特許異議申立
2025-700367
易開封性包装材及び包装袋
- 審判番号
- 2025-700367
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-094527
- 登録番号
- 7563646
- 請求日
- 2025年03月31日
- 審決日
- 2025年12月23日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【異議申立人】鈴木 多香子
- 【異議申立人】合同会社 SAS
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 長清 吉範
- 審判官 長谷川 一郎
- 分類
- P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7563646号発明「易開封性包装材及び包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7563646号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7563646号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7563646号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)9月12日(優先権主張 令和3年9月16日)を国際出願日とする出願である特願2022-575791号の一部を、令和5年2月7日に新たな特許出願とした特願2023-16776号の一部を、令和6年6月11日に新たな特許出願としたものであって、令和6年9月30日に特許権の設定登録がされ、同年10月8日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年 3月31日 :特許異議申立人鈴木多香子(以下「申立人1」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年 4月 4日 :特許異議申立人合同会社SAS(以下「申立人2」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年 7月 1日付け:取消理由通知書
令和7年 9月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年10月 6日 :申立人2による意見書(以下「申立人2意見書」という。)の提出
令和7年10月10日 :申立人1による意見書(以下「申立人1意見書」という。)の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
訂正請求書による訂正の請求(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7563646号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は当審において訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項
特許請求の範囲の請求項1に
「引張破断強度」とあるのを、
「MD及びCDの引張破断強度」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。)。
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~7〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項は、訂正前の請求項1に記載の「引張破断強度」の方向が「MD及びCD」であることを限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、又は、図面(以下「本件明細書等」という。)の【0057】、【0097】、【0099】~【0101】の【表1】~【表3】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
紙基材と、
金属又は金属酸化物の蒸着層と、
シーラント層と、
をこの順序で備える積層構造を有する包装材であって、
前記紙基材の重量が、包装材全体を基準として、50質量%以上であり、
前記シーラント層の厚さが、2~40μmであり、
前記シーラント層が、第1のポリオレフィン系樹脂を含み、
MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである、易開封性包装材。
【請求項2】
前記第1のポリオレフィン系樹脂が、カルボキシル基及びカルボキシル基の塩からなる群より選択される少なくとも1種を有する、請求項1に記載の易開封性包装材。
【請求項3】
前記シーラント層の厚さが、2~20μmである、請求項1に記載の易開封性包装材。
【請求項4】
前記蒸着層と、前記シーラント層との間に接着剤層を更に備える、請求項1に記載の易開封性包装材。
【請求項5】
前記蒸着層と、前記接着剤層との間にオーバーコート層を更に備え、
前記オーバーコート層が、カルボキシル基及びカルボキシル基の塩からなる群より選択される少なくとも1種を有する第2のポリオレフィン系樹脂を含む、請求項4に記載の易開封性包装材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の易開封性包装材を含む、包装袋。
【請求項7】
折り曲げ部を有する、請求項6に記載の包装袋。」
第4 取消理由通知の概要
当審において特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。なお以下において、申立人○が提出した甲第△号証を「○甲△」という。
取消理由1(サポート要件)
本件発明の課題は、「ノッチを有していない場合であっても引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れ、水蒸気バリア性に優れ、且つ環境に配慮した易開封性包装材及び包装袋を提供する」(【0007】)ことである。
本件特許は、請求項1~7の記載において「引張破断強度」が、「40~70N/15mmである」ことは特定されているものの、当該「引張破断強度」は、その方向について特定されておらず、種々の方向を含むため、一方向においてのみ引張破断強度が、40~70N/15mmであるものを含むと解される。しかしながら、引張破断強度が、一方向においてのみ40~70N/15mmの範囲を満たすものは、「引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる」という効果を得られるとは認められず、包装材が、少なくとも「任意の方向と、当該任意の方向に垂直な方向」において引張破断強度が40~70N/15mmの範囲を満たすことにより、包装材は「引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる」という効果を奏し、上記本件発明の課題を解決できると当業者であれば認識できる。すなわち、本件発明1~7は上記本件発明の課題を解決できるとは認識できない。
したがって、本件発明1~7は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、1甲1に記載された発明、2甲1に記載された発明、2甲4に記載された事項及び1甲3に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由3(進歩性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、2甲1に記載された発明、1甲1、2甲3に例示された周知技術及び1甲3に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献一覧>
1甲1:特開2021-133981号公報
1甲3:特開2004-204366号公報
2甲1:特開2020-49913号公報
2甲3:特開2021-120275号公報
2甲4:特開2010-64763号公報
第5 当審における判断
当審合議体は以下のとおり、上記取消理由で通知した取消理由1(サポート要件)、取消理由2(進歩性)、取消理由3(進歩性)によっては、訂正後の請求項1~7に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
1 甲号証の記載及び発明等
(1)1甲1
ア 1甲1の記載
1甲1には、以下の記載がある。ここで、下線は当審において付した。また、「・・・」は省略を示す。以下同様。
(ア) 「【0001】
本発明は、紙製品、特に薄葉紙等の紙製品を包装するのに好適な紙製品用包装体に関する。」
(イ) 「【0007】
また、特に近年の環境問題に対する意識の高まりから、プラスチック(合成樹脂)及びそれを含むフィルムの使用量を削減することが望まれている。しかし、フィルム包装の場合は、フィルムは柔らかく、伸びやすく、かつ薄いことから、紙製品を包装しても包装体全体をコンパクトにしやすいが、紙を使用した包装基材の場合、紙は固く、伸びにくく、かつ厚いことから、それらの達成が困難であった。」
(ウ) 「【0017】
2.包装基材
包装基材10は、少なくとも紙基材とシール層とを含んでいる。紙基材には、包装体1として形成された際、外面側に印刷が施されていてもよい。また、紙基材は、防水性の確保のために、オーバーコートが施されたオーバーコート紙であってもよい。」
(エ) 「【0028】
包装基材10の坪量(例えば、紙基材とシール層との合計坪量)に対する紙基材の坪量の割合は、51%以上100%以下であればよいが、通常、60%以上95%以下であることがより好ましく、70%以上90%以下であることが更に好ましい。上記範囲内とすることで、包装基材10の強度等が適正になって包装体1が紙製品11を包装し易くなり、また、包装体1が全体としてコンパクト性を有することができる。さらに、良好なヒートシール性又は接着性も確保できる。
【0029】
(2)シール層
