特許異議申立
2021-700225
タバコ産業製品用カプセル
- 審判番号
- 2021-700225
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-559838
- 登録番号
- 6750041
- 請求日
- 2021年03月01日
- 審決日
- 2022年06月29日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
- 【権利者代理人】池田 成人
- 【権利者代理人】酒巻 順一郎
- 【権利者代理人】原田 さやか
- 【異議申立人】大村 豊
- 審判長/審判官
- 審判長 松下 聡
- 審判官 平城 俊雅
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P1651.113-ZAA(A24D) / P1651.121-ZAA(A24D) / P1651.536-ZAA(A24D) / P1651.537-ZAA(A24D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6750041号発明「タバコ産業製品用カプセル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6750041号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。
特許第6750041号の請求項1ないし12に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6750041号の請求項1~12に係る特許についての出願は、2017年5月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年5月20日、英国)を国際出願日とする出願であって、令和2年8月14日にその特許権の設定登録がされ、令和2年9月2日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 3月1日 : 特許異議申立人大村豊(以下「異議申立 人」という。)による請求項1~12に 係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年 5月13日付け : 取消理由通知書
令和3年 8月11日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出
令和3年10月26日 : 異議申立人による意見書の提出
令和3年12月16日付け : 取消理由通知書(決定の予告)
令和4年 3月18日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出
令和4年 4月26日 : 異議申立人による意見書の提出
なお、令和3年8月11日提出の訂正請求書による訂正の請求については、令和4年3月18日提出の訂正請求書による訂正の請求がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年3月18日の訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12に訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示すために当審で付したものである。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「(a)」、「(b)」及び「(c)」を、
「成分(a)」、「成分(b)」及び「成分(c)」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1における「(a)ハッカ属の任意の種由来のハッカ油、コショウ油、バニリン、ユーカリプトール、リモネン、C4~C16ラクトン、C2~C14エステル、C6~C20アルデヒド、C7~C20ケトン及びC6~C20アルコールである香味物質(ただし、グリセロールのトリエステルを除く)を含む群から選択される1つ又は複数の化合物を含む、約5~25%w/wの結晶化抑制剤」を、
「(a)ハッカ属の任意の種由来のハッカ油、コショウ油、バニリン、ユーカリプトール、リモネン、C4~C16ラクトン、C2~C14エステル、C6~C20アルデヒド、C7~C20ケトン及びC6~C20アルコールである香味物質(ただし、グリセロールのトリエステルを除く)からなる群から選択される1つ又は複数の化合物からなる、5~25%w/wの結晶化抑制剤」と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1における「少なくとも約35%w/wのメントール」を、
「少なくとも35%w/wのメントール」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1における「溶媒」を、
「結晶化抑制剤と異なる溶媒」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1における「前記の重量%値がコアの総重量に対するものである、易破壊性カプセル。」を、
「前記の重量%値がコアの総重量に対するものであり、圧力によって破壊することができ、コアが放出されるものである、易破壊性カプセル。」と訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2において「約9~約13」を「9~13」に、「約10~約12」を「10~12」と訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4において「少なくとも約38%w/wのメントールを含有する」を「成分(b)が少なくとも38%w/wのメントールからなる」と訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5における「少なくとも約4mgのメントールを含有する」を、
「成分(b)が少なくとも4mgのメントールからなる」と訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6における「実質的に球形であり、約0.4mm~約10.0mmの直径を有する」を、「実質的に球形であり、0.4mm~10.0mmの直径を有する」と訂正する。
2 訂正要件についての判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「(a)」、「(b)」及び「(c)」を「成分(a)」、「成分(b)」及び「成分(c)」と訂正することで、コアが成分(a)~(c)を含むことを明確にするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正前の請求項1の「(a)」の結晶化抑制剤、「(b)」のメントール、及び「(c)」の溶媒は、コアの成分であることは明らかである。また、本件特許の明細書の段落【0086】には「成分」の記載がある。
したがって、訂正事項1は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の事項である。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「(a)ハッカ属の任意の種由来のハッカ油、コショウ油、バニリン、ユーカリプトール、リモネン、C4~C16ラクトン、C2~C14エステル、C6~C20アルデヒド、C7~C20ケトン及びC6~C20アルコールである香味物質(ただし、グリセロールのトリエステルを除く)を含む群から選択される1つ又は複数の化合物を含む、約5~25%w/wの結晶化抑制剤」における「を含む」を「からなる」とし、「約」を削除して訂正することで、結晶化抑制剤に含まれる範囲を限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許の明細書の段落【0037】には、訂正前の請求項1の「(a)ハッカ属の任意の種由来のハッカ油、コショウ油、バニリン、ユーカリプトール、リモネン、C4~C16ラクトン、C2~C14エステル、C6~C20アルデヒド、C7~C20ケトン及びC6~C20アルコールである香味物質(ただし、グリセロールのトリエステルを除く)を含む群から選択される1つ又は複数の化合物を含む」結晶化抑制剤が記載されており、同記載に基づけば、「を含む」を「からなる」としたものも記載されており、本件特許の明細書の段落【0014】には、「約」を削除した数字も記載されているといえる。
