特許異議申立
2022-700992
仕切り付容器
- 審判番号
- 2022-700992
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-001913
- 登録番号
- 7050496
- 請求日
- 2022年10月07日
- 審決日
- 2023年05月24日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ニップン
- 【権利者代理人】鎌田 直也
- 【権利者代理人】鎌田 文二
- 【権利者】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
- 【権利者代理人】鎌田 直也
- 【権利者代理人】鎌田 文二
- 【異議申立人】田中 理紗
- 審判長/審判官
- 審判長 山崎 勝司
- 審判官 森本 哲也
- 審判官 久保 克彦
- 分類
- P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7050496号発明「仕切り付容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7050496号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7050496号の請求項1~3に係る特許を維持する。
特許第7050496号の請求項4~7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7050496号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年1月10日に出願され、令和4年3月31日にその特許権の設定登録がされ、令和4年4月8日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和4年10月 7日 :特許異議申立人田中理紗(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て
令和4年12月21日付け:取消理由通知書
令和5年 2月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 4月12日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正
1 本件訂正の内容
令和5年2月20日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。また、訂正自体を、「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「前記小部屋の前記底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部に、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁 の底壁に対する傾斜角度よりも、底壁に対する傾斜角度の小さな、前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を各辺とする、略多角形状のマイクロ波分散面を有する、仕切り付容器」との記載を、「前記小部屋の前記底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部に、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁 の底壁に対する傾斜角度よりも、底壁に対する傾斜角度の小さな、前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を各辺とする、略多角形状の平坦なマイクロ波分散面を有するパルプモールド製の仕切り付き容器であって、
前記マイクロ波分散面の前記仕切り壁と前記周壁の境界上に位置する頂点は、仕切り壁の上下方向の上半部に達しており、かつ前記仕切り壁の上縁部にまで達しておらず、
前記マイクロ波分散面の前記周壁と前記仕切り壁との境界線上に位置する頂点から前記底壁へと垂直に下した垂線の長さは、10~30mmであり、前記垂線と前記底壁との交点と、前記マイクロ波分散面の前記底壁との境界線との距離は、10~30mmであり、
前記マイクロ波分散面の前記底壁に対する傾斜角度は、35~55度である仕切り付き容器」と訂正する。
(なお、請求項1を引用する請求項2及び3も、同様に訂正する。)
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
2 本件訂正の適否
(1) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に記載の「マイクロ波分散面」について、その形状を「平坦な」と限定し、「仕切り付き容器」について、その材質を「パルプモールド製の」と限定し、「前記マイクロ波分散面の前記仕切り壁と前記周壁の境界上に位置する頂点」について、「仕切り壁の上下方向の上半部に達しており、かつ前記仕切り壁の上縁部にまで達しておらず」と限定し、さらに、「マイクロ波分散面」に関する寸法と角度について、「前記マイクロ波分散面の前記周壁と前記仕切り壁との境界線上に位置する頂点から前記底壁へと垂直に下した垂線の長さは、10~30mmであり、前記垂線と前記底壁との交点と、前記マイクロ波分散面の前記底壁との境界線との距離は、10~30mmであり、
前記マイクロ波分散面の前記底壁に対する傾斜角度は、35~55度である」との限定を付加するものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4~7、本件特許明細書の段落【0025】~【0028】、【0031】及び図1~3の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正である。
また、訂正事項1は、上記のとおり特許請求の範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリーや目的、対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2~5について
