特許異議申立
2025-700199
積層体、チューブ容器本体およびチューブ容器
- 審判番号
- 2025-700199
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-128744外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7535253
- 請求日
- 2025年02月14日
- 審決日
- 2026年04月10日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7535253号発明「積層体、チューブ容器本体およびチューブ容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7535253号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~22〕について訂正することを認める。
特許第7535253号の請求項1~10、12~22に係る特許を維持する。
特許第7535253号の請求項11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7535253号の請求項1~22に係る特許についての出願は、令和5年3月30日を出願日とする特願2023-56714号の一部を同年8月7日に新たな特許出願としたものであって、令和6年8月7日に特許権の設定登録がされ、同月16日に特許掲載公報が発行された。
その後の特許異議申立てに関する手続の概要は、以下のとおりである。
令和7年 2月14日 :特許異議申立人平尾帆波(以下「申立人」という。)による全請求項に係る特許に対する特許異議の申立て
6月13日 :申立人による特許異議申立書の手続補正書(方式)の提出
11月20日付け:取消理由通知書
令和8年 1月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
3月18日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和8年1月26日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、特許第7535253号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~22について訂正することを求める。」ものであり、その内容は、次のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示すため、当審で付与した。
(1)訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の冒頭に「少なくとも、第1のヒートシール層と、バリア性樹脂層と、第2のヒートシール層と、をこの順に備える積層体であって、」とあるのを、「チューブ容器本体の胴部を形成するための積層体であって、前記積層体は、少なくとも、第1のヒートシール層と、バリア性樹脂層と、第2のヒートシール層と、をこの順に備え、」に訂正する。
(請求項1を引用する請求項2~10、12~22も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
同請求項1に「前記第1のヒートシール層が前記第1の表面を構成し、前記第2のヒートシール層が前記第2の表面を構成し、」の後に、「前記第1のヒートシール層が前記胴部の内面側のシーラント層であり、前記第2のヒートシール層が前記胴部の外面側のシーラント層であり、」を追加する。
(請求項1を引用する請求項2~10、12~22も同様に訂正する。)
ウ 訂正事項3
同請求項1に「前記バリア性樹脂層の厚さ(Tb1)に対する比(Tin/Tb1)が、8.0以上であり、」とあるのを、「前記バリア性樹脂層の厚さ(Tb1)に対する比(Tin/Tb1)が、12.0以上、15.0以下であり、前記積層体の総厚さが、260μm以上、380μm以下であり、」に訂正する。
(請求項1を引用する請求項2~10、12~22も同様に訂正する。)
エ 訂正事項4
同請求項11を削除する。
オ 訂正事項5
同請求項12に「請求項11に記載の積層体。」とあるのを、「請求項1に記載の積層体。」に訂正する。
(請求項12を引用する請求項19~22も同様に訂正する。)
カ 訂正事項6
同請求項13に「請求項11に記載の積層体。」とあるのを、「請求項1に記載の積層体。」に訂正する。
(請求項13を引用する請求項14、15、19~22も同様に訂正する。)
キ 訂正事項7
同請求項16に「請求項11に記載の積層体。」とあるのを、「請求項1に記載の積層体。」に訂正する。
(請求項16を引用する請求項17~22も同様に訂正する。)
ク 訂正事項8
同請求項19に「請求項1~18のいずれか一項に記載の積層体」とあるのを、「請求項1~10及び12~18のいずれか一項に記載の積層体」に訂正する。
(請求項19を引用する請求項20~22も同様に訂正する。)
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項2~22は、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~22〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の「積層体」について、「チューブ容器本体の胴部を形成するための積層体であ」ることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、この事項は、訂正前の請求項11の記載、及び明細書の段落【0035】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加には当たらず、さらに、その内容からみて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