特許異議申立
2025-700572
インターコネクタ、及び電気化学セル
- 審判番号
- 2025-700572
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-543156
- 登録番号
- 7618109
- 請求日
- 2025年05月30日
- 審決日
- 2025年12月26日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本碍子株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
- 【異議申立人】亀崎 伸宏
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 佐藤 陽一
- 審判官 阿川 寛樹
- 分類
- P1651.536-Y (C25B) / P1651.537-Y (C25B) / P1651.121-Y (C25B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7618109号発明「インターコネクタ、及び電気化学セル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7618109号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第7618109号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2024-543156号。以下「本願」という。)は、2024年(令和 6年) 3月19日を国際出願日とする出願であって、令和 7年 1月 9日にその特許権の設定登録がされ、同年 1月20日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和 7年 5月30日に、特許異議申立人である亀崎 伸宏(以下「申立人」という。)により本件特許の請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、以下において、本件特許の請求項1~4に係る発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明4」といい、これらを総称して「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」、図面を「本件図面」という。
「【請求項1】
第1主面、及び前記第1主面と反対側の第2主面、を有する本体部と、
前記第1主面上に配置される第1酸化物層と、
前記第2主面上に配置され、前記第1酸化物層と異なる厚さを有する第2酸化物層と、
を備え、
前記本体部は、第1主面上に凸部を有し、
前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄く、
前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記本体部よりも熱膨張係数が小さく、
前記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄い、
インターコネクタ。
【請求項2】
前記本体部は、クロムを含む合金によって構成され、
前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層は、クロムを主成分とする、
請求項1に記載のインターコネクタ。
【請求項3】
請求項1に記載のインターコネクタと、
前記インターコネクタに取り付けられる支持基板と、
前記支持基板上に配置されるセル本体部と、
を備える、電気化学セル。
【請求項4】
前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記セル本体部よりも薄い、
請求項3に記載の電気化学セル。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、下記6の甲第1~5号証(以下、それぞれ「甲1」等という。)を提出し、以下の申立理由1~4により、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべきである旨主張している。
1 申立理由1(実施可能要件)
本件特許の請求項1には、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄く」との記載がある。
しかしながら、本件明細書には、凸部上に形成される第1酸化物層の厚さと、凸部以外の部分に形成される第1酸化物層の厚さとを調整する方法について一切記載されておらず、その方法を出願時の技術常識に基づいてもその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が理解できないため、当業者が本件発明1を実施することはできない。本件発明2~4も同様である。
したがって、本件発明1~4について、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合しないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(サポート要件)
(1)課題、解決手段、作用効果について
本件発明の第1の課題は、確実な接触を確保することである。また、当該課題に対する解決手段は、第1酸化物層および第2酸化物層のそれぞれが、本体部よりも熱膨張係数が小さく、第1酸化物層は、第2酸化物層よりも薄いことであり、その作用効果は、インターコネクタに生じる熱応力によってインターコネクタは下方に向かって反りが発生し、インターコネクタがその下方に配置される電解セルと確実に接触することができることにある。
また、本件発明の第2の課題は、インターコネクタと支持基板との間の電気抵抗が大きくなることを抑制することである。また、当該課題に対する解決手段は、凸部上に形成される第1酸化物層が、凸部以外の部分に形成される第1酸化物層よりも薄いことであり、その作用効果は、インターコネクタと支持基板との間の電気抵抗が大きくなることを抑制することができることにある。
(2)第1酸化物層と第2酸化物層とのそれぞれの材料について
本件特許の請求項1には、「前記第1主面上に配置される第1酸化物層と」、「前記第2主面上に配置され、前記第1酸化物層と異なる厚さを有する第2酸化物層と、を備え」と記載されている。
しかしながら、本件発明1は、例えば、第1酸化物層と第2酸化物層とのそれぞれの材料が互いに異なる態様を包含し、このような態様では、第1酸化物層と第2酸化物層とのそれぞれの材料が互いに異なるため、第1酸化物層の熱膨張係数と、第2酸化物層の熱膨張係数とが互いに異なる。そして、第1酸化物層の熱膨張係数と、第2酸化物層の熱膨張係数との大小関係やそれらの差の程度によっては、必ずしもインターコネクタに反りが発生するとはいえない。そのため、このような態様では、「インターコネクタに生じる熱応力によってインターコネクタは下方に向かって反りが発生し、インターコネクタがその下方に配置される電解セルと確実に接触することができる」という、第1の課題に対する課題解決手段から導かれる作用効果を奏しないことは明らかである。
このように、本件発明1は、本件明細書に記載された作用効果を奏しない(すなわち、課題を解決できない)態様を含んでいる。本件発明2~4も同様である。
(3)インターコネクタと電解セルとの位置関係について
上述した第1の課題に対する課題解決手段から導かれる作用効果を参照すると、本件発明1の効果は、インターコネクタの下方に電解セルが配置されていることを前提としていると認められる。
しかしながら、本件発明1は、インターコネクタと電解セルとの位置関係についての何の限定事項も有していない。つまり、本件発明1は、例えばインターコネクタの上方に電解セルが配置される態様を包含する。このような態様では、「インターコネクタに生じる熱応力によってインターコネクタは下方に向かって反りが発生し」たとしても、インターコネクタがその上方に配置される電解セルとの接触を確実にすることはできない。
このように、本件発明1は、本件明細書に記載された作用効果を奏しない(すなわち、課題を解決できない)態様を含んでいる。本件発明2~4も同様である。
(4)水素極、電解質、及び酸素極について
