特許異議申立
2021-701209
セメント用添加剤およびセメント組成物
- 審判番号
- 2021-701209
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-081185
- 登録番号
- 6893821
- 請求日
- 2021年12月20日
- 審決日
- 2023年02月16日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社日本触媒
- 【権利者代理人】弁理士法人G-chemical
- 【権利者代理人】籾井 孝文
- 【異議申立人】杉目 史
- 審判長/審判官
- 審判長 原 賢一
- 審判官 山田 倍司
- 審判官 金 公彦
- 分類
- P1651.537-YAA(C04B) / P1651.113-YAA(C04B) / P1651.121-YAA(C04B) / P1651.841-YAA(C04B) / P1651.851-YAA(C04B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6893821号発明「セメント用添加剤およびセメント組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6893821号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第6893821号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6893821号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成29年4月17日(優先権主張 平成28年8月29日、平成29年3月1日 日本国)を出願日とする特願2017-81185号であり、令和3年6月4日にその特許権の設定登録がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行され、その後、全請求項(請求項1~3)に係る特許について、同年12月20日に特許異議申立人杉目 史(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和4年3月15日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月11日に特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、これに対し、同年6月24日に異議申立人より意見書が提出され、同年8月30日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年10月25日に特許権者より意見書及び訂正請求書が提出されたので、特許法第120条の5第5項の規定に従って、異議申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定期間内に異議申立人からは何らの応答もなかったものである。
なお、同年5月11日にされた訂正の請求(以下、その訂正を「先の訂正」という。)は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正事項
前記令和4年10月25日にされた訂正の請求(以下、その訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを求めるものであって、その訂正の具体的な訂正事項は次のとおりである(下線部は訂正箇所を、「・・・」は省略を、それぞれ表す。以下同様。)。
(1)特許請求の範囲の請求項1に「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体、」とあるのを、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体を除く)、」に訂正し、訂正前の「セメント用添加剤。」の後に、
「
[図:0001397172000001.jpg]
(一般式(2)において、R4とR5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、M1は、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アミン基である。)」と追記する(以下、「訂正事項1」という。)
(2)特許請求の範囲の請求項1に「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」とあるのを、「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体、および、ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体を除く)」に訂正する(以下、「訂正事項2」という。)。
(3)特許請求の範囲の請求項1に「・・・である、
セメント用添加剤。」とあるのを、「・・・であり、
該c2成分の重量平均分子量が5000~1000000である、
セメント用添加剤。」に訂正する(以下、「訂正事項3」という。)。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び独立特許要件
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1において、付加される「(ただし、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体を除く)」及び「
[図:0001397172000002.jpg]
(一般式(2)において、R4とR5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、M1は、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アミン基である。)」との事項は、訂正前の請求項1における「c2成分」の選択肢の1つである「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」のうち、「一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体」を除外し、訂正前の請求項1における「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」を限定するものといえるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1は、訂正前の請求項1における「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」のうち、「一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体」が除外されたことによって、新たな機能・作用を奏する等、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)から導かれる技術的事項に何らの変更を生じさせるものではないから、新たな技術的事項を導入するものではない。
ウ 訂正事項1は、「c2成分」の選択肢の1つである「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2において、付加される「(ただし、不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体、および、ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体を除く)」との事項は、訂正前の請求項1における「c2成分」の選択肢の1つである「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」のうち、「不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体、および、ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体」を除外し、訂正前の請求項1における「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」を限定するものといえるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項2は、訂正前の請求項1における「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」のうち、「不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体、および、ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体」が除外されたことによって、新たな機能・作用を奏する等、本件明細書等から導かれる技術的事項に何らの変更を生じさせるものではないから、新たな技術的事項を導入するものではない。
ウ 訂正事項2は、「c2成分」の選択肢の1つである「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3において、付加される「該c2成分の重量平均分子量が5000~1000000である」との事項は、訂正前の請求項1における「c2成分」の重量平均分子量を特定の範囲に限定するものといえるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項3は、本件明細書の「c2成分の重量平均分子量は、・・・さらに好ましくは5000~1000000であり、・・・である。a2成分(当審注:「c2成分」の誤記と認められる。)の重量平均分子量が上記範囲内にあれば、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。」(【0042】)との記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 訂正事項3は、「c2成分」に対する限定をさらに付加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項1~3に係る独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1~3について特許異議申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
本件訂正は、請求項1について訂正することを求めるものであるところ、前記2のとおり、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1~3に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応して「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-N-(ヒドロキシエチル)アミンから選ばれる少なくとも1種(A成分)と、
オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる少なくとも1種(B成分)と、
ポリエチレングリコール(c1成分)と3価以上の多価アルコールにアルキレンオキシドが付加された構造を有する化合物(c2成分)から選ばれる少なくとも1種と、を含み、
該c2成分が、グリセリンのアルキレンオキシド付加体、エリスリトールのアルキレンオキシド付加体、メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体を除く)、ソルビトールのアルキレンオキシド付加体、3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体、および、ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体を除く)、ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体から選ばれる少なくとも1種であり、
該c2成分の重量平均分子量が5000~1000000である、
セメント用添加剤。
[図:0001397172000003.jpg]
(一般式(2)において、R4とR5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、M1は、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アミン基である。)
【請求項2】
トリイソプロパノールアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-N-(ヒドロキシエチル)アミンから選ばれる少なくとも1種(A成分)と、
オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる少なくとも1種(B成分)と、
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含むポリカルボン酸系共重合体(P)と、
セメントと、を含み、
B成分の質量/A成分の質量が、200%~10000%である、
セメント組成物。
【化1】
[図:0001397172000004.jpg]
(一般式(1)中、R1およびR2は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R3は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基であり、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~500であり、xは0~2の整数であり、yは0または1である。)
【化2】
[図:0001397172000005.jpg]
(一般式(2)中、R4~R6は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CH2)ZCOOM基を表し、-(CH2)ZCOOM基は-COOX基または他の-(CH2)ZCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0~2の整数であり、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表し、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。)
【請求項3】
前記セメント組成物中の前記A成分の含有量が、前記セメントに対し、0.001質量%/セメント~1質量%/セメントであり、前記セメント組成物中の前記B成分の含有量が、前記セメントに対し、0.001質量%/セメント~1質量%/セメントである、請求項2に記載のセメント組成物。」
第4 令和4年8月30日付けで通知した取消理由(決定の予告)、この取消理由(決定の予告)で通知しなかった同年3月15日付けで通知した取消理由、及びこれら取消理由において採用しなかった異議申立人による特許異議の申立理由の概要
1 令和4年8月30日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
(1)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)
本件特許は、先の訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載が後記第5の1(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「取消理由1-1」という。)。
(2)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)
本件特許は、先の訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載が後記第5の1(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「取消理由1-2」という。)。
2 令和4年8月30日付けで通知した取消理由(決定の予告)で通知しなかった同年3月15日付けで通知した取消理由の概要
(1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)
設定登録時の請求項1に係る発明は、後記3に記載の甲第1号証に記載された発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである(以下、「取消理由2-1」という。)。
(2)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)
設定登録時の請求項1に係る発明は、後記3に記載の甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「取消理由2-2」という。)。
3 各取消理由において採用しなかった異議申立人による特許異議の申立理由の概要
(1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)
設定登録時の請求項1に係る発明は、下記甲第2号証に記載された発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由1」という。)。
(2)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)
ア 設定登録時の請求項2及び3に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由2-1」という。)。
イ 設定登録時の請求項1~3に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明及び下記甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由2-2」という。)。
ウ 設定登録時の請求項1~3に係る発明は、下記甲第2号証に記載された発明に基づいて、又は、下記甲第2号証に記載された発明及び下記甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由2-3」という。)。
(3)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)
本件特許は、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1の記載が後記第5の3(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「申立理由3」という。)。
記
甲第1号証:米国特許出願公開第2004/0198873号明細書
甲第2号証:米国特許出願公開第2009/0292041号明細書
甲第3号証:特開2016-121024号公報
(以下、単に「甲1」~「甲3」という。)
第5 当審の判断
当審は、前記取消理由1-1~2-2及び申立理由1~3のいずれにも理由がないと判断する。
以下、その理由について詳述する。
1 取消理由1-1(明確性要件違反)及び取消理由1-2(サポート要件違反)について
(1)取消理由1-1及び取消理由1-2の概要
先の訂正後の請求項1における「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体((メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体を除く)」という特定事項(以下、「特定事項X」という。)について、「(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位」が(メタ)アクリル酸に関するどの様なものまでを含むのか不明であると共に、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」から「(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体」が除かれた場合に、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」として、どのような物質が実際に存在し得るのか不明である。
すなわち、「(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位」といった場合、「由来」が必ずしも明確でなく、「(メタ)アクリル酸」そのものを意味しているのか、アルキレンオキシド付加体を含め「(メタ)アクリル酸」を由来(原料)として修飾されたものまでを含むものであるのか明らかでなく、除くものが不明確であるから、結局前記特定事項Xは不明確である。
また、本件明細書の【0045】の記載からは「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」が、具体的にどのようなものを含むのか、それらの原料がどのようなものか、等について窺うことはできないため、技術常識からすれば、本件発明における「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」は、通常、(1)「メタクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体」にアルキレンオキシドが付加されたもの、(2)「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体」が共重合したもののいずか、又は、両者を併用したものであると推察されるところ、これらの共重合体のうち、(1)の共重合体は、アルキレンオキシドを付加する前の共重合体が「メタクリル酸モノマー由来の構造単位を有する」ものであるから、当然「(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体」であるといえるし、(2)の共重合体も、共重合する前の「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体」が、メタクリル酸にアルキレンオキシドを付加したもの、すなわち、メタクリル酸モノマー由来のものである場合には、「(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体」であるといえる。
そうすると、前記特定事項Xは、「(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体を除く」との特定により、(1)の共重合体が除かれ、さらに、場合によっては、(2)の共重合体や、(1)及び(2)を併用する共重合体が除かれることになり、結果的に「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」としてどのようなものが残るのかは、当業者であっても推測できるものではない。
さらに、先の訂正後の請求項1における前記特定事項Xの「共重合体」は、その内容が本件明細書の記載を参酌しても明らかでないから、同「共重合体」は、本件明細書に記載されたものともいうことができない。
したがって、先の訂正後の請求項1に係る発明は、明確でなく、また、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)取消理由1-1及び取消理由1-2に対する判断
本件訂正により、本件発明1は、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体を除く)」及び「
[図:0001397172000006.jpg]
(一般式(2)において、R4とR5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、M1は、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アミン基である。)」という特定事項(以下、「特定事項Y」という。)を有するものとされた。
ここで、当該特定事項Yにおいて共重合体を特定するために用いられる「由来」との用語の意味について、例えば、特許第5365883号公報の【0017】の「ここで、「由来」とは、単量体を重合反応させて構造単位を形成するものを意味し、具体的には、構造単位を形成する際に使用する重合性単量体を指すものである。たとえば、上記「アクリル酸エステル由来の構造単位」とは、単量体であるアクリル酸エステルを重合反応させて形成した構造単位のことであり、上記「スチレン由来の構造単位」とは、単量体であるスチレンを重合反応させて形成した構造単位のことである。」との記載によれば、重合体における「・・・由来の構造単位」は、「・・・を重合反応させて形成した構造単位」を意味するとの技術常識が存在しているといえる。
そうすると、当該技術常識によれば、前記特定事項Yにおいて、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」とは、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体」を重合反応させて形成した「構造単位を有する共重合体」を、「一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体」とは、「一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー」を重合反応させて形成した「構造単位を有する共重合体」を、それぞれ意味するといえるから、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」及び「一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体」のいずれも明確に把握することができ、結果的に、前記特定事項Yにおける「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」から「一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体」が除かれたものについても、明確に把握することができるといえる。しかも、特定事項Yによって、一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマーの構造が限定されることにより、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体」とは異なるものであることが明らかとなったため、特定事項Xにおける「(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体を除く」との特定によって、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」全てが除かれてしまう可能性はなくなり、この点からも「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」としてどの様なものが残るかを把握できないということはない。
したがって、特許請求の範囲の請求項1の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまではいえない。
さらに、本件発明1における前記特定事項Yの「共重合体」は、上記技術常識も踏まえれば、本件明細書に記載の事項の範囲内のものとして理解できるから、同「共重合体」は、本件明細書に記載されたものといえる。
以上のとおり、本件発明1は、明確であり、また、発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、前記取消理由1-1及び取消理由1-2には理由がない。
2 取消理由2-1及び申立理由1(新規性欠如)、取消理由2-2及び申立理由2-1~2-3(進歩性欠如)について
(1)各甲号証に記載された事項
ア 甲1に記載された事項(「・・・」は省略を表す。訳は当審による。以下同様。)
(ア)「[0008] An admixture composition that improves the compressive strength of cementitious compositions without negatively effecting the setting time is provided which comprises the components of polycarboxylate dispersant, set retarder and a strength improvement additive selected from the group consisting of poly(hydroxyalkylated)polyethyleneamines, poly(hydroxyalkylated)polyethylenepolyamines, poly(hydroxyalkylated)polyethyleneimines, poly(hydroxyalkylated)polyamines, hydrazines, 1,2-diaminopropa ne, polyglycoldiamine, poly(hydroxyalkyl)amines and mixtures thereof.
