特許異議申立
2024-700162
包装材料
- 審判番号
- 2024-700162
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-142523
- 登録番号
- 7333012
- 請求日
- 2024年02月22日
- 審決日
- 2025年05月30日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】堀田 幸裕
- 【権利者代理人】岡村 和郎
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】永井 浩之
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【権利者代理人】朝倉 悟
- 【異議申立人】柏木 香陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 岩谷 一臣
- 分類
- P1651.537-ZDA(B32B) / P1651.113-ZDA(B32B) / P1651.121-ZDA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第1項第4号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7333012号発明「包装材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7333012号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、6〕、〔3、8〕、〔4、5、9〕、7について訂正することを認める。
特許第7333012号の請求項3~5、8、9に係る特許を取り消す。
特許第7333012号の請求項1、2、6、7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7333012号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和元年8月1日(優先権主張 平成30年10月19日)を出願日とするものであって、令和5年8月16日に特許権の設定登録(特許掲載公報 令和5年8月24日発行)がされ、その特許について、令和6年2月22日に特許異議申立人柏木香陽子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和6年5月31付けで取消理由が通知され、令和6年7月29日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたものである。なお、この本件訂正請求に対し、申立人から意見書は提出されなかった。
その後、令和6年12月12日付けで取消理由(決定の予告)が通知されたが、意見書の提出期間において、特許権者からの意見書の提出及び訂正の請求はなされなかった。
第2 本件訂正請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第7333012号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項を含むものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの少なくとも1つは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのその他の1つは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含む、」と記載されているのを、
「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、
前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記リサイクルPETにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのうち、前記第1層、前記第2層及び前記第3層を含むものではないものの1つは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含み、
前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、
前記短辺の長さは15mmであり、
前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、
前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、
前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%である、」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、6も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記シーラント層は、50μm以上の厚みを有する、請求項1又は2に記載の包装材料。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式の請求項の記載に改め、
「少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、第3延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える包装材料であって、
前記包装材料は、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムに設けられた金属蒸着層を更に備え、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの2つは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とする前記ポリエチレンテレフタレートにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのその他の1つは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含み、
前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、
前記短辺の長さは15mmであり、
前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、
前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、
前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%であり、
前記シーラント層は、50μm以上の厚みを有する、包装材料。」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は第3延伸プラスチックフィルムのうち前記金属蒸着層が設けられていない1つが、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、その他の1つが、前記剛性フィルムを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の包装材料。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式の請求項の記載に改め、
「少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、第3延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える包装材料であって、
前記包装材料は、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムに設けられた金属蒸着層を更に備え、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とする前記ポリエチレンテレフタレートにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのうち、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含むものではないものの1つは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含み、
前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、
前記短辺の長さは15mmであり、
前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、
前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、
前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%であり、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は第3延伸プラスチックフィルムのうち前記金属蒸着層が設けられていない1つが、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、その他の1つが、前記剛性フィルムを含む、包装材料。」に訂正する。(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5、9も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