したがって、訂正事項2は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の事項である。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項1の「少なくとも約35%w/wのメントール」における「約」を削除することで、コアが含む成分(b)の量を明確にするためのものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許の明細書には、訂正前の請求項1の「約」を削除した数字も記載されていることは明らかである。
したがって、訂正事項3は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の事項である。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項1における「溶媒」を「結晶化抑制剤と異なる溶媒」に訂正することで、溶媒を限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正前の本件特許の明細書の段落【0017】には、溶媒について、「存在する場合、溶媒は結晶化抑制剤と異なる。」と記載されている。
したがって、訂正事項4は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の事項である。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項4は、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項1における「前記の重量%値がコアの総重量に対するものである、易破壊性カプセル。」を、「前記の重量%値がコアの総重量に対するものであり、圧力によって破壊することができ、コアが放出されるものである、易破壊性カプセル。」と訂正するものである。
この訂正は、易破壊性カプセルを「圧力によって破壊することができ、コアが放出されるもの」と限定するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許の明細書段落【0044】には、「『易破壊性カプセル』という用語は、圧力によってシェルを破壊することができ、コアが放出されるカプセルを指し」と記載されている。
したがって、訂正事項5は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の事項である。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項5は、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項2の「約9~約13」及び「約10~約12」における「約」を削除し、親水親油バランス(HLB)の範囲を明確にするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許の明細書には、訂正前の請求項2の「約」を削除した数字も記載されていることは明らかである。
したがって、訂正事項6は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の事項である。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項6は、訂正前の請求項2に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項4の「少なくとも約38%w/wのメントールを含有する」における「含有する」を「からなる」とし、「約」を削除するとともに、「成分(b)が」を追加することで、コアが含む成分(b)の量を明確にするものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許の明細書には、訂正前の請求項4の「含有する」を「からなる」としたものや、「約」を削除した数字も記載されていることは明らかである。
したがって、訂正事項7は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の事項である。
よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項7は、訂正前の請求項4に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項5の「少なくとも約4mgのメントールを含有する」における「含有する」を「からなる」とし、「約」を削除するとともに、「成分(b)が」を追加することで、コアが含む成分(b)の量を明確にするものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許の明細書には、訂正前の請求項5の「含有する」を「からなる」としたものや、「約」を削除した数字も記載されていることは明らかである。
したがって、訂正事項8は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の事項である。
よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項8は、訂正前の請求項5に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項6の「実質的に球形であり、約0.4mm~約10.0mmの直径を有する」における「約」を削除し、カプセルの直径を明確にするものである。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許の明細書には、訂正前の請求項6の「約」を削除した数字も記載されていることは明らかである。
したがって、訂正事項9は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の事項である。
よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
訂正事項9は、訂正前の請求項6に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(10)一群の請求項について
訂正前の請求項2~12は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1~5によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~12に対応する訂正後の請求項1~12は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 小活
上記のとおり、訂正事項1、3、6~9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。また、訂正事項2、4、5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕に訂正することを認める。
第3 本件発明
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件訂正により訂正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