本件明細書の【0022】には、水素極、電解質、及び酸素極が必須の構成であると記載されている。しかしながら、本件発明1は、発明特定事項として水素極、電解質、及び酸素極を備えることが特定されていない。つまり、本件発明1は、本件明細書において「必須の構成であ」ると述べられている水素極、電解質、及び酸素極を備えていないから、本件明細書の記載に鑑みれば、「インターコネクタに生じる熱応力によってインターコネクタは下方に向かって反りが発生し、インターコネクタがその下方に配置される電解セルと確実に接触することができる」という作用効果を奏しないと考えられる。
このように、本件発明1は、本件明細書に記載された作用効果を奏しない(すなわち、課題を解決できない)態様を含んでいる。本件発明2~4も同様である。
(5)凸部上に形成される第1酸化物層の厚さと、凸部以外の部分に形成される第1酸化物層の厚さとの関係について
本件特許の請求項1には、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄く」と記載されている。
そのため、本件発明1は、以下のような態様を包含する。
・態様1:凸部上に形成される第1酸化物層の厚さが従来のインターコネクタよりも薄く、凸部以外の部分に形成される第1酸化物層の厚さが従来のインターコネクタと同程度である
・態様2:凸部上に形成される第1酸化物層の厚さが従来のインターコネクタと同程度であり、凸部以外の部分に形成される第1酸化物層の厚さが従来のインターコネクタよりも厚い
ここで、態様2では、「インターコネクタと支持基板との間の電気抵抗が大きくなることを抑制することができる」という、第2の課題に対する課題解決手段から導かれる作用効果を奏しないことは明らかである。
このように、本件発明1は、本件明細書に記載された作用効果を奏しない(すなわち、課題を解決できない)態様を含んでいる。本件発明2~4も同様である。
(6)小括
以上(2)~(5)に記載したとおり、本件特許の請求項1~4の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(明確性)
(1)「薄い」の語の意味について
本件特許の請求項1には、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄く」、「前記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄い」と記載されており、本件特許の請求項4には、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記セル本体部よりも薄い」と記載されている。
ここで、「薄い」という語は、「厚みのないこと」を意味したり、「濃度が低いこと」を意味したりする。しかしながら、本件特許の請求項1、4は、「薄い」という語がどのような意味で用いられているかを理解できるような限定事項を有していない。そのため、本件特許の請求項1、4は、「薄い」という語がどのような意味で用いられているかが不明確である。本件特許の請求項2~3も同様である。
(2)厚みの差の程度について
本件特許の請求項1には、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄く」、「前記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄い」と記載されており、本件特許の請求項4には、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記セル本体部よりも薄い」と記載されている。
しかしながら、本件特許の請求項1、4は、どの程度の差があれば、「よりも薄」いといえるのかが不明確である。本件特許の請求項2~3も同様である。
(3)厚みのばらつきについて
本件特許の請求項1には、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄く」、「前記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄い」と記載されており、本件特許の請求項4には、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記セル本体部よりも薄い」と記載されている。
しかしながら、一般に、酸化物層の厚みは、厳密に一定であることはあり得ず、製造ばらつき等により部位ごとに異なる。そのため、インターコネクタが、製造ばらつきによって上記発明特定事項を意図せず充足することがあり得るところ、本件特許の請求項1、4は、このような製造ばらつきによって上記発明特定事項を充足する構成をも含むのかが不明確である。本件特許の請求項2~3も同様である。
(4)「前記本体部は、第1主面上に凸部を有し」の記載について
本件特許の請求項1には、「前記本体部は、第1主面上に凸部を有し」と記載されている。
しかしながら、本件明細書および本件図面の記載、並びに、出願時の技術常識を考慮しても、「前記本体部は、第1主面上に凸部を有し」の意味内容を理解することはできない。
ここで、令和6年11月22日に本件特許出願人によって提出された意見書(令和6年10月18日付け拒絶理由通知に対して、その指定期間内に本件特許出願人によって提出されたもの)では、意見書に添付された参考図に基づいて、第1凸部403が「面S」を基準として上方に突き出ているもの、と述べられているが、本件明細書および本件図面には「面S」について何ら限定されておらず、「面S」がどのような基準で設けられているのかを理解することはできないから、依然として「前記本体部は、第1主面上に凸部を有し」の記載を理解することはできない。
[図:0001432082000001.jpg]
(令和6年11月22日に本件特許出願人によって提出された意見書に添付された参考図)
そのため、本件特許の請求項1の「前記本体部は、第1主面上に凸部を有し」の構成は不明確である。本件特許の請求項2~4も同様である。
(5)第1酸化物層と凸部との位置関係について
本件特許の請求項1には、「前記第1主面上に配置される第1酸化物層と」、「前記本体部は、第1主面上に凸部を有し」と記載されている。
しかしながら、本件特許の請求項1は、第1酸化物層および凸部が、例えば第1主面上で互いに重なるものであるのか、あるいは、第1酸化物層および凸部が、例えば第1主面上における互いに異なる位置にあり、互いに重ならないものであるのか、また、仮に、第1酸化物層および凸部が第1主面上で互いに重なるものである場合に、第1酸化物層および凸部のうちのどちらが第1主面に近い位置にあるのかが不明確である。本件特許の請求項2~4も同様である。
(6)「クロムを主成分とする」の記載について
本件特許の請求項2には、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層は、クロムを主成分とする」と記載されている。
しかしながら、本件発明2は、「クロムを主成分とする」の詳細な意義について何の限定事項も有しておらず、どのような意味であるのかが不明確である。
(7)「前記インターコネクタに取り付けられる」「前記支持基板上に配置される」の記載について
本件特許の請求項3には、「前記インターコネクタに取り付けられる支持基板と」、「前記支持基板上に配置されるセル本体部と」と記載されている。
しかしながら、本件発明3では、「取り付ける」の用語と、「~上に配置される」の用語とが使い分けられているが、これらの意味内容の違いが不明確である。
(8)「支持基板」について
本件特許の請求項3には、「前記インターコネクタに取り付けられる支持基板と」と記載されている。
しかしながら、本件特許の請求項3は、支持基板が何を支持するものであるか、支持基板がどのような形状であるのか、支持基板がどのような材料で形成されるのか等の限定事項を有していない。そのため、本件特許の請求項3は、支持基板の用語の意味が不明確である。
(9)セル本体部の厚みについて
本件特許の請求項4には、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記セル本体部よりも薄い」と記載されている。