、「第1のヒートシール層」、「第2のヒートシール層」がそれぞれ「前記胴部の内面側のシーラント層」、「前記胴部の外面側のシーラント層」を構成することを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、この事項は、訂正前の請求項11の記載に基づくものであるから、新規事項の追加には当たらず、さらに、その内容からみて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、「前記バリア性樹脂層の厚さ(Tb1)に対する比(Tin/Tb1)」について、「12.0以上、15.0以下」と限定しつつ、「前記積層体の総厚さが、260μm以上、380μm以下であ」ることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、この事項は、それぞれ明細書の段落【0026】、【0031】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加には当たらず、さらに、その内容からみて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加には当たらず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5~7
訂正事項5~7は、いずれも請求項11の削除に伴い、請求項11を引用する不合理性を解消するため、引用する請求項を請求項1に訂正したものである。そうすると、当該訂正の目的は、明瞭でない記載の釈明に該当する。また、請求項1は、上記(1)~(3)のとおり減縮がなされたものであるから、請求項12、13、16は、当該訂正事項5~7により請求項1を引用することによって、その内容が減縮されることになる。そうすると、当該訂正の目的は、特許請求の範囲を減縮するものにも相当する。
そして、当該訂正事項5~7は、新規事項の追加には当たらず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項8
訂正事項8は、請求項11の削除に伴い、請求項11を引用する不合理を解消し、また、引用する請求項を減縮するものであるから、当該訂正の目的は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明に該当する。また、この事項は、新規事項の追加には当たらず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~22〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~10、12~22に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10、12~22に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
チューブ容器本体の胴部を形成するための積層体であって、
前記積層体は、少なくとも、第1のヒートシール層と、バリア性樹脂層と、第2のヒートシール層と、
をこの順に備え、
前記第1のヒートシール層は、ポリエチレンを主成分として含有し、
前記第2のヒートシール層は、ポリエチレンを主成分として含有し、
前記バリア性樹脂層は、ガスバリア性樹脂を主成分として含有し、
前記積層体は、第1の表面と第2の表面と、を有し、前記第1のヒートシール層が前記第1の表面を構成し、前記第2のヒートシール層が前記第2の表面を構成し、
前記第1のヒートシール層が前記胴部の内面側のシーラント層であり、前記第2のヒートシール層が前記胴部の外面側のシーラント層であり、
前記第1のヒートシール層と前記バリア性樹脂層とが、ポリエチレンを主成分として含有する押出ポリエチレン層を介して積層されているか、および/または、前記バリア性樹脂層と第2のヒートシール層とが、ポリエチレンを主成分として含有する押出ポリエチレン層を介して積層されており、
前記バリア性樹脂層と前記第1の表面との間に位置する、第1の表面を含めたポリエチレンを主成分として含有する層の合計厚さ(Tin)の、前記バリア性樹脂層の厚さ(Tb1)に対する比(Tin/Tb1)が、12.0以上、15.0以下であり、
前記積層体の総厚さが、260μm以上、380μm以下であり、
前記積層体全体におけるポリエチレンの含有割合が、90質量%以上であり、
蒸着膜を備えない、積層体。
【請求項2】
前記バリア性樹脂層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を主成分として含有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記積層体が、第1のポリエチレン層と、第1の接着性樹脂層と、前記バリア性樹脂層と、第2の接着性樹脂層と、第2のポリエチレン層と、を備えるバリアフィルムを備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記バリアフィルムの厚さが、20μm以上100μm以下である、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記合計厚さ(Tin)が、120μm以上250μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記バリア性樹脂層と前記第2の表面との間に位置する、第2の表面を含めたポリエチレンを主成分として含有する層の合計厚さ(Tout)の、前記バリア性樹脂層の厚さ(Tb2)に対する比(Tout/Tb2)が、6.0以上14.0以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記合計厚さ(Tout)が、100μm以上220μm以下である、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記積層体が、前記第1のヒートシール層と前記バリア性樹脂層との間、および/または、前記バリア性樹脂層と前記第2のヒートシール層との間に、印刷基材をさらに備え、
