特許異議申立
2025-700020
積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ
- 審判番号
- 2025-700020
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-021926
- 登録番号
- 7510622
- 請求日
- 2024年12月24日
- 審決日
- 2026年06月12日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】伏見 俊介
- 【異議申立人】岡本 正義
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 長谷川 一郎
- 審判官 笹木 俊男
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.4 -YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第39条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7510622号発明「積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7510622号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第7510622号の請求項1、4~10に係る特許を維持する。
特許第7510622号の請求項2、3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7510622号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成30年9月28日に出願した特願2018-185963号の一部を、令和5年2月15日に新たな出願としたものであって、令和6年6月26日にその特許権の設定登録がされ、同年7月4日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年12月24日 :特許異議申立人岡本正義(以下「申立人」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年 3月21日付け:取消理由通知書
同年 5月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 6月25日 :申立人による意見書の提出
同年 8月12日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年10月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年11月26日 :申立人による意見書の提出
同年12月23日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和8年 3月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 4月13日 :申立人による意見書の提出
なお、令和7年5月22日及び同年10月20日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和8年3月5日提出の訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、特許第7510622号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体であって、
前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンから構成され、前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上であり、
前記基材の表面に、印刷処理が施されており、
前記基材が、共押延伸フィルムからなり、
前記共押延伸フィルムが、
高密度ポリエチレンを含む層と、
中密度ポリエチレンを含む層と、
低密度ポリエチレンを含む層、直鎖状低密度ポリエチレンを含む層または超低密度ポリエチレンを含む層と、
中密度ポリエチレンを含む層と、
高密度ポリエチレンを含む層と、
を備え、
前記基材と、前記ヒートシール層との間に蒸着膜を備えることを特徴とする、積層体。」を、
「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体であって、
前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンから構成され、前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上であり、
前記基材の表面に、印刷処理が施されており、
前記基材が、共押延伸フィルムからなり、
前記共押延伸フィルムが、
密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む層と、
密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、及び密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む層と、
密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層と、
を備え、
前記基材と、前記ヒートシール層との間に、延伸ポリエチレンフィルムからなる中間層と、前記中間層の一方の面に設けられた蒸着膜と、を備えることを特徴とする、積層体。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~10も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項4に記載された「請求項3に記載の積層体」を、「請求項1に記載の積層体」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~10も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項6に記載された「請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体」を、「請求項1または4に記載の積層体」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~10も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項7に記載された「請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体」を、「請求項1および4~6のいずれか一項に記載の積層体」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8~10も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項8に記載された「請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体」を、「請求項1および4~7のいずれか一項に記載の積層体」に訂正する。
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項9に記載された「請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体」を、「請求項1および4~7のいずれか一項に記載の積層体」に訂正する。
(9)訂正事項9
本件訂正前の請求項10に記載された「請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体」を、「請求項1および4~7のいずれか一項に記載の積層体」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~10は、請求項2~10が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~10〕について請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1に記載された「高密度ポリエチレン」、「中密度ポリエチレン」、「低密度ポリエチレン」、「直鎖状低密度ポリエチレン」、「超低密度ポリエチレン」について訂正する点(以下「訂正事項1-1」という。)は、これらの密度範囲を明確とするとともにその密度範囲を限定し、さらに、「中密度ポリエチレン」について「(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項1のうち、「低密度ポリエチレンを含む層、直鎖状低密度ポリエチレンを含む層または超低密度ポリエチレンを含む層」を、「低密度ポリエチレン、」「直鎖状低密度ポリエチレン、及び」「超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる層」と訂正する点(以下「訂正事項1-2」という。)は、「層」に含まれる材料を、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンのみに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1のうち、「前記基材と、前記ヒートシール層との間に蒸着膜を備える」を、「前記基材と、前記ヒートシール層との間に、延伸ポリエチレンフィルムからなる中間層と、前記中間層の一方の面に設けられた蒸着膜と、を備える」と訂正する点(以下「訂正事項1-3」という。)は、本件訂正前の請求項1に記載された「積層体」に中間層を加えるとともに、「蒸着膜」を当該中間層の一方の面に設けられたものと限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
