特許異議申立
2025-700929
チューブ容器
- 審判番号
- 2025-700929
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-189965
- 登録番号
- 7652233
- 請求日
- 2025年09月29日
- 審決日
- 2025年12月23日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】堀田 幸裕
- 【権利者代理人】村田 卓久
- 【権利者代理人】塙 和也
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】藤枡 裕実
- 【権利者代理人】深町 圭子
- 【権利者代理人】伊藤 英生
- 【権利者代理人】後藤 直樹
- 【権利者代理人】立石 英之
- 【異議申立人】冨田 圭太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 宮地 匡人
- 分類
- P1651.121-Y (B65D) / P1651.536-Y (B65D) / P1651.537-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7652233号発明「チューブ容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7652233号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7652233号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成30年12月26日を出願日とする特願2018-243758号の一部を、令和5年11月7日に新たな特許出願としたものであって、令和7年3月18日にその特許権の設定登録がされ、令和7年3月27日に特許掲載公報が発行された。その後、令和7年9月29日に特許異議申立人冨田圭太郎(以下「申立人」という。)により、その請求項1に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
一対の貼り合わせ端部を有する胴部と、肩部からなるチューブ容器において、
前記胴部の積層体は、外面から内面に向かって、少なくとも、第一基材層、第一シーラント層、第二基材層、第二シーラント層がこの順に積層され、
前記第一基材層が低密度ポリエチレンであり、前記第一シーラント層が直鎖状低密度ポリエチレンであり、
前記第一基材層と前記第一シーラント層とは隣接しており、
前記第一基材層の厚さが、前記第一シーラント層の厚さより薄く、
前記第一基材層の外面の全面もしくは少なくとも一部に保護層が設けられており、
前記保護層が、紫外線照射硬化型ニスを含む印刷インキであり、
前記第一基材層の表面の算術平均高さ(Sa)は0.1~1.0μmであるチューブ容器。」
第3 申立理由の概要
申立人は、本件特許異議申立書に添付して、以下の甲第1号証~甲第3号証(以下「甲1」等という。)を提出して、大要、次の申立理由を主張している。
1 証拠方法
甲1:特開2016-74451号公報
甲2:国際公開第2015/182616号
甲3:特開2002-96369号公報
2 申立理由
(1)申立理由1(進歩性)
本件発明1は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1~甲3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(特許異議申立書「3.3-4.(1)」、「3.3-4.(2)」、「3.3-4.(3)」)。
(2)申立理由2(実施可能要件)
本件特許は、明細書の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件の発明の詳細な説明には、本件発明1が第一基材層の外面の一部に保護層を設ける場合、チューブ容器の外面に傷がつかず、美粧性を保つことができるチューブ容器を提供するという本件発明の課題を解決できる具体例が記載されていないから、本件の発明の詳細な説明は、本件発明1について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでない(特許異議申立書「3.3-4.(5)」)。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 本件発明1が第一基材層の外面の一部に保護層を設ける場合、チューブ容器の外面に傷がつかず、美粧性を保つことができるチューブ容器を提供するという本件発明1の課題を解決できないから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである(特許異議申立書「3.3-4.(6)(6-1)」)。
イ 本件の明細書において、本件発明1の第一基材層11としてLDPE層11が開示されているだけであるところ、本件発明1は第一基材層を構成する材料について特定しないから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである(特許異議申立書「3.3-4.(6)(6-2)」)。
