特許異議申立
2020-700784
熱封止性バリア紙の製造方法
- 審判番号
- 2020-700784
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-526011外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6681891
- 請求日
- 2020年10月13日
- 審決日
- 2021年10月01日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 分類
- P1651.113-Z (D21H) / P1651.121-Z (D21H) / P1651.537-Z (D21H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6681891号発明「熱封止性バリア紙の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6681891号の請求項1ないし35に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6681891号(以下「本件特許」という。)の請求項1~35に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)7月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年7月30日、仏国)を国際出願日とする出願であって、令和2年3月26日にその特許権の設定登録がされ、令和2年4月15日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年10月13日 : 特許異議申立人亀崎伸宏による特許異議の申立て
令和3年3月24日付け : 取消理由通知書
なお、令和3年3月24日付けの取消理由通知書に対し、その応答期間内に、特許権者から意見書及び訂正請求書の提出はなかった。
第2 本件特許の係る発明
本件特許の請求項1~35に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~35に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTMF1249基準に従って測定される、最大で150g/m2/24時の水蒸気透過率を有する、熱封止性の水蒸気バリア紙を製造する方法であって、少なくとも1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層を製紙装置上でプレコート層にインラインで適用し、前記プレコート層を繊維基材にインラインで適用した後、前記プレコート層に前記被覆層を適用する、方法。
【請求項2】
前記紙の生産速度が、300m/分以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細孔充填組成物を前記繊維基材にインラインで適用した後、任意の層又はプレコート層をインラインで適用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記紙の最終的な坪量が、45~200g/m2である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つのインライン乾燥工程、次いで一つのインライン巻取り工程を含み、前記乾燥工程中の加熱出力が十分であり、前記被覆層が前記巻取り工程中に十分に乾燥していて、リールのターンが一緒に粘着することがない、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記紙が、任意の表面処理に先立って、前記繊維基材の乾燥中に、ヤンキーシリンダとの接触状態に置かれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記紙が、前記被覆層の乾燥中に、接触なしに乾燥が行われるゾーンにもたらされる、請求項5及び6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記プレコート層が、少なくとも15の形状因子を有する少なくとも1つの板状フィラーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記プレコート層が、少なくとも15の形状因子を有する板状フィラーと、より微細なフィラーとの混合物を含み、前記より微細なフィラーの粒度が、80質量%に対して、ISO13317-3セディグラフ法により測定すると、2μm以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記板状フィラー及び前記より微細なフィラーが、同一の性質を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記板状粒子の形状因子が、少なくとも40である、請求項9及び10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記より微細なフィラーが、95質量%に対して、2μm未満の粒度を有する、請求項9及び11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記板状フィラーが、無機フィラーである、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記より微細なフィラーが、無機フィラーである、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記板状フィラーが、カオリン及びタルク並びにこれらの混合物から選択される、請求項9~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記より微細なフィラーが、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、二酸化チタン及びこれらの混合物から選択される、請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記より微細なフィラーが、カオリンから選択される、請求項9~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記板状フィラーの乾燥質量が、前記プレコート層の全乾燥質量の3%~58%である、請求項9~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記より微細なフィラーの乾燥質量が、前記プレコート層の全乾燥質量の3%~58%である、請求項9~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
乾燥質量で表された前記フィラーの合計に対する、乾燥質量で表された板状フィラーの比率が、10%~90%である、請求項9~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記プレコート層が、バインダを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記バインダが、25℃以下の、ASTME1356基準に従って測定されるガラス転移温度Tgを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記バインダが、スチレン-ブタジエン、スチレン-アクリル、アクリル、ブチルアクリレート、ブチルアクリレート/スチレン/アクリロニトリルの化学的性質を有するラテックスから選択される、請求項21及び22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記バインダが、ラテックス形態で導入される、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記バインダの量が、乾燥時のフィラー(100部)に対して、乾燥時に少なくとも15部である、請求項21~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記被覆層が、前記プレコート層によって覆われた前記基材をカレンダリングすることなく適用される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記被覆層が、前記プレコート層を覆う唯一の層である、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記被覆層が、PVdCをベースとするコポリマー又はスチレン-アクリルをベースとするコポリマーから選択される1種以上のポリマーを含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記プレコート層の量が、乾燥質量で12g/m2以下である、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記被覆層の量が、乾燥質量で10g/m2以下である、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記繊維基材の、前記被覆層を有する面に対向する面に、前記製紙装置上で層がインラインで適用される、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記紙が、VFFS(縦型、充填及び封止)型の縦型包装装置で、330mm/バッグの長手方向の封止ラインに沿って、40バッグ/分以上の生産速度で熱封止可能である、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記紙が、封止を0.3MPa(3bar)で0.5秒間、ホットニップロールにより実施する場合に、熱封止性である、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記紙が、封止を0.3MPa(3bar)で0.5秒間、ホットニップロールにより実施する場合に、90度の角度においてタッピT540基準に従って100mm/分の速度で測定される、2N/15mm以上の封止力により、それ自身に対して熱封止性である、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
包装方法であって、請求項1~34のいずれか1項に記載の製造方法によって得られる紙をそれ自身に対して熱封止することにより、物品を包装する、方法。」
第3 取消理由の概要
請求項1~35に係る特許に対して、当審が令和3年3月24日付け取消理由通知書において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
1.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
3.(新規性)本件特許の請求項1、4、21~29、31、35に係る発明は、引用文献1又は引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
4.(進歩性)本件特許の請求項1~35に係る発明は、引用文献1、引用文献2又は引用文献3に記載された発明、慣用技術及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特表2013-514906号公報(甲第1号証)
引用文献2:特表2001-508504号公報(甲第2号証)
引用文献3:特開平9-111697号公報(甲第3号証)
引用文献4:パッケージ2004,紙業タイムス社,2004年3月25日,250ページ(甲第4号証)
引用文献5:工芸研究,通商産業省産業工芸試験所,昭和34年6月30日,第21号,1~3ページ(甲第5号証)
引用文献6:特開平6-73259号公報(甲第6号証)
第4 当審の判断
1.理由1(サポート要件)について
本件特許の発明の詳細な説明には、次のように記載されている。
「【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムは、これらが、腐敗し易い製品または限られた保存寿命を持つ製品の適切な保存のために必要とされる水蒸気バリア性を持つことから、柔軟包装において広く利用されている。