以上をまとめると、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項1-1のうち「高密度ポリエチレン」、「中密度ポリエチレン」、「低密度ポリエチレン」、「直鎖状低密度ポリエチレン」、「超低密度ポリエチレン」について密度範囲を明確とするとともに限定する点は、本件特許の明細書の【0037】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項1-1のうち「中密度ポリエチレン」について「(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)」とする点については、「中密度ポリエチレン」から「密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)」を除くことにより、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項1-2は、本件特許の特許請求の範囲の【請求項1】及び明細書の【0035】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項1-3は、本件特許の明細書の【0117】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2、3について
訂正事項2、3は、本件訂正前の請求項2、3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項4~9について
訂正事項4~9は、本件訂正前の請求項4、6~10について、訂正事項2、3によって請求項2、3が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項2、3によって削除された請求項2、3を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4~9は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1、4~10に係る発明(以下「本件発明1」等という。またこれらを「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、4~10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1、4~10の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
基材と、ヒートシール層とを備えた積層体であって、
前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンから構成され、前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上であり、
前記基材の表面に、印刷処理が施されており、
前記基材が、共押延伸フィルムからなり、
前記共押延伸フィルムが、
密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む層と、
密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、及び密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む層と、
密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層と、
を備え、
前記基材と、前記ヒートシール層との間に、延伸ポリエチレンフィルムからなる中間層と、前記中間層の一方の面に設けられた蒸着膜と、を備えることを特徴とする、積層体。
【請求項4】
前記基材と前記中間層との間、および前記中間層と前記ヒートシール層との間に、接着層を備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜であり、
前記蒸着膜と隣接する前記接着層が、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物により構成される、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記基材がインフレーション法により作製されたものである、請求項1または4に記載の積層体。
【請求項7】
包装材料用途に用いられる、請求項1および4~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1および4~7のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製されたものである包装材料。
【請求項9】
包装袋であって、
請求項1および4~7のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、20μm以上60μm以下であることを特徴とする、包装袋。
【請求項10】
スタンドパウチであって、
請求項1および4~7のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、50μm以上200μm以下であることを特徴とするスタンドパウチ。
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
当審において令和7年12月23日付け取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本件特許の請求項1、4~10に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明、下記甲第4号証に記載された事項及び周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲第1号証 国際公開第2016/135213号
甲第4号証 特開2018-16012号公報
(以下、「甲第〇号証」を「甲1」等という。)
参考資料1 国際公開第2015/075081号(令和7年6月25日に申立人が提出)
参考資料2 実願昭54-110159号(実開昭56-27928号)のマイクロフィルム(令和7年11月26日に申立人が提出)
第5 当審の判断
1 引用文献
(1)甲1について
ア 甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている。()内は、当審訳である(なお、下線は当審が付した。「・・・」は省略した部分を表す。以下同様。)。
(ア)第1ページ第10~12行
「
[図:0001439182000001.jpg]
」(背景技術
積層体は、真空成形された包装体などの食品容器から、スタンドアップパウチや製品ラベルに至る物品の全ての態様を形成するための包装産業において幅広く使用されている。・・・)
(イ)第2ページ第4~7行
「
[図:0001439182000002.jpg]
」(1種の樹脂に基づく積層体はより容易にリサイクルできるため、近年、「100%PE」解決策、つまり、さらなるPEフィルム構造に積層されたPEフィルムからなる積層体を提供する傾向がある。リサイクルは、サステナビリティーを改良するための、及び、資源を安全にするためのツールであるため、優先度の高いトピックである。)
(ウ)第2ページ第32~35行
「
[図:0001439182000003.jpg]
」(したがって、本発明の目的は、引張弾性率を改善又は少なくとも維持しながら、及び、さらに、グロス及び透明性などの光学特性と機械的特性との間のバランスを維持しながら、公知の解決策よりもさらにダウンゲージングを可能にする、そのような代替のフィルム処方を提供することである。)
(エ)第3ページ第32行~第4ページ第2行、第6ページ第36、37行
「
[図:0001439182000004.jpg]
[図:0001439182000005.jpg]
・・・
[図:0001439182000006.jpg]
」(第1のフィルム:
本発明の積層フィルム構造の第1フィルムは、少なくとも1つのコア層(C)と、該コア層を挟む2つの外層(O-1、O-2)とを含む縦方向延伸多層フィルムである。
コア層
コア層(C)は、双峰性エチレン/1-ブテン/C6-C12のα-オレフィンターポリマーを含む。
・・・
最終的なターポリマーの密度は、926~950kg/m3であり、好ましくは927~945kg/m3であり、より好ましくは930~940kg/m3である。)
(オ)第9ページ第6~31行
「
[図:0001439182000007.jpg]
・・・
[図:0001439182000008.jpg]
」(しかしながら、本発明の一実施形態では、第1のフィルムとしてブロック化されたフィルム構造を使用することもできる。
この場合、第1のフィルムは、O-1/C1/B1/B1/C1/O-2又はO-1/C1/C2/C3/B1/B1/C3/C2/C1/O-2の構造を有する。ここで、O-1及びO-2は前記の2つの外層に相当し、Cは前記のコア層(C)に相当し、Bはブロック層である。
第1のフィルムがブロックされたフィルムである場合、好ましくは、O-1/C1/C2/C3/B1/B1/C3/C2/C1/O-2のフィルム構造が使用される。
この場合の前記ブロック層(B)は、前記コア層(C)として記載したターポリマーとプラストマーとのブレンドからなる。原則として、ブロック層としての役割を満たすブレンドである限り、いずれのブレンド割合も適切である。
前記ブレンドは、好ましくは60~95重量%、より好ましくは65~90重量%、さらに好ましくは70~85重量%の前記コア層(C)として記載したターポリマーと、好ましくは5~40重量%、より好ましくは10~35重量%、さらに好ましくは15~30重量%の前記プラストマーからなる。
好適なプラストマーは、好ましくはエチレン系プラストマーである。
・・・
好適なエチレン系プラストマーは、0.860~0.915g/cm3の範囲、好ましくは0.870~0.910g/cm3の範囲の密度を有する。)
(カ)第15ページ第30行~第16ページ第4行、第19ページ第1~3行、第17行
「
[図:0001439182000009.jpg]
[図:0001439182000010.jpg]
・・・
[図:0001439182000011.jpg]
・・・
[図:0001439182000012.jpg]
」(第2のフィルム:
積層フィルム構造の第2のフィルムは、少なくとも1つのシール層を含む。
シール層
シール層b1)は、メタロセンで製造された直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)又はエチレン系プラストマーと、低密度ポリエチレン(LDPE)とのブレンドを含む。
ここで、mLLDPEポリマーは、940kg/m3以下の密度を有するエチレン共重合体である。好ましいmLLDPEの密度は、905~940kg/m3、より好ましくは910~937kg/m3であってよい。1つの好適な実施形態では、915~925kg/m3の密度であっても、非常に実現可能である。
・・・
さらなる実施形態では、第2のフィルムは、シール層b1)に加えて、第1のフィルムのコア層(C)として記載したような、926kg/m3から950kg/m3の間の密度を有する双峰性のエチレン/1-ブテン/C6-C12のα-オレフィンターポリマーを含有する1つのさらなる層b2)を含む。
