特許異議申立
2020-700497
カバーテープおよび電子部品包装体
- 審判番号
- 2020-700497
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-040604
- 登録番号
- 特許第6638751号(P6638751)
- 請求日
- 2020年07月16日
- 審決日
- 2021年09月30日
- 公報発行日
- 2021年12月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友ベークライト株式会社
- 【権利者代理人】速水 進治
- 【異議申立人】西郷 新
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 孝明
- 審判官 間中 耕治
- 審判官 村山 達也
- 分類
- P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D) / P1651.841-YAA(B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号特許法120条の8特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6638751号発明「カバーテープおよび電子部品包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6638751号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~10]について訂正することを認める。
特許第6638751号の請求項1、2、5~10に係る特許を維持する。
特許第6638751号の請求項3、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6638751号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成30年3月7日の出願であって、令和2年1月7日にその特許権の設定登録がされ、同年1月29日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年7月16日 :特許異議申立人西郷新(以下、「申立人」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年10月1日付け:取消理由通知書
令和2年12月4日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和3年2月5日 :申立人による意見書の提出
令和3年4月22日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和3年7月5日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求(以下、この訂正請求を「本件訂正請求」といい、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
なお、令和2年12月4日になされた訂正請求は、特許法第126条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否
1.本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において
「前記シーラント層におけるJIS Z0237で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70としたとき、T70が30gf以上、200gf以下である」
と記載されているのを
「前記シーラント層は、
前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含み、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70としたとき、T70が30gf以上、200gf以下であり、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT90としたとき、T90が40gf以上、500gf以下であり、
T90/T70が、1.3以上、6以下であり、」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、「カバーテープ。」と記載されているのを「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている、カバーテープ。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項4」と記載されているのを「請求項1または2」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至5」と記載されているのを「請求項1、2及び5」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1乃至7」と記載されているのを「請求項1、2及び5乃至7」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1乃至8」と記載されているのを「請求項1、2及び5乃至8」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1乃至9」と記載されているのを「請求項1、2及び5乃至9」に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0009】に
「前記シーラント層におけるJIS Z0237で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70としたとき、T70が30gf以上、200gf以下である、」
と記載されているのを
「前記シーラント層は、
前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含み、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70としたとき、T70が30gf以上、200gf以下であり、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT90としたとき、T90が40gf以上、500gf以下であり、
T90/T70が、1.3以上、6以下であり、」
に訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0009】に「カバーテープを提供される。」と記載されているのを「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている、カバーテープを提供される。」に訂正する。
(12)訂正事項12
明細書の【0013】に「JIS Z0237」と記載されているのを「JIS Z3284」に訂正する。
(13)訂正事項13
明細書の【0080】に「前記シーラント層におけるJIS Z0237で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70としたとき」と記載されているのを「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70としたとき」に訂正する。
(14)訂正事項14
明細書の【0080】に「前記シーラント層におけるJIS Z0237で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT90としたとき」と記載されているのを「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT90としたとき」に訂正する。
(15)訂正事項15
明細書の【0089】に「JIS Z0237」と記載されているのを「JIS Z3284」に訂正する。
2.一群の請求項について
