特許異議申立
2024-700431
ポリマー粒子及びその用途
- 審判番号
- 2024-700431
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-112803
- 登録番号
- 7377924
- 請求日
- 2024年05月08日
- 審決日
- 2025年08月22日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】松本油脂製薬株式会社
- 【異議申立人】野崎 彩
- 【異議申立人】亀崎 伸宏
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 小出 直也
- 審判官 松本 直子
- 分類
- P1651.113-ZDA(C08L) / P1651.121-ZDA(C08L) / P1651.536-ZDA(C08L) / P1651.537-ZDA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7377924号発明「ポリマー粒子及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7377924号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第7377924号の請求項1-3、6、7に係る特許を取り消す。
特許第7377924号の請求項4に係る特許を維持する。
特許第7377924号の請求項5に係る特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7377924号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和4年7月14日を出願日とする特許出願(特願2022-112803号)であって、令和5年11月1日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月10日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年5月8日に特許異議申立人 野崎 彩(以下「申立人A」という。)により、また、同年5月10日に特許異議申立人 亀崎 伸宏(以下「申立人B」という。)により、それぞれ、本件特許の請求項1~7に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
その後の経緯は、以下のとおりである。
令和6年 8月22日付け: 取消理由通知
同年 9月24日 : 応対記録
同年 同月26日 : 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年10月 4日 : 訂正請求書を補正する手続補正書の提出
(特許権者)
同年 同月17日付け: 訂正請求があった旨の通知(申立人A、B
宛)
同年11月18日 : 意見書の提出(申立人A)
令和7年 1月27日付け: 取消理由通知(決定の予告)
同年 5月29日 : 応対記録
同年 同月 同日付け: 取消理由通知
同年 6月12日 : 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
なお、令和6年10月17日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、申立人Bからの応答はなく、令和7年1月27日付けの取消理由通知(決定の予告)に対して、特許権者からの応答はなかった。
また、令和6年9月26日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
そして、令和7年6月12日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、実質的に、取消理由通知(決定の予告)において、取消理由がないとされた請求項4をさらに限定するものであり、請求項4については令和6年9月26日にされた訂正の請求に対して申立人A、Bに意見を聞く機会が与えられており、その意見を考慮しても取消理由通知(決定の予告)において取消理由がないと判断されたものであり、訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断した。
したがって、令和7年6月12日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるといえるから(特許法第120条の5第5項ただし書)、申立人に再度の意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年6月12日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第7377924号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」というものであって、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「生分解性高分子(A)を50重量%~100重量%含有し、平均粒子径が1~100μmであり、下記式により算出される再帰反射率が1.0~2.1である、ポリマー粒子。(式) 再帰反射率=(-40°の反射光強度)/(0°の反射光強度)
(但し、式中、-40°の反射光強度及び0°の反射光強度は、三次元変角光度計を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射光強度を測定した際の、-40°における反射光強度及び0°における反射光強度である。)」と記載されているのを、「生分解性高分子(A)を50重量%~99.999重量%含有し、平均粒子径が1~100μmであり、下記式により算出される再帰反射率が1.0~2.1である、ポリマー粒子であって、前記ポリマー粒子が界面活性剤及び水溶性高分子をさらに含有し、前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%であり、前記生分解性高分子(A)の25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/mlである、ポリマー粒子。
(式)再帰反射率=(-40°の反射光強度)/(0°の反射光強度)
(但し、式中、-40°の反射光強度及び0°の反射光強度は、三次元変角光度計を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射光強度を測定した際の、-40°における反射光強度及び0°における反射光強度である。)」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~4、6及び7も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に
「前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項3に記載のポリマー粒子。」
と記載されているのを、
「前記生分解性高分子(A)が前記ポリエステル系樹脂を含み、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項3に記載のポリマー粒子。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
2 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、それぞれ、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0012】、【0013】、【0032】の記載に基づき、訂正前の請求項1の「ポリマー粒子」について、その構成成分である生分解性高分子(A)の含有量の上限値を100重量%から「99.999重量%」に限定し、かつ、ポリマー粒子が「界面活性剤及び水溶性高分子」を「0.001~10重量%」含有するものに限定し、さらに「生分解性高分子(A)」を「25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/mlである」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、令和7年5月29日付けの取消理由通知において、請求項4に記載された発明が、生分解性高分子(A)を「ポリエステル系樹脂」のうち特定のものに限定した発明であるのか、それとも、「ポリエステル系樹脂」を選択肢としたまま、これを限定したものであるのか、いずれを意味するのか不明確である旨を指摘されたことをふまえ、生分解性高分子(A)を「ポリエステル系樹脂」のうち特定のもの(請求項4に記載された脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種)を含むものに限定した発明であることを明らかにするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 本件訂正後の独立特許要件について
特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~7に対してされているので、当該請求項における訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
5 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~4、6、7に係る発明(以下、順に「本件発明1」~「本件発明7」のようにいう。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~4、6、7に記載された事項により特定されるとおりのものであり、訂正特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
生分解性高分子(A)を50重量%~99.999重量%含有し、平均粒子径が1~100μmであり、下記式により算出される再帰反射率が1.0~2.1である、ポリマー粒子であって、前記ポリマー粒子が界面活性剤及び水溶性高分子をさらに含有し、前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%であり、前記生分解性高分子(A)の25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/mlである、ポリマー粒子。