(4)申立理由4(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件発明1の第一基材の外面と第一基材の表面との関係が明確でなく、本件発明1は明確でない(特許異議申立書「3.3-4.(7)」)。
第4 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1(進歩性)について
(1)引用文献の記載事項・発明
ア 甲1
(ア)甲1の記載
甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。以下同様。
「【技術分野】
【0001】
本発明はラミネートチューブに関し、特に、易開封加工を施したラミネートチューブに用いて好適な技術に関する。」
「【0022】
チューブ状の胴部11は、図3に示したような胴部材20を巻回し、図4のように、一方の端部に他方の端部を重ね合わせて加熱シール接合し、チューブ状に形成されている。
チューブ状(筒状)とされる胴部11には、軸方向における中央付近位置に胴部11の円周方向に延在する易切断開封部18が設けられている。
【0023】
胴部11となる積層体20は、表側に表側熱可塑性樹脂層(熱可塑性樹脂層フィルム)27,25が設けられ、裏側には裏側熱可塑性樹脂層(熱可塑性樹脂層フィルム)21が設けられ、その間には、バリアフィルム22、印刷基材23が設けられた積層体(プラスチックフィルム)からなっている。表側熱可塑性樹脂層27,25と裏側熱可塑性樹脂層21の間にはバリアフィルム22や印刷基材23以外の層を設けることができる。また、これらの層を多層にして設けてもよい。
【0024】
積層体20には、表側熱可塑性樹脂層27,25、裏側熱可塑性樹脂層21、および、バリアフィルム22、印刷基材23のほかに他の層を設けることができる。例えば、印刷基材23のチューブ内側位置に印刷層を設けることができる。
また、積層体20の各層を積層するために、さらに接着層や接着樹脂層24,26を設けることができる。接着層としては、例えば、2液硬化型ウレタン系接着剤などのドライラミネート用接着剤を使用することができる。
また、接着樹脂層24,26となる接着樹脂としては、表側熱可塑性樹脂層25,27や裏側熱可塑性樹脂層21、あるいは、バリアフィルム22、印刷基材23と互いに熱溶着できるポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましい。さらに、接着樹脂層24,26を設ける場合あるいは貼り合わせをおこなう場合、必要に応じてアンカーコート剤を使用することができる。
【0025】
積層体20となるプラスチックフィルムの層構成例としては、図1に示すように、裏側熱可塑性樹脂層21として、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、あるいは、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂からなるポリオレフィン系フィルム21、バリアフィルム22、印刷基材23としてPETフィルムやナイロンフィルム、表側熱可塑性樹脂層24,25,26,27として、ポリオレフィン系フィルムが積層されている。
【0026】
熱可塑性樹脂層21,24,25,26,27のうち、ポリオレフィン系フィルム21は、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)とされ、ポリオレフィン系フィルム25およびポリオレフィン系フィルム27がLDPEとされ、ポリオレフィン系フィルム24,26が、接着樹脂層としてのEXPE(押出ポリエチレン)となっている。ポリオレフィン系フィルム25およびポリオレフィン系フィルム27は、同一の材質から形成されてもよいし、異なる組成とされることもできる。例えば、ポリオレフィン系フィルム27が静電防止剤を含有することができる。」
「【0034】
さらに、ポリオレフィン系フィルム25を貼り合わせたバリア層において、熱可塑性樹脂層貼り合わせ工程として、ポリオレフィン系フィルム25における接着層24の反対側の面に、LDPEからなる表側熱可塑性樹脂層としてのポリオレフィン系フィルム27に溶融ポリエチレン樹脂とされる接着層26をコーティングしてサンドイッチラミネーション法により貼り合わせて積層体20を形成し、ラミネートチューブ10に対応した輪郭形状に切断する。」
「【0038】
次に、図4に示すように、胴部形成工程として、積層体20の一方の端部を他方の端部に重ね合わせ、加熱溶融して接合させた胴部材接合部(重ね合わせ部)17を設けて筒状の胴部11を作成する。このとき、接合する積層体20の端部どうしにおいて、易切断開封部18となる切り込みが重なるとともに、胴部材接合部(重ね合わせ部)17を跨いで易切断開封部18の両端部が胴部材接合部17の幅方向外側位置となるように、胴部材接合部(重ね合わせ部)17が形成される。
【0039】
次に、チューブ形成工程として、コンプレッション成形で、成形型の中に、チューブ状の胴部11を装着し、円錐台形状の肩部12とそれに連続する細首の口頚部13とを成形すると同時に、図4に示すように、胴部11に肩部12を接合させる。
【0040】
このようにして、図2に示すような、ラミネートチューブ10を製造することができる。