[0009] A cementitious composition is provided that comprises hydraulic cement and a strength improvement admixture composition, wherein the admixture composition comprises the components of polycarboxylate dispersant, set retarder and a strength improvement additive selected from the group consisting of poly(hydroxyalkylated)polyethyleneamines, poly(hydroxyalkylated)polyethylenepolyamines, poly(hydroxyalkylated)polyethyleneimines, poly(hydroxyalkylated)polyamines, hydrazines, 1,2-diaminopropane, polyglycoldiamine, poly(hydroxyalkyl)amines and mixtures thereof.」
(当審訳:[0008] セメント系組成物の圧縮強度を向上させつつ、セメント系組成物の硬化時間に悪影響を及ぼさないものであり、ポリカルボキシレート分散剤、凝結遅延剤及び強度向上添加剤の各成分からなる混和剤組成物を提供する。強度向上添加剤は、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンポリアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンイミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリアミン、ヒドラジン、1,2-ジアミノプロパン、ポリグリコールジアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル)アミン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
[0009] 水硬性セメント及び強度向上混和剤組成物からなるセメント系組成物を提供する。混和剤組成物は、ポリカルボキシレート分散剤、凝結遅延剤及び強度向上添加剤の各成分からなり、強度向上添加剤は、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンポリアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンイミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリアミン、ヒドラジン、1,2-ジアミノプロパン、ポリグリコールジアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル)アミン及びそれらの混合物からなる群から選択される。)
(イ)「[0015] The polycarboxylate dispersants used in the system can be at least one of the dispersant formulas a) through k):」
(当審訳:[0015] その系(混和剤組成物)に用いられるポリカルボキシレート分散剤は、分散剤の式a)~k)の少なくとも1つを用い得るものである。)
(ウ)「[0041] d) a dispersant obtained by copolymerizing 5 to 98% by weight of an (alkoxy)polyalkylene glycol mono(meth)acrylic ester monomer (a) represented by the following general formula (1):
[図:0001397172000007.jpg]
[0042] wherein R1 stands for hydrogen atom or a methyl group, R2O for one species or a mixture of two or more species of oxyalkylene group of 2 to 4 carbon atoms, providing two or more species of the mixture may be added either in the form of a block or in a random form, R3 for a hydrogen atom or an alkyl group of 1 to 5 carbon atoms, and m is a value indicating the average addition mol number of oxyalkylene groups that is an integer in the range of 1 to 100, 95 to 2% by weight of a (meth)acrylic acid monomer (b) represented by the above general formula (2), wherein R4 and R5 are each independently a hydrogen atom or a methyl group, and M1 for a hydrogen atom, a monovalent metal atom, a divalent metal atom, an ammonium group, or an organic amine group, and 0 to 50% by weight of other monomer (c) copolymerizable with these monomers, provided that the total amount of (a), (b), and (c) is 100% by weight;」
(当審訳:[0041] d)以下のものを共重合して得られる分散剤であって、下記一般式(1)で表される(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a)5~98重量%:
[0042] ここで、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2Oは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物を表し、混合物の2種以上はブロック状又はランダム状のいずれで添加されてもよく、R3は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す値で、1~100の範囲の整数であり、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー(b)95~2重量%、ここで、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、M1は水素原子、1価金属原子、2価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基であり、及びこれらのモノマーと共重合可能な他のモノマー(c)0~50重量%、ただし、(a)、(b)及び(c)の合計量が100重量%である;)
(エ)「[0087] i) a copolymer of oxyalkyleneglycol-alkenyl ethers and unsaturated dicarboxylic acids, comprising:
[0088] i) 0 to 90 mol % of at least one component of the formula 3a or 3b:
[図:0001397172000008.jpg]
[0089] wherein M is a hydrogen atom, a mono- or divalent metal cation, an ammonium ion or an organic amine residue, a is 1, or when M is a divalent metal cation a is 1/2;
[0090] wherein X is -OMa,
[0091] -O-(CmH2mO)n-R1 in which R1 is a hydrogen atom, an aliphatic hydrocarbon radical containing from 1 to 20 carbon atoms, a cycloaliphatic hydrocarbon radical containing 5 to 8 carbon atoms or an optionally hydroxyl, carboxyl, C11-4 alkyl, or sulphonic substituted aryl radical containing 6 to 14 carbon atoms, m is 2 to 4, and n is 0 to 100,
[0092] -NHR2, -N(R2)2 or mixtures thereof in which R2=R1 or -CO-NH2; and
[0093] wherein Y is an oxygen atom or -NR2;」
(当審訳:[0087] i)オキシアルキレングリコール-アルケニルエーテルと不飽和ジカルボン酸との次の構造を有する共重合体:
[0088] i)式3a又は3bの少なくとも1つの成分0~90モル%:
[0089] ここで、Mは水素原子、1価又は2価金属カチオン、アンモニウムイオン又は有機アミン残基であり、aは1であり、又はMが2価金属カチオンである場合、aは1/2である;
[0090] ここで、Xは-OMa、
[0091] -O-(CmH2mO)n-R1、ここで、R1は水素原子、1~20個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を含む環式脂肪族炭化水素基、又は任意に水酸基、カルボキシル基、C11~4(当審注:C1~14の誤記と認められる。)のアルキル基又はスルホン基で置換され、6~14個の炭素原子を含むアリール基であり、mは2~4であり、nは0~100であり、
[0092] -NHR2、-N(R2)2又はそれらの混合物、ここで、R2=R1又は-CO-NH2である;及び
[0093] ここで、Yは酸素原子又は-NR2である;)
(オ)「[0094] ii) 1 to 89 mol % of components of the general formula 4:
[図:0001397172000009.jpg]
[0095] wherein R3 is a hydrogen atom or an aliphatic hydrocarbon radical containing from 1 to 5 carbon atoms, p is 0 to 3, and R1 is hydrogen, an aliphatic hydrocarbon radical containing from 1 to 20 carbon atoms, a cycloaliphatic hydrocarbon radical containing 5 to 8 carbon atoms or an optionally hydroxyl, carboxyl, C1-14 alkyl, or sulfonic substituted aryl radical containing 6 to 14 carbon atoms, m is 2 to 4, and n is 0 to 100, and」
(当審訳:[0094] ii)共重合体は一般式4で表される成分を1~89モル%有する:
[0095] ここで、R3は水素原子又は1~5個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基であり、pは0~3であり、R1は水素、1~20個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を含む環状脂肪族炭化水素基、又は任意に水酸基、カルボキシル基、C1~14のアルキル基又はスルホン基で置換され、6~14個の炭素原子を含むアリール基であり、mは2~4であり、nは0~100であること、及び)
(カ)「[0110] j) a copolymer of dicarboxylic acid derivatives and oxyalkylene glycol-alkenyl ethers, comprising:」
(当審訳:[0110] j)ジカルボン酸誘導体とオキシアルキレングリコール-アルケニルエーテルとの次の構造を有する共重合体:)
(キ)「[0118] ii) 0.5 to 80 mol. % of the structural units of formula 8:
[図:0001397172000010.jpg]
[0119] wherein R3 is H or a C1-5 aliphatic hydrocarbon;
[0120] p is 0 to 3;
[0121] R2 is H, a C1-20 aliphatic hydrocarbon, a C5-8 cycloaliphatic hydrocarbon, or a C6-14 aryl that is optionally substituted with at least one member selected from the group consisting of -COOMa, (SO3)Ma, and -(PO3)Ma2;
[0122] m is 2 to 4;
[0123] n is 1 to 200;」
(当審訳:[0118] ii)共重合体は式8で表される構造単位を0.5~80モル%有する:
[0119] ここで、R3はH又はC1-5脂肪族炭化水素である;
[0120] pは0~3である;
[0121] R2は、H、C1~20の脂肪族炭化水素、C5~8の環状脂肪族炭化水素、又はC6~14のアリールであり、アリールは-COOMa、(SO3)Ma、及び-(PO3)Ma2からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換される;
[0122] mは2~4である;
[0123] nは1~200である;)
(ク)「[0138] Set retarding, or also known as delayed-setting or hydration control, admixtures are used to retard, delay, or slow the rate of setting of concrete. ・・・Lignosulfonates, hydroxylated carboxylic acids, borax, gluconic, tartaric and other organic acids and their corresponding salts, phosphonates, certain carbohydrates such as sugars and sugar-acids and mixtures thereof can be used as retarding admixtures. In one embodiment the admixture composition comprises about 0.5% to about 40% set retarder based on the total dry weight of the admixture composition components. In another embodiment the admixture composition comprises about 2% to about 25% set retarder based on the total dry weight of the admixture composition components. In another embodiment a cementitious composition comprises about 0.002% to about 0.2% set retarder by weight of cementitious binder. In a further embodiment a cementitious composition comprises about 0.005% to about 0.08% set retarder by weight of cementitious binder.」
(当審訳:[0138] 硬化調整や水和調整としても知られる凝結遅延の混和剤は、コンクリートの硬化を引き延ばし、遅延させ、硬化速度を落とさせるものである。・・・リグノスルホン酸塩、水酸化カルボン酸、ホウ砂、グルコン酸、酒石酸などの有機酸及びその対応する塩、ホスホン酸塩、糖及び糖酸などの特定の炭水化物及びそれらの混合物を凝結遅延剤として使用することが可能である。一実施形態では、混和剤組成物は、混和剤組成物成分の総乾燥重量を基準にして約0.5%~約40%の凝結遅延剤を含んでいる。別の実施形態では、混和剤組成物は、混和剤組成物成分の総乾燥重量を基準にして約2%~約25%の凝結遅延剤を含んでいる。別の実施形態では、セメント系組成物は、セメント系バインダーの重量に対して約0.002%~約0.2%の凝結遅延剤を含んでいる。さらなる実施形態では、セメント系組成物は、セメント系バインダーの重量に対して約0.005%~約0.08%の凝結遅延剤を含んでいる。)
(ケ)「[0139] The strength improvement additive is added to hydraulic cement mixes, such as portland cement concretes, grouts and mortars, high alumina cement concretes, grouts and mortars, and dry mixes for making such concretes, grouts and mortars in amounts sufficient to increase the compressive strength of the hydraulic cement mix. The additive is at least one of poly(hydroxyalkylated)polyethyleneamines, poly(hydroxyalkylated)polyethylenepolyamines, poly(hydroxyalkylated)polyethyleneimines, poly(hydroxyalkylated)polyamines, hydrazines, 1,2-diaminopropane, polyglycoldiamine, poly(hydroxyalkyl)amine and mixtures thereof. In one embodiment the admixture composition comprises about 0.5% to about 40% strength improvement additive based on the total dry weight of the admixture composition components. In another embodiment the admixture composition comprises about 2% to about 25% strength improvement additive based on the total dry weight of the admixture composition components. In another embodiment a cementitious composition comprises about 0.0001% to about 0.2% strength improvement additive by weight of cementitious binder. In a further embodiment a cementitious composition comprises about 0.004% to about 0.08% strength improvement additive by weight of cementitious binder.
