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特許異議申立

2022-701178

電子レンジ加熱用の包装袋及び包装食品

審判番号
2022-701178
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-033082外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7077658
請求日
2022年11月29日
審決日
2023年09月15日
公報発行日
2023年12月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7077658号発明「電子レンジ加熱用の包装袋及び包装食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7077658号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7077658号の請求項1、3~7に係る特許を維持する。
特許第7077658号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第7077658号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年2月27日に出願され、令和4年5月23日にその特許権の設定登録がなされ、同年5月31日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和4年11月29日 :特許異議申立人 柏木 香陽子(以下「申立

人」という。)による請求項1~7に係る特

許に対する特許異議の申立て

令和5年 3月31日付け:取消理由通知

同年 5月15日受付:特許権者による訂正請求書、意見書の提出

同年 6月22日差出:申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に

「前記無延伸ポリプロピレンフィルムが、前記シール部において以下の条件式(1)を満足することを特徴とする包装袋;
(I1/I2)×100≦20(%)・・・(1)」

と記載されているのを、

「前記無延伸ポリプロピレンフィルムが、前記シール部において以下の条件式を満足することを特徴とする包装袋;
3(%)≦(I1/I2)×100≦13(%)」

に訂正する。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に

「請求項1又は2記載の包装袋。」

と記載されているのを、

「請求項1に記載の包装袋。」

に訂正する。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4に

「請求項1~3のいずれか1項に記載の包装袋。」

と記載されているのを、

「請求項1または請求項3に記載の包装袋。」

に訂正する。

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項5に

「請求項1~4のいずれか1項に記載の包装袋;」

と記載されているのを、

「請求項1、3、4のいずれか1項に記載の包装袋;」

に訂正する。

(6)訂正事項6

特許請求の範囲の請求項6に

「請求項1~5のいずれか1項に記載の包装袋;」

と記載されているのを、

「請求項1、3、4のいずれか1項に記載の包装袋;」

に訂正する。

(7)訂正事項7

特許請求の範囲の請求項7に、

「請求項1~6のいずれか1項に記載の包装袋に」

と記載されているのを、

「請求項1、3~6のいずれか1項に記載の包装袋に」

に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的

訂正事項1のうち、シール部において満足する条件式についての訂正は、訂正前に「(I1/I2)×100≦20(%)」であったところ、訂正後には「3(%)≦(I1/I2)×100≦13(%)」とするものであって、その数値範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、訂正事項1のうち、「条件式(1)」を「条件式」とする訂正は、発明の詳細な説明の段落【0044】に「突出シール部3aにおいて、以下の条件式(1)を満足する構成になっている。

(I1/I2)×100≦20(%)・・・(1)」との記載があるところ、上述のシール部において満足する条件式の訂正に伴い、段落【0044】に記載される「条件式(1)」との不整合が生じないようにするためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)には、次の記載がある。

「【0048】
シーラント層15を構成する無延伸ポリプロピレンフィルムは、突出シール部3aにおいて以下の条件式(1a)を満足することが好ましい。
(I1/I2)×100≦13(%) …(1a)
この条件式(1a)は、前記条件式(1)が規定している条件範囲のなかでも、前記観点等に基づいた更に好ましい条件範囲を規定している。・・・」
「【0050】
上記観点から、シーラント層15を構成する無延伸ポリプロピレンフィルムは、突出シール部3aにおいて以下の条件式(2)を満足することが好ましく、以下の条件式(2a)を満足することが更に好ましい。
3(%)≦(I1/I2)×100 …(2)
・・・」

してみれば、シール部において満足する条件について、「3(%)≦(I1/I2)×100≦13(%)」とすることは、特許明細書等に記載された事項の範囲内のものであり、新規事項を追加するものではない。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項1は、発明特定事項をより限定するものであり、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(2)訂正事項2

訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項を削除する訂正が、新規事項を追加するものはなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかである。

(3)訂正事項3~7

ア 訂正の目的

訂正事項3~7は、訂正前の請求項3~7が、請求項2を含む複数項を引用していたところ、訂正事項2で請求項2を削除することに伴い、請求項2を引用することができなくなったことから、請求項2を引用しないものとするものである。

加えて、訂正事項6は、訂正前の請求項6では、引用する請求項の選択肢のひとつである請求項5において特定する数値範囲よりも広い範囲となっていたから、請求項5を引用する場合、その数値範囲が明確でなかったところ、請求項5を引用しないものとして明確にするものである。

そうすると、訂正事項3~7は、明瞭でない記載の釈明又は他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

また、訂正事項3~7は、複数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

訂正事項3~7は、訂正前に引用していた請求項を引用しないものとするものであるから、新規事項を追加するものではない。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項3~7は、引用する請求項の数を減少するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

3 一群の請求項

本件訂正前の請求項2~7は、訂正事項1に係る本件訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用しているところ、本件訂正前の請求項1~7は、一群の請求項であり、訂正事項1~7の訂正は、当該一群の請求項〔1~7〕に対して請求されたものである。