ア 訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の包装材料。」とあるうち、請求項1又は2を引用するものについて、「請求項1又は2に記載の包装材料。」に訂正する。
イ 訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の包装材料。」とあるうち、請求項3を引用するものについて、「請求項3に記載の包装材料。」に訂正し、新たに請求項8とする。
ウ 訂正事項4-3
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の包装材料。」とあるうち、請求項4又は5を引用するものについて、「請求項4又は5に記載の包装材料。」に訂正し、新たに請求項9とする。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に、
「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの少なくとも1つは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのその他の1つは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含む、」と記載されているのを、
「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、
前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記リサイクルPETにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのうち、前記第1層、前記第2層及び前記第3層を含むものではないものの1つは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含み、
前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、
前記短辺の長さは15mmであり、
前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、
前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、
前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%である、」に訂正する。
(6)一群の請求項、別の訂正単位とする求め
本件訂正前の請求項2~6は、直接的又は間接的に請求項1を引用するものであるから、請求項1~6についての訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。一方、本件訂正前の請求項7は、当該請求項7を引用する請求項は存在しないから、一群の請求項を構成しない。
そして、訂正請求書において、特許権者は、上記訂正事項2及び訂正事項4-2が認められた場合は、本件訂正後の請求項〔3、8〕についての訂正を、また、上記訂正事項3及び訂正事項4-3が認められた場合は、本件訂正後の請求項〔4、5、9〕についての訂正を、それぞれ請求項〔1、2、6〕とは別の訂正単位として扱うよう求めている。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1のうち、「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、前記リサイクルPETにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのうち、前記第1層、前記第2層及び前記第3層を含むものではないものの1つは、剛性フィルムを含み、」とする訂正は、当該ポリエチレンテレフタレートを含む延伸プラスチックフィルムの指定を限定するとともに、その層構成及び材質を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、この訂正は、本件明細書の【0029】の「第1延伸プラスチックフィルム11、第2延伸プラスチックフィルム12又は第3延伸プラスチックフィルム13の少なくとも1つは、リサイクルPETを含むリサイクルフィルムであり、その他の少なくとも1つは、剛性を有する剛性フィルムである。」との記載、【0031】の「第1延伸プラスチックフィルム11、第2延伸プラスチックフィルム12及び第3延伸プラスチックフィルム13のうちの2つが、リサイクルフィルム又は剛性フィルムであってもよい。」との記載、【0036】の「リサイクルフィルムに含まれるPETのうち、イソフタル酸の含有量は、PETを構成する全ジカルボン酸単位に対して、0.5モル%以上5モル%以下であることが好ましく、」との記載、【0044】の「第2層32をリサイクルPETのみから構成される層またはリサイクルPETとヴァージンPETとの混合層とし、第1層31および第3層33を、ヴァージンPETのみから構成される層とすることが好ましい。」との記載に基づくものであり、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項1のうち、「前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、前記短辺の長さは15mmであり、前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%であり、」とする訂正は、ループスティフネスの測定方法ないし条件を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、この訂正は、本件明細書の【0067】~【0073】のループスティフネスの測定方法に係る記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2のうち、請求項1又は2を引用する請求項3について、請求項1を引用したものを独立請求項とした訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項2のうち、「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの2つは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とする前記ポリエチレンテレフタレートにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり」とする訂正は、ポリエチレンテレフタレートを含む延伸プラスチックが2つであること限定しつつ、その材質を限定するものであるから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、この訂正は、本件明細書の【0031】、【0036】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項2のうち、ループスティフネスの測定方法を加入する訂正は、ループスティフネスの測定方法ないし条件を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、この訂正は、本件明細書の【0067】~【0073】のループスティフネスの測定方法に係る記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3のうち、請求項1~3のいずれか一項を引用する請求項4について、請求項1を引用したものを独立請求項とした訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項3のうち、「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とする前記ポリエチレンテレフタレートにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのうち、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含むものではないものの1つは、剛性フィルムを含み、」とする訂正は、当該ポリエチレンテレフタレートを含む延伸プラスチックフィルムの指定を限定するとともに、その層構成及び材質を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、この訂正は、本件明細書の【0029】、【0031】、【0032】、【0036】、【表1】の記載に基づくもので、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項3のうち、ループスティフネスの測定方法を加入する訂正は、ループスティフネスの測定方法を明確にするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、この訂正は、本件明細書の【0067】~【0073】のループスティフネスの測定方法に係る記載に基づくもので、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正事項4-1は、請求項