特許異議申立
2024-700161
包装材料
- 審判番号
- 2024-700161
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-142513
- 登録番号
- 7333011
- 請求日
- 2024年02月22日
- 審決日
- 2025年10月16日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】堀田 幸裕
- 【権利者代理人】岡村 和郎
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】永井 浩之
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【権利者代理人】朝倉 悟
- 【異議申立人】柏木 香陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 木原 裕二
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7333011号発明「包装材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7333011号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7333011号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7333011号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和元年8月1日(優先権主張 平成30年10月19日)を出願日とするものであって、令和5年8月16日に特許権の設定登録(特許掲載公報 令和5年8月24日発行)がされ、その特許について、令和6年2月22日に特許異議申立人柏木香陽子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和6年6月28付けで取消理由が通知され、令和6年8月9日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求がなされ、令和7年1月31付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和7年4月2日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がなされたものである。
なお、令和6年8月20日付け及び令和7年5月8日付けで当審から申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行い、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、いずれについても当該期間内に申立人から応答はなかった。
また、令和6年8月9日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第7333011号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項を含むものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記第1延伸プラスチックフィルム又は前記第2延伸プラスチックフィルムの一方は、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第1延伸プラスチックフィルム又は前記第2延伸プラスチックフィルムの他方は、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含む、」と記載されているのを、
「前記第1延伸プラスチックフィルムは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、
前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記リサイクルPETにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、
前記第1延伸プラスチックフィルムには、印刷層が設けられており、
前記第2延伸プラスチックフィルムは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、20μm以下の厚みを有し、且つ、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含み、
前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、
前記短辺の長さは15mmであり、
前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、
前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、
前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%である、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。)