(式) 再帰反射率=(-40°の反射光強度)/(0°の反射光強度)
(但し、式中、-40°の反射光強度及び0°の反射光強度は、三次元変角光度計を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射光強度を測定した際の、-40°における反射光強度及び0°における反射光強度である。)
【請求項2】
オレイン酸吸油量が30~150ml/100gである、請求項1に記載のポリマー粒子。
【請求項3】
前記生分解性高分子(A)が、セルロース、セルロース系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のポリマー粒子。
【請求項4】
前記生分解性高分子(A)が前記ポリエステル系樹脂を含み、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項3に記載のポリマー粒子。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリマー粒子を含む、化粧料。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のポリマー粒子を含む、コーティング組成物。」
第4 特許異議申立の理由、証拠方法、取消理由通知(決定の予告)の概要
1 特許異議申立書に記載した申立理由
(1)申立人Aによる申立理由
申立理由1A(新規性欠如):本件発明1~4、6は、甲第1号証~甲第10号証により、公然知られた発明であり、特許法第29条第1項第1号に該当するから、本件特許の請求項1~4、6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由2A(新規性欠如):本件発明1~4、6は、甲第1号証~甲第10号証により、公然実施された発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当するから、本件特許の請求項1~4、6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由3A(新規性欠如):本件発明1~7は、甲第11号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由4A(進歩性欠如):本件発明1~7は、甲第11号証に記載された発明に基づいて、その発明の技術の分野に属する通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由5A(新規性欠如):本件発明1~7は、甲第12号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由6A(進歩性欠如):本件発明1~7は、甲第12号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由7A(新規性欠如):本件発明1~7は、甲第13号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由8A(進歩性欠如):本件発明1~7は、甲第13号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由9A(サポート要件違反):本件発明1~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(具体的な理由の概要)
本件明細書の記載から、課題を解決するポリマー粒子として開示されているのは、特定量の生分解性高分子(A)と、特定量の界面活性剤と、特定量の水溶性高分子と、水とを用い、段落[0036]に記載される方法で得られた粒子だけであり、本件発明1~5はそのような工程を経て製造されたことが特定されておらず、さらにポリマー粒子の「再帰反射率が1.0~2.1」との要件を満たすための構成も特定されておらず、再帰反射率については成分組成だけでなく製造方法を含む種々の要因を検討し調整する必要があることが明らかであり、本件発明1~5は技術的裏付けとして不十分であり、本件発明6、7についても同様である。(申立書58頁下から7行~59頁25行)
申立理由10A(実施可能要件違反):本件発明1~7に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(具体的な理由の概要)
上記申立理由9Aと同様に、本件発明1~7は技術的裏付けとして不十分であり、実施例以外のポリマー粒子についての発明を実施するためには、当業者が過度の試行錯誤を必要とすることは明らかである。(申立書59~60頁項目(エ))
申立理由11A(明確性要件違反):本件発明1~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(具体的な理由の概要)
請求項1には、生分解性高分子の含有量と平均粒子径を特定の範囲にすること以外にどのような要件、構成等を備えれば、再帰反射率が1.0~2.1という要件を満たすことが可能となるのか、課題を解決するための手段が一切何も規定されておらず、発明が明確でない。
請求項2~7についても同様である。(申立書60~61頁項目(オ))
(2)申立人Bによる申立理由
申立理由1B(新規性欠如):本件発明1~3、6、7は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1~3、6、7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由2B(進歩性欠如):本件発明1~7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由3B(サポート要件違反):本件発明1~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(具体的な理由の概要)
「再帰反射率が1.0~2.1である」とは、再帰反射の割合が、乱反射の割合以上であることを示す物性であり、「光乱反射性」の代替特性にすぎないから、「再帰反射率が1.0~2.1である」との数値範囲と得られる効果である「透明性」との関係の技術的な意味が当業者においても理解できない。
少なくともエステル型やエステル塩型の界面活性剤又は水溶性高分子と水とは、任意の成分ではなく、本件発明の課題を解決するための必須の成分であるとすることが相当であり、粒子がエステル型やエステル塩型の界面活性剤又は水溶性高分子を含まない場合や粒子が水以外の分散媒に分散されている場合の実施の形態に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張及び一般化できるとはいえない。(申立書25~26頁項目(ア))
申立理由4B(実施可能要件違反):本件発明1~7に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(具体的な理由の概要)
上記申立理由3Bで述べたのと同様に、粒子がエステル型やエステル塩型の界面活性剤又は水溶性高分子を含まない場合や粒子が水以外の分散媒に分散されている場合に、本件発明1~7を実施できる程度に明確かつ十分に説明されているとはいえない。(申立書26~27頁項目(イ))
申立理由5B(明確性要件違反):本件発明1、2、5~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(具体的な理由の概要)
「生分解性高分子(A)」の化学的構造は、本件明細書を参照しても、環境への負荷低減に優れること以上の技術的意義は理解できず、高分子であること以外にどのような種類の成分であるのかを何ら理解できないものであり、どのような高分子を含み得る成分であるのかが理解できず、不明確である。(申立書27頁項目(ウ))
2 証拠方法
(1)申立人Aが申立書に添付して提示した証拠方法
甲第1号証:Safety Data Sheet Product name RESOBEADS BG-1030,Kobo Products,Inc., 2018年8月15日及びその抄訳
甲第2号証:Kobo Products,Inc社製「RESOBEADS BG-1030」の「batch#:PT180831」(Lot:PT180831)であるポリマー粒子及び当該ポリマー粒子が収容されているボトルを撮影した写真、申立人A撮影、撮影場所:東京都、撮影日令和6年4月24日及びその抄訳
甲第3号証:CERTIFICATE OF ANALYSIS Product:RESOBEADS BG-1030 Lot:PT180831, Kobo Products,Inc.発行,2018年12月及びその抄訳
甲第4号証:「株式会社KOBOディスパティック About Us」、令和6年4月17日出力、インターネット<URL:https://www.kobodispatek.co.jp/about-us/>
甲第5号証:長野県工業技術総合センター所長宛 依頼申請書,申立人A作成,令和6年4月4日
甲第6号証:申立人A宛 証紙貼付証明書、長野県工業技術総合センター所長、2024年4月10日
甲第7号証:長野県工業技術総合センター保有設備 詳細表示 設備名:三次元変角光度計 メーカ:(株)村上色彩技術研究所 型式:GP-200、令和6年4月17日(出力日)、インターネット<URL:https://www.gitc.pref.nagano.lg.jp/cms/legcontents/hoyu_details.php?no=44050500>
甲第8号証:長野県工業技術総合センターから電子情報で送付された、甲第5号証の依頼申請書に基づきKobo Products, Inc.社製「RESOBEADS BG-1030」の「batch# PT180831」(Lot:PT180831)であるポリマー粒子について、(株)村上色彩技術研究所製のGP-200を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射率を測定した際に得られた、反射率(相対反射光強度)数値に係る測定データを印刷した書面、申立人A印刷、令和6年4月24日(印刷日)
甲第9号証:長野県工業技術総合センターから電子情報で送付されてきた、甲第5号証の依頼申請書に基づきKobo Products, Inc.社製「RESOBEADS BG-1030」の「batch#:PT180831」(Lot:PT180831)であるポリマー粒子について、(株)村上色彩技術研究所製のGP-200を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射率を測定した際に得られた、反射率(相対反射光強度)の測定データの直交座標及び極座標プロットを印刷した書面、申立人A印刷者、令和6年4月24日(印刷日)
