件発明2~12について
本件発明2~12は、本件発明1を直接的または間接的に引用した発明に該当するから、同様に甲4発明、甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたとはいえない。
オ 申立人の主張
申立人は甲4には訂正前の化合物(C)が記載されている旨主張しているが、訂正後の化合物(C)については何ら主張していないので、申立人の主張は採用できない。
(3)申立理由ア-3について
申立人は、本件発明において、甲5を主引用例とし進歩性欠如を主張している(申立書33頁~34頁)。
ア 甲5には次の記載がある。
「【請求項1】
ポリイソシアネート化合物(A1)を含むポリイソシアネート組成物(A)と、
ポリエステルポリオール(B1)を含むポリオール組成物(B)と、を含み、
前記ポリエステルポリオール(B1)が多価カルボン酸と多価アルコールとを含むモノマー組成物の反応生成物であり、前記多価カルボン酸がテトラマー酸を含み、前記モノマー組成物に占める前記テトラマー酸の配合量が0.1質量%以上4.0質量%以下であることを特徴とする接着剤。
・・・
【請求項6】
第一の基材と、
第二の基材と、
前記第一の基材と前記第二の基材とを貼り合わせる接着層と、を有し、
前記接着層が請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤の硬化物である積層体。
・・・
【請求項8】
前記第一の基材がバリア層である請求項6に記載の積層体。」
「【0006】
また日用品においても、近年は消費者の嗜好の変化に伴い香りの強い製品、即ち従来よりも香料の含有量が多い製品も多くなっており、より耐内容物性に優れた接着剤が求められている。
本発明はこのような事情に鑑み為されたものであって、耐レトルト性、耐内容物性に優れたラミネート用接着剤を提供することを目的とする。
・・・
【0011】
(ポリオール組成物(A))
本発明の接着剤に用いられるポリオール組成物(A)は、ポリエステルポリオール(A1)を含む。ポリエステルポリオール(A1)は多価カルボン酸と多価アルコールとを含むモノマー組成物の反応生成物であり、多価カルボン酸は必須の成分としてテトラマー酸を含む。
・・・
【0015】
ポリエステルポリオール(A1)の調整に用いるテトラマー酸以外の多価カルボン酸としては、マロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、無水コハク酸、アルケニル無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ダイマー酸、トリマー酸等の脂肪族多価カルボン酸;
・・・
【0018】
オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、ナフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の芳香族多価カルボン酸;」
「【0031】
ポリエステルポリオール(A1)は上述した多価カルボン酸と多価アルコールに加え、ポリイソシアネートを必須の原料とするポリエステルポリウレタンポリオール(A1’)であってもよい。あるいはポリエステルポリオール(A1)はポリエステルポリオール(A1)とポリエステルポリウレタンポリオール(A1’)の混合物であってもよい。 ポリエステルポリウレタンポリオール(A1’)の調整に用いるポリイソシアネートは、後述するポリイソシアネート化合物(B1)として例示するものと同様のものを、単独で、または複数を組み合わせて用いることができる。
・・・
【0038】
(ポリイソシアネート組成物(B))
ポリイソシアネート組成物(B)は、ポリイソシアネート化合物(B1)を含む。ポリイソシアネート化合物(B1)は特に制限なく公知のもの用いることができる。このようなポリイソシアネート化合物(B1)としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の分子構造内に芳香族構造を持つポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートのNCO基の一部をカルボジイミドで変性した化合物;
・・・
【0042】
ポリイソシアネート化合物(B1)としてポリウレタンポリイソシアネートを用いる場合、接着剤塗膜の凝集力と柔軟性のバランスの点から、上述したポリイソシアネートとポリオールとを、イソシアネート基と水酸基との当量比[NCO]/[OH]が1.5~5.0となる割合で反応させて得られるものが好ましい。
【0043】
ポリウレタンポリイソシアネートの調整に用いるポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の鎖状脂肪族グリコール;
【0044】
1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール;
グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;
ビスフェノールA、ビスフェノールF、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF等のビスフェノール;
ダイマージオール;」
「【実施例】
【0106】
以下、本発明を具体的な合成例、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
【0107】
<ポリオールの合成>
(合成例1)