コアシェル構造を有する、タバコ産業製品に使用するための易破壊性カプセルであって、前記コアが、
成分(a)ハッカ属の任意の種由来のハッカ油、コショウ油、バニリン、ユーカリプトール、リモネン、C4~C16ラクトン、C2~C14エステル、C6~C20アルデヒド、C7~C20ケトン及びC6~C20アルコールである香味物質(ただし、グリセロールのトリエステルを除く)からなる群から選択される1つ又は複数の化合物からなる、5~25%w/wの結晶化抑制剤;
成分(b)少なくとも35%w/wのメントール;及び
成分(c)結晶化抑制剤と異なる溶媒;
を含み、
前記の重量%値がコアの総重量に対するものであり、
圧力によって破壊することができ、コアが放出されるものである、易破壊性カプセル。
【請求項2】
前記溶媒の親水親油バランス(HLB)が、9~13、好ましくは10~12である、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記溶媒が、短鎖及び/又は中鎖の脂肪及び/又は油を含む、請求項1又は2に記載のカプセル。
【請求項4】
成分(b)が少なくとも38%w/wのメントールからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項5】
成分(b)が少なくとも4mgのメントールからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項6】
実質的に球形であり、0.4mm~10.0mmの直径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項7】
喫煙品又はエアロゾル発生装置用のフィルターであって、請求項1~6のいずれか一項に記載のカプセルをフィルタープラグ内に含む、フィルター。
【請求項8】
エアロゾル発生装置用の消耗品であって、請求項1~6のいずれか一項に記載のカプセル又は請求項7に記載のフィルターを含む、消耗品。
【請求項9】
エアロゾル発生剤、香味物質及びタバコ材料のうちの1つ又は複数をさらに含む、請求項8に記載の消耗品。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載のカプセル、請求項7に記載のフィルター又は請求項8若しくは9に記載の消耗品を含む、タバコ産業製品。
【請求項11】
エアロゾル発生装置である、請求項10に記載のタバコ産業製品。
【請求項12】
前記エアロゾル発生装置が、タバコ材料を燃やさずに加熱することによって使用時に吸入可能なエアロゾルを発生させるタバコ加熱製品である、請求項11に記載の製品。」
第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1~12に係る特許に対して、当審が令和3年12月16日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1.(明確性)本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、不備があるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2.(サポート要件)本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、不備があるため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
3.(実施可能要件)本件特許の請求項1~12に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
4.(新規性)本件特許の請求項1、4~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、本件特許の請求項1、4~12に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
5.(進歩性)本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:Natural Product Communications 2009 Vol. 4 No. 8 1107-1112及び抄訳文
甲第2号証:Pharmaceutical Biology 2003, Vol. 41, No. 6, pp. 421-425及び抄訳文
甲第3号証:特開2003-81798号公報
甲第4号証:特開平9-233999号公報
甲第5号証:特開2006-124448号公報
甲第6号証:特開2016-145179号公報
甲第7号証:特開2003-339323号公報
甲第8号証:特表2016-506934号公報
甲第9号証:中国特許出願公開第104585880号明細書、抄訳文、及び和訳文
甲第10号証:特表2014-532435号公報
(以下、甲第1号証~甲第10号証をそれぞれ「甲1」~「甲10」という。なお、異議申立人が提出した甲第9号証の中国特許第104585880号公報は、本件特許の優先日前に公開されたものではないため、当審により中国特許出願公開第104585880号明細書に差し替えた。)
第5 甲各号証の記載
1 甲1
甲1には、以下の事項が記載されている(「・・・」は、記載の省略を意味する。下線は当審にて付した。以下同様。)
「The chemical composition of peppermint oil, as seen in Table 1, was dominated by menthol (40.7%) and menthone (23.4%).」(第1108頁左欄第1~3行)
(当審訳:表1に見られるように、メントール(40.7%)及びメントン(23.4%)が、ペパーミントオイルの化学組成の優位を占めている。)
2 甲2
甲2には、以下の事項が記載されている。
「Mentha arvensis L. (Lamiaceae), popularly known as Japanese mint or menthol mint, is cultivated in India, China, Brazil, Japan, USA, France and Australia for its menthol rich essential oil.… The most abundant constituents of mint oil is menthol (Lawrence, 1997), which is a monoterpene alcohol.」(第421頁左欄第17~26行)
(当審訳:ヨウシュハッカ L(シソ科)は、ハッカ又はメントールミントとして良く知られ、そのメントールリッチな精油であることから、インド、中国、ブラジル、日本、米国、フランス、オーストラリアにおいて栽培されている。…ミントオイルの最も豊富な成分は、モノテルペンアルコールである、メントールである(ローレンス、1997)。)
3 甲3
甲3には、以下の事項が記載されている。
(3-a)「【請求項1】 l?メントール(A)と、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビットから選ばれる1種又は2種以上(B)を含有し、(A)成分と(B)成分の質量比が1:0.1以上であることを特徴とする口腔用組成物配合用香料組成物。」
(3-b)「【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、香料組成物中に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビットといった非香料成分を混和することによって、香料組成物中のl-メントールの析出を抑えることができることを知見し、これにより配合対象口腔用組成物に対し、余分な香りや呈味を与えることなく、均一に香料組成物中の成分を配合することが可能であることを見出し、本発明をなすに至った。」