本発明の包装体1において、包装基材10は、紙基材の他にシール層を含むが、シール層はヒートシール層及び/又は接着剤層であることが好ましい。本発明の包装基材10は、例えば、紙基材/ヒートシール層、紙基材/接着剤層、紙基材/ヒートシール層/接着剤層、紙基材/接着剤層/ヒートシール層等のような層構成を取ることができる。また、後述するキャラメル包装の場合は、ヒートシール層同士や接着剤層同士が接しない場合があるため、包装体1を包装する際に、糊やホットメルト接着剤で接着させることができる。この場合は、糊やホットメルト接着剤がシール層に該当し、ヒートシール層及び/又は接着剤層を更に形成しなくてもよい。
・・・
【0031】
ヒートシール層を構成する材料としては特に限定されず、各種ヒートシール性を発現する材料のいずれも使用することができ、例えば、ポリオレフィン系樹脂や、その他の熱可塑性樹脂等を使用することができる。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-α・オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、アイオノマー、・・・等を使用することができる。ヒートシール層を構成する材料は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」
(オ) 「【0041】
(3)他の層
本発明の包装基材10は、紙基材、シール層以外に、他の層を備えていてもよい。他の層としては、例えば、水蒸気バリア層、酸素バリア層、印刷層、印刷適性向上層、オーバープリント層、遮光層等が挙げられる。これら他の層は、例えば、紙基材とシール層との間、あるいは包装基材10の最上面に設けることができ、1層でもよく、2層以上であってもよい。
【0042】
(4)包装基材全体の物性
後述するように、本発明に係る包装体1の包装形式は種々あり、製造ライン方向(搬送方向;MD方向)から紙製品11を包むように包装する場合と、製造ライン方向と直交する幅方向(CD方向)から紙製品11を包むように包装する場合とがある。MD方向から紙製品11を包む場合、包装基材10のMD方向の引張強度は、2.0kN/m以上8.0kN/m以下であることが好ましく、2.5kN/m以上6.5kN/m以下であることがより好ましく、3.3kN/m以上5.5kN/m以下であることが更に好ましい。CD方向から紙製品11を包む場合、包装基材10のCD方向の引張強度は、0.7kN/m以上4.0kN/m以下であることが好ましく、0.9kN/m以上3.0kN/m以下であることがより好ましく、1.1kN/m以上2.0kN/m以下であることが更に好ましい。上記の範囲内にすることで、包装基材10の強度等が適正になって包装体1が紙製品11を包装し易くなり、また、包装体1が全体としてコンパクト性を有することができる。包装基材10の引張強度は、JIS P 8113に準拠して測定することができる。」
(カ) 「【0044】
MD方向から紙製品11を包む場合、包装基材10のMD方向の引裂強度は、300mN以上1600mN以下であることが好ましく、450mN以上1200mN以下であることがより好ましく、580mN以上900mN以下であることが更に好ましい。CD方向から紙製品11を包む場合、包装基材10のCD方向の引裂強度は、400mN以上3000mN以下であることが好ましく、700mN以上2300mN以下であることがより好ましく、900mN以上1500mN以下であることが更に好ましい。上記の範囲内にすることで、包装基材10の強度等が適正になって包装体1が紙製品11を包装し易くなり、また、包装体1が全体としてコンパクト性を有することができる。包装基材10の引裂強度は、JIS P 8116に準拠して測定することができる。」
(キ) 「【0076】
(実施例1)
(包装基材)
パルプ原料として針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)100重量%を用いた紙基材を用意した。そして、紙基材上に、ヒートシール層として、ポリエチレン層を押出法によって製膜し、包装基材を作製した。作製した包装基材の坪量、紙基材の坪量、及びヒートシール層の坪量と、包装基材の厚さ、密度、MD方向及びCD方向の引張強度、MD方向及びCD方向の破断伸び、破裂強度、MD方向及びCD方向の曲げこわさ、並びにMD方向及びCD方向の引裂強度、を測定した結果を表1に示す。
【0077】
(ティッシュペーパー包装体(ガゼット包装))
作製した包装基材を用いて、包装基材のMD方向18cm×包装基材のCD方向11cm×高さ5cmの大きさの包装体を作製した。そして、この包装体の中に、紙製品としてティッシュペーパー2plyを50組入れ、ガゼット包装により密封して、ティッシュペーパー包装体を得た。なお、CD方向から紙製品を包みながら包装する形式とした。」
(ク) 「【0080】
(実施例2)~(実施例12)、(比較例1)~(比較例4)
実施例2~12及び比較例1~4も実施例1と同様にして、表1に示す物性を有する包装基材を作製し、これを用い、実施例1と同様にして、ティッシュペーパー包装体(ガゼット包装)を作製して、包装体の包装性及び包装体のコンパクト性とティッシュペーパーの触感を評価した。・・・
【0081】
【表1】
[図:0001434153000001.jpg]
」
イ 1甲1に記載された発明
上記アを踏まえ、特に【0076】に記載の実施例1に着目すると、1甲1には以下の発明(以下「1甲1発明」という。)が記載されている。
「紙基材上に、ヒートシール層として、ポリエチレン層を押出法によって製膜し、作製した包装基材であって、
包装基材の坪量が38.5g/m2、紙基材の坪量が25.3g/m2、ヒートシール層の坪量が13.2g/m2、紙基材の割合が66%であり、
引張強度(MD)が2.46kN/mであり、引張強度(CD)が0.84kN/mである、包装基材。」
(2) 2甲1
ア 2甲1の記載
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材及び該包装材を用いた包装袋、並びに、該包装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、易開封性を備えた包装袋が数多く商品化されている。このような包装袋は、任意の一方向(通常、幅方向及び幅方向に直交する方向の何れか一方向)に引き裂きやすいが、他の方向には引き裂きにくい性質を備えるものである。」
(イ) 「【0007】
本発明は、引き裂き性に優れる包装材、該包装材を用いた包装材、並びに、該包装材の製造方法を提供することを目的とする。」
(ウ) 「【0013】
〔包装材〕
本発明は、紙基材と、該紙基材に接触する接着剤層と、シーラント層とがこの順で積層されてなる包装材であって、前記包装材の第1方向への引張強度をσ1、前記第1方向に直交する前記第2方向への引張強度をσ2と定義したときに、前記包装材が条件式(1)を満たし、前記第1方向における前記紙基材の前記接着剤層側の表面の算術平均粗さをRa1、前記第2方向における前記紙基材の前記接着剤層側の表面の算術平均粗さをRa2と定義した場合に、前記紙基材が条件式(2)を満たす。
σ1/σ2≧2.0 (1)
(Ra1+Ra2)/2≦3.0μm (2)」
(エ) 「【0034】
<シーラント層>
シーラント層は、包装袋を形成したときに最内層に位置し、包装袋の内層側の面が被包装物と接触し、被包装物を保護するものである。被包装物が液状の場合には、シーラント層は液状物に対する耐浸透性を有していることが好ましい。
また、シーラント層は、包装材を包装袋の形態にしやすくするために、内層側がヒートシール性を有していることが好ましい。
【0035】
シーラント層の厚みは、特に限定されるものではなく、包装材の用途及び被包装物の種類や性質等に応じて適宜設定される。通常、10~200μm程度であることが好ましい。包装材で包装袋が形成される場合、シーラント層の厚みは、より好ましくは15~150μm、更に好ましくは20~100μmである。
【0036】
シーラント層を構成する材料としては、例えば、低密度PE(LDPE)、直鎖状低密度PE(LLDPE)、中密度PE(MDPE)、高密度PE(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上の樹脂を用いることができる。シーラント層は、単層で構成しても、2層以上の多層で構成しても良い。シーラント層は、無延伸のフィルムであることが好ましい。例えば、シーラント層は、無延伸プロピレンフィルム(CPP)であることが好ましい。
【0037】
<ガスバリア層>
ガスバリア層は、被包装物と包装材の外部環境との間で、酸素や水蒸気等の透過を遮断するものである。また、可視光や紫外線等の透過を遮断する遮光性をも付与するものであっても良い。ガスバリア層は、1層で構成されていても、2層以上の多層で構成されていても良い。
【0038】
ガスバリア層は、公知の材料により構成することができる。例えば、シーラント層の表面に蒸着膜やガスバリア性を有する塗布膜を形成した構成とすることができる。本発明の包装材の場合は、ガスバリア層として蒸着膜がシーラント層上に設けられている構成が好ましい。
なお、蒸着膜や塗布膜の密着性向上の観点から、シーラント層には、予め表面処理を施しておいても良い。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスや窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、酸化剤処理、アンカーコート剤の塗布等が挙げられる。」
(オ) 「【0052】
〔包装袋〕
本発明の包装袋は、上述した本発明の包装材で形成されてなるものである。
より具体的には、本発明の包装袋は、上述した本発明の包装材の少なくとも一部をシールして形成されてなるものである。シール部はシーラント層のヒートシール性を利用することが好ましい。
【0053】
包装袋の形態は、筒型の胴への背シールと上下のシールがされたピロー袋(合掌袋)、三辺がシールされている三方シール袋、四辺がシールされている四方シール袋、袋の底が立体的に確保されており自立可能なスタンディングパウチ、両サイド又は底がV字型に畳まれているガゼット袋が挙げられる。」
(カ) 「【0060】
1-1.紙基材の表面形状
