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特許異議申立

2025-700147

白板紙

審判番号
2025-700147
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-070409
登録番号
7528853
請求日
2025年02月04日
審決日
2026年02月12日
公報発行日
2026年05月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】王子ホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】松沼 泰史
  • 【権利者代理人】川越 雄一郎
  • 【権利者代理人】柳井 則子
  • 【権利者代理人】伏見 俊介
  • 【権利者代理人】君塚 哲也
  • 【異議申立人】小池 潤一
  • 【異議申立人】酒井 久仁子
審判長/審判官
  • 審判長 神山 茂樹
  • 審判官 長谷川 一郎
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.113-YAA(D21H) / P1651.121-YAA(D21H) / P1651.537-YAA(D21H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7528853号発明「白板紙」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7528853号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 特許第7528853号の請求項1~7に係る特許を維持する。 特許第7528853号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7528853号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和3年4月19日に出願され、令和6年7月29日に特許権の設定登録がされ、同年8月6日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和7年 2月 4日 :特許異議申立人小池潤一(以下「申立人A」といい、特許異議申立書を「申立書A」という。)による請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て 令和7年 2月 4日 :特許異議申立人酒井久仁子(以下「申立人B」といい、特許異議申立書を「申立書B」という。)による請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て 令和7年 5月22日付け:取消理由通知書 令和7年 7月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和7年 8月15日 :申立人Bによる意見書の提出(以下「意見書B1」という。) 令和7年 8月28日 :申立人Aによる意見書の提出(以下「意見書A1」という。) 令和7年 9月30日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和7年11月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和8年 1月14日 :申立人A、Bによる意見書の提出(以下それぞれを「意見書A2」、「意見書B2」という。) なお、令和7年7月8日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年11月27日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7528853号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は当審において訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1-1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記中層が古紙パルプを含み、」とあるのを、 「前記中層が、昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む古紙パルプを含み、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。) (2)訂正事項1-2 特許請求の範囲の請求項1における「前記表下層の炭酸カルシウムの含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上であり、」との記載の後に、 「前記炭酸カルシウムは軽質炭酸カルシウムであり、 前記軽質炭酸カルシウムの体積基準平均一次粒子径D50が、0.2~10μmであり、」との記載を追加する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。) (3)訂正事項1-3 特許請求の範囲の請求項1に 「前記表下層の灰分が35%以下である」とあるのを、 「前記表下層の灰分が15%以上35%以下である」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。) (4)訂正事項1-4 特許請求の範囲の請求項1に 「白板紙。」とあるのを、 「あじさい斑点の発生を抑制した白板紙。」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。) (5)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項7に 「請求項1~6のいずれか一項に記載の白板紙。」とあるのを、 「請求項2~6のいずれか一項に記載の白板紙。」に訂正する。 (6)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (7)一群の請求項について 訂正前の請求項1~8は、請求項2~8が、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~8〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1-1について 訂正事項1-1は、請求項1に記載の中層が含む「古紙パルプ」が「昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む」ことを限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0005】、【0006】、【0016】、【0024】、【0053】、【0056】、【0065】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2)訂正事項1-2について 訂正事項1-2は、請求項1に記載の「炭酸カルシウム」が「軽質炭酸カルシウム」であり、「体積基準平均一次粒子径D50が、0.2~10μm」であることを限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正前の特許請求の範囲の請求項7及び8、本件明細書の【0016】、【0018】、【0020】、【0056】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (3)訂正事項1-3について 訂正事項1-3は、請求項1に記載の「表下層の灰分」の含有量の下限値を特定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0018】、【0056】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (4)訂正事項1-4について 訂正事項1-4は、請求項1に記載の「白板紙」があじさい斑点を抑制したものであることを特定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0006】、【0008】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (5)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項7について、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (6)訂正事項3について 訂正事項4は、請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (7)申立人Bの主張(訂正要件違反)について 申立人Bは、上記訂正事項1-1について、本件明細書に発明として記載されているものは、昇華転写紙由来のパルプが昇華性の転写インクを含む形態のものであるところ、訂正事項1-1は、その記載の解釈によっては、昇華転写紙由来のパルプが昇華性の転写インクを含まない形態も含むから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものであると主張する。(意見書B2) しかしながら、訂正事項1-1は上記(1)のとおり、中層が含む「古紙パルプ」が「昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかである。 よって申立人Bの上記主張は採用できない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも表層と表下層と中層と裏層とを有する白板紙であって、 前記中層が、昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む古紙パルプを含み、 前記表下層が炭酸カルシウムを含み、前記表下層の炭酸カルシウムの含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上であり、 前記炭酸カルシウムは軽質炭酸カルシウムであり、 前記軽質炭酸カルシウムの体積基準平均一次粒子径D50が、0.2~10μmであり、 前記表下層の灰分が15%以上35%以下であることを特徴とする、あじさい斑点の発生を抑制した白板紙。 【請求項2】 前記表層も炭酸カルシウムを含む、請求項1に記載の白板紙。 【請求項3】 前記表下層の坪量が、15~90g/m2である、請求項1又は2に記載の白板紙。 【請求項4】 顔料とバインダーとを含む顔料塗工層が、前記表層の表面に設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の白板紙。 