(3-c)「【0016】
【表1】
[図:0001393970000001.jpg]
【0017】
【表2】
[図:0001393970000002.jpg]
・・・・
【0019】
【表3】
[図:0001393970000003.jpg]
【0020】表3は、表1の各香料組成物を配合した歯磨組成物の例である。比較品1において香料Aを1.0%配合したところ清涼感が不足したため、比較品2では香料組成物中のl-メントールの割合を高めた香料Bを配合したが、香料Bではl-メントールの析出が発生してしまった。」
4 甲4
甲4には、以下の事項が記載されている。
(4-a)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本願発明者は、メントール含量が0.5%以上の錠菓において、打錠、冷却してもメントールが再結晶しないか検討を加えた。
【0007】常法により造粒を行い、粉末ミント香料を5%添加(メントール0.5%添加)して打錠を行うと、硬度の確保が難しく、また冷却テストの際にメントールの再結晶が多数発生した。
・・・
【0009】
【課題を解決するための手段】本願発明者は、鋭意研究の結果、乾燥顆粒にメントールを含有する乳化香料を噴霧した顆粒及びそれを打錠した錠菓を得ることにより、上記課題を解決した。
・・・
【0015】乳化香料には、メントールの他、乳化剤及びプロピレングリコール、又は、蛋白、糖液及びプロピレングリコールが必須で含有し、プロピレングリコール脂肪酸エステル、リモネン、メントン、中鎖脂肪酸、ペパーミントオイルが必要により含有する。」
(4-b)「【0039】(比較例1)粉糖100部を流動層造粒機にて造粒(顆粒化)を行った。その顆粒を、水分0.5%になるまで流動層乾燥を行った。その乾燥顆粒90部に乳化香料10部を均一噴霧し打錠を行った。乳化香料の配合は、L-メントール30部、ペパーミントオイル10部、MCT(花王:ココナード。中鎖脂肪酸、以下同じ)5部、グリセリン脂肪酸エステル10部、水45部。
(比較例1の結果)打錠時にキャッピングは全く見られなかった。また、硬度的にも適度な錠菓となった。打錠後の冷却でメントールの再結晶が見られた。」
5 甲5
甲5には、以下の事項が記載されている。
(5-a)「【請求項1】
油脂の結晶析出を抑制するポリグリセリン脂肪酸エステルからなる油脂用結晶化抑制剤であって、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸にエルカ酸及びステアリン酸を有していることを特徴とする油脂用結晶化抑制剤。
【請求項2】
前記構成脂肪酸において、エルカ酸とステアリン酸の総モル量におけるエルカ酸のモル比率が0.50以上であることを特徴とする請求項1に記載の油脂用結晶化抑制剤。
【請求項3】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が80%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の油脂用結晶化抑制剤。」
(5-b)「【0031】
(試験例1)
ポリグリセリン脂肪酸エステルを菜種油に0.1重量%添加し、80℃に加熱して溶解させた。その後、ポリグリセリン脂肪酸エステルが溶解している菜種油を0℃の恒温槽に放置し、菜種油内に結晶が析出するのに要した日数を計った。その結果を、表1に示す。なお、表1内の構成脂肪酸数値は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの総構成脂肪酸における各構成脂肪酸のモル比率であり、エルカ酸中の不純物もエルカ酸とみなしている。
【0032】
【表1】
[図:0001393970000004.jpg]
」
(5-c)
「【0041】
【表2】
[図:0001393970000005.jpg]
」
6 甲6
甲6には、以下の事項が記載されている。
(6-a)「【請求項1】
少なくとも、
(A)ミノキシジルと、
(B)グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及び、ポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも一つの多価アルコールと、
(C)無水エタノールと、
(D)水と、
を含有し、
前記多価アルコールの含有量が、重量割合で前記ミノキシジルの2.5倍以上であるとともに、組成物の全量に対して10~35重量%を含有し、
前記ミノキシジルが均一に溶解された澄明状態を有するとともに、保管時における結晶析出が抑制されてなることを特徴とする外用液剤。」
(6-b)「【0115】
【表1】
[図:0001393970000006.jpg]
」
7 甲8
甲8には、以下の事項が記載されている。
「【0009】
不特定の濃度の他の不特定の液体メントール製品は、インターネットを通じて入手でき、そして何人かはメントールを煙草に加えて使用している。
・・・
【0034】
メントールを溶解し得る好ましい食用オイルは、MCT、コーン油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、キャノーラ油等のようなオイルを包含し得る。最も好ましくは、食用オイルは、中鎖脂肪酸トリグリセリドであり、これらのMCTオイルは、最小量の温度に基づくヒステリシスを示すためである。
【0035】
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)は、好ましくは、蒸留により植物油から単離される。本発明の実施に有用な中鎖脂肪酸トリグリセリドは、好ましくは、6乃至12個の炭素鎖長を有し、そして好ましくは、組成物媒体は、少なくとも95%の、8乃至10個より選択される炭素鎖長を有するトリグリセリドを含有する。中鎖脂肪酸トリグリセリドは、好ましくは、Cocos nucifera L の胚乳の硬く乾燥した画分から、又は、Elaeis guineensis Jacqの乾燥した胚乳から抽出されたオイルから得られる。それらは通常、飽和脂肪酸の、主としてカプリル酸の(C81-11602)及びカプリン酸(C101-12002)のトリグリセリドの混合物から成る。好ましいオイルは、95%以上の、8乃至10個の炭素原子を有する飽和脂肪酸を含有し、そして好ましくは、当該オイルは清澄な溶液である。」
8 甲9
甲9には、以下の事項が記載されている。
(8-a)「
[図:0001393970000007.jpg]
」
メントール1~40部、オリーブ油20~80部、(カプリル/カプリン酸)グリセリル85~15部、界面活性剤0.1~1.5部。)
(8-b)「
[図:0001393970000008.jpg]
」
(当審訳:第4に、複合配合した界面活性剤を用いているので、界面活性剤の使用量を減らし、コストを削減できるだけでなく、使用効果を高め、被包効果をよくすることができるので、喫煙時に需要に応じてつまんで砕きやすく、ミントのフレッシュな香りを素早く放出させることができる。)
以上の事項を総合すれば、甲9には以下の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されていると認められる。
「メントール1~40部、オリーブ油20~80部、(カプリル/カプリン酸)グリセリル85~15部、界面活性剤0.1~1.5部からなるミントエッセンス溶媒を含む、つまんで砕きやすいたばこ用カプセル。」
9 甲10
甲10には、以下の事項が記載されている。
(9-a)「【0070】