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~7〕について請求されたものである。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1のうち、「前記第1延伸プラスチックフィルムは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、前記リサイクルPETにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、前記第1延伸プラスチックフィルムには、印刷層が設けられており、」とする訂正は、第1延伸プラスチックフィルムがヴァージンPETからなる第1層と第2層及びその間に位置するリサイクルPETを含む第2層とを含むこと、第1延伸プラスチックフィルムが印刷層を備えていること、及び、リサイクルPETのイソフタル酸の含有量を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項1のうち、「前記第2延伸プラスチックフィルムは、剛性フィルムを含み、前記剛性フィルムは、20μm以下の厚みを有し、且つ、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含み、」とする訂正は、第1延伸プラスチックフィルムと第2延伸プラスチックフィルムのうち第2延伸プラスチックフィルムが剛性フィルムを含むこと、及び、当該剛性フィルムの厚みを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、これらの訂正は、本件明細書の【0027】~【0029】、【0037】、【0068】、【0108】、【0150】~【0156】に基づくものであり、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項1のうち、「前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、前記短辺の長さは15mmであり、前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%である、」とする訂正は、ループスティフネスをどのように測定するのかを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、この訂正は、本件明細書の【0060】~【0066】のループスティフネスの測定方法に係る記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 本件訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項1~7について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項〔1~7〕に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える包装材料であって、
前記第1延伸プラスチックフィルムは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、
前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記リサイクルPETにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であり、
前記第1延伸プラスチックフィルムには、印刷層が設けられており、
前記第2延伸プラスチックフィルムは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、20μm以下の厚みを有し、且つ、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含み、
前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、
前記短辺の長さは15mmであり、
前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、
前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、
前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%である、包装材料。
【請求項2】
前記第2延伸プラスチックフィルムに設けられた金属蒸着層を更に備える、請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
前記第1延伸プラスチックフィルム又は前記第2延伸プラスチックフィルムに設けられた透明蒸着層を更に備える、請求項1に記載の包装材料。
【請求項4】
前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項5】
前記シーラント層は、50μm以上の厚みを有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項6】
前記ポリエチレンテレフタレートの極限粘度は、0.58dl/g以上0.80dl/g以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項7】
一方向における前記包装材料のヤング率が3200MPa以上である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の包装材料。」
第4 当審における判断
1 令和7年1月31付け取消理由通知(決定の予告)について
(1)取消理由の要旨
上記取消理由通知(決定の予告)における、特許法第36条第6項第1号(サポート要件)及び同法第29条第2項(進歩性)に係る取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(サポ-ト要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件明細書には、本件発明の解決しようとする課題を「環境に配慮して様々な用途で化石燃料の使用を削減し、CO2排出削減を図る」(【0005】)こととし、リサイクルPETを使うこと(【0028】)、バイオマスPETを使うこと(【0029】)が記載されているが、本件特許の請求項8、9において、「環境に配慮して様々な用途で化石燃料の使用を削減し、CO2排出削減を図る」ための手段が特定されていない。
理由2(進歩性)
