特許異議申立
2022-701031
積層体及び該積層体で構成される袋
- 審判番号
- 2022-701031
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-011906
- 登録番号
- 7056174
- 請求日
- 2022年10月19日
- 審決日
- 2024年03月26日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】堀田 幸裕
- 【権利者代理人】岡村 和郎
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】永井 浩之
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【権利者代理人】佐藤 泰和
- 【権利者代理人】朝倉 悟
- 【異議申立人】柏木 香陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-ZDA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7056174号発明「積層体及び該積層体で構成される袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7056174号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6、9~13〕、〔7、8、14~17、19〕、18について訂正することを認める。
特許第7056174号の請求項1~6、9~13、18に係る特許を取り消す。
特許第7056174号の請求項7、8、14~17、19に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7056174号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、平成30年1月26日(優先権主張 平成29年3月29日)に出願され、令和4年4月11日に特許権の設定登録がされ、令和4年4月19日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~13に係る特許に対し、令和4年10月19日に特許異議申立人柏木香陽子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。それ以降の経緯は以下のとおりである。
令和5年 1月17日付け:取消理由通知書
令和5年 3月 7日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 4月14日 :申立人による意見書の提出
令和5年 7月28日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 9月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年11月 9日 :申立人による意見書の提出
なお、令和5年3月7日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正について
1 訂正の内容
令和5年9月25日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を以下「本件訂正」という。)は、「特許第7056174号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなる。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に「前記シーラント層の厚みは、70μm以上である、」とあるのを、
「前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンを含み、
前記シーラント層における前記直鎖状低密度ポリエチレンの重量%は、前記シーラント層における前記低密度ポリエチレンの重量%よりも大きく、
前記シーラント層の厚みは、70μm以上である、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~6、9~13も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項5に「前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレンを含む、」とあるのを、
「前記シーラント層の前記直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.915g/cm3以上且つ0.945g/cm3以下である、」に訂正する。
(請求項5の記載を引用する請求項6、9~13も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項7に「請求項1乃至6のいずれか一項に記載の積層体。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、引用形式を解消して独立形式に改める。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項8に「請求項1乃至7のいずれか一項に記載の積層体。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、引用形式を解消して独立形式に改める。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項9に「請求項1乃至8のいずれか一項に記載の積層体。」とあるうち、請求項1~6を引用するものについて「請求項1乃至6のいずれか一項に記載の積層体。」に訂正するとともに、
請求項7、8を引用するものについて「請求項7乃至8のいずれか一項に記載の積層体。」と記載し、新たに請求項14とする。
(請求項9の記載を引用する請求項11~13も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項10に「請求項1乃至8のいずれか一項に記載の積層体。」とあるうち、請求項1~6を引用するものについて「請求項1乃至6のいずれか一項に記載の積層体。」に訂正するとともに、
請求項7、8を引用するものについて「請求項7乃至8のいずれか一項に記載の積層体。」と記載し、新たに請求項15とする。
(請求項10の記載を引用する請求項11~13も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項11に「請求項1乃至10のいずれか一項に記載の積層体。」とあるうち、請求項1~6、9、10を引用するものについて「請求項1乃至6及び9乃至10のいずれか一項に記載の積層体。」に訂正するとともに、
請求項7、8、及び、請求項7、8を引用する請求項9、10について「請求項7乃至8及び14乃至15のいずれか一項に記載の積層体。」と記載し、新たに請求項16とする。
(請求項11の記載を引用する請求項13も同様に訂正する。)
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項12に「請求項1乃至10のいずれか一項に記載の積層体。」とあるうち、請求項1~6、9、10を引用するものについて「請求項1乃至6及び9乃至10のいずれか一項に記載の積層体。」に訂正するとともに、
請求項7、8、及び、請求項7、8を引用する請求項9、10について「請求項7乃至8及び14乃至15のいずれか一項に記載の積層体。」と記載し、新たに請求項17とする。
(請求項12の記載を引用する請求項13も同様に訂正する。)
(9)訂正事項9
ア 訂正事項9-1
本件訂正前の請求項13に「請求項1乃至12のいずれか一項に記載の積層体」とあるうち、請求項2~6、9~12を引用するものについて「請求項2乃至6及び9乃至12のいずれか一項に記載の積層体」に訂正するとともに、
請求項7、8、請求項7、8を引用する請求項9~12について、「請求項7乃至8及び14乃至17のいずれか一項に記載の積層体」と記載し、新たに請求項19とする。
イ 訂正事項9-2
本件訂正前の請求項13に「請求項1乃至12のいずれか一項に記載の積層体」とあるうち、請求項1を引用するものについて引用形式を解消して独立形式に改め、さらに、請求項13に「本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有する袋であって、」とあるのを、「本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有し、ボトルへ詰め替えられる液体又は紛体を収容する袋であって、」に訂正して、新たに請求項18とする。
(10)一群の請求項及び別の訂正単位とする求めについて
ア 本件訂正前の請求項1~13は、請求項2~13が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~19〕について請求されている。
イ 特許権者は、本件訂正後の請求項7、8、14~17に係る訂正、及び本件訂正後の請求項18に係る訂正について、本件訂正が認められたならば、本件訂正前の一群の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載のシーラント層の材料を限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0113】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に記載のシーラント層が含む直鎖状低密度ポリエチレンの密度を限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0112】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1~6を引用する請求項7のうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改めるものであるから、他の請求項を引用しないものとすることを目的するものであるとともに、実質的に引用する請求項の数を狭めるものであるから特許請求の範囲の減縮であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、本件訂正前の請求項1~7を引用する請求項8のうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改めるものであるから、他の請求項を引用しないものとすることを目的するものであるとともに、実質的に引用する請求項の数を狭めるものであるから特許請求の範囲の減縮であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(5)訂正事項5~8
訂正事項5~8は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(6)訂正事項9
訂正事項9-1は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
訂正事項9-2は、本件訂正前の請求項1~12を引用する請求項13のうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改めるものであるとともに、「本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有し、ボトルへ詰め替えられる液体又は紛体を収容する袋であって、」との記載によりその収容物を限定するものであるから、他の請求項を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0024】、【0141】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