特に好ましくは、香味組成物中の液体脂肪は、8~10の間の鎖長の1又はそれ以上のカルボン酸を有するトリグリセリドを、少なくとも約30重量パーセント、好ましくは少なくとも約50重量パーセント、より好ましくは少なくとも約75重量パーセント、及び最も好ましくは約100重量パーセント含む。代替として、液体脂肪は、8~10の間の鎖長の全部で3つのカルボン酸を有するトリグリセリドを、少なくとも約30重量パーセント、好ましくは少なくとも約50重量パーセント、より好ましくは少なくとも約75重量パーセント、及び最も好ましくは約100重量パーセント含む。
【0071】
トリグリセリドは、グリセロール及び3つの脂肪酸又はカルボン酸から生成されたエステルである。トリグリセリド中のカルボン酸鎖の「鎖長」は、カルボン酸の骨格における炭素原子の数を意味する。例えば、12の鎖長のカルボン酸は、グリセロールと、脂肪酸の脂肪族末端の骨格において12の炭素原子を有する脂肪酸とから形成される。6~12の間の鎖長の1又はそれ以上のカルボン酸を有するトリグリセリドは、典型的には中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)と呼ばれる。」
(9-b)「【0096】
上述の香味送出材料は、有利には、幅広い種類の異なるタイプの喫煙物品に組み込むことができる。例えば、香味送出材料は、喫煙中に燃焼されるタバコカットフィラー又は他の喫煙可能材料のロッドを有する、フィラーシガレットのような可燃性喫煙物品に組み込むことができる。
【0097】
代替として、香味送出材料は、材料が燃焼ではなく加熱されてエアロゾルを形成する上述のタイプの加熱式喫煙物品に組み込むことができる。例えば、香味送出材料は、可燃性熱源と、該可燃性熱源の下流側のエアロゾル発生基材とを備えた、国際特許公開第2009/022232号に開示されたような、可燃性熱源を含む加熱式喫煙物品に組み込むことができる。香味送出材料はまた、非可燃性熱源(例えば、化学的熱源、又は電気抵抗加熱要素などの電気式熱源)を含む加熱式喫煙物品に組み込むことができる。
【0098】
或いは、上述の香味送出材料は、国際特許公開第2008/121610号及び国際特許公開第2010/107613号に記載されるような、燃焼及び加熱することなくタバコ材料又は他のニコチン源からニコチン含有エアロゾルが形成される喫煙物品に組み込むことができる。
【0099】
本発明による喫煙物品は、喫煙物品の構成要素の何れか1又はそれ以上に香味送出材料を組み込むことができる。香味送出材料を組み込んだ喫煙物品の構成要素又は構成要素の部分は変形可能であり、構成要素の圧縮によって香味送出材料に圧縮力を加えることができるようになる。好ましくは、香味送出材料は、喫煙物品のフィルタ又はマウスピースに組み込まれる。フィルタ又はマウスピースは、香味送出材料に圧縮力を加えて周囲のフィルタに香味組成物を放出するために圧縮することができる。喫煙物品の喫煙中、香味送出材料から放出された香味組成物の一部からの香味料は、煙に送出されてフィルタを通過する。
【0100】
フィルタは、香味送出材料を組み込んだ単一セグメントから形成される単一セグメントフィルタとすることができる。或いは、フィルタは、香味送出材料を組み込んだ少なくとも1つのフィルタセグメントと、少なくとも1つの追加のフィルタセグメントとを含む多成分フィルタとすることができる。限定ではないが、繊維性フィルタトウ、キャビティフィルタセグメント、管状フィルタセグメント、及び流量制限器セグメントを含む、様々な好適なフィルタセグメントが当業者には周知であろう。フィルタセグメントの1又はそれ以上は、追加の香味材料、吸着材料、又は香味材料と吸着材料の組み合わせを含むことができる。
【0101】
例えば、フィルタセグメントの1又はそれ以上は、上述のような「香味から香味への」プロファイルを提供するために追加の香味材料を含むことができる。このような場合、追加の香味材料は通常、このような香味が香味送出材料の圧縮前に煙に送出されるように、香味料をフィルタ内に受動的に放出する。香味送出材料が圧縮されると、香味送出の強度、香味の特性、又はその両方の遷移が存在する。追加の香味材料は、例えば、液体香味料が含浸された香味線条、1又はそれ以上のセルロース香味粒体、液体香味料が吸着剤内又はその上に装荷された活性炭などの吸着材料、又はこれらの組み合わせを含むことができる。」
(9-c)「【0106】
香味送出材料は、有利には、喫煙物品内に材料を組み込むことができる方法に柔軟性があるように様々な異なる形態で本発明による喫煙物品内に設けることができる。特定の実施形態において、香味送出材料は、ビーズの形態で提供される。ビーズは、あらゆる好適な形状に形成することができるが、実質的に円筒形又は球形であるのが好ましい。
【0107】
ビーズの幅は、約1mmよりも大きく、好ましくは約2mmよりも大きく、及びより好ましくは約3mmよりも大きいとすることができる。代替として、又はこれに加えて、ビーズの幅は、約8mm未満、好ましくは約6mm未満、及びより好ましくは約4mm未満とすることができる。好ましくは、ビーズの幅は、約1mmと約8mmの間、より好ましくは約2mmと約6mmの間、更により好ましくは約3mmと約4mmの間である。」
(9-d)「【0114】
本発明による喫煙物品は各々、本明細書で記載される香味送出材料の何れかを約1mgよりも多く、及び好ましくは約3mgよりも多く含む。代替として、又はこれに加えて、各喫煙物品は、本明細書で記載される香味送出材料の何れかを約20mgよりも少なく、好ましくは約12mgよりも少なく、及びより好ましくは約8mgよりも少なく含むことができる。好ましくは、各喫煙物品は、香味送出材料を約1mgと約20mgの間、より好ましくは約1mgと約12mgの間、及び最も好ましくは約3と約8mgの間で含む。」
第6 当審の判断
1 特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性)について
(1)メントールと結晶化抑制剤(ハッカ油等)との関係について
ア 本件特許の請求項1では、「ハッカ属の任意の種由来のハッカ油」を化合物Aの1つとして列挙しているが、このようなハッカ油は、メントールを含むものである。
例えば、甲1に示す通り、ペパーミントオイルは、メントールを主成分(40.7%)としている。同様に、甲2に示す通り、ヨウシュハッカ L(メントールミント)のようなミントオイルは、メントールを豊富に含んでいることが知られている。
なお、これらのオイルは、ハッカ油に該当し、実際、ペパーミントオイルについては本件特許明細書においてもハッカ油として例示されている(【0037】を参照)。
一方、本件特許の請求項1では、成分(a)として結晶化抑制剤の割合が「5~25%w/w」、成分(b)としてメントールの割合が「少なくとも35%w/w」と特定されており、結晶化抑制剤がメントールを含む場合、この結晶化抑制剤由来のメントールは、請求項1のメントールに相当するか否か、また、「5~25%w/w」及び「少なくとも35%w/w」のいずれを構成するものであるか不明である。また、成分(a)としてのメントールと、成分(b)としてのメントールをどのように区別するのか不明であり、本件特許明細書を参照しても把握することができない。
また、成分(a)として結晶化抑制剤がハッカ油等である場合、ハッカ油等が、それに含まれるメントールとともに、成分(b)のメントールの結晶化傾向を軽減するということになるが、メントールをもってメントールの結晶化傾向を軽減することはできない。
さらに、成分(a)の「C6~C20アルコール」には、メントール(総炭素数10、下記式のl-メントール等)も含まれるため、成分(a)の結晶化抑制剤としてのメントールが、どのように成分(b)たるメントールの結晶化を抑制できるのか不明である。
[図:0001393970000009.jpg]
イ 特許権者は、令和4年3月18日提出の意見書において、ハッカ油は、メントンを含むメントール以外の様々な成分を含み、メントールの結晶化を抑制するように作用するのは、ハッカ油のこれらの他の成分であると主張するが(第4頁下から3行目以降)、このような主張を裏付ける記載は本件特許明細書には記載されていない。
