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特許異議申立

2025-700885

金属調加飾シート及びこれを備える金属調加飾成形体

審判番号
2025-700885
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-567611
登録番号
7647583
請求日
2025年09月12日
審決日
2026年06月09日
公報発行日
2026年09月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大日本印刷株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
  • 【異議申立人】天野 文明
審判長/審判官
  • 審判長 一ノ瀬 薫
  • 審判官 稲葉 大紀
  • 審判官 長谷川 一郎
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7647583号発明「金属調加飾シート及びこれを備える金属調加飾成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7647583号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5、7、8〕、6について訂正することを認める。 特許第7647583号の請求項1、2、4~8に係る特許を維持する。 特許第7647583号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7647583号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)12月24日(優先権主張 令和元年12月27日)を国際出願日とする出願であって、令和7年3月10日にその特許権の設定登録がされ、同年3月18日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。 令和7年 9月12日 :特許異議申立人天野文明(以下「申立人」という。)による請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て 令和8年 1月 8日付け:取消理由通知書 令和8年 3月16日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和8年 4月23日 :申立人による意見書の提出(以下「申立人意見書」という。) 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 訂正請求書による訂正の請求(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7647583号の特許請求の範囲を、本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は当審において訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1-1 特許請求の範囲の請求項1において、 「前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0≦x-y≦80である」とあるのを、 「前記基材層と反対側の前記金属層側に接着層を更に備え、 前記接着層は感熱性接着層又は感圧性接着層であり、 前記海部に、前記接着層の一部が充填され、 前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0<x-y≦80である」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2、4、5、7及び8も同様に訂正する。) (2)訂正事項1-2 特許請求の範囲の請求項1において、 「、金属調加飾シート。」の前に、 「(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。また、個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。)」を追加し、さらに、「金属調加飾シート。」の後に「 <条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:3kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:0.9~1.0nm ワーキングディスタンス:3.5mm 観察倍率:50,000倍 階調:8ビット <個々の前記島部のx、yの算出方法> 個々の前記島部のxは、個々の島部の断面の前記基材層側の辺の長さとする。 個々の前記島部のyは、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の2つの角部間の長さとする。個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。」を追加する。 (請求項1の記載を引用する請求項2、4、5、7及び8も同様に訂正する。) (3)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4において、 「請求項3に記載の金属調加飾シート。」とあるのを、 「請求項1に記載の金属調加飾シート。」に訂正する。 (請求項4の記載を引用する請求項5、7及び8も同様に訂正する。) (5)訂正事項4-1 特許請求の範囲の請求項5において、 「請求項1~4の何れか1項に記載の金属調加飾シート。」とあるのを、 「請求項1、2及び4の何れか1項に記載の金属調加飾シート。」に訂正する。 (請求項5の記載を引用する請求項7及び8も同様に訂正する。) (6)訂正事項4-2 特許請求の範囲の請求項5において、 「10%以上25%以下である」の後に、 「(但し、海部の面積比率は、前記金属調加飾シートの前記金属層の表面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して取得した画像から80万画素分の画像を20個切り出し、切り出した20個の画像をそれぞれOtsu’s methodに基づいて2値化処理し、2値化した20個の画像からそれぞれ算出した海部の面積比率の平均値である。)」を追加する。 (請求項5の記載を引用する請求項7及び8も同様に訂正する。) (7)訂正事項4-3 特許請求の範囲の請求項5において、 「金属調加飾シート。」の後に、 「<条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:5kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:9.5~10.0nm ワーキングディスタンス:15mm 観察倍率:10,000倍 階調:8ビット」を追加する。 (請求項5の記載を引用する請求項7及び8も同様に訂正する。) (8)訂正事項5-1 特許請求の範囲の請求項6において、 「請求項1~5の何れか1項に記載の金属調加飾シート。」とあるところ、請求項1を引用するものについて、独立形式請求項に改め、 「基材層上に金属層を有する金属調加飾シートであって、 前記金属層は金属を含む複数の島部と、前記島部の間に位置する海部とを有し、 前記金属層は、融点が240℃以下の金属を含み、 前記島部は、断面視したときに凸状の四角形であり、前記四角形の一辺が前記基材層と対向し、 前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0≦x-y≦80であり」に訂正する。 (9)訂正事項5-2 特許請求の範囲の請求項6の「前記島部の各々を円形と仮定し、」の前に、 「(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。また、個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。)、」を追加し、さらに、「金属調加飾シート。」の後に「 <条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:3kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:0.9~1.0nm ワーキングディスタンス:3.5mm 観察倍率:50,000倍 階調:8ビット <個々の前記島部のx、yの算出方法> 個々の前記島部のxは、個々の島部の断面の前記基材層側の辺の長さとする。 個々の前記島部のyは、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の2つの角部間の長さとする。個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。」を追加する。 (10)訂正事項5-3 特許請求の範囲の請求項6において「前記サイズが100nm以上300nm以下である」とあるのを、「前記サイズが200nm以上300nm以下である」に訂正する。 (11)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7において、 「請求項1~6の何れか1項に記載の金属調加飾シート。」とあるのを、 「請求項1、2、4及び5の何れか1項に記載の金属調加飾シート。」に訂正する。 (請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。) (12)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8において、 「請求項1~7の何れか1項に記載の金属調加飾シートと、被着体とを有する金属調加飾成形体。」とあるのを、 「請求項1、2、4、5及び7の何れか1項に記載の金属調加飾シートと、被着体とを有する金属調加飾成形体。」