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特許異議申立

2024-701009

電子部品包装用カバーテープおよび電子部品包装体

審判番号
2024-701009
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-037899
登録番号
7469914
請求日
2024年10月15日
審決日
2025年06月05日
公報発行日
2025年09月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友ベークライト株式会社
  • 【権利者代理人】速水 進治
  • 【異議申立人】末成 幹生
審判長/審判官
  • 審判長 金丸 治之
  • 審判官 稲葉 大紀
  • 審判官 葛原 怜士郎
分類
P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.536-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7469914号発明「電子部品包装用カバーテープおよび電子部品包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7469914号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 特許第7469914号の請求項1、2及び4~7に係る特許を維持する。 特許第7469914号の請求項3に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7469914号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願(特願2020-37899号)は、令和2年3月5日に出願され、令和6年4月9日にその特許権の設定登録がなされ、同年4月17日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~7に係る特許に対して、令和6年10月15日に特許異議申立人末成幹生(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。それ以降の主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和 6年12月 6日付け:取消理由通知書 令和 7年 2月 6日 :特許権者による訂正請求書・意見書の提出 なお、令和7年2月6日の訂正請求書による訂正の請求について、期間を指定して申立人に意見を求めたところ、意見書等の提出はなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年2月6日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、 「前記基材層は、ポリエステルを含み、かつ、10~30μmの厚みを有し、」 とあるのを、 「前記基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し、」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4~7も同様に訂正する)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に 「請求項1~3のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」 とあるのを、 「請求項1または2に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」 に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~7も同様に訂正する)。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6に 「請求項1~5のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」 とあるのを、 「請求項1、2、4および5のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、」 に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する)。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7に 「電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、請求項1~6のいずれか1項に記載のカバーテープとを備え、」 とあるのを、 「電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、請求項1、2および4~6のいずれか1項に記載のカバーテープとを備え、」 に訂正する。 2 一群の請求項 本件訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が本件訂正前の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~7〕に対して請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載の基材層について、「ポリエステルを含」む構成を、「軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムからな」る構成に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0038】、【0039】、【0057】~【0059】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2) 訂正事項2 訂正事項2は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (3) 訂正事項3~5 訂正事項3~5は、本件訂正前の請求項4~7が請求項3の記載を引用する記載であるところ、削除された請求項3を引用しないものとすることにより引用する請求項の数を減少させるための訂正であるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、削除された請求項3の記載を引用するという不明瞭な状態を解消するための訂正であるから明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1、2、4~7に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備える電子部品包装用カバーテープであって、 前記基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し、 前記シーラント層は、熱可塑性樹脂と無機粒子を含み、前記無機粒子の量は前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1~20質量部であり、前記熱可塑性樹脂は(メタ)アクリル系樹脂を含み、 以下[条件1]により求められる剥離強度の平均値をFLowとし、以下[条件2]により求められる剥離強度の平均値をFHighとしたとき、FHigh/FLowの値が1.0~2.0であり、FLowは20~80gfであり、FHighは20~160gfであるカバーテープ。 [条件1] シール条件:前記カバーテープを5.3mm幅にスリットして長尺状としたものを、シーラント層側の面で、デンカ株式会社製のキャリアテープ用シート「クリアレンCST2401」の表面と接触させ、そして、160℃、4kg/cm2、0.1秒の条件で熱シールし、複合体を得る。 剥離条件:前記複合体を、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、剥離強度を測定する。 [条件2] 熱シールの温度を200℃とした以外は、[条件1]と同じ条件。 【請求項2】 請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープであって、 前記[条件1]の試験の際の、測定時間を横軸に、剥離に測定された力の大きさを縦軸にプロットしたグラフにおいて、力の大きさの最大値をfmax、力の大きさの最小値をfminとしたとき、fmax/fminの値が1~1.6であるカバーテープ。」 「【請求項4】 請求項1または2に記載の電子部品包装用カバーテープであって、 前記基材層と前記シーラント層との間に、中間層を備えるカバーテープ。 【請求項5】 請求項4に記載の電子部品包装用カバーテープであって、 前記中間層は、ポリエチレンを含むカバーテープ。 【請求項6】 請求項1、2、4および5のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、 前記シーラント層は、(メタ)アクリル系樹脂を含むカバーテープ。 【請求項7】 電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、請求項1、2および4~6のいずれか1項に記載のカバーテープとを備え、 前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審において特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 (サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (1) ポリエステルの種類について 本件発明の課題を解決する手段として、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」であるカバーテープを製造するために、「基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムからなる」ことが必須の構成要件であるといえるから、本件特許の請求項1に係る発明は、本件発明の課題を解決できるとは認識できない。 (2) ポリエステルを含むことについて 本件特許の請求項1に係る発明は、基材層について、ポリエステルを一部にのみ含むものを包含するものであるから、本件発明の課題を解決できるとは認識できない。 (3) 無機粒子の量について 本件特許の請求項1に係る発明で特定する「熱可塑性樹脂100質量部に対して1~20質量部」のうち、実施例に記載される2質量%を除くすべての部分について、本件発明の課題を解決できるとは認識できない。 2 当審の判断 (1) サポート要件の判断について 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2) 本件発明について ア 本件発明の課題 本件発明の課題は、「キャリアテープからカバーテープを剥離する際の、カバーテープの破断を抑えること」(【0006】)である。 イ 発明を実施するための形態、及び、実施例の記載 本件特許の発明の詳細な説明には、発明を実施するための構成として以下のとおり記載されている。なお、下線は当審が付した。 「【0021】 本発明者は、カバーテープを破断しにくくするため、比較的「硬くて丈夫な」ポリエステルを基材層に採用することとした。また、基材層の厚みを、比較的厚い10~30μmに設定した。これらにより、カバーテープの「基礎的な」強度を担保するようにした。」 「【0024】 FHigh/FLowの値が1.0~2.0であるカバーテープを製造するためには、カバーテープ1を構成する素材や製法を適切に選択することが重要である。これらの選択については以下で具体的に説明していく。簡単に述べておくと、(1)基材層14を構成する素材として適切なポリエステル樹脂を採用し、また、基材層14を適度に厚く設計すること、(2)シーラント層11を設けるにあたって、(メタ)アクリル系樹脂や、適当な無機粒子を適量含む塗布液を用いること、等が重要である。このような基材層14を設けることで、ヒートシールの際の押圧ムラや熱ムラが低減されるなどし、FHigh/FLowの値が1.0~2.0に調整されやすくなる。」 「【0027】 シーラント層11は、通常、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、マレイン酸樹脂などを挙げることができる。 特に、多種多様なキャリアテープに熱融着可能な点などから、(メタ)アクリル系樹脂が好適に用いられる。シーラント層11が(メタ)アクリル系樹脂を含むことで、FHigh/FLowの値を調整しやすく、カバーテープの破断を一層抑えやすくなる傾向がある。詳細は不明だが、(メタ)アクリル系樹脂は、160℃と200℃で融解挙動がさほど変わらないために、(メタ)アクリル系樹脂を用いることでFHigh/FLowの値を1.0~2.0としやすいとも推察される。 【0028】 また、シーラント層11は、適切な樹脂とともに、無機粒子を含むことが好ましい。これにより、より一層、FHigh/FLowの値を1.0~2.0としやすい。 無機粒子としては、硫化亜鉛、硫化銅、硫化カドミウム、硫化ニッケル、硫化パラジウム等の硫化物粒子、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン等の金属酸化物、カーボン微粒子などを挙げることができる。入手容易性、剥離強度の調整のしやすさなどから、無機粒子としては金属酸化物が好ましい。 無機粒子の平均粒径は、好ましくは10~1000nm、好ましくは50~500nmである。適切な平均粒径の無機粒子を選択することで、諸性能を維持しつつ、FHigh/FLowの値を1.0~2.0としやすい。 シーラント層11が無機粒子を含む場合、その量は、樹脂(熱可塑性樹脂)100質量部に対し、例えば1~20質量部、好ましくは1~10質量部である。」 「【0038】 ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートやこれらの誘導体等が挙げられる。機械的強度、耐熱性、コストなどのバランスから、基材層14はポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことが好ましい。」 「【0039】 基材層14は、延伸処理されていても未延伸であってもよい。 基材層14を形成するに際して、市販のポリエステル系樹脂フィルムを利用してもよい。市販のポリエステル系樹脂フィルムの中では、例えば、東洋紡社のエスペット(登録商標)フィルムT7410などを好ましく用いることができる。詳細は不明だが、このフィルムを用いることで、FHigh/FLowの値を1.0~2.0に設計しやすくなる。 ちなみに、このフィルムは二軸延伸フィルムである。」 「【0057】 (実施例1:カバーテープの製造) 以下手順により製造した。 (1)基材層として、膜厚12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡社製、エスペット(登録商標)E5100)を準備した。 (2)上記基材層のコロナ処理面側に、ポリエチレンを膜厚が25μmとなるようにドライラミネート(ウレタン系接着剤使用)にて積層した。これにより中間層を設けた。 (3)中間層の露出面をコロナ処理した後、アクリル系シーラント樹脂(DIC社製、A450A)30質量%、平均粒径100nmの酸化アルミニウム2質量%、トルエン68質量%を混合した塗布液を塗布し、70℃で乾燥させてシーラント層を設けた。