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特許異議申立

2026-700157

リサイクルフィルム

審判番号
2026-700157
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-198738
登録番号
7727080
請求日
2026年02月20日
審決日
2026年06月23日
公報発行日
2026年07月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】グンゼ株式会社
  • 【権利者代理人】藤原 賢司
  • 【権利者代理人】山下 未知子
  • 【異議申立人】金澤 毅
審判長/審判官
  • 審判長 岩谷 一臣
  • 審判官 長谷川 一郎
  • 審判官 宮地 匡人
分類
P1651.113-Y (B32B) / P1651.121-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7727080号発明「リサイクルフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7727080号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7727080号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和6年9月13日を出願日とする特願2024-158897号の一部を、令和6年11月14日に新たな特許出願としたものであって、令和7年8月12日にその特許権の設定登録がされ、令和7年8月20日に特許掲載公報が発行された。その後、令和8年2月20日に特許異議申立人金澤毅(以下「申立人」という。)により、その請求項1~4に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 第1樹脂層と、 前記第1樹脂層の一方の面に積層される第2樹脂層と を備えるリサイクルフィルムであって、 前記第1樹脂層は、印刷層を有する樹脂成形物を原料とする再生樹脂原料を含み、 前記リサイクルフィルム全体に対するチタンの重量割合は、0.1ppm以上20.0ppm以下であり、 前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との平均層間強度が、0.85N/10mm以上であり、 ヘイズ値が14%以下である、 リサイクルフィルム。 【請求項2】 前記樹脂成形物は、印刷済みのフィルムから切り出されるフィルム耳であり、前記印刷層は、印刷状態を確認するための情報等が印刷された印刷層であり、 前記第1樹脂層における前記再生樹脂原料の割合は、4.5wt%以下である、 請求項1に記載のリサイクルフィルム。 【請求項3】 前記樹脂成形物は、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びポリアミド系樹脂の少なくとも1種類を含む、 請求項1又は2に記載のリサイクルフィルム。 【請求項4】 熱収縮性フィルムである、 請求項1又は2に記載のリサイクルフィルム。」 第3 申立理由の概要 申立人による特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 また、申立人は、下記3に示した甲第1号証~甲第7号証(それぞれ「甲1」等という。)を証拠として申立書に添付している。 1 申立理由1(新規性、進歩性) 本件発明1~4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明及び周知慣用の技術に基づいて本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~4は、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定に違反してされたものである。 2 申立理由2(サポート要件) 本件発明1~4は、本件明細書等の発明の詳細な説明に記載されていないから、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。 印刷層の構成は、形成する絵柄や、厚さ等により当然変化するものといえ、また再生樹脂原料の脱墨処理の程度等により、再生樹脂原料に混入する印刷層の成分の比率等も変化するものといえる。さらに、チタン以外の硫酸バリウム等の隠ぺい剤によっても層間強度が影響を受けることも知られている。 特にチタンの含有量が、樹脂成形物に含まれる印刷由来成分の分量を代表しうるとする具体的な根拠は示されておらず、また技術常識とも認められない。 そして、層間強度は、例えば接着剤を用いて接着する場合と、共押出等により接合した場合と、のように、各層の接合形態によっても大きな影響を受けるものといえる。 そうすると、例えば本件特許明細書に開示された実施例の場合のように、特定の印刷層が設けられたフィルム耳を再生樹脂原料とし、該再生樹脂原料を所定の割合で含有し、かつ層間をポリエステル系エラストマーからなる接着剤層で接着した場合に課題を解決できることが把握できたとしても、それ以外の場合にまで拡張乃至一般化しうることが、本件特許の原出願日前の技術常識とも認められない。 