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特許異議申立

2025-700921

化粧材及び該表面保護層形成用樹脂組成物

審判番号
2025-700921
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-512104
登録番号
7655222
請求日
2025年09月26日
審決日
2026年06月29日
公報発行日
2026年07月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】大日本印刷株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
  • 【異議申立人】天野 麻美
審判長/審判官
  • 審判長 有家 秀郎
  • 審判官 家田 政明
  • 審判官 土屋 真理子
分類
P1651.121-Y (B32B) / P1651.536-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第113条、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7655222号発明「化粧材及び該表面保護層形成用樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7655222号の請求項1~11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7655222号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)3月30日を国際出願日とする日本語特許出願(優先権主張 平成31年3月29日、令和元年9月30日)であって、令和7年3月25日にその特許権の設定登録がされ、同年4月2日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和7年 9月26日 :特許異議申立人 天野 麻美(以下「申立人 」という。)による請求項1~11に係る特 許に対する特許異議の申立て 同年11月 7日 :手続補正書(方式)の提出 (特許異議申立書の補正) 同月14日 :手続補正書(方式)の提出 (特許異議申立書の補正) 同年12月 9日付け:取消理由通知書 令和8年 2月 6日 :特許権者による意見書の提出 同年 4月17日付け:審尋(申立人) 同年 6月 4日 :申立人による回答書の提出 第2 本件発明 本件特許の請求項1~11の特許に係る発明(以下、請求項番号により「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 基材及び最表面に表面保護層を少なくとも有する化粧材であって、 該表面保護層が紫外線吸収剤を含有し、 該表面保護層を形成する樹脂100質量部に対する該紫外線吸収剤の含有量が1質量部以上10質量部以下であり、 該紫外線吸収剤の全量に対する、下記方法により測定された融点90℃以上の下記一般式(1)で示される紫外線吸収剤の含有量が45質量%以上であり、該表面保護層を形成する樹脂を含む樹脂組成物が、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が500以上80,000以下である(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、 化粧材。 【化1】 [図:0001437402000001.jpg] 一般式(1)中、R11は2価の有機基又は単結合であり、R12は1価の有機基、-C(=O)OR15で示されるエステル基、-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基又は-O-R17で示されるオルガニルオキシ基であり、R13、R14、R15、R16及びR17は各々独立して水素原子又は1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して1~5の整数である。また、R13及びR14が複数ある場合、同じでも異なっていてもよい。 (融点の測定方法) 紫外線吸収剤をガラス製の容器内にいれて、オーブン内に静置し、オーブンを1時間所定の温度とした際に液状化がはじまった場合の、当該所定の温度を融点とした。 【請求項2】 前記表面保護層に含まれる紫外線吸収剤が、全てヒドロキシフェニルトリアジン構造を有するものである請求項1に記載の化粧材。 【請求項3】 前記表面保護層が、硬化性樹脂及び紫外線吸収剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物である請求項1又は2に記載の化粧材。 【請求項4】 前記表面保護層が、更に光安定剤を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧材。 【請求項5】 前記基材と前記表面保護層との間に、基材側から更に装飾層、接着剤層A、樹脂層及びプライマー層を順に有する請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧材。 【請求項6】 JIS Z0208:1976に規定される防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準拠して測定された透湿度が0.75g/m2・24h以上45g/m2・24h以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化粧材。 【請求項7】 更に、前記基材の前記表面保護層を有する面とは反対側の面に、接着剤層Bを介して被着体を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の化粧材。 【請求項8】 前記接着剤層Bが、ウレタン系接着剤で構成される請求項7に記載の化粧材。 【請求項9】 前記ウレタン系接着剤が、湿気硬化型接着剤である請求項8に記載の化粧材。 【請求項10】 前記被着体が、金属部材又は樹脂部材である請求項7~9のいずれか1項に記載の化粧材。 【請求項11】 表面保護層を構成する樹脂と下記方法により測定された融点90℃以上の下記一般式(1)で示される紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤とを含み、該樹脂100質量部に対する該紫外線吸収剤の含有量が1質量部以上10質量部以下であり、該紫外線吸収剤の全量に対する該融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が45質量%以上であり、該表面保護層を形成する樹脂を含む樹脂組成物が、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が500以上80,000以下である(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、表面保護層形成用樹脂組成物。 【化2】 [図:0001437402000002.jpg] 一般式(1)中、R11は2価の有機基又は単結合であり、R12は1価の有機基、-C(=O)OR15で示されるエステル基、-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基又は-O-R17で示されるオルガニルオキシ基であり、R13、R14、R15、R16及びR17は各々独立して水素原子又は1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して1~5の整数である。また、R13及びR14が複数ある場合、同じでも異なっていてもよい。 (融点の測定方法) 紫外線吸収剤をガラス製の容器内にいれて、オーブン内に静置し、オーブンを1時間所定の温度とした際に液状化がはじまった場合の、当該所定の温度を融点とした。 第3 特許異議申立理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立理由の概要 申立人は、令和7年11月7日提出の手続補正書(方式)及び同月14日提出の手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書(以下、単に「申立書」という。)中において、概略以下の申立てをしている。 (1)申立理由1(特許法29条2項) 本件請求項1~8,10,11の各発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、これらの発明に係る特許は特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 本件請求項9の発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、これらの発明に係る特許は特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(特許法36条4項1号) 本件特許の発明の詳細な説明は、本件請求項1~11の各発明について、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないから、これらの発明に係る特許は特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(特許法36条6項1号) 本件請求項1~11の各発明は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないから、これらの発明に係る特許は特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)証拠方法 申立人は、申立理由1に関し、申立書に添付して以下の甲第1~9号証を提出した。 甲第1号証 特開2013-203061号公報 甲第2号証 特開2016-72391号公報 甲第3号証 特開2011-42041号公報 甲第4号証 ダイセル・オルネクス株式会社ホームページ「ウレタンアクリレート -EBECRYL(エベクリル)、KRM- URL:(https://daicel-allnex.com/products/product02.html) 甲第5号証 特開2011-201150号公報 甲第6号証 特開2003-340973号公報 甲第7号証 国際公開第00/34055号 甲第8号証 特開2008-272957号公報 甲第9号証 特開2018-104487号公報 (以下、甲第1号証等を「甲1」等という場合がある。) 2 取消理由通知書において通知した取消理由の概要 当審において令和7年12月9日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 本件特許の請求項1~7、10及び11に係る発明は、甲1発明、甲2、甲3及び甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件特許の請求項8及び9に係る発明は、甲1発明、甲2、甲3、及び甲5に記載された事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件特許の請求項1~11に係る発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 第4 取消理由通知書において通知した取消理由についての当審の判断 1 証拠の記載 (1)甲第1号証(特開2013-203061号公報) ア 甲第1号証の記載 甲第1号証には、以下の記載がある(下線は、当審において付与した。以下同様。)。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、基材及び表面保護層を有する化粧シート、及び、この化粧シートを用いた化粧金属板に関する。 ・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、折り曲げ加工性と、耐候性と、耐火性とをともに向上でき、良好な耐水性を有する化粧シート、及び化粧シートを有する化粧金属板の提供を目的とする。」 (イ)「【発明を実施するための形態】 【0010】 本発明に係る化粧シートは、少なくとも基材及び表面保護層を有する化粧シートであって、該基材と該表面保護層との間にガスバリア層を有し、該基材がポリエステル系フィルムからなり、該基材の厚みが20μm以上95μm以下であり、該表面保護層が電離放射線硬化型樹脂を含む硬化物からなり、該硬化物のJIS K6732に準拠して測定した伸びが1%以上であり、該化粧シートのJIS K6732に準拠して測定した伸びが30%以上180%以下である。硬化物の伸びが1%以上であれば、折り曲げられても、表面の意匠の割れや白化が発生しない。 【0011】 [化粧シート] 本発明の実施形態として示す化粧シート1の典型的な構造について、図1を用いて説明する。