【請求項5】 前記裏層と前記中層との間に裏下層をさらに有し、 前記裏下層も炭酸カルシウムを含み、前記裏下層の炭酸カルシウムの含有量が前記裏下層の固形分100質量%に対して3質量%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の白板紙。 【請求項6】 前記裏下層の灰分が35%以下である、請求項5に記載の白板紙。 【請求項7】 炭酸カルシウムが軽質炭酸カルシウムである、請求項2~6のいずれか一項に記載の白板紙。」 第4 取消理由通知(決定の予告)について 1 取消理由の概要 令和7年7月8日の訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~8に対し、当審において通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。なお以下において、申立人○が提出した甲第△号証を「甲○△」という。 取消理由(進歩性) 本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲A1、甲A2、甲A3、甲A4又は甲B5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 [引用文献一覧] 甲A1:特開平6-41896号公報(甲B9と同一文献) 甲A2:国際公開第2013/140844号(甲B1と同一ファミリーの文献) 甲A3:特開2006-176921号公報 甲A4:特開2015-30930号公報 甲B5:特開2013-60692号公報 甲A5:「JIS P8251:2003 紙,紙板及びパルプ-灰分試験方法-525℃燃焼法」,2003年発行,p.1-4(周知技術を示す文献) 甲A6:大江礼三郎、外1名(翻訳・監修),「紙およびパルプ 製紙の化学と技術」,有限会社中外産業調査会,1986年12月5日発行,第1巻○2分冊(当審注:「○2」は○の中に数字の代用表記),p.570-573(周知技術を示す文献) 甲A7:「白板紙・紙器’95年版」,紙業タイムズ社,1995年4月20日発行,p.55-68(周知技術を示す文献) 甲A9:特開2004-353130号公報(周知技術を示す文献) 甲A10:特開2015-193949号公報(周知技術を示す文献) 甲A11:特開2017-206806号公報(周知技術を示す文献) 甲A12:特開2020-133015号公報(周知技術を示す文献) 甲B10:特開2020-133079号公報(周知技術を示す文献) 甲A14:「昇華転写紙(捺染紙)混入防止対策調査報告書」、[online]、財団法人古紙再生促進センター、2011年2月、インターネット <URL:http://www.prpc.or.jp/wp-content/uploads/syoukatennsyasi2011.2.pdf>(申立人Aが意見書A1に添付して提出した文献) 引用文献1:「古紙回収の禁忌品「昇華転写紙によるトラブル発生(自治体・一般用啓発チラシ)」/古紙再生促進センター」、[online]、東京23区のごみ問題を考える、2012年6月11日、インターネット <URL:https://blog.goo.ne.jp/wa8823/e/d1b67d96c26bc133c7bd6f96d7503753>(周知技術を示す文献、当審において職権で提示) 引用文献2:特開2012-158844号公報(当審において職権で提示) 2 当審における判断 当審合議体は以下のとおり、上記取消理由で通知した取消理由によっては、本件発明1~7に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。 (1)引用文献一覧 申立人Aが申立書Aとともに提出した甲A1~甲A13、及び、申立人Bが申立書Bとともに提出した甲B1~甲B13のうち、上記取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった証拠は以下のとおりである。 [証拠一覧] 甲A8:野々村文就、「新聞用紙の技術革新ここ10年」、日本印刷学会誌、社団法人日本印刷学会、2010年8月31日発行、第47巻第4号、p.234-238 甲A13:「古紙パルプ」、紙パルプ技術協会、2005年8月25日発行、p.56-57 甲B2:特開2019-189976号公報 甲B3:特開2018-162526号公報 甲B4:特開2005-281939号公報 甲B6:特開2020-20065号公報 甲B7:特開2005-105490号公報 甲B8:特開2005-133223号公報 甲B11:特開2017-185728号公報 甲B12:「古紙の統計分類と主要銘柄」、公益財団法人古紙再生促進センター、2016年5月26日改訂 甲B13:山森明浩、外1名、「板紙基礎講座(4)最新ニーズと今後の方向」、紙パ技協紙、紙パルプ技術協会、2013年10月1日発行、第67巻第10号、p.76-81 (2)引用文献の記載事項、発明 ア 各文献の記載 (ア)甲A1 甲A1には以下の記載がある。なお、下線や図中の囲い枠等は当審又は申立人Aにおいて付与したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。以下同様。 「【請求項4】表下層(表層のすぐ下の層)が、カナダ標準濾水度が250cc~500ccに叩解されたパルプから成り、対パルプで10重量%以上の顔料を含む白板紙 【請求項5】表下層(表層のすぐ下の層)が、カナダ標準濾水度が250cc~500ccに叩解されたパルプから成り、対パルプで10重量%以上の顔料を含むことを特徴とする、請求項1~請求項3に記載の白板紙」 「【0002】 【従来の技術】白板紙は、3~9層の多層抄きされた厚紙で、各種包装箱等に古くから用いられている。そのコスト的要請から、また、省資源的要請から、中層には古紙パルプが用いられている。中層の古紙パルプは脱墨しないで用いている。表層にはバージンパルプまたは脱墨された白色度の高いパルプを用いる。裏層は両面に白色度が必要な場合は表層と同様とし、その必要がない場合は白色度の低い古紙パルプを用いる。中層の色を隠蔽するためには、表層には隠蔽性が必要で、ある程度の厚さが必要である。しかし、表層のみに隠蔽性を求めると、コスト的な問題があるので、表下層(表層のすぐ下の層)にもある程度の白色度のあるパルプを用いて、この層でも中層の色を隠蔽する作用をさせるのが普通である。」 「【0013】 【実施例】 (実施例1~3)中層に脱墨しない新聞古紙パルプを用い、表下層に脱墨した新聞古紙パルプ(以下DIPと略す)を用い、表層にパルプ分としてNBKP50重量%、DIP50重量%から成るCSF350ccに調整されたパルプと<表1>に示す各重量%のタルク粒子を混合したものを用いてテスト丸網抄紙機によって全米坪70g/m2の白板紙を抄造した。表層、表下層は各々40g/m2とした。なお、表層と表下層の間及び表下層と中層の間には各々1g/m2の澱粉スプレーを行った。さらに、表層にはポリアクリルアミド系の紙力増強剤を対パルプで0.5%配合した。これに、顔料分としてカオリン45重量%、重質炭酸カルシウム50重量%、酸化チタン5重量%を含有し、バインダ固形分として対顔料20重量%の変性SBRラテックスを含有する塗料を塗布乾燥した。塗布量は全固形分で20g/m2とした。これらの試料の測定値も<表1>にまとめた。 ・・・ 【0014】 <表1> ---------------------------------- 番号 表層顔料 表面白色度 目視平滑 平滑度 罫線割れ 剛性 印刷性 ---------------------------------- 実施例1 10% 81.0 ○ 7 ○ ○ ○ 実施例2 15% 81.4 ○ 6 ○ ○ ○ 実氏例3 20% 81.9 ○ 6 ○ ○ ○ ・・・ ---------------------------------- 【0015】(実施例4~6)中層に脱墨しない新聞古紙パルプを用い、表下層にCSF300ccのDIPと対パルプで<表2>に示す各重量%のタルク粒子を混合したものを用い、表層にNBKP50重量%、DIP50重量%から成るCSF350ccに調整されたパルプを用いてテスト丸網抄紙機によって全米坪700g/m2の白板紙を抄造した。表層、表下層は各々40g/m2とした。なお、表層と表下層の間及び表下層と中層の間には各々1g/m2の澱粉スプレーを行った。さらに、表層にはポリアクリルアミド系の紙力増強剤を対パルプで0.5%配合した。これに、顔料分としてカオリン45重量%、重質炭酸カルシウム50重量%、酸化チタン5重量%を含有し、バインダ固形分として対顔料20重量%の変性SBRラテックスを含有する塗料を塗布乾燥した。塗布量は全固形分で20g/m2とした。これらの試料の測定値も<表2>にまとめた。 <表2> ----------------------------------番号 表下層顔料 表面白色度 目視平滑 平滑度 罫線割れ 剛性 印刷性 ----------------------------------実施例4 10% 80.1 ○~△ 8 ○ ○ ○ 実施例5 15% 80.6 ○ 7 ○ ○ ○ 実施例6 20% 81.2 ○ 6 ○ ○ ○ ---------------------------------- 【0016】(実施例7)中層に脱墨しない新聞古紙パルプを用い、表下層にCSF300ccのDIPと対パルプで20重量%のタルク粒子を混合したものを用い、表層にはパルプ分としてNBKP50重量%、DIP50重量%から成るCSF350ccに調整されたパルプとこれに対パルプで20重量%のタルクを混合したものを用いてテスト丸網抄紙機によって全米坪700g/m2の白板紙を抄造した。表層、表下層は各々40g/m2とした。なお、表層と表下層の間及び表下層と中層の間には各々1g/m2の澱粉スプレーを行った。さらに、表層にはポリアクリルアミド系の紙力増強剤を対パルプで0.5%配合した。これに、顔料分としてカオリン45重量%、重質炭酸カルシウム50重量%、酸化チタン5重量%を含有し、バインダ固形分として対顔料20重量%の変性SBRラテックスを含有する塗料を塗布乾燥した。塗布量は全固形分で20g/m2とした。この試料の測定値を<表3>に記載した。 ---------------------------------- 番号 表面白色度 目視平滑 平滑度 罫線割れ 剛性 印刷性 ---------------------------------- 実施例7 82.5 ◎ 8 ○ ○ ○ ---------------------------------- 」 (イ)甲A2 甲A2には以下の記載がある。 「[請求項1] 3層以上から成る多層抄きされた白板紙において、表層と裏層のそれぞれにパルプ繊維に対して1.0~9.0%の無機填料を含有するように配合し、中層にパルプ繊維に対して2.0~15.0%の無機填料を含有するように配合し、表層と中層と裏層を抄き合わせて成る白板紙。 [請求項2] 前記無機填料は、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、クレー、タルクのうちの1種又は複数種の組み合わせである、請求項1に記載の白板紙。」 「[0004] 従来、白板紙の表層、若しくは、表下層(表層のすぐ下の層)の叩解フリーネスを250~500ccとし、前記層に含有される顔料の含有率を対パルプで10重量%以上とすることで、白板紙の隠蔽性(中層に配合されている古紙の色を隠蔽する)、目視平滑性、印刷適性、表面強度、罫線割れ対策(白板紙を箱にしたときの罫線部が割れないこと)等についての改善を企図したものがある(特許文献1:特許第3008313号公報)。」 「[0015] そして、更に中層にも2.0~15.0%の無機填料を含有することで、白板紙の適度な腰及び白色度を得ることが可能となる。即ち、通常、中層にはコストダウン等の目的で、古紙パルプや工場内での循環ブローク(工場内で製造中発生した損紙相当の紙)が配合され、表層・裏層には印刷適性向上のため、バージンパルプが配合されることが多いが、中層は前記配合パルプの品質上、白色度が低くなる場合があるところ、上記のようにして表層・裏層の地合が改善されるに伴って層構成が均一となるため、中層の色を隠蔽することが可能となるのである(隠蔽効果)。」 「0019] 本発明の填料としては、とりわけ軽質炭酸カルシウムが推奨される。軽質炭酸カルシウムの結晶形態はカルサイト、アラゴナイトのいずれでもよく、形状についても、針状、柱状、紡錘状、球状、立方体状、ロゼッタ型のいずれでもよい。中でも特に、ロゼッタ型のカルサイト系の軽質炭酸カルシウムが好ましい。ロゼッタ型とは、紡錘状の軽質炭酸カルシウム一次粒子がいがくり状に凝集した形状を指し、高い比表面積と吸油性を示す特徴がある。炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.1~20μm程度であり、好ましくは0.5~10μmであり、より好ましくは1~5μmである。」 「[0021] 表下層を含む中層には、コストダウンを目的として前記パルプの他に雑誌古紙、段ボール古紙等の古紙パルプや工場内で発生した損紙相当の循環ブロークが配合される。前記晒パルプの填料分が約0.5%であること、古紙パルプの填料分が10%以上(古紙の種類、集荷によりバラツキあり)、循環ブローク中の填料分が2.0~20.0%(一般に循環ブロークには填料塗工損紙若しくは無塗工原紙、若しくはそれらの混合等が含まれるが、一工場内における循環ブローク中の填料は本願記載の填料と同種のものとなる。)であること及び歩留を考慮し、中層に、無機填料分の含有率が2.0~15.0%になるように配合を行う。例えば、中層については、填料分の多い循環ブロークにフレッシュな無機填料を添加するために、表層及び裏層よりも無機填料分の含有率が高くなる。 [0022] 白板紙の原紙を多層抄きマシンで抄造した後、通常の塗工装置(カーテンコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター他)で、通常のカラー配合(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、クレー、プラスチックピグメント他の混合液)を、片面若しくは両面にシングル塗工(1回塗工)若しくはダブル塗工(2回塗工)により、塗工量20~40g/m2の範囲で塗工して、坪量160g/m2~420g/m2程度の白板紙を製造する。 [0023] 本願発明に係る白板紙の原紙は、長網、円網、ウルトラフォーマー等の多層抄合わせマシンで抄造された後、必要に応じて片面または両面に無機顔料を含む塗料が塗工される。」 「[0029]<表1> [図:0001435175000001.jpg] 」 (ウ)甲A3 甲A3には以下の記載がある。 「【請求項1】 少なくとも表層、表下層、及び裏層の3層の紙層を有し、全米坪が100~300g/m2となるように長網多層抄紙機にて抄造され、また前記各層には古紙パルプが50%以上配合されて成る段ボールに供せられる白ライナーであって、前記表層の表出面のJIS-P8123に準拠する白色度が60%以上であり、前記表層及び前記表下層がそれぞれ灰分を15%以上含有し、また前記表層及び前記表下層に澱粉を主体とする紙力増強剤が添加されていることを特徴とする白ライナー。」 「【0027】 本白ライナーの各層の原料パルプには、古紙パルプが50%以上配合されている。これにより、古紙パルプに由来する填料や顔料の灰分(以下、単に「灰分」と言う。)を15%以上含有させることができ、本白ライナーの美粧性を向上させることができる。・・・ 【0028】 古紙パルプの原料としては、特に限定されるものではないので、例えば上白、白アート、カード、特白、中白、模造、白マニラ、色上、段ボール、新聞、雑誌、切符、中質反古、台紙、地券等の公知の種々のものを用いることができる。・・・」 「【0042】 なお、本白ライナーは、上述したように表層、表下層及び裏層の3層の紙層から成るものに限定されるものではなく、この他、表層、表下層、中層及び裏層の4層以上の紙層を有するものであっても適用できる。」 「【0054】 【表1】 [図:0001435175000002.jpg] 」 (エ)甲A4 甲A4には以下の記載がある。 「【請求項1】 少なくとも表層、表下層、中層及び裏層の4層を有する原紙と、前記表層に塗設された顔料塗工層と有する白板紙において、 前記表層は漂白化学パルプを主体とし、かつ、填料を含有する層であり、 前記表下層、前記中層及び前記裏層は古紙パルプを主体とした層であり、 前記表層と前記顔料塗工層とからなる2層の不透明度が85%以上であり、かつ、 前記顔料塗工層は、塗工量が15g/m2~25g/m2で、不透明度が60%以上であることを特徴とするコート白ボール。」 「【0023】 表層は、填料を含有する。填料は、例えば、軽質炭酸カルシウム若しくは重質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、タルク、クレー、焼成クレー、水酸化アルミニウム、二酸化チタンなどの無機填料、プラスチックピグメントなどの有機填料である。填料の配合率は、表層のパルプに対して、3~12質量%であることが好ましく、4~10質量%であることがより好ましい。3質量%未満では、不透明度及び白色度の向上効果が不十分となる場合がある。12質量%を超えると紙層強度が低下し、印刷時のピッキングトラブルの原因となる場合がある。」 「【0026】 表下層は、古紙パルプを主体とした層であり、例えば、古紙パルプとして雑誌古紙パルプ若しくは新聞古紙脱インキパルプのいずれか一方又はその両方を主体とした層から構成される。表下層の坪量は20~60g/m2であることが好ましく、より好ましくは30~50g/m2である。白色度については50~75%であることが好ましく、より好ましくは55~70%である。50%に満たない白色度では白色ムラが起こりやすくなる場合がある。75%を超えるとコストアップとなり経済面で好ましくない。表下層の古紙パルプ配合率は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。きょう雑物の減少や白色度の向上のために、漂白化学パルプを主成分とする上質系古紙パルプや漂白化学パルプの使用は可能であるが、経済性と古紙配合率の維持の観点から表下層で使用するパルプの40質量%未満の使用に限定すべきである。」 「【0046】 表層には広葉樹漂白化学パルプ(L-BKP)90%と針葉樹漂白化学パルプ(N-BKP)10%とからなるCSF350mlに調整されたパルプと、表層のパルプ量に対して湿式粉砕重質炭酸カルシウム(カービタル90(イメリスミネラルズジャパン社製 2μm以下90質量%))を4%混合したものを用い、表下層には新聞古紙パルプ100%を用い、中層には離解雑誌古紙パルプ100%を用い、裏層には機械分散処理した新聞古紙パルプ100%を用いて、短網組み合わせ型抄紙機によって、全坪量300g/m2の原紙を抄紙した。原紙の古紙パルプ配合率は75%であった。表層の坪量は35g/m2、表下層の坪量は50g/m2、中層の坪量は180g/m2、裏層の坪量は35g/m2であった。表層には紙力増強剤としてポリアクリルアマイド(荒川化学工業社製 ポリストロン619)を表層のパルプ量に対して0.2%、凝集助剤として硫酸バンドを表層のパルプ量に対して0.2%、サイズ剤として中性ロジン(星光PMC社製 CC-1401)を表層のパルプ量に対して0.3%、歩留り向上剤(栗田工業社製 HH220)を表層のパルプ量に対して300ppm添加した。この原紙の表層の表面上に、下塗り塗工層の顔料としてカオリン(ケイミン社製 ハイドラスパース)を全顔料中20部及び湿式重質炭酸カルシウム(イメリスミネラルズジャパン社製 カービタル60)を全顔料中80部含有し、接着剤として顔料100部に対してSBRラテックスを15部及び顔料100部に対してリン酸エステル化澱粉3部をそれぞれ含有する塗料をロッドコーターにて塗工量9g/m2となるように塗工、乾燥した。次いで上塗り塗工層の顔料としてカオリン(カダム社製 アマゾンSB)を全顔料中30部、湿式重質炭酸カルシウム(イメリスミネラルズジャパン社製 カービタル90)を全顔料中60部及び二酸化チタン(デュポン社製 RPS-Vantage)を全顔料中10部含有し、接着剤として顔料100部に対して15部のSBRラテックスを含有する塗料(塗料A)をロッドコーターにて塗工量8g/m2となるように塗工、乾燥した。」 (オ)甲B5 甲B5には以下の記載がある。 「【請求項1】 内填用軽質炭酸カルシウムであって、前記軽質炭酸カルシウムの粒子は、針状及び/または柱状の形状を有した一次粒子及び/またはそれらの凝集体であり、レーザー回折法による前記軽質炭酸カルシウム粒子の粒度分布曲線の50体積%の粒子径(D50)が4.0~15.0μmであり、かつBET比表面積が3~20m2/gであることを特徴とする内填用軽質炭酸カルシウム。」 「【0043】 (内填紙) 本発明の軽質炭酸カルシウムを填料として使用した紙は、紙の光学特性を損なうことなく、表面平滑性が良好で、引張強さなどの強度特性が優れており、従来の填料と同様に本発明の軽質炭酸カルシウムを利用可能で、特に限定はない。また、紙の種類としては、各種塗工用原紙、新聞用紙、上質や中質などの書籍用紙、電子写真用紙、インクジェット用紙、クラフト用紙、圧着記録紙、PPC用紙、包装用紙、紙容器、板紙、壁紙、繊維板、写真用原紙、含浸用原紙、難燃紙などが挙げられる。」 