紙は、繊維、一般的にはセルロース繊維から製造される物質、従って植物起源の物質である。これらは、当然多孔質で、かつガスに対して透過性であり、またそのままではこの用途に対して使用することはできない。
しかし、様々な製品および特に腐敗し易い食品を包装するのに必要な上記バリア性を得るために、紙と他の物質(プラスチック、アルミニウム等)とを組合せることが知られている。この場合において、該紙製の支持体は、加工操作(conversion operations)に掛けられ、該操作は、例えば分散状態にあるポリマーで作られる被覆層の塗布、溶融ポリマーの押出し被覆またはプラスチックまたはアルミニウムフィルムとの積層を含む。バリア性を持つこの紙をベースとする複合体に係るコストは、高いものとなってきている。
・・・
【0005】
・・・
水蒸気に対するバリアを与え、かつ場合によっては熱封止性である紙は、一般に上記従来技術において、加工操作中に製造され、また従来は、乾燥時に10~30g/m2という被覆層を有し、該被覆層は、様々な被覆手段(エアーナイフ、リバースグラビア(reverse gravure)、メイヤー(Meyer)ロッドまたはバーもしくは任意の他の被覆法)を利用して、1またはそれ以上の厚みとして、あるいは流し塗りを利用して一つの厚い層を適用することによって堆積される。
従って、紙に水蒸気バリア性および熱封止性を与えるための、該紙の上記オフライン加工は、該紙の製造における追加の段階であり、該段階は、そのコストを著しく高め、かつプラスチックフィルム包装にとって有利な、柔軟包装における紙の開発を制限する。従って、水蒸気バリア性で熱封止性の紙の製造に係る生産性の改善に対する、経済的な要求がある。」
以上の記載からみて、本件特許の発明が解決しようとする課題(以下、単に「課題」という。)は、「バリア性を持つこの紙をベースとする複合体に係るコストは、高いものとなってきて」おり、「紙に水蒸気バリア性および熱封止性を与えるための、該紙の」「オフライン加工は、該紙の製造における追加の段階であり、該段階は、そのコストを著しく高め、かつプラスチックフィルム包装にとって有利な、柔軟包装における紙の開発を制限する」ものであるため、「水蒸気バリア性で熱封止性の紙の製造に係る生産性の改善に対する、経済的な要求がある」ことにあると解される。
そして、本件特許の発明の詳細な説明には、課題解決の機序について、次の記載がある。
「【発明の概要】
【0006】
本発明は、紙のインライン製造中に、水蒸気バリア性および熱封止性が与えられた紙の開発に関連する。このバリア性かつ熱封止性の紙は、該紙をそれ自体に対して封止することにより、包装材料を製造するのに使用し得る。
本発明は、その局面の内の第一の局面に従えば、この要求を満たすことを目標としており、本発明は、これを、熱封止性の水蒸気バリア紙の製造方法により達成し、ここで該製法は、少なくとも1種の熱可塑性フィルム-形成ポリマーを含有する少なくとも1層の被覆層が、製紙装置でおよび繊維基材に対してインラインで適用される。
本発明は、乾燥時に10g/m2を超えない、特に厳密には10g/m2未満の被覆層の質量を用いてさえも、良好な水蒸気バリアレベルを達成することを可能とする。
本発明のこの局面は、例えば400m/分程の、工業的な製紙装置により課せられる該紙の比較的高い走行速度にも拘らず、十分な乾燥能力が、巻取り操作に先立って、熱封止性を持つ被覆層を乾燥するのに使用されることを条件として、該被覆層を形成するための組成物のインライン塗布が可能であるという観測に基くものである。特に、比較的低い質量の被覆層が、該インライン乾燥を容易にし、一方で十分なバリア性をも与える。
本発明は、従ってインライン法によって、上記オフライン処理に関連する取扱い操作を排除し、かつ廃棄物の量を減じることにより、生産性を高めることを可能とする。
その上、インラインまたはオフラインでの、上記熱封止層を適用する方法とは独立に、繊維基材に適用される、該熱封止性の層およびより一般的には任意の熱封止性またはそうでない被覆層の堆積を容易化することに係る問題に直面する。
一般的に、上記被覆層が過度に深くまで上記繊維基材内に浸入しないことが、この層がポリマーベースである場合には、該紙に適用されるその量を減じるために望ましい。更に、該被覆層のより少ない浸入は、バリアフィルムを、より一層容易に作り出すことを可能とする。
・・・
【0009】
本発明は、上記プレコート層に、強化されたバリア効果を持たせることを可能とし、このことは、適用すべき被覆層の量を減じることを可能とし、あるいは等価な量の被覆層について、該紙のバリアレベルを更に高めることを可能とし、このことが、水蒸気に対して漏洩防止性でなければならない紙にとって有用であることが立証し得る。上記プレコート処理された紙のこのより高いバリア能力による、必要とされる被覆層の量における減少は、その乾燥を容易にし、また該紙のインライン製造中の、この層の被覆をより容易にする可能性がある。
・・・」
「【0015】
製造
上記繊維基材を乾燥した後、その紙シートを、該シートの表面仕上げおよび結果としてその第一層の分布を改善するために、ヤンキーシリンダに移すことができる。
次いで、上記シートをサイズプレスまたは同様な型の他の任意の装置で処理し得る。上記プレコート層の上記繊維質支持体内への過度の浸入を回避するために、顔料組成物を、前もって使用して、「細孔充填」を行うことができる。
この細孔-充填用組成物は、乾燥時の上記フィラーに対して、乾燥時に20部までのバインダ、例えばスチレン-ブタジエンの化学的性質を持つラテックス等、および上記乾燥顔料に対して、乾燥時に20部までの補助バインダ、例えばデンプン等を含むことができる。
この組成物は、好ましくはフィラーを含有し、該フィラーは、一般的に2μm未満の寸法を持つ。これらのフィラーは、とりわけカオリンまたは炭酸カルシウムまたはこれらの混合物から選択することができる。
上記プレコート層は、製紙装置で遭遇する可能性のある塗布技術の何れかを用いて、このように処理された支持体に適用される。これは、特にナイフ塗布、グラビア塗布、リバースグラビア塗布またはメイヤーロッド塗布であり得る。該プレコート層は、好ましくは4~12g/m2の間の乾燥層質量で堆積される。
次いで、このプレコート層は、接触しないように、1またはそれ以上の赤外線加熱炉および/または1またはそれ以上の熱風炉によって乾燥される。
【0016】
上記被覆層の適用に先立って、極めて高いレベルの平滑性を持たせる必要はない。150秒というベック(Bekk)レベルで十分である(ISO 5627基準に従って測定される)。
上記水蒸気バリア性かつ熱封止性被覆層は、製紙装置において遭遇する可能性のある塗布技術の何れかを用いる塗布法により適用される。これは、例えばナイフ塗布、グラビア塗布、リバースグラビア塗布またはメイヤーロッド塗布であり得る。該被覆層は、好ましくは多くても10g/m2という乾燥層質量で堆積される。
次いで、この被覆層は、その巻取りリール上でのターンの粘着を防止するために、1またはそれ以上の赤外線加熱炉および/または1またはそれ以上の熱風炉を使用して、十分に乾燥される。
塗布は、上記バリア性を強化し、および/または印刷適性、カール補正等のその他の機能性を与えるために、反対側の面において行うことができる。
このようにして製造された紙は、場合により、その巻取りに先立って、その表面粗さを減じるために、インラインでカレンダー掛けすることができる。
上記紙の最終的な坪量は、45~200g/m2の間であり得る。38℃、90%相対湿度において、ASTM F1249基準に従って測定された水蒸気に対するバリア性は、150g/m2/24時間未満、および好ましくは100g/m2/24時未満である。」
「【実施例】
【0017】
実施例1:
55g/m2という坪量を持つ繊維質支持体を、400m/分にて稼働する製紙装置を使用して製造する。該製紙装置は、そのサイズプレスの前方に配置されたヤンキーシリンダを備えている。 上記繊維質支持体を、先ず艶出しし、次いで100乾燥部(dry parts)のアマゾンプレミアム(Amazon Premium)型カオリン(カダム(Cadam))および該乾燥カオリンに対して20乾燥部という比率のメリフィルム(Merifilm) 104デンプン(テート&ライル(TateLyle))とDL950型のラテックス(ダウ(Dow)社)との混合物を含む、細孔-充填用顔料組成物を用いて、サイズプレスによって該支持体の両面をインラインで処理する。全体として、適用された該処理は、乾燥時5g/m2である。 次いで、これを、メイヤーロッドコーターを用いて、板状フィラーおよびより微細な粒状フィラーの混合物およびTg=7℃のスチレン-ブタジエン型の化学的性質を持つラテックス(ダウケミカル(Dow Chemical)社からのDL950)を含有するプレコート処方物で塗装し、また接触させることなしに、赤外線加熱炉内で、次いで熱風炉内で乾燥する。次に、他の如何なる処理もなしに、これをリール上に巻取る。この適用されたプレコート層の乾燥質量は7g/m2であり、またその処方は、以下の表に与えられている:
・・・
【0023】
実施例3:
実施例1におけると同様な条件下で、紙をインラインで製造する。しかし、上記プレコート層の堆積に引続き、これを、PVdCコポリマー(ソルベー(Solvay)社からのディオファン(Diofan) A297)の分散体からなる被覆層でインライン塗布し、接触させることなしに、赤外線加熱炉内で、次に熱風炉内で乾燥させる。次に、他の如何なる処理もなしに、これをリール上に巻取ったが、ターン間の結合は、全く観測されない。この被覆層の乾燥質量は、6.5g/m2である。 水蒸気に対するバリア性は、38℃および90%相対湿度において、ASTM F1249基準に従って、モコンパーマトラン3/61装置によって測定される。これは、21.0±2.4g/m2/24時にて測定される。 次に、上記紙の封止性を、実験室用の熱封止装置を用いて、110℃にて、約0.3MPa(3bar)の下で0.5秒間、上記被覆層で覆われている面をそれ自身に対して結合することにより、シミュレートする。次いで、幅15mmを持つサンプルに結合させた紙を分離するのに要する力を、引続き、タッピ(Tappi) T540基準に従って、100mm/分という速度にて、角度90度の下に測定する。 3.5N/15mmという封止力(sealing force)が得られる。」
以上の記載を総合すると、課題解決のために、「インライン法によって、上記オフライン処理に関連する取扱い操作を排除し、かつ廃棄物の量を減じることにより、生産性を高めることを可能とする」には、「巻取りリール上でのターンの粘着を防止するため」に、「十分な乾燥能力が、巻取り操作に先立って、熱封止性を持つ被覆層を乾燥するのに使用されることを条件として」おり、「上記プレコート処理された紙のこのより高いバリア能力による、必要とされる被覆層の量における減少は、その乾燥を容易にし」ていることで達成されるといえる。
すなわち、課題の解決には、「十分な乾燥能力が、巻取り操作に先立って、熱封止性を持つ被覆層を乾燥するのに使用されることを条件として」おり、さらに、「その乾燥を容易にし」ている条件は、「上記プレコート処理された紙のこのより高いバリア能力による、必要とされる被覆層の量における減少」にあると理解できる。
そうすると、本件特許の発明の詳細な説明をみた当業者は、課題の解決には、「インラインで」「被覆層は、好ましくは多くても10g/m2という乾燥層質量で堆積され」、「次いで、この被覆層は、」「インラインで」「1またはそれ以上の赤外線加熱炉および/または1またはそれ以上の熱風炉を使用して、十分に乾燥される」ことが必要であると認識する。
しかし、本件特許の請求項1~35に係る発明において、このような点は特定されていない。
したがって、本件特許の請求項1~35に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1~35に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
また、前記「インラインで」「被覆層は、好ましくは多くても10g/m2という乾燥層質量で堆積され」、「次いで、この被覆層は、」「インラインで」「1またはそれ以上の赤外線加熱炉および/または1またはそれ以上の熱風炉を使用して、十分に乾燥される」ことが確認されている実施例は、実施例3のみであるところ、実施例3は、「プレコート層の上記繊維質支持体内への過度の浸入を回避するために、顔料組成物を、前もって使用して、「細孔充填」を行うこと」を前提とし、「細孔-充填用顔料組成物」、「プレコート層」及び「被覆層」を特定の組成からなるもので構成した場合の方法である。