塗布量は、乾燥後の膜厚が2μmとなるように調整した。 【0058】 (実施例2:カバーテープの製造) 以下手順により製造した。 (1)基材層として、膜厚25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡社製、エスペット(登録商標)E5100)を準備した。 (2)上記基材層のコロナ処理面側に、ポリエチレンを膜厚が25μmとなるようにドライラミネート(ウレタン系接着剤使用)にて積層した。これにより中間層を設けた。(3)中間層の露出面をコロナ処理した後、アクリル系シーラント樹脂(DIC社製、A450A)30質量%、平均粒径100nmの酸化アルミニウム2質量%、トルエン68質量%を混合した塗布液を塗布し、70℃で乾燥させてシーラント層を設けた。塗布量は、乾燥後の膜厚が2μmとなるように調整した。 【0059】 (実施例3:カバーテープの製造) 以下手順により製造した。 (1)基材層として、膜厚12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡社製、エスペット(登録商標)E5100)を準備した。 (2)上記基材層のコロナ処理面側に、ポリエチレンを膜厚が45μmとなるようにドライラミネート(ウレタン系接着剤使用)にて積層した。これにより中間層を設けた。 (3)中間層の露出面をコロナ処理した後、アクリル系シーラント樹脂(DIC社製、A450A)30質量%、平均粒径100nmの酸化アルミニウム2質量%、トルエン68質量%を混合した塗布液を塗布し、70℃で乾燥させてシーラント層を設けた。塗布量は、乾燥後の膜厚が2μmとなるように調整した。」 ウ 基材層について 上記イに示した【0021】には、「カバーテープを破断しにくくするため、ポリエステルを基材層に採用すること」が記載されている。また、【0024】には、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0であるカバーテープを製造するためには、カバーテープ1を構成する素材や製法を適切に選択することが重要である」ことと、「基材層14を構成する素材として適切なポリエステル樹脂を採用」することが記載されている。これらを踏まえると、カバーテープのFHigh/FLowの値を1.0~2.0に調整するために、種々のポリエステル樹脂から適切な素材を選択する必要があることが示されている。 そして、【0038】、【0039】には、ポリエステル樹脂の具体例として、「ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートやこれらの誘導体等」が示されている。さらに、【0057】~【0059】において、FHigh/FLowの値が1.0~2.0に調整された基材層の具体的な構成として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡社製、エスペット(登録商標)E5100)を選択した実施例が記載されているとともに、【0039】において、「例えば、東洋紡社のエスペット(登録商標)フィルムT7410などを好ましく用いることができる。詳細は不明だが、このフィルムを用いることで、FHigh/FLowの値を1.0~2.0に設計しやすくなる」と記載されている。 してみると、「基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムからなる」ことによって、本件発明の課題を解決する手段である、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」であるカバーテープを製造することができるものである。 エ シーラント層について 上記イに示した【0024】には、「シーラント層11を設けるにあたって、(メタ)アクリル系樹脂や、適当な無機粒子を適量含む塗布液を用いること、等が重要である」と記載されており、【0027】には「シーラント層11が(メタ)アクリル系樹脂を含むことで、FHigh/FLowの値を調整しやすく、カバーテープの破断を一層抑えやすくなる傾向がある。詳細は不明だが、(メタ)アクリル系樹脂は、160℃と200℃で融解挙動がさほど変わらないために、(メタ)アクリル系樹脂を用いることでFHigh/FLowの値を1.0~2.0としやすいとも推察される」と、【0028】には「シーラント層11は、適切な樹脂とともに、無機粒子を含むことが好ましい。これにより、より一層、FHigh/FLowの値を1.0~2.0としやすい」及び「シーラント層11が無機粒子を含む場合、その量は、樹脂(熱可塑性樹脂)100質量部に対し、例えば1~20質量部、好ましくは1~10質量部である」と記載されている。 また、【0057】~【0059】に示された実施例1~3は、アクリル系シーラント樹脂(DIC社製、A450A)30質量%、平均粒径100nmの酸化アルミニウム2質量%、トルエン68質量%を混合した塗布液を塗布し、70℃で乾燥させてシーラント層を設け」、FHigh/FLowの値が1.0~2.0である。そして、【0070】には、実施例1~3はテープ切れが発生せず、スチレン系シーラント樹脂を塗布し乾燥させてシーラント層を設け、FHigh/FLowの値が2.0超である比較例1及び2(【0061】及び【0062】)はテープ切れが発生したことが記載されている。 これらの記載から、「シーラント層は、 熱可塑性樹脂と無機粒子を含み、 前記無機粒子の量は前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1~20質量部であり、前記熱可塑性樹脂は(メタ)アクリル系樹脂を含」む構成により、上記アに示した本件発明の課題を解決しているといえる。 オ 本件発明1、2、4~7について 本件訂正が認められたことにより、本件発明1、2、4~7は、「前記基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムからなり」、「前記シーラント層は、熱可塑性樹脂と無機粒子を含み、前記無機粒子の量は前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1~20質量部であり、前記熱可塑性樹脂は(メタ)アクリル系樹脂を含」むことを発明特定事項に備えたものとなり、上記アに示した課題に対し、上記ウ及びエに示したとおり、課題を解決するための手段が反映されたものとなった。すなわち、本件訂正により、請求項1において「基材層」が「軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムからな」る構成に限定されたため、上記1(1)及び(2)で示した取消理由は解消した。また、上記1(3)で示した取消理由に関し、上記エに示したとおり、本件発明1、2、4~7は、「前記シーラント層は、熱可塑性樹脂と無機粒子を含み、前記無機粒子の量は前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1~20質量部であり、前記熱可塑性樹脂は(メタ)アクリル系樹脂を含」む構成により、課題を解決するための手段が反映されたものである。 よって、請求項1、2、4~7の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)に適合するものである。 第5 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 (1) 申立理由1(新規性) 本件特許の請求項1、2、4~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するので、取り消されるべきものである。 (2) 申立理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、または甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するので、取り消されるべきものである。 (3) 申立理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項1~7に係る発明は、明細書の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するので、取り消されるべきものである。 ア 本件特許の請求項1に係る発明では、基材層が単にポリエステルを含むことのみを特定しており、基材層を構成する素材とし適切なポリエステル樹脂を含むことは特定していない。また、実施例では、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡社製、エスペット(登録商標)E5100)を使用した例のみが示されており、当業者は二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルム以外のポリエステル樹脂を用いた場合にどのようにしてFHigh/FLowの値が1.0~2.0であるカバーテープを製造するかを認識することができず、過度の試行錯誤を要する(特許異議申立書37頁14行~38頁8行の(iii-1))。 イ シーラント層について、本件特許の請求項1に係る発明では、(メタ)アクリル系樹脂の組成や物性は規定しておらず、無機粒子の種類及び粒径についても規定していない。また、本件特許明細書には、実施例のカバーテープにおいて(メタ)アクリル系樹脂として「アクリル系シーラント樹脂(DIC社製、A450A)」を用いたことが記載されているだけであり、どのような化学構造の(メタ)アクリル系樹脂を用いれば、FHigh/FLowの値が特定の範囲内となるのかは、当業者であっても分からない。 また、無機粒子について、本件特許明細書では、「平均粒径100nmの酸化アルミニウム」を「アクリル系シーラント樹脂(DIC社製、A450A)」と組み合わせた場合にFHigh/FLowの値を1.0~2.0にできることが記載されているだけであり、アクリル系シーラント樹脂(DIC社製、A450A)以外の(メタ)アクリル系樹脂と、「平均粒径100nmの酸化アルミニウム」以外の無機粒子とを用いた場合にFHigh/FLowの値が1.0~2.0であるカバーテープをどのように製造するかを認識することができず、過度の試行錯誤を要する(特許異議申立書38頁9行~40頁9行の(iii-2))。 ウ 本件特許の請求項1に係る発明では、「中間層」や「接着層」を備えることは規定されていない。また、本件特許明細書に記載されているカバーテープの唯一の層構成は、基材層14とシーラント層11との間に、中間層12、接着層13を備える層構成であり、中間層、接着層を備えていないカバーテープについて何ら説明されていない。 よって、当業者は、基材層とシーラント層との間に、中間層や接着層を備えていないカバーテープについて、FHigh/FLowの値が1.0~2.0であるカバーテープをどのように製造するかを認識することができず、過度の試行錯誤を要する(特許異議申立書40頁11行~41頁21行の(iii-3))。 エ 本件特許明細書には、実施例で具体的に製造されたカバーテープが、FLow値、FHigh値及びFHigh/FLow値を満たしていることが記載されているだけであり、FHigh/FLowの値が1.0~2.0であることに加えて、どのようにFLowが20~80gfであり、FHighが20~160gfであるカバーテープを製造するのかについての説明はない。 そうすると、当業者は、実施例で具体的に製造されたカバーテープ以外に、FLowは20~80gfであり、FHighは20~160gfであり、FHigh/FLowの値が1.0~2.0であるカバーテープをどのように製造するかを認識することができず、過度の試行錯誤を要する(特許異議申立書41頁23行~42頁5行の(iv))。 (4) 申立理由4(サポート要件) 本件特許は、請求項1~7の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するので、取り消されるべきものである。 ア 本件特許発明が解決しようとする課題は、「キャリアテープからカバーテープを剥離する際の、カバーテープの破断を抑えること」(【0006】)である(特許異議申立書42頁28行~43頁2行の(ii))。また、本件特許発明は、カバーテープのFHigh/FLowの値を1.0~2.0とすることで、キャリアテープからカバーテープを剥離する際の、カバーテープの破断を抑えることができるものと認められる(特許異議申立書43頁4行~44頁28行の(iii)及び(iv))。 しかし、発明の詳細な説明には、基材層として、所定の厚さの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムを用い、シーラント層として「アクリル系シーラント樹脂(DIC社製、A450A)と「平均粒径100nmの酸化アルミニウム」とを所定量で用い、さらに中間層及び接着層を設けた場合に、FHigh/FLowの値を1.0~2.0にできることが記載されているだけである。 したがって、ポリエステルの種類、(メタ)アクリル系樹脂の組成又は物性、無機粒子の種類及び粒径についても規定されておらず、中間層、接着層を含まない本件特許の請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない(特許異議申立書45頁1行~46頁16行の(iv-1))。 イ 本件特許明細書の【0022】には、「ヒートシール条件(温度、時間、押圧力等)の変動などにより、ヒートシールされた部分の全体でシール強度は必ずしも一定ではなく、所によりシール強度にムラがある(シール強度が大きい部分と小さい部分が混在する)」と記載されており、シール強度のムラは、ヒートシール条件の温度の変動以外にも、時間や押圧力等の変動によっても生じるものと解される。 他方で、FHigh値及びFLow値を求める条件1及び2を見ると、FHigh/FLowの値が1.0~2.0であることが、ヒートシール条件の時間や押圧力等の変動によるシール強度のムラに起因したカバーテープの破断の抑制に関係しているとは認められない。 よって、本件特許発明は、上記アに示した課題を解決することができない態様を包含していると認められる(特許異議申立書46頁18行~47頁17行の(iv-2))。 (5) 申立理由5(明確性要件) 本件特許は、請求項1~7の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するので、取り消されるべきものである。 本件特許の請求項1に係る発明は、「前記カバーテープを5.3mm幅にスリットして長尺状としたものを、シーラント層側の面で、デンカ株式会社製のキャリアテープ用シート「クリアレンCST2401」の表面と接触させ、そして、160℃、4kg/cm2、0.1秒の条件で熱シールし、複合体を得る」ことを発明特定事項とするものである。 しかしながら、キャリアテープ用シートは、デンカ株式会社製の「クレアレンCST2401」という表品名を用いて特定されているものの、本件特許明細書を見ても、当該表品名が、本件特許の出願以前から出願当時にかけて常に一定の品質、組成、構成などを持つ商品のみに付されていたことが明らかであるといえる証拠は見いだせない。 してみれば、デンカ株式会社製のキャリアテープ用シート「クレアレンCST2401」の記載は明瞭であるとはいえず、ひいては、デンカ株式会社製のキャリアテープ用シート「クレアレンCST2401」を用いた条件も不明瞭であるといえる。