甲第10号証:申立人Aが、甲第8号証及び甲第9号証に基づき、Kobo Products, Inc.社製「RESOBEADS BG-1030」の「batch# PT180831」(Lot:PT180831)であるポリマー粒子について、(株)村上色彩技術研究所製のGP-200を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射率を測定した際に得られた、反射率(相対反射光強度)数値に係る測定データを整理して作成した電子データを印刷した書面、申立人A印刷、令和6年4月24日(印刷日)
甲第11号証:国際公開第2017/195642号
甲第12号証:特開2021-66704号公報
甲第13号証:特開2016-222897号公報
(以下、それぞれ「甲1A」~「甲13A」のようにいう。)
(2)申立人Bが申立書に添付して提示した証拠方法
甲第1号証:国際公開第99/28350号
甲第2号証:特開2002-363291号公報
(以下、それぞれ「甲1B」、「甲2B」のようにいう。)
3 取消理由通知(決定の予告)の内容
令和7年1月27日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由は、次のとおりである。
取消理由1(新規性欠如):本件発明1~3、6、7は、甲第12Aに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1~3、6、7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
取消理由2(進歩性欠如):本件発明1~3、6、7は、甲第12Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~3、6、7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 令和7年5月29日付け取消理由通知の内容
令和7年5月29日付けの取消理由通知で通知した取消理由は、次のとおりである。
取消理由1(明確性要件違反)
本件特許の請求項4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(具体的な理由の概要)
請求項4には、「前記ポリエステル樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項3に記載のポリマー粒子。」と記載されているが、上記記載では、請求項4に係る発明が、生分解性高分子(A)を「ポリエステル系樹脂」のうち特定のものに限定した発明であるのか、それとも、「ポリエステル系樹脂」を選択肢としたまま、これを限定したものであるのか、いずれを意味するのか不明確である。
また、この取消理由通知において、本件特許の請求項1~3、6、7に係る特許については、令和7年1月27日付けの取消理由通知(決定の予告)で示した理由により取り消すべきものである点を付言した。
(以下、上記取消理由1を、令和7年1月27日付けの取消理由通知(決定の予告)の取消理由1と区別するため、「取消理由3」という。)
第5 当審の判断(本件発明1~3、6、7について)
当審合議体は、本件発明1~3、6、7に係る特許は、取消理由1及び2によって取り消すべきものと判断する。
1 甲12Aに記載された発明
甲12Aには、
「セルロースと、界面活性剤及び/又は水溶性高分子とを含む複合粒子であって、
前記界面活性剤及び/又は前記水溶性高分子の含有量が、前記セルロース100重量部に対して0.2~50重量部であり、
下記条件1を満たす、複合粒子。
条件1:乾式法により測定される複合粒子の平均粒子径DD50と、湿式法により測定される複合粒子の平均粒子径DW50の比(DD50/DW50)が、下記式(1)の関係を有する。
0.6≦(DD50/DW50)≦1.8 式(1)」
が記載されており(請求項1)、その具体例として実施例5が記載されている。
実施例5及び【0042】の吸油量の測定条件に着目すると、甲12Aには次の発明が記載されている。
「イオン交換水10000重量部と精製した木材パルプ由来のセルロース粉末(湿式法による平均粒子径25.2μm)100重量部と、界面活性剤であるソルビタンモノラウレートのエチレンオキサイド20モル付加物であるPOE(20)ソルビタンモノラウレート3重量部と、水溶性高分子であるタマリンドガム4重量部と、ポリエーテル変性シリコーン16重量部を含有した分散液をダイノミル装置にて処理して得られた処理液(pH6.6)をスプレードライヤー(入口温度;200℃、出口温度;80℃)にて噴霧乾燥して得られた、乾式法により測定される複合粒子の平均粒子径DD50が8.6μm、湿式法により測定される複合粒子の平均粒子径DW50が9.8μm、DD50/DW50が0.88であり、オレイン酸を用いて測定された吸油量が90ml/100gである、複合粒子。」(以下「甲12A発明」という。)
2 本件発明1について
(1)対比
甲12A発明と本件発明1を対比する。
甲12A発明の「セルロース粉末」は、本件明細書の【0013】に、「25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/ml」の「生分解性高分子(A)」の例として「セルロース」が記載されていることからみて、本件発明1の「25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/mlである」「生分解性高分子(A)」に相当する。
甲12A発明のセルロース粉末は、複合粒子を構成する全成分に対して約81.3重量%(=100×100/(100+3+4+16))含まれており、このことは本件発明1の「生分解性高分子(A)を50重量%~99.999重量%含有」することに相当する。
甲12A発明の「界面活性剤であるソルビタンモノラウレートのエチレンオキサイド20モル付加物であるPOE(20)ソルビタンモノラウレート」、「水溶性高分子であるタマリンドガム」は、それぞれ、本件発明1の「界面活性剤」、「水溶性高分子」に相当し、甲12A発明では、複合粒子を構成する全成分に対する、POE(20)ソルビタンモノラウレート及びタマリンドガムの重量割合は約5.7重量%(=100×(3+4)/(100+3+4+16))であるところ、これは本件発明1の「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」に相当する。
本件明細書の【0050】によれば、本件発明1の平均粒子径(D50)は湿式測定法で求められるものであるから、甲12A発明の「DW50が9.8μm」であることは、本件発明1の「平均粒子径が1~100μm」であることに相当する。
そうすると、両者は
「生分解性高分子(A)を50重量%~99.999重量%含有し、平均粒子径が1~100μmであるポリマー粒子であって、前記ポリマー粒子が界面活性剤及び水溶性高分子をさらに含有し、前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%であり、前記生分解性高分子(A)の25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/mlである、ポリマー粒子。」
である点において一致し、以下の点で一応相違する。
<一応の相違点>
本件発明1では、「下記式により算出される再帰反射率が1.0~2.1である
(式) 再帰反射率=(-40°の反射光強度)/(0°の反射光強度)
(但し、式中、-40°の反射光強度及び0°の反射光強度は、三次元変角光度計を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射光強度を測定した際の、-40°における反射光強度及び0°における反射光強度である。)」のに対し、甲12A発明では再帰反射率の値が不明な点
(2)一応の相違点についての判断
本件明細書の【0036】には、「本発明のポリマー粒子の製造方法は、生分解性高分子(A)と、界面活性剤と、水溶性高分子と、水とを混合し、予備混合液を得る工程1と、工程1で得られた予備混合液を加熱攪拌し、加熱分散液を得る工程2と、工程2で得られた加熱分散液を冷却する工程3とを含む、粒子の製造方法であると好ましい。」と記載されている。
甲12A発明では、複合粒子はセルロース粉末(生分解性高分子)、POE(20)ソルビタンモノラウレート(界面活性剤)、タマリンドガム(水溶性高分子)とを混合して処理液(予備混合液)を得る工程(上記の「工程1」に相当)と、処理液をスプレードライヤー(入口温度;200℃、出口温度;80℃)にて噴霧乾燥する工程により得られるものであり、噴霧乾燥工程においてもスプレードライヤーによる加熱と冷却(出口後)が行われることから、噴霧乾燥工程は上記工程2及び3に類似する工程であるといえ、全体として本件明細書の【0036】に記載された工程1~3と類似する工程で製造されたものである。
また、本件明細書の【0023】には、再帰反射率が1.0未満であると透明性に劣り、再帰反射率が2.1超であると光乱反射性に劣ること、再帰反射率の値は透明性及び光乱反射性と相関することが記載され、【0032】にはポリマー粒子に占める界面活性剤及び水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%であると光乱反射性に優れることが、また、【0038】には、ノニオン界面活性剤および/又はアニオン界面活性剤を使用すると光乱反射性が優れ、エステル型やエステル塩型の界面活性剤を使用すると透明性に優れることが記載されるところ、甲12A発明ではノニオンかつエステル型の界面活性剤である「POE(20)ソルビタンモノラウレート」を用い、かつ本件発明1の「ポリマー粒子に占める界面活性剤及び水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%である」という要件を満たすものである。
これらのことを考慮すると、甲12A発明の複合粒子は、その再帰反射率を測定すれば、本件発明1で特定される要件を満たす蓋然性が高いといえるから、上記一応の相違点は実質的な相違点ではない。
また、甲12A発明は、甲12Aの実施例5を基に認定したものであるが、甲12Aには、セルロースと界面活性剤及び水溶性高分子を含む複合粒子が記載され(請求項1)、界面活性剤及び水溶性高分子についても種々の記載があるから、本件発明1は、甲12Aの実施例5以外の記載から認定される引用発明に基づいても、その界面活性剤及び水溶性高分子を置き換えることにより当業者が容易に発明をすることができたものであるといえ、その再帰反射率を測定すれば、本件発明1で特定される要件を満たす蓋然性が高い。
