特許異議申立
2023-700229
防音シート
- 審判番号
- 2023-700229
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-158409
- 登録番号
- 7127849
- 請求日
- 2023年02月28日
- 審決日
- 2025年03月28日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】キョーワ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人アイミー国際特許事務所
- 【異議申立人】平岡織染 株式会社
- 【異議申立人代理人】青木 篤
- 【異議申立人代理人】三橋 真二
- 【異議申立人代理人】中村 和広
- 【異議申立人代理人】高橋 正俊
- 【異議申立人代理人】日浅 里美
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 居島 一仁
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P1651.537-ZB (E04G) / P1651.536-ZB (E04G) / P1651.113-ZB (E04G) / P1651.121-ZB (E04G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7127849号発明「防音シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7127849号の請求項1~3に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7127849号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、令和元年8月30日に出願され、令和4年8月22日にその特許権の設定登録がされ、同年8月30日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 2月28日 :特許異議申立人平岡織染株式会社(以下、「
申立人」という。)による請求項1~3に係
る特許に対する特許異議の申立て
同年 5月25日付け:取消理由通知書
同年 7月28日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
(以下、「本件訂正請求」という。)
同年 9月11日付け:手続補正指令書(方式)
同年10月13日 :令和5年7月28日に提出された訂正請求書
の手続補正書
令和6年 4月 9日 :申立人による意見書の提出
同年 8月 9日付け:訂正拒絶理由通知
同年 9月13日 :特許権者による意見書の提出
同年10月 4日 :令和6年9月13日に提出された意見書に添
付された資料2に関する手続補正書
同年12月 5日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和7年 2月 3日 :特許権者による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
特許権者は、令和5年10月13日に提出された手続補正書(方式)により補正された同年7月28日に提出された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)により、「特許第7127849号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。」との審決を求めている。本件訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「光透過性が30%以下で、充実率が30~80%の基布織物と、前記基布織物にコーティング又はラミネートされた樹脂又はフィルムと、を含み、前記樹脂又はフィルムの光透過性は50%以上である、防音シート。」と記載されているのを、
「光透過性が30%以下で、充実率が30~80%の基布織物と、前記基布織物にコーティング又はラミネートされた樹脂又はフィルムと、を含み、前記樹脂又はフィルムの光透過性は50%以上であり、前記基布織物の色は、ミー散乱の起きにくい、原色の黒色、赤色、緑色、又は青色であり、音響透過損失が、1,000Hz時に11dB以上である防音シート。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0008】の記載を「この発明に係る防音シートは、光透過性が30%以下で、充実率が30~80%の基布織物と、基布織物にコーティング又は、ラミネートされた樹脂又はフィルムと、を含み、樹脂又はフィルムの光透過性は50%以上であり、基布織物の色は、ミー散乱の起きにくい、原色の黒色、赤色、緑色、又は青色であり、音響透過損失が、1,000Hz時に11dB以上である。」に訂正する。
(当審注:訂正請求書の7.(2)(エ)の説明とは異なり、訂正明細書の段落【0008】は、「・・・基布織物にコーティング又はラミネートされた樹脂又はフィルム・・・」と記載されている。)
(5)訂正事項5
明細書の段落【0009】の記載を削除する。
(6) 訂正事項6
明細書の段落【0010】の記載を削除する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0011】の記載を「この発明に係る防音シートは、充実率が30~80%の基布織物にコーティング又は、ラミネートされた樹脂又はフィルムの光透過性が50%以上であり、前記基布織物の色は、ミー散乱の起きにくい、原色の黒色、赤色、緑色、又は青色であり、音響透過損失が、1,000Hz時に11dB以上であるため、一定以上の光透過性を有し、中の作業の視認性が確保できる、防音シートを提供できる。」に訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の段落【0014】の記載を「現場内部の作業の視認性が確保できるように、基布織物はミー散乱の起きにくい、原色の黒色、赤色、緑色、または青色であることが好ましい。特に好ましいのは黒色である。」に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0020】の記載を「表1は、目合いが5mmの場合を示し、表2は、目合いが10mmの場合を示す。なお、表1および表2においては、実施例(繊維に占める面積率(充実率)が30~80%のものとともに比較例30~80%以外のものも示している)。」に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0022】の【表2】を下記のとおり訂正する。
「
[図:0001423421000001.jpg]
」
(11)訂正事項11
明細書の段落【0024】の記載を「基布織物に光透過性の多い(削除)色調の原糸(削除)を使った基布織物を使うと、基布織物の目合いを小さくしても光は透過する。したがって、光透過性の多い基布を使った防音シートでは、織物の充実率が高い、低いに拘わらず、光は透過してしまい、作業環境内の温度は上がってしまう。一方で、光透過性が上がり、作業環境は明るくなる。」に訂正する。
(12)訂正事項12
明細書の段落【0035】の記載を「この実施の形態に係る防音シート10で工事現場を覆うことにより、中の作業の視認性が確保できると共に、工事現場の騒音を防ぐことができる。
なお、ここには、「光透過性」や、「防音シート」の製造条件、「音響透過損失」について、特に定義を含めなかったが、これらについては、当業者にとって自明であるからである。」に訂正する。
(13)一群の請求項について
訂正前の請求項2及び3は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用しており、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1ないし3に対応する訂正後の請求項1ないし3は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
(14)訂正事項10及び訂正事項12に係る特許権者の主張について
ア 特許権者は、訂正事項10が、訂正された請求項1とは関係しない旨主張している(訂正請求書13頁30行)。
しかしながら、訂正事項10に係る訂正は、明細書の段落【0022】の【表2】において、織物(基布織物13)のうち、目合いが10mmの場合(【0020】)であって、繊度が50,000(dtex)のものについて、その「繊維に占める面積率」をの数値を訂正するものである。
一方、訂正された請求項1には、「充実率が30~80%の基布織物」と記載されていて、上記「面積率」と同じ意味である「充実率」に関する事項が特定されている。
そうすると、上記訂正事項10に係る訂正は、明細書の上記段落の「充実率」(面積率)の数値を「0.45」にすることで、訂正後の請求項1に記載されている「充実率が30~80%の基布織物」に、繊度が50,000(dtex)のものが含まれることを明らかにしたといえるから、訂正された請求項1とは関係しないとはいえない。
イ 特許権者は、訂正事項12が、訂正された請求項1とは関係しない旨主張している(訂正請求書13頁30行)。
しかしながら、訂正事項12に係る訂正は、訂正前の明細書の段落【0035】の記載において、「なお、ここには、「光透過性」や、「防音シート」の製造条件、「音響透過損失」について、特に定義を含めなかったが、これらについては、当業者にとって自明であるからである。」との記載を追加したものである。
一方、訂正された請求項1には、「光透過性が30%以下で」及び「音響透過損失が、1000Hz時に11dB以上である」と記載されていて、「光透過性」及び「音響透過損失」に関する事項が特定されている。
