特許異議申立
2024-700009
ケーブルを結束するための多層ラップ及び結束されたケーブル
- 審判番号
- 2024-700009
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-076036
- 登録番号
- 7306861
- 請求日
- 2024年01月05日
- 審決日
- 2024年11月15日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】テーザ・ソシエタス・ヨーロピア
- 【権利者代理人】江崎 光史
- 【権利者代理人】鍛冶澤 實
- 【権利者代理人】上西 克礼
- 【権利者代理人】虎山 一郎
- 【異議申立人】鈴木 憲治
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 金丸 治之
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D) / P1651.536-YAA(B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7306861号発明「ケーブルを結束するための多層ラップ及び結束されたケーブル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7306861号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~8〕について訂正することを認める。
特許第7306861号の請求項1~2、4~6、8に係る特許を維持する。
特許第7306861号の請求項3、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7306861号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成31年4月12日(パリ条約による優先権主張2018年4月13日、アメリカ合衆国)の出願であって、令和5年7月3日にその特許権の設定登録がされ、令和5年7月11日に特許掲載公報が発行された。
本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。
令和6年 1月 5日 :特許異議申立人鈴木憲治(以下「申立人」という。)による請求項1~8に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和6年 5月 8日付け:取消理由通知書
令和6年 8月 9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和6年 9月10日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正請求は、特許第7306861号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める、というものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「ケーブルを結束するためのラップであって:
(a)第1のポリマーテキスタイルを含む最外層;
(b)第2のポリマーテキスタイルを含む最内層;及び
(c)前記最外層と前記最内層との間の接着剤層
を備えた多層ラップを含み」と記載されているものを、
「ケーブルを結束するためのラップであって:
(a)第1のポリマーテキスタイルを含む最外層;
(b)第2のポリマーテキスタイルを含む最内層;及び
(c)前記最外層と前記最内層との間の接着剤層
のみからなる多層ラップからなり」に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2及び4も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記最内層の前記第2のポリマーテキスタイルが、フリース、又はベロアであり、
これらの第1及び第2の ポリマーテキスタイルが互いに異なっており、」と記載されているものを、
「前記最内層の前記第2のポリマーテキスタイルが、フリースであり、」に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2及び4も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか一つに記載のラップ」と記載されているものを、「請求項1または2に記載のラップ」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「前記複数のケーブルを結束するように配置された多層ラップを備える、結束されたケーブルであって」と記載されているものを、
「前記複数のケーブルを結束するように配置された多層ラップ
を備える、長さ方向に結束されたケーブルであって」に訂正する(請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項6及び8も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5に
「前記ラップは:
(a)第1のポリマーテキスタイルを含む最外層;
(b)第2のポリマーテキスタイルを含む最内層;及び
(c)前記最外層と前記最内層との間の接着剤層
を備え」と記載されているものを、
「前記ラップは:
(a)第1のポリマーテキスタイルを含む最外層;
(b)第2のポリマーテキスタイルを含む最内層;及び
(c)前記最外層と前記最内層との間の接着剤層
のみからなり」に訂正する(請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項6及び8も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5に
「前記最内層の前記第2のポリマーテキスタイルが、フリース、又はベロアであり、
これらの第1及び第2の ポリマーテキスタイルが互いに異なっており、」と記載されているものを、
「前記最内層の前記第2のポリマーテキスタイルが、フリースであり、」に訂正する(請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項6及び8も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8に「請求項5~7のいずれか一つに記載の結束されたケーブル」と記載されているものを、「請求項5または6に記載の結束されたケーブル」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求のうち、請求項1~4についての訂正請求は、一群の請求項〔1~4〕について請求されたものである。