・・・
第2のフィルムは、さらに他の層を含んでもよい。)
(キ)第21ページ第18~20行、第29~37行
「
[図:0001439182000013.jpg]
・・・
[図:0001439182000014.jpg]
」(積層構造
第1のフィルムと第2のフィルムとを含む積層フィルム構造は、第2のフィルムのシール層に第1のフィルムを積層することで得られる。
・・・
本発明に係る積層構造は、スタンディングパウチの製造に特に好適である。
本発明の積層フィルム構造は多くの有利な点を有する。エチレン系ポリマー以外のポリマーが存在しないという「100%PE」解決策として、該積層フィルム構造は、十分にリサイクルでき、このため、サスティナビリティーが向上する。さらに、本発明に従って使用されるMDOフィルムは、公知の解決策よりもさらにダウンゲージすることができるという事実により、少ない材料で積層フィルム構造を製造でき、したがって、他の特性を破壊することなく、コスト及び材料を節約する。)
(ク)第23ページ第1~7行、第18~24行
「
[図:0001439182000015.jpg]
・・・
[図:0001439182000016.jpg]
」(使用した材料:
ALCUDIA○R(当審注:「○R」は○の中にRの代用表記。以下同様。) R4806HT:単峰性のチーグラーナッタで製造された高密度ポリエチレン(HDPE)グレード(Repsol製);MFR2は0.65g/10分であり、密度は948kg/m3である。
・・・
OPE795:双峰性のチーグラーナッタで製造された直鎖状低密度ポリエチレン(C2/C4)グレード BorLiteTM(Borealis AG製)。OPE795のMFR5は0.85g/10分であり、密度は931kg/m3である。
Queo 8201:QueoTM 8201は、単峰性のエチレン系オクテンプラストマーであり(Borealis AG製)、MFR2(190/2.16)は1.1g/10分であり、密度は0.882g/cm3であり、メタロセン触媒を用いた溶液重合法で製造された。)
(ケ)第24ページ第1~3行、第17~30行
「
[図:0001439182000017.jpg]
・・・
[図:0001439182000018.jpg]
・・・
」(実施例:
以下のフィルム構造を作製した:
・・・
発明例4(IE4)
第1のフィルム:ブロックされたフィルム構造O-1/C1/C2/C3/B1/B1/C3/C2/C1/O-2
外層O-1及びO-2:HDPEグレードR4806HT(20%厚)
C1:ターポリマーFX1001(17.5%厚)
C2:ターポリマーFX1001(30%厚)
C3:ターポリマーFX1001(17.5%厚)
B1:ターポリマー80重量%FX1001+20重量%Queo 8201(15%厚)
第2のフィルムとして、以下の2つの構造を使用した:
・・・)
(コ)第25ページ第8~15行
「
[図:0001439182000019.jpg]
」(比較例2 (CE2)
第1のフィルム
ブロックされたフィルム構造O-1/C1/C2/C3/B1/B1/C3/C2/C1/O-2
外層O-1及びO-2:HDPEグレードR4806HT(20%厚)
C1:ターポリマーOPE795(17%厚)
C2:ターポリマーOPE795(31%厚)
C3:ターポリマーOPE795(17%厚)
B1:ターポリマー80重量%OPE795+20重量%Queo 8201(15%厚))
(サ)第25ページ第30~35行
「
[図:0001439182000020.jpg]
」(IE4及びCE2の第1のフィルムは、5層Alpine共押出ライン上に共押出した。
全ての押出機の温度は、A=230℃/B=260℃/C=260℃/D=260℃/E=220℃にセットし、押出ダイの温度は230℃にセットした。
形成したフィルムの厚さは125μmであった(ブロックされたフィルム2×62.5μm)。
アウグスブルク/ドイツのHosokawa Alpine AG製の一軸延伸装置を用いて、延伸を行った。・・・)
(シ)第26ページ第11行~第27ページ第3行
「
[図:0001439182000021.jpg]
[図:0001439182000022.jpg]
[図:0001439182000023.jpg]
」(MDOフィルムの特性も、表1に示す:
表1:
[図:0001439182000024.jpg]
表1から分かるように、本発明に従って調製されたMDOフィルムは、引張弾性率を増加させつつ、当時に、エルメンドルフと光学とを同等のレベルに維持しながら、改善されたダウンゲージ能を示す。)
(ス)第28ページ 請求項1
「
[図:0001439182000025.jpg]
」(請求項
1.1つの第2のフィルムに積層された1つの第1のフィルムを含む積層フィルム構造であって、該積層フィルム構造は、ポリエチレンのみに基いており、
a)前記第1のフィルムは、少なくとも1つのコア層(C)と、該コア層を挟む2つの外層(O-1、O-2)とを含み、
a1)前記コア層(C)は、密度が926~950kg/m3である、双峰性のエチレン/1-ブテン/C6-C12のα-オレフィンターポリマーを含み、
a2)前記2つの外層は、密度が940~970kg/m3である、単峰性のHDPEを含み、
前記第1のフィルムは、縦方向(MD)に1:4~1:12の延伸比で一軸延伸された、厚さ10~27μmのフィルムであり、
b)前記第2のフィルムは、少なくとも1つのシール層を含み、
b1)前記シール層は、メタロセンで製造された直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)又はエチレン系プラストマーと、低密度ポリエチレン(LDPE)とのブレンドを含み、
前記第2のフィルムの厚さは、50~100μmであり、
前記積層フィルム構造には、エチレン系ポリマー以外のポリマーが実質的に存在しない、
積層フィルム構造。)
イ 甲1に記載されていると認められる事項
(ア)「ターポリマーOPE795」について
比較例2のC1~C3、B1に係る「ターポリマーOPE795」(上記ア(コ))は、上記ア(ク)によると、エチレン(C2)とブテン(C4)の2種類のモノマーの共重合体からなる「直鎖状低密度ポリエチレン」であり、ターポリマーではない。この理解は、参考資料1の第22ページの表1(下記(2)を参照。)においても、「OPE795」は「znLLDPE C2/C4」と記載されていることと整合する。
以上から、上記ア(コ)における「ターポリマーOPE795」(原文「terpolymer OPE795」)の記載は「OPE795」の誤記と認める。
(イ)実施例の第2のフィルムの記載(上記ア(ケ))及び甲1が開示する層構造(上記ア(キ)、(ス))を踏まえると、比較例2を含む実施例には、第1のフィルムと第2のフィルムを積層してなる積層フィルム構造の開示があるといえる。
(ウ)甲1が開示する積層フィルム構造は、エチレン系ポリマー以外のポリマーが実質的に存在しないものであるところ(上記ア(キ)、(ス))、比較例2の材料は、発明例4の「ターポリマーFX1001」を直鎖状低密度ポリエチレンである「OPE795」に変えただけであるから(上記ア(ケ)、(コ))、比較例2においても、その積層フィルム構造は、エチレン系ポリマー以外のポリマーが実質的に存在しないものといえる。
ウ 甲1に記載された発明
上記ア、イから、甲1には、特に比較例2に着目すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「第1のフィルムと第2のフィルムを積層してなる積層フィルム構造であって、
第1のフィルムは、ブロックされたフィルム構造O-1/C1/C2/C3/B1/B1/C3/C2/C1/O-2であり、
外層O-1及びO-2は、HDPEグレードR4806HT(高密度ポリエチレン(HDPE)グレード、密度948kg/m3)(20%厚)であり、
コア層C1は、OPE795(直鎖状低密度ポリエチレン(C2/C4)グレード、密度931kg/m3)(17%厚)であり、
コア層C2は、OPE795(31%厚)であり、
コア層C3は、OPE795(17%厚)であり、
ブロック層B1は、80重量%OPE795+20重量%Queo 8201(エチレン系オクテンプラストマー、密度0.882g/cm3)(15%厚)であり、
第1のフィルムは、5層Alpine共押出ライン上に押出し、アウグスブルク/ドイツのHosokawa Alpine AG製の一軸延伸装置を用いて延伸を行い、
第2のフィルムは、メタロセンで製造された直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)又はエチレン系プラストマーと、低密度ポリエチレン(LDPE)とのブレンドを含むシール層を有し、
エチレン系のポリマー以外のポリマーが実質的に存在しない、
積層フィルム構造。」
(2)参考資料1の記載
参考資料1には、以下に示す事項が記載されている。
・第22ページ
「
[図:0001439182000026.jpg]
」(表1
[図:0001439182000027.jpg]
)
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「第1のフィルム」は、本件発明1の「基材」に相当する。
甲1発明の「第2のフィルム」は、「シール層を有」することから、本件発明1の「ヒートシール層」に相当する。
甲1発明の「第1のフィルムと第2のフィルムを積層してなる積層フィルム構造」は、本件発明1の「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体」及び「積層体」に相当する。
甲1発明の「第1のフィルム」は、「5層Alpine共押出ライン上に押出し、アウグスブルク/ドイツのHosokawa Alpine AG製の一軸延伸装置を用いて延伸を行」ったものであるから、本件発明1の「前記基材が、共押延伸フィルムからな」る態様であるといえる。
甲1発明の「HDPEグレードR4806HT(高密度ポリエチレン(HDPE)グレード、密度948kg/m3)」である「外層O-1及びO-2」は、本件発明1の「密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層」に相当する。
甲1発明の「OPE795(直鎖状低密度ポリエチレン(C2/C4)グレード、密度931kg/m3)」である「コア層C1」、「コア層C2」及び「コア層C3」を合わせた層は、本件発明1の「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む層」と、「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層」の限りで一致する。