「【0155】 (実施例17) <段ボール用ライナの作成> 針葉樹未晒クラフトパルプ(フリーネス450mLC.S.F)/広葉樹未晒クラフトパルプ(フリーネス400mLC.S.F)=70/30からなるパルプスラリー100%に、填料として実施例1の軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が6%なるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム2.5%、表面サイズ剤0.6%を添加し、表層用紙料を調成した。 針葉樹未晒クラフトパルプ(フリーネス450ml C.S.F)/広葉樹未晒クラフトパルプ(フリーネス400ml C.S.F)=40/60からなるパルプスラリー100%に、填料として実施例1の軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が10%なるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム2.5%、表面サイズ剤0.6%を添加し、表下層用紙料を調成した。 雑誌古紙パルプ(フリーネス350mLC.S.F)/雑誌古紙パルプ(フリーネス350mLC.S.F)=50/50からなるパルプスラリー100%に、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム1.2%、表面サイズ剤0.2%を添加し、中層、裏層用紙料を調成した。 上記紙料を運転抄速650m/minで長網式多層抄紙機により、各層の坪量が、表層40g/m2、表下層40g/m2、中層50g/m2、裏層50g/m2となるように抄き合わせ、プレス、乾燥、カレンダーで平滑処理を行った後、再表層上に澱粉を1.0g/m2となるように塗布し、乾燥させた後に、さらにカレンダで平滑処理を行い、坪量180g/m2の段ボール用ライナを得た。」 (カ)甲A5 甲A5には以下の記載がある。 「 [図:0001435175000003.jpg] 」(3ページ) (キ)甲A6 甲A6には以下の記載がある。 「 [図:0001435175000004.jpg] 」(572ページ) (ク)甲A7 甲A7には以下の記載がある。 「 [図:0001435175000005.jpg] 」(68ページ3~13行) (ケ)甲A9 甲A9には以下の記載がある。 「【請求項1】 古紙を離解・精選してなる古紙パルプを用い、表層、中層、裏層の少なくとも3層以上の層構成からなる抄き合わせ原紙の両面に1層以上の塗被層を有する塗工特殊板紙において、表層面側の最外塗被層面の白色度が82%以上、かつ明度が92%以上で、フェードメーターによる褪色試験において、試験前の表層面側の最外塗被層面の白色度と10時間後の前記最外塗被層面の白色度の差が2%未満であることを特徴とする塗工特殊板紙。 ・・・ 【請求項3】 前記原紙の表層面側が2層の塗被層からなり、その上塗り層の顔料として、立方形状粒子で平均粒子径が0.3~0.5μmの範囲である軽質炭酸カルシウムを含有する請求項1または2に記載の塗工特殊板紙。」 (コ)甲A10 甲A10には以下の記載がある。 「【請求項1】 多層抄き原紙の少なくとも片面に塗工層を有する塗工白板紙であって、 前記塗工層がカーテン塗工により設けられた顔料塗工層を1層以上含み、 前記原紙が、塗工層に隣接する表層、当該表層の塗工面とは反対側に隣接する表下層、およびそれ以外の他層からなり、 当該塗工白板紙を、前記塗工層、表層、および表下層からなる分割層1と、前記他層からなる分割層2に分割したとき、当該分割層1の両面のISO白色度の差が2.0ポイント以上である、 塗工白板紙。」 「【0034】 本発明においては原紙の一方の面にカーテン塗工により顔料塗工層を設ければよいが、他方の面(便宜上「裏面」ともいう)にクリア塗工層もしくは顔料塗工層を設けてもよい。他方の面に塗工層を設けることで、剛度を向上させる、またはカールを抑制することができる。裏面塗工層を形成する塗工液には、必要に応じて、従来から公知公用の顔料やバインダー、および、分散剤、粘性改良剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、蛍光染料、着色染料、着色顔料、界面活性剤、pH調整剤、カチオン性樹脂、アニオン性樹脂、紫外線吸収剤、金属塩など、通常の塗工液に配合される各種助剤を適宜使用できる。」 (サ)甲A11 甲A11には以下の記載がある。 「【請求項1】 少なくとも表層、表下層、中層及び裏層の4層を有する原紙と、前記表層に塗設された顔料塗工層と有するコート白ボールの製造方法において、 漂白化学パルプを主体としたパルプと填料とを含有する表層用パルプスラリー、古紙パルプを主体としたパルプを含有する表下層用パルプスラリー、古紙パルプを主体としたパルプを含有する中層用パルプスラリー、古紙パルプを主体としたパルプを含有する裏層用パルプスラリー及び化学パルプを主体としたパルプを含有する繊維層用パルプスラリーを用いて、少なくとも、前記表層、前記表下層、前記中層、前記裏層及び繊維層を、前記裏層の表面上に前記繊維層が5g/m2~35g/m2となるように、それぞれの層を抄紙して、抄き合わせる工程と、 前記原紙の前記表層の表面上に、顔料と接着剤とを含有する塗料を塗工し、乾燥して、塗工量が15g/m2~25g/m2で不透明度が60%以上の顔料塗工層を塗設する工程と、を有し、 前記表層と前記顔料塗工層とからなる2層の不透明度を85%以上とし、かつ、前記繊維層に色剤を含有させたことを特徴とするコート白ボールの製造方法。 ・・・ 【請求項4】 前記原紙の古紙パルプ配合率が60質量%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のコート白ボールの製造方法。」 「【0035】 コート白ボールにおいては原紙の表層側に顔料塗工層が塗設される。顔料塗工層は顔料と接着剤とを含有する塗料を塗工・乾燥することによって形成される。顔料としては湿式重質炭酸カルシウム、クレー(以降、カオリンということもある。)、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、プラスチックピグメント等の公知公用の顔料が単独で、又は組み合わせて適宜使用されるが、主として湿式重質炭酸カルシウムを使用することが好ましい。固形分64質量%以上でも流動性が優れ、ストリークの発生が抑制されるように、湿式重質炭酸カルシウムを少なくとも顔料中60質量%以上用いることができ、好ましくは、65~95質量%用いると良い。」 (シ)甲A12 甲A12には以下の記載がある。 「【請求項1】 表層及び中層を有する多層抄きされた白板紙であって、 前記表層は、古紙を原料とする脱インキパルプを含有し、 前記表層のERIC値が10~60の範囲にあり、 前記表層の平面視における、0.01mm2以上0.05mm2未満のちり個数が0~40000個/m2、0.05mm2以上2mm2未満のちり個数が0~4000個/m2の範囲にある、白板紙。 ・・・ 【請求項4】 請求項1~3の何れか一項に記載の白板紙の少なくとも一方の表面に、顔料塗工層が設けられた塗工白板」 「【0010】 表層は、多層抄き紙の最表面を構成する層である。表層は、古紙を原料とする脱インキパルプを含有する。 中層は、表層よりも白色度が低い層である。中層は、1層でもよいし、2~9層程度の多層構造であってもよい。中層は、古紙を含んでいてもよいし、含まなくてもよいが、古紙を含むことが望ましい。中層が多層構造である場合、中層の各層の原料組成は同じでもよいし、異なっていてもよい。 白板紙は、表層と中層の間に、表層に接する表下層を有してもよいし、有さなくてもよい。表下層の白色度は、中層よりも高く、表層よりも低いことが好ましい。 白板紙は、中層の表層とは反対側に、裏層を有していてもよいし、有さなくてもよい。裏層を形成する原料組成は、中層の原料組成と異なるので、互いの白色度も通常は異なる。 白板紙は、中層と裏層の間に、裏層に接する裏下層を有してもよいし、有さなくてもよい。裏下層の白色度は、中層よりも高く、裏層よりも低いことが好ましい。」 「【0044】 塗工白板紙の剛度を高めたり、カールを抑制したりする目的等で、白板紙の裏層側に顔料塗工層または顔料が少ないクリア塗工層(まとめて裏面塗工層という。)を形成してもよい。この場合、裏面塗工層を形成する塗工液には、必要に応じて、公知の、バインダー、分散剤、粘性改良剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、蛍光染料、着色染料、着色顔料、界面活性剤、pH調整剤、カチオン性樹脂、アニオン性樹脂、紫外線吸収剤、金属塩など、が配合されてもよい。」 (ス)甲B10 甲B10には以下の記載がある。 「【0054】 また本発明においては、紙を抄造する際に薬品や填料を添加してもよい。添加する薬品としては、ロジンエマルションや中性ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、スチレン/アクリル共重合体などのサイズ剤、カチオン性や両イオン性、アニオン性のポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリアクリル酸を含む樹脂、グアーガムなどの乾燥紙力増強剤、カチオン性や両イオン性、アニオン性の変性澱粉、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、カルボキシメチルセルロースなどの湿潤紙力増強剤、濾水性向上剤、着色剤、染料、蛍光染料、凝結剤、嵩高剤、歩留剤などが挙げられる。また、填料としては、一般に無機填料及び有機填料と呼ばれる粒子であれば良く、特に限定はない。具体的には、無機填料として、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、合成炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー(カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン)、タルク、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、二酸化チタン、ケイ酸ナトリウムと鉱酸から製造されるシリカ(ホワイトカーボン、シリカ/炭酸カルシウム複合体、シリカ/二酸化チタン複合体)、白土、ベントナイト、珪藻土、硫酸カルシウム、脱墨工程から得られる灰分を再生して利用する無機填料および再生する過程でシリカや炭酸カルシウムと複合体を形成した無機填料などが上げられる。炭酸カルシウム-シリカ複合物としては、炭酸カルシウムおよび/または軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物以外に、ホワイトカーボンのような非晶質シリカを併用しても良い。