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特許異議申立

2023-701283

積層体、包装材料及び包装体

審判番号
2023-701283
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-149693
登録番号
7288591
請求日
2023年12月05日
審決日
2024年03月29日
公報発行日
2024年04月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】大日本印刷株式会社
  • 【権利者代理人】宮嶋 学
  • 【権利者代理人】浅野 真理
  • 【権利者代理人】高田 泰彦
  • 【権利者代理人】柏 延之
  • 【異議申立人】柏木 香陽子
  • 【異議申立人】赤松 智信
審判長/審判官
  • 審判長 山崎 勝司
  • 審判官 ▲高▼橋 杏子
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1651.121-Y (B32B) / P1651.536-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7288591号発明「積層体、包装材料及び包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7288591号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7288591号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成30年8月8日に出願され、令和5年5月31日にその特許権の設定登録がされ、令和5年6月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年12月5日に特許異議申立人柏木香陽子(以下「申立人1」という。)により、令和5年12月8日に特許異議申立人赤松智信(以下「申立人2」という。)により、特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 特許第7288591号の請求項1~6の特許に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」といい、その他の請求項に係る発明も同様に称する。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 基材と、印刷層と、接着層と、シーラント層とをこの順で備え、 前記基材の接着層側の面に、印刷層が形成されており、 前記印刷層の表面に前記接着層が設けられており、 前記接着層が、接着剤及び硬化剤を含み、 前記接着剤は、重量平均分子量(Mw)300以上3000以下であるポリエステルポリオールを含む接着剤であり、 前記接着層の厚さが、1μm以上1.6μm以下であることを特徴とする、積層体。 【請求項2】 前記シーラント層の厚さが、30μm以上135μm以下である、請求項1に記載の積層体。 【請求項3】 前記シーラント層が、LDPE及びLLDPEの少なくとも一方を含む、請求項1又は2に記載の積層体。 【請求項4】 前記シーラント層が、LDPE及び、C4-LLDPE又はC-6LLDPEを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体を構成材料とする、包装材料。 【請求項6】 請求項5に記載の包装材料に内容物を充填した、包装体。」 第3 申立理由の概要 1 申立人1による申立理由の概要 申立人1は、以下に示す甲第1号証~甲第6号証(以下「甲1-1」~「甲1-6」という。)を提出し、以下の申立理由1-1~申立理由1-3を申し立てている。 (1)申立理由1-1(甲1-1に基づく進歩性) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲1-1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 (2)申立理由1-2(甲1-3に基づく進歩性) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲1-3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 (3)申立理由1-3(甲1-5号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲1-5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 [証拠方法] ・甲1-1:特開2017-95550号公報 ・甲1-2:特開2010-23379号公報 ・甲1-3:特開2003-3145号公報 ・甲1-4:特開2011-16232号公報 ・甲1-5:特開2018-35363号公報 ・甲1-6:佐々木春夫、「包装技術便覧」、社団法人日本包装技術協会、1995年7月1日、p.404~408 2 申立人2による申立理由の概要 申立人2は、以下に示す甲第1号証~甲第3号証(以下「甲2-1」~「甲2-3」という。)を提出し、以下の申立理由2-1、申立理由2-2を申し立てている。 (1)申立理由2-1(サポート要件) 本件特許の課題は、高い開封容易性及び強度を有する包袋体を作成することのできる積層体を提供することである。 しかしながら、本件特許の請求項1では、基材層及びシーラント層の種類やその膜厚について何ら規定していない。また、請求項1では、「接着剤及び硬化剤を含み、前記接着剤は、重量平均分子量(Mw)300以上3000以下であるポリエステルポリオールを含む」と規定しているが、硬化剤としていかなる化合物を用いるのか、接着剤及び硬化剤の配合比はいかなるものであるのかについて何ら規定していない。 積層体の製造に用いる基材層およびシーラント層の種類やその膜厚、接着剤の硬化剤として用いる化合物や接着剤及び硬化剤の配合比が異なれば開封容易性及び強度も異なる。 そうすると、本件特許の実施例において上記課題を解決できることを実証しているのは、膜厚15μmのポリアミド樹脂フィルム(ユニチカ(株)製、ON-RT)の面に印刷層を形成し、印刷層上に重量平均分子量(Mw)1300のポリエステルポリオールA及びヘキサメチレンジイソシアネートのみを用いて厚さ1.2μmの接着層を形成し、該接着層を介して特定のシーラント層用樹脂フィルムと貼り合わせ、接着層におけるポリエステルの含有量は50質量%である場合であれば本件特許の解決しようとする課題を解決できると認められるものの、これ以外のものまで、発明の詳細な説明にて確認されたのと同等の効果を奏するとは認めることができない。 したがって、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1~6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しないため、請求項1~6に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2-2(実施可能要件) 本件特許明細書には、請求項1に係る発明の、全範囲において当業者が実施できるように記載されているとはいえない。 よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載が、請求項1~6に係る発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に適合しないため、請求項1~6に係る特許は、同法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 [証拠方法] ・甲2-1:特開2008-274061号公報 ・甲2-2:特開2018-58356号公報 ・甲2-3:特開2010-23379号公報 第4 当審の判断 1 甲1-1~甲1-6に記載された事項・発明 (1)甲1-1 ア 甲1-1には、次の事項が記載されている。下線は、理解の便宜のため、当審が付した。以下同様である。 「【請求項1】 40℃における粘度500~2000mPa・sの範囲にあるポリエステルポリオール(A)、及び芳香族ビニルと無水マレイン酸との共重合体(B)を必須成分とすることを特徴とする無溶剤型接着剤用ポリオール組成物。」 「【請求項6】 請求項1~5の何れか一つに記載のポリオール組成物(X)と、ポリイソシアネート(Y)とを必須成分とすることを特徴とする無溶剤型接着剤。」 「【請求項8】 請求項6記載の接着剤を第一の基材フィルムに塗布、次いで塗布面に第二の基材フィルムを積層し、該接着剤層を硬化させてなる積層フィルム。」 「【0001】 本発明は無溶剤型接着剤、これに用いるポリオール組成物、及び該接着剤を用いて各種フィルムをラミネートしてなる積層フィルムに関する。更に詳しくは、各種プラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、アルミニウム箔等をラミネートして、主として食品、医薬品、洗剤等の包装材料に使用する複合フィルムを製造する際に用いるラミネート用接着剤に関する。」 「【0008】 従って、本発明が解決しようとする課題は、有害成分の溶出が回避され、食品包装用途に適用できることに加え、優れたラミネート強度が発現され、特に接着剤の長期保存後においても優れたラミネート強度を発現する無溶剤型接着剤、これに用いるポリイソシアネート組成物、該接着剤を用いて基材フィルムをラミネートしてなる積層フィルムを提供することにある。」 