前記印刷基材が、ポリエチレンを主成分として含有する基材と、該基材の少なくともいずれか一方の表面に設けられた印刷層と、を備える、
請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記積層体が、前記バリア性樹脂層、前記印刷基材における基材、前記印刷基材における印刷層および前記第2のヒートシール層をこの順に備える、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記印刷基材における基材が、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種を含有する延伸フィルムである、請求項8に記載の積層体。」
「【請求項12】
前記積層体が、前記第1のヒートシール層と前記バリア性樹脂層との間、および/または、前記バリア性樹脂層と前記第2のヒートシール層との間に、印刷基材をさらに備え、
前記印刷基材が、ポリエチレンを主成分として含有する基材と、該基材の少なくともいずれか一方の表面に設けられた印刷層と、を備え、
前記印刷基材において、前記チューブ容器本体の胴部を形成するためのヒートシールの予定領域に対応する領域に、前記印刷層が形成されていない、
請求項1に記載の積層体。
【請求項13】
前記積層体が、前記内面から順に、
前記第1のヒートシール層と、
所望により押出ポリエチレン層と、
前記バリア性樹脂層を備えるバリアフィルムと、
所望により押出ポリエチレン層と、
ポリエチレンを主成分として含有する基材、および印刷層を備える印刷基材と、
所望により押出ポリエチレン層と、
前記第2のヒートシール層と、
をこの順に備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項14】
前記第1のヒートシール層が白色顔料を含有する、請求項13に記載の積層体。
【請求項15】
前記第1のヒートシール層が、5%以上40%以下の全光線透過率(JIS K7375:2008に準拠して測定)を有するポリエチレンフィルムである、請求項13に記載の積層体。
【請求項16】
前記積層体が、前記内面から順に、
前記第1のヒートシール層と、
所望により押出ポリエチレン層と、
ポリエチレンを主成分として含有する基材と、
所望により押出ポリエチレン層と、
前記バリア性樹脂層を備えるバリアフィルムと、
所望により押出ポリエチレン層と、
ポリエチレンを主成分として含有する基材、および印刷層を備える印刷基材と、
所望により押出ポリエチレン層と、
前記第2のヒートシール層と、
をこの順に備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項17】
前記第1のヒートシール層および前記ポリエチレンを主成分として含有する基材から選択される少なくとも一つが、白色顔料を含有する、請求項16に記載の積層体。
【請求項18】
前記第1のヒートシール層および前記ポリエチレンを主成分として含有する基材から選択される少なくとも一つが、5%以上40%以下の全光線透過率(JIS K7375:2008に準拠して測定)を有するポリエチレンフィルムである、請求項16に記載の積層体。
【請求項19】
頭部と胴部とを備えるチューブ容器本体であって、
前記頭部が、前記胴部の一端に連接している肩部と、前記肩部に連接している抽出口部とを備え、前記胴部が、請求項1~10及び12~18のいずれか一項に記載の積層体により構成されている、
チューブ容器本体。
【請求項20】
前記頭部が、ポリエチレンを含有する樹脂組成物により形成されている、請求項19に記載のチューブ容器本体。
【請求項21】
請求項19に記載のチューブ容器本体と、
キャップと、
を備えるチューブ容器。
【請求項22】
前記キャップが、ポリエチレンを含有する樹脂組成物により形成されている、請求項21に記載のチューブ容器。」
第4 取消理由の概要
取消理由通知で通知した取消理由は、概略、以下のとおりである。
1 (新規性)本件特許の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
2 (進歩性)本件特許の請求項1~22に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 (サポート要件)本件特許の請求項1~22に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
<証拠>
甲1:「Laminated Web ABL PBL MPET」、インターネットアーカイブ、Wayback machine、2020年8月12日アーカイブ、
(https://web.archive.org/web/20200812055924/https:/www.hzmrpack.com/product/laminated-web.html)(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
甲2:特開2021-154656号公報(同甲第2号証)
甲3:特開2021-160267号公報(同甲第3号証)
甲4:特開2022-128096号公報(当審において職権調査した文献)
第5 当審における判断
当審合議体は、以下のとおり、上記取消理由で通知した理由によっては、訂正後の請求項1~10、12~22に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。なお、事案に鑑み、特許異議の申立ての理由のうち、取消理由で採用しなかった本件発明5~7、13、14、16、17、19及び21に対する新規性欠如についても、まとめて判断を行う。
1 証拠に記載の事項等について