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、明確でない。また、本件特許の請求項2~9は、本件特許の請求項1に係る発明を引用する発明であることから、同様の理由により、明確ではない(特許異議申立書47頁25行~48頁19行)。 (6) 申立人が提出した証拠 甲第1号証:特開2005-096852号公報 甲第2号証:特開2010-013135号公報 甲第3号証:特開2005-281875号公報 甲第4号証:特開2019-159405号公報 甲第5号証:永田公一, 「セラミックグリーンシートにおけるサスペンジョンの3要素とその相互作用」, ニューセラミックスレター, ニューセラミックス懇話会, 2017年, 61巻, p.9-18 甲第6号証:特開平7-178335号公報 甲第7号証:特開2017-088586号公報 甲第8号証:特開2019-029589号公報 参考文献1:特開2021-138412号公報 以下、甲第○号証を「甲○」という。 2 当審の判断 (1) 甲1を主引例とする申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について 本件発明1、2、4~6について、取消理由通知で通知しなかった上記申立理由1について検討しても、以下に示すように理由がないと判断する。また、本件発明1、2、4~7について、取消理由通知で通知しなかった上記申立理由2について検討しても、以下に示すように理由がないと判断する。 ア 甲1について (ア) 甲1の記載 甲1には以下の記載がある。なお、下線は当審が付した。 「【0001】 本発明は電子部品の保管、輸送、装着に際し、電子部品を汚染から保護し、電子回路基板に実装するために整列させ、取り出せる機能を有する包装体のうち、ヒートシールされ得るカバーテープに関するものである。」 「【0014】 本発明の実施例を以下に示すがこれらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。 外層として膜厚25μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを使用し、表1及び表2に示す配合処方により、中間層を押出しラミネート法(押出し温度:280℃)により膜厚30μmに製膜し、ヒートシーラント層をグラビュアコーティング法により膜厚1μmに製膜し、図1に示した層構成のカバーテープを得た。 得られたカバーテープを5.5mm幅にスリット後、8mm幅のPET製キャリアテープとヒートシールを行い、剥離機構、剥離強度、曇度及び60℃の環境でカバーテープを保管した場合のブロッキングの状態を測定した。その特性評価結果を実施例については表1に、比較例については表2に示した。 【0015】 【表1】 [図:0001426837000001.jpg] 」 「【0017】 表1、2中の記号及び表示物名は以下のものを使用した。 PE :ポリエチレン MS :メチルメタクリレート-スチレン共重合体 SEBS :スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体 塩酢ビ :塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 アクリル :ポリメチルメタクリレート タルク :滑石 シリカ :二酸化ケイ素 ワックス :低分子量四フッ化エチレン樹脂 架橋アクリル :ポリメチルメタクリレート架橋粒子 架橋スチレン :ポリスチレン架橋粒子」 「【図1】 [図:0001426837000002.jpg] 」 (イ) 甲1に記載の発明 上記(ア)の記載を踏まえ、甲1の【0014】及び【0015】の【表1】に記載の実施例2に着目すると、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「電子回路基板に実装するために整列させ、取り出せる機能を有する包装体のうち、ヒートシールされ得るカバーテープであって(【0001】)、 外層として膜厚25μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを使用し、中間層を押出しラミネート法(押出し温度:280℃)により膜厚30μmに製膜し、ヒートシーラント層をグラビュアコーティング法により膜厚1μmに製膜した層構成のカバーテープであり(【0014】)、 ヒートシーラント層は、熱可塑性樹脂とフィラーを含み(【0015】の【表1】)、 熱可塑性樹脂は、ポリメチルメタクリレートであるアクリル100重量部であり(【0015】の【表1】及び【0017】)、 フィラーは、二酸化ケイ素であるシリカ3重量部であり(【0015】の【表1】及び【0017】)、 得られたカバーテープを5.5mm幅にスリット後、8mm幅のPET製キャリアテープとヒートシールを行い(【0014】)、 ピールオフ強度は、51cN/1mm巾であり(【0015】の【表1】)、 ヒートシール条件は160℃/1kg/cm2/0.1sec、剥離条件は180°ピール、剥離スピードは300mm/minである(【0015】の【表1】下の記載)、カバーテープ。」 イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 全体構成及び各構成について 甲1発明の「電子回路基板に実装するために整列させ、取り出せる機能を有する包装体のうち、ヒートシールされ得るカバーテープ」は、本件発明1の「電子部品包装用カバーテープ」に相当する。 また、甲1発明の「外層」、「ヒートシーラント層」、「熱可塑性樹脂」、及び「ポリメチルメタクリレート」は、それぞれ本件発明1の「基材層」、「シーラント層」、「熱可塑性樹脂」、及び「(メタ)アクリル系樹脂」に相当する。 そうすると、甲1発明の「外層として膜厚25μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを使用し、中間層を押出しラミネート法(押出し温度:280℃)により膜厚30μmに製膜し、ヒートシーラント層をグラビュアコーティング法により膜厚1μmに製膜した層構成」は、本件発明1の「基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備える」構成に相当する。 b 基材層について 甲1発明の「外層として膜厚25μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを使用し」た構成は、本件発明1の「前記基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し」ている構成に相当する。 c シーラント層について 甲1発明の「二酸化ケイ素である」「フィラー」は、本件発明1の「無機粒子」に相当する。 そうすると、甲1発明の「ヒートシーラント層は、熱可塑性樹脂とフィラーを含み」、「熱可塑性樹脂は、ポリメチルメタクリレートであるアクリル100重量部であり」、「フィラーは、二酸化ケイ素であるシリカ3重量部であ」る構成は、本件発明1の「前記シーラント層は、 熱可塑性樹脂と無機粒子を含み、 前記無機粒子の量は前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1~20質量部であり、前記熱可塑性樹脂は(メタ)アクリル系樹脂を含」む構成に相当する。 (イ) そうすると、本件発明1と甲1発明は次の点で一致し、相違する。 