「【0014】 本発明のポリオール組成物は、前記した通り、40℃における粘度500~2000mPa・sの範囲にあるポリエステルポリオール(A)、及び芳香族ビニルと無水マレイン酸との共重合体(B)を必須成分とするものであり、前記ポリエステルポリオール(A)の粘度が500~2000mPa・sの範囲にあることから、希釈剤を実質的に使用しなくとも、芳香族ビニルと無水マレイン酸との共重合体(B)との相溶性が良好なものとなり、経時安定性に優れたポリオール組成物を得ることができる。なお、ポリエステルポリオール(A)の粘度は、E型回転粘度計で測定した40℃における粘度である。ここで、ポリエステルポリオール(A)のE型回転粘度計で測定した40℃における粘度が500mPa・sを下回る場合には、ポリオール自体の分子量が低くなり十分なラミネート強度が得られなくなる。また、2000mPa・sを上回る場合は、希釈剤なしで共重合体(B)と相溶化させることが困難なものとなる他、長期保存時にポリエステルポリオール(A)と共重合体(B)との反応による増粘を招き易くなる。これらの性能バランスの点から、ポリエステルポリオール(A)は、E型回転粘度計で測定した40℃における粘度は、特に700~1500mPa・sの範囲にあることが好ましい。」 「【0027】 次に本発明の無溶剤型接着剤は、上記したポリオール組成物(X)と、ポリイソシアネート(Y)とを必須成分とすることを特徴とするものである。 【0028】 ここで用いるポリイソシアネート(Y)は、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の分子構造内に芳香族構造を持つポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の分子構造内に脂環式構造を持つポリイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の直鎖状脂肪族ポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体、又はトリメチロールプロパン変性したアダクト体;前記した分子構造内に脂環式構造又は芳香族構造を持つポリイソシアネートとポリオール成分との反応生成物であるポリイソシアネートなどが挙げられる。 【0029】 これらのなかでも特に芳香族構造を持つポリイソシアネートとポリオール成分との反応生成物であるポリイソシアネートが、芳香族ビニル・無水マレイン酸共重合体(B)との相溶性に優れる点から好ましい。 【0030】 ここで、芳香族構造を持つポリイソシアネートと反応させるポリオール成分としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール等のグリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF等のビスフェノール;ダイマージオール;前記グリコール等の重合開始剤の存在下にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のアルキレンオキシドを付加重合したポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール(A)として例示した前記ポリエステルポリオール(1)~(3)が挙げられる。 【0031】 これらのポリオール成分のなかでも、特に、ポリオール組成物(X)との相溶性に優れるポリイソシアネート(Y)が得られる点から、前記ポリエーテルポリオール、又は、脂肪族ポリエステルポリオールである前記ポリエステルポリオール(1)が好ましい。また、ポリオール成分として前記ポリエーテルポリオールと前記ポリエステルポリオール(1)とを併用してもよく、その場合、両者の質量比[ポリエステルポリオール(1)/ポリエーテルポリオール]が99/1~70/30の範囲であることが得られる2種のポリイソシアネートの相溶性の点から好ましい。 【0032】 上記した前記ポリエーテルポリオールをベースとするポリエーテルポリウレタンポリイソシアネート、及び、前記ポリエステルポリオール(1)をベースとするポリエステルポリウレタンポリイソシアネートは重量平均分子量(Mw)が1000~4000の範囲であることが、エージング時間を短くしつつ、適正なポットライフを確保できる点から好ましい。また、前記ポリエーテルポリオールをベースとするポリエーテルポリウレタンポリイソシアネート、及び、前記ポリエステルポリオール(1)~(3)をベースとするポリエステルポリウレタンポリイソシアネートは、滴定法(ジ-n-ブチルアミン使用)によるイソシアネート含有率が5~20質量%のものが、適正な樹脂粘度となって塗工性に優れる点から好ましい。」 「【0056】 合成例1[ポリエステルポリオール樹脂A1の合成] ジエチレングリコールの519質量部、トリメチロールプロパン64質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃に加熱して溶解した。更に撹拌しながらアジピン酸582質量部を反応容器に仕込み150℃~240℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が5以下になったところで反応容器を徐々に減圧し、1mmHg以下、200~240℃で1時間反応させ、水酸基価180mgKOH/g、酸価1.3mgKOH/g、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール樹脂A1を得た。得られたポリエステルポリオール樹脂A1のE型回転粘度計による40℃における粘度は800mPa・sであった。」 「【0058】 合成例3[ジイソシアネート化合物Yの合成] ジエチレングリコール 560質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃に加熱した。更に撹拌しながらアジピン酸600質量部を反応容器に仕込み150℃~240℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が5mgKOH/g以下になったところで反応容器を徐々に減圧し、1mmHg以下、200~240℃で1時間反応させ、水酸基価130mgKOH/g、酸価0.8mgKOH/gの両末端に水酸基を有するポリエステルジオール樹脂を得た。 さらに得らえたポリエステルジオール樹脂1100質量部に対して、4,4-メチレンビスジフェニルイソシアネート250質量部、MDI混合物[BASF社製「ルプラネートMI」1000質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら85℃に加熱し約10時間反応させ、イソシアネート%が13.0%末端イソシアネートからなるジイソシアネート化合物Yを得た。」 「【0059】 実施例1[ポリオール組成物X1の製造] 合成例1で得られたポリエステルポリオール樹脂A1の98質量部に対して、スチレンと無水マレイン酸とを反応比率[スチレン/無水マレイン酸]が1/1で反応させて得られたスチレン・無水マレイン酸共重合体(クレイ・バレー社「SMA1000」、酸価480mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)5500、以下これを「SMA-B1」と略記する。)2質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら130℃に加熱し溶解させ、SMA-B1を2質量%含有するポリエステルポリオールを得た。 このSMA-B1を2質量%含有する組成物を、ポリオール組成物X1とする。」 「【0065】 [ラミネート強度] 表1の配合に従い、接着剤を配合した後、印刷インキユニビアNT(DIC製)で図柄をグラビア印刷したPETフィルムに、塗布量が固形分2.0g/m2程度となるように塗布し、ラミネーターでこのフィルムの塗布面とLLDPEフィルムと貼合し、ラミネートフィルムを作製した。このラミネートフィルムを40℃の恒温槽に3日間保存した。 ラミネートフィルムから15mm幅で切り取り、引張り試験機を使用して、T型剥離により剥離速度300mm/minで接着強度(N/15mm)を測定した。 (経時保存後の評価) ポリイソシアネート組成物(当審注:「ポリオール組成物」の誤記)X1~X10、ポリエステルポリオール組成物(当審注:「ジイソシアネート化合物」の誤記)Y’、ポリイソシネート樹脂x1、ポリイソシネート組成物x2~x3、ポリイソシネート樹脂x4を製造した後、60℃にて10日間静置した後に、表1の配合に従い接着剤を配合し、同様にしてラミネート強度を測定した。 【0066】 [レトルト後のラミネート強度及び外観] 接着剤を配合した後、印刷インキ(DIC(株)製「ユニビアNT」)で図柄をグラビア印刷したPETフィルムに、塗布量が固形分2.0g/m2程度となるように塗布し、ラミネーターでこのフィルムの塗布面とLLDPEフィルムと貼合し、ラミネートフィルムを作製した。このラミネートフィルムを40℃の恒温槽に3日間保存した。 このラミネートフィルムを150mm×300mmで切り取り、LLDPEが内側になるように折り曲げ、1atm、180℃、1秒間でヒートシールしてパウチを作製した。内容物として1/1/1ソース(ミートソース : 植物油 : 食酢=1 : 1 : 1)を加えた。 このパウチをボイル試験機で、98℃、1時間ボイルした。