紙基材1の両面、及び、紙基材2のツヤ面に関して、JIS B0601:2001に準拠したカットオフ値(λc)0.8mmとした際の算術平均粗さRaを測定した。紙基材1の測定では、各面の繊維の配向方向(以下、単に「配向方向」と称する場合がある)と該配向方向に直交する方向(以下、単に「直交方向」と称する場合がある)にスキャンした。・・・
【0062】
1-3.包装材の引張強度
紙基材1を用いた包装材について、繊維の配向方向を横として、縦15mm×横70mmの大きさに切断したサンプルE、及び、縦70mm×横15mmの大きさに切断したサンプルFを作製した。
紙基材2について、縦15mm×横70mmの大きさに切断したサンプルG、及び、縦70mm×横15mmの大きさに切断したサンプルHを作製した。
JIS K7127:1999に準じて、株式会社オリエンテック製シングルコラム型材料試験機STA-1150を用い、試験長さ50mm、引張速度を300mm/分の条件で、各サンプルE~Hの引張強度を測定した。5点の測定結果の平均値を「引張強度」とした。
紙基材1を用いた包装材について、直交方向の引張強度に対する配向方向の引張強度の比(引張強度比)を算出した。紙基材2を用いた包装材について、横方向の引張強度に対する縦方向の引張強度の比(引張強度比)を算出した。結果を表1及び表2に示す。なお、比較例1~3の包装材は接着不良が発生したため、引張強度の測定は省略した。
【0063】
1-4.易開封性
実施例及び比較例で得られた包装袋(ピロー袋)をノッチ部から開封する作業を行った。ノッチ部の切り込み方向(以下、開封方向と称する)に沿って直線的に容易に引き裂けて開封できたものを「A」、引き裂きの方向が斜めにずれ引き裂き難かったもの、及び、容易に引き裂けなかったものを「C」とした。評価結果を表1及び表2に示す。なお、比較例1~3の包装材は接着不良が発生したため、包装袋を作製せず、易開封性の評価は省略した。
【0064】
2.紙基材
紙基材1として、密度:0.59g/cm3、坪量:23.1g/m2、透気度:6.4s/100mlの特殊紙を用いた。
紙基材2として、密度:0.73g/cm3、坪量:23.5g/m2、透気度:36.4s/100mlの普通紙を用いた。」
(キ) 「【0066】
(実施例2)
ノンソルベントラミネート法により、実施例1に使用する包装材を作製した。
厚み50nmのアルミ蒸着膜が形成されたシーラント層(CPP、エチレン-プロピレンブロック共重合体の単層フィルム、厚み25μm)を用い、アルミ蒸着膜上に実施例1と同じ接着剤を塗布し、厚み3μmの接着剤層を形成した。次いで、接着剤層と紙基材1のツヤ面をラミネートして実施例2の包装材を作製した。
得られた包装材を用い、引き裂き方向を紙基材1の配向方向と一致させて、シーラント層をヒートシールして実施例2のピロー袋を作製した。実施例2のピロー袋の上シール部に、縦方向(紙基材1の配向方向と一致)のノッチ部を形成した。」
(ク) 「【0073】
(比較例6)
ノンソルベントラミネート法により、比較例6に使用する包装材を作製した。
厚み50nmのアルミ蒸着膜が形成されたシーラント層(CPP、エチレン-プロピレンブロック共重合体の単層フィルム、厚み25μm)を用い、アルミ蒸着膜上に比較例4と同じ接着剤を塗布し、厚み3μmの接着剤層を形成した。次いで、接着剤層と紙基材2のツヤ面をラミネートして比較例6の包装材を作製した。
得られた包装材を用い、引き裂き方向を紙基材2の縦方向と一致させて、シーラント層をヒートシールして比較例6のピロー袋を作製した。実施例2のピロー袋の上シール部に、縦方向(紙基材2の縦方向と一致)のノッチ部を形成した。
【0074】
(比較例7)
引き裂き方向を紙基材2の横方向と一致させてシーラント層をヒートシールした以外は、比較例6と同じ工程で比較例7のピロー袋を作製した。比較例7のピロー袋の上シール部に、縦方向(紙基材2の横方向と一致)のノッチ部を形成した。」
(ケ) 「【0077】
4.結果
【表1】
[図:0001434153000002.jpg]
[図:0001434153000003.jpg]
」
イ 2甲1に記載された発明
(ア) 上記アを踏まえ、特に【0066】に記載の実施例2に着目すると、2甲1には以下の発明(以下「2甲1-1発明」という。)が記載されている。
「厚み50nmのアルミ蒸着膜が形成されたシーラント層(CPP、エチレン-プロピレンブロック共重合体の単層フィルム、厚み25μm)を用い、アルミ蒸着膜上に厚み3μmの接着剤層を形成し、接着剤層と紙基材1のツヤ面をラミネートして作製した包装材であって、
紙基材の坪量が23.1g/m2であり、
包装材の配向方向の引張強度が4.35kN/mであり、直交方向の引張強度が1.27kN/mであり、
ノッチ部の切り込み方向に沿って直線的に容易に引き裂けて開封できる、包装材。」
(イ) 上記アを踏まえ、特に【0073】、【0074】に記載の比較例6、7に着目すると、2甲1には以下の発明(以下「2甲1-2発明」という。)が記載されている。
「厚み50nmのアルミ蒸着膜が形成されたシーラント層(CPP、エチレン-プロピレンブロック共重合体の単層フィルム、厚み25μm)を用い、アルミ蒸着膜上に厚み3μmの接着剤層を形成し、接着剤層と紙基材2のツヤ面をラミネートして作製した包装材であって、
紙基材の坪量が23.5g/m2であり、
包装材の紙基材の縦方向の引張強度が3.05kN/mであり、紙基材の横方向の引張強度が2.53kN/mであり、
引き裂きの方向が斜めにずれ引き裂き難いか、容易に引き裂けない、包装材。」
(3) 2甲4
ア 2甲4の記載
2甲4には、以下の記載がある。
(ア) 「【0013】
基材とその表面および裏面に薄膜樹脂層を形成した本発明の帯封紙において、引張強度が2kN/m以上、引裂強度が600~1500mN以下の帯封紙であると、通常時は適度な強度を有しつつ、開封時には手で容易に切断することができる帯封紙を得ることができるので、好ましい。
【0014】
この範囲を上回ると、開封時に手で容易に切れず、ハサミなどの道具を使わないといけないのでわずらわしく、刃物を使用するのである程度の危険性も生ずる傾向となる。あらかじめ点線切れ込みや側端部に切れ込みを入れて容易に切りやすいようにすることも可能であるが、工程が増えることでコストアップになるなどの不具合がある。また、その部分だけ、他と比べて強度が落ちるので、物流途上で誤って切れてしまうなど商品価値を下げてしまう確率が上がってしまう。
一方、この範囲を下回ると、全体的な強度が不足するので、上記同様、物流途上でどの部分からも切れてしまう不具合が危惧される。
より好ましくは、引張強度が2~11kN/mであり、引張強度2~5kN/mが最適である。」
(イ) 「【0030】
本発明は、食品、スーパー、コンビニなどのそば、お弁当、おにぎり、お総菜などを包装する帯封紙、ほうれん草、ネギなどの野菜、その他花類などを結束する帯封紙などとして利用可能である。」
イ 2甲4に記載の事項
上記アから、2甲4には以下の事項(以下「2甲4記載事項」という。)が記載されている。
「食品に用いる帯封紙であって、基材とその表面および裏面に薄膜樹脂層を形成した帯封紙において、引張強度2~5kN/m、引裂強度が600~1500mNとすることにより、通常時は適度な強度を有しつつ、開封時には手で容易に切断することができること。」
(4) 1甲3
ア 1甲3の記載
1甲3には、以下の記載がある。
(ア) 「【0026】
まず、上記請求項1に係る発明は、例えば図1の積層断面図に示すように、片面または両面にコートされた紙もしくは板紙を基材(10)とし、そのコート面に、蒸着アンカー層(12)、蒸着薄膜層(14)、オーバーコート層(16)が順に積層されている防湿紙(1)とするものである。」
(イ) 「【0038】
また、図1および図2に示すオーバーコート層(16)として、上記請求項5に係る発明では、アクリル樹脂もしくはポリエステル樹脂でなるものとし、これら樹脂をトルエン、酢酸ブチル等の溶剤に溶解して塗布液とし、あるいは水性(水溶性またはエマルジョン)の塗布液とし、グラビア方式あるいはロールコート方式等でオーバーコート層(16)とするもので、上記蒸着薄膜層(14)を傷等から保護し防湿性を高める防湿紙(1)とすることができる。」
(ウ) 「【0041】
また、上記請求項8に係る発明では、例えば図2に示すように、オーバーコート層(16)上に、もしくは図3に示すように、蒸着アンカー層(12)が施された紙もしくは板紙でなる基材(10)の反対面に、シーラント層(18)を設けた防湿紙(1)であり、このシーラント層(18)としては、例えば厚さ10~200μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルムあるいは無延伸ポリプロピレンフィルムなどをドライラミネーション用接着剤を介してラミネートされて得られるか、あるいは、溶融された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂を押し出しラミネートされて得られるものである。」
(エ) 「【図2】
[図:0001434153000004.jpg]
」
イ 1甲3に記載の事項
上記アから、1甲3には、以下の事項(以下「1甲3記載事項」という。)が記載されている。
「片面または両面にコートされた紙もしくは板紙を基材とし、そのコート面に、蒸着アンカー層、蒸着薄膜層、オーバーコート層、シーラント層が順に積層されている防湿紙であって、オーバーコート層がアクリル樹脂もしくはポリエステル樹脂でなり、シーラント層はドライラミネーション用接着剤を介してラミネートされて得られる、防湿紙。」
(5) 2甲3
2甲3には、以下の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は、各種液体や粉粒体を収納するための包装容器に関し、特に再生産可能な材料である紙を主材料とし、環境に対する負荷を少なくした包装容器に関する。」
イ 「【0003】
しかし近年、化石燃料による地球温暖化や、プラスチック材料による海洋汚染等が問題視されるようになり、地球環境保護の立場から、化石燃料を原料とするプラスチックを極力減らし、再生産が可能で持続可能な資源である木材を原料とする紙を用いた包装材料が注目されてきている。木材は、成長の過程において、空気中の二酸化炭素を吸収するので、廃棄された時の二酸化炭素の排出量が実質ゼロとカウントされる、カーボンニュートラルな材料である。」
ウ 「【0016】