上記「細孔-充填用顔料組成物」が使用されなければ、「プレコート層の上記繊維質支持体内への過度の浸入を回避」できず、「プレコート層」に使用される組成物の量は変化するはずであるし、「プレコート層」及び「被覆層」の組成物が変われば、その物性も変化し、「水蒸気バリア紙」の水蒸気透過率も変化することは技術常識といえるから、実施例3の結果のみによって、「細孔-充填用顔料組成物」の有無・組成や、「プレコート層」及び「被覆層」の組成がいかなるものであったとしても、課題を解決可能であることを、当業者が認識することはできない。
したがって、出願時の技術常識に照らしても、請求項1~35に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、請求項1~35に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
2.理由2(明確性)について
(1)請求項1には「・・・少なくとも1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層を製紙装置上でプレコート層にインラインで適用し、前記プレコート層を繊維基材にインラインで適用した後、前記プレコート層に前記被覆層を適用する、・・・」と記載されており、当該記載によれば、「被覆層」を「プレコート層」に適用し、「プレコート層」を「繊維基材」に適用する、すなわち、被覆層/プレコート層/繊維基材という層構造とした後に、「被覆層」と「基材層」との間に存在する「プレコート層」に「被覆層」を適用するように解される。
しかし、「プレコート層」が、「被覆層」と「基材層」との間に存在する以上、「プレコート層」の表面は露出しておらず、新たに「被覆層」を適用することはできないはずである。
したがって、上記請求項1の記載によって、どのような方法を特定しているのかが、不明である。
この点、請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2~35に係る発明も同様である。
(2)請求項3には「細孔充填組成物を前記繊維基材にインラインで適用した後、任意の層又はプレコート層をインラインで適用する、」と記載されているが、請求項3が引用する請求項1では、「プレコート層」の表面は露出していないため、「プレコート層を繊維基材にインラインで適用」することはできないはずである。
したがって、上記請求項3の記載によって、どのような方法を特定しているのかが、不明である。
この点、請求項3を直接的または間接的に引用する請求項4~35に係る発明も同様である。
(3)請求項6には「前記紙が、任意の表面処理に先立って、前記繊維基材の乾燥中に、ヤンキーシリンダとの接触状態に置かれる、」と記載されているが、「任意の表面処理」が、何に対する、どのような処理(例えば、ある「層」に対して、別の「層」を適用する処理)までを含むのかが不明である。
したがって、上記請求項6の記載によって、どのような方法を特定しているのかが、不明である。
この点、請求項6を直接的または間接的に引用する請求項7~35に係る発明も同様である。
(4)請求項7には「前記紙が、前記被覆層の乾燥中に、接触なしに乾燥が行われるゾーンにもたらされる、」と記載されているが、「紙」が、何と「接触なし」であるのかが不明である。
したがって、上記請求項7の記載によって、どのような方法を特定しているのかが、不明である。
この点、請求項7を直接的または間接的に引用する請求項8~35に係る発明も同様である。
(5)請求項8、請求項9及び請求項11には「形状因子」と記載されているが、「形状因子」がどのような意味であるのかが不明である。そのため、請求項8に記載された「少なくとも15の形状因子を有する少なくとも1つの板状フィラー」及び請求項9の「少なくとも15の形状因子を有する板状フィラー」や、請求項11の「前記板状粒子の形状因子が、少なくとも40である」ことが、何を意味しているのかが不明である。
この点、請求項8、請求項9及び請求項11を直接的または間接的に引用する請求項10及び請求項12~35に係る発明も同様である。
(6)請求項9には「前記より微細なフィラーの粒度が、80質量%に対して、ISO 13317-3セディグラフ法により測定すると、2μm以下である、」と記載され、請求項12には「前記より微細なフィラーが、95質量%に対して、2μm未満の粒度を有する、」と記載されているが、「より微細な粒度が、・・・質量%に対して、2μm・・・」の意味が不明である。例えば、「より微細なフィラー」のうち、「80質量%」については、「粒度が」「2μm以下」であり、20質量%については、「粒度」は問わないということであるのか、それ以外のことを意味しているのかが不明である。
この点、請求項9及び請求項12を直接的または間接的に引用する請求項10~35に係る発明も同様である。
(7)請求項10には、「前記板状フィラー及び前記より微細なフィラーが、同一の性質を有する、」と記載されているが、「性質」が、どのような種類の「性質」を対象としているのかが不明である。例えば、請求項10を引用する請求項15を更に引用する請求項16に係る発明において、「カオリン」と「二酸化チタン」との間に、どのような同一の性質があるのか不明である。
この点、請求項10を直接的または間接的に引用する請求項11~35に係る発明も同様である。
(8)請求項11には、「前記板状粒子の形状因子が、」と記載されているが、当該記載よりも前に、「板状粒子」という記載はなく、どの記載を指して「前記」としているのかが不明である。
この点、請求項11を直接的または間接的に引用する請求項12~35に係る発明も同様である。
(9)請求項25には、「前記バインダの量が、乾燥時のフィラー(100部)に対して、乾燥時に少なくとも15部である、」と記載されているが、請求項25が直接的または間接的に引用する請求項21が引用する請求項1~7には、「フィラー」を含有することは記載されていないため、当該記載によって、「バインダの量」としてどのような範囲の量を特定しているのかが不明である。
この点、請求項25を直接的または間接的に引用する請求項27~35に係る発明も同様である。
よって、請求項1~35に係る発明は明確でない。
3.理由3(新規性)及び理由4(進歩性)について
(1)本件特許の請求項1~35に係る発明
上記第2で指摘しているように、本件特許の請求項1~35に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明35」という。)は明確ではないが、理由3及び4を検討するにあたり、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載に鑑み、次のように認定した。
「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される、最大で15g/m2/24時の水蒸気透過率を有する、熱封止性の水蒸気バリア紙を製造する方法であって、熱封止性の水蒸気バリア紙を製造する方法であって、プレコート層を製紙装置上で繊維基材にインラインで適用した後、少なくとも1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層を製紙装置上でプレコート層にインラインで適用する、方法。」
(2)引用文献に記載された事項、引用発明
ア.引用文献1
引用文献1には、次の記載がある。
「【請求項1】
ファイバー系の第一層と、
乾燥して0.1~10g/m2のマイクロフィブリル化セルロースを含む第二層と、
ポリマーを含む第三層
とを備えるバリア性を有する紙又は板紙基材。
【請求項2】
第二層が、第一層に付き、第三層が第二層に付く、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
ポリマーが、ポリエチレン又はポリエチレンテレフタレートである、請求項1から2までのいずれか一項に記載の基材。
・・・
【請求項8】
ファイバー系の第一層を提供するステップと、
乾燥して0.1~10g/m2のマイクロフィブリル化セルロースを含む第二層を追加するステップと、
ポリマーを含む第三層を追加するステップ
とを含む、バリア性を有する紙又は板紙基材を製造するための方法。」
「【0005】
バリアは、通常、ファイバー系基材を、基材にバリア性を付与する組成物でコーティングすることによって創られる。多様なコーティングは、バリアの必要とされる特性に応じて施用することができる。ファイバー系製品上にバリアを形成する場合、最も普通に使用される材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレンビニルアルコール(EVOH))又はエチレンビニルアセテート(EVA)である。EVOHは、通常、酸素バリアを創るために使用され、PE又はPETは、通常、液体及び/又は蒸気バリアを創るために使用される。ポリマーは、通常、ファイバー系製品に積層されるか、又は押出コートされる。」
「【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ファイバー系の第一層の他に、マイクロフィブリル化セルロース(MFC)を含む第二層と、ポリマーを含む第三層とを備えるバリア性を有する紙又は板紙基材に関する。マイクロフィブリル化セルロースを含む層とポリマー層の組合せは、紙又は板紙基材の優れたバリア性を与えることがわかった。
【0020】
ファイバー系の第一層にマイクロフィブリル化セルロースを含む層を追加すると、ファイバー系の第一層がより密になる、すなわち、マイクロフィブリル化セルロースの小さなサイズのためにMFCがファイバー系の第一層表面のファイバー間の空間を覆うことが可能になり、それによって表面が密になり、平滑になる。密になり、且つ平滑性が改善されると、ポリマーを含む第三層の接着性が改善され、それによってポリマー層の平滑性が増進し、特に押出コーティング中、ポリマー層のピンホール又は他の不規則性が少なくなることになる。さらには、マイクロフィブリル化セルロースを添加すると、紙又は板紙基材表面の表面エネルギーも増加する。表面エネルギーの増加によって、ポリマーを含む第三層の表面への接着能力が増加する。したがって、ポリマーを含む第三層が接着するために、MFCを含む第二層を備える紙又は板紙基材を、例えば、コロナ処理法で処理することが必要でない場合がある。ポリマー層の接着と表面の平滑性の両方が改善されるので、ポリマーの量、すなわち、ポリマーを含む第三層の厚さを低減することができる。マイクロフィブリル化セルロースを含む第二層は、0.1~10g/m2(乾燥して)、好ましくは、0.5~3g/m2(乾燥して)の範囲の量で、添加することができる。MFCを含む層のより大きい厚さによって、紙又は板紙基材の表面の弾性率が改善され、したがって、より大きい曲げ剛性指数も実現される。ポリマーを含む第三層の厚さは、5~50gsm、好ましくは、9~25gsmであってよい。しかし、厚さは、紙又は板紙基材の所望の最終特性に左右される。
【0021】
ポリマーを含む第三層とMFCを含む第二層の組合せは、驚くべきことに、優れた酸素バリア性を与えることがわかった。ファイバー系の第一層の表面の緻密化と、ポリマー層が与える耐久性の組合せは、それぞれの層自体が不十分な酸素バリア性を示すとしても、非常に良好な酸素バリア性を有する紙又は板紙基材をもたらす。さらには、基材はまた、液体及び/又は蒸気に対する良好なバリア性を示し、これは、ポリマーを含む第三層の結果である。ポリマーを含む第三層も、紙又は板紙基材にヒートシール性を付与すること、すなわち、製造された紙又は板紙基材からパッケージを形成することを容易にするヒートシール性ポリマーであることが好ましい。さらには、MFC及びポリマー層を基材に追加すると、紙又は板紙基材の、可撓性、及びしたがって湾曲及び折畳み中の強度が増加する。」
「【0026】
第三層は、以下のポリマー;すなわち、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリプロピレン(PP)及び/又はポリアミド(PA)のいずれかを含むことが好ましい。ポリマーは、好ましくは、基材にヒートシール性を付与することになり、この特性は、製造された紙又は板紙基材によって形成されるパッケージのシーリング性を改善することになる。さらには、これらの列挙されたポリマーは、基材の液体及び/又は蒸気に対するバリア性を増進することになる。しかし、こうしたポリマー自体は、基材に酸素などのガスに対する耐久性を非常に少ししか、又はまったく付与しないことになる。」