本件訂正前の請求項5~8は、請求項6~8が、本件訂正前の請求項5の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求のうち、請求項5~8についての訂正請求は、一群の請求項〔5~8〕について請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における層の構成を「(a)第1のポリマーテキスタイルを含む最外層;(b)第2のポリマーテキスタイルを含む最内層;及び(c)前記最外層と前記最内層との間の接着剤層」のみに限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮したものである。すなわち、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0045】~【0048】の、特に【0045】に記載の例1に示されており、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに減縮するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1における、第2のポリマーテキスタイルの選択肢のうち「ベロア」を削除し、それに伴って第2のポリマーテキスタイルは必然的に第1のポリマーテキスタイルと異なるものとなったことから、「これらの第1及び第2のポリマーテキスタイルが互いに異なっており」を削除するものであり、これらをまとめると、訂正事項2は、実質的に第2のポリマーテキスタイルの選択肢のうち「ベロア」を削除することで、特許請求の範囲を減縮したものである。すなわち、訂正事項2は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2は、実質的に第2のポリマーテキスタイルの選択肢のうち「ベロア」を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに減縮するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、訂正事項3は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3は、請求項3を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、請求項3を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項4において「請求項1~3のいずれか一つに記載のラップ」と記載されているものを、「請求項1または2に記載のラップ」とするものであり、引用請求項を削除するものであるから、訂正事項4は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4は、引用請求項を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項4は、引用請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項5において「前記複数のケーブルを結束するように配置された多層ラップを備える、結束されたケーブルであって」と記載されているものを、「前記複数のケーブルを結束するように配置された多層ラップを備える、長さ方向に結束されたケーブルであって」とし、ケーブルの結束方向を限定するものであり、訂正事項5は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5は、訂正事項5の「長さ方向に結束されたケーブル」について、本件特許の明細書の【0007】の「加えて、ラップは、ケーブルを長さ方向に結束するように構成されている。」という記載に示されており、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項5は、本件訂正前の請求項5に係る発明の発明特定事項をさらに減縮するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、本件訂正前の請求項5における層の構成を「(a)第1のポリマーテキスタイルを含む最外層;(b)第2のポリマーテキスタイルを含む最内層;及び(c)前記最外層と前記最内層との間の接着剤層」のみに限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮したものである。すなわち、訂正事項6は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6は、本件特許の明細書の【0045】~【0048】の、特に【0045】に記載の例1に示されており、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項6は、本件訂正前の請求項5に係る発明の発明特定事項をさらに減縮するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項7について
訂正事項7は、本件訂正前の請求項5における、第2のポリマーテキスタイルの選択肢のうち「ベロア」を削除し、それに伴って第2のポリマーテキスタイルは必然的に第1のポリマーテキスタイルと異なるものとなったことから、「これらの第1及び第2のポリマーテキスタイルが互いに異なっており」を削除するものであり、これらをまとめると、訂正事項7は、実質的に第2のポリマーテキスタイルの選択肢のうち「ベロア」を削除することで、特許請求の範囲を減縮したものである。すなわち、訂正事項7は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項7は、実質的に第2のポリマーテキスタイルの選択肢のうち「ベロア」を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項7は、本件訂正前の請求項5に係る発明の発明特定事項をさらに減縮するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項8について
訂正事項8は、本件訂正前の請求項7を削除するものであるから、訂正事項8は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項8は、請求項7を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項8は、請求項7を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)訂正事項9について