3 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6、9~13〕、〔7、8、14~17、19〕、18について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2の3のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~19に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
外面及び内面を含む積層体であって、
第1基材、第1接着剤層、第2基材、第2接着剤層、及びシーラント層をこの順で少なくとも備え、
前記第1基材が、前記外面を構成しており、
前記シーラント層が、前記内面を構成しており、
前記第1基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレート又は51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第1基材が51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第1基材が51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含み、
前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンを含み、
前記シーラント層における前記直鎖状低密度ポリエチレンの重量%は、前記シーラント層における前記低密度ポリエチレンの重量%よりも大きく、
前記シーラント層の厚みは、70μm以上である、積層体。
【請求項2】
前記第1基材と前記第2基材との間又は前記第2基材と前記シーラント層との間の少なくともいずれかに位置する蒸着層を更に備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記蒸着層上に位置するガスバリア性塗布膜を更に備える、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第1基材と前記第2基材との間に位置する印刷層を更に備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記シーラント層の前記直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.915g/cm3以上且つ0.945g/cm3以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記積層体の突き刺し強度が13N以上である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
外面及び内面を含む積層体であって、
第1基材、第1接着剤層、第2基材、第2接着剤層、及びシーラント層をこの順で少なくとも備え、
前記第1基材が、前記外面を構成しており、
前記シーラント層が、前記内面を構成しており、
前記第1基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレート又は51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第1基材が51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第1基材が51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含み、
前記シーラント層の厚みは、70μm以上であり、
前記積層体を2つ準備し、温度40℃及び湿度90%の高温恒温槽において48時間にわたって保管した後に測定される、一方の前記積層体の外面の、他方の前記積層体の外面に対する静摩擦係数及び動摩擦係数が、0.24以下である、積層体。
【請求項8】
外面及び内面を含む積層体であって、
第1基材、第1接着剤層、第2基材、第2接着剤層、及びシーラント層をこの順で少なくとも備え、
前記第1基材が、前記外面を構成しており、
前記シーラント層が、前記内面を構成しており、
前記第1基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレート又は51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第1基材が51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第1基材が51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含み、
前記シーラント層の厚みは、70μm以上であり、
前記積層体を2つ準備し、温度20~30℃及び湿度40~60%の環境において少なくとも24時間にわたって保管した後に測定される、一方の前記積層体の外面の、他方の前記積層体の外面に対する静摩擦係数及び動摩擦係数を常温静摩擦係数及び常温動摩擦係数と称し、
常温静摩擦係数及び常温動摩擦係数の測定後、2つの前記積層体を温度40℃及び湿度90%の高温恒温槽において48時間にわたって保管した後に測定される、一方の前記積層体の外面の、他方の前記積層体の外面に対する静摩擦係数及び動摩擦係数を高温高湿静摩擦係数及び高温高湿動摩擦係数と称する場合、
前記高温高湿静摩擦係数から前記常温静摩擦係数を引いた値が0.03以下であり、且つ、前記高温高湿動摩擦係数から前記常温動摩擦係数を引いた値が0.03以下である、積層体。
【請求項9】
前記第1基材及び前記第2基材のうちポリブチレテレフタレートを含む方の基材は、10層以上を含む多層構造部を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
前記第1基材及び前記第2基材のうちポリブチレテレフタレートを含む方の基材は、単層構造からなり、且つ、ポリブチレテレフタレートのIV値が1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
前記第1基材が、ポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材が、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1乃至6及び9乃至10のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項12】
前記第1基材が、ポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材が、ポリブチレンテレフタレートを含む、請求項1乃至6及び9乃至10のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項13】
本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有する袋であって、
請求項2乃至6及び9乃至12のいずれか一項に記載の積層体と、
前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備える、袋。
【請求項14】
前記第1基材及び前記第2基材のうちポリブチレテレフタレートを含む方の基材は、10層以上を含む多層構造部を有する、請求項7乃至8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項15】
前記第1基材及び前記第2基材のうちポリブチレテレフタレートを含む方の基材は、単層構造からなり、且つ、ポリブチレテレフタレートのIV値が1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下である、請求項7乃至8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項16】
前記第1基材が、ポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材が、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項7乃至8及び14乃至15のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項17】
前記第1基材が、ポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材が、ポリブチレンテレフタレートを含む、請求項7乃至8及び14乃至15のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項18】
本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有し、ボトルへ詰め替えられる液体又は紛体を収容する袋であって、
外面及び内面を含む積層体と、
前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備え、
前記積層体は、第1基材、第1接着剤層、第2基材、第2接着剤層、及びシーラント層をこの順で少なくとも備え、
前記第1基材が、前記外面を構成しており、
前記シーラント層が、前記内面を構成しており、
前記第1基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレート又は51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第1基材が51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第1基材が51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含み、
前記シーラント層の厚みは、70μm以上である、袋。
【請求項19】
本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有する袋であって、
請求項7乃至8及び14乃至17のいずれか一項に記載の積層体と、
前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備える、袋。」
第4 取消理由通知(決定の予告)について
1 取消理由通知(決定の予告)の概要
理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~6、9~13に係る発明は引用文献1に記載された発明に基いて、同請求項1~6、9、10、12、13に係る発明は引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。
[引用文献等一覧]
引用文献1: 特開2012-214248号公報(甲第1号証。以下、他
の甲号証を含め「甲1」等という。)
引用文献2: 特開2006-143223号公報(甲2)
引用文献3: 特開2014-151945号公報(甲3)
引用文献4: 特開2013-154605号公報(甲4)
引用文献5: 特開2015-224062号公報(甲5)
引用文献6: 永江修一、「二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム
(開発品)」、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、
2016年3月15日発行、第44巻第3号通巻第516号
、p.108~111(甲6)
引用文献7: 永江修一、「新規ポリエステルフィルム(OPBT)の包材
としての特徴及びその可能性」、第53回全日本包装技術研
究大会大会予稿集、公益社団法人日本包装技術協会、201
5年12月2日(受入日)、p.157-161(甲7)
引用文献8 :特開2001-96683号公報(甲8)
引用文献9 :再公表特許第2015/072163号(当審が職権で提示
した文献)
引用文献13:特開2001-247133号公報(申立人が令和5年11
月9日提出の意見書に添付した文献)
引用文献14:特開2010-173689号公報(同上)
2 当審の判断
(1)引用文献の記載事項、発明
ア 引用文献1
引用文献1には、次の記載がある(なお、下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。また、「・・・」は省略を示す。以下同様。)。
「【請求項1】
少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂、またはポリブチレンテレフタレート樹脂に対してポリエチレンテレフタレート樹脂を30重量%以下の範囲で配合したポリエステル系樹脂組成物のいずれかからなる二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムを含む積層体からなる包材であって、135℃×3.5kg/cm2×60分間の条件下でレトルト殺菌処理した際の引張破断強度の維持率が80%以上であることを特徴とするレトルト用包材。
・・・
【請求項5】
前記レトルト用包材が、外側から基材層-バリア層-シーラント層、または基材層-バリア層-バリア材補強層-シーラント層のいずれかからなり、該基材層および/またはバリア材補強層として、前記二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムを用いることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のレトルト用包材。
【請求項6】
前記基材層および/またはバリア材補強層が二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムを含む複数のフィルムで構成されていることを特徴とする請求項5に記載のレトルト用包材。
【請求項7】
前記基材層またはバリア材補強層の少なくともいずれか一方の面に、無機酸化物からなる蒸着膜および/またはバリア樹脂からなるコーティング層が設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載のレトルト用包材。
【請求項8】
バリア層としてアルミニウム箔を用いることを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載のレトルト用包材。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のレトルト用包材を製袋加工して得られるレトルト用袋。」
「【0001】
本発明は、耐レトルト性に優れた包材、さらに詳しくは、シートの薄膜化が可能であり、130℃以上の過酷なレトルト条件においても使用可能な耐圧縮性、耐衝撃性、および耐熱水性に優れた二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系(以下、OPBT系)フィルムを含むレトルト用包材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、気密性が高く、微生物や光、酸素、水分等による内容物の劣化を防ぐために、各種プラスチックフィルム、紙、金属箔等の基材が任意に積層された包装用材料が開発されてきた。一般に、これらの包材の最内層にはヒートシール層が設けられており、それらを重ね合わせてシールすることにより種々の形態に製袋される。次いで開口部から、例えば飲食品、医薬品、化粧品、洗剤、化学品、雑貨品等の内容物を充填、ヒートシールして完全密閉することにより、最終形態の包装製品が完成する。・・・
【0003】一方、レトルト用包材に必要な基本的な性能としては、安全性、無味無臭、耐熱水性、遮光性、保香性、耐変色性、種々のガスバリア性、耐圧、衝撃、突刺し等の強度、耐屈曲性、および密閉性等が挙げられ、レトルト処理の条件や内容物の種類等に応じて最適なラミネート構成が設計される。例えば、耐熱水性やコシ(自立性)、光沢や印刷適性、保香性を付与するには二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、OPET)フィルム、耐衝撃性や耐ピンホール性、耐突刺し性を付与するには二軸延伸ナイロン(以下、ONy)フィルム、光、酸素、水蒸気を遮断するにはアルミニウム箔(以下、AL)、あるいは基材層表面に蒸着膜やコーティング層を設ける、ヒートシール性を付与するにはレトルトタイプの未延伸ポリプロピレン(以下、CPP)やポリエチレンフィルム等の基材が適宜選定され、これらの基材をドライラミネート等で積層することによりレトルト用包材が得られる。
【0004】
そのレトルト用包材のラミネート構成に関して、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4に一例が提案されているように、外側からOPET//ONy//CPP、OPET//AL//CPP、OPET//ONy//AL//CPP、OPET//AL//ONy//CPP(//はドライラミネートを意味する)等が代表的な構成として挙げられる。また、特許文献5、特許文献6、特許文献7、および特許文献8には、OPET原料、あるいはONy原料の改質により耐レトルト性に優れた基材層も提案されている。」
「【0010】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(OPBT系フィルムの原料) OPBT系フィルムに用いられる主原料は、グリコール成分としての1,4-ブタンジオール、二塩基酸成分としてのテレフタル酸を成分としたホモタイプが好ましい。最適な機械的強度を付与するためには、ポリブチレンテレフタレート樹脂のうち、融点200~250℃、IV値1.10~1.35dl/gの範囲のものが好ましく、さらには融点215~225℃、IV値1.15~1.30dl/gの範囲のものが特に好ましい。一方、ポリエーテル等種々のポリマー成分をランダムまたはブロック共重合したタイプは、特に機械的強度の低下が顕著であるため、十分な耐圧縮性、耐衝撃性が得られないため好ましくない。
【0011】
また、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂には、ポリエチレンテレフタレート樹脂をポリブチレンテレフタレート100重量部に対して0~30重量部の範囲で適宜配合することが可能であり、ポリエチレンテレフタレート樹脂を配合することによりポリブチレンテレフタレート樹脂の結晶化を適度に抑制することが可能となり、延伸加工性が格段に向上する。・・・」
「【0020】
(レトルト用包材の構成)OPBT系フィルムを含むレトルト用包材は、OPBT系フィルムのいずれか一方、あるいは両方の面に、1層あるいは2層以上他のフィルム等を積層して構成される。具体的には、外側から基材層-バリア層-シーラント層の3層構成、あるいは基材層-バリア層-バリア材補強層-シーラント層の4層構成等が挙げられ、基材層および/またはバリア材補強層は、OPBT系フィルム単独、もしくはOPBT系フィルムとONyフィルム、OPETフィルム等の他フィルム等と併用して構成することが出来る。バリア層としては、高い防湿性を付与するためのアルミニウム箔、またはアルミニウム-鉄系合金の軟質材、ステンレス箔、および銅箔等が使用可能だが、軽量化やコスト面を考慮するとアルミニウム箔がもっとも好ましい。金属箔を使用しない場合や高度なバリア性が要求される場合は、基材層の少なくともいずれか一方の面に、無機酸化物からなる蒸着膜(以下、VM)および/またはポリ塩化ビニリデン(以下、Kコート)等のバリア樹脂からなるコーティング層を設けてバリア性を付与する方法でも何ら差し支えない。シーラント層として未延伸ポリエチレン系フィルム、未延伸ポリプロピレン系フィルム、未延伸ポリ塩化ビニルフィルム、エチレン-酢酸ビニルフィルム、アイオノマーフィルム、その他エチレンコポリマー系フィルムが挙げられるが、耐熱性を付与するために、レトルトタイプの各種シーラントを用いることが好ましい。代表的なラミネート構成としては、例えば、外側からOPBT系//AL//シーラント、OPET//OPBT系//AL//シーラント、OPBT系//OPET//AL//シーラント、OPBT系//OPBT系//AL//シーラント、OPBT系//ONy//AL//シーラント、OPBT系//AL//OPBT系//シーラント、OPBT系//AL//ONy//シーラント、OPBT系//AL//OPET//シーラント、OPET//AL//OPBT系//シーラント(基材層および/またはバリア材補強層はVMタイプ、またはKコート等のバリアコートタイプを含む)等が挙げられる。従来、一般的であった基材層および/またはバリア材補強層としてOPETフィルム、ONyフィルム単独、またはそれらを併用する方法は、基材自体に一長一短があるため、使用される用途や条件が限定される場合があった。一方、基材層および/またはバリア材補強層として、OPBT系フィルム単独、または・・・、OPETフィルムを併用することにより、レトルト用包材全体の薄膜化が可能となり、また、ラミネート構成のバリエーションが増えるだけでなく、従来のONyフィルム、またはOPETフィルムの組み合わせのみでは成し得なかった高いレベルの耐圧強度、耐衝撃性、耐突刺し性等を達成することが可能となる。」
「【0022】
本発明のOPBT系フィルムを含むレトルト用包材には、OPBT系フィルム表面、あるいはその他基材表面にグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷といった既知の印刷方法により印刷を施して用いることも出来る。
【実施例】
【0023】
以下に実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。
<実施例1> (OPBT系フィルムの製造)
・・・
【0026】
(レトルト用包材の作成方法、およびレトルト殺菌処理の際の引張破断強度の維持率の評価方法)得られたOPBT系フィルムの外側にアルミニウム箔(厚み9μm)を、内側にハイレトルトタイプの未延伸ポリプロピレンフィルム〔FRTK-G、フタムラ化学株式会社製、厚み60μm〕をそれぞれ配置し、ドライラミネート(ドライ塗布量4.0g/m2)することによりレトルト用包材を得た。なお、ドライラミネート用の接着剤としては、東洋モートン(株)TM-K55/東洋モートン(株)CAT-10(配合比100/8)を用いた。・・・」
以上の記載を総合し、特に請求項1、5、7、8に着目すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1-1」という。)が記載されている。
[引用発明1-1]
「ポリブチレンテレフタレート樹脂に対してポリエチレンテレフタレート樹脂を30重量%以下の範囲で配合したポリエステル系樹脂組成物からなる二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムを含む積層体からなる包材であって、135℃×3.5kg/cm2×60分間の条件下でレトルト殺菌処理した際の引張破断強度の維持率が80%以上であるレトルト用包材であって、