[0140] Illustrative examples of the strength improvement additive include, but are not limited to, N,N,N’-tri-(hydroxyethyl)ethylenediamine, N,N,N’-tri-(hydroxyethyl)diethylenediamine, N,N’-di-(hydroxyethyl)ethylenediamine, N,N’-bis(2-hydroxypropyl)diethylenetriamine, N,N,N’,N’-tetra(hydroxyethyl)ethylenediamine, N,N,N’,N’,N’’-penta(hydroxyethyl)diethylenetriamine, N,N’-bis(2-hydroxypropyl)-N,N,N’-tri(hydroxyethyl)diethylenetriamine, poly(hydroxyethyl)polyethyleneimine, di(hydroxyethyl) 1,2-diaminopropane, tetra(hydroxyethyl) 1,2-diaminopropane, di(hydroxyethyl)hydrazine, tetra(hydroxyethyl)hydrazine, ethoxylated polyglycoldiamine, triisopropanolamine and mixtures thereof.」
(当審訳:[0139] 強度向上添加剤は、ポルトランドセメントコンクリート、グラウト及びモルタル、高アルミナセメントコンクリート、グラウト及びモルタル、及び、そのようなコンクリート、グラウト及びモルタルを製造するためのドライミックスなどの水硬性セメント混合物に、水硬性セメント混合物の圧縮強度を高めるために十分な量で添加される。その添加剤は、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンイミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリアミン、ヒドラジン、1,2-ジアミノプロパン、ポリグリコールジアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル)アミン、及びそれらの混合物の少なくとも1つである。一実施形態では、混和剤組成物は、混和剤組成物成分の総乾燥重量を基準にして約0.5%~約40%の強度向上添加剤を含んでいる。別の実施形態では、混合組成物は、混合組成物成分の総乾燥重量を基準にして約2%~約25%の強度向上添加剤を含んでいる。別の実施形態では、セメント系組成物は、セメント系バインダーの重量に対して約0.0001%~約0.2%の強度向上添加剤を含む。さらなる実施系では、セメント系組成物は、セメント系バインダーの重量に対して約0.004%~約0.08%の強度向上添加剤を含んでいる。
[0140] 強度向上添加剤を以下に例示するがこれらに限定されるものではない。N,N,N'-トリ-(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N'-トリ-(ヒドロキシエチル)ジエチレンジアミン、N,N'-ジ-(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N'-ビス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、N,N,N',N'-テトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N',N',N''-ペンタ(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N,N'-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-N,N,N'-トリ(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、ポリ(ヒドロキシエチル)ポリエチレンイミン、ジ(ヒドロキシエチル)1,2-ジアミノプロパン、テトラ(ヒドロキシエチル)1,2-ジアミノプロパン、ジ(ヒドロキシエチル)ヒドラジン、テトラ(ヒドロキシエチル)ヒドラジン、エトキシ化ポリグリコールジアミン、トリイソプロパノールアミン及びこれらの混合物。)
(コ)「[0187] Examples of inventive strength improvement admixture compositions were tested for the effect of their addition on the compressive strength and setting time of concrete mixtures.
・・・
[0205] In another example of a strength improvement additive that has been found to be useful in the present invention are poly(hydroxyalkyl)amines such as triisopropanolamine. Table 9 shows the comparison of two different strength improvement additives, a tetrahydroxyethylethylenediamine and triisopropanolamine in combination with a polycarboxylate dispersant and set retarder.
[0206] Table 9 shows the setting time and 28-day compressive strength comparisons of polycarboxylate dispersant only (S-89), polycarboxylate dispersant plus set retarder (S-85), and polycarboxylate dispersant plus set retarder and tetrahydroxyethylethylenediamine (S-86) and polycarboxylate dispersant plus set retarder and poly(hydroxyalkyl)amine (S-87). Relative to the polycarboxylate only reference (S-89), addition of set retarder (S-85) increased setting time by about 40 minutes and increased 28-day compressive strength. Sample S-86, containing the tetrahydroxyethylethylenediamine, and S-87, containing poly(hydroxyalkyl)amine, show a similar increase in 28-day compressive strength over the polycarboxylate plus set retarder without a significant change in setting time.」
(当審訳:[0187] 本発明の強度向上混和剤組成物の実施例について、それらの添加によるコンクリート混合物の圧縮強度及び硬化時間への影響を試験した。
・・・
[0205] 本件発明で有用であることが判明している強度向上添加剤の別の例では、トリイソプロパノールアミンなどのポリ(ヒドロキシアルキル)アミンが挙げられる。表9は、ポリカルボキシレート分散剤及び凝結遅延剤と組み合わせて、2つの異なる強度改善添加剤、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン及びトリイソプロパノールアミンを比較したものを示している。
[0206] 表9は、ポリカルボキシレート分散剤のみ(S-89)、ポリカルボキシレート分散剤に加えて硬化遅延剤(S-85)、ポリカルボキシレート分散剤に加えて凝結遅延剤及びテトラヒドロキシエチルエチレンジアミン(S-86)、及びポリカルボキシレート分散剤に加えて凝結遅延剤及びポリ(ヒドロキシアルキル)アミン(S-87)の硬化時間及び28日圧縮強度を比較したものを示している。ポリカルボキシレートのみの参照(S-89)と比較して、凝結遅延剤の添加(S-85)は、硬化時間を約40分増加させ、28日圧縮強度を増加させた。テトラヒドロキシエチルエチレンジアミンを含む試料S86及びポリ(ヒドロキシアルキル)アミンを含む試料S87は、硬化時間に著しい変化を与えることなく、ポリカルボキシレートに凝結遅延剤を加えたものよりも28日圧縮強度の同様の増加を示している。)
(サ)「
[図:0001397172000011.jpg]
」(18頁)
(当審訳:表9(当審注:試料S-87に対応する部分のみ。本件発明との比較のため当審で換算値を付記した。)
試料S-87
セメント(ポンド/立方ヤード) 512 <304(kg/m3)>
細骨材(ポンド/立方ヤード) 1351 <802(kg/m3)>
粗骨材(ポンド/立方ヤード) 1907 <1131(kg/m3)>
水(ポンド/立方ヤード) 291 <173(kg/m3)>
水/セメント比 0.57
細骨材率 0.43
ポリカルボキシレート分散剤(% cwt) 0.11
グルコン酸Naとグルコン酸の混合物 (% cwt) 0.03
トリイソプロパノールアミン(% cwt) 0.03
リン酸トリブチル(% cwt) 0.01
初期硬化(時間) 6.75
圧縮強度(psi)
28日 7080 <48.8(N/mm2)>
PC Disp-ポリカルボキシレート分散剤
Na Gluconate/G.A.-グルコン酸ナトリウムとグルコン酸の混合物
TBP-リン酸トリブチル)
イ 甲2に記載された事項
(ア)「[0007] A strength improvement admixture composition is provided which improves the compressive strength of cementitious compositions without negatively effecting the setting time and comprises the components of polycarboxylate dispersant and strength enhancing additive selected from the group consisting of poly(hydroxyalkylated)polyethyleneimines, poly(hydroxyalkylated)polyethylenepolyamines, poly(hydroxyalkylated)polyethyleneimines, poly(hydroxyalkylated)polyamines, hydrazines, 1,2-diaminopropane, polyglycoldiamine, poly(hydroxyalkyl)amines, and mixtures thereof.
DETALED DESCRIPTION
[0008] A strength improvement admixture composition for cementitious compositions is provided, as well as a novel cementitious composition containing such an admixture composition and a method for preparing such a cementitious composition.」
(当審訳:[0007] セメント系組成物の圧縮強度を向上させつつ、セメント系組成物の硬化時間に悪影響を及ぼさないものであり、ポリカルボキシレート分散剤及び強度向上添加剤の各成分からなる強度向上混和剤組成物を提供する。強度向上添加剤は、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンイミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンポリアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンイミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリアミン、ヒドラジン、1,2-ジアミノプロパン、ポリグリコールジアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル)アミン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
詳細な説明
[0008] セメント系組成物のための強度改善混和剤組成物、並びにそのような混和剤組成物を含む新規なセメント系組成物及びそのようなセメント系組成物を調製するための方法を提供する。)
(イ)「[0011] In certain embodiments the admixture composition comprises about 1% to about 99.99% polycarboxylate dispersant based on the total dry weight of the admixture composition components. In other embodiments the admixture composition comprises about 40% to about 95% polycarboxylate dispersant based on the total dry weight of the admixture composition components. In certain embodiments a cementitious composition comprises about 0.002% to about 2% polycarboxylate dispersant by weight of cementitious binder. In a further embodiment a cementitious composition comprises about 0.02% to about 0.4% polycarboxylate dispersant by weight of cementitious binder.
The polycarboxylate dispersants used in the system can be at least one of the dispersant formulas a) through j):
・・・」
(当審訳:[0011] 特定の実施形態では、混和剤組成物は、混和剤組成物成分の総乾燥重量を基準にして約1%~約99.99%のポリカルボキシレート分散剤を含んでいる。他の実施形態では、混和剤組成物は、混合組成物成分の総乾燥重量を基準にして約40%~約95%のポリカルボキシレート分散剤を含んでいる。特定の実施形態では、セメント系組成物は、セメント系バインダーの約0.002重量%~約2重量%のポリカルボキシレート分散剤を含んでいる。さらなる実施形態では、セメント系組成物は、セメント系バインダーの約0.02重量%~約0.4重量%のポリカルボキシレート分散剤を含んでいる。
その系で用いられるポリカルボキシレート分散剤は、分散剤の式a)~j)の少なくとも1つを用い得るものである:
・・・)
(ウ)「[0032] d) a dispersant obtained by copolymerizing 5 to 98% by weight of an (alkoxy)polyalkylene glycol mono(meth)acrylic ester monomer (a) represented by the following general formula (1):
[図:0001397172000012.jpg]
[0033] wherein R1 stands for hydrogen atom or a methyl group, R10 for one species or a mixture of two or more species of oxyalkylene group of 2 to 4 carbon atoms, providing two or more species of the mixture may be added either in the form of a block or in a random form, R3 for a hydrogen atom or an alkyl group of 1 to 5 carbon atoms, and m is a value indicating the average addition mol number of oxyalkylene groups that is an integer in the range of 1 to 100, 2 to 95% by weight of a (meth)acrylic acid monomer (b) represented by the above general formula (2), wherein R4 and R1 are each independently a hydrogen atom or a methyl group, and M1 for a hydrogen atom, a monovalent metal atom, a divalent metal atom, an ammonium group, or an organic amine group, and 0 to 50% by weight of other monomer (c) copolymerizable with these monomers, provided that the total amount of (a), (b), and (c) is 100% by weight;」
(当審訳:[0032] d)以下のものを共重合して得られる分散剤であって、下記一般式(1)で表される(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a)5~98重量%:
[0033] ここで、R1は水素原子又はメチル基を表し、R10(当審注:R2Oの誤記と認められる。)は炭素原子数2~4のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物を表し、混合物の2種以上はブロック状又はランダム状のいずれで添加されてもよく、R3は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す値で、1~100の範囲の整数であり、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー(b) 2~95重量%、ここで、R4及びR1(当審注:R5の誤記と認められる。)はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、M1は水素原子、1価金属原子、2価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基であり、及びこれらのモノマーと共重合可能な他のモノマー(c)0~50重量%、ただし、(a)、(b)及び(c)の合計量が100重量%である;)