本件特許の請求項8、9に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
理由3(進歩性)
本件特許の請求項1~9に係る発明は、引用文献Aに記載された発明、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献一覧>
引用文献1:特開2017-222180号公報(当審において職権で提示した文献)
引用文献2:特開2000-108254号公報(当審において職権で提示した文献、周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2017-149442号公報(当審において職権で提示した文献、周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2017-56691号公報(甲第1号証)
引用文献5:特開2002-72417号公報(当審において職権で提示した文献、技術常識を示す文献)
引用文献A:特開2018-144893号公報(当審において職権で提示した文献)
(2)理由1(サポート要件)及び理由2(進歩性)についての当審における判断
本件訂正により、請求項8、9に対応する請求項がなくなったため、上記理由1、2は解消した。
(3)理由3(進歩性)についての当審における判断
ア 引用文献Aの記載(以下において下線は当審において付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。)
・「【請求項2】
包装袋、蓋材、ラミネートチューブ、液体紙容器、および紙カップからなる群より選択される包装体用の積層フィルムであって、
前記積層フィルムは、ポリエステルフィルムと、接着層または接着樹脂層と、シーラント層とをこの順で有し、
前記ポリエステルフィルムは、
ジオール単位としてエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むヴァージンポリエステルであって、前記ヴァージンポリエステルは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールと、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含む第1の層と、
ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むポリエステルを含むポリエステル樹脂製品をリサイクルして得られるリサイクルポリエステルを含む第2の層と、
ジオール単位としてエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むヴァージンポリエステルであって、前記ヴァージンポリエステルは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールと、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含む第3の層との3層で構成される共押しフィルムであり、
前記ポリエステルフィルムの総厚が、5μm以上、100μm未満であり、
前記ポリエステルフィルムは、前記第1の層、前記第2の層、および前記第3の層を、この順に有することを特徴とする、積層フィルム。
【請求項3】
前記ジカルボン酸がテレフタル酸である、請求項1または2に記載の積層フィルム。」
・「【0009】
したがって、本発明の目的は、リサイクルされていないポリエステルよりもCO2削減効果に優れると共に、リサイクルポリエステルよりも衛生性に優れたポリエステルフィルム、及び当該ポリエステルフィルムを適用した積層フィルムを提供することである。」
・「【0018】
<ポリエステルフィルム>
本発明によるポリエステルフィルムについて説明する。本発明によるポリエステルフィルムは、少なくとも、第1の層と第2の層を備えるポリエステルフィルムである。図1は、本発明によるポリエステルフィルムの構成の実施形態を簡略に示す部分断面図である。図1に示すように、ポリエステルフィルム10は、第1の層11と、第2の層12とを備えている。ポリエステルフィルム10は、第1の層11と第2の層12とが、この順に積層して構成されている。なお、本発明の他の実施形態として、図2に示すように、ポリエステルフィルム10が、3層以上の層(図2では、3層)からなるものであってもよい。また、ポリエステルフィルム10は、第1の層11および第2の層12の他に、例えば、化石燃料ポリエステルなどポリエステルを含む層をさらに含んでもよい。以下の段落では、ポリエステルフィルム10の第1の層11と第2の層12とが、この順に積層されている実施形態について説明する。」
・「【0024】
ジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を使用する。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体を制限なく使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、およびフタル酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびブチルエステルなどが挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。」
・「【0048】
[第2の層]
第2の層12は、リサイクルポリエステルを含む層である。第2の層12は、リサイクルされるポリエステルのジオール単位が、化石燃料由来のジオールでもよいし、バイオマス由来のエチレングリコールでもよいし、化石燃料由来のジオールおよびバイオマス由来のエチレングリコールの両方が含まれたものでもよい。
・・・
【0050】
リサイクルポリエステルのもとになる樹脂に使用されるジカルボン酸単位についても、上記のものを使用することができる。
・・・
【0052】
