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特許異議申立

2024-701064

包装袋、包装袋の製造方法、及びシート包装体

審判番号
2024-701064
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-002260
登録番号
7480068
請求日
2024年10月31日
審決日
2026年04月30日
公報発行日
2026年08月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大王製紙株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人ITOH
  • 【異議申立人】笹井 栄治
審判長/審判官
  • 審判長 金丸 治之
  • 審判官 岩谷 一臣
  • 審判官 長谷川 一郎
分類
P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7480068号発明「包装袋、包装袋の製造方法、及びシート包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7480068号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 特許第7480068号の請求項1~11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7480068号の請求項1~11に係る特許についての出願は、令和3年1月8日を出願日とするものであって、令和6年4月26日に特許権の設定登録がされ、令和6年5月9日にその特許権の設定登録に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年10月31日 :特許異議申立人笹井栄治(以下「申立人」という。)による請求項1~11に係る特許に対する特許異議の申立て 令和 7年 2月25日付け:取消理由通知書 同年 4月28日 :訂正請求書・意見書(特許権者)の提出 同年 6月 3日付け:訂正拒絶理由通知書 同年 7月 4日 :手続補正書(方式)・意見書(特許権者)の提出 同年 8月22日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年10月27日 :訂正請求書・意見書(特許権者)の提出 同年11月14日付け:訂正拒絶理由通知書 同年12月19日 :手続補正書・意見書(特許権者)の提出 令和8年 2月24日 : 申立人による意見書の提出 なお、令和7年4月28日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 手続補正について 1 補正の内容 令和7年12月19日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、令和7年10月27日提出の訂正請求書を以下のように補正するとともに、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲を同様に補正するものである。なお、下線は、補正事項の理解のため、当審において付与した。 ・訂正請求書の「7.請求の理由」「(2)訂正事項」の「ア 訂正事項1」に、 「特許権の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に「140℃におけるヒートシール強度が0.23kN/m以上0.64kN/m以下である、包装袋」と記載されているのを、「140℃におけるヒートシール強度が0.23kN/m以上0.64kN/m以下であり、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した縦方向のソフトネスが130mN/100mm以上730mN/100mm以下であり、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した横方向のソフトネスが60mN/100mm以上310mN/100mm以下である、包装袋」に訂正する。」 とあるのを 「140℃におけるヒートシール強度が0.23kN/m以上0.64kN/m以下であり、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の縦方向のソフトネスが130mN/100mm以上730mN/100mm以下であり、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の横方向のソフトネスが60mN/100mm以上310mN/100mm以下である、包装袋」に訂正する。」に補正する。 なお、前記補正に合わせて「訂正特許請求の範囲」も補正後のものが添付されている。 2 補正の適否 上記補正は、請求項1の「縦方向のソフトネス」、「横方向のソフトネス」をそれぞれ「試験体の前記包装袋における繊維の縦方向のソフトネス」、「試験体の前記包装袋における繊維の横方向のソフトネス」と特定するものである。この点に関し、願書に添付した明細書では、包装袋の方向と繊維の方向を区別し表記しており(願書に添付した明細書の【0026】、【0031】、【0053】)、縦方向、横方向という用語は、繊維の方向において用いられていること、また、同明細書では、ソフトネスの測定を試験体で行っていること(同【0093】)を考慮すると、ソフトネスの計測は、補正前においても、試験体における繊維の縦方向、横方向によるものを意図していたと解釈できる。 そうすると、「試験体の前記包装袋における繊維の縦方向のソフトネス」、「試験体の前記包装袋における繊維の横方向のソフトネス」と特定することは、もともとの「訂正特許請求の範囲」の記載を何ら変更するものではなく、訂正拒絶理由の通知を受けて、他者に誤解を与える可能性を認識し、明瞭でない記載の釈明を目的とする補正を行ったものであるから、本件補正は、実質的に審理対象の拡張変更を伴わない補正であり、それにより審理遅延が生じるものでもないから、訂正請求書の要旨を変更するものには該当しない。 したがって、上記補正を認めることとする。 第3 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年12月19日付け手続補正書により補正された本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、「特許第7480068号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1乃至11について訂正することを求める。」ものであり、その訂正の内容は、次のとおりである。また、下線は、当審において訂正箇所に付したものである。 (1) 訂正事項1 [訂正事項1] 特許権の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に「シートを収容する包装袋であって、紙成分を含む紙層と、前記紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層と、を有し、前記包装袋における前記紙成分の比率が50%以上であり、140℃におけるヒートシール強度が0.23kN/m以上0.64kN/m以下である、包装袋」とあるのを、「シートを収容する包装袋であって、紙成分を含む紙層と、前記紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層と、を有し、前記包装袋における前記紙成分の比率が50%以上であり、140℃におけるヒートシール強度が0.23kN/m以上0.64kN/m以下であり、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の縦方向のソフトネスが130mN/100mm以上730mN/100mm以下であり、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の横方向のソフトネスが60mN/100mm以上310mN/100mm以下である、包装袋」に訂正する。 (請求項1を引用する請求項2~11も同様に訂正する。) (2) 一群の請求項について 訂正前の請求項1~11について、請求項2~11は請求項1を引用しているものであるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~11〕について請求されたものである。 2 訂正事項1の適否についての当審の判断 (1) 訂正の目的について 本件訂正の訂正事項1は、訂正前の「包装袋」について、試験体の包装袋における繊維の縦方向及び横方向のソフトネスを特定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であるかについて 次に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内であるかについて、以下検討する。特許明細書等の【0053】には、「包装袋10のソフトネスは、限定されないが、例えば、繊維の縦方向(流れ方向)に90mN/100mm以上800mN/100mm以下、好ましくは110mN/100mm以上750mN/100mm以下、より好ましくは130mN/100mm以上730mN/100mm以下であり、横方向(流れ方向と直交する方向)に40mN/100mm以上330mN/100mm以下、好ましくは、50mN/100mm以上310mN/100mm以下、より好ましくは60mN/100mm以上310mN/100mm以下である。」と記載されている。 また、【0093】には、「[ソフトネス] 試験体の包装袋10について、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に従ってソフトネスを測定した。試験片は100mm×100mmの大きさとし、クリアランスは5mmとした。測定は、表・縦方向(流れ方向)、表・横方向(流れ方向と直交する方向)の各々5回ずつ測定し」と記載されている。 すなわち、特許明細書等においては、試験体の包装袋10について「ソフトネス」を、繊維の縦方向(流れ方向)と繊維の横方向(流れ方向と直交する方向)を測定することが記載されている。 そうすると、当該訂正事項1の訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内であり、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて 上記(1)のとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであるところ、特段実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 3 本件訂正の適否のまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 第4 訂正後の本件発明 上記第3のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正請求により訂正された請求項1~11に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 シートを収容する包装袋であって、 紙成分を含む紙層と、 前記紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層と、を有し、前記包装袋における前記紙成分の比率が50%以上であり、 140℃におけるヒートシール強度が0.23kN/m以上0.64kN/m以下であり、 JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の縦方向のソフトネスが130mN/100mm以上730mN/100mm以下であり、 JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の横方向のソフトネスが60mN/100mm以上310mN/100mm以下である、 包装袋。 【請求項2】 前記紙層の坪量が10g/m2以上40g/m2以下である、 請求項1に記載の包装袋。 【請求項3】 前記紙層がクラフト紙またはレーヨン紙で形成されている、 請求項1または2に記載の包装袋。 【請求項4】 前記樹脂層の厚みが5μm以上40μm以下である、 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の包装袋。 【請求項5】 前記熱可塑性樹脂が低密度ポリエチレンである、 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の包装袋。 【請求項6】 前記包装袋が少なくとも1つのシール部を有するピロー包装袋であり、 前記樹脂層が前記ピロー包装袋の内側に配置された状態で、前記シール部が熱溶着されている、 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の包装袋。 【請求項7】 前記シール部の接合ピッチが、0.5mm以上2mm以下である、 請求項6に記載の包装袋。 【請求項8】 通気孔が形成されている、 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の包装袋。 【請求項9】 開裂用切目線が形成されている、 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の包装袋。 