訂正事項9は、本件訂正前の請求項8おいて「請求項5~7のいずれか一つに記載の結束されたケーブル」と記載されているものを、「請求項5または6に記載の結束されたケーブル」とするものであり、引用請求項を削除するものであるから、訂正事項9は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項9は、引用請求項を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項9は、引用請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~2、4~6、8に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~2、4~6、8を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~2、4~6、8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~2、4~6、8の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
ケーブルを結束するためのラップであって:
(a)第1のポリマーテキスタイルを含む最外層;
(b)第2のポリマーテキスタイルを含む最内層;及び
(c)前記最外層と前記最内層との間の接着剤層
のみからなる多層ラップからなり、
前記最外層の前記第1のポリマーテキスタイルが、ベロア、又は、ポリアミドを含む布であり、
前記最内層の前記第2のポリマーテキスタイルが、フリースであり、
前記多層ラップが、直径5mmのマンドレルを使用してISO6722規格に従って測定した場合、前記最内層及び前記最外層単独の耐摩耗性を超える耐摩耗性を有し、
さらに、前記多層ラップが、LV312規格に従って測定した場合、少なくともクラスBの消音性を有し、
前記最外層が100g/m2~400g/m2の目付、及び150μm~350μmの厚さを有し、
前記最内層が150μm~600μmの厚さ、及び50g/m2~250g/m2の目付を有するラップ。
【請求項2】
前記最外層の前記第1のポリマーテキスタイルが、ベロアである、請求項1に記載のラップ。
【請求項4】
前記多層ラップが、ISO6722及びLV312規格に従って測定した場合、少なくとも1000ストロークの耐摩耗性及び少なくとも減衰量2dBの消音性を有する、請求項1または2に記載のラップ。
【請求項5】
複数のケーブル、及び
前記複数のケーブルを結束するように配置された多層ラップ
を備える、長さ方向に結束されたケーブルであって、前記ラップは:
(a)第1のポリマーテキスタイルを含む最外層;
(b)第2のポリマーテキスタイルを含む最内層;及び
(c)前記最外層と前記最内層との間の接着剤層
のみからなり、
前記最外層の前記第1のポリマーテキスタイルが、ベロア、又は、ポリアミドを含む布であり、
前記最内層の前記第2のポリマーテキスタイルが、フリースであり、
前記多層ラップが、直径5mmのマンドレルを使用してISO6722規格に従って測定した場合、前記最内層及び前記最外層単独の耐摩耗性を超える耐摩耗性を有し、
前記多層ラップが、LV312規格に従って測定した場合、少なくともクラスBの消音性を有し、
さらに、前記接着剤層の第1の部分は、前記複数のケーブルのうちの少なくとも1つと接触しており、前記接着剤層の第2の部分は、前記最外層と接触しており、
前記最外層が100g/m2~400g/m2の目付、及び150μm~350μmの厚さを有し、
前記最内層が150μm~600μmの厚さ、及び50g/m2~250g/m2の目付を有する、結束されたケーブル。
【請求項6】
前記最外層の前記第1のポリマーテキスタイルが、ベロアである、請求項5に記載の結束されたケーブル。
【請求項8】
前記多層ラップが、ISO6722及びLV312規格に従って測定した場合、少なくとも1000ストロークの耐摩耗性及び少なくとも減衰量2dBの消音性を有する、請求項5または6に記載の結束されたケーブル。」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審が令和6年5月8日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~8係る発明は、以下の引用文献1~引用文献3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1:独国実用新案出願第202005013009号明細書(申立人が提出した甲第1号証)
引用文献2:欧州特許出願公開第1911824号明細書(同甲第2号証)
引用文献3:特表2007-528432号公報(本件特許の拒絶査定時の引用文献2)
2 当審の判断
(1)引用文献の記載について
ア 引用文献1について
(ア)引用文献1の記載
引用文献1には、以下の記載がある。(翻訳は、当審による。下線は当審で付した。)
「
[図:0001425724000001.jpg]
(翻訳)
【0001】本考案は、接着テープであって、少なくとも1つの繊維製の織布層と、この織布層に結合された繊維製の面状構造物層とから成る少なくとも1つのテキスタイル製の支持体と、この支持体の片面または両面に被着された接着剤コーティングとを備える、接着テープに関する。この接着剤コーティングは、概して、感圧性接着剤コーティングである。
【0002】このような接着テープは、ケーブルセット製造時にケーブルを結束するために、限定するわけではないが、自動車産業において使用されることが多い。同産業では、特定の要件を満たすために、種々異なる多くのアプローチが存在している。このような接着テープでは、特に接着テープを燃料、油または同等の化学媒体に対して影響を受けにくく形成することが重要である。さらに、このような接着テープによって、例えば自動車ボディ内のケーブルセットの騒音発生にプラスの影響が与えられることが求められている。実際、同産業には、がたつき騒音を可能な限り効果的に音響的に減衰するという問題がある。」
「
[図:0001425724000002.jpg]
[図:0001425724000003.jpg]
(翻訳)
【0005】先行技術から、フリースまたはベロアから成る(1層の)テキスタイル製の面状構造物は、確かに、高い騒音減衰値を示すものの、しかしながら、僅かな機械的な安定性しか有しないことが明らかとなっている。この理由から、記載された2層の構造が利用される。なぜならば、 繊維製のただ1つの面状構造物層から成る支持体を備えた接着テープは、引張負荷下で裂けてしまうかまたは処理時に過伸長する傾向にあるからである。さらに、このような接着テープは、切欠きのある縁部で擦り切れてしまう。これによって、その後、ケーブルセットが損傷してしまう。」