4 小括

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について、訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2で説示したように本件訂正請求は認められるから、本件訂正後の請求項1、3~7に係る発明(以下「本件発明1」、「本件発明3」・・・という。)は、特許請求の範囲の請求項1、3~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
積層フィルムのヒートシールにより、内容物を収容する収容空間が包装袋内側に形成されるように製袋されるとともに、電子レンジ加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための剥離可能なシール部が形成された電子レンジ加熱用包装袋であって、
前記積層フィルムが、包装袋外側から包装袋内側へ順に、基材層と、電子レンジ加熱によりラミネート強度が低下するインキからなる印刷層と、接着層と、中間層と、接着層と、無延伸ポリプロピレンフィルムからなるシーラント層と、で構成された積層構造を有し、
前記シール部において、前記電子レンジ加熱により、前記印刷層でのラミネート強度が低下するとともに前記シーラント層のシール強度が低下し、
続きを表示(全32行)
前記無延伸ポリプロピレンフィルムが、前記シール部において以下の条件式を満足することを特徴とする包装袋;
3(%)≦(I1/I2)×100≦13(%)
ただし、
I1:100℃環境下でのシール強度(N/15mm)、
I2:室温環境下でのシール強度(N/15mm)、
である。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記インキが、高濃度白インキ,遮光インキ,金インキ・銀インキ等、アルミペーストを使用したメタリックインキ,パールインキのうちの少なくとも1つであって、前記電子レンジ加熱により前記印刷層でのラミネート強度が低下するような低いバインダー含有率を有することを特徴とする請求項1に記載の包装袋。
【請求項4】
前記基材層がポリエステル系フィルムからなり、前記中間層がポリアミド系フィルムからなることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の包装袋。
【請求項5】
前記無延伸ポリプロピレンフィルムが、前記シール部において以下の条件式(1b)を満足することを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1項に記載の包装袋;
7.3(%)≦(I1/I2)×100≦ 11.9(%) …(1b)
ただし、
I1:100℃環境下でのシール強度(N/15mm)、
I2:室温環境下でのシール強度(N/15mm)、
である。
【請求項6】
前記無延伸ポリプロピレンフィルムが、前記シール部において以下の条件式(2a)を満足することを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1項に記載の包装袋;
5(%)≦(I1/I2)×100 …(2a)
ただし、
I1:100℃環境下でのシール強度(N/15mm)、
I2:室温環境下でのシール強度(N/15mm)、
である。
【請求項7】
電子レンジ加熱用包装食品であって、請求項1、3~6のいずれか1項に記載の包装袋に、前記内容物として食品が前記収容空間内に収容された状態で密封包装されていることを特徴とする包装食品。」

第4 取消理由の概要

取消理由通知で通知した取消理由の要旨は次のとおりである。

1.(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

2.(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

記

1 理由1について

(1)請求項2~7

請求項2において、物の構成が製造方法によって特定されており、明確でない。

(2)請求項6、7

請求項5を引用する請求項6で特定している数値範囲は、請求項5で特定している数値範囲よりも広い範囲となっているから、請求項5を引用する請求項6が、どのような数値範囲を特定しようとしているのか明確でない。

2 理由2について

・請求項1~4、6、7

・引用文献等 甲第1号証~甲第5号証

<引用文献等一覧>

甲第1号証:特開2013-136403号公報
甲第2号証:再公表特許第2006/107048号
甲第3号証:特開2008-1394号公報
甲第4号証:特開2017-105544号公報
甲第5号証:特開2006-232293号公報

甲第1号証~甲第5号証は、申立人が提出したものであり、以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。