(3)本件発明1についてのまとめ
したがって、本件発明1は甲12Aに記載された発明であるか、又は甲12Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1に係る特許は特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 本件発明2、3、6、7について
本件発明2について、甲12A発明は「オレイン酸を用いて測定された吸油量が90ml/100g」であり、本件発明2の「オレイン酸吸油量が30~150ml/g」を満たす。
本件発明3について、甲12A発明は生分解性高分子としてセルロースを用いている。
本件発明6、7について、甲12Aには、甲12A発明の複合粒子を肌上に塗布した際にしっとり感や滑り性等の評価が良好であることが記載され(【0045】、【0056】)、甲12A発明の複合粒子が化粧料、塗料用改質剤として用いられることも記載されている(【0058】)から、甲12Aには、甲12A発明の複合粒子を含む化粧料又はコーティング組成物も記載されているといえる。
したがって、本件発明2、3、6、7は甲12Aに記載された発明であるか、又は甲12Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2、3、6、7に係る特許は特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 当審の判断(本件発明4、5について)
当審合議体は、本件発明4に係る特許は、申立理由1A~11A、2B~4B、取消理由3によっては取り消すことができないものと判断する。
また、本件特許の請求項5は、上記のとおり本件訂正の請求により削除され、請求項5に係る特許に対する申立人による特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
以下、本件発明4について、取消理由3、申立理由1A~11A、2B~4Bを順に検討する。
1 本件発明4について
本件発明4は本件発明3を引用するものであり、本件発明3は本件発明1又は2を引用するものである。そして、本件発明2は本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明3のうち、本件発明1を引用する部分は、本件発明2を引用する部分の範囲も包含しているといえる。
そうすると、本件発明4は、本件発明3が本件発明1を引用する部分を書き下すことで表すことができ、以下のとおりとなる。
「生分解性高分子(A)を50重量%~99.999重量%含有し、平均粒子径が1~100μmであり、下記式により算出される再帰反射率が1.0~2.1である、ポリマー粒子であって、前記ポリマー粒子が界面活性剤及び水溶性高分子をさらに含有し、前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%であり、前記生分解性高分子(A)の25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/mlであり、
前記生分解性高分子(A)が、セルロース、セルロース系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記生分解性高分子(A)が前記ポリエステル系樹脂を含み、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、ポリマー粒子。
(式) 再帰反射率=(-40°の反射光強度)/(0°の反射光強度)
(但し、式中、-40°の反射光強度及び0°の反射光強度は、三次元変角光度計を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射光強度を測定した際の、-40°における反射光強度及び0°における反射光強度である。)」
(以下、これを改めて「本件発明4」という。)
2 取消理由3(明確性要件違反)、申立理由11A(明確性要件違反)について
取消理由3、申立理由11Aは、いずれも明確性要件違反をいうものであるから、まとめて検討する。
(1)取消理由3についての検討
取消理由3の概要は、第4の4で示したとおりである。
しかし、訂正後の本件発明4は「前記生分解性高分子(A)が前記ポリエステル系樹脂を含み、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む」と規定されているから、生分解性高分子(A)が特定のポリエステル系樹脂を含むものであることが明確となった。
また、本件発明4には、その他の不明確な点は見いだせない。
したがって、本件発明4は明確である。
(2)申立人Aの主張についての検討
申立人Aは、第4の1(1)申立理由11Aで示した点を主張する。
しかし、本件発明4の「再帰反射率」は、本件発明4の式で特定されるとおりであり、その具体的な測定方法も本件明細書の【0051】に記載されているから、その特定が不明確であるとはいえない。
また、生分解性高分子の含有量と平均粒子径を特定の範囲にすること以外にどのような要件、構成等を備えれば、再帰反射率が1.0~2.1という要件を満たすことが可能になるのか、課題を解決するための手段が一切何も規定されていないという点は、「再帰反射率」の定義が明確である以上、そのことが直ちに明確性要件違反となるものではないし、下記8(4)で示すように、「再帰反射率が1.0~2.1」との要件を満たすための構成は、「生分解性高分子(A)」、「界面活性剤」、「水溶性高分子」を含有し、「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」であり、「平均粒子径が1~100μm」とすることであると認められ、本件発明4はそのような構成を満たすものである。
したがって、申立人Aの主張は採用することができない。
(3)取消理由3、申立理由11Aについてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明4は特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものではないから、取消理由3、申立理由11Aによっては本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由1A(甲1A~甲10Aによる新規性欠如(特許法第29条第1項第1号該当))、2A(甲1A~甲10Aによる新規性欠如(同法同条同項第2号該当))について
申立理由1A、2Aは、いずれも甲1A~甲10Aに基づく新規性欠如(特許法第29条第1項第1号又は第2号該当)をいうものであるから、まとめて検討する。
(1)引用発明
甲1A(page 1/7, 項目1)の記載によれば、少なくとも、本件特許の出願前である2018年8月15日の時点で、KOBO PRODUCTS,INC.により、製品名「RESOBEADS BG-1030」なる化粧品添加剤が販売されていた事実が認められる。
そして、「RESOBEADS BG-1030」の「Lot:PT180831」は、甲3Aによれば、「Polybutylene Succinate」(ポリブチレンサクシネート)のFine White Powder(白色粉末)であり、メジアン径が最小5μm~最大9μmであり、試験結果(Test Results)が7.5μmであることから、白色「微粒子」であると認められる。また、その製造日は本件特許の出願前である2018年9月4日である。
「RESOBEADS BG-1030」の「Lot:PT180831」は、その製造日が2018年9月4日であることや、甲1Aの記載からみて、遅くとも本件特許の出願日である令和4年7月14日より前には不特定者に販売(すなわち公然実施)されていたものと認められるから、「RESOBEADS BG-1030」の「Lot:PT180831」に着目すると、以下の発明が、本件特許の出願前に公然実施をされたことが認められる。
「製品名RESOBEADS BG-1030、製品番号Lot:PT180831であり、化粧品添加剤として使用される、メジアン径が最小値5μm、最大値9μm、試験結果7.5μmのポリブチレンサクシネートの白色微粒子」(以下、「引用発明」という。)
(2)対比
本件発明4と引用発明を対比する。
引用発明の「ポリブチレンサクシネート」は本件発明4の「生分解性高分子」、「ポリエステル系樹脂」、「脂肪族ポリエステル系樹脂」に相当する。
引用発明の「ポリブチレンサクシネートの白色微粒子」は、本件発明4の「ポリマー粒子」に相当する。
そうすると、両者は
「生分解性高分子を含有し、
前記生分解性高分子(A)が、セルロース、セルロース系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記生分解性高分子(A)が前記ポリエステル系樹脂を含み、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、ポリマー粒子。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
「ポリマー粒子」中の「生分解性高分子(A)」の含有割合が、本件発明4では「50重量%~99.999重量%」であるのに対し、引用発明ではその割合が不明な点
<相違点1-2>
「ポリマー粒子」の「平均粒子径」が、本件発明4では「1~100μm」であるのに対し、引用発明では「メジアン径が最小値5μm、最大値9μm、試験結果7.5μm」である点
<相違点1-3>
「ポリマー粒子」が、本件発明4では「界面活性剤及び水溶性高分子をさらに含有し、前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」であるのに対し、引用発明ではそのことが不明な点
<相違点1-4>
「生分解性高分子(A)」が、本件発明4では「25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/mlである」のに対し、引用発明ではそのことが不明な点
<相違点1-5>
「ポリマー粒子」の「下記式により算出される再帰反射率
(式) 再帰反射率=(-40°の反射光強度)/(0°の反射光強度)