そうすると、上記訂正事項12に係る訂正は、明細書の上記段落において、上記のとおり記載を追加することで、請求項1に記載の「光透過性」及び「音響透過損失」の意味は、当業者にとって自明である、との説明を追加するものであるから、訂正された請求項1とは関係しないとはいえない。
ウ 以上のとおり、特許権者の主張を採用することはできない。
2 訂正拒絶理由の概要
令和6年8月9日付け訂正拒絶理由通知書の訂正拒絶理由の概要は次のとおりである。
訂正事項10は、特許法120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とせず、同条9項において準用する126条5項の規定に適合するものではない。
訂正事項12は、特許法120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とせず、同条9項において準用する126条5項の規定に適合するものではない。
そして、訂正事項10及び12は、訂正された請求項1に関する訂正事項である。
以上のとおりであるから、一群の請求項〔1-3〕についてする本件訂正を認めることはできない。
よって、本件訂正は、拒絶すべきものである。
3 訂正の適否の判断
事案に鑑みて、上記訂正拒絶理由に指摘した訂正事項10及び12係る訂正の適否について、判断する。
(1)訂正事項10について
ア 訂正の目的について
(ア)誤記の訂正に該当するかについて
一般に、図表において誤記の訂正に該当するためには、元の表記に誤記が含まれていて、誤りがあった表記を正しいものへと置き換えることを要する。
本件特許の明細書の段落【0019】、【0020】の記載を参酌すれば、段落【0022】の【表2】には、防音シート10に用いる黒色織物の目合い(a)が10mmのものであって、繊度(a)が、「1,100」~「50,000」であるものが示されている。そのうち、「繊度(a)」が「50,000」のものの「繊維の占める面積率」の欄には、「0.41」と記載されている。
しかしながら、本件特許の特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)には、上記「繊維の占める面積率」の全ての値が、共通した特定の測定方法により測定され、測定値に基づいて計算されたことは示されていない。また、本件特許明細書等の記載から、上記「0.41」のみが誤記であるということはできない。
そうすると、訂正前の上記「0.41」との数値を、訂正後の「0.45」との数値に訂正することが、誤りがあった表記を正しいものへと置き換えたということができないものであり、上記訂正は、表の中の一つの値のみを、特定の測定方法によって測定され、測定値に基づいて計算されたと評価できるに留まるものである。結果として、測定方法の異なる数値が並べて記載されている蓋然性をも否定することができない。
よって、訂正事項10に係る訂正は、誤記の訂正には該当しない
特許権者は、令和6年9月13日に提出された意見書において、「Lia32」という画像解析ソフトを用いて、実際の製品の組織の構成における空間部分の面積と、繊維部分の面積から、繊維の占める面積率(%)を計算し、その計算結果が「0.45」であることをもって、表2における「繊度(a)」が「50,000」の「繊維の占める面積率」の欄に記載された「0.41」は誤記であり、上記のとおり計算された「0.45」が正しい記載である旨、主張している。
しかしながら、上記「0.45」は、「繊度(a)」が「50,000」であるもののみに対して、「Lia32」という画像解析ソフトを用いて算出した数値を示すものである。一方、本件特許明細書には、「繊維の占める面積率」の数値をどのように算出したのか具体的な記述がなく、また、特許権者が意見書とともに提出した資料1には、メッシュシート等の充実率を求める際に測定する、空隙(網目)及び見付け面積の測定方法は様々あり、そのうちの4種類の測定方法が示されているところ、「繊度(a)」が「50,000」のものの「繊維の占める面積率」を、「Lia32」という画像解析ソフトを用いて算出することが技術常識であるともいえない。
加えて、本件特許明細書等の記載から、繊度が「50,000」以外のものの面積率の数値が、繊度が「50,000」の面積率の数値が「0.45」に訂正する根拠となった測定方法により測定されたものであるとは理解できない。また、通常であれば、前記「0.45」が、訂正されるのであれば、他の繊度の面積率の数値も同様に訂正される必要があると解されるものの、そのような訂正とはなっていない。
このようなことから、訂正前の、「繊度(a)」が「50,000」の「繊維の占める面積率」の「0.41」が、誤記であることが示されているとはいえない。また、訂正によって誤記が正されたことになるとも理解できない。
よって、特許権者の主張を採用することはできない。
(イ)特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明、又は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることに該当するかについて
訂正事項10に係る訂正は、訂正の内容からみて、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることに該当しないことは明らかである。
(ウ)小括
よって、訂正事項10に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き各号所定のいずれの目的にも該当しない。
イ 新規事項の有無について
防音シート10に用いるの黒色織物の目合い(a)が10mmのものにおいて、「繊度(a)」が「50,000」の「繊維の占める面積率」が「0.45」であることは、本件特許明細書等に記載も示唆されておらず、また、自明ともいえないことから、訂正事項10に係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正ではない。
よって、訂正事項10に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではない。
ウ 特許権者の主張について
特許権者は、令和7年2月3日付け意見書において、本件特許の明細書の段落【0022】の【表2】の繊度(dtex)が「1,100」~「30,000」の「繊維に占める面積率(%)」について、「Lia32」という画像解析ソフトを用いて解析を行ったところ、解析して求めた数値と、上記【表2】に記載された数値が同じであることを示し、繊度(dtex)が「50,000」の繊維に占める面積率(%)の訂正後の「0.45」が正しい値であって、「0.41」が誤記であると理解できる旨主張する。
しかしながら、本件特許の明細書には、繊維に占める面積率(%)の算出に当たって、「Lia32」という画像解析ソフトを用いたことは記載も示唆もされておらず、また、特許権者が意見書(令和6年9月13日付け)とともに提出した資料1には、4種類の繊維に占める面積率(%)の求め方が示されていることから、繊度(dtex)が「50,000」の繊維に占める面積率(%)について、「Lia32」という画像解析ソフトを用いて求めた「0.45」が、当然に正しい数値であると客観的に認められるとはいえない。
よって、特許権者の主張は、上記の判断を左右するものではなく、採用できない。
エ 訂正事項10についてのまとめ
訂正事項10は、特許法120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とせず、同条9項において準用する126条5項の規定に適合するものではない。
(2)訂正事項12について
ア 訂正の目的について
(ア)誤記の訂正に該当するかについて
訂正事項12に係る訂正は、訂正前の段落【0035】の記載において、「なお、ここには、「光透過性」や、「防音シート」の製造条件、「音響透過損失」について、特に定義を含めなかったが、これらについては、当業者にとって自明であるからである。」との記載(以下「記載A」という。)を単に追加したものであり、訂正前の本件特許明細書において存在していた誤記を、本来記載すべき正しいものに改められたものではないから、誤記の訂正には該当しない。
(イ)特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明、又は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることに該当するかについて
訂正事項12に係る訂正は、訂正の内容からみて、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることに該当しないことは明らかである。
イ 特許権者の主張について
特許権者は、令和7年2月3日付け意見書において、訂正後の「なお、ここには、「光透過性」や、「防音シート」の製造条件「音響透過損失」について、特に定義を含めなかったが、これらについては、業者にとって自明であるからである。」との記載を追加することに関して、「「本来、技術常識であることを明細書に記載するべきであった。」のを記載漏れしたため、誤記です。」と主張している。
しかしながら、特許法126条1項2号の「誤記の訂正」とは、本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものであって、誤記の訂正が認められるためには、設定登録時(既に確定した訂正がある場合は、その確定時)の明細書、特許請求の範囲又は図面中の記載に誤記が存在することが必要となる。(審判便覧38-03の「3.」を参照)
記載漏れは、明細書、特許請求の範囲又は図面中に存在する誤った記載ではなく、また、明細書において、記載を追加することは、訂正前の本件特許の明細書において存在していた誤記を、本来記載すべき正しいものに改められたものではないから、誤記の訂正に該当しない。
ウ 小括
よって、訂正事項12に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き各号所定のいずれの目的にも該当しない。