第5 当審の判断

1 取消理由通知に記載した取消理由について

1-1 理由1について

本件訂正により、請求項2が削除されたため、理由1(1)については、理由を有しないものとなった。

また、本件訂正により、訂正後の請求項6は、請求項5を引用しないものとなったため、理由1(2)については、解消した。

1-2 理由2について

(1)甲号証

ア 甲1

(ア) 甲1の記載事項

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甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0022】
図7は、本発明の電子レンジ加熱用袋の別の一例を示す模式図である。本発明の電子レンジ加熱用袋40において、内容物の上端面が位置することとなる高さ9よりも高い位置に、加熱時に発生する蒸気を袋外に排出するための易蒸通手段11が設けられる。ここで、アルミニウム層2は、易蒸通手段11及びその周囲には存在しない。
【0023】
易蒸通手段11は、任意の形状であってよく、例えば、図7に示されるように、サイドシール部6と連結してコの字形状に形成されたポイントシール部12と、該ポイントシール部内に設けられる未接着部(または弱接着部またはパターン状接着部)13と、少なくとも1個の切欠部(または切込部)14とからなる。ポイントシール部12を、サイドシール部6と連結して設けることにより、サイドシール部6とポイントシール部12とを一体で生産性良くシール加工することができる。」
「【0028】
図9は、未シール部内に形成する切欠または切込の形状を示す図である。
切欠14または切込17を形成することによって、袋内に充満した蒸気を剥離したポイントシール部12のシール剥離部分から未シール部13内に設けた切欠14または切込17を通って袋外へ放散し、袋の内圧を低下して、破裂を回避することができる。」
「【0031】
<2>電子レンジ加熱用袋を形成する積層フィルム
本発明の電子レンジ加熱用袋の壁面を形成する積層フィルムは、少なくとも、基材層、アルミニウム層及びシーラント層を有する。また、本発明の電子レンジ加熱用袋の底面を形成する積層フィルムは、少なくとも、基材層及びシーラント層を有する。
また、これらの積層フィルムは、適宜必要に応じて、印刷層、バリア層等の更なる層を有してもよい。
【0032】
基材層
本発明の電子レンジ加熱用袋の壁面または底面を形成する積層フィルムにおいて、基材層としては、耐熱性を有し、電子レンジで加熱または加熱調理される食品用包材として一般に使用されている任意の樹脂フィルムを使用することができる。例えば、延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、シリカ蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミナ蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、シリカ蒸着延伸ナイロンフィルム、アルミナ蒸着延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールコート延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロン6/メタキシリレンジアミンナイロン6共押共延伸フィルムまたはポリプロピレン/エチレン-ビニルアルコール共重合体共押共延伸フィルム等のいずれか、またはこれらの2以上のフィルムを積層した複合フィルムであってもよい。2軸延伸PETフィルムが、耐熱性、引っ張り強度、その他総合的な性能に優れ、また、中間層となるアルミニウム層を保護し、スパークの発生を効果的に防止できるため、特に好ましい。」
「【0048】
シーラント層
本発明の電子レンジ加熱用袋の壁面または底面を形成する積層フィルムにおいて、シーラント層を形成する樹脂としては、電子レンジで加熱または加熱調理される食品用包材として一般に使用される任意の熱接着性樹脂を使用することができる。
【0049】
続きを表示(全15行)
シーラント層間のシール強度は、輸送や保管時に加わる圧力や衝撃によって剥離することがないように、常温(23℃)で23N/15mm以上のシール強度(試験片の幅:15mm)を有していることが好ましい。
【0050】
本発明の電子レンジ加熱用袋にポイントシール部等からなる易蒸通手段を設ける場合、ポイントシール部のシール強度は、内容物の加熱または加熱調理に必要な熱量及び蒸気量に応じて異なるが、例えば、90℃以上の温度で5N/15mm~25N/15mmであることが好ましい。90℃でのシール強度が小さ過ぎると、内部の蒸気圧力が十分に高まる前に、蒸気が袋外へ排出されるため、内容物の加熱または加熱調理が不十分となる。逆にシール強度が大き過ぎると、シール後退がスムーズに起きず、自動開封が速やかで確実に達成されないことから、破袋する恐れがある。
【0051】
蒸気を袋外に速やかに排出させて包装体の破袋を防ぐために、ポイントシール部のシール強度は、他の部分のシール強度よりも弱く設定してもよい。
【0052】
しかしながら、図9に示すように、袋の中心部からポイントシール部までの最短距離r3が、該袋の中心部から周縁シール部のいずれかの内縁までの最短距離r1よりも短くなるような位置にポイントシール部を設けることにより、ポイントシール部と他の部分とのシール強度が同じであっても、包装袋の破袋を防ぐことができる。
【0053】
易蒸通手段部とサイドシール部、ボトムシール部とを連結して、一体でシール加工する場合、これらの部分のシール強度は、23℃で23N/15mm~100N/15mm、90℃で5N/15mm~25N/15mmの範囲であることが好ましい。
【0054】
このようなシール強度を達成する熱接着性樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体またはアイオノマー等が挙げられる。プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂を主成分とする樹脂組成物からなるものを使用することが特に好ましい。」
「【0057】
<3>製袋
本発明の電子レンジ加熱用袋は、上述の積層フィルムを使用して、胴部を、前後2面の壁面フィルムの左右両側の端縁部をヒートシールしてサイドシール部を設けることにより形成し、さらに場合により、壁面フィルムの少なくとも片側にサイドシール部と独立してまたは連結して易蒸通手段を形成し、更に、底部を、底面フィルムを内側に折り返してなるガゼット形状のシールパターンでヒートシールしてボトムシール部を設けることにより形成することにより、製造することができる。
【0058】
次に、内容物を充填後に上端部をヒートシールして、トップシール部を設けることにより、密封された包装体を製造することができる。
なお、袋のサイドシール部の縁にノッチを形成しておくことが好ましい。」
「【実施例】
【0068】
[実施例1]
ポリエステルフィルム(ユニチカ製、エンブレットPET、厚さ16μm)の一方の面に、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してアルミニウム箔(7μm)をドライラミネートし、アルミニウム薄膜を設けた。
続きを表示(全20行)
【0069】
次いで、このアルミニウム薄膜上の所定の位置に、レジスト組成物をグラビア印刷して、レジスト層(1~2μm)を形成した。
このレジスト層をマスクとして用いて、アルミニウム薄膜をエッチング溶液(塩化第二鉄)中でエッチングすることにより、隅丸の略長方形状(98mm×132mm)のアルミニウム層を形成した。
【0070】
レジスト層を除去水洗し乾燥後、アルミニウム層上に、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してバリアフィルム(大日本印刷(株)製IB-PET-RB、厚さ12μm)をドライラミネートし、さらに同接着剤を介して、無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工製トレファンNO ZK93FM、厚さ60μm)をドライラミネートし、壁面フィルムを構成する積層フィルムを製造した。
【0071】~【0073】(略)
【0074】
これらの壁面フィルム2枚及び底面フィルム1枚を用いて、左右端縁部をシール幅10mmでヒートシールし、また、底部を丸底型のシールパターンでヒートシールし、スタンディングパウチ形状の本発明の電子レンジ加熱用袋を作製した。ヒートシールは、ヒートシーラー(テスター産業製)を用いて、温度205℃、圧力2kg/cm2、時間2秒の条件で行った。
【0075】(略)
【0076】
[実施例2]
実施例1と同様にして、本発明の電子レンジ加熱用袋を作製した。ただし、図6に示すように、袋の片側に易蒸通手段(縦25mm×横15mm、シール幅3mm、切欠の直径8mm)を設け、その周囲にはアルミニウム層が存在しないようにエッチングを行った。
【0077】(略)
【0078】
[比較例1]
壁面フィルムがアルミニウム層を有しない以外は、実施例2と同様にして、電子レンジ加熱用袋を作製し、カレーを充填し、密封後、レトルト殺菌処理し、レトルト殺菌処理済の包装製品を作製した。」
「【0081】
[評価]
・・・(中略)・・・
(4)シール強度
レトルト処理後、シール部分をサンプル幅15mmに切り取り、引張り試験機(島津製作所製)でJIS-Z1707に準じた試験方法(引張速度:300mm±20mm/分、剥離角度:90°)で、23℃及び90℃でのシール強度を測定した。
結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
[図:0001404781000001.jpg]
」

(イ) 甲1の図示事項

図7「

[図:0001404781000002.jpg]

」

(ウ) 甲1の認定事項

a 甲1の段落【0051】等には「包装体」との記載がある一方、請求項7や段落【0030】、【0052】等には「包装袋」と記載されている。「包装体」と「包装袋」は、表記上は統一されていないが同じものといえ、「包装袋」が記載されているものと認める。

b 甲1の段落【0068】~【0071】には、ポリエステルフィルム(ユニチカ製、エンブレットPET)、2液硬化型ウレタン系接着剤、アルミニウム薄膜、2液硬化型ウレタン系接着剤、バリアフィルム、同接着剤、無延伸ポリプロピレンフィルムを積層した積層フィルムが記載されている。そして、段落【0032】に、基材層として、例えば、延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用できることが、段落【0054】に、シーラント層を形成する熱接着性樹脂として、ポリプロピレンが挙げられることが、それぞれ記載されているから、上記積層フィルムにおけるポリエステルフィルムが基材層であり、無延伸ポリプロピレンフィルムがシーラント層であると理解できる。また、段落【0074】に、積層フィルムをヒートシールすることが記載されており、段落【0049】の「シーラント層間のシール強度」と記載から、積層フィルムがシーラント層間でシールされること、つまり、シーラント層が包装袋内側になることは明らかである。