しかしながら、第1酸化物層は、凸部上に形成される部分と、凸部以外の部分に形成される部分とで厚みが異なる。そのため、第1酸化物層は、凸部上に形成される部分と、凸部以外の部分に形成される部分とのいずれの部分で、セル本体部の厚みと比較されるのかが不明確である。また、セル本体部は、水素極21と電解質22と反応防止層23と酸素極24とが重なる部分と、水素極21と電解質22とが重なる部分とで厚みが異なる。そのため、セル本体部は、水素極21と電解質22と反応防止層23と酸素極24とが重なる部分と、水素極21と電解質22とが重なる部分とのいずれの部分で、第1酸化物層の厚み及び第2酸化物層の厚みと比較されるのかが不明確である。
(10)小括
以上(1)~(9)に記載したとおり、本件特許の請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
4 申立理由4-1(進歩性)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、甲1及び甲3に記載された事項に基いて、また本件特許の請求項4に係る発明は、甲1及び甲3、又は甲1、甲3及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
5 申立理由4-2(進歩性)
本件特許の請求項1、2に係る発明は、甲2及び甲1に記載された事項に基いて、また本件特許の請求項3、4に係る発明は、甲2、甲1、及び甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
6 証拠方法
甲1:特開2018-18694号公報
甲2:特開2022-156330号公報
甲3:国際公開第2017/073530号
甲4:特開2018-55912号公報
甲5:特開2018-181548号公報
第4 当合議体の判断
以下に述べるとおり、当合議体は、上記第3の申立理由1~申立理由4-2のいずれによっても、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1 申立理由1(実施可能要件)について
本件特許の請求項1には、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄く」との記載がある。
ここで、本件明細書の【0074】には、「第1酸化物層41は、Cr酸化物を含むペーストを本体部40の第1主面401上に塗布した後、熱処理を施すことによって形成することができる。」との記載があるから、当業者は本件明細書の当該記載を参考に、Cr酸化物を含むペーストを塗布する量を調節することで、所定の厚さ分布を有する酸化物層を形成することが可能である。
また、本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4も同様である。
したがって、本件発明1~4について、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に適合するものである。
よって、上記第3の申立理由1によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(サポート要件)について
(1)課題、解決手段及び判断
本件発明の解決しようとする課題は、「確実な接触を確保するなどの観点から」、「インターコネクタに反りを発生させること」(本件明細書【0005】、【0006】)であると把握される。
上記課題を解決する手段として、本件明細書には以下の記載がある。
「第1酸化物層及び第2酸化物層の熱膨張係数を本体部の熱膨張係数よりも小さくし、第1酸化物層を第2酸化物層よりも薄くすることによって、第2酸化物層側に中央部が突出するようにインターコネクタに反りを発生させることができる。」(本件明細書【0009】)
「上記実施形態では、インターコネクタ4が下方に向かって反るように構成されていたが、インターコネクタ4の構成はこれに限定されない。すなわち、インターコネクタ4は、上方に向かって反るように構成されていてもよい。」(本件明細書【0088】)
上記記載から、当業者は、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記本体部よりも熱膨張係数が小さく、前記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄い」場合、そうでないものと比べて「インターコネクタに反りを発生させる」ことで、上記課題が解決されることを認識することができる。
そして、本件特許の請求項1は、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記本体部よりも熱膨張係数が小さく、前記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄い」との特定事項を備えるものであり、これは上述した当業者が課題を解決できるように認識することができる範囲を超えるものではない。
この点は、本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4においても同様である。
(2)申立人の主張について
ア 「第1酸化物層と第2酸化物層とのそれぞれの材料」について
申立人は、本件特許の請求項1は、第1酸化物層と第2酸化物層とのそれぞれの材料が互いに異なる態様を包含し、このような態様では、第1酸化物層の熱膨張係数と、第2酸化物層の熱膨張係数との大小関係やそれらの差の程度によっては、必ずしもインターコネクタに反りが発生するとはいえない旨を主張している。
しかし、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記本体部よりも熱膨張係数が小さく、前記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄い」という規定を満たしつつ、インターコネクタに全く反りが発生しない状況は通常は想定し得ない。
したがって、上記主張は採用することができない。
イ 「インターコネクタと電解セルとの位置関係」について
申立人は、本件特許の請求項1には、インターコネクタと電解セルとの位置関係について何の限定事項も有しておらず、本件発明1は、インターコネクタの上方に電解セルが配置される態様を含包しており、このような態様では、インターコネクタに下方に向かって反りが発生しても、電解セルと確実に接触することができる、という作用効果を奏しない旨を主張している。
しかし、上記(1)に記載したとおり、本件明細書【0088】にはインターコネクタ4は上方に向かって反るように構成されていてもよい旨が記載されており、インターコネクタとしては反りが発生してさえいれば、その適切な側に電解セルが配置することで、「確実な接触を確保する」という課題を解決することができるものである。
したがって、上記主張は採用することができない。
ウ 「水素極、電解質、及び酸素極」について
申立人は、本件特許の請求項1は、本件明細書【0022】において「必須の構成であ」ると述べられている水素極、電解質、及び酸素極を備えていないから、課題を解決できない態様を含んでいると主張している。
しかし、水素極、電解質、及び酸素極は、電解セルを含む電気化学セルにおいては必須の構成であり得るものの、それが請求項1において記載されていないからといって、上記(1)の「確実な接触を確保する」という課題が解決されないとはいえない。
したがって、上記主張は採用することができない。
エ 「凸部上に形成される第1酸化物層の厚さと、凸部以外の部分に形成される第1酸化物層の厚さとの関係」について
申立人は、本件特許の請求項1は、凸部上に形成される第1酸化物層の厚さが従来のインターコネクタと同程度である態様を含んでおり、このような態様ではインターコネクタと支持基板との間の電気抵抗が大きくなることを抑制することができず、課題を解決できない旨を主張している。
しかし、上記(1)に記載したとおり、本件発明の課題はインターコネクタに反りを発生させることであり、当該課題が凸部上に形成される第1酸化物層の厚さが従来のインターコネクタと同程度であるか否かにかかわらず、本件発明1~4によって解決し得るものであることは、上記(1)のとおりである。
したがって、上記主張は採用することができない。
(3)小括
以上(2)に記載したとおり、申立人の主張はいずれも採用することができない。
したがって、上記(1)に記載したとおり、本件特許の請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されているものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるといえる。