4 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、一群の請求項〔1-3〕についてする本件訂正を認めることはできない。
第3 本件発明
令和5年7月28日付け訂正の請求による訂正は、上記第2のとおり認めることはできないので、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、本件特許の特許公報における特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
光透過性が30%以下で、充実率が30~80%の基布織物と、
前記基布織物にコーティング又はラミネートされた樹脂又はフィルムと、を含み、
前記樹脂又はフィルムの光透過性は50%以上である、防音シート。
【請求項2】
前記基布織物の色は原色の黒色、赤色、緑色、青色である、請求項1に記載の防音シート。
【請求項3】
音響透過損失が1,000Hz時に11dB以上である、請求項1に記載の防音シート。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1~3に係る特許について、令和6年12月5日付けで通知した取消理由通知書に示した取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。
1(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その特許は取り消すべきものである。
2(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その特許は取り消すべきものである。
3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その特許は取り消すべきものである。
4(新規性)
本件特許の訂正前の請求項1及び3に係る発明は、甲6第1発明又は甲6第2発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
5(進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1及び3に係る発明は、甲6第1発明又は甲6第2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許の訂正前の請求項2に係る発明は、甲6第1発明又は甲6第2発明、及び、甲7技術事項~甲9技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
[証拠]
甲第1号証 :岡部洋一、「三原色と混色」、[online]、20
21年7月28日、[令和5年2月2日出力]、インタ
ーネット
<URL:http://www.moge.org/okabe/temp/color.pdf>
甲第2号証 :吉村純一、「材料の音響性能の実験室における測定方
法」、日本音響学会誌49巻5号、1993年、p.3
68-372
甲第3号証 :実験報告書、令和5年2月20日作成
甲第3号証の2:「クリアターポリンシリーズ」、平岡織染株式会社、
2018年1月
甲第3号証の3:試験報告書、令和5年2月14日作成
甲第3号証の4:試験報告書、令和5年2月14日作成
甲第3号証の5:試験報告書、令和5年2月14日作成
甲第3号証の6:試験報告書、令和5年2月14日作成
甲第4号証 :「防音シート サウンドシャッター」、平岡織染株式
会社、2022年5月
甲第5号証 :実願平5-22761号(実開平6-71128号)の
CD-ROM
甲第6号証 :特開2003-221888号公報
甲第7号証 :特開2016-113825号公報
甲第8号証 :特開2018-167498号公報
甲第9号証 :特開2015-4215号公報
甲第10号証 :「サンシャイン防音シート」、平岡織染株式会社、20
13年2月
なお、甲第1号証ないし甲第5号証、及び甲第10号証は、先の取消理由では引用していない。
第5 証拠の記載
1 甲第6号証
(1)甲第6号証の記載
甲第6号証には以下の記載がある。
なお、「実施例1」等、「比較例1」等に対する下線は、甲第6号証において記載されていたものである。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は防音シートに関するものであり、更に詳しく述べるならば、本発明は防音性に優れ、かつ実用上十分な採光性を有し、工事現場の周囲に張設される工事用シートとして有用な防音シートに関するものである。」
イ「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の防音シートとほゞ同様の防音性、取扱い性、耐もみ性及び引張強さを有し、さらに実用上十分な採光性及び透視性を有し、必要により実用上十分な難燃性を付与することのできる防音シートを提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の採光性を有する防音シートは(1)繊維糸条から構成され、かつ前記繊維糸条間に空隙が形成されている粗目編織物からなる基布と、この基布の前記繊維糸条の露出表面の全面上に形成され、かつ可撓性高分子材料を含む高比重樹脂層とを含み、かつ10~40%の空隙率を有するメッシュシート基材、並びに(2)前記メッシュシート基材の少なくとも1面上に形成され、かつ可撓性高分子材料を含む透明性樹脂層を有し、0.8~3.5kg/m2の面密度と、10%以上の光線透過率を有する、ことを特徴とするものである。・・・」
ウ「【0013】前記メッシュシート基材の空隙率は10~40%であり、15~35%であることが好ましい。こゝで「空隙率」とは下記式により定義される値である
空隙率(%)=(A/A0)×100
但し、上記式中、A0は、メッシュシート基材の、多数の高比重樹脂層被覆糸条を含む供試部分の表面積を表し、Aは、この供試部分内の、前記高比重樹脂層被覆糸条の間に形成されている空隙部の合計表面積を表す。・・・」
エ「【0024】本発明の防音シートにおいて、透明性樹脂層は、前記メッシュシート基材の少なくとも1面上に、メッシュシート基材の空隙部を塞ぐように形成される。透明性樹脂層の厚さは、前記メッシュシート基材の面密度(質量)、及び防音シートの目標面密度(質量)に応じて設定することができるが、得られる防音シートの防水性及び空隙部のフィルム強度を考慮すれば、透明性樹脂層の厚さは、0.01~2.0mmに調整することが好ましく、0.05~1.0mmに調整することがより好ましい。また、透明性樹脂層は、前記メッシュシート基材上に、同一組成からなる1層以上に形成されてもよく、あるいは、異なる組成からなる2層以上に形成されていてもよく、基布の表裏に異なる組成の透明性樹脂層が形成されていてもよい。
・・・
【0027】
【実施例】本発明を下記実施例によりさらに説明する。
【0028】試験方法の説明
本発明の実施例及び比較例に用いた試験方法は下記の通りである。
(1)面密度(質量)
供試試料の面密度(質量)の測定において、日本工業規格JIS L 1096に従って供試試料の「単位面積(m2)当たりの質量(kg)」を測定し、それによって面密度を表した。
(2)厚さ
供試試料の厚さを日本工業規格JIS L 1096に従って測定した。
(3)取扱い性
供試試料の取扱い性を前項の面密度(質量)及び厚さより判定した。
取扱い性が良い:面密度(質量)が3.5kg/m2以下で厚さが2.0mm以下の場合取扱い性が悪い:面密度(質量)が3.5kg/m2を越える場合、又は厚さが2.0mmを越える場合
(4)光線透過率
供試試料の光線透過率を日本工業規格JIS K 7105に従って測定した。
【0029】(5)防音性(音響透過損失)
供試試料の音響透過損失を日本工業規格JIS A 1416に従って、中心周波数125,500,1000,4000Hzの音響透過損失を測定し、下記の既存の防音シート(面密度1.0kg/m2)の音響透過損失を基準にして、供試試料の防音性を、前記基準に対して「劣る」・「同等」・「優れる」と判定した。
既存の防音シート(面密度1.0kg/m2)の音響透過損失
中心周波数 音響透過損失
125Hz 6dB
500Hz 13dB
1000Hz 16dB
4000Hz 26dB
【0030】(6)引張強さ
供試試料からたて方向及びよこ方向について糸目に沿って長さ30cm、巾3cmの引張試験用試料を切り出し、JIS L 1096ストリップ法に従い引張強さを測定した。
(7)耐もみ性
供試試料について日本工業規格JIS K 6328に従って「もみ試験(スコット型法)」を行い、異常の有無を確認し、耐もみ性を評価した。
もみ条件:1kgf ×1000回
(8)防炎性
供試試料の防炎性を日本工業規格JIS A 8952試験し評価した。
【0031】実施例1
(1)メッシュシート基材の作製基布用粗目織物として、下記組織のポリエステルフィラメント粗目状織物を用いた。
[図:0001423421000002.jpg]
この粗目状織物を、高比重樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を含む下記組成1の高比重ポリ塩化ビニル系樹脂組成物のペーストゾルに浸漬し、マングルで絞った後140℃で乾燥し、更に180℃で熱処理して、400g/m2の高比重樹脂層を形成し、基布の糸条間に空隙が残っている合計質量600g/m2のメッシュシート基材を作製した。得られたメッシュシート基材の空隙率は30%であり、高比重樹脂層の比重は2.0であった。
<組成1>高比重ポリ塩化ビニル系樹脂組成
ペースト塩化ビニル樹脂 100質量部
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
三酸化アンチモン(防炎剤) 10質量部
Ba-Zn系安定剤 2質量部
硫酸バリウム(比重4.4) 150質量部