また、段落【0078】には、比較例1として、上記積層フィルムにおいて、アルミニウム層を有しないものとすることが記載されている。

そうすると、甲1には、積層フィルムは、包装袋外側から包装袋内側へ順に、基材層であるポリエステルフィルム、2液硬化型ウレタン系接着剤、バリアフィルム、同接着剤、シーラント層である無延伸ポリプロピレンフィルムを積層したものであることが記載されていると認められる。

c 段落【0052】の「図9に示すように・・・ポイントシール部を設けることにより、ポイントシール部と他の部分とのシール強度が同じであっても、包装袋の破袋を防ぐことができる。」、段落【0053】の「易蒸通手段部とサイドシール部、ボトムシール部とを連結して、一体でシール加工する場合」との記載から、ポイントシール部のシール強度は、サイドシール部やボトムシール部などの他の部分のシール強度と同じであるものと認められる。そうすると、ポイントシール部のシーラント層のシール強度は、アルミニウム層を有しない比較例1についてみると、23℃でのシール強度が55N/15mmであり、90℃でのシール強度が10.9N/15mmである(段落【0082】、表1)と認められる。

(エ) 甲1に記載された発明

上記(ア)~(ウ)から、特に比較例1に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「積層フィルムをヒートシールして、内容物を充填後に密封された包装袋であり、
加熱時に発生する蒸気を袋外に排出するための易蒸通手段11が設けられ、易蒸通手段11はポイントシール部、未シール部13及び切欠14または切込17からなり、袋内に充満した蒸気を剥離したポイントシール部12のシール剥離部分から未シール部13内に設けた切欠14または切込17を通って袋外へ放散し、
前記積層フィルムは、包装袋外側から包装袋内側へ順に、基材層であるポリエステルフィルム、2液硬化型ウレタン系接着剤、バリアフィルム、同接着剤、シーラント層である無延伸ポリプロピレンフィルムを積層したものであり、必要に応じて、印刷層を有してもよく、
ポイントシール部12のシーラント層間のシール強度は、23℃でのシール強度が55N/15mmであり、90℃でのシール強度が10.9N/15mmである
電子レンジ加熱用袋。」

イ 甲2

甲2には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア) 甲2の記載事項

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「【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジにより加熱するための袋であって、
少なくとも片面がシーラント層から構成される複合フィルムを用い、当該シーラント面同士を対向させて周縁部を主シール部によりシールして密封した袋状とするとともに、周縁シール部から連続した、あるいは独立して設けられた蒸気口シール部によって、袋内部に、内容物収容空間とは区画された易蒸通手段を有する領域を形成してなる電子レンジ用包装袋において、
前記複合フィルムの各層間の熱間ラミネート強度が1.5N/15mm幅以上であり、かつ少なくとも前記蒸気口シール部における熱間シール強度が28N/15mm幅以下であることを特徴とする電子レンジ用包装袋。
【請求項2】
前記複合フィルムの各層間の熱間ラミネート強度が1.5N/15mm幅~5N/15mm幅もしくはフィルムの材料破壊であり、かつ前記蒸気口シール部における熱間シール強度が5N/15mm幅~28N/15mm幅であることを特徴とする電子レンジ用包装袋。」
「【0186】
なお、本発明に係る包装袋において、内容物を収納する前における空袋時のシール強度としては、特に限定されるものではないが、例えば、50N/15mm幅以上あることが、十分なシール強度を得る上において好ましい。なお、蒸気口シール部に関しては、あまり強固なシール強度とすると、上述したような所定の熱間シール強度が得られなくなる虞れがあるために、60N/15mm幅以下であることが望ましい。」
「【0216】
この実施形態にかかる電子レンジ用包装袋201は、図14Aに示すように、胴部を構成する四角形からなる前面202と後面203の底部に、底面204を逆V字状に折り畳んで挿入し、当該前面202と当該後面203と当該底面204の周縁部をそれぞれヒートシールして、天部シール部207、胴部シール部205、および、底部シール部206を形成し、充填した内容物により前記の底部が前後に拡張して自立できる形態の自立性包装袋であって、当該天部シール部207または胴部シール部206と連結して、略多辺形状の閉ループを袋内部側に形成する蒸気口シール部209を設け、当該蒸気口シール部209に囲まれた未シール部19に切欠17または図4に示すような切込み18を少なくとも一つ設ける構成からなるものである。」
「【0226】
次に、本実施形態の電子レンジ用包装袋を形成する積層体(複合フィルム)210は、少なくとも基材層とシーラント層とを有し上記したような所定の熱間ラミネート強度と熱間シール強度との関係を満たすものである限り、特に限定されるものではないが、例えば、図14Bに示すように、基材層212と、印刷層211と、接着層213と、シーラント層215とを順次に積層したものによって構成することができる。
【0227】
また、図14Cに示すように、必要に応じて、基材層212とシーラント層215の層間に中間層214を設けてもよい。」

(イ) 甲2の図示事項

図14 「

[図:0001404781000003.jpg]