前記レトルト用包材が、外側から基材層-バリア層-バリア材補強層-シーラント層からなり、該基材層またはバリア材補強層として、前記二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムを用いており、
前記基材層またはバリア材補強層の少なくともいずれか一方の面に、無機酸化物からなる蒸着膜が設けられており、
バリア層としてアルミニウム箔を用いている、レトルト用包材。」
同様に、特に請求項1、5、7~9に着目すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1-2」という。)が記載されている。
[引用発明1-2]
「ポリブチレンテレフタレート樹脂に対してポリエチレンテレフタレート樹脂を30重量%以下の範囲で配合したポリエステル系樹脂組成物からなる二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムを含む積層体からなり、135℃×3.5kg/cm2×60分間の条件下でレトルト殺菌処理した際の引張破断強度の維持率が80%以上であり、
外側から基材層-バリア層-バリア材補強層-シーラント層からなり、該基材層またはバリア材補強層として、前記二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムを用いており、
前記基材層またはバリア材補強層の少なくともいずれか一方の面に、無機酸化物からなる蒸着膜が設けられており、
バリア層としてアルミニウム箔を用いているレトルト用包材を製袋加工して得られるレトルト用袋。」
イ 引用文献2
引用文献2には、次の記載がある
「【0001】
本発明は、内容物を収納して電子レンジにて加熱し内容物を調理する際に、袋が部分的に強く加熱されることがあっても、袋を構成する積層体が溶融して穴があくのを防止した電子レンジ加熱用包装袋に関する。」
「【0009】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋とすることにより、ポリブチレンテレフタレート系フィルムは耐熱性、耐ピンホール性、耐水性に優れるとともに、水分を吸収しにくいフィルムであるので、・・・」
「【0014】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋に使用する第1実施形態の積層体10の構成は、図1に示すように、外面から順に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11と接着層14とポリブチレンテレフタレート系フィルム12と接着層14と熱接着性樹脂層13が積層された構成からなる。・・・」
「【0016】
本発明の第1、第2実施形態の積層体を使用して作製される電子レンジ加熱用包装袋の1実施例は、図3に示すように、表裏2枚の積層体10,10’を重ね合わせて周縁を周縁熱接着部2にて熱接着して形成され、・・・包装袋の周縁熱接着部2に開封用の切欠6が形成された構成である。」
「【0021】
熱接着性樹脂層としては、未延伸ポリプロピレン(CPP)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ホリエチレン(HDPE)等の耐熱性の優れた樹脂が使用できる。・・・」
「【実施例1】
【0022】
厚さ12μmのシリカ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム〔テックバリアTZ(三菱樹脂)〕と15μmの2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム〔ノバデュラン5505S(三菱エンジニアリングプラスチック)〕と60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを2液型ウレタン系接着剤にてドライラミネートして3層構成の積層体を作製し、この積層体を使用して図3に示す形状のパウチ(長さ170mm、幅120mm、襞高さ25mm)を作製し、このパウチにドミグラソースハンバーグを100g充填し、500W電子レンジで2分間加熱した結果、n=10で10袋とも穴あきは発生しなかった。」
「【図1】
[図:0001413279000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001413279000002.jpg]
」
以上の記載を総合し、第1実施形態の積層体10について着目すると、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2-1」という。)が記載されている。
[引用発明2-1]
「外面から順に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11と接着層14とポリブチレンテレフタレート系フィルム12と接着層14と熱接着性樹脂層13が積層された、積層体10。」
同様に、第1実施形態の積層体10を使用して作製される電子レンジ加熱用包装袋の第1実施例について着目すると、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2-2」という。)が記載されている。
[引用発明2-2]
「外面から順に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11と接着層14とポリブチレンテレフタレート系フィルム12と接着層14と熱接着性樹脂層13が積層された積層体10を表裏2枚重ね合わせて周縁を周縁熱接着部2にて熱接着して形成され、周縁熱接着部2に開封用の切欠6が形成された、電子レンジ加熱用包装袋。」
ウ 引用文献3
引用文献3には、次の記載がある
「【請求項1】
ポリエステルフィルム(A)、バリア層を有するポリエステルフィルム(B)、直線引裂き性ポリエステルフィルム(C)、ヒートシール性を有するポリオレフィンフィルム(D)の順に積層して成る積層フィルムから成ることを特徴とする電子レンジ加熱用包装材。
【請求項2】
前記ポリエステルフィルム(A)がポリエチレンテレフタレートフィルム、前記バリア層を有するポリエステルフィルム(B)が無機蒸着層又はバリア樹脂コーティング層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム、前記直線引裂き性ポリエステルフィルム(C)が直線引裂き性ポリエチレンテレフタレートフィルム、前記ヒートシール性を有するポリオレフィンフィルム(D)がポリプロピレンである請求項1記載の電子レンジ加熱用包装材。
・・・
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の電子レンジ加熱用包装材から形成されて成る電子レンジ加熱用包装袋。」
「【0001】
本発明は、電子レンジ加熱用包装材に関するものであり、より詳細には、高出力の電子レンジにも対応可能な優れた耐熱性を有すると共に、易開封性にも優れた電子レンジ加熱用包装材、及びこの包装材から成る電子レンジ加熱用包装袋、この電子レンジ加熱用包装袋に食品を充填密封して成る電子レンジ加熱用包装食品に関する。」
「【0018】
[ヒートシール性を有するポリオレフィンフィルム(D)]
本発明の包装材の最内層となるヒートシール性ポリオレフィンフィルムとしては、従来公知のものを使用することができる。
このようなポリオレフィンとしては、例えば低-、中-或いは高-密度のポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、線状低密度ポリエチレン、・・・等が挙げられる。・・・
【0019】
[その他の層]
本発明の包装材においては、上記(A)~(D)のフィルムを必須の構成要件とするものであるが、本発明の包装材が有する優れた耐熱性及び易引裂き性を損なわない限り、他の層を具備することができる。
本発明の包装材においては、印刷層を形成することができるが、図1に示したとおり、印刷層はポリエステルフィルム(A)のポリエステルフィルム(B)と接する面に形成することが特に好適である。これにより、印刷層をポリエステルフィルム(A)で保護することができる。」
エ 引用文献4
引用文献4には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、ボイル・レトルト処理用の包装材料及びそれよりなるパウチに関し、更に詳しくは、例えば食品、薬品、飲料等、特にボイル・レトルト処理を施す内容物の包装に好適に利用可能な包装材料及びそれよりなるパウチに関する。」
「【0087】
本発明において、直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンモノマーを、低圧法、スラリー法、溶液法、気相法等の重合方法を用いて重合することにより得られる密度0.910~0.925g/cm3のリニアポリエチレンである。・・・」
「【0101】
[実施例1]
透明バリア層として、透明バリア層の基材層としてPET・NY・PETの3層構成の多層延伸フィルム(グンゼ(株)製)を用い、化学蒸着法により無機酸化シリカ蒸着膜を形成し、更にその上に、バリア性を有する有機無機バリア層を形成された透明バリア層に、接着剤層を介してLLDPEを有する。最終的な層構成は、透明蒸着(PET1.5μ・NY12μ・PET1.5μ)15μ/接着剤層3μ/LLDPE70μとなった。接着剤はロックペイント社製ポリエステル系接着剤RU004/H-1を使用した。シーラントLLDPEはオカモト株式会社製LR-124を使用した。」
オ 引用文献5
引用文献5には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、アルミニウム箔を使用しないアルミレスパウチに関するものであり、より詳細には、白色度が高いと共に遮光性に優れ、レトルト殺菌も可能なパウチに関する。」
「【0019】
(ヒートシール性樹脂層)
・・・
ヒートシール性樹脂層の厚みは、50~100μmの範囲にあることが好適である。」
「【0030】
(実施例1)
膜厚12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材樹脂フィルムとし、この基材樹脂層上に、表1に示す白インキを用い、版深40μmのベタ版によりグラビア印刷を行って、7.8μmの厚みの白インキ層を形成した。 次いで、白色インキ層の形成に用いた白色インキ100重量部に対し、市販の墨インキ3重量部、黄色インキ2重量部を混合して、グレーインキを調製した。このグレーインキを用い、白色インキ層上にグラビア印刷により2.7μmのグレーインキ層を形成した。
次いで、バリア性樹脂層として、膜厚15μmのナイロンフィルムを用い、ポリウレタン系接着剤を用いて、遮光性印刷層を形成した基材樹脂フィルムとドライラミネートした後、ポリウレタン系接着剤を用いて、膜厚70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムから成るヒートシール性樹脂層を、前記ナイロンフィルムから成るバリア性樹脂層とドライラミネートして、積層体を作成した。」
カ 引用文献6
引用文献6には、次の記載がある。
「3.1 食品を中心とした軟包装用途
図6にボイル・レトルトパウチへの用途例を示す。・・・。図7に基材//AL//レトCPP構成品のレトルト処理前後の機械的強度、ゲルボフレックスの変化を示す。フィルム単膜と同様に、ラミネート構成品においても、優れた耐レトルト性、耐ピンホール性を有する。」(109ページ右欄本文下から9行~111ページ左欄本文3行)