本実施形態においては、樹脂製品のリサイクル方法としては、メカニカルリサイクルが用いられる。メカニカルリサイクルは、一般に、回収されたPETボトル等のポリエステル樹脂製品を粉砕、アルカリ洗浄してポリエステル樹脂製品の表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してポリエステル樹脂の内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、ポリエステル樹脂からなる樹脂製品の汚れを取り除き、再びポリエステル樹脂に戻す方法である。
【0053】
バイオマスポリエステルおよびリサイクルポリエステルは、化石燃料ポリエステルよりもCO2排出削減効果が高く、リサイクルポリエステルは、バイオマスポリエステルよりもCO2排出削減効果が高い。そのため、第2の層12を使用することにより、ポリエステルフィルムをバイオマスポリエステルのようにリサイクルされていないポリエステルのみで形成する場合に比べて、ポリエステルフ ィルムを製造する際のCO2排出量の削減効果をより大きくすることができ、環境負荷をより一層低減することができる。また、第2の層12は、その一方の面に第1の層11が設けられ、ポリエステルフィルム10の外側の面にリサイクルポリエステルが表出しないようにすることができるため、ポリエステルフィルムがリサイクルポリエステルのみで形成する場合に比べて、衛生性に優れる。
・・・
【0057】
本発明によるポリエステルフィルムは、少なくとも、リサイクルされていないバイオマスポリエステル(以下、ヴァージンバイオマスポリエステルともいう。)を含む第1の層と、リサイクルポリエステルを含む第2の層とを2層以上(例えば、図2では、第1の層11と第2の層12との2層、図3では、3層)備えてなるものであり、ポリエステルフィルムの全質量に対して、リサイクルポリエステルの質量は、1~85質量部であることが好ましく、30~50質量部であ
ることがより好ましい。リサイクルポリエステルの質量が上記範囲内であれば、フィルム全体としての化石燃料の使用量の軽減を図りつつ、フィルムを安定して生産することができる。」
・「【0060】
ここで、ポリエステルフィルムの総厚が同じ場合に、本実施形態のポリエステルフィルムと、比較形態のポリエステルフィルムとについて、CO2排出量の削減率の比較を行った。表1に、本実施形態のポリエステルフィルムと、比較形態のポリエステルフィルムとの層構成および各層の組成を示す。表1に示す、組成1~3の各組成のPET樹脂の構成と、本実施形態のポリエステルフィルムおよび比較形態のポリエステルフィルムの層構成とは、以下の通りである。なお、以下で用いる、「PET樹脂」とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる樹脂であり、「化石燃料PET樹脂」とは、化石燃料PETからなる樹脂であり、バイオマスPET樹脂とは、バイオマスPETからなる樹脂であり、「メカニカルリサイクルPET樹脂」とは、メカニカルリサイクルPETからなる樹脂である。
<組成1>
バイオマス由来のエチレングリコールと化石燃料由来のテレフタル酸とを用いて得られたリサイクルされていないバイオマスPET樹脂(以下、ヴァージンバイオマスPET樹脂ともいう。)である。
<組成2>
化石燃料由来のエチレングリコールと化石燃料由来のテレフタル酸とを用いて得られたPETをメカニカルリサイクルして得られたメカニカルリサイクルPET樹脂である。
<組成3>
化石燃料由来のエチレングリコールと化石燃料由来のテレフタル酸とを用いて得られたリサイクルされていない化石燃料PET樹脂(以下、ヴァージン化石燃料PET樹脂ともいう。)である。
<本実施形態>
本実施形態のポリエステルフィルムは、1層目として第1の層と、2層目として第2の層とを有し、1層目は67質量部、2層目は33質量部である。また、1層目は組成1のヴァージンバイオマスPET樹脂100%で構成され、2層目は組成2のメカニカルリサイクルPET樹脂100%で構成される。・・・」
・「【0064】
<積層フィルム>
次に、本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムについて説明する。
本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムは、本発明によるポリエステルフィルムと、本発明によるポリエステルフィルムの何れか一方または両方の面側に設けられるシーラント層とを有するものである。本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムの構成の一例を簡略に示す断面図を図3に示す。図3に示すように、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10およびシーラント層21を備え、ポリエステルフィルム10の上にシーラント層21を積層して構成されている。なお、図3に示す実施形態においては、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10の面の上方にシーラント層21を積層した構成としているが、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10の面の下方にシーラント層21が積層するように構成してもよく、また、ポリエステルフィルム10の面の上方および下方の両面にシーラント層が設けられていてもよい。
【0065】
また、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10を構成する第1の層11および第2の層12の間に、例えば、シーラント層21、バリア層、支持体、樹脂層、印刷層などその他の層を少なくとも一層有してもよい。これらその他の層の説明については、後述する。
【0066】