そして、ハッカ油のメントール以外の成分が、結晶化抑制剤として機能するのであれば、コアに存在するメントールは、成分(a)由来のもの(ハッカ油の結晶化抑制剤ではないメントール)と、成分(b)として別途配合したものと両方存在することになるが、両者をどのように区別できるのか不明である。
したがって、特許権者の主張は採用できない。
ウ よって、本件特許の請求項1の記載は明確ではなく、請求項1を引用する請求項2~12の記載も同様に明確ではない。
2 特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)について
(1)結晶化抑制剤について
ア 本件特許明細書によれば、従来より、メントールは、タバコ産業製品に使用されており、高濃度で含まれることが望ましいものの、高濃度では結晶化が生じるという背景技術のもと、本件特許発明の課題は、『カプセル内に、結晶化させることなく、高濃度でメントールを封入すること』であり、その解決手段が、『結晶化抑制剤』にあると解される(【0007】~【0009】等を参照)。
しかし、結晶化抑制剤は、メントールの結晶化を抑制する、という機能で規定された「剤」であるに過ぎず、何らの具体性を伴うものではないし、どのような「剤」が、メントールの結晶化を抑制するという課題を解決できるのか、当業者が認識できるものではない。
すなわち、請求項1において、成分(a)の結晶化抑制剤として列挙された1つ又は複数の化合物である「ハッカ属の任意の種由来のハッカ油、コショウ油、バニリン、ユーカリプトール、リモネン、C4~C16ラクトン、C2~C14エステル、C6~C20アルデヒド、C7~C20ケトン、C6~C20アルコール」(以下「化合物A」という。)に含まれる極めて広範なあらゆる化合物が、メントールの結晶化を抑制できるものと認識することはできない。
とりわけ、本件特許明細書において、具体的にメントールの結晶化を抑制したことを示す結果について全く開示も示唆もされておらず、具体的な実施例等での裏付けが全く無いことに鑑みれば、化学種やその大きさ等が全く異なる、広範な化合物Aにおいて、その全てがメントールの結晶化を抑制できるものと認識することは不可能であるといえる。
さらに、上記1(1)で検討したとおり、成分(a)が、ハッカ油やメントールそのものである場合、メントールの結晶化をメントールを含む成分で抑えることが、本件発明の課題を解決する手段ということになるが、このような課題を解決する手段は、当業者が認識することはできない。
イ そして、このことは、本件特許出願時の技術常識等からも明らかであるので、以下、技術常識等を用いて説明する。
まず、甲3には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン及びソルビットから選択された特定成分を使用(特に特定割合で使用)することで、メントールの析出を抑えられることが開示されている一方で、スペアミントオイル等には何らメントールの析出抑制効果が無いことが示されている(請求項1、実施例等)。
甲4には、乳化剤、プロピレングリコール、蛋白、糖液等を含む乳化香料を使用することで、メントールの析出を抑えられることが開示されている一方で、ペパーミントオイル等には何らメントールの析出抑制効果が無いことが示されている。
甲5では、前記のように、ポリグリセリン脂肪酸エステルの中でも、構成脂肪酸の種類やその割合によって、油脂の結晶析出抑制効果が全く異なっていたことが示されている(請求項1~3、表1、2)。
甲6では、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びポリエチレングリコールから選択された特定の成分を使用(特に特定割合で使用)することで、メントール同様の結晶しやすい成分であるミノキシジルの析出を抑えられることが開示されている一方で、これらの特定の成分と化学種、物性や炭素数(分子量)等において似通っている、エタノールや水には何ら析出抑制効果が無いことが示されている(請求項1、表2等)。
このように、結晶化を抑える成分の探索は試行錯誤を経て行われるものであり、さらには当該成分を化学種や炭素数等において概念化ないし予期できるものでもなく、当業者において当該成分による結晶化抑制機能を全く認識できないというのが本件特許出願時の技術常識であり、本件特許明細書において具体的に結晶化が抑制されたことを示す結果が一切無いこと(さらには上記甲3~4の開示)に照らしても、化合物Aにおいて、メントールの結晶化を抑制できるものとは到底認識しえない。
本件特許の請求項1において、化合物Aは、「ハッカ油」、「C4~C16ラクトン」、「C2~C14エステル」、「C6~C20アルデヒド」、「C7~C20ケトン」及び「C6~C20アルコール」といった、概念化がなされている。
しかし、同様の化学種や炭素数であっても、結晶化抑制機能は全く異なるというのが技術常識であるから、このような広範な概念の化合物全般にわたって結晶化を抑制できるとは認識できない。
したがって、このように概念化された非常に広範な成分において、メントールの結晶化を抑制できるものとは、甲3~6等のような技術常識に照らしても、到底認識しえないことは明らかである。
よって、本件特許明細書の記載及び本件特許出願時の技術常識からは、化合物Aがメントールの結晶化を抑制するものとは認識できない。
ウ さらに、異議申立人は、実際に、化合物Aがメントールの結晶化を抑制できないことを確認した(特許異議申立書の第35~36頁)。
下記表に示す濃度(重量割合)にて、ピックアップした化合物Aに相当する化合物及び溶媒の存在下、メントールを溶解させた後、室温(20℃)にて放置し、2時間後、4時間後、8時間後のそれぞれにおいて結晶(固化)の有無を確認した。
なお、溶媒には、本件特許明細書の【0040】にも記載のMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)を用いた。
[図:0001393970000010.jpg]
上記表の結果から明らかなように、化合物Aに相当する、ぺパーミントオイル(ハッカ油に相当)、酒石酸ジエチル(Cが炭素、下付きの数字が炭素数であるとすると、C2~C14エステルに相当)、ヘキサデカノール(Cが炭素、下付きの数字が炭素数であるとすると、C6~C20アルコールに相当)は、いずれもメントールの結晶化を抑制することを確認できなかった。
すなわち、実験1と、実験2~4との対比から明らかなように、成分(b)で規定するメントール濃度(40%w/w)において、ペパーミントオイル、酒石酸ジエチル、ヘキサデカノールは、いずれも、溶媒の一部と置換し、成分(a)で規定する濃度の上限値及び下限値(5及び25%w/w)としても、溶媒のみの場合(実験1)よりも、短時間で結晶を確認した、つまり、結晶化を抑制できなかった。
そして、このような傾向は、実験6と7との対比から明らかなように、メントールの濃度を変化させても(すなわち、要件(b)で規定するメントール濃度の下限値35%w/wに変更しても)変わらなかった。
エ 特許権者は、令和3年8月11日に提出された意見書において、カプセル中のメントールの使用については言及していない等の理由により、甲3~甲6及び異議申立人が提出した実験データは、当業者が本件発明により課題が解決できることを疑う合理的な理由を何ら提供するものではない旨と主張する(第8頁第19行~10頁第4行)。
しかしながら、カプセル化された組成物とカプセル化されていない組成物とで、メントールの結晶化において、全く異なる挙動を示すものとはいえない。
また、特許権者は、甲3~6や実験データについてのみ触れているが、そもそも、課題である「カプセル内に、結晶化させることなく、高濃度でメントールを封入すること」の解決手段が「結晶化抑制剤」(化合物A)であることを、具体的に確認できる実験結果をただの1つも開示していない中、課題を解決できるものと認識できる合理的理由について何ら説明していない。
したがって、特許権者の主張は採用できない。