トルエン(溶剤) 50質量部
【0032】(2)透明性樹脂層の形成
透明性樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を含む下記組成2の透明性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルム(0.15mm厚)をカレンダーを用いて作製し、これを前記メッシュシート基材の両面に貼着して、片面当たり200g/m2の透明性ポリ塩化ビニル系樹脂層を形成し、合計質量1000g/m2(面密度1.0kg/m2)の防音シートを作製した。前記透明性樹脂フィルムの光線透過率は90%であった。
<組成2>透明性ポリ塩化ビニル系樹脂組成
ストレート塩化ビニル樹脂 100質量部
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(可塑剤) 25質量部
トリクレジルフォスフェート(りん系防炎可塑剤) 25質量部
Ba-Zn系安定剤 4質量部
この防音シートを前記試験に供した。試験結果を表1に示す。
【0033】実施例2
実施例1と同様にして防音シートを作製した。但し、実施例1のメッシュシート基材の作製及び透明性樹脂層の形成を下記のように変更した。
(1)メッシュシート基材の作製
基布用粗目織物として、下記組織のポリエステルフィラメント粗目状織物を用いた。
[図:0001423421000003.jpg]
この粗目状織物を、高比重樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を含む下記組成3の高比重ポリ塩化ビニル系樹脂組成物のペーストゾルに浸漬し、マングルで絞った後140℃で乾燥し、更に180℃で熱処理して、770g/m2の高比重樹脂層を形成し、基布の糸条間に空隙が残っている合計重量1000g/m2のメッシュシート基材を作製した。得られたメッシュシート基材の空隙率は28%であった。また高比重樹脂層の比重は2.3であった。
<組成3>高比重ポリ塩化ビニル系樹脂組成
ペースト塩化ビニル樹脂 100質量部
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
Ba-Zn系安定剤 2質量部
三酸化アンチモン(比重5.7) 200質量部
トルエン(溶剤) 60質量部
(2)透明性樹脂層の形成
透明性樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を含む前記組成2の透明性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルム(0.38mm厚)をカレンダーで作製し、これを前記メッシュシート基材の両面に貼着して、片面当たり500g/m2の透明性ポリ塩化ビニル系樹脂層を形成し、合計質量2000g/m2(面密度2.0kg/m2)の防音シートを作製した。前記透明性樹脂フィルムの光線透過率は86%であった。」
オ 「【0037】
【表1】
[図:0001423421000004.jpg]
」
表1から明らかなように実施例1~5で得られた本発明の防音シートは、既存の同面密度の防音シートと同等の防音性、取扱い性、引張強さ、耐もみ性、難燃性を示し、更に10%以上の光線透過率を示し、有用な採光性を有する防音シートであった。」
上記表1には、実施例1の「防音シート」の音響透過損失が、1000Hz時において16dBであること、実施例2の「防音シート」の音響透過損失が、1000Hz時において20dBであることが記載されている。
カ 「【0039】比較例2
実施例1と同様にして防音シートを作製した。但し、実施例1の透明性樹脂層の形成工程省き、防音シートを作製した。この防音シートを前記試験に供した。試験結果を表2に示す。得られたシートは、メッシュシートであり光線透過率は高いが、防音性は実施例1で得られた防音シートに比べ劣り、また透明性樹脂層がないため、耐もみ性が悪く、実用に適さないものであった。
【0040】比較例3
実施例2と同様にして防音シートを作製した。但し、実施例2の透明性樹脂層の形成工程省き、防音シートを作製した。この防音シートを前記試験に供した。試験結果を表2に示す。得られた防音シートは、透明性樹脂層を有していないメッシュシートであり、光線透過率は高いが、防音性は実施例2で得られた防音シートに比べ劣り、また面密度が同じである実施例1で得られた防音シートに比べても防音性は劣っており、また透明性樹脂層がないため耐もみ性が悪く、実用に適さないものであった。」
キ 「【0046】
【表2】
[図:0001423421000005.jpg]
」
上記比較例2及び3の「透明性樹脂層」の項目に、「なし」と記載されていることから、比較例2及び3の「防音シート」の「光線透過率(%)」の項目に記載の数値は、比較例2及び3のそれぞれで採用されている「メッシュシート基材」の「光線透過率(%)」を示すものであるといえる。
よって、比較例2及び3の「メッシュシート基材」の「光線透過率(%)」は、それぞれ「29.5%」及び「28.0%」である。
ク 実施例1及び2の「メッシュシート基材」の「光線透過率(%)」について
上記カの段落【0039】の「比較例2 実施例1と同様にして防音シートを作製した。但し、実施例1の透明性樹脂層の形成工程省き、防音シートを作製した。」との記載から、比較例2の防音シートは、実施例1の防音シートから「透明性樹脂層」を省いたものといえるので、実施例1の「メッシュシート基材」と、比較例2の「メッシュシート基材」は同じものであると理解できる。
上記キをふまえれば、実施例1の「メッシュシート基材」の「光線透過率(%)」は、比較例2の「メッシュシート基材」の「光線透過率(%)」と同じ「29.5%」である。
同様に、実施例2の「メッシュシート基材」の「光線透過率(%)」は、比較例3の「メッシュシート基材」の「光線透過率(%)」と同じ「28.0%」である。
(2)甲第6号証に記載された発明
上記(1)より、甲第6号証には、次の発明(以下「甲6第1発明」及び「甲6第2発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、「甲6第1発明」及び「甲6第2発明」は、それぞれ、甲第6号証に記載の実施例1及び実施例2に対応する。
(甲6第1発明)
「基布用粗目織物として、1111dtex/3×1111dtex/3 7×7(本/25.4mm) 目付:200g/m2のポリエステルフィラメント粗目状織物を用い、この粗目状織物を、高比重樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を含む下記組成1の高比重ポリ塩化ビニル系樹脂組成物のペーストゾルに浸漬し、マングルで絞った後140℃で乾燥し、更に180℃で熱処理して、400g/m2の高比重樹脂層を形成し、基布の糸条間に空隙率が30%の空隙が残っている合計質量600g/m2のメッシュシート基材の両面において、(【0031】、【0032】)
下記組成2の透明性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなり、光線透過率が90%のフィルム(0.15mm厚)を貼着して、片面当たり200g/m2の透明性ポリ塩化ビニル系樹脂層を形成した合計質量1000g/m2(面密度1.0kg/m2)の防音シートであって、(【0032】)
メッシュシート基材は、光線透過率が、29.5%であり、(上記ク)
防音シートの音響透過損失が、1000Hzにおいて16dBであり、(上記オ)
光線透過率を日本工業規格JIS K 7105に従って測定し、(【0028】)
音響透過損失を日本工業規格JIS A 1416に従って測定したものであり、(【0029】)
防音性に優れ、かつ実用上十分な採光性を有し、工事現場の周囲に張設される工事用シートとして有用な、(【0001】)
防音シート。
<組成1>高比重ポリ塩化ビニル系樹脂組成
ペースト塩化ビニル樹脂 100質量部
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(可塑剤 60質量部
三酸化アンチモン(防炎剤) 10質量部
Ba-Zn系安定剤 2質量部
硫酸バリウム(比重4.4) 150質量部
トルエン(溶剤) 50質量部
(【0031】)
<組成2>透明性ポリ塩化ビニル系樹脂組成
ストレート塩化ビニル樹脂 100質量部
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(可塑剤) 25質量部
トリクレジルフォスフェート(りん系防炎可塑剤) 25質量部
Ba-Zn系安定剤 4質量部
(【0032】)
なお、「空隙率」は、空隙率(%)=(A/A0)×100 の式により定義される値である。但し、上記式中、A0は、メッシュシート基材の、多数の高比重樹脂層被覆糸条を含む供試部分の表面積を表し、Aは、この供試部分内の、前記高比重樹脂層被覆糸条の間に形成されている空隙部の合計表面積を表す。(【0013】)」
(甲6第2発明)
「基布用粗目織物として、2222dtex×2222dtex 13×13(本/25.4mm)目付:230g/m2のポリエステルフィラメント粗目状織物を用い、この粗目状織物を、高比重樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を含む下記組成3の高比重ポリ塩化ビニル系樹脂組成物のペーストゾルに浸漬し、マングルで絞った後140℃で乾燥し、更に180℃で熱処理して、770g/m2の高比重樹脂層を形成し、基布の糸条間に空隙率が28%の空隙が残っている合計重量1000g/m2のメッシュシート基材の両面において、(【0033】)
前記組成2の透明性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなり、光線透過率が86%のフィルム(0.38mm厚)を貼着して、片面当たり500g/m2の透明性ポリ塩化ビニル系樹脂層を形成した合計質量2000g/m2(面密度2.0kg/m2)の防音シートであって、(【0033】)