積層フィルム20を構成するポリエステルフィルム10は、シーラント層21と接する面側である、一方の最外層に第2の層12を設け、他方の最外層に第1の層11が設けられるように構成されてもよい。例えば、ポリエステルフィルム10が、図1に示すように、第1の層11および第2の層12の2層で構成されている場合には、ポリエステルフィルム10は、シーラント層21と接する面側に第2の層12を設け、他方に第1の層11が設けられる。これにより、第2の層12が表出しないため、更に衛生性に優れた積層フィルムとすることができる。また、ポリエステルフィルム10は、一方の最外層に第1の層11を設け、他方の最外層に第1の層11を設け、一方の最外層と他方の最外層の間に第2の層12を設けるように構成されていてもよい。例えば、ポリエステルフィルム10が、3層で構成されている場合には、ポリエステルフィルム10は、図2に示すように、シーラント層21と接する面側から順に、第1の層11、第2の層12、および第1の層11が、この順に積層して設けられる。この場合も第2の層12が表出しないため、更に衛生性に優れた積層フィルムとすることができる。
【0067】
シーラント層21は、図3に示すように、積層フィルム20のポリエステルフィルム10の面上に設けられている。シーラント層21は、熱によって相互に融着し得るヒートシール性樹脂のフィルムにより形成される層である。
【0068】
シーラント層21を形成する材料としては、熱によって相互に融着し得る樹脂であれば、特に限定されず、具体的には、・・・直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)・・・などの樹脂などが挙げられる。これらは、単独でも二種以上の混合物として使用してもよい。シーラント層21は、上記のような樹脂のフィルムないしシート、あるいはそのコーティング膜などとして使用することができる。
・・・
【0072】
シーラント層21の厚さとしては、20~200μmが好ましく、30~130μmがより好ましい。」
・「【0076】
バリア層は、酸素ガスなどガスの透過を阻止するガスバリア性、あるいは水蒸気などの透過を阻止する水蒸気バリア性を有する層として機能する。バリア層としては、例えば、アルミニウム箔など金属を圧延して得られた金属箔からなる層、アルミニウムなどの金属の蒸着膜からなる層、アルミナなどの無機酸化物の蒸着膜からなる層、ガスバリア性塗布膜からなる層、エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物(EVOH)などを使用することもできる。また、バリア層が、アルミナなどの無機酸化物の蒸着膜からなる層で形成される場合、ガスバリア性を付与ないし向上させるため、前記ガスバリア性塗布膜からなる層を前記無機酸化物の蒸着膜からなる層の少なくとも何れか一方の面に設けてもよい。バリア層は、従来公知の方法により形成することができ、その組成および形成方法は、特に限定されない。バリア層を構成する金属箔、蒸着膜としては、具体的には、例えば、特開2012―96469号公報に記載のものを使用することができる。ガスバリア性塗布膜は、1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、ゾルゲル法によって重縮合して得られる膜であり、具体的には、例えば、特開2012―96469号公報に記載のものを使用することができる。バリア層を構成するEVOHとしては、具体的には、例えば、特開2008―307847号公報に記載のものを使用することができる。なお、バリア層は二層以上設けられてもよい。バリア層を二層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。また、バリア層は、ポリエステルフィルム10の両面にそれぞれ一層以上設けられてもよい。
【0077】
支持体は、延伸ポリエステル系樹脂層、延伸ポリアミド系樹脂層、延伸ポリオレフィン系樹脂層、紙基材(紙層)など、積層フィルム20を支持し、積層フィルム20の強度特性や耐衝撃性などを向上させることができるものであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いて形成することができる。また、支持体として、バイオマス由来の材料を用いてもよい。また、支持体は、これらの層を一層単独または二層以上を組み合わせて使用することができる。」
・「【0088】
支持体としての上記したポリエステル系樹脂層等の厚みは、積層フィルムの使用用途によって適宜調整してよく、例えば、剛性が要求される用途の包装材として積層フィルムを使用する場合には、厚手の支持体とすることができる。」
・「【0091】
印刷層は、必要に応じて設けることができ、例えば、ポリエステルフィルム10と支持体との間に設けることができる。印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示のために、文字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層である。印刷層は、全面に設けてもよく、あるいは一部に設けてもよい。」
「【0104】
<包装体>
本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムは、上記のように、化石燃料の使用量の軽減を図り、CO2排出削減効果が高く、かつ衛生性に優れるため、食品などの包装材料として有用であり、例えば、包装体の包装用フィルムとして好適に用いることができる。包装体としては、例えば、包装製品(包装袋)、蓋材、ラミネートチューブ、液体用容器、紙カップ、および各種ラベル材料などを挙げることができる。包装袋として、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。積層フィルムの厚さは、その用途に応じて、適宜決定することができる。例えば、30~300μm、好ましくは35~180μmの厚みのフィルムの形態で用いられる。積層フィルム20を適用した包装体の一例について、以下説明する。なお、本実施形態においては、以下に例示する包装体のシーラント層21以外の各層は、一層としているが、これに限定されるものではなく、二層以上有していてもよい。また、以下に例示する包装体は印刷層を備えているが、これに限定されるものではなく、印刷層を備えていなくてもよい。