パウチを取り出し、内容物除去後、15mm幅で切り取り、引張り試験機を使用して、T型剥離により剥離速度300mm/minで接着強度(N/15mm)を測定した。 また、取り出し後のそれぞれのパウチの外観を観察し、デラミの発生の有無により、以下の評価を行った。 【0067】 評価○:デラミなし 評価△:デラミ箇所が5点以下 評価×:デラミ箇所が6点以上」 イ 甲1-1に記載された発明 上記ア、特に実施例5に着目すると、甲1-1には以下の発明(以下「甲1-1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ジエチレングリコールの519質量部、トリメチロールプロパン64質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃に加熱して溶解し、更に撹拌しながらアジピン酸582質量部を反応容器に仕込み、150℃~240℃に加熱してエステル化反応を行い、酸価が5以下になったところで反応容器を徐々に減圧し、1mmHg以下、200~240℃で1時間反応させて得た、水酸基価180mgKOH/g、酸価1.3mgKOH/g、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール樹脂A1であって、E型回転粘度計による40℃における粘度は800mPa・sであるポリエステルポリオール樹脂A1の98質量部に対して、スチレンと無水マレイン酸とを反応比率[スチレン/無水マレイン酸]が1/1で反応させて得られたスチレン・無水マレイン酸共重合体(クレイ・バレー社「SMA1000」、酸価480mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)5500、以下これを「SMA-B1」と略記する。)2質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら130℃に加熱し溶解させて得た、SMA-B1を2質量%含有するポリエステルポリオールであるポリオール組成物X1と、 ジエチレングリコール 560質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃に加熱し、更に撹拌しながらアジピン酸600質量部を反応容器に仕込み150℃~240℃に加熱してエステル化反応を行い、酸価が5mgKOH/g以下になったところで反応容器を徐々に減圧し、1mmHg以下、200~240℃で1時間反応させて得た、水酸基価130mgKOH/g、酸価0.8mgKOH/gの両末端に水酸基を有するポリエステルジオール樹脂1100質量部に対して、4,4-メチレンビスジフェニルイソシアネート250質量部、MDI混合物[BASF社製「ルプラネートMI」1000質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら85℃に加熱し約10時間反応させて得た、イソシアネート%が13.0%末端イソシアネートからなるジイソシアネート化合物Yとを配合して接着剤を得た後、 印刷インキユニビアNT(DIC製)で図柄をグラビア印刷したPETフィルムに、塗布量が固形分2.0g/m2程度となるように接着剤を塗布し、ラミネーターでこのフィルムの塗布面とLLDPEフィルムと貼合した、ラミネートフィルム。」 (2)甲1-2 ア 甲1-2には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 順に、少なくとも内層フィルム;接着剤層;外層フィルムを積層してなる多層フィルムであって、 前記接着剤層がポリエステル系の主剤、並びに脂肪族イソシアネート及び脂環族イソシアネートの硬化剤を含む無溶剤型接着剤からなることを特徴とする多層フィルム。」 「【請求項4】 前記無溶剤型接着剤の硬化剤が、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及び、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の多層フィルム。」 「【0001】 本発明は、無溶剤型接着剤を使用した多層フィルムおよび該多層フィルムを使用した包装容器に関する。」 「【0013】 以下、本発明の実施の形態について、図に基づいて詳細に説明する。 図1は、本発明の多層フィルムの実施形態を示す模式断面図である。 多層フィルム1は、内層から外層に向かって順に、内層フィルム2;接着剤層3;外層フィルム5、の構成を有している。図に示されるように、外層フィルム5と接着剤層3の間には、インキ層4が存在しても良い。 本発明において接着剤層3は、無溶剤型接着剤により構成されていることを特徴とする。 なお、本発明において多層フィルムの構成中、内層とは内容物が接触する側の層をいい、外層とは外気に接触する側の層をいう。 【0014】 本発明の多層フィルム1において、接着剤層3は無溶剤型接着剤からなり、当該無溶剤型接着剤は、主剤および硬化剤からなる二液型の反応硬化型接着剤であることを特徴としている。 主剤としては、内層フィルム2、外層フィルム5、及びインキ層4(グラビアインキ)との密着性がよく、且つラミネート強度及び耐衝撃性に優れたポリエステル系樹脂が使用される。その中でも、特にポリエステルポリオール樹脂が好ましく使用される。」 「【0040】 上記説明した接着剤組成物は、後述する外層フィルム5に塗布され接着剤層3を構成するが、液体内容物充填用としての接着剤塗布量としては1.5~3.5g/m2の範囲内であることが好ましい。更には、2.0~3.0g/m2の範囲内がより好ましい。 また、接着剤層3の厚さは、1~3μmであることが好ましい。 ・・・。 【0041】 次に、本発明における外層フィルム5について説明する。外層フィルム5としては、熱的な寸法安定性に優れたフィルムが良好に使用される。これは、外層フィルムの内面側にグラビア印刷後、80℃近傍の焼付温度がかかるため、これに耐えうる必要があるためである。外層フィルム5としては、耐熱性及び引っ張り強度が大きいという理由で、二軸延伸フィルムがより好ましい。」 「【0045】 続いて、本発明における多層フィルム1の内層フィルム2について説明する。 内層フィルム2としては、パウチやヒートシール蓋にするためにヒートシール性に優れたポリエチレン(PE)フィルムやポリプロピレン(PP)フィルムなどのポリオレフィン系フィルムが好適に使用される。 【0046】 内層フィルムの厚みとしては特に制限はないが、たとえばポリエチレンフィルムの場合50~200μm、ポリプロピレンフィルムの場合30~150μmであることが好ましい。また、内層フィルムは無延伸フィルムが好ましい。」 「【0055】 (外層フィルム・内層フィルム) 外層フィルムとして、膜厚15μmの二軸延伸ナイロンフィルムの片面に、グラビア印刷で、酸化チタン顔料を含んだ白インキを厚さ5μmに印刷した。内層フィルムとして膜厚150μmの無延伸の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを使用した。 【0056】 (多層フィルムの作成) 表1に示す接着剤主剤及び硬化剤を、それぞれ別々にタンク中で80℃に加熱し、接着剤供給装置で表1に示す重量配合比になるように主剤と硬化剤をコーター部に配管で供給し、接着剤塗布装置のロールの直前で混合した。コーターのロールを通過させて、外層フィルムの印刷面に接着剤を70℃で塗布して、接着剤塗布フィルムを作成した。塗布量は2.5g/m2で、塗布速度は150m/min.であった。 この接着剤塗布フィルムをラミネート部に搬送し、接着剤層を介して内層フィルムと加圧下60℃でラミネートし、多層フィルムを作成した。ラミネート速度は150m/min.で行った。この多層フィルムを40℃で3日間保持して、接着剤を硬化させた。」 「【0069】 【表1】 [図:0001409167000001.jpg] 」 イ 甲1-2に記載された事項 上記アを総合すると、甲1-2には以下の事項(以下「甲1-2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「多層フィルム1は、内層から外層に向かって順に、内層フィルム2;接着剤層3;外層フィルム5、の構成を有しており、 外層フィルム5と接着剤層3の間には、インキ層4が存在しており、接着剤層3は、無溶剤型接着剤により構成され、 当該無溶剤型接着剤は、ポリエステル系の主剤並びに硬化剤からなる二液型の反応硬化型接着剤であり、 主剤としては、ポリエステルポリオール樹脂が使用され、接着剤層3の厚さは、1~3μmである、多層フィルム。」 (3)甲1-3 ア 甲1-3には、次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は耐久性に優れたラミネート製品の製造に好適な無溶剤型接着剤及びこれを用いるラミネート方法に関する。」 「【0006】従って、本発明の目的は、上記の問題点が解決され、プラスチックシートやフィルム、蒸着プラスチックフィルム又は金属箔を含む構成のラミネート製品を無溶剤型ラミネート法で製造することができるポリエステル系無溶剤型接着剤を提供することである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、主剤が共重合型ポリエステルポリオールで、硬化剤がポリイソシアネートである無溶剤接着剤を使用することにより実用上十分な接着強度を有するプラスチックシートやフィルム、蒸着プラスチックフィルム又は金属箔を含む構成のラミネート製品が得られることを見出し、本発明を完成した。 