に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1~8は、請求項2~8が、訂正請求の対象である請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~8〕について請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1-1について 訂正事項1-1は、訂正前の請求項1に記載の「金属調加飾シート」について、「前記基材層と反対側の前記金属層側に接着層を更に備え、前記接着層は感熱性接着層又は感圧性接着層であり、前記海部に、前記接着層の一部が充填され」ること、及び、x-yの下限を「0<x-y」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件訂正前の【請求項3】、明細書の【0023】、【0024】、【0055】の記載に基づく訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2)訂正事項1-2について 訂正事項1-2は、訂正前の請求項1に記載の「金属調加飾シート」について、x-yを算出する手法を明瞭にすることを目的とするものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件明細書の【0016】、【0021】、【0022】、【0026】、【0089】、【図1】、【図6】の記載に基づく訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 特に、x-yを算出する手法に関し、算出対象とする島部の形状について、訂正前の請求項1に係る発明において、「金属を含む複数の島部と、・・・前記島部は、断面視したときに凸状の四角形であり、前記四角形の一辺が前記基材層と対向し、 前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0≦x-y≦80である、」(下線は当審において付した。「・・・」は摘記の省略を示す。以下同様。)と記載されており、算出対象とする島部の形状は、「断面視したときに凸状の四角形」といえる。 また、訂正後の請求項1において「前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0<x-y≦80である(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。・・・)」と特定するものであるから、「x-y」を計算する前提となる「全ての島部」は、「x」、「y」を測定可能であることは明らかであり、「前記島部」である「断面視したときに凸状の四角形であ」るものと理解できるから、算出対象とする島部の形状について、訂正により新たな技術的事項を導入するものとはいえない。 (3)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (4)訂正事項3について 訂正前の請求項4は請求項3を引用しているところ、訂正事項1-1により訂正前の請求項3の発明特定事項を訂正前の請求項1に導入する訂正をしたため、引用関係の整合を取るため、訂正後の請求項1を引用する記載に訂正したものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (5)訂正事項4-1について 訂正前の請求項5は請求項1~4の何れか1項の記載を引用していたところ、訂正事項2により訂正前の請求項3を削除する訂正をしたため、引用関係の整合性を取るため、請求項1、2及び4を引用する記載に訂正したものであるとともに、引用する請求項の数を減少させるものであるから、「明瞭でない記載の釈明」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (6)訂正事項4-2、4-3について 訂正事項4-2、4-3は、海部の面積比率を算出する手法を明瞭にするための訂正をしたものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件明細書の【0047】、【0048】、【0074】、【0075】、【図2】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 特に、訂正事項4-2の「海部面積比率」の算出方法について、一般に「Otsu’s method」は、画像処理において、背景と対象物を分ける最適な閾値を自動で計算する手法として、広く用いられる手法であり、二値化処理の際に、種々の条件等は、当業者が適宜選択し得る事項といえる。また、本件図面の【図2】を参酌すると、薄い黒系色に輪郭が白色の「島部」と濃い黒系色の「海部」が看取でき、「画像をそれぞれOtsu’s methodに基づいて2値化処理し、2値化した・・・画像からそれぞれ算出した海部の面積比率」を求めることは、本件明細書の【0048】の記載から当業者に自明の事項であるといえるから、訂正事項4-2の「海部面積比率」の算出方法について、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。 (7)訂正事項5-1について 訂正前の請求項6は請求項1~5の何れか1項の記載を引用していたところ、請求項2~5を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、訂正前の本件特許請求の範囲の【請求項6】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (8)訂正事項5-2について x-yを算出する手法を明瞭にするための訂正であるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件明細書の【0016】、【0021】、【0022】、【0026】、【0089】、及び、【図1】、【図6】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (9)訂正事項5-3について 島部のサイズを100nm以上300nm以下から200nm以上300nm以下に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0049】、【0093】、【0096】~【0099】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (10)訂正事項6、7について 訂正事項6、7は、訂正後の請求項7、8について、訂正事項2により請求項3が削除されたことに伴い引用する請求項の数を減少させるものであり、また、削除された請求項3を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (11)独立特許要件について 本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、本件訂正に、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。 (12)申立人の主張(訂正要件違反)について 申立人は、申立人意見書において、上記訂正事項1-1、1-2、3~7について、以下のとおり、訂正要件違反である旨を主張する。 ア 訂正事項1-1について、請求項1における「前記海部に、前記接着層の一部が充填され、」という構成、接着層の種類として、「感熱性接着層又は感圧性接着層」と訂正することは、それぞれ「一部」が示す充填の程度の基準が不明であり、また、感熱性及び感圧性の両方を備えた接着層もあり、明確に区別することができず、不明瞭である(申立人意見書(ア)-1)。 イ 訂正事項1-2について、請求項1における「x、y、x-y」の算出方法に関する訂正は、本件明細書の【0026】と【0073】に矛盾する記載があり、恣意的に【0026】の測定方法に訂正しており、不明瞭であり、かつ、新規事項の追加に相当する(申立人意見書(ア)-2)。 ウ 訂正事項1-2について、請求項1における対象となる島部の形状を「凸状の四角形」と特定することは、訂正前の請求項1に係る発明において、島部の形状に基づく大きさの算出方法につき、「全ての島部」を対象としていたのに、凸状の四角形に該当しない島部を排除してしまう旨の訂正は不明確であり、また、島部の形状を「凸状の四角形」と限定しているにもかかわらず、画像中の「全ての島部」を無条件に算出対象とすることとなる、形状限定と無差別な算出方法を併存させる構成は、当初明細書に記載された技術思想とは異なる新たな測定概念を導入するものにほかならず、新規事項の追加に該当する(申立人意見書(ア)-3)。 エ 訂正事項1-2について、請求項1における「個々の前記島部のx、yの算出方法」に関し、「原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。」との訂正は、「原則として、」という曖昧な表現で特定されており不明瞭である(申立人意見書(ア)-4)。 オ 訂正事項4-2について、請求項5における「海部面積比率」について、「Otsu’s method」による二値化処理することを特定するが、明細書には、二値化処理の採用、閾値決定方法、画像取得条件、ノイズ処理条件等の影響因子に関して、全く記載されておらず、二値化処理に関し、画像品質、閾値設定、ノイズ処理等に大きく依存することは、当業者の技術常識であるところ、これらの条件が全く特定されておらず、さらに、図2において、「島部」と「海部」の面積を区別して算出することは困難であるから、このような「海部面積比率」の算出方法の導入は、明細書に開示された範囲を逸脱するものであって、新規事項の追加に該当するとともに、明確性要件を満足するものではない(申立人意見書(エ))。 カ 訂正事項5-3について、請求項6における島部サイズを200~300nmの範囲と規定するが、本件明細書の【0049】によれば、島部が200~300nmの場合、式(1)0≦x-y≦80を満たしにくいことが記載され、さらに、同じく独立請求項である、本件発明1に対応した請求項1においては、かかる島部のサイズが一切規定されておらず、式(1)の内容も異なっていることから、両請求項の関係性に著しい不整合が生じており、このように各請求項間において構成の技術的意義が一貫していないことは、特許請求の範囲全体の解釈に重大な混乱をもたらすもので、明確性要件を満足するものではない(申立人意見書(オ))。 キ 訂正事項3、6、7について、少なくとも訂正事項1が容認できないから、一群の請求項に係る発明として、各訂正事項は容認できない(申立人意見書(ウ)、(カ)、(キ))。 (13) 申立人の主張(訂正要件違反)の検討について ア 上記(12)アについて、申立人は種々不明瞭であることを主張するが、不明瞭であるか否かは訂正要件ではない(上記(11)参照)。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 なお、「前記海部に、前記接着層の一部が充填され、」という構成は、文理上明確であり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。また、接着層の種類として、「感熱性接着層又は感圧性接着層」と特定する点は、感熱性及び感圧性の両方を備えた接着層を排除していないことは明らかであり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 イ 上記(12)イについて、訂正事項1-2が新規事項の追加に該当しないことは、上記3(2)で説示したとおりである。 また、申立人は種々不明瞭であることを主張するが、不明瞭であるか否かは訂正要件ではない(上記(11)参照)。