6の引用する請求項数を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項4-2、4-3は、いずれも請求項6が引用する請求項数を削減し、請求項3を引用する請求項6及び請求項4又は5を引用する請求項6を、それぞれ新たに請求項8及び9としたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正事項5のうち、「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、前記リサイクルPETにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのうち、前記第1層、前記第2層及び前記第3層を含むものではないものの1つは、剛性フィルムを含み、」とする訂正は、当該ポリエチレンテレフタレートを含む延伸プラスチックフィルムの指定を限定するとともに、その層構成及び材質を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、この訂正は、本件明細書の【0029】、【0031】、【0036】、【0044】の記載に基づくものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項5のうち、ループスティフネスの測定方法を加入する訂正は、ループスティフネスの測定方法を明確にするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、この訂正は、本件明細書の【0067】~【0073】のループスティフネスの測定方法に係る記載に基づくもので、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3.本件訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、訂正事項1~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1、2、6〕、〔3、8〕、〔4、5、9〕、7について訂正を認め、また、請求項〔3、8〕、〔4、5、9〕を別の訂正単位として扱うことを認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、請求項1~9に係る発明をまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、第3延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える包装材料であって、
前記包装材料は、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムに設けられた金属蒸着層を更に備え、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、
前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記リサイクルPETにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのうち、前記第1層、前記第2層及び前記第3層を含むものではないものの1つは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含み、
前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、
前記短辺の長さは15mmであり、
前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、
前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、
前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%である、包装材料。
【請求項2】
前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、第3延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える包装材料であって、
前記包装材料は、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムに設けられた金属蒸着層を更に備え、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの2つは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とする前記ポリエチレンテレフタレートにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのその他の1つは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含み、
前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、
前記短辺の長さは15mmであり、
前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、
前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、
前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%であり、
前記シーラント層は、50μm以上の厚みを有する、包装材料。
【請求項4】
少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、第3延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える包装材料であって、
前記包装材料は、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムに設けられた金属蒸着層を更に備え、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とする前記ポリエチレンテレフタレートにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのうち、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含むものではないものの1つは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含み、
前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、
前記短辺の長さは15mmであり、
前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、
前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、
前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%であり、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は第3延伸プラスチックフィルムのうち前記金属蒸着層が設けられていない1つが、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、その他の1つが、前記剛性フィルムを含む、包装材料。
【請求項5】
前記第1延伸プラスチックフィルムが、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの一方には、前記金属蒸着層が設けられており、他方は、前記剛性フィルムを含む、請求項4に記載の包装材料。
【請求項6】
前記ポリエチレンテレフタレートの極限粘度は、0.58dl/g以上0.80dl/g以下である、請求項1又は2に記載の包装材料。
【請求項7】
少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、第3延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える包装材料であって、
前記包装材料は、前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムに設けられた透明蒸着層を更に備え、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、
前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記リサイクルPETにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムのうち、前記第1層、前記第2層及び前記第3層を含むものではないものの1つは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含み、
前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、
前記短辺の長さは15mmであり、
前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、
前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、
