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特許異議申立

2025-700573

インターコネクタ、及び電気化学セル

審判番号
2025-700573
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-543158
登録番号
7621564
請求日
2025年05月30日
審決日
2025年12月26日
公報発行日
2026年02月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日本碍子株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
  • 【異議申立人】亀崎 伸宏
審判長/審判官
  • 審判長 粟野 正明
  • 審判官 佐藤 陽一
  • 審判官 阿川 寛樹
分類
P1651.536-Y (C25B) / P1651.537-Y (C25B) / P1651.121-Y (C25B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7621564号発明「インターコネクタ、及び電気化学セル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7621564号の請求項1~12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件の特許第7621564号の請求項1~12に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2024-543158号。以下「本願」という。)は、2024年(令和 6年) 3月19日を国際出願日とする出願であって、令和 7年 1月16日にその特許権の設定登録がされ、同年 1月24日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、令和 7年 5月30日に、特許異議申立人である亀崎 伸宏(以下「申立人」という。)により本件特許の請求項1~12に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、以下において、本件特許の請求項1~12に係る発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明12」といい、これらを総称して「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」、図面を「本件図面」という。 「【請求項1】 支持基板を向く面である第1主面、前記第1主面と反対側を向く第2主面、第1主面上に形成される複数の凸部、供給孔、及び排出孔を有する本体部と、 前記各凸部の側面上に配置される複数の酸化物層と、 を備え、 前記複数の凸部は、ガス流れ方向において互いに間隔をあけて配置され、 前記複数の凸部は、前記ガス流れ方向において最上流に配置される第1凸部と、最下流に配置される第2凸部と、を含み、 前記各酸化物層は、上流側を向く上流部分と、下流側を向く下流部分と、を有し、 前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する、 インターコネクタ。 【請求項2】 前記第2凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも厚くなる厚さ分布を有する、 請求項1に記載のインターコネクタ。 【請求項3】 前記複数の凸部は、前記ガス流れ方向において前記第1凸部と前記第2凸部との間の中央部に配置される第3凸部を含み、 前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層における上流部分と下流部分との厚さの差は、前記第3凸部の側面上に配置される酸化物層における上流部分と下流部分との厚さの差よりも大きい、 請求項1に記載のインターコネクタ。 【請求項4】 前記複数の凸部は、前記ガス流れ方向において前記第1凸部と前記第2凸部との間の中央部に配置される第3凸部を含み、 前記第3凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層よりも厚く、前記第2凸部の側面上に配置される酸化物層よりも厚い、 請求項1に記載のインターコネクタ。 【請求項5】 支持基板を向く面である第1主面、前記第1主面と反対側を向く第2主面、第1主面上に形成される複数の凸部、供給孔、及び排出孔を有する本体部と、 前記各凸部の側面上に配置される複数の酸化物層と、 を備え、 前記複数の凸部は、ガス流れ方向に延び、ガス流れ方向と直交する第1方向において互いに間隔をあけて配置され、 前記複数の凸部は、前記第1方向において最も外側に配置される第1凸部、及び前記第1方向において前記第1凸部と反対側の最も外側に配置される第2凸部を含み、 前記各酸化物層は、前記第1方向において外側を向く外側部分と、前記第1方向において内側を向く内側部分と、を有し、 前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する、 インターコネクタ。 【請求項6】 前記第2凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する、 請求項5に記載のインターコネクタ。 【請求項7】 前記複数の凸部は、前記第1方向において前記第1凸部と前記第2凸部との間の中央部に配置される第3凸部を含み、 前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層における外側部分と内側部分との厚さの差は、前記第3凸部の側面上に配置される酸化物層における外側部分と内側部分との厚さの差よりも大きい、 請求項5に記載のインターコネクタ。 【請求項8】 前記複数の凸部は、前記第1方向において前記第1凸部と前記第2凸部との間の中央部に配置される第3凸部を含み、 前記第3凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層よりも厚く、前記第2凸部の側面上に配置される酸化物層よりも厚い、 請求項5に記載のインターコネクタ。 【請求項9】 前記本体部は、クロムを含む合金によって構成され、 前記各酸化物層は、クロムを主成分とする、 請求項1又は5に記載のインターコネクタ。 【請求項10】 前記各酸化物層は、前記本体部よりも熱膨張係数が小さい、 請求項1又は5に記載のインターコネクタ。 【請求項11】 請求項1又は5に記載のインターコネクタと、 前記インターコネクタに取り付けられる支持基板と、 前記支持基板上に配置されるセル本体部と、 を備える、電気化学セル。 【請求項12】 前記各酸化物層は、前記セル本体部よりも薄い、 請求項11に記載の電気化学セル。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、下記6の甲第1~4号証(以下、それぞれ「甲1」等という。)を提出し、以下の申立理由1~4-2により、本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すべきである旨主張している。 1 申立理由1(実施可能要件) 本件特許の請求項1、5には、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」との記載がある。 しかしながら、本件明細書には、第1凸部の側面に形成された酸化物層において、上流又は外側部分を下流又は内側部分よりも薄くする方法について一切記載されておらず、その方法を出願時の技術常識に基づいてもその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が理解できないため、当業者が本件発明1、5を実施することはできない。本件発明2~4、6~12も同様である。 したがって、本件発明1~12について、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合しないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(サポート要件) (1)課題、解決手段、作用効果について 本件発明の課題は、セル本体部の凸部に荷重が集中して、セル本体部が破損してしまうことである。また、当該課題に対する解決手段は、第1凸部の側面上に配置される酸化物層が、上流又は外側部分が下流又は内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有し、第2凸部の側面上に配置される酸化物層は、上流又は外側部分が下流又は内側部分よりも厚くなる厚さ分布を有することであり、その作用効果は、インターコネクタが第2主面側に膨らむように反っているため、電解セルをスタック化した場合に、インターコネクタの下方に配置されるセル本体部上に凹凸があっても、その凹凸を吸収することができることにある。 (2)「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層」の記載について 本件特許の請求項1には、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」との記載がある。 しかしながら、この記載は「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層」と規定するのみであり、例えば複数の凸部が複数の第1凸部を有する場合に、複数の第1凸部のうちの一つの側面上に配置される酸化物層について、上流部分が下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有し、かつ、複数の第1凸部のうちの該一つ以外の側面上に配置される酸化物層について、上流部分が下流部分よりも厚くなる厚さ分布を有する態様を含んでいる。このような態様では、必ずしもインターコネクタが第2主面側に膨らむように反るとはいえず、むしろ、インターコネクタが第1主面側に膨らむように反ることもあり得る。