(エ)「[0083] i) a copolymer of oxyalkyleneglycol-alkenyl ethers and unsaturated mono and/or dicarboxylic acids, comprising:
[0084] i) 0 to 90 mol % of at least one component of the formula 3a or 3b:
[図:0001397172000013.jpg]
[0085] wherein M is a hydrogen atom, a mono- or divalent metal cation, an ammonium ion or an organic amine residue, a is 1, or when M is a divalent metal cation a is 1/2;
[0086] wherein X is -OMa,
[0087] -O-(CmH2mO)n-R1 in which R1 is a hydrogen atom, an aliphatic hydrocarbon radical containing from 1 to 20 carbon atoms, a cycloaliphatic hydrocarbon radical containing 5 to 8 carbon atoms or an optionally hydroxyl, carboxyl, C1-14 alkyl, or sulphonic substituted aryl radical containing 6 to 14 carbon atoms, m is 2 to 4, and n is 0 to 100,
[0088] -NHR2, -N(R2)2 or mixtures thereof in which R2=R1 or -CO-NH2; and
[0089] wherein Y is an oxygen atom or -NR2;
[0090] ii) 1 to 89 mol % of components of the general formula 4:
[図:0001397172000014.jpg]
[0091] wherein R3 is a hydrogen atom or an aliphatic hydrocarbon radical containing from 1 to 5 carbon atoms, p is 0 to 3, and R1 is hydrogen, an aliphatic hydrocarbon radical containing from 1 to 20 carbon atoms, a cycloaliphatic hydrocarbon radical containing 5 to 8 carbon atoms or an optionally hydroxyl, carboxyl, C1-14 alkyl, or sulfonic substituted aryl radical containing 6 to 14 carbon atoms, m is independently 2 to 4, and n is 0 to 100, and
[0092] iii) 0 to 10 mol % of at least one component of the formula 5a or 5b:
・・・
[0097] iv) 0 to 90 mol % of at least one component of the formula 6a, 6b, or 6c:
[図:0001397172000015.jpg]
[0098] wherein M is a hydrogen atom, a mono- or divalent metal cation, an ammonium ion or an organic amine residue, a is 1, or when M is a divalent metal cation a is 1/2;
[0099] wherein X is -OMa,
[0100] -O-(CmH2mO)n-R1 in which R1 is a hydrogen atom, an aliphatic hydrocarbon radical containing from 1 to 20 carbon atoms, a cycloaliphatic hydrocarbon radical containing 5 to 8 carbon atoms or an optionally hydroxyl, carboxyl, C1-14 alkyl, or sulphonic substituted aryl radical containing 6 to 14 carbon atoms, m is 2 to 4, and n is 0 to 100,
[0101] -NH-(CmH2mO)n-R1,
[0102] -NHR2, -N(R2)2 or mixtures thereof in which R2=R1 or -CO-NH2; and
[0103] wherein Y is an oxygen atom or -NR2;」
(当審訳:[0083] i)オキシアルキレングリコール-アルケニルエーテルと不飽和モノ及び/又はジカルボン酸との次の構造を有する共重合体:
[0084] i)式3a又は3bの少なくとも1つの成分0~90モル%:
[0085] ここで、Mは水素原子、1価又は2価金属カチオン、アンモニウムイオン又は有機アミン残基であり、aは1であり、又はMが2価金属カチオンである場合、aは1/2である;
[0086] ここで、Xは-OMa、
[0087] -O-(CmH2mO)n-R1、ここで、R1は水素原子、1~20個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を含む環式脂肪族炭化水素基、又は任意に水酸基、カルボキシル基、C1~14のアルキル基又はスルホン基で置換され、6~14個の炭素原子を含むアリール基であり、mは2~4であり、nは0~100であり、
[0088] -NHR2、-N(R2)2又はそれらの混合物、ここで、R2=R1又は-CO-NH2である;及び
[0089] ここで、Yは酸素原子又は-NR2である;
[0090] ii)一般式4の成分1~89モル%:
[0091] ここで、R3は水素原子又は1~5個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基であり、pは0~3であり、R1は水素、1~20個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を含む環式脂肪族炭化水素基、又は任意に水酸基、カルボキシル基、C1~14のアルキル基又はスルホン基で置換され、6~14個の炭素原子を含むアリール基であり、mは独立して2~4であり、nは0~100であり、及び
[0092] iii)式5a又は5bの少なくとも1つの成分0~10モル%:
・・・
[0097] iv)式6a、6b又は6cのうちの少なくとも1つの成分0~90モル%:
[0098] ここで、Mは水素原子、1価又は2価の金属カチオン、アンモニウムイオン、又は有機アミン残基であり、aは1であり、Mが2価の金属カチオンである場合、aは1/2である;
[0099] ここで、Xは-OMa、
[0100] -O-(CmH2mO)n-R1、ここで、R1は水素原子、1~20個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を含む環式脂肪族炭化水素基、又は任意に水酸基、カルボキシル基、C1~14のアルキル基又はスルホン基で置換され、6~14個の炭素原子を含むアリール基であり、mは2~4であり、nは0~100であり、
[0101] -NH-(CmH2mO)n-R1、
[0102] -NHR2、-N(R2)2又はそれらの混合物、ここで、R2=R1又は-CO-NH2である;及び
[0103] ここで、Yは酸素原子又は-NR2である;)
(オ)「[0104] j) a copolymer of dicarboxylic acid derivatives and oxyalkylene glycol-alkenyl ethers, comprising:」
(当審訳:[0104] j)ジカルボン酸誘導体とオキシアルキレングリコール-アルケニルエーテルとの次の構造を有する共重合体:)
(カ)「[0112] ii) 0.5 to 80 mol. % of the structural units of formula 8:
[図:0001397172000016.jpg]
[0113] wherein R3 is H or a C1-5 aliphatic hydrocarbon;
[0114] p is 0 to 3;
[0115] R2 is H, a C1-20 aliphatic hydrocarbon, a C5-8 cycloaliphatic hydrocarbon, or a C6-14 aryl that is optionally substituted with at least one member selected from the group consisting of -COOMa, -(SO3)Ma, and -(PO3) Ma2;
[0116] m is 2 to 4;
[0117] n is 1 to 200;」
(当審訳:[0112] ii)共重合体は式8で表される構造単位を0.5~80モル%有する:
[0113] ここで、R3はH又はC1-5脂肪族炭化水素である;
[0114] pは0~3である;
[0115] R2は、H、C1~20の脂肪族炭化水素、C5~8の環状脂肪族炭化水素、又はC6~14のアリールであり、アリールは-COOMa、-(SO3)Ma、及び-(PO3)Ma2からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換される;
[0116] mは2~4である;
[0117] nは1~200である;)
(キ)「[0132] The strength enhancing additive is added to hydraulic cement mixes, such as portland cement concretes, grouts and mortars, high alumina cement concretes, grouts and mortars, and dry mixes for making such concretes, grouts and mortars in amounts sufficient to increase the compressive strength of the hydraulic cement mix. The additive is selected from the group consisting of poly(hydroxyalkylated)polyethyleneamines, poly(hydroxyalkylated)polyethylenepolyamines, poly(hydroxyalkylated)polyethyleneimines, poly(hydroxyalkylated)polyamines, hydrazines, 1,2-diaminopropane, polyglycoldiamine, poly(hydroxyalkyl)amine and mixtures thereof. In certain embodiments the admixture composition comprises about 0.01% to about 99% strength improvement additive based on the total dry weight of the admixture composition components. In other embodiments the admixture composition comprises about 5% to about 60% strength improvement additive based on the total dry weight of the admixture composition components. In another embodiment a cementitious composition comprises about 0.0001% to about 0.2 strength improvement additive by weight of cementitious binder. In a further embodiment a cementitious composition comprises about 0.004% to about 0.08% strength improvement additive by weight of cementitious binder.
[0133] Illustrative examples of the strength improvement additive include, but are not limited to, N,N,N’-tri-(hydroxyethyl)ethylenediamine, N,N,N’-tri-(hydroxyethyl)diethylenediamine, N,N’-di-(hydroxyethyl)ethylenediamine, N,N’-bis(2-hydroxypropyl)diethylenetriamine, N,N,N’,N’-tetra(hydroxyethyl)ethylenediamine, N,N,N’,N’,N’-penta(hydroxyethyl)diethylenetriamine, N,N’-bis(2-hydroxypropyl)-N,N,N’-tri(hydroxyethyl)diethylenetriamine, poly(hydroxyethyl)polyethyleneimine, di(hydroxyethyl) 1,2-diaminopropane, tetra(hydroxyethyl) 1,2-diaminopropane, di(hydroxyethyl)hydrazine, tetra(hydroxyethyl)hydrazine, ethoxylated polyglycoldiamine, triisopropanolamine and mixtures thereof.」
(当審訳:[0132] 強度向上添加剤は、ポルトランドセメントコンクリート、グラウト及びモルタル、高アルミナセメントコンクリート、グラウト及びモルタル、及び、そのようなコンクリート、グラウト及びモルタルを製造するためのドライミックスなどの水硬性セメント混合物に、水硬性セメント混合物の圧縮強度を高めるために十分な量で添加される。その添加剤は、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリエチレンイミン、ポリ(ヒドロキシアルキル化)ポリアミン、ヒドラジン、1,2-ジアミノプロパン、ポリグリコールジアミン、ポリ(ヒドロキシアルキル)アミン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施形態では、混和剤組成物は、混和剤組成物成分の総乾燥重量を基準にして約0.01%~約99%の強度向上添加剤を含んでいる。他の実施形態では、混合組成物は、混合組成物成分の総乾燥重量を基準にして約5%~約60%の強度向上添加剤を含んでいる。別の実施形態では、セメント系組成物は、セメント系バインダーの重量に対して約0.0001%~約0.2(当審注:0.2%の誤記と認められる。)の強度向上添加剤を含む。さらなる実施系では、セメント系組成物は、セメント系バインダーの重量に対して約0.004%~約0.08%の強度向上添加剤を含んでいる。)
[0133] 強度向上添加剤を以下に例示するがこれらに限定されるものではない。N,N,N'-トリ-(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N'-トリ-(ヒドロキシエチル)ジエチレンジアミン、N,N'-ジ-(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N'-ビス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、N,N,N',N'-テトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N',N',N''-ペンタ(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N,N'-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-N,N,N'-トリ(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、ポリ(ヒドロキシエチル)ポリエチレンイミン、ジ(ヒドロキシエチル)1,2-ジアミノプロパン、テトラ(ヒドロキシエチル)1,2-ジアミノプロパン、ジ(ヒドロキシエチル)ヒドラジン、テトラ(ヒドロキシエチル)ヒドラジン、エトキシ化ポリグリコールジアミン、トリイソプロパノールアミン及びそれらの混合物。)
(ク)「[0159] Set retarding, or also known as delayed-setting or hydration control, admixtures are used to retard, delay, or slow the rate of setting of concrete. ・・・Lignosulfonates, hydroxylated carboxylic acids, polysaccharides, borax, gluconic, tartaric and other organic acids and their corresponding salts, phosphonates, certain carbohydrates such as sugars and sugar-acids and mixtures thereof can be used as retarding admixtures.」
(当審訳:[0159] 硬化調整や水和調整としても知られる凝結遅延の混和剤は、コンクリートの硬化を引き延ばし、遅延させ、硬化速度を落とさせるものである。・・・リグノスルホン酸塩、水酸化カルボン酸、多糖、ホウ砂、グルコン酸、酒石酸などの有機酸及びその対応する塩、ホスホン酸塩、糖及び糖酸などの特定の炭水化物及びそれらの混合物を凝結遅延剤として使用することが可能である。)
(ケ)「[0178] Examples of strength improvement admixture compositions were tested for the effect of their addition on the compressive strength and setting time of concrete mixtures.