よって、上記第3の申立理由2によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(明確性)について
(1)明確性について
本件特許の請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。
(2)申立人の主張について
ア 「薄い」の語の意味について
本件特許の請求項1、4の「薄い」は、本件明細書の【0077】、【0078】、【0081】等の記載から、厚みがないことを意味していることは明らかである。
この点は、本件特許の請求項1を引用する請求項2、3においても同様である。
イ 厚みの差の程度について
本件特許の請求項1、4の「よりも薄く」、「よりも薄い」という規定について、上記アの点を考慮すれば、相対的に厚みがない状態であれば、厚みの差の程度にかかわらず、「よりも薄い」状態であることは、明確である。
この点は、本件特許の請求項1を引用する請求項2、3においても同様である。
ウ 厚みのばらつきについて
本件特許の請求項1、4の「前記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄く」、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記セル本体部よりも薄い」という規定について、第1、第2酸化物層の厚さは、製造された「インターコネクタ」について、本件明細書【0079】~【0080】の手法で算出されたものであることは明確であるから、仮に個々のインターコネクタを製造する際に製造ばらつきが存在し、それに起因して第1、第2酸化物層の厚さにばらつきが生じるとしても、そのことによって、上記の手法で算出された各酸化物層の厚さが不明確であるとはいえず、「記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄い」か否か、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記セル本体部よりも薄い」か否かは明確である。
この点は、本件特許の請求項1を引用する請求項2、3においても同様である。
エ 「前記本体部は、第1主面上に凸部を有し」の記載について
本件特許の請求項1の「前記本体部は、第1主面上に凸部を有し」における「凸部」とは、例えば本件明細書の図3のように千鳥状に凸部が配置される場合は図上に○で示される部分であることが明らかであり、令和6年11月22日提出の意見書に添付された参考図の「面S」も図3における○部の周囲の面であることが把握されるから、明確である。
この点は、本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4においても同様である。
オ 第1酸化物層と凸部との位置関係について
本件特許の請求項1の「前記第1主面上に配置される第1酸化物層と」、「前記本体部は、第1主面上に凸部を有し」という記載について、請求項1には「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層」とも記載されているから、「第1酸化物層」と「凸部」とが少なくとも一部において重なるものであり、かつその重なる領域においては「凸部」の上に「第1酸化物層」が位置することも明らかである。
この点は、本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4においても同様である。
カ 「クロムを主成分とする」の記載について
本件特許の請求項2「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層は、クロムを主成分とする」について、本件明細書の【0068】に「Crを主成分とするとは、第1酸化物層41を構成するCr酸化物の組成をエネルギー分散型分光(EDS)装置で解析した場合に、金属元素のうちCrの含有率が最も高いことを意味する。」と記載されるように、各酸化物層が含有する金属元素のうちクロムの含有量が最も高いことを意味していることは明らかである。
キ 「前記インターコネクタに取り付けられる」「前記支持基板上に配置される」の記載について
本件特許の請求項3の「取り付けられる」、「配置される」について、「取り付ける」とは「機器などを一定の場所に設置したり他の物に装置したりする」(広辞苑第5版)ことを意味し、「配置する」とは「それぞれの位置に割り当てる」(広辞苑第5版)ことを意味するから、いずれもその意味において明瞭である。
この点は、本件特許の請求項3を引用する請求項4においても同様である。
ク 「支持基板」について
本件特許の請求項3の「支持基板」について、本件明細書【0047】に「支持基板3は、セル本体部2を支持する。」と記載されるように、セル本体部を支持する基板であることは明らかである。また、支持基板の形状や材料が特定されていなくても、セル本体部を支持するように機能する基板であればよいことは明確である。
この点は、本件特許の請求項3を引用する請求項4においても同様である。
ケ セル本体部の厚みについて
本件特許の請求項4の「セル本体部」について、単に「セル本体部」と称した場合、その構成要素を全て含む「水素極21と電解質22と反応防止層23と酸素極24とが重なる部分」を指すことは自明である。また、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記セル本体部よりも薄い」という記載については、本件明細書の【0079】、【0080】に記載された手法で算出された酸化物層の厚さが、いずれもセル本体部(水素極21と電解質22と反応防止層23と酸素極24とが重なる部分)の厚さよりも薄いことを指すと解するのが自然であり、明瞭である。
(3)小括
以上、(2)に記載したとおり、申立人の主張はいずれも採用することができない。
したがって、上記(1)に記載したとおり、本件特許の請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。
よって、上記第3の申立理由3によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由4-1(進歩性)について
(1)甲1の記載事項
本願の出願前に公知となった甲1には、次の記載がある。なお、以下において、下線は当合議体が付したものである。また、「…」は記載の省略を示す。以下同様。
ア「【請求項1】
電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、
前記電気化学反応単セルの前記燃料極側に配置された金属製のインターコネクタと、
前記燃料極と前記インターコネクタとの間に配置され、前記燃料極の表面に接する複数の凸部を有する金属製の集電体と、を備える電気化学反応単位において、
前記第1の方向視で、前記集電体の前記凸部における前記燃料極との接触面と、前記集電体における前記インターコネクタとの接触面と、の両方に重なる重複領域の一部である第1の領域において、前記集電体と前記インターコネクタとが接合されており、
前記重複領域の一部であって前記第1の領域を取り囲む第2の領域において、前記インターコネクタにおける前記燃料極に対向する側の表面に耐酸化性の被膜が形成されていることを特徴とする、電気化学反応単位。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応単位において、
前記重複領域以外の領域である非重複領域の少なくとも一部の領域において、前記インターコネクタにおける前記燃料極に対向する側の表面に前記耐酸化性の被膜が形成されていることを特徴とする、電気化学反応単位。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応単位において、
前記第1の領域において、前記集電体と前記インターコネクタとが拡散層を介して接合されていることを特徴とする、電気化学反応単位。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電気化学反応単位において、
前記耐酸化性の被膜は、クロム酸化物を含むことを特徴とする、電気化学反応単位。」
イ「【0005】