」

ウ 甲3

甲3には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア) 甲3の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)
「【0017】
図3は本発明にかかる電子レンジ用包装袋の第2実施形態を示す一部透視斜視図、図4は図3の分解斜視図、図5は図3のY-Y線の断面を図解的に示す一部省略拡大断面図であって、電子レンジ用包装袋1’は基材層2と印刷層3と導電性発熱層4とラミネート強度調整層5を有するラミネート強度調整領域αと接着剤層6と熱接着性樹脂からなる内層7とを備えた積層体Bからなる矩形状の前壁部材bと、基材層2と印刷層3と接着剤層6と熱接着性樹脂からなる内層7とを備えた積層体Cからなる前記前壁部材bよりも一方向のみが長い後壁部材cとを、前記内層7同士を対向させて三つの端縁が一致するように重ね合わせ、他方において基材層2と印刷層3と接着剤層6と熱接着性樹脂からなる内層7とを備えた積層体Cからなる矩形状のガセット部形成部材dを前記内層7が表出するように折部8で略V字状に折り畳み、この略V字状に折り畳んだ前記ガセット部形成部材dを前記折部8が前記前後壁部材b、c間に位置するように、かつ、前記ガセット部形成部材dの前記折部8を除く三つの端縁が前記前後壁部材b、cの段違いの端縁とこの端縁に連接する両端縁と一致するように挿入し、前記ガセット部形成部材dの前記折部8と対向する端縁と前記折部8と直交する方向の両端縁とをそれぞれ下部熱接着部30,30’と側端部熱接着部40,40で接合すると共に、前記下部熱接着部30,30’と対向する端縁を上部熱接着部50で接合して密封した前記下部熱接着部30,30’側にガセット部Gを有する包装袋であって、前記導電性発熱層4と前記ラミネート強度調整層5とが前記積層体Bからなる前記前壁部材bの前記印刷層3と前記接着剤層6との間の前記下部熱接着部30の一部に、前記下部熱接着部30の内縁より内側から前記下部熱接着部30の外縁まで前記下部熱接着部30を横断するように、かつ、前記導電性発熱層4が前記ラミネート強度調整層5が形成されたラミネート強度調整領域αと略一致するように形成されている。なお、図3、4においては、前記導電性発熱層4と前記ラミネート強度調整層5を前記下部熱接着部30の一部に設けたものを示したが、前記下部熱接着部30の全領域をカバーするように前記両側端部熱接着部40,40に達するように帯状(図6、7参照)に設けてもよいものであるし、また、前記前壁部材bに設けることなく、前記ガセット部形成部材dに設けてもよいものである。」
「【0030】
前記ラミネート強度調整領域αとこの領域以外の強度を上記のように構成することにより、電子レンジで加熱調理すると内容物から発生する水蒸気等により内圧が上昇すると共に、熱により前記ラミネート強度調整層5が凝集剥離を起こしてラミネート強度が低下し、この部分においては内圧を内層7自体の抗張力によって維持しなければならなくなり、前記ラミネート強度調整領域α以外の領域は前記ラミネート強度調整層5を有する前記ラミネート強度調整領域αに比べてラミネート強度が強いために、前記ラミネート強度調整層5を有する前記ラミネート強度調整領域αとこれ以外の領域との境界で亀裂が生じ易くなり、遂には内圧に耐え切れずに前記境界部分で前記内層7が切断し、この切断個所から内圧により凝集剥離を起こしている前記ラミネート強度調整層5に剥離が進行し、この剥離が、たとえば、図1に示す第1実施形態の場合に、前記端縁熱接着部20の外縁に達した時に、内圧が外部に放出されるために内圧を低下させることができ、爆発的な放出(袋の破裂)と異なり、内容物が飛散することがないので電子レンジ庫内を内容物で汚染することがないという効果を奏するものであるが、たとえば、業務用電子レンジのような高出力の電子レンジの場合には、水蒸気等で内圧が高まるタイミングと前記ラミネート強度調整層5が熱によって軟化してラミネート強度が低下するタイミングとにズレが生じ、極端な場合には破裂して電子レンジ庫内を内容物で汚す虞がある。」

(イ) 甲3の図示事項

図3「

[図:0001404781000004.jpg]

」

図5「

[図:0001404781000005.jpg]

」

エ 甲4

甲4には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア) 甲4の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)
「【0016】
図3は第1の袋シート11Aの層構造の一例を示す。なお、図3は第1の袋シート11Aのうちの光沢層50が設けられた部分の断面である。
第1の袋シート11Aは積層シートであり、例えば最外層41、中間層42、および、最内層43を含む。最外層41を構成する材料の一例は透明な材料である。透明な材料の一例はポリエチレンテレフタレートである。中間層42は例えば印刷層42A、第1接着層42B、延伸ナイロン層42C、および、第2接着層42Dを含む。印刷層42Aは最外層41の内側に設けられる。一例では、印刷層42Aの外面に絵柄および商品説明のテキスト等が印刷される。第1接着層42Bは印刷層42Aの内側に設けられる。延伸ナイロン層42Cは第1接着層42Bの内側に設けられる。第2接着層42Dは延伸ナイロン層42Cの内側に設けられる。各接着層42B、42Dを構成する材料の一例はドライラミネート接着剤である。最内層43は第2接着層42Dの内側に設けられる。最内層43を構成する材料の一例は無延伸ポリプロピレンである。なお、各シート11A~11Cは実質的に同一の層構造を有する。
【0017】
光沢層50は第1の袋シート11Aに設けられる。光沢層50は第1の袋シート11Aの印刷層42Aに含まれ、最外層41により覆われる。すなわち、光沢層50は第1の袋シート11A内に設けられる。図1に示されるとおり、光沢層50の面積は光沢層50が設けられる第1の袋シート11Aの面積よりも狭い。一例では、光沢層50の面積は第1の袋シート11Aの面積の2分の1以上である。
【0018】
光沢層50はインキ剤51により構成される。インキ剤51の色は金である。インキ剤51は少なくともアルミペーストおよび希釈剤を含む。一例では、インキ剤51は着色剤および溶剤をさらに含む。希釈剤の一例は樹脂である。光沢層50は第1の袋シート11Aの印刷層42Aに塗布されたインキ剤51により構成される塗膜である。」