図1は、化粧シート1の好ましい態様の一例を説明する断面図である。 化粧シート1は、図1に示すように、基材2、ガスバリア層6、着色インキ層3、プライマー層4、表面保護層5をこの順に有する。 化粧シート1のJIS K6732に準拠して測定した伸びが30%以上180%以下であり、好ましくは、40%以上170%以下である。 化粧シート1の伸びが30%未満であると、剛性が高すぎて、化粧シート1の折り曲げ部分において、基材2或いは表面保護層5にクラックや白化が発生する。化粧シート1の伸びが180%を超えると、基材2は伸び易くなるが、着色インキ層3、プライマー層4、及び表面保護層5が基材2の変形に追従できず、クラックや白化が発生する。 伸びには、化粧シート1の製造時における流れ方向(MD方向という)の伸び、及び流れ方向(MD方向)に交差する方向(CD方向という)の伸びの両方が含まれる。本発明の化粧シート1は、MD方向の伸び及びCD方向の伸びの少なくともいずれか一方が30%以上180%以下を満足することを要し、MD方向の伸び及びCD方向の伸びの両方ともが30%以上180%以下を満足することがより好ましい。 【0012】 [化粧シートの層構造] 図2及び図3は、化粧シートの別の実施態様の一例を説明する断面図である。図2に示すように、化粧シート10は、基材2、着色インキ層3、ガスバリア層6、プライマー層4、表面保護層5をこの順に有していてもよい。 この構成によれば、ガスバリア層6は、基材2と着色インキ層3の両者への水蒸気の透過を防止することができ、ポリエステル系フィルム及び着色インキ層の加水分解の進行を抑制できる。 また、図3に示すように、化粧シート20は、着色インキ層3、基材2、ガスバリア層6、プライマー層4、表面保護層5をこの順に有していてもよい。 この構成によれば、ガスバリア層6と基材2とが隣接するため、基材2への水蒸気の透過を防止できる。基材2の下層側に着色インキ層3が配置されているため、基材2と着色インキ層3との接合性を損なわない。」 (ウ)「【0035】 [表面保護層] 表面保護層5は、電離放射線硬化型樹脂を含む硬化物である。 <電離放射線硬化型樹脂> 電離放射線硬化型樹脂とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有する、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋され硬化する樹脂である。具体的には、従来、電離放射線硬化型樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマー乃至はプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。 代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。 ・・・ 【0037】 重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオール系ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。折り曲げ加工性を高めるという観点から、これらのなかでもウレタン(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオール系ウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。 【0038】 エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。 ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。 ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。 【0039】 カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、カプロラクトン系ポリオールと有機イソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得ることができるものである。カプロラクトン系ポリオールとしては、市販品を使用でき、好ましくは2個の水酸基を有し、数平均分子量が好ましくは500~3000、より好ましくは750~2000のものが挙げられる。また、カプロラクトン系以外のポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどのポリオールを1種又は複数種を任意の割合で混合して使用することもできる。 有機ポリイソシアネートとしては、2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートが好ましく、黄変を抑制する観点から、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが好ましく挙げられる。また、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられる。 ・・・ 【0046】 <添加剤> ・・・ 紫外線吸収剤の含有量は、表面保護層を形成する樹脂分100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは1~5質量部である。また、光安定剤の含有量は、表面保護層を形成する樹脂分100質量部に対して、好ましくは0.05~20質量部、より好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部である。 ・・・」 (エ)「【0053】 [化粧金属板] 化粧シートは、単独で、ラミネート材、ラッピング材として使用することができるほか、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料からなる金属板に貼着されて化粧金属板を構成する。金属材料と化粧シートとを貼着する接着剤又は粘着剤に限定はなく、化粧シートの分野で公知の接着剤又は粘着剤であれば使用できる。 すなわち、化粧金属板は、金属板、該金属板の表面に配置される接着層、及び該接着層を介して該金属板に貼着された化粧シートをこの順に有する。 金属材料は、溶融亜鉛メッキ処理や電気亜鉛メッキ処理などの表面処理が施されていてもよい。また、被着体の形状は特に限定されず、例えば、平板、曲面板、多角柱等の形状であってもよい。金属板の厚さに制限はないが、0.2~2mmであることが好ましい。なお、被着体である金属板に隠蔽性を付与するために、金属板は、直接着色されていてもよいし、色や絵柄などが形成されたコーティング層が設けられていてもよい。 上述した化粧金属板は、例えば、壁、天井等の建築物内装材、構造物や建造物の外装材、扉、扉枠、窓枠等の建具の表面材、回縁、幅木等の造作部材の表面材、箪笥、キャビネット等の家具の表面材などに使用できる。」 (オ)「【実施例】 【0054】 以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されない。 [評価方法] <表面保護層の伸び> 実施例1~9、及び比較例1~8のそれぞれの化粧シートの表面保護層を形成する電離放射線硬化型樹脂の硬化物の伸びをJIS K6732に従って測定した。すなわち、実施例1~9、及び比較例1~8のそれぞれの化粧シートの表面保護層を形成する電離放射線硬化型樹脂の硬化物をJIS K6732-1996 図3「引張切断強さ及び伸び試験片の形状・寸法」に記載された試験片形状の試験用シートに加工した。この試験用シートの伸びを、引張圧縮試験機(オリエンテック株式会社製 テンシロンRTC-1250A)を用い、25℃の温度環境下にて、引張速度50mm/分、チャック間距離100mmの条件で測定した。 ・・・ 【0056】 <透湿度> JIS Z0208に規定された方法に準拠して化粧シートの透湿度を算出し、1日(24時間)あたりの水蒸気透過率が8.0g/m2・24h以下のものを合格とした。 ・・・ 【0058】 <耐候性> 実施例1~9、及び比較例1~8のそれぞれの化粧シートに、耐候性試験装置(岩崎電気株式会社製、「アイスーパーUVテスター」)を用いて、60mW/cm2の照射条件で紫外線を照射し、化粧シートの表面にクラックや白化などの外観変化が生じるまでの時間(hour)を測定した。300時間以上を合格とした。」 (カ)「【0065】 [実施例、比較例] <実施例1> 基材2として、厚さ25μmのフィルムA1を用いた。このフィルムA1の片面に、層形成後の厚みが5μmになるように、ポリ塩化ビニリデンを塗布し、ガスバリア層を形成した。ガスバリア層の上に、着色隠蔽層及び絵柄層を有する着色インキ層を印刷した。この後、絵柄層の上に、硬化後の厚みが3μmになるように、後述する樹脂組成物を塗布し、プライマー層を形成した。続いて、プライマー層の上に、更に、硬化後の厚みが5μmになるように、電離放射線硬化型樹脂B1をグラビアダイレクトコータ法により塗布した。塗工後、加速電圧90kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電離放射線硬化型樹脂B1を硬化させて、表面保護層5を形成した。 (基材) フィルムA1とは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名「E5007」)の表面及び裏面に、着色インキ層を印刷する前に、コロナ放電処理を施したものである。 (プライマー層) プライマー層を形成する樹脂は、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体におけるウレタン成分とアクリル成分の質量比が70/30であるポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を100質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤として、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニル、とオキシラン{[(C10-C16、主としてCl2-C13アルキルオキシ)メチル]オキシラン}との反応生成物(BASF社製、商品名「TINUVIN 400」)を13質量部、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)を17質量部、ヒンダードアミン系光安定剤として、デカンニ酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキン)-4-ピペリジエル)エステル、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(BASF社製、商品名「TINUVIN 123」)を8質量部、及び硬化剤としてヘキサンメチレンジインシアネートを7質量部配合したものである。 (表面保護層) 表面保護層を形成する電離放射線硬化型樹脂B1は、3官能カプロラクトン系ウレタンアクリレート(固型樹脂分65%、伸び17%)を100質量部に対して、耐候剤として、トリアジン系紫外線吸収剤を3質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を3質量部、及び酸化防止剤を1質量部配合した。トリアジン系紫外線吸収剤として、上記「TINUVIN 479」を用い、電子線反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤として1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレート(BASF社製、商品名「サノール LS-3410」)を用いた。」 (キ)「【0074】 [評価結果] 上述した評価方法に基づいて評価された結果を第1表及び第2表に示す。 【0075】 【表1】 [図:0001437402000003.jpg] 」 (ク)上記表1より、実施例1の化粧シートの透湿度は5(g/m2・24h)であり、耐候性は1000(時間h)であったことが理解できる。 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アより、甲第1号証には、以下の2の発明(以下「甲1発明」及び「甲1組成物発明」という。)が記載されていると認められる。 (ア)甲1発明 少なくとも基材及び表面保護層を有する化粧シートであって、(【0010】) 好ましい態様の一例の化粧シート1は、基材2、ガスバリア層6、着色インキ層3、プライマー層4、表面保護層5をこの順に有し、(【0011】) 表面保護層5は、電離放射線硬化型樹脂を含む硬化物であり、 電離放射線硬化型樹脂は、従来、電離放射線硬化型樹脂として慣用されている重合性オリゴマーから適宜選択して用いることができ、(【0035】) 重合性オリゴマーとしては、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられ、(【0037】) カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートは、カプロラクトン系ポリオールと有機イソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得ることができるものであり、カプロラクトン系ポリオールとしては、市販品を使用でき、好ましくは2個の水酸基を有し、数平均分子量が好ましくは500~3000、より好ましくは750~2000のものが挙げられ、(【0039】) 紫外線吸収剤の含有量は、表面保護層を形成する樹脂分100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは1~5質量部であり、(【0046】) 化粧シートは、金属板に貼着されて化粧金属板を構成し、金属材料と化粧シートとを貼着する接着剤は、化粧シートの分野で公知の接着剤を使用でき、(【0053】) 基材2としての厚さ25μmのフィルムA1の片面に、層形成後の厚みが5μmになるように、ポリ塩化ビニリデンを塗布し、ガスバリア層を形成し、ガスバリア層の上に、着色隠蔽層及び絵柄層を有する着色インキ層を印刷し、絵柄層の上に、プライマー層を形成し、プライマー層の上に、更に、硬化後の厚みが5μmになるように、電離放射線硬化型樹脂B1を塗布し、電子線を照射して、電離放射線硬化型樹脂B1を硬化させて、表面保護層5を形成した化粧シートであって、表面保護層を形成する電離放射線硬化型樹脂B1は、3官能カプロラクトン系ウレタンアクリレートを100質量部に対して、耐候剤として、トリアジン系紫外線吸収剤を3質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を3質量部、及び酸化防止剤を1質量部配合し、トリアジン系紫外線吸収剤として、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)を用いた化粧シートは、(【0065】) JIS Z0208に規定された方法に準拠して算出した化粧シートの透湿度は5g/m2・24hであり、(【0056】、【0075】、上記ア(ク)) 耐候性試験装置(岩崎電気株式会社製、「アイスーパーUVテスター」)を用いて、60mW/cm2の照射条件で紫外線を照射し、化粧シートの表面にクラックや白化などの外観変化が生じるまでの時間は1000(時間h)であった、(【0058】、【0075】、上記ア(ク)) 化粧シート。 (イ)甲1組成物発明 3官能カプロラクトン系ウレタンアクリレートを100質量部に対して、耐候剤として、トリアジン系紫外線吸収剤を3質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を3質量部、及び酸化防止剤を1質量部配合し、トリアジン系紫外線吸収剤として、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)を用いた、(【0065】) 表面保護層を形成する電離放射線硬化型樹脂B1。 (2)甲第2号証(特開2016-72391号公報) ア 甲第2号証の記載 甲第2号証には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 太陽電池モジュールにおいて太陽電池素子の非受光面側に積層される非受光面側用封止材シートであって、 エチレン系樹脂をベース樹脂とし、 紫外線吸収剤を含有し、 前記紫外線吸収剤の融点が85℃以上である非受光面側用封止材シート。 【請求項2】 前記紫外線吸収剤の融点が105℃以上である請求項1に記載の非受光面側用封止材シート。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、太陽電池モジュールの非受光面側用封止材シート、及び、それを用いてなる太陽電池モジュールに関する。 【背景技術】 【0002】 近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。現在、種々の形態からなる太陽電池モジュールが開発され、提案されている。一般に太陽電池モジュールは、ガラス等からなる透明前面基板と太陽電池素子と裏面保護シートとが、封止材シートを介して積層された構成である。 【0003】 太陽電池素子は、単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を用いて作製することが多い。このため、太陽電池素子は、物理的衝撃に弱く、又、屋外に太陽電池モジュールを取り付けた場合に雨等からこれを保護する必要がある。又、太陽電池素子1枚では発生する電気出力が小さいため、複数の太陽電池素子を直並列に接続して、実用的な電気出力が取り出せるようにする必要がある。このため、複数の太陽電池素子を接続し、透明基板及び封止材シートで封入して太陽電池モジュールを作製することが通常行われている。一般に、太陽電池モジュールは、透明前面基板、受光面側用封止材シート、太陽電池素子、非受光面側用封止材シート及び裏面保護シート等を順次積層し、これらを真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等により製造される。 【0004】 太陽電池モジュールに使用される封止材シートには、紫外線による樹脂の劣化を防ぐための紫外線吸収剤が含有されていることが一般的である。例えば特許文献1には、エチレン・α-オレフィン共重合体と、高分子量型ヒンダードアミン系光安定化剤と、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤とを含有する太陽電池封止材用樹脂組成物が開示されている。 【0005】 このような有機系の紫外線吸収剤は、樹脂の劣化を防止することができる。しかしその一方で、紫外線吸収剤は、本来、太陽電池素子が発電に使用可能な波長315nmから400nm付近の紫外線も吸収してしまう。発電効率向上の観点からは、少なくとも太陽電池素子の受光面側に積層する受光面側用封止材シートには紫外線吸収剤が含有されていないことが好ましい。 【0006】 一方、太陽電池素子の非受光面側に積層する非受光面側用封止材シートについては、太陽電池モジュールの耐候性や水蒸気バリア性を担保する裏面保護シートを、紫外線による劣化から保護するために、紫外線吸収剤を含有させることが必須であった。 【0007】 ここで、上記の各要請を満たすために、太陽電池モジュールの層構成を、非受光面側用封止材シートにのみ紫外線吸収剤を含有させる構成とすることが考えられる。但し、この場合においても、高温高湿の太陽電池モジュールの実際の使用環境下においては、非受光面側用封止材シートから受光面側用封止材シートへと、紫外線吸収剤が移行してしまい、これにより太陽電池モジュールの発電効率が経時的に低下してしまうことが問題となる。 【先行技術文献】 ・・・ 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者らは、鋭意検討を行った結果、太陽電池素子の非受光面側用封止材シートに含有させる紫外線吸収剤を、その融点が所定温度以上である高融点の紫外線吸収剤に限定することによって、裏面保護シートを紫外線による劣化から保護しながら、尚且つ、当該紫外線吸収剤の受光面側への移行をも抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。 【0011】 (1) 太陽電池モジュールにおいて太陽電池素子の非受光面側に積層される非受光面側用封止材シートであって、エチレン系樹脂をベース樹脂とし、紫外線吸収剤を含有し、前記紫外線吸収剤の融点が85℃以上である非受光面側用封止材シート。 【0012】 (2) 前記紫外線吸収剤の融点が105℃以上である(1)に記載の非受光面側用封止材シート。」 (ウ)「【0049】 [紫外線吸収剤] 非受光面側用封止材組成物は、その融点が所定温度以上である紫外線吸収剤を含有する。ここで、本明細書における紫外線吸収剤とは、太陽光中の有害な紫外線を吸収して、分子内で無害な熱エネルギーへと変換し、封止材シートの材料樹脂の光劣化開始の活性種が励起されるのを防止することができる添加剤のことを言う。そしてこのような紫外線吸収剤として、従来、各種ベンゾフェノン系紫外線吸収剤や、各種ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の各種の有機系紫外線吸収剤が適宜用いられてきた。中でも、例えば、「KEMISORB 12(ケミプロ化性株式会社製)」等、融点が48~49℃程度のベンゾフェノン系紫外線吸収剤が、一般的な紫外線吸収剤として広く用いられてきた。この低融点の紫外線吸収剤は、低密度ポリエチレンを含むあらゆる樹脂との相溶性が良く、又、低融点であることにより、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等、封止材シートの成形後の熱架橋処理を前提とする場合であっても架橋剤の反応温度以下で十分に相溶させることができるため、生産性の面で好ましいものとして広く用いられていた。 【0050】 非受光面側用封止材組成物に用いることのできる紫外線吸収剤は融点が85℃以上、好ましくは105℃以上の紫外線吸収剤である。非受光面側用封止材組成物に用いる紫外線吸収剤を、このように高融点のものに限定することにより、上記の通り、非受光面側用封止材シートから受光面側用封止材シートへの紫外線吸収剤の移行を十分に抑制することができる。尚、融点が85℃以上、好ましくは105℃以上の高融点の紫外線吸収剤は、非受光面側用封止材組成物中の含有量にかかわらず、受光面側用封止材シートへの紫外線吸収剤の移行が十分に、或いは、より十分に抑制される。但し、紫外線吸収機能向上の観点からの必要量を超えた過剰な紫外線吸収剤の添加は樹脂の耐久性や密着性について悪影響を与えるリスクが生じるため好ましくない。そのような悪影響のリスクを回避することができる範囲内であれば、本発明における非受光面側用封止材組成物への紫外線吸収剤の添加量については特段の制限はなく、適宜必要量を添加することができる。 【0051】 非受光面側用封止材組成物に用いることのできるこのような高融点の紫外線吸収剤として、例えば、融点138℃~141℃のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である「KEMISORB73(、ケミプロ化成株式会社製)」や、融点90℃以上のトリアジン系紫外線吸収剤である「KEMISORB 102(ケミプロ化性株式会社製)」等を例示することができる。尚、上記融点温度範囲未満の低融点の紫外線吸収剤が極微量不純物的に含まれていても、本発明の範囲内である。その極微量とは例えば封止材組成物中に0.01質量%未満である。」 (エ)「【実施例】 【0075】 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。 【0076】 <封止材シートの製造> 以下に説明する封止材組成物の材料を、封止材組成物中における各成分の含有量が、それぞれ下記記載の割合となるように調整して混合し、それぞれ実施例、比較例の封止材シートの中間層用及び最外層用封止材シートを作成するための封止材組成物とした。それぞれの封止材組成物をφ30mm押出し機、200mm幅のTダイを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度210℃、引き取り速度1.1m/minで中間層用及び最外層用封止材シートを作製し、これらの中間層用及び最外層用封止材シートを積層して、3層の太陽電池モジュール用の封止材シートとした。これらの封止材シートは、いずれも、厚さ450μm、最外層:中間層:最外層の厚さの比を1:6:1とした。尚、封止材組成物の材料としては、以下の材料を使用した。 【0077】 [ポリエチレン系樹脂] メタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M-LLDPE):密度0.880g/cm3、190℃でのMFRが3.5g/10分のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンをベース樹脂として用いた。実施例、比較例の封止材シートを製造するための、いずれの封止材組成物においても、同樹脂の含有量が、中間層用の封止材組成物においては、91.0質量%、最外層用の封止材組成物においては、80.0質量%となるようにした。 【0078】 [シラン変性ポリエチレン系樹脂] 密度0.881g/cm3であり、190℃でのMFRが2g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)98質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とからなるシラン架橋性樹脂をベース樹脂に混合するシラン変性ポリエチレン樹脂として用いた。