上記従来の技術では、集電体とインターコネクタとの接触領域に酸素が進入し、該接触領域において耐酸化性の被膜が成長するおそれがある。一般に、耐酸化性の被膜は高い電気抵抗を有するため、集電体とインターコネクタとの接触領域において耐酸化性の被膜が成長すると、集電体とインターコネクタとの間の導通面積が小さくなる。その結果、電流集中による局所的な温度上昇が引き起こされ、電極構造が変化して発電単位の性能が低下するおそれがある。
…
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。」
ウ「【0024】
図4および図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。…
【0025】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材である。本実施形態では、インターコネクタ150はステンレス鋼材により形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。…」
エ「【0036】
A-3.燃料極側集電体144およびインターコネクタ150の詳細構成:
図8は、燃料極側集電体144およびインターコネクタ150の詳細構成を示すXZ断面図である。…
【0037】
図8から図10までに示すように、以下の説明では、燃料極側集電体144およびインターコネクタ150において、Z方向視で、燃料極側集電体144の各電極対向部145における燃料極116との接触面と、燃料極側集電体144のインターコネクタ対向部146におけるインターコネクタ150との接触面と、の両方に重なる領域を、重複領域ARoという。上述したように、燃料極側集電体144は複数の電極対向部(凸部)145を有するため、重複領域ARoは複数存在する。…
【0038】
また、以下の説明では、各重複領域ARo以外の領域を非重複領域ARnという。…
【0039】
本実施形態では、各重複領域ARoの一部、具体的には、各重複領域ARoにおける周縁部分を除く中央部分(以下、「中央部CP」という)において、燃料極側集電体144(のインターコネクタ対向部146)とインターコネクタ150とが拡散接合されている。すなわち、各重複領域ARoの中央部CPにおいて、燃料極側集電体144とインターコネクタ150とが、燃料極側集電体144に含まれる金属原子とインターコネクタ150に含まれる金属原子とが相互に拡散して形成された拡散層158を介して接合されている。なお、各重複領域ARoの中央部CPは、特許請求の範囲における第1の領域に相当する。
【0040】
また、本実施形態では、非重複領域ARnにおいて、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に、耐酸化性被膜152が形成されている。さらに、各重複領域ARoにおいて中央部CPを取り囲む上記周縁部分(以下、「周縁部PP」という)においても、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に、耐酸化性被膜152が形成されている。…耐酸化性被膜152は、インターコネクタ150(具体的には、インターコネクタ150を形作る鋼材)よりも耐酸化性の高い(酸化し難い)被膜であり、インターコネクタ150の表面に形成されることによってインターコネクタ150の酸化の進行を防ぐものであるが、一般に高い電気抵抗を有する。本実施形態では、耐酸化性被膜152は、Cr2O3等のクロム酸化物を含む被膜である。各重複領域ARoの周縁部PPは、特許請求の範囲における第2の領域に相当する。
【0041】
A-4.本実施形態の効果:
…そのため、本実施形態の発電単位102によれば、拡散層158が形成された部分において高抵抗な耐酸化性被膜152の形成を抑え、燃料極側集電体144とインターコネクタ150との間の導電性を確実に確保することができる。また、本実施形態の発電単位102では、各重複領域ARoの他の一部、具体的には、各重複領域ARoにおける中央部CPを取り囲む周縁部PPにおいて、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に、クロム酸化物を含む耐酸化性被膜152が形成されている。そのため、本実施形態の発電単位102によれば、例えば運転時や停止時、水蒸気パージ時において燃料極側が酸化環境になっても、燃料極側集電体144とインターコネクタ150との間における各重複領域ARoの周縁部PPより内側の領域(すなわち中央部CP)への酸素の進入を抑制することができる。従って、高抵抗な耐酸化性被膜152が各重複領域ARoの中央部CPに向かって成長することを抑制することができる。従って、燃料極側集電体144とインターコネクタ150との間の導電性が確保された領域の面積が減少すること(使用中の導電性が確保された領域の面積の変化)を抑制することができる。その結果、燃料極側集電体144とインターコネクタ150との間の導電領域の面積減少による電流集中を抑制することができ、電流集中による局所的な温度上昇によって電極構造が変化し、発電単位102の性能が低下することを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態の発電単位102では、重複領域ARo以外の領域である非重複領域ARnにおいて、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に、耐酸化性被膜152が形成されている。そのため、本実施形態の発電単位102によれば、インターコネクタ150の酸化の進行を防ぐことができる。
オ「【図4】
[図:0001432082000002.jpg]
」
カ「【図8】
[図:0001432082000003.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
ア 上記(1)アの請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4におけるインターコネクタに特に着目し、また上記(1)ウに記載されるインターコネクタの材質及びカの図8から看取されるインターコネクタ150の形状に着目すると、甲1には次の発明が記載されていると認められる。
「電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルの前記燃料極側に、前記燃料極の表面に接する複数の凸部を有する金属製の集電体を介して配置される金属製のインターコネクタであって、
前記第1の方向視で、前記集電体の前記凸部における前記燃料極との接触面と、前記集電体における前記インターコネクタとの接触面と、の両方に重なる重複領域の一部である第1の領域において、前記集電体と前記インターコネクタとが拡散層を介して接合されており、
前記重複領域の一部であって前記第1の領域を取り囲む第2の領域において、前記燃料極に対向する側の表面に耐酸化性の被膜が形成されており、
前記重複領域以外の領域である非重複領域の少なくとも一部の領域において、前記燃料極に対向する側の表面に前記耐酸化性の被膜が形成されており、
前記耐酸化性の被膜は、クロム酸化物を含む、
略矩形の平板形状の、ステンレス鋼材により形成されたインターコネクタ。」(以下、「甲1発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明のインターコネクタは「略矩形の平板形状」であるから、本件発明1のインターコネクタと同様に、「第1主面、及び前記第1主面と反対側の第2主面、を有する本体部」を有するものであるといえる。
(イ)甲1発明のインターコネクタは、燃料極側の第2の領域及び非重複領域において耐酸化性の被膜を有するものであり、これは本件発明1のインターコネクタの「前記第1主面上に配置される第1酸化物層」又は「前記第2主面上に配置され」る「第2酸化物層」に相当する。
(ウ)甲1発明のインターコネクタの耐酸化性の被膜を、本件発明1のインターコネクタの「前記第1主面上に配置される第1酸化物層」に相当するものとして検討すると、本件発明1と甲1発明とは、
「第1主面、及び前記第1主面と反対側の第2主面、を有する本体部と、
前記第1主面上に配置される第1酸化物層と、