甲1発明における「エチレン系オクテンプラストマー」である「Queo 8201」は、エチレンを主体としたエチレン-オクテン共重合体であるからポリエチレンであり、また、その密度は「0.882g/cm3」であるから、「密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレン」といえる。そうすると、甲1発明の「80重量%OPE795+20重量%Queo 8201(エチレン系オクテンプラストマー、密度0.882g/cm3)」を含む「ブロック層B1」は、本件発明1の「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、及び密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる層」と、「密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層」の限りで一致する。
甲1発明において、「第1のフィルム」を構成する「HDPEグレードR4806HT(高密度ポリエチレン(HDPE)グレード、密度948kg/m3)」、「OPE795(直鎖状低密度ポリエチレン(C2/C4)グレード、密度931kg/m3)」、「Queo 8201(エチレン系オクテンプラストマー、密度0.882g/cm3)」は、いずれもポリエチレンであるから、甲1発明における「第1のフィルム」の構成は、本件発明1における「前記基材」が「ポリエチレンから構成され」ることに相当する。
甲1発明の「メタロセンで製造された直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)又はエチレン系プラストマーと、低密度ポリエチレン(LDPE)とのブレンドを含むシール層を有」する態様は、本件発明1の「前記ヒートシール層」が「ポリエチレンから構成され」る態様に相当する。
そうすると、甲1発明と本件発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体であって、
前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンから構成され、
前記基材が、共押延伸フィルムからなり、
前記共押延伸フィルムが、
密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層と、
を備える、積層体。」
[相違点1-1]
本件発明1は「前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上であ」るのに対し、甲1発明は「積層フィルム構造」におけるポリエチレンの含有量が不明である点。
[相違点1-2]
本件発明1は「前記基材の表面に印刷処理が施されて」いるのに対し、甲1発明はそのようなものではない点。
[相違点1-3]
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層に関して、本件発明1では「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む」のに対し、甲1発明では、「OPE795(直鎖状低密度ポリエチレン(C2/C4)グレード、密度931kg/m3)」である「コア層C1」、「コア層C2」及び「コア層C3」を合わせた層である点。
[相違点1-4]
密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層に関して、本件発明1では「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、及び密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる」のに対し、甲1発明の「ブロック層B1」は「80重量%OPE795+20重量%Queo 8201(エチレン系オクテンプラストマー、密度0.882g/cm3)」である点。
[相違点1-5]
本件発明1は「前記基材と、前記ヒートシール層との間に、延伸ポリエチレンフィルムからなる中間層と、前記中間層の一方の面に設けられた蒸着膜と、を備える」のに対して、甲1発明はそのような中間層及び蒸着膜を備えていない点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点1-3、1-4を併せて検討する。
まずは相違点1-4について検討すると、本件発明1における「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、及び密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる層」という事項は、当該「層」に含まれる材料を、それぞれ所定の密度範囲の低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンのいずれかのみに限定するものと理解されるところ、甲1発明の「ブロック層B1」に含まれる「OPE795」は、その密度(931kg/cm3(=0.931g/cm3))が、本件発明1における「低密度ポリエチレン」、「直鎖状低密度ポリエチレン」、「超低密度ポリエチレン」の各密度範囲を超えるものであるから、これらのポリエチレンには該当しない。
上記「OPE795」に関し、甲1における「前記ブロック層(B)は、前記コア層(C)として記載したターポリマーとプラストマーとのブレンドからなる。」との記載(上記1(1)ア(オ))、並びに、発明例4及び比較例2のB1にC1~C3と同じポリマー(ターポリマーFX1001、OPE795)が用いられているという実施例に記載の態様(上記1(1)ア(ケ)、(コ))からすると、甲1では、ブロック層(B)のプラストマーとブレンドするポリマーに、コア層(C)のポリマーを用いることが想定されているといえる。
そして、甲1には、コア層の密度が926~950kg/m3(=0.926~0.950g/cm3)であること(上記1(1)ア(エ))が記載されているから、甲1発明において、「Queo 8201」とブレンドするポリマー、すなわち、「コア層C1」、「コア層C2」及び「コア層C3」のポリマーに、密度が0.925g/cm3未満のものを採用することの動機付けがない。
また、仮に甲1発明の「コア層C1」、「コア層C2」及び「コア層C3」において、「OPE795」の代わりに密度が0.925g/cm3未満のポリエチレンを選択できたとしても、これは、本件発明1の「中密度ポリエチレン」の密度範囲を下回るものであるから、甲1発明の「コア層C1」、「コア層C2」及び「コア層C3」を合わせた層は、本件発明1の「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む層」と、相違点1-3で示した点に加え、その密度についても相違することとなる。そうすると、甲1発明において「ブロック層B1」の「Queo 8201」とブレンドするポリマーに「コア層C1」、「コア層C2」、「コア層C3」のポリマーが採用される以上、相違点1-4に係る本件発明1の「低密度ポリエチレン」又は「直鎖状低密度ポリエチレン」、「超低密度ポリエチレン」の密度範囲と、相違点1-3に係る本件発明1の「中密度ポリエチレン」の密度範囲との双方を同時に満たすことは成立し得ない。
したがって、甲1発明において、相違点1-3、1-4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立人の主張について
相違点1-4に関する点について、申立人は令和8年4月13日提出の意見書において、甲1におけるOPE795の代わりに、甲1の第16ページ第1~4行に記載の密度が915~925kg/m3のLLDPEを用いることや、参考資料1の表1において、OPE795と併記されたOPE792などの密度が0.925g/cm3未満の多峰性LLDPEを用いることには格別の困難性はなく、さらには、甲1発明におけるOPE795は、低密度ポリエチレンであるから、低密度ポリエチレンの密度として一般的な密度である0.925g/cm3未満のものを用いることは、当業者が容易になし得たことである旨、主張している。
しかし、甲1の第16ページ第1~4行に記載の密度は、第2のフィルムに含まれるシール層に関するものである(上記1(1)ア(カ))。
上記(2)で説示したとおり、甲1では、ブロック層(B)のプラストマーとブレンドするポリマーにコア層(C)のポリマーを用いることが想定されており、また、コア層の密度は別に記載されている(上記1(1)ア(エ))ところ、シール層の密度はその範囲を下回るものであるから、甲1発明の「OPE795」の代わりに、あえてシール層用のLLDPEを採用する動機付けがない。また、参考資料1に記載のLLDPE、低密度ポリエチレンの密度として一般的な密度である0.925g/cm3未満のものも、甲1に記載のコア層の密度範囲を下回るものであるから、同様に採用する動機付けがない。
仮に、甲1発明の「OPE795」の代わりにこれらのLLDPEを選択できたとしても、上記(2)で説示したとおり、甲1発明において「ブロック層B1」の「Queo 8201」とブレンドするポリマーに「コア層C1」、「コア層C2」、「コア層C3」のポリマーが採用される以上、相違点1-4に係る本件発明1の「低密度ポリエチレン」又は「直鎖状低密度ポリエチレン」、「超低密度ポリエチレン」の密度範囲と、相違点1-3に係る本件発明1の「中密度ポリエチレン」の密度範囲との双方を同時に満たすことはできないものである。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。
(4)小括
よって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明4~10について
本件発明4~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、上記2と同様の理由により、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 令和7年12月23日付け取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった申立理由の概要
申立人は、以下に示す甲1~甲7、参考資料1、参考資料2を提出し、本件発明1~10に係る特許は、以下の理由により取り消すべきものである旨を主張する。
(1)申立理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、下記甲1に記載された甲1A発明、甲1C発明又は下記甲6に記載された甲6発明、下記甲4に記載された事項、下記甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