この樹脂の密度は0.884g/cm3、190℃でのMFRが1.8g/10分である。実施例、比較例の封止材シートを製造するための、いずれの封止材組成物においても、同樹脂の含有量が、中間層用の封止材組成物においては、4.0質量%、最外層用の封止材組成物においては、15.0質量%となるようにした。 【0079】 [光安定剤] 光安定剤として、密度0.880g/cm3のチーグラー直鎖状低密度ポリエチレンを粉砕したパウダー100質量部に対して、ヒンダードアミン系光安定化剤(ケミプロ化成株式会社製:KEMISTAB62)2.28質量部を混合して溶融、加工し、ペレット化したマスターバッチを作成した。実施例、比較例の封止材シートを製造するための、いずれの封止材組成物においても、封止材組成物中の上記光安定剤の含有量が、中間層用の封止材組成物においては、5.0質量%、最外層用の封止材組成物においては、5.0質量%となるようにした。 【0080】 [紫外線吸収剤] 紫外線吸収剤として、それぞれの実施例と比較例において、下記の3種類の紫外線吸収剤1~3を表1に記載の通りに別途使い分けた。各紫外線吸収剤は、密度0.880g/cm3のチーグラー直鎖状低密度ポリエチレンを粉砕したパウダー100質量部に対して、それぞれ3.3質量部を混合してマスターバッチを作成し、各封止材組成物中の各紫外線吸収剤の含有量が、表1に記載の含有量(質量%)となるように調整した。 紫外線吸収剤1(表1にて「UVA1」と記載):ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤。融点138~141℃。分子量315.8。CASNo.3896-11-5。(ケミプロ化成株式会社製:KEMISORB73) 紫外線吸収剤2(表1にて「UVA2」と記載):トリアジン系紫外線吸収剤。融点90℃以上。分子量509.7。CASNo.2725-22-6。(ケミプロ化成株式会社製:KEMISORB102) 紫外線吸収剤3(表1にて「UVA3」と記載):ベンゾフェノン系紫外線吸収剤。融点48~49℃。分子量326.4。CASNo.1843-05-6。(ケミプロ化成株式会社製:KEMISORB12) 【0081】 <裏面保護シート> 裏面保護シートとしては、下記の樹脂基材を用いた。 樹脂基材:ポリエチレンテレフタレート(PET)基材:厚さ188μm(商品名「ルミラーS10」、東レ社製) ・・・ 【0083】 【表1】 [図:0001437402000004.jpg] 【0084】 <評価例1> 実施例及び比較例の各太陽電池モジュール評価用サンプルについて、ダンプヒート試験による保存試験前後の各層の光学特性を評価した。具体的には、JIS C8917に準拠し、試験槽内温度をそれぞれ60℃、85℃、及び105℃の各温度、湿度は85%の条件下で、それぞれの条件下で、評価用サンプルモジュールの耐久性試験を500時間行った。受光面側用封止材シートについては、発電に寄与しうる紫外線領域の波長の光として300nmの光に対する光線透過率を上記試験の前後において測定し、又、保存試験前後の同値の維持率を算出した。又、非受光面側用封止材シートについては、製造直後における裏面保護シートの樹脂劣化を引き起こす可能性の高い光として340nmの光に対する光線透過率を分光光度計で測定した。 【0085】 尚、上記の試験の温度条件について、85℃は、太陽電池モジュールの耐久試験として、広く一般的に採用されている温度条件であり、日本国内における平均的な使用環境を想定している。又、105℃については、国内における例外的な高温環境や、熱帯や砂漠地域での稼働等、特段の高温度下における使用環境を想定している。測定結果を表2に示す。 ・・・ 【0087】 【表2】 [図:0001437402000005.jpg] 【0088】 実施例1及び2と、比較例2との対比結果から、受光面側用封止材シートへの紫外線吸収剤の添加は、太陽電池モジュールの初期の発電効率を低化させることが確認された。尚、太陽電池モジュールの発電効率については、Pmax値の比較で、1%程度での激しい開発競争が世界中で行われており、上記のPmax値の差は、そのような開発競争における十分に有意な差異である。 【0089】 そして、比較例1の評価結果から、本発明に係る融点温度の条件を満たさない一般的な紫外線吸収剤を非受光面側のみに添加した場合は、高温多湿の環境下での長期使用後に発電効率が十分に維持できないことが分る。これに対して、実施例1及び2の評価結果から、紫外線吸収剤の融点温度を本発明独自の範囲に限定した場合には、高温多湿の環境下での長期使用後においても、良好な発電効率を維持できることが分かる。 【0090】 尚、実施例1のように紫外線吸収剤の融点温度をより高い温度に最適化することにより、本発明の太陽電池モジュールは、通常の温度環境以上の特段の高温環境下においても、高い発電効率を長期に亘って十分に維持できることが確認された。 【0091】 以上、評価例1及び2の結果より、本発明の非受光面側用封止材シートを用いた太陽電池モジュールは、裏面保護シートを紫外線による劣化から保護することができるものであって、尚且つ、高温多湿の使用環境においても、その好ましい初期発電効率を、長期にわたって維持することができる優れた太陽電池モジュールであることが分る。」 (オ)【図1】 「 [図:0001437402000006.jpg] 」 イ 甲第2号証に記載された技術 上記アより、甲第2号証には、以下の技術事項(以下「甲2記載技術事項」という。)が記載されていると認められる。 (甲2記載技術事項) 透明前面基板、受光面側用封止材シート、太陽電池素子、非受光面側用封止材シート及び裏面保護シート等を順次積層した太陽電池モジュールに使用される封止材シートには、紫外線による樹脂の劣化を防ぐための紫外線吸収剤が含有されていることが一般的であり、(【0003】、【0004】) 発電効率向上の観点からは、少なくとも太陽電池素子の受光面側に積層する受光面側用封止材シートには紫外線吸収剤が含有されていないことが好ましく(【0005】)、 太陽電池素子の非受光面側に積層する非受光面側用封止材シートについては、太陽電池モジュールの耐候性や水蒸気バリア性を担保する裏面保護シートを、紫外線による劣化から保護するために、紫外線吸収剤を含有させることが必須であるところ、(【0006】) 非受光面側用封止材シートにのみ紫外線吸収剤を含有させる構成とする場合において、高温高湿の太陽電池モジュールの実際の使用環境下においては、非受光面側用封止材シートから受光面側用封止材シートへと、紫外線吸収剤が移行してしまい、これにより太陽電池モジュールの発電効率が経時的に低下してしまうことが問題となることから、(【0007】) 太陽電池素子の非受光面側用封止材シートに含有させる紫外線吸収剤を、その融点が所定温度以上である高融点の紫外線吸収剤に限定することによって、裏面保護シートを紫外線による劣化から保護しながら、尚且つ、当該紫外線吸収剤の受光面側への移行をも抑制できるようにした技術であり、より具体的には、(【0010】) 太陽電池素子の非受光面側に積層される非受光面側用封止材シートを、エチレン系樹脂をベース樹脂とし、融点が85℃以上である、または、105℃以上である紫外線吸収剤を含有するものとしたこと。(【0011】、【0012】) (3)甲第3号証(特開2011-42041号公報) ア 甲第3号証の記載 甲第3号証には、以下の記載がある。 (ア)「【0007】 【化1】 [図:0001437402000007.jpg] 」 (イ)「【発明を実施するための形態】 【0027】 以下に、本発明の化粧シートについて図面に基づいて詳細に説明するが、本発明の範囲内にあるものであれば、必ずしもこの順に積層してある必要はない。またこの図面に記載されていない層が付加されていても良い。図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。ここでは基材層1、絵柄模様層2、接着剤層3、透明樹脂層4、表面保護層5をこの順に積層したものである。」 (ウ)「【0034】 化粧シートの耐候性をより向上させるため、表面保護層5には紫外線吸収剤やラジカル捕捉剤等の耐候剤の添加が一般的に用いられる。紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾフェノン系など公知のものが使用できるが、なかでもヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤を選定すれば、トリアジン骨格がブリードを抑制する事、またトリアジン骨格がベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の骨格と比較して化学的に安定である事などにより、長期に亘る紫外線吸収性能を保持することが可能となる。 【0035】 前記ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤としては、;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2-(2ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-〔4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル〕-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-エチル-ヘキサノイックアシッド 2-[4-(4,6-ジフェニル-[1,3,5]トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-フェノキシ]-エチルエステル、オクタノイックアシッド 2-[4-(4,6-ジフェニル-[1,3,5]トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-フェノキシ]-エチルエステル、2,4,6-トリス{2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)}-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられるが、本発明においては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール((式1)に相当)の構造を持つものを少なくとも1種含有するものとする。これは、化学式(1)のヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤が、紫外線の中でも相対的に高エネルギーである低波長領域の紫外線吸収能力が高く、かつまた、ほぼ同等の波長領域を吸収する他の紫外線吸収剤と比較して化学的に安定な為、長期に亘る紫外線吸収性能が持続する為である。」 (エ)「【0044】 透明樹脂層4は、絵柄模様層2を保護するために必要に応じて設けることができ、絵柄を活かせるものであれば透明でも半透明でもよい。あるいは適宜艶消し模様やエンボス付与により表面凹凸を設けたものであっても良い。あるいはこの凹凸に着色剤を充填したものであってもよい。透明樹脂層4としてはポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴムなどが挙げられるが、その中でも特に、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、の単独重合あるいはこれら2種以上の共重合樹脂、もしくはそれらの混合樹脂からなるものが好ましい。またこれらの樹脂中には、必要に応じて、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、加工安定剤、などの各種添加剤を添加しても良い。 ・・・ 【0050】 接着剤層3は絵柄模様層2を設けた基材層1と透明樹脂層4とを貼り合わせるため、必要に応じて設けられる。接着剤層3が無くとも目標とする接着強度が得られる場合、あるいは透明樹脂層4を設けない場合等には、存在の必要が無いこともある。構成材料としては、任意の樹脂系どうしの接着強度向上に寄与するものであるならば、特に限定は無く、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等種々の材料が使用できる。一般的には、塗膜凝集力の高い2液硬化型のポリウレタン系接着剤を用いることが多い。塗工方法も塗液粘度等によって適宜選択できる。層厚は0.5~6μm程度が好適である。」 (オ)「【0056】 <表面保護層5の形成> 透明樹脂層4の表面側にコロナ処理を施した後に、表面保護層5として、メチルメタクリレートモノマー80重量部とシクロヘキシルメタクリレートモノマー20重量部、更に側鎖への水酸基付与の為に不飽和アルコールを共重合させたアクリル系樹脂組成物プレポリマーを主成分とし、ここに以下の表1、表2の実施例1の列に示すような組成で紫外線吸収剤とラジカル捕捉剤、および固形分調整用に酢酸エチル溶剤を添加した固形分量33重量部の主剤溶液と、固形分調整用に酢酸エチル溶剤を添加した固形分量75重量部のヘキサメチレンジイソシアネート型硬化剤溶液とを、主剤溶液と硬化剤溶液の比率が10:1(この時の主剤溶液中の水酸基数と硬化剤溶液中のイソシアネート基数の比率は約1:2)となるように混合し、更に溶剤成分として酢酸エチルを添加して固形分量を20重量部に調整した塗工液を、溶剤揮発後の厚さで9μmとなるように塗工し、実施例1の化粧シートを得た。 【0057】 【表1】 [図:0001437402000008.jpg] 」 (カ)「【0073】 <耐候性評価> このようにして得られた鋼板化粧材について、ダイプラ・メタルウェザー試験機による耐候性試験を行なった。耐候性試験の試験条件を以下に示す。 試験機:ダイプラ・メタルウェザー(型式:KU-R5DCI-A ダイプラ・ウィンテス(株)製) 試験条件:1サイクル=Light(照度70mW/cm2、温度53℃、湿度50%RH、)20時間+Dew(温度30℃、湿度95%RH)4時間(前後にシャワー30秒)+Rest(温度30℃,湿度95%RH)0.01時間のサイクル試験を、繰返し回数最大70サイクルまでで試験実施。 評価方法:退色、白濁、或いは目視で明らかに分かる程度の著しい脆化、の何れかが発生し始める繰り返し回数によって評価(回数が多いほど耐候性能が高い)。 ・・・ 【0075】 【表4】 [図:0001437402000009.jpg] 」 イ 甲第3号証に記載された技術 上記アより、甲第3号証には、以下の2の技術事項(以下、それぞれ、「甲3記載技術事項1」及び「甲3記載技術事項2」という。)が記載されていると認められる。 (ア)甲3記載技術事項1 化粧シートの耐候性をより向上させるため、表面保護層には紫外線吸収剤の添加が一般的に用いられ、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾフェノン系など公知のものが使用できるが、なかでもヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤を選定すれば、トリアジン骨格がブリードを抑制する事、またトリアジン骨格がベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の骨格と比較して化学的に安定である事などにより、長期に亘る紫外線吸収性能を保持することが可能となり、(【0034】) ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤としては、;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールが挙げられ、化学式(1)の2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール(式1)の構造を持つヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤は、紫外線の中でも相対的に高エネルギーである低波長領域の紫外線吸収能力が高く、かつまた、ほぼ同等の波長領域を吸収する他の紫外線吸収剤と比較して化学的に安定な為、長期に亘る紫外線吸収性能が持続し(【0035】) 「アデカスタブLA-46」(株)ADEKA製、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤は(式1)に相当すること。 【化1】 [図:0001437402000010.jpg] (【0007】、【0057】) (イ)甲3記載技術事項2 化粧シートを、基材層1、絵柄模様層2、接着剤層3、透明樹脂層4、表面保護層5をこの順に積層したものとし、(【0027】) 透明樹脂層4は、絵柄模様層2を保護するために必要に応じて設けることができ、(【0044】) 接着剤層3は絵柄模様層2を設けた基材層1と透明樹脂層4とを貼り合わせるため、必要に応じて設けられること。(【0050】) (4)甲第5号証(特開2011-201150号公報) ア 甲第5号証の記載 甲第5号証には、以下の記載がある。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は建築物用、車両用、建具用等の各種用途の加飾成形品に用いられる加飾シートの製造方法及び加飾シートに関する。 【背景技術】 【0002】 成形品の表面に加飾シートを積層することで加飾した加飾成形品が、建築物用部材、車両内装部品等の各種用途で使用されている。このような加飾成形品に用いられる加飾シートは、通常、基材上に意匠層と表面保護層を順次積層して製造される。 しかし、かかる製造方法においては、意匠層を形成した際に表面に凹凸が生じ、その上に表面保護層を積層した際に表面保護層表面の平滑性が損なわれることが懸念される。 ・・・ 【0009】 すなわち、本発明は、 ・・・ (7)基材上に意匠層と、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる表面保護層とをこの順に有する加飾シートであって、該表面保護層の表面が平滑であり、該加飾シートの裏面の算術平均粗さRaが、1.0~10.0μmであることを特徴とする加飾シート、 ・・・ を提供するものである。」 (イ)「【0039】 本発明の製造方法において、電離放射線硬化性樹脂組成物に用いられる電離放射線硬化性樹脂としての重合性モノマー及び重合性オリゴマー及び/又はプレポリマー(以下、オリゴマー/プレポリマーと略記することがある。)を以下に説明する。 ・・・ 【0043】 本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物としては、少なくとも、ポリカーボネート(メタ)アクリレート又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートと、多官能(メタ)アクリレートとを含有するものを用いると、優れた耐薬品性及び耐傷付き性と良好な三次元成形性とを同時に満足するので、表面保護層にクラック等が入ることがなく、かつ三次元成形し易い加飾シートを得ることができる点で好ましい。 ・・・ 【0046】 本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであれば良く、特に制限はない。ただし、硬化性の観点から3官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。ここで、2官能とは、分子内にエチレン性不飽和結合{(メタ)アクリロイル基}を2個有することをいう。 また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでも良いが、三次元成形性向上の観点から多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。 多官能(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000を超えることがさらに好ましい。多官能(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。耐傷付き性と三次元成形性とを両立させる観点から、さらに好ましくは、2,000を超え50,000以下であり、特に好ましくは、5,000~20,000である。」 イ 甲第5号証に記載された技術 上記アより、甲第5号証には、以下の技術事項(以下「甲5記載技術事項」という。)が記載されていると認められる。 (甲5記載技術事項) 建築物用部材、車両内装部品等の各種用途で使用されている、加飾成形品に用いられる加飾シートであって、基材上に意匠層と、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる表面保護層とをこの順に有する加飾シートの電離放射線硬化性樹脂組成物に用いられる電離放射線硬化性樹脂について、(【0002】、【0009】、【0039】) 電離放射線硬化性樹脂組成物の含有する、多官能(メタ)アクリレートは、多官能(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000を超えることがさらに好ましく、重量平均分子量の上限は、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい(【0043】、【0046】)こと。 (5)甲第7号証(国際公開第00/34055号明細書) ア 甲第7号証の記載 甲第7号証7頁20~24行には、以下の記載がある。 「化粧板積層用印刷樹脂フィルム1と基板2の貼合わせに用いられる接着剤層3の接着剤としては、一般的な接着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂系、エチレンービニルアセテート樹脂系、尿素樹脂系、ウレタン樹脂系などのエマルジョン型接着剤が、火気に対して安全で、臭気もなく、価格的にも安価なため好ましく用いられる。」 (6)甲第8号証(特開2008-272957号公報) ア 甲第8号証の記載 甲第8号証には、以下の記載がある。 (ア)「【0062】 2.化粧材 本発明の化粧シートは、基材シート側と被着材とを積層することにより化粧材とできる。図2に化粧材の一例を示す。図2は、本発明化粧シート(更に表面保護層5を有する)の基材シート4と被着材7とを、接着剤層6を介して接着した化粧材である。 ・・・ 【0069】 化粧シートと被着材とを接着するために用いる接着剤は限定的ではないが、大別すると、熱可塑性樹脂の接着剤、熱硬化性樹脂の接着剤、ゴム系接着剤及び天然系接着剤がある。 【0070】 熱可塑性樹脂の接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、シアノアクリレート、ポリビニルアルキルエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ニトロセルロース、酢酸セルロース、熱可塑性エポキシ、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-アクリル酸エチルコポリマー等が挙げられる。 【0071】 熱硬化性樹脂の接着剤としては、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリベンゾチアゾール等が挙げられる。」 (7)甲第9号証(特開2018-104487号公報) ア 甲第9号証の記載 甲第9号証には、以下の記載がある。 (ア)「【背景技術】 【0002】 キッチン扉、クローゼット扉、窓枠等の建築部材やカウンターテーブル等の家具などに用いられる表面に曲面や凹凸を有する材料に対しては、意匠性向上のため、木目印刷の施されたオレフィンシート、PET(ポリエチレンテレフタラート)シート等の合成樹脂製化粧シート、樹脂加工紙、つき板などの表装用シートを連続してラッピングしながら、接着剤を用いて貼り付けるラッピング加工が広く行われている。 【0003】 ラッピング加工を行う際には、前記表面に曲面や凹凸を有する材料に対し、強力な初期強度、及び、耐加水分解性、耐熱性等の耐久性のある接着剤が求められる。 【0004】 前記ラッピング加工に使用できる接着剤としては、例えば、脂環式ポリエステルポリオール及び脂肪族ポリエステルポリオールを含有するポリオールと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。」 (8)周知技術1 甲第7号証、甲第8号証より、以下の周知技術(以下「周知技術1」という。)が認められる。 (周知技術1) 化粧材の技術分野において、化粧シートと被着材を接着する接着剤として、ウレタン樹脂系型接着剤を用いること。 (9)引用文献A BASF社、「機能性添加剤製品カタログ」、2017年12月、[online] (https://www.basf.com/dam/jcr:0651896a-3d77-3ca5-b838-082ea4f381e2/basf/www/jp/documents/ja/products-and-industories/dispersionsandresins/.pdf) ア 当審において職権により探知した文献である引用文献Aには、以下の記載がある。 (ア)14頁 「 [図:0001437402000011.jpg] 」 (イ)裏表紙 「BASFジャパン株式会社 ディスパージョン&レジン事業部 ・・・ ○c(当審注:○cは著作権マークを表す)BASF JAPAN Ltd. ED. 1202-1 December, 2017 Edited in Japan」 (10)引用文献B ADEKA社、「化学品製品案内 > 製品別:プラスチック用添加剤 > 紫外線吸収剤(UVA)・ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、[online]、(2016年7月18日(internet archive、wayback machineによる検索、https://web.archive.org/web/20160718010847/https://www.adeka.co.jp/chemical/products/plastic/pro115c.html) ア 当審において職権により探知した文献である引用文献Bには、以下の記載がある。 (ア)「アデカスタブ LAシリーズ<紫外線吸収剤(UVA)> ・・・ [図:0001437402000012.jpg] 」 2 本件発明1 (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「基材2、ガスバリア層6、着色インキ層3、プライマー層4、表面保護層5をこの順に有」する「化粧シート1」において、「表面保護層5」は、最表面にあるから、甲1発明の「基材2」及び「表面保護層5」は、本件発明1の「基材」及び「最表面に表面保護層」に相当し、甲1発明の「基材2、ガスバリア層6、着色インキ層3、プライマー層4、表面保護層5をこの順に有」する「化粧シート1」は、本件発明1の「基材及び最表面に表面保護層を少なくとも有する化粧材」に相当する。 イ 甲1発明の「紫外線吸収剤の含有量は、表面保護層を形成する樹脂分100質量部に対して、・・・より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは1~5質量部であり」、また、甲1発明の「電離放射線硬化型樹脂B1」の「3官能カプロラクトン系ウレタンアクリレートを100質量部」に、「紫外線吸収剤」として「トリアジン系紫外線吸収剤」の「2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)」を「3質量部」配合することは、甲1発明において特にその他の紫外線吸収剤を併用することが示されていないことを踏まえると、本件発明1の「該表面保護層が紫外線吸収剤を含有し、該表面保護層を形成する樹脂100質量部に対する該紫外線吸収剤の含有量が1質量部以上10質量部以下であ」ることに相当する。 ウ 甲1発明の「2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)」は、本件発明1の化学式(1)において、R11はエチレン、R12は1-オクチルオキシカルボニル、R13、R14は4-フェニルフェニル、n11、n12をそれぞれ1としたものであり、本件発明1の「下記一般式(1)で示される紫外線吸収剤」に相当するといえる。 エ 甲1発明の表面保護層5における「紫外線吸収剤」は、「トリアジン系紫外線吸収剤」の「2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)」であって、甲1発明において特にその他の紫外線吸収剤を併用することが示されていないことから、甲1発明の表面保護層5における「紫外線吸収剤」は、全てないし大部分が「トリアジン系紫外線吸収剤」の「2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)」であると考えるのが合理的である。 そして、上記ウの対比を踏まえると、本件発明1の「該紫外線吸収剤の全量に対する、下記方法により測定された融点90℃以上の下記一般式(1)で示される紫外線吸収剤の含有量が45質量%以上であ」ることと、甲1発明の表面保護層5における「紫外線吸収剤」が「トリアジン系紫外線吸収剤」の「2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)」であって、特にその他の紫外線吸収剤を併用することが示されていないこととは、「該紫外線吸収剤の全量に対する、下記一般式(1)で示される紫外線吸収剤の含有量が45質量%以上であ」る点で共通する。 オ 甲1発明の「表面保護層5」に含まれる「電離放射線硬化型樹脂」である「3官能カプロラクトン系ウレタンアクリレート」は、3つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーであるから、本件発明1の「該表面保護層を形成する樹脂を含む樹脂組成物が、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が500以上80,000以下である(メタ)アクリレートオリゴマーを含む」ことと、甲1発明の「電離放射線硬化型樹脂B1」が「3官能カプロラクトン系ウレタンアクリレート」であることとは、「該表面保護層を形成する樹脂を含む樹脂組成物が、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーを含む」の点で共通する。 カ 上記ア~オより、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。 (一致点1) 基材及び最表面に表面保護層を少なくとも有する化粧材であって、 該表面保護層が紫外線吸収剤を含有し、 該表面保護層を形成する樹脂100質量部に対する該紫外線吸収剤の含有量が1質量部以上10質量部以下であり、 該紫外線吸収剤の全量に対する、下記一般式(1)で示される紫外線吸収剤の含有量が45質量%以上であり、該表面保護層を形成する樹脂を含む樹脂組成物が、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、 化粧材。 【化1】 [図:0001437402000013.jpg] 一般式(1)中、R11は2価の有機基又は単結合であり、R12は1価の有機基、-C(=O)OR15で示されるエステル基、-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基又は-O-R17で示されるオルガニルオキシ基であり、R13、R14、R15、R16及びR17は各々独立して水素原子又は1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して1~5の整数である。また、R13及びR14が複数ある場合、同じでも異なっていてもよい。 (相違点1) 一般式(1)で示される紫外線吸収剤が、本件発明1は、「下記方法により測定された融点90℃以上」であるのに対し、甲1発明は、そのようなものではない点。 (融点の測定方法) 紫外線吸収剤をガラス製の容器内にいれて、オーブン内に静置し、オーブンを1時間所定の温度とした際に液状化がはじまった場合の、当該所定の温度を融点とした。 (相違点2) 「該表面保護層を形成する樹脂を含む樹脂組成物」が「含む」「2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー」について、本件発明1は、「重量平均分子量が500以上80,000以下である」のに対し、甲1発明は、重量平均分子量が不明である点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1について (ア)甲2記載技術事項は、太陽電池素子の非受光面側用封止材シートに含有させる紫外線吸収剤を、その融点が所定温度以上である高融点の紫外線吸収剤に限定することによって、裏面保護シートを紫外線による劣化から保護しながら、尚且つ、当該紫外線吸収剤の受光面側への移行をも抑制できるようにした技術であり、紫外線吸収剤として、融点が105℃以上である紫外線吸収剤を含有するものとすることが示されている。 (イ)しかし、甲2記載技術事項は、上述のとおり、紫外線吸収剤の隣接するシート間の移行を抑制する技術であって、化粧材が最表面に有する表面保護層の有する紫外線吸収剤について記載ないし示唆するものではなく、甲2記載技術事項に接した当業者が、甲1発明の「表面保護層5」に含まれる「紫外線吸収剤」について、変更する動機付けがあるとはいえない。 (ウ)すなわち、甲1発明の表面保護層5には、甲2記載技術事項に示される非受光面側用封止材シートに含有させる紫外線吸収剤の受光面側用封止材シート側への移行の抑制という課題があるとはいえない。また、甲2記載技術事項は、隣接する保護シート間の紫外線吸収剤の移行を抑制する観点から、融点が高い紫外線吸収剤を選択しているところ、甲1発明において、単に耐候性という観点から、甲2記載技術事項における紫外線吸収剤の選択を考慮する動機があるとはいえない。 そして、甲1発明の表面保護層5における「紫外線吸収剤」は、全てないし大部分が「トリアジン系紫外線吸収剤」の「2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)」であると考えられるところ、「TINUVIN 479」については、引用文献A(BASF社の機能性添加剤製品カタログ)によると融点が最低で68℃であることが把握できる。 (エ)ここで、甲3記載技術事項1には、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤として、「アデカスタブLA-46」が市販されていることが示され、ADEKA社の製品案内のサイトである引用文献Bから、アデカスタブLA-46の融点は、最低で106℃であることが把握できる。また、アデカスタブLA-46は、本件明細書において使用する紫外線吸収剤の具体例であり、上記相違点1に係る本件発明1の構成を満たす紫外線吸収剤ということができる。 しかしながら、上記(ア)~(ウ)に説示したのと同様の理由より、甲1発明の表面保護層5における「紫外線吸収剤」を、「2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)」から、甲3記載技術事項1のヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤である「アデカスタブLA-46」に変更する動機があるとはいえない。 (オ)また、甲1発明の表面保護層5における「紫外線吸収剤」を、「2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)」から、相違点1に係る本件発明1の構成を満たすものへと変更することは、甲2、甲3、甲5、及び本件特許異議申立におけるその余の証拠を考慮しても、示唆されているとはいえない。 (カ)そして、本件発明1は、相違点1に係る構成により、化粧材における紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制する、という効果を奏すると認められる。 (キ)したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、甲2、甲3、甲5、及び本件特許異議申立におけるその余の証拠を考慮しても、当業者にとって容易であったとはいえない。 イ 小括 上記アのとおり、相違点1に係る本件発明1の構成が想到容易でないから、相違点2について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、及び甲2~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人の主張 当審合議体は、申立人に対し、令和8年4月17日付けで、令和7年12月9日付け取消理由通知書と令和8年2月6日に特許権者が提出した意見書(以下、単に「意見書」という。)を添付し、意見書について意見を求める審尋を行ったところ、同年6月4日に申立人から回答書が提出された。当該回答書において、申立人は、上記相違点1の容易想到性に関し、概略以下の主張をする。 a 特許権者は、甲第2号証が融点の高い紫外線吸収剤を用いるのは太陽電池モジュールの非受光面側シートから受光面側シートへの紫外線吸収剤の移行を抑制するためであって、非受光面側シート及び受光面側シートのない甲1発明に融点の高い紫外線吸収剤を適用する動機付けがない旨主張するが、甲第2号証の段落0010には、裏面保護シートについて紫外線による劣化からの保護も記載されているため、甲第2号証の融点の高い紫外線吸収剤を甲1発明に適用する動機はある。 b 甲第2号証は、紫外線吸収剤の外部へのブリードアウトは記載されていない。また、紫外線吸収剤の非受光面封止シートから受光面封止シートへの移行の詳細なメカニズムは記載されていない。しかしながら、段落0007、0009には、高温多湿の使用環境下で移行が生じるとされており、液状化し、流動化した紫外線吸収剤は、固体状態より移行し易くなる。このことは、融点の定義から明らかであり、通常の現象である。甲第2号証の発明においても、融点の高い紫外線吸収剤は、高温でも液状化しないため、受光面封止シートへも移行し難いと推察される。即ち、甲第2号証における移行の抑制と、ブリードアウトの抑制は、紫外線吸収剤の流動化の抑制という点で共通する。