撹拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、エチレングリコール:6.4部、ネオペンチルグリコール:22.3部、1,6-ヘキサンジオール:9.9部、イソフタル酸:17.3部、テレフタル酸:21.3部、アジピン酸:11.9部、モノマー酸:0.2部、ダイマー酸:6.4部、トリマー酸:1.3部、テトラマー酸:0.2部とチタニウムテトライソプロポキシド10ppmを仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を260℃に保持した。酸価が規定値を下回った後さらに1時間反応を続けた。30mmHgに減圧し、3時間保持して固形分酸価が0.6mgKOH/g、水酸基価が10mgKOH/gの中間体ポリエステルポリオールを得た。収率は85%であった。
【0108】
得られた中間体ポリエステルポリオール100質量部に対しイソホロンジイソシアネート:3.6質量部を加え、50~90℃に加熱して遊離のNCO基が実質的になくなるまでウレタン化反応を行い、水酸基価が10mgKOH/gのポリエステルポリウレタンポリオールを得た。これを酢酸エチルで希釈し、ポリエステルポリウレタンポリオール(固形分)に対しジブチル錫ジラウレートが200ppmになるよう添加して、ポリエステルポリウレタンポリオールの固形分が60%のポリオールA-1を得た。
・・・
【0124】
<接着剤の調製>
(実施例1)
ポリオールA-1、ポリイソシアネートB-1(三井化学社製、タケネートD-110N(NB)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発分75%)を表3に示す配合で用いて実施例1の接着剤を調製した。
・・・
【0126】
<積層体の製造>
(積層体1の製造)
実施例、比較例の接着剤をそれぞれ、バーコーターを用いて塗布量3.5g/m2(固形分)となるよう厚さ25μmのPETフィルムに塗布し、温度70度に設定したドライヤーで酢酸エチルを揮発させ乾燥した。次に接着剤と厚さ30μmのアルミニウム箔と貼り合わせた。40℃で3日間のエージングを行い、積層体1を得た。
・・・
【0128】
(積層体3の製造)
実施例、比較例の接着剤をそれぞれ、バーコーターを用いて塗布量3.5g/m2(固形分)となるよう厚さ12μmのPETフィルムに塗布し、温度70度に設定したドライヤーで酢酸エチルを揮発させ乾燥した。次に接着剤と厚さ9μmのアルミニウム箔とを貼り合わせた。
続いて積層体のアルミニウム箔面に塗布量3.5g/m2(固形分)となるよう実施例または比較例の接着剤を塗布し、温度70度に設定したドライヤーで酢酸エチルを揮発させ乾燥した、接着剤と厚さ60μmのLLDPEフィルムを貼り合わせた。40℃で3日間のエージングを行い、積層体3を得た。
【0129】
<評価>
・・・
【0130】
(耐レトルト性)
積層体2からの試験片を切り出し、CPPフィルムが内側を向くようにして折り畳み、幅10mmで折山以外の三辺をヒートシールした。次いでヒートシール端部の任意の箇所に1.5mmの切り込み(ノッチ)を設け、テストピースを作成した。同様にして作成した20個のテストピースを、シャワー式レトルト殺菌装置(日阪製作所製、フレーバーエース)の熱水シャワーノズル付近に各テストピースのノッチが位置するよう設置し、135℃、30分の条件でレトルト処理を行った。レトルト後のテストピースの状態を以下のようにして評価し、表3、4にまとめた。
5:長径が3mm以下の剥離が3個未満
4:長径が3mm以下の剥離が3個以上5個未満
3:長径が3mm以下の剥離が5個以上10個未満
2:長径が3mm以下の剥離が10個以上か、3mmを超える剥離が5個未満
1:長径が3mmを超える剥離が5個以上
【0131】
(耐内容物性)
積層体3を用い、LLDPEフィルムが内側を向くようにして折り畳み、ヒートシール後の内容物との接触面積が200cm2になるようパウチを作成した。d-リモネン(東京化成工業製):20mlを充填した後ヒートシールして密閉し、40℃で1週間静置した。室温に戻したパウチのアルミニウム箔とLLDPEフィルム間の状態を以下のようにして評価し、表3、4にまとめた。
5:剥離なし
4:折山付近のみに10mm未満(長辺)の剥離が観察された
3:折山付近のみに10mm以上(長辺)の剥離が観察された
2:パウチの半分程度に剥離が観察された
1:パウチの全面に剥離が観察された
【0132】
【表3】
[図:0001425758000011.jpg]
」
イ 甲5に記載されている発明
甲5の請求項1の記載、合成例1の記載参考にし、表3の実施例1に基づいて認定すると、甲5には次の発明(甲5発明)が記載されている。
(甲5発明)
「下記ポリオールA-1、ポリイソシアネートB-1(三井化学社製、タケネートD-110N(NB)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発分75%)を12:1の重量比で配合した接着剤。
ポリオールA-1:エチレングリコール:6.4部、ネオペンチルグリコール:22.3部、1,6-ヘキサンジオール:9.9部、イソフタル酸:17.3部、テレフタル酸:21.3部、アジピン酸:11.9部、モノマー酸:0.2部、ダイマー酸:6.4部、トリマー酸:1.3部、テトラマー酸を反応させて中間ポリエステルポリオールを得、得られた中間体ポリエステルポリオール100質量部に対しイソホロンジイソシアネート:3.6質量部を加え、50~90℃に加熱して遊離のNCO基が実質的になくなるまでウレタン化反応を行って得たポリエステルポリウレタンポリオール。」
ウ 対比・判断
甲5発明と本件発明1との対比は次のとおりである。
甲5発明の「ポリオールA-1」は、イソフタル酸を成分として含み、ネオペンチルグリコール等のポリオール成分を含んでいることから、本件発明1の「オルト配向性多価カルボン酸又はメタ配向性多価カルボン酸を必須として含有する酸成分とポリオール成分との反応物であるポリオール(A)」に相当し、甲5発明の「ポリイソシアネートB-1」は本件発明1の「イソシアネート化合物(B)」に相当する。