3 証拠 甲1:国際公開第2020/229932号 甲2:Fabrizio Di Gregorio、外2名、「RecyClass Science behind Recyclability printing Inks」、[online]、2023年7月5日、[取得日 令和8年2月19日]、取得先<https://recyclass.eu/wp-content/uploads/2023/01/230705_RecyClass-Science-behind-recyclability_presentation.pdf> 甲3:Mehrdad Seifali Abbas-Abadi、外16名、「Thermochemical recycling of end-of-life and virgin HDPE: A pilot-scale study」、Journal of Analytical and Applied Pyrolysis、2022年、Vol.166 甲4:五邊 正男、外2名、「グラビアラミネートインキのラミネート強度に及ぼす顔料の影響」、色材、1991年、64巻,12号、P.771-779 甲5:特許第3178551号公報 甲6:「Rollbag(R) Pre-Opened Bags on a Roll and Poly Tubing Guide」、PAC Machinery Bags and Materials、2023年、P.1-20(当審注:(R)は、〇にRの代用) 甲7:特開2008-80686号公報 第4 当審の判断 以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 1 申立理由1(新規性、進歩性)について (1)引用文献の記載事項・発明 ア 甲1 (ア)甲1の記載 甲1には、次の事項が記載されている。()内は、当審訳である。なお、申立人が提出した甲1の翻訳文を参考とした(下線は当審において付与した。「・・・」は省略を示す。以下同様。)。 a 「CLAIMS 1. A film made from a recycled polyethylene composition comprising from 95 to 10 weight% polyethylene and 5 to 90 weight% of recycled polyethylene. ・・・ 7. The film of any of claims 1-3, further characterized by having at least three layers including two skin layers and at least one core layer. 8. The film of claim 7 wherein said at least one core layer comprises at least 70 weight% recycled polyethylene.」 (当審訳:特許請求の範囲 【請求項1】95から10重量%のポリエチレンおよび5から90重量%の再生ポリエチレンを含む再生ポリエチレン組成物から作られたフィルム。 ・・・ 【請求項7】2つのスキン層および少なくとも1つのコア層を含む少なくとも三層を有することをさらに特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のフィルム。 【請求項8】前記少なくとも1つのコア層が、少なくとも70重量%の再生ポリエチレンを含む、請求項7に記載のフィルム。) b 「TECHNICAL FIELD This disclosure relates to films made with blends of recycled polyethylene and “virgin” polyethylene.」(第1ページ3~5行) (当審訳:技術分野 本開示は、再生ポリエチレンと「バージン」ポリエチレンとの混合物で作られたフィルムに関する。) c 「In some embodiments, the recycled polyethylene composition may also include one or more additive. Non limiting examples of additive include an antioxidant, slip agent, anti-static agent, impact modifier, colorant, acid scavenger, processing aid component, melt stabilizer, and nucleating agents. ・・・. The colorant component may include organic dyes, inorganic pigments, carbon black, channel black and titanium dioxide. ・・・」(第6ページ1~12行) (当審訳:いくつかの実施形態において、リサイクルポリエチレン組成物は、また、一つ以上の添加剤を含むことができる。添加剤の非限定的な例としては、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、衝撃改良剤、着色剤、酸捕捉剤、処理助剤成分、溶融安定剤、および核剤が挙げられる。・・・。着色剤成分は、有機染料、無機顔料、カーボンブラック、チャンネルブラックおよび二酸化チタンを含むことができる。