なお、申立理由1のうち、甲1の比較例2に基づく甲1B発明を主引例とする理由は、令和7年12月23日付け取消理由通知書(決定の予告)で採用したものである。
(2)申立理由2(同日出願)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件特許と同日の出願である甲7に係る出願の請求項2~11に係る発明と同一であるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明の課題を解決できた積層体における基材として、基材Aしか記載されておらず、本件発明1に含まれる基材のすべてにおいて、本件発明の課題を解決することができるとは認められない。
(4)申立理由4(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 本件発明1には、「高密度ポリエチレン」、「中密度ポリエチレン」、「低密度ポリエチレン」、「直鎖状低密度ポリエチレン」及び「超低密度ポリエチレン」なる記載があるが、これら各種ポリエチレンの密度を明確に理解できない。
イ 本件発明1では、共押延伸フィルムが、高密度ポリエチレンを含む層と、中密度ポリエチレンを含む層と、低密度ポリエチレンを含む層、直鎖状低密度ポリエチレンを含む層または超低密度ポリエチレンを含む層と、中密度ポリエチレンを含む層と、高密度ポリエチレンを含む層と、を備えることが規定されているが、これら各層をどのように備えるのか、特にこれらの各層の積層順が明確に理解できない。
(5)申立人が提出した証拠
甲1 国際公開第2016/135213号
甲2 「Polyethylene BorShapeTM FX1001」,(オーストリア),Borealis AG,2012年1月19日,p.1-4
甲3 「AFFINITYTM EG8100G Polyolefin Plastomer」,(米),Dow Chemical Company,2016年1月12日,p.1-2
甲4 特開2018-16012号公報
甲5 特開2008-265854号公報
甲6 国際公開第2017/102704号
甲7 特願2024-78376号(特開2024-100817号公報)
参考資料1 国際公開第2015/075081号
参考資料2 実願昭54-110159号(実開昭56-27928号)のマイクロフィルム
2 申立理由1(進歩性)についての判断
(1)甲1及び甲6に記載された発明
ア 甲1A発明
甲1には、特に、請求項1、5の記載、外層及びコア層の密度に関する記載(第6ページ第36、37行、第8ページ第1~3行)、ブロック層に関する記載(第9ページ第16~31行)、ブロックフィルムの製造方法に関する記載(第12ページ第19~28行)を参照すると、以下の発明(以下「甲1A発明」という。)が記載されている。
「第1のフィルムと第2のフィルムを積層してなる積層フィルム構造であって、
前記第1のフィルムは、O-1/C1/B1/B1/C1/O-2のブロックされたフィルム構造を有し、
外層O-1及びO-2は、密度が945~965kg/m3である、単峰性のHDPEを含み、
コア層C1は、密度が930~940kg/m3である、双峰性のエチレン/1-ブテン/C6-C12のα-オレフィンターポリマーを含み、
ブロック層B1は、前記コア層C1で用いたターポリマーとプラストマーとからなるブロック層であり、前記プラストマーは、密度が0.870~0.910g/cm3である、エチレン系プラストマーであり、
前記第1のフィルムは、縦方向(MD)に1:4~1:12の延伸比で一軸延伸されたフィルムであり、ブロック層B1を介して互いに積層された2つの同じO/C/Bフィルム(3層共押し出しフィルム)から形成され、
第2のフィルムは、メタロセンで製造された直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)又はエチレン系プラストマーと、低密度ポリエチレン(LDPE)とのブレンドを含むシール層を有し、
エチレン系のポリマー以外のポリマーが実質的に存在しない、
積層フィルム構造。」
イ 甲1C発明
甲1には、特に請求項1、発明例4に着目すると、以下の発明(以下「甲1C発明」という。)が記載されている(特に、第23ページ第1~24行、第24ページ第17~23行、第25ページ第30~35行、第28ページ第2~18行を参照。)。
「第1のフィルムと第2のフィルムを積層してなる積層フィルム構造であって、
第1のフィルムは、ブロックされたフィルム構造O-1/C1/C2/C3/B1/B1/C3/C2/C1/O-2であり、
外層O-1及びO-2は、HDPEグレードR4806HT(高密度ポリエチレン(HDPE)グレード、密度948kg/m3)(20%厚)であり、
コア層C1は、ターポリマーFX1001(双峰性のチーグラーナッタで製造されたターポリマー(C2/C4/C6)グレード、密度931kg/m3)(17.5%厚)であり、
コア層C2は、ターポリマーFX1001(30%厚)であり、
コア層C3は、ターポリマーFX1001(17.5%厚)であり、
ブロック層B1は、80重量%FX1001+20重量%Queo 8201(エチレン系オクテンプラストマー、密度0.882g/cm3)(15%厚)であり、
第1のフィルムは、5層Alpine共押出ライン上に押出し、アウグスブルク/ドイツのHosokawa Alpine AG製の一軸延伸装置を用いて延伸を行い、
第2のフィルムは、メタロセンで製造された直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)又はエチレン系プラストマーと、低密度ポリエチレン(LDPE)とのブレンドを含むシール層を有し、
エチレン系のポリマー以外のポリマーが実質的に存在しない、
積層フィルム構造。」
ウ 甲6発明
甲6の第12ページ第28~32行に記載のブロックフィルム構造を有する第1のフィルムを含む積層フィルム構造について、第1のフィルムの材料に関する記載(第4ページ第27~32行、第9ページ第9行、第11ページ第13~15行、第12ページ第10~14行、第13ページ第1~4行)、ブロックフィルムの製造方法に関する記載(第14ページ第24~33行)、蒸着層に関する記載(第17ページ第18~21行)を参照し、請求項1、10の記載に沿って整理すると、甲6には次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されている。
「バリア特性を有するポリエチレン系積層フィルム構造であって、
(1)E/A/BL/BL/A/Bの構造を有する延伸された第1のフィルムであって、
前記E層及び前記B層は、密度が940~970kg/m3の高密度ポリエチレン(HDPE)、又は、密度が925~940kg/m3の中密度ポリエチレン(MDPE)、密度が910~950kg/m3の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の層であり、
前記A層は、密度が930~940kg/m3のLLDPEの層であり、
前記BL層は、前記A層のLLDPEと、密度が915kg/m3未満であるエチレン系プラストマーとの混合物からできており、
BL層を介して互いに積層された2つの同じB(orE)/A/BLフィルム(3層共押し出しフィルム)から形成される、延伸された第1のフィルムと、
(2)ポリエチレンポリマーをベースとする少なくとも1つのシーラント層Cを有する第2のフィルムと
からなり、
延伸された第1のフィルムは、第2のフィルム側の表面にSiOxコーティングが蒸着により被覆され、
積層フィルム構造には、エチレン系ポリマー以外の他のポリマーが実質的に存在しない、
積層フィルム構造。」
(2)甲1A発明を主引例とする進歩性
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1A発明を対比する。
甲1A発明の「第1のフィルム」は、本件発明1の「基材」に相当する。
甲1A発明の「第2のフィルム」は、「シール層を有」することから、本件発明1の「ヒートシール層」に相当する。
甲1A発明の「第1のフィルムと第2のフィルムを積層してなる積層フィルム構造」は、本件発明1の「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体」及び「積層体」に相当する。
甲1A発明の「第1のフィルム」は、「一軸延伸されたフィルムであり、」「O/C/Bフィルム(3層共押し出しフィルム)から形成され」たものであるから、本件発明1の「前記基材が、共押延伸フィルムからな」る態様であるといえる。
甲1A発明の「密度が945~965kg/m3である、単峰性のHDPE」である「外層O-1及びO-2」は、本件発明1の「密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層」に相当する。
甲1A発明の「密度が930~940kg/m3である、双峰性のエチレン/1-ブテン/C6-C12のα-オレフィンターポリマーを含」む「コア層C1」は、本件発明1の「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む層」と、「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層」の限りで一致する。
甲1A発明における「エチレン系プラストマー」は、エチレンを主体とした重合体又は共重合体であるからポリエチレンであり、また、その密度は「0.870~0.910g/cm3」であるから、「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン」又は「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン」、「密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレン」のいずれかに該当するものであることは明らかといえる。そうすると、甲1A発明の「エチレン系プラストマー」を含む「ブロック層B1」は、本件発明1の「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、及び密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる層」と、「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、又は密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層」の限りで一致する。