・・・
[0186] Table 4 shows the comparison of two triisopropanolamine (TIPA) and dispersant combinations, namely triisopropanolamine and naphthalene sulfonate dispersant (BNS)S-25 and S-26, and triisopropanolamine and polycarboxylate dispersant (PC)S-22 and S-23, and their affect on the compressive strength development of cementitious compositions.」
(当審訳:[0178] 強度向上混和剤組成物の実施例について、それらの添加によるコンクリート混合物の圧縮強度及び硬化時間への影響を試験した。
・・・
[0186] 表4は、2つのトリイソプロパノールアミン(TIPA)及び分散剤の組み合わせ、すなわち、トリイソプロパノールアミン及びナフタレンスルホネート分散剤(BNS)S-25及びS-26、並びにトリイソプロパノールアミン及びポリカルボキシレート分散剤(PC)S-22及び23の比較、並びにセメント系組成物の圧縮強度の発達に対するそれらの影響を示す。)
(コ)「
[図:0001397172000017.jpg]
」(10頁)
(当審訳:表4(当審注:試料S-23に対応する部分のみ。本件発明との比較のため当審で換算値を付記した。)
試料S-23
セメント(ポンド/立方ヤード) 601 <357(kg/m3)>
水(ポンド/立方ヤード) 291 <173(kg/m3)>
細骨材(ポンド/立方ヤード) 1308 <776(kg/m3)>
粗骨材(ポンド/立方ヤード) 1880 <1115(kg/m3)>
水/セメント比 0.48
細骨材率 0.43
トリイソプロパノールアミン(% cwt) 0.05
ポリカルボキシレート分散剤(% cwt) 0.12
リン酸トリブチル(% cwt) 0.005
初期硬化(時間) 7.7
圧縮強度(psi)
28日 9000 <62.1(N/mm2)>
PC Disp-ポリカルボキシレート分散剤
TBP-リン酸トリブチル
BNS-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物)
ウ 甲3に記載された事項
(ア)「【請求項1】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物と、トリイソプロパノールアミンと、オキシカルボン酸、糖類及び糖アルコールから選ばれる1種以上の化合物と、水とを含有する水硬性組成物用混和剤。」
(イ)「【0008】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を含む水硬性組成物の硬化体の製品強度の指標となる7日及び28日強度の向上が望まれる。
また、トリイソプロパノールアミンは水硬性組成物の早期強度の向上には有用であるが、コンクリート工場において混和剤タンクの追加なしにトリイソプロパノールアミンを含む水硬性組成物を調製する目的で、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の水溶液のタンク中に予めトリイソプロパノールアミンを含有させると、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶液の粘度が増加することが判明した。そして、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶液の粘度が増加したことで、水硬性組成物の調製のためミキサーに圧送するポンプの能力によっては該水溶液を圧送できないことがあった。また、作業性などの点から、混和剤は、刺激臭などの臭気が低いことが望ましい。
【0009】
本発明は、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物とトリイソプロパノールアミンとを含み、水硬性組成物の硬化体の7日及び28日の強度を向上でき、刺激臭などの臭気が低く低粘度の組成物として調製できる水硬性組成物用混和剤を提供する。」
(ウ)「【0016】
<トリイソプロパノールアミン>
本発明の水硬性組成物用混和剤はトリイソプロパノールアミンを含有する。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物との組み合わせにおいて、トリイソプロパノールアミンは、水硬性組成物の硬化体に良好な強度の向上効果を付与できる。
【0017】
<オキシカルボン酸、糖類及び糖アルコールから選ばれる1種以上の化合物>
オキシカルボン酸、糖類及び糖アルコールから選ばれる1種以上の化合物(以下、ヒドロキシ化合物ともいう)は、水硬性組成物用混和剤の粘度の低下、及び強度向上効果に寄与する成分である。水硬性組成物用混和剤の粘度低下の観点から、好ましくはオキシカルボン酸及び糖アルコールから選ばれる1種以上の化合物、より好ましくはオキシカルボン酸である。
【0018】
オキシカルボン酸としては、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、及びリンゴ酸から選ばれる一種以上が挙げられる。オキシカルボン酸は、グルコン酸、酒石酸及びクエン酸から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
【0019】
糖類しては、単糖類、オリゴ糖類及び多糖類から選ばれる一種以上の化合物が好ましい。単糖類は、グルコース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、アビトース、リポーズ、異性化糖等が、オリゴ糖としては、二糖類、三糖類等が挙げられ、サッカロース、マルトース、デキストリン等が挙げられる。多糖類としては、デキストリン、澱粉、澱粉の分解物(例えば澱粉の酵素分解物)等が挙げられる。また、これら単糖類、オリゴ糖類を含む糖蜜類が挙げられる。
【0020】
また、糖アルコールとしては、エリスリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール等が挙げられ、ソルビトールが好ましい。
【0021】
水硬性組成物用混和剤の粘度低下の観点から、オキシカルボン酸、糖類及び糖アルコールから選ばれる化合物は、好ましくはグルコン酸、酒石酸、クエン酸及びソルビトールから選ばれる1種以上の化合物、より好ましくはグルコン酸、酒石酸及びソルビトールから選ばれる1種以上の化合物、更に好まししくはグルコン酸及びソルビトールから選ばれる1種以上の化合物、より更に好ましくはグルコン酸である。」
(エ)「【0022】
<水硬性組成物用混和剤>
本発明の水硬性組成物用混和剤は、NSFと、トリイソプロパノールアミンと、ヒドロキシ化合物と、水とを含有する。水は混和剤の残部であり、混和剤が全体で100質量%となるような量で含有される。
【0023】
混和剤中のNSFの含有量は、水硬性粉体の分散性向上効果の観点から、混和剤中10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0024】
混和剤中のトリイソプロパノールアミンの含有量は、28日強度向上効果の観点から、混和剤中1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0025】
混和剤中のヒドロキシ化合物の含有量は、水硬性組成物用混和剤の粘度低下の観点から、混和剤中1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。また、混和剤中のトヒドロキシ化合物の含有量は、水硬性組成物の凝結遅延を抑制する観点から、更に好ましくは25質量%以下である。
【0026】
本発明の水硬性組成物用混和剤は、28日強度向上効果と水硬性組成物用混和剤の粘度低下の観点から、トリイソプロパノールアミンとヒドロキシ化合物とのモル比が、トリイソプロパノールアミン/ヒドロキシ化合物で、0.3以上1.6以下であることが好ましい。このモル比は、より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.6以上、そして、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下、より更に好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.7以下である。」
(オ)「【0057】
【表2】
[図:0001397172000018.jpg]
」
(2)各甲号証に記載された発明
ア 甲1に記載された発明
前記(1)アの甲1の記載事項について、当審訳を用いて甲1に記載された発明を認定する。
(ア)甲1には、前記(1)ア(ア)の[0008]から、「セメント系組成物の硬化時間に悪影響を及ぼさない」で「セメント系組成物の圧縮強度を向上させ」ることを解決すべき課題とする「混和剤組成物」について記載されているといえるものであり、当該「混和剤組成物」は「ポリカルボキシレート分散剤」、「凝結遅延剤」及び「強度向上添加剤」の各成分からなることが記載されているといえる。
(イ)前記(ア)の各成分のうちの「凝結遅延剤」について、前記(1)ア(ク)の[0138]には、「凝結遅延剤」として「グルコン酸、・・・およびその対応する塩」を用い得ることが記載されている。
(ウ)前記(ア)の各成分のうちの「強度向上添加剤」について、前記(1)ア(ケ)の[0140]には、「強度向上添加剤」として「トリイソプロパノールアミン」を用い得ることが記載されている。
(エ)ここで、前記(ア)の「混和剤組成物」の実施例として、前記(1)ア(コ)の[0206]及び同(サ)の表9に示される「試料S-87」には、「ポリカルボキシレート分散剤」、「グルコン酸ナトリウムとグルコン酸の混合物」及び「トリイソプロパノールアミン」を含むものが記載されている。
なお、「試料S-87」は「リン酸トリブチル(TBP)」を含み、前記(1)ア(ク)の[0138]から「凝結遅延剤」として「ホスホン酸塩」が記載されるところ、「ホスホン酸」はHP(=O)(OH)2、「リン酸トリブチル(TBP)」は(CH3(CH2)3O)P(=O) (CH3(CH2)3O)2と書ける構造で、「ホスホン酸塩」は例えば「ホスホン酸」の前記構造式の「H」が「Na」等になっていて、「塩」なので電離できるものであるが、「リン酸トリブチル(TBP)」は前記構造式から見て結合が異なり電離しないので「ホスホン酸塩」ではなく、「凝結遅延剤」に相当しない。
(オ)以上から、上記(ア)に記載される「ポリカルボキシレート分散剤」、「凝結遅延剤」及び「強度向上添加剤」の各成分からなる「混和剤組成物」に対し、上記(エ)に記載される「試料S-87」の各成分を、上記(イ)及び(ウ)の「剤」と化合物の対応関係を考慮して、対応付けると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されていると認められる。
「トリイソプロパノールアミンと、
グルコン酸ナトリウムとグルコン酸の混合物と、
ポリカルボキシレート分散剤を含む、
混和剤組成物。」
(カ)甲1には、前記(1)ア(ア)の[0009]から、「セメント系組成物」は、「水硬性セメント」及び「強度向上混和剤組成物」からなり、当該「混和剤組成物」は、「ポリカルボキシレート分散剤」、「凝結遅延剤」及び「強度向上添加剤」の各成分からなることが記載されているといえるとともに、前記(イ)~(エ)によれば、「凝結遅延剤」として「グルコン酸ナトリウムとグルコン酸の混合物」が、「強度向上添加剤」として「トリイソプロパノールアミン」が、それぞれ用いられるといえるから、甲1の記載内容を「セメント系組成物」の発明として整理すれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明B」という。)が記載されていると認められる。
「トリイソプロパノールアミンと、
グルコン酸ナトリウムとグルコン酸の混合物と、
ポリカルボキシレート分散剤と、
水硬性セメントを含む、
セメント系組成物。」
イ 甲2に記載された発明
前記(1)イの甲2の記載事項について、当審訳を用いて甲2に記載された発明を認定する。
(ア)甲2には、前記(1)イ(ア)の[0007]から、「セメント系組成物の硬化時間に悪影響を及ぼさない」で「セメント系組成物の圧縮強度を向上させ」ることを解決すべき課題とする「混和剤組成物」について記載されているといえるものであり、当該「混和剤組成物」は「ポリカルボキシレート分散剤」及び「強度向上添加剤」の各成分からなることが記載されているといえる。
(イ)前記(ア)の各成分のうちの「強度向上添加剤」について、前記(1)イ(キ)の[0133]には、「強度向上添加剤」として「トリイソプロパノールアミン」を用い得ることが記載されている。
(ウ)ここで、前記(ア)の「混和剤組成物」の実施例として、前記(1)イ(ケ)の[0186]及び同(コ)の表4に示される「試料S-23」には、「ポリカルボキシレート分散剤」及び「トリイソプロパノールアミン」を含むものが記載されている。なお、当審訳は付与していないが、「試料S-22」についても同様の成分を含むものが記載されている。
(エ)以上から、上記(ア)に記載される「ポリカルボキシレート分散剤」及び「強度向上添加剤」の各成分からなる「混和剤組成物」に対し、上記(ウ)に記載される「試料S-23」の各成分を、上記(イ)の「剤」と化合物の対応関係を考慮して、対応付けると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明A」という。)が記載されていると認められる。
「トリイソプロパノールアミンと、
ポリカルボキシレート分散剤を含む、
混和剤組成物。」
(オ)甲2には、前記(1)イ(ア)の[0008]から、「セメント系組成物」は、「強度向上混和剤組成物」を含み、さらに同(ケ)の[0186]及び同(コ)の表4から、当該「セメント系組成物」は「セメント」を含むことが記載されているといえるとともに、前記(ア)~(ウ)によれば、当該「強度向上混和剤組成物」は、「ポリカルボキシレート分散剤」及び「強度向上添加剤」の各成分からなり、「強度向上添加剤」として「トリイソプロパノールアミン」が用いられるといえるから、甲2の記載内容を「セメント系組成物」の発明として整理すれば、甲2には次の発明(以下、「甲2発明B」という。)が記載されていると認められる。
「トリイソプロパノールアミンと、
ポリカルボキシレート分散剤と、
セメントを含む、
セメント系組成物。」
(3)対比・判断
ア 甲1を主引用例とした場合(取消理由2-1及び2-2、申立理由2-1及び2-2)
(ア)本件発明1について
a 甲1発明Aとの対比・判断
(a)甲1発明Aの「トリイソプロパノールアミン」は、本件発明1の「トリイソプロパノールアミン」である「A成分」に相当するのは明らかである。
(b)本件明細書【0026】及び【0027】には、「オキシカルボン酸」、「オキシカルボン酸の塩」として「グルコン酸」、そのナトリウム塩が記載されているから、甲1発明Aの「グルコン酸ナトリウムとグルコン酸の混合物」は、本件発明1の「オキシカルボン酸もしくはその塩」「から選ばれる少なくとも1種」である「B成分」に相当する。
(c)甲1発明Aの「混和剤組成物」は、甲1の前記(1)ア(ア)の[0008]から「セメント系組成物」の「圧縮強度の向上」等を目的とするから、本件発明1の「セメント用添加剤」に相当する。
(d)以上から、本件発明1と甲1発明Aとは、次の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「トリイソプロパノールアミン(A成分)と、
オキシカルボン酸もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種(B成分)と、を含む、
セメント用添加剤」
<相違点1-1>
第3成分について、本件発明1では「ポリエチレングリコール(c1成分)と3価以上の多価アルコールにアルキレンオキシドが付加された構造を有する化合物(c2成分)から選ばれる少なくとも1種」を含み、「該c2成分が、グリセリンのアルキレンオキシド付加体、エリスリトールのアルキレンオキシド付加体、メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体を除く)、ソルビトールのアルキレンオキシド付加体、3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体、および、ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体を除く)、ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体から選ばれる少なくとも1種であり、該c2成分の重量平均分子量が5000~1000000である」のに対して、甲1発明Aでは「ポリカルボキシレート分散剤」である点。
[図:0001397172000019.jpg]
(一般式(2)において、R4とR5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、M1は、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アミン基である。)
b 相違点に対する判断
(a)甲1発明Aの「ポリカルボキシレート分散剤」が具体的にはどのようなものであり得るのかについてみると、甲1の前記(1)ア(イ)の[0015]には「ポリカルボキシレート分散剤」は「分散剤の式a)~k)」のいずれかであり得ることが記載されており、これら式a)~k)の分散剤のうち、本件発明1のc2成分に関連するものとして、本件発明1の「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」に対応する「式d)」の分散剤、及び「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」に対応する「式i)」及び「式j)」の分散剤の各場合について検討する。