「
[図:0001425724000004.jpg]
[図:0001425724000005.jpg]
(翻訳)
【0010】つまり、全体として、本考案は、面状構造物層と織布層とをベースとしたラミネートから成るテキスタイル製の支持体を利用している。つまり、これらの両方の層は、それぞれテキスタイル製の面状構造物、つまり、繊維もしくは繊維状物質から製造された構造物である。この場合、織布層に結合された面状構造物層は、例えば編物またはフリースとして形成されていてよい。 特に、面状構造物層が、繊維フリース重ね層、特にニードルパンチフリース層として形成されていると有利であると判った。このようなニードルパンチフリースは、その圧縮および固化のために、フリースにニードルを貫通させて、繊維絡合ひいては固化を生じさせる、いわゆるニードルパンチマシンによって製造されることを特徴としている。しかしながら、原則的に本考案の範囲内では、 面状構造物層用のベースとして、フリースの代わりに、例えばベロアが使用されてもよい。」
「
[図:0001425724000006.jpg]
(翻訳)
【0015】最後に、本考案は、30~200g/m2、好ましくは50~130g/m2の目付を有する接着剤コーティングを被着することを提案しており、これに対して、織布層では30~200g/m2の目付および面状構造物層では50~300g/m2の目付が観察される。 織布層と面状構造物層とを結合するためには、 種々異なる手順が利用されてよい。例えば、織布層を接着剤で被覆し、次いで、面状構造物層、特に、好ましくはポリエステルから成る繊維フリース層に貼り合わせることができる。その後、最終的に本来の接着剤コーティングが、好ましくは面状構造物層に形成される。」
「
[図:0001425724000007.jpg]
(翻訳)
【0017】その結果、自動車におけるケーブルセットの製造においてケーブルを巻き付けるのに特に適した接着テープが提供される(しかし、これに限定されるものではない)。この場合、織物層は、攻撃的な媒体は接着テープを通過することが困難になるか、または通過できず、表面に残る。同様に、好ましくは滑らかに研磨された織物層は、その微細組織によって、汚れが永久的に付着しないようにし、または接着テープの内部に侵入しないようにする。」
「
[図:0001425724000008.jpg]
(翻訳)
【0023】図2には、 テキスタイル製の支持体1,2と、この支持体1,2に被着された接着剤コ ーティング3とを有する接着テープが示してある。支持体1,2は、繊維製の織布層1と、この織布層1に結合された繊維製の面状構造物層2とから形成されている。接着テープが巻き付けられるケーブル束4と比較して、織布層1は外方に向けられているのに対して、面状構造物層2は内側に配置されている。」
「
[図:0001425724000009.jpg]
(翻訳)
【0025】本考案にとって特に重要であるのは、織布層1が、長手方向および横方向において1cmあたり25本よりも多くの糸を有する密織布層として形成されているということである。実際には、織布層1は、光沢研磨された表面、特にチンツ加工された表面を有する、好ましくはポリエステルから成る織布層である。この織布層1は、0.06~0.5mm、好ましくは0.06mm~0.3mm、特に0.15mm~0.2mmの材料厚さで存在している。さらに、織布は、すでに述べたハンドカット性を達成するために、種々異なる糸、例えばポリエステル/木綿から形成されていてもよい。」
「
[図:0001425724000010.jpg]
(翻訳)
【0028】織布層1の目付は30~200g/m2の範囲内に設定されている。面状構造物層の目付は50g/m2よりも多く、 好適には50g/m2~300g/m2の範囲内にある。面状構造物は、通常、繊維フリース、特にニードルパンチフリースである。面状構造物層2は、本実施例の範囲内ではニードルパンチフリース層として形成されている。」
「
[図:0001425724000011.jpg]
[図:0001425724000012.jpg]
(翻訳)
【0031】一方では織布層1と、他方では面状構造物層2とを結合するために、一方では織布層1および/または他方では面状構造物層2に接着剤を塗布するための2つの別の装置7,8が用いられる。次いで、両方の層1,2が加圧ロール装置6で互いに一体化され、出口側で支持体1,2もしくはラミネート支持体として提供される。すでに接着剤コーティング装置5において前述したように、層1,2同士の持続的な結合を少ない接着剤量の使用で達成するために、装置7も装置8も「カーテンコーティング」法により作業し、形成されてよい。当然ながら、この箇所では、接触ベースのダイレクトコーティングおよび/または転写コーティングも本考案に含まれる」
「
[図:0001425724000013.jpg]
(翻訳)
実用新案請求の範囲
1.少なくとも1つの織物層(1)とそれに接続された織物層(2)からなる少なくとも1つの織物キャリア(1、2)と、キャリアの片面または両面に接着剤コーティング(3)が塗布された接着テープであって、織物層(1)が、縦方向および横方向に25本/cmを超える糸を有する微細な織物層として設計されることを特徴とする接着テープ。」
「
[図:0001425724000014.jpg]
」
(イ)引用文献1に記載されていると認められる事項
a 【0015】の「例えば、織布層を接着剤で被覆し、次いで、面状構造物層、特に、好ましくはポリエステルから成る繊維フリース層に貼り合わせることができる。」、及び【0031】の「一方では織布層1と、他方では面状構造物層2とを結合するために、一方では織布層1および/または他方では面状構造物層2に接着剤を塗布するための2つの別の装置7,8が用いられる。」より、織布層1である外方と面状構造物層2である内側との間の接着剤を備えることは明らかである。
b Fig2から、「接着剤コーティング3」を「面状構造物2」の内側に設けることが看取される。
(ウ)引用発明
したがって、上記(ア)及び(イ)より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ケーブルを結束するための接着テープであって:
(a)織布層1である外方;
(b)ポリエステルからなる面状構造物層2である内側;及び
(c)前記外方と前記内側との間の接着剤
を備え、さらに面状構造物層2の内側に接着剤コーティング3を有し、
前記外方の前記織布層1が、ポリエステルからなる織布であり、
前記内側の前記ポリエステルからなる面状構造物層2が、フリースであり、
前記外方が30~200g/m2の目付、及び0.15mm~0.2mmの材料厚さを有し、