(1)訂正前の請求項1~10について、訂正前の請求項2~10は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1、2によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項[1~10]は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、本件訂正は、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めはされてないから、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項[1~10]を訂正単位とするものであり、訂正事項1~9は、一体の訂正事項として取り扱われるものである。
(2)また、訂正事項10~15に係る明細書の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、上記の一群の請求項[1~10]を訂正の単位として請求されたものである。
3.本件訂正の適否について
(1)訂正事項1のうち「JIS Z0237」を「JIS Z3284」に訂正することについて
ア 訂正前の請求項1の「JIS Z0237で規定されるプローブタック試験」は、日本工業規格「JIS Z0237:2009 粘着テープ・粘着シート試験方法」に「プローブタック試験」に係る記載がないことから、誤記であることが明らかである。
イ 一方、本件特許明細書の段落【0089】には、タック力の測定に関して以下の事項が記載されている。
「【0089】
・タック力
JIS Z0237で規定されるプローブタック試験により、ステージ上にシーラント層が上側となるようにしてカバーテープを配置し、測定した。また、プローブとステージの設定温度を同じにし、設定温度25℃、50℃、70℃、90℃としたときのそれぞれのタック値(T25、T50、T70、T90)を測定した。
装置:株式会社レスカ製「TAC-1000」
押し付け速度:0.5mm/s
押し付け荷重:1,000gf
押し付け保持時間:60s
引き上げ速度:10mm/s
プローブの直径:5mm(プローブ素材:SUS)」
ウ 上記イの記載事項から、本件特許明細書におけるタック力の測定では、測定装置として「装置:株式会社レスカ製『TAC-1000』」を使用し、当該測定装置のステージ上に配置したカバーテープに対して、「プローブの直径:5mm(プローブ素材:SUS)」を「押し付け速度:0.5mm/s」、「押し付け荷重:1,000gf」、「押し付け保持時間:60s」及び「引き上げ速度:10mm/s」の条件で測定していることが看取できるから、本件特許明細書におけるタック力の測定は、プローブを試料に押しつけた後、プローブを引き上げる操作を行う「プローブタック試験」であることは明らかである。
エ さらに、特許権者が提出した乙1号証の1の「Features」の欄には、株式会社レスカ製「TAC-1000」に関して以下の事項が記載されている。
「3 Compliant with domestic and international regulations as follows,
・IIW SC/IA-SP058
・IPC SP-819
・JIS Z0237
・JIS Z3284」
当該記載によれば、株式会社レスカ製「TAC-1000」が準拠する国内規格又は国際規格は、「JIS Z0237」のほかに、「IIW SC/IA-SP058」、「IPC SP-819」及び「JIS Z3284」であることを看取でき、このうち「JIS Z0237」以外の規格は、全て「プローブタック試験」に係る規格である。
オ そして、本件特許明細書おいては、一貫して「JIS」規格に規定されたプローブタック試験により測定することとしているから、本件特許明細書の段落【0089】に記載された、「装置:株式会社レスカ製『TAC-1000』」を用いた「プローブタック試験」に係る「JIS」規格は、「JIS Z3284」であることが明らかである。
カ してみると、訂正事項1のうち「JIS Z0237」を「JIS Z3284」に訂正することは、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号の誤記の訂正を目的とするものである。
キ そして、「装置:株式会社レスカ製『TAC-1000』」を用いた「プローブタック試験」を行うことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)の【0089】に記載されており、そのJIS規格が「JIS Z3284」であることは【0089】の記載事項から明らかであるから、請求項1のプローブタック試験を「JIS Z3284で規定するプローブタック試験」に訂正することは、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第120条第5項の規定に適合する。
ク また、訂正事項1のうち「JIS Z0237」を「JIS Z3284」に訂正することは、上記のとおり、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことが明らかであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第120条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項1のうち上記(1)以外の訂正について
ア 訂正事項1のうち上記(1)以外の訂正は、訂正前の請求項1における「シーラント層」について、「前記シーラント層は、前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含み、」、「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT90としたとき、T90が40gf以上、500gf以下であり、T90/T70が、1.3以上、6以下であり、」とのことを直列的に付加して減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 当該訂正は、訂正前の請求項3、請求項4及び段落【0021】、【0029】に記載された事項の範囲内において訂正するものであるから、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第120条第5項の規定に適合する。
ウ 当該訂正は、訂正前の請求項1における「シーラント層」について、上記のような発明特定事項を直列的に付加するものである。なお、訂正前の請求項4のうち「(C)(メタ)アクリル酸エステル重合体」を削除することは、択一的記載の発明特定事項を削除するものである。そして、当該訂正は、カテゴリーや発明特定事項を変更するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項1における「シーラント層」について、「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている」ことを直列的に付加して減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 当該訂正は、訂正前の段落【0025】記載された事項の範囲内において訂正するものであるから、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第120条第5項の規定に適合する。
ウ 当該訂正は、訂正前の請求項1における「シーラント層」について、上記のような発明特定事項を直列的に付加するものである。そして、当該訂正は、カテゴリーや発明特定事項を変更するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項3、4について
ア 訂正事項3は、請求項3を削除するものであり、訂正事項4は、請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項3、4は、請求項3、4を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5~9について