そして、口頚部13にキャップ14を嵌め、胴部11の開口部から内容物を充填して、開口部をシールして塞いでシール端部15を形成し、内容物が充填済みのラミネートチューブ10ができる。」
「【実施例】
【0058】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0059】
まず、積層体20を作製する。印刷基材となる厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)23を用意し、ウレタン系グラビアインキを用いて、グラビア印刷して印刷層を設けた。
別途、バリアフィルムとして厚さ12μmのVMPETフィルム(厚さ50nmアルミニウム蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)22を用意し、その蒸着面に2液硬化型ウレタン系接着剤からなる接着剤層を介して、PETフィルム23の印刷面をドライラミネートした。
【0060】
VMPETフィルム22のPETフィルム23と反対の面に、厚さ130μmのLLDPEをポリオレフィン系フィルム21として2液硬化型ウレタン系接着剤からなる接着剤層を介して、ドライラミネートした。
さらにPETフィルム23のVMPETフィルム22と反対の面に、厚さ15μmの押し出しポリエチレン24により、厚さ40μmのLDPEのポリオレフィン系フィルム25をサンドイッチラミネーションした。さらに、ポリオレフィン系フィルム25表面に、厚さ15μmの押し出しポリエチレン26を介して厚さ40μmのLDPEのポリオレフィン系フィルム27をサンドイッチラミネーションした。
【0061】
熱可塑性樹脂層フィルム21,24~27およびバリアフィルム22,23における厚さ、材質、積層順をまとめて示す。
LDPE27;40μm
EXPE26;15μm
LDPE25;40μm
EXPE24;15μm
PET23;12μm
(印刷層)
(Al;50nm)
VMPET22;12μm
LLDPE21;130μm」
「【図1】
[図:0001431178000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001431178000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001431178000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001431178000004.jpg]
」
(イ)甲1に記載されたと認められる事項
a 【0023】、【0024】及び【図1】より、胴部11となる積層体20は、表側から裏側に向かって、表側熱可塑性樹脂層27、接着樹脂層26、表側熱可塑性樹脂層25、接着樹脂層24、印刷基材23、バリアフィルム22、裏側熱可塑性樹脂層21が設けられることが理解できる。
b 【0038】~【0040】及び【図2】より、ラミネートチューブ10は、胴部11と肩部12とからなり、胴部11は、積層体20の一方の端部を他方の端部に重ね合わせ、加熱溶融して接合させた胴部材接合部17を設けて筒状に作成するものである。
(ウ)甲1発明
上記(ア)、(イ)より、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「胴部11と、肩部12とからなるラミネートチューブ10において、
胴部11となる積層体20は、表側から裏側に向かって、表側熱可塑性樹脂層27、接着樹脂層26、表側熱可塑性樹脂層25、接着樹脂層24、印刷基材23、バリアフィルム22、裏側熱可塑性樹脂層21が設けられ、
表側熱可塑性樹脂層27がLDPEであり、接着樹脂層26がEXPEであり、
表側熱可塑性樹脂層27の厚さが40μmであり、接着樹脂層26の厚さが15μmであり、
胴部11は、積層体20の一方の端部を他方の端部に重ね合わせ、加熱溶融して接合させた胴部材接合部17を設けて筒状に作成するものである
ラミネートチューブ10。」
イ 甲2
(ア)甲2の記載
甲2には、次の事項が記載されている。
「[0022]<機能性塗布層>
機能性塗布層は、チューブ用積層体の表側に機能性を与えるための層であり、かつ機能性材料の塗布により形成される。
[0023] 図3に示されるように、機能性塗布層(15)は、チューブ用積層体(14)の表側(2)を形成する。
[0024] チューブ用積層体の表側に与えられる機能性としては、例えば、帯電防止性、艶消し性、耐光性、光吸収性、耐摩耗性、滑性、耐ブロッキング性等が挙げられる。これらの中でも、帯電防止性及び/又は艶消し性が好ましい。例えば、帯電防止性を与えると、梱包、輸送又は陳列の際に、静電気によりチューブ容器に吸い寄せられる埃が抑制され、チューブ容器の美観を確保することができる。また、艶消し性を与えると、チューブ容器は、マット感等の高級感のある外観を有することができる。さらに、帯電防止性及び艶消し性を与えると、チューブ容器において美観とマット感を両立することができる。
[0025] 機能性塗布層は、機能性材料を含むニスの塗布により形成されることが好ましい。機能性材料は、ニスに分散されることがより好ましい。包装材料又はチューブ容器の分野で知られているニスを使用してよい。
[0026] 例えば、ニスは、OP(over printing)ニスでよい。ニスは、油性又は紫外線硬化性でよいが、紫外線硬化性であることが好ましい。」