メッシュシート基材は、光線透過率が、28.0%であり、(上記ク)
防音シートの音響透過損失が、1000Hzにおいて20dBであり、(上記オ)
光線透過率を日本工業規格JIS K 7105に従って測定し、(【0028】)
音響透過損失を日本工業規格JIS A 1416に従って測定したものであり、(【0029】)
防音性に優れ、かつ実用上十分な採光性を有し、工事現場の周囲に張設される工事用シートとして有用な、(【0001】)
防音シート。
<組成3>高比重ポリ塩化ビニル系樹脂組成
ペースト塩化ビニル樹脂 100質量部
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
Ba-Zn系安定剤 2質量部
三酸化アンチモン(比重5.7) 200質量部
トルエン(溶剤) 60質量部
(【0033】)
<組成2>透明性ポリ塩化ビニル系樹脂組成
ストレート塩化ビニル樹脂 100質量部
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(可塑剤) 25質量部
トリクレジルフォスフェート(りん系防炎可塑剤) 25質量部
Ba-Zn系安定剤 4質量部
(【0032】)
なお、「空隙率」は、空隙率(%)=(A/A0)×100 の式により定義される値である。但し、上記式中、A0は、メッシュシート基材の、多数の高比重樹脂層被覆糸条を含む供試部分の表面積を表し、Aは、この供試部分内の、前記高比重樹脂層被覆糸条の間に形成されている空隙部の合計表面積を表す。(【0013】)」
2 甲第7号証
(1)甲第7号証の記載
甲第7号証には以下の記載がある。
ア「【0001】
本発明は、主として工場や倉庫等の出入口や内部スペースで使用されるシートシャッター、及び、このようなシートシャッターに用いられるシートシャッター用シートに関する。」
イ「【0005】
しかしながら、従来のシートシャッターでは、特に、屋外への出入口等の、明るい場所と暗い場所との境界に設置した場合に、明るい場所からの暗い場所の視認が困難となりやすく、このため、透過視認性を向上させることができるシートシャッター用シートが求められていた。
・・・
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、透過視認性を向上させることができるシートシャッター用シート、及び、そのようなシートシャッター用シートを有するシートシャッター提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、実際の事例を詳細に検討した結果、従来のシートシャッターのシートに用いられている補強材としての繊維は白色であり、そして、明るい場所からこのようなシートを透過して暗い場所を見る際に、この白色の繊維が視認性の低下を招いていることを見いだして、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明のシートシャッター用シートは、上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、糸条体が透明なシート状物内及び/またはその表面にかつ部分的に配置されたシートシャッター用シートにおいて、前記糸条体が黒色であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のシートシャッター用シートは、前記糸条体を、繊維の周囲にカーボンブラックが配置されて構成された糸条体とすることができる。
【0011】
また、本発明のシートシャッターは、請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載のシートシャッター用シートを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシートシャッター用シートは、糸条体が透明なシート状物内及び/またはその表面にかつ部分的に配置されたシートシャッター用シートにおいて、前記糸条体が黒色である構成により、透過視認性を向上させることができ、屋外への出入口にこのようなシートを備えたシートシャッターを設置した場合であっても、屋外から室内を見る際に支障が生じにくい。」
(2)甲第7号証に記載された技術事項
上記(1)より、甲第7号証には、次の技術事項(以下「甲7技術事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲7技術事項)
「工場や倉庫等の出入口や内部スペースで使用されるシートシャッター、及び、シートシャッターに用いられるシートシャッター用シートにおいて、
糸条体が透明なシート状物内及び/またはその表面にかつ部分的に配置されたシートシャッター用シートにおいて、前記糸条体が黒色であり、前記糸条体が黒色である構成により、透過視認性を向上させることができ、屋外への出入口にこのようなシートを備えたシートシャッターを設置した場合であっても、屋外から室内を見る際に支障が生じにくいこと。」
3 甲第8号証
(1)甲第8号証の記載
甲第8号証には以下の記載がある。
ア「【0001】
本発明は工場、倉庫などの出入口に設置される自動昇降式シートシャッター装置に用いられるフレキシブル膜材、間仕切り、及びシート構造物用膜材に関し、特に、明るい屋外からシート越しに薄暗い屋内を覗き込んだ時に屋内環境、及びシート越しの人相識別、物品識別が可能な視認性に優れたシートシャッター用膜材、間仕切り、及びシート構造物用膜材に関する。」
イ「【0005】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、工場、倉庫などの出入口に設置される自動昇降式シートシャッター装置に用いられるフレキシブル膜材、間仕切り、及びシート構造物用膜材において、特に、明るい屋外からシート越しに薄暗い屋内を覗き込んだ時に屋内環境、及びシート越しの人相識別、物品識別が可能な視認性に優れたシートシャッター用膜材、間仕切り、及びシート構造物用膜材を提供することにある。」
ウ「【0018】
本発明のシートシャッター用膜材の基体(メッシュシート)は、粗目織物の両表面上、すなわち粗目織物を構成する糸条の全周を着色熱可塑性樹脂で被覆、または糸条を着色熱可塑性樹脂で含浸被覆してなる、多数の貫通孔を有するマンセル明度(JIS Z8721:1993年)4以下(マンセル明度1に近付く程黒色に近付く)の暗色系メッシュシートで、貫通孔は粗目織物の空隙部に由来するものである。着色熱可塑性樹脂は、軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂(PE,PPなど)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン系共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂に公知の顔料を配合した組成物(ペースト状態、エマルジョン状態、溶剤に溶けた状態など)が例示でき、この組成物を用いて得られる基体(メッシュシート)において、少なくとも表面の色相はマンセル明度(JIS Z8721:1993年)4以下、好ましくはマンセル明度1~2であり、さらにマンセル彩度(JIS Z8721:1993年)6以上(マンセル彩度が10に近付く程鮮やかな色となる)が好ましい。表面の色相がマンセル明度4.5以上、かつマンセル彩度5.5以下だと、明るい屋外からシート越しに薄暗い屋内を覗き込んだ時の屋内環境の把握、及びシート越しの人相識別、物品識別を困難とすることがある。マンセル明度4以下、及びマンセル彩度6以上を同時に満たす暗色系とは具体的に、黒色、黒灰色、黒茶色、黒緑色、黒青色、黒紫色、濃紺色、濃緑色、臙脂色、青色、緑色、赤色、灰色などが挙げられる。これらの色相は公知の無機顔料及び有機顔料の単独使用または複数の併用による熱可塑性樹脂の着色によりなされたものである。特に本発明のシートシャッター用膜材は表裏とも色相がマンセル明度4以下、及びマンセル彩度6以上であることが好ましいが、裏面のみ色相がマンセル明度4.5以上、かつマンセル彩度5.5以下のツートン構成であってもよい。この
ようなツートン構成のメッシュシートで、例えば表面が黒系、裏面が白系のツートン構成だと、屋内外観となるシート裏面が白系なので倉庫や工場建屋の内部環境を明るい印象とすることができる。さらに基体(メッシュシート)の表面の一部には、公知の印刷技術、例えばインクジェット印刷により、写真画像・イラストレーション・文字ピクトグラムなどをプリントして、避難誘導効果、装飾効果、広告効果などを附帯させることもできる。」
(2)甲第8号証に記載された技術事項
上記(1)より、甲第8号証には、次の技術事項(以下「甲8技術事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲8技術事項)
「工場、倉庫などの出入口に設置される自動昇降式シートシャッター装置に用いられるシート越しの人相識別、物品識別が可能な視認性に優れたシートシャッター用膜材の基体(メッシュシート)において、
少なくとも表面の色相はマンセル明度(JIS Z8721:1993年)4以下、好ましくはマンセル明度1~2であり、さらにマンセル彩度(JIS Z8721:1993年)6以上(マンセル彩度が10に近付く程鮮やかな色となる)が好ましく、表面の色相がマンセル明度4.5以上、かつマンセル彩度5.5以下だと、明るい屋外からシート越しに薄暗い屋内を覗き込んだ時の屋内環境の把握、及びシート越しの人相識別、物品識別を困難とすることがあり、マンセル明度4以下、及びマンセル彩度6以上を同時に満たす暗色系とは具体的に、黒色、黒灰色、黒茶色、黒緑色、黒青色、黒紫色、濃紺色、濃緑色、臙脂色、青色、緑色、赤色、灰色などが挙げられること。」
4 甲第9号証
(1)甲第9号証の記載
甲第9号証には以下の記載がある。