「
[図:0001413279000003.jpg]
」(110ページ図6)
「
[図:0001413279000004.jpg]
」(110ページ図7)
キ 引用文献7
引用文献7には、次の記載がある。
「2-2.OPBTのフィルム物性と特徴
・・・
OPBTはその機械的強度について非常にバランスの取れたフィルムであり、特に耐ピンホール性に優れている。図2,3,4にフィルム単膜、または包材として使用される際のラミネート構成での物性データを示した。」(158ページ本文下から3行~159ページ3行)
「
[図:0001413279000005.jpg]
」(159ページ図4)
「3-1.食品を中心とした軟包装用途
図5にボイル・レトルトパウチへの用途例を示す。現在レトルト向け基材層としては、耐熱水性と耐ピンホール性の必要性から、OPETとONYを張り合せる構成が一般的である。一方、OPBTはその両方の特性を兼ね備えていることから、例えばOPET(12μ)//ONY(15μ)→OPBT(15μ)に変更することで包装材料の減量化、ラミネート工程の削減、及びコストダウンが期待できる。」(160ページ6~13行)
「
[図:0001413279000006.jpg]
」(160ページ図5)
ク 引用文献8
引用文献8には、次の記載がある。
「【0001】本発明は、多層フィルム及びそれを成形しスパウト(注出口栓)を設けたスパウト付きガゼット袋に関する。」
「【0016】第1層の透明蒸着ポリエステルフィルムは、アルミナ、シリカ等を蒸着した透明なポリエステルフィルムで、高バリア性と印刷加工適性の両方を兼ね備えている。第2層のナイロンフィルムは、強度を保持するためのものである。第3層のポリエチレンフィルムは、熱シール性、強度を保持するためのものである。
・・・
【0019】本発明のスパウト付きガゼット袋は、本発明の多層フィルムを成形してスパウトを設けたことを特徴としており、その形状は特に限定されるものではないが、より少量の多層フィルムを成形して所定の内容量を確保できる形状が好ましい。従って、本発明のスパウト付きガゼット袋は、図4に示す形状よりも、図3に示す形状の方がより好ましい。
【0020】
【実施例】以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0021】いずれの実施例及び比較例においても、図3に示すような形状のスパウト付きガゼット袋を作って、その自立性及び強度を三段階で評価した。
【0022】<実施例1>正面部及び側面部に用いる多層フィルムは、第1層が厚さ12μmの透明蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、第2層が厚さ15μmのNY(ナイロン)フィルム、第3層が厚さ90μmのLLDPE(直鎖低密度ポリエチレン)フィルムで構成されている図1に示す本発明の多層フィルムである。・・・」
「【図1】
[図:0001413279000007.jpg]
」
「【図3】
[図:0001413279000008.jpg]
」
(2)引用文献1を主引例とする進歩性に係る取消理由について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1-1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
各層の対応について、引用発明1-1の「基材層」、「バリア材補強層」、「シーラント層」及び「レトルト用包材」はそれぞれ、本件発明1の「第1基材」、「第2基材」、「シーラント層」及び「積層体」に相当する。
引用発明1-1に係る包材は、「外側から基材層-バリア層-バリア材補強層-シーラント層からな」るものであり、本件発明1の「外面及び内面を含む積層体であって、」「前記第1基材が、前記外面を構成しており、」「前記シーラント層が、前記内面を構成して」いることに相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明1-1は、以下の点で一致し、相違する。
[一致点1-1]
「外面及び内面を含む積層体であって、
第1基材、第2基材、及びシーラント層をこの順で少なくとも備え
前記第1基材が、前記外面を構成しており、
前記シーラント層が、前記内面を構成している、積層体。」
[相違点1-1]
本件発明1では、「第1基材」と「第2基材」の間、及び、「第2基材層」と「シーラント層」の間にそれぞれ「第1接着剤層」及び「第2接着剤層」を備えるのに対し、引用発明1-1では、接着剤層を備えるか不明な点。
[相違点1-2]
第1基材と第2基材について、本件発明1では、「前記第1基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレート又は51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、前記第1基材が51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、前記第1基材が51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含」むのに対し、
引用発明1-1では、「該基材層またはバリア材補強層として」「ポリブチレンテレフタレート樹脂に対してポリエチレンテレフタレート樹脂を30重量%以下の範囲で配合したポリエステル系樹脂組成物からなる二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム」「を用いて」いる点。
[相違点1-3]
シーラント層の厚みが、本件発明1では、「70μm以上である」のに対し、引用発明1-1では不明な点。
[相違点1-4]
シーラント層について、本件発明1では、「前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンを含み、
前記シーラント層における前記直鎖状低密度ポリエチレンの重量%は、前記シーラント層における前記低密度ポリエチレンの重量%よりも大き」いのに対し、引用発明1-1では、材質が不明な点。
(イ)判断
上記各相違点について検討する。
[相違点1-1]について
引用文献1の「これらの基材をドライラミネート等で積層することによりレトルト用包材が得られる。」(【0003】)及び「ドライラミネート用の接着剤としては、東洋モートン(株)TM-K55/東洋モートン(株)CAT-10(配合比100/8)を用いた。」(【0026】)との記載、並びに、「(//はドライラミネートを意味する)」(【0004】)及び「OPBT系フィルムを含むレトルト用包材は、・・・。具体的には、・・・基材層-バリア層-バリア材補強層-シーラント層の4層構成等が挙げられ、・・・。代表的なラミネート構成としては、例えば、外側からOPBT系//AL//シーラント、OPET//OPBT系//AL//シーラント、OPBT系//OPET//AL//シーラント・・・等が挙げられる。」(【0020】)との記載を総合すると、引用文献1には、各層を構成するフィルムをドライラミネート用接着剤で積層することが記載されている。
そうすると、引用発明1-1における「基材層」と「バリア材補強層」の間、及び、「バリア材補強層」と「シーラント層」の間には、ドライラミネート用接着剤層が備えられていることは明らかであるから、相違点1-1は実質的には相違点ではない。
また、接着剤層を備えるものとして構成することは設計事項である。
[相違点1-2]について
引用文献1の「二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系(以下、OPBT系)フィルム」(【0001】)、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、OPET)フィルム」(【0003】)との記載を参酌すると、「OPBT系」は引用発明1-1の「二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム」に対応し、「OPET」は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに対応するものといえる。
加えて、引用文献1の「OPBT系フィルムを含むレトルト用包材は、・・・具体的には、外側から・・・基材層-バリア層-バリア材補強層-シーラント層の4層構成等が挙げられ、基材層および/またはバリア材補強層は、OPBT系フィルム単独、もしくは・・・、OPETフィルム等の他フィルム等と併用して構成することが出来る。・・・。代表的なラミネート構成としては、例えば、・・・、OPET//OPBT系//AL//シーラント、OPBT系//OPET//AL//シーラント、・・・等が挙げられる。・・・」(【0020】)との記載を参酌すると、引用発明1-1の基材層とバリア材補強層の組み合わせとして、OPETとOPBT系、及び、OPBT系とOPET、が例示されているといえる。
また、引用文献1の「(OPBT系フィルムの原料)・・・本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂には、ポリエチレンテレフタレート樹脂をポリブチレンテレフタレート100重量部に対して0~30重量部の範囲で適宜配合することが可能であり、・・・。」(【0010】~【0011】)と記載されている。
そうすると、引用文献1には、包材の層構成として、基材層として二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、バリア材補強層として二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムを採用すること、及び、基材層として二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム、バリア材補強層として二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを採用すること、が例示されているといえること、ポリエチレンテレフタレート樹脂をポリブチレンテレフタレート100重量部に対して0~30重量部の範囲で適宜配合したOPBT系フィルムは「51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む」といえること、OPETフィルムは「51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む」といえることを総合すると、引用発明1-1の基材及びバリア材補強層の材質として、引用文献1に上記のとおり例示されている何れかの組み合わせを採用することにより、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
[相違点1-3]について
引用文献1の「シーラント層として・・・、未延伸ポリプロピレン系フィルム・・・が挙げられる」(【0020】)、「未延伸ポリプロピレンフィルム〔FRTK-G、フタムラ化学株式会社製、厚み60μm〕をそれぞれ配置」(【0026】)との記載を参酌すると、引用文献1には、シーラント層の厚みとして、60μmとする例が記載されている。
また、シーラント層の厚みを70μm以上とすることは、例えば引用文献4(【0101】)、引用文献5(【0019】、【0030】)、引用文献6(図6)、引用文献7(図5)及び引用文献8(【0022】)に例示されるように、本件優先日における周知技術である(以下「周知技術1」という。また、以下に述べる各周知技術も含めて総称して「周知技術」ともいう。)。