ア 訂正事項5~9は、請求項3、4が削除されたこと伴い、請求項5、6及び8~10の記載を整合させるものであって、また、択一的記載の発明特定事項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号又は第1号の明瞭でない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項5~9は、訂正前の請求項5、6及び8~10における択一的記載の発明特定事項を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項10について
ア 訂正事項10のうち、訂正前の「JIS Z0237」を「JIS Z3284」に訂正することは、上記(1)で述べたとおり、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号の誤記の訂正を目的とするものであって、新規事項を追加するものでもなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項10のうち、上記アの訂正前の「JIS Z0237」を「JIS Z3284」に訂正すること以外の訂正は、特許請求の範囲の請求項1を訂正したことに伴い、段落【0009】の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正は、上記(2)で述べたとおり、新規事項を追加するものでもなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。
(7)訂正事項11について
訂正事項11は、特許請求の範囲の請求項1を訂正したことに伴い、段落【0009】の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正は、上記(3)で述べたとおり、新規事項を追加するものでもなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。
(8)訂正事項12~15について
訂正事項12~15は、いずれも、訂正前の「JIS Z0237」を「JIS Z3284」に訂正するものであって、上記(1)で述べたとおり、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号の誤記の訂正を目的とするものであって、新規事項を追加するものでもなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。
4.むすび
以上のとおりであるから、訂正事項1~15は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第2号又は第3号の特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するものである。
第3 本件訂正後の発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~請求項10に係る発明(以下、各々「本件発明1」~「本件発明10」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~請求項10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
一方の面にシーラント層を有し、前記シーラント層上に基材層を備えており、
電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープであって、
前記シーラント層は、
前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含み、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70としたとき、T70が30gf以上、200gf以下であり、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT90としたとき、T90が40gf以上、500gf以下であり、
T90/T70が、1.3以上、6以下であり、
前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている、カバーテープ。
【請求項2】
前記シーラント層におけるJIS C0806-3に準拠した180°剥離強度が15gf以上である、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記(A)ポリオレフィン系樹脂が、カルボン酸またはカルボン酸誘導体に由来する構造単位を有する共重合体を含む、請求項1または2に記載のカバーテープ。
【請求項6】
前記カバーテープが、前記シーラント層と、前記基材層との間に、さらに中間層を備える、請求項1、2及び5いずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項7】
前記中間層は、オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上の熱可塑性樹脂を含む、請求項6に記載のカバーテープ。
【請求項8】
前記シーラント層の厚み(μm)に対する、前記基材層の厚み(μm)が、0.1以上、25以下である、請求項1、2及び5乃至7いずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項9】
1mm以上100mm以下の幅を有する、請求項1、2及び5乃至8いずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項10】
電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、
請求項1、2及び5乃至9いずれか一項に記載のカバーテープと有し、
前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。」
第4 取消理由の概要
当審が令和3年4月22日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告:以下、単に「決定の予告」という。)の概要は、次のとおりである。
○理由2(新規性)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明若しくは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
○理由3(進歩性)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明若しくは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
甲1:特開2016-193753号公報
甲2:再公表特許第2008/126938号
甲3:国際公開第2010/018791号
甲4:国際公開第2012/143994号
甲5:特開2017-128699号公報
○理由4(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
なお、上記甲1~甲5は、各々特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付された甲第1号証~甲第5号証であり、甲1~甲5の各々に記載された事項を、各々甲1記載事項~甲5記載事項という。また、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明を、各々甲1発明~甲3発明という。
第5 当審の判断
1.理由2、3(新規性、進歩性)について
1.1.引用文献に記載された事項及び引用発明
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 「【0054】
<実施例1に係るカバーテープの製造>
基材層として、ポリエチレンテレフタレートおよびナイロンの二軸延伸フィルムを複合して厚みを20μmとしたものを用い、上記基材層の内側に30μmのポリエチレンフィルムを中間層としてラミネートした後、得られた積層物における中間層を有する面側にグラビアコーターを用いてシーラント層を膜厚2μmとなるように溶液製膜することにより、実施例のカバーテープを作製した。なお、シーラント層を形成する材料としては、接着性樹脂であるアクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、A450A)100重量部と帯電防止剤である酸化錫(三菱マテリアル社製、T-1)300重量部とを含む樹脂組成物を使用した。」