そのため、このような態様では、「インターコネクタが第2主面側に膨らむように反っているため、電解セルをスタック化した場合に、インターコネクタの下方に配置されるセル本体部上に凹凸があっても、その凹凸を吸収することができる」という作用効果を奏しないことは明らかである。 このように、本件発明1は、本件明細書に記載された作用効果を奏しない(すなわち、課題を解決できない)態様を含んでいる。本件発明2~4、9~12も同様である。 (3)「複数の酸化物層」の記載について 本件特許の請求項1、5には、「前記各凸部の側面上に配置される複数の酸化物層と、を備え」との記載がある。 しかしながら、本件図面のいずれの図面(特に図2)を参照しても、インターコネクタは、各凸部の側面上に、各凸部にまたがって配置された1つの酸化物層しか備えていない。 このように、本件発明1、5は、請求項に記載されている事項が、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。本件発明2~4、6~12も同様である。 (4)本件発明における作用効果について 本件特許の請求項1、5には、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」との記載がある。 しかしながら、本件特許の請求項1、5は、第2凸部の側面上に配置される酸化物層の厚さ分布についての何の限定事項も有していない。つまり、本件発明1は、例えば、第2凸部の側面上に配置される酸化物層が、上流部分又は外側部分が下流部分又は内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する態様を包含する。このような態様では、必ずしもインターコネクタが第2主面側に膨らむように反るとはいえず、むしろ、インターコネクタが第1主面側に膨らむように反ることもあり得る。そのため、このような態様では、「インターコネクタが第2主面側に膨らむように反っているため、電解セルをスタック化した場合に、インターコネクタの下方に配置されるセル本体部上に凹凸があっても、その凹凸を吸収することができる」という作用効果を奏しないことは明らかである。 このように、本件発明1、5は、本件明細書に記載された作用効果を奏しない(すなわち、課題を解決できない)態様を含んでいる。本件発明2~4、6~12も同様である。 (5)水素極、電解質、及び酸素極について 本件明細書の【0026】には、水素極、電解質、及び酸素極が必須の構成であると記載されている。しかしながら、本件発明1、5は、発明特定事項として水素極、電解質、及び酸素極を備えることが特定されていない。つまり、本件発明1、5は、本件明細書において「必須の構成であ」ると述べられている水素極、電解質、及び酸素極を備えていないから、本件明細書の記載に鑑みれば、「インターコネクタが第2主面側に膨らむように反っているため、電解セルをスタック化した場合に、インターコネクタの下方に配置されるセル本体部上に凹凸があっても、その凹凸を吸収することができる」という作用効果を奏しないと考えられる。 このように、本件発明1、5は、本件明細書に記載された作用効果を奏しない(すなわち、課題を解決できない)態様を含んでいる。本件発明2~4、6~12も同様である。 (6)小括 以上(2)~(5)に記載したとおり、本件特許の請求項1~12の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3(明確性) (1)「支持基板」について 本件特許の請求項1、5には、「支持基板を向く面である第1主面…有する本体部と」と記載されている。 しかしながら、本件特許の請求項1、5は、支持基板が何を支持するものであるか、支持基板がどのような形状であるのか、支持基板がどのような材料で形成されるのか等の限定事項を有していない。そのため、本件特許の請求項1、5は、支持基板の用語の意味が不明確である。本件特許の請求項2~4、6~12も同様である。 (2)「供給孔」「排出孔」「ガス流れ方向」について 本件特許の請求項1、5には、「支持基板を向く面である第1主面、前記第1主面と反対側を向く第2主面、第1主面上に形成される複数の凸部、供給孔、及び排出孔を有する本体部と」、「前記複数の凸部は、ガス流れ方向において互いに間隔をあけて配置され」、「前記複数の凸部は、ガス流れ方向に延び、ガス流れ方向と直交する第1方向において互いに間隔をあけて配置され」との記載がある。 しかしながら、本件特許の請求項1、5は、「供給孔」および「排出孔」が何を供給したり排出したりするものなのか等の限定事項を有しておらず、また「ガス流れ方向」に係るガスがどのようなガスであるのか等の限定事項を有していない。そのため、本件特許の請求項1、5は、供給孔、排出孔、ガス流れ方向のそれぞれの用語の意味が不明確である。本件特許の請求項2~4、6~12も同様である。 (3)「厚さ分布」について 本件特許の請求項1、5には、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」との記載がある。 しかしながら、本件特許の請求項1、5は、「厚さ分布」の用語の意義について何の限定事項も有しておらず、「厚さ分布」の用語が、例えば、(あ)複数の第1凸部の側面上に配置された酸化物層のそれぞれの厚さを平均したものであるのか、(い)各第1凸部の側面上に配置された酸化物層をSEMで観察したときに、その観察視野内において酸化物層の厚さを平均したものであるのか、等が不明確である。本件特許の請求項2~4、6~12も同様である。 (4)厚さ分布が経時的に変化する場合について 本件特許の請求項1、5には、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」と記載されている。 しかしながら、本件特許の請求項1、5は、例えば、インターコネクタを備える電解セルを運転するとともに酸化物層の厚さ分布が変化するような場合に、「厚さ分布」がどの時点での厚さ分布を意味するのかが不明確である。本件特許の請求項2~4、6~12も同様である。 (5)厚みの差の程度について 本件特許の請求項1、5には、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」と記載されている。 しかしながら、本件特許の請求項1、5は、どの程度の差があれば上流部分又は外側部分が下流部分又は内側部分よりも薄い、といえるのかが不明確である。そのため、本件特許の請求項1、5は、どの程度の厚みの差をもって「薄い」または「厚い」といえるのかが不明確である。本件特許の請求項2~4、6~12も同様である。 (6)厚みのばらつきについて 本件特許の請求項1、5には、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」と記載されている。 しかしながら、一般に、酸化物層の厚みは、厳密に一定であることはあり得ず、製造ばらつき等により部位ごとに異なる。本件特許の請求項1、5は、このような製造ばらつきによって上記厚さ分布を満たす構成をも含むのかが不明確である。本件特許の請求項2~4、6~12も同様である。 (7)「第1主面上に形成される複数の凸部」の記載について 本件特許の請求項1、5には、「第1主面上に形成される複数の凸部」と記載されている。 しかしながら、本件明細書および本件図面の記載、並びに、出願時の技術常識を考慮しても、「第1主面上に形成される複数の凸部」の意味内容を理解することはできない。 ここで、令和6年12月2日に本件特許出願人によって提出された意見書(令和6年10月18日付け拒絶理由通知に対して、その指定期間内に本件特許出願人によって提出されたもの)では、意見書に添付された参考図に基づいて、第1凸部403が「面S」を基準として上方に突き出ているもの、と述べられているが、本件明細書および本件図面には「面S」について何ら限定されておらず、「面S」がどのような基準で設けられているのかを理解することはできないから、依然として「第1主面上に形成される複数の凸部」の記載を理解することはできない。 [図:0001432083000001.jpg] (令和6年12月2日に本件特許出願人によって提出された意見書に添付された参考図) そのため、本件特許の請求項1、5の「第1主面上に形成される複数の凸部」の構成は不明確である。本件特許の請求項2~4、6~12も同様である。 (8)第1凸部における「厚さの差」と第3凸部における「厚さの差」について 本件特許の請求項3、7には、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層における上流部分と下流部分との厚さの差は、前記第3凸部の側面上に配置される酸化物層における上流部分と下流部分との厚さの差よりも大きい」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層における外側部分と内側部分との厚さの差は、前記第3凸部の側面上に配置される酸化物層における外側部分と内側部分との厚さの差よりも大きい」と記載されている。 しかしながら、本件特許の請求項3、7は、複数の第1凸部と複数の第3凸部とを備える場合に、どのようにして、第1凸部における「厚さの差」と第3凸部における「厚さの差」とを比較するのかが不明確である。 (9)「クロムを主成分とする」の記載について 本件特許の請求項9には、「前記各酸化物層は、クロムを主成分とする」と記載されている。 しかしながら、本件特許の請求項9は、「クロムを主成分とする」の詳細な意義について何の限定事項も有しておらず、どのような意味であるのかが不明確である。 (10)「前記インターコネクタに取り付けられる」「前記支持基板上に配置される」の記載について 本件特許の請求項11には、「前記インターコネクタに取り付けられる支持基板と」、「前記支持基板上に配置されるセル本体部と」と記載されている。 本件特許の請求項11では、「取り付ける」の用語と、「~上に配置される」の用語とが使い分けられているが、これらの意味内容の違いが不明確である。 (11)「薄い」の語の意味について 本件特許の請求項12には、「前記各酸化物層は、前記セル本体部よりも薄い」と記載されている。 ここで、「薄い」という語は、「厚みのないこと」を意味したり、「濃度が低いこと」を意味したりする。しかしながら、本件特許の請求項12は、「薄い」という語がどのような意味で用いられているかを理解できるような限定事項を有していない。そのため、本件特許の請求項12は、「薄い」という語がどのような意味で用いられているかが不明確である。 (12)セル本体部の厚みについて 本件特許の請求項12には、「前記各酸化物層は、前記セル本体部よりも薄い」と記載されている。 しかしながら、本件特許の請求項12は、各酸化物層の厚みと、セル本体部の厚みとを、各部材のどの部分で比較するのかが不明確である。具体的には、各酸化物層は、側面上に配置される酸化物層の厚みが異なる場合、いずれの部分でセル本体部の厚みと比較されるのかが不明確である。また、セル本体部は、水素極21と電解質22と反応防止層23と酸素極24とが重なる部分と、水素極21と電解質22とが重なる部分とのいずれの部分で、各酸化物層の厚みと比較されるのかが不明確である。 (13)小括 以上(1)~(12)に記載したとおり、本件特許の請求項1~12の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 4 申立理由4-1(進歩性) 本件特許の請求項1~4、9~11に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、また本件特許の請求項12に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3、甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 5 申立理由4-2(進歩性) 本件特許の請求項5~11に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 6 証拠方法 甲1:特開2023-140483号公報 甲2:特許第7311728号公報 甲3:特開2024-13791号公報 甲4:特許第6757434号公報 第4 当合議体の判断 以下に述べるとおり、当合議体は、上記第3の申立理由1~申立理由4-2のいずれによっても、本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 申立理由1(実施可能要件)について 本件特許の請求項1、5には、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」との記載がある。 ここで、本件明細書の【0082】には、「酸化物層41は、Cr酸化物を含むペーストを各凸部403の側面上に塗布した後、熱処理を施すことによって形成することができる。」との記載があるから、当業者は本件明細書の当該記載を参考に、Cr酸化物を含むペーストを塗布する量を調節することで、所定の厚さ分布を有する酸化物層を形成することが可能である。 また、本件特許の請求項1、5を直接又は間接的に引用する請求項2~4、6~12も同様である。 したがって、本件発明1~12について、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に適合するものである。 よって、上記第3の申立理由1によっては、本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2(サポート要件)について (1)課題、解決手段及び判断 本件発明の解決しようとする課題は、「セル本体部の破損を抑制することのできるインターコネクタを提供すること」(本件明細書【0005】)であると把握される。 上記課題を解決する手段として、本件明細書には以下の記載がある。 「少なくとも一つの酸化物層は、本体部が第2主面側に膨らむような反りを誘起する厚さ分布を有する。」、「この構成によれば、各酸化物層の厚さ分布によってインターコネクタが第2主面側に膨らむように反る。このため、電気化学セルをスタック化する際に、インターコネクタの下方に配置されるセル本体部上の凹凸を吸収することができる。この結果、セル本体部の凸部に荷重が集中することを抑制し、ひいてはセル本体部の破損を抑制することができる。」、「第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、上流部分が下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する。」、「第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、外側部分が内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する。」、「本発明によれば、セル本体部の破損を抑制することができる。」(本件明細書【0006】~【0008】、【0012】、【0020】) 上記記載から、当業者は、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」場合、当該厚さ分布を有しないものと比べて「本体部が第2主面側に膨らむような反りを誘起する」ことにより、「セル本体部の破損を抑制する」という課題が解決されることを認識することができる。 そして、本件特許の請求項1、5は、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」との特定事項を備えるものであり、これは上述した当業者が課題を解決できるように認識することができる範囲を超えるものではない。 この点は、本件特許の請求項1、5を直接又は間接的に引用する請求項2~4、6~12においても同様である。 以上より、本件発明1~12は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるとはいえない。 したがって、本件特許の請求項1~12の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されているものであるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるといえる。 (2)申立人の主張について ア 「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層」について 申立人は、本件特許の請求項1には、例えば複数の凸部が複数の第1凸部を有する場合に、複数の第1凸部のうちの一つの側面上に配置される酸化物層について、上流部分が下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有し、かつ、複数の第1凸部のうちの該一つ以外の側面上に配置される酸化物層について、上流部分が下流部分よりも厚くなる厚さ分布を有する態様が含まれていることを前提に、そのような態様では課題を解決できない旨を主張している。 しかしながら、本件特許の請求項1には「最上流に配置される第1凸部」について、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」と記載されており、「前記第1凸部」が複数ある場合は、その全てで「前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」と解するほかない。 したがって、上記主張は採用することができない。 イ 「複数の酸化物層」について 申立人は、本件特許の請求項1、5に「前記各凸部の側面上に配置される複数の酸化物層と、を備え」との記載について、本件図面では各凸部にまたがって配置された1つの酸化物層しか備えておらず、記載も示唆もされていないと主張している。 しかし、本件特許の請求項1、5に「複数の凸部」と記載され、また本件明細書の図3に記載されるように凸部自体は複数存在しており、その各凸部の側面上に配置される酸化物層(例えば図4に「41」として示されるリング状の酸化物層)もまた、凸部の数と同数、すなわち複数存在することが明らかである。 したがって、上記主張は採用することができない。 ウ 本件発明における作用効果について 申立人は、本件特許の請求項1、5は、第2凸部の側面上に配置される酸化物層の厚さ分布についての何の限定事項も有しておらず、例えば、第2凸部の側面上に配置される酸化物層が、上流部分又は外側部分が下流部分又は内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する態様を包含しており、このような態様では必ずしもインターコネクタが第2主面側に膨らむように反るとはいえず、課題を解決できない旨を主張している。 しかし、上記(1)で述べたとおり、少なくとも第1凸部において所定の厚さ分布を有することで、当該厚さ分布を有しないものと比べれば「本体部が第2主面側に膨らむような反りを誘起する」ことが推測されるから、上記主張は採用することができない。 エ 水素極、電解質、及び酸素極について 申立人は、本件特許の請求項1、5は、本件明細書【0026】において「必須の構成であ」ると述べられている水素極、電解質、及び酸素極を備えていないから、課題を解決できない態様を含んでいると主張している。 しかし、水素極、電解質、及び酸素極は、電解セルを含む電気化学セルにおいては必須の構成であり得るものの、それが請求項1、5において規定されていないからといって、上記(1)の「セル本体部の破損を抑制する」という課題が解決されないとはいえない。 したがって、上記主張は採用することができない。 (3)小括 以上(2)に記載したとおり、申立人の主張はいずれも採用することができない。 したがって、上記(1)に記載したとおり、本件特許の請求項1~12の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されているものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるといえる。 よって、上記第3の申立理由2によっては、本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由3(明確性)について (1)明確性について 本件特許の請求項1~12の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。 (2)申立人の主張について ア 「支持基板」について 本件特許の請求項1、5の「支持基板」について、本件明細書【0051】に「支持基板3は、セル本体部2を支持する。」と記載されるように、セル本体部を支持する基板であることは明らかである。また、支持基板の形状や材料が特定されていなくても、セル本体部を支持するように機能する基板であればよいことは明確である。 