(イ) 甲4の図示事項

図3 「

[図:0001404781000006.jpg]

」

オ 甲5

甲5には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア) 甲5の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)
「【0012】
つぎに、図面に基づいて本発明の好ましい実施の形態について説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
図1は、本発明の包装材料の1例を示す断面模式図である。この包装材料11は、外層から順に外層樹脂層1、印刷層2、接着剤層3、着色樹脂層4、接着剤層3、ヒートシール性を有する内層樹脂層(シーラント層)5、からなる層構成を有する。」
「【0019】
本発明の包装材料では、印刷層2と内層樹脂層5の間に、全光線透過率が10~50%、好ましくは15~40%の、着色剤を含有する樹脂組成物により構成された着色樹脂層4を設けることによって、包装材料に金属箔に代わる遮光性、隠蔽性やバリヤー性を付与するとともに、印刷層2の下地色としての機能を持たせることを特徴とするものである。このような下地色となる着色層4を設けることによって、印刷層2において多量のインキを使用するベタ印刷の部分を削減し、臭気成分の元となるインキの使用量を大幅に減少させることが可能となる。
【0020】
このような着色樹脂層4は、外層樹脂層1を構成する材料として使用される熱可塑性樹脂中に、酸化チタンのような隠蔽性に優れた着色料を高濃度で配合した樹脂組成物によって構成することができる。
着色樹脂層を構成する樹脂としては特に制限はなく、例えば、上記した外層樹脂層を構成する熱可塑性樹脂から適宜選択して使用することができる。好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0021】
着色樹脂層に配合する着色剤としては特に制限はなく、通常プラスチックの着色に使用される各種の顔料等の着色剤が使用される。好ましい着色剤としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、アンチモン白、硫化亜鉛等の白色顔料や、炭酸バリウム、クレー、シリカ、バライト粉、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の体質顔料等が挙げられ、これらは適宜組み合わせて使用してもよい。特に好ましい着色剤としては、明度(L値)の高い(例えば、70~95程度)酸化チタンが挙げられる。着色剤の粒径は、通常は0.1~10μm、特に0.1~5μm程度のものが使用される。」

(イ) 甲5の図示事項

図1「

[図:0001404781000007.jpg]

」

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲1発明とを対比する。

(ア) 後者の「包装袋」及び「電子レンジ加熱用袋」は、前者の「包装袋」及び「電子レンジ加熱用包装袋」に相当する。

(イ) 後者の「積層フィルムをヒートシールして、内容物を充填後に密封された包装袋であ」る構成は、前者の「積層フィルムのヒートシールにより、内容物を収容する収容空間が包装袋内側に形成されるように製袋される」構成に相当する。

(ウ) 後者の「ポイントシール部12」は前者の「シール部」に相当する。そして、後者の「加熱時に発生する蒸気を袋外に排出するための易蒸通手段11が設けられ、易蒸通手段11はポイントシール部12であって、袋内に充満した蒸気を剥離したポイントシール部12のシール剥離部分から未シール部13内に設けた切欠14または切込17を通って袋外へ放散」する構成は、前者の「電子レンジ加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための剥離可能なシール部が形成された」構成に相当する。

(エ) 後者の「バリアフィルム」は前者の「中間層」に相当する。そして、後者の「前記積層フィルムは、包装袋外側から包装袋内側へ順に、基材層であるポリエステルフィルム、2液硬化型ウレタン系接着剤、バリアフィルム、同接着剤、シーラント層である無延伸ポリプロピレンフィルムを積層したものであ」る構成は、前者の「前記積層フィルムが、包装袋外側から包装袋内側へ順に、基材層と、電子レンジ加熱によりラミネート強度が低下するインキからなる印刷層と、接着層と、中間層と、接着層と、無延伸ポリプロピレンフィルムからなるシーラント層と、で構成された積層構造を有」する構成と、「前記積層フィルムが、包装袋外側から包装袋内側へ順に、基材層と、接着層と、中間層と、接着層と、無延伸ポリプロピレンフィルムからなるシーラント層と、を含む積層構造を有」する点で共通する。

(オ) 後者の「ポイントシール部12のシーラント層間のシール強度は、23℃でのシール強度が55N/15mmであり、90℃でのシール強度が10.9N/15mmである」構成は、加熱されるとシーラント層間のシール強度が低下するということであるから、前者の「前記シール部において、前記電子レンジ加熱により、前記印刷層でのラミネート強度が低下するとともに前記シーラント層のシール強度が低下」する構成と、「前記シール部において、前記電子レンジ加熱により、前記シーラント層のシール強度が低下」する点で共通する。

(カ) 後者の「ポイントシール部12のシーラント層間のシール強度は、23℃でのシール強度が55N/15mmであり、90℃でのシール強度が10.9N/15mmである」構成は、10.9/55×100を計算すると、19.8になり、また、後者の「シーラント層である無延伸ポリプロピレンフィルム」との構成を踏まえると、

前者の「前記無延伸ポリプロピレンフィルムが、前記シール部において以下の条件式を満足することを特徴とする包装袋;

3(%)≦(I1/I2)×100≦13(%)

ただし、

I1:100℃環境下でのシール強度(N/15mm)、
I2:室温環境下でのシール強度(N/15mm)、

である。」構成と、

「前記無延伸ポリプロピレンフィルムが、前記シール部において所定のシール強度である包装袋」

の点で共通する。

(キ) 以上を総合すると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

[一致点]

「積層フィルムのヒートシールにより、内容物を収容する収容空間が包装袋内側に形成されるように製袋されるとともに、電子レンジ加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための剥離可能なシール部が形成された電子レンジ加熱用包装袋であって、
前記積層フィルムが、包装袋外側から包装袋内側へ順に、基材層と、接着層と、中間層と、接着層と、無延伸ポリプロピレンフィルムからなるシーラント層と、を含む積層構造を有し、
前記シール部において、前記電子レンジ加熱により、前記シーラント層のシール強度が低下し、
前記無延伸ポリプロピレンフィルムが、前記シール部において所定のシール強度である包装袋」