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 なお、「x、y、x-y」の算出方法について、本件明細書の【0026】と【0073】に異なる記載があったとしても、請求項1において、【0026】に基づく測定方法に特定し、その技術的事項は明確であるから、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 ウ 上記(12)ウについて、訂正事項1-2が新規事項の追加に該当しないことは、上記3(2)で説示したとおりである。 また、申立人は種々不明瞭であることを主張するが、不明瞭であるか否かは訂正要件ではない(上記(11)参照)。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 なお、上記3(2)説示したとおり、訂正前の請求項1に係る発明において、島部の形状に基づく大きさの算出方法につき、「全ての島部」を対象としていたとはいえず、申立人の主張は、その前提において失当であり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるはいえない。 エ 上記(12)エについて、申立人は種々不明瞭であることを主張するが、不明瞭であるか否かは訂正要件ではない(上記(11)参照)。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 なお、訂正事項1-2により訂正された請求項1には、「<個々の前記島部のx、yの算出方法>」として、「・・・個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。」とあり、島部の角部の規定方法について、まず、「個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する」とし、「原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。」とした上で、これらの規定では、「前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部」についての規定が困難であるから、「但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。」としたものであると理解できる。 そうすると、島部の角部の規定について「原則として」との表現が用いられているが、その技術的事項は明確であり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 オ 上記(12)オについて、訂正事項4-2が新規事項の追加に該当しないことは、上記3(6)で説示したとおりである。 また、申立人は種々不明瞭であることを主張するが、不明瞭であるか否かは訂正要件ではない(上記(11)参照)。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 カ 上記(12)カについて、申立人は種々不明瞭であることを主張するが、不明瞭であるか否かは訂正要件ではない(上記(11)参照)。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 なお、上記(9)のとおり、訂正前の請求項6における島部のサイズを100nm以上300nm以下から200nm以上300nm以下に限定したにすぎず、その技術的事項は明確であるから、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 キ 上記(12)キについて、上記ア~カのとおり、各訂正事項について訂正が違法であるとはいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 4 別の訂正単位とする求めについて 特許権者は、訂正後の請求項6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。 そして、上記2及び3のとおり本件訂正は認められるから、上記の別の訂正単位とする求めを認める。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5、7、8〕、6について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 基材層上に金属層を有する金属調加飾シートであって、 前記金属層は金属を含む複数の島部と、前記島部の間に位置する海部とを有し、 前記金属層は、融点が240℃以下の金属を含み、 前記島部は、断面視したときに凸状の四角形であり、前記四角形の一辺が前記基材層と対向し、 前記基材層と反対側の前記金属層側に接着層を更に備え、 前記接着層は感熱性接着層又は感圧性接着層であり、 前記海部に、前記接着層の一部が充填され、 前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0<x-y≦80である(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。また、個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。)、金属調加飾シート。 <条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:3kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:0.9~1.0nm ワーキングディスタンス:3.5mm 観察倍率:50,000倍 階調:8ビット <個々の前記島部のx、yの算出方法> 個々の前記島部のxは、個々の島部の断面の前記基材層側の辺の長さとする。 個々の前記島部のyは、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の2つの角部間の長さとする。個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。 【請求項2】 波長550nmにおける反射率が60%以上である、請求項1に記載の金属調加飾シート。」 「【請求項4】 前記x[nm]と前記y[nm]が、10≦x-y≦80nmを満たす、請求項1に記載の金属調加飾シート。 【請求項5】 前記金属層を平面視したときの海部の面積比率が、10%以上25%以下である(但し、海部の面積比率は、前記金属調加飾シートの前記金属層の表面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して取得した画像から80万画素分の画像を20個切り出し、切り出した20個の画像をそれぞれOtsu’s methodに基づいて2値化処理し、2値化した20個の画像からそれぞれ算出した海部の面積比率の平均値である。)、請求項1、2及び4の何れか1項に記載の金属調加飾シート。 <条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:5kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:9.5~10.0nm ワーキングディスタンス:15mm 観察倍率:10,000倍 階調:8ビット 【請求項6】 基材層上に金属層を有する金属調加飾シートであって、 前記金属層は金属を含む複数の島部と、前記島部の間に位置する海部とを有し、 前記金属層は、融点が240℃以下の金属を含み、 前記島部は、断面視したときに凸状の四角形であり、前記四角形の一辺が前記基材層と対向し、 前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0≦x-y≦80であり(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。また、個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。)、 前記島部の各々を円形と仮定し、前記島部1個あたりの面積から算出した直径の平均値を、前記島部のサイズと定義した場合に、前記サイズが200nm以上300nm以下である、金属調加飾シート。 <条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:3kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:0.9~1.0nm ワーキングディスタンス:3.5mm 観察倍率:50,000倍 階調:8ビット <個々の前記島部のx、yの算出方法> 個々の前記島部のxは、個々の島部の断面の前記基材層側の辺の長さとする。 個々の前記島部のyは、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の2つの角部間の長さとする。個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。 【請求項7】 前記金属層は、インジウム又はスズを含む、請求項1、2、4及び5の何れか1項に記載の金属調加飾シート。 【請求項8】 請求項1、2、4、5及び7の何れか1項に記載の金属調加飾シートと、被着体とを有する金属調加飾成形体。」 第4 取消理由通知の概要 本件訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審において通知した取消理由の概要は次のとおりである。なお以下において、申立人が提出した甲第○号証を「甲○」という。 1 取消理由1(新規性) 本件特許の請求項1、5~7に係る発明は、甲3に記載された発明であるから、本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 2 取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲1、2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 取消理由3(明確性要件) 本件特許の請求項1~8に係る特許は、以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (1)本件特許の請求項1には、「前記金属層は金属を含む複数の島部と、・・・を有し、・・・前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0≦x-y≦80である、金属調加飾シート。」と記載されているところ、上記関係式を、「複数の島部」のすべての島部が満たさなければならないのか、複数の島部の内の1つの島部が満たせば足りるのか等、不明確である。 同様の記載を含む請求項3、4も同様である。請求項1、3、4を引用する請求項2~8も不明確である。 (2)本件特許の請求項5には、「前記金属層を平面視したときの海部の面積比率が、10%以上25%以下である」と記載されているところ、「海部の面積比率」はどのように定義されるものか不明確である(【0047】、【0048】参照。)