したがって、甲1発明において、甲第2号証が示す紫外線吸収剤を高融点のものとすることを、考慮する動機付けはある。 c 特許権者は、甲1発明が甲第3号証の発明の必須構成要件であるシクロヘキシル(メタ)アクリレートを共重合成分として含有していないため、甲第3号証の「アデカスタブLA-46」を用いる動機はないと述べているが、甲第3号証のシクロヘキシル(メタ)アクリレートは、水分に由来する化粧シートの脆化を抑制するために用いられるものであり、「シクロヘキシル(メタ)アクリレート」の添加が必須とされるものではない。 d よって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、容易である。 (イ)主張の検討 上記主張について検討する。 a 上記(ア)aの主張について 甲第2号証において、融点が高い紫外線吸収剤は、どこに用いても部材の劣化からの保護能力が高いことが示されているわけではない。そして、甲第2号証において、隣接するシート間での移動を抑制することと関連して、劣化からの保護について言及されているからといって、甲第2号証とは異なる状況で紫外線吸収剤を用いる甲1発明に、甲第2号証を適用する動機付けがあるとはいえない。 b 上記(ア)bの主張について 甲第2号証は、その段落【0007】に、「高温高湿の太陽電池モジュールの実際の使用環境下においては、非受光面側用封止材シートから受光面側用封止材シートへと、紫外線吸収剤が移行してしまい」との記載があるように、「非受光面側用封止材シートから受光面側用封止材シート」への「紫外線吸収剤」の「移行」を課題とするものであり、具体的には、請求項1に明示されるように、「エチレン系樹脂をベース樹脂」とした「非受光面側に積層される非受光面側用封止材シート」から、非受光面側用封止材シートに積層された受光面用封止材シートへの紫外線吸収剤の移行について、非受光面側用封止材シートに含有させる紫外線吸収剤を、その融点が所定温度以上である高融点の紫外線吸収剤とすることで抑制できることを示すものである。 一方、本件発明は、化粧材の最表面の表面保護層であって、該表面保護層を形成する樹脂を含む樹脂組成物が、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が500以上80,000以下である(メタ)アクリレートオリゴマーを含むものにする含有紫外線吸収剤が、表面保護層からブリードアウトすることを課題とするものである。 そして、エチレン系樹脂等へ添加された紫外線吸収剤の、積層されたシートへの移行のしやすさと、樹脂組成物が、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が500以上80,000以下である(メタ)アクリレートオリゴマーを含む該表面保護層を形成する樹脂に含まれるヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤の析出(ブリードアウト)とが、紫外線吸収剤の融点を所定温度以上とするという同様の機序で抑制できることについては、甲2記載技術事項やその他の申立人が提出した証拠から理解できるとはいえず、また、技術常識でもない。 そうすると、甲1発明において、甲2記載技術事項から、融点の高い紫外線吸収剤を用いることを動機づけられるとはいえない。 c 上記(ア)cの主張について 甲1発明が甲第3号証の発明の必須構成要件であるシクロヘキシル(メタ)アクリレートを共重合成分として含有していないことは、融点の高いヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤を採用しない理由となるものではないが、上記bに示したとおり、甲第2号証は、高温高湿の太陽電池モジュールの実際の使用環境下においては、非受光面側用封止材シートから受光面側用封止材シートへと、紫外線吸収剤が移行してしまうことを非受光面側用封止材シートに含有させる紫外線吸収剤を、その融点が所定温度以上である高融点の紫外線吸収剤とすることで抑制する技術であり、甲1発明の、樹脂組成物が、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が500以上80,000以下である(メタ)アクリレートオリゴマーを含む該表面保護層を形成する樹脂に含まれるヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤について、ブリードアウトを抑制するためにその融点が所定温度以上である高融点の紫外線吸収剤とすることが動機付けられるものではない。 d 申立人の主張についての検討のまとめ 以上のとおりであるから、申立人の主張を考慮しても、上記アにおける相違点1についての判断は左右されない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、及び甲2~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明2~11 本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を備える請求項2~10、及び、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項と同様の発明特定事項を備える本件発明11についても、相違点1に係る本件発明1と同様の構成についての判断は本件発明1と同様であり、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2~11は、甲1発明、甲2~甲9に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知書において通知しなかった特許異議申立理由についての当審の判断 1 申立理由2(特許法36条4項1号)について (1)申立人の具体的主張 申立人は申立書において、本件明細書の発明の詳細な説明が、本件発明について、特許法36条4項1号のいわゆる実施可能要件を満たさないことについて、以下の旨の主張をする。 本件発明は、紫外線吸収剤として、融点90℃以上で、かつ、下記一般式(1)で示される紫外線吸収剤を用いる。 [図:0001437402000014.jpg] 一般式(1)中、R11は2価の有機基又は単結合であり、R12は1価の有機基、-C(=O)OR15で示されるエステル基、-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基又は-O-R17で示されるオルガニルオキシ基であり、R13、R14、R15、R16及びR17は各々独立して水素原子又は1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して1~5の整数である。また、R13及びR14が複数ある場合、同じでも異なっていてもよい。 一方、本件特許明細書には、上記の紫外線吸収剤の具体的な化合物として、市販されている「アデカスタブLA-46」、「Tinuvin1600」、「Tinuvin1577」が挙げられている(本件特許明細書段落0053~0058)。実施例では、アデカスタブLA-46とTinuvin1600が使用されている(本件特許明細書段落0130)。 しかし、上記一般式(1)には、融点が90℃以上の化合物と本件明細書で比較例として示されるBASF社製、商品名「TINUVIN 479」等の90℃未満の化合物が混在していて、その構造は類似している。さらに、上記一般式(1)は、基の定義が有機基等と非常に広範囲であるから、当業者は、本件特許明細書に記載されたアデカスタブLA-46、Tinuvin1600、Tinuvin1600の他に、上記一般式(1)の構造を有するほとんど無限の数の化合物の中から、融点が90℃以上の紫外線吸収作用を有する化合物を見出すのに、過度の試行錯誤を有し、本件発明を容易に実施できない。 (2)具体的主張についての当審の判断 ア 判断基準 本件発明1~11は物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 イ 本件明細書の記載 一般式(1)で示される紫外線吸収剤について、本件明細書には、以下の記載がある。 「【0038】 (表面保護層2) 表面保護層は、基材を被覆するように、本発明の化粧材の最表面に全面にわたって設けられる層であり、本発明の化粧材を保護する層である。 表面保護層は、該表面保護層を構成する樹脂100質量に対して紫外線吸収剤を1質量部以上10質量部以下の含有量で含有することを要し、かつ該紫外線吸収剤の全量に対する、融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が45質量%以上であることを要する。本発明においては、融点90℃以上の紫外線吸収剤という特定の紫外線吸収剤を上記の含有量で含まないと、優れた耐候性は得られない。 ・・・ 【0042】 ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、より具体的には以下の一般式(1)で示されるものが好ましく挙げられる。 【0043】 【化1】 [図:0001437402000015.jpg] 【0044】 一般式(1)中、R11は2価の有機基又は単結合であり、R12は1価の有機基、-C(=O)OR15で示されるエステル基、-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基又は-O-R17で示されるオルガニルオキシ基であり、R13、R14、R15、R16及びR17は各々独立して水素原子又は1価の有機基であり、Xは酸素原子又は単結合であり、n11及びn12は各々独立して1~5の整数である。また、R13及びR14が複数ある場合、同じでも異なっていてもよい。 【0045】 R11の2価の有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基等の脂肪族炭化水素基が好ましく挙げられ、耐候性の観点から、アルキレン基がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。アルキレン基、アルケニレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。 【0046】 R12の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が好ましく挙げられ、アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、上限として好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。アルキル基、アルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、分岐状が好ましく、分岐状がより好ましい。 【0047】 R13及びR14の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アリール基、アリールアルキル基等の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基が好ましい。 【0048】 R13及びR14の1価の有機基のアルキル基の炭素数としては、20以下が好ましく、12以下が更に好ましく、4以下がより更に好ましく、特に2以下が好ましい。すなわち、R13及びR14の1価のアルキル基としては、特にメチル基、エチル基が好ましい。また、入手容易性を考慮すると、メチル基であることが好ましい。 【0049】 R13及びR14のアリール基の炭素数としては、好ましくは6以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。また、アリールアルキル基の炭素数としては、好ましくは7以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。 【0050】 R15、R16及びR17の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R15、R16及びR17がアルキル基、アルケニル基の場合の炭素数としては、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。 【0051】 上記のR11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17の基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1以上4以下のアルキル基等の置換基を有していてもよい。 【0052】 また、n11及びn12は各々独立して1~5の整数であり、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1~2の整数である。