a 一致点1 「基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備える電子部品包装用カバーテープであって、 前記基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し、 前記シーラント層は、 熱可塑性樹脂と無機粒子を含み、 前記無機粒子の量は前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1~20質量部であり、前記熱可塑性樹脂は(メタ)アクリル系樹脂を含む、カバーテープ。」 b 相違点1 カバーテープについて、本件発明1は、「以下[条件1]により求められる剥離強度の平均値をFLowし、以下[条件2]により求められる剥離強度の平均値をFHighとしたとき、FHigh/FLowの値が1.0~2.0であり、FLowは20~80gfであり、FHighは20~160gfであるカバーテープ。 [条件1] シール条件:前記カバーテープを5.3mm幅にスリットして長尺状としたものを、シーラント層側の面で、デンカ株式会社製のキャリアテープ用シート「クリアレンCST2401」の表面と接触させ、そして、160℃、4kg/cm2、0.1秒の条件で熱シールし、複合体を得る。 剥離条件:前記複合体を、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、剥離強度を測定する。 [条件2] 熱シールの温度を200℃とした以外は、[条件1]と同じ条件。」であるのに対して、甲1発明は、FHigh及びFLowの値について記載されていない点。 (ウ) 判断 上記相違点1について検討する。 まず、相違点1は実質的なものである。 そして、甲1発明のカバーテープは、1つのヒートシール条件におけるピールオフ強度が特定されているのみであり、甲1には本件発明1に係る発明における[条件1]及び[条件2]によりFHigh及びFLowを求めることに着目する記載はない。加えて、甲1には、FHigh/FLowの値が1.0~2.0、FLowが20~80gf、FHighが20~160gfを満たすものと判断する根拠はなく、FHigh/FLowの値が1.0~2.0、FLowが20~80gf、FHighが20~160gfを満たすようにすることは当業者といえども想到することはない。また、FLow及びFHighを求めることは、甲2~甲8にも記載されていない。 よって、本件発明1の上記相違点1に係る構成は、甲1発明及び甲2~甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。 (エ) 小括 上記(ア)~(ウ)より、本件発明1は、甲1発明ではない。 また、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2、4~7について 本件発明2、4~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明である。よって、上記イと同様の理由により、本件発明2、4~6は、甲1発明でない。また、本件発明2、4~7は、甲1発明及び甲2~甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 甲2を主引例とする申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について 本件発明1、2、4~7について、取消理由通知で通知しなかった上記申立理由1及び申立人理由2について検討しても、以下に示すようにいずれも理由がないと判断する。 ア 甲2について (ア) 甲2の記載 甲2には以下の記載がある。なお、下線は当審が付した。また、「・・・」は省略を示す。 「【技術分野】 【0001】 本発明はカバーテープに関する。 【背景技術】 【0002】 近年、電子部品を保管、輸送、装着する際に、電子部品を凹状の電子部品収納部に一定ピッチで収納するキャリアテープが広く使用されている。このキャリアテープの電子部品収納部に電子部品を収納した後には、電子部品の汚染および脱落を防止するために、電子部品収納部の蓋材となるカバーテープがシールされる。」 「【0006】 前記シーラント層は、平均粒子径が0.01~20μmの略球状の粒子(以下、球状粒子ということがある)を有することが好ましく、・・・前記粒子は、・・・アンチモンドープ酸化スズ(ATO:Antimony Tin Oxide)、・・・からなる群より選択される1種以上からなることが好ましく、シリカであることが好ましい。」 「【0030】 (実施例10、比較例2) 基材層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ16μm、幅900mm、Sタイプ、ユニチカ株式会社製)に、AC剤として、EL-510(東洋モートン株式会社製)を塗布乾燥し、基材層フィルムを得た。表1の配合に従い、球状粒子をシーラント材(アクリル樹脂、LR-1065、三菱レイヨン株式会社製)100質量部に添加した塗工液を調製した。そして、前記基材層フィルムのAC剤を塗布した面に、中間層としてポリエチレン樹脂(L-705、住友化学株式会社製)を厚さ30μmで押し出し、積層体を得た。得られた積層体の中間層の面をコロナ処理した後、シーラント層として該処理面に前記塗工液を10μm塗工し、乾燥し、4μmのシーラント層を有するカバーテープを得た(製造方法2)。得られたカバーテープについて、静摩擦係数試験および巻き崩れ評価を行い、その結果を表1に示す。」 「【0033】 【表1】 [図:0001426837000003.jpg] 」 「【図1】 [図:0001426837000004.jpg] 」 (イ) 甲2に記載の発明 上記(ア)の記載を踏まえ、甲2の【0030】に記載の実施例10に着目すると、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 「キャリアテープの電子部品収納部に電子部品を収納した後には、電子部品の汚染および脱落を防止するために、電子部品収納部の蓋材となるカバーテープであって(【0001】及び【0002】)、 基材層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ16μm、幅900mm、Sタイプ、ユニチカ株式会社製)に、AC剤として、EL-510(東洋モートン株式会社製)を塗布乾燥し、基材層フィルムを得たものであり(【0030】)、 基材層フィルムのAC剤を塗布した面に、中間層としてポリエチレン樹脂(L-705、住友化学株式会社製)を厚さ30μmで押し出し、積層体を得たものであり(【0030】)、 得られた積層体の中間層の面をコロナ処理した後、シーラント層として該処理面に塗工液を10μm塗工し、乾燥し、4μmのシーラント層を有するカバーテープであって(【0030】)、 塗工液は、球状粒子をシーラント材(アクリル樹脂、LR-1065、三菱レイヨン株式会社製)100質量部に添加した塗工液であって(【0030】)、 球状粒子は、アンチモンドープ酸化スズ(ATO:Antimony Tin Oxide)であり、添加量が10質量部である(【0006】、【0033】の【表1】)、カバーテープ。」 イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 a 全体構成及び各構成について 甲2発明の「キャリアテープの電子部品収納部に電子部品を収納した後には、電子部品の汚染および脱落を防止するために、電子部品収納部の蓋材となるカバーテープ」は、本件発明1の「電子部品包装用カバーテープ」に相当する。 また、甲2発明の「基材層フィルム」及び「シーラント層」は、それぞれ本件発明1の「基材層」及び「シーラント層」に相当する。 