。 請求項5を引用する請求項6~8も不明確である。 [引用文献一覧] 甲3:特開2013-144902号公報 甲1:特開2007-144988号公報 甲2:特開2016-65297号公報 4 当審における判断 当審合議体は以下のとおり、上記取消理由によっては、本件発明1、2、4~8に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。 (1)各文献の記載事項、発明 ア 甲3 (ア) 甲3の記載 甲3には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審において付し、・・・は省略を示す。以下同様。)。 「【請求項1】 無線通信部を内蔵し、樹脂製のハンドルの基材の表面の全部又は一部に無線通信の電波を通過させる金属メッキが形成された車両用ドアハンドルであって、 前記基材の表面に硬化剤を含む樹脂がコーティングされることにより形成されて金属メッキとの親和性を高めるベース樹脂コート層と、 そのベース樹脂コート層上に前記金属メッキとして前記無線通信の電波を透過させる微細な間隙を残して金属が蒸着されることにより形成された金属蒸着層と、 その金属蒸着層上に硬化剤を含む樹脂がコーティングされることにより形成されて前記金属蒸着層と前記ベース樹脂コート層との一体性を強化する第1トップコート層と、 その第1トップコート層上に硬化剤を含む樹脂がコーティングされることにより形成されて前記金属蒸着層の表面を前記第1トップコート層とで2重に保護する第2トップコート層とを備え、 前記第1トップコート層の形成のための樹脂に対する硬化剤の配合率は、前記ベース樹脂コート層及び前記第2トップコート層における各樹脂に対する硬化剤の配合率より高くされたことを特徴とする車両用ドアハンドル。」 「【0003】 ドアハンドルは車両の外部に露出するものであるため、意匠が良好であることとが要求される。このため、ドアハンドルの表面が金属調に加飾される場合がある。ドアハンドルの表面を金属調に加飾する技術として、例えば特許文献1に開示されるものがある。この特許文献1では、ドアハンドルを構成するカバー基体の表面に、インジウム又はスズからなる金属蒸着層を形成し、その金属蒸着層の表面を樹脂塗料で覆うようにしている。」 「【図面の簡単な説明】 【0012】 ・・・ 【図4】ハンドル本体2又はカバー体3の断面図。 【図5】インジウム蒸着膜部23の拡大図。 【図6】第1トップコート24aとインジウム蒸着膜部23との密着性を高めるメカニズムを示す説明図。」 「【0018】 カバー体3は、図2及び図3に示すように、ハンドル本体2のグリップ部4と対応する薄板の船底形状をなす。そして、ハンドル本体2にそのグリップ部4の表面の全体を、手前側から覆う形で取り付けられる。・・・。 【0019】 次に、ハンドル本体2及びカバー体3の表面部位について説明する。ハンドル本体2及びカバー体3の表面の全部には、同じ加飾が施されている。なお、加飾は、ハンドル本体2及びカバー体3の表面の一部に施される態様であってもよい。図4にカバー体3の表面部位を代表して示す。カバー体3は、基材21の表面に、ベースコート22(ベース樹脂コート層、ベース樹脂塗料膜部)、インジウム蒸着膜部23(金属蒸着層)及びトップコート24(トップコート層、トップ樹脂塗料膜部)がこの順に積層されて構成されている。 【0020】 基材21は、金属調加飾を施す前のハンドル基体であり、例えばポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂材の射出成形品である。」 「【0022】 インジウム蒸着膜部23は、ベースコート22上に金属メッキとして無線通信の電波を透過させる微細な間隙を残してインジウム(In)が蒸着されることにより形成されている。具体的に、インジウム蒸着膜部23においては、図5に示すように、インジウムの金属粒子が組成、厚さ、密度又は分布等に関して島状の不連続構造(海島構造)となっており、島状部分23aの隙間に、無線通信装置11(図2参照)から発信された、例えば145kHz(LF帯域)での電波の通過を許容する海状部分23bが形成される。島状部分の厚みは、例えば数nm~数十nmであり、インジウム蒸着膜部23の膜厚は、例えば40nm~60nm(400Å~600Å)程度である。この場合、ベースコート22へのインジウムの蒸着は、所定圧(10-3~10-2Pa程度)に減圧した真空容器(チャンバ)内でインジウムを融点(約167℃)以上に加熱し、インジウムを蒸発(気化)させる周知の蒸着方法で行う。なお、この実施例1では、蒸着金属としてインジウムを採用したが、インジウムに代えてスズを採用してもよい。」 「【0025】には「インジウム蒸着膜部23は、黄色の金属光沢を帯びており、これを銀灰色に見せるために、第1トップコート24aには、青色の顔料が所定量だけ添加される(ブルーイング)。 ・・・ 【0027】 ・・・第2トップコート24bに添加された紫外線吸収剤によって、下層の第1トップコート24aが紫外線から保護されるので、第1トップコート24aの変色が抑制され、インジウム蒸着膜部23を覆う第1トップコート24aにより呈される銀灰色の金属調が長持ちするという効果が得られる。 【0028】 ところで、この実施例1では、第1トップコート24aの形成のための樹脂に対する硬化剤の配合率が、ベースコート22及び第2トップコート24bにおける各樹脂に対する硬化剤の配合率より高く設定されている。具体的には、ベースコート22及び第1トップコート24aにおける各樹脂の配合量を100とした場合に、ベース樹脂用硬化剤の配合量が100に設定され、第1トップ樹脂用硬化剤の配合量が110~200に設定されている。 【0029】 これにより、過剰に添加された第1トップ樹脂用硬化剤により、第1トップコート24aとインジウム蒸着膜部23との密着性を高めることができる。このような密着性を高めるメカニズムとしては、例えば図6に示すように、第1トップ樹脂用硬化剤により、第1トップ樹脂液の成膜化に際して第1トップコート24aが硬化されることに加え、橋渡し結合に関与しない余剰の第1トップ樹脂用硬化剤の反応基24a1とベースコート22の塗膜とがインジウム蒸着膜部23を間に挟んで橋渡し結合するものと推測することができる。」 「【図4】 [図:0001439221000001.jpg] 【図5】 [図:0001439221000002.jpg] 【図6】 [図:0001439221000003.jpg] 」 (イ) 認定事項 a 上記(ア)の図5より、インジウム蒸着膜部23の島状部分23aは、断面視したときに凸状の四角形であり、前記四角形の一辺が基材と対向し、大小さまざまな大きさのものがあり、平面視で数十nm程度の大きさのものが存在することが見て取れる。 b 上記(ア)の図5より、インジウム蒸着膜部23を平面視したときの海状部分23bの面積比率が島状部分の面積比率よりも小さい点が見て取れる。 c 上記(ア)の【0019】には「カバー体2は、基材21の表面に、ベースコート22、インジウム蒸着膜部23及びトップコート24がこの順に積層されて構成されている」と記載されており、【0020】には、「基材21は、金属調加飾を施す前のハンドル基体であり」、【0025】には「インジウム蒸着膜部23は、黄色の金属光沢を帯びており、これを銀灰色に見せるために、第1トップコート24aには、青色の顔料が所定量だけ添加される(ブルーイング)。」、【0027】には「第2トップコート24bに添加された紫外線吸収剤によって、下層の第1トップコート24aが紫外線から保護されるので、第1トップコート24aの変色が抑制され、インジウム蒸着膜部23を覆う第1トップコート24aにより呈される銀灰色の金属調が長持ちするという効果が得られる。」と記載されていることから、カバー体2は、「基体21」に「ベースコート22、インジウム蒸着膜部23及びトップコート24」からなる「金属調加飾」を施したものであるといえる。 (ウ) 甲3に記載された発明 上記(ア)及び(イ)を踏まえ、特に図5に着目すると、甲3には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、括弧内は、理解促進のために特に参考になる箇所を参照として付したものである(以下同様)。 「ドアハンドル100のハンドル本体2に取り付けられるカバー体3であって、(【0014】) 薄板の船底形状をなし、(【0018】) 基材21の表面に、ベースコート22、インジウム蒸着膜部23及びトップコート24がこの順に積層されて構成されている、カバー体3であり、(【0019】) カバー体3の表面の全部には、金属加飾が施されており、(【0019】、【0020】) 前記インジウム蒸着膜部23においては、インジウムの金属粒子が組成、厚さ、密度又は分布等に関して島状の不連続構造(海島構造)となっており、(【0022】) インジウム蒸着膜部23の島状部分23aは、断面視したときに凸状の四角形であり、前記四角形の一辺が基材と対向し、大小さまざまな大きさのものがあり、平面視で数十nm程度の大きさのものが存在し、(上記(イ)) インジウム蒸着膜部23を平面視したときの海状部分23bの面積比率が島状部分の面積比率よりも小さく、(上記(イ)b) 島状部分23aの隙間に、海状部分23bが形成され、インジウムの融点が約167℃である、(【0022】) カバー体3。」 (2)取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 引用発明の「インジウム蒸着膜部23」は、本件発明1の「金属層」に相当する。 引用発明の「基材21」は、「薄板」であるから、本件発明1の「基材層」に相当する。 引用発明の「基材21の表面に、ベースコート22、インジウム蒸着膜部23及びトップコート24がこの順に積層されて構成されている」ことは、本件発明1の「基材層上に金属層を有する」ことに相当する。 引用発明の「カバー体3」は、「薄板」である「基材21」を含んで構成され、「カバー体3の表面の全部には、金属加飾が施されて」いるから、金属調加飾が施されているといえ、本件発明1の「金属調加飾シート」と、「金属調加飾の薄板状部材」の限りで一致する。 引用発明の「インジウム蒸着膜部23」は、「インジウムの金属粒子が組成、厚さ、密度又は分布等に関して島状の不連続構造(海島構造)となって」いるから、本件発明1の「金属層は金属を含む複数の島部と、前記島部の間に位置する海部とを有」することを充足する。 引用発明の「インジウム蒸着膜部23」は、「インジウムの金属粒子が組成、厚さ、密度又は分布等に関して島状の不連続構造(海島構造)となっており、」「インジウムの融点が約167℃であ」るから、本件発明1の「金属層は、融点が240℃以下の金属を含」むことを充足する。 