を備える、インターコネクタ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1のインターコネクタは、「前記第2主面上に配置され、前記第1酸化物層と異なる厚さを有する第2酸化物層」を有し、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記本体部よりも熱膨張係数が小さ」いものであり、「前記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄い」ものであるのに対し、甲1発明のインターコネクタは、そのような第2酸化物層を備えるのか不明である点。
<相違点2>
本件発明1のインターコネクタは、「前記本体部は、第1主面上に凸部を有」し、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄」いものであるのに対し、甲1発明のインターコネクタは、平板形状であって凸部がなく、凸部上に形成される第1酸化物層も存在しない点。
(エ)また、甲1発明のインターコネクタの耐酸化性の被膜を、本件発明1のインターコネクタの「前記第2主面上に配置され」る「第2酸化物層」に相当するものとした場合についても検討すると、本件発明1と甲1発明とは、
「第1主面、及び前記第1主面と反対側の第2主面、を有する本体部と、
前記第2主面上に配置される第2酸化物層と、
を備える、インターコネクタ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1’>
本件発明1のインターコネクタは、「前記第1主面上に配置される第1酸化物層」を備え、「第2酸化物層」が「前記第1酸化物層と異なる厚さを有」し、「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記本体部よりも熱膨張係数が小さ」いものであり、「前記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄い」ものであるのに対し、甲1発明のインターコネクタは、そのような第1酸化物層を備えるのか不明である点。
<相違点2>
本件発明1のインターコネクタは、「前記本体部は、第1主面上に凸部を有」し、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄」いものであるのに対し、甲1発明のインターコネクタは、平板形状であって凸部がなく、凸部上に形成される第1酸化物層も存在しない点。
イ 判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。なお、上記ア(ウ)、(エ)に記載したいずれの場合であっても、相違点2は同一である。
(ア)相違点2が実質的な相違点であることは明らかである。
(イ)次に、相違点2の相当容易性について検討する。
甲1の他の記載を参酌しても、インターコネクタの燃料極側又は空気極側に凸部を設ける動機付けが存在するとはいえない。
(ウ)ここで、申立人は、本件特許の請求項1に係る発明は、甲1及び甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。
(エ)甲3には、以下の記載がある。
a 「[0009]
(1)本明細書に開示されるインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体は、電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、前記電気化学反応単セルの前記第1の方向に配置されたインターコネクタと、を備えるインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体において、前記インターコネクタには、前記第1の方向に突出する凸部と、前記第1の方向における前記凸部の反対側に配置され、前記凸部側に凹んだ凹部と、の組合せが複数形成されており、複数の前記組合せの少なくとも1つについて、前記第1の方向において、前記凹部の底は、前記凸部の基端より前記凹部の開口端側に位置し、前記第1の方向に平行な断面において、前記凹部は、前記第1の方向に直交する第2の方向における前記凸部の幅t2の範囲内に位置し、前記第2の方向における前記凹部の幅t1は、前記凸部の前記幅t2より小さい。このインターコネクタ-電気化学反応単セル複合体によれば、インターコネクタが、凸部の幅t2内に包含され、かつ、凹部の幅t1内に包含されない部分を有するため、インターコネクタの凸部の角部や凹部の角部等への応力集中が緩和され、インターコネクタの割れやひずみの発生を抑制することができ、その結果、ガスリークの発生や接触抵抗の増大を抑制することができる。」
b 「[0028]…インターコネクタ150には、上方向に突出する燃料極側凸部158と、燃料極側凸部158の下側に配置され、燃料極側凸部158側に凹んだ空気極側凹部156との組合せも複数形成されている。
…
[0037]図4および図5に示すように、インターコネクタ150の空気極114側の表面は、導電性のコート136によって覆われている。コート136は、例えば、スピネル型酸化物(例えば、MnCo2O4、ZnMn2O4、CuMn2O4等)により形成されている。…」
c 「[図4]
[図:0001432082000004.jpg]
」
d 「[図5]
[図:0001432082000005.jpg]
」
(オ)しかし、甲3には相違点2に係る「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄」いことが、記載も示唆もされていない。
甲3には、上記(エ)c、dの図4、5から看取されるような、燃料極側凸部158、空気極側凸部152等の凹凸を有するインターコネクタ150が記載されており、上記(エ)aの[0009]にはこのような形状とすることでインターコネクタの割れやひずみの発生を抑制し得ることが記載されているが、燃料極116側には酸化物層が形成されておらず、当然その厚みの差についても何ら記載されていない。また、上記(エ)bの[0028]、[0037]には、空気極凸部152及び凹部156にはスピネル型酸化物等により形成される導電性のコート136が形成されているが、図4、5からはその厚みの差を看取することはできない。
(カ)この点について、申立人は、特許異議申立書の第31頁において、「甲第1号証には、インターコネクタ150は、重複領域ARoにおいて燃料極側集電体144と接触していることが記載されている(甲1記載事項)。また、甲第3号証には、燃料極側凸部158は、隣接する燃料極側集電体144と直接的または間接的に接触していることが記載されている(甲3記載事項)。つまり、甲第1号証に記載されたインターコネクタ150の重複領域ARoは、甲第3号証に記載されたインターコネクタ150の燃料極側凸部158に相当し、甲第1号証に記載されたインターコネクタ150の重複領域ARo以外の領域は、甲第3号証に記載されたインターコネクタ150の燃料極側凸部158以外の部分に相当する。また、甲第1号証には、インターコネクタ150は、燃料極側集電体144と接触している重複領域ARoにおいて耐酸化性被膜152が形成されず、重複領域ARo以外の領域において耐酸化性被膜152が形成されることが記載されている(甲1記載事項)。
以上より、甲1発明において、甲3記載事項を参照して、上述した「前記本体部は、第1主面上に凸部を有」する構成を採用した場合、燃料極側凸部158に相当する領域では耐酸化性被膜152が形成されず、燃料極側凸部158に相当する領域以外では耐酸化性被膜152が形成される蓋然性が高い。」と主張している。
(キ)しかし、甲1発明は上記(1)イのとおり、集電体とインターコネクタとの接触領域に酸素が進入して耐酸化性の被膜が成長することにより発生する、局所的な温度上昇及び発電単位の性能低下を課題とするものである一方、甲3発明は上記(エ)aのとおり、所定の凹凸を備えるインターコネクタにおける凸部の角部や凹部の角部等への応力集中による割れやひずみ、及びこれによるガスリークの発生や接触抵抗の増大を課題とするものであり、甲1発明に甲3記載事項を適用する動機付けがあるとはいえないし、仮に適用できたとしても、上記(カ)の主張のとおり甲1と甲3を組み合わせたインターコネクタは燃料極側凸部158に相当する領域では耐酸化性被膜152が形成されないから、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層」自体を有しておらず、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄」いものとはならない。