[相違点1]

積層フィルムについて、本件発明1は「包装袋外側から包装袋内側へ順に、基材層と、電子レンジ加熱によりラミネート強度が低下するインキからなる印刷層と、接着層と、中間層と、接着層と、無延伸ポリプロピレンフィルムからなるシーラント層と、で構成された積層構造を有」するものであり、シール部について、本件発明1は「前記電子レンジ加熱により、前記印刷層でのラミネート強度が低下する」のに対し、甲1発明の積層フィルムは、印刷層を必ずしも有しないものであり、印刷層のインキの性状も特定されておらず、印刷層でのラミネート強度が低下するか特定されていない点。

[相違点2]

無延伸ポリプロピレンフィルムのシール部の強度について、本件発明1は、「以下の条件式を満足する」

「3(%)≦(I1/I2)×100≦13(%)
ただし、
I1:100℃環境下でのシール強度(N/15mm)、
I2:室温環境下でのシール強度(N/15mm)
である」のに対し、

甲1発明は、

「23℃でのシール強度が55N/15mmであり、90℃でのシール強度が10.9N/15mmである」点。

イ 判断

事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。

(ア) 以下(イ)~(エ)に示すように、甲1の他の記載を参照しても、また、甲2~甲5を参照しても、甲1発明におけるシール部のシール強度の条件式を

「3(%)≦(I1/I2)×100≦13(%)
ただし、
I1:100℃環境下でのシール強度(N/15mm)、
I2:室温環境下でのシール強度(N/15mm)」

とすることは、記載も示唆もされていない。

(イ) 甲1には、段落【0053】に「シール強度は、23℃で23N/15mm~100N/15mm、90℃で5N/15mm~25N/15mmの範囲であることが好ましい」ことが記載されている。

ここで、甲1に記載されたシール強度は90℃の数値であって、100℃の数値ではないことは措くとしても、甲1には、23℃のシール強度と90℃のシール強度の比については記載も示唆もされていないから、23℃と90℃のシール強度の比を所定の数値範囲とすることの動機付けは見いだせない。また、23℃におけるシール強度をその数値範囲の上限値近傍とし、90℃におけるシール強度をその数値範囲の下限値近傍として、両者の比をとれば、3~13%の範囲内の数値となる場合もあり得るものの、23℃のシール強度と90℃のシール強度は互いに関連している(23℃のシール強度が大きければ、90℃のシール強度も大きい)と解されるところ、23℃におけるシール強度をその数値範囲を上限値近傍とし、90℃におけるシール強度をその数値範囲の下限値近傍とすることの動機付けは見いだせず、その他の証拠にも、そのような選択を動機付ける証拠も示されていない。

(ウ) 甲2には、【請求項2】に「蒸気口シール部における熱間シール強度が5N/15mm幅~28N/15mm幅であること」が記載され、段落【0186】には「内容物を収納する前における空袋時のシール強度としては、特に限定されるものではないが、例えば、50N/15mm幅以上あることが、十分なシール強度を得る上において好ましい。なお、蒸気口シール部に関しては、あまり強固なシール強度とすると、上述したような所定の熱間シール強度が得られなくなる虞れがあるために、60N/15mm幅以下であることが望ましい。」こと、すなわち、蒸気口シール部の空袋時のシール強度が60N/15mm幅以下であることが記載されている。

しかしながら、空袋時のシール強度と、熱間シール強度との比について記載も示唆もないことは甲1と同様であり、空袋時のシール強度と、熱間シール強度との比を所定の数値範囲とすることの動機付けは見いだせない。また、熱間シール強度をその数値範囲の下限値近傍とし、空袋時のシール強度をその数値範囲の上限値近傍として、両者の比をとれば、3~13%の範囲内の数値となる場合もあり得るものの、空袋時のシール強度と熱間シール強度は互いに関連している(空袋時のシール強度が大きければ、熱間シール強度も大きい)と解されるところ、熱間シール強度をその数値範囲の下限値近傍とし、空袋時のシール強度をその数値範囲の上限値近傍とすることの動機付けは見いだせず、その他の証拠にも、そのような選択を動機づける証拠も示されていない。

(エ) 甲3~甲5には、100℃環境下でのシール強度と室温環境下でのシール強度については何ら記載されていない。

(オ) そして、本件発明1は、相違点2に係る発明特定事項を有することにより、すなわち、100℃環境下でのシール強度を室温環境下でのシール強度よりも十分に低いものとしたことにより、本件特許明細書の段落【0015】に記載されるように「シール強度に関して所定の条件を満たした物性を有しているため、電子レンジ加熱によりラミネート強度が低下するインキを積層フィルムの印刷層に用いていながら、内部の加熱蒸気がスムーズに排出される包装袋及び包装食品を実現することが可能である。」との作用効果を奏するものといえる。

(カ) そうすると、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。

よって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。

ウ 申立人の主張について

申立人は意見書において以下の点を主張する。

甲1には「シール部のシール強度は、23℃で23N/15mm~100N/15mm、90℃で5N/15mm~25N/15mmの範囲である」ことが記載されており、当該記載から、(90℃でのシール強度/23℃でのシール強度)×100は、最小で(5/100)×100=5%が得られ、最大で(25/23)×100=109%が得られ、本件特許の数値範囲の技術的な臨界意義について実験的にも何ら根拠が示されておらず、上限13%、下限3%は、当業者が適宜選択可能な値にすぎない。

甲2には、【請求項2】に「蒸気口シール部における熱間シール強度が5N/15mm幅~28N/15mm幅であること」が記載され、段落【0186】には「内容物を収納する前における空袋時のシール強度としては、特に限定されるものではないが、例えば、50N/15mm幅以上あることが、十分なシール強度を得る上において好ましい。なお、蒸気口シール部に関しては、あまり強固なシール強度とすると、上述したような所定の熱間シール強度が得られなくなる虞れがあるために、60N/15mm幅以下であることが望ましい。」ことが記載され、このことから、最小で(5/60)×100=8.33%が得られ、最大で(28/50)×100=56%が得られ、5~13%の範囲が含まれている。