この点は、本件特許の請求項1、5を直接又は間接的に引用する請求項2~4、6~12においても同様である。 イ 「供給孔」「排出孔」「ガス流れ方向」について 本件特許の請求項1、5の「供給孔」、「排出孔」及び「ガス流れ方向」について、本件明細書【0064】、【0065】等の記載から、それぞれ原料ガスの「供給孔」、水素極21において生成されて内部空間30内を流れるH2の「排出孔」、及び該供給孔から排出孔への原料ガス及びH2ガスの「ガス流れ方向」であることは明らかである。 この点は、本件特許の請求項1、5を直接又は間接的に引用する請求項2~4、6~12においても同様である。 ウ 「厚さ分布」について 本件特許の請求項1の「前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布」は、複数の第1凸部の厚さの平均やSEMの観察視野内の厚さの平均ではなく、【0088】、【0089】等に記載されるとおり、各第1凸部をガス流れ方向(Y軸方向)に沿って切断し、各切断面において上流部分が下流部分よりも薄くなるような「厚さ分布」を意味すると解されることは明らかである。 同様に、本件特許の請求項5の「前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布」は、複数の第1凸部の厚さの平均やSEMの観察視野内の厚さの平均ではなく、【0108】、【0109】等に記載されるとおり、各第1凸部について、図12のXIII-XIII線(X軸方向)断面図において外側部分が内側部分よりも薄くなるような「厚さ分布」を意味すると解されることは明らかである。 この点は、本件特許の請求項1、5を直接又は間接的に引用する請求項2~4、6~12においても同様である。 エ 厚さ分布が経時的に変化する場合について 本件特許の請求項1、5の「厚さ分布」は酸化物層の厚さ分布であるところ、酸化物層は通常固体であり、その厚さは少なくとも分布が逆転するほど経時的に大きく変化するものとはいえない。 したがって、厚さは極めて厳密に測定すれば経時的に僅かに変化し得るとしても、「厚さ分布」は変わらず、明確である。 この点は、本件特許の請求項1、5を直接又は間接的に引用する請求項2~4、6~12においても同様である。 オ 厚みの差の程度について 本件特許の請求項1、5の「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」について、「前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布」、「前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布」という規定に厚みの差の程度は含まれていないから、厚みの差の程度が規定されていなくとも明確である。 この点は、本件特許の請求項1、5を直接又は間接的に引用する請求項2~4、6~12においても同様である。 カ 厚みのばらつきについて 本件特許の請求項1、5の「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」について、「前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布」、「前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布」という規定に製造ばらつきに起因するものか否かといった事項は含まれていない。また、上流部分、下流部分、外側部分、内側部分の酸化物層の厚さは、製造された「インターコネクタ」について、本件明細書【0088】~【0089】、【0108】等に記載された手法で算出されたものであることは明確であるから、仮に個々のインターコネクタを製造する際に製造ばらつきが存在し、それに起因して、酸化物層の厚さにばらつきが生じるとしても、そのことによって、上記の手法で算出された各酸化物層の厚さが不明確であるとはいえず、「前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布」、「前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布」を有しているか否かは明確である。 この点は、本件特許の請求項1、5を直接又は間接的に引用する請求項2~4、6~12においても同様である。 キ 「第1主面上に形成される複数の凸部」の記載について 本件特許の請求項1、5の「第1主面上に形成される複数の凸部」とは、例えば本件図面図3のように千鳥状に凸部が配置される場合は図上に○で示される部分であることが明らかであり、令和6年12月2日提出の意見書に添付された参考図の「面S」も図3における○部の周囲の面であることが把握されるから、明確である。 この点は、本件特許の請求項1、5を直接又は間接的に引用する請求項2~4、6~12においても同様である。 ク 第1凸部における「厚さの差」と第3凸部における「厚さの差」について 本件特許の請求項3、7の「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層における上流部分と下流部分との厚さの差は、前記第3凸部の側面上に配置される酸化物層における上流部分と下流部分との厚さの差よりも大きい」、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層における外側部分と内側部分との厚さの差は、前記第3凸部の側面上に配置される酸化物層における外側部分と内側部分との厚さの差よりも大きい」という記載について、仮に第1凸部と第3凸部が複数存在する場合、複数の第1凸部の「厚さの差」の範囲と、複数の第3凸部の「厚さの差」の範囲とが、完全に重ならない(前者の最小値>後者の最大値)関係にあることを規定していることは明らかである。 ケ 「クロムを主成分とする」の記載について 本件特許の請求項9の「前記各酸化物層は、クロムを主成分とする」について、本件明細書の【0076】に「Crを主成分とするとは、酸化物層41を構成するCr酸化物の組成をエネルギー分散型分光(EDS)装置で解析した場合に、金属元素のうちCrの含有率が最も高いことを意味する。」と記載されるように、各酸化物層が含有する金属元素のうちクロムの含有量が最も高いことを意味していることは明らかである。 コ 「前記インターコネクタに取り付けられる」「前記支持基板上に配置される」の記載について 本件特許の請求項11の「取り付けられる」、「配置される」について、「取り付ける」とは「機器などを一定の場所に設置したり他の物に装置したりする」(広辞苑第5版)ことを意味し、「配置する」とは「それぞれの位置に割り当てる」(広辞苑第5版)ことを意味するから、いずれもその意味において明瞭である。 サ 「薄い」の語の意味について 本件特許の請求項12の「前記各酸化物層は、前記セル本体部よりも薄い」における「薄い」は、本件明細書の【0083】に「酸化物層41は、セル本体部2よりも薄い。酸化物層41の厚さは、例えば、0.1μm以上20μm以下とすることができる。」と記載されるように、厚みのないことを意味していることは明らかである。 シ セル本体部の厚みについて 本件特許の請求項12の「セル本体部」について、単に「セル本体部」と称した場合、その構成要素を全て含む「水素極21と電解質22と反応防止層23と酸素極24とが重なる部分」を指すことは自明である。また、「前記各酸化物層は、前記セル本体部よりも薄い」という記載については、「各酸化物層」とあるとおり酸化物層が複数あることを前提としており、本件明細書の【0088】、【0089】、【0108】等に記載された手法で算出された酸化物層の厚さの範囲が、セル本体部(水素極21と電解質22と反応防止層23と酸素極24とが重なる部分)の厚さと完全に重ならない(前者の最大値<後者)ことを指すと解するのが自然であり、明瞭である。 (3)小括 以上、(2)に記載したとおり、申立人の主張はいずれも採用することができない。 したがって、上記(1)に記載したとおり、本件特許の請求項1~12の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。 よって、上記第3の申立理由3によっては、本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由4-1(進歩性)について (1)甲1の記載事項 本願の出願前に公知となった甲1には、次の記載がある。なお、以下において、下線は当合議体が付したものである。また、「…」は記載の省略を示す。以下同様。 ア「【請求項8】 燃料極および空気極と、前記燃料極と前記空気極との一方である特定電極に対して第1の方向側に位置するCrを含む金属支持体であって、前記第1の方向視で前記特定電極に重なる位置において前記第1の方向に貫通する貫通孔が形成された金属支持体と、を備える電気化学反応単セルと、 前記金属支持体に対して前記第1の方向の前記特定電極とは反対側に位置するインターコネクタと、前記インターコネクタの表面の少なくとも一部に形成された第2酸化被膜と、 を備える電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、 前記インターコネクタに対して前記第1の方向の前記金属支持体側であって、かつ、前記金属支持体と前記インターコネクタとが接続されている部分に位置する前記第2酸化被膜の膜厚を支持体接続膜厚とし、前記インターコネクタに対して前記第1の方向の前記金属支持体側であって、かつ、前記金属支持体と前記インターコネクタとが離隔している部分に位置する前記第2酸化被膜の膜厚を支持体非接続膜厚としたときに、 前記支持体接続膜厚は、前記支持体非接続膜厚よりも薄い、 ことを特徴とする電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体。」 イ「【0012】 また、第2酸化被膜(インターコネクタの表面に形成された酸化被膜)のうち、インターコネクタに対して第1の方向の金属支持体側であって、かつ、金属支持体とインターコネクタとが接続されている部分に位置する部分(以下、「支持体接続被膜部」という。)は、複合体の稼働時において電流経路となる。上述した第1の観点と同様に、支持体接続被膜部の膜厚(以下、「支持体接続膜厚」という。)