n11及びn12が2以上の整数である場合、複数のR13及びR14は同じでもよく、異なっていてもよく、入手容易性の観点から、同じであることが好ましい。 【0053】 融点が90℃以上である、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、代表的には、以下の化学式(2)で示されるもの、すなわち上記一般式(1)において、R11がエチレン基、R12が-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基(R16が3-ヘプチル基)、R13及びR14が水素原子であるものが好ましく例示される。このヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、市販品(「アデカスタブLA-46(品番)」、融点:106℃、株式会社ADEKA製)として入手可能である。 【0054】 【化2】 [図:0001437402000016.jpg] 【0055】 融点が90℃以上である、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、代表的には、以下の化学式(3)で示されるもの、すなわち上記一般式(1)において、R11が単結合、R12がイソオクチル基、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1であるものが好ましく例示される。このヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、市販品(「Tinuvin1600(品番)」、融点:120℃、BASF社製)として入手可能である。 【0056】 【化3】 [図:0001437402000017.jpg] 【0057】 融点が90℃以上である、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、代表的には、以下の化学式(4)で示されるもの、すなわち上記一般式(1)において、R11が単結合、R12がヘキシル基、R13及びR14が水素原子であるものも好ましく例示される。このヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、市販品(「Tinuvin1577(品番)」、融点:148℃、BASF社製)として入手可能である。 【0058】 【化4】 [図:0001437402000018.jpg] 【0059】 本発明において、表面保護層に用いられる紫外線吸収剤は、その全量に対する上記の融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が45質量%以上である。融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が45質量%未満であると、優れた耐候性が得られない。耐候性の向上の観点から、好ましくは55質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、より更に好ましくは80質量%以上である。上限としては特に制限はなく、100質量%、すなわち全量が融点90℃以上の紫外線吸収剤であってもよい。 また、融点90℃以上の紫外線吸収剤は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。 【0060】 本発明において、表面保護層に用いられ得る紫外線吸収剤としては、上記の融点90℃以上の紫外線吸収剤とともに、それ以外の紫外線吸収剤、すなわち融点が90℃未満の紫外線吸収剤を用いることも可能である。この場合、従来化粧材に汎用されてきた紫外線吸収剤を特に制限なく用いることが可能であり、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤の中から適宜選択して用いることができる。またこの場合、それ以外の紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。すなわち、融点90℃以上の紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤を併用する場合は、該以外の紫外線吸収剤として融点90℃未満のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を用いることが好ましく、中でも、融点90℃以上のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤と、融点90℃未満のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤とを併用することが好ましい。融点90℃未満のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の融点は、60℃以上であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましい。 【0061】 表面保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、該表面保護層を構成する上記の樹脂100質量に対して1質量部以上10質量部以下である。1質量部未満であると、紫外線吸収剤としての性能が十分に得られず、一方10質量部より多いと、ブリードアウトが生じやすくなり、また表面保護層の強度が低下する場合がある。耐候性の向上の観点から、表面保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、該表面保護層を構成する上記の樹脂100質量に対して好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、上限として好ましくは8質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。このように、本発明においては、紫外線吸収剤のブリードアウトによる喪失を抑制できるため、通常配合される量よりも少量であっても、優れた耐候性が得られる。」 ウ 判断基準に基づく判断 上記アの判断基準に基づいて、判断する。 上記イに摘記したとおり、本件明細書段落【0042】~【0052】には、一般式(1)について、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17の基の具体例と共に示されるとともに、上記一般式(1)に示される紫外線吸収剤の例として、一般式(1)において、R11がエチレン基、R12が-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基(R16が3-ヘプチル基)、R13及びR14が水素原子である、市販品の「アデカスタブLA-46(品番)(段落【0053】、【0054】)、一般式(1)において、R11が単結合、R12がイソオクチル基、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1である、「Tinuvin1600(品番)」(段落【0055】、【0056】)、一般式(1)において、R11が単結合、R12がヘキシル基、R13及びR14が水素原子である、市販品の「Tinuvin1577(品番)」が、融点、化学式と共に示されている。 そうすると、本件明細書に接した当業者は、例示された市販品の紫外線吸収剤によって本件発明の化粧材ないし樹脂組成物を生産し、使用することができる。 また、例示されている以外の市販されている紫外線吸収剤について、カタログ等に示される化学式から一般式(1)のものであるかを確認し、融点について、カタログ等に融点が示されていればその情報を参考にして、請求項1、11に記載の測定方法で測定することで、一般式(1)の構造を有する紫外線吸収剤を選択することができる。 また、上記一般式(1)の紫外線吸収剤については、本件明細書段落【0042】~【0052】に示されるとおりであり、申立人が主張するような、ほとんど無限の数の化合物が含まれているものとはいえず、一般式(1)の構造を有する紫外線吸収剤の中から融点が90℃以上の紫外線吸収作用を有する化合物を見出すのに、過度の試行錯誤を有するとはいえない。 (3)申立理由2についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~11について、特許法36条4項1号に規定する実施可能要件を、充足する。 2 申立理由3(特許法36条6項1号)について (1)申立人の具体的主張 申立人は申立書において、本件発明が、特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件を満たさないことについて、以下の旨の主張をする。 本件特許発明の一般式(1)は、非常に広範囲で、この一般式には、融点が70℃のTINUVIN 479も含まれる。従って、本件特許発明で用いることのできる紫外線吸収剤を、実施例で用いたアデカスタブLA-46とTinuvin1600、又は本件特許明細書に記載のアデカスタブLA-46、Tinuvin1600及びTinuvin1577から、融点90℃以上の一般式(1)で示される化合物まで拡大することはできない。即ち、本件特許発明で用いる「融点90℃以上の一般式(1)で示される紫外線吸収剤」は本件特許明細書にサポートされているとはいえない。 (2)具体的主張についての当審の判断 ア 判断基準 特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 イ 判断基準に基づく判断 上記アの判断基準に基づいて、判断する。 (ア)本件発明の課題 本件明細書には、課題について、以下の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 ところで近年、屋外用途の化粧材は、地球温暖化の影響による平均気温の上昇に伴い、化粧材の表面温度は70℃程度まで達するような、より苛酷な温度条件下で用いられるようになっており、従来の化粧材では対応しきれず、その劣化の進行は年々早まる傾向にある。そのため、これまでの紫外線吸収剤のブリードアウトの発生を抑制する設計思想自体は妥当といえるが、これを実現するための手段の見直しが必要になっている。 【0007】 本発明は、このような状況下になされたもので、優れた耐候性を有する化粧材、及び表面保護層形成用樹脂組成物を提供することを目的とするものである。」 当該記載から、本件発明の課題は、地球温暖化の影響による平均気温の上昇に伴い、化粧材の表面温度が70℃程度まで達するような、より苛酷な温度条件下で用いられるようになった化粧材について、優れた耐候性を有する化粧材、及び表面保護層形成用樹脂組成物とすることであると認められる。 (イ)サポート要件の判断 本件発明1及び11は、「下記方法により測定された融点90℃以上の下記一般式(1)で示される紫外線吸収剤」と記載されるところ、「融点90℃以上の一般式(1)で示される紫外線吸収剤」は、上記1(2)ウにおいて検討したように、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されている。 そして、本件発明1及び11の当該紫外線吸収剤は、「下記一般式(1)で示される」ものであるとともに「下記方法により測定された融点90℃以上」のものであり、本件発明1及び11の構成を備えることにより、優れた耐候性を有する化粧材、及び表面保護層形成用樹脂組成物となっているものと理解される。 よって、本件発明1、本件発明1を引用し、その構成を全て有する本件発明2~10、及び、本件発明11は、上記アの判断基準に基づいて、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 申立人の言及する「融点が70℃のTINUVIN 479」は、「一般式(1)で示される」ものであるが、「下記方法により測定された融点90℃以上」ではないために比較例とされたものと理解できる。 そうすると、「一般式には、融点が70℃のTINUVIN 479も含まれる」としても、本件発明1及び11が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとの判断は左右されない。 (3)申立理由3についての判断のまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1~11は、特許法36条6項1号に規定するサポート要件を、充足する。 第6 むすび 以上のとおり、本件発明1~11に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件発明1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700921

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