イ 「【0056】
以上の方法により、実施例1または2に係るカバーテープを作製した。得られたカバーテープの幅は、8mmであった。」
ウ 「【0062】
・電子部品の貼り付き防止性:8mm幅のポリカーボネート性キャリアテープ(ニッポー社製)に対し、電子部品(SHARP社製、GM4ZR83232AE)を挿入し、5.5mm幅にスリットしたカバーテープを、ヒートシール温度220℃で、ヒートシールすることにより包装体を作製した。次いで、得られた包装体に収容した電子部品が、当該包装体を形成するカバーテープの表面に接触するように70℃で24時間静置した。次に、包装体からカバーテープを300mm/minの速度で剥離した。その後、剥離したカバーテープの表面に貼り付いているチップの数をカウントした。本実施例においては、以下の基準で評価を行った。
○(電子部品の貼り付き防止性が良好):カバーテープの表面に張り付いているチップの数が2個未満である。
×(電子部品の貼り付き防止性が不良):カバーテープの表面に張り付いているチップの数が2個以上である。
【0063】
上記評価項目に関する評価結果を以下の表1に示す。
【0064】
【表1】
」
エ 「【図1】
」
以上ア~エから、甲1には、次の甲1発明が記載されている。
<甲1発明>
「一方の面に厚さ2μmのシーラント層を有し、前記シーラント層に厚さ30μmの中間層を介して厚さ20μmの基材層を備えており、電子部品を収容できるポケットを有するキャリアテープを、前記シーラント層によりヒートシールするためのカバーテープであって、シーラント層を形成する材料が接着性樹脂であるアクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、A450A)100重量部と帯電防止剤である酸化錫(三菱マテリアル社製、T-1)300重量部とを含む樹脂組成物からなる、カバーフィルム。」
(2)甲2に記載された事項及び甲2発明
ア 「【0009】
実施例及び比較例
外層として膜厚25μmの基材フィルム(基材層)を使用し、その上に押出しラミネート法にて15μmの中間層を設けて総厚40μmのフィルムを得た。その上にコロナ処理法にて表面を活性化させた上で、表1及び表2に示す配合処方でコーティング(乾燥後1μm)を行ってヒートシーラント層を形成し、フィルム(カバーテープ)を得た。
8mm幅のポリスチレン製キャリアテープ(素材:カーボン練りこみポリスチレン)に電子部品を収納し、上記で得られたカバーテープを、5.5mm幅にスリット後、剥離時の強度が40cNとなるようにヒートシール温度を調整して、キャリアテープにヒートシール(ヒートシール時の熱コテのサイズ:0.4mm巾×8mm長 2列・2度打ち)を行い、電子部品包装体を得た。
各実施例、比較例で使用した基材層、中間層の構成、ヒートシーラント層の成分、電子部品の素材は、表1、2に示したとおりである。
〔接着性樹脂と電子部品との間に摩擦を生じさせたときの接着性樹脂上の帯電極性の測定〕
電荷帯電性樹脂(B)を加える前の、接着性樹脂(A)と電子部品との摩擦直後の接着性樹脂面の帯電極性を、ETS社製の表面電位計を用いて測定した。
〔帯電量の測定〕
実施例、比較例で得られた電子部品包装体のサンプルについて、剥離時の電子部品の貼り付きを確認した。初めに、電子部品を100個テーピングしたものに300往復/分の振動を1分間与え、300mm/minで剥離したところ、いずれのサンプルについても電子部品の貼り付きは起こらなかった。
そこで、代替評価として、実施例及び比較例の電子部品包装体におけるカバーテープのキャリアテープと接する層(ヒートシーラント層)と、電子部品(サイズ:1mm×2mm×1mm、質量:0.01g、カバーテープ側の面の面積2mm2)5個とを、600回転/分にて3分間振動させた際の帯電量の大きさを測定した。
(測定)
摩擦後の電子部品の帯電量(摩擦帯電量)の測定はETS株式会社製のファラデーゲージを用いて実施した。結果は、表1~2に示した。
〔塗膜の状態〕
塗膜の状態は目視により評価を行い、問題ない場合を「良好」とし、塗膜ムラや塗膜抜けなどの見られた場合を「製膜できず」とした。
〔表面抵抗値(Ω/□)〕
JIS K6911に基づき23℃-50%RH環境下で測定した。
【表1】
【表2】
表1、2中の記号及び表示物名は以下のものを使用した。
o-PET:二軸延伸したポリエチレンテレフタレート(東洋紡社製 T6140)
o-Ny:二軸延伸したナイロン(ユニチカ社製 ONU12)
o-PP:二軸延伸したポリプロピレン(東洋紡社製 P2282)
PE:ポリエチレン(住友化学社製 L705)
PP:ポリプロピレン(サンアロマー社製 PC540R)
ポリスチレン:PSジャパン社製 PSJ-ポリスチレン679
Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製 A450A)
Sv:塩化ビニル系接着樹脂(日信化学社製 SOLBAIN M)
PS:正帯電性樹脂(藤倉化成社製 FCA-201-PS)
NS:負帯電性樹脂(藤倉化成社製 FCA-1001-NS)
ATO:酸化錫(三菱マテリアル社製 T-1)
ZO:酸化亜鉛(ハクスイテック社製 パゼットCK)
CB:カーボンブラック(ライオン社製 ケッチェンブラック EC600JD)
実施例では、摩擦帯電量が極めて小さかった。よって、ピックアップ不良やESDによる部品破壊を良好に防止できることが期待できた。また、塗膜状態、表面抵抗値も良好なものであった。一方、比較例では、摩擦帯電量が大きいか、測定できなかった。」
イ 「【図2】
」
以上ア~イから、甲2には、次の甲2発明が記載されている。
<甲2発明>
「一方の面に厚さ1μmのシーラント層を有し、前記シーラント層に厚さ15μmの中間層を介して厚さ25μmの基材層を備えており、電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりヒートシールするためのカバーテープであって、シーラント層を「Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製 A450A)」(100部)及び「ATO:酸化錫(三菱マテリアル社製 T-1)」(300部)を配合して形成した、カバーフィルム。」
(3)甲3に記載された事項及び甲3発明
ア 「[0027]発明を実施するための最良の形態について、以下図面を用いて説明する。
本発明に係る電子部品包装用カバーテープは、電子部品包装用キャリアテープにヒートシールして用いられる電子部品包装用カバーテープである。図1は本発明に係るカバーテープの一例を示す概略図であり、本発明に係るカバーテープは図1に示すように少なくとも基材層2、クッション層3、ヒートシール追従層4及びヒートシール層5がこの順に積層されている。そして、上記クッション層3を構成する樹脂AのISO306により測定したビカット軟化点温度Taと、上記ヒートシール追従層4を構成する樹脂BのISO306により測定したビカット軟化点温度Tbとが、下記関係式1を満たし、更に、上記ヒートシール追従層の厚さが2μm以上15μm以下となる。これらの特徴を満たすことにより、高温でヒートシールがなされた場合であっても、樹脂の流出によるヒートシールコテの汚染を低減させつつ、キャリアテープとの密着性を高めることができる。
関係式1:Ta-Tb≧3(℃)
すなわち、本発明の電子部品包装用カバーテープにおいて、クッション層はビカット軟化点温度が高い樹脂Aからなるために、従来より高い温度でヒートシールしても樹脂流出を抑制することができる。さらに、ビカット軟化点温度が低い樹脂Bからなるヒートシール追従層を形成するため、ヒートシール層をキャリアテープの変形に追従させ、密着性を高めることができる。また、上記ヒートシール追従層の厚さを2μm以上15μm以下と、比較的薄膜に限定することで、ヒートシール追従層からの樹脂流出も抑制することができるものである。
以下、各構成について説明する。」