本発明に係る包装容器は、再生産可能な材料である紙の重量が全重量の50%を超えるため、地球環境保全に資するところが大きい。また、包装容器は法制度上、紙容器としての分類となるため、事業者の負担が軽減される。」
(6) 周知の技術と認められる事項
上記(1)の特にア(イ)及び(エ)、並びに上記(5)の記載を踏まえれば、以下の事項は周知の技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。
「環境保護の立場から、包装材における紙の重量を、包装材の重量に対して50%以上とすること。」
2 理由1(サポート要件)
(1) サポートの判断について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2) 本件特許の発明の詳細な説明の記載
ア 本件発明の課題
本件特許における発明の詳細な説明を参酌すると、本件発明の課題は、「ノッチを有していない場合であっても引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れ、水蒸気バリア性に優れ、且つ環境に配慮した易開封性包装材及び包装袋を提供する」(【0007】)ことである。
イ 発明を実施するための形態、及び実施例の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、発明を実施するための構成として以下のとおり記載されている。ここで、下線は当審において付した。
(ア) 「【0020】
<易開封性包装材>
{第一実施形態}
以下、第一実施形態に係る易開封性包装材について説明する。図1は、第一実施形態に係る包装材を示す模式断面図である。一実施形態に係る包装材10は、紙基材1と、アンカーコート層2と、蒸着層3と、シーラント層4と、をこの順序で備える積層構造を有する。」
(イ) 「【0057】
包装材10の引張破断強度は、40~70N/15mmである。引張破断強度が40N/15mm以上であることで、包装材10は、得られる包装袋が十分な強度を有し、輸送時等における破れ等の不具合の発生を抑制することができる。引張破断強度が70N/15mm以下であることで、包装材10は、ノッチを有していない場合であっても、引き裂き性に優れる。引張破断強度は、包装材10から切り出した試験片(長手方向の長さ:100mm、短手方向の長さ:15mm)を長手方向に引張試験機により引っ張る(試験長:50mm、引張速度:200mm/分)ことで測定される。包装材10の引張破断強度は、紙基材1に含まれる繊維が無配向である場合には、包装材10における任意の方向と、当該任意の方向に垂直な方向の引張破断強度が、上記数値範囲であってよい。包装材10の引張破断強度は、紙基材1に含まれる繊維が配向を有している場合には、包装材10における紙基材1の繊維の配向方向及び当該配向方向に垂直な方向の引張破断強度が、上記数値範囲であってよい。」
(ウ) 「【0096】
<引き裂きやすさの評価>
実施例及び比較例に係る包装材をシーラント層が向かい合うように貼り合わせ三方パウチ(サイズ:10センチ角、シール幅:5mm)を作製した。男女それぞれ10人から無作為に5人の評価者を選び、選ばれた評価者が三方パウチを引き裂き、引き裂きやすさを下記の基準に沿って評価した。三方パウチを引き裂く方向は、紙の抄紙工程における流れ方向に沿った方向(MD)と、紙の抄紙工程における流れ方向に垂直な方向(CD)とした。選ばれた評価者の評価結果のうち最も悪い評価結果をその包装材の評価結果とした。結果を表1~3に示した。
(評価基準)
A:容易に引き裂けシーラント層の伸びが確認されない
B:引き裂けるがシーラント層の伸びが確認される
C:引き裂けない
【0097】
<引張破断強度の測定>
実施例及び比較例に係る包装材から試験片を切り出した。試験片のサイズは、紙の抄紙工程における流れ方向に沿った方向(MD)の長さを100mm、紙の抄紙工程における流れ方向に垂直な方向(CD)の長さを15mmとした。引張試験機にて試験片を長手方向(MD)に引っ張り、引張破断強度を測定した。試験長は50mm、引張速度は200mm/分とした。測定は5つの試験片に対して行った。5つの試験片から得られた測定値の平均値を包装材のMDの引張破断強度とした。また、紙の抄紙工程における流れ方向に垂直な方向(CD)の長さを100mm、紙の抄紙工程における流れ方向に沿った方向(MD)の長さを15mmとした試験片についてもMDの引張破断強度と同様に引張破断強度を測定し、CDの引張破断強度とした。結果を表1~3に示した。」
(エ) 「【0099】
【表1】
[図:0001434153000005.jpg]
【0100】
【表2】
[図:0001434153000006.jpg]
【0101】
【表3】
[図:0001434153000007.jpg]
」
ウ 本件発明の課題を解決する手段について
上記イ(イ)に示した【0057】には、上記イ(ア)に示した易開封性包装材において、引張破断強度を40~70N/15mmとすることにより、十分な強度を有し、ノッチを有していない場合であっても引き裂き性に優れた包装材が得られることが記載されている。また、引張破断強度について、同【0057】には、「紙基材1に含まれる繊維が無配向である場合には、包装材10における任意の方向と、当該任意の方向に垂直な方向の引張破断強度が、上記数値範囲であってよい。」、「紙基材1に含まれる繊維が配向を有している場合には、包装材10における紙基材1の繊維の配向方向及び当該配向方向に垂直な方向の引張破断強度が、上記数値範囲であってよい。」と記載されている。
加えて、上記イ(ウ)及び(エ)に示したとおり、実施例1~11はいずれも、紙の抄紙工程における流れ方向に沿った方向(MD)と、紙の抄紙工程における流れ方向に垂直な方向(CD)において引張破断強度が40~70N/15mmの範囲を満たし、引き裂きやすさがMD及びCDにおいてAまたはB評価であるものが記載されている。
そして、上記イ(イ)~(エ)の記載を踏まえれば、上記【0057】に記載の「紙基材1に含まれる繊維が無配向である場合には、包装材10における任意の方向と、当該任意の方向に垂直な方向」や、「紙基材1に含まれる繊維が配向を有している場合には、包装材10における紙基材1の繊維の配向方向及び当該配向方向に垂直な方向」、上記実施例1~11におけるMD及びCDのように、包装材が、少なくとも「任意の方向と、当該任意の方向に垂直な方向」において引張破断強度が40~70N/15mmの範囲を満たすことにより、包装材は「引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる」という効果を奏し、上記アに示した本件発明の課題を解決できると当業者であれば認識できる。
(3) 本件発明1について
ア 本件発明1の「引張破断強度」については、「MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」。そうすると、当該構成により、包装材は「引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる」という効果を奏し、上記(2)アに示した本件発明の課題を解決できると当業者であれば認識できる。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるものである。
イ 申立人の主張について
(ア) 申立人2は、特許異議申立書において以下のとおり主張する(第56ページ第1~11行)。
・包装材の少なくとも一方向においてのみ40~70N/15mmの引張破断強度を満たし、包装材の別の方向においては40~70N/15mmの引張破断強度を満たさないものも、本件特許発明1に含まれる場合、本件特許発明1の全ての範囲において、「ノッチを有していない場合であっても引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる」という課題が解決できるかどうか、当業者は認識することができない。
したがって、本件特許発明1~7は、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。
ウ 申立人の主張の検討
上記アで検討したとおり、本件発明1の「引張破断強度」については、「MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」。そうすると、当該構成により、包装材は「引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる」という効果を奏し、上記(2)アに示した本件発明の課題を解決できると当業者であれば認識できる。
以上のとおり申立人2の上記主張は採用できない。
(4) 本件発明2~7について
本件発明2~7についても、上記(3)における検討と同様に、「MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」という発明特定事項を含むため、本件発明の課題を解決できるとは認識できる。
したがって、本件発明2~7は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるものである。
3 理由2(1甲1に基づく進歩性)
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と1甲1発明を対比する。
(ア) 包装材及び各構成について
1甲1発明の「紙基材」、「ヒートシール層」、「包装基材」は、それぞれ、本件発明1の「紙基材」、「シーラント層」、「包装材」に相当する。
また、1甲1発明の「紙基材上に、ヒートシール層として、ポリエチレン層を押出法によって製膜し、作製した包装基材」は、本件発明1の「紙基材と、金属又は金属酸化物の蒸着層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層構造を有する包装材」と、「紙基材と、シーラント層と、をこの順序で備える積層構造を有する包装材」である限りにおいて一致する。
加えて、1甲1発明の「包装基材」は、本件発明1の「易開封性包装材」と、「包装材」である限りにおいて一致する。
(イ) 紙基材の重量について
1甲1発明の「包装基材の坪量が38.5g/m2、紙基材の坪量が25.3g/m2、ヒートシール層の坪量が13.2g/m2、紙基材の割合が66%であ」る構成は、本件発明1の「前記紙基材の重量が、包装材全体を基準として、50質量%以上であ」る構成に相当する。