(ク)したがって、甲1発明において、相違点2に係る点は、甲1、甲3の記載を参酌しても、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、相違点1、1’について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明2~4について
本件発明2~4についても、本件発明1と甲1発明との対比と同様に、少なくとも上記(3)ア(ウ)の相違点1、2又は上記(3)ア(エ)の相違点1’、2で相違し、上記(3)イにおける判断と同様に、相違点2については、甲1、甲3の記載を参酌しても、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。この点は、甲4の記載を参酌しても同様である。
したがって、相違点1、1’について検討するまでもなく、本件発明2~4は、甲1、甲3、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)小括
以上、(3)、(4)に記載したとおり、本件発明1~4は、甲1、甲3、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、上記第3の申立理由4-1によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由4-2(進歩性)について
(1)甲2の記載事項
本願の出願前に公知となった甲2には、次の記載がある。
ア「【請求項1】
Fe及びCrを含み、他の部材と接合される部分の表面に酸化被膜が形成され、前記酸化被膜の平均厚さが0.3μm以上0.7μm以下である合金部材。
【請求項2】
前記酸化被膜はCrの酸化物を含む請求項1に記載の合金部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の合金部材と、電解質層を電極層と対極電極層との間に挟んで構成される単セルを有する電気化学素子とが接合されて構成される電気化学モジュール。
【請求項4】
複数の前記電気化学素子を備え、複数の前記電気化学素子同士が前記合金部材によって電気的に接続されている請求項3に記載の電気化学モジュール。
【請求項5】
前記電気化学素子と接合される側の、前記合金部材の前記酸化被膜の上に、Co、Mn、Cu及びNiの内の少なくとも1つ以上を含有する金属酸化物で構成される保護膜を備える請求項3又は4に記載の電気化学モジュール。」
イ「【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、接合される側の部材のリン被毒を抑制可能な合金部材、電気化学モジュール、固体酸化物形燃料電池、固体酸化物形電解セル、電気化学装置、エネルギーシステム及び合金部材の製造方法を提供する点にある。
」
ウ「【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る合金部材の特徴構成は、Fe及びCrを含み、他の部材と接合される部分の表面に酸化被膜が形成され、前記酸化被膜の平均厚さが0.3μm以上0.7μm以下である点にある。
ここで、前記酸化被膜はCrの酸化物を含んでいてもよい。
【0010】
上記特徴構成によれば、合金部材の表面には平均厚さが0.3μm以上0.7μm以下である酸化被膜が形成されているので、その合金部材が例えば固体酸化物形燃料電池の燃料極などと接合されてその環境下に置かれたとしても、合金部材からのリンの放出が抑制される。つまり、合金部材と接合される他の部材は、リンの存在を起源とする被毒を受けない。
従って、接合される側の部材のリン被毒を抑制可能な合金部材を提供できる。
…
【0015】
本発明に係る電気化学モジュールの更に別の特徴構成は、前記電気化学素子と接合される側の、前記合金部材の前記酸化被膜の上に、Co、Mn、Cu及びNiの内の少なくとも1つ以上を含有する金属酸化物で構成される保護膜を備える点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、電気化学素子の被毒を防止できると共に、電気化学素子と合金部材との間の電気抵抗を良好に維持できる。」
エ「【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)で用いられる合金部材11及びその製造方法について説明する。
図1は電気化学モジュールMを備える固体酸化物形燃料電池の概略図である。図2は固体酸化物形燃料電池の作動時の反応の説明図である。図3は、合金部材11を有するセル間接続部材1の構成を示す図である。図1~図3に示すように、電気化学モジュールMは、合金部材11を有するセル間接続部材1と、電解質層30を電極層としての燃料極32と対極電極層としての空気極31との間に挟んで構成される単セル3を有する電気化学素子とが接合されて構成される。具体的には、単セル3は、酸素イオン伝導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質層30の一方面側に、酸素イオンおよび電子伝導性の多孔体からなる空気極31を接合し、同じ電解質層30の他方面側に電子伝導性の多孔体からなる燃料極32を接合して形成される。
…
【0034】
そして、複数の単セル3同士が、合金部材11を有するセル間接続部材1によって電気的に接続された状態、即ち、複数の単セル3が間にセル間接続部材1を挟んで積層配置された状態で、複数のボルトおよびナットにより積層方向に押圧力を与えて挟持されて、セルスタックとなる。このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたセル間接続部材1は、燃料流路2bまたは空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたセル間接続部材1は、一方の面に燃料流路2bが形成され、他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用できる。なお、このような積層構造のセルスタックでは、上記セル間接続部材1をセパレータ、インターコネクタ等と呼ぶ場合がある。」
オ「【0037】
<セル間接続部材1>
セル間接続部材1は、図3に示すように、Fe及びCrを含む例えばステンレス鋼を用いて構成される合金部材11と、合金部材11の表面のうち、単セル3の空気極31に接合される側の表面に形成される保護膜12を備える。また、セル間接続部材1には、単セル3の空気極31に空気を供給する空気流路2a、燃料ガスを供給する燃料流路2bを形成してある。
【0038】
セル間接続部材1の合金部材11としては、フェライト系ステンレス鋼が用いられることが多いが、耐熱性により優れたオーステナイト系ステンレス鋼であるFe-Cr-Ni合金や、ニッケル基合金であるNi-Cr合金などが用いられることもある。合金部材11を構成するステンレス鋼には、一般的に約250ppm~約350ppmのリンが含まれている。
【0039】
本実施形態では、合金部材11と他の部材とを接合材4を用いて接合する前に、還元雰囲気で800℃以上1000℃以下の温度範囲で合金部材11を熱処理する熱処理工程を行う。この熱処理工程が行われることで、合金部材11の、他の部材と接合される部分の表面に酸化被膜11aが形成される。この酸化被膜11aの平均厚さは0.3μm以上0.7μm以下である。還元雰囲気とは、還元性を示す水素、アンモニアなどのガスを含む雰囲気である。
…
【0041】
<保護膜12>
電気化学素子としての単セル3と接合される側の、合金部材11の酸化被膜11aの上に、Co、Mn、Cu及びNiの内の少なくとも1つ以上を含有する金属酸化物で構成される保護膜12が形成される。本実施形態では、上記熱処理工程を行った後の合金部材11の表面のうち、少なくとも単セル3の空気極31に接合される側の表面に、保護膜12を形成する保護膜形成工程を行う。その結果、合金部材11の表面のうち、単セル3の空気極31に接合される側の表面に保護膜12が形成されている。保護膜12は、上記金属酸化物を含有する保護膜形成用材料を合金部材11に成膜し、その後、焼成することにより形成できる。
…
【0045】
保護膜形成用材料として用いられる金属酸化物の微粒子としては、コバルトマンガン系酸化物又は銅マンガン系酸化物又は銅コバルトマンガン系酸化物などがある。つまり、保護膜12の材料が、コバルトマンガン系酸化物又は銅マンガン系酸化物又は銅コバルトマンガン系酸化物などである。」