【0008】即ち、本発明は、主剤がポリエステルポリオール、硬化剤がポリイソシアネートである無溶剤型接着剤において、ポリエステルポリオールは水酸基含有量が0.5~6.0重量%の共重合型ポリエステルポリオールであり、ポリイソシアネートはイソシアネート基含有量が10~30重量%であることを特徴とする無溶剤型接着剤及びシート状又はフィルム状基材をラミネートするに際し、上記無溶剤型接着剤を使用することを特徴とするラミネート方法である。」 「【0015】本発明で使用する共重合型ポリエステルポリオールは、従来公知のポリエステルの製造方法に従って製造することができ、製造方法は特に限定されない。即ち、ジカルボン酸成分ジオール成分とを200~250℃の温度で、減圧下に重縮合させることによって得られる。その際、必要により、本発明の主旨が損なわれない範囲で、ジカルボン酸の一部をトリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のポリカルボン酸で置換することができる。同様に、ジオールの一部をトリメチロールプロパン、ペンタエリトレット等の3価以上のポリオールで置換することができる。上記で得られる共重合型ポリエステルポリオールは、室温で液状又は固体であり、好ましい重量平均分子量(GPCで測定。標準ポリスチレン換算)は、1000~3500である。」 「【0021】製造例1(共重合型ポリエステルポリオール主剤の合成) イソフタル酸332g、アジピン酸438g、1,4-シクロヘキサンジメタノール144g、ジエチレングリコール133g及び1,6-ヘキサンジオール413gを2リットル4口フラスコに仕込み、窒素気流下、撹拌しながら5時間で230℃まで加熱し、水を留出させながらエステル化反応を行った。留出が止まった時点で、オクチル酸第一錫0.1gを加え250℃に昇温し、30トール減圧下に重縮合させ、水酸基含有率2.0%のポリエステルポリオール主剤(a)を得た。このポリエステルポリオールのイソフタル酸/アジピン酸のモル比は40/60(1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,6-ヘキサンジオール)/ジエチレングリコールのモル比は72/28であり、重量平均分子量は1700であった。」 「【0023】製造例3(ポリイソシアネート硬化剤の調製) デュラネートTPA-100〔旭化成社製:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート〕100重量部に信越シリコーンKBE-9007〔信越化学工業社製:イソシアネート官能性シラン〕0.8重量部を加えてイソシアネート基含有率21.9%のポリイソシアネート硬化剤Aを得た。」 「【0025】実施例2 製造例1で得られた主剤aと、製造例3で得られた硬化剤Aを、重量比10:4で、60℃に温度調整された2液供給装置、ミキサー、スクイズロール方式のコーターを使用し、厚さ12μmのシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムに2.0g/m2塗工し、120℃の熱風乾燥炉で1秒加熱処理したのち、厚さ60μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせ、40℃で48時間放置した後、JIS K 6854に準じてT型剥離試験を行った。」 イ 甲1-3に記載された発明 上記ア、特に実施例2に着目すると、甲1-3には以下の発明(以下「甲1-3発明」という。)が記載されていると認められる。 「イソフタル酸332g、アジピン酸438g、1,4-シクロヘキサンジメタノール144g、ジエチレングリコール133g及び1,6-ヘキサンジオール413gを2リットル4口フラスコに仕込み、窒素気流下、撹拌しながら5時間で230℃まで加熱し、水を留出させながらエステル化反応を行い、留出が止まった時点で、オクチル酸第一錫0.1gを加え250℃に昇温し、30トール減圧下に重縮合させて得た、水酸基含有率2.0%のポリエステルポリオール主剤(a)であり、ポリエステルポリオールのイソフタル酸/アジピン酸のモル比は40/60(1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,6-ヘキサンジオール)/ジエチレングリコールのモル比は72/28であり、重量平均分子量は1700であるポリエステルポリオール主剤(a)と、 デュラネートTPA-100〔旭化成社製:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート〕100重量部に信越シリコーンKBE-9007〔信越化学工業社製:イソシアネート官能性シラン〕0.8重量部を加えて得た、イソシアネート基含有率21.9%のポリイソシアネート硬化剤Aとを、 重量比10:4で、60℃に温度調整された2液供給装置、ミキサー、スクイズロール方式のコーターを使用し、厚さ12μmのシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムに2.0g/m2塗工し、120℃の熱風乾燥炉で1秒加熱処理したのち、厚さ60μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせた、ラミネート製品。」 (4)甲1-4 ア 甲1-4には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 少なくとも(A)層/(B)層/(C)層の3層から構成され、(A)層がオレフィン重合体98~99.999重量%、亜鉛、リチウム、コバルト、鉄、錫から選ばれる少なくとも1種の金属を含む脂肪酸金属塩及び/又はアミン化合物0.001~2重量%から構成される樹脂組成物、(B)層が数平均分子量200~5000であるポリオールとイソシアネート基を有する化合物からなるポリウレタン系接着剤、(C)層が少なくとも1層以上の基材からなることを特徴とするラミネートフィルム。」 「【0024】 本発明を構成する(A)層の厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、柔軟性に優れ、破損などの問題が小さいことから、1μm~5mmの厚みであることが好ましく、経済性の観点から、1~100μmの範囲が最も好適である。」 「【0032】 本発明の(B)層を構成するポリウレタン系接着剤は、数平均分子量が200~5000、好ましくは400~4000、さらに好ましくは500~3000であるポリオールとイソシアネート基を有する化合物から構成される。 【0033】 ポリオールの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィを用いて、以下に示す条件下で測定し、単分散ポリスチレンでユニバーサルな検量線を測定し、ポリスチレンの分子量として計算することによって求められる。数平均分子量が200未満の場合、得られたラミネートフィルムの接着性に劣るため好ましくなく、5000を超える場合は接着剤の粘度が上昇し、コーティング性が悪化するため好ましくない。 機種:HLC-8120GPC(東ソー(株)製) 溶媒:テトラヒドロフラン 流速:1mL/分 カラム温度:40℃ 測定濃度:1mg/1mL 注入量:100μL このようなポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオールなどから適宜選択することができる。」 「【0043】 これらの接着剤の厚みは、特に限定されるものではないが、0.01~10μmであると接着剤の硬化速度向上効果が高いため好ましく、更に好ましくは0.1~6μmである。」 イ 甲1-4に記載された事項 上記アを総合すると、甲1-4には、次の事項(以下「甲1-4記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「少なくとも(A)層/(B)層/(C)層の3層から構成され、(A)層がオレフィン重合体98~99.999重量%、亜鉛、リチウム、コバルト、鉄、錫から選ばれる少なくとも1種の金属を含む脂肪酸金属塩及び/又はアミン化合物0.001~2重量%から構成される樹脂組成物、(B)層が数平均分子量200~5000であるポリオールとイソシアネート基を有する化合物からなるポリウレタン系接着剤、(C)層が少なくとも1層以上の基材からなり、 接着剤の厚みは、0.01~10μmである、ラミネートフィルム。」 (5)甲1-5 ア 甲1-5には、次の事項が記載されている。 「【0009】 本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂を主剤として使用し、かつ、その硬化剤として多官能エポキシ化合物を用いることにより、非イソシアネート系の軟包装ラミネート用接着剤としてラミネート強度、とりわけラミネートフィルムのボイル処理後の接着強度やラミネート外観が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。」 「【0020】 前記した1級アミノ基含有ポリウレタンポリウレア樹脂(A)は、ポリオール成分(α)と多価イソシアネート化合物(β)とを反応させてウレタンプレポリマー(X)を得、次いで、該ウレタンプレポリマー(X)をアミン化合物(Y)と反応させることにより得ることができる。 