が厚いほど、電流経路である支持体接続被膜部における電気抵抗が大きくなり(以下、「第3の観点」という。)、単セルの性能が低下する。従って、この第3の観点を考慮すると、支持体接続膜厚は薄いほど好ましい。 【0013】 一方、第2酸化被膜のうち、インターコネクタに対して第1の方向の金属支持体側であって、かつ、金属支持体とインターコネクタとが離隔している部分に位置する部分(以下、「支持体接続被膜部」という。)は、燃料電池スタックの稼働時において電流経路とならない(あるいは、なりにくい)。従って、支持体接続被膜部の膜厚(以下、「支持体非接続膜厚」という。)を支持体接続膜厚のように薄くする必要は無い。また、支持体接続被膜部は、燃料電池スタックの稼働時に発生する水蒸気等に起因して成長することにより、ガス流路(上記貫通孔等)を閉塞したり、支持体接続被膜部における電気抵抗が大きくなったりする(換言すれば、燃料電池スタックの稼働前後の変化が大きい)ことがあり、これにより単セルの性能を低下するおそれがある。このような支持体接続被膜部の成長(燃料電池スタックの稼働開始後の時間当たりの成長度合)は、燃料電池スタックの稼働開始時における支持体非接続膜厚が薄いほど大きくなる(以下、「第4の観点」という。)。そのため、この第4の観点を考慮すると、支持体非接続膜厚は厚いほど好ましい。 【0014】 仮に第2酸化被膜の全体の膜厚が均一である構成等においては、上述した第3の観点と第4の観点との少なくとも一方において不適当であることにより、単セルの性能が十分に確保できないおそれがある。なお、この課題を、以下において「第2の課題」という。 【0015】 本発明は、上述した第1の課題と第2の課題との少なくとも一方を課題とする。」 ウ「【0033】 A.実施形態: A-1.燃料電池スタック100の構成: 図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、…図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。… 【0034】 燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、「発電単位」という。)102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。… 【0035】 燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、Z軸方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士がZ軸方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたってZ軸方向に延びる貫通孔108を構成している。… 【0036】各貫通孔108にはZ軸方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。… 【0037】 各ボルト22の軸部の外周面と各貫通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。…また、図1および図3に示すように、他の1つのボルト22(ボルト22D)と当該ボルト22Dが挿通された貫通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFG(例えば水素リッチなガス)が導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の燃料室176に供給する燃料極側ガス供給マニホールド171として機能し、他の1つのボルト22(ボルト22E)と当該ボルト22Eが挿通された貫通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料極側ガス排出マニホールド172として機能する。 … 【0040】 (発電単位102の構成) 図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。 【0041】 図4および図5に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、セパレータ120と、空気極側フレーム部材130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム部材140と、一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム部材130、燃料極側フレーム部材140、インターコネクタ150の周縁部には、上述したボルト22が挿通される貫通孔108に対応する孔が形成されている。」 エ「【0042】 インターコネクタ150は、Z軸方向に略直交する平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。… … 【0050】 インターコネクタ150は、燃料極側集電体144を備える。燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置された複数の略四角柱状の集電体要素145から構成されており、例えばステンレスにより形成されている。燃料極側集電体144は、金属支持体180と電気的に接続する。…なお、燃料極側集電体144とインターコネクタ150の残りの部分(上述した平板形状の導電性部材)とが一体の部材として構成されていてもよい。」 オ「【0052】 A-2.燃料電池スタック100の動作: …また、図3および図5に示すように、燃料ガスFGは、燃料極側ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)から、当該ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料極側ガス供給マニホールド171に供給され、燃料極側ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料極側ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。 【0053】 各発電単位102において、空気室166に供給された酸化剤ガスOGが多孔質な空気極114内に進入し、かつ、燃料室176に供給された燃料ガスFGが金属支持体180に形成された複数の貫通孔50を通って多孔質な燃料極116内に進入すると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は、空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は、金属支持体180を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。… 【0054】 …また、図3および図5に示すように、各発電単位102の燃料室176から燃料極側ガス排出連通流路143を介して燃料極側ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料極側ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)から燃料電池スタック100の外部に排出される。」 カ「【0055】 A-3.複合体(燃料電池単セル-インターコネクタ複合体)190および金属支持体180の詳細構成: 図6は、複合体(燃料電池単セル-インターコネクタ複合体)190および金属支持体180の一部分(図5のX1部)のYZ断面構成を拡大して示す説明図である。 … 【0061】 (インターコネクタ150の周辺) インターコネクタ150の表面に、酸化被膜(以下、「第2酸化被膜」という。)OF2が形成されている。第2酸化被膜OF2は、Crを含む。第2酸化被膜OF2は、例えばCr2O3等のクロム酸化物)を含む。… 【0062】 図6に示すように、複合体190が備える各発電単位102の燃料室176は、金属支持体180とインターコネクタ150との間に位置する部分(以下、「特定ガス流路」という。)177を備える。特定ガス流路177は、金属支持体180の各貫通孔50に連通している。特定ガス流路177は、X軸方向に延びる複数の流路部と、Y軸方向に延びる複数の流路部とが、互いに連通しつつ、網目状に並ぶように形成されている。特定ガス流路177において、反応ガス(燃料ガスFG)は、主にY軸負方向(Z軸方向に交差する方向)に流れる。 【0072】 上述した第1酸化被膜OF1の部位ごと(OF11、…、OF14)に膜厚が異なる構成は、例えば、以下のように実現(製造)することができる。まず、金属支持体180の材料である金属部材に対し、上述したように熱処理を施すことにより、当該金属部材の表面に均一な膜厚の酸化被膜を形成する。次に、IC非接続膜厚FT12や、金属支持体180に対してZ軸正方向側に位置する特定部分OF14に対する部位の酸化被膜を、ブラスト処理や酸化処理(例えばアルミナブラスト、サンドブラスト、硫酸処理、塩酸処理)により取り除くことにより、膜厚が比較的薄い部分(IC非接続膜厚FT12、金属支持体180に対してZ軸正方向側に位置する特定部分OF14)を形成する。これにより、上述した第1酸化被膜OF1の部位ごと(OF11、…、OF14)に膜厚が異なる構成が得られる。 【0076】 図6に示すように、支持体接続被膜部OF21の膜厚(Z軸方向の厚さ)(以下「支持体接続膜厚」という。)FT21は、支持体非接続被膜部OF22の膜厚(Z軸方向の厚さ、またはZ軸方向に直交する方向(Y軸方向等)の厚さ)(以下、「支持体非接続膜厚」という。)FT22よりも薄い(以下、「第2特定条件」という。)。なお、支持体接続被膜部OF21の膜厚の方向(Z軸方向)は、燃料電池スタック100の稼働時に、支持体接続被膜部OF21において電子が流れる方向に相当する。 【0079】 上述した第2酸化被膜OF2の部位ごと(OF21、OF21)に膜厚が異なる構成は、例えば、上述した第1酸化被膜OF1についての方法と同様の方法を用いることにより実現(製造)することができる。」 