訂正事項2~5は、本件訂正前の請求項4~7をそれぞれ削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又 は変更するものに該当しないことは、明らかである。
(2) 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~7は、請求項2~7がそれぞれ請求項1を引用しているものであるため、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~7〕に対して請求されたものである。
(3) 小括
上記のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、本件特許の請求項1に係る発明を「本件発明1」といい、他の各請求項に係る発明についても同様とする。)は、本件訂正請求の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
底壁と、
底壁の周縁から立ち上がる周壁と、
底壁と周壁により区画される上方に開口する収納空間を複数の小部屋に仕切る仕切り壁と、を備え、
前記小部屋の前記底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部に、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁の底壁に対する傾斜角度よりも、底壁に対する傾斜角度の小さな、前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を各辺とする、略多角形状の平坦なマイクロ波分散面を有するパルプモールド製の仕切り付き容器であって、
前記マイクロ波分散面の前記仕切り壁と前記周壁の境界上に位置する頂点は、仕切り壁の上下方向の上半部に達しており、かつ前記仕切り壁の上縁部にまで達しておらず、
前記マイクロ波分散面の前記周壁と前記仕切り壁との境界線上に位置する頂点から前記底壁へと垂直に下した垂線の長さは、10~30mmであり、前記垂線と前記底壁との交点と、前記マイクロ波分散面の前記底壁との境界線との距離は、10~30mmであり、
前記マイクロ波分散面の前記底壁に対する傾斜角度は、35~55度である仕切り付き容器。
【請求項2】
前記マイクロ波分散面は、前記底壁との境界線、前記周壁との境界線、および前記仕切り壁との境界線を三辺とする、略三角形である請求項1に記載の仕切り付容器。
【請求項3】
前記小部屋の角隅部のうち、前記周壁と前記仕切り壁とがなす角度が鋭角の角隅部にのみ、前記マイクロ波分散面を有する、請求項1または2に記載の仕切り付容器。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、当審が令和4年12月21日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1 (新規性) 本件特許の訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、本件特許の訂正前の請求項1~2及び4に係る発明は、甲第2~5号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。
2 (進歩性) 本件特許の訂正前の請求項1~7に係る発明は、甲1~6号証それぞれに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。
<申立人が提出した証拠方法>
甲第1号証:意匠登録第1479787号公報
甲第2号証:意匠登録第1411779号公報
甲第3号証:意匠登録第1371437号公報
甲第4号証:意匠登録第1324540号公報
甲第5号証:意匠登録第1372737号公報
甲第6号証:特表2013-516216号公報
甲第7号証:特開2007-16380号公報
(以下、甲第1号証を「甲1」といい、他の甲各号証についても同様とする。)
第5 取消理由についての当審の判断
1 甲各号証に記載された事項、発明
(1) 甲1
甲1に記載されている事項(特に、【意匠に係る物品】、【上方斜視図】、【平面図】、【底面図】の記載を参照されたい。)を総合すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「底壁と、
底壁の周縁から立ち上がる周壁と、
底壁と周壁により区画される上方に開口する収納空間を2つの小部屋に仕切る仕切り壁と、を備え、
前記小部屋の前記底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部のうち、前記周壁と前記仕切り壁とがなす角度が鋭角の角隅部にのみ、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁の底壁に対する傾斜角度よりも、底壁に対する傾斜角度の小さな、前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を三辺とする、略三角形状の面を有する、包装用容器。」
(2) 甲2
甲2に記載されている事項(特に、【意匠に係る物品】、【斜視図】、【平面図】、【底面図】の記載を参照されたい。)を総合すると、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「底壁と、
底壁の周縁から立ち上がる周壁と、
底壁と周壁により区画される上方に開口する収納空間を2つの小部屋に仕切る仕切り壁と、を備え、
前記小部屋の前記底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部に、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁の底壁に対する傾斜角度よりも、底壁に対する傾斜角度の小さな、前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を三辺とする、略三角形状の面を有する、包装用容器。」
(3) 甲3
甲3に記載されている事項(特に、【意匠に係る物品】、【意匠の説明】、【斜視図】、【平面図】、【底面図】、【正面図】の記載を参照されたい。)を総合すると、甲3には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「底壁と、