【請求項10】 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の包装袋の製造方法であって、 前記包装袋のシール部を熱溶着する溶着工程を有し、 前記溶着工程における加熱温度が140℃以上180℃以下である、 包装袋の製造方法。 【請求項11】 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の包装袋と、 前記包装袋に収容されたシートと、を有する、 シート包装体。」 第5 取消理由(決定の予告)の要旨 当審において通知した、令和7年8月22日付け取消理由通知(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 (進歩性)本件特許の請求項1~11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 記 [引用文献一覧] 甲第1号証:特開2020-152385号公報 甲第2号証:特開2006-27676号公報 甲第5号証:特開2007-269348号公報 甲第7号証:特開2005-96779号公報 甲第8号証:特開2008-229871号公報 引用文献1:特開2019-59523号公報 甲第9号証の2:特開2018-58600号公報 甲第10号証の1:特開2020-59530号公報 甲第10号証の2:特開2020-138787号公報 甲第10号証の3:特開2020-164227号公報 以下「甲第○号証」は「甲○」という。 第6 当審における判断 1 引用文献の記載等 (1) 甲1について ア 甲1の記載 甲1には以下の記載がある。下線は当審において付した。以下同様。 「【0001】 本発明は、シート包装体及びシート包装体の製造方法に関する。」 「【0015】 <シート包装体の構成> シート包装体100は、例えば、ピロータイプのガゼット包装体であって、その内部にシート積層体Tが収容され、取出口からシートを一枚ずつ取り出すようにして使用されるものである。 シート包装体100は、図1に示すように、一枚のフィルム材からなる袋本体10と、袋本体10の右側部において長手方向に沿って開閉可能な取出口を形成するファスナー部20と、袋本体10の左側部において長手方向に沿って設けられた線状部30と、を備えて構成される。 【0016】 (シート積層体) シート積層体Tは、例えば、ティシューペーパー、トイレクリーナー、キッチンクリーナー等のドライシート又はウェットシートであり、複数枚をそれぞれ折り畳み状態で積層させている。シート積層体Tの高さは、シート包装体100に収納可能な高さであれば特に限定はない。 【0017】 (袋本体) 袋本体10は、扁平な袋状に形成されている。具体的に、袋本体10は、平面視長方形状の対向する上面部10a及び下面部10bと、上面部10a及び下面部10bを連結させる一対のマチ部10c,10cと、を備える。 なお、ここでいう「平面視長方形状」には、厳密に長方形である場合のみでなく、例えば角部が直角でない場合などの多少の誤差や変形を含み得る。つまり、一見して長方形状であればよい。 この袋本体10は、一枚のフィルム材の対向する端部同士を重畳させて接着し、さらに、形成された筒状体の開口両端部を接着することで形成されたものである。 具体的に、袋本体10は、一枚のフィルム材の対向する端部同士を合掌状態に重畳させたフラップ部Fを有し、フラップ部Fの先端に、熱溶着されて形成されたセンターシール部11を備えている。また、袋本体10は、センターシール部11を形成することで筒状体となったフィルム材の開口両端部が熱溶着されて形成されたトップシール部12,12と、を備える。 フラップ部Fは、袋本体10の上面部10aの一側部(右側部)において、前後方向に延在するように配されている。また、トップシール部12,12は、袋本体10の長手方向の両端部(前端部及び後端部)に、それぞれ位置している。 【0018】 フィルム材の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂シートの単材若しくは複合材、又はこれら合成樹脂シートとアルミフォイル若しくは紙等を貼り合わせた複合シートを使用することができる。また、フィルム材の厚みは、例えば、40μmから70μm程度である。」 「【0029】 <包装体の製造方法> 次に、シート包装体100の製造方法の一例について説明する。 図4は、シート包装体100の製造方法を示すフローチャートである。 なお、前提として、複数枚のシートを折り畳み状態で積層させたシート積層体Tが作製されていることとする。 【0030】 まず、搬送される帯状のフィルム材上の搬送方向の所定位置で、幅方向に延在するように、熱可塑性樹脂からなる線状部材31を載置し、熱を加えて溶着させて、帯状のフィルム材上に形状保持部を一体的に形成する(ステップS1:第1工程)。 なお、第1工程は、フィルム材に形状保持部を形成するものであれば、熱溶着でなくともよい。 例えば、形状保持部としてのファスナー材(雄咬合子20a及び雌咬合子20b)も、搬送される帯状のフィルム材上の搬送方向の所定位置で、幅方向に延在するように配置され、所定方法でフィルム材に固定された状態とされる。 【0031】 次に、形状保持部の形成されたフィルム材により筒状体を形成し、筒状体の端部同士を熱溶着してセンターシール部11を形成する(ステップS2:第2工程)。 具体的に、第2工程においては、形状保持部の形成されたフィルム材上にシート積層体Tを載置して、これを包むように、フィルム材の搬送方向先端部をシート積層体Tの後方のフィルム体の所定位置に重畳させ(筒状体の形成)、その重畳させた部分(筒状体の端部同士)を熱溶着し、筒状体をフィルム材から切断する。 なお、帯状のフィルム材を切断した後、筒状体を形成して熱溶着しても良い。 また、筒状体の熱溶着後、その内部にシート積層体Tが入れられることとしても良い。 【0032】 このようにして、筒状となったフィルム材の内部にシート積層体Tが配された状態において、筒状のフィルム材の開口端部を熱溶着してトップシール部12,12を形成する(ステップS3:第2工程)。」 「【図1】 [図:0001438264000001.jpg] 【図2】 」 「【図4】 [図:0001438264000002.jpg] 」 イ 甲1に記載されていると認められる事項 上記アの【0029】~【0032】及び【図4】には、「包装体の製造方法」が記載されており、【0031】に記載の「形状保持部の形成されたフィルム材により筒状体を形成し、筒状体の端部同士を熱溶着してセンターシール部11を形成する(ステップS2:第2工程)」は、【0017】に記載された「袋本体10」における「一枚のフィルム材の対向する端部同士を合掌状態に重畳させたフラップ部Fを有し、フラップ部Fの先端に、熱溶着されて形成されたセンターシール部11」を形成する工程であると認められる。 