「【0039】
第二、第三及び/又は第四層の追加は、紙若しくは板紙機械のオンラインで実行することもでき、またオフラインで実行することもできる。」
「【実施例】
【0042】
漂白硫酸塩パルプの3つの層を備える漂白SBSカップボードであるCupforma Classic 230gsmシートをファイバー系の層として使用した。
【0043】
実験室用ロッドコータを使用することによって、マイクロフィブリル化セルロースの2つの層で1つのシートの表側をコーティングした。紙ボード上にコーティングしたMFCの全量は、1.2gsm(乾燥して)であった。
【0044】
MFCをセルロース含量の高い十分に漂白した亜硫酸塩針葉樹パルプから調製した。このパルプは、DS0.05~0.1までカルボキシメチル化し、次いで、3%コンシステンシーのパルプを400μmチャンバー、続いて100μmチャンバー中を通過させることによって流動化し(Microfluidizer、Microfuidics corp.)、用いたMFCを形成した。
【0045】
その後、MFCでコーティングした紙ボードシートと、処理していないシートの両方を、シートをウェブに付けることによって、フルスケール積層機で表側に全部で24gsmPEを積層した(11+13gsm。溶融温度311/292℃。速度310m/minBorealis CA7230)。
【0046】
その後、PEを積層したシートと、本発明に従って、MFCをコーティングし、PEを積層したシートの両方を、ASTM D3985-05標準にしたがって酸素透過速度を測定した。
【表1】
[図:0001396244000001.jpg]
」
以上の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「ファイバー系の第一層を提供するステップと、乾燥して0.1~10g/m2のマイクロフィブリル化セルロースを含む第二層を追加するステップと、ポリエチレンの第三層を追加するステップとを含む、液体及び/又は蒸気に対する良好なバリア性を示し、ヒートシール性が付与された紙又は板紙基材を製造するための方法であって、第二及び第三の追加は、紙若しくは板紙機械のオンラインで実行する、方法」
イ.引用文献2
引用文献2には、図面と共に次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
1. 包装用ボードの製造方法であって、板紙又は厚紙からなるボード基材(8、12)が少なくとも1つの珪素をベースとした液密で且つ気密のコーティング層(9、13)を備えているものにおいて、交互に並ぶ珪素と酸素原子を含む無機系の鎖状又は架橋結合した高分子主鎖を形成するための少なくとも1つの珪素化合物と、その高分子主鎖への有機系の側鎖及び/又は架橋結合を形成するための少なくとも1つの反応性有機化合物とを含む重合反応混合液を供給するステップと、前記混合液を前記ボード基材(8、12)に展着するステップと、前記混合液を硬化させてコーティング層(9、13)を形成するステップを特徴とする包装用ボードの製造方法。
・・・
10. このようにして形成されるコーティング層(9、13)の重量が少なくとも1g/m2であり、好適には約2g/m2から6g/m2であることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の包装用ボードの製造方法。
・・・
13. 接合形成高分子コーティング(6、14)が従前に形成された珪素をベースとする液密で且つ気密なコーティング層(5、13)の上面に展着され、この高分子コーティングにより包装(1、10)が閉鎖されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の包装用ボードの製造方法。
14. 液密で且つ気密な包装(1、10)の製造方法であって、交互に並ぶ珪素と酸素原子を含む無機系の鎖状又は架橋結合した高分子主鎖を形成する少なくとも1つの珪素化合物と、その高分子主鎖への有機系の側鎖及び/又は架橋結合を形成する少なくとも1つの反応性有機化合物とを含む重合反応混合液を紙(4)あるいは板紙又は厚紙からなるボード基材(12)に展着し、その反応混合液を硬化させてコーティング層(5、13)を形成し、このようにして得られる高分子コーティングされた紙又はボードから前記包装の一部又は全体を形成することを特徴とする液密で且つ気密な包装の製造方法。」
「本発明により、クリージングに耐え、曲げても破れず、酸素及び水蒸気を通さない、丈夫なコーティング層が供給され、また、コーティング層形成段階又は後の加熱あるいは継ぎ合わせ時にコーティングに肉眼では認められないほどの小さなピンホールも生じることなく、コーティング層を非常に薄くすることができる。従来のコーティング材料ではこのピンホールが問題となっており、そのため、従来のコーティング層は比較的厚くしなければならなかった。予備試験の結果から判断し、1g/m2程度の少量のコーティング量で滑らかなボード基材にコーティングの密着層をもたらすことができ、実際上の好適なコーティング量は約2g/m2から6g/m2の範囲である。本発明の更なる利点は、珪素をベースとしたコーティング層の上に直接高分子シール層を展着できることであり、これらの層の間に結合剤を用いる必要はない。既知の有機系コーティングの組み合わせの場合、ポリアミド、PET、又はEVOHで作ることができる気密バリヤーの重量だけでも、典型的には、少なくとも約20g/m2あり、更に、これらの材料では、バリヤーとヒートシール層の間に別な材料結合層が必要である。従って、本発明を用いることにより材料を本質的に節約できると共に、上記の既知の技術に比べてボードの重量を軽量化することができる。本発明の別な利点は、ロッドコーティング法やブレードコーティング法、あるいは噴霧法等の、紙及び板紙又は厚紙産業で一般的に用いられている方法を使ってコーティング混合液の展着を容易に行えることである。従って、通常のコーティングの展着に用いられるのと同一の適用技術を使って、ボードの製造プロセスの一部として「オンライン」原理を利用することにより、板紙抄紙機でコーティングの展着を行うことができる。」(9ページ7~28行)
「先述の如く、層の間に接着剤層を積層することなく、本発明により供給されるコーティング層の上面に接合形成(joint-forming)高分子コーティングを展着することができる。例えば、板紙又は厚紙から容器タイプの包装を製造する場合、ヒートシール高分子がその容器の接合部をシールする接着剤として機能する。接合部の密閉性を確実化するため、好適にはボードの両面をヒートシール高分子でコーティングする。」(17ページ25~18ページ2行)
「このような状況において、本発明で用いるボード基材という用語は、例えば全体が前記材料で製造される容器状包装又は食料品容器に適した充分な自重支持能力を有するかなり堅い繊維をベースとした包装用材料を表していることを述べておく必要があろう。そのようなボードの重量は、少なくとも約170g/m2であり、一般的には225g/m2以上である。重量範囲が170g/m2から250g/m2のボードは慣例的に板紙と呼ばれており、250g/m2以上の重量を有するボードは厚紙と呼ばれている。また、本発明で用いる紙という用語は、例えば包装又は箱の一部を為す、ヒートシールされた剥離可能なカバーに適した包装用材料である、もっと薄く且つもっと軽い繊維をベースとした材料を表している。」(19ページ8~17行)
「本発明による製品を例示する添付図面において:
図1は、ヒートシールされた紙製のカバーが設けられた本発明によるヨーグルト用の小さなカップを示している。
図2は、図1の一部を拡大した、カップの口と紙製カバーのエッジの断面図である。
・・・
図1及び図2に示されている本発明によるヨーグルトの消費者包装は、好適には、カップの口2にヒートシールされた耐酸素性で且つ耐香気性の紙製のカバー3が設けられた小さなプラスチック製カップ1からなっている。紙製カバー3は、紙層4、ゾル-ゲル法を用いて作成される珪素をベースとした耐酸素性で且つ耐香気性の高分子層5、及び例えばエチレンとメタクリル酸のスチレン修飾共重合体からなるヒートシール層6で構成されている。ヒートシール層6は、紙製カバー3をポットの口を取り囲むフランジ2にしっかりと固定している。同時に、ヒートシール層6は、カップを開けたときに紙製カバー3が剥離されるようにしている。紙製カバーの紙層4の重量は例えば40g/m2から80g/m2であってよく、耐酸素性で且つ耐香気性のコーティング層5の重量は好適には約2g/m2から5g/m2であり、ヒートシール層6の重量は例えば約20g/m2であってよい。」(20ページ6~26行)
「概略、直角プリズムの形状を為している図5及び図6に示す牛乳容器10は、全体がコーティングされた液密で且つ気密な包装用ボードでできている。その包装用ボードは、容器10の外面の高分子ヒートシール層11と、板紙層12、ゾル-ゲル法で作成され、板紙層の内側に設けられた珪素をベースとした耐酸素性で且つ耐香気性の高分子層13、及び容器の内面を構成するヒートシール層14からなっている。」(21ページ10~15行)
「本発明及び、本発明が使用する高分子コーティング材料を、以下の実施例により説明する。
実施例1
バリヤーコーティング
182gの2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを、室温で473gのγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランに混合しながら溶解する。この混合液に24gの0.1N塩酸を徐々に加え、同時に攪拌する。攪拌を約2時間続け、その間に、20gのコロイドシリカを加える。必要な場合には、1gの流動性調節剤を添加する。このようにして調製された溶液は少なくとも1ヶ月間使用することができる。その溶液を使用する前に16gのメチルイミダゾール(ルイス酸の1つ)を加え、約1時間混合する。この溶液は約24時間使用することができる。
ロッドコーティング法を用いて以下のグレードの板紙にコーティングした:
1.顔料コーティングSBS板紙
基材重量:235g/m2
厚み:314μm
2.スチレンブタジエン分散コーティング板紙
3.滑らかな表面を有するカップボード
基材重量:230g/m2
厚み:~300μm
コーティングを炉内において160℃で2分間加熱硬化させた。
試験結果
実施例1によるコーティング溶液を用いてグレード1、2、及び3の板紙について試験を行った。試験結果は、この粘度を有する実施例1のコーティング溶液が滑らかで細孔の少ないグレードの板紙をコーティングするのに最適であったことを示している(サンプル1及び2)。
肉眼で評価したところ、そのコーティングは清浄且つ透明で、良好なフィルム形成能力を持っていることが示された。また、電子顕微鏡を用いた試験は、サンプル1及び2のコーティングが無傷で連続していることを示した。サンプル3のコーティングには穴の原因となる細孔が部分的に見られた。
それらのコーティングの物理的特性が表1に示されている。
表1:実施例1の試験結果
[図:0001396244000002.jpg]
実施例2
実施例1の場合と同様に、溶液を予備加水分解する。
コロイドシリカの代わりに、総量180gの少量の細粒化滑石を連続的に撹拌しながら加える。使用する滑石の粒径はその98%が10μm未満である(Finntalc C10)。
その混合液にメチルイミダゾールを加えた後、約7gのコロイドシリカを加えることにより、その粘度をロッドコーティングに適した粘度に調整した。
そのコーティング溶液を用いて、実施例1によるグレード1と3の板紙をコーティングした。そのコーティングを、実施例1と同じ条件下で硬化及び乾燥させた。
試験結果
肉眼で評価したところ、そのコーティングは僅かにつや消しされており、良好なフィルム形成能力を有することが示された。
それらのコーティングの物理的特性が表2に示されている。
表2:実施例2の試験結果
[図:0001396244000003.jpg]
実施例3