(1)甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
ア 「
[図:0001437362000001.jpg]
」
イ 「
[図:0001437362000002.jpg]
」
(2)認定事項
ア 上記(1)アの左欄の記載からみて、「PBL with EVOH」と記載されたフィルムは、PE(白)フィルム/PE(白)押出/EVOH共押出フィルム/PE(白)押出/PEフィルムの順に積層された積層体であること。
イ 上記「PBL with EVOH」と記載されたフィルムの説明は、上記(1)アの右欄、「2)PBL:Plastic Barrier Laminate」の項目に記載されたものであり、その全体の厚さは、310、330、350、370、390、又は400μmのラインナップがあり、また、EVOH共押出フィルムの厚さとしては8μm、15μmがあること。
ウ 上記(1)アの右欄、下から3行目の記載からみて、「PBL with EVOH」と記載されたフィルムには、グラビア印刷等の印刷オプションが用意されていること。
エ 上記(1)アの右欄、最下行の記載、及び同イ左欄の記載からみて、「PBL with EVOH」と記載されたフィルムは、歯磨き粉等のチューブ容器に用いられることが予定されていること。
(3)甲1に記載の発明
上記(2)ア、イ、エから、甲1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「PE(白)フィルム/PE(白)押出/EVOH共押出フィルム/PE(白)押出/PEフィルムの順で積層された積層体であって、全体の厚みが310、330、350、370、390、又は400μmのいずれかであり、EVOH共押出フィルムの厚みは8μm又は15μmである、歯磨き粉等のチューブ容器に用いられる積層体。」
2 取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「歯磨き粉等のチューブ容器に用いられる積層体」は、本件発明1の「チューブ容器本体の胴部を形成するための積層体」と、「チューブ容器本体を形成するための積層体」に限り一致する。
(イ)引用発明の「PE(白)フィルム」、「PEフィルム」は、層構成及び材質を考慮すれば、ヒートシール層であると理解できる。一方、引用発明の積層体は、「歯磨き粉等のチューブ容器に用いられる」ものではあるが、当該「PE(白)フィルム」、「PEフィルム」のいずれの層が「歯磨き粉等のチューブ容器」の内面側又は外面側に位置するかは不明である。
そうすると、当該「PE(白)フィルム」、「PEフィルム」は、いずれが本件発明1の「第1のヒートシール層」、「第2のヒートシール層」であるかは不明であるが、「一方のヒートシール層」、「他方のヒートシール層」である限りにおいてひとまず一致する。
(ウ)引用発明の「EVOH共押出フィルム」は、その材質からみて、本件発明1の「バリア性樹脂層」に相当すると共に、「前記バリア性樹脂層は、ガスバリア性樹脂を主成分として含有し、」という事項を充足する。
(エ)引用発明の「PE(白)フィルム/PE(白)押出/EVOH共押出フィルム/PE(白)押出/PEフィルムの順で積層された積層体」は、本件発明1の「前記積層体は、少なくとも、第1のヒートシール層と、バリア性樹脂層と、第2のヒートシール層と、をこの順に備え、」との関係において、「前記積層体は、少なくとも、一方のヒートシール層と、バリア性樹脂層と、他方のヒートシール層と、をこの順に備え、」という点に限り一致する。
(オ)引用発明の「PE(白)フィルム」、「PEフィルム」は、ポリエチレンを主成分としていることは明らかであるから、本件発明1における「前記第1のヒートシール層は、ポリエチレンを主成分として含有し、前記第2のヒートシール層は、ポリエチレンを主成分として含有し、」との関係において、「一方のヒートシール層は、ポリエチレンを主成分として含有し、他方のヒートシール層は、ポリエチレンを主成分として含有し、」という事項に限り一致する。
(カ)引用発明の「PE(白)フィルム」、「PEフィルム」はいずれも「PE(白)押出」層を介して「EVOH共押出フィルム」に積層されているから、本件発明1の「前記第1のヒートシール層と前記バリア性樹脂層とが、ポリエチレンを主成分として含有する押出ポリエチレン層を介して積層されているか、および/または、前記バリア性樹脂層と第2のヒートシール層とが、ポリエチレンを主成分として含有する押出ポリエチレン層を介して積層されており、」との関係において、「前記一方のヒートシール層と前記バリア性樹脂層とが、ポリエチレンを主成分として含有する押出ポリエチレン層を介して積層されているか、および/または、前記バリア性樹脂層と他方のヒートシール層とが、ポリエチレンを主成分として含有する押出ポリエチレン層を介して積層されており、」という点に限り一致する。
(キ)引用発明の「積層体」は、特に蒸着膜を備えていないから、本件発明1の「蒸着膜を備えない、積層体」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「チューブ容器本体を形成するための積層体であって、
前記積層体は、少なくとも、一方のヒートシール層と、バリア性樹脂層と、他方のヒートシール層と、
をこの順に備え、
前記一方のヒートシール層は、ポリエチレンを主成分として含有し、
前記他方のヒートシール層は、ポリエチレンを主成分として含有し、
前記バリア性樹脂層は、ガスバリア性樹脂を主成分として含有し、
前記一方のヒートシール層と前記バリア性樹脂層とが、ポリエチレンを主成分として含有する押出ポリエチレン層を介して積層されているか、および/または、前記バリア性樹脂層と他方のヒートシール層とが、ポリエチレンを主成分として含有する押出ポリエチレン層を介して積層されており、
蒸着膜を備えない、積層体。」
<相違点1>
本件発明1の「積層体」は、「チューブ容器本体の胴部を形成するための」ものであるのに対し、引用発明の「積層体」は、「歯磨き粉等のチューブ容器に用いられる」ものではあるが、その胴部を形成するためのものであるかは不明である点。