前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%である、包装材料。
【請求項8】
前記ポリエチレンテレフタレートの極限粘度は、0.58dl/g以上0.80dl/g以下である、請求項3に記載の包装材料。
【請求項9】
前記ポリエチレンテレフタレートの極限粘度は、0.58dl/g以上0.80dl/g以下である、請求項4又は5に記載の包装材料。」
第4 当審の判断
1.令和6年12月12日付け取消理由通知(決定の予告)の取消理由について
(1)取消理由の要旨
令和6年12月12日付けで通知した取消理由書(決定の予告)に係る取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件明細書には、本件発明の解決しようとする課題を「環境に配慮して様々な用途で化石燃料の使用を削減し、CO2排出削減を図る」(【0005】)こととし、リサイクルPETを使うこと(【0029】)、バイオマスPETを使うこと(【0030】)が記載されているが、本件発明3~5、8、9において、「環境に配慮して様々な用途で化石燃料の使用を削減し、CO2排出削減を図る」ための手段が特定されていない。
よって、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、その特許は、特許法第113条第1項第4号に該当し、取り消すべきものである。
(2)判断
本件発明3及び4は、「エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とする前記ポリエチレンテレフタレートにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であ」るものと訂正された。しかし依然として、リサイクルPETを使うこと、またはバイオマスPETを使うことを特定しておらず、上記課題を解決できると認識できないものも含むことは明らかである。また、本件発明3、4のいずれかを引用する本件発明5、8、9も同様である。
これに対し、特許権者は、令和6年7月29日に提出した意見書にて、「本件訂正発明においては、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とする前記ポリエチレンテレフタレートにおいて、イソフタル酸の含有量が、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であることが規定されている。すなわち、本件訂正発明においては、リサイクルPETを使うことが規定されており、従って、本件訂正発明においては、「環境に配慮して様々な用途で化石燃料の使用を削減し、CO2排出削減を図る」ための手段が特定されていると考える。」(第16頁第26行~第17行第6行)と主張する。しかしながら、そもそもPETを製造する際、ポリマーの結晶性を調整するためにイソフタル酸を所定量添加することは技術常識であり、リサイクルPETであろうとヴァージンPETであろうと所定量のイソフタル酸が含まれていることには変わらない。してみれば、当該特定では、リサイクルPETを使わず、ヴァージンPETのみが用いられ、上記課題を解決できると認識できないものも含むことは明らかである。
また、この点に関し、本件明細書の【0042】には、「・・・ヴァージンPETとしては、上記したようなジオール単位がエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位がテレフタル酸およびイソフタル酸を含むPETであってもよく」と記載されており、この記載とも整合的である。
よって、上記特許権者の主張を採用することはできない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明3、本件発明4、及びこれらのいずれかを引用する本件発明5、8、9は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、その特許は、同法第113条第4号に該当し、いずれも取り消されるべきものである。
第5 取消理由において採用しなかった異議申立理由について
1 異議申立理由
申立人が申し立てた異議理由の概要はおおむね次のとおりである。
(1)理由1(新規性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)証拠方法
甲第1号証:特開2017-56691号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2012-214248号公報(同「甲2」という。)
2 甲1について
(1)甲1の記載事項について
甲1には、以下の事項が記載されているものと認める。
ア 積層体の全体構成について
・ポリエステル樹脂層1、バリア層4、支持体層3、シーラント層2をこの順に積層し積層体を得ること(【0050】、【図4】)
・積層体を包装材用フィルムに用いること(【0006】)
イ ポリエステル樹脂層1について
・ポリエステル樹脂層1は、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸とイソフタル酸を含み、イソフタル酸の含有量が全ジカルボン酸の0.5~2.5モル%であることが好ましいこと(【0018】、【0020】)
・また、2軸延伸されることが好ましいこと(【0029】)
・ポリエステル樹脂層のループスティフネスは、幅15mm、長さ165mmの試験片をループ長60mmでループスティフネステスターを用いて計測した結果、MD方向が6.09mN/15mm)、TD方向が8.13(mN/15mm)であったこと(【0077】~【0081】、【表1】の「積層体5」)
ウ 支持体層3について
・支持体層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドなどから形成され、延伸されていることが好ましいこと(【0041】)
・また、支持体層3は、単独または二層以上で使用することができること(【0041】)
エ バリア層4について
・バリア層4は、酸化アルミニウムなどの無機酸化物で真空製膜されることにより得られること(【0049】)
(2)甲1に記載の発明について
上記(1)ア~エに鑑みれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「ポリエステル樹脂層1、バリア層4、支持体層3、シーラント層2をこの順に積層した包装用フィルムに用いる積層体であって、
ポリエステル樹脂層1は2軸延伸されており、
支持体層3は二層以上とされ、延伸されており、
バリア層4は酸化アルミニウムなどの無機物で真空製膜されており、
ポリエステル樹脂層1はジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸とイソフタル酸を含み、イソフタル酸の含有量が全ジカルボン酸の0.5~2.5モル%とされており、
ポリエステル樹脂層1のループステフィネスは、幅15mm、長さ165mmの試験片をループ長60mmでループスティフネステスターを用いて計測した結果、MD方向が6.09(mN/15mm)、TD方向が8.13(mN/15mm)である包装用フィルムに用いる積層体。」
3 甲2について
(1)甲2の記載事項について
甲2には、以下の事項が記載されているものと認める。
・レトルト用包材として、基材層-バリア層-バリア材補強層-シーラント層の4層構成とすること(【0020】)
・基材層及びバリア材補強層は、OPBT(二軸延伸ポリブチレンテレフタレート)系フィルムであり、また、これらの層の一方又は両方にOPET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)系フィルムを併用して構成することができること(【0001】、【0003】と共に【0020】)
・バリア層は、無機酸化物からなる蒸着膜とすることができること(【0020】)
(2)甲2に記載の発明について
上記(1)に鑑みれば、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているものと認める。
「基材層-バリア層-バリア材補強層-シーラント層の4層構成とされたレトルト用包材であって、基材層及びバリア材補強層は、OPBT(二軸延伸ポリブチレンテレフタレート)系フィルムであり、また、これらの層の一方又は両方にOPET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)系フィルムを併用して構成され、バリア層は、無機酸化物からなる蒸着膜とされたレトルト用包材」
4 本件発明と甲1発明との対比・判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1は、上記第3に記載したとおりのものであるところ、本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)甲1発明の「ポリエステル樹脂層1」は、「2軸延伸されて」いるところ、甲1発明の積層体の層構造からみて、本件発明1の「第1延伸プラスチックフィルム」に相当する。また、甲1発明の「支持体層3」は、「二層以上とされ延伸されて」いるところ、同様に甲1発明の積層体の層構造からみて、それらの層のうち「バリア層4」側が本件発明1の「第2延伸プラスチックフィルム」に、「シーラント層2」側が同「第3延伸プラスチックフィルム」に、それぞれ相当する。