ア「【0001】
本発明は減臭効果を有する建築養生メッシュシートに関する。詳しく述べると、ビル、マンション、店舗、住宅などの建造物の建築工事やリフォームなどにおいて、その建築現場全体を張囲して用いる合成樹脂で含浸被覆補強されたJIS-A8952の要件を満たす建築工事用シートであって、特に塗料や接着剤などの建築補助資材、及びフローリング材やビニル壁紙などの内装材に起因する化学物質臭の減臭効果と、工事現場張囲内における工事関係者などの行動や安全状況を外から把握するための視認性を有する建築養生メッシュシートに関する。」
イ「【0006】
本発明は、ビル、マンション、店舗、住宅などの建造物の建築・リフォーム工事現場などに使用し、軽量かつ強靭で、通気性と採光性を有し、特に(スプレー)塗装工事や接着剤を使用するタイル貼り、ビニルタイル床材やルーフィングシートの敷設接着工事に伴う、化学物質臭や有機溶剤臭を減少させる減臭効果、及び発生臭気の拡散防止効果を有し、しかも工事現場張囲内における工事関係者などの行動や安全状況を外から把握するための視認性を有する建築養生メッシュシートを提供しようとするものである。」
ウ「【0017】
本発明の建築養生メッシュシートは、粗目織物を基布として、その表裏両面を被覆する表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層とで構成された、空隙率10~40%のメッシュシートであって、表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層の少なくとも一方が、特定の臭気分子不活性化粒子を含み、かつ表面側熱可塑性樹脂層がマンセル明度4以下の色相を有する略円弧状断面により形成される。マンセル明度4以下の色相とは具体的に、黒色、黒灰色、黒茶色、黒緑色、黒青色、黒紫色、濃紺色、濃緑色、臙脂色、青色、緑色、赤色、灰色などが挙げられる。これらの色相は公知の無機顔料及び有機顔料の単独使用または複数の併用による熱可塑性樹脂の着色により熱可塑性樹脂層を発色させたものである。また、裏面側熱可塑性樹脂層をマンセル明度7~9.5、及びマンセル彩度0~3の色相を有する場合は、その色相とは具体的に、白色、パステルカラー(白色に青色、赤色、緑色、黄色、黒などの原色を単独または複数の併用で差し色して得た中間色)、淡い灰色、淡い青、淡い緑、淡い赤、淡い黄色、淡い紫、淡いピンクなどが挙げられる。これらの色相は無機顔料(特に酸化チタン)をベースに、公知の有機顔料の単独使用または複数の併用による熱可塑性樹脂の着色により熱可塑性樹脂層を発色させたものである。少なくとも表面側熱可塑性樹脂層をマンセル明度4以下の色相とすることで工事現場張囲内における工事関係者などの行動や安全状況を外から把握するための視認性を良好とする。また裏面側熱可塑性樹脂層をマンセル明度7~9.5、及びマンセル彩度0~3の色相とすることによって工事現場張囲内の環境を明るくすると同時に、工事現場張囲外に位置する近隣住居(マンションやビル)などの様子を見え難くする効果により、近隣住居のプライバシー保護の配慮を可能とする。」
(2)甲第9号証に記載された技術事項
上記(1)より、甲第9号証には、次の技術事項(以下「甲9技術事項」という。)が記載されていると認められる
(甲9技術事項)
「建築工事用シート、特に工事現場張囲内における工事関係者などの行動や安全状況を外から把握するための視認性を有する建築養生メッシュシートであって、建築養生メッシュシートは、粗目織物を基布として、その表裏両面を被覆する表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層とで構成された、空隙率10~40%のメッシュシートであり、表面側熱可塑性樹脂層が黒色、黒灰色、黒茶色、黒緑色、黒青色、黒紫色、濃紺色、濃緑色、臙脂色、青色、緑色、赤色、灰色などマンセル明度4以下の色相を有する略円弧状断面により形成され、少なくとも表面側熱可塑性樹脂層をマンセル明度4以下の色相とすることで工事現場張囲内における工事関係者などの行動や安全状況を外から把握するための視認性を良好とすること。」
第6 当審の判断
1 明確性要件について
(1)明確性要件の判断基準特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、以下、この判断基準に照らして検討する。
(2)明確性要件の判断
ア 特許請求の範囲の請求項1には、「光透過性が30%以下で、充実率が30~80%の基布織物」との記載がある。
(ア)本件特許明細書の段落【0005】には、「光透過性」に関して、「採光性(光透過性)を有する防音シート」との記載があり、また段落【0024】には、「基布織物に光透過性の多い(反射性の多い)色調の原糸(白色など)を使った」との記載があり、さらに段落【0029】には、「光透過性の少ない(反射性の少ない)色調の原糸(黒色、青色、緑色、赤色)を使用する」との記載がある。これらの記載を見ると、「光透過性」が「採光性」や「反射性」と同じ意味であるかのようなことが示されている。
しかしながら、「採光」と「反射」は、異なる内容あるいは現象であると理解するのが技術常識である。
したがって、上記記載における「光透過性」の用語が定義する内容が不明である。
(イ)「基布織物」の「光透過性」について、本件特許明細書をみると、段落【0018】には、「基布織物13は、その光透過性が30%以下で・・・」と記載されており、上記「光透光性が30%以下」が、「基布織物」の特性であることが理解できる。一方、段落【0024】には、「光透過性の多い(反射性の多い)色調の原糸(白色など)を使った基布織物・・・」と記載され、また段落【0029】には、「基布織物に光透過性の少ない(反射性の少ない)色調の原糸(黒色、青色、緑色、赤色)を使用する」と記載されており「光透過性」と「基布織物」に使用する原糸とを関連付けた点が認められる。
そうすると、本件特許明細書の記載をみても、請求項1に記載の「光透過性が30%以下で」あるものが、織物全体、すなわち、原糸と織物の空隙とを総合したものを指すのか、織物に使用する原糸を指すのか、いずれであるのかが不明である。
また、基布織物の技術分野において、「光透過性」との用語が、織物全体の光透過性、及び、織物に使用する原糸の光透過性のいずれか一方を示すという技術常識もない。
よって、請求項1の上記記載は、不明である。
この点について、特許権者は、令和5年7月25日に提出した意見書(3頁5~6行)において、「なお、「光透過性が30%」とは、審判官殿のご指摘の通り、「基布織物」を構成する原糸について特性であり、本件特許明細書の不明確な箇所については訂正した。」と主張している。
しかしながら、請求項1において、「原糸」との記載は無いことから、「光透過性が30%」が、「基布織物」を構成する原糸についての特性と理解することはできない。先の取消理由では、請求項1における「光透過性が30%以下で、充実率が30~80%の基布織物」との記載から、「光透過性が30%以下で」あることが、「基布織物」についての特性であると一応理解できる、と述べたに過ぎず、「光透過性」がいずれのものについての特性であるかは、上記において示したとおり不明である。
したがって、特許権者の主張は採用できない。
そして、上記請求項1の記載を引用する請求項2及び3の記載も同様に不明である。
(ウ)したがって、請求項1ないし3の記載は、不明であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
イ 請求項2には、「前記基布織物の色は原色の黒色、赤色、緑色、青色である」との記載がある。
(ア)原色とは、赤色、緑色、青色、あるいは、シアン、マゼンダ、黄色という三原色(「原色」の意味は、他の色を生み出すための色。適当な割合に混ぜると多くの色を表せる三つの異なった色である。広辞苑第7版参照。)を指し、これらを混合したものが「黒色」との関係であるから、「原色の黒色」の用語が意味する内容が不明である。
なお、上記の点は、先の取消理由において指摘しているが、特許権者は、何ら意見を述べていない。
(イ)上記記載は、「前記基布織物の色」として、「原色の黒色」、「赤色」、「緑色」、「青色」が択一的であることを示すものであるのか、列挙された全ての色を採用することを示すものであるのか、一義的に理解できず、不明確である。
(ウ)したがって、請求項2の記載は、「基布織物」の色としてどのようなものを採用するのかが不明であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(3)明確性要件についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3の係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 実施可能要件について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件発明1ないし3は物の発明であるところ、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、発明の詳細な説明において、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があることを要する。
そこで、以下、この判断基準に照らして検討する。
(2)発明の詳細な説明における記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次のとおりの記載がある。
ア「【0014】
現場内部の作業の視認性が確保できるように、基布織物はミー散乱の起きにくい、原色の黒色、赤色、緑色、青色であることが好ましい。特に好ましいのは黒色である。
【0015】
基布織物はミー散乱のし易い白色や透明は不適である。また、多重散乱を避けるため、混合色に白色を用いない方が好ましい。原色の混合色も避けた方が好ましい。
【0016】