<相違点2>
一方のヒートシール層、他方のヒートシール層に関し、本件発明1は、「前記積層体は、第1の表面と第2の表面と、を有し、前記第1のヒートシール層が前記第1の表面を構成し、前記第2のヒートシール層が前記第2の表面を構成し、前記第1のヒートシール層が前記胴部の内面側のシーラント層であり、前記第2のヒートシール層が前記胴部の外面側のシーラント層であ」るのに対し、引用発明の「PE(白)フィルム」と「PEフィルム」は、そのいずれが内面側ないし外面側に位置し、それぞれの表面を構成しているか不明である点
<相違点3>
本件発明1では、「前記バリア性樹脂層と前記第1の表面との間に位置する、第1の表面を含めたポリエチレンを主成分として含有する層の合計厚さ(Tin)の、前記バリア性樹脂層の厚さ(Tb1)に対する比(Tin/Tb1)が、12.0以上、15.0以下であ」るのに対し、引用発明の当該「比(Tin/Tb1)」は不明である点。
<相違点4>
本件発明1では、「前記積層体の総厚さが、260μm以上、380μm以下であ」るのに対し、引用発明は、「全体の厚みが310、330、350、370、390、又は400μm」である点。
<相違点5>
本件発明1では、「前記積層体全体におけるポリエチレンの含有割合が、90質量%以上であ」るのに対し、引用発明の「積層体」におけるポリエチレンの含有量は、不明である点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点2~4から、まとめて判断する。
まず、甲1の「PE(白)フィルム/PE(白)押出」と「PE(白)押出/PEフィルム」は、それぞれの層厚が不明である上、そのいずれがチューブ容器の内面側ないし外面側であるかは、うかがい知ることができない。そうすると、相違点2、3に関する事項は、甲1には記載も示唆もされていないというほかない。
この点、引用発明の積層体は、「全体の厚みが310、330、350、370、390、又は400μm」であるところ、相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を充足するのは、310、330、350、370μの場合である。そして、引用発明における「EVOH共押出フィルム」は、8μm又は15μmであるところ、当該フィルムが積層体の中央に位置すると仮定した場合、すなわち、「PE(白)フィルム/PE(白)押出」と「/PE(白)押出/PEフィルム」の層厚が同じであると仮定した場合、本件発明1における「ポリエチレンを主成分として含有する層の合計厚さ(Tin)の、前記バリア性樹脂層の厚さ(Tb1)に対する比(Tin/Tb1)」相当の値は、12.0を下回り、上記相違点3を充足しない。
また、引用発明において「PE(白)フィルム/PE(白)押出」、「PE(白)押出/PEフィルム」、「EVOH共押出フィルム」の層厚をそれぞれ調整することは、当業者が適宜行うべき事項であるとしたとしても、上記相違点2~4に係る本件発明1の発明特定事項を充足する値に調整する動機づけは、特段見られない。
さらに、申立人が提出した他の証拠を見ても同様である。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び他の証拠に記載の事項基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、意見書において、EVOH層と総厚を適宜調整することで、比(Tin/Tb1)が本件発明1の範囲に入るものを得ることができる旨主張している。しかし、甲1その他いずれの証拠において、そのような調整をすることは記載も示唆もされておらず、そもそも引用発明の「PE(白)フィルム」、「PEフィルム」のいずれが容器を構成する積層体の内面側ないし外面側に位置するかも不明な中、上記相違点2~4の事項を充足する積層体を得ることは、当業者であっても容易想到ではない。
また、本件発明1に関する効果の主張もするが、そもそも上記のとおり当該構成を得ること自体、容易想到ではない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1に係る特許は、取消理由で通知した理由1(新規性)、理由2(進歩性)によって取り消されるべきものではない。
(2)本件発明2~10、12~22
本件発明2~10、12~22は、いずれも本件発明1を引用するものであるところ、上記(1)のとおりであるから、本件発明2、5~7、13、14、16、17、19及び21は引用発明ではなく、また、本件発明2~10、12~22は、いずれも引用発明及び各証拠に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
3 取消理由3(サポート要件)について
取消理由3の趣旨は、本件発明1において、積層体の第1の表面と第2の表面が定義されておらず、第1の表面側の比(Tin/Tb1)と、第2の表面側の比(Tout/Tb2)は適宜入れ替えて解釈が可能であるところ、そうすると比較例1-1~1-4も本件発明1の数値範囲を満たすため、これを包含する本件発明1は、本件発明の課題解決手段が反映されたものであるということはできない、というものである。
しかるに、本件訂正によってその定義が明らかになったため、当該取消理由は当たらないものとなった。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~10、12~22に係る特許を取り消すことはできない。また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項11に係る特許に対する特許異議の申立ては、本件訂正により当該請求項11が削除されたことにより申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700199