引用発明の「インジウム蒸着膜部23」は、「インジウムの金属粒子が組成、厚さ、密度又は分布等に関して島状の不連続構造(海島構造)となっており、島状部分23aは、断面視したときに凸状の四角形であり、前記四角形の一辺が基材と対向し、大小さまざまな大きさのものがあ」るから、本件発明1の「前記島部は、断面視したときに凸状の四角形であり、前記四角形の一辺が前記基材層と対向」することを充足する。 そうすると、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点1] 「基材層上に金属層を有する金属調加飾の薄板状部材であって、 前記金属層は金属を含む複数の島部と、前記島部の間に位置する海部とを有し、 前記金属層は、融点が240℃以下の金属を含み、 前記島部は、断面視したときに凸状の四角形であり、前記四角形の一辺が前記基材層と対向する、金属調加飾の薄板状部材。」 [相違点1] 金属調加飾の薄板状部材について、本件発明1は、「金属調加飾シート」であるのに対して、引用発明は、「カバー体」であり、シート状とは特定されていない点。 [相違点2] 金属層の島部について、本件発明1は、「前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0<x-y≦80である(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。また、個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。)」、 「<条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:3kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:0.9~1.0nm ワーキングディスタンス:3.5mm 観察倍率:50,000倍 階調:8ビット <個々の前記島部のx、yの算出方法> 個々の前記島部のxは、個々の島部の断面の前記基材層側の辺の長さとする。 個々の前記島部のyは、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の2つの角部間の長さとする。個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。」のに対して、引用発明は、そのような特定がなされていない点。 (以下、当該相違点に係る本件発明1における「(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。)」、 「<条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:3kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:0.9~1.0nm ワーキングディスタンス:3.5mm 観察倍率:50,000倍 階調:8ビット <個々の前記島部のx、yの算出方法> 個々の前記島部のxは、個々の島部の断面の前記基材層側の辺の長さとする。 個々の前記島部のyは、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の2つの角部間の長さとする。個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。」を、まとめて「本件算出手法」という。) [相違点3] 基材層と反対側の金属層側について、本件発明1は、「前記基材層と反対側の前記金属層側に接着層を更に備え、前記接着層は感熱性接着層又は感圧性接着層であり、前記海部に、前記接着層の一部が充填され」るのに対して、引用発明は、そのような特定がなされていない点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。 引用発明の「インジウム蒸着膜部23」は、「インジウムの金属粒子が組成、厚さ、密度又は分布等に関して島状の不連続構造(海島構造)となっており、島状部分23aは、断面視したときに凸状の四角形であり、前記四角形の一辺が基材と対向し、大小さまざまな大きさのものがあり、平面視で数十nm程度の大きさのものが存在」するものであるから、平面視で数十nm程度の大きさの島状部分23aについていえば、「0<x-y≦80」であるものを含む可能性がある。 しかしながら、甲3には、インジウム蒸着膜部23の拡大図が一つ記載されているにすぎず、個々の島部のx及びyに関して、本件算出手法で算出したものであることは、記載も示唆もない。 そして、仮に本件算出手法で算出した場合において、なお上記数値範囲に入るか否か、判然としないというほかない。また、上記相違点2に係る構成が、本件特許に係る出願前において周知技術であると認めるに足る証拠もない。 そうすると、相違点2は実質的な相違点であり、また、引用発明において相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明ではなく、また、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2、4、5、7、8について 本件発明2、4、5、7、8は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(2)ア(イ)と同様の理由により、本件発明5、7は引用発明ではなく、また、本件発明2、4、5、7、8は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明6について (ア)対比 本件発明6と引用発明とを対比する。 両者の相当関係は上記(2)アと同様であり、本件発明6と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点2] 「基材層上に金属層を有する金属調加飾の薄板状部材であって、 前記金属層は金属を含む複数の島部と、前記島部の間に位置する海部とを有し、 前記金属層は、融点が240℃以下の金属を含み、 前記島部は、断面視したときに凸状の四角形であり、前記四角形の一辺が前記基材層と対向する、金属調加飾の薄板状部材。」 [相違点4] 本件発明6は、「金属調加飾シート」であるのに対して、引用発明は、「カバー体」であり、シート状とは特定されていない点。 [相違点5] 金属層の島部について、本件発明6は、「前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0≦x-y≦80であり(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。また、個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。)」、 「<条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:3kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:0.9~1.0nm ワーキングディスタンス:3.5mm 観察倍率:50,000倍 階調:8ビット <個々の前記島部のx、yの算出方法> 個々の前記島部のxは、個々の島部の断面の前記基材層側の辺の長さとする。 個々の前記島部のyは、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の2つの角部間の長さとする。個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。」のに対して、引用発明は、そのような特定がなされていない点。 [相違点6] 島部のサイズについて、本件発明6は、「前記島部の各々を円形と仮定し、前記島部1個あたりの面積から算出した直径の平均値を、前記島部のサイズと定義した場合に、前記サイズが200nm以上300nm以下である」のに対して、引用発明は、そのような特定がなされていない点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず、相違点5について検討する。 相違点5は、相違点2と同様であるので、上記ア(イ)で説示したのと同様の理由により、相違点5は実質的な相違点であり、また、引用発明において相違点5に係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、引用発明ではなく、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についてのまとめ したがって、本件発明1、5~7は、引用発明ではなく、また、本件発明1、2、4~8は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)取消理由3(明確性要件)について ア 明確性要件の判断規範 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。以下、この観点に立って検討する。 イ 明確性要件の判断 (ア)本件特許の請求項1において、「(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。また、個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。)、金属調加飾シート。 <条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:3kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:0.9~1.0nm ワーキングディスタンス:3.5mm 観察倍率:50,000倍 階調:8ビット <個々の前記島部のx、yの算出方法> 個々の前記島部のxは、個々の島部の断面の前記基材層側の辺の長さとする。 個々の前記島部のyは、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の2つの角部間の長さとする。個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。」と記載されている。 すなわち、「x[nm]」、「y[nm]」は、「金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。また、個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。」と特定され、「<条件>」、「<個々の前記島部のx、yの算出方法>」が特定されているから、不明確とはいえない。 そうすると、本件特許の請求項1における「前記金属層は金属を含む複数の島部と、・・・を有し、・・・ 前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0≦x-y≦80である」との記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。