図1(A)を参照して、防音シート10は、黒色の偉糸11と経糸12で編まれた基布織物13と、基布織物13をコーティング又はラミネートする樹脂15とを含む。ここで樹脂15は、偉糸11と経糸12とで囲まれる空間も被覆する。
【0017】
なお、樹脂はフィルムであってもよい。
【0018】
また、基布織物13は、その光透過性が30%以下で、充実率が30~80%である。樹脂又はフィルムの光透過性は50%以上である。」
イ「【0024】
基布織物に光透過性の多い(反射性の多い)色調の原糸(白色など)を使った基布織物を使うと、基布織物の目合いを小さくしても光は透過する。したがって、光透過性の多い基布を使った防音シートでは、織物の充実率が高い、低いに拘 わらず、光は透過してしまい、作業環境内の温度は上がってしまう。一方で、光透過性が上がり、作業環境は明るくなる。
【0025】
基布織物に白色の原糸を使った基布織物を使用すると、次のようになる。
【0026】
すなわち、充実率が30~80%の範囲にある場合、光は、織物の糸がミー散乱により反射しつつ、織物は蓄熱-放熱しないいため、作業環境内の温度上昇を抑えることができるが、視認性が下がる。
【0027】
一方、充実率が30%未満である場合、織物の糸の割合が低いため、フィルム又は樹脂を光がそのまま透過し、遮光性は下がり、フィルムだけに近い状態となるので、作業環境内の温度は上昇する。
【0028】
充実率が80%を超える場合、光は、基布織物の糸が反射し、蓄熱-放熱しないいため、作業環境内の温度上昇を抑えることができるが、織物のカバーファクタ(遮蔽割合)が多くなるため、外からの作業環境の視認性が下がる。
【0029】
基布織物に光透過性の少ない(反射性の少ない)色調の原糸(黒色、青色、緑色、赤色)を使用すると、次のようになる。
【0030】
すなわち、充実率が30~80%の範囲にある場合、糸の無い部分を一定の割合で光が通過するため、作業環境内は一定の光が通過しつつ、光が織物の糸に遮られるため、作業環境内の温度上昇を抑えることができる。
【0031】
一方、充実率が30%未満である場合、糸の無い部分を一定の割合で光が通過し、作業環境内は明るくなるが、作業環境内の温度は上昇するが、白色や透明の基布織物に比べると光透過性が少ない分、温度上昇は小さい。
【0032】
充実率が80%を超える場合、ほとんどの光が織物の糸に遮られるため、作業環境内の温度上昇を抑えることができるものの、作業環境は暗く、別途灯りが必要となる。
【0033】
また、作業環境内の明るさを維持するには、使用する基布織物により拡散(乱反射)させることも必要である。
【0034】
なお、光透過性が高いと、光(赤外線)が透過してしまい、中の作業環境内の温度が上昇し、熱の逃げ場がないため、温度が上昇して、ビニールハウス状態となる。
【0035】
この実施の形態に係る防音シート10で工事現場を覆うことにより、中の作業の視認性が確保できると共に、工事現場の騒音を防ぐことができる。」
(3)実施可能要件についての判断
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明において、上記(2)アの段落【0016】~【0018】の記載から、「防音シート10」は、「黒色の偉糸11と経糸12で編まれた基布織物13と、基布織物13をコーティング又はラミネートする樹脂15とを含む」ものであるということは、理解できる。
しかしながら、上記1(2)アで指摘したとおり、本件特許明細書の記載を参酌しても、請求項1に記載の「光透過性」の用語が意味する内容が不明であり、また、「光透過性が30%以下で」あるものが、織物全体を指すのか、織物に使用する原糸を指すのか、いずれであるのかが不明である。
また、発明の詳細な説明の段落【0025】~【0034】をみても、「光透過性が30%以下」の点について具体的に示した「基布織物」は記載されていない。
さらに、基布織物の技術分野において、「光透過性」との用語が、織物全体の光透過性、及び、織物に使用する原糸の光透過性のいずれか一方を示すという技術常識もない。
上記のとおり、「光透過性」の用語の意味、及び、パラメータとしての「光透過性」が指す対象がわからないので、「光透過性が30%以下」の「基布織物」を、どのように作れば良いか当然わからない。
よって、本件特許の発明の詳細な説明において、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1に係る「光透過性が30%以下で、充実率が30~80%の基布織物」を含む「防音シート」を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるということはできない。
そして、請求項2及び3は、請求項1を引用して記載していることから、本件発明2及び3についても同様である。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1ないし3について、実施可能要件に適合しているといえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
イ 上記1(2)イで指摘したとおり、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、請求項2に記載の「原色の黒色」の用語が意味する内容が不明である。
上記のとおり、基布織物の色として、どのような色を採用するのか理解できないから、当業者がどのような色の基布織物を作れば良いのかを理解し、実施することができない。
よって、本件特許の発明の詳細な説明において、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明2に係る、「基布織物の色」が「原色の黒」である「基布織物」を含む「防音シート」を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるということはできない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明2について、実施可能要件に適合しているといえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(4)実施可能要件についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 サポート要件について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、以下、この判断基準に照らして検討する。
(2)サポート要件についての判断
請求項1に記載の「光透過性が30%以下」が「基布織物」についての特性であることを前提に判断する。
本件発明の解決しようとする課題は、明細書の段落【0005】に記載されているとおり、採光防音シートにおいて、一定以上の光透過性は期待できず、また、中の作業の視認性が確保できないことなどである。
一方、本件発明1は、「基布織物」の「光透過性」の範囲が「30%以下」であるから、「基布織物」の「光透過性」が0%、あるいは、0%に近いものも前記範囲に含まれる。
しかしながら、「光透過性」が0%、あるいは、0%に近い「基布織物」を含む「防音シート」は、「防音シート」全体(「基布織物」と「樹脂又はフィルム」の両者を含んだもの)の「光透過性」も0%、あるいは、0%に近いものとなることから、一定以上の光透過性は期待できず、防音シートの中の作業の視認性が確保できなくなることは明らかである。
よって、本件発明1は、本件発明の上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
そして、請求項2及び3は、請求項1を引用して記載していることから、本件発明2及び3についても同様である。
したがって、本件発明1ないし3は、本件発明の上記課題を解決できると認識できる範囲のものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3)サポート要件についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
4 新規性、進歩性について
(1)本件発明1について
ア 主引用発明を甲6第1発明とした場合
(ア)対比・判断
上記1(2)ア(イ)で説明したとおり、本件発明1の「光透過性が30%以下で」あることが、「基布織物」についての特性を示すものであるのか、「基布織物」以外のものの特性を示すものであるのか判然とせず不明確とした。
ここでは、「光透過性が30%以下で」あるものが、「基布織物」(織物全体)と解する場合と、「基布織物」に使用する原糸と解する場合に分けて判断する。
a 本件発明1の「光透過性が30%以下で」あるものが「基布織物」と解した場合
(a)甲6第1発明の「メッシュシート基材」は、本件発明1の「基布織物」に相当する。
甲6第1発明の「メッシュシート基材の両面において」、貼着される「透明性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からな」る「フィルム(0.15mm厚)」は、本件発明1の「前記基布織物にコーティング又はラミネートされた樹脂又はフィルム」に相当する。
甲6第1発明の「防音シート」は、本件発明1の「防音シート」に相当する。
(b)甲6第1発明の「メッシュシート基材」において、「光線透過率」が「29.5%」であることは、本件発明1の「基布織物」において、「光透過性」が「30%以下」であることに相当する。
(c)甲6第1発明の「空隙率」は、空隙率(%)=(A/A0)×100で示され、上記式中、A0は、メッシュシート基材の、多数の高比重樹脂層被覆糸条を含む供試部分の表面積を表し、Aは、この供試部分内の、前記高比重樹脂層被覆糸条の間に形成されている空隙部の合計表面積を表す。
甲6第1発明の「空隙率(%)」は、上記供試部分内に対する、上記空隙部の割合を示すものであるから、空隙でない糸条が存在するところ、即ち、糸条が充実しているところの割合は、[100-空隙率](%)で示されることは自明である。