カ「【図1】
[図:0001432082000006.jpg]
」
キ「【図3】
[図:0001432082000007.jpg]
」
(2)甲2に記載された発明
ア 上記(1)エの【0034】に記載されるとおり、セル間接続部材1はインターコネクタである。
イ 上記(1)エの【0034】、カの図1から、セル間接続部材1は一方の面に燃料流路2bを、他方の面に空気流路2aを有し、それぞれの流路が、凸部によって形成された平板状の部材であることが看取される。
ウ 上記(1)オの【0037】、【0039】、キの図3から、セル間接続部材1は、Fe及びCrを含む例えばステンレス鋼を熱処理することで、その表面を酸化被膜11aで覆い、空気極31に接合される側の表面は、コバルトマンガン系酸化物等からなる保護膜12でさらに覆われていることが記載されている。
エ 上記ア~ウを踏まえると、甲2には次の発明が記載されていると認められる。
「一方の面に空気流路2aを、他方の面に燃料流路2bを有し、それぞれの流路が凸部によって形成された平板状の部材であるインターコネクタ(セル間接続部材1)であって、ステンレス鋼を熱処理することでその表面を酸化被膜11aで覆い、空気極31に接合される一方の面の表面は、コバルトマンガン系酸化物等からなる保護膜12でさらに覆われている、インターコネクタ。」(以下、「甲2発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明のインターコネクタは平板状の部材であるから、本件発明1のインターコネクタと同様に、「第1主面、及び前記第1主面と反対側の第2主面、を有する本体部」を備えるものであるといえる。
(イ)甲2発明のインターコネクタは、一方の面、他方の面を含む表面に酸化被膜11aを有しているから、本件発明1のインターコネクタと同様に、「前記第1主面上に配置される第1酸化物層」を備えるものであるといえる。
(ウ)甲2発明のインターコネクタは、空気極31に接合される一方の面の表面が、コバルトマンガン系酸化物等からなる保護膜12でさらに覆われており、酸化被膜11aと保護膜12はいずれも酸化物であることから、これらを合わせたものが、本件発明1の「第2酸化物層」に相当する。そうすると、甲2発明のインターコネクタは、本件発明1のインターコネクタと同様に、「前記第2主面上に配置され、前記第1酸化物層と異なる厚さを有する第2酸化物層」を備え、かつ、「前記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄い」ものであるといえる。
(エ)甲2発明のインターコネクタは、燃料流路2bが凸部によって形成されているから、本件発明1のインターコネクタと同様に、「前記本体部は、第1主面上に凸部を有」するものであるといえる。
(オ)以上、(ア)~(エ)を踏まえると、本件発明1と甲2発明とは、
「第1主面、及び前記第1主面と反対側の第2主面、を有する本体部と、
前記第1主面上に配置される第1酸化物層と、
前記第2主面上に配置され、前記第1酸化物層と異なる厚さを有する第2酸化物層と、
を備え、
前記本体部は、第1主面上に凸部を有し、
前記第1酸化物層は、前記第2酸化物層よりも薄い、
インターコネクタ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
本件発明1のインターコネクタは、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄」いものであるのに対し、甲2発明のインターコネクタは、そのような構成を有するのか不明である点。
<相違点4>
本件発明1のインターコネクタは「前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のそれぞれは、前記本体部よりも熱膨張係数が小さ」いものであるのに対し、甲2発明のインターコネクタは、そのような構成を有するのか不明である点。
イ 判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。
(ア)上記(1)オの【0039】の記載から、甲2発明の酸化被膜11a(第1酸化物層に相当)は「還元雰囲気で800℃以上1000℃以下の温度範囲で合金部材11を熱処理する熱処理工程」によって形成されるものであり、その形成方法からみて、凸部とそれ以外の部分とには、同じ厚さの酸化被膜11aが形成されている蓋然性が高い。したがって、相違点3は実質的な相違点である。
(イ)次に、相違点3の想到容易性について検討する。
甲2の他の記載をみても、燃料流路2bを形成する凸部上に形成される酸化被膜11aの厚さを、凸部以外の部分に形成される酸化被膜11aの厚さよりも薄くすることは、記載も示唆もされていない。
(ウ)ここで、申立人は、特許異議申立書の第43頁において、「甲第2号証には、セル間接続部材1は、凸部において他の部材と接触していることが記載されている(甲2記載事項)。また、甲第1号証には、インターコネクタ150は、重複領域ARoにおいて燃料極側集電体144と接触していることが記載されている(甲1記載事項)。つまり、甲第2号証に記載されたセル間接続部材1の凸部は、甲第1号証に記載されたインターコネクタ150の重複領域ARoに相当し、甲第2号証に記載されたセル間接続部材1の凸部以外の領域は、甲第1号証に記載されたコネクタ150の重複領域ARo以外の部分に相当する。また、甲第1号証には、インターコネクタ150は、燃料極側集電体144と接触している重複領域ARoにおいて耐酸化性被膜152が形成されず、重複領域ARo以外の領域において耐酸化性被膜152が形成されることが記載されている(甲1記載事項)。
そのため、甲2発明において、甲1記載事項を参照して、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄」い構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。」と主張している。
(エ)しかし、仮に、上記(ウ)のとおりに甲2発明と甲1記載事項を組み合わせることができるとしても、甲2発明の燃料流路2bを形成する凸部上には酸化被膜11a(甲1の耐酸化性被膜152)が形成しないこととなるため、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層」が存在せず、「前記凸部上に形成される前記第1酸化物層は、前記凸部以外の部分に形成される前記第1酸化物層よりも薄」い構成とはならない。
(オ)したがって、甲2発明において、相違点3に係る点は、甲2、甲1の記載を参酌しても、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。
したがって、相違点4については検討するまでもなく、本件発明1は、甲2、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。この点は、甲5の記載を参酌しても同様である。
(4)本件発明2~4について
本件発明2~4についても、本件発明1と甲2発明との対比と同様に、少なくとも上記(3)ア(オ)の相違点3、4で相違し、上記(3)イにおける判断と同様に、相違点3については、甲2、甲1の記載を参酌しても、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。この点は、甲5の記載を参酌しても同様である。
したがって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明2~4は、甲2、甲1、甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)小括
以上、(3)、(4)に記載したとおり、本件発明1~4は、甲2、甲1、甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、上記第3の申立理由4-2によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、申立人による特許異議の申立ての申立理由1~申立理由4-2のいずれによっても、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700572