【0105】
[スタンディングパウチ]
本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムをスタンディングパウチに適用した場合について説明する。図4は、スタンディングパウチの構成の一例を簡略に示す図である。図4に示すように、スタンディングパウチ30は、2枚の胴部(側面シート)31と、底部(底面シート)32とで構成されている。スタンディングパウチ30は、側面シート31と底面シート32とが別部材で構成されている。スタンディングパウチ30は、側面シート31を構成する積 層フィルムのシーラント層が最内層となるように製袋して形成された包装体である。なお、本実施形態においては、スタンディングパウチ30は、側面シート31と底面シート32とが別部材で構成されているが、これに限定されるものではなく、側面シート31および底面シート32が同一部材で構成されていてもよい。
【0106】
側面シート31は、本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムを用いて形成することができる。図5は、胴部を形成する積層フィルムの部分断面図である。図5に示すように、側面シート31を形成する積層フィルム20Bは、例えば、シーラント層21、支持体33、印刷層34、およびポリエステルフィルム10を備え、シーラント層21、支持体33、印刷層34、およびポリエステルフィルム10を、内面側から外面側に向かってこの順に積層して構成することができる。スタンディングパウチ30は、側面シート31のシーラント層21同士をヒートシールして接着させることにより製袋される。また、積層フィルム20Bは、上記バリア層を、例えばポリエステルフィルム10と印刷層34との間など積層フィルム20Bを構成する層の何れかの間に設けてもよい。」
・「
[図:0001431098000001.jpg]
」
・「
[図:0001431098000002.jpg]
」
イ 引用文献Aに記載された発明
上記アの記載を踏まえると、引用文献Aには、以下の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。なお、括弧内は主な参照箇所である。
「ポリエステルフィルム10と、支持体33と、シーラント層21とをこの順に備える包装体用の積層フィルム20Bであって(【0104】~【0106】、図5)、
前記ポリエステルフィルム10は、ヴァージンバイオマスPET樹脂からなる第1の層11、11と、前記第1の層11、11との間に位置し、メカニカルリサイクルPET樹脂を含む第2層12と、を含み(【請求項2】、【0066】、図2)、
前記メカニカルリサイクルPET樹脂は、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み(【0060】)、
前記支持体33は、積層フィルム20Bの強度特性や耐衝撃性を向上させるものであり(【0077】)、
前記支持体33はポリエステルを含み(【0077】)、
ポリエステルフィルム10と支持体33との間に印刷層が設けられた(【0091】)、包装材料。」
ウ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明Aとを対比する。
引用発明Aの「包装体用の積層フィルム20B」は、本件発明1の「包装材料」に相当する。
引用発明Aの「ポリエステルフィルム10」は、本件発明1の「第1延伸プラスチックフィルム」と、「プラスチックフィルム」という限りにおいて一致する。
引用文献Aには、「支持体は、延伸ポリエステル系樹脂層、延伸ポリアミド系樹脂層・・・など公知のものを用いて形成することができる。」と記載されており(【0077】)、引用発明Aの「延伸されたポリエステルを含む」「支持体33」は、本件発明1の「第2延伸プラスチックフィルム」に相当する。
引用発明Aの「シーラント層21」は、本件発明1の「シーラント層」に相当する。
引用発明Aの「前記ポリエステルフィルム10は、ヴァージンバイオマスPET樹脂からなる第1の層11、11と、前記第1の層11、11との間に位置し、メカニカルリサイクルPET樹脂を含む第2層12と、を含」むことは、本件発明1の「前記第1延伸プラスチックフィルムは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含」むことに相当する。
引用発明Aの「前記メカニカルリサイクルPET樹脂は、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含」むことは、本件発明1の「前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、前記リサイクルPETにおいて、イソフタル酸の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下であ」ることと、「前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含」む限りで一致する。
引用発明Aの支持体33は、「積層フィルム20Bの強度特性や耐衝撃性を向上させるものであ」ることに照らせば、本件発明1の「剛性フィルム」に相当する。
引用発明Aの「印刷層」は、本件発明1の「印刷層」に相当する。
以上を踏まえると、本件発明1と引用発明Aとは以下の点で一致し、相違する。
<一致点A>
「少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える包装材料であって、
前記第1延伸プラスチックフィルムは、ヴァージンPETからなる第1層及び第3層と、前記第1層と前記第3層との間に位置し、リサイクルPETを含む第2層と、を含み、