(ウ) シーラント層について
1甲1発明の「ヒートシール層として、ポリエチレン層を押出法によって製膜し」た構成は、本件発明1の「前記シーラント層が、第1のポリオレフィン系樹脂を含み」という構成に相当する。
また、ヒートシール層を構成するポリエチレンの密度は、0.910~0.965g/cm3程度であることが技術常識であることと、1甲1発明の「ヒートシール層の坪量が13.2g/m2」という構成を踏まえれば、1甲1発明のヒートシール層の厚さは、坪量を密度で割ることにより、約13.7~14.5μmであるといえる。そうすると、1甲1発明の「ヒートシール層の坪量が13.2g/m2」という構成は、本件発明1の「前記シーラント層の厚さが、2~40μmであ」る構成に相当する。
イ 一致点及び相違点
上記アを踏まえれば、本件発明1と1甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(ア) 一致点
「紙基材と、
シーラント層と、
をこの順序で備える積層構造を有する包装材であって、
前記紙基材の重量が、包装材全体を基準として、50質量%以上であり、
前記シーラント層の厚さが、2~40μmであり、
前記シーラント層が、第1のポリオレフィン系樹脂を含む、包装材」
(イ) 相違点
[相違点1]
包装材について、本件発明1は「紙基材と、金属又は金属酸化物の蒸着層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層構造を有する包装材であ」るのに対して、1甲1発明は、紙基材と、シーラント層と、をこの順序で備える積層構造を有する包装基材である点。
[相違点2]
包装材について、本件発明1は「MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」のに対して、1甲1発明は「引張強度(MD)が2.46kN/mであり、引張強度(CD)が0.84kN/mである」点。
[相違点3]
包装材について、本件発明1は「易開封性包装材」であるのに対して、1甲1発明は「包装基材」が易開封性包装材であるか不明である点。
ウ 判断
事案に鑑み、まず、相違点2を検討する。
上記1(1)ア(オ)に示したとおり、1甲1の【0042】には、包装基材全体の物性として、MD方向の引張強度は、3.3kN/m以上5.5kN/m以下、換算すると、49.5N/15mm以上82.5N/15mm以下であることが好ましいこと、及び、CD方向の引張強度は、0.7kN/m以上4.0kN/m以下、換算すると、10.5N/15mm以上60N/15mm以下であることが好ましいことが記載されている。
しかしながら、1甲1において、包装材のMD及びCDの引張破断強度に関して、実施例や比較例の各具体的な数値をみると、【0081】の表1において、包装基材の引張強度(MD)(kN/m)が40~70N/15mm(換算値(kN/m)で2.67~4.67)であるものは、実施例2、比較例3、実施例6、実施例7、実施例9、比較例4、実施例11の7つであるが、それらの引張強度(CD)(kN/m)はいずれも40N/15m(換算値(kN/m)で2.67)を下回るものであり、包装材のMD及びCDの引張破断強度を同程度とする技術思想はうかがえない。実施例8として唯一、包装基材の引張強度(MD)と引張強度(CD)が同程度のものが示されているが、引張強度(MD)が70N/15mm(換算値(kN/m)で4.67)を超えるものである。
そうすると、1甲1には包装材のMD及びCDの引張破断強度を共に40~70N/15mmの範囲内とすることは記載も示唆もなく、また、1甲1発明において包装基材の引張強度(MD及び引張強度(CD)を40~70N/15mmとする動機付けもない。
そして、本件発明では、包装基材の引張強度(MD)及び引張強度(CD)を40~70N/15mmとすることにより、「ノッチを有していない場合であっても引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れ・・・た易開封性包装材・・・を提供」(【0007】)し得る効果を奏するものである。
また、相違点2に係る構成は、本件特許に係る出願前における周知技術を認めるに足る証拠もない。
よって、1甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
エ 申立人の主張について
(ア) 申立人1は特許異議申立書において以下のとおり主張する(第32ページ第15行~第34ページ第4行)。
・甲1の【0081】には、実施例1の包装基材における引張強度(MD)が2.46kN/mであることが記載され、甲1の【0042】には、「MD方向から紙製品11を包む場合、包装基材10のMD方向の引張強度は、2.0kN/m以上8.0kN/m以下であることが好ましく、2.5kN/m以上6.5kN/m以下であることがより好ましく、3.3kN/m以上5.5kN/m以下であることが更に好ましい。」と記載されており、甲1の【0081】に記載の実施例1の包装基材を2.5kN/m以上6.5kN/m以下と重複する2.67~4.67kN/m(40~70N/15mm)となるように包装材を構成することに困難性はない。
本件明細書における引張破断強度と甲1の引張強度との引張速度(伸張速度)等の測定条件は異なるものであるが、包装材における引張強度は、包装材を構成するそれぞれの層の材質や厚さが支配的であり、引張速度(伸張速度)等の測定条件の違いにより大きく変化するものではないから、甲1の【0081】に記載の実施例1の包装基材を2.67~4.67kN/m(40~70N/15mm)となるように包装基材を構成した場合には、本件明細書の段落【0057】に記載の方法で引張破断強度を測定すると少なくとも40~70N/15mmに含まれる蓋然性は高い。)。また、甲1の【0081】に記載の実施例1の包装基材は、金属又は金属酸化物の蒸着層を備えないものであるが、金属又は金属酸化物の蒸着層を備える場合には、金属又は金属酸化物の蒸着層の厚さは、包装基材を構成する紙基材やシーラント層と比較して極めて薄く、金属又は金属酸化物の蒸着層を備えることにより、引張破断強度への影響は極めて小さいはずであるから、甲1の【0081】に記載の実施例1の包装基材を2.67~4.67kN/m(40~70N/15mm)となるように包装基材を構成した場合には、金属又は金属酸化物の蒸着層を備えた場合であっても、引張破断強度を測定すると少なくとも40~70N/15mmに含まれる蓋然性は高い。
よって、甲1の【0081】に記載の実施例1の包装基材において、2.67~4.67kN/m(40~70N/15mm)となるように包装材を構成することに困難性はなく、引張破断強度が、40~70N/15mmである構成を備えることは容易想到である。
(イ) 申立人1は申立人1意見書において以下のとおり主張する(申立人1意見書第6ページ第14行~第7ページ第11行)。
・甲1の【0042】には、「包装基材10のMD方向の引張強度は、2.0kN/m以上8.0kN/m以下であることが好ましく、2.5kN/m以上6.5kN/m以下であることがより好ましく、3.3kN/m以上5.5kN/m以下であることが更に好ましい。CD方向から紙製品11を包む場合、包装基材10のCD方向の引張強度は、0.7kN/m以上4.0kN/m以下であることが好ましく、・・・」と記載されている。
40~70N/15mmは2.67~4.67kN/mに換算されるので、1甲1の実施例において、MDでは実施例2、実施例3、CDでは比較例2、実施例8に、それぞれ上下限付近の例が記載されている。そして、1甲1の実施例8では、MDが4.68kN/m(ギリギリ範囲外)、CDが4.58kN/m(範囲内)の例があり、MDとCDの両者と同程度の値に調整した例が存在し、実施例8を参考にして、たとえば、MDを4.58kN/m、CDを4.58kN/m(共に範囲内)としてみることに何ら困難性はない。
オ 申立人の主張の検討
上記ウで検討したとおり、1甲1発明において、MD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
以上のとおり申立人1の上記主張は採用できない。
カ 小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が1甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記(1)ウで判断したように、1甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 理由3(2甲1に基づく進歩性(2甲1-1発明を主引用発明とした場合))
(1) 本件発明1について
ア 対比
2甲1-1発明の「紙基材」、「アルミ蒸着膜」、「シーラント層」、「包装材」は、それぞれ、本件発明1の「紙基材」、「金属又は金属酸化物の蒸着層」、「シーラント層」、「包装材」に相当する。
2甲1-1発明の「アルミ蒸着膜が形成されたシーラント層・・・を用い、アルミ蒸着膜上に厚み3μmの接着剤層を形成し、接着剤層と紙基材1のツヤ面をラミネートして作製した包装材」は、本件発明1の「紙基材と、金属又は金属酸化物の蒸着層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層構造を有する包装材」に相当する。
2甲1-1発明の「厚み50nmのアルミ蒸着膜が形成されたシーラント層(CPP、エチレンープロピレンブロック共重合体の単層フィルム、厚み25μm)」は、本件発明1の「前記シーラント層の厚さが、2~40μmであり、前記シーラント層が、第1のポリオレフィン系樹脂を含」む構成に相当する。
2甲1-1発明の包装材の「配向方向」、「直交方向」は、2甲1には、【0060】に「各面の繊維の配向方向(以下、単に「配向方向」と称する場合がある)と該配向方向に直交する方向(以下、単に「直交方向」と称する場合がある)」と記載され、本件明細書の【0097】に「紙の抄紙工程における流れ方向に沿った方向(MD)・・・紙の抄紙工程における流れ方向に垂直な方向(CD)」と記載されており、それぞれ本件発明1の「MD」、「CD」に相当する。