甲1A発明において、「第1のフィルム」を構成する「密度が945~965kg/m3である、単峰性のHDPE」、「密度が930~940kg/m3である、双峰性のエチレン/1-ブテン/C6-C12のα-オレフィンターポリマー」、「コア層C1で用いたターポリマーとプラストマー」は、いずれもポリエチレンであるから、甲1A発明における「第1のフィルム」の構成は、本件発明1における「前記基材」が「ポリエチレンから構成され」ることに相当する。
甲1A発明の「メタロセンで製造された直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)又はエチレン系プラストマーと、低密度ポリエチレン(LDPE)とのブレンドを含むシール層を有」する態様は、本件発明1の「前記ヒートシール層」が「ポリエチレンから構成され」る態様に相当する。
そうすると、甲1A発明と本件発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体であって、
前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンから構成され、
前記基材が、共押延伸フィルムからなり、
前記共押延伸フィルムが、
密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、又は密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層と、
を備える、積層体。」
[相違点2-1]
本件発明1は「前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上であ」るのに対し、甲1A発明は「積層フィルム構造」におけるポリエチレンの含有量が不明である点。
[相違点2-2]
本件発明1は「前記基材の表面に印刷処理が施されて」いるのに対し、甲1A発明はそのような特定がない点。
[相違点2-3]
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層に関して、本件発明1では「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む」のに対し、甲1A発明は「密度が930~940kg/m3である、双峰性のエチレン/1-ブテン/C6-C12のα-オレフィンターポリマー」である「コア層C1」である点。
[相違点2-4]
密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、又は密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層に関して、本件発明1では「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、及び密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる」のに対し、甲1A発明の「ブロック層B1」は「コア層C1で用いたターポリマーとプラストマーとからなるブロック層であり、前記プラストマーは、密度が0.870~0.910g/cm3である、エチレン系プラストマーであ」る点。
[相違点2-5]
本件発明1は「前記基材と、前記ヒートシール層との間に、延伸ポリエチレンフィルムからなる中間層と、前記中間層の一方の面に設けられた蒸着膜と、を備える」のに対して、甲1A発明はそのような中間層及び蒸着膜を備えていない点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点2-3、2-4について検討すると、相違点2-4は、甲1A発明の「ブロック層B1」に含まれる「コア層C1で用いたターポリマー」の密度(930~940kg/m3(=0.930~0.940g/cm3))が本件発明1の「低密度ポリエチレン」、「直鎖状低密度ポリエチレン」、「超低密度ポリエチレン」の各密度範囲を超えるものである点で、相違点1-4と同様である。
そして、上記第5の2(2)で説示した判断と同様の理由により、甲1A発明において、相違点2-3、2-4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1A発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4~10について
本件発明4~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、上記ア(イ)と同様の理由により、甲1A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲1C発明を主引例とする進歩性
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1C発明を対比する。
甲1C発明の「第1のフィルム」は、本件発明1の「基材」に相当する。
甲1C発明の「第2のフィルム」は、「シール層を有」することから、本件発明1の「ヒートシール層」に相当する。
甲1C発明の「第1のフィルムと第2のフィルムを積層してなる積層フィルム構造」は、本件発明1の「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体」及び「積層体」に相当する。
甲1C発明の「第1のフィルム」は、「5層Alpine共押出ライン上に押出し、アウグスブルク/ドイツのHosokawa Alpine AG製の一軸延伸装置を用いて延伸を行」ったものであるから、本件発明1の「前記基材が、共押延伸フィルムからな」る態様であるといえる。
甲1C発明の「HDPEグレードR4806HT(高密度ポリエチレン(HDPE)グレード、密度948kg/m3)」である「外層O-1及びO-2」は、本件発明1の「密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層」に相当する。
甲1C発明の「ターポリマーFX1001(双峰性のチーグラーナッタで製造されたターポリマー(C2/C4/C6)グレード、密度931kg/m3)」である「コア層C1」、「コア層C2」及び「コア層C3」を合わせた層は、本件発明1の「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む層」と、「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層」の限りで一致する。
甲1C発明における「エチレン系オクテンプラストマー」である「Queo 8201」は、エチレンを主体としたエチレン-オクテン共重合体であるからポリエチレンであり、また、その密度は「0.882g/cm3」であるから、「密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレン」といえる。そうすると、甲1C発明の「80重量%FX1001+20重量%Queo 8201(エチレン系オクテンプラストマー、密度0.882g/cm3)」である「ブロック層B1」は、本件発明1の「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、及び密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる層」と、「密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層」の限りで一致する。
甲1C発明において、「第1のフィルム」を構成する「HDPEグレードR4806HT(高密度ポリエチレン(HDPE)グレード、密度948kg/m3)」、「ターポリマーFX1001(双峰性のチーグラーナッタで製造されたターポリマー(C2/C4/C6)グレード、密度931kg/m3)」、「Queo 8201(エチレン系オクテンプラストマー、密度0.882g/cm3)」は、いずれもポリエチレンであるから、甲1C発明における「第1のフィルム」の構成は、本件発明1における「前記基材」が「ポリエチレンから構成され」ることに相当する。
甲1C発明の「メタロセンで製造された直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)又はエチレン系プラストマーと、低密度ポリエチレン(LDPE)とのブレンドを含むシール層を有」する態様は、本件発明1の「前記ヒートシール層」が「ポリエチレンから構成され」る態様に相当する。
そうすると、甲1C発明と本件発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点3]
「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体であって、
前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンから構成され、
前記基材が、共押延伸フィルムからなり、
前記共押延伸フィルムが、
密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層と、
を備える、積層体。」
[相違点3-1]
本件発明1は「前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上であ」るのに対し、甲1C発明は「積層フィルム構造」におけるポリエチレンの含有量が不明である点。
[相違点3-2]
本件発明1は「前記基材の表面に印刷処理が施されて」いるのに対し、甲1C発明はそのようなものではない点。
[相違点3-3]
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層に関して、本件発明1では「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む」のに対し、甲1C発明は、「ターポリマーFX1001(双峰性のチーグラーナッタで製造されたターポリマー(C2/C4/C6)グレード、密度931kg/m3)」である「コア層C1」、「コア層C2」及び「コア層C3」を合わせた層である点。
[相違点3-4]
密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層に関して、本件発明1では「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、及び密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる」のに対し、甲1C発明の「ブロック層B1」は「80重量%FX1001+20重量%Queo 8201(エチレン系オクテンプラストマー、密度0.882g/cm3)」である点。
[相違点3-5]