・・・) (イ)甲1発明 上記(ア)より、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「95から10重量%のポリエチレンおよび5から90重量%の再生ポリエチレンを含む再生ポリエチレン組成物から作られたフィルムであって、(【請求項1】) 前記フィルムは、2つのスキン層および少なくとも1つのコア層を含む少なくとも三層を有し、(【請求項7】) 前記少なくとも1つのコア層が、少なくとも70重量%の再生ポリエチレンを含む、(【請求項8】) フィルム。」 (ウ)甲1記載事項 上記(ア)cより、甲1には以下の事項(以下「甲1記載事項」という。)が記載されている。 「フィルムを形成するリサイクルポリエチレン組成物に添加する着色剤として、二酸化チタンが含有できること。」 イ 甲2~7 (ア)甲2 甲2には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001437425000001.jpg] 」(15ページ) (当審訳: [図:0001437425000002.jpg] ) 「 [図:0001437425000003.jpg] 」(18ページ) (当審訳: [図:0001437425000004.jpg] ) 「 [図:0001437425000005.jpg] 」(19ページ) (当審訳: [図:0001437425000006.jpg] ) (イ)甲3 甲3には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001437425000007.jpg] [図:0001437425000008.jpg] 」(第5ページ左欄最終行~右欄5行) (当審訳:使用済みHDPE中の最も顕著な金属は、Ca、Si、Al、Mg、Na、K、Fe、およびTiである。アルミニウム箔(不完全選別)およびその他のアルミニウム成分は、アルミニウム混入源となる可能性がある[55]。酸化チタン(白色顔料として)[60]およびカーボンブラック(黒色顔料として)[61]は、プラスチック産業で顔料として最も一般的に使用されている。) (ウ)甲4 甲4には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001437425000009.jpg] [図:0001437425000010.jpg] 」(第771ページ右欄下から2行~第772ページ左欄6行) 「 [図:0001437425000011.jpg] 」(第772ページ右欄7~8行) 「 [図:0001437425000012.jpg] 」(第773ページ左欄10~13行) 「 [図:0001437425000013.jpg] 」(第774ページ右欄下から11行~下から5行) 「 [図:0001437425000014.jpg] 」(第775ページ左欄) (エ)甲5 甲5には、次の事項が記載されている。 「【0002】 【従来の技術】合成樹脂を主原料とした紙代替物である白色フィルムは、天然紙に比べて、耐水性、吸湿寸法安定性、表面安定性、印刷の光沢性と鮮明性、機械的強度などに優れている。近年、これらの長所を活かした用途展開が進められている。白色フィルムの主原料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどが用いられているがこの中でもポリエチレンテレフタレートを代表とするポリエステルは、耐熱性が高い点や、腰が強いという点で優れており、広範な用途展開が可能である。ポリエステルを主原料とした白色フィルムを得る方法として、従来、2酸化チタンや硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の白色顔料を添加する方法が開示されている。しかしながら、隠ぺい剤に起因するボイドによって表面剥離強度の低下、さらには白色フィルムであるがために、透明フィルムでは問題とならなかった紫外線に起因するポリエステル、該ポリエステルと隠ぺい剤による副生物からの劣化による白色度の低下が顕著となり問題となっている。」 (オ)甲6 甲6には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001437425000015.jpg] 」(第8ページ) (当審訳: [図:0001437425000016.jpg] ) (カ)甲7 甲7には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 少なくともポリアミド樹脂(X)を主成分とする層(A)と脂肪族ポリアミド樹脂(Y)とポリアミド樹脂(X)を含む樹脂(Z)からなる層(B)の2層を含む多層延伸フィルムであって、ポリアミド樹脂(X)が、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来するものであり、かつジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が炭素数6~12のα,ω-脂肪族ジカルボン酸に由来するものであり、かつ樹脂(Z)が脂肪族ポリアミド樹脂(Y)を主成分とし、これに該フィルム生産時の切断端材を混合してなるものである、多層延伸フィルム。」 「【0024】 本発明にかかるフィルムは、以下の方法により製造することができる。 まず、ポリアミド樹脂(X)、脂肪族ポリアミド樹脂(Y)よりなる多層フィルムを製造し、耳トリム等を確保する。ついで耳トリム等の切断端材を粉砕、溶融ペレット化してリサイクルペレットを得る。得られたペレットを脂肪族ポリアミド樹脂(Y)にブレンドして樹脂(Z)とし再利用を開始する。・・・」 (キ)周知技術 上記(ア)から、以下の事項は周知技術(以下「周知技術1」という。)である。 「印刷層を形成したフィルムをリサイクルすること。」 