35.6gのフェニルトリメトキシシラン、276.6gのグリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び19.8gのアミノプロピルトリメトキシシランを、氷浴中の容器内で混合した。この混合液に6gの水を滴下させながら徐々に加え、氷浴中で撹拌を15分間続けた後、12gの水を少量ずつ加え、その混合液を氷浴中で更に15分間撹拌した。次いで、97.2gの水をすばやく滴下させながら加え、室温で2時間撹拌を続けた。その後、この加水分解物に43.6gのエポキシ樹脂(Dow Corning D.E.R.330)を加えた。ロッドコーティング法を用いて、実施例1によるグレード1から3までの板紙にコーティングを行った。コーティングを160℃の炉で3分間硬化させた。
表3:実施例3の試験結果
[図:0001396244000004.jpg]
実施例4
実施例3と同様に溶液を予備加水分解した。その加水分解物に147gの雲母(Kemira Mica40)を加えた。そのコーティング溶液を用いて、実施例1によるグレード1、2、及び3の板紙をコーティングした。実施例3と同様に、そのコーティングを硬化及び乾燥させた。
試験結果
肉眼で調べたところ、そのコーティングは僅かにつや消しされており、良好なフィルム形成能力を有することが示された。それらのコーティングの物理的特性が表4に示されている。
表4:実施例4の試験結果
[図:0001396244000005.jpg]
」(21ページ26行~25ページ1行)
以上の記載を総合すると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「紙、板紙又は厚紙からなるボード基材が珪素をベースとした液密で且つ気密のコーティング層を備えている包装用ボードの製造方法であって、交互に並ぶ珪素と酸素原子を含む無機系の鎖状又は架橋結合した高分子主鎖を形成するための少なくとも1つの珪素化合物と、その高分子主鎖への有機系の側鎖及び/又は架橋結合を形成するための少なくとも1つの反応性有機化合物とを含む重合反応混合液を供給するステップと、前記混合液を前記ボード基材に展着し、前記混合液を硬化させて、重量が少なくとも1g/m2であり、好適には約2g/m2から6g/m2であるコーティング層を形成し、接合形成高分子コーティングが従前に形成された珪素をベースとする液密で且つ気密なコーティング層の上面に展着され、ボードの製造プロセスの一部として「オンライン」原理を利用することにより、板紙抄紙機でコーティングの展着を行う、方法。」
ウ.引用文献3
引用文献3には、図面と共に次の記載がある。
「【請求項1】 アルミニウム箔及びアルミニウム蒸着フィルムを使用せず、明度指数L*が25~70である色相を有し、且つ、光透過率が200~800nmの全波長範囲に於いて0.5%以下である遮光層が設けられた紙支持体の表面に、離解性及びヒートシール性を有する防湿層が設けられたものであり、該遮光層が、黒鉛を2~50重量%、有色顔料を10~70重量%、白色顔料を10~70重量%の割合で配合された顔料を主成分とする遮光剤、及び水性結合剤とから成る混合液により表面処理が施されて成る層であることを特徴とする遮光性及び再生性を有する防湿紙。
・・・
【請求項3】 防湿層が、ゲル分率(エマルジョン粒子内橋かけ率)が90~100%の範囲にあるアクリル系エマルジョン100重量部(固形分)に対して、ワックス系エマルジョンを1~5重量部(固形分)の割合で配合された混合液により表面処理が施されて成る層であり、且つ、固形分で3~25g/m2塗布されて成る防湿層が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の遮光性及び再生性を有する防湿紙。」
「【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題点に鑑み、成されたものであり、アルミニウム、カーボンブラック及びプラスチックフィルムを使用すること無く、優れた遮光性、防湿性及びヒートシール性を有し、且つ、古紙回収性としての離解性及び再利用する際に容易な再生性を付与させた防湿紙を提供することである。」
「【0018】本発明に於いて防湿層に使用し得るアクリル系エマルジョンは、例えば、アクリルコポリマー、アクリル-スチレンコポリマー等の共重合体エマルジョンや自己架橋型アクリル系共重合体エマルジョン等の各種エマルジョンを使用することが出来る。尚、具体的には、スチレン及びスチレン誘導体、アクリル酸(メタクリル酸)及びアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステルやメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステルなどを共重合したアクリル系コポリマーである。」
「【0022】本発明で防湿層に使用するワックス系エマルジョンは、パラフィン系ワックスエマルジョン、ポリエチレン系ワックスエマルジョン等の公知のワックスエマルジョンを使用することが出来るが、特にパラフイン系ワックスエマルジョンは撥水性が大きく透湿度の調整に好適であり、好ましい。また、2種以上のワックス系エマルジョンを使用して調整することも可能である。上記アクリル系エマルジョンとワックス系エマルジョンの配合は、固形分重量比でアクリル系エマルジョン100重量部に対して、ワックス系エマルジョンを1~5重量部とすることが好ましい。1重量部より少ないと、良好な防湿性が得られなくなる。一方、ワックスの配合部数の増加に伴い、古紙原料として再利用する際に抄紙機のロール汚れが発生し易くなる傾向にあるが、5重量部以下ではロール汚れは殆ど発生せず、再生性に悪影響を与えないものとなる。また、ワックスの配合部数の増加に伴い、塗工層が非常に脆くなり、折り曲げの際の防湿性が大きく低下すると共に、ワックスにより摩擦係数が低下して、トラブルが発生し易くなるという問題点もあるが、5重量部以下は勿論、10重量部以下であれば、これ等の品質に大きく影響を与えないものとなる。防湿層の紙への塗工量は、3~25g/m2塗布することが好ましく、特に5~20g/m2とすることが好ましい。塗工量が3g/m2より少ないと防湿性・ヒートシール性等の品質が劣り、25g/m2より多いと乾燥能力等のコストが高くなり、製造上不利となる。」
「【0024】本発明に於いては、前記した遮光層と前記した防湿層の設け方によって、例えば図1~3の構成のものが得られる。図1は、塗工基紙に遮光層を設けた紙支持体の該遮光層上に、防湿層を設けた本発明の遮光性及び再生性を有する防湿紙を示す断面図である。図1に於いて、符号1は塗工基紙、2は遮光層、3は防湿層を示す。図1の構成に於いては、図2の様に、遮光層及び防湿層を設けた塗工面とは反対の基紙表面に、防滑性付与やカール防止等を目的として、防滑剤若しくは防滑剤等を含有するポリビニルアルコール系樹脂やデンプン等の公知の材料を用いて塗工させても良い。図2に於いては、符号4は防滑層を示す。図3は、塗工基紙に遮光層を設けた紙支持体の該遮光層とは反対側の基紙表面に、防湿層を設けた本発明の遮光性及び再生性を有する防湿紙を示す断面図である。これ等本発明の防湿紙の表面色は、防湿層が無色透明であるため、明度指数L*が25~70の色相を有する遮光層表面色、または、塗工基紙は特に限定されるものではないので、概ね白色、黄色、クラフト色等の淡色系の基紙表面色であり、更に、図2の様に防滑層を設けた場合も、概ね無色透明若しくは白色であり、印刷や印字が出来、判別可能な表面色である。」
「【0027】
【実施例】以下、本発明を実施例に従って更に詳述するが、本発明はこれ等の実施例によって限定されるものではない。尚、後記の実施例、比較例に於いて、遮光剤は、表1に示した割合で配合(重量%)した顔料成分60重量%と、分散剤としてスチレン・アクリル樹脂(ジョンソンポリマー株式会社製;商品名ジョンクリル61J)22重量%(固形分31%)、及び水18重量%の割合で共にサンドミルにより分散して作製し、エマルジョンのポリマーのTg(ガラス転移温度)は、各薬品会社のカタログ値(理論値)を示すものである。また、実施例、比較例の遮光層表面の色相を表2に、遮光性、防湿性(透湿度)、ヒートシール性、離解性、再生性の結果を表3に、摩擦係数の結果を表4に夫々示した。
【0028】実施例1
黒鉛(株式会社中越黒鉛工業所製;商品名CX-600)を17重量%、有色顔料としてベンガラ(日本弁柄工業株式会社製;商品名EP-40)を50重量%、及び白色顔料として二酸化チタン(石原産業株式会社製;商品名タイペークR-930)を33重量%の割合で配合したものを顔料成分とする遮光剤1とポリビニルアルコール(クラレ株式会社製;商品名PVA117)を固形分比率で100:20(=遮光剤:PVA)になる様に混合し、固形分が30%になる様に塗工液を調整した。得られた塗工液を75g/m2のクラフト紙にエアナイフコーターで塗工・乾燥を行い、塗工量が10.5g/m2の遮光層を設けた紙支持体を得た。得られた遮光層表面の色相は表2に示す様に、明度指数L*が30である茶色系であり、黒色インキによる印刷・印字が可能であり、印刷・印字パターンは充分に判明出来るものであった。
【0029】続いて、ポリマーのゲル分率が98%のスチレン・アクリル系エマルジョン(サイデン化学株式会社製;商品名サイビノールX-591-607E-17,Tg:20℃)とワックス系エマルジョン(サイデン化学株式会社製;商品名サイビノールX-591-607E-18)を固形分比率で100:4(=アクリル:ワックス)になる様に混合し、固形分が40%になる様に塗工液を調整した。得られた塗工液を、上記紙支持体の遮光層上にエアナイフコーターで塗工・乾燥を行い、塗工量が12.6g/m2の防湿層を設けた防湿紙を得た。
【0030】上記の様にして得られた防湿紙は表3に示す様に、遮光性、防湿性、ヒートシール性は非常に良好なものであった。・・・
【0031】実施例2
実施例1の防湿層の塗工量を12.6g/m2から15.6g/m2とした以外は実施例1と全く同様にして、防湿紙を作製した。得られた防湿紙は、表3に示す様に遮光性、防湿性、ヒートシール性、離解性、再生性に於いて良好なものであった。また、実施例1よりも防湿層の塗工量を多くすることによって、より低い透湿度を得ることも可能であった。
【0032】実施例3
実施例1で用いたアクリル系エマルジョンとワックス系エマルジョンを固形分比率で100:2(=アクリル:ワックス)になる様に混合した以外は、実施例1と全く同様にして、防湿紙を作製した。得られた防湿紙は、表3に示す様に遮光性、防湿性、ヒートシール性、離解性、再生性に於いて良好なものであった。また、表4に示す様に、実施例1よりもワックスを減配することによって、摩擦係数を高くすることも可能であった。
【0033】実施例4
実施例1で用いた遮光剤1とポリビニルアルコールを固形分比率で100:100(=遮光剤:PVA)になる様に混合した以外は、実施例1と全く同様にして、防湿紙を作製した。得られた防湿紙は、表3に示す様に遮光性、防湿性、ヒートシール性、離解性、再生性に於いて良好なものであった。また、実施例1よりもポリビニルアルコールを増配することによって、表2に示す様に遮光層表面の色相をより明色化することが可能であると共に、離解再生紙の色相をクラフト原紙の色相により近付けることも可能であった。
【0034】実施例5
実施例1で用いた遮光剤1の代わりに、遮光剤1の顔料成分である黒鉛と有色顔料と白色顔料との重量%数を15:45:40(=黒鉛:有色顔料:白色顔料)になる様に混合した遮光剤2を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、防湿紙を作製した。得られた遮光層表面の色相は、表2に示す様に明度指数L*が53である茶色系で、実施例1より明色であり、黒色インキによる印刷・印字適性は良好であった。また、得られた防湿紙は、表3に示す様に遮光性、防湿性、ヒートシール性、離解性、再生性に於いて良好なものであり、離解再生紙の色相は、実施例4よりも更にクラフト原紙の色相に近いものであった。
【0035】実施例6
実施例1で用いたアクリル系エマルジョンとワックス系エマルジョンを固形分比率で100:10(=アクリル:ワックス)になる様に混合した以外は、実施例1と全く同様にして、防湿紙を作製した。得られた防湿紙は、表3に示す様に遮光性、防湿性、ヒートシール性、離解性に於いて良好なものであった。また、再生性に於いては、離解再生紙を作製する際のシリンダードライヤー乾燥時に、ワックス成分によるロール汚れが若干認められたが、抄紙乾燥工程上、問題の無いレベルであり、離解再生紙の色相は、実施例1と同様に良好であった。尚、表4に示す様に、実施例1よりもワックスを増配したことによって摩擦係数は若干低いものとなった。
【0036】実施例7