イ 「[0031]上記クッション層は、樹脂Aからなるフィルムを用いることが好ましい。上記樹脂Aとしては、ISO306により測定したビカット軟化点温度Taが上記関係式1を満たすものであれば特に限定されないが、ビカット軟化点温度Taが96℃以上115℃以下であるものが好ましい。ビカット軟化点温度Taが上記範囲の下限以上であれば、ヒートシール時のクッション層の流出を抑えることができ、樹脂流出によるヒートシールコテへの樹脂付着による汚染や、中間層の変形によるカバーテープ自体の機械的強度の低下を抑えることが可能となる。また、上記範囲上限以下であれば充分なクッション性を得ることができ、ヒートシールの際の圧力、温度を均等に伝え、カバーテープとキャリアテープとの密着性が向上し、充分な剥離強度を得ることができる。」
ウ 「[0034]上記樹脂Aとしては、上記要件を満たした上で隣り合う層と充分な密着性を有すれば、適宜種々の樹脂を用いることができるが、具体的には以下の樹脂が挙げられる。例えば、ポリエステル、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メチル-メタアクリレート共重合体(EMMA)、アイオノマー、エチレン-プロピレンラバー、ポリプロピレン、スチレン系エラストマー、水素添加スチレン系エラストマー、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)等が挙げられ、これらの樹脂から選択される2種類以上が配合された樹脂組成物であってもよい。なお、カバーテープの安定した機械的強度や、ヒートシールの際の安定したクッション性を得るためには、直鎖状低密度ポリエチレン、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)やスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)等の水素添加スチレン系エラストマー、エチレン酢酸ビニル共重合体、または、これらの群から選択される2以上が配合された樹脂組成物を用いることが好ましい。特にメタロセン系触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いると、作業時のテープ切れを大幅に低減させることができる点でより好ましい。」
エ 「[0052]以下具体的な実施例により本発明を詳細に説明する。実施例及び比較例に使用した原料及びその物性は下記の通りである。クッション層とヒートシール追従層に用いた樹脂の特性を表1に示す。
(1)基材層
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート:東洋紡株式会社製エステルフィルムT6140
二軸延伸6-ナイロン:株式会社興人製ボニールW
(2)クッション層
メタロセンLLDPE1:株式会社プライムポリマー製エボリューSP1510(ビカット軟化点:98℃、曲げ弾性率:240MPa、分子量分布:4.5)
メタロセンLLDPE2:株式会社プライムポリマー製エボリューSP212(ビカット軟化点:104℃、曲げ弾性率:240MPa、分子量分布:2.5)
メタロセンLLDPE3:株式会社プライムポリマー製エボリューSP1540
(ビカット軟化点:96℃、曲げ弾性率:190MPa、分子量分布:2.5)
(3)ヒートシール追従層
メタロセンLLDPE4:株式会社プライムポリマー製エボリューSP0511
(ビカット軟化点:84℃、曲げ弾性率:130MPa、分子量分布:4.5)
メタロセンLLDPE5:株式会社プライムポリマー製エボリューSP0540
(ビカット軟化点:83℃、曲げ弾性率:120MPa、分子量分布:2.5)
メタロセンLLDPE6:株式会社プライムポリマー製エボリューSP1020
(ビカット軟化点:92℃、曲げ弾性率:140MPa、分子量分布:2.5)
(4)ヒートシール層
アクリル系接着樹脂:大日本インキ株式会社製 A450A」
オ 「[0054](キャリアテープへのヒートシール試験1)
上記作成方法により得られたカバーテープを、8mm幅導電ポリスチレン製キャリアテープと下記ヒートシール条件1によりヒートシールし、ヒートシール試験1とした。」
カ 「[請求項1]
電子部品包装用キャリアテープにヒートシールしうる電子部品包装用カバーテープであって、
少なくとも基材層、樹脂Aからなるクッション層、樹脂Bからなるヒートシール追従層及びヒートシール層がこの順に積層され、
前記樹脂AのISO306により測定したビカット軟化点温度Ta(昇温速度:50℃/時、荷重:10N)と、前記樹脂BのISO306により測定したビカット軟化点温度Tb(昇温速度:50℃/時、荷重:10N)とが、下記関係式1を満たし、
前記ヒートシール追従層の厚みが2μm以上15μm以下である電子部品包装用カバーテープ。
関係式1:Ta-Tb≧3(℃)
・・・
[請求項13]
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープと電子部品包装用キャリアテープとをヒートシールされて得られたことを特徴とする電子部品包装体。」
キ 「[図5]
」
以上ア~キから、甲3には、次の甲3発明が記載されている。
<甲3発明>
「一方の面にヒートシール層を有し、前記ヒートシール層にヒートシール追従層及びクッション層を介して基材層を備えており、電子部品を収容できるエンボス部分を有するキャリアテープを、前記ヒートシール層によりヒートシールするためのカバーテープであって、ヒートシール層を「アクリル系接着樹脂:大日本インキ株式会社製 A450A」で形成した、カバーテープ。」
(4)甲4に記載された事項
「[0006]また、電子部品を収納した包装体では、封止樹脂に含まれる水分を除去するために、ベーキング処理をする必要がある。このような電子部品の量産性向上のためには、ベーキング温度を上げ、ベーキングの時間を短くする必要があり、最近ではカバーフィルムをキャリアテープにヒートシールした状態で、例えば60℃の環境下で72時間又は80℃の環境下で24時間程度のベーキング処理を行うようになってきている。このような場合、カバーフィルムのヒートシール面に電子部品が付着してしまい、基板上に部品を実装する際に実装不良を起こすことがある。しかしながら、従来は、このような部品付着の問題について十分には考慮されていなかった。」
(5)甲5に記載された事項
「【0022】
((A)ポリオレフィン系樹脂)
本実施形態のシーラント層2を構成する樹脂組成物は、(A)ポリオレフィン系樹脂を含む。
この(A)ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブテン等のα-オレフィンに由来する単位を有する樹脂であり、公知の材料のなかから、適宜選択して、使用することができる。
【0023】
本実施形態においては、この(A)ポリオレフィン系樹脂として、エチレン共重合体を用いることが好ましい。
エチレン共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、アイオノマーなどの樹脂が挙げられる。
このような樹脂を用いることより、キャリアテープ20に対する剥離強度を好適なものとすることができる。
【0024】
なお、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体などがあげられる。
【0025】
また、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メタノール、エタノール等炭素数1~8のアルコールとのエステルが好適に使用される。上記エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体の中でも、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、もしくはエチレン-メタクリル酸メチル共重合体が汎用性の面から好ましい。
【0026】
上記の樹脂のうち、キャリアテープ基材への接着性およびコストの面から、エチレン共重合体が、エチレン-酢酸ビニル共重合体またはエチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体であると好ましい。