前記内側が50g/m2~300g/m2の目付の目付を有する接着テープ。」
イ 引用文献2について
引用文献2には以下の記載がある(翻訳は、異議申立人から示された翻訳文による。)。
「
[図:0001425724000015.jpg]
(翻訳)
【0001】本発明は、特に自動車のエンジンルーム用のケーブル巻付けテープであって、少なくとも1つの第1のテキスタイル層および第2のテキスタイル層から成る複合体として形成されたテープ状の支持体であって、第2のテキスタイル層は不織布である、支持体と、少なくとも支持体の一方の面に被着された、感圧性接着剤から成る自己接着性の接着層とを備える、ケーブル巻付けテープに関する。
【0002】ケーブルセットには、特に自動車分野において、通常、接着テープが巻き付けられる。それ以来、とりわけテキスタイル接着テープは、純粋な結束機能に加えて、数多くの付加機能、例えば摩耗からの線路の保護またはがたつき騒音または振動騒音の減衰を引き受けてきた。この場合、レーヨンステープル製またはポリエステル(PET)の織布接着テープおよびポリエステル製ならびにポリアミド製のベロアテープおよびたいてい同様にポリエステルをベースとする種々異なる不織布接着テープの使用は広く普及している。
【0003】自動車産業におけるケーブルセット巻付け用接着テープの試験は、通常は、例えばAudi、BMW、DC、VW各社の共同試験ガイドラインであるLV312「自動車のケーブルセット用接着テープ(Klebebaender fuer Kabelsaetze in Kraftfahrzeugen)」(2005年1月)にまとめられているような広範な規格に準拠して実施されている。
【0004】耐摩耗性に関して、LV312には、 以下の表1に示す分類が規定されている。
表1:LV312による摩耗クラスの分類
[図:0001425724000016.jpg]
[図:0001425724000017.jpg]
」
「
[図:0001425724000018.jpg]
(翻訳)
【0018】図1から分かるように、本発明によるケーブル巻付けテープ、特に自動車のエンジンルームでの使用を意図したケーブル巻付けテープは、少なくとも1つの第1テキスタイル層および第2のテキスタイル層から成る複合体として形成されたテープ状の支持体3を備える。」
「
[図:0001425724000019.jpg]
(翻訳)
【0020】支持体3の織布は、好適には、ポリアミド材料、特にPA6.6、ポリエステル、特にPETからまたはこれらの材料の混合物から形成されている糸から成っていてよい。また、これらの材料から第2のテキスタイル層2の不織布も形成されていてよい。」
「
[図:0001425724000020.jpg]
(翻訳)
【0025】本発明によるケーブル巻付けテープは、5mmの直径を有するマンドレルおよび10mmの直径を有するマンドレルにおいてLV312による摩耗クラスEを満たす。この分類は、通常「摩耗クラスE/E」とも呼ばれる。」
「
[図:0001425724000021.jpg]
(翻訳)
請求項
1.特に自動車のエンジンルーム用のケーブル巻付けテープであって、少なくとも1つの第1のテキスタイル層(1)および第2のテキスタイル層(2)から成る複合体として形成されたテー プ状の支持体(3)であって、前記第2のテキスタイル層(2)は不織布である、支持体(3)と、少なくとも前記支持体(3)の一方の面に被着された、感圧性接着剤から成る自己接着性の接着層(4)とを備える、ケーブル巻付けテープにおいて、
前記第1のテキスタイル層(1)は織布であり、前記織布は、1cmあたり少なくとも20本の経糸と、1cmあたり多くとも22本の緯糸とを有し、前記ケーブル巻付けテープは、5mmの直径を有するマンドレルおよび10mmの直径を有するマンドレルにおいてLV312による摩耗クラスEを満たしていることを特徴とする、ケーブル巻付けテープ。」
ウ 引用文献3について
引用文献3には以下の記載がある。
「【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、第1の外層A及び第2の外層Bを、該外層A及びBの間に位置し且つそれぞれの場合に全表面にわたってそれらにしっかりと接合された内層Cと共に、有する裏打ち材を含んでなる、但し該外層A及びBが織り布または形成されたループ・ニットからなり、該内層Cが粘弾性接着剤、好ましくは自己接着剤、または両面接着テープからなる、
特に自動車におけるケーブルハーネスを束ねるための高耐摩耗性テープを提供する。」
「【0021】
驚くべきことに、本発明に従って多層系を作る時、全組合わせ物の耐摩耗性は、個々の層の耐摩耗性の合計よりも非常に高く、この結果特別な保護手段を取る必要なくこすり及び毛羽立ちへの露呈に対してかなりの増大した保護効果を達成できることが分かった。本発明のテープ構造を用いれば、普通の巻付けテープの束ねの可能性と専用系、例えばツイストチューブズ(TwistTubes(R)))、ひもを編んだホース、曲げられる波形管などの摩耗保護とを組合わせることができる。この目的のためには、以下に記述する裏打ち材に対して複合物構造種を選択することが必要であり、この関連において記述する具体例は例示としてだけ見なすべきである。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明を対比する。
引用発明の「ケーブルを結束するための接着テープ」は、本件発明1の「ケーブルを結束するためのラップ」に相当する。
引用発明の「織布層1」は、織布がポリエステルからなることより、本件発明1の「第1のポリマーテキスタイル」に相当する。また、同「織布層1である外方」は、本件発明1の「第1のポリマーテキスタイルを含む最外層」に相当する。
引用発明の「面状構造物層2」は、ポリエステルからなるフリースであるから、本件発明1の「第2のポリマーテキスタイル」及び「前記第2のポリマーテキスタイルが、フリースであり」に相当する。また、同「面状構造物層2である内側」は、本件発明1の「第2のポリマーテキスタイルを含む最内層」に相当する。
引用発明の「前記外方と前記内側との間の接着剤」は、層を形成することは明らかであり、本件発明1の「前記最外層と前記最内層との間の接着剤層」に相当する。
引用発明は、「織布層1」、「面状構造物層2」、「接着剤」の層を有するから、これらの層のみで構成されるかはさておき、ひとまず本件発明1の「多層ラップ」に相当する。
引用発明の「前記外方が30~200g/m2の目付、及び0.15mm~0.2mmの材料厚さを有し、」は、本件発明1の「前記最外層が100g/m2~400g/m2の目付、及び150μm~350μmの厚さを有し、」に相当する。