キ「【図1】 [図:0001432083000002.jpg] 」 ク「【図3】 [図:0001432083000003.jpg] 」 ケ「【図5】 [図:0001432083000004.jpg] 」 コ「【図6】 [図:0001432083000005.jpg] 」 (2)甲1に記載された発明 ア 上記(1)エの【0042】、【0050】に記載されるとおり、甲1に記載されるインターコネクタ150は、平板形状の導電性部材と複数の略四角柱状の集電体要素145から構成される燃料極側集電体144とが一体の部材として構成されていてもよいことが把握される。また、上記(1)カの【0061】、【0072】、【0076】、【0079】に記載されるとおりインターコネクタ150の表面にはOF21を除いて均一な膜厚の酸化皮膜OF2が形成されており、上記(1)コの図6から、この酸化皮膜OF2のOF21以外の部分はインターコネクタ150の略四角柱状の部分(インターコネクタ150と一体の部材となった集電体要素145)の側面上の、少なくとも燃料ガスの流れに対し上流及び下流部分に形成されていることが看取される。 イ 上記(1)ウの【0035】、【0037】、【0041】に記載されるとおり、甲1に記載されるインターコネクタ150の周縁部には、燃料極側ガス供給マニホールド、燃料極側ガス排出マニホールドとして機能する貫通孔108に対応する孔が形成されている。また、上記(1)ケ、コの【図5】、【図6】から、甲1に記載されるインターコネクタ150には、燃料極側のガスの流れ方向において互いに間隔を空けて複数の略四角柱状の部分(インターコネクタ150と一体の部材となった集電体要素145)が複数形成されていることが看取される。 ウ 上記(1)アの請求項8の特に燃料極側に着目し、上記ア、イの事項を併せ鑑みれば、甲1には次の発明が記載されていると認められる。 「燃料極および空気極と、前記燃料極に対して第1の方向側に位置するCrを含む金属支持体であって、前記第1の方向視で前記燃料極に重なる位置において前記第1の方向に貫通する貫通孔が形成された金属支持体と、を備える電気化学反応単セルと、 前記金属支持体に対して前記第1の方向の前記燃料極とは反対側に位置する、平板形状の部材と複数の略四角柱状の部分とが一体の部材として構成されたインターコネクタであって、周縁部には燃料極側ガス供給マニホールド、燃料極側ガス排出マニホールドとして機能する貫通孔に対応する孔が形成され、前記略四角柱状の部分は燃料極側のガスの流れ方向において互いに間隔を空けて複数形成されているインターコネクタと、 前記インターコネクタの前記略四角柱状の部分の側面上の、燃料ガスの流れに対し上流及び下流部分に形成された、均一な膜厚の第2酸化被膜と、 を備える電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、 前記インターコネクタに対して前記第1の方向の前記金属支持体側であって、かつ、前記金属支持体と前記インターコネクタとが接続されている部分に位置する前記第2酸化被膜の膜厚を支持体接続膜厚とし、前記インターコネクタに対して前記第1の方向の前記金属支持体側であって、かつ、前記金属支持体と前記インターコネクタとが離隔している部分に位置する前記第2酸化被膜の膜厚を支持体非接続膜厚としたときに、 前記支持体接続膜厚は、前記支持体非接続膜厚よりも薄い、 電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体に用いられる、前記インターコネクタ。」(以下、「甲1発明」という。) (3)本件発明1について ア 対比 本件発明1と、甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「金属支持体」は電気化学反応単セルを支持する部材であり、本件発明1のセル本体部を支持する「支持基板」に相当する。 (イ)甲1発明の「インターコネクタ」は、「金属支持体に対して前記第1の方向の前記燃料極とは反対側に位置する、平板形状の部材と複数の略四角柱状の部分とが一体の部材として構成された」ものであり、インターコネクタの金属支持体側の表面は金属支持体を向く面であるといえる。そして、当該面上の複数の「略四角柱状の部分」は、インターコネクタと一体の部材として構成されており、インターコネクタと合わせみれば、甲1発明の「インターコネクタ」は、本件発明1の「凸部」に相当する部分を有するものであるといえる。また、甲1発明の「インターコネクタ」は、「平板板状の部材」を含むものであるから、金属支持体を向く面と反対側を向く面も当然存在する。 さらに、甲1発明の「インターコネクタ」は、「周縁部には燃料極側ガス供給マニホールド、燃料極側ガス排出マニホールドとして機能する貫通孔に対応する孔が形成され」たものであるから、供給孔と排出孔を有するものであるといえる。 したがって、甲1発明の「インターコネクタ」は、本件発明1の「支持基板を向く面である第1主面、前記第1主面と反対側を向く第2主面、第1主面上に形成される複数の凸部、供給孔、及び排出孔を有する本体部」に相当する部分を含むものである。 (ウ)甲1発明の「前記インターコネクタの前記略四角柱状の部分の側面上の、燃料ガスの流れに対し上流及び下流部分に形成された第2酸化被膜」における「略四角柱状の部分」が本件発明1の「凸部」に相当する部分であり(上記(イ)参照)、当該「略四角柱状の部分」が「複数形成されている」ことを鑑みれば、甲1発明の「略四角柱状の部分」のそれぞれに形成された「第2酸化被膜」は、複数の酸化物層であるといえ、本件発明1の「前記各凸部の側面上に配置される複数の酸化物層」に相当する。 (エ)甲1発明の「略四角柱状の部分」は、「燃料極側のガスの流れ方向において互いに間隔を空けて複数形成されている」ものであるから、必然的にガスの流れ方向において、最上流、最下流のものが存在している。してみれば、甲1発明の「略四角柱状の部分」は、本件発明1の、「前記複数の凸部は、ガス流れ方向において互いに間隔をあけて配置され、前記複数の凸部は、前記ガス流れ方向において最上流に配置される第1凸部と、最下流に配置される第2凸部と、を含」むとの事項を満たすものである。 (オ)さらに、甲1発明の「第2酸化被膜」は、「前記インターコネクタの前記略四角柱状の部分の側面上の、燃料ガスの流れに対し上流及び下流部分に形成された」ものであるから、本件発明1の、「前記各酸化物層は、上流側を向く上流部分と、下流側を向く下流部分と、を有」するとの事項を満たすものである。 (カ)以上、(ア)~(オ)を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、 「支持基板を向く面である第1主面、前記第1主面と反対側を向く第2主面、第1主面上に形成される複数の凸部、供給孔、及び排出孔を有する本体部と、 前記各凸部の側面上に配置される複数の酸化物層と、 を備え、 前記複数の凸部は、ガス流れ方向において互いに間隔をあけて配置され、 前記複数の凸部は、前記ガス流れ方向において最上流に配置される第1凸部と、最下流に配置される第2凸部と、を含み、 前記各酸化物層は、上流側を向く上流部分と、下流側を向く下流部分と、を有する、 インターコネクタ。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1のインターコネクタは「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」のに対し、甲1発明のインターコネクタの第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、均一な膜厚である点。 イ 判断 (ア)相違点1が実質的な相違点であることは明らかである。 (イ)甲1の他の記載を参酌しても、甲1発明のインターコネクタにおいて、第1凸部の側面上に配置される酸化物層の厚さ分布について、上流部分を下流部分よりも薄くしようとする動機付けは存在しない。 (ウ)ここで、申立人は、本件特許の請求項1に係る発明は、甲1及び甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。 (エ)しかし、甲3には相違点1に係る「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記上流部分が前記下流部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」ことが、記載も示唆もされていない。 すなわち、甲3には、図1A、図2Aから看取されるような中空円筒状のセルを複数立設したセルスタックと、図11、図14から看取されるような平板状セルスタックが記載されているが、いずれのスタックにおいても、ガスの流れに対して上流部分と下流部分とを備えるような凸部(ガスの流れ方向に直交する方向に突出した凸部)が一切示されていない。 申立人が特許異議申立書の第31頁、第32頁で言及する図16A~図16Cについても、甲3の【0097】等に「ガス流路2a」と記載されるように、ガス流路としては紙面に垂直な方向に形成されており、このガス流路を流れるガスの流れに対して上流部分と下流部分とを備えるような凸部(ガスの流れ方向に直交する方向に突出した凸部)は、記載も示唆もされていない。 (オ)したがって、甲1発明において、相違点1に係る点は、甲1、甲3の記載を参酌しても、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。 よって、本件発明1は、甲1、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明2~4、9~12について 本件発明2~4、9~12についても、本件発明1と甲1発明との対比と同様に、少なくとも上記(3)ア(カ)の相違点1で相違し、上記(3)イにおける判断と同様に、甲1、甲3の記載を参酌しても、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。この点は、甲4の記載を参酌しても同様である。 したがって、本件発明2~4、9~12は、甲1、甲3、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)小括 以上より、本件発明1~4、9~12は、甲1、甲3、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、上記第3の申立理由4-1によっては、本件特許の請求項1~4、9~12に係る特許を取り消すことはできない。 