この中でも、中性抄紙やアルカリ抄紙における代表的な填料である炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物が好ましく使用される。」 (セ)甲A14 甲A14には以下の記載がある。 「 [図:0001435175000006.jpg] 」(16ページ) (ソ)引用文献1 引用文献1には以下の記載がある。 「 [図:0001435175000007.jpg] 」 (タ)引用文献2 引用文献2には以下の記載がある。 「【要約】 【課題】 白色ムラの目立たない白紙外観を有する白板紙を提供すること。 【解決手段】 白層に炭酸カルシウムを白層のパルプ量に対して3質量%以上、10質量%未満内添することにより、白下層より内側の古紙に起因する暗灰色を均一に隠蔽する多層抄構造の白板紙が得られる。」 「【0011】 本発明の白板紙は、表層又は裏層としてバージンパルプや白色度の高い漂白古紙パルプを含有する白層、その内側に白層のパルプよりも白色度の低い古紙パルプを含有する白下層、更に内側に古紙パルプを含有する中層と呼ばれる多層の抄合わせで構成される。・・・」 「【0015】 本発明の白板紙は、白層に炭酸カルシウムの白層のパルプ量に対して3質量%以上、10質量%未満の内添を必須条件とする。炭酸カルシウムが白層のパルプ量に対して3質量%未満である場合、炭酸カルシウムによる白色度の向上、隠蔽力の改善に乏しく、見た目の白色ムラを改善する事は出来ない。一方、炭酸カルシウムが白層のパルプ量に対して10質量%以上内添される場合、白色度の向上、隠ぺい力の改善に伴い見た目の白色ムラは顕著に改善されるものの、印刷時に紙表面から紙粉が脱落する恐れがある。 【0016】 さらに本発明は、白層に内添する炭酸カルシウムがBET法による比表面積が6.0m2/g以上、10.0m2/g未満である軽質炭酸カルシウムであることが好ましい。炭酸カルシウムには石灰石を乾式又は湿式にて粉砕処理して得られる重質炭酸カルシウムと、石灰石をキルン等で一旦焼成して生石灰とし、次いで水に消和、炭酸ガスを吹き込んで炭酸化反応により合成される軽質炭酸カルシウムとに大別できる。重質炭酸カルシウムは白色度がタルク、カオリンクレーに比較して白色度が高く、見た目の白色ムラの改善もなされる。又、ワイヤー磨耗性が高い填料ではあるが、抄造速度の比較的遅い白板紙抄紙機においては内添に利用することも可能である。軽質炭酸カルシウムは重質炭酸カルシウムに比べて更に白色度及び隠蔽性が高く、ワイヤー磨耗性も低く内添に好適である。しかし、軽質炭酸カルシウムのBET比表面積6.0m2/g未満の場合は見た目の白色ムラを改善する効果が小さくなる傾向がある。BET比表面積10.0m2/g以上の軽質炭酸カルシウムは白色ムラの改善効果が著しいが、軽質炭酸カルシウムの粒径が細かくなり、紙層強度も低下する事から印刷時に紙表面から紙粉が脱落する恐れがある。」 イ 各文献に記載された引用発明等 (ア)甲A1に記載された発明 上記ア(ア)の【0002】、【0016】の記載を参照し、特に実施例7に着目すると、甲A1には以下の発明(以下「甲A1発明」という。)が記載されている。 [甲A1発明] 「表層、表下層、中層、裏層を有する白板紙であって、(【0002】) 表層にはパルプ分としてNBKP50重量%、DIP50重量%からなるCSF350ccに調整されたパルプとこれに対パルプで20重量%のタルクを混合したものを用い、 表下層にCSF300ccのDIPと対パルプで20重量%のタルク粒子を混合したものを用い、 中層に脱墨しない新聞古紙パルプを用い、 テスト丸網抄紙機によって抄造した全米坪700g/m2の白板紙であって、 表層、表下層は各々40g/m2であって、 表層と表下層の間及び表下層と中層の間には各々1g/m2の澱粉スプレーを行い、 表層にはポリアクリルアミド系の紙力増強剤を対パルプで0.5%配合してなり、顔料分としてカオリン45重量%、重質炭酸カルシウム50重量%、酸化チタン5重量%を含有し、バインダ固形分として対顔料20重量%の変性SBRラテックスを含有する塗料を塗布量を20g/m2で塗布乾燥してなる、(【0016】) 白板紙。」 (イ)甲A2に記載された発明等 上記ア(イ)の[請求項1]、[0019]、[0021]、[0029]の記載を参照し、特に実施例5に着目すると、甲A2には以下の発明(以下「甲A2発明」という。)が記載されている。 [甲A2発明] 「3層以上から成る多層抄きされた白板紙において、表層にパルプ繊維に対して2.5%の無機填料を配合し、裏層にパルプ繊維に対し8.5%の無機填料を配合し、中層にパルプ繊維に対して12.9%の無機填料を配合し、表層と中層と裏層を抄き合わせて成る白板紙であって、(請求項1、実施例5) 前記無機填料は、軽質炭酸カルシウムであり、([0019]、実施例5) 中層には表下層も含まれる、([0021]) 白板紙。」 また、上記ア(イ)の[0019]を参照すると、甲A2には以下の事項(以下「甲A2記載事項」という。)が記載されている。 [甲A2記載事項] 「白板紙の各層に添加される炭酸カルシウムの平均粒子径を1~5μmとすること。」 (ウ)甲A3に記載された発明 上記ア(ウ)の【請求項1】、【0042】の記載を参照すると、甲A3には以下の発明(以下「甲A3発明」という。)が記載されている。 [甲A3発明] 「少なくとも表層、表下層、中層及び裏層の4層以上の紙層を有し、全米坪が100~300g/m2となるように長網多層抄紙機にて抄造され、また前記各層には古紙パルプが50%以上配合されて成る段ボールに供せられる白ライナーであって、 前記表層の表出面のJIS-P8123に準拠する白色度が60%以上であり、前記表層及び前記表下層がそれぞれ灰分を15%以上含有し、また前記表層及び前記表下層に澱粉を主体とする紙力増強剤が添加されている、白ライナー。(請求項1、【0042】)」 (エ)甲A4に記載された発明 上記ア(エ)の【請求項1】、【0046】の記載を参照すると、甲A4には以下の発明(以下「甲A4発明」という。)が記載されている。 [甲A4発明] 「少なくとも表層、表下層、中層及び裏層の4層を有する原紙と、前記表層に塗設された顔料塗工層を有する白板紙であって、(請求項1) 表層には、広葉樹漂白化学パルプ(L-BKP)90%と針葉樹漂白化学パルプ(N-BKP)10%とからなるCSF350mlに調整されたパルプと、表層のパルプ量に対して湿式粉砕重質炭酸カルシウム(カービタル90(イメリスミネラルズジャパン社製 2μm以下90質量%))を4%混合したものを用い、 表下層には、新聞古紙パルプ100%を用い、 中層には、離解雑誌古紙パルプ100%を用い、 裏層には、機械分散処理した新聞古紙パルプ100%を用い、 短網組み合わせ型抄紙機によって全坪量300g/m2で抄紙した原紙であって、 原紙の古紙パルプ配合率は75%であって、表層の坪量は35g/m2、表下層の坪量は50g/m2、中層の坪量は180g/m2、裏層の坪量は35g/m2であって、 この原紙の表層の表面上に、下塗り塗工層として顔料と接着剤を含有する塗料を塗工、乾燥、次いで上塗り塗工層として顔料と接着剤を含有する塗料を塗工、乾燥してなる、(【0046】) コート白ボールである白板紙。」 (オ)甲B5に記載された発明 上記ア(オ)の【0155】の記載を参照し、特に実施例17に着目すると、甲B5には以下の発明(以下「甲B5発明」という。)が記載されている。 [甲B5発明] 「針葉樹未晒クラフトパルプ/広葉樹未晒クラフトパルプ=70/30からなるパルプスラリー100%に、填料としては針状の凝集体軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が6%になるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム2.5%、表面サイズ剤0.6%を添加し、表層用紙料を調成し、 針葉樹未晒クラフトパルプ/広葉樹未晒クラフトパルプ=40/60からなるパルプスラリー100%に、填料として針状の凝集体軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が10%になるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム2.5%、表面サイズ剤0.6%を添加し、表下層用紙料を調成し、 雑誌古紙パルプ/雑誌古紙パルプ=50/50からなるパルプスラリー100%に、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム1.2%、表面サイズ剤0.2%を添加し、中層、裏層用紙料を調成し、 上記紙料を、各層の坪量が、表層40g/m2、表下層40g/m2、中層50g/m2、裏層50g/m2となるように抄き合わせ、平滑処理を行うことで得た、坪量180g/m2の段ボール用ライナ。(【0155】実施例17)」 (カ)甲A12に記載された事項 上記ア(シ)の【0010】の記載を参照すると、甲A12には以下の事項(以下「甲A12記載事項」という。)が記載されている。 [甲A12記載事項] 「白板紙は、中層と裏層の間に、裏層に接する裏下層を有してもよいこと。」 (キ)引用文献2に記載された事項 上記ア(タ)の記載を参照すると、引用文献2には以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 [引用文献2記載事項] 「白板紙において、白下層より上の層に、タルク及び重質炭酸カルシウムよりも隠ぺい力の高い軽質炭酸カルシウムを、当該層のパルプ量に対して3~10質量%内添することで、白下層より下の層の暗灰色を隠ぺいすること。」 (ク)軽質炭酸カルシウムについての周知技術 例えば、上記ア(イ)(甲A2)の[請求項2]及び[0019]、上記ア(エ)(甲A4)の【0023】、上記ア(オ)(甲B5)の【請求項1】、上記ア(ケ)(甲A9)の【請求項3】、上記ア(ス)(甲B10)の【0054】に記載されているように、以下の事項は本件出願前において周知の技術(以下「周知技術1」という。)であったといえる。 [周知技術1] 「紙に添加する顔料又は填料として軽質炭酸カルシウムを用いること。」 (ケ)古紙の灰分の量についての周知技術 a 上記ア(カ)(甲A5)の表2には、塗工紙の灰分を分析した平均値として、「32.0%」及び「25.6%」が記載されており、上記ア(キ)(甲A6)の表には、塗工紙の灰分として、「25%」及び「30%」が記載されている。また、「塗工紙」が、紙の中でも比較的灰分が多いことは技術常識である。 b 上記ア(ク)(甲A7)には、「回収新聞古紙としては填料、顔料類の灰分が10%前後にも増加してきている。雑誌古紙もコート紙類が増加し、灰分が高くなっている。」と記載されている。 c 上記ア(ウ)(甲A3)の【0054】【表1】の実施例1~5及び比較例1~5においては、表下層の灰分が11~20%であることが記載されている。 