同様の記載を含む請求項4、6も同様である。請求項1、4を引用する請求項2、4、5、7、8に係る本件発明2、4、5、7、8も同様である。 (イ)本件特許の請求項5には、「前記金属層を平面視したときの海部の面積比率が、10%以上25%以下である(但し、海部の面積比率は、前記金属調加飾シートの前記金属層の表面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して取得した画像から80万画素分の画像を20個切り出し、切り出した20個の画像をそれぞれOtsu’s methodに基づいて2値化処理し、2値化した20個の画像からそれぞれ算出した海部の面積比率の平均値である。)、請求項1、2及び4の何れか1項に記載の金属調加飾シート。 <条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:5kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:9.5~10.0nm ワーキングディスタンス:15mm 観察倍率:10,000倍 階調:8ビット」と記載されている。 すなわち、「海部の面積比率」は明確であり、本件特許の請求項5における「海部の面積比率」についての記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。請求項5を引用する請求項7、8に係る本件発明7、8も同様である。 ウ 取消理由3についてのまとめ 以上のことから、本件発明1、2、4~8は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、明確性要件を満たしている。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1、2、4~8は、当審において通知した取消理 由によっては取り消すべきものではない。 第5 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 特許異議申立書(以下「申立書」という。)で申立人が主張する申立理由のうち、取消理由通知に採用しなかったものの概要は、次のとおりである。 (1)申立理由1(甲1を主引例とする進歩性) 本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(甲2を主引例とする進歩性) 本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(実施可能要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ア 本件明細書の【0021】等の記載によると本件図面の図3の特に、島部Cにおいて、「角部」の規定や、「角部」間の距離を、どのように測定するかは極めて不明瞭かつ不十分であり、x及びyの値の制御方法につき、極めて不明瞭かつ不十分であり、本発明1等は、図3に示す、全ての島部の形状等に対応した測定方法の記載が事実上なされておらず、かつ、当業者が技術常識を加味しても、島部のx及びyの値、更には、x-yの値を制御できない以上、いわゆる実施可能要件を満足していないことは明白である。 イ 本件発明1等では、海部の面積比率につき、島部の形状や平均粒径を全く考慮していない以上、海部の面積比率の測定方法等の記載が、極めて不明瞭であって、本件明細書の【0075】等の記載をもとに、正確に測定することができない場合があることは明白である。 ウ 本件明細書の【0076】等に記載された反射率の測定方法等の記載によると、反射率につき、島部の形状や平均粒径のみならず、海部の面積比率を全く考慮していない以上、反射率の測定条件が不明であって、反射率の測定方法等の記載が、極めて不明瞭である。本件発明1等は、海部の面積比率が特定されていないことに加えて、x及びyの値の制御方法が、極めて不明瞭かつ不十分であって、当業者であっても、正確に実施できない場合がある以上、いわゆる実施可能要件を満足していないことは明白である。 (4)申立理由4(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ア 明細書の表2~表5に記載されたように、海部の面積比率の値が、所望する反射率に、強く影響することを示しているところ、本件発明1等において、反射率に影響する海部の面積比率の値に関する制限がなされておらず、所望の反射率(60%以上)が得られない発明まで含まれている。 更に、本件明細書の【0046】において、「一方、海部の面積比率が大きくなりすぎると、金属調加飾シートの反射率を60%にすることが困難となる(金属光沢感を得ることが困難となる)。」と記載され、表1において、反射率60%以上が実施例で、かつ、反射率60%未満が比較例と判断されている以上、事実上、反射率を60%以上とすべきことが、明細書全体にわたって規定されていることに疑義はない。 よって、本件発明1等は、所望の反射率(60%以上)を得る上で、海部の面積比率の値等を制限しない限り、当業者であっても、一般化及び拡張することができず、いわゆるサポート要件を満足していないことは明白である。 イ 明細書の表2~表5に記載されたように、島部のxの値が、所望する反射率に、強く影響することを示しているところ、本件発明1等において、島部のxの値に関する制限が何らなされておらず、所望の反射率(60%以上)が得られない発明まで含んでいる。 よって、本件発明1等は、島部のxの値や、反射率(60%以上)に関し、当業者であっても、一般化及び拡張することができない以上、いわゆるサポート要件を満足していないことは明白である。 ウ 明細書の表2~表5に記載されたように、島部のサイズが、所望する反射率に、強く影響することを示しているところ、本件発明1等において、島部のサイズが何ら制限されておらず、所望の反射率(60%以上)が得られない発明まで含んでいる。 よって、本件発明1等は、島部のサイズに関して、当業者であっても、一般化及び拡張することができず、いわゆるサポート要件を満足していないことは明白である。 エ 実施例1~4は、基材層(PMMA)の表面に、所定のプライマー層を設けた状態で、島部のx-yや海部面積比率の値を変えて、所定の反射率等の値を得ているところ、本件発明1等において、所定のプライマー層について何ら言及されておらず、所望の反射率(60%以上)が得られない可能性があることは十分推定されるところである。 よって、所定のプライマー層について何ら制限していない本発明1等は、当業者であっても、一般化及び拡張することができず、いわゆるサポート要件を満足していないことは明白である。 オ 本件発明1等において、金属層は、融点が240℃以下の金属を含むことを特定しているが、実施例1~4で用いた金属は、インジウムのみであって、それ以外の融点が240℃以下の金属である、スズ(融点:231.9℃)、ガリウム(融点:29.8℃)、セシウム(融点:28.4℃)、ナトリウム(融点:97.8℃)、水銀(融点:ー38.8℃)、ルビジウム(融点:38.9℃)等も含んでしまう以上、当業者であっても、一般化及び拡張することができないことは明白である。 よって、補正で導入した融点が240℃以下の金属という構成は、実施例で使用したインジウム以外の金属を含み、効果が確認できない以上、いわゆるサポート要件違反である。 (5)申立理由5(明確性要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ア 本件明細書の【0023】によると島部のx-yを0~80nmの範囲内の値と規定しており、島部のx-yの値が0nmでは、凸状の四角形と言えず、本発明の図3の島部Aが示すように、それでは平板状である。 よって、明細書中に、島部の形状に関し、矛盾する記載がある以上、島部のx-yの値に言及する請求項1等の発明がいわゆる明確性要件を満足していないことは明白である。 イ 本件明細書の【0024】によると、島部のx-yが0より大きいことが好ましく、5nm以上であることが更に好ましく、10nm以上であることが特に好ましい旨が記載されているところ、本件明細書の表2~表5に記載されたように、島部のx-yが10nm以上であっても、所望する反射率が得られていない例が、多々記載されている。 よって、明細書中に、島部のx-yの値に関し、矛盾する記載がある以上、島部のx-yの値に言及する請求項1等の発明がいわゆる明確性要件を満足していないことは明白である。 ウ 本件発明1等において、金属層は、融点が240℃以下の金属を含むことを特定しているところ、融点が240℃以下の金属といった場合、形式的には、光反射性がないナトリウム等や、液体金属である水銀等も含まれてしまい、金属調加飾シートの構成として、甚だ不明確である。 よって、融点が240℃以下の金属という構成は、本発明に使用できない金属も含まれる可能性が極めて高い以上、金属調加飾シートの一部として、融点が240℃以下の金属を構成要件とする請求項1等の発明がいわゆる明確性要件を満足していないことは明白である。 エ 本件明細書の【0049】によると、島部のサイズが100nmの場合、反射率が良いと記載しておきながら、同明細書の表2~表5に示すように、島部のサイズが100nmであっても、反射率の値が60%未満の例が開示されている。 よって、島部のサイズが100nm等の場合、いかにして、所望の反射率である60%を得るのか、十分かつ明確に記載されていない以上、金属調加飾シートとして、反射率に基づく所定効果を発揮する請求項1等につき、明確性要件を満足していないことは明白である。 (6)証拠一覧 申立人が申立書とともに提出した甲1~甲17のうち、上記取消理由で採用しなかった証拠は以下のとおりである。 甲4:参考図1(甲1の図1に開示された島部等の断面及びその部分拡大図) 甲5:参考図2(甲1の図2(審判注:「図4」の誤記と認められる。)