そうすると、引用発明1-1のシーラント層に周知技術1を適用することで、相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
[相違点1-4]について
引用文献1には、「シーラント層として未延伸ポリエチレン系フィルム、・・・が挙げられるが、・・・各種シーラントを用いることが好ましい。」(【0020】)と、シーラント層として未延伸ポリエチレン系フィルムを用いることが示唆されている。
そして、シーラント層に用いられるポリエチレン系フィルムとして引き裂き性向上のために、直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンを含み、その際に直鎖状低密度ポリエチレンの重量%を低密度ポリエチレンの重量%よりも大きくすることは、例えば引用文献13(【0007】、【0010】)に例示されるように、本件優先日における周知技術(以下「周知技術2」という。)である。
そうすると、引用発明1-1のシーラント層に周知技術2を適用することで、相違点1-4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明1-1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明2について
引用発明1-1は、「基材層」と「バリア材補強層」の間に「バリア層」を備えるものである。そして、引用文献1の「バリア層としては、・・・アルミニウム箔がもっとも好ましい。金属箔を使用しない場合や高度なバリア性が要求される場合は、基材層の少なくともいずれか一方の面に、無機酸化物からなる蒸着膜(以下、VM)・・・を設けてバリア性を付与する方法でも何ら差し支えない。」(【0020】)との記載を踏まえると、引用発明1-1におけるバリア層として、蒸着膜(本件発明2の「蒸着層」に相当。)を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用文献1には、「光、酸素、水蒸気を遮断するにはアルミニウム箔(以下、AL)、あるいは基材層表面に蒸着膜やコーティング層を設ける」(【0003】)との記載とともに、「代表的なラミネート構成としては、例えば、外側から・・・、OPET//OPBT系//AL//シーラント、OPBT系//OPET//AL//シーラント・・・(基材層および/またはバリア材補強層はVMタイプ、またはKコート等のバリアコートタイプを含む)等が挙げられる。・・・」(【0020】)との記載があり、これらの記載を踏まえると、バリア層として蒸着膜を採用した上で、当該蒸着膜をバリア材補強層とシーラント層との間に備える構成とすることも、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 本件発明3について
引用文献1の「金属箔を使用しない場合や高度なバリア性が要求される場合は、基材層の少なくともいずれか一方の面に、無機酸化物からなる蒸着膜(以下、VM)および・・・ポリ塩化ビニリデン(以下、Kコート)等のバリア樹脂からなるコーティング層を設けてバリア性を付与する方法でも何ら差し支えない」(【0020】)との記載を参酌して、引用発明1-1におけるバリア層として、蒸着層及びその上に位置するバリア樹脂から成るコーティング層(本件発明3の「ガスバリア性塗布膜」に相当。)を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 本件発明4について
引用文献1の「OPBT系フィルム表面、あるいはその他基材表面にグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷といった既知の印刷方法により印刷を施して用いることも出来る」(【0022】)との記載を参酌して、引用発明1-1における基材層の何れかの表面又はバリア材補強層の何れかの表面に印刷層を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
オ 本件発明5について
上記ア(イ)の「[相違点1-4]について」で示したことに加えて述べるに、直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910g/cm3~0.925g/cm3であることは例えば引用文献4(【0087】)に記載されているように技術常識である。
カ 本件発明6について
引用文献1の「一方、基材層および/またはバリア材補強層として、OPBT系フィルム単独、または・・・、OPETフィルムを併用することにより、・・・高いレベルの耐圧強度、耐衝撃性、耐突刺し性等を達成することが可能となる。」(【0020】)との記載を踏まえると、引用発明1-1は、OPBT系フィルムを採用することにより、耐突刺し性等を達成するものである。
また、OPBTを用いたレトルト用包材のハイレトルト処理後の突刺強度を14N程度とすることは、例えば引用文献6(図7)及び引用文献7(図4)に例示されるように、本件優先日における周知技術(以下「周知技術3」という。)である。
そうすると、引用発明1-1に周知技術3を適用して、レトルト用包材が有する耐突き刺し強度を13N以上とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
キ 本件発明9について
引用文献9の請求項10、【0061】~【0063】には、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムを多層化することで延伸応力を低減する事項が記載されている。
そして、引用発明1-1に引用文献9の上記記載事項を適用することで、引用発明1-1の二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムを多層化することは、当業者が容易に想到し得たことである。
ク 本件発明10について
引用発明1-1の「二軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム」は単層構造からなる。
そして、引用文献1の「(OPBT系フィルムの原料) ・・・。最適な機械的強度を付与するためには、ポリブチレンテレフタレート樹脂のうち、融点200~250℃、IV値1.10~1.35dl/gの範囲のものが好ましく」(【0010】)との記載を参酌して、引用発明1-1の「ポリブチレンテレフタレート樹脂」のIV値を、本件発明10の数値範囲とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ケ 本件発明11、12について
上記(1)アの「[相違点1-2]について」で示した事項を参照。
コ 本件発明13について
引用発明1-1は、引用文献1の請求項9に「・・・レトルト用包材を製袋加工して得られるレトルト用袋。」とあるように、袋を製造するための包材である。
そして、包材をヒートシールして形成する袋の具体的な形態として、「本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有する袋」は、例えば引用文献8(図4)、引用文献14(図1)に例示されるように、本件優先日における周知技術(以下「周知技術4」という。)である。
そうすると、引用発明1-1に周知技術4を適用することで、本件発明13に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
サ 本件発明18について
(ア)対比
本件発明18と引用発明1-2とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
各層の対応について、引用発明1-2の「基材層」、「バリア材補強層」、「シーラント層」はそれぞれ、本件発明18の「第1基材」、「第2基材」、「シーラント層」と「前記積層体の内面同士を接合するシール部」に相当する。
引用発明1-2に係る包材は、「外側から基材層-バリア層-バリア材補強層-シーラント層からな」るものであり、本件発明18の「外面及び内面を含む積層体であって、」「前記第1基材が、前記外面を構成しており、」「前記シーラント層が、前記内面を構成して」いることに相当する。
引用発明1-2の「レトルト用袋」と本件発明18の「本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有し、ボトルへ詰め替えられる液体又は紛体を収容する袋」は、「袋」である限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明18と引用発明1-2は、以下の点で一致し、上記ア(ア)で示した相違点1-1~1-3のほか、相違点1-5において相違する。
[一致点1-2]
「袋であって、
外面及び内面を含む積層体と、
前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備え、
前記積層体は、第1基材、第1接着剤層、第2基材、第2接着剤層、及びシーラント層をこの順で少なくとも備え、
前記第1基材が、前記外面を構成しており、
前記シーラント層が、前記内面を構成している、袋。」
[相違点1-5]
袋について、本件発明18は、「本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有し、ボトルへ詰め替えられる液体又は紛体を収容する袋」であるのに対し、引用発明1-2は、「レトルト用袋」である点。
(イ)判断
上記各相違点について検討する。
[相違点1-1]~[相違点1-3]について
上記ア(イ)で示したとおりである。
[相違点1-5]について
引用文献1には、「開口部から、例えば飲食品、医薬品、化粧品、洗剤、化学品、雑貨品等の内容物を充填、ヒートシールして完全密閉することにより、最終形態の包装製品が完成する。」(【0002】)と記載されているように、引用発明1-2の用途として「洗剤」も想定されている。
そして、袋の具体的な態様として、「本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有し、ボトルへ詰め替えられる液体又は紛体を収容する袋」であるものは、例えば、引用文献14(図1)に例示されるように、本件優先日における周知技術(以下「周知技術5」という。)である。
そうすると、引用発明1-2において、周知技術5を適用することで、相違点1-5に係る本件発明18の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明18は、引用発明1-2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)引用文献2を主引例とする進歩性に係る取消理由
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明2-1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
各層の対応について、引用発明2-1の「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11」、「接着層14」、「ポリブチレンテレフタレート系フィルム12」、「接着層14」、「熱接着性樹脂層13」及び「積層体10」はそれぞれ、本件発明1の「第1基材」、「第1接着剤層」、「第2基材」、「第2接着剤層」、「シーラント層」及び「積層体」に相当する。
引用発明2-1に係る積層体は、「外面から順に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11と接着層14とポリブチレンテレフタレート系フィルム12と接着層14と熱接着性樹脂層13が積層された」層構成であり、且つ、引用発明2-1は「電子レンジ加熱用包装袋」(【0001】)に関するものであり、包装袋においてシーラント層が内面に位置するという技術常識を踏まえると、