引用発明の「前記内側が50g/m2~300g/m2の目付を有する」は、本件発明1の「前記最内層が150μm~600μmの厚さ、及び50g/m2~250g/m2の目付を有する」と、「前記最内層の目付の数値範囲に50g/m2~250g/m2を含む」限りにおいて一致する。
以上より、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「ケーブルを結束するためのラップであって:
(a)第1のポリマーテキスタイルを含む最外層;
(b)第2のポリマーテキスタイルを含む最内層;及び
(c)前記最外層と前記最内層との間の接着剤層
を備えた多層ラップを含み、
前記最内層の前記第2のポリマーテキスタイルが、フリースであり、
前記最外層が100g/m2~400g/m2の目付、及び150μm~350μmの厚さを有し、
前記最内層の目付の数値範囲に50g/m2~250g/m2を含むラップ。」
<相違点1>
多層ラップについて、本件発明1では、「(a)第1のポリマーテキスタイルを含む最外層;(b)第2のポリマーテキスタイルを含む最内層;及び(c)前記最外層と前記最内層との間の接着剤層のみからなる多層ラップからな」るのに対し、引用発明では、「(a)織布層1である外方;(b)ポリエステルからなる面状構造物層2である内側;及び(c)前記外方と前記内側との間の接着剤」に加え、「接着剤コーティング3」を有しているため、本件発明1のように(a)~(c)による層のみから構成されているものとはいえない点。
<相違点2>
第1のポリマーテキスタイル(織布層1)について、本件発明1では、「ベロア、又は、ポリアミドを含む布であ」るのに対して、引用発明では「ポリエステルからなる織布であ」る点。
<相違点3>
本件発明1では、「前記多層ラップが、直径5mmのマンドレルを使用してISO6722規格に従って測定した場合、前記最内層及び前記最外層単独の耐摩耗性を超える耐摩耗性を有し、
さらに、前記多層ラップが、LV312規格に従って測定した場合、少なくともクラスBの消音性を有し」ているのに対し、引用発明では、当該特定はしていない点。
<相違点4>
最内層(内側)について、本件発明1では、「150μm~600μmの厚さ、及び50g/m2~250g/m2の目付を有する」のに対し、引用発明では、厚さについては特定しておらず、「50g/m2~300g/m2の目付を有する」ものである点。
イ 判断
各相違点について検討する
<相違点1>について
引用発明の「(a)織布層1である外方;(b)ポリエステルからなる面状構造物層2である内側;及び(c)前記外方と前記内側との間の接着剤を備えた支持体1,2を含み、この支持体1,2に被着された接着剤コーティング3を有」することについて検討すると、引用文献1の実用新案請求の範囲の請求項1には、「少なくとも1つの織物層(1)とそれに接続された織物層(2)からなる少なくとも1つの織物キャリア(1、2)と、キャリアの片面または両面に接着剤コーティング(3)が塗布された接着テープであって、織物層(1)が、縦方向および横方向に25本/cmを超える糸を有する微細な織物層として設計されることを特徴とする接着テープ。」としており、「接着剤コーティング」を必須の構成としている。同様、【0015】には、「最後に、本考案は、30~200g/m2、好ましくは50~130g/m2の目付を有する接着剤コーティングを被着することを提案しており、」と、【0017】には、「その結果、・・・織物層は、攻撃的な媒体は接着テープを通過することが困難になるか、または通過できず、表面に残る。」と記載され、やはり「接着剤コーティング3」は、必須の構成として説明されている。そうすると、引用発明において、「接着剤コーティング3」を省き、「(a)織布層1である外方」、「(b)ポリエステルからなる面状構造物層2である内側」、「(c)前記外方と前記内側との間の接着剤」のみからなる接着テープを得ることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
したがって、引用発明に基いて、上記<相違点1>に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
<相違点2>について
引用発明の「前記外方の前記織布層1が、ポリエステルからなる織布であ」ることについて検討すると、引用文献1の【0025】には、「織布層1は、光沢研磨された表面、特にチンツ加工された表面を有する、好ましくはポリエステルから成る織布層である。」と記載されているものであり、当該記載に基いて、本件発明1の「第1のポリマーテキスタイル」の構成のように、「ベロア、又は、ポリアミドを含む布」を想到するものではない。
ここで、引用文献2には、請求項1に「少なくとも1つの第1のテキスタイル層(1)および第2のテキスタイル層(2)から成る複合体として形成されたテープ状の支持体(3)であって、前記第2のテキスタイル層(2)は不織布である、支持体(3)と、少なくとも前記支持体(3)の一方の面に被着された、感圧性接着剤から成る自己接着性の接着層(4)とを備える、ケーブル巻付けテープにおいて、前記第1のテキスタイル層(1)は織布であり、」と記載されているところ、このような織布からなる第1のテキスタイル層(1)および不織布からなる第2のテキスタイル層(2)から成る複合体として形成されたテープ状の支持体(3)において、【0020】には、「支持体3の織布は、好適には、ポリアミド材料、特にPA6.6、ポリエステル、特にPETからまたはこれらの材料の混合物から形成されている糸から成っていてよい。また、これらの材料から第2のテキスタイル層2の不織布も形成されていてよい」と記載されており、「ケーブル巻付けテープの、第1のテキスタイル層(1)および第2のテキスタイル層(2)が、好適には、ポリアミド材料、特にPA6.6、ポリエステル、特にPETからまたはこれらの材料の混合物から形成されている糸から成る」という技術事項が開示されているものである。すなわち、第1のテキスタイル層(1)および第2のテキスタイル層(2)を区別しているわけではなく、さらに、「ポリアミド材料、特にPA6.6」、「ポリエステル、特にPET」及び「これらの材料の混合物」とが並列に例示されているものである。
そうすると、第1のテキスタイル層(1)および第2のテキスタイル層(2)を区別しているわけではなく、さらに、「ポリアミド材料、特にPA6.6」、「ポリエステル、特にPET」及び「これらの材料の混合物」とが並列に例示されている引用文献2の上記記載を参照したとしても、引用発明の「織布層1である外方」のみを、「ポリアミド材料」とすることは、当業者といえども容易に想到することはない。