また、【0032】に記載の「筒状となったフィルム材の内部にシート積層体Tが配された状態において、筒状のフィルム材の開口端部を熱溶着してトップシール部12,12を形成する(ステップS3:第2工程)」は、【0017】に記載された「袋本体10」における「センターシール部11を形成することで筒状体となったフィルム材の開口両端部が熱溶着されて形成されたトップシール部12,12」を形成する工程であると認められる。 ウ 甲1に記載の発明 上記アから、甲1には以下の「甲1発明」が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「シートを収容する袋本体10であって、 袋本体10は一枚のフィルム材からなり、 フィルム材の材質が、合成樹脂シートと紙を貼り合わせた複合シートであり、 袋本体10が、熱溶着されて形成されたセンターシール部11とトップシール部12を備えた、袋本体10。」 (2) 甲2について ア 甲2の記載 甲2には以下の記載がある。 「【0018】 (3)前記積層フィルムのシール強度が4N/15mm以上7N/15mm以下である(1)又(2)記載の易開封性包装体。 【0019】 この態様によれば、シール強度を4N/15mm以上とすることで、充分な密封性を得ることができ、フィルム包装体の製造、流通、保管時の破袋を防止できる。また、例えば内容物がウエットティッシュなどの場合にも防湿性を維持して内容物の乾燥を防ぐことができる。また、シール強度を7N/15mm以下とすることで、適度な易開封性を付与することができる。 【0020】 なお、上記のシール強度は、例えば、シール時間0.5秒、シール圧0.98MPa/cm2、試験片の引張速度300mm/分の条件下での測定値であり、上記範囲のシール強度は、シール温度140から160℃の広い範囲で得られる。なお、シール機としては特に限定されないが、例えば、テストシーラーTP-701-C(商品名:テスター産業株式会社製)のような公知のヒートシール試験機が使用できる。」 「【0029】 (7)前記包装体に収容される内容物が携帯用のウエットティッシュである(1)から(6)いずれか記載の易開封性包装体。」 「【0036】 図1に示すように、この包装体100は、軟包装材料からなる積層フィルム110で構成されたピロー包装体である。図1における131、132は、それぞれ上下の横シール部であり、図1の背面側の中央部には図示しない縦シール(背シール)部がある。」 「【0040】 シール層Cは、更に中間層B側に配置されるサポート層C1と、最内面に配置される剥離層C2とからなる共押出しフィルムになっている。そして、図3に示すように、包装体100の横シール部132においては、ヒートシールによって、2枚の積層フィルム110が熱溶着されている。すなわち、対向する最内層の剥離層C2同士は溶着によって接合面が消えて一体となっている。」 「【0041】 積層フィルム110の構成としては、従来公知の構成を用いることができ特に限定されない。例えば、それぞれ外層側から順に、基材層/シール層の2層構成、基材層/中間層/シール層の3層構成、基材層/第1中間層/第2中間層/シール層の4層構成、などが例示できる。積層方法は接着剤を介して積層するドライラミネート法であってもよく、ポリエチレンやポリプロピレンによる押し出しコートによって積層してもよい。」 「【0044】 シール層C全体は、層間で剥離可能な共押出し層からなる。シール層Cの厚さは25μmから40μmであることが好ましい。」 「【0057】 横シール部132のシール強度としては、4N/15mm以上7N/15mm以下であることが好ましい。シール強度が4N/15mm未満であると、シール抜けが発生して密封性が低下したり、流通保管時の外圧によって破袋するなどの不良品が発生するおそれがあるので好ましくない。また、シール強度が7N/15mmを超えると、易開封性が得られずに引き裂き部分が残ってしまうので好ましくない。なお、本発明の易開封性包装体によれば、従来の凝集剥離タイプのシール層に比べて、より広いシール条件(温度、時間、圧力)で上記の値を得ることができる。よって、シール条件の管理が容易であり、結果として、シール抜けや開封困難などの不良品の発生率を大幅に低下することができる。」 「【図1】 [図:0001438264000003.jpg] 」 イ 甲2に記載の事項 上記アから、甲2には以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「軟包装材料からなる積層フィルム110で構成されたピロー包装体である包装体100であって、 収容される内容物がウェットティッシュであり、 ヒートシールによって、2枚の積層フィルム110が熱溶着された横シール132部を備え、 横シール132部のシール強度が4N/15mm以上、7N/15mm以下であり、上記範囲のシール強度が、シール温度140から160℃の範囲において得られ、 積層フィルム110がシール層を備え、 シール層の厚さは25μmから40μmである、包装体100。」 (3)甲5、甲7、及び甲8について ア 甲5の記載 甲5には以下の記載がある。 「【請求項1】・・・包装袋の全重量に占める紙層の重量が50重量%以上である・・・包装袋」 「【0010】 本発明の包装袋は、・・・廃棄処理する際には紙製品として廃棄処理することができる」 イ 甲7の記載 甲7には以下の記載がある。 「【請求項1】 ・・・紙部材が包装袋重量の50%以上である・・・包装袋」 「【0037】 近年、環境問題が深刻化し、容器類ならびに包装材料の易廃棄性が要求されている中で、容器並びに包装材料としては、易焼却性またはリサイクル性をもつ紙部材を使用したい要望がある。・・・。」 「【0049】 ・・・さらにこのスタンディングパウチは紙部材使用率が51%であり、使用後は紙ゴミとして廃棄できるものである。」 「【0020】 ・・・紙部材(13)の坪量は、包装袋に求められる柔軟性および剛性感、あるいは遮光性など、使用する紙部材の特性にもよるが・・・」 ウ 甲8の記載 甲8には以下の記載がある。 「【0006】・・・環境問題の一つである廃棄物問題、とくに容器包装廃棄物について、・・・「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)」が1997年4月から本格施行され、循環型経済社会の構築に向けた動きが加速している。従来の、パン、おにぎり、菓子等の食品の包装体のほとんどが容器包装リサイクル法によりプラマークを表示しなければならないものであった。・・・今までの包装体は、費用の負担、環境への負担が大きいものとなっている。」 「【0023】 本発明の食品包装用シートにおいて、シート全体において、全繊維に対して多分岐ポリエチレン繊維が占める割合は、・・・50重量%以上であると、容器包装リサイクル法での紙マークを表示することができなくなり、プラマークを表示しなければならなくなる。また、シート全体において、全繊維に対して合成繊維の占める割合が50重量%以上であっても同様である。