【0021】 ここで、前記ポリウレタンポリウレア樹脂は、前記ポリオール成分(α)として、ポリエーテルポリオール(α1)を用いた場合には、樹脂構造中にポリエーテル構造を持つポリエーテルポリウレタンポリウレア樹脂(a1)となり、ポリエステルポリオール(α2)を用いた場合には、樹脂構造中にポリエステル構造を持つポリエステルポリウレタンポリウレア樹脂(a2)、ポリエーテルポリエステルポリオール(α3)を用いた場合には、樹脂構造中にポリエーテルポリエステル構造を持つポリエーテルポリエステルポリウレタンポリウレア樹脂(a3)となる。」 「【0028】 ここで、前記ポリエステルポリオール(α2)は、その重量平均分子量(Mw)が400~5,000の範囲であることがボイル処理後のラミネート強度に優れる点から好ましく、斯かる分子量範囲に調整し易い点から、前記グリコール化合物(α’)と、多価カルボン酸又はその無水物(α2-1)との反応割合は、グリコール化合物(α’)中の水酸基の当量数と、多価カルボン酸又はその無水物(α2-1)のカルボン酸としての当量数との比[(α’)/(α2-1)]が1/0.88~1/0.95の範囲であることが好ましい。このエステル化反応は、例えばエステル化触媒の存在下、180~260℃の温度条件下に反応を行うことが好ましい。」 「【0072】 実施例1(ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Aの調製) 攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、分子量約3000のポリプロピレングリコール(三井化学社製 アクトコール「PPG3000」、分子量3024(水酸基価37.1mgKOH/g、官能基数2としての計算値))と、1,3-ブタンジオールの混合物(重量比=97/3)192.7質量部とイソフォロンジイソシアネート47.29質量部を仕込み、窒素気流下に90℃で5時間反応させ、遊離イソシアネート価(イソシアネート基含有率)3.07質量%のプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル60質量部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン14.88質量部、シクロヘキシルアミン1.25質量部、酢酸エチル2.9質量部およびエタノール146.7質量部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Aを得た。得られたポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Aは、樹脂固形分濃度が55質量%、樹脂のアミン価3.82mgKOH/g、B型回転粘度計(東機産業株式会社社製「TVB-10M」)を用いて測定した粘度が800mPa・s(25℃)、樹脂固形分の重量平均分子量(Mw)が52,000であった。 【0073】 実施例2(ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Bの調製) 実施例1の1,3-ブタンジオールを1,4-ブタンに変更した以外は同じ製造法で行った。得られたポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Bとした。得られたポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Bは、樹脂固形分濃度が55質量%、樹脂のアミン価3.82mgKOH/g、B型回転粘度計(東機産業株式会社社製「TVB-10M」)を用いて測定した粘度が1,000mPa・s(25℃)、樹脂固形分の重量平均分子量(Mw)が53,000であった。 【0074】 実施例3(ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Cの調製) 攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、分子量約1000のポリプロピレングリコール(三井化学社製「アクトコールPPG1,000」、分子量1001(水酸基価112.0mgKOH/g、官能基数2としての計算値))と、分子量2015(水酸基価からの計算値)のポリプロピレングリコール(三井化学社製「アクトコールPPG2000」、分子量2015(水酸基価55.7mgKOH/g、官能基数2としての計算値))の混合物(重量比=95/5)185.2質量部とトルエンジイソシアネート62.92質量部を仕込み、窒素気流下に90℃で5時間反応させ、遊離イソシアネート価(イソシアネート基含有率)6.07質量%のプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル62.03質量部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール24.12質量部、モノエタノールアミン0.2質量部、酢酸エチル4.9質量部およびエタノール156.0質量部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Cを得た。得られたポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Cは、樹脂固形分濃度が55質量%、樹脂のアミン価23mgKOH/g、B型回転粘度計(東機産業株式会社社製「TVB-10M」)を用いて測定した粘度が800mPa・s(25℃)、樹脂固形分の重量平均分子量(Mw)が32,000であった。」 「【0078】 [評価用ラミネートシートの作成32色印刷PET/LLDPE] 表2の配合に従い、各樹脂溶液とアミノシランカップリング剤とを配合して主剤成分を調整し、次いで、エポキシ化合物及び酢酸エチルを配合することによって接着剤を製造した後、印刷インキ(サンケミカル社製「Duralam PF」)で青、白の順にフレキソ印刷されたPETフィルム(東洋紡社製「E5100」厚さ12μm)に、塗布量が固形分3.0g/m2程度となるように塗布し、ラミネーターでこのフィルムの塗布面と直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井東セロ社製LLDPE「TUX-HC60μm」)と貼合し、ラミネートフィルムを作製した。このラミネートフィルムを40℃の恒温槽に3日間のエージングを実施した。」 「【0081】 (ボイル処理後のピール強度) 前記した各ラミネートフィルムをLLDPEが内側になるように折り曲げ、1atm、180℃、1秒間でヒートシールして内容物の接触部分が200cm2となるパウチを作製し、食品疑似溶液内容物[食用酢:ミートソース:サラダ油(質量比)=1:1:1の溶液]の50mlを充填した。 充填したパウチを98℃の高温水で60分間浸漬し、取り出し、内容物を除去したパウチのラミネートフィルム部から15mm幅で切り出したサンプルのピール強度を、雰囲気温度25℃で引張り試験機を用いて、剥離速度を300mm/分に設定し、T型の剥離方法で測定した際の引張り試験による接着強度(N/15mm)を測定した。」 「【0085】 【表2】 [図:0001409167000002.jpg] 」 イ 甲1-5に記載された発明 上記アを総合すると、甲1-5には以下の発明(以下「甲1-5発明」という。)が記載されていると認められる。 「ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液とアミノシランカップリング剤とを配合して主剤成分を調整し、次いで、エポキシ化合物及び酢酸エチルを配合することによって接着剤を製造した後、印刷インキ(サンケミカル社製「Duralam PF」)で青、白の順にフレキソ印刷されたPETフィルム(東洋紡社製「E5100」厚さ12μm)に、塗布量が固形分3.0g/m2程度となるように塗布し、ラミネーターでこのフィルムの塗布面と直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井東セロ社製LLDPE「TUX-HC60μm」)と貼合した、ラミネートフィルム。」 (6)甲1-6 甲1-6には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001409167000003.jpg] 」(405ページ) 2 申立理由1-1(甲1-1に基づく進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1-1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲1-1発明における「PETフィルム」は、本件発明1における「基材」に相当する。 甲1-1発明における「LLDPEフィルム」は、甲1-1の【0066】の「このラミネートフィルムを150mm×300mmで切り取り、LLDPEが内側になるように折り曲げ、1atm、180℃、1秒間でヒートシールしてパウチを作製した。」との記載を考慮すると、本件発明1における「シーラント層」に相当する。 甲1-1発明における、「塗布量が固形分2.0g/m2程度となるように」「塗布し」た「接着剤」は、本件発明1における「接着層」に相当する。 甲1-1発明における、「ジエチレングリコールの519質量部、トリメチロールプロパン64質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃に加熱して溶解した。