2甲1-1発明の「包装材の配向方向の引張強度が4.35kN/mであり、直交方向の引張強度が1.27kN/mであ」る構成は、それぞれの数値を換算すると、65.25N/15mm、19.05N/15mmであるから、本件発明1の「MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」構成と、「MDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」限りにおいて一致する。
2甲1-1発明の「ノッチ部の切り込み方向に沿って直線的に容易に引き裂けて開封できる、包装材」は、本件発明1の「易開封性包装材」に相当する。
イ 一致点及び相違点
上記アを踏まえれば、本件発明1と2甲1-1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(ア) 一致点
「紙基材と、
金属又は金属酸化物の蒸着層と、
シーラント層と、
をこの順序で備える積層構造を有する包装材であって、
前記シーラント層の厚さが、2~40μmであり、
前記シーラント層が、第1のポリオレフィン系樹脂を含み、
MDの引張破断強度が、40~70N/15mmである、易開封性包装材」
(イ) 相違点
[相違点4-1]
紙基材について、本件発明1は「重量が、包装材全体を基準として、50質量%以上であ」るのに対して、2甲1-1発明は、紙基材の坪量が23.1g/m2であるものの、包装材全体を基準とした重量が不明である点。
[相違点5-1]
包装材について、本件発明1は「MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」のに対して、2甲1-1発明は「包装材の配向方向の引張強度が4.35kN/mであり、直交方向の引張強度が1.27kN/mであ」る点。
ウ 判断
事案に鑑み、まず、相違点5-1を検討する。
2甲1において、包装材のMD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmであるものは記載も示唆もされていない。また、2甲1の【0009】には「本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、紙基材の表面内で方向依存性のある紙基材、すなわち、繊維に配向性のある紙基材を使用することにより、一軸延伸プラスチックフィルムが無くても引き裂き性に方向性がある包装材を得ることができることを見出した。」と記載されているように、2甲1に記載されているのは、引き裂き性に方向性がある包装材であって、2甲1には、包装材のMD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることにより引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる包装材とすることは記載も示唆もされていない。
そうすると、2甲1には、包装材のMD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmであるもの及びMD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることにより引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる包装材とすることは記載も示唆もされていないから、2甲1-1発明において包装材の引張強度(MD)及び引張強度(CD)を40~70N/15mmとすることについても記載も示唆もないことは明らかである。
また、相違点5-1に係る構成は、本件特許に係る出願前における周知技術を認めるに足る証拠もない。
よって、2甲1-1発明において、相違点5-1に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
エ 申立人の主張について
(ア) 申立人2は特許異議申立書において以下のとおり主張する(第31ページ第17行~第35ページ第17行)。
・2甲1の実施例2の包装材の引張強度は、配向方向が4.35kN/mであり、比較例6及び比較例7の包装材の引張強度は、縦方向が3.05kN/mであるから、2甲1には、引張強度が3.05~4.35kN/mである易開封性包装材の発明が記載されており、引張強度が3.05~4.35kN/mであることは、幅15mm当たりの最大引張荷重(N/15mm)に換算し直すと、46~66N/15mmとなる。この換算値は、本件特許発明1の発明特定事項「引張破断強度が、40~70N/15mmである」に該当する。
したがって、本件特許発明1と2甲1に記載された発明とは、本件特許発明1の各発明特定事項を有する点において一致する。
オ 申立人の主張の検討
上記ウのとおり、2甲1に記載されているのは、引き裂き性に方向性がある包装材であって、2甲1には、包装材のMD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることにより引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる包装材とすることは記載も示唆もされていない。
そうすると、2甲1には、包装材のMD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmであるもの及びMD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることにより引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる包装材とすることは記載も示唆もされていないから、2甲1-1発明において包装材の引張強度(MD)及び引張強度(CD)を40~70N/15mmとすることについても記載も示唆もないことは明らかである。
また、相違点5-1に係る構成は、本件特許に係る出願前における周知技術を認めるに足る証拠もない。
よって、2甲1-1発明において、相違点5-1に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
以上のとおり申立人2の上記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が2甲1-1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記(1)ウで判断したように、2甲1-1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 理由3(2甲1に基づく進歩性(2甲1-2発明を主引用発明とした場合))
(1) 本件発明1について
ア 対比
2甲1-2発明の「紙基材」、「アルミ蒸着膜」、「シーラント層」、「包装材」は、それぞれ、本件発明1の「紙基材」、「金属又は金属酸化物の蒸着層」、「シーラント層」、「包装材」に相当する。
2甲1-2発明の「アルミ蒸着膜が形成されたシーラント層・・・を用い、アルミ蒸着膜上に厚み3μmの接着剤層を形成し、接着剤層と紙基材1のツヤ面をラミネートして作製した包装材」は、本件発明1の「紙基材と、金属又は金属酸化物の蒸着層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層構造を有する包装材」に相当する。
2甲1-2発明の「厚み50nmのアルミ蒸着膜が形成されたシーラント層(CPP、エチレン-プロピレンブロック共重合体の単層フィルム、厚み25μm)」は、本件発明1の「前記シーラント層の厚さが、2~40μmであり、前記シーラント層が、第1のポリオレフィン系樹脂を含」む構成に相当する。
2甲1-2発明の包装材の「紙基材の縦方向」、「紙基材の横方向」は、2甲1には、【0060】に「各面の縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)」と記載され、本件明細書の【0097】に「紙の抄紙工程における流れ方向に沿った方向(MD)・・・紙の抄紙工程における流れ方向に垂直な方向(CD)」と記載されており、それぞれ本件発明1の「MD」、「CD」に相当する。
2甲1-2発明の「包装材の紙基材の縦方向の引張強度が3.05kN/mであり、紙基材の横方向の引張強度が2.53kN/mであ」る構成は、それぞれの数値を換算すると、45.75N/15mm、37.95N/15mmであるから、本件発明1の「MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」構成と、「MDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」限りにおいて一致する。
イ 一致点及び相違点
上記アを踏まえれば、本件発明1と2甲1-2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(ア) 一致点
「紙基材と、
金属又は金属酸化物の蒸着層と、
シーラント層と、
をこの順序で備える積層構造を有する包装材であって、
前記シーラント層の厚さが、2~40μmであり、
前記シーラント層が、第1のポリオレフィン系樹脂を含み、
MDの引張破断強度が、40~70N/15mmである、包装材」
(イ) 相違点
[相違点4-2]
紙基材について、本件発明1は「重量が、包装材全体を基準として、50質量%以上であ」るのに対して、2甲1-2発明は、紙基材の坪量が23.5g/m2であるものの、包装材全体を基準とした重量が不明である点。
[相違点5-2]
包装材について、本件発明1は「MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」のに対して、2甲1-2発明は「包装材の紙基材の縦方向の引張強度が3.05kN/mであり、紙基材の横方向の引張強度が2.53kN/mであ」る点。
[相違点6-2]
包装材の易開封性について、本件発明1は「易開封性包装材」であるのに対して、2甲1-2発明はそのような特定がなされていない点。
ウ 判断
事案に鑑み、まず、相違点5-2を検討する。
上記4(1)ウのとおり、2甲1に記載されているのは、引き裂き性に方向性がある包装材であって、2甲1には、包装材のMD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることにより引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる包装材とすることは記載も示唆もされていない。