・・・。」 「【0040】・・・[4]紙マーク:積層シート全体の天然繊維の比率が50重量%以上であること。 ◎:紙マーク表示可能 △:紙マーク表示可能であるが、プラマークも表示する必要がある。 ×:紙マーク表示不可能」 エ 技術常識と認められる事項 上記ア~ウを踏まえれば、以下の事項は技術常識と認められる。 「包装体の分野において、紙成分の比率を50重量%以上とすることにより、紙製品として扱うことができ、廃棄性や環境面で有効であること。」 (4) 引用文献1について ア 引用文献1の記載 引用文献1には以下の記載がある。 「【0027】 包装材料30は、袋10を構成する際に内容物19側に位置する内面301と、内面301の反対側に位置する外面302と、を有し、複数の層が積層された積層体である。包装材料30は、外面302側から内面301側へ順に、紙層31、接着剤層32、延伸プラスチックフィルム33及びシーラント層35を少なくとも有する。図3に示すように、包装材料30は、延伸プラスチックフィルム33とシーラント層35との間に位置する接着層34を更に有していてもよい。また、包装材料30は、紙層31の外面302側に位置する印刷層36を更に有していてもよい。包装材料30全体の厚みは、例えば35μm以上且つ100μm以下である。」 「【0029】 紙層31は、紙を少なくとも含む。包装材料30が紙層31を含むことにより、包装材料30の印刷適性を高めることができる。紙の坪量は、例えば15g/m2以上且つ40g/m2以下である。」 イ 引用文献1に記載の事項 上記アから、引用文献1には以下の事項(以下「引用文献1記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「紙層31、接着剤層32、延伸プラスチックフィルム33及びシーラント層35を有する包装材料であって、紙の坪量が15g/m2以上且つ40g/m2以下である包装材料。」 (5) 甲9の2について ア 甲9の2の記載 甲9の2には、以下の記載がある。 「【0029】 ここで、本発明に係るフィルム包装ティシュー1は、包装フィルム4のティシュペーパー束3の折り返し縁2Cが並ばない短手側面3Aに対面する位置に、包装内の気体を包装外に排出可能であり、包装外の気体を包装内に流入させることができる、内外に連通する吸排気孔6,6…が形成されている。この吸排気孔6は、孔又は切り込みなどで形成される。図示の形態では略半円形の切り込みによって吸排気孔6が形成されている。・・・この吸排気孔6が形成されていることによって、本発明に係るフィルム包装ティシュー1は、特に平面方向からの圧縮操作(コンパクションとも称される)、つまりティシュペーパー2の積層方向Yに圧縮操作がされた際に、ティシュペーパー束3内の空気を迅速に包装外へ排出されてウェブ嵩(ウェブ高さ)を迅速に低下させることができる。・・・。」 イ 周知技術について 上記アを踏まえれば、以下の事項は周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。 「フィルム包装ティシューにおいて、吸排気孔を設けること。」 (6) 甲10の1、甲10の2及び甲10の3について ア 甲10の1の記載 甲10の1には、以下の記載がある。 「【0027】 本発明に係るフィルム包装ティシュー1は、包装フィルム4の束3の最上位のティシュペーパー2に対面する位置に取出口形成用のミシン目6が形成されている。・・・。」 イ 甲10の2の記載 甲10の2には、以下の記載がある。 「【背景技術】 【0002】・・・近年、衛生薄葉紙等のシートが可撓性のフィルム包装袋に収容されたシート包装体の需要が高まっている。このようなシート包装体には、フィルム包装袋の天面に衛生用紙を取り出すためのスリット(ミシン目等)が形成されたものがある・・・。」 ウ 甲10の3の記載 甲10の3には、以下の記載がある。 「【0022】 本発明に係るフィルム包装ティシュー1は、包装フィルム4の束3の最上位のティシュペーパー2に対面する天面10に環状かつ束長手方向3yに沿って形成された取出口形成用ミシン目5が形成されている。この取出口形成用ミシン目5を裂開することで、フィルム包装ティシュー1の天面に取出口6が形成される。・・・。」 エ 周知技術について 上記ア~ウより、以下の事項は周知技術(以下「周知技術2」という。)であると認められる。 「シート包装体において、取出口を形成するミシン目を設けること。」 2 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「シートを収容する袋本体10」は、本件発明1における「シートを収容する包装袋」に相当するとともに、甲1発明における「フィルム材」は、「紙」を含んでいるから、当該「フィルム材」による層は、本件発明1における「紙成分を含む紙層」に相当する。 また、甲1発明の「フィルム材」は、「合成樹脂シートと紙を貼り合わせた複合シートであ」るから、当該「合成樹脂シート」は、本件発明1の「前記紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層」と、「前記紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた樹脂層」である限りにおいて一致する。 上記対比を踏まえれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 ア 一致点1 「シートを収容する包装袋であって、 紙成分を含む紙層と、 前記紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた樹脂層と、を有する包装袋。」 イ 相違点 (ア)相違点1 樹脂層について、本件発明1は「熱可塑性樹脂層を含む」のに対して、甲1発明の合成樹脂シートは熱可塑性樹脂を含むのか不明である点。 (イ)相違点2 包装袋について、本件発明1は「包装袋における前記紙成分の比率が50%以上であ」るのに対して、甲1発明は、袋本体10における紙成分の比率が不明である点。 (ウ)相違点3 本件発明1は「140℃におけるヒートシール強度が0.23kN/m以上0.64kN/m以下である」のに対して、甲1発明は、センターシール部11とトップシール部12を備えるものの、そのヒートシール強度が不明である点。 (エ)相違点4 本件発明1は「JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の縦方向のソフトネスが130mN/100mm以上730mN/100mm以下であり、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の横方向のソフトネスが60mN/100mm以上310mN/100mm以下である」のに対して、甲1発明は、そのような特定がなされていない点。 (2) 判断 事案に鑑み、相違点4から検討する。 甲1、他の甲号証及び引用文献を参酌しても、包装袋について、「JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の縦方向のソフトネスが130mN/100mm以上730mN/100mm以下であり、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の横方向のソフトネスが60mN/100mm以上310mN/100mm以下である」ことは、記載も示唆もされていない。また、甲1発明において、「繊維の縦方向のソフトネス」及び「繊維の横方向のソフトネス」を調整することを示唆するものではなく、さらに当該事項における具体的な数値範囲を得ることが設計的事項であるといった事情もない。 そうすると、甲1発明において、上記相違点4に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 (3) 申立人の主張について 申立人は、令和8年2月24日に提出した意見書において、概略以下のとおり主張する(第9~12ページ)。 ア 本件特許明細書【0053】に「包装体10のソフトネスは、限定されない」と記載されているように、そもそも、ソフトネスは本件特許発明の技術的特徴ではなく、本件特許発明においては適宜設定される特性に過ぎない。そして、この点は訂正後の本件発明1についても同様である。 イ 甲7の【0020】、甲13(特開2021-167216号公報)の【0034】、甲14(特開2021-123339号公報)の【0031】、甲15(特開2021-187483号公報)の【0029】、甲16(特開2021-187484公報)の【0029】及び甲17(特開2021-105523公報)の【0066】から明らかなように、紙層及び樹脂層を備える包装袋において、ソフトネスすなわち柔軟性を考慮することは、通常行われており、本件特許の出願日当時の技術常識であるところ、甲1発明においても袋本体のソフトネスすなわち柔軟性を適切なものとする動機が存在する。 そして、相違点4に係る数値範囲自体に何ら臨界的意義は認められないから、甲1発明において、測定した試験体の包装袋における繊維の縦方向及び横方向のソフトネスを相違点4に係る数値範囲とすることは当業者が適宜なし得ることに過ぎない。 ウ ヒートシール強度を所定値以上とすることで包装袋が破断しにくくなることは当業者の予測可能な範囲に過ぎないし、また、包装袋のソフトネス(柔軟性)を所定値以上とすることで包装袋の柔軟性が保持されることも当業者の予測可能な範囲に過ぎない。 (4) 申立人の主張の検討 まず、甲13~甲16の公開日は、いずれも本件特許の出願日後であるから、本件特許の出願日当時の技術常識であることの証拠とはいえない。その上で、甲7、甲13~甲17には、包装袋において柔軟性を考慮することは記載されているとしても、「試験体の前記包装袋における繊維の縦方向のソフトネス」及び「試験体の前記包装袋における繊維の横方向のソフトネス」について、具体的な数値範囲は記載も示唆もない。 そして、甲1の記載を参酌しても、甲1発明の「シートを収容する袋本体10」における、「袋本体10」に求められる柔軟性の程度は明らかでなく、また、上記(2)で説示したとおり、「袋本体10」の「繊維の縦方向のソフトネス」及び「袋本体10」の「繊維の横方向のソフトネス」を調整することを示唆するものでもない。 さらに、本件特許の【0118】の【表1】を参酌すると、当該構成を備えた実施例1~10が有利な効果を奏することが確認でき、特定の数値範囲の「ヒートシール強度」と、特定の数値範囲の「試験体の前記包装袋における繊維の縦方向のソフトネス」及び「試験体の前記包装袋における繊維の横方向のソフトネス」により、破断しにくい包装袋を提供しているものと解される。 そうすると、甲1発明において、上記相違点4に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 (5) まとめ したがって、本件発明1は、甲1発明、他の甲号証及び引用文献1からは、当業者といえども容易に発明ができたものではない。 3 本件発明2~11について 本件発明2~11は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記2(2)で判断したことと同じ理由により、甲1発明に基いて当業者といえども容易に発明できたものではない。 4 小括 上記2、3のとおり、本件の請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、先の取消理由(決定の予告)における取消理由によって、取り消すべきものではない。 第7 取消理由(決定の予告)で採用しなかった申立理由 1 申立理由の概要 先の取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。 申立理由1(進歩性)(異議理由2) 本件発明1~11は、甲11発明及び周知技術乃至技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 申立理由2(サポート要件)(異議理由3) 本件特許明細書【0005】に「本発明の課題は、破断しにくい包装袋を提供することである。」と記載されているとおり、本件特許発明は破断しにくい包装袋の提供をその目的の1つとする。 一方、本件特許明細書の表1には、紙層を坪量20g/m2のレーヨン紙で構成した比較例5の包装袋についての評価結果が示されており、当該表1によれば、比較例5の包装袋は、紙化率75%、且つ、140℃におけるヒートシール強度が0.37kN/mと測定されているから、熱可塑性樹脂を含むヒートシール可能な樹脂層を備えることが明らかであり、しかも、本件特許発明の範疇に含まれるものである。 しかし、本件特許明細書の表1によれば、比較例5の包装袋は、エンドシール性及びボトムシール性が共に「×」(不良)となっている。 してみると、本件特許発明の範疇に、本件特許発明の目的を達成しない態様が含まれていることは明らかである。 したがって、本件の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさないものである。 2 当審の判断 (1)申立理由1(進歩性)(異議理由2)について ア 甲11について (ア) 甲11の記載 甲11(特開2009-51210号公報)には以下の記載がある。 「【0103】 その他の樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリブテンなどが挙げられる。これらを使用する場合、1種類以上の樹脂を任意の組み合わせおよび比率で併用することができる。」 「【0213】 (2-3)積層体の利用 <2次加工> 本発明で得られた積層体は各種包装資材や製袋、カップ、トレー、カートン等に2次加工が可能である。