(但し、式中、-40°の反射光強度及び0°の反射光強度は、三次元変角光度計を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射光強度を測定した際の、-40°における反射光強度及び0°における反射光強度である。)」が、本件発明4では「1.0~2.1」であるのに対し、引用発明では再帰反射率の値が不明な点
(3)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1-3について検討する。
甲1A~甲10Aのいずれにも、引用発明の「製品名RESOBEADS BG-1030、製品番号Lot:PT180831」であるポリブチレンサクシネート白色微粒子が、「界面活性剤及び水溶性高分子をさらに含有し、前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」であることは記載されていない。
そうすると、相違点1-3は実質的な相違点であるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は本件特許の出願前に公然知られた発明であるとも、また公然実施された発明であるともいえない。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明4は特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当するものではなく、申立理由1A、2Aによっては本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由3A(甲11Aによる新規性欠如)、4A(甲11Aによる進歩性欠如)について
申立理由3A、4Aは、いずれも甲11Aを主引用文献とするものであるから、まとめて検討する。
(1)甲11Aに記載された発明
甲11Aには、
「脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を含む化粧料であって、
前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子は、体積平均粒子径が2~30μmであり、かつ粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下、粒子径30μmを超える粒子の割合が6体積%以下の粒子である、化粧料。」
が記載されており(請求項1)、その化粧料に含まれる脂肪族ポリエステル系樹脂粒子の具体例として製造例1が記載されている。
製造例1に着目すると、甲11Aには次の発明が記載されている。
「以下の製造例1によって得られた、体積平均粒子径が11.9μm、粒子径1μm未満の粒子の割合が2.0体積%、粒子径30μmを超える粒子の割合が0.4体積%であり、10%変位圧縮強度が6MPa(デュロメーター固さ(ショアD)60)、円形度96である、脂肪族ポリエステル樹脂の球状粒子。
<製造例1>
300mL容の撹拌機付き耐圧容器に脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリブチレンサクシネート、デュロメーター固さ(ショアD)60)100g、重量平均分子量15500のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(株式会社ADEKAの商品名:プルロニックF108)15gおよび水135gを仕込み密閉した。引き続き、毎分500回転で撹拌しながら、180℃まで昇温し、容器内を180℃に保って撹拌した後、50℃まで冷却して脂肪族ポリエステル系樹脂の水分散体を取り出した。以上の一連の操作においては、脂肪族ポリエステル系樹脂に100℃以上の熱履歴が加わる時間を30分程度以下に制御した。上記で得られた水分散体を濾過、乾燥および分級処理を実施し、脂肪族ポリエステル系樹脂の球状粒子を得た。」
(以下「甲11A発明」という。)
(2)対比
本件発明4と甲11A発明を対比する。
甲11A発明の「ポリブチレンサクシネート」である「脂肪族ポリエステル系樹脂」は本件発明4の「生分解性高分子」、「ポリエステル系樹脂」、「脂肪族ポリエステル系樹脂」に相当する。
甲11A発明の「脂肪族ポリエステル系樹脂の球状粒子」は、本件発明4の「ポリマー粒子」に相当する。
甲11A発明の「エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体」は、本件発明4の「水溶性高分子」に相当する。
そうすると、両者は
「生分解性高分子を含有するポリマー粒子であって、
前記ポリマー粒子が水溶性高分子をさらに含有し、
前記生分解性高分子(A)が、セルロース、セルロース系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記生分解性高分子(A)が前記ポリエステル系樹脂を含み、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、ポリマー粒子。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
「ポリマー粒子」中の「生分解性高分子(A)」の含有割合が、本件発明4では「50重量%~99.999重量%」であるのに対し、甲11A発明ではその割合が不明な点
<相違点2-2>
「ポリマー粒子」の「平均粒子径」が、本件発明4では「1~100μm」であるのに対し、甲11A発明では「体積平均粒子径が11.9μm」である点
<相違点2-3>
「ポリマー粒子」が、本件発明4では「界面活性剤をさらに含有」し、「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」であるのに対し、甲11A発明では界面活性剤を含まず、界面活性剤と水溶性高分子の合計の重量割合も不明な点
<相違点2-4>
「生分解性高分子(A)」が、本件発明4では「25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/mlである」のに対し、甲11A発明ではそのことが不明な点
<相違点2-5>
「ポリマー粒子」の「下記式により算出される再帰反射率
(式) 再帰反射率=(-40°の反射光強度)/(0°の反射光強度)
(但し、式中、-40°の反射光強度及び0°の反射光強度は、三次元変角光度計を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射光強度を測定した際の、-40°における反射光強度及び0°における反射光強度である。)」が、本件発明4では「1.0~2.1」であるのに対し、甲11A発明では再帰反射率の値が不明な点
(3)相違点についての判断
甲11A発明は界面活性剤を含まないから、少なくとも相違点2-3は実質的な相違点である。
したがって、本件発明4は甲11Aに記載された発明ではない。
次に進歩性について検討する。
事案に鑑み、相違点2-3及び2-5を併せて検討する。
本件明細書の【0036】には、「本発明のポリマー粒子の製造方法は、生分解性高分子(A)と、界面活性剤と、水溶性高分子と、水とを混合し、予備混合液を得る工程1と、工程1で得られた予備混合液を加熱攪拌し、加熱分散液を得る工程2と、工程2で得られた加熱分散液を冷却する工程3とを含む、粒子の製造方法であると好ましい。」と記載されている。
また、本件明細書の【0023】には、再帰反射率が1.0未満であると透明性に劣り、再帰反射率が2.1超であると光乱反射性に劣ることが記載され、再帰反射率の値は透明性及び光乱反射性と相関することが記載され、【0032】にはポリマー粒子に占める界面活性剤及び水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%であると光乱反射性に優れることが記載されている。
そして、本件明細書には、本件発明4のポリマー粒子の具体的製造例として実施例1~8が記載されているところ、これらは全て【0036】に記載された方法によって製造され、ポリマー粒子中に「界面活性剤」及び「水溶性高分子」を含有し、両者の合計の重量割合が「0.001~10重量%」の範囲内のものであり、そのような実施例1~8のポリマー粒子の再帰反射率が「1.01」(実施例7)~「1.55」(実施例1)であることが示されている。
一方、比較例3では、実施例1と同様に生分解性高分子(A)として「ポリブチレンサクシネート」を用いているものの、【0036】に記載された方法とは異なり、「界面活性剤」及び「水溶性高分子」を用いずに粒子を製造した結果、得られたポリマー粒子の再帰反射率は「0.89」であり、本件発明4の「1.0~2.1」の範囲外になったことが示されている。
そして、本件明細書の【0020】には「本発明のポリマー粒子は、平均粒子径が1~100μmである。該平均粒子径が1μm未満であると、透明性に劣る。一方、100μm超であると、光乱反射性が劣る。」と記載されているものの、比較例3の結果を考慮すると、平均粒子径が「18.5μm」のポリマー粒子であっても、【0036】に記載された方法によって製造されない場合、すなわち、ポリマー粒子が「界面活性剤」及び「水溶性高分子」を含まない場合には、再帰反射率が「1.0~2.1」の範囲外になることが理解できる。
以上のことを考慮すると、相違点2-5の構成を満たすためには、相違点2-3の構成を満たす必要があるものと認められるところ、甲11A発明のポリマー粒子は「界面活性剤」を含まず、かつ「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」でもないから、再帰反射率が「1.0~2.1」の範囲内であるとはいえない。
そして、甲11Aには、再帰反射率を「1.0~2.1」の範囲内とすることについて記載がないし、ポリマー粒子が「水溶性高分子」に加えて「界面活性剤」を含有し、かつ「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」とすることで、再帰反射率が「1.0~2.1」となり、透明性と光乱反射性が向上することも記載されていない。
そうすると、甲11A発明において、相違点2-3及び2-5の構成を採用することは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(4)申立人の主張について
申立人Aは、令和6年11月18日提出の意見書において、
「甲11A発明に係る脂肪族ポリエステル系樹脂粒子は、分散剤又は乳化剤として水溶性高分子を含有しており、ここで、分散剤又は乳化剤は、界面活性作用を有するものであることが技術的に明らかである。これより、甲11A発明に係る脂肪族ポリエステル系樹脂粒子は、界面活性剤及び水溶性高分子をさらに含有するものということができ、そして、その含有量は、ポリマー粒子に占める重量割合として0.001~10重量%の範囲内にあるものといえる。」(意見書4頁3~8行)と主張する。