本件発明1は「前記基材と、前記ヒートシール層との間に、延伸ポリエチレンフィルムからなる中間層と、前記中間層の一方の面に設けられた蒸着膜と、を備える」のに対して、甲1C発明はそのような中間層及び蒸着膜を備えていない点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点3-3、3-4について検討すると、相違点3-4は、甲1C発明の「ブロック層B1」に含まれる「FX1001」の密度(931kg/m3(=0.931g/cm3))が本件発明1の「低密度ポリエチレン」、「直鎖状低密度ポリエチレン」、「超低密度ポリエチレン」の各密度範囲を超えるものである点で、相違点1-4と同様である。
そして、上記第5の2(2)で説示した判断と同様の理由により、甲1C発明において、相違点3-3、3-4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1C発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4~10について
本件発明4~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、上記ア(イ)と同様の理由により、甲1C発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)甲6発明を主引例とする進歩性
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲6発明を対比する。
甲6発明の「延伸された第1のフィルム」は、本件発明1の「基材」に相当する。
甲6発明の「第2のフィルム」は、「シーラント層Cを有する」ことから、本件発明1の「ヒートシール層」に相当する。
甲6発明の「積層フィルム構造」は、「延伸された第1のフィルム」と「第2のフィルム」とからなるから、本件発明1の「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体」及び「積層体」に相当する。
甲6発明の「延伸された第1のフィルム」は、「B(orE)/A/BLフィルム(3層共押し出しフィルム)から形成され」たものであるから、本件発明1の「前記基材が、共押延伸フィルムからな」る態様であるといえる。
甲6発明の「密度が930~940kg/m3のLLDPEの層」である「A層」は、本件発明1の「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む層」と、「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層」の限りで一致する。
甲6発明における「エチレン系プラストマー」は、エチレンを主体とした重合体又は共重合体であるからポリエチレンであり、また、その密度は「915kg/cm3未満」であるから、「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン」又は「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン」、「密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレン」のいずれかに該当するものであることは明らかといえる。そうすると、甲6発明の「エチレン系プラストマー」を含む「BL層」は、本件発明1の「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、及び密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる層」と、「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、又は密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層」の限りで一致する。
甲6発明において、「延伸された第1のフィルム」を構成する「940~970kg/m3の高密度ポリエチレン(HDPE)、又は、密度が925~940kg/m3の中密度ポリエチレン(MDPE)、密度が910~950kg/m3の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の層」、「密度が930~940kg/m3のLLDPEの層」、「前記A層のLLDPEと、密度が915kg/m3未満であるエチレン系プラストマー」は、いずれもポリエチレンであるから、甲6発明における「延伸された第1のフィルム」の構成は、本件発明1における「前記基材」が「ポリエチレンから構成され」ることに相当する。
甲6発明の「ポリエチレンポリマーをベースとする少なくとも1つのシーラント層Cを有する」態様は、本件発明1の「前記ヒートシール層」が「ポリエチレンから構成され」る態様に相当する。
甲6発明の「蒸着により被覆され」た「SiOxコーティング」は、本件発明1の「蒸着膜」に相当するから、甲6発明の「延伸された第1のフィルムは、第2のフィルム側の表面にSiOxコーティングが蒸着により被覆され」ることは、本件発明1の「前記基材と、前記ヒートシール層との間に、延伸ポリエチレンフィルムからなる中間層と、前記中間層の一方の面に設けられた蒸着膜と、を備えること」と、「前記基材と、前記ヒートシール層との間に、蒸着膜を備えること」の限りで一致する。
そうすると、甲6発明と本件発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点4]
「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体であって、
前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンから構成され、
前記基材が、共押延伸フィルムからなり、
前記共押延伸フィルムが、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、又は密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層と、
前記基材と、前記ヒートシール層との間に、蒸着膜を備える、積層体。」
[相違点4-1]
本件発明1は「前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上であ」るのに対し、甲6発明は「積層フィルム構造」におけるポリエチレンの含有量が不明である点。
[相違点4-2]
本件発明1は「前記基材の表面に印刷処理が施されて」いるのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
[相違点4-3]
本件発明1は、2つの「密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層」を備えるのに対し、甲6発明の「積層フィルム構造」は、「密度が940~970kg/m3の高密度ポリエチレン(HDPE)、又は、密度が925~940kg/m3の中密度ポリエチレン(MDPE)、密度が910~950kg/m3の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の層であ」る「E層」及び「B層」を含む点。
[相違点4-4]
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層に関して、本件発明1では「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む」のに対し、甲6発明の「A層」は「密度が930~940kg/m3のLLDPEの層」である点。
[相違点4-5]
密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、又は密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層に関して、本件発明1では「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、及び密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる」のに対し、甲6発明の「BL層」は「A層のLLDPEと、密度が915kg/m3未満であるエチレン系プラストマーとの混合物からできて」いる点。
[相違点4-6]
基材と、ヒートシール層との間に、蒸着膜を備えることに関し、本件発明1は「前記基材と、前記ヒートシール層との間に、延伸ポリエチレンフィルムからなる中間層と、前記中間層の一方の面に設けられた蒸着膜と、を備える」のに対して、甲1A発明の「SiOxコーティング」は「延伸された第1のフィルム」の「第2のフィルム側の表面に」設けられており、また、そのような中間層を備えていない点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点4-4、4-5を併せて検討する。
まず相違点4-5について検討すると、甲6発明の「BL層」に含まれる「A層のLLDPE」は、その密度(930~940kg/m3(=0.930~0.940g/cm3))が、本件発明1の「低密度ポリエチレン」、「直鎖状低密度ポリエチレン」、「超低密度ポリエチレン」の各密度範囲を超えるものであるから、これらのポリエチレンには該当しない。
そして、仮に、甲6発明の「A層のLLDPE」に密度が0.925g/cm3未満のものを選択できたとしても、これは、本件発明1の「中密度ポリエチレン」の密度範囲を下回るものであるから、甲6発明の「A層」は、本件発明1の「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む層」と、相違点4-4で示した点に加え、その密度についても相違することとなる。そうすると、甲6発明において「BL層」の「エチレン系プラストマー」とブレンドするポリマーが「A層のLLDPE」である以上、相違点4-5に係る本件発明1の「低密度ポリエチレン」又は「直鎖状低密度ポリエチレン」、「超低密度ポリエチレン」の密度範囲と、相違点4-4に係る本件発明1の「中密度ポリエチレン」の密度範囲との双方を同時に満たすことは成立し得ない。
したがって、甲6発明において、相違点4-4、4-5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4~10について
本件発明4~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、上記ア(イ)と同様の理由により、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立理由1についてのまとめ