(イ)上記(ア)に鑑みれば、甲1発明の「ポリエステル樹脂層1、バリア層4、支持体層3、シーラント層2をこの順に積層」するという事項は、本件発明1の「少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、第3延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える」という事項に相当する。また、甲1発明の「包装用フィルムに用いる積層体」は、本件発明1の「包装材料」に相違ない。
(ウ)甲1発明の「バリア層4」は、「ポリエステル樹脂層1」と「支持体層3」との間に設けられ、「酸化アルミニウムなどの無機物で真空製膜され」たものであるから、本件発明1の「前記包装材料は、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムに設けられた金属蒸着層を更に備え」との関係において、その択一的な記載も考慮すれば、「前記包装材料は、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムに設けられた金属層を更に備え」という限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、第3延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える包装材料であって、
前記包装材料は、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムに設けられた金属層を更に備えた、
包装材料。」
一方、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点>
本件発明1では、「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、前記リサイクルPETにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下」としたものであるのに対して、甲1発明の「ポリエステル樹脂層1」は、本件発明1で規定するようなヴァージンPET、リサイクルPETを用いた層により構成されていない点。
イ 相違点に対する判断
当該相違点は、実質的なものであるから、本件発明1は、甲1発明ではない。
また、当該相違点に係る本件発明1の発明特定事項について、甲1には記載も示唆もなく、他の証拠によっても同様である。また、当該相違点が設計的事項の範疇ということもできない。
してみれば、他の相違点についての検討を行うまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2、6について
本件発明2、6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるところ、上記(1)で述べた相違点を少なくとも有している。そして、本件発明1は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2、6も同様である。
(3)本件発明7について
本件発明7についても、上記(1)で述べた相違点を有している。してみれば、本件発明7は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1、2、6、7は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
5 本件発明と甲2発明との対比・判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲2発明との対比
本件発明1は、上記第3に記載したとおりのものであるところ、本件発明1と甲2発明とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)甲2発明の「OPBT(二軸延伸ポリブチレンテレフタレート)系フィルム」からなる「基材層」及び「バリア材補強層」は、ひとまず本件発明1の「第1延伸プラスチックフィルム」、「第3延伸プラスチックフィルム」に相当する。また、甲2発明の「基材層」及び「バリア材補強層」の一方又は両方に設けられた「OPET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)系フィルム」は、ひとまず本件発明1「第2延伸プラスチックフィルム」に相当する。
(イ)甲2発明は、「基材層-バリア層-バリア材補強層-シーラント層の4層構成とされたレトルト用包材」であるところ、「基材層」及び「バリア材補強層」の一方又は両方に設けられた「OPET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)系フィルム」がそれぞれの層における「OPBT(二軸延伸ポリブチレンテレフタレート)系フィルム」のいずれの面に配置されているか、すなわち、その積層順序が不明であるが、本件発明1の「少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、第3延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える包装材料」との関係において、「少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、第3延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とを備える包装材料」に限り一致する。
(ウ)甲2発明の「バリア層」について、上記(イ)に照らすと甲2発明の各層のいずれに設けられているか不明であり、また、金属の蒸着層とは必ずしも言えないことに鑑みれば、本件発明1の「前記包装材料は、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムに設けられた金属蒸着層を更に備え」との関連において、「前記包装材料は、蒸着層を更に備え」る点に限り一致する。
(エ)甲2発明の「OPET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)系フィルム」は、層構成や成分はともかく、本件発明1の「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み」との関係において、「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、ポリエチレンテレフタレートを含」むという点に限り一致する。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、第3延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とを備える包装材料であって、
前記包装材料は、蒸着層を更に備え、
前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、
ポリエチレンテレフタレートを含む、包装材料。」
一方、本件発明1と甲2発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点>
本件発明1では、「前記第1延伸プラスチックフィルム、前記第2延伸プラスチックフィルム又は前記第3延伸プラスチックフィルムの1つ又は2つは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、前記リサイクルPETにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下」としたものであるのに対して、甲2発明の「OPET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)系フィルム」は、本件発明1で規定するようなヴァージンPET、リサイクルPETを用いた層により構成されていない点。
イ 相違点に対する判断
当該相違点は、上記4(1)アで指摘したものと同じであり、その判断は、同イのとおりである。
してみれば、他の相違点についての検討を行うまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2、6について
本件発明2、6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるところ、上記(1)で述べた相違点を少なくとも有している。そして、本件発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2、6も同様である。
(3)本件発明7について
本件発明7についても、上記(1)で述べた相違点を有している。してみれば、本件発明7は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1、2、6、7は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 結び
本件発明3、本件発明4、及びこれらのいずれかを引用する本件発明5、8、9は、依然として特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、その特許は、同法第113条第4号に該当し、いずれも取り消されるべきものである。
また、本件発明1、2、6、7についての特許は、取消理由及び特許異議申立理由によって取り消すことはできず、さらに、他にこれらの特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700162