しかし、甲11Aの[0013]には「前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を製造する際には、分散剤又は乳化剤として水溶性高分子を使用することもできる。」と記載され、その水溶性高分子の例として、甲11A発明で用いられている「エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体」が挙げられているものの、これらは「水溶性高分子」にすぎず、「界面活性剤」ではないから、甲11Aの[0013]の記載を考慮しても、甲11A発明において、さらに「界面活性剤」を併用し、かつ「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」とすることが動機付けられるとはいえない。
また、「分散剤又は乳化剤」として界面活性剤が使用されることが当業者の技術常識であるとしても、甲11A発明のポリマー粒子が「水溶性高分子」に加えて「界面活性剤」を含有し、かつ「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」とすることで、再帰反射率が「1.0~2.1」となり、その結果透明性と光乱反射性が向上することは甲11Aには記載されていないし、そのようなことが本件特許出願時の技術常識から当業者が予測できるものともいえない。
したがって、申立人Aの主張は採用することができない。
(5)申立理由3A、4Aについてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明4は甲11Aに記載された発明であるとも、またその発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、本件発明4に係る特許は特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由3A、4Aによっては本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由5A(甲12Aによる新規性欠如)、6A(甲12Aによる進歩性欠如)について
申立理由5A、6Aは、いずれも甲12Aを主引用文献とするものであるから、まとめて検討する。
(1)対比
甲12Aに記載された発明(甲12A発明)は、上記第5の1で示したとおりであり、上記第5の2で検討した点もふまえて本件発明4と甲12A発明を対比すると、両者は以下の点で相違する。
<相違点>
「生分解性高分子(A)」が、本件発明4では「セルロース、セルロース系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み、前記生分解性高分子(A)が前記ポリエステル系樹脂を含み、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む」ものであるのに対し、甲12A発明では「セルロース」を含むものの、「脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種」を含まない点
(2)相違点についての判断
甲12A発明は「脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種」を含まないから、この点は実質的な相違点である。
したがって、本件発明4は甲12Aに記載された発明ではない。
次に進歩性について検討する。
甲12A発明は、甲12Aの請求項1に記載されるように、「セルロース」を含む複合粒子であり、その【0002】に「なかでもセルロース粉末は、自然由来の原料であり、安全性が高く、ソフトな感触から、化粧用配合剤として使用されている。しかし、セルロース粉末は・・・形状として繊維状、またはいびつな形状をしており、肌上でのすべり性に劣るものであった。」、「しかし、これらの方法において製造されたセルロース粉体は表面が処理剤により覆われており、セルロースの特徴である保水性を損なうため、しっとりとした粉感に劣るものであった。」と記載され、【0001】に「本発明は、肌上でのすべり性及び肌上でのしっとり感に優れ、皮膚感覚が良好な複合粒子及びその製造方法に関する。」と記載されるように、「セルロース」を用いて複合粒子を製造することにより、セルロースが有する安全性、ソフトな感触、しっとりとした粉感に加えて、肌上でのすべり性を向上させることを前提とすることを技術思想とする発明である。
そして、甲12Aには、甲12A発明の複合粒子が「脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種」を含むことについて何らの記載もない。
そうすると、甲12A発明において、その技術思想を無視して、「セルロース」を「脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種」に置き換えることや、「セルロース」を残したまま、セルロースとは異なる性質を有する「脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種」を配合することは、当業者が動機付けられることではなく、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(3)申立人の主張について
申立人Aは、令和6年11月18日提出の意見書において、訂正後の本件発明1は甲12Aに記載された発明であるか、その発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正後の本件発明1を引用する本件発明4についても同様の理由で取り消すべきである旨主張する(意見書7頁1~11行)。
しかし、申立人Aは、申立書の52頁項目dでは、甲12Aに対し何ら主張をしておらず、意見書では、上記のとおり主張しているが、本件発明4の特定事項については、何ら具体的な主張をしていない。
したがって、申立人Aの主張は採用することができない。
(4)申立理由5A、6Aについてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明4は甲12Aに記載された発明であるとも、また、甲12Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、本件発明4に係る特許は特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由5A、6Aによっては本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。
6 申立理由7A(甲13Aによる新規性欠如)、8A(甲13Aによる進歩性欠如)について
申立理由7A、8Aは、いずれも甲13Aを主引用文献とするものであるから、まとめて検討する。
(1)甲13Aに記載された発明
甲13Aには、「真球度が0.90~1.00、かつ光散乱指数が0.5~1.0、かつアマニ油吸油量が30~150mL/100gである熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。」が記載されており(請求項1)、その具体例として実施例1が記載されている。
実施例1に着目し、【0033】~【0035】、【0042】、【0055】の【表1】の記載も考慮すると、甲13Aには次の発明が記載されている。
「以下の方法で得られ、ポリブチレンサクシネートを含み、真球度が0.98、体積平均粒子径が20μm、CV値が57.2、アマニ油吸油量が125mL/100g、散乱光強度が0℃で84.72、45°で95.13、光散乱指数が0.89の略球状樹脂粒子。
(方法)
300mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R) 品番:FZ71PD)を20g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)60g、イオン交換水100g、分散剤として10%第三リン酸カルシウム水溶液(太平化学産業社製TCP-10U)20g、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.24gを投入し、反応温度(加熱撹拌温度)120℃、撹拌回転数400rpmにて90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。」
(2)対比
本件発明4と甲13A発明を対比する。
甲13A発明の「ポリブチレンサクシネート」は本件発明4の「生分解性高分子」、「ポリエステル系樹脂」、「脂肪族ポリエステル系樹脂」に相当する。
甲13A発明の「略球状樹脂粒子」は、本件発明4の「ポリマー粒子」に相当する。
甲13A発明の「ラウリル硫酸ナトリウム」は、本件発明4の「界面活性剤」に相当する。
そうすると、両者は
「生分解性高分子を含有するポリマー粒子であって、
前記ポリマー粒子が界面活性剤をさらに含有し、
前記生分解性高分子(A)が、セルロース、セルロース系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記生分解性高分子(A)が前記ポリエステル系樹脂を含み、
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、ポリマー粒子。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
「ポリマー粒子」中の「生分解性高分子(A)」の含有割合が、本件発明4では「50重量%~99.999重量%」であるのに対し、甲13A発明ではその割合が不明な点
<相違点3-2>
「ポリマー粒子」の「平均粒子径」が、本件発明4では「1~100μm」であるのに対し、甲13A発明では「体積平均粒子径が20μm」である点
<相違点3-3>
「ポリマー粒子」が、本件発明4では「水溶性高分子をさらに含有」し、「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」であるのに対し、甲13A発明では水溶性高分子を含まず、界面活性剤と水溶性高分子の合計の重量割合も不明な点
<相違点3-4>
「生分解性高分子(A)」が、本件発明4では「25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/mlである」のに対し、甲13A発明ではそのことが不明な点