オ 以上のように、本件特許の請求項1の記載は、発明の詳細な説明の記載により、メントールの結晶化を抑制するという課題を解決できるものと、当業者において認識できるものとはいえないから、いわゆるサポート要件を充足しない。
よって、本件特許の請求項1の記載は発明の詳細な説明に記載したものではなく、請求項1を引用する請求項2~12の記載も同様に発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)結晶化抑制剤の濃度について
ア 本件特許の請求項1には、メントールの結晶化を抑制するための結晶化抑制剤の濃度が「5~25%w/w」と特定されている。
しかし、本件特許明細書では、前述の通り、具体的に結晶化抑制剤を用いた実験結果が一切示されておらず、どのような結晶化抑制剤をどの程度の量で使用すれば、メントールの結晶化を抑制できるのか把握することができず、結晶化抑制剤の濃度を「5~25%w/w」とした場合に、本当にメントールの結晶化を抑制することができるのか確認することができない。
そして、本件特許の請求項1に係る発明が、カプセルのコアの組成に特徴を有する化学分野の発明であることに鑑みれば、具体的な実験結果に基づかなければ、課題を解決できるものと認識することはできない。
さらに、メントールの結晶化を抑制するためには、単に結晶化抑制剤を含めばよいのではなく、結晶化抑制剤を所定量使用することが必要であることは言うまでもない。しかも、このような量は、結晶化抑制剤の種類(結晶化抑制機能の強さ)によっても当然に変動するはずである。
そうすると、「5~25%w/w」と特定しても、あらゆる結晶化抑制剤(化合物A)において、当該濃度の全範囲(特に、低濃度領域)において、結晶化を抑制できるものとは到底認識しえないから、本件特許の請求項1の記載は、いわゆるサポート要件を充足しない。
イ 特許権者は、令和4年3月18日提出の意見書において、結晶化抑制剤の適切な量は、組成物の構成に左右され、3つの異なる成分の正しいバランスを必要とし、成分(a)は、5~25%w/wの濃度範囲で存在し得るが、当業者であれば、単純な実験によりこの範囲内で各結晶化阻害剤の適切な濃度を適宜決定することができる旨主張する(第9頁第16~19行)。
しかしながら、このような主張を裏付ける記載は本件特許明細書には記載されていない。また、結晶化抑制剤の適切な量を把握するために、成分(a)~(c)の正しいバランスが必要なのであれば、なおさら、具体的な実験結果を記載しておく必要があるところ、本件特許明細書にはこのような実験結果は一切記載されていない。
したがって、特許権者の主張は採用できない。
ウ よって、本件特許の請求項1の記載は発明の詳細な説明に記載したものではなく、請求項1を引用する請求項2~12の記載も同様に発明の詳細な説明に記載したものではない。
3 特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)について
本件特許明細書には、メントールの結晶化を抑制したことを示す実験結果をただの1つも開示していないため、高濃度におけるメントールの結晶化を抑制するコアの組成の探索(例えば、結晶化抑制剤の種類、割合、組み合わせ等)は困難であり、さらに、複数の化合物からなる結晶化抑制剤の場合には多数の組み合わせが考えられるため、当業者といえども過度の試行錯誤を要するものである。
また、異議申立人の実験結果を見ても、本件特許の請求項1で規定する結晶化抑制剤を使用しても実際に結晶化を抑制できていないものもあり、どのようにすれば結晶を抑制できるのか当業者が見当をつけることができない。
したがって、本件特許明細書の記載は、いわゆる実施可能要件を充足しない。
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1~12に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
4 特許法第29条第1項第3号に規定する要件(新規性)について
以下、本件特許の請求項1~12に係る発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明12」という。
(1)本件発明1について
甲9発明は、上記「第5 8」で示した、以下のとおりのものである。
「メントール1~40部、オリーブ油20~80部、(カプリル/カプリン酸)グリセリル85~15部、界面活性剤0.1~1.5部からなるミントエッセンス溶媒を含む、つまんで破きやすいたばこ用カプセル。」
本件発明1と甲9発明とを対比する。
甲9発明の「(カプリル/カプリン酸)グリセリル」は、甲13によれば、分子式はC13H26O4又はC11H22O4であるから、本件発明1の「成分(a)」の「C2~C14エステル」からなる「結晶化抑制剤」に相当する。
また、甲9発明の「メントール」、「オリーブ油」は、それぞれ、本件発明1の「成分(b)」の「メントール」、「成分(b)結晶化抑制剤と異なる溶媒」に相当する。
そして、甲9発明の「つまんで破きやすいたばこ用カプセル」は、本件発明1の「圧力によって破壊することができ」る「易破壊性カプセル」に相当する。また、甲9発明の「たばこ用カプセル」が、コアとシェルからなるコアシェル構造を有し、破壊するとコアが放出されることは、明らかである。
そうすると、本件発明1と甲9発明とは、
「コアシェル構造を有する、タバコ産業製品に使用するための易破壊性カプセルであって、前記コアが、
成分(a)ハッカ属の任意の種由来のハッカ油、コショウ油、バニリン、ユーカリプトール、リモネン、C4~C16ラクトン、C2~C14エステル、C6~C20アルデヒド、C7~C20ケトン及びC6~C20アルコールである香味物質(ただし、グリセロールのトリエステルを除く)からなる群から選択される1つ又は複数の化合物からなる結晶化抑制剤;
成分(b)メントール;及び
成分(c)結晶化抑制剤と異なる溶媒;
を含み、
圧力によって破壊することができ、コアが放出されるものである、易破壊性カプセル。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。
[相違点1]
成分(a)の結晶化抑制剤について、本件発明1が「5~25%w/w」であるのに対し、甲9発明は「85~15部」である点。
[相違点2]
成分(b)のメントールについて、本件発明1が「少なくとも35%w/w」であるのに対し、甲9発明は「1~40部」である点。
[相違点3]
本件発明1は「重量%値がコアの総重量に対するもの」であるのに対し、甲9発明は「部」である点。
上記相違点1~3は関連するのでまとめて検討する。
甲9発明における「部」は、配合組成に対して含まれるそれぞれの成分の重量の比を示すものであるから、100部をコアの総重量とした場合には、本件発明1の重量%値(%w/w)と同様のものであるといえる。
そして、成分(a)の結晶化抑制剤については、甲9発明は「85~15部」であるが、本件発明1の「5~25%w/w」の範囲内でのものを含んでいる。また、成分(b)のメントールについては、甲9発明は「1~40部」であるが、本件発明1の「少なくとも35%w/w」の範囲のものを含んでいる。
したがって、上記相違点1~3は実質的な相違点ではない。
よって、本件発明1は、甲9発明である。
特許権者は、令和3年8月11日提出の意見書において、乙1号証(以下「乙1」という。)を提出するとともに「取消理由通知書においては、甲9にカプリル酸グリセリルが記載されていると認定されている。しかしながら、甲9の和訳文における「辛葵酸甘油脂85~15部」を「カプリル酸グリセリル」とする和訳は誤っている。「辛葵酸甘油脂85~15部」は、正しくは「トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(Caprylic capric triglyceride)85~15部」である(乙第1号証(ChemNet「辛癸酸甘油脂」のページ)。