における島部及び海部を含む平面図) 甲6:参考図3(本発明の実施例1等に基づくx-yの値と、反射率との関係を示す図) 甲7:参考図4(本発明の表2(海部の面積比率:10%)に基づくx-yの値と、反射率との関係を示す図) 甲8:参考図5(本発明の表3(海部の面積比率:15%)に基づくx-yの値と、反射率との関係を示す図) 甲9:参考図6(本発明の表2~表5(x-y:10nm)に基づく海部の面積比率と、反射率との関係を示す図) 甲10:参考図7(本発明の表2~表5(x-y:20nm)に基づく海部の面積比率と、反射率との関係を示す図) 甲11:参考図8(甲2の図8(a)~(c)の島部の平均粒径及び海部の面積比率を示す図) 甲12:参考図9(甲2の図8(a)~(c)に基づく島部の平均粒径と、海部の面積比率との関係を示す図) 甲13:参考図10(a)~(e)(島部の斜面の傾き(θ)と、島部の断面形状(x:100nm、厚さ30nm)との関係を示す図) 甲14:参考図11(島部の斜面の傾き(θ)と、島部のx-y(x:100nm又は300nm、厚さ:100nm又は30nm)との関係を示す図) 甲15:参考図12(甲3の図4) 甲16:参考図13(甲3のインジウム蒸着膜部の斜め電子顕微鏡写真(倍率:1万)) 甲17:参考図14(甲3の図6(接着剤と、インジウム蒸着膜部の密着性を高めるメカニズムを示す図)) 2 当審における判断 (1)申立理由1(甲1を主引例とする進歩性)について ア 甲1発明 甲1(特開2007-144988号公報)には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「板状の樹脂基材11と、樹脂基材11の上に成膜された無機化合物を含む無機質下地膜12と、無機質下地膜12の上に物理蒸着法により成膜された光輝性及び不連続構造の金属皮膜13とを含み、(【0025】) 不連続構造の金属皮膜13は、複数の島部と島部との間に位置する海部とを有する非常に微細で不連続の海島構造をなしており、(【0033】、図1) 島部は、断面視したときに凸状の四角形であり、四角形の一辺が樹脂基材11と対向しており、(図1) 金属皮膜13の金属はインジウムである、(【0032】) ミリ波レーダー装置カバー。(【0025】)」 イ 本件発明1 (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。 [相違点1A] 金属層の島部の辺の長さについて、本件発明1は、「前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0<x-y≦80である(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。また、個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。)」、 「<条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:3kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:0.9~1.0nm ワーキングディスタンス:3.5mm 観察倍率:50,000倍 階調:8ビット <個々の前記島部のx、yの算出方法> 個々の前記島部のxは、個々の島部の断面の前記基材層側の辺の長さとする。 個々の前記島部のyは、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の2つの角部間の長さとする。個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。」 のに対して、甲1発明は、そのような特定がなされていない点。 (イ) 判断 上記相違点1Aについて検討すると、甲1発明には島部のx、yの大きさ関係について何ら記載はなく、まして測定条件や算出方法についての記載や示唆もない。 そして、申立人が提示した全ての証拠を見ても、相違点1Aに係る本件発明1の構成について、記載も示唆も見いだせず、また、上記相違点1Aに係る本件発明1の構成が当該技術分野において周知技術、慣用技術であるとする事情は窺えない。 そうすると、甲1発明において相違点1Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ) 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2、4、5、7、8について 本件発明2、4、5、7、8は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記イ(イ)と同様の理由により、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。 エ 本件発明6について (ア) 対比 本件発明6と甲1発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。 [相違点2A] 金属層の島部の辺の長さについて、本件発明6は、「前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0≦x-y≦80である(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。また、個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。)」、 「<条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:3kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:0.9~1.0nm ワーキングディスタンス:3.5mm 観察倍率:50,000倍 階調:8ビット <個々の前記島部のx、yの算出方法> 個々の前記島部のxは、個々の島部の断面の前記基材層側の辺の長さとする。 個々の前記島部のyは、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の2つの角部間の長さとする。個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。」のに対して、甲1発明は、そのような特定がなされていない点。 (イ) 判断 上記相違点2Aについて検討する。 上記イ(イ)と同様であり、甲1発明において相違点2Aに係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ) 小括 以上のとおりであるから、本件発明6は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 申立理由1(甲1を主引例とする進歩性)についてのまとめ よって、申立理由1(甲1を主引例とする進歩性)には理由がない。 (2)申立理由2(甲2を主引例とする進歩性)について ア 甲2発明 甲2(特開2016-65297号公報)には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 「樹脂基材の表面に厚さ30nmのインジウム層32を蒸着により成膜し、保護層をインジウム層32上に形成したものであり、(【0041】) インジウム層32は、複数のインジウム粒子32aにより構成され、隣接するインジウム粒子32a間に、微小な隙間が形成されており、(【図4】) インジウム層32のインジウム粒子32aは、断面視したときに四角形であり、四角形の一辺が樹脂基材と対向している、(【図3】) 金属調被膜。(【0025】)」 イ 本件発明1 (ア)対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。 [相違点1B] 金属層の島部の辺の長さについて、本件発明1は、「前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0<x-y≦80である(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。また、個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。)」、 「<条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:3kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:0.9~1.0nm ワーキングディスタンス:3.5mm 観察倍率:50,000倍 階調:8ビット <個々の前記島部のx、yの算出方法> 個々の前記島部のxは、個々の島部の断面の前記基材層側の辺の長さとする。 個々の前記島部のyは、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の2つの角部間の長さとする。個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。」のに対して、甲2発明は、そのような特定がなされていない点。 (イ) 判断 上記相違点1Bについて検討すると、甲2発明には島部のx、yの大きさ関係について何ら記載はなく、まして測定条件や算出方法についての記載や示唆もない。 そして、申立人が提示した全ての証拠を見ても、相違点1Bに係る本件発明1の構成について、記載も示唆も見いだせず、また、上記相違点1Bに係る本件発明1の構成が当該技術分野において周知技術、慣用技術であるとする事情は窺えない。 そうすると、甲2発明において相違点1Bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ) 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2、4、5、7、8について 本件発明2、4、5、7、8は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記ア(イ)と同様の理由により、甲2発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。 エ 本件発明6について (ア) 対比 本件発明6と甲2発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。 [一致点2B] 金属層の島部の辺の長さについて、本件発明6は、「前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0≦x-y≦80である(但し、x-yは、前記金属調加飾シートを積層方向に切断した断面を下記の条件で走査型電子顕微鏡により観察して横幅2.5μmの画像を20個取得し、取得した20個の画像内に含まれる全ての島部から算出したx-yの平均値である。また、個々の島部のx及びyは、下記方法で算出したものである。)」、 「<条件> 装置:走査型電子顕微鏡 観察条件 加速電圧:3kV エミッションカレント:10μA ピクセルサイズ:0.9~1.0nm ワーキングディスタンス:3.5mm 観察倍率:50,000倍 階調:8ビット <個々の前記島部のx、yの算出方法> 個々の前記島部のxは、個々の島部の断面の前記基材層側の辺の長さとする。 個々の前記島部のyは、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の2つの角部間の長さとする。個々の島部の角部は、個々の島部の断面の前記基材層とは反対側の辺の中央部の延在方向と重複し、かつ個々の島部の幅よりも長い線である基準線を元に決定する。原則として、前記基準線から島部の断面が離間する起点を角部と規定する。但し、前記基準線より島部の断面が盛り上がる方向の角部は、前記基準線と島部の断面の斜面との交点を角部と規定する。」