本件発明1の「外面及び内面を含む積層体であって、」「第1基材、第1接着剤層、第2基材、第2接着剤層、及びシーラント層をこの順で少なくとも備え、」「前記第1基材が、前記外面を構成しており、」「前記シーラント層が、前記内面を構成して」いる層構成に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明2-1は、以下の点で一致し、相違する。
[一致点2]
「外面及び内面を含む積層体であって、
第1基材、第1接着剤層、第2基材、第2接着剤層、及びシーラント層をこの順で少なくとも備え、
前記第1基材が、前記外面を構成しており、
前記シーラント層が、前記内面を構成している、積層体。」
[相違点2-1]
第1基材と第2基材について、本件発明1では、「前記第1基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレート又は51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、前記第1基材が51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、前記第1基材が51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含」むのに対し、
引用発明2-1では、外面から順に「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11」と「ポリブチレンテレフタレート系フィルム12」が積層されており、各フィルムにおけるポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの成分比が不明な点。
[相違点2-2]
シーラント層の厚みが、本件発明1では、「70μm以上である」のに対し、引用発明2-1では不明な点。
[相違点2-3]
シーラント層について、本件発明1では、「前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンを含み、
前記シーラント層における前記直鎖状低密度ポリエチレンの重量%は、前記シーラント層における前記低密度ポリエチレンの重量%よりも大き」いのに対し、引用発明2-1では、材質が不明な点。
(イ)判断
上記各相違点について検討する。
[相違点2-1]について
引用発明2-1における「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」はポリエチレンテレフタレートが主成分であり、引用発明2-1における「二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム」はポリブチレンテレフタレートが主成分であるといえる。
そうすると、引用発明2-1における「外面から順に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11」と「ポリブチレンテレフタレート系フィルム12」「が積層され」ていることは、本件発明1の「前記第1基材は、51質量%以上のポリエチレンテレフタレート」「を含み、前記第1基材が51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含む場合、前記第2基材は、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含」むことに相当する。
そうすると、相違点2-1は実質的には相違点ではない。
[相違点2-2]について
引用文献2の「60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム」(【0022】)との記載を参酌すると、引用文献2には、引用発明2-1の熱接着性樹脂層13(本件発明1の「シーラント層」に相当。)の厚みとして、60μmとする例が記載されている。
そうすると、引用発明2-1の熱接着樹脂層(シーラント層)に、シーラント厚さに関する周知技術1を適用することで、相違点2-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
[相違点2-3]について
引用文献2の【0022】には、「熱接着性樹脂層13」として、線状低密度ポリエチレン(本件発明1の「直鎖状低密度ポリエチレン」に相当。)を採用することが記載されている。
そうすると、引用発明2-1における熱接着性樹脂層(シーラント層)に、ポリエチレン系フィルムに関する周知技術2を適用することで、相違点2-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明2-1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明2について
引用文献2には、「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11」として、「厚さ12μmのシリカ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」(【0021】)を採用する例が記載されている。
また、シリカ蒸着をポリエチレンテレフタレートフィルムの表面と裏面のいずれに適用するかは、当業者が適宜選択し得たことである。
そうすると、引用発明2-1に基づき本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 本件発明3について
上記イで述べた事項に加え、包装袋に用いられる積層体のバリア層として、蒸着層上にガスバリア性塗布膜を備えたものは、例えば引用文献1(【0020】)及び引用文献4(【0101】)に例示されるように、本件優先日における周知技術(以下「周知技術6」という。)である。
そうすると、引用発明2-1に周知技術6を適用することで、蒸着層とその上に位置するガスバリア性塗布膜を備える本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 本件発明4について
包装袋に用いられる積層体において、積層体の基材の表面に印刷層を備えることは、例えば引用文献3(【0019】)及び引用文献5(【0030】)に例示されるように、本件優先日における周知技術(以下「周知技術7」という。)である。
そうすると、本件発明4の構成とすることは、引用発明2-1及び周知技術7に基づき、当業者が容易に想到し得たことである。
オ 本件発明5について
上記ア(イ)の「[相違点2-3]について」で示したことに加えて述べるに、直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.910g/cm3~0.925g/cm3であることは例えば引用文献4(【0087】)に記載されているように技術常識であるから、請求項5で特定される数値範囲内の密度を有する直鎖状低密度ポリエチレンを採用することは当業者が適宜なし得たことである。
カ 本件発明6について
引用発明2-1に係るポリブチレンテレフタレート系フィルムを含む積層体は、引用文献2の【0002】に記載されるように、耐ピンホール性に優れるものである。
そうすると、引用発明2-1に突刺強度に関する周知技術3を適用することで、本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
キ 本件発明9について
引用文献1の請求項6には、基材層を複数のフィルムで構成することが記載されている。
そして、引用発明2-1と引用文献1は、ポリブチレンテレフタレートフィルムを含む加熱用包材に関するものである点で共通する。
そうすると、引用発明2-1に引用文献1に記載された上記事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。その際、層数を10以上とすることは、具体化の際の設計事項である。
ク 本件発明10について
引用発明2-1の「ポリブチレンテレフタレート系フィルム12」は単層構造からなる。
そして、引用発明2-1は、「耐ピンホール性」(【0009】)などの機械的強度も求められるものであるから、引用文献1の「(OPBT系フィルムの原料)・・・。最適な機械的強度を付与するためには、ポリブチレンテレフタレート樹脂のうち、融点200~250℃、IV値1.10~1.35dl/gの範囲のものが好ましく」(【0010】)との記載を参酌して、引用発明2-1の「ポリブチレンテレフタレート系フィルム12」の材料であるポリブチレンテレフタレートのIV値を、本件発明10の数値範囲とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ケ 本件発明12ついて
上記(1)アの「[相違点2-1]について」で示した事項を参照。
コ 本件発明13について
引用発明2-1は、引用文献2に「この積層体を使用して図3に示す形状のパウチ(長さ170mm、幅120mm、襞高さ25mm)を作製」(【0022】)とあるように、袋を製造するための包材である。
そうすると、引用発明2-1に注出口を有する袋に関する周知技術4を適用することで、本件発明13とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
サ 本件発明18について
(ア)対比
本件発明18と引用発明2-2とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
各層の対応について、引用発明2-2の「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11」、「接着層14」、「ポリブチレンテレフタレート系フィルム12」、「接着層14」、「熱接着性樹脂層13」はそれぞれ、本件発明1の「第1基材」、「第1接着剤層」、「第2基材」、「第2接着剤層」、「シーラント層」と「前記積層体の内面同士を接合するシール部」に相当する。
引用発明2-2の「外面から順に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11と接着層14とポリブチレンテレフタレート系フィルム12と接着層14と熱接着性樹脂層13が積層された」層構成は、本件発明18の「外面及び内面を含」み「第1基材、第1接着剤層、第2基材、第2接着剤層、及びシーラント層をこの順で少なくとも備え、」「前記第1基材が、前記外面を構成しており、」「前記シーラント層が、前記内面を構成して」いる層構成に相当する。
引用発明2-2の「周縁熱接着部2に開封用の切欠6が形成された、電子レンジ加熱用包装袋。」は、「開封用の切欠6」を開封することにより注出口部が形成されることは明らかであるから、本件発明18の「本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有し、ボトルへ詰め替えられる液体又は紛体を収容する袋」と、「本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有する袋」である限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明18と引用発明2-2は、以下の点で一致し、上記ア(ア)で示した相違点2-1及び2-2のほか、相違点2-4において相違する。
[一致点2-2]
本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有する袋であって、
外面及び内面を含む積層体と、