更に撹拌しながらアジピン酸582質量部を反応容器に仕込み、150℃~240℃に加熱してエステル化反応を行い、酸価が5以下になったところで反応容器を徐々に減圧し、1mmHg以下、200~240℃で1時間反応させて得た、水酸基価180mgKOH/g、酸価1.3mgKOH/g、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール樹脂A1であって、E型回転粘度計による40℃における粘度は800mPa・sであるポリエステルポリオール樹脂A1の98質量部に対して、スチレンと無水マレイン酸とを反応比率[スチレン/無水マレイン酸]が1/1で反応させて得られたスチレン・無水マレイン酸共重合体(クレイ・バレー社「SMA1000」、酸価480mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)5500、以下これを「SMA-B1」と略記する。)2質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら130℃に加熱し溶解させて得た、SMA-B1を2質量%含有するポリエステルポリオールであるポリオール組成物X1」は、本件発明1における「接着剤」に相当する。 甲1-1発明における、「ジエチレングリコール 560質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃に加熱し、更に撹拌しながらアジピン酸600質量部を反応容器に仕込み150℃~240℃に加熱してエステル化反応を行い、酸価が5mgKOH/g以下になったところで反応容器を徐々に減圧し、1mmHg以下、200~240℃で1時間反応させて得た、水酸基価130mgKOH/g、酸価0.8mgKOH/gの両末端に水酸基を有するポリエステルジオール樹脂1100質量部に対して、4,4-メチレンビスジフェニルイソシアネート250質量部、MDI混合物[BASF社製「ルプラネートMI」1000質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら85℃に加熱し約10時間反応させて得た、イソシアネート%が13.0%末端イソシアネートからなるジイソシアネート化合物Y」は、本件発明1における「硬化剤」に相当する。 甲1-1発明における、「印刷インキユニビアNT(DIC製)で図柄をグラビア印刷したPETフィルムに、塗布量が固形分2.0g/m2程度となるように接着剤を塗布し、ラミネーターでこのフィルムの塗布面とLLDPEフィルムと貼合した、ラミネートフィルム」は、包装材料用のフィルムにおいて、印刷がフィルムの内側になされることが一般に技術常識であることを踏まえると、本件発明1における「基材と、印刷層と、接着層と、シーラント層とをこの順で備え、基材の接着層側の面に、印刷層が形成されており、印刷層の表面に接着層が設けられている積層体」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1-1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点1] 「基材と、印刷層と、接着層と、シーラント層とをこの順で備え、 前記基材の接着層側の面に、印刷層が形成されており、 前記印刷層の表面に前記接着層が設けられており、 前記接着層が、接着剤及び硬化剤を含む、積層体。」 [相違点1-1] 「接着剤」について、本件発明1では、「重量平均分子量(Mw)300以上3000以下であるポリエステルポリオールを含む」のに対し、甲1-1発明では、「ポリオール組成物X1」の重量平均分子量(Mw)が不明である点。 [相違点1-2] 本件発明1では、「接着層の厚さが、1μm以上1.6μm以下である」のに対し、甲1-1発明では、接着層の厚さについて特定されていない点。 イ 判断 上記相違点1-1について検討する。 甲1-1には、接着剤が、「重量平均分子量(Mw)300以上3000以下であるポリエステルポリオールを含む」ことが、記載も示唆もされていない。 また、甲1-1発明は、「有害成分の溶出が回避され、食品包装用途に適用できることに加え、優れたラミネート強度が発現され、特に接着剤の長期保存後においても優れたラミネート強度を発現する無溶剤型接着剤」(【0008】)を提供することを課題とし、当該課題を解決するための手段を「ポリイソシアネート/ポリオール硬化型の無溶剤型接着剤において、該ポリオール成分として、40℃における粘度500~2000mPa・sの範囲にあるポリエステルポリオール(A)、及び芳香族ビニルと無水マレイン酸との共重合体(B)との混合物を用い」(【0009】)たものである。 一方、甲1-3発明は、「プラスチックシートやフィルム、蒸着プラスチックフィルム又は金属箔を含む構成のラミネート製品を無溶剤型ラミネート法で製造することができるポリエステル系無溶剤型接着剤を提供すること」(【0006】)を課題とし、当該課題を解決するための手段を「主剤がポリエステルポリオール、硬化剤がポリイソシアネートである無溶剤型接着剤において、ポリエステルポリオールは水酸基含有量が0.5~6.0重量%の共重合型ポリエステルポリオールであり、ポリイソシアネートはイソシアネート基含有量が10~30重量%である」(【0008】)ものとしたものである。 そうすると、甲1-1発明と甲1-3発明の課題とその解決手段はいずれも異なる。加えて、甲1-3発明である実施例2において、「ポリエステルポリオール主剤(a)」は40℃における粘度が不明であり、芳香族ビニルと無水マレイン酸との共重合体を含まないことを考慮すると、甲1-1発明の「SMA-B1を2質量%含有するポリエステルポリオールであるポリオール組成物X1」に換えて、甲1-3発明の「水酸基含有率2.0%のポリエステルポリオール主剤(a)」を採用する動機付けはない。 なお、甲1-1の【0032】には、「上記した前記ポリエーテルポリオールをベースとするポリエーテルポリウレタンポリイソシアネート、及び、前記ポリエステルポリオール(1)をベースとするポリエステルポリウレタンポリイソシアネートは重量平均分子量(Mw)が1000~4000の範囲であることが、エージング時間を短くしつつ、適正なポットライフを確保できる点から好ましい。」と記載されているが、「重量平均分子量(Mw)が1000~4000の範囲」のポリエステルポリウレタンポリイソシアネートについて記載されるもので、ポリエステルポリオールについていうものではない。 したがって、甲1-1発明において、相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 そして、本件発明1は、「接着剤が、基材表面の印刷層を形成するインキ等の隙間に入り込むことができ、基材と接着層との密着性が改善され、包装体の強度をより一層向上することができる。」(本件特許明細書【0031】)という有利な効果を奏するものである。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~6について 本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したものと同じ理由により、本件発明2~6は、甲1-1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 したがって、本件発明1~6は、甲1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 申立理由1-2(甲1-3に基づく進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1-3発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲1-3発明における「シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件発明1における「基材」に相当する。 甲1-3発明における「デュラネートTPA-100〔旭化成社製:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート〕100重量部に信越シリコーンKBE-9007〔信越化学工業社製:イソシアネート官能性シラン〕0.8重量部を加えて得た、イソシアネート基含有率21.9%のポリイソシアネート硬化剤A」は、本件発明1における「硬化剤」に相当する。 甲1-3発明における「イソフタル酸332g、アジピン酸438g、1,4-シクロヘキサンジメタノール144g、ジエチレングリコール133g及び1,6-ヘキサンジオール413gを2リットル4口フラスコに仕込み、窒素気流下、撹拌しながら5時間で230℃まで加熱し、水を留出させながらエステル化反応を行い、留出が止まった時点で、オクチル酸第一錫0.1gを加え250℃に昇温し、30トール減圧下に重縮合させて得た、水酸基含有率2.0%のポリエステルポリオール主剤(a)であり、ポリエステルポリオールのイソフタル酸/アジピン酸のモル比は40/60(1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,6-ヘキサンジオール)/ジエチレングリコールのモル比は72/28であり、重量平均分子量は1700であるポリエステルポリオール主剤(a)」は、本件発明1における「重量平均分子量(Mw)300以上3000以下であるポリエステルポリオールを含む接着剤」とは、「重量平均分子量(Mw)1700であるポリエステルポリオールを含む接着剤」であることに限り一致する。 