(b)式d)の分散剤についてみると、甲1の前記(1)ア(ウ)の[0041]及び[0042]の記載から、式d)の分散剤では、「ポリカルボキシレート分散剤」は、一般式(1)で表される「(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a)5~98重量%」と、一般式(2)で表される「(メタ)アクリル酸モノマー(b)95~2重量%」と、「これらのモノマーと共重合可能な他のモノマー(c)0~50重量%」を共重合して得られる分散剤であり、ただし、(a)、(b)及び(c)の合計量は100重量%である。ここで、(c)は存在しない(0重量%)ものとすることができる。
そして、(a)成分である一般式(1)において、結合(付加)している「R2O」はアルキレンオキシドであるから、R1=CH3(メチル基)とすると、(a)成分である一般式(1)は、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体」であり、これが共重合して得られる共重合体は、前記1(2)で述べた、重合体における「・・・由来の構造単位」が「・・・を重合反応させて形成した構造単位」を意味するとの技術常識も考慮すれば、本件発明1の「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」であるといえる。
一方、式d)の分散剤は、同[0041]の一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー(b)を共重合して得られる共重合体でもあるところ、当該一般式(2)は本件発明1の一般式(2)と同じ式であるから、由来との用語に係る前記技術常識によれば、この共重合体は、本件発明1の「一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体」そのものであって、本件発明1の「c2成分」の1つである「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」から除かれた部分そのものであるといえる。
そうすると、式d)の分散剤は、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」ではあるものの、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体を除く)」であるとはいえない。
(c)式i)の分散剤についてみると、甲1の前記(1)ア(エ)及び(オ)の[0087]、[0094]及び[0095]の記載から、式i)の分散剤では、「ポリカルボキシレート分散剤」は、「オキシアルキレングリコール-アルケニルエーテル」と「不飽和ジカルボン酸」との共重合体であり、その構造は、少なくともii)の一般式4で表される成分を有する共重合体である。
そして、一般式4において、R3=CH3(1個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基)、p=2とすると、一般式4は-CH2-CH(CH3)-(CH2)2-O-(CmH2mO)nR1であり、この成分を有する共重合体は、CH2=CH(CH3)-(CH2)2-OH(3-メチル-3-ブテニルアルコール)に「アルキレンオキシド」(一般式:CmH2mO)を付加した構造単位が重合した構造といえるから、前記1(2)で述べた由来との用語に係る技術常識も考慮すれば、本件発明1の「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」であるといえる。
一方、式i)の分散剤は、「不飽和ジカルボン酸」の共重合体でもあるところ、由来との用語に係る前記技術常識によれば、この共重合体は、本件発明1の「不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体」そのものであって、本件発明1の「c2成分」の1つである「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」から除かれた部分そのものであるといえる。
そうすると、式i)の分散剤は、「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」ではあるものの、「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体、および、ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体を除く)」であるとはいえない。
(d)式j)の分散剤についてみると、甲1の前記(1)ア(カ)及び(キ)の[0110]及び[0118]~[0123]の記載から、式j)の分散剤では、「ポリカルボキシレート分散剤」は、「ジカルボン酸誘導体」と「オキシアルキレングリコール-アルケニルエーテル」との共重合体であり、その構造は、少なくともii)の式8で表される構造単位を有する共重合体である。
そして、式8において、R3=CH3(C1の脂肪族炭化水素)、p=2とすれば、前記(c)と同様に、式8の構造単位を有する共重合体は、本件発明1の「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」であるといえる。
一方、式j)の分散剤は、「ジカルボン酸誘導体」の共重合体でもあるところ、前記1(2)で述べた由来との用語に係る技術常識によれば、この共重合体は、本件発明1の「ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体」そのものであって、本件発明1の「c2成分」の1つである「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」から除かれた部分そのものであるといえる。
そうすると、式j)の分散剤は、「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」ではあるものの、「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体、および、ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体を除く)」であるとはいえない。
(e)前記(b)~(d)によれば、式d)、式i)及び式j)の分散剤のいずれも、本件発明1の「c1成分」又は「c2成分」として列挙されるいずれかに相当するものであるとはいえず、甲1には、他に本件発明1の「c1成分」又は「c2成分」として列挙されるいずれかに相当するものも存在しないため、前記相違点1-1は実質的なものといえるから、本件発明1が甲1発明Aであるとはいえない。
(f)前記相違点1-1の容易想到性について検討すると、甲1の前記(1)ア(ア)の[0008]によれば、「圧縮強度を向上させつつ、セメント系組成物の硬化時間に悪影響を及ぼさない」ような「セメント系組成物」を得るために、「ポリカルボキシレート分散剤」、「凝結遅延剤」及び「強度向上添加剤」の各成分が提供されるところ、甲1において分散剤として列挙される式d)、式i)及び式j)の分散剤は、いずれも特定の構造を有する共重合体であって、式d)の分散剤は、少なくとも「一般式(1)で表される(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a)」及び「一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー(b)」の組み合わせで、式i)の分散剤は、少なくとも「オキシアルキレングリコール-アルケニルエーテル」及び「不飽和ジカルボン酸」の組み合わせで、式j)の分散剤は、少なくとも「ジカルボン酸誘導体」及び「オキシアルキレングリコール-アルケニルエーテル」の組み合わせで、それぞれ分散剤の機能を発揮するものである。そして、甲1には、これらの各組み合わせのうち、本件発明1において除くものとして特定される単量体由来の構造単位をその他の構造単位に置き換えることについて何ら記載がなく、そうすることの動機付けも存在しないというべきである。
また、念のため他の甲号証についてみても、甲2については、本件発明1の「c2成分」と類似の成分について記載があるものの、後記イ(ア)b(b)~(f)で述べるとおり、本件発明1の「c2成分」において特定の共重合体が除かれた共重合体についての記載も示唆もなく、甲3の前記(1)ウの各記載事項をみても、本件発明1の「c1成分」又は「c2成分」についての記載も示唆もない。
(g)小括
以上のとおり、前記相違点1-1に係る本件発明1の構成は、前記相違点1-1のうちc2成分の重量平均分子量に係る相違点について検討するまでもなく、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないから、本件発明1は、甲1発明Aであるとはいえないし、甲1発明A及び甲1~3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
c 異議申立人の主張について
(a)令和4年6月24日に提出された意見書における異議申立人の主張の概要
(a1)特許権者が主張する本件発明1の効果について、甲1には、セメント系組成物の圧縮強度を向上させることが記載され、実施例において28日圧縮強度が評価されている一方、本件発明1は、「セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント用添加剤を提供することができる。」(【0010】)ことが記載され、実施例では28日圧縮強度が評価されており、本件発明1における効果と甲1に記載の発明における効果は、同様のものである。
ここで、特許権者による訂正は、いわゆる「除くクレーム」であり、「除くクレーム」については、審査基準に「「除くクレーム」とすることにより特許を受けることができる発明は、引用発明と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有するが、たまたま引用発明と重なるような発明である。引用発明と技術的思想としては顕著に異なる発明ではない場合は、「除くクレーム」とすることによって進歩性欠如の拒絶理由が解消されることはほとんどないと考えられる。」と記載されており、本件発明と甲1に記載の発明は、いずれも「セメント組成物の硬化物の硬度を長期にわたって向上させる」という同様の効果を奏するものであり、これらの発明は、技術思想として顕著に異なるものではない。
したがって、特許権者による訂正は、上記の「除くクレーム」の趣旨に合致せず、進歩性欠如は未だ解消しない。
(2頁4行~3頁14行)
(a2)甲1に記載の発明において、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位」と「(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位」を有する共重合体は、「ポリカルボキシレート分散剤」の中でも好ましいものを具体的に例示しているに過ぎず、当該共重合体に限定されるものではない。
そして、当該共重合体において、「(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位」に代えて「他の構造単位」を選択し採用することは、当業者であれば容易に想到し得ることであり、特に、本件明細書には、そのようなものを選択した場合の共重合体が新たな効果を奏することについて何ら記載されておらず、このことは、特許権者の意見書において、訂正後のc2成分は、セメント用添加剤が添加されたセメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって十分に向上させることができることを主張しているだけであることからも明らかである。
(3頁15行~4頁6行)
(b)異議申立人の主張に対する判断
(b1)前記(a1)の主張について検討する。
まず、異議申立人が引用する「除くクレーム」に係る審査基準では、引用発明と技術的思想としては顕著に異なる発明ではない場合、「除くクレーム」とすることによって進歩性欠如の拒絶理由が解消されることは「ほとんどないと考えられる」と説示するにとどまっており、実際に進歩性欠如の理由が解消されるか否かは、個別の事案ごとに、本件発明と引用発明との技術思想の異同の程度や、引用発明の記載内容、動機付けの有無等を考慮して判断すべきである。
そこで、本件発明1と甲1発明Aとの技術思想の異同についてみると、本件発明1は、本件明細書によれば、後記3(2)イ及びウのとおり、「セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント用添加剤を提供すること」を課題とし、「トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-N-(ヒドロキシエチル)アミンから選ばれる少なくとも1種(A成分)と、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる少なくとも1種(B成分)と、を含む」ものであって、これにより、「セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント用添加剤を提供することができる」との効果を奏するものであり、さらに本件発明1の「c2成分」については、「セメント組成物の硬化物の強度を長期間にわたって顕著に向上させ得る」(【0036】)との効果を奏するものといえる。
一方、甲1発明Aは、前記(1)ア(ア)及び(コ)によれば、「セメント系組成物の圧縮強度を向上させつつ、セメント系組成物の硬化時間に悪影響を及ぼさない」ことを課題とし、特定の「ポリカルボキシレート分散剤」、「凝結遅延剤」及び「強度向上添加剤」の各成分からなる混和剤組成物を提供するものであって([0008])、コンクリート混合物の所望の28日の圧縮強度及び硬化時間を得るとの効果を奏するものといえる([0187]、[0205]及び表9等)。
そうすると、両者の技術思想は、セメント系組成物の28日程度の長期的な圧縮強度を向上させる点で共通するものの、甲1においては、圧縮強度向上に加えて硬化時間に悪影響を及ぼさないものとする点で異なるものである。
また、甲1では、圧縮強度及び硬化時間の両観点から、特定の「ポリカルボキシレート分散剤」、「凝結遅延剤」及び「強度向上添加剤」の各成分が選択されているのであるから、これらの成分のうち、本件発明1が甲1発明Aと重なっている特定の事項を除外することを明示する、本件発明1の「除くクレーム」に係る構成は、「除くクレーム」の趣旨に合致しないとまではいえず、前記bで述べたとおり、新規性及び進歩性を有するものといえる。
(b2)前記(a2)の主張について検討する。
前記b(f)で述べたとおり、甲1発明Aのポリカルボキシレート分散剤として列挙された式d)、式i)及び式j)を含む各式の分散剤において、本件発明1において除くものとして特定される部分の構造又は成分を他の構造又は成分に置き換えることについて何ら記載がなく、そうすることの動機付けも存在しないというべきである。
そして、同(f)で述べたとおり、他の甲号証についてみても、本件発明1の「c1成分」又は「c2成分」についての記載も示唆もないのであるから、甲1発明A及び甲1~3に記載の事項からは、本件発明1に到達できるものではなく、本件明細書に「(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位」に代えて「他の構造単位」を採用した場合の新たな効果について何ら記載されていないからといって、本件発明1の進歩性が否定されるものではない。
(c)小括
以上から、異議申立人の前記(a1)及び(a2)の各主張は、いずれも採用できない。
(イ)本件発明2について
a 甲1発明Bとの対比・判断
(a)甲1発明Bの「トリイソプロパノールアミン」は、本件発明2の「トリイソプロパノールアミン」である「A成分」に相当するのは明らかである。
(b)前記(ア)a(b)で述べたのと同様に、甲1発明Bの「グルコン酸ナトリウムとグルコン酸の混合物」は、本件発明2の「オキシカルボン酸もしくはその塩」「から選ばれる少なくとも1種」である「B成分」に相当する。
(c)甲1発明Bの「水硬性セメント」は、本件発明2の「セメント」に相当する。
(d)甲1発明Bの「セメント系組成物」は、本件発明2の「セメント組成物」に相当する。
(e)以上から、本件発明2と甲1発明Bとは、次の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「トリイソプロパノールアミン(A成分)と、
オキシカルボン酸もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種(B成分)と、
セメントと、を含む、
セメント組成物」
<相違点1-2-1>
第3成分について、本件発明2では「一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含むポリカルボン酸系共重合体(P)」であるのに対して、甲1発明Bでは「ポリカルボキシレート分散剤」である点。
【化1】
[図:0001397172000020.jpg]
(一般式(1)中、R1およびR2は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R3は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基であり、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~500であり、xは0~2の整数であり、yは0または1である。)
【化2】
[図:0001397172000021.jpg]
(一般式(2)中、R4~R6は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CH2)ZCOOM基を表し、-(CH2)ZCOOM基は-COOX基または他の-(CH2)ZCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0~2の整数であり、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表し、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。)