上記(イ)から、以下の事項は周知技術(以下「周知技術2」という。)である。 「使用済みHDPE中の最も顕著な金属として、Tiがあり、また、酸化チタンは白色顔料としてプラスチック産業で最も一般的に使用されていること。」 上記(ウ)、(エ)から、以下の事項は周知技術(以下「周知技術3」という。)である。 「酸化チタン等の顔料の種類や含有量により、フィルムにおけるラミネート強度等に影響が生じること。」 上記(オ)から、以下の事項は周知技術(以下「周知技術4」という。)である。 「フィルムのヘイズを6.0~10.0%程度にすること。」 上記(カ)から、以下の事項は周知技術(以下「周知技術5」という。)である。 「多層フィルムの耳トリム等の切断端材を粉砕、溶融ペレット化してリサイクルペレットとして用いること。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ・甲1発明の「コア層」、「スキン層」は、それぞれ、本件発明1の「第1樹脂層」、「第2樹脂層」に相当する。また、甲1発明の「フィルム」は、「少なくとも1つのコア層を含」み、「前記少なくとも1つのコア層」は「少なくとも70重量%の再生ポリエチレンを含」むから、本件発明1の「リサイクルフィルム」に相当する。そうすると、甲1発明の「2つのスキン層および少なくとも1つのコア層を含む少なくとも三層を有するフィルム」は、本件発明1の「第1樹脂層と、 前記第1樹脂層の一方の面に積層される第2樹脂層と を備えるリサイクルフィルム」に相当する。 ・甲1発明の「再生ポリエチレン」は、本件発明1の「再生樹脂原料」に相当する。そうすると、甲1発明の「前記少なくとも1つのコア層が、少なくとも70重量%の再生ポリエチレンを含む」事項は、本件発明1の「前記第1樹脂層は、印刷層を有する樹脂成形物を原料とする再生樹脂原料を含」む事項と、「前記第1樹脂層は、再生樹脂原料を含」む事項に限り一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「第1樹脂層と、 前記第1樹脂層の一方の面に積層される第2樹脂層と を備えるリサイクルフィルムであって、 前記第1樹脂層は、再生樹脂原料を含む、 リサイクルフィルム。」 [相違点1] 再生樹脂原料に関して、本件発明1では、「印刷層を有する樹脂成形物を原料とする」ものであるのに対して、甲1発明では、そのような特定を有さない点。 [相違点2] 本件発明1では、「前記リサイクルフィルム全体に対するチタンの重量割合は、0.1ppm以上20.0ppm以下であ」るのに対して、甲1発明では、そのような特定を有さない点。 [相違点3] 第1樹脂層と第2樹脂層との平均層間強度に関して、本件発明1では、「0.85N/10mm以上であ」るのに対して、甲1発明では、そのような数値範囲であるか不明な点。 [相違点4] ヘイズ値に関して、本件発明1では、「14%以下」であるのに対して、甲1発明では、そのような数値範囲であるか不明な点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 印刷層を形成したフィルムをリサイクルすること、白色顔料として酸化チタンは一般的に用いられていること、リサイクルポリエチレンにチタンが含まれていることは、周知技術1、2として示したとおり、周知の事項である。そうすると、甲1発明における再生ポリエチレンにもチタンが含まれている蓋然性が高い。 しかし、甲1発明及び甲1~7には、リサイクルフィルム全体に対するチタンの重量割合がどの程度であるか、あるいはどの程度の重量割合とするかについては、記載も示唆もない。 もっとも、周知技術3で示したように、酸化チタンは、フィルムにおけるラミネート強度に影響を与えることが知られており、この観点から酸化チタンの含有量を調整する動機は生じ得るが、その重量割合として本件発明1で特定されるような0.1ppm以上20.0ppm以下といった数値は、何ら記載も示唆もない。むしろ、上記イ(ウ)に記載した甲4の数値を見ると、酸化チタンにより剥離強度が低下する値として、酸化チタンの含有量が400~500PHR、ないし200~250PHRであることを示しており、おおよそ本件発明1の数値範囲とはかけ離れていることからすれば、本件発明1の数値範囲を得ることが容易想到であるとはいえない。 よって、相違点2は実質的な相違点であり、本件発明1は甲1発明ではない。 また、甲1発明及び甲1~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 一方、申立人は、相違点2に関して、甲4や甲5に開示されているように、酸化チタン等の顔料の種類や含有量により、フィルムにおけるラミネート強度等に大きな影響が生じることは、本件特許の原出願の出願日前既に周知慣用の技術であることから、フィルムに要求される特性に応じて、チタンの含有量を選択し、層間強度を選択することは設計事項に過ぎない旨主張しているが(異議申立書第22ページ)、甲1発明において、甲1記載事項、甲4及び甲5に基づく周知技術3を適用しても、上記のとおり、リサイクルフィルム全体に対するチタンの重量割合を相違点2に係る数値範囲とすることは、容易想到であるとはいえない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲1~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加するものであるから、上記(2)イと同様の理由により、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲1~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 申立理由2(サポート要件)について (1)特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点に立って検討する。 (2)本件特許明細書の【0004】及び【0005】の記載から、本件発明1が解決しようとする課題は、プラスチック製品から製造される再生樹脂原料を用いて多層構造のリサイクルフィルムを製造する場合に、再生樹脂原料に含まれる印刷層由来の成分に起因して生じる、リサイクルフィルムに含まれる再生樹脂原料を含む層とこれに隣接する層との間の層間剥離が生じ難い多層構造のリサイクルフィルムを提供することであると認められる。 (3)上記課題の解決にあたり、発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。 ア 平均層間強度について 本件明細書には、以下の記載がある。 「【0038】 後述する実施例に係る実験を通して、本発明者らが発見したところによれば、再生樹脂原料を用いて多層構造のリサイクルフィルムを製造すると、リサイクルフィルムに含まれる再生樹脂原料を含む層と、これに隣接する層との間の密着強度(層間強度)が低下し得る。層間強度が低下すると、層間で剥離が生じ易くなり得る。また、本発明者らは、リサイクルフィルムに含まれる印刷由来成分の分量が多くなるほど、リサイクルフィルムの層間強度が低下する傾向にあることも発見した。すなわち、本発明者らは、層間強度が、再生樹脂原料に含まれる印刷由来成分に起因して低下することを発見した。これは、層間の界面に存在する印刷由来成分が、層間の接着力を弱め、界面破壊を生じさせるためと考えられる。従って、印刷由来成分を含む再生樹脂原料を用いて多層構造のリサイクルフィルムを製造する場合、リサイクルフィルムに含まれる印刷由来成分の量を調整することにより、一定の層間強度を確保することが望まれる。また、同じく本発明者らが発見したところによれば、同じ1枚のリサイクルフィルムでも、場所によって層間強度にばらつきがみられる。これは、印刷由来成分が層間の界面において点在しており、印刷由来成分があまり存在しない箇所では層間強度が確保されるものの、印刷由来成分が多く存在する箇所では層間強度が低くなるからと考えられる。 【0039】 以上の観点から、第1樹脂層11と第2樹脂層12との平均層間強度は、0.85N/10mm以上であることが好ましく、0.9N/10mm以上であることがより好ましい。当該数値範囲が満たされる場合、リサイクルフィルム1の層間強度が確保され、層間の剥離が適切に防止される。」 イ チタン含有量について 本件明細書の【0063】【表1】、【0065】、【0068】及び【0069】には、フィルム全体に含まれるチタン含有量が多くなるほど、フィルムの層間強度が低下する傾向にあること、チタン含有量が20ppm以下の実施例1、2では、平均層間強度が0.85N/10mm以上であり、層間の剥離が抑制されること、チタンの含有量が20.02ppmの比較例では、平均層間強度が0.78N/10mmであり、層間の剥離が抑制されないことが記載されている。 また、本件明細書の【0042】には、「・・・樹脂成形物2に含まれるチタンの分量は、樹脂成形物2に含まれる印刷由来成分の分量を概ね代表し得る。ひいては、リサイクルフィルム1に含まれるチタンの分量は、リサイクルフィルム1の製造に用いられた印刷層を有する樹脂成形物2の分量を概ね代表し得る。」と記載されており、本件発明1のフィルム全体に含まれるチタン含有量は当然ゼロより大きいといえる。 (4)したがって、上記(3)から、層間の剥離を引き起こす印刷由来成分を代表し得る、フィルム全体に含まれるチタンの含有量を0より大きく、20ppm以下とし、第1樹脂層11と第2樹脂層12との平均層間強度を、0.85N/10mm以上を確保することで、上記(2)で示した課題を解決できることが理解できる。 (5)そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、上記(2)で示した課題を解決するための手段を有していることから、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 また、請求項1を引用する本件発明2~4についても、同様である。 (6)申立人は、概略、印刷層の構成、脱墨処理の程度、チタン以外の硫酸バリウム等の隠ぺい剤、各層の接合形態などにより層間剥離強度は大きな影響を受けるため、本件特許明細書に開示された実施例の場合に課題を解決できることが把握できたとしても、それ以外の場合にまで拡張ないし一般化しうることが、本件特許の原出願日前の技術常識とも認められない旨主張する。 しかし、本件発明の課題解決手段は、上記(4)のとおりであって、申立人が主張するような種々の点にあるのではない。そして、当該課題解決手段を特定する本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (7)以上より、サポート要件に係る申立理由2には理由がない。 第5 むすび 以上のとおり、請求項1~4に係る特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700157

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