d 上記a~cを踏まえると、以下の事項は本件出願前において周知の技術(以下「周知技術2」という。)であったといえる。 [周知技術2] 「一般的な古紙の灰分が多くとも30%程度であること。」 (コ)表下層の顔料についての周知技術 例えば上記ア(ア)(甲A1)の【請求項4】、【請求項5】及び【0002】、上記ア(イ)(甲A2)の[0004]に記載されているように、以下の事項は本件出願前において周知の技術(以下「周知技術3」という。)であったといえる。 [周知技術3] 「白板紙などの多層抄きの紙において、古紙を用いた中層の色を隠ぺいするために表下層に顔料を10%以上含有すること。」 (サ)顔料塗工層についての周知技術 例えば上記ア(コ)(甲A10)の記載【請求項1】及び【0034】、上記ア(サ)(甲A11)の記載【請求項1】、【請求項4】及び【0035】、上記ア(シ)(甲A12)の【請求項1】、【請求項4】及び【0044】に記載されているように、以下の事項は本件出願前において周知の技術(以下「周知技術4」という。)であったといえる。 [周知技術4] 「白板紙の表層の表面に顔料とバインダーを含む顔料塗工層を設けること。」 (シ)坪量についての周知技術 例えば上記ア(ア)(甲A1)の実施例1~7の表下層の全米坪40g/m2、上記ア(ウ)(甲A3)の実施例1~5の層米坪20~35g/m2、上記ア(エ)(甲A4)の【0026】に記載されているように、以下の事項は本件出願前において周知の技術(以下「周知技術5」という。)であったといえる。 [周知技術5] 「白板紙の表下層の坪量を20~60g/m2の範囲とすること。」 (ス)あじさい斑点に関する周知課題 上記ア(セ)(甲A14)及び(ソ)(引用文献1)の記載を参酌すると、以下の事項は本件出願前において周知の課題(以下「周知課題」という。)であったといえる。 [周知課題] 「古紙には昇華転写紙が混入することがあり、該昇華転写紙に起因して白板紙にあじさい斑点が現れること。」 (3)甲A1を主引例とする進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲A1発明を対比する。 甲A1発明の「表層」、「表下層」、「中層」、「裏層」はそれぞれ、本件発明1の「表層」、「表下層」、「中層」、「裏層」に相当する。 甲A1発明の「中層に脱墨しない新聞古紙パルプを用い」たことと、本件発明1の「前記中層が、昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む古紙パルプを含」むことは、「前記中層が、古紙パルプを含」む限りにおいて一致する。 甲A1発明の「表下層にCSF300ccのDIPと対パルプで20重量%のタルク粒子を混合したものを用い」たことと、本件発明1の「記表下層が炭酸カルシウムを含み、前記表下層の炭酸カルシウムの含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上であり、前記炭酸カルシウムは軽質炭酸カルシウムであり、前記軽質炭酸カルシウムの体積基準平均一次粒子径D50が、0.2~10μmであ」ることは、「前記表下層が顔料を含み、前記表下層の顔料の含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上であ」るという限りにおいて一致する。 甲A1発明の「白板紙」と本件発明1の「あじさい斑点の発生を抑制した白板紙」は、「白板紙」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲A1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点1] 「少なくとも表層と表下層と中層と裏層とを有する白板紙であって、 前記中層が、古紙パルプを含み、 前記表下層が顔料を含み、前記表下層の顔料の含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上である、白板紙。」 [相違点1-1] 「前記中層が、古紙パルプを含」む点について、古紙パルプが、本件発明1では「昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む」のに対し、甲A1発明ではかかる構成を有するか不明な点。 [相違点1-2] 「前記表下層が顔料を含み、前記表下層の顔料の含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上であ」る点について、本件発明1では、顔料が「軽質炭酸カルシウムであり、前記軽質炭酸カルシウムの体積基準平均一次粒子径D50が、0.2~10μmであ」るのに対し、 甲A1発明では「タルク粒子」である点。 [相違点1-3] 本件発明1では、「前記表下層の灰分が15%以上35%以下である」のに対し、甲A1発明では、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点1-4] 「白板紙」について、本件発明1では、「あじさい斑点の発生を抑制した白板紙」であるのに対し、甲A1発明では、そのようなものであるか否か不明な点。 (イ) 判断 事案に鑑み、密接に関連する相違点1-1、1-2及び1-4についてまとめて判断する。 本件発明は、「使用済みの昇華転写紙は、外観で昇華転写紙であるか否かを判別することが困難で、古紙への混入が避けられない。」(【0005】)という現状において、「あじさい斑点の発生を抑制できる白板紙を提供する。」(【0006】)という課題(以下「本件課題」という。)を解決するものである。 そして本件発明1は本件課題を解決するために、本件訂正後の請求項1の記載で特定されるように、「前記中層が、昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む古紙パルプを含」む白板紙において、「前記表下層が」「軽質炭酸カルシウム」を含むようにすることで、「炭酸カルシウムは多孔質であるため、中層の水に溶け出している昇華性の転写インク成分を吸着し、捕捉した状態で乾燥される。さらに炭酸カルシウムが不透明であることから、炭酸カルシウムが捕捉した転写インクを隠蔽できる。そのため、あじさい斑点の発生が抑制される。」(【0016】)という着想に基づくものであり、さらに「前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上」とすることで、「炭酸カルシウムによる昇華性の転写インクの吸着効果、捕捉効果が充分に得られる」(【0017】)ものである。 ここで、上記(2)で説示したように、白板紙において上層に添加した炭酸カルシウム等の顔料又は填料で下層の暗灰色を隠ぺいすること(引用文献2記載事項、周知技術3)、白板紙には原料である古紙に混入した昇華転写紙に起因してあじさい斑点が現れること(周知課題)、紙に添加する顔料又は填料として軽質炭酸カルシウムを用いること(周知技術1)、及び、一般的な古紙が灰分を含有すること(周知技術2)は、本件特許に係る出願時における周知の事項である。 しかしながら、本件発明は、本件明細書の上記【0005】、【0016】に記載されているように、昇華転写紙の古紙への混入が避けられない現状において、中層の水に溶け出している昇華性の転写インク成分を、表下層が含有する炭酸カルシウムで吸着し、捕捉した状態で乾燥させることによりあじさい斑点を抑制するというものであるところ、このような技術思想は、甲A1に記載も示唆もされておらず、申立人A、Bが提出した他の証拠にも記載も示唆もされていない。 そうすると、上記(2)で説示した周知の事項があったとしても、甲A1発明に基づいて、相違点1-1、1-2及び1-4に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)申立人A、Bの主張について 申立人A、Bは、本件発明は、甲A1(甲B9)に記載された発明であるか、甲A1(甲B9)に記載された発明と周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものあると主張する。(申立書A、意見書A2、申立書B、意見書B1) しかしながら、上記(イ)のとおり、本件発明は、昇華転写紙の古紙への混入が避けられない現状において、中層の水に溶け出している昇華性の転写インク成分を、表下層が含有する炭酸カルシウムで吸着し、捕捉した状態で乾燥させることによりあじさい斑点を抑制するという技術思想のもとに、本件発明1で特定される各構成を具備することで本件課題を解決するものであるところ、当該技術思想は、申立人A、Bが提出したいずれの文献にも記載も示唆もされていない。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 (エ)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲A1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)甲A2を主引例とする進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲A2発明を対比する。 甲A2発明の「表層」、「中層に」「含まれる」「表下層」、「中層」のうち前記表下層を除いた部分、「裏層」はそれぞれ、本件発明1の「表層」、「表下層」、「中層」、「裏層」に相当する。 甲A2発明の「白板紙」と本件発明1の「あじさい斑点の発生を抑制した白板紙」は、「白板紙」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲A2発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点2] 「少なくとも表層と表下層と中層と裏層とを有する、白板紙。」 [相違点2-1] 本件発明1では、「前記中層が、昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む古紙パルプを含」むのに対し、甲A2発明では、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点2-2] 本件発明1では、「前記表下層が炭酸カルシウムを含み、前記表下層の炭酸カルシウムの含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上であり、前記炭酸カルシウムは軽質炭酸カルシウムであり、前記軽質炭酸カルシウムの体積基準平均一次粒子径D50が、0.2~10μmであ」るのに対し、甲A2発明では、中層に含まれる表下層が、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点2-3] 本件発明1では、「前記表下層の灰分が15%以上35%以下である」のに対し、甲A2発明では、中層に含まれる表下層が、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点2-4] 「白板紙」について、本件発明1では、「あじさい斑点の発生を抑制した白板紙」であるのに対し、甲A2発明では、そのようなものであるのか否か不明な点。 (イ)判断 事案に鑑み、密接に関連する相違点2-1、2-2及び2-4についてまとめて判断する。 上記(3)ア(イ)で説示したとおり、本件発明は、本件明細書の【0005】、【0016】に記載されているように、昇華転写紙の古紙への混入が避けられない現状において、中層の水に溶け出している昇華性の転写インク成分を、表下層が含有する炭酸カルシウムで吸着し、捕捉した状態で乾燥させることによりあじさい斑点を抑制するというものであるところ、このような技術思想は、甲A2に記載も示唆もされておらず、申立人A、Bが提出した他の証拠にも記載も示唆もされていない。 そうすると、上記(2)で説示した周知の事項があったとしても、甲A2発明に基づいて、相違点2-1、2-2及び2-4に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)申立人A、Bの主張について 申立人A、Bは、本件発明は、甲A2(甲B1)に記載された発明であるか、甲A2(甲B1)に記載された発明と周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものあると主張する。(申立書A、意見書A2、申立書B) しかしながら、上記(イ)のとおり、本件発明は、昇華転写紙の古紙への混入が避けられない現状において、中層の水に溶け出している昇華性の転写インク成分を、表下層が含有する炭酸カルシウムで吸着し、捕捉した状態で乾燥させることによりあじさい斑点を抑制するという技術思想のもとに、本件発明1で特定される各構成を具備することで本件課題を解決するものであるところ、当該技術思想は、申立人A、Bが提出したいずれの文献にも記載も示唆もされていない。 よって、申立人A、Bの上記主張は採用できない。 (エ)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲A2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)甲A3を主引例とする進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲A3発明を対比する。 甲A3発明の「表層」、「表下層」、「中層」、「裏層」はそれぞれ、本件発明1の「表層」、「表下層」、「中層」、「裏層」に相当する。 甲A3発明の「前記各層には古紙パルプが50%以上配合されて成る」ことと、本件発明1の「前記中層が、昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む古紙パルプを含」むことは、「前記中層が古紙パルプを含」む限りにおいて一致する。 甲A3発明の「前記表下層が」「灰分を15%以上含有し」てなることと、本件発明1の「前記表下層の灰分が15%以上35%以下であること」は、「前記表下層の灰分が15%以上」である限りにおいて一致する。 甲A3発明の「白ライナー」と本件発明1の「あじさい斑点の発生を抑制した白板紙」は、「紙」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲A3発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点3] 「少なくとも表層と表下層と中層と裏層とを有する紙であって、 前記中層が、古紙パルプを含み、 前記表下層の灰分が15%以上ある、紙。」 [相違点3-1] 「前記中層が古紙パルプを含」むことについて、本件発明1では、「前記中層が、昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む古紙パルプを含」むのに対し、甲A3発明では、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点3-2] 本件発明1では、「前記表下層が炭酸カルシウムを含み、前記表下層の炭酸カルシウムの含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上であり、前記炭酸カルシウムは軽質炭酸カルシウムであり、前記軽質炭酸カルシウムの体積基準平均一次粒子径D50が、0.2~10μmであ」るのに対し、甲A3発明では、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点3-3] 「前記表下層の灰分が15%以上」であることについて、本件発明1では、「35%以下である」のに対し、甲A3発明では、上限値が不明である点。 [相違点3-4] 「紙」について、本件発明1では「あじさい斑点の発生を抑制した白板紙」であるのに対し、甲A3発明では、「白ライナー」である点。 (イ)判断 事案に鑑み、密接に関連する相違点3-1、3-2及3-4についてまとめて判断する。 上記(3)ア(イ)で説示したとおり、本件発明は、本件明細書の【0005】、【0016】に記載されているように、昇華転写紙の古紙への混入が避けられない現状において、中層の水に溶け出している昇華性の転写インク成分を、表下層が含有する炭酸カルシウムで吸着し、捕捉した状態で乾燥させることによりあじさい斑点を抑制するというものであるところ、このような技術思想は、甲A3に記載も示唆もされておらず、申立人A、Bが提出した他の証拠にも記載も示唆もされていない。 そうすると、上記(2)で説示した周知の事項があったとしても、甲A3発明に基づいて、相違点3-1、3-2及び3-4に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)申立人Aの主張について 申立人Aは、本件発明は、甲A3に記載された発明であるか、甲A3に記載された発明と周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものあると主張する。(申立書A、意見書A2) しかしながら、上記(イ)のとおり、本件発明は、昇華転写紙の古紙への混入が避けられない現状において、中層の水に溶け出している昇華性の転写インク成分を、表下層が含有する炭酸カルシウムで吸着し、捕捉した状態で乾燥させることによりあじさい斑点を抑制するという技術思想のもとに、本件発明1で特定される各構成を具備することで本件課題を解決するものであるところ、当該技術思想は、申立人A、Bが提出したいずれの文献にも記載も示唆もされていない。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 (エ)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲A3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6) 甲A4を主引例とする進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲A4発明を対比する。 甲A4発明の「表層」、「表下層」、「中層」、「裏層」はそれぞれ、本件発明1の「表層」、「表下層」、「中層」、「裏層」に相当する。 甲A4発明の「中層には、離解雑誌古紙パルプ100%を用い」たことと、本件発明1の「前記中層が、昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む古紙パルプを含」むことは、「前記中層が、古紙パルプを含」むという限りにおいて一致する。 甲A4発明の「コート白ボールである白板紙」と本件発明1の「あじさい斑点の発生を抑制した白板紙」とは、「白板紙」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲A4発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点4] 「少なくとも表層と表下層と中層と裏層とを有する白板紙であって、 前記中層が、古紙パルプを含む、白板紙。」 [相違点4-1] 「前記中層が、古紙パルプを含」む点について、古紙パルプが、本件発明1では、「昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む」のに対し、甲A4発明では、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点4-2] 本件発明1では、「前記表下層が炭酸カルシウムを含み、前記表下層の炭酸カルシウムの含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上であり、前記炭酸カルシウムは軽質炭酸カルシウムであり、前記軽質炭酸カルシウムの体積基準平均一次粒子径D50が、0.2~10μmであ」るのに対し、甲A4発明では、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点4-3] 本件発明1では、「前記表下層の灰分が15%以上35%以下である」のに対し、甲A4発明では、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点4-4] 「白板紙」について、本件発明1では「あじさい斑点の発生を抑制した白板紙」であるのに対し、甲A4発明では、そのようなものであるのか否か不明な点。 (イ)判断 事案に鑑み、密接に関連する相違点4-1、4-2及び4-4についてまとめて判断する。 上記(3)ア(イ)で説示したとおり、本件発明は、本件明細書の【0005】、【0016】に記載されているように、昇華転写紙の古紙への混入が避けられない現状において、中層の水に溶け出している昇華性の転写インク成分を、表下層が含有する炭酸カルシウムで吸着し、捕捉した状態で乾燥させることによりあじさい斑点を抑制するというものであるところ、このような技術思想は、甲A4に記載も示唆もされておらず、申立人A、Bが提出した他の証拠にも記載も示唆もされていない。 そうすると、上記(2)で説示した周知の事項があったとしても、甲A4発明に基づいて、相違点4-1、4-2及び4-4に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)申立人Aの主張について 申立人Aは、本件発明は、甲A4に記載された発明であるか、甲A4に記載された発明と周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものあると主張する。