<相違点3-5>
「ポリマー粒子」の「下記式により算出される再帰反射率
(式) 再帰反射率=(-40°の反射光強度)/(0°の反射光強度)
(但し、式中、-40°の反射光強度及び0°の反射光強度は、三次元変角光度計を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射光強度を測定した際の、-40°における反射光強度及び0°における反射光強度である。)」が、本件発明4では「1.0~2.1」であるのに対し、甲13A発明では再帰反射率の値が不明な点
(3)相違点についての判断
甲13A発明は水溶性高分子を含まないから、少なくとも相違点3-3は実質的な相違点である。
したがって、本件発明4は甲13Aに記載された発明ではない。
次に進歩性について検討する。
事案に鑑み、相違点3-3及び3-5を併せて検討する。
上記4(3)で述べたのと同様の理由により、相違点3-5の構成を満たすためには、相違点3-3の構成を満たす必要があるものと認められるところ、甲13A発明のポリマー粒子は「水溶性高分子」を含まず、かつ「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」でもないから、再帰反射率が「1.0~2.1」の範囲内であるとはいえない。
そして、甲13Aには、再帰反射率を「1.0~2.1」の範囲内とすることについて記載がないし、ポリマー粒子が「界面活性剤」に加えて「水溶性高分子」を含有し、かつ「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」とすることで、再帰反射率が「1.0~2.1」となり、透明性と光乱反射性が向上することも記載されていない。
そうすると、甲13A発明において、相違点3-3及び3-5の構成を採用することは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(4)申立人の主張について
申立人Aは、申立書において、ポリブチレンサクシネート樹脂である「RESOBEADS BG-1030」の「Lot:PT180831」における樹脂粉末が、本件発明1~4の再帰反射率を満たし(申立書42~43頁)、その樹脂粉末がいずれも甲13Aの(請求項1に規定される)光散乱指数を満たすものであるから、甲13Aに記載された略球状樹脂粒子は、上記「RESOBEADS BG-1030」の「Lot:PT180831」における樹脂粉末と同様に、本件発明1~4における再帰反射率を満たすと推認される旨主張する(申立書49~51頁の項目(c)「甲13」)。
しかし、本件明細書の実施例1と比較例3の結果からも理解できるように、「ポリブチレンサクシネート」という樹脂を用いても、構成成分(界面活性剤や水溶性高分子)や製造方法が異なれば、再帰反射率の値が同じになるとはいえないから、ポリブチレンサクシネート樹脂である「RESOBEADS BG-1030」の「Lot:PT180831」における樹脂粉末が、本件発明4の再帰反射率を満たし、かつ、それが甲13Aの光散乱指数を満たすというだけでは、必ずしも甲13A発明の略球状樹脂粒子が本件発明4の再帰反射率を満たすことにはならないし、上記(3)で述べたように、甲13Aには甲13A発明の粒子がさらに水溶性高分子を含むことの記載もない。
よって、申立人Aの主張は採用することができない。
(5)申立理由7A、8Aについてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明4は甲13Aに記載された発明であるとも、また、甲13Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、本件発明4に係る特許は特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由7A、8Aによっては本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。
7 申立理由2B(甲1Bを主引用文献とする進歩性欠如)について
(1)甲1Bに記載された発明
甲1Bには、「セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下でセルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であるセルロースと分散媒体とを含む分散体であり、かつ構成するセルロースの平均粒子径が5μm以下であるセルロース分散体。」が記載されており(請求項1)、その具体例として実施例6のS6A試料が記載されている。
S6A試料は複合セルロース分散体であり、水に複合セルロース粒子が分散したものであるところ、そこに含まれる複合セルロース粒子に着目すると、甲1Bには次の発明が記載されている。
「下記<S1試料の調製>で得られたS1試料を水で希釈すると同時に,予め調製したヒドロキシエチルセルロース(HEC;東京化成工業(株)製 4,500~ 6,500cps.(2%水溶液,25℃)の2%水溶液を添加し、セルロース濃度1.0%,HEC濃度1.0%の複合化されたセルロース分散体を調製した後、これをプレンダ一にて15,000rpmの回転速度で3分間処理し、更に超高圧ホモジナイザーで1回、高度粉砕処理を行って得られた、透過率87%の高粘性のゲル状物質の複合セルロース分散体に含まれる複合セルロース粒子。
<S1試料の調製>
パルプシ一トを5mm×5mmのチップに切断した重合度760の木材パルプを、-5℃で65%硫酸水溶液にセルロース濃度が5%になるように150rpmの撹拌条件下で10分間溶解してセルロースドープを得た。ドープは、透明で均一で溶解斑は観察されなかった。このセルロースドープを、重量で2.5倍量の水中(5℃)に撹拌しながら注ぎ、セルロースをフロック状に凝集させ懸濁液を得た。この懸濁液を85℃で20分間加水分解し、次いで洗液のpHが4以上になるまで十分に水洗と減圧脱水を繰り返し、セルロース濃度約 6%の白色かつ透明性を帯びたゲル状物を得た。このゲル状物を家庭用フードプロセッサー(ナイフカッター)で3分間混合均一化処理した試料をS1試料とする。
S1試料のセルロースは、平均重合度が38、結晶化度は、χIが0、χIIが0.28、平均粒子径が2.3μm、かつ分散体の透過率が56%であった。」
(以下「甲1B発明」という。)
(2)対比
本件発明4と甲1B発明を対比する。
甲1B発明の「セルロース」は本件発明4の「生分解性高分子」に相当する。
甲1B発明の「複合セルロース粒子」は、本件発明4の「ポリマー粒子」に相当する。
甲1B発明の「ヒドロキシエチルセルロース」は、本件明細書の【0029】の記載からみて、本件発明4の「水溶性高分子」に相当する。
そうすると、両者は
「生分解性高分子を含有するポリマー粒子であって、
前記ポリマー粒子が水溶性高分子をさらに含有し、
前記生分解性高分子(A)が、セルロース、セルロース系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、
ポリマー粒子。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点4-1>
「ポリマー粒子」中の「生分解性高分子(A)」の含有割合が、本件発明4では「50重量%~99.999重量%」であるのに対し、甲1B発明ではその割合が不明な点
<相違点4-2>
「ポリマー粒子」が、本件発明4では「平均粒子径が1~100μm」であるのに対し、甲1B発明では複合セルロース粒子を製造するための原料の「S1試料のセルロース」の「平均粒子径」が2.3μmであるものの、複合セルロース粒子の平均粒子径は不明な点
<相違点4-3>
「ポリマー粒子」が、本件発明4では「界面活性剤をさらに含有」し、「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」であるのに対し、甲1B発明では界面活性剤を含まず、界面活性剤と水溶性高分子の合計の重量割合も不明な点
<相違点4-4>
「生分解性高分子(A)」が、本件発明4では「前記ポリエステル系樹脂を含み、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む」ものであり、かつ、「25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/mlである」のに対し、甲1B発明では「セルロース」であり、25℃における水への溶解度も不明な点
<相違点4-5>
「ポリマー粒子」の「下記式により算出される再帰反射率
(式) 再帰反射率=(-40°の反射光強度)/(0°の反射光強度)
(但し、式中、-40°の反射光強度及び0°の反射光強度は、三次元変角光度計を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射光強度を測定した際の、-40°における反射光強度及び0°における反射光強度である。)」が、本件発明4では「1.0~2.1」であるのに対し、甲1B発明では再帰反射率の値が不明な点
(3)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点4-4について検討する。
甲1B発明は、甲1Bの請求項1に記載されるように、「セルロース分散体」に含まれる複合セルロース粒子に関するものであり、甲1Bの7頁12~14行に「本発明の目的は、複合系中での水溶性高分子に匹敵するレベルの高度な分散安定性、及び透明性を有する、より広範な産業分野に適用できるセルロース分散体、複合セルロース分散体及びそれらの製造方法を提供することにある。」と記載されるように、「セルロース分散体」を前提とすることを技術思想とする発明である。
そして、甲1Bには、セルロース分散体に脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂を配合することについて記載も示唆もない。