実施例1で使用したアクリル系エマルジョンとワックス系エマルジョンの代わりに、ポリマーのゲル分率が13%のスチレン・アクリル系エマルジョン(新中村化学工業株式会社製;商品名ニューコートS-3300,Tg:10℃)とワックス系エマルジョン(コニシ株式会社製;商品名WEL-2)とを用いた以外は、実施例1と全く同様にして防湿紙を作製した。得られた防湿紙の遮光性、防湿性、ヒートシール性は、表3に示す通り良好であった。また、離解性は有していたが、完全に単繊維の状態になる迄に60分間の離解時間を必要とし、実施例1よりも離解し難いものであった。離解性に関係するポリマー被膜の破断時伸びを測定したみた処、伸びが504%であり、離解性良好なポリマー被膜の破断時伸びが例えば実施例1では62%であるのに比べて、約7倍も大きくなっており、この大きな伸びが、離解時の剪断力に対する抵抗となって、分離、分散し難くなっていると考えられる。尚、離解後の再生性は、表3に示す通り良好であった。」
「【0044】
【表3】
[図:0001396244000006.jpg]
」
「【0048】(4)透湿度
JIS Z 0208 防湿包装材料の透湿度試験(恒温恒湿条件:40℃、90%RH)に準じて、測定した。
・・・」
以上の記載を総合すると、引用文献3には次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。
「JIS Z 0208 防湿包装材料の透湿度試験(恒温恒湿条件:40℃、90%RH)に準じて、測定した透湿度11.8、19.7、19.8、21.0、21.2、21.4及び39.8(g/m2/24hr)であり、アルミニウム箔及びアルミニウム蒸着フィルムを使用せず、明度指数L*が25~70である色相を有し、且つ、光透過率が200~800nmの全波長範囲に於いて0.5%以下である遮光層が設けられた紙支持体の表面に、離解性及びヒートシール性を有する防湿層が設けられたものであり、遮光層が、遮光剤100重量部(固形分)に対して、水性結合剤を5~300重量部(固形分)の割合で配合された混合液により表面処理が施されて成る層であり、且つ、固形分で3~25g/m2塗布されて成り、防湿層が、ゲル分率(エマルジョン粒子内橋かけ率)が90~100%の範囲にあるアクリル系エマルジョン100重量部(固形分)に対して、ワックス系エマルジョンを1~5重量部(固形分)の割合で配合された混合液により表面処理が施されて成る層であり、且つ、固形分で3~25g/m2塗布されて成る、遮光性及び再生性を有する防湿紙の製造方法。」
エ.引用文献4
引用文献4の表11-2には、厚さ25μmのポリエチレンの測定条件:40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が5~19g/m2・dと記載されている
オ.引用文献5
引用文献5の表2には、ポリエチレンの測定条件:40℃、90%RH、0.1mmにおける透湿度が1.8~7.8g/m2・24hrと記載されている。
カ.引用文献6
引用文献6には、次の記載がある。
「【0006】・・・しかしながら近年バリヤー紙に関して、生産性の向上が要求されており、特にゲートロールコーター(以下GRCと略記することがある)で、バリヤー剤をオンマシン塗工するケースが増えている。・・・」
(3)本件発明1について
ア.引用発明1を主引用発明とした場合
引用発明1の「液体及び/又は蒸気に対する良好なバリア性を示し、ヒートシール性が付与された紙又は板紙基材」は、その機能・構成からみて、本件発明1の「熱封止性の水蒸気バリア紙」に相当する。
引用発明1の「ファイバー系の第一層」、「0.1~10g/m2のマイクロフィブリル化セルロースを含む第二層」及び「ポリエチレンの第三層」は、その機能・構成からみて、それぞれ本件発明1の「繊維基材」、「プレコート層」及び「1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層」に相当するから、引用発明1の「第二及び第三の追加は、紙若しくは板紙機械のオンラインで実行する」ことは、本件発明1の「プレコート層を製紙装置上で繊維基材にインラインで適用した後、少なくとも1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層を製紙装置上でプレコート層にインラインで適用する」ことに相当する。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点で一致し、相違点1aで一応相違する。
[一致点]
「熱封止性の水蒸気バリア紙を製造する方法であって、プレコート層を製紙装置上で繊維基材にインラインで適用した後、少なくとも1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層を製紙装置上でプレコート層にインラインで適用する、方法。」
[相違点1a]
「熱封止性の水蒸気バリア紙」について、本件発明1は「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される、最大で15g/m2/24時の水蒸気透過率を有する」ものであるのに対し、引用発明1はその点不明である点。
相違点1aについて検討する。
引用文献4及び引用文献5の記載によれば、ポリエチレンは、測定条件:40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が1.8~19g/m2・24時であるため、引用発明1の「紙又は板紙基材」は、「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される、最大で15g/m2/24時の水蒸気透過率」である蓋然性が高いから、相違点1aは実質的な相違点ではなく、本件発明1は引用発明1である。
したがって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
次に、引用発明1aが、「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される」「水蒸気透過率」の上限を「15g/m2/24時」に特定しないという点で、相違点1aが実質的な相違点である場合について検討する。
引用発明1の「紙又は板紙基材」は、「液体及び/又は蒸気に対する良好なバリア性を示」すことを予定しているのであるから、引用発明1には水蒸気透過率を低くする動機付けがあり、引用発明1の「紙又は板紙基材」について、本件発明1と同程度の水蒸気透過率とすることは、引用発明1を具体化するにあたり、当業者が適宜になし得たことである。
また、「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される、最大で15g/m2/24時の水蒸気透過率」という上限値を境に、当業者に予測し得ない異質な作用・効果もしくは格別顕著な作用・効果を奏するともいえない。
したがって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
イ.引用文献2を主引用発明とした場合
引用発明2の「紙、板紙又は厚紙からなるボード基材」、「珪素をベースとした液密で且つ気密のコーティング層」及び「接合形成高分子コーティング」は、その機能・構成からみて、それぞれ本件発明1の「繊維基材」、「プレコート層」及び「1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層」に相当するから、引用発明2の「紙、板紙又は厚紙からなるボード基材が珪素をベースとした液密で且つ気密のコーティング層を備えている包装用ボード」は、その機能・構成からみて、本件発明1の「熱封止性の水蒸気バリア紙」に相当し、引用発明2の「前記混合液を硬化させて、重量が少なくとも1g/m2であり、好適には約2g/m2から6g/m2であるコーティング層を形成し、接合形成高分子コーティングが従前に形成された珪素をベースとする液密で且つ気密なコーティング層の上面に展着され、ボードの製造プロセスの一部として「オンライン」原理を利用することにより、板紙抄紙機でコーティングの展着を行う」ことは、本件発明2の「プレコート層を製紙装置上で繊維基材にインラインで適用した後、少なくとも1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層を製紙装置上でプレコート層にインラインで適用する」ことに相当する。
したがって、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点で一致し、相違点1bで一応相違する。
[一致点]
「熱封止性の水蒸気バリア紙を製造する方法であって、プレコート層を製紙装置上で繊維基材にインラインで適用した後、少なくとも1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層を製紙装置上でプレコート層にインラインで適用する、方法。」
[相違点1b]
「熱封止性の水蒸気バリア紙」について、本件発明1が「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される、最大で15g/m2/24時の水蒸気透過率を有する」ものであるのに対し、引用発明2は「紙、板紙又は厚紙からなるボード基材が珪素をベースとした液密で且つ気密のコーティング層を備え」た「包装用ボード」に、「接合形成高分子コーティングが従前に形成された珪素をベースとする液密で且つ気密なコーティング層の上面に展着され」た後の水蒸気透過率が不明である点。
相違点1bについて検討する。
本件発明1と引用発明2とは、測定条件の温度・湿度が異なるものではあるが、引用文献2の上記表1~4によれば、引用発明2の「水蒸気の浸透性」は最大で25(g/m2/24h,23℃,RH50%)と十分に低く、かつ引用発明2は「接合形成高分子コーティングが従前に形成された珪素をベースとする液密で且つ気密なコーティング層の上面に展着され」るものであり、「接合形成高分子コーティングが従前に形成された珪素をベースとする液密で且つ気密なコーティング層の上面に展着され」た後の「包装用ボード」の「水蒸気の浸透性」は、前記最大で25(g/m2/24h,23℃,RH50%)よりも大きくなることはないため、引用発明2の「包装用ボード」は、「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される、最大で15g/m2/24時の水蒸気透過率」である蓋然性が高いから、相違点1bは実質的な相違点ではない。
したがって、本件発明2は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
次に、引用発明1bが、「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される」「水蒸気透過率」の上限を「15g/m2/24時」に特定しないという点で、相違点1aが実質的な相違点である場合について検討する。
引用発明2の「包装用ボード」は、「クリージングに耐え、曲げても破れず、酸素及び水蒸気を通さない、丈夫なコーティング層が供給され」ることを予定しているのであるから、引用発明2には水蒸気透過率を低くする動機付けがあり、引用発明2の「包装用ボード」について、本件発明1と同程度の水蒸気透過率とすることは、引用発明2を具体化するにあたり、当業者が適宜になし得たことである。
また、「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される、最大で15g/m2/24時の水蒸気透過率」という上限値を境に、当業者に予測し得ない異質な作用・効果もしくは格別顕著な作用・効果を奏するともいえない。
したがって、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
ウ.引用発明3を主引用発明とした場合
引用発明3の「離解性及びヒートシール性を有する防湿層が設けられた」「防湿紙」は、その機能・構成からみて、本件発明1の「熱封止性の水蒸気バリア紙」に相当する。
引用発明3の「紙支持体」、「遮光層」及び「ゲル分率(エマルジョン粒子内橋かけ率)が90~100%の範囲にあるアクリル系エマルジョン100重量部(固形分)に対して、ワックス系エマルジョンを1~5重量部(固形分)の割合で配合された混合液により表面処理が施されて成る層であ」る「防湿層」は、その機能・構成からみて、それぞれ本件発明1の「繊維基材」、「プレコート層」及び「1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層」に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明3とは、次の一致点で一致し、相違点1c及び相違点2cで相違する。