そうすると、甲2発明の「基材層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ16μm、幅900mm、Sタイプ、ユニチカ株式会社製)に、AC剤として、EL-510(東洋モートン株式会社製)を塗布乾燥し、基材層フィルムを得たものであり」、「基材層フィルムのAC剤を塗布した面に、中間層としてポリエチレン樹脂(L-705、住友化学株式会社製)を厚さ30μmで押し出し、積層体を得たものであり」、「得られた積層体の中間層の面をコロナ処理した後、シーラント層として該処理面に塗工液を10μm塗工し、乾燥し、4μmのシーラント層を有する」構成は、本件発明1の「基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備える」構成に相当する。 b 基材層について 甲2発明の「基材層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ16μm、幅900mm、Sタイプ、ユニチカ株式会社製)に、AC剤として、EL-510(東洋モートン株式会社製)を塗布乾燥し」た構成と、本件発明1の「前記基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し」ている構成とは、「前記基材層は、二軸延伸ポリエステルフィルムからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し」ている限りにおいて一致する。 c シーラント層について 甲2発明の「シーラント層として該処理面に塗工液を10μm塗工し、乾燥し、4μmのシーラント層を有」し、「塗工液は、球状粒子をシーラント材(アクリル樹脂、LR-1065、三菱レイヨン株式会社製)100質量部に添加した塗工液であって」、「球状粒子は、アンチモンドープ酸化スズ(ATO:Antimony Tin Oxide)であり、添加量が10質量部である」る構成について、「シーラント材(アクリル樹脂、LR-1065、三菱レイヨン株式会社製)」が本件発明1の「熱可塑性樹脂」及び「(メタ)アクリル系樹脂」に相当すること、及び「アンチモンドープ酸化スズ(ATO)」が本件発明1の「無機粒子」に相当することは明らかである。 そうすると、甲2発明の「シーラント層として該処理面に塗工液を10μm塗工し、乾燥し、4μmのシーラント層を有」し、「塗工液は、球状粒子をシーラント材(アクリル樹脂、LR-1065、三菱レイヨン株式会社製)100質量部に添加した塗工液であって」、「球状粒子は、アンチモンドープ酸化スズ(ATO:Antimony Tin Oxide)であり、添加量が10質量部である」る構成は、本件発明1の「前記シーラント層は、 熱可塑性樹脂と無機粒子を含み、 前記無機粒子の量は前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1~20質量部であり、前記熱可塑性樹脂は(メタ)アクリル系樹脂を含」む構成に相当する。 (イ) 上記(ア)より、本件発明1と甲2発明は次の点で一致し、相違する。 a 一致点2 「基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備える電子部品包装用カバーテープであって、 前記基材層は、二軸延伸ポリエステルフィルムからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し、 前記シーラント層は、 熱可塑性樹脂と無機粒子を含み、 前記無機粒子の量は前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1~20質量部であり、前記熱可塑性樹脂は(メタ)アクリル系樹脂を含む、カバーテープ。」 b 相違点2及び3 [相違点2] 基材層について、本件発明1は「二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムからな」るのに対し、甲2発明は「二軸延伸ポリエステルフィルムからな」る点。 [相違点3] カバーテープについて、本件発明1は、「以下[条件1]により求められる剥離強度の平均値をFLowし、以下[条件2]により求められる剥離強度の平均値をFHighとしたとき、FHigh/FLowの値が1.0~2.0であり、FLowは20~80gfであり、FHighは20~160gfであるカバーテープ。 [条件1] シール条件:前記カバーテープを5.3mm幅にスリットして長尺状としたものを、シーラント層側の面で、デンカ株式会社製のキャリアテープ用シート「クリアレンCST2401」の表面と接触させ、そして、160℃、4kg/cm2、0.1秒の条件で熱シールし、複合体を得る。 剥離条件:前記複合体を、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、剥離強度を測定する。 [条件2] 熱シールの温度を200℃とした以外は、[条件1]と同じ条件。」であるのに対して、甲2発明は、FHigh及びFLowの値について記載されていない点。 (ウ) 判断 事案に鑑み、上記相違点3について検討する。 まず、相違点3は実質的なものである。 そして、甲2発明のカバーテープは、ヒートシールの条件や強度について何ら特定されておらず、甲2には本件発明1に係る発明における[条件1]及び[条件2]によりFLow及びFHighを求めることに着目する記載はない。加えて、甲2には、FHigh/FLowの値が1.0~2.0、FLowが20~80gf、FHighが20~160gfを満たすものと判断する根拠はなく、FHigh/FLowの値が1.0~2.0、FLowが20~80gf、FHighが20~160gfを満たすようにすることは当業者といえども想到することはない。また、FLow及びFHighを求めることは、甲1及び甲3~甲8にも記載されていない。 よって、本件発明1の上記相違点3に係る構成は、甲1発明及び甲2~甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。 (エ) 小括 上記(ア)~(ウ)より、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではない。 また、本件発明1は、甲2発明並びに甲1及び甲3~甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2、4~7について 本件発明2、4~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明である。よって、上記イと同様の理由により、本件発明2、4~6は、甲2発明ではない。また、本件発明2、4~7は、甲2発明並びに甲1及び甲3~甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 申立理由3(実施可能要件)について ア 実施可能要件についての検討 物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り,使用をすることができる程度のものでなければならない。以下検討する。 本件特許明細書には、上記第4の2(2)アに示した課題が記載されており、発明を実施するための形態が【0014】~【0055】に記載されている。また、同【0056】~【0059】には実施例が記載され、基材層、シーラント層及び無機粒子の材料や構成が示されている。そして、同【0069】の【表1】及び【0070】には、実施例1~3において、テープ切れが発生しなかったことが示されており、これらの記載を参酌することで、当業者は本件発明を実施することができる。 したがって、本件明細書の記載により、当業者がその記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1、2、4~7に係る発明に係る物を作り、使用をすることができる程度のものであるといえる。 イ 申立人の主張について (ア) 申立人は、上記1(3)アのとおり主張する。