<相違点1-2-2>
第1成分及び第2成分の質量について、本件発明2では、「B成分の質量/A成分の質量が、200%~10000%」であるのに対し、甲1発明Bでは、当該発明特定事項を有するのか否か明らかでない点。
b 相違点に対する判断
事案に鑑み、前記相違点1-2-2から検討する。
(a)甲1発明Bの「トリイソプロパノールアミン」及び「グルコン酸ナトリウムとグルコン酸の混合物」の各成分の含有量について、甲1の前記(1)ア(ケ)の[0139]によれば、「トリイソプロパノールアミン」を含む「強度向上添加剤」の含有量は、「混和剤組成物成分の総乾燥重量」を基準にして「約0.5%~約40%」又は「約2%~約25%」であり、同(ク)の[0138]によれば、「グルコン酸ナトリウムとグルコン酸の混合物」を含む「凝結遅延剤」の含有量は、「混和剤組成物成分の総乾燥重量」を基準にして「約0.5%~約40%」又は「約2%~約25%」であり、実施例においては、同(サ)の表9によれば、「トリイソプロパノールアミン」の含有量は0.03重量%、「グルコン酸ナトリウムとグルコン酸の混合物」の含有量は0.03重量%である。これらの含有量の値からすると、両成分の含有量が取り得る範囲に差はなく、実施例においても同量であることから、本件発明1の「B成分の質量/A成分の質量」に対応する「凝結遅延剤」の質量/「強度向上添加剤」の質量の値は、専ら100%であることが想定されているといえる。したがって、前記相違点1-2-2は実質的なものといえるから、本件発明2が甲1発明Bであるとはいえない。
(b)前記相違点1-2-2の容易想到性について検討すると、甲1の前記(1)ア(ア)の[0008]によれば、「圧縮強度を向上させつつ、セメント系組成物の硬化時間に悪影響を及ぼさない」ような「セメント系組成物」を得るために「ポリカルボキシレート分散剤」、「凝結遅延剤」及び「強度向上添加剤」の各成分が提供されるところ、甲1における「グルコン酸ナトリウムとグルコン酸の混合物」を含む「凝結遅延剤」は、同(ク)の[0138]によれば、「コンクリートの硬化を引き延ばし、遅延させ、硬化速度を落とさせるもの」であるから、「凝結遅延剤」の質量/「強度向上添加剤」の質量の値として専ら100%が想定されている甲1発明Bのセメント系組成物において、「セメント系組成物の硬化時間に悪影響を及ぼさない」ようにするという技術思想に反して「凝結遅延剤」をさらに増量させて、「凝結遅延剤」の質量/「強度向上添加剤」の質量の値を200%以上とする動機付けは、存在しないというべきである。
また、念のため他の甲号証についてみると、甲2については、後記イ(イ)b(a)及び(b)で述べるとおり、「グルコン酸」や「糖」を含む「凝結遅延剤」の含有量について、さらには、「凝結遅延剤」の質量/「強度向上添加剤」の質量の値についても、何ら記載も示唆もない。
また、甲3については、前記(1)ウ(ア)、(ウ)及び(エ)によれば、「ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物」、「トリイソプロパノールアミン」及び「オキシカルボン酸、糖類及び糖アルコールから選ばれる1種以上の化合物」を含む「水硬性組成物用混和剤」(【請求項1】)において、「トリイソプロパノールアミン」と「オキシカルボン酸、糖類及び糖アルコールから選ばれる1種以上の化合物」である「ヒドロキシ化合物」(【0017】)との含有量の関係について、「28日強度向上効果と水硬性組成物用混和剤の粘度低下の観点」から、「トリイソプロパノールアミンとヒドロキシ化合物とのモル比」が、「トリイソプロパノールアミン/ヒドロキシ化合物で、0.3以上1.6以下であることが好まし」く、「より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.6以上、そして、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下、より更に好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.7以下」(【0026】)であり、実施例においては、同(オ)の【表2】によれば、試験例2-10(実施例K)として、TiPA(トリイソプロパノールアミン)を0.1質量%、ヒドロキシ化合物を0.2050質量%、ヒドロキシ化合物/トリイソプロパノールアミンの比にして205%のものが挙げられている。しかしながら、甲3は、同(ア)の【請求項1】等に記載されるように、「トリイソプロパノールアミン」及び「オキシカルボン酸、糖類及び糖アルコールから選ばれる1種以上の化合物」に加えて「ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物」を必須の成分とするものであるところ、そのような前提のもとでヒドロキシ化合物/トリイソプロパノールアミンの比にして205%としたものにおいて28日強度向上効果を奏するとしても、「ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物」を必須としない成分からなる甲1発明Bの「セメント系組成物」における、「トリイソプロパノールアミン」に対する「グルコン酸ナトリウムとグルコン酸の混合物」の比として、甲3に記載されるヒドロキシ化合物/トリイソプロパノールアミンの比の205%との値を直ちに採用できるものとはいえず、その値を採用したとしても、甲1が「ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物」を必須としないため、甲3と同様の効果を奏することが予測可能であるとは必ずしもいえないし、そのような技術常識も存在しない。
したがって、他の甲号証を考慮したとしても、前記相違点1-2-2に係る本件発明2の構成は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
(c)小括
以上のとおり、前記相違点1-2-2に係る本件発明2の構成は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないから、前記相違点1-2-1について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明Bであるとはいえないし、甲1発明B及び甲1~3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(ウ)本件発明3について
本件訂正後の請求項3は本件訂正後の請求項2を引用しており、本件発明3は、本件発明2の構成をすべて具備するものであるから、本件発明2と同様に、本件発明3は、甲1発明Bであるとはいえないし、甲1発明B及び甲1~3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲2を主引用例とした場合(申立理由1及び2-3)
(ア)本件発明1について
a 甲2発明Aとの対比・判断
(a)甲2発明Aの「トリイソプロパノールアミン」は、本件発明1の「トリイソプロパノールアミン」である「A成分」に相当するのは明らかである。
(b)甲2発明Aの「混和剤組成物」は、甲2の前記(1)イ(ア)の[0007]から「セメント系組成物」の「圧縮強度の向上」等を目的とするから、本件発明1の「セメント用添加剤」に相当する。
(c)以上から、本件発明1と甲2発明Aとは、次の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「トリイソプロパノールアミン(A成分)を含む、
セメント用添加剤」
<相違点2-1-1>
第2成分について、本件発明1では、「オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる少なくとも1種(B成分)」を含むのに対し、甲2発明Aでは、当該発明特定事項を有するのか否か明らかでない点。
<相違点2-1-2>
第3成分について、本件発明1では「ポリエチレングリコール(c1成分)と3価以上の多価アルコールにアルキレンオキシドが付加された構造を有する化合物(c2成分)から選ばれる少なくとも1種」を含み、「該c2成分が、グリセリンのアルキレンオキシド付加体、エリスリトールのアルキレンオキシド付加体、メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体を除く)、ソルビトールのアルキレンオキシド付加体、3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体、および、ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体を除く)、ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体から選ばれる少なくとも1種であり、該c2成分の重量平均分子量が5000~1000000である」のに対して、甲2発明Aでは「ポリカルボキシレート分散剤」である点。
[図:0001397172000022.jpg]
(一般式(2)において、R4とR5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、M1は、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アミン基である。)
b 相違点に対する判断
事案に鑑み、前記相違点2-1-2から検討する。
(a)甲2発明Aの「ポリカルボキシレート分散剤」が具体的にはどのようなものであり得るのかについてみると、甲2の前記(1)イ(イ)の[0011]には「ポリカルボキシレート分散剤」は「分散剤の式a)~j)の少なくとも1つ」であり得ることが記載されており、これら式a)~j)の分散剤のうち、本件発明1のc2成分に関連するものとして、本件発明1の「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」に対応する「式d)」の分散剤、及び「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」に対応する「式i)」及び「式j)」の分散剤の各場合について検討する。
(b)式d)の分散剤についてみると、甲2の前記(1)イ(ウ)の[0032]及び[0033]の記載から、式d)の分散剤では、「ポリカルボキシレート分散剤」は、一般式(1)で表される「(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a)5~98重量%」と、一般式(2)で表される「(メタ)アクリル酸モノマー(b)95~2重量%」と、「これらのモノマーと共重合可能な他のモノマー(c)0~50重量%」を共重合して得られる分散剤であり、ただし、(a)、(b)及び(c)の合計量は100重量%であるが、これらの各成分は、前記ア(ア)b(b)で検討した甲1の式d)と同じものである。
そうすると、同(b)で述べた甲1の式d)の分散剤と同様の理由から、甲2の式d)の分散剤は、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」ではあるものの、「メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー由来の構造単位を有する共重合体を除く)」であるとはいえない。
(c)式i)の分散剤についてみると、甲2の前記(1)イ(エ)の[0083]、[0090]及び[0091]の記載から、式i)の分散剤では、「ポリカルボキシレート分散剤」は、「オキシアルキレングリコール-アルケニルエーテル」と「不飽和モノ及び/又はジカルボン酸」との共重合体であり、その構造は、少なくともii)の一般式4で表される成分を有する共重合体である。
そして、一般式4において、R3=CH3(1個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基)、p=2とすると、一般式4は-CH2-CH(CH3)-(CH2)2-O-(CmH2mO)nR1であり、この成分を有する共重合体は、CH2=CH(CH3)-(CH2)2-OH(3-メチル-3-ブテニルアルコール)に「アルキレンオキシド」(一般式:CmH2mO)を付加した構造単位が重合した構造といえるから、前記1(2)で述べた由来との用語に係る技術常識も考慮すれば、本件発明1の「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」であるといえる。
一方、式i)の分散剤は、「不飽和モノ及び/又はジカルボン酸」の共重合体でもある。当該式i)の分散剤は、甲2の前記(1)イ(エ)によれば、i)0~90モル%の式3a又は3bの少なくとも1つの成分([0084])、ii)1-89モル%の一般式4の成分([0090])、iii)0-10モル%の式5a又は5bの少なくとも1つの成分([0092])、及びiv)0~90モル%の式6a、6b又は6cのうちの少なくとも1つの成分([0097])の各成分(以下、「成分i)」~「成分iv)」という。)からなるものであるが、カルボン酸と必ずしも関係しない成分ii)及び成分iii)は、併せて最大でも99モル%であるから、残る成分i)及び成分iv)は、併せて少なくとも1%存在するものと解される。そこで、成分i)及び成分iv)についてみると、成分i)については、式3aは-COOMa及び-COX(Xは-O-…又は-N-…)を、式3bは-OC-Y-CO-を、それぞれ有しているから、いずれもジカルボン酸の誘導体であり、成分iv)については、式6b及び6cは式3a及び3bと同様にいずれもジカルボン酸の誘導体であり、式6aは、少なくとも1つのカルボキシル基を有するが、同式におけるR1に直接対応する定義がなく、また、同(エ)の[0087]の-O-(CmH2mO)n-R1におけるR1との関係も必ずしも明らかでないため、R1の内容が判然としない。してみると、成分i)又は成分iv)の少なくともいずれかを1%含む式i)の分散剤は、前記1(2)で述べた由来との用語に係る技術常識も考慮すると、専らジカルボン酸又はその誘導体由来の構造を有するものを、実体を有するものとして把握することができる一方で、モノカルボン酸又はその誘導体由来の構造を有するものは、その構造が判然とせず実体を有するものとして把握することができるとはいえないから、式i)の分散剤は、実質的には不飽和ジカルボン酸又はその誘導体由来の共重合体であるといえる。
ここで、甲2の式3a及び3bは、甲1の前記(1)ア(エ)によれば、甲1の式i)の分散剤におけるi)の成分である式3a及び3b([0088]~[0093])と同じ式であると共に、成分iv)である式6b及び6cも不飽和ジカルボン酸又はその誘導体であり、甲1では「不飽和ジカルボン酸」の「共重合体」([0087])との表現を用いて式3a及び3bのようなジカルボン酸又はその誘導体の構造を含む共重合体を表しているところ、本件発明1の「c2成分」における「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体、および、ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体を除く)」との特定は、「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」から、甲1との重なり部分、すなわち、ジカルボン酸又はその誘導体由来の構造を含む共重合体を実質的に表している、甲1の前記「不飽和ジカルボン酸」由来の構造単位を有する共重合体を除くものであるから、甲2の式i)の分散剤としての不飽和ジカルボン酸又はその誘導体由来の共重合体についても、同様に除かれることは明らかである。
そうすると、甲2の式i)の分散剤は、「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」ではあるものの、「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体、および、ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体を除く)」であるとはいえない。
(d)式j)の分散剤についてみると、甲2の前記(1)イ(オ)及び(カ)の[0104]及び[0112]~[0117]の記載から、式j)の分散剤では、「ポリカルボキシレート分散剤」は、「ジカルボン酸誘導体」と「オキシアルキレングリコール-アルケニルエーテル」との共重合体であり、その構造は、少なくともii)の式8で表される構造単位を有する共重合体であるが、この構造は、前記ア(ア)b(d)で検討した甲1の式j)と同じものである。
そうすると、同(d)で述べた甲1の式j)の分散剤と同様の理由から、甲2の式j)の分散剤は、「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」ではあるものの、「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体(ただし、不飽和ジカルボン酸由来の構造単位を有する共重合体、および、ジカルボン酸誘導体由来の構造単位を有する共重合体を除く)」であるとはいえない。
(e)前記(b)~(d)によれば、式d)、式i)及び式j)の分散剤のいずれも、本件発明1の「c1成分」又は「c2成分」として列挙されるいずれかに相当するものであるとはいえず、甲2には、他に本件発明1の「c1成分」又は「c2成分」として列挙されるいずれかに相当するものも存在しないため、前記相違点2-1-2は実質的なものといえるから、本件発明1が甲2発明Aであるとはいえない。