そうすると、2甲1には、包装材のMD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmであるもの及びMD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることにより引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる包装材とすることは記載も示唆もされていないから、2甲1-2発明において包装材の引張強度(MD)及び引張強度(CD)を40~70N/15mmとすることについても記載も示唆もないことは明らかである。
また、相違点5-2に係る構成は、本件特許に係る出願前における周知技術を認めるに足る証拠もない。
よって、2甲1-2発明において、相違点5-2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
エ 申立人の主張について
(ア) 申立人2は申立人2意見書において以下のとおり主張する(申立人2意見書第6ページ第13行~第9ページ第10行)。
2甲1の比較例6及び7の包装材において、縦方向(MD)の引張強度は3.05kN/mであり、横方向(CD)の引張強度は2.53kN/mであり、これらを換算すると、それぞれ、約45.8N/15mm、約38.0N/15mmとなり、ここで、横方向(CD)の引張強度の約38.0N/15mmの数値は、訂正後の本件特許発明1の引張破断強度の下限値「40N/15mm」とは、微差にすぎない。
分析精度やサンプリング箇所のバラつきを勘案すると、「40N/15mm」と「約38.0N/15mm」とで実質的に差異はなく、「MD及びCDの引張破断強度」の「40N/15mm」という下限については、その臨界的意味はデータをもって示されておらず、「40N/15mm」と「約38.0N/15mm」の場合とで技術的意義ないし作用効果において実質的に差異があるとはいえない。
また、2甲4(特開2010-064763号公報)には、ヒートシール性帯封紙を開封時に手で容易に切断することができる観点、及びヒートシール性帯封紙の全体的な強度の観点から、「引張強度25kN/mが最適である。」と記載され(2甲4の段落【0014】)、引張強度25kN/mは換算すると、約30~75N/15mmであり、「約38.0N/15mm」の引張強度は、引き裂きやすさと強度とを満たすといえ、「40N/15mm」と「約38.0N/15mm」の場合とで技術的意義ないし作用効果において実質的に差異があるとはいえない。なお、包装材の引張破断強度を「40~70N/15mm」とする理由として、強度及び引き裂き性の両立であること(本件特許明細書の段落【0057】)は、2甲4に記載された効果と同一であり、異質な効果を奏するものでもない。
そうすると、2甲1の比較例6及び7の包装材において、「縦方向(MD)の引張強度は3.05kN/mであり、横方向(CD)の引張強度は2.53kN/mであ」る構成は、訂正後の本件特許発明1の「MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」構成に実質的に相当する。
オ 申立人の主張の検討
上記(1)ウで検討したとおり、2甲1には、実施例及び比較例を参酌しても包装材のMD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmであるものは記載も示唆もされておらず、包装材のMD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることにより、包装材が引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れるものとすることは記載されていない。また、2甲1には、包装材のMD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmであるもの及びMD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることにより引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる包装材とすることは記載も示唆もされていないから、2甲1-2発明において包装材の引張強度(MD)及び引張強度(CD)を40~70N/15mmとすることについても記載も示唆もないことは明らかである。すなわち、2甲1の比較例6、7に本件発明1の引張破断強度の数値範囲の範囲外となる下限近傍の値が示されていたとしても、2甲1にはMD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすること、及び、これにより引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる包装材とすることは記載も示唆もされていないから、2甲1-2発明において、MD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、相違点5-2に係る構成は、本件特許に係る出願前における周知技術を認めるに足る証拠もない。
よって、2甲1-2発明において、相違点5-2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
以上のとおり申立人2の上記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が2甲1-2発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記(1)ウで判断したように、2甲1-2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
6 当審における判断のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~7に係る特許につき、当審が通知した取消理由はいずれも理由がなく、当該理由によって本件発明1~7に係る特許は取り消すことはできない。
第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について
1 取消理由通知で採用しなかった申立理由の概要
以下の「1申立理由●」及び「2申立理由●」は、それぞれ申立人1及び申立人2により主張された申立である。
(1) 1申立理由2、及び2申立理由2(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件発明1では、引張破断強度が40~70N/15mmであることが特定されているが、本件発明1の記載では、すべての方向から測定された引張破断強度が40~70N/15mmに含まれる必要があるのか一つの方向から測定された引張破断強度が40~70N/15mmに含まれればよいのか不明確である。本件発明1を引用する本件発明2~7も同様である。
(2) 1申立理由3(実施可能性要件)
本件特許は、明細書の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件特許発明1では、引張破断強度が40~70N/15mmであることが特定されている。しかしながら、本件明細書を参酌しても、易開封性包装材を構成するそれぞれの層をどのように構成すれば引張破断強度が所定範囲内に調整することができるか一切記載がない。
本件明細書の段落【0081】~【0900】に記載されている実施例の易開封性包装材とは異なる易開封性包装材を製造しようとしたときには、易開封性包装材を構成するそれぞれの層をどのように構成すれば易開封性包装材の引張破断強度が所定範囲内に調整することができるか当業者であっても技術的に理解することができない。
(3) 2申立理由1-2(2甲2を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項1~3、6、7に係る発明は、2甲2及び2甲4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。また、本件特許の請求項4、5に係る発明は、2甲2、2甲4及び2甲5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[証拠一覧]
2甲2(1甲2):国際公開第2021/010040号
2甲5:特開2021-80017号公報
2甲6:「JIS P 8113:2006 紙及び板紙-引張の試験方法-第2部:定速伸張法」、一般財団法人日本規格協会、2006年
2甲7:「JIS K 7127:1999 プラスチック-引張特性の試験方法-第3部:フィルム及びシートの試験条件、一般財団法人日本規格協会、1999年
2甲8:「JIS K 7161:1994 プラスチック-引張特性の試験方法-第1部:通則、一般財団法人日本規格協会、1994年
1参考文献:特開2022-11995号公報
なお、「1甲2」、「1参考文献」は申立人1が提出した甲第2号証、参考文献、「2甲2」、「2甲5」、「2甲6」、「2甲7」、「2甲8」は申立人2が提出した甲第2号、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証、甲第8号である。
2 取消理由通知で採用しなかった申立理由についての当審における判断
(1) 甲号証について
ア 2甲2(1甲2)
2甲2(1甲2)の[0020]、[0030]、[0046]~[0057]より、特に[0047]の実施例1を参照すると、以下の発明(以下「2甲2発明」という。)が記載されていると認める。
「紙基材と、アルミニウム蒸着層と、ヒートシール性を有する樹脂層と、をこの順序で備える積層構造を有する、包装材であって、
紙基材の坪量が、60g/m2であり、
ヒートシール性を有する樹脂層の厚さが5μmであり、
ヒートシール性を有する樹脂層がエチレン・アクリル酸共重合体アンモニウム塩の層である、
包装材。」
(2) 1申立理由2、及び2申立理由2(明確性要件)について
請求項に係る発明が明確に把握されるためには、請求項に係る発明の範囲が明確であること、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要である。