よって、請求項1、4~10に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものといえないから、申立理由1によっては、請求項1、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(同日出願)についての判断
(1)同日出願発明
甲7に係る出願の令和8年4月2日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲には、以下の発明(以下、甲7に係る出願の請求項1~8に係る発明を「同日出願発明1」等といい、またこれらを「同日出願発明」と総称する。)が記載されている。
「 【請求項1】
基材と、ヒートシール層とを少なくとも備えた積層体であって、
前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンから構成され、前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上であり、
前記基材の表面に、印刷処理が施されており、
前記基材が、共押延伸フィルムからなり、
前記共押延伸フィルムが、
密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、及び密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンを含む層と、
を備え、
前記基材と、前記ヒートシール層との間に、一方の面に蒸着膜を備える延伸ポリエチレンフィルムからなる、中間層をさらに備えることを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記基材と前記中間層との間、および前記中間層と前記ヒートシール層との間に、接着層を備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜であり、
前記蒸着膜と隣接する前記接着層が、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物により構成される、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材がインフレーション法により作製されたものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
包装材料用途に用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製されたものである包装材料。
【請求項7】
包装袋であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、20μm以上60μm以下であることを特徴とする、包装袋。
【請求項8】
スタンドパウチであって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、50μm以上200μm以下であることを特徴とするスタンドパウチ。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明と同日出願発明が同一か否かの判断は、(ア)本件発明を先願とし、同日出願発明を後願と仮定したとき、(イ)同日出願発明を先願とし、本件発明を後願と仮定したときのいずれのときにも、本件発明と同日出願発明とが同一であるときに、両者は同一とすべきものである。したがって、以下にそれぞれの場合について対比を行う。
(ア)本件発明1を先願とし、同日出願発明1を後願としたとき
本件発明1の「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む層」は、同日出願発明1の「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層」に相当する。
したがって、本件発明1と同日出願発明1との間に相違点はなく、本件発明1は同日出願発明1である。
よって、本件発明1を先願とし、同日出願発明1を後願としたとき、両者は同一である。
(イ)同日出願発明1を先願とし、本件発明1を後願としたとき
同日出願発明1の「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層」は、本件発明1の「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)を含む層」と、「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層」の限りで一致する。
したがって、本件発明1と同日出願発明1は、以下の点で相違し、余の点で一致する。
[相違点5]
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンを含む層に関して、本件発明1では「(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)」ものであるのに対し、同日出願発明1の「中密度ポリエチレンを含む層」はかかる特定がない点。
そして、相違点5に係る本件発明1の構成は、「中密度ポリエチレン」について「(但し、密度が926~950kg/m3の双峰性の分子量分布を有するエチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の二峰性の分子量分布を有するターポリマー(C2/C4/C6)を除く)」と限定するものであるから、相違点5は実質的な相違点である。
したがって、同日出願発明1は本件発明1でない。
よって、同日出願発明1を先願とし、本件発明1を後願としたとき、両者は同一でない。
イ 小括
以上からすると、本件発明1と同日出願発明1は同一でない。
(3)本件発明4~10について
本件発明4~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、上記(2)と同様に、本件発明4~10と同日出願発明2~8は同一でない。
(4)申立理由2についての判断のまとめ
よって、請求項1、4~10に係る特許が特許法第39条第2項の規定に違反してされたものといえないから、申立理由2によっては、請求項1、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(サポート要件)についての判断
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、発明の詳細な説明の記載を参照すると、本件発明が解決しようとする課題は、本件特許の明細書の【0002】~【0007】の記載からみて、包装材料などとして適用可能な十分な強度や耐熱性を備え、かつリサイクル性にも優れる包装材料を実現することができる積層体を提供することと認められる。
また、上記課題を解決するための手段に関して、本件特許の明細書の【0006】、【0030】、【0054】には、基材にポリエチレンにより構成される延伸フィルムを使用し、これをポリエチレンから構成されるヒートシール層と積層して使用することで、十分な耐熱性や強度を有し、リサイクル可能な包装材料とすることができる旨が記載されており、実施例(特に、【0137】~【0144】、【0182】【表1】を参照。)には、各種ポリエチレンを共押して延伸して得た所定厚さの基材Aを用いた積層体(実施例1-1)の方が、基材Aと同じ材料、層構造、厚さの延伸されていない基材aを用いた積層体(比較例1-1)に比べて、リサイクル性は同等で、耐熱性、剛性、強度が優れている点が示されている。
上記発明の詳細な説明の内容からすると、本件発明1において、基材及びヒートシール層のいずれもがポリエチレンから構成され、積層体全体のポリエチレンの含有量が90質量%以上であること、及び、基材が各種ポリエチレンを含む共押延伸フィルムからなることによって、本件発明の課題を解決できることを当業者は認識できる。
してみると、本件発明1で規定される基材であれば、当業者は本件発明の課題を解決できると認識できるといえる。
以上より、本件発明1及びその従属項である本件発明4~10は、明細書のサポート要件に適合するものである。
よって、申立理由3によっては、請求項1、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由4(明確性要件)についての判断
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。以下この観点に立って検討する。
(1)上記1(4)のアの点について
請求項1には、「高密度ポリエチレン」、「中密度ポリエチレン」、「低密度ポリエチレン」、「直鎖状低密度ポリエチレン」、「超低密度ポリエチレン」について、それぞれの密度範囲が具体的に特定されているから、これら各種ポリエチレンの密度を明確に理解できるものである。
(2)上記1(4)のイの点について
請求項1には、「共押延伸フィルムが、」「高密度ポリエチレンを含む層と、」「中密度ポリエチレン」「を含む層」と、「低密度ポリエチレン、」「直鎖状低密度ポリエチレン、及び」「超低密度ポリエチレンから選択される少なくとも1種からなる層と、」「中密度ポリエチレン」「を含む層と、」「高密度ポリエチレンを含む層と、を備え」ることが記載されている。
上記記載によって「共押延伸フィルム」は、これら5層を共押し延伸してできた多層構造であると理解でき、それ自体不明確な記載はなく、本件明細書の【0035】における「本発明の積層体が備える基材は、高密度ポリエチレン層と中密度ポリエチレン層と低密度ポリエチレン層、直鎖状低密度ポリエチレン層または超低密度ポリエチレン層(以下・・・)と中密度ポリエチレン層と高密度ポリエチレン層との五層共押延伸フィルムからなる構成を有する。」との記載とも整合している。
したがって、本件発明1は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまではいえない。
(3)小括
以上より、本件発明1及びその従属項である本件発明4~10は明確である。
よって、申立理由4によっては、請求項1、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、令和7年12月23日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、4~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正前の請求項2、3は本件訂正により削除されたため、請求項2、3についての特許異議の申立ては不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700020