5 申立理由4-2(進歩性)について (1)甲2の記載事項 本願の出願前に公知となった甲2には、次の記載がある。 ア「【請求項1】 電気化学セルと、 前記電気化学セルを支持する支持部材と を備え、 前記支持部材は、反応ガスが流れる第1方向の上流側に位置する第1部位と、該第1部位よりも前記第1方向の下流側に位置する第2部位とを有し、 前記第1部位および前記第2部位は、赤外光の反射率が異なる 電気化学セル装置。」 イ「【0009】 燃料電池セルスタック装置では、例えば、電気化学セル内の温度にばらつきが生じると、発電性能や、耐久性の低下につながる場合があり、電池性能を向上させる点で改善の余地があった。 【0010】 そこで、電池性能を向上することができる電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置の提供が期待されている。」 ウ「【0013】 [第1の実施形態] <電気化学セルの構成> まず、図1A~図1Cを参照しながら、第1の実施形態に係る電気化学セル装置を構成する電気化学セルとして、固体酸化物形の燃料電池セルの例を用いて説明する。電気化学セル装置は、複数の電気化学セルを有するセルスタックを備えていてもよい。複数の電気化学セルを有する電気化学セル装置を、単にセルスタック装置と称する。 【0014】 図1Aは、実施形態に係る電気化学セルの一例を示す横断面図であり、図1Bは、実施形態に係る電気化学セルの一例を空気極側からみた側面図であり、図1Cは、実施形態に係る電気化学セルの一例をインターコネクタ側からみた側面図である。なお、図1A~図1Cは、電気化学セルの各構成の一部を拡大して示している。以下、電気化学セルを単にセルという場合もある。 … 【0016】 図1Aに示すように、セル1は、導電性の支持基板2と、素子部3と、インターコネクタ4とを備えている。支持基板2は、一対の対向する平坦面n1、n2、およびかかる平坦面n1、n2を接続する一対の円弧状の側面mを有する柱状である。 … 【0020】 支持基板2は、ガスが流れるガス流路2aを内部に有している。図1Aに示す支持基板2の例は、6つのガス流路2aを有している。支持基板2は、ガス透過性を有し、ガス流路2aを流れる燃料ガスを燃料極5まで透過させる。支持基板2は、導電性を有していてもよい。導電性を有する支持基板2は、素子部3で生じた電気をインターコネクタ4に集電する。 … 【0030】また、インターコネクタ4は、緻密質であり、支持基板2の内部に位置するガス流路2aを流通する燃料ガス、および支持基板2の外側を流通する酸素含有ガスのリークを生じにくくする。」 エ「【0032】 支持基板2は、図1D~図1Fに示すように金属製または合金製であってもよい。図1D~図1Fは、実施形態に係る電気化学セルの別の一例を示す横断面図である。 【0033】 図1D~図1Fに示すように、セル1は、燃料極5、固体電解質層6、中間層7および空気極8が積層された素子部3と、支持基板2とを有している。金属製または合金製の支持基板2は、ガス流路2aと燃料極5の間でガスを流通させることができるガス透過部2bと、ガス流路2aの外側に位置する部材120とを有している。ガス透過部2bは、ガス流路2aから燃料極5に通じる貫通孔または細孔を有している。支持基板2は、例えば、1または複数の金属板で構成されてもよい。金属板の材料は、クロムを含有していてもよい。金属板は、導電性の被覆層を有していてもよい。支持基板2は、隣接するセル1同士を電気的に接続する。素子部3は、支持基板2上に直接形成されていてもよいし、接合材により支持基板2に接合されていてもよい。 … 【0035】また、支持基板2のガス流路2aは、図1Fに示すように凹凸を有する部材120により形成されていてもよい。」 オ「【0056】 図3Aに示すセルスタック装置10は、セル1の外部を第1方向30に流れる酸素含有ガスと、矢印40に示すようにセル1の内部を流れる燃料ガスとを用いて発電する。 【0057】 セル1は、発電に伴うジュール熱により温度が上昇する。このとき、セル1の外部を流れる酸素含有ガスの影響等により、セル1の温度分布に偏りが生じる。具体的には、第1方向30の下流側、すなわち、第2部材152に支持されているセル1の上端側の方が、第1方向30の上流側、すなわち、第1部材151に支持されているセル1の下端側よりも温度が上昇する。このため、セル1の第1方向30の下流側に位置する部分では、たとえば、発電に適した温度よりも高温となり、耐久性が低下しやすくなる。 【0058】 そこで、本実施形態では、セル1を支持する支持体15において、酸化雰囲気に露出する露出部のうち、第1方向30の上流側に位置する第1部位と、該第1部位よりも第1方向30の下流側に位置する第2部位との間で赤外光の反射率を異ならせることとした。具体的には、第1部材151の露出部151aは、第2部材152の露出部152aよりも赤外光の反射率が小さい。 【0059】 これにより、セル1の第1方向30の下流側では、第2部材152からの放射熱によるセル1の温度上昇を低減することができる。このため、セル1の過熱に伴う耐久性の低下を生じにくくすることができる。したがって、本実施形態によれば、電池性能を向上することができる。 【0060】 一方で、第1方向30の上流側は、第1方向30の下流側よりも温度が低い傾向にあることから、セル1の第1方向30の上流側に位置する部分では、例えば、発電に適した温度に到達せず、発電性能が低下しやすくなる。 【0061】 本実施形態では、セル1の第1方向30の上流側では、第1部材151からの放射熱によりセル1の温度上昇を促進することができる。このため、セル1の加熱不足に伴う発電性能の低下を生じにくくすることができる。したがって、本実施形態によれば、電池性能を向上することができる。 … 【0066】 また、第1部材151および/または第2部材152は、たとえば露出部151a,152aにおける赤外光の反射率が異なる被膜を有してもよい。… 【0067】 被覆層152bは、露出部152aにおける赤外光の反射率が露出部151aよりも大きくなる材料で構成される。… 【0068】 また、被覆層152bは、導電性を有してもよい。被覆層152bは、たとえば、導電性を有する金属材料および/または金属酸化物を含有してもよい。… … 【0074】 被覆層151bの厚みが被覆層152bの厚みよりも小さいと、第1部材151の材料が露出部151aにおける赤外光の反射率に作用する場合がある。かかる場合、たとえば被覆層151b,152bの材料が同じであっても、露出部151aにおける赤外光の反射率を露出部152aにおける赤外光の反射率よりも小さくすることができる。 … 【0105】 また、第1および第2の実施形態において、赤外光の反射率が互いに異なる第1部位および第2部位は、支持体15の表面に位置させたが、これに限らず、たとえば、ガスタンク16の表面に位置させてもよい。また、第1部位および第2部位は、酸素含有ガスに露出する露出部の一部であってもよい。さらに、第1部位および第2部位は、いわゆる平板型セルの集電体、インターコネクタおよびエンドプレートなどの表面に位置していてもよい。第1部位および第2部位は、図1D~図1Fに示すセル1の支持基板2および部材120などの表面に位置していてもよい。 【0106】 また、上述の各実施形態では、セル1の第1方向30の下流側が上流側よりも高温となりやすく、第1方向30の上流側が下流側よりも低温となりやすい、言い換えると、セル1の第1方向30の下流側に高温部が位置し、第1方向30の上流側に低温部が位置しているとして説明した。しかしながら、セルスタック装置10における温度分布は、たとえば、セルスタック11およびガス流路の構造等により変わりうるため、高温部および低温部の配置は上記したものに限られない。たとえば、セルスタック11の中央に高温部が位置し、セルスタック11の端部に低温部が位置してもよい。また、第2の実施形態に係る電気化学セル装置においては、たとえば、平板型セル、または図1D~図1Fに示すセル1を構成する素子部の中央部に高温部が位置し、素子部から離れたセル1の周縁部に低温部が位置してもよい。かかる場合であっても、低温部に位置する第1部位と、高温部に位置する第2部位との間で、赤外光の反射率を互いに異ならせることにより、セルスタック装置10の電池性能を向上することができる。」 カ「【図1A】 [図:0001432083000006.jpg] 」 キ「【図1F】 [図:0001432083000007.jpg] 」 ク「【図3A】 [図:0001432083000008.jpg] 」 (2)甲2に記載された発明 ア 上記(1)エの【0035】の凹凸を有する部材120について、上記(1)キの図1Fから、平板状の支持基板2との間に3本のガス流路2aを画定するような凹凸を有する部材であることが看取される。 イ 上記アの部材120について、上記(1)エの【0032】、【0033】には部材120は、支持基板2の一部として記載されており、金属板で構成されていてもよく、導電性の被覆層を有していてもよいことも記載されている。また、支持基板2が隣接するセル1同士を電気的に接続することも記載されており、図1Fの電気化学セルをスタックした場合に隣接するセルと接触するのは部材120であるから、部材120は実質的にインターコネクタとして機能する部材であることも把握される。 ウ 上記(1)オの【0105】、【0106】から、図1Fに示すセル1を構成する素子部の中央部に高温部が位置し、素子部から離れたセル1の周縁部に低温部が位置してもよく、低温部と高温部とで赤外光の反射率を互いに異ならせることにより電池性能を向上することができること、及び赤外光の反射率が互いに異なる第1部位および第2部位は、セル1の支持基板2および部材120などの表面に存在してもよいことも把握される。また、上記(1)オの【0066】~【0068】、【0074】から、赤外光の反射率は導電性を有する金属酸化物層の厚みを変えることによって調整し得、高温部で厚く、低温部で薄くすることも把握される。 エ 上記(1)キの図1Fの電気化学セルの部材120に着目し、上記ア~ウを踏まえると、甲2には次の発明が記載されていると認められる。 「平板状の支持基板2との間に3本のガス流路2aを画定するような凹凸を有する、導電性の金属酸化物層を有していてもよい、インターコネクタとして機能する部材120。」