よって、甲6第1発明の[100-空隙率](%)は、本件発明1の「充実率」(%)に相当するので、甲6第1発明の「空隙率30%」は、本件発明1の「充実率70%」に対応するといえる。
そうすると、甲6第1発明の「メッシュシート基材」の「空隙」の「空隙率が30%」であることは、本件発明1の「充実率が30~80%」であることに相当する。
(d)甲6第1発明の「透明性ポリ塩化ビニル系樹脂組成物から」なる「フィルム」の「光線透過率」が「90%」であることは、本件発明1の「樹脂又はフィルムの光透過性は50%以上」であることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲6第1発明とは、次の点で一致し、相違する点はない。
<一致点>
「光透過性が30%以下で、充実率が30~80%の基布織物と、
前記基布織物にコーティング又はラミネートされた樹脂又はフィルムと、を含み、
前記樹脂又はフィルムの光透過性は50%以上である、
防音シート。」
よって、本件発明1は、甲6第1発明である。
仮に、相違点があるとしても、設計事項の程度に過ぎないものであるから、本件発明1は、甲6第1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
b 本件発明1の「光透過性が30%以下で」あるものが、「基布織物」に使用する原糸と解した場合
本件発明1の「光透過性が30%以下で」ある「基布織物」の構成以外の構成については、上記a(a)、(c)及び(d)と同様である。
そうすると、本件発明1と甲6第1発明との、一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「充実率が30~80%の基布織物と、
前記基布織物にコーティング又はラミネートされた樹脂又はフィルムと、を含み、
前記樹脂又はフィルムの光透過性は50%以上である、
防音シート。」
<相違点a>
「基布織物」の原糸の「光透過性」が、本件発明1では、「30%以下で」あるのに対して、甲6第1発明では、そのような特定がされていない点。
上記相違点aについて検討する。
甲6第1発明の「メッシュシート基材」を構成する「ポリエステルフィラメント」は、本件発明1の「基布織物」を構成するもの(「原糸」)に相当する。
甲6第1発明の「メッシュシート基材」(「基布織物」)の空隙率は30%であり、「メッシュシート基材」の光線透過率(光透過性)は29.5%であることからみて、甲6第1発明の「メッシュシート基材」におけるポリエステルフィラメントの部分が、光線の透過にほとんど寄与していないことは明らかである。
そうすると、甲6第1発明の「ポリエステルフィラメント」の光線透過率(光透過性)が、「30%以下で」ある蓋然性は高いといえる。
よって、相違点aは、実質的な相違点ではない。
したがって、本件発明1は、甲6第1発明である。
仮に、その他に相違点があるとしても、設計事項の程度に過ぎないものであるから、本件発明1は、甲6第1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲6第1発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、又は、甲6第1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 主引用発明を甲6第2発明とした場合
甲6第2発明の「メッシュシート基材」の「空隙率」、「光線透過率」等の数値は、甲6第1発明のものとは異なるが、本件発明1と甲6第2発明とを対比・判断した場合も、上記ア(ア)と同様である。
したがって、本件発明1は、甲6第2発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、又は、甲6第2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)本件発明2について
ア 主引用発明を甲6第1発明とした場合
(ア)対比・判断
本件発明2において、本件発明1と共通する構成については、上記(1)ア(ア)で説明したとおりである。
本件発明2と甲6第1発明とを対比すると、以下の点で相違し、その他の点で一致する。
相違点1
「基布織物の色」について、本件発明2では、「原色の黒色、赤色、緑色、青色である」のに対して、甲6第1発明では、そのような特定がされていない点。
上記相違点1について検討する。
甲7技術事項は、糸条体が透明なシート状物内及び/またはその表面にかつ部分的に配置されたシートシャッター用シートにおいて、前記糸条体が黒色であり、甲8技術事項は、シートシャッター用膜材の基体(メッシュシート)において、表面の色相が、黒色、黒灰色、黒茶色、黒緑色、黒青色、黒紫色、濃紺色、濃緑色、臙脂色、青色、緑色、赤色、灰色などであり、甲9技術事項は、建築養生メッシュシートが、粗目織物を基布として、その表裏両面を被覆する表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層とで構成された、空隙率10~40%のメッシュシートであり、表面側熱可塑性樹脂層が黒色、黒灰色、黒茶色、黒緑色、黒青色、黒紫色、濃紺色、濃緑色、臙脂色、青色、緑色、赤色、灰色などマンセル明度4以下の色相を有する略円弧状断面により形成されたものである。
甲6第1発明の課題は、「実用上十分な採光性及び透視性を有」すること(第3の2(1)ア(イ)【0004】)であり、各技術事項の課題は、甲7技術事項については「透過視認性を向上させること」(第3の2(2)ア(イ)【0007】)であり、甲8技術事項については「明るい屋外からシート越しに薄暗い屋内を覗き込んだ時に屋内環境、及びシート越しの人相識別、物品識別が可能な視認性に優れたシートシャッター用膜材、間仕切り、及びシート構造物用膜材を提供すること」(第3の2(3)ア(イ)【0005】)であり、甲9技術事項については「工事現場張囲内における工事関係者などの行動や安全状況を外から把握するための視認性を有する建築養生メッシュシートを提供」すること(第3の2(4)ア(イ)【0006】)であるから、甲6第1発明の課題と甲7技術事項~甲9技術事項との課題は共通する。また、甲9技術事項については、工事現場を囲って用いるものであることから、甲6第1発明の工事現場の周囲に張設される工事用シートとしての有用な防音シートとは、技術分野も共通している。
よって、甲6第1発明に、甲7技術事項~甲9技術事項を適用する動機付けは存在する。
そして、甲6第1発明に、甲7技術事項~甲9技術事項を適用し、相違点1に係る本件発明2の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。
(イ)小括
したがって、本件発明2は、甲6第1発明、及び、甲7技術事項~甲9技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 主引用発明を甲6第2発明とした場合
本件発明2と甲6第2発明とを対比・判断した場合も、上記ア(ア)と同様である。
したがって、本件発明2は、甲6第2発明、及び、甲7技術事項~甲9技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)本件発明3について
ア 主引用発明を甲6第1発明とした場合
(ア)対比・判断
本件発明3が、本件発明1と共通する構成については、上記(1)ア(ア)で説明したとおりである。
加えて、甲6第1発明の「防音シート」の「音響透過損失」が、「1000Hzにおいて16dBであ」ることは、本件発明3の「防音シート」の「音響透過損失」が「1,000Hz時に11dB以上である」ことに相当する。
そうすると、本件発明3と甲6第1発明とは、次の点で一致し、相違する点はない。
<一致点>
「光透過性が30%以下で、充実率が30~80%の基布織物と、
前記基布織物にコーティング又はラミネートされた樹脂又はフィルムと、を含み、
前記樹脂又はフィルムの光透過性は50%以上であり、
音響透過損失が1,000Hz時に11dB以上である
防音シート。」
よって、本件発明3は、甲6第1発明である。
仮に、相違点があるとしても、設計事項の程度に過ぎないものであるから、本件発明3は、甲6第1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)小括
したがって、本件発明3は、甲6第1発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、又は、甲6第1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 主引用発明を甲6第2発明とした場合
本件発明3と甲6第2発明とを対比・判断をした場合も、上記ア(ア)と同様である。
したがって、本件発明3は、甲6第2発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、又は、甲6第2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(4)新規性、進歩性についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3の係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものであり、
本件発明1ないし3に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
本件発明1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものであり、
本件発明1ないし3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700229