本実施形態において、エチレン-酢酸ビニル共重合体は、少なくともエチレンと酢酸ビニルとが、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体は、少なくともエチレンと脂肪族不飽和カルボン酸エステルとが共重合した共重合体であり、場合により他のモノマーがさらに共重合されていてもよい。」
1.2.対比・判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比・判断
甲1発明の「一方の面」、「基材層」、「電子部品」、「ポケット」及び「キャリアテープ」は、それぞれ本件発明1の「一方の面」、「基材層」、「電子部品」、「凹部」及び「キャリアテープ」に相当するから、甲1発明の「電子部品を収容できるポケットを有するキャリアテープを、前記シーラント層によりヒートシールするためのカバーテープ」は、本件発明1の「電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープ」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、
「一方の面にシーラント層を有し、前記シーラント層上に基材層を備えており、
電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープ。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1では、シーラント層が「前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含」むのに対して、甲1発明では、シーラント層を形成する材料が、「接着性樹脂であるアクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、A450A)100重量部と帯電防止剤である酸化錫(三菱マテリアル社製、T-1)300重量部とを含む樹脂組成物」である点。
(相違点2)
本件発明1では、「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70としたとき、T70が30gf以上、200gf以下であり、前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT90としたとき、T90が40gf以上、500gf以下であり、T90/T70が、1.3以上、6以下」であるのに対して、甲1発明では、タック値が不明な点。
(相違点3)
本件発明1では、「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている」のに対して、甲1発明では、そのような構成がない点。
上記相違点1について検討すると、甲1発明の「アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、A450A)」は、本件発明1の「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」と相違することが明らかである。
そして、甲1発明における「アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、A450A)」を、本件発明1のごとく「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」に置換する動機付けはない。
仮に、甲1発明の「アクリル系樹脂接着剤(大日本インキ社製、A450A)」に、「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」から選択される一種以上を含む場合を想定して相違点2、3について検討する。
甲第1号証には、「アクリル系樹脂接着剤(大日本インキ社製、A450A)」による前記シーラント層について、JIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70及び90℃でのタック値をT90は記載されていないし、シーラント層の表面に粗さ付与することも記載されていない。
そして、当業者であっても、甲1発明の「アクリル系樹脂接着剤(大日本インキ社製、A450A)」に「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」から選択される一種以上を含有させるとともに、シーラント層の表面に粗さ付与をしたときの、シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70及び90℃でのタック値をT90は、予測することが困難であるといわざるを得ないし、その動機付けもない。
してみると、本件発明1は、甲1発明ではないことが明らかであるから特許法第29条第1項第3号の発明には該当せず、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということもできないから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもない。
イ 本件発明1と甲2発明との対比
甲2発明の「一方の面」、「基材層」、「電子部品」、「凹部」及び「キャリアテープ」は、それぞれ本件発明1の「一方の面」、「基材層」、「電子部品」、「凹部」及び「キャリアテープ」に相当するから、甲2発明の「電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりヒートシールするためのカバーテープ」は、本件発明1の「電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープ」に相当する。
してみると、本件発明1と甲2発明とは、
「一方の面にシーラント層を有し、前記シーラント層上に基材層を備えており、電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープ。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点4)
本件発明1では、シーラント層が「前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含」むのに対して、甲2発明では、シーラント層が、「「Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製 A450A)」(100部)及び「ATO:酸化錫(三菱マテリアル社製 T-1)」(300部)を配合して形成した」ものである点。
(相違点5)
本件発明1では、「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70としたとき、T70が30gf以上、200gf以下であり、前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT90としたとき、T90が40gf以上、500gf以下であり、T90/T70が、1.3以上、6以下」であるのに対して、甲2発明では、タック値が不明な点。
(相違点6)
本件発明1では、「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている」のに対して、甲2発明では、そのような構成がない点。
上記相違点4について検討すると、甲2発明の「Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製 A450A)」は、本件発明1の「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」と相違することが明らかである。
そして、甲2発明における「Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製 A450A)」を、本件発明1のごとく「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」に置換する動機付けはない。
仮に、甲2発明の「Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、A450A)」に、「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」から選択される一種以上を含む場合を想定して相違点5、6について検討する。