(イ)甲2記載事項
上記(ア)より、甲2には以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。
「紫外線硬化性のニスの塗布により形成された帯電防止性、艶消し性、耐光性、光吸収性、耐摩耗性、滑性、耐ブロッキング性等を有する機能性塗布層を表側に設けたチューブ用積層体。」
ウ 甲3
(ア)甲3の記載
甲3には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、合成樹脂で成形されたチューブヘッドの円錐端壁の中心部に同心状に設けられて前向きに突出する出口筒からチューブ容器内に充填されている粘液状、クリーム状の製品、例えば有機溶剤を含む接着剤やコーキング剤などを押し出したり、吸い出したりするチューブ容器用合成樹脂製チューブ筒の製造方法に関する。」
「【0025】又、外面の凹凸の粗さが、算術平均粗さで0.09μm以下であると、インフレーション法でチューブ筒を押出成形し、対のピンチロールで挟んで扁平にして渦状に巻取って保管した際に、渦巻きの内側に位置するチューブ筒の外周の外面と、その外側に位置するチューブ筒の内周の外面とが所々で密着し、段落0005で述べたように密着部分を剥がすと外面の肌が荒れ、外観が不良になると共に、印刷性も悪化する。これに対し、外面の凹凸の粗さが算術平均粗さで0.16μmを越えると、徐々に外面の光沢が失われ、且つ凹凸も徐々に粗くなって外面はザラザラになり、印刷インキが外面全体に付着せず、印刷性が悪化すると共に手触り、外観も悪化し、商品価値が著しく低下する。従って、外面の算術平均粗さは0.10~0.15μmの範囲、好ましくは0.12μm程度がよい。それには、前述の成形条件では合成樹脂のみ、或いは合成樹脂に接着剤をブレンドした場合も含めて外層の剪断応力は9.00×104から1.08×105Pa程度(平均9.80×104Pa)にすることが好ましいが、成形条件が全く異なる場合は外層の剪断応力を、外面の算術平均粗さが0.10~0.15μmの範囲になるものを選択する。」
(イ)甲3記載事項
上記(ア)より甲3には以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されている。
「チューブ容器用合成樹脂製チューブのチューブ筒の外面の算術平均粗さが0.10~0.15μmの範囲の場合、印刷性が良好である。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明の「胴部11」、「肩部12」、「ラミネートチューブ10」及び「積層体20」は、それぞれ、本件発明1の「胴部」、「肩部」、「チューブ容器」及び「積層体」に相当する。
甲1発明の「胴部11」は、「積層体20の一方の端部を他方の端部に重ね合わせ、加熱溶融して接合させた胴部材接合部17を設けて筒状に作成するものである」から、甲1発明の「胴部材接合部17」は、本件発明1の「一対の貼り合わせ端部」に相当する。
甲1発明の「表側」及び「裏側」は、本件発明1の「外面」及び「内面」に相当する。
甲1発明の「表側熱可塑性樹脂層27」、「接着樹脂層26」、「印刷基材23」と「バリアフィルム22」及び「裏側熱可塑性樹脂層21」は、それぞれ、本件発明1の「第一基材層」、「第一シーラント層」、「第二基材層」及び「第二シーラント層」に相当し、甲1発明の「表側から裏側に向かって、表側熱可塑性樹脂層27、接着樹脂層26、表側熱可塑性樹脂層25、接着樹脂層24、印刷基材23、バリアフィルム22、裏側熱可塑性樹脂層21が設けられ」ることは、本件発明1の「前記胴部の積層体は、外面から内面に向かって、少なくとも、第一基材層、第一シーラント層、第二基材層、第二シーラント層がこの順に積層され」、「前記第一基材層と前記第一シーラント層とは隣接して」いることに相当する。
甲1発明の「LDPE」は、本件発明1の「低密度ポリエチレン」に相当し、甲1発明において「表側熱可塑性樹脂層27がLDPEであ」ることは、本件発明1において「前記第一基材層が低密度ポリエチレンであ」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「一対の貼り合わせ端部を有する胴部と、肩部からなるチューブ容器において、
前記胴部の積層体は、外面から内面に向かって、少なくとも、第一基材層、第一シーラント層、第二基材層、第二シーラント層がこの順に積層され、
前記第一基材層が低密度ポリエチレンであり、
前記第一基材層と前記第一シーラント層とは隣接しているチューブ容器。」
[相違点1]
第一シーラント層が、本件発明1は「直鎖状低密度ポリエチレン」であるのに対して、甲1発明は「EXPE」である点。
[相違点2]
本件発明1は、「前記第一基材層の厚さが、前記第一シーラント層の厚さより薄」いのに対して、甲1発明は、「表側熱可塑性樹脂層27の厚さが40μmであり、接着樹脂層26の厚さが15μmであり」、表側熱可塑性樹脂層27の厚さが、接着樹脂層26の厚さより厚い点。
[相違点3]
本件発明1は、「前記第一基材層の外面の全面もしくは少なくとも一部に保護層が設けられており、前記保護層が、紫外線照射硬化型ニスを含む印刷インキであ」るのに対して、本件発明1は、そのような保護層が設けられていない点。
[相違点4]