・・・トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルの分子式はC21H40O5である(乙第1号証、及び乙第2号証(CAS「Glyceryl caprylate caprate(CAS登録番号65381-09-1)」のページ)。この化合物は、本件訂正発明1に記載される2~14炭素原子よりも有意に多くの炭素原子を有するだけでなく、「グリセロールのトリエステルを除く」という記載によっても、本件訂正発明1から除外されるトリグリセリドでもある。」と主張する(第14頁第3~22行)。
乙1
[図:0001393970000011.jpg]
一方、異議申立人は、令和3年10月26日提出の意見書において、甲13号証(以下「甲13」という。)を提出するとともに「しかし、下記のウェブページには、次の構造が記載されており、明らかに特許権者が主張するようなトリエステルではありません。
しかも、乙1には、英文名として「2-ヒドロキシ-1-[(オクタノイルオキシ)メチル]エチルデカノエート」と記載され、この命名通りの構造(下記)も記載されています。
つまり、乙1に記載されているのは、グリセリンの「ジ」エステルであり、これも「トリ」エステルではありません。
このように、「辛癸酸甘油脂」は、カプリル酸/カプリン酸とグリセリンとのモノエステルであり、そうすると、(Cが炭素、下付きの数字が総炭素数であろうとカルボン酸部分の炭素数のいずれであろうと)「C2~C14エステル」に相当しますので、本件発明1が甲9発明であり、新規性を欠如することに変わりはありません。」と主張する(第15頁第17行~第16頁第6行)。
甲13
[図:0001393970000012.jpg]
これらの主張について検討する。
特許権者の提出した乙1には、「辛癸酸甘油脂」について、英文名称として「トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(Caprylic capric triglyceride)」が記載されているとともに、英文別名として「2-ヒドロキシ-1-[(オクタノイルオキシ)メチル]エチルデカノエート」とその構造が記載されているから、乙1号証には、「辛癸酸甘油脂」について、グリセリンの「トリ」エステルと「ジ」エステルが記載されていると認められる。(なお、「辛癸酸甘油脂」は「辛葵酸甘油脂」と同一の物質と認める。)
異議申立人が提出した甲13号証には、「辛癸酸甘油脂」について、英文名称として「デカノイル/オクタノイル)グリセリル(Decanoyl/octanoyl-glycerides)」
とその構造が記載されているから、甲13号証には、「辛癸酸甘油脂」について、グリセリンの「モノ」エステルが記載されていると認められる。
そして、乙1と甲13の「辛癸酸甘油脂」には、共にCAS番号として「65381―09-1」が記載されている。
ここで、中国語の「辛酸」は日本語のカプリル酸を意味し、同様に「癸酸」はカプリン酸を意味し、「甘油」はグリセリンを意味し、「脂」はエステルを意味するから、中国語の「辛癸酸甘油脂」は、カプリル酸/カプリン酸とグリセリンのエステルを意味するものと解釈できる。そして、その中国語の解釈において、エステルの数までは限定されるものではない。
そうすると、「辛癸酸甘油脂」は、グリセリンの「モノ」エステル、「ジ」エステル、「トリ」エステルの全てを含むものであり、乙1の「トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル」及び「2-ヒドロキシ-1-[(オクタノイルオキシ)メチル]エチルデカノエート」と甲13の「デカノイル/オクタノイル)グリセリル」を含むものといえる。
そして、「辛癸酸甘油脂」として、甲13に記載の「(デカノイル/オクタノイル)グリセリル」((カプリル/カプリン酸)グリセリル)とした場合には、分子式はC13H26O4又はC11H22O4であり、「モノ」エステルとなるから、本件発明1の「成分(a)」の「C2~C14エステル」からなる「結晶化抑制剤」に相当する。
さらに、特許権者は、令和4年3月18日提出の意見書において、甲13に記載の「(デカノイル/オクタノイル)グリセリル」がトリグリセリドを含むことは明らかであり、トリグリセリドは「(ただし、グリセロールのトリエステルを除く)」により、本件発明1における結晶抑制剤から明確に除外されている旨主張する(第11頁第13~21行)。
しかしながら、甲13には、トリグリセリドではない、分子式がC13H26O4又はC11H22O4である物質が、その構造式とともに明確に記載されている。
したがって、甲13に記載の「(デカノイル/オクタノイル)グリセリル」として、上記構造式からなる物質が含まれることは明らかである。
よって、特許権者の主張は採用できない。
(2)本件発明4、5について
甲9では、メントールが1~40部であるから、「少なくとも約38%w/w」の範囲を含むものである。また、メントールの具体的な量についてもたばこ用のカプセルを想定していることからして、「少なくとも約4mg」を充足する蓋然性が高い(例えば、甲10の【0114】を参照)。
よって、本件発明4、5は甲9発明である。
(3)本件発明6について
甲9では、たばこ用のカプセルを想定しており、そうすると、「実質的に球形であり、約0.4mm~約10.0mmの直径」を充足する蓋然性が高い(例えば、甲10の【0106】【0107】を参照)。
よって、本件発明6は甲9発明である。
(4)本件発明7~12について
甲9では、たばこ用のカプセルを想定しており、そうすると、当該カプセルを請求項7~12で規定された用途等に使用することは、技術常識に鑑みれば極めて当然のことであるから、実質的な相違点は無い蓋然性が高い[甲10(例えば、【0096】~【0101】等)を参照)]。
よって、本件発明7~12は甲9発明である。
5 特許法第29条第2項に規定する要件(進歩性)について
(1)本件発明1について
本件発明1と甲9発明とを対比すると、上記4(1)での検討のとおり、相違点1~3において相違するが、甲9発明の成分(a)、(b)の数値範囲に含まれるものが、上記相違点1~3に係る本件発明1で特定される数値の範囲内のものとなる場合がある。
すなわち、本件発明1と甲9発明との成分(a)、(b)との数値範囲は、一部の範囲において重なるが、全ての範囲において一致するものではない。
しかしながら、本件発明1の成分(a)、(b)の数値範囲を採用した根拠について本件特許明細書に具体的に記載されておらず、その数値範囲の採用によりメントールの結晶化を抑制したことについて実施例等の裏付けがないから、当該数値範囲に臨界的意義は認められない。
したがって、甲9発明に基いて、上記相違点1~3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2)本件発明2、3について
甲9と同様の技術分野に属する甲8及び甲10では、溶媒としてMCTが使用されており、MCTは請求項2及び3で規定する要件を充足する。
そうすると、甲9発明においてオリーブオイルに代えて、又はオリーブオイルに加えて甲8及び甲10に記載されたMCTを使用することは、当業者が容易に想到しえたことである。
(3)本件発明4~12について
本件発明4~12と甲9発明との対比において、仮に相違点があったとしても、本件発明4~12は、甲9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の請求項1、4~12に係る発明は、甲9発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件特許の請求項1、4~12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の請求項1~12に係る発明は、甲9発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700225