しかしながら、申立人の上記主張については、上記イ(イ)、(ウ)、(オ)で検討したとおりであり、採用できない。

エ 小括

本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3~7について

本件発明3~7は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、さらに構成を限定したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について

(1)特許法第36条第6項第1号について

ア 申立人の主張する特許異議申立理由

発明の詳細な説明には、発明の課題、解決できる根拠として、以下の記載がある。

「【0040】
電子レンジ加熱によりラミネート強度が低下するインキとしては、前述したように、高濃度白インキ,遮光インキ,金インキ・銀インキ等、アルミペーストを使用したメタリックインキ,パールインキ等が挙げられる。これらのインキ種はバインダー含有率が低いため、電子レンジ加熱時に印刷層でのラミネート強度の低下を招いてしまう。これらのインキのうちの少なくとも1つを印刷層12に用いると、印刷層12でのラミネート強度が低下し、印刷層12とそれに隣接する層(中間層14又はシーラント層15)との間でデラミネーションが発生する。突出シール部3aでデラミネーションが発生しても、包装袋101の内外はつながらないため、包装袋内から包装袋外への蒸気Vの排出は起こらない。
【0041】
突出シール部3aでデラミネーションが発生すると、それよりも包装袋内側のシーラント層15を含む層が伸びて突出シール部3aの剥離が進まなくなる。つまり、デラミネーションによって突出シール部3aのスムーズな剥離が阻害されてしまう。これは、シーラント層15の熱間でのシール強度低下が相対的に小さいことにより、ラミネート強度とシール強度とのバランスがとれなくなるからである。」

しかしながら、出願時の技術常識では「シーラント層」と「印刷層」の間に「中間層」があり、「シーラント層」と「印刷層」が隣り合っていないものでは、「印刷層」のデラミネーションによってシール部のスムーズな剥離が阻害されることはない。

シーラント層の剥離の阻害は、「シーラント層」が隣の層との間でデラミネーションが起こった場合に柔らかい「シーラント層」が単独になり剥がれるのではなく伸びてしまうことで生じる現象であり、例えば、PET層/印刷層/ナイロン層/シーラント層の場合、印刷層のデラミネーションが起きても、ナイロン層/シーラント層の間はデラミネーションが起きずシーラント層が単独とはならないため伸びることはなく剥離を阻害しない。

「印刷層」と「シーラント層」の間に「中間層」を含む本件発明は、課題を解決できるものか否か発明の詳細な説明に何ら開示されておらず、出願時の技術常識を考慮しても発明の詳細な説明の記載のみでは課題を解決できるものではないから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されたものではない。

イ 当審の判断

本件特許明細書の段落【0005】~【0007】等の記載を参照すると、本件特許は、突出シール部でデラミネーションが発生すると、それよりも包装袋内側のシーラント層を含む層が伸びて突出シール部の剥離が進まなくなることを解決しようとする課題とし、発明の詳細な説明を参照すると、シール部の条件を特定の数値範囲に特定することにより、これを解決したものと理解でき、当該シール部の数値範囲では、課題を解決できないとする証拠等もない。

そうすると、本件発明1、3~7は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、発明の詳細な説明に記載されたものである。

申立人は、上記のように、シーラント層の剥離の阻害は、「シーラント層」が隣の層との間でデラミネーションが起こった場合に柔らかい「シーラント層」が単独になり剥がれるのではなく伸びてしまうことで生じる現象であり、例えば、PET層/印刷層/ナイロン層/シーラント層の場合、印刷層のデラミネーションが起きても、ナイロン層/シーラント層の間はデラミネーションが起きずシーラント層が単独とはならないため伸びることはなく剥離を阻害しないと主張する。

しかしながら、申立人の提示する例であっても、デラミネーションが発生すると、ナイロン層/シーラント層は、PET層と分離することになるから、デラミネーションが発生しない場合に比べて、ナイロン層/シーラント層が伸びやすくなるといえるので、必ずしもシーラント層が伸びることはなく剥離を阻害しないということはできない。

よって、申立人の主張は採用できない。

(2) 特許法第36条第6項第2号について

ア 申立人が主張する特許異議申立理由

請求項1には、「電子レンジ加熱によりラミネート強度が低下するインキからなる印刷層」なる記載がある。一般的にインキ及び接着剤は、高温になると樹脂が軟化して強度が下がり、その結果「ラミネート強度」も下がる。請求項1では、当然に「ラミネート強度」が低下する一般的な「印刷層」と何がどのように異なるか技術的に特定できない。したがって、請求項1の記載は不明確である。

イ 当審の判断

請求項1の上記記載は、印刷層が「電子レンジ加熱によりラミネート強度が低下するインキからなる」であることを特定するものであり、「電子レンジ加熱によりラミネート強度が低下する」ことについても何ら不明確な点はないから、本件発明1及びこれを直接又は間接的に引用する本件発明3~7は、明確である。

申立人は、上記のように、当然に「ラミネート強度」が低下する一般的な「印刷層」と何がどのように異なるか技術的に特定できないと主張する。

しかしながら、請求項1で特定される事項が一般的であるからといって、明確でない理由にはならない。仮に、申立人が主張するように、一般的な「印刷層」が、電子レンジ加熱により当然に「ラミネート強度」が低下するのであれば、当該一般的な「印刷層」を含むものとして、「電子レンジ加熱によりラミネート強度が低下するインキからなる印刷層」は明確である。

よって、申立人の主張は採用できない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、3~7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1、3~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

本件特許の請求項2に係る特許については、本件訂正請求により削除されたから、請求項2に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり、決定する。

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2022-701178

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