(申立書A、意見書A1) しかしながら、上記(イ)のとおり、本件発明は、昇華転写紙の古紙への混入が避けられない現状において、中層の水に溶け出している昇華性の転写インク成分を、表下層が含有する炭酸カルシウムで吸着し、捕捉した状態で乾燥させることによりあじさい斑点を抑制するという技術思想のもとに、本件発明1で特定される各構成を具備することで本件課題を解決するものであるところ、当該技術思想は、申立人A、Bが提出したいずれの文献にも記載も示唆もされていない。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 (エ)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲A4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)甲B5を主引例とする進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲B5発明を対比する。 甲B5発明の「表層」、「表下層」、「中層」、「裏層」はそれぞれ、本件発明1の「表層」、「表下層」、「中層」、「裏層」に相当する。 甲B5発明の「段ボール用ライナ」と本件発明1の「あじさい斑点の発生を抑制した白板紙」は「紙」である限りにおいて一致する。 甲B5発明の「雑誌古紙パルプ/雑誌古紙パルプ=50/50からなるパルプスラリー100%に、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム1.2%、表面サイズ剤0.2%を添加し、中層、裏層用紙料を調成し」てなることと、本件発明1の前記中層が、昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む古紙パルプを含」むことは、「前記中層が古紙パルプを含」む限りにおいて一致する。 甲B5発明の「パルプスラリー100%に、填料として針状の凝集体軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が10%になるように添加した後、・・・表下層用紙料を調成し」てなることは、灰分は燃やした後の残滓であり、紙に添加されている炭酸カルシウムなどの顔料等に対応しているという技術常識を踏まえると、本件発明1の「前記表下層が炭酸カルシウムを含み、前記表下層の炭酸カルシウムの含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上であり、前記炭酸カルシウムは軽質炭酸カルシウムであり、前記軽質炭酸カルシウムの体積基準平均一次粒子径D50が、0.2~10μmであり、前記表下層の灰分が15%以上35%以下である」ことと、「前記表下層が炭酸カルシウムを含み、前記表下層の炭酸カルシウムの含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上であり、前記表下層の灰分が35%以下である」限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲B5発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点5] 「少なくとも表層と表下層と中層と裏層とを有する紙であって、 前記中層が、古紙パルプを含み、 前記表下層が炭酸カルシウムを含み、前記表下層の炭酸カルシウムの含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上であり、 前記表下層の灰分が35%以下である、紙。」 [相違点5-1] 「前記中層が古紙パルプを含」むことについて、本件発明1の前記中層が、昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む古紙パルプを含」むのに対し、甲B5発明では、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点5-2] 「前記表下層が炭酸カルシウムを含み、前記表下層の炭酸カルシウムの含有量が前記表下層の固形分100質量%に対して3質量%以上であ」ることについて、本件発明1では、「前記炭酸カルシウムは軽質炭酸カルシウムであり、前記軽質炭酸カルシウムの体積基準平均一次粒子径D50が、0.2~10μmであ」るのに対し、甲B5発明では、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点5-3] 「前記表下層の灰分が35%以下である」ことについて、本件発明1では、「15%以上」であるのに対し、甲B5発明では、下限値が不明な点。 [相違点5-4] 「紙」について、本件発明1では、「あじさい斑点の発生を抑制した白板紙」であるのに対し、甲B5発明では、「段ボール用ライナ」である点。 (イ)判断 事案に鑑み、密接に関連する相違点5-1、5-2及び5-4についてまとめて判断する。 上記(3)ア(イ)で説示したとおり、本件発明は、本件明細書の【0005】、【0016】に記載されているように、昇華転写紙の古紙への混入が避けられない現状において、中層の水に溶け出している昇華性の転写インク成分を、表下層が含有する炭酸カルシウムで吸着し、捕捉した状態で乾燥させることによりあじさい斑点を抑制するという技術思想は、甲B5に記載も示唆もされておらず、申立人A、Bが提出した他の証拠にも記載も示唆もされていない。 そうすると、甲B5発明に基づいて、相違点5-1、5-2及び5-4に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)申立人Bの主張について 申立人Bは、本件発明は、甲B5に記載された発明と周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものあると主張する。(申立書B) しかしながら、上記(イ)のとおり、本件発明は、昇華転写紙の古紙への混入が避けられない現状において、中層の水に溶け出している昇華性の転写インク成分を、表下層が含有する炭酸カルシウムで吸着し、捕捉した状態で乾燥させることによりあじさい斑点を抑制するという技術思想のもとに、本件発明1で特定される各構成を具備することで本件課題を解決するものであるところ、当該技術思想は、申立人A、Bが提出したいずれの文献にも記載も示唆もされていない。 よって、申立人Bの上記主張は採用できない。 (エ)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲B5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 申立書A、Bで申立人A、Bがそれぞれ主張する申立理由のうち、取消理由通知(決定の予告)に採用しなかったものの概要は、次の通りである。 (1)申立理由1(甲A1、甲A2、甲A3又は甲A4に基づく新規性) 本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲A1、甲A2、甲A3又は甲A4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(申立書A) (2)申立理由2(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ア 本件課題を解決するためには、本件課題の原因となる「中層が古紙パルプとして昇華転写紙由来のパルプを含んでいる」ことを特定する必要があるところ、本件特許の請求項1~8には係る発明では、上記特定がなされていない。(申立書B) イ 本件特許に係る発明においては、表層、表下層及び裏層に含まれる昇華性の転写インクを吸着する手段がないから、本件課題を解決するためには、「表層、表下層及び裏層が昇華転写紙由来のパルプを含んでいない」ことを特定する必要があるところ、本件特許の請求項1~8には係る発明では、上記特定がなされていない。(申立書B、意見書B1) 2 当審における判断 当審合議体は以下のとおり、上記申立理由1、2によっては、本件発明1~7に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。 (1)申立理由1(新規性)について 上記第4の2(3)~(6)で説示したとおり、本件発明1と、甲A1、甲A2、甲A3又は甲A4に記載された発明は実質的な相違点を有するから、本件発明1は、甲A1、甲A2、甲A3又は甲A4に記載された発明ではない。 同様に、本件発明2~7も、甲A1、甲A2、甲A3又は甲A4に記載された発明ではない。 したがって、申立理由1には理由がない。 (2)申立理由2(サポート要件)について ア 本件訂正により、「前記中層が、昇華転写紙由来のパルプ又は昇華性の転写インクを含む古紙パルプを含」むことが特定されたから、上記1(2)アに係る申立理由2は解消した。 イ 本件発明は、本件明細書の【0005】、【0016】に記載されているように、昇華転写紙の古紙への混入が避けられない現状において、中層の水に溶け出している昇華性の転写インク成分を、表下層が含有する炭酸カルシウムで吸着し、捕捉した状態で乾燥させることによりあじさい斑点を抑制するというものであるから、「表層、表下層及び裏層が昇華転写紙由来のパルプを含んでいない」という特定の有無にかかわらず、本件発明1の特定事項を有しない白板紙よりは本件課題を解決できることは明らかである。よって、上記1(2)イに係る申立理由2には理由がない。 3 申立人A、Bのその他の主張について (1)申立人Aは、本件訂正により特定された、白板紙が「あじさい斑点の発生を抑制した」ものである点について、どの程度抑制するものであるか不明確であるから、本件発明は明確性要件を満たさないと主張する。(意見書A2) しかしながら、本件発明1が特定する構成により発揮できる限りにおいてあじさい斑点の発生を抑制するものであることは明確である。 (2)申立人Bは、本件明細書に発明として記載されているものは、昇華転写紙由来のパルプが昇華性の転写インクを含む形態のものであるところ、本件発明は、その記載の解釈によっては、昇華転写紙由来のパルプが昇華性の転写インクを含まない形態も含むから、本件発明はサポート要件を満たさないと主張する。(意見書B2の5ページ) しかしながら、申立人Bが申立書B2(特に5ページ4~6行目)で自認しているように、昇華転写紙由来のパルプが昇華性の転写インクを含有する蓋然性が高いことは明らかである。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1~7に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項8に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700147

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