底壁の周縁から立ち上がる周壁と、
底壁と周壁により区画される上方に開口する収納空間を4つの小部屋に仕切る仕切り壁と、を備え、
前記小部屋の前記底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部に、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁の底壁に対する傾斜角度よりも、底壁に対する傾斜角度の小さな、前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を三辺とする、略三角形状の面を有する、包装用容器。」
(4) 甲4
甲4に記載されている事項(特に、【意匠に係る物品】、【斜視図1】、【平面図】、【底面図】の記載を参照されたい。)を総合すると、甲4には、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「底壁と、
底壁の周縁から立ち上がる周壁と、
底壁と周壁により区画される上方に開口する収納空間を3つの小部屋に仕切る仕切り壁と、を備え、
前記小部屋の前記底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部に、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁の底壁に対する傾斜角度よりも、底壁に対する傾斜角度の小さな、前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を三辺とする、略三角形状の面を有する(特に【斜視図1】の左上側の小部屋における上側の角隅部を参照されたい。)、包装用容器。」
(5) 甲5
甲5に記載されている事項(特に、【意匠に係る物品】、【意匠に係る物品の説明】、【斜視図】、【平面図】、【底面図】の記載を参照されたい。)を総合すると、甲5には、以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「底壁と、
底壁の周縁から立ち上がる周壁と、
底壁と周壁により区画される上方に開口する収納空間を4つの小部屋に仕切る仕切り壁と、を備え、
前記小部屋の前記底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部に、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁の底壁に対する傾斜角度よりも、底壁に対する傾斜角度の小さな、前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を三辺とする、略三角形状の面を有する(特に【平面図】の右上側の小部屋における左上側の角隅部を参照されたい。)、包装用容器。」
(6) 甲6
甲6に記載されている事項(特に、段落【0004】、【0019】、【0022】、【0027】、【0028】、図1、5~7の記載を参照されたい。)を総合すると、甲6には、以下の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
「底面18、19と、
側壁16、17と、
第1の一体化区画14及び第2の一体化区画12を分離する頂面22からなる前記側壁16、17の隣接部と、を備え、
鋭い角および/または丸みを帯びていない形状を有する区画と比較して、食品が過剰に過熱することの防止となる前記一体化区画12、14の丸みを帯びた角20を有する、電子レンジ加熱用トレイ10。」
2 取消理由1(新規性)、取消理由2(進歩性)について
(1) 本件発明1について
ア 甲1を主引例とする場合
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「底壁」、「周壁」、「2つの小部屋」、「仕切り壁」、「包装用容器」は、その構成や機能、及び技術上の意義を考慮すると、それぞれ、本件発明1の「底壁」、「周壁」、「複数の小部屋」、「仕切り壁」、「仕切り付き容器」に相当する。
また、甲1発明の「前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を三辺とする、略三角形状の面」は、本件発明1の「前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を各辺とする、略多角形状の平坦なマイクロ波分散面」と、「前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を各辺とする、略多角形状」の「面」である限りで一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点1>
「底壁と、
底壁の周縁から立ち上がる周壁と、
底壁と周壁により区画される上方に開口する収納空間を複数の小部屋に仕切る仕切り壁と、を備え、
前記小部屋の前記底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部に、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁の底壁に対する傾斜角度よりも、底壁に対する傾斜角度の小さな、前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を各辺とする、略多角形状の面を有する仕切り付き容器」
<相違点1>
略多角形状の面について、本件発明1の、当該「略多角形状」の「面」は、「平坦」であって、「パルプモールド製の仕切り付き容器」の、「マイクロ波分散面」であり、「前記マイクロ波分散面の前記仕切り壁と前記周壁の境界上に位置する頂点は、仕切り壁の上下方向の上半部に達しており、かつ前記仕切り壁の上縁部にまで達しておらず、
前記マイクロ波分散面の前記周壁と前記仕切り壁との境界線上に位置する頂点から前記底壁へと垂直に下した垂線の長さは、10~30mmであり、前記垂線と前記底壁との交点と、前記マイクロ波分散面の前記底壁との境界線との距離は、10~30mmであり、
前記マイクロ波分散面の前記底壁に対する傾斜角度は、35~55度である」のに対して、甲1発明は、「略三角形状」の「面」を有する「包装用容器」の材質が不明であるとともに、「略三角形状の面」が「平坦なマイクロ波分散面」であるのか不明であり、周壁、底壁及び仕切り壁との具体的な位置関係が不明な点。