前記リサイクルPETは、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
印刷層が設けられており、
前記第2延伸プラスチックフィルムは、剛性フィルムを含み、
前記剛性フィルムは、ポリエステルを含む、包装材料。」
<相違点A>
プラスチックフィルムに関し、本件発明1の第1延伸プラスチックフィルムは「延伸」しているのに対し、引用発明Aのポリエステルフィルム10はそのような特定がない点。
<相違点B>
エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含むリサイクルPETの組成に関し、本件発明1では、「イソフタル酸」を「全ジカルボン酸単位に対して0.5モル%以上5モル%以下」含有するのに対し、引用発明Aでは、イソフタル酸を含むか否か不明である点。
<相違点C>
剛性フィルムに関して、本件発明1は、「前記剛性フィルムは、20μm以下の厚みを有し、且つ、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有する」ものであり、「前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、前記短辺の長さは15mmであり、前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%である」のに対し、引用発明Aは、支持体33の厚み及びルーフスティフネスについての特定がない点。
<相違点D>
印刷層に関して、本件発明1の「前記第1延伸プラスチックフィルムには、印刷層が設けられて」いるのに対し、引用発明Aの「ポリエステルフィルム10と支持体33との間に印刷層が設けられ」ている点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点Cから検討する。
引用文献Aには、「支持体33は・・・積層フィルム20の強度特性や耐衝撃性などを向上させることができるもの」(【0077】)と記載されているように、引用発明Aの「支持体33」は、積層フィルム20Bの強度特性や耐衝撃性などを向上させる層であるといえ、さらに、「剛性が要求される用途の包装材として積層フィルムを使用する場合には、厚手の支持体とすることができる。」(【0088】)と記載されているように、支持体33の剛性を高めるために厚さを大きくすることが示唆されているといえる。
そうすると、支持体33の厚さを大きくすることで剛性を高める引用発明Aにおいて、支持体33の厚さを「20μm以下」に抑える動機付けはない。
仮に「支持体としての上記したポリエステル系樹脂層等の厚みは、積層フィルムの使用用途によって適宜調整してよく」(【0088】)との記載に基づいて支持体33の厚みを「20μm以下」に抑えることを当業者が想到できたとしても、その厚みにおいて、相違点Cに係る測定条件下での支持体33のループスティフネスが「0.0017N以上」であるかは不明であるし、他の証拠を参照しても、そのようなループスティフネスを有することを示す記載も示唆もなく、その蓋然性が高いともいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が引用発明Aに基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記ウで判断したように、本件発明2~7は、当業者が引用発明Aに基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)小括
以上のとおり、請求項1~7に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。
2 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった異議申立理由について
(1)異議申立理由
申立人が申し立てた異議理由の概要は次のとおりである。
理由1(新規性)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載の発明、及び甲第2号証~甲第4号証に記載の事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
<証拠方法>
甲第1号証:特開2017-56691号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2012-214248号公報(同「甲2」という。)
甲第3号証:国際公開第2018/062331号(同「甲3」という。)
甲第4号証:特開2010-174098号公報(同「甲4」という。)
(2)甲1について
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されているものと認められる。
(ア)積層体の全体構成について
・ポリエステル樹脂層1、支持体層3、シーラント層2をこの順に積層し積層体を得ること(【0017】、【図2】)
・積層体を包装用フィルムに用いること(【0006】)
(イ)ポリエステル樹脂層1について
・ポリエステル樹脂層1は、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸とイソフタル酸を含み、イソフタル酸の含有量が全ジカルボン酸の0.5~2.5モル%であることが好ましいこと(【0018】、【0020】)
・また、2軸延伸されることが好ましいこと(【0029】)
(ウ)支持体層3について
・支持体層3は、積層体の強度特性や耐衝撃性などを向上させるものであり、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドなどから形成され、延伸されていることが好ましいこと(【0041】)
(エ)印刷層について
・印刷層は、ポリエステル樹脂層1に設けることができること(【0051】)
(オ)積層体5のループスティフネス