(f)前記相違点2-1-2の容易想到性について検討すると、甲2の前記(1)イ(ア)の[0007]によれば、「圧縮強度を向上させつつ、セメント系組成物の硬化時間に悪影響を及ぼさない」ような「セメント系組成物」を得るために「ポリカルボキシレート分散剤」及び「強度向上添加剤」の各成分が提供されるところ、甲2において分散剤として列挙される式d)、式i)及び式j)の分散剤は、いずれも特定の構造を有する共重合体であって、式d)の分散剤は、少なくとも「一般式(1)で表される(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a)」及び「一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸モノマー(b)」の組み合わせで、式i)の分散剤は、実質的には「オキシアルキレングリコール-アルケニルエーテル」及び「不飽和ジカルボン酸」又はその誘導体の組み合わせで、式j)の分散剤は、「ジカルボン酸誘導体」及び「オキシアルキレングリコール-アルケニルエーテル」の組み合わせで、それぞれ分散剤の機能を発揮するものである。そして、甲2には、これらの組み合わせのうち、本件発明1において除くものとして特定される単量体由来の構造単位をその他の構造単位に置き換えることについて何ら記載がなく、そうすることの動機付けも存在しないというべきである。
また、念のため他の甲号証についてみても、甲1については、本件発明1の「c2成分」と類似の成分について記載があるものの、前記ア(ア)b(b)~(f)で述べたとおり、本件発明1の「c2成分」において特定の共重合体が除かれた共重合体についての記載も示唆もなく、また、甲3の前記(1)ウの各記載事項をみても、本件発明1の「c1成分」又は「c2成分」についての記載も示唆もない。
(g)次に、相違点2-1-2の容易相当性を相違点2-1-1の内容も含め検討する。
相違点2-1-1に関しては、甲2の前記(1)イ(ク)の[0159]に、「凝結遅延剤」として「グルコン酸」や「糖」等を使用することが可能であるとの記載がある。しかしながら、甲2の実施例では、同(ケ)及び(コ)によれば、「トリイソプロパノールアミン」及び「ポリカルボキシレート分散剤」を含むとの記載にとどまり、具体的にこれらの3つの成分を共に使うことは明記されていない。
一方、本件発明1は、これらの3つの成分を併用することにより、「セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得る」(本件明細書の【0010】)との効果が「より発現し得る」(同【0032】)ことを達成するものである。
そうすると、甲2は、そのようなことを認識していないものであるから、「凝結遅延剤」、「トリイソプロパノールアミン」及び特定の「ポリカルボキシレート分散剤」の併用を当業者が容易に想到し得るとはいえない。
(h)小括
以上のとおり、前記相違点2-1-2に係る本件発明1の構成は、前記相違点2-1-2のうちc2成分の重量平均分子量に係る相違点について検討するまでもなく、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないから、本件発明1は、甲2発明Aであるとはいえないし、甲2発明A及び甲1~3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(イ)本件発明2について
a 甲2発明Bとの対比・判断
(a)甲2発明Bの「トリイソプロパノールアミン」は、本件発明2の「トリイソプロパノールアミン」である「A成分」に相当するのは明らかである。
(b)甲2発明Bの「セメント」は、本件発明2の「セメント」に相当する。
(c)甲2発明Bの「セメント系組成物」は、本件発明2の「セメント組成物」に相当する。
(d)以上から、本件発明2と甲2発明Bとは、次の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「トリイソプロパノールアミン(A成分)と、
セメントと、を含む、
を含むセメント組成物」
<相違点2-2-1>
第2成分及びその第1成分との関係について、本件発明2では、「オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる少なくとも1種(B成分)」を含み、「B成分の質量/A成分の質量が、200%~10000%」であるのに対し、甲2発明Bでは、当該発明特定事項を有するのか否か明らかでない点。
<相違点2-2-2>
第3成分について、本件発明2では「一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含むポリカルボン酸系共重合体(P)」であるのに対して、甲2発明Bでは「ポリカルボキシレート分散剤」である点。
【化1】
[図:0001397172000023.jpg]
(一般式(1)中、R1およびR2は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R3は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基であり、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~500であり、xは0~2の整数であり、yは0または1である。)
【化2】
[図:0001397172000024.jpg]
(一般式(2)中、R4~R6は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CH2)ZCOOM基を表し、-(CH2)ZCOOM基は-COOX基または他の-(CH2)ZCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0~2の整数であり、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表し、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。)
b 相違点に対する判断
前記相違点2-2-1から検討する。
(a)甲2発明Bにおいて本件発明2のB成分に対応する記載についてみると、前記(1)イ(ク)の[0159]には、「凝結遅延剤」として「グルコン酸」や「糖」が列挙されているが、その含有量については、実施例等を含めてみても何ら記載がないし、ましてや「凝結遅延剤」と「トリイソプロパノールアミン」とを併用することに関する具体的な記載もないのであるから、「凝結遅延剤」の含有量の「トリイソプロパノールアミン」等の強度向上添加剤に対する比についても何ら記載がない。したがって、前記相違点2-2-1は実質的なものといえるから、本件発明2が甲2発明Bであるとはいえない。
(b)前記相違点2-2-1の容易想到性について検討すると、「凝結遅延剤」と「トリイソプロパノールアミン」とを併用することに関する具体的な記載がないのであるから、「凝結遅延剤」と「トリイソプロパノールアミン」との比を設定しようとする動機付けはない。また、甲2の前記(1)イ(ア)の[0007]によれば、「圧縮強度を向上させつつ、セメント系組成物の硬化時間に悪影響を及ぼさない」ような「セメント系組成物」を得るために「ポリカルボキシレート分散剤」及び「強度向上添加剤」の各成分が提供されるところ、甲2における「凝結遅延剤」は、同(ク)の[0159]によれば、「コンクリートの硬化を引き延ばし、遅延させ、硬化速度を落とさせるもの」であるから、仮に、甲2発明Bのセメント系組成物においてさらに「凝結遅延剤」を含有させたとしても、「セメント系組成物の硬化時間に悪影響を及ぼさない」ようにするという技術思想に反して「凝結遅延剤」を増量させて、「凝結遅延剤」の質量/「強度向上添加剤」の質量の値を200%以上とする動機付けは、存在しないというべきである。
また、念のため他の甲号証についてみると、甲1については、前記ア(イ)b(a)及び(b)で述べたとおり、「凝結遅延剤」の質量/「強度向上添加剤」の質量の値について、何ら記載も示唆もない。
また、甲3についても、同(b)で述べたのと同様に、「ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物」を必須としない成分からなる甲2発明Bの「セメント系組成物」における、「凝結遅延剤」/「トリイソプロパノールアミン」の比として、甲3に記載されるヒドロキシ化合物/トリイソプロパノールアミンの比の205%との値を直ちに採用できるものとはいえず、その値を採用したとしても、甲2が「ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物」を必須としないため、甲3と同様の効果を奏することが予測可能であるとは必ずしもいえないし、そのような技術常識も存在しない。
したがって、他の甲号証を考慮したとしても、前記相違点2-2-1に係る本件発明2の構成は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
(c)小括
以上のとおり、前記相違点2-2-1に係る本件発明2の構成は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないから、前記相違点2-2-2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明Bであるとはいえないし、甲2発明B及び甲1~3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(ウ)本件発明3について
本件訂正後の請求項3は本件訂正後の請求項2を引用しており、本件発明3は、本件発明2の構成をすべて具備するものであるから、本件発明2と同様に、本件発明3は、甲2発明Bであるとはいえないし、甲2発明B及び甲1~3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)小括
以上のとおり、本件特許1~3は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものではないから、取消理由2-1及び2-2、申立理由1~2-3には、理由がない。
3 申立理由3(サポート要件違反)について
(1)申立理由3の概要
本件明細書には、c2成分として6つの成分(【0045】)が記載され、実施例24及び26において、「ESP(重量平均分子量=23000、ポリエチレンイミン(重量平均分子量=600)のアミノ基の活性水素1モルに対してエチレンオキシドを20モル付加したもの)」(【0139】及び【0141】)が記載され、これは、設定登録時の請求項1に記載の「ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体」に相当し、実施例25及び28において、「製造例3で得られた共重合体(3)」(【0115】、【0140】及び【0143】)が記載されている。
しかしながら、本件発明1の6つの「c2成分」について、本件明細書には、前記のとおりそのうち2種の化合物について記載されているものの、その他の化合物については具体的に何ら記載されていない。
したがって、本件発明1において「c2成分」のうちの「グリセリンのアルキレンオキシド付加体、エリスリトールのアルキレンオキシド付加体、メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体、ソルビトールのアルキレンオキシド付加体、3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」にまで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化することができず、これらの化合物は、サポート要件を満たしていない。
また、本件明細書には、実施例25及び28の共重合体(3)は、3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)とアクリルアミドを原料としたものであること(【0114】及び【0115】)が記載されているから、本件発明1の「3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体」であるとも解されるが、本件発明1のアクリルアミド由来の構造単位を含まないものにまで拡張ないし一般化することができるとはいえない。
(特許異議申立書の53頁18行~54頁13行)
(2)申立理由3に対する判断
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件発明の課題について
本件明細書の【0006】によれば、本件発明は、「セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント用添加剤を提供すること」を課題とするものであることが把握できる。
ウ 本件発明の課題解決手段に関する発明の詳細な説明の記載について
本件明細書によれば、本件発明の「セメント用添加剤」は、「トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-N-(ヒドロキシエチル)アミンから選ばれる少なくとも1種(A成分)と、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる少なくとも1種(B成分)と、を含む」(【0007】)ものであり、これにより、「セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント用添加剤を提供することができる」(【0010】)との効果を奏するものであることが記載されている。
そして、本件明細書によれば、本件発明の「セメント用添加剤」は、「A成分とB成分との両方を含むことにより、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るという効果を発現」し、「本発明が発現し得るセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果は、A成分のみに起因するセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果とB成分のみに起因するセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果との和から予想される効果に比べて、顕著に高い相乗効果を示す」(【0015】)ものであって、いずれの実施例においても、TIPA(トリイソプロパノールアミン)等のA成分とグルコン酸Na等のB成分との両方を含むセメント用添加剤を用いて調製したセメント組成物は、A成分とB成分のうちいずれかを含まないものに比べて、28日圧縮強度が有意に増加することが示されている(【0163】~【0166】、【表3】及び【表4】)。
エ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲、及び、当該範囲と本件発明の広狭関係について
前記ウで述べたように、本件発明の課題を解決するにあたっては、「トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-N-(ヒドロキシエチル)アミンから選ばれる少なくとも1種(A成分)と、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる少なくとも1種(B成分)と、を含む」ことが肝要であり、この点を具備していれば、前記アの本件発明の課題を解決することができることを、当業者は本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて理解することができる。
一方、本件発明1は、当該A成分及びB成分を発明特定事項として含んでいる。
そうすると、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、上記アの判断基準に当てはめると、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は、サポート要件に適合するということができる。
オ 異議申立人の主張について
前記(1)に記載した異議申立人の申立理由3に係る主張は、要は、本件発明1の「c2成分」のうち、本件明細書の実施例においては特定の化合物が記載されているのみであり、「c2成分」として列挙される他の化合物にまで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化することができるとはいえない、というものである。
しかしながら、本件発明1に係る特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合することは、上記ア~エで述べたとおりである。
そして、本件明細書によれば、異議申立人の主張に係るc2成分は、「セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得る」(【0036】)ものであり、本件発明の課題と関連する効果を奏するものではあるが、セメント用添加剤においてA成分及びB成分を含有し他の成分を含有しない実施例29~50においても、A成分とB成分のうちいずれかを含まないものに比べて、28日圧縮強度が有意に増加することが示されているから(【0163】~【0166】、【表3】及び【表4】)、当該c2成分は、本件発明の課題を解決するために必須の構成とまではいえない。
そうすると、本件発明1は、A成分及びB成分を含有することにより、c2成分としてどのような化合物が特定されているかにかかわらず、本件発明の課題を解決することができるといえるから、本件明細書の実施例において、c2成分として特定の化合物のみが記載され、c2成分として列挙される他の化合物が記載されていないからといって、本件発明の課題を解決できずサポート要件に適合しないものであるとはいえない。
したがって、前記(1)の異議申立人の主張は、採用することができない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1に対応する特許請求の範囲の請求項1の記載が、サポート要件に適合していないということはできないから、申立理由3には理由がない。
第6 むすび
前記第5で検討したとおり、本件特許1~3は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとも、同法第29条第1項第3号及び第2項の規定に違反してされたものであるともいうことはできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、前記取消理由1-1~2-2及び申立理由1~3では、本件特許1~3を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1~3を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701209