そうすると、甲1B発明において、その技術思想を無視して、「複合セルロース粒子」に含まれるセルロースを「脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種」に置き換えることや、「セルロース」を残したまま、セルロースとは異なる性質を有する「脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種」を配合することは、当業者が動機付けられることではなく、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、甲1B発明において、相違点4-4の構成を採用することは当業者が容易に想到することではなく、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は甲1Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立理由2Bについてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明4は甲1Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由2Bによっては本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。
8 申立理由9A(サポート要件違反)、3B(サポート要件違反)について
申立理由9A、3Bは、いずれもサポート要件違反をいうものであるから、まとめて検討する。
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照)。
(2)本件発明4が解決しようとする課題
本件発明4が解決しようとする課題は、本件明細書の【0004】の記載からみて、「透明性及び光乱反射性を両立できるポリマー粒子を提供すること」であると認められる。
(3)検討
本件明細書には、次の記載がある。下線は当審において付したものである。
「【0023】
本発明のポリマー粒子は、再帰反射率が1.0~2.1である。該再帰反射率が1.0未満であると透明性に劣る。一方、該再帰反射率が2.1超であると光乱反射性に劣る。該再帰反射率の下限は、好ましくは1.05、より好ましくは1.10、さらに好ましくは1.15、最も好ましくは1.20である。再帰反射率の上限は、好ましくは2.05、より好ましくは2.00、さらに好ましくは1.95、最も好ましくは1.90である。なお、再帰反射率は、実施例に記載の方法によるものである。
【0024】
再帰反射率が1.0~2.1であることで透明性と光乱反射性に優れる理由は、再帰反射光が拡散反射光よりも強いことで、光源方向への光が強く反射され、視覚的に透明度が高くなるとともに、再帰反射光と拡散反射光のバランスが保たれることで、視覚で捉える光として、透明性と光乱反射性が両立すると考える。」
上記記載によると、「再帰反射率が1.0~2.1」であることにより、透明性と光乱反射性に優れることが理解できる。
そして、本件明細書には、「再帰反射率が1.0~2.1」である本件発明4のポリマー粒子を製造するための具体的な方法として、【0036】に「本発明のポリマー粒子の製造方法は、生分解性高分子(A)と、界面活性剤と、水溶性高分子と、水とを混合し、予備混合液を得る工程1と、工程1で得られた予備混合液を加熱攪拌し、加熱分散液を得る工程2と、工程2で得られた加熱分散液を冷却する工程3とを含む、粒子の製造方法であると好ましい。」と記載されており、水は分散媒であって最後に除去されることを考慮すると、その方法によれば、得られるポリマー粒子が「生分解性高分子」、「界面活性剤」、「水溶性高分子」を含有することは明らかである。
さらに、本件明細書には、「透明性」と「光乱反射性」に関する記載として、【0032】に「本発明のポリマー粒子は、特に限定されないが、界面活性剤および水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種をさらに含有し、ポリマー粒子に占める界面活性剤及び水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%であると、光乱反射性に優れるため好ましい。」と記載され、【0020】には「本発明のポリマー粒子は、平均粒子径が1~100μmである。該平均粒子径が1μm未満であると、透明性に劣る。一方、100μm超であると、光乱反射性が劣る。」と記載されている。
ここで、本件発明4は、「生分解性高分子(A)」、「界面活性剤」、「水溶性高分子」を含有し、「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」であり、「平均粒子径が1~100μm」であり、「再帰反射率が1.0~2.1」という要件を満たすものであり、本件明細書には、本件発明4の構成要件を満たす実施例1~8と、比較例1~3が記載され、比較例1は市販のポリマー粒子で再帰反射率が2.1を上回り、光乱反射性の評価が「×」であり、比較例2は市販のポリマー粒子で再帰反射率が1.0を下回り、透明性の評価が「×」であり、比較例3は生分解性高分子(A)を含むものの、【0036】に記載された方法とは異なる方法で製造され、「界面活性剤」及び「水溶性高分子」を含まず、再帰反射率が1.0を下回るもので、透明性の評価が「×」となっている。
これらの結果を考慮すると、「生分解性高分子(A)」、「界面活性剤」、「水溶性高分子」を含有し、「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」であり、「平均粒子径が1~100μm」であり、「再帰反射率が1.0~2.1」という要件を満たす本件発明4のポリマー粒子であれば、本件発明の課題を解決できるものと認められる。
(4)申立人の主張について
申立人Aは、第4の1(1)申立理由9Aで示した点を主張する。
その点について検討すると、上記のとおり、【0036】に記載された方法によって得られる粒子は、生分解性高分子(A)に加えて、「界面活性剤」及び「水溶性高分子」を含むものであり、本件発明4はそのような特徴を有するものであるし、「再帰反射率が1.0~2.1」との要件を満たすための構成も、「生分解性高分子(A)」、「界面活性剤」、「水溶性高分子」を含有し、「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」であり、「平均粒子径が1~100μm」とすることであると認められ、本件発明4はそのような構成を満たすものである。
したがって、申立人Aの主張は採用することができない。
申立人Bは、第4の1(2)申立理由3Bで示した点を主張する。
その点について検討すると、上記のとおり、「再帰反射率が1.0~2.1である」との数値範囲と得られる効果である「透明性」との関係の技術的な意味は、本件明細書の【0024】に記載されている。
また、上記のとおり、「再帰反射率が1.0~2.1である」との要件を満たすための構成は、「生分解性高分子(A)」、「界面活性剤」、「水溶性高分子」を含有し、「前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%」であり、「平均粒子径が1~100μm」とすることであることと認められ、本件発明4はそのような構成を満たすものである。
そして、エステル型やエステル塩型の界面活性剤は、本件明細書の【0038】に「エステル型やエステル塩型の界面活性剤を使用すると、得られる粒子の透明性が優れるため、好ましい。」と記載されるように、「好ましい」態様にすぎず、【0038】にはノニオン界面活性剤やアニオン界面活性剤も好ましい旨の記載があるし、申立人Bは、エステル型やエステル塩型の界面活性剤を使用しない場合に、本件発明4の要件を満たしていても課題を解決できないとする具体的な証拠を示していない。
したがって、申立人Bの主張は採用することができない。
(5)申立理由9A、3Bについてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明4は特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものではないから、申立理由9A、3Bによっては本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。
9 申立理由10A(実施可能要件違反)、4B(実施可能要件違反)について
申立理由10A、4Bは、いずれも実施可能要件違反をいうものであるから、まとめて検討する。
(1)実施可能要件違反の判断基準
本件発明4は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
(2)検討
本件明細書には、本件発明4の粒子の構成成分である「脂肪族ポリエステル系樹脂」又は「脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂」、「界面活性剤」、「水溶性高分子」について、【0015】~【0017】、【0027】~【0029】に具体的な記載があり、「再帰反射率が1.0~2.1である」というポリマー粒子の具体的な製造方法も【0036】に記載があり、その方法によって本件発明4のポリマー粒子を製造した具体例が実施例1~8として8例記載されているから、実施例以外のポリマー粒子であっても、樹脂、界面活性剤、水溶性高分子の種類を明細書の上記記載を参考に変更し、実施例に倣うことで製造することができるものと認められる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明4について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(3)申立人の主張について
申立人Aは、第4の1(1)申立理由10Aで示した点を、申立人Bは、第4の1(2)申立理由4Bで示した点を、それぞれ主張する。
これらの点については、上記(2)で検討したとおりであり、実施例以外のポリマー粒子を製造するために、過度の試行錯誤が必要であるとはいえない。
したがって、申立人A、Bの主張は採用することができない。
(4)申立理由10A、4Bについてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明4は発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものではないから、申立理由10A、4Bによっては本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~3、6、7に係る特許は、取消理由1、2によって取り消すべきものである。
本件発明4に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由3によっては、取り消すことができない。
また、本件発明5に係る特許に対する本件特許異議の申立ては、訂正により本件発明5の記載内容が全て削除され、申立ての対象を欠く不適法なものとなり、その治癒ができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700431