各種の加工は、従来の紙、プラスチック積層紙の場合と同じ方法、すなわち、包装資材としては三方シール自動製袋機、センターシール自動製袋機、スタンディングパウチ自動製袋機などの自動製袋機やピロー型自動充填包装機、三方シール充填包装機、四方シール充填包装機などの自動充填包装機を用いて行うことができ、製袋としては平袋、角底袋、亀の甲底袋などの各種形状に加工することができる。更に紙カップ成形機、打抜機、サック貼機、製函機等の装置を用いて加工することもできる。これらの加工機において積層体の接着方法は公知の技術で採用されるが、一般的にヒートシール法、インパルスシール法、超音波シール法、高周波シール法、ホットエアシール法、フレームシール法などが採用される。」 「【0218】 包装容器資材としては、例えば、ショッピングバッグ、各種製袋、ビデオやオーディオ等の磁気テープカセット製品包装材、フレキシブルディスク包装材、製版用材、包装用バンド、粘着テープ、テープ、ヤーン、コップ、トレー、カートン、弁当箱、惣菜用容器、食品・菓子包装材、食品用ラップ材、化粧品・香粧品用ラップ材、おむつ、生理用ナプキン、医薬品用ラップ材、製薬用包装資材,肩こりや捻挫等に適用される外科用貼付薬用包装資材など食品、電子、医療、薬品、化粧品等の各種包装材が挙げられる。」 「【0231】 <ヒートシール強度> JIS Z 1526に準じてヒートシール強度を求めた。試験片の作成およびヒートシール強度の測定に関してはサンプルの状態調節として23℃ 50%RH下で1日以上静置したものを使用した。 試験片としては、樹脂層の膜圧が20μmの平坦部を使用し、縦、横15cmに切り出し、樹脂層部分をあわせるようにして一端をヒートシーラーにてヒートシールし、幅15mmの短冊形に切り出したものを用いた。この時フィルムの流れ方向に直角にシールしたものを縦シール強度とした。逆にフィルムの流れ方向に平行にシールしたものを横シール強度とした。 ヒートシールは、シールバー幅5mmの片面加熱バーシーラーを使用して、シール温度150℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒で行った。 ヒートシール強度は、テンシロン型万能試験機にて剥離角度を180度とし、引張り速度300mm/minにおいて加重を測定した値(N/15mm)である。」 「【0238】 [生分解性樹脂積層体の作成] (実施例1) ・・・基材としてクラフト紙(70g/m2)を速度50m/minで繰り出し、コロナ処理(55W/m2)を施し、これに、膜厚20μmとなるよう繰り出し速度および押出機回転数を微調整しながら樹脂の溶融膜を積層することによって積層体を得た。・・・」 「【0262】 (比較例6) 原料樹脂を低密度ポリエチレンである、日本ポリエチレン社製ノバテックスLC720(MI=9.5)に変更し、実施例1におけるシリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)230℃、C2(ダイス側温度)295℃、ダイス部温度300℃に設定し、樹脂温度が270℃になるように変更した。結果を表1に示す。樹脂圧は7.2MPaで一定であり吐出安定性も優れていた。樹脂層同士のヒートシール強度は8(N/15mm)であり、樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は1(N/15mm)以下であった。」 「【0273】 <臭気官能試験> 実施例6、実施例7、比較例6で得た積層体について、それぞれの積層体を10cm×11cmの三方シール袋をヒートシール機にて成形し、そこにリモネン0.5gを脱脂綿1gにしみこませたサンプル瓶を準備し、袋に詰めて上部をヒートシールし経時変化ごとに臭気の官能試験を実施した。 結果、ポリエチレンを樹脂層とする積層体からはがリモネン臭が強く感じられた。しかし実施例6と実施例7の脂肪族ポリエステル製の樹脂層を有する積層体ではリモネン臭が抑えられていた。次に、香気成分を取り出し、袋に新鮮な空気を入れ、臭気の官能試験を実施した。樹脂層がポリエチレン製のものはリモネン臭が非常に強く感じられ、樹脂にリモネンが吸着されている様子であった。一方、樹脂層が脂肪族ポリエステル製のものは樹脂層がポリエチレン製に比べるとリモネン臭が低減されていた。 【0274】 <悪臭度の官能試験> 実施例7、比較例6で得た積層体を角底袋に成形し、そこに水気のある茶殻、コーヒーカス、野菜屑、魚の内臓物などの生ごみ5gを入れ、上部をヒートシールし経時変化ごとに悪臭度の官能試験を実施した。 結果、比較例6のポリエチレンを樹脂層とする積層体は悪臭がひどく感じられた一方、実施例7の樹脂層が脂肪族ポリエステル製のものでは悪臭が抑えられていた。」 (イ) 甲11に記載の発明 甲11には、上記アから、比較例6に着目すると、以下の「甲11発明」が記載されていると認められる。なお、括弧内の段落は、理解のため特に参照すべき箇所である。 [甲11発明] 「基材としてクラフト紙(70g/m2)を繰り出し、コロナ処理(55W/m2)を施し、これに、膜厚20μmとなるよう繰り出し速度および押出機回転数を微調整しながら、低密度ポリエチレンである、日本ポリエチレン社製ノバテックスLC720(MI=9.5)による樹脂の溶融膜を積層することによって積層体を得て、(【0238】、【0262】) ヒートシールをシールバー幅5mmの片面加熱バーシーラーを使用して、シール温度150℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒で行った場合の樹脂層同士のヒートシール強度は8(N/15mm)であり、(【0231】、【0262】) 前記積層体について、それぞれの積層体をヒートシール機にて成形した、10cm×11cmの三方シール袋。(【0273】)」 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲11発明を対比する。 甲11発明の「基材としてクラフト紙(70g/m2)」を用いた層は、本件発明1における「紙成分を含む紙層」に相当する。 甲11発明の「低密度ポリエチレン」の「溶融膜」は、「クラフト紙」に積層されたものであるから、本件発明1における「前記紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層」に相当する。 甲11発明の「三方シール袋」は、本件発明1における「包装袋」と、「袋」の限りにおいて相当する。 上記対比を踏まえれば、本件発明1と甲11発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 a 一致点2 「袋であって、 紙成分を含む紙層と、 前記紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた樹脂層と、を有する袋。」 