・ポリエステル樹脂層1、印刷層、低密度ポリエチレン、アルミニウム箔、低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンフィルム(シーラント層2)からなる積層体5のループスティフネスが、幅15mm、長さ165mmの試験片をループ長60mmでループスティフネステスターを用いて計測した結果、MD方向が6.09(mN/15mm)、TD方向が8.13(mN/15mm)であること(【0071】、【0078】~【0081】)
イ 甲1に記載された発明
上記ア(ア)~(エ)に鑑みれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポリエステル樹脂層1、支持体層3、シーラント層2をこの順に積層した包装用フィルムに用いる積層体であって、
ポリエステル樹脂層1は2軸延伸されており、
支持体層3は、積層体の強度特性や耐衝撃性などを向上させるものであり、延伸されており、
ポリエステル樹脂層1はジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸とイソフタル酸を含み、
イソフタル酸の含有量が全ジカルボン酸の0.5~2.5モル%とされており、
ポリエステル樹脂層1には印刷層が設けられており、
包装用フィルムに用いる積層体。」
(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ポリエステル樹脂層1」は、「2軸延伸されて」いるところ、甲1発明の積層体の層構造からみて、本件発明1の「第1延伸プラスチックフィルム」に相当する。
また、甲1発明の「支持体層3」は、「積層体の強度特性や耐衝撃性などを向上させるものであり、延伸されて」いるところ、同様に甲1発明の積層体の層構造からみて、本件発明1の「剛性フィルム」を含む「第2延伸プラスチックフィルム」に相当する。
上記(2)アに鑑みれば、甲1発明の「ポリエステル樹脂層1、支持体層3、シーラント層2をこの順に積層」するという事項は、本件発明1の「少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える」という事項に相当する。また、甲1発明の「包装用フィルムに用いる積層体」は、本件発明1の「包装材料」に相違ない。
甲1発明の「印刷層」は本件発明1の「印刷層」に相当し、甲1発明の「ポリエステル樹脂層1には印刷層が設けられて」いることは本件発明1の「前記第1延伸プラスチックフィルムには、印刷層が設けられて」いることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点1で一致し、以下の相違点1を含むものである。
<一致点1>
「少なくとも、第1延伸プラスチックフィルムと、第2延伸プラスチックフィルムと、シーラント層とをこの順に備える包装材料であって、
前記第1延伸プラスチックフィルムには、印刷層が設けられており、
前記第2延伸プラスチックフィルムは、剛性フィルムを含む、包装材料。」
<相違点1>
剛性フィルムに関して、本件発明1では、「前記剛性フィルムは、20μm以下の厚みを有し、且つ、1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有するとともにポリエステルを含み、前記ループスティフネスは、長辺及び短辺を有する試験片を一対のチャック部によって把持した後、前記一対のチャック部の間の間隔を前記長辺の方向で縮めることにより形成されるループ部を、ロードセルが押し込むことにより測定され、前記短辺の長さは15mmであり、前記ロードセルによって押し込まれる前の前記ループ部の長さは60mmであり、前記ループ部の突出方向において前記一対のチャック部から50mm離れた位置にロードセルを準備し、続いて、前記ロードセルを、前記ループ部に向けて3.3mm/秒の速度で距離40mm移動させ、前記ロードセルが前記ループ部を押し込んでいる状態において、前記ループ部から前記ロードセルに加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録し、前記荷重の値を、前記ループスティフネスとして採用し、前記ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%である」としたものであるのに対して、甲1発明は、支持体層3の厚み及びルーフスティフネスについての特定がない点。
イ 判断
上記相違点1について検討する。
当該相違点1は、実質的なものであるから、本件発明1は、甲1発明ではない。
また、上記(1)ア(オ)に示したとおり、甲1の実施例には、「ポリエステル樹脂層1、印刷層、低密度ポリエチレン、アルミニウム箔、低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンフィルム(シーラント層2)からなる積層体5のループスティフネスが、幅15mm、長さ165mmの試験片をループ長60mmでループスティフネステスターを用いて計測した結果、MD方向が6.09(mN/15mm)、TD方向が8.13(mN/15mm)であること」が記載されているものの、当該ループスティフネスは積層体5から算出される値であり、「剛性フィルム」に相当する「支持体層3」のループスティフネスではないし、実施例の積層体5が「支持体層3」を含むものであるかも定かではない。
また、当該相違点1に係る本件発明1の発明特定事項について、他の証拠に記載も示唆もない。
さらに、当該相違点1が設計的事項の範疇ということもできない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記(3)で判断したように、本件発明2~7は、甲1発明ではなく、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)小括
以上のとおり、本件発明1~7は、甲1発明ではなく、甲1発明、及び甲2~甲4に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700161