(イ) 判断
上記相違点1について検討する。
甲1発明の「略三角形状の面」について、鋭い角部が存在する場合に、マイクロ波が当該角部に集中して、他の箇所よりも、強く加熱されることは、例えば甲6(段落【0020】)に記載されたように技術常識であるから、当該技術常識に照らせば、甲1発明は、「略三角形状の面」を形成すると、「略三角形状の面」が形成されていない場合と比較して、マイクロ波を集中させずに分散できることは明らかである。そうすると、甲1発明の「略三角形状の面」は、マイクロ波を分散する機能を奏する面、すなわちマイクロ波分散面といえる。
一方、甲1発明の「略三角形状の面」をみると、甲1の【上方斜視図】、【平面図】等には、「略三角形状の面」が湾曲しており、特に底壁、周壁及び仕切り壁との境界が曖昧であるため、甲1には、「略三角形状の面」が「平坦」であることまでは認められない。
そして、甲1には、当該「略三角形状の面」を「平坦」とする点や、周壁、底壁及び仕切り壁との具体的な位置関係、「包装用容器」の材質に関する示唆もない。
容器としてパルプモールド製とすることは、例えば甲6(段落【0022】)、甲7(段落【0003】)にあるように周知技術であるものの、パルプモールド製の容器において、相違点1に係る本件発明1の構成の寸法及び角度関係を有する「平坦なマイクロ波分散面」は甲6~7から周知技術であるとはいえない。
さらに、甲2~7には、相違点1の「マイクロ波分散面」と周壁、底壁及び仕切り壁との具体的な位置関係について、記載も示唆もない。また、甲8及び甲9にも、記載も示唆もない。
そうしてみれば、甲1発明において、「容器」をパルプモールド製としつつ、「略三角形状の面」を「平坦」とし、かつ、周壁等との配置関係を相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲2~5を主引例とする場合
少なくとも上記相違点1と同じ点で相違し、上記説示したとおりである。
したがって、本件発明1は、甲2発明~甲5発明ではなく、また、甲2発明~甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 甲6を主引例とする場合
(ア) 対比
本件発明1と甲6発明とを対比すると、甲6発明の「底面18、19」、「側壁16、17」、「電子レンジ加熱用トレイ10」は、その構成や機能、及び技術上の意義を考慮すると、それぞれ、本件発明1の「底壁」、「底壁の周縁から立ち上がる周壁」、「仕切り付き容器」に相当する。
また、甲6発明の「第1の一体化区画14及び第2の一体化区画12を分離する頂面22からなる前記側壁16、17の隣接部」は、本件発明1の「底壁と周壁により区画される上方に開口する収納空間を複数の小部屋に仕切る仕切り壁」に相当する。
さらに、甲6発明の「一体化区画12、14の丸みを帯びた角20」は、「鋭い角および/または丸みを帯びていない形状を有する区画と比較して食品が過剰に過熱することの防止」(甲6の段落【0020】)できるものであるため、本件発明1の「マイクロ波分散面」であるといえる。
そうすると、本件発明1と甲6発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点2>
「底壁と、
底壁の周縁から立ち上がる周壁と、
底壁と周壁により区画される上方に開口する収納空間を複数の小部屋に仕切る仕切り壁と、を備え、
マイクロ波分散面を有する仕切り付き容器」
<相違点2>
「マイクロ波分散面」について、本件発明1は、「パルプモールド製の仕切り付き容器」のものであり、「マイクロ波分散面」が「前記小部屋の前記底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部に、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁 の底壁に対する傾斜角度よりも、底壁に対する傾斜角度の小さな、 前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を各辺とする、略多角形状の平坦」な「面」であり、「前記マイクロ波分散面の前記仕切り壁と前記周壁の境界上に位置する頂点は、仕切り壁の上下方向の上半部に達しており、かつ前記仕切り壁の上縁部にまで達しておらず、
前記マイクロ波分散面の前記周壁と前記仕切り壁との境界線上に位置する頂点から前記底壁へと垂直に下した垂線の長さは、10~30mmであり、前記垂線と前記底壁との交点と、前記マイクロ波分散面の前記底壁との境界線との距離は、10~30mmであり、
前記マイクロ波分散面の前記底壁に対する傾斜角度は、35~55度である」のに対して、甲6発明は、「一体化区画12、14の丸みを帯びた角20」を有する「電子レンジ加熱用トレイ10」の材質が不明であるとともに、「一体化区画12、14の丸みを帯びた角20」が「平坦」であるのか不明であるとともに、周壁、底壁及び仕切り壁との具体的な位置関係が不明な点。
(イ) 判断
上記相違点2について検討する。
甲1~甲5に記載されているように、小部屋の底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部に、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁の底壁に対する傾斜角度よりも、底壁に対する傾斜角度の小さな、前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を三辺とする、略三角形状の面を設けることは周知技術である。しかしながら、パルプモールド製の容器において、相違点2に係る本件発明1の構成の寸法及び角度関係を有する「平坦なマイクロ波分散面」は、甲1~5から周知技術であるとはいえない。
さらに、甲1~5、7には、相違点2の「マイクロ波分散面」と周壁、底壁及び仕切り壁との具体的な位置関係について、記載も示唆もない。また、甲8及び甲9にも、記載も示唆もない。
そうしてみれば、甲6発明において、「一体化区画12、14の丸みを帯びた角20」の構成及び周壁等との配置関係を相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件発明1は、甲6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 本件発明2~3について