甲第2号証には、前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70及び90℃でのタック値をT90は記載されていないし、シーラント層の表面に粗さ付与することも記載されていない。
そして、当業者であっても、甲2発明の「Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、450A)」に「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」から選択される一種以上を含有させるとともに、シーラント層の表面に粗さ付与をしたときの、シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70及び90℃でのタック値をT90は、予測することが困難であるといわざるを得ないし、その動機付けもない。
してみると、本件発明1は、甲2発明ではないことが明らかであるから特許法第29条第1項第3号の発明には該当せず、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということもできないから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもない。
ウ 本件発明1と甲3発明との対比
甲3発明の「一方の面」、「基材層」、「電子部品」、「エンボス部分」及び「キャリアテープ」は、それぞれ本件発明1の「一方の面」、「基材層」、「電子部品」、「凹部」及び「キャリアテープ」に相当するから、甲3発明の「電子部品を収容できるエンボス部分を有するキャリアテープを、前記ヒートシール層によりヒートシールするためのカバーテープ」は、本件発明1の「電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープ」に相当する。
してみると、本件発明1と甲3発明とは、
「一方の面にシーラント層を有し、前記シーラント層上に基材層を備えており、
電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープ。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点7)
本件発明1では、シーラント層が「前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含」むのに対して、甲3発明では、シーラント層が、「アクリル系接着樹脂:大日本インキ株式会社製 A450A」である点。
(相違点8)
本件発明1では、「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70としたとき、T70が30gf以上、200gf以下であり、前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT90としたとき、T90が40gf以上、500gf以下であり、T90/T70が、1.3以上、6以下である」のに対して、甲3発明では、タック値が不明な点。
(相違点9)
本件発明1では、「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている」のに対して、甲3発明では、そのような構成がない点。
上記相違点7について検討すると、甲3発明の「アクリル系接着樹脂:大日本インキ株式会社製 A450A」は、本件発明1の「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」と相違することが明らかである。
そして、甲3発明における「アクリル系接着樹脂:大日本インキ株式会社製 A450A」を、本件発明1のごとく「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」に置換する動機付けはない。
仮に、甲3発明の「アクリル系接着樹脂:大日本インキ社製、A450A」に、「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」から選択される一種以上を含む場合を想定して相違点8、9について検討する。
甲第3号証には、前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70及び90℃でのタック値をT90は記載されていないし、シーラント層の表面に粗さ付与することも記載されていない。
そして、当業者であっても、甲3発明の「アクリル系接着樹脂:大日本インキ社製、450A」に「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」から選択される一種以上を含有させるとともに、シーラント層の表面に粗さ付与をしたときの、シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70及び90℃でのタック値をT90は、予測することが困難であるといわざるを得ないし、その動機付けもない。
してみると、本件発明1は、甲3発明ではないことが明らかであるから特許法第29条第1項第3号の発明には該当せず、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということもできないから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもない。
(2)本件発明2、本件発明5~10について
本件発明2、本件発明5~10は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明1の発明特定事項の全てを含むものである。
そして、上記(1)で述べたとおり、本件発明1が甲1~3発明ではないことが明らかであって、甲1~3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということもできないのであるから、本件発明2、本件発明5~10が特許法第29条第1項第3号の発明に該当せず、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもないことが明らかである。
2.理由4(サポート要件)について
(1)本件発明1の発明特定事項は、本件訂正により「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70としたとき、T70が30gf以上、200gf以下であり、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT90としたとき、T90が40gf以上、500gf以下であり、
T90/T70が、1.3以上、6以下であり、
前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている、」と訂正された。
(2)実施例4との関係について
本件発明1は、本件訂正により上記第3のとおりとなったことから、本件発明1の実施例は、発明の詳細な説明の段落【0085】の実施例4のみである。
そして、発明の詳細な説明の段落【0085】及び【0093】を総合すると、段落【0093】に記載された実施例4のタック力であるT70及びT90も粗面化されたシーラント層表面に対するタック力であることが明らかである。
してみると、「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている」ことを発明特定事項とする本件発明1は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものではないことが明らかである。
本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2、本件発明5~10も同様である。
(3)T70とT90との関係について
本件発明1は、本件訂正により上記第3のとおりとなったことから、T70とT90との関係は、「T70が30gf以上、200gf以下」、「T90が40gf以上、500gf以下」及び「T90/T70が、1.3以上、6以下」であることが特定された。