本件発明1は、「前記第一基材層の表面の算術平均高さ(Sa)は0.1~1.0μmである」のに対して、甲1発明の「表側熱可塑性樹脂層27」の表面の算術平均高さ(Sa)が不明な点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲1には、「表側熱可塑性樹脂層27」と「接着樹脂層26」に関して、「接着樹脂層26」を「表側熱可塑性樹脂層27」と「表側熱可塑性樹脂層25」とを貼り合わせるために用いる点(【0024】、【0034】)が記載されているものの、「表側熱可塑性樹脂層27」の厚さを「接着樹脂層26」の厚さより薄くすることの記載も示唆もなく、そうする動機付けはない。
また、提出された他の証拠のいずれにも、「表側熱可塑性樹脂層27」の厚さを「接着樹脂層26」の厚さより薄くするとの事項について、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明において、「表側熱可塑性樹脂層27」の厚さを「接着樹脂層26」の厚さより薄くすることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 申立理由2(実施可能要件)について
(1)物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用をすることができる程度のものでなければならない。以下、この観点に立って検討する。
(2)本件発明1は、「前記第一基材層の外面の全面もしくは少なくとも一部に保護層が設けられ」るとの構成を備えるものである。
(3)本件明細書には、保護層16を、チューブ容器の筒状胴部の積層体10のうち一対の貼り合わせ端部33A、33B以外の領域や、一対の貼り合わせ端部33A、33B以外の領域であっても、必要に応じて部分的に形成してもよいことが記載されている(段落【0033】及び【0034】)。
また、本件明細書には、フレキソ印刷機を用いて紫外線照射硬化型ニスを塗布してニス塗布層16を形成し、フレキソ印刷機の排出側に設けられた紫外線照射部を、紫外線照射硬化型ニスからなる保護層16を備えた積層体が通過すると、前記ニスが硬化して、保護層16の表面の硬度が大きくなり、耐傷性が向上して、さらに摩擦係数が低減することが記載されている(段落【0073】)。
そうすると、上記(3)に記載の事項から、上記(2)の本件発明1の構成を形成するために、当業者が過度の試行錯誤を要するものであるとはいえない。
(4)よって、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、上記第3の2(2)に示す申立人の主張は採用できない。
3 申立理由3(サポート要件)について
(1)特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点に立って検討する。
(2)本件発明1の解決しようとする課題は、「チューブ容器の外面の耐傷性を向上させ、上記のようなチューブ容器の充填・包装工程において、チューブ容器の外面に傷がつかず、美粧性を保つことができるチューブ容器を提供すること」と認められる(段落【0005】)。
(3)上記(2)における課題を解決するための手段は、「外面から内面に向かって、少なくとも、第一基材層、第二基材層、第二シーラント層がこの順に積層され、さらに前記第一基材層の外面の全面もしくは少なくとも一部に保護層が設けられていること」と認められる(段落【0006】)。
(4)そうすると、本件発明1は、上記(3)の課題を解決するための手段を有していることから、本件発明1の課題を解決することができるものであり、発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内であるといえる。
(5)よって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載された範囲内であり、上記第3の2(3)アに示す申立人の主張は採用できない。また、本件発明1には「前記第一基材層が低密度ポリエチレンであ」ることが特定されているから、上記第3の2(3)イに示す申立人の主張も採用できない。
4 申立理由4(明確性要件)について
(1)特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。以下、この観点に立って検討する。
(2)本件明細書には、チューブ容器の筒状胴部の積層体10が、外面から内面に向かって順に配置されたヒートシール性を有する第一基材層11及び第一シーラント層12と、第二基材層13と、第二シーラント層15とを有する積層体であり、第一基材層11の表面に保護層16を設けることが記載されている(【0017】、【図1】)。
(3)そうすると、保護層16が設けられた第一基材層11の表面は、第一基材層11の外面側に存在すると理解できるから、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(4)よって、本件発明1は明確であり、上記第3の2(4)に示す申立人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、請求項1に係る特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700929