b 相違点 (a)相違点5 袋について、本件発明1は「シートを収容する包装袋」であるのに対して、甲11発明は、「三方シール袋」である点。 (b)相違点6 本件発明1は「包装袋における前記紙成分の比率が50%以上であ」るのに対して、甲11発明は、そのような特定がなされていない点。 (c)相違点7 本件発明1は「140℃におけるヒートシール強度が0.23kN/m以上0.64kN/m以下である」のに対して、甲11発明は、そのような特定がなされていない点。 (d)相違点8 本件発明1は「JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の縦方向のソフトネスが130mN/100mm以上730mN/100mm以下であり、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の横方向のソフトネスが60mN/100mm以上310mN/100mm以下である」のに対して、甲11発明は、そのような特定がなされていない点。 (イ) 判断 事案に鑑み、相違点8から検討する。 甲11、他の甲号証及び引用文献においても、包装袋について、「JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の縦方向のソフトネスが130mN/100mm以上730mN/100mm以下であり、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の横方向のソフトネスが60mN/100mm以上310mN/100mm以下である」ことは、記載も示唆もされていない。また、甲11発明において、「繊維の縦方向のソフトネス」及び「繊維の横方向のソフトネス」を調整することを示唆するものではなく、さらに当該事項における具体的な数値範囲を得ることが設計的事項であるといった事情もない。 そうすると、甲11発明において、上記相違点8に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 (ウ) まとめ したがって、本件発明1は、甲11発明、及び他の甲号証からは、当業者といえども容易に発明ができたものではない。 ウ 本件発明2~11について 本件発明2~11は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イ(イ)で判断したことと同じ理由により、甲11発明及び周知技術乃至技術常識に基いて当業者といえども容易に発明できたものではない。 エ 小括 上記イ、ウのとおり、申立理由1からは請求項1~11に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから、申立理由1によっては、請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。 (2) 申立理由2(サポート要件違反)について ア 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされているところ、以下、この規範に沿って検討する。 イ 本件特許明細書(【0005】等)の記載からみて、本件の課題の1つに「破断しにくい包装袋を提供すること」があると認められるところ、当該課題を解決するための手段として、請求項1には「前記紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層と、を有し、前記包装袋における前記紙成分の比率が50%以上であり、140℃におけるヒートシール強度が0.23kN/m以上0.64kN/m以下であり、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の縦方向のソフトネスが130mN/100mm以上730mN/100mm以下であり、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した試験体の前記包装袋における繊維の横方向のソフトネスが60mN/100mm以上310mN/100mm以下である」点が特定されている。 そして、本件特許明細書の【0118】の【表1】を参酌すると、上記構成を備える実施例1~実施例10において、「破断」の評価がすべて「○」であることが記載されており、特許請求の範囲に記載された発明が、当該課題を解決することが確認できる。 してみれば、特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載したものであって、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 ウ 申立人は、表1において、紙層を坪量20g/m2のレーヨン紙で構成した比較例5の包装袋についての評価結果が示されており、当該表1によれば、比較例5の包装袋は、紙化率75%、且つ、140℃におけるヒートシール強度が0.37kN/mと測定されているから、熱可塑性樹脂を含むヒートシール可能な樹脂層を備えることが明らかであり、しかも、本件特許発明の範疇に含まれるものであるが、エンドシール性及びボトムシール性が共に「×」(不良)となっており、本件特許発明の目的を達成しない態様であるから、本件の特許請求の範囲の記載は所謂サポート要件を満たさないものである旨主張する。 エ しかしながら、比較例5は、【0116】に「紙層10Aを坪量20g/m2のレーヨン紙で構成した以外は、比較例1と同様に評価した。結果を表1に示す。」と記載されているところ、比較例1は、【0112】に「試験体(シート包装体100)の包装袋10において、紙層10Aを坪量20g/m2のクラフト紙で構成した1層構造とした。」と記載されている。すなわち、比較例5は、比較例1のクラフト紙を坪量20g/m2のレーヨン紙に置き換えた1層構造であると理解される。 してみれば、当該【表1】の比較例5の「米坪(g/m2)」を「30.4」、「紙化率(%)」を「75」とした記載は、それぞれ「20」、「100」の誤記であることは明らかである。 そうすると、誤記を含む比較例5の記載を根拠とする上記主張は、その前提において誤っているといえる。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 オ 小括 上記ア~オのとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合する。 したがって、申立理由2によっては、請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。 第8 むすび 以上により、本件特許の請求項1~11に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701064

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