そして、上記の本件発明1におけるT70とT90との関係は、発明の詳細な説明の段落【0019】~【0022】に記載されたT70とT90との関係となんら矛盾するものではなく、してみると、本件発明1は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものではないことが明らかである。
本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2、本件発明5~10も同様である。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1、2、5~10は、発明の詳細な説明に記載された発明であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。
3.申立人の意見について
申立人は、令和3年2月5日に意見書、甲第6号証及び参考資料1等を提出した上で、当該意見書において以下のア、イように主張している。
甲第6号証:再公表2016-076331号
参考資料1:特開2016-104641号公報
ア 「JIS Z3284」への訂正について
当該訂正は、「当初明細書等の記載から自明な事項」に基づくものではく、また、プローブタック試験は、例えば、ASTM D2979(2016)「Standerd Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives Using an Inverted Probe Machine」といった規格もあり、一義的に「JIS Z3284」に確定するものではない。
イ 訂正後の請求項1について
本件特許の実施例3と甲6号証(再公表2016-076331)の実施例3のシーラント層の成分を比較すると、・・・同じメーカーの成分を使用し、成分配合比もほぼ同じである。そして、令和1年8月19日付け提出の意見書において、本件特許の実施例3のT70は220gfであり、甲6号証の実施例3のT70は205gfであることが示されている。
エチレン-アクリル酸メチル共重合体は接着性樹脂として知られているから、シーラント層の粘着力の調整のために接着性樹脂の量を増減することは容易に想到でき、例えば参考資料1の実施例に示されるように、エチレン-アクリル酸メチル共重合体の量を25~55質量%とすることは容易に想到できる。そして、甲6号証の実施例3よりも接着性樹脂の量が少なくなると、T70は205gfよりも小さくなるから、T70=30~200gfを充足する蓋然性が極めて高いといえる。また、・・・T70と同様にT90も小さくなるから、T90/T70=1.3~6を充足する蓋然性は高いといえる。
ウ 上記申立人の主張について検討する。
(ア)「JIS Z3284」への訂正について
第2の3.(1)ウに示したとおり、本件特許明細書におけるタック力の測定では、測定装置として「装置:株式会社レスカ製『TAC-1000』」を使用していることが明らかであり、また、本件特許明細書におけるタック力の測定は、プローブを試料に押しつけた後、プローブを引き上げる操作を行う「プローブタック試験」であることは明らかである。
そして、第2の3.(1)エ、オで示したとおり、株式会社レスカ製「TAC-1000」が準拠する国内規格又は国際規格は、「JIS Z0237」のほかに、「IIW SC/IA-SP058」、「IPC SP-819」及び「JIS Z3284」であるが、本件特許明細書おいては、一貫して「JIS」規格に規定されたプローブタック試験により測定することとしているから、本件特許明細書の段落【0089】に記載された、「装置:株式会社レスカ製『TAC-1000』」を用いた「プローブタック試験」に係る「JIS」規格は、「JIS Z3284」であることが明らかである。
よって、上記申立人の主張を採用することはできない。
(イ)訂正後の請求項1について
申立人が提出した甲第6号証は、本件特許の審査において引用された引用文献であって、当該文献にシーラント層のタック力を測定した旨の記載はない。
そして、申立人が意見する「令和1年8月19日付け提出の意見書」の記載は、本件特許の実施例と甲第6号証の実施例とを比較実験したものであって、甲第6号証に記載された実施例のシーラント層の70℃におけるタック力:T70は、いずれも200gfを超えることが記載されている。
申立人は、「本件特許の実施例3と甲6号証(再公表2016-076331)の実施例3のシーラント層の成分を比較すると、・・・同じメーカーの成分を使用し、成分配合比もほぼ同じである」こと、および参考資料1におけるエチレン-アクリル酸メチル共重合体の配合量を根拠に、甲第6号証の実施例3におけるエチレン-アクリル酸メチル共重合体の配合量を少なくすることが容易である旨を主張しているものと解される。
しかしながら、本件明細書の実施例3は、そもそも本件発明1の「T70が30gf以上、200gf以下」の範囲に含まれていないものであって、本件発明1の実施例には含まれない。
また、甲第6号証の段落【0136】には、「ヒートシーラント層(ヒートシール層)に密着させた電子部品(50個)を、65℃24時間保管し、電子部品が下になるように180°回転させたときの電子部品の貼り付き性を評価した。」と記載されているように、甲第6号証は、本件発明1の「プローブタック試験」とは異なる評価方法によって電子部品の貼り付き性を評価するのみであって、70℃におけるタック力:T70及び90℃におけるタック力:T90を調整するためにエチレン-アクリル酸メチル共重合体の配合量を少なくする動機付けは、なにもないというべきである。
したがって、甲第6号証及び参考文献1を参酌しても、申立人の意見を採用することはできない。
4.決定の予告において採用しなかった取消理由について
(1)本件発明1の発明特定事項は、本件訂正により「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT70としたとき、T70が30gf以上、200gf以下であり、 前記シーラント層におけるJISZ3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT90としたとき、T90が40gf以上、500gf以下であり、
T90/T70が、1.3以上、6以下であり、」と訂正された。
そして、本件発明1の「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験」は、令和2年12月4日に特許権者が意見書と同時に提出した乙第2号証において、「JIS Z3284-3:2014 ソルダーペースト-第3部:印刷性、粘度特性、だれ及び粘着性試験」に記載されているとおりであるから、明確である。
(2)本件発明2の「前記シーラント層におけるJISC0806-3に準拠した180°剥離強度」は、令和2年12月4日に特許権者が意見書と同時に提出した乙第3号証において、「JIS C0806-3:2014 自動実装部品の包装-第3部:表面実装部品の連続テープによる包装」に記載されているとおりであるから、明確である。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明1、2、5~10は、明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合する。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1、2、5~10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に適合するものであるから同法第113条第4号に該当せず、また、同法第29条第1項第3号の発明ではなく同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもないから同法第113条第2号にも該当しないので、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1、2、5~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により、請求項3、4に係る特許は削除されたため、請求項3、4に係る特許に対して申立人がした特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2020-700497