[一致点]
「熱封止性の水蒸気バリア紙を製造する方法であって、プレコート層を繊維基材に適用した後、少なくとも1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層をプレコート層に適用する、方法。」
[相違点1c]
「熱封止性の水蒸気バリア紙」について、本件発明1は「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される、最大で15g/m2/24時の水蒸気透過率を有する」ものであるのに対し、引用発明3は「JIS Z 0208 防湿包装材料の透湿度試験(恒温恒湿条件:40℃、90%RH)に準じて、測定した透湿度11.8、19.7、19.8、21.0、21.2、21.4及び39.8(g/m2/24hr)である」点。
[相違点2c]
「プレコート層を繊維基材に適用した後、少なくとも1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層をプレコート層に適用する」にあたり、本件発明1は「製紙装置上で」「インラインで」行うのに対し、引用発明3はその点不明である点。
相違点1cについて検討する。
本件発明1と引用発明3とは、測定条件の温度が異なるものではあるが、概ね同程度であり、かつ引用発明3の「測定した透湿度」は最大で39.8(g/m2/24hr)と十分に低いものであるため、引用発明3の「水蒸気バリア紙」は、「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される、最大で15g/m2/24時の水蒸気透過率」である蓋然性が高いから、相違点1cは実質的な相違点ではない。
次に、引用発明1cが、「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される」「水蒸気透過率」の上限を「15g/m2/24時」に特定しないという点で、相違点1aが実質的な相違点である場合について検討する。
引用発明3の「水蒸気バリア紙」は、「優れた遮光性、防湿性及びヒートシール性を有」することを予定しているのであるから、引用発明3には水蒸気透過率を低くする動機付けがあり、引用発明3の「水蒸気バリア紙」について、本件発明1と同程度の水蒸気透過率とすることは、引用発明3を具体化するにあたり、当業者が適宜になし得たことである。
また、「38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTM F1249基準に従って測定される、最大で15g/m2/24時の水蒸気透過率」という上限値を境に、当業者に予測し得ない異質な作用・効果もしくは格別顕著な作用・効果を奏するともいえない。
相違点2cについて検討する。
基材となる紙に各種層を適用するにあたり、製紙装置上でインラインで行うことは、本件特許に係る出願の優先日前に周知である(以下、「周知技術1」という。周知例:引用文献1の【0039】、引用文献2の9ページ26~29行、引用文献6の【0006】)。ここで、製造工程を簡素化することは、技術分野を問わない周知の課題であるところ、引用発明3にも、当該周知の課題は内在し得るから、当該周知の課題の解決を目的として、前記周知技術1を適用し、相違点2cに係る工程とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件発明1の奏する作用効果は、引用発明2及び周知技術1の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(4)本件発明2について
引用文献1~3のいずれにも、本件発明2の「前記紙の生産速度が、300m/分以上である」に相当する事項について記載されていないが、当該事項は、達成すべき目標による特定であるところ、この程度の生産速度が格別なものとはいえない。
また、本件発明2の「300m/分」という値を境に、当業者に予測し得ない異質な作用・効果もしくは格別顕著な作用・効果を奏するともいえない。
したがって、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(5)本件発明3について
積層体の製造過程で、基材表面に層を形成するにあたり、表面処理を行って基材表面の凹凸を埋めることは、本件特許に係る出願の優先日前に慣用されていた技術(以下、「慣用技術」という。)であるから、引用発明1~3において、前記慣用技術を適用し、本件発明3のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(6)本件発明4について
引用文献1には、坪量について記載されていないが、「熱封止性の水蒸気バリア紙」の「最終的な坪量が、45~200g/m2」程度のものは、本件特許に係る出願の優先日前に周知であるから(周知技術2。周知例:引用文献2の20ページ23~26行、引用文献3の【0028】~【0029】)、引用発明1の「紙又は板紙基材」について、「最終的な坪量が、45~200g/m2」程度とすることは、引用発明1を具体化するにあたり、当業者が適宜になし得たことである。
引用文献2には、「紙製カバーの紙層4の重量は例えば40g/m2から80g/m2であってよく、耐酸素性で且つ耐香気性のコーティング層5の重量は好適には約2g/m2から5g/m2であり、ヒートシール層6の重量は例えば約20g/m2であってよい。」(20ページ23~26行)と記載されているから、引用発明2の「包装用ボード」は、少なくとも最終的な坪量が約62~105g/m2のものを包含しており、これは、本件発明4の「熱封止性の水蒸気バリア紙」の「最終的な坪量が、45~200g/m2」の範囲内である。
引用文献3には、「【0028】実施例1・・・75g/m2のクラフト紙にエアナイフコーターで塗工・乾燥を行い、塗工量が10.5g/m2の遮光層を設けた紙支持体を得た。・・・【0029】・・・上記紙支持体の遮光層上にエアナイフコーターで塗工・乾燥を行い、塗工量が12.6g/m2の防湿層を設けた防湿紙を得た。」、「【0031】実施例2 実施例1の防湿層の塗工量を12.6g/m2から15.6g/m2とした以外は実施例1と全く同様にして、防湿紙を作製した。・・・」と記載されているから、引用発明3の「防湿紙」は、少なくとも最終的な坪量が98.1g/m2及び101.1g/m2のものを包含しており、これは、本件発明4の「熱封止性の水蒸気バリア紙」の「最終的な坪量が、45~200g/m2」の範囲内である。
したがって、本件発明4は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもある。
(7)本件発明5について
紙基材へ層を形成するにあたり乾燥工程を設けることや、製造した紙を巻き取る工程を設けることはごく一般的なことであるし、リールのターンが一緒に粘着してしまっては、その使用に支障が出るのであるから、リールのターンが一緒に粘着することがない程度に十分に乾燥させることは、当然のことである。よって、引用発明1~3において、本件発明5のようにすることは、引用発明1~3を具体化する際、当業者が適宜になし得たことである。
したがって、本件発明5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(8)本件発明6~7について
製紙装置の乾燥工程において、ヤンキーシリンダを用いて乾燥することや、熱風によって乾燥させることは周知であるから、引用発明1~3において、本件発明6~7のようにすることは、引用発明1~3を具体化する際、当業者が適宜になし得たことである。
したがって、本件発明6~7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(9)本件発明8~20について
引用文献2には、「他の可能な化合物は、例えば、コロイドシリカ、即ち、例えば水又はアルコールに分散され、粒径が好適には1nmから100nmの非常に微細に粒状化された無水シリカ粉末を含有するコロイド溶液を含む。」と記載されている。
形状及び含有量等は、引用発明2を具体化する際に、当業者が適宜になし得たことである。
したがって、本件発明8~20は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(10)本件発明21~25について
引用文献1には、「第二層」について、「【0031】 MFCを含む層は、好ましくは、任意の従来のコーティング技法によってファイバー系の第一層にコーティング、好ましくは、湿式コーティングされることが好ましい。しかし、フィルムプレス又はサイズプレスコーティングを使用することが好ましいがカーテンコーティング、ロッドコーティング、スプレーコーティング、ブレードコーティング、又は乾式コーティングなど他のコーティング技法も使用することができる。MFCを含む第二層をフィルムとしてファイバー系の第一層に追加することも可能である。次いで、MFCを含むフィルムは、第一層に積層されるか、又は押出コートされる。」と記載されており、「MFC(マイクロフィブリル化セルロース)」自体は、接合や結合という機能・作用を備えていないから、引用発明1の「第二層」がバインダを含むことは、引用文献1に記載されているに等しいか、また、引用発明1を具体化する際、当業者が適宜になし得たことである。
引用文献2には、「架橋性有機化合物としてプレポリマーを使用することができる。オルガノシランの反応性基がそのプレポリマーと好適に反応し、同様な反応性基が相互に反応して無機系の酸素珪素鎖を結合する架橋結合を形成する。例えば、エポキシ基を含むシランと反応させるためにエポキシ樹脂又は芳香族ジオールを使用することができる。ジオールとして、ビスフェノールA、ビスフェノールS、及び1,5-ジヒドロキシナフタレン等の芳香族アルコールを使用することができる。アクリル基又はアクリロキシ基を有するシランと反応させるためにアクリレートを用いることができる。ビニルシラン又は、メルカプト基を含むシランの他、重合性二重結合を含む他のシランには反応性の二重結合を有するプレポリマーが用いられる。多価アルコールはイソシアナート基を含むシランに用いられる。イソシアナートは水酸基を含むシランに用いられ、エポキシ樹脂はアミノシランに用いられる。」と記載されている。なお、「コロイドシリカ」との分量比は、引用発明2を具体化する際、当業者が適宜に設定することである。
引用文献3には「【0017】本発明に於いて遮光層に使用し得る水性結合剤としては、従来一般に用いられている塗工用の結合剤の使用が可能であり、ポリビニルアルコール系樹脂、デンプン、カゼイン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の公知の水溶性高分子や、アクリル系、スチレン系、ポリエステル系、酢酸ビニル系等の公知の水分散性高分子を使用することが出来るが、離解性の点から水溶性高分子、特に、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。上記遮光剤と水性結合剤との配合は固形分で、遮光剤100重量部に対して、水性結合剤を5~300重量部とすることが好ましい。5重量部より少ないと、遮光層の表面強度が弱くなり、製造上または実用上、粉落ち等の問題が発生し、300重量部より多いと、塗工量に見合う遮光性が得られず、コスト高となる。・・・」と記載されている。
また、バインダとして、「25℃以下の、ASTM E1356基準に従って測定されるガラス転移温度Tgを有する」ものは周知であり、「25℃」という値を境に、当業者に予測し得ない異質な作用・効果もしくは格別顕著な作用・効果を奏するともいえない。
したがって、本件発明21~25は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもある。
(11)本件発明26について
引用文献1~3には、「カレンダリングすること」は記載されておらず、「カレンダリングすること」を必須とする事情もない。
したがって、本件発明26は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもある。
(12)本件発明27について