(以下「甲2発明」という。) (3)本件発明5について ア 対比 本件発明5と、甲2発明とを対比する。 (ア)甲2発明の部材120は、平板状の支持基板2との間にガス流路2aを画定する部材であるから、支持基板2を向く面と、その反対側を向く面とを備えている。 したがって、甲2発明の部材120は、本件発明5の「支持基板を向く面である第1主面、前記第1主面と反対側を向く第2主面」「を有する本体部」に相当する部分を含むものである。 (イ)甲2発明の部材120は、インターコネクタとして機能するものであるから、本件発明5の「インターコネクタ」に相当する。 (ウ)以上、(ア)、(イ)を踏まえると、本件発明5と甲2発明とは、 「支持基板を向く面である第1主面、前記第1主面と反対側を向く第2主面を有する本体部を備えるインターコネクタ。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 本件発明5のインターコネクタは、「第1主面上に形成される複数の凸部」を有し、「前記複数の凸部は、ガス流れ方向に延び、ガス流れ方向と直交する第1方向において互いに間隔をあけて配置され、前記複数の凸部は、前記第1方向において最も外側に配置される第1凸部、及び前記第1方向において前記第1凸部と反対側の最も外側に配置される第2凸部を含」むものであるのに対し、甲2発明の部材120は、「平板状の支持基板2との間に3本のガス流路2aを画定するような凹凸を有する」ものである点。 <相違点3> 本件発明5のインターコネクタは「供給孔、及び排出孔を有する」のに対し、甲2発明の部材120は、そのような孔を有するのか不明である点。 <相違点4> 本件発明5のインターコネクタは、「前記各凸部の側面上に配置される複数の酸化物層」を有し、かつ「前記各酸化物層は、前記第1方向において外側を向く外側部分と、前記第1方向において内側を向く内側部分と、を有し、前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」ものであるのに対し、甲2発明の部材120は、「平板状の支持基板2との間に3本のガス流路2aを画定するような凹凸を有する、導電性の金属酸化物層を有していてもよい」ものであるものの、凹凸のうち凸部の側面上に配置されることまでは特定されておらず、その厚さ分布も特定されていない点。 イ 相違点2についての判断1(実質的な相違点か否か) 事案に鑑み、まず相違点2について検討する。 (ア)甲2発明の部材120における凹凸は、図1Fに示されるように3本のガス流路2aを画定する凹凸を有しているところ、支持基板2を向く面(第1主面)に着目すると、V字状の凸部を2本(図1F紙面上方の、部材120の頂点3点を含む面を基準として、紙面下側に凸となっている2つの部分)、備えていることが看取される。 (イ)この2本のV字状の凸部は、「第1主面上に形成される複数の凸部」であるといえる。 (ウ)また、図1Fのガス流路2aには紙面に対し垂直方向にガスが流れることが把握されるから、上記した2本のV字状の凸部も「ガス流れ方向に延び」るものであり、かつ「ガス流れ方向と直交する第1方向において互いに間隔をあけて配置され」るものであるといえる。 (エ)さらに、当該V字状の凸部は2本あるから、「記第1方向において最も外側に配置される第1凸部、及び前記第1方向において前記第1凸部と反対側の最も外側に配置される第2凸部を含」むものである。 (オ)以上、(ア)~(エ)から、甲2発明の部材120における凹凸は、本件発明5の「第1主面上に形成される複数の凸部」と同等の形状である。 (カ)したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。 ウ 相違点3についての判断1(実質的な相違点か否か) (ア)甲2発明の部材120は平板状の支持基板2との間に3本のガス流路2aを画定するものであるから、ガス流路2aの上流側には供給部が、下流側には排出部が、それぞれ存在していることは明らかである。 (イ)しかし、この供給部と排出部が部材120に対する「孔」として存在していることまでは甲2には記載されておらず、不明という他ない。 (ウ)したがって、相違点3は実質的な相違点である。 エ 相違点3についての判断2(想到容易か否か) (ア)部材120が画定するガス流路2aの供給部と排出部を部材120の「供給孔」、「排出孔」としてそれぞれ形成することは、甲2発明を当業者が実施するにあたって適宜採用し得る設計的事項に過ぎない。 (イ)したがって、相違点3に係る点は、当業者が容易に想到し得たものである。 オ 相違点4についての判断1(実質的な相違点か否か) 上記イの相違点2についての判断を踏まえ、相違点4について検討する。 (ア)上記イで検討したとおり、甲2発明の部材120における凹凸は、本件発明5の「第1主面上に形成される複数の凸部」と同等の形状である。 (イ)ここで、甲2発明の部材120は導電性の酸化物層を有していてもよいものであるものの、この導電性の酸化物層が凸部(2本のV字状の凸部)の側面上に配置されるものであることや、所定の厚さ分布を有することは、依然として記載されているとはいえない。 (ウ)したがって、相違点4は実質的な相違点である。 カ 相違点4についての判断2(想到容易か否か) (ア)甲2の記載事項についてさらに検討するに、上記(2)ウに記載したとおり、甲2から、図1Fの周縁部に位置する低温部では金属酸化物層を薄く、中央部に位置する高温部では金属酸化物層を厚くすることにより、赤外光の反射率を互いに異ならせて電池性能を向上することができることが把握される。 (イ)ここで、「赤外光の反射率を互いに異ならせる」という機序から、この金属酸化物層は赤外光の暴露を受ける部分に適用されるものであり、図1Fの部材120の形状を鑑みれば、近傍部分からの赤外光が入射し得る、セル1の外側(部材120の凹凸を2本のV字状の凸部としてみた場合、凸部の内側)に形成されるものである。 (ウ)そうすると、甲2発明の部材120における金属酸化物層は、部材120の凹凸を2本のV字状の凸部としてみた場合、凸部の内側(V字の内側)に形成されるものであり、凸部の側面上(V字の外側)に形成されるものではない。 (エ)また、「赤外光の反射率を互いに異ならせる」目的で適用する金属酸化物層を、赤外線が通常入射しない、凸部の側面上(V字の外側)に設ける動機付けは存在しない。 (オ)したがって、甲2発明において、相違点4に係る点は、甲2の記載を参酌しても、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。 キ 申立人の主張について (ア)申立人は、特許異議申立書の3(4)IV イ(ア)iii)において、 「甲第2号証には、セル1を構成する素子部の中央部に高温部が位置し、素子部から離れたセル1の周縁部に低温部が位置することが記載されている(甲2記載事項)。また、甲第3号証には、導電部材18は、セル1の積層方向に直交する方向における中央付近に位置する第1部位181と、セル1の積層方向に直交する方向における両端部に位置する第2部位182とを有すること、および、導電部材18における第1部位181は、高温になりやすい部分であることが記載されている(甲3記載事項)。 また、甲第2号証は、電気化学セル内の温度にばらつきが生じることを課題としており(甲2記載事項)、甲第3号証は、発電時における温度のばらつきを課題としている(甲3記載事項)。つまり、甲2発明と甲第3号証に記載された発明とは課題が共通しているから、甲2発明に、甲3記載事項を適用する動機付けがある。… さらに、甲第3号証には、導電部材18の第1部位181は、導電部材18の第2部位182よりも被膜30の厚みが大きいことが記載されている(甲3記載事項)。そのため、上記参考図3において、第1凸部の側面上に配置される被覆層は、外側部分(第1凸部における右側の側面)が内側部分(第1凸部における左側の側面)よりも薄くなる厚さ分布を有するといえる。 そのため、甲2発明において、甲3記載事項を参照して、「前記第1凸部の側面上に配置される酸化物層は、前記外側部分が前記内側部分よりも薄くなる厚さ分布を有する」構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。」 と主張しているが、甲2及び甲3には、上記2(1)に記載した、「本体部が第2主面側に膨らむような反りを誘起する」ことにより、「セル本体部の破損を抑制する」という効果が奏されることは、記載も示唆もされていない。 (イ)したがって、申立人の上記主張を考慮しても、本件発明5は、甲2、甲3の記載からは当業者が予測し得ない異質な効果を発揮するものであるといえるから、本件発明5は、甲2、甲3の記載を参酌しても、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。 (ウ)よって、申立人の上記(ア)の主張は採用しない。 ク 以上のとおりであるから、本件発明5は、甲2、甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明6~11について 本件発明6~11についても、本件発明5と甲2発明との対比と同様に、少なくとも上記(3)ア(ウ)の相違点2~4で相違し、上記(3)イ~クにおける判断と同様に、相違点4については当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえないし、この点は甲2、甲3の記載を参酌しても同様である。 したがって、本件発明6~11は、甲2、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)小括 以上より、本件発明5~11は、甲2、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、上記第3の申立理由4-2によっては、本件特許の請求項5~11に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、申立人による特許異議の申立ての申立理由1~申立理由4-2のいずれによっても、本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700573

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