前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備え、
前記積層体は、第1基材、第1接着剤層、第2基材、第2接着剤層、及びシーラント層をこの順で少なくとも備え、
前記第1基材が、前記外面を構成しており、
前記シーラント層が、前記内面を構成している、袋。」
[相違点2-4]
本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有する袋について、本件発明18は、「本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有し、ボトルへ詰め替えられる液体又は紛体を収容する袋」であるのに対し、引用発明2-2は、「周縁熱接着部2に開封用の切欠6が形成された、電子レンジ加熱用包装袋。」である点。
(イ)判断
[相違点2-1]~[相違点2-2]について
上記ア(イ)で示したとおりである。
[相違点2-4]について
引用発明2-2のようなバリア性包装材は飲食品のほか洗剤等を保存するためにも用いられている(例えば引用文献1の【0002】参照。)。
そして、引用発明2-2において、注出口を有する詰め替え用袋に関する周知技術5を適用することで、相違点2-4に係る本件発明18の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明18は、引用発明2-2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~6、9~13、18は引用発明1-1又は1-2及び周知技術に基いて、本件発明1~6、9、10、12、13、18は引用発明2-1又は2-2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6、9~13、18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 引用文献1を主引例とする理由(進歩性)について
ア 本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と引用発明1-1を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
[相違点]
本件発明7は「前記積層体を2つ準備し、温度40℃及び湿度90%の高温恒温槽において48時間にわたって保管した後に測定される、一方の前記積層体の外面の、他方の前記積層体の外面に対する静摩擦係数及び動摩擦係数が、0.24以下である」であるのに対し、引用発明1-1は同条件で測定した場合の静摩擦係数及び動摩擦係数が不明な点。
(イ)判断
引用文献1には、引用発明1-1に係るレトルト用包材同士の摩擦係数に着目することは記載も示唆もないから、引用発明1-1において上記相違点に係る構成を採用する動機付けはない。また、他の提出された証拠にも、上記相違点に係る構成は記載も示唆もされていない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、引用発明1-1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明8について
(ア)対比
本件発明8と引用発明1-1を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
[相違点]
本件発明8は「前記積層体を2つ準備し、温度20~30℃及び湿度40~60%の環境において少なくとも24時間にわたって保管した後に測定される、一方の前記積層体の外面の、他方の前記積層体の外面に対する静摩擦係数及び動摩擦係数を常温静摩擦係数及び常温動摩擦係数と称し、
常温静摩擦係数及び常温動摩擦係数の測定後、2つの前記積層体を温度40℃及び湿度90%の高温恒温槽において48時間にわたって保管した後に測定される、一方の前記積層体の外面の、他方の前記積層体の外面に対する静摩擦係数及び動摩擦係数を高温高湿静摩擦係数及び高温高湿動摩擦係数と称する場合、
前記高温高湿静摩擦係数から前記常温静摩擦係数を引いた値が0.03以下であり、且つ、前記高温高湿動摩擦係数から前記常温動摩擦係数を引いた値が0.03以下である」のに対し、引用発明1-1は同条件で測定した場合の静摩擦係数の差及び動摩擦係数の差が静摩擦係数及び動摩擦係数の差が不明な点。
(イ)判断
引用文献1には、引用発明1-1に係るレトルト用包材同士の摩擦係数に着目することは記載も示唆もないから、引用発明1-1において上記相違点に係る構成を採用する動機付けはない。また、他の提出された証拠にも、上記相違点に係る構成は記載も示唆もされていない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、引用発明1-1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明14~17、19について
本件発明14~17、19は、本件発明7又は8の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア、イで検討したのと同じ理由により、本件発明14~17、19は、引用発明1-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 引用文献2を主引例とする理由(進歩性)について
ア 本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と引用発明2-1を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
[相違点]
本件発明7は「前記積層体を2つ準備し、温度40℃及び湿度90%の高温恒温槽において48時間にわたって保管した後に測定される、一方の前記積層体の外面の、他方の前記積層体の外面に対する静摩擦係数及び動摩擦係数が、0.24以下である」であるのに対し、引用発明2-1は同条件で測定した場合の静摩擦係数及び動摩擦係数が不明な点。
(イ)判断
引用文献2には、引用発明2-1に係る積層体同士の摩擦係数に着目することは記載も示唆もないから、引用発明2-1において上記相違点に係る構成を採用する動機付けはない。また、他の提出された証拠にも、上記相違点に係る構成は記載も示唆もされていない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、引用発明2-1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明8について
(ア)対比
本件発明8と引用発明2-1を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
[相違点]
本件発明8は「前記積層体を2つ準備し、温度20~30℃及び湿度40~60%の環境において少なくとも24時間にわたって保管した後に測定される、一方の前記積層体の外面の、他方の前記積層体の外面に対する静摩擦係数及び動摩擦係数を常温静摩擦係数及び常温動摩擦係数と称し、
常温静摩擦係数及び常温動摩擦係数の測定後、2つの前記積層体を温度40℃及び湿度90%の高温恒温槽において48時間にわたって保管した後に測定される、一方の前記積層体の外面の、他方の前記積層体の外面に対する静摩擦係数及び動摩擦係数を高温高湿静摩擦係数及び高温高湿動摩擦係数と称する場合、
前記高温高湿静摩擦係数から前記常温静摩擦係数を引いた値が0.03以下であり、且つ、前記高温高湿動摩擦係数から前記常温動摩擦係数を引いた値が0.03以下である」のに対し、引用発明2-1は同条件で測定した場合の静摩擦係数の差及び動摩擦係数の差が不明な点。
(イ)判断
引用文献2には、引用発明2-1に係る積層体同士の摩擦係数に着目することは記載も示唆もないから、引用発明2-1において上記相違点に係る構成を採用する動機付けはない。また、他の提出された証拠にも、上記相違点に係る構成は記載も示唆もされていない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、引用発明2-1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明14~17、19について
本件発明14~17、19は、本件発明7又は8の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア、イで検討したのと同じ理由により、本件発明14~17、19は、引用発明2-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 引用文献3を主引例とする理由(進歩性)について
(1)引用文献3に記載された発明
引用文献3の特に請求項1、2、5を参照すると、引用文献3には以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。
[引用発明3]
「ポリエチレンテレフタレートフィルム(A)、無機蒸着層又はバリア樹脂コーティング層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(B)、直線引裂き性ポリエチレンテレフタレートフィルム(C)、ヒートシール性を有するポリプロピレンフィルム(D)の順に積層して成る積層フィルムから成る電子レンジ加熱用包装材。」
(2)本件発明7、8について
本件発明7、8と引用発明3を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
[相違点]
本件発明7、8では、第2基材が「51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含」むのに対し、引用発明3では「直線引裂き性ポリエチレンテレフタレートフィルム(C)」である点。
上記相違点について検討する。
引用文献3には、直線引裂き性を有するポリエステルフィルムについて、「ポリテトラメチレングリコール単位を含有したポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとのブレンド物から成るフィルム・・・等、を二軸延伸してなるフィルムを挙げることができる。」(【0017】)との記載のほか、実施例として「2軸延伸ポリブチレン変性ポリエチレンテレフタレートフィルム(易カットPET)」(【0028】)を用いる記載はあるものの、ポリブチレンテレフタレートを「51質量%以上」含むものとすることを動機付ける記載はない。また、他の提出された証拠にも、引用発明3において上記相違点に係る構成を採用することを動機付ける記載はない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7、8は、引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明14~17、19について
本件発明14~17、19は、本件発明7又は8の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したのと同じ理由により、本件発明14~17、19は、引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~6、9~13、18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項7、8、14~17、19に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項7、8、14~17、19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701031