引用発明1においては、「第三層」が「第二層」を覆う唯一のものであり、引用発明2においては、「接合形成高分子コーティング」が「珪素をベースとした液密で且つ気密のコーティング層」を覆う唯一のものであり、引用発明2においては、「防湿層」が「遮光層」を覆う唯一のものである。
したがって、本件発明27は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもある。
(13)本件発明28について
引用文献1には、「【0026】 第三層は、以下のポリマー;すなわち、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリプロピレン(PP)及び/又はポリアミド(PA)のいずれかを含むことが好ましい。ポリマーは、好ましくは、基材にヒートシール性を付与することになり、この特性は、製造された紙又は板紙基材によって形成されるパッケージのシーリング性を改善することになる。さらには、これらの列挙されたポリマーは、基材の液体及び/又は蒸気に対するバリア性を増進することになる。・・・」と記載されているから、引用発明1には、「第三層」について、列挙されたポリマー以外に、「ヒートシール性を付与」し、「基材の液体及び/又は蒸気に対するバリア性を増進」することが可能なポリマーを用いる動機付けがあるところ、例えば「スチレン-アクリルをベースとするコポリマー」については、引用文献3に、「離解性及びヒートシール性を有する防湿層」に使用することが記載されているから(引用文献3の【0018】)、引用発明1の「第三層」について、「スチレン-アクリルをベースとするコポリマーから選択される1種以上のポリマーを含む」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
引用文献2には、「紙製カバー3は、紙層4、ゾル-ゲル法を用いて作成される珪素をベースとした耐酸素性で且つ耐香気性の高分子層5、及び例えばエチレンとメタクリル酸のスチレン修飾共重合体からなるヒートシール層6で構成されている。ヒートシール層6は、紙製カバー3をポットの口を取り囲むフランジ2にしっかりと固定している。同時に、ヒートシール層6は、カップを開けたときに紙製カバー3が剥離されるようにし
ている。」(20ページ17~20行)と記載されている。
引用文献3には、「【0018】本発明に於いて防湿層に使用し得るアクリル系エマルジョンは、例えば、アクリルコポリマー、アクリル-スチレンコポリマー等の共重合体エマルジョンや自己架橋型アクリル系共重合体エマルジョン等の各種エマルジョンを使用することが出来る。尚、具体的には、スチレン及びスチレン誘導体、アクリル酸(メタクリル酸)及びアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステルやメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステルなどを共重合したアクリル系コポリマーである。」と記載されている。
したがって、本件発明28は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもある。
(14)本件発明29について
引用発明1の「第2層」は、「乾燥して0.1~10g/m2」である。また、引用文献1には、「【0020】・・・マイクロフィブリル化セルロースを含む第二層は、0.1~10g/m2(乾燥して)、好ましくは、0.5~3g/m2(乾燥して)の範囲の量で、添加することができる。・・・」と記載されている。
引用発明2の「珪素をベースとする液密で且つ気密なコーティング層」は、「重量が少なくとも1g/m2であり、好適には約2g/m2から6g/m2」である。また、引用文献2には、「紙製カバーの紙層4の重量は例えば40g/m2から80g/m2であってよく、耐酸素性で且つ耐香気性のコーティング層5の重量は好適には約2g/m2から5g/m2であり、ヒートシール層6の重量は例えば約20g/m2であってよい。」(20ページ23~26行)と記載されている。
引用発明3の「遮光層」は「固形分で3~25g/m2塗布されて成」るものであるから、引用発明3の「遮光層」について、本件発明29のように「乾燥質量で12g/m2以下」とすることは、引用発明3を具体化する際、当業者が適宜になし得たことである。
また、本件発明29の「12g/m2」という値を境に、当業者に予測し得ない異質な作用・効果もしくは格別顕著な作用・効果を奏するともいえない。
したがって、本件発明29は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもある。
(15)本件発明30について
引用文献1には、「【0020】・・・ポリマーを含む第三層の厚さは、5~50gsm、好ましくは、9~25gsmであってよい。しかし、厚さは、紙又は板紙基材の所望の最終特性に左右される。」と記載されているから、引用発明1の「紙又は板紙基材」について、本件発明30のように「乾燥質量で10g/m2以下」とすることは、引用発明1を具体化する際、当業者が適宜になし得たことである。
引用文献2には、「紙製カバーの紙層4の重量は例えば40g/m2から80g/m2であってよく、耐酸素性で且つ耐香気性のコーティング層5の重量は好適には約2g/m2から5g/m2であり、ヒートシール層6の重量は例えば約20g/m2であってよい。」(20ページ23~26行)と記載されているところ、「ヒートシール層6の重量」を例示された「約20g/m2」よりも少なくすることで、ただちにヒートシール性が欠如するとまではいえないから、引用発明2の「接合形成高分子コーティング」について、本件発明31のように「乾燥質量で10g/m2以下」とすることは、引用発明2を具体化する際、当業者が適宜になし得たことである。
引用発明3の「防湿層」は「固形分で3~25g/m2塗布されて成る」ものであるから、引用発明3の「防湿層」について、本件発明30のように「乾燥質量で10g/m2以下」とすることは、引用発明3を具体化する際、当業者が適宜になし得たことである。
また、本件発明30の「10g/m2」という値を境に、当業者に予測し得ない異質な作用・効果もしくは格別顕著な作用・効果を奏するともいえない。
したがって、本件発明30は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(16)本件発明31について
引用文献1には、「【0040】 ファイバー系の第一層の他の表面、すなわち、MFCを含む層でコーティングされない表面は、良好な表面特性、特に、良好な印刷特性を実現するために、任意の適切なコーティングでコーティングすることもでき、また任意の適切な方式で処理することもできる。その理由は、この表面は、形成パッケージの外表面になる場合が多いからである」と記載されているから、引用発明1の「紙又は板紙基材」について、本件発明31のように「前記繊維基材の、前記被覆層を有する面に対向する面に、前記製紙装置上で層がインラインで適用される」ようにすることは、引用発明1を具体化する際、当業者が適宜になし得たことである。
引用文献2には、「概略、直角プリズムの形状を為している図5及び図6に示す牛乳容器10は、全体がコーティングされた液密で且つ気密な包装用ボードでできている。その包装用ボードは、容器10の外面の高分子ヒートシール層11と、板紙層12、ゾル-ゲル法で作成され、板紙層の内側に設けられた珪素をベースとした耐酸素性で且つ耐香気性の高分子層13、及び容器の内面を構成するヒートシール層14からなっている。」(21ページ10~15行)と記載されている。
引用文献3には、「【0024】本発明に於いては、前記した遮光層と前記した防湿層の設け方によって、例えば図1~3の構成のものが得られる。・・・図1の構成に於いては、図2の様に、遮光層及び防湿層を設けた塗工面とは反対の基紙表面に、防滑性付与やカール防止等を目的として、防滑剤若しくは防滑剤等を含有するポリビニルアルコール系樹脂やデンプン等の公知の材料を用いて塗工させても良い。図2に於いては、符号4は防滑層を示す。・・・」と記載されているから、引用発明3の「防湿紙」について、本件発明31のように「前記繊維基材の、前記被覆層を有する面に対向する面に、前記製紙装置上で層がインラインで適用される」ようにすることは、引用発明3を具体化する際、当業者が適宜になし得たことである。
したがって、本件発明31は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもある。
(17)本件発明32~34について
本件発明32~34は、紙の熱封止に係る工程において達成すべき目標によって、紙の熱封止性を特定している発明であるところ、前記達成すべき目標に格別な点はなく、熱封止を予定している引用発明1~3において、本件発明32~34のようにすることは、引用発明1~3を具体化する際、当業者が適宜になし得たことである。
また、本件発明32~34で特定される条件が、それ以外の条件に対して、当業者に予測し得ない異質な作用・効果もしくは格別顕著な作用・効果を奏するともいえない。
したがって、本件発明32~34は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(18)本件発明35について
引用文献1には「【技術分野】【0001】 本発明は、バリア性を有する紙又は板紙基材に関する。本発明はさらに、前記基材及び基材から形成されるパッケージを製造するための方法に関する。」、「【0021】・・・ポリマーを含む第三層も、紙又は板紙基材にヒートシール性を付与すること、すなわち、製造された紙又は板紙基材からパッケージを形成することを容易にするヒートシール性ポリマーであることが好ましい。・・・」及び「【0026】 第三層は、以下のポリマー・・・のいずれかを含むことが好ましい。ポリマーは、好ましくは、基材にヒートシール性を付与することになり、この特性は、製造された紙又は板紙基材によって形成されるパッケージのシーリング性を改善することになる。」と記載されている。
引用文献2には、「先述の如く、層の間に接着剤層を積層することなく、本発明により供給されるコーティング層の上面に接合形成(joint-forming)高分子コーティングを展着することができる。例えば、板紙又は厚紙から容器タイプの包装を製造する場合、ヒートシール高分子がその容器の接合部をシールする接着剤として機能する。接合部の密閉性を確実化するため、好適にはボードの両面をヒートシール高分子でコーティングする。」(17ページ25行~18ページ2行)と記載されている。
引用文献3には、「【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は感光材料、感熱記録紙、写真印画紙等の包装紙に用いる防湿紙に関し、特に古紙回収性としての離解性、再利用する際の再生性及びヒートシール性に非常に優れると共に、遮光性能を有した防湿紙に関するものである。」及び「【0026】・・・また、この防湿紙は、封緘方法の一つであるヒートシール性能を付与しており、一般的に多く使用されているポリエチレンラミネート紙よりも低温でヒートシールが可能であり、包装のコスト的な面でも有利となる。・・・」と記載されている。
したがって、本件発明35は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもある。
第5 むすび
以上のとおり、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件及び特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項1、4、21~29、31、35に係る発明は、引用文献1又は引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1、4、21~29、31、35に係る特許は、特許法第29条第1項本文の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
さらに、本件特許の請求項1~35に係る発明は、引用文献1、引用文献2又は引用文献3に記載された発明、慣用技術及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~35に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700784