よって、<相違点2>に係る本願発明1の構成は、引用発明から容易に想到し得たものではないし、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用して容易に相当し得たものでもない。
ウ 小括
以上、<相違点1>についての検討のとおり、加えて<相違点2>についての検討も考慮すると、<相違点3>及び<相違点4>について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 本件発明2、4~6及び8について
本件発明2及び4は、直接あるいは間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明であるから、上記に示したことと同様に、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明5は、複数のケーブルと、本件発明1の発明特定事項を全て有する多層ラップとを備える、長さ方向に結束されたケーブルに係る発明であるから、上記に示したことと同様に、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに、本件発明6及び8は、直接あるいは間接的に本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明5を引用し、本件発明5の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明であるから、上記に示したことと同様に、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について
1 取消理由通知に採用しなかった申立理由の概要
取消理由通知に採用しなかった申立理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1(明確性)
請求項1及び5に係る発明の「ベロア」と「ポリアミドを含む布」とは、互いに含まれる範囲が重複しており両者の違いが明確に理解できない。
よって、本件特許の請求項1及び5に係る発明は明確でないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しないため、請求項1及び5に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)申立理由2(実施可能要件)
請求項1及び5に係る発明には、「前記最外層が100g/m2~400g/m2の目付、及び150μm~350μmの厚さを有し、前記最内層が150μm~600μmの厚さ、及び50g/m2~250g/m2の目付を有する」と規定されている。しかし、本件特許の明細書の実施例の表1、2では、最内層において、厚さ210μm及び540μmのフリースが開示されているのみで、最外層及び最内層の目付や、最外層の厚さなどが開示されておらず、本件特許明細書には、請求項1及び5に係る発明に対応する実施例が開示されているとはいえない。
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載が、請求項1及び5に係る発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に適合しないため、請求項1及び5に係る特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
請求項1及び5に係る発明には、「前記最外層が100g/m2~400g/m2の目付、及び150μm~350μmの厚さを有し、前記最内層が150μm~600μmの厚さ、及び50g/m2~250g/m2の目付を有する」と規定されている。しかし、本件特許の明細書の実施例の表1、2では、最内層において、厚さ210μm及び540μmのフリースが開示されているのみで、最外層及び最内層の目付や、最外層の厚さなどが開示されておらず、本件特許明細書に開示された実施例では、本件特許発明の課題を解決することが、十分裏付けられていない。
よって、本件特許の請求項1及び5に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないため、請求項1及び5に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 当審の判断
(1)申立理由1(明確性)
ア 明確性についての検討
発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。以下検討する。
本件発明1及び5について、特許請求の範囲の記載は明確である。そして、特許請求の範囲の記載によって、ある具体的な物が本件発明1及び5の範囲に入るか否かを当業者は理解できるものである。
よって、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
イ 申立人の主張について
申立人は、請求項1及び5に係る発明の「ベロア」と「ポリアミドを含む布」とは、互いに含まれる範囲が重複しており両者の違いが明確に理解できないと主張する。
しかしながら、「ベロア」及び「ポリアミドを含む布」はいずれも明確であるから、「ベロア、又は、ポリアミドを含む布」が、いかなるものであるかについては明確であり、ある具体的な物が当該記載の範囲内のものであるのか、範囲外のものであるのかについても当業者であれば区別できることは明らかである。したがって、「ベロア」と「ポリアミドを含む布」とは、互いに含まれる範囲が重複しているからといって、発明が明確でないとはいえない。
よって、申立人の主張は、採用することはできない。
(2)申立理由2(実施可能要件)
ア 実施可能要件についての検討
物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り,使用をすることができる程度のものでなければならない。以下検討する。
本件発明の解決しようとする課題は、「ケーブルを結束するための、耐摩耗特性及び消騒音特性を合わせもつラップ」【0005】を得ることである。
そして、本件発明1及び5では、「前記最外層の前記第1のポリマーテキスタイルが、ベロア、又は、ポリアミドを含む布であり、前記最内層の前記第2のポリマーテキスタイルが、フリースであ」ることを規定し、さらに「前記最外層が100g/m2~400g/m2の目付、及び150μm~350μmの厚さを有し、前記最内層が150μm~600μmの厚さ、及び50g/m2~250g/m2の目付を有する」ることを規定し、当該本件発明1及び5に該当するものとして、【0047】の【表1】及び【0048】の【表2】には、好適なものとして、最外層ベロア、最内層210μmフリース(サンプルID「E」)、最外層ポリアミド、最内層210μmフリース(サンプルID「F」)、最外層ベロア、最内層540μmフリース(サンプルID「G」)、最外層ポリアミド、最内層540μmフリース(サンプルID「H」)、がそれぞれ例示されている。さらに、当該サンプルID「E」、「F」、「G」及び「H」について、耐摩耗性及び消音性が、本件発明1及び5の規定の範囲であることを示すものである。ここで、耐摩耗性の測定については【0039】に、消音性の測定については【0040】に、当業者が実施できる程度に説明がなされている。すなわち、発明の詳細な説明の記載により、当業者がその記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用をすることができる程度のものであるといえる。