ここで、本件特許の請求項1の
「紙基材と、
金属又は金属酸化物の蒸着層と、
シーラント層と、
をこの順序で備える積層構造を有する包装材であって、
前記紙基材の重量が、包装材全体を基準として、50質量%以上であり、
前記シーラント層の厚さが、2~40μmであり、
前記シーラント層が、第1のポリオレフィン系樹脂を含み、
MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである、易開封性包装材。」という記載は、包装材を規定するものとして明確であり、ある具体的な物が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるものである。
申立人1及び申立人2は、「引張破断強度」について、本件特許の請求項1の記載では、すべての方向から測定された引張破断強度が40~70N/15mmに含まれる必要があるのか、一つの方向から測定された引張破断強度が40~70N/15mmに含まれればよいのかが不明確であると主張するが、訂正により「MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」点が特定されており、「40~70N/15mmである」「引張破断強度」の方向は明確であるから、申立人1及び申立人2の主張は採用することができない。
(3) 1申立理由2(実施可能性要件)について
物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用をすることができる程度のものでなければならない。以下検討する。
本件発明が、本件特許の請求項1~7に記載のとおりのものであるところ、本件明細書の【0081】~【0101】には、具体的な材料及び製造方法を示した実施例が記載され、本件発明の発明特定事項を有する各実施例が【0007】の記載から把握できる本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決するものとして記載されている。
これらの記載を参照することにより、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施できるものである。
よって、申立人1の上記主張は採用することができない。
(4) 2申立理由1(2甲2を主引例とする進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア) 対比及び判断
本件発明1と2甲2発明とを対比する。
2甲2発明の「紙基材」、「アルミニウム蒸着層」、「ヒートシール性を有する樹脂層」、「包装材」は、それぞれ、本件発明1の「紙基材」、「金属又は金属酸化物の蒸着層」、「シーラント層」、「包装材」に相当する。
2甲2発明の「紙基材と、アルミニウム蒸着層と、ヒートシール性を有する樹脂層と、をこの順序で備える積層構造を有する、包装材」は、本件発明1の「紙基材と、金属又は金属酸化物の蒸着層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層構造を有する包装材」に相当する。
2甲2発明の「ヒートシール性を有する樹脂層の厚さが5μmであ」る構成は、本件発明1の「前記シーラント層の厚さが、2~40μmであ」る構成に相当する。
2甲2発明の「包装材」は、本件発明1の「易開封性包装材」と「包装材」の限りにおいて一致する。
(イ) 一致点及び相違点
上記(ア)を踏まえれば、本件発明1と2甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
a 一致点
「紙基材と、
金属又は金属酸化物の蒸着層と、
シーラント層と、
をこの順序で備える積層構造を有する包装材であって、
前記シーラント層の厚さが、2~40μmである、包装材」
b 相違点
[相違点6]
紙基材について、本件発明1は「重量が、包装材全体を基準として、50質量%以上であ」るのに対して、2甲2発明は、紙基材の坪量が60g/m2であるものの、包装材全体を基準とした重量が不明である点。
[相違点7]
包装材について、本件発明1は「MD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmである」のに対して、2甲2発明はそのようなものであるか不明な点。
[相違点8]
シーラント層について、本件発明1は「シーラント層が、第1のポリオレフィン系樹脂を含む」のに対して、2甲2発明は「ヒートシール性を有する樹脂層がエチレン・アクリル酸共重合体アンモニウム塩の層である」点。
[相違点9]
包装材について、本件発明1は「易開封性包装材」であるのに対して、2甲2発明はそのようなものであるか不明な点。
(ウ) 判断
事案に鑑み、まず、相違点7を検討する。
2甲2において、包装材のMD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmであるものは記載も示唆もされていない。また、2甲2の[0006]には「本発明は、加工への耐性に優れ、高いバリア性能を有する紙積層体を提供することを課題とする。」と記載されるにとどまり、2甲2には、包装材のMD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることにより引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる包装材とすることは記載も示唆もされていない。
そうすると、2甲2には、包装材のMD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmであるもの及びMD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることにより引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れる包装材とすることは記載も示唆もされていないから、2甲2発明において包装材のMD及びCDの引張破断強度を40~70N/15mmとすることについても記載も示唆もないことは明らかである。
また、相違点7に係る構成は、本件特許に係る出願前における周知技術を認めるに足る証拠もない。
よって、2甲2発明において、相違点7に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(エ) 申立人の主張について
・申立人2は特許異議申立書において以下のとおり主張する(第48ページ第1~28行)。
2甲4では、基材に紙を用い、その表面および裏面に、ポレオレフィンからなる薄膜樹脂層を形成した、ヒートシール性を有する帯封紙が記載され、実施例1において帯封紙をおにぎり包装に用いており(2甲4の段落【0021】)、2甲4の帯封紙は、包装材でもあるといえる。2甲4では、通常時は適度な強度を有しつつ、開封時には手で容易に切断することができるために、帯封紙において、引張強度2~5kN/m(換算し直すと、30.3~75.75N/l5mm)が最適であることが記載されている(2甲4の段落【0014】)。
甲2発明の積層体(包装材)と、甲4に記載された帯封紙は、紙基材層に使用される紙と、ポリオレフィン系樹脂層とを有する包装材料である点で共通し、両者の技術分野は関連している。
甲2発明の積層体は、食品、医療品、電子部品等の包装に使用されることが想定される(甲2の段落【0002】)。食品、医療品、電子部品等の包装袋の開封時に手切れ性がよいことは、包装材の分野において自明の課題であり、甲2発明と、甲4発明との間で、課題は共通している。
そうすると、甲2発明において、包装袋の開封時に手切れ性をよくするために、甲4に記載されたように包装材の「引張強度が2~5kN/m(30.3~75.75N/15mmに相当)」となるようにして、「易開封性包装材」とすることは、当業者が容易になし得ることである。
(オ) 申立人の主張の検討
上記(ウ)のとおり、2甲2には、2甲2発明において包装基材の引張強度(MD)及び引張強度(CD)を40~70N/15mmとすることについても記載も示唆もないことは明らかである。
さらに、2甲4について、実施例及び比較例を参酌しても包装材のMD及びCDの引張破断強度が、40~70N/15mmであるものは記載も示唆もされておらず、包装材のMD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることにより、包装材が引き裂く方向に関わらず引き裂き性に優れるものとすることは記載されていない。
そうすると、2甲2発明において、2甲4に記載の事項を適用して、MD及びCDの引張破断強度を同時に40~70N/15mmとすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、2甲2発明において、相違点7に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
以上のとおり申立人2の上記主張は採用できない。
(カ) 小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が2甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記ア(ウ)で判断したように、2甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5) 取消理由通知で採用しなかった申立理由についての当審の判断のまとめ
よって、本件特許は、明細書の記載に不備はなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。また、特許請求の範囲の記載に不備はなく、特許法第36条第6項第1号及び同項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
さらに、本件発明1~7は、2甲2及び2甲4に記載された発明に基いて、並びに、2甲2、2甲4及び2甲5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、本件発明1~7は、取消理由通知に採用しなかった申立理由によって取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700367