本件発明2~3は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同様に、本件発明2~3は、甲1~5発明ではなく、また、当業者が甲1~6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5における「前記マイクロ波分散面の前記底壁に対する傾斜角度は、20~60度である」という限定、及び、請求項6の「前記マイクロ波分散面の前記周壁と前記仕切り壁との境界線上に位置する頂点から前記底壁へと垂直に下した点と、前記マイクロ波分散面の前記底壁との境界線との距離は、10~30mmである」という限定に対し、前者について「約45度」、後者について「約20mm」の実施例の記載のみしかなく、それ以外の値の実施例は記載されておらず実験結果も記載されていないため、他の数値において「マイクロ波が仕切り壁の角隅部等に集中して、当該箇所の食品が過剰に加熱されたり、他の箇所の加熱が不十分になることを抑制する」という本件特許明細書の段落【0006】に記載された課題を解決できるものとはいえず、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである旨を主張する。(特許異議申立書第42~44ページ)
2 申立人は、令和5年4月12日提出の意見書において、本件訂正で請求項1に追加された「前記マイクロ波分散面の前記周壁と前記仕切り壁との境界線上に位置する頂点から前記底壁へと垂直に下した垂線の長さは、10~30mm」という点についても同様に特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨を主張する。
3 上記1及び2の点を検討する。
本件特許明細書の特に段落【0006】の記載から、本件特許が解決しようとする課題は、「マイクロ波が仕切り壁の角隅部等に集中して、当該箇所の食品が過剰に加熱されたり、他の箇所の加熱が不十分になることを抑制すること」である。
ここで、本件特許明細書の段落【0012】には、「発明にかかる仕切り付容器において、前記マイクロ波分散面の前記底壁に対する傾斜角度は、20~60度である構成を採用するのが好ましい。
マイクロ波分散面の傾斜角度が60度を上回ると、底壁に対する周壁および仕切り壁の立ち上がり角度とあまり変わらなくなり、周壁および仕切り壁とほぼ同一平面となり、また傾斜角度が20度を下回ると、底壁とほぼ同一平面となって、マイクロ波分散効果が十分に得られない恐れがあるからである。」と、段落【0027】には、「マイクロ波分散面14の底壁11に対する傾斜角度は、周壁12および仕切り壁13の底壁11に対する立ち上がり角度よりも小さい限りにおいて特に限定されないが、20度~60度であるのが好ましく、35度~55度であるのがさらに好ましい。図示では、傾斜角度は約45度である。傾斜角度が20度を下回るとマイクロ波分散面14と底壁11との間の傾斜角度が小さくほぼ面一状態となり、傾斜角度が60度を上回るとマイクロ波分散面14と周壁12および仕切り壁13との間の傾斜角度が小さくほぼ面一状態となり、マイクロ波分散効果が十分に得られない恐れがあるからである。」と、段落【0013】には、「発明にかかる仕切り付容器において、前記マイクロ波分散面の前記周壁と前記仕切り壁との境界線上に位置する頂点から前記底壁へと垂直に下した点と、前記マイクロ波分散面の前記底壁との境界線との距離は、10~30mmである構成を採用するのが好ましい。
前記距離が10mmを下回ると、マイクロ波分散面の寸法が小さすぎて、充分なマイクロ波の分散効果が得られない可能性があるからである。
また前記距離が30mmを上回ると、マイクロ波分散面の寸法が大きすぎて、小部屋の収納能力が不十分となり、また容器の静置時における安定性も悪くなる恐れがあるからである。」と、段落【0028】には、「マイクロ波分散面14の寸法は特に限定されないが、図3(b)の高さH(仕切り壁13と周壁12の境界線上に位置する頂点より、底壁11から延長した同一水平面上に下した垂線の長さ)は10mm~30mmであるのが好ましい。また図3(b)の長さL(前記垂線と底壁11から延長した同一水平面との交点とマイクロ波分散面14と底壁11との境界線との距離)は10mm~30mmであるのが好ましく、15mm~25mmであるのがさらに好ましい。高さHおよび長さLともに10mmを下回ると、マイクロ波分散面が小さくなりすぎて分散効果が十分に得られない恐れがあり、30mmを上回ると、マイクロ波分散面が大きくなりすぎて小部屋の角隅部が大きくえぐれたようになって、小部屋の容量が小さくなるとともに、容器を静置した場合の安定性も悪くなる恐れがあるからである。」と記載されている。(下線は、理解の便のため、当審で付与した。)
このように、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「前記マイクロ波分散面の前記周壁と前記仕切り壁との境界線上に位置する頂点から前記底壁へと垂直に下した垂線の長さ」が「10~30mmであ」ること、「前記垂線と前記底壁との交点と、前記マイクロ波分散面の前記底壁との境界線との距離」が「10~30mmであ」ること、及び、「前記マイクロ波分散面の前記底壁に対する傾斜角度」が「35~55度である」ことが記載されているとともに、当業者であればこれらの構成を採用することで、上述した発明の課題を解決できることが理解できるといえる。
よって、本件発明1~3は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえる。
したがって、申立人の上記1及び2に係る主張は、採用することができない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人が提出した特許異議の申立理由によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項4~7に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項4~7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700992