イ 申立人の主張について
申立人は、本件特許の明細書の実施例の表1、2では、最内層において、厚さ210μm及び540μmのフリースが開示されているのみで、最外層及び最内層の目付や、最外層の厚さなどが開示されておらず、本件特許明細書には、本件発明1及び5に対応する実施例が開示されているとはいえないと主張する。
しかしながら、最外層及び最内層の目付については、【0032】に、最外層の厚さなどについて、【0033】にその数値範囲について記載されている。そして、本件特許の明細書の実施例の表1、2には、本件特許で想定している最外層及び最内層の目付(【0032】)や、最外層の厚さ(【0033】)の範囲であれば、最外層及び最内層の目付や、最外層の厚さによらず好適であることを示すものであることは明らかである。したがって、本件特許の明細書の実施例の表1、2において、最外層及び最内層の目付や、最外層の厚さなどについて、【0032】や【0033】で示される数値範囲の内外において、いかなる結果が得られるのかについてデータとして明示されていないからといって、本件発明1のラップ及び本件発明5のラップにより結束されたケーブルについての製作等にあたり過度の試行錯誤を行わなければ実施できないとはいえない。
よって、申立人の主張は、採用することはできない。
(3)申立理由3(サポート要件)について
ア サポート要件についての検討
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下検討する。
本件発明の解決しようとする課題は、「ケーブルを結束するための、耐摩耗特性及び消騒音特性を合わせもつラップ」【0005】を得ることである。
そして、発明の詳細な説明の記載によると、「多層ラップ100の最外層及び最内層10、30のポリマーテキスタイルは、一部の実施形態によると、布、ベロア、フリース、及び不織布のうちの1又は複数を含む。したがって、多層ラップ100に用いられるポリマーテキスタイルは、様々な布地、織布、並びに繊維及び関連材料を織らずに配置したものを含み得る。さらに、ポリマーテキスタイルの各々は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、及びこれらの材料の組合せから製造できる。」(【0029】)及び、「さらに、最外層10のポリマーテキスタイルは、PET材料、ポリエステル材料、ポリアミド材料、及びこれらの材料の組合せから製造されてよい。ラップ100の別の実施によると、最内層30のポリマーテキスタイルは、布、ベロア、又はフリースである。」(【0030】)と記載されており、さらに、「ラップ100の実施によると、最外層10は、約100g/m2~約400g/m2の目付を有する。ラップ100の別の実施によると、最内層30は、約50g/m2~約250g/m2の目付を有する。」(【0032】)及び「ラップ100(図1参照)の実施によると、最外層10の厚さ12は、約150μm~約350μmの範囲内である。ラップ100の別の実施によると、最内層30の厚さ32は、約150μm~約600μmの範囲内である。」(【0033】)と記載されている。そして、【0047】の【表1】及び【0048】の【表2】には、好適なものとして、最外層ベロア、最内層210μmフリース(サンプルID「E」)、最外層ポリアミド、最内層210μmフリース(サンプルID「F」)、最外層ベロア、最内層540μmフリース(サンプルID「G」)、最外層ポリアミド、最内層540μmフリース(サンプルID「H」)、がそれぞれ例示されている。
そうすると、「前記最外層の前記第1のポリマーテキスタイルが、ベロア、又は、ポリアミドを含む布であり、前記最内層の前記第2のポリマーテキスタイルが、フリースであ」ることを規定し、さらに「前記最外層が100g/m2~400g/m2の目付、及び150μm~350μmの厚さを有し、前記最内層が150μm~600μmの厚さ、及び50g/m2~250g/m2の目付を有する」ることにより、上記の発明が解決しようとする課題を解決することができると認識できるものである。すなわち、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
イ 申立人の主張について
申立人は、本件特許の明細書の実施例の表1、2では、最内層において、厚さ210μm及び540μmのフリースが開示されているのみで、最外層及び最内層の目付や、最外層の厚さなどが開示されておらず、本件特許明細書には、本件発明1及び5に対応する実施例が開示されているとはいえないと主張する。
しかしながら、最外層及び最内層の目付については、【0032】に、最外層の厚さなどについて、【0033】にその数値範囲について記載されている。そして、本件特許の明細書の実施例の表1、2には、本件特許で想定している最外層及び最内層の目付(【0032】)や、最外層の厚さ(【0033】)の範囲であれば、最外層及び最内層の目付や、最外層の厚さによらず好適であることを示すものであることは明らかである。したがって、本件特許の明細書の実施例の表1、2において、最外層及び最内層の目付や、最外層の厚さなどについて、【0032】や【0033】で示される数値範囲の内外において、いかなる結果が得られるのかについてデータとして明示されていないからといって、本件発明1及び5に対応する実施例が開示されないとはいえない。
よって、申立人の主張は、採用することはできない。
以上より、サポート要件に係る申立理由には理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~2、4~6、8に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1~2、4~6、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項3、7は、本件訂正により削除されたため、請求項3、7に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700009