のに対して、甲2発明は、そのような特定がなされていない点。 (イ) 判断 a 上記相違点2Bについて検討する。 上記イ(イ)と同様であり、甲2発明において相違点2Bに係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ) 小括 相違点2Bは、相違点1Bと実質的に同じであるので、上記イ(イ)で説示したのと同様の理由により、本件発明6は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 申立理由2(甲2を主引例とする進歩性)についてのまとめ よって、申立理由2(甲2を主引例とする進歩性)には理由がない。 (3) 申立理由3(実施可能要件) ア 実施可能要件の判断規範 物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要するものである。以下、この観点に立って、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するか否かについて検討する。 イ 実施可能要件の判断 (ア)上記1(3)アについて 本件明細書の【0021】には、「(ii)断面画像で、島部の両端部領域にて、該線から島部が離間する起点を「角部」と規定する。 (iii)該線上での角部間の距離を、「基材層と反対側の辺」と定義し、画像上でその長さyを計測する。」と記載されている。 そうすると、本件図面の図3の「島部c」についても、角部が規定され、長さyも計測できるといえる。 したがって、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載がないとはいえない。 (イ)上記1(3)イについて 本件明細書の【0075】には、「上記1-3.に記載した条件で得た実施例及び比較例の金属調加飾シートの電子顕微鏡画像から、80万画素分を切り出した。切り出した画像について、Otsu’s methodに基づいて2値化処理し、それぞれ海部の面積比率(%)を算出した。」と記載されている。そして、仮に島部の形状や平均粒径を考慮していなくても、当業者は明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて海部の面積比率を測定できるといえる。 そうすると、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載がないとはいえない。 (ウ)上記1(3)ウについて 本件特許明細書の【0076】には、「実施例及び比較例の金属調加飾シートからサンプルを切り出し、分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:V-670)を用いて、基材層(PMMA)側から測定光を入射角5度でサンプルに入射させ、サンプルの波長550nmにおける反射率を測定した。」と記載されている。そして、仮に島部の形状や平均粒径、海部の面積比率を考慮していなくても、当業者は明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて反射率を測定できるといえる。 そうすると、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載がないとはいえない。 ウ 申立理由3についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由3には理由がない。 (4) 申立理由4(サポート要件) ア サポート要件の判断規範 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。以下、この観点に立って、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かについて検討する。 イ サポート要件の判断 (ア)上記1(4)ア~エについて 本件明細書には、【0006】に本件発明の課題(以下「本件課題」という。)として「本発明は、所望の金属光沢感を有する金属調加飾シート、及び、該加飾シートを備える金属調加飾成形体を提供すること」が記載され、【0007】に本件課題を解決するための手段として、「いわゆる「海島構造」を有する金属層において、島部の断面が矩形や台形などの凸状四角形となること、更に、その基材層側の辺の長さ及び基材層と反対側の辺の長さとの差により、金属調加飾シートの反射率が大きく変化することから、島部の形状を適切に制御する必要があることを見出し」たこと、特に「前記島部は、断面視したときに凸状の四角形であり、前記四角形の一辺が前記基材層と対向し、前記基材層側の前記島部の辺の長さをx[nm]、前記基材層と反対側の前記島部の辺の長さをy[nm]としたときに、0≦x-y≦80である」が記載されている。 そして、【0010】に、発明の効果として、「本発明に依れば、所望の金属光沢感を有する金属調加飾シート、及び、該加飾シートを備える金属調加飾成形体を得ることができる。」と記載され、【0087】の表1において、所望の金属光沢感を有する金属調加飾シートが確認できる。 ここで「所望の金属光沢感を有する金属調加飾シート」について、「所望の金属光沢感」の程度は明確に特定されておらず、「所望」とは一般に「何かがほしい、何かをしてほしいと望み願うこと。願い。望み。注文。」(広辞苑)であるから、文字どおり、望みの金属光沢感を有する金属加飾シートであるといえる。 そして、本件明細書の【0027】に〔金属調加飾シートの反射率〕として、「本発明における金属調加飾シートは、反射率が60%以上であることが好ましい。反射率を60%以上とすることにより、例えばクロムメッキなどの公知の金属光沢を有する膜を形成した場合と同等の反射率を有する金属調加飾シートとすることができる。」と記載され、好ましい態様として、反射率が60%以上であることが記載されているところ、【0046】に「海部の面積比率が大きくなりすぎると、金属調加飾シートの反射率を60%にすることが困難となる(金属光沢感を得ることが困難となる)」、【0049】に「また、高い反射率(60%以上)を得やすくなる。この結果、金属光沢に優れる金属調加飾シートを得ることができる。」、【0087】の表1において、比較例1、比較例2の反射率(%)がそれぞれ「54」、「57」等と記載されているが、金属調加飾シートの反射率が60%以上であれば、金属光沢に優れる金属調加飾シートを得ることができることを述べるに過ぎず、「反射率が60%以上」の金属調加飾シートを提供することが本件発明の課題であるとまではいえない。 そうすると、上記1(4)ア~エは、本件課題を反射率が60%以上の金属調加飾シートを得るとの前提での主張であり、その前提において誤っており、採用できない。 (イ)上記1(4)オについて 本件明細書の【0039】に、金属層について、「本発明では、蒸着による金属層形成で海島構造をとりやすいとの観点から、金属層はインジウム、スズ、金、及びこれらの合金のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。金属層は、融点が240℃以下の金属を含むことがより好ましく、金属層がインジウム又はスズを含むことがより好ましい。中でも、インジウムは融点が低いために、海島構造となりやすい傾向がある。また、インジウムからなる金属層は、金属光沢に優れ、耐候性が良好である点でも好適である。」と記載されており、本件発明において、金属層が海島構造を備えやすいものとするべく、融点が240℃以下の金属を含むことが特定されていると理解できる。 そうすると、金属調加飾シートの金属層について、当業者が融点が240℃以下の金属を含む構成とすることにより、金属層が海島構造となり本願課題を解決し得ることは推認できるところである。 ウ 申立理由4についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由4には理由がない。 (5)申立理由5(明確性要件) ア 明確性要件の判断規範 明確性要件の判断規範は、上記第4の4(3)アで説示したとおりである。 イ 明確性要件の判断 (ア)上記1(5)ア、イについて 本件発明1において、「前記島部は、断面視したときに凸状の四角形であり、」「0<x-y≦80である」こと、本件発明6において、「前記島部は、断面視したときに凸状の四角形であり、」「0≦x-y≦80であ」ることが特定されている。すなわち、本件発明1、6の当該記載は、文理上明確であり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 また、x-yが0である矩形は、本件明細書の【0007】に「島部の断面が矩形・・・などの凸状四角形」と記載されるように、凸状の四角形である。さらに、島部のx-yが10nm以上であっても、反射率が60%以下である例が、表2~5に記載されているとしても、それが直ちに明確性要件を満たさないとはいえない。特に、「反射率が60%以下である」点については、上記(4)イ(ア)で述べたとおりである。 (イ)上記1(5)ウについて 本件発明1、6において、「金属層は、融点が240℃以下の金属を含」むことが特定されている。すなわち、本件発明1、6の当該記載は、文理上明確であり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。なお、本件発明は、金属調加飾シート及びこれを備える金属調加飾成形体に関するものであるから、光反射性がないナトリウム等や、液体金属である水銀等の本件発明に使用できない金属は包含されないと理解できる。 (ウ)上記1(5)エについて 本件発明1、2、4、5、7、8において、島部のサイズは特定されておらず、本件発明6において「前記サイズが200nm以上300nm以下である」ことが特定されている。すなわち、請求項6の当該記載は、文理上明確であり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 ウ 申立理由5についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由5には理由がない 3 まとめ よって、取消理由に採用しなかった特許異議申立理由には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項1、2、4~8に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1、2、4~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項3に係る特許は、本件訂正により削除されたため、申立人による特許異議の申立てにおける請求項3に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700885

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