しかしながら、本件特許明細書の【0037】~【0039】には、発明を実施するための形態として、基材層を構成するポリエステル樹脂が例示されている。また、同【0057】~【0059】には、発明を実施するための形態を具体的に示した実施例として、基材層に二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡社製、エスペット(登録商標)E5100)を使用した例が記載されている。これらの記載から、基材層を構成するポリエステル樹脂を適宜選択することができ、FHigh/FLowの値が1.0~2.0を満たすカバーテープを製造することができるといえる。 (イ) 申立人は、上記1(3)イのとおり主張する。しかしながら、本件特許明細書の【0027】には、発明を実施するための形態として、シーラント層に(メタ)アクリル系樹脂を含むことが記載され、同【0028】には、シーラント層に含まれる無機粒子の例と、適切な平均粒径の範囲が記載されている。また、同【0057】~【0059】には、発明を実施するための形態を具体的に示した実施例として、シーラント層にアクリル系シーラント樹脂(DIC社製、A450A)と、平均粒径100nmの酸化アルミニウムを用いたものが記載されている。これらの記載から、シーラント層に含まれる(メタ)アクリル系樹脂と無機粒子を適宜選択することができ、FHigh/FLowの値が1.0~2.0を満たすカバーテープを製造することができるといえる。 (ウ) 申立人は、上記1(3)ウのとおり主張する。しかしながら、本件特許明細書の【0019】には、「カバーテープ1は、基材層14とシーラント層11との間に、中間層12、接着層13などを備えることができる。これらは任意の層である。」と記載されている。また、同【0031】には、「カバーテープ1が中間層12を備えることで、ヒートシールの際の押圧力が適度に平準化されて、FHigh/FLowの値を1.0~2.0に設計しやすくなる場合がある。」と記載されている。加えて、同【0034】には、「接着層13は、例えばカバーテープ1が中間層12を備える場合に、中間層12と基材層14とを貼り合せるために設けられる場合がある。」と記載されている。これらの記載を踏まえれば、中間層と接着層は、カバーテープに対して任意に含まれる層である。また、中間層、接着層を含まないことにより、FHigh/FLowの値が1.0~2.0を満たすことができないといえる技術常識は認められない。よって、本件特許明細書の記載を参酌し、中間層と接着層を備えないカバーテープにおいて、FHigh/FLowの値が1.0~2.0を満たすものを製造することができるといえる。 (エ) 申立人は、上記1(3)エのとおり主張する。しかしながら、本件特許明細書の【0044】には、発明を実施するための形態として、FHigh及びFLowの値の適当な範囲が記載されている。また、同【0069】の【表1】には、実施例として、適当なFHigh及びFLowの値を満たす実施例1~3が記載されている。これらの記載から、FHigh及びFLowの値が適当な範囲であって、FHigh/FLowの値が1.0~2.0を満たすカバーテープを製造することができるといえる。 (オ) 上記(ア)~(エ)より、実施に際して過度の試行錯誤を要するとはいえず、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであり、申立人の実施可能要件の申立理由は採用できない。 (4) 申立理由4(サポート要件)について ア サポート要件の判断 上記第4の2において示したとおり、請求項1、2、4~7の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)に適合するものである。 イ 申立人の主張について (ア) 申立人は、上記1(4)アのとおり主張する。しかしながら、上記第4の2(2)イ~エに示したとおり、本件発明の課題を解決する手段として、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」であるカバーテープを製造するために、「基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムからなる」ことが必須の構成要件であるといえる。また、「シーラント層は、熱可塑性樹脂と無機粒子を含み、前記無機粒子の量は前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1~20質量部であり、前記熱可塑性樹脂は(メタ)アクリル系樹脂を含」む構成をさらに備えることにより、本件発明の課題を解決しているといえる。 また、本件特許明細書の【0019】には、「カバーテープ1は、基材層14とシーラント層11との間に、中間層12、接着層13などを備えることができる。これらは任意の層である。」と記載されており、中間層及び接着層を含む構成は、本件発明の課題を解決する手段として、必須の構成要件であるとはいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (イ) 申立人は、上記1(4)イのとおり主張する。しかしながら、本件特許明細書の【0020】に記載されたFHigh値及びFLow値を求める条件1及び2から、FHigh/FLowの値が1.0~2.0であることが、ヒートシール条件の1つである温度が変動してもシール強度がさほど変化しないことを意味することは明らかである(なお、特許異議申立書46頁25行~47頁3行に同様の点が記載されている。)。 そうすると、同【0023】に記載されるように、少なくともヒートシール条件の1つである温度が変動してもシール強度がさほど変化しないカバーテープによって、キャリアテープ用からカバーテープを剥離する際の破断が抑えられ、本件発明の課題が解決されることは明らかである。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)より、申立人のサポート要件に係る申立理由は採用できない。 (5) 申立理由5(明確性要件)について ア 明確性要件についての検討 発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。以下検討する。 本件発明1、2、4~7について、特許請求の範囲の記載は明確である。そして、特許請求の範囲の記載によって、ある具体的な物が本件発明1、2、4~7の範囲に入るか否かを当業者は理解できるものである。 よって、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 イ 申立人の主張について 申立人は、上記1(5)ウのとおり主張する。しかしながら、本件発明1の「デンカ株式会社製のキャリアテープ用シート「クリアレンCST2401」」という記載は、商品名を用いており、この商品名及び商品は、例えば、特開2016-068987号公報、特開2011-063662号公報、特開2003-181999号公報に示されるように、本件特許の出願前において周知であることから、当業者が理解できる記載であったといえる。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 なお、商標は、一定の限られた商品にだけ使用されるとは限らないため、商品名ではなく、商標名で記載されている場合、常に一定の品質、組成、構成などのもののみ付されていたことが明瞭でないと解され得る。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項1、2、4~7に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701009

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