また、甲5発明の「接着剤」は塗布(コーティング)する剤の一種であるから、本件発明1の「コーティング剤」に相当する。
そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「オルト配向性多価カルボン酸又はメタ配向性多価カルボン酸を必須として含有する酸成分とポリオール成分との反応物であるポリオール(A)と、イソシアネート化合物(B)と、を含有することを特徴とするコーティング剤。」
<相違点5-1>
本件発明1ではコーティング剤が「ガスバリアコーティング剤」であるのに対し、甲5発明では「接着剤」が「ガスバリア接着剤」であることについて明示されていない点。
<相違点5-2>
本件発明1では「イソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールである化合物(C)を含有すること」が記載されているが、甲5発明ではそのように特定されていない点。
相違点5-1について検討する。
甲5には、「ガスバリア」について請求項8に「第一の基材がバリア層である。」と記載されているのみであり、請求項1に係る「接着剤」が「ガスバリア接着剤」であることについては記載も示唆もない。しかも甲5の実施例(表3参照)で評価されているのは、接着剤を用いて第1基材と第二基材を貼り合わせた積層体の「耐熱性」「耐レトルト性」「耐内容物性」のみであり、「耐レトルト性」は【0130】に記載されているように、接着剤を用いて製造した積層体がレトルト後に剥離しているか否かを評価したものであり、「耐内容物性」は接着剤を用いて製造した積層体が内容物(d-リモネン)と接触することにより剥離が生じないか否かを評価しているものであるから、いずれも「ガスバリア」と無関係である。
したがって、甲5には、「ガスバリア接着剤」について記載も示唆もないから、甲5発明の「接着剤」を「ガスバリア接着剤」にすることは当業者が容易に想到しうるものではない。
以上のとおりであるから、相違点5-2を判断するまでもなく、本件発明1は、甲5発明、甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたとはいえない。
エ 本件発明2~12について
本件発明2~12は、本件発明1を直接的または間接的に引用した発明に該当するから、同様に甲5発明、甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたとはいえない。
オ 申立人の主張
申立人は「甲5には、接着剤がガスバリア性を有することは記載されていませんが、接着剤の効果として、香りが強い内容物を包装するために、耐内容物性に優れる効果を有する旨が記載されています。香りの元になる香気成分は気化した時点でガスの1種であり、この香気成分に対する耐性は、いわゆるガスバリア性に包含される性質の一つといえます。そのため甲5に記載の接着剤からなる層は、いわゆるガスバリア性を有する点において、実質的に本発明と同様の性質を有します。」と主張している。
しかしながら、甲5に記載の「耐内容物性に優れる効果」というのは、前記ウにおいて記載したとおり内容物が透過するか否かではなく、内容物と基材が接触することによりもう一方の基材との間において「剥離」が生じるか否かであるので、接着剤の「ガスバリア」とは無関係であるし、甲5の請求項6には、「第一の基材と、第二の基材と、前記第一の基材と前記第二の基材とを貼り合わせる接着層・・・積層体」について、「第一の基材がバリア層である。」(請求項8)と記載されているのであるから、バリア層である第一の基材と第二の基材とを貼り合わせる接着剤においても、ガスバリア接着剤にしようとすることは自明であるとはいえない。
以上のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。
2 申立理由イ(サポート要件)について
(1)申立理由イについて
申立理由イは、訂正前の化合物(C)について「溶解度パラメータが29.5以下である水酸基を有する化合物(C)」と規定されているが、実施例では最も小さい溶解度パラメータでも24.8に留まる例が示されるに過ぎず、この例を基にして、より小さい溶解度パラメータでも本発明の効果を発揮できることが認識できる具体的理由は明細書に記載されていないというものである(申立書36頁)。
しかしながら、前記第3でも述べたとおり、本件訂正後の化合物(C)は「イソソルビド、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノール」という特定の化合物であり、本件発明の詳細な説明(段落【0005】)の「パッケージのモノマテリアル化に寄与し、オレフィン系基材への密着性に優れ、且つナイロンやポリエステルが不使用であっても、オレフィン系基材にコーティングした積層体が湿度90%以上の環境下で良好なガスバリア性を示す、ガスバリアコーティング剤、当該コーティング剤を用いて得られる積層体、包装材を提供する」という本件発明の課題を解決することは、実施例の記載から明らかである。
したがって、溶解度パラメータに関する申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
前記第4及び第5のとおり、本件特許の請求項1~12に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。さらに、他に本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700965