そして、甲1-3発明における「イソフタル酸332g、アジピン酸438g、1,4-シクロヘキサンジメタノール144g、ジエチレングリコール133g及び1,6-ヘキサンジオール413gを2リットル4口フラスコに仕込み、窒素気流下、撹拌しながら5時間で230℃まで加熱し、水を留出させながらエステル化反応を行い、留出が止まった時点で、オクチル酸第一錫0.1gを加え250℃に昇温し、30トール減圧下に重縮合させて得た、水酸基含有率2.0%のポリエステルポリオール主剤(a)であり、ポリエステルポリオールのイソフタル酸/アジピン酸のモル比は40/60(1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,6-ヘキサンジオール)/ジエチレングリコールのモル比は72/28であり、重量平均分子量は1700であるポリエステルポリオール主剤(a)と、デュラネートTPA-100〔旭化成社製:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート〕100重量部に信越シリコーンKBE-9007〔信越化学工業社製:イソシアネート官能性シラン〕0.8重量部を加えて得た、イソシアネート基含有率21.9%のポリイソシアネート硬化剤Aとを、重量比10:4で、60℃に温度調整された2液供給装置、ミキサー、スクイズロール方式のコーターを使用し、厚さ12μmのシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムに2.0g/m2塗工し」たものは、本件発明1における「接着剤及び硬化剤を含」む「接着層」に相当する。 甲1-3発明における「イソフタル酸332g、アジピン酸438g、1,4-シクロヘキサンジメタノール144g、ジエチレングリコール133g及び1,6-ヘキサンジオール413gを2リットル4口フラスコに仕込み、窒素気流下、撹拌しながら5時間で230℃まで加熱し、水を留出させながらエステル化反応を行い、留出が止まった時点で、オクチル酸第一錫0.1gを加え250℃に昇温し、30トール減圧下に重縮合させて得た、水酸基含有率2.0%のポリエステルポリオール主剤(a)であり、ポリエステルポリオールのイソフタル酸/アジピン酸のモル比は40/60(1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,6-ヘキサンジオール)/ジエチレングリコールのモル比は72/28であり、重量平均分子量は1700であるポリエステルポリオール主剤(a)と、デュラネートTPA-100〔旭化成社製:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート〕100重量部に信越シリコーンKBE-9007〔信越化学工業社製:イソシアネート官能性シラン〕0.8重量部を加えて得た、イソシアネート基含有率21.9%のポリイソシアネート硬化剤Aとを、重量比10:4で、60℃に温度調整された2液供給装置、ミキサー、スクイズロール方式のコーターを使用し、厚さ12μmのシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムに2.0g/m2塗工し、120℃の熱風乾燥炉で1秒加熱処理したのち、厚さ60μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせた」ことと、本件発明1における「基材と、印刷層と、接着層と、シーラント層とをこの順で備え」ることとは、「基材と、接着層とをこの順で備え」ることに限り一致する。 甲1-3発明における「ラミネート製品」は、本件発明1における「積層体」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1-3発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点2] 「基材と、接着層とをこの順で備え、 接着層が、接着剤及び硬化剤を含み、 接着剤は、重量平均分子量(Mw)1700であるポリエステルポリオールを含む接着剤である、積層体。」 [相違点2-1] 基材と、接着層とをこの順で備えることについて、本件発明1では、「基材と、印刷層と、接着層と、シーラント層とをこの順で備え」としているのに対し、甲1-3発明では、「厚さ60μmのポリエチレンフィルム」をさらに備えるとしているが、シーラント層を備えるかどうかは特定されていない点。 [相違点2-2] 「接着剤」が、本件発明1では、「重量平均分子量(Mw)300以上3000以下であるポリエステルポリオールを含む」のに対し、甲1-3発明では、「重量平均分子量は1700であるポリエステルポリオール主剤(a)」である点。 [相違点2-3] 本件発明1では、「前記基材の接着層側の面に、印刷層が形成されており、前記印刷層の表面に前記接着層が設けられ」ているのに対し、甲1-3発明では、基材の接着層側の面に、印刷層が形成されており、印刷層の表面に接着層が設けられているかは特定されていない点。 [相違点2-4] 本件発明1では、「接着層の厚さが、1μm以上1.6μm以下である」のに対し、甲1-3発明では、接着層の厚さは特定されていない点。 イ 判断 上記相違点2-1~相違点2-3は相互に関連するので先ずまとめて検討する。 甲1-3には「基材と、印刷層と、接着層と、シーラント層とをこの順で備え、前記基材の接着層側の面に、印刷層が形成されており、前記印刷層の表面に前記接着層が設けられ」ることが、記載も示唆もされていない。 さらに、「基材と、印刷層と、接着層と、シーラント層とをこの順で備え、前記基材の接着層側の面に、印刷層が形成されており、前記印刷層の表面に前記接着層が設けられ」るものにおいて、「前記接着層が、接着剤及び硬化剤を含み、前記接着剤は、重量平均分子量(Mw)300以上3000以下であるポリエステルポリオールを含む接着剤であ」ることは、申立人が提出した他の証拠にも記載も示唆もされておらず、本件特許に係る出願前の周知技術でもない。 したがって、甲1-3発明において、相違点2-1~相違点2-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 そして、本件発明1は、「接着剤が、基材表面の印刷層を形成するインキ等の隙間に入り込むことができ、基材と接着層との密着性が改善され、包装体の強度をより一層向上することができる。」(本件特許明細書【0031】)という有利な効果を奏するものである。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~6について 本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したものと同じ理由により、本件発明2~6は、甲1-3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 したがって、本件発明1~6は、甲1-3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 申立理由1-3(甲1-5に基づく進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1-5発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲1-5発明における「PETフィルム(東洋紡社製「E5100」厚さ12μm)」は、本件発明1における「基材」に相当する。 甲1-5発明における「直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井東セロ社製LLDPE「TUX-HC60μm」)」は、甲1-5の【0081】の「前記した各ラミネートフィルムをLLDPEが内側になるように折り曲げ、1atm、180℃、1秒間でヒートシールして内容物の接触部分が200cm2となるパウチを作製し」との記載を考慮すると、本件発明1における「シーラント層」に相当する。 甲1-5発明における、「塗布量が固形分3.0g/m2程度となるように」「塗布し」た「接着剤」は、本件発明1における「接着層」に相当する。 甲1-5発明における、「ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液とアミノシランカップリング剤とを配合し」た「主剤成分」は、本件発明1における「接着剤」に相当する。 甲1-5発明における、「エポキシ化合物」は、本件発明1における「硬化剤」に相当する。 甲1-5発明における、「印刷インキ(サンケミカル社製「Duralam PF」)で青、白の順にフレキソ印刷されたPETフィルム(東洋紡社製「E5100」厚さ12μm)に、塗布量が固形分3.0g/m2程度となるように塗布し、ラミネーターでこのフィルムの塗布面と直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井東セロ社製LLDPE「TUX-HC60μm」)と貼合した、ラミネートフィルム」は、包装材料用のフィルムにおいて、印刷がフィルムの内側になされることが一般に技術常識であることを踏まえると、本件発明1における「基材と、印刷層と、接着層と、シーラント層とをこの順で備え、基材の接着層側の面に、印刷層が形成されており、印刷層の表面に接着層が設けられている」「積層体」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1-5発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点3] 「基材と、印刷層と、接着層と、シーラント層とをこの順で備え、 前記基材の接着層側の面に、印刷層が形成されており、 前記印刷層の表面に前記接着層が設けられており、 前記接着層が、接着剤及び硬化剤を含む、積層体。」 [相違点3-1] 「接着剤」について、本件発明1では、「重量平均分子量(Mw)300以上3000以下であるポリエステルポリオールを含む接着剤」であるのに対し、甲1-5発明では、「ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液とアミノシランカップリング剤とを配合し」た「主剤成分」である点。 [相違点3-2] 本件発明1では、「接着層の厚さが、1μm以上1.6μm以下である」のに対し、甲1-5発明では、接着層の厚さについて特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点3-1について検討する。 甲1-5には、「本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂を主剤として使用し、かつ、その硬化剤として多官能エポキシ化合物を用いることにより、非イソシアネート系の軟包装ラミネート用接着剤としてラミネート強度、とりわけラミネートフィルムのボイル処理後の接着強度やラミネート外観が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。」(【0009】)、「前記した1級アミノ基含有ポリウレタンポリウレア樹脂(A)は、ポリオール成分(α)と多価イソシアネート化合物(β)とを反応させてウレタンプレポリマー(X)を得、次いで、該ウレタンプレポリマー(X)をアミン化合物(Y)と反応させることにより得ることができる。」(【0020】)とされていて、ポリウレタンポリウレア樹脂を主剤とすることのみが記載されている。 さらに、「基材と、印刷層と、接着層と、シーラント層とをこの順で備え、前記基材の接着層側の面に、印刷層が形成されており、前記印刷層の表面に前記接着層が設けられ」るものにおいて、「前記接着層が、接着剤及び硬化剤を含み、前記接着剤は、重量平均分子量(Mw)300以上3000以下であるポリエステルポリオールを含む接着剤であ」ることは、申立人が提出した他の証拠にも記載も示唆もされておらず、本件特許に係る出願前の周知技術でもない。 したがって、甲1-5発明において、相違点3-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 そして、本件発明1は、「接着剤が、基材表面の印刷層を形成するインキ等の隙間に入り込むことができ、基材と接着層との密着性が改善され、包装体の強度をより一層向上することができる。」(本件特許明細書【0031】)という有利な効果を奏するものである。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~6について 本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したものと同じ理由により、本件発明2~6は、甲1-5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 したがって、本件発明1~6は、甲1-5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 申立理由2-1(サポート要件)について (1)本件発明が解決しようとする課題 本件発明の解決しようとする課題は、「高い開封容易性及び強度を有する包装体を作製することのできる積層体を提供すること」(【0007】)である。 (2)本件課題を解決するための手段 本件課題に関して発明の詳細な説明には次の記載がある。 「(接着層) 本発明の積層体は、厚さ1μm以上1.8μm以下の接着層を備える。包装体の開封容易性及び強度という観点からは、より好ましくは、厚さは1.1μm以上1.7μm以下であり、さらに好ましくは、厚さは、1.2μm以上1.6μm以下である。」(【0029】) 「接着層は、少なくとも1種の樹脂材料を含む接着剤を含み、例えば、ポリエステルを含む接着剤、(メタ)アクリル樹脂を含む接着剤、エポキシ樹脂を含む接着剤、ポリアミドを含む接着剤、スチレン樹脂を含む接着剤、ゴム材料を含む接着剤、シリコーン樹脂を含む接着剤及びポリウレタンを含む接着剤等が挙げられる。これらの中でも、包装体の開封容易性及び強度という観点からは、ポリエステルを含む接着剤が好ましく、ポリエステルポリオールを含む接着剤がより好ましい。」(【0030】)、 「接着剤に含まれる樹脂材料の重量平均分子量(Mw)は、300以上3000以下であることが好ましく、500以上2000以下であることがより好ましく、600以上1500以下であることがさらに好ましい。 これにより、接着剤が、基材表面の印刷層を形成するインキ等の隙間に入り込むことができ、基材と接着層との密着性が改善され、包装体の強度をより一層向上することができる。」(【0031】)、 と記載されており、さらに、【0061】の【表1】には、実施例1のもの(【0053】~【0055】)の開封容易性及び強度がAであり、比較例1のもの(【0056】)の開封容易性がA、強度がNGであり、比較例2のもの(【0057】)の開封容易性がNG、強度がNGであることが記載されている。 (3)判断 上記(2)の記載を参酌すると、本願課題は、包装体の開封容易性及び強度の観点から接着層の厚さを設定すること、ポリエステルポリオールを含む接着剤を用いること、接着剤が基材表面の印刷層を形成するインキ等の隙間に入り込むことができ、基材と接着層との密着性を改善する観点から接着剤に含まれる樹脂材料の重量平均分子量(Mw)の値を設定することにより、解決し得ると理解される。 そして、これらの事項は、本件発明1に発明特定事項として特定されているから、当業者は、本件発明1が、上記課題を解決し得ると認識するものといえる。 したがって、本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載したものである。 よって、申立人2の主張は採用できない。 6 申立理由2-2(実施可能要件)について 本件発明1は、「基材と、印刷層と、接着層と、シーラント層とをこの順で備え」、 「前記基材の接着層側の面に、印刷層が形成されており」、 「前記印刷層の表面に前記接着層が設けられており」、 「前記接着層が、接着剤及び硬化剤を含み」、 「前記接着剤は、重量平均分子量(Mw)300以上3000以下であるポリエステルポリオールを含む接着剤であり」、 「前記接着層の厚さが、1μm以上1.6μm以下である」「積層体。」である。 そして、本件特許明細書には、以下の事項が記載されている。 「(積層体) 本発明の積層体10は、図1に示すように、少なくとも一方の面に印刷層11が形成された基材12と、印刷層11が形成された基材12上に接着層13と、接着層13上にシーラント層14とを備える。」(【0018】) 「(接着層) 本発明の積層体は、厚さ1μm以上1.8μm以下の接着層を備える。包装体の開封容易性及び強度という観点からは、より好ましくは、厚さは1.1μm以上1.7μm以下であり、さらに好ましくは、厚さは、1.2μm以上1.6μm以下である。」(【0029】) 「接着層は、少なくとも1種の樹脂材料を含む接着剤を含み、例えば、ポリエステルを含む接着剤、(メタ)アクリル樹脂を含む接着剤、エポキシ樹脂を含む接着剤、ポリアミドを含む接着剤、スチレン樹脂を含む接着剤、ゴム材料を含む接着剤、シリコーン樹脂を含む接着剤及びポリウレタンを含む接着剤等が挙げられる。これらの中でも、包装体の開封容易性及び強度という観点からは、ポリエステルを含む接着剤が好ましく、ポリエステルポリオールを含む接着剤がより好ましい。」(【0030】) 「接着剤に含まれる樹脂材料の重量平均分子量(Mw)は、300以上3000以下であることが好ましく、500以上2000以下であることがより好ましく、600以上1500以下であることがさらに好ましい。 これにより、接着剤が、基材表面の印刷層を形成するインキ等の隙間に入り込むことができ、基材と接着層との密着性が改善され、包装体の強度をより一層向上することができる。」(【0031】) 「また、接着層は、少なくとも1種の硬化剤を含む。硬化剤としては、例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物及びアミン化合物等が挙げられる。これらの中でも、包装体の開封容易性及び強度という観点から、エポキシ化合物及びイソシアネート化合物が好ましい。」(【0032】) また、実施例1として、【0053】~【0055】に、開封容易性について、「A:力をほとんど加えることなく、開封することができた」、強度について、「A:10袋全てにおいて破損が確認できなかった」ものが得られている。 そうすると、当業者は、これらの記載によると、本件特許明細書の記載を参考にして、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1の積層体を実施できるといえる。 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1~6について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。 よって、申立人2の主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701283

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