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特許異議申立

2024-700590

通蒸型パウチ

審判番号
2024-700590
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-223684外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7451982
請求日
2024年06月20日
審決日
2025年08月29日
公報発行日
2026年01月30日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-ZAA(B65D) / P1651.536-ZAA(B65D) / P1651.537-ZAA(B65D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条4項1号特許法113条2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7451982号発明「通蒸型パウチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7451982号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第7451982号の請求項1~6に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7451982号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和元年12月11日に出願され、令和6年3月11日にその特許権の設定登録がされ、令和6年3月19日に特許掲載公報が発行された。 本件特許の請求項1~6に係る特許についての特許異議申立人鈴木多香子(以下「申立人」という。)による異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年 6月20日 : 特許異議の申立て 同年11月28日付け: 取消理由通知書 令和7年 1月31日 : 特許権者による訂正の請求及び意見書の提 出 同年 5月20日付け: 取消理由通知書(決定の予告) 同年 7月18日 : 特許権者による訂正の請求(以下「本件訂 正請求」という。)及び意見書の提出 なお、令和7年1月31日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求は、「特許第7451982号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。また、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記開封部には、前記中間層に易開封線が形成されている」とあるのを「前記開封部には、前記中間層に易開封線が形成されており、前記易開封線が前記中間層のみに形成されている」と訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1の末尾に「通蒸型パウチ。」とあるのを「通蒸型パウチ(但し、通蒸型パウチが、少なくとも前面フィルムと、背面フィルムと、底面に折り込まれる底面フィルムと、からなり、左側面と右側面と底面との周縁部にシール部を有し、左右側面の一方に蒸気抜き部を有する袋状のフィルム製容器において、蒸気抜き部の底面側に底面とほぼ平行な開封部を有し、かつ、蒸気抜き部を有する一方の側面の蒸気抜き部下方底面側と、他方の側面の上方側に、幅広のシール部を有することを特徴とするフィルム製容器である場合を除く。)。」と訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。 2 一群の請求項 本件訂正請求は、訂正前の請求項2~6が訂正の対象である請求項1を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項〔1~6〕に対して請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1 訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、願書に添付された明細書の【0031】及び図面の【図1】に基づく「前記易開封線が前記中間層のみに形成されている」という発明特定事項を直列的に付加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2) 訂正事項2 訂正事項2に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1から「通蒸型パウチが、少なくとも前面フィルムと、背面フィルムと、底面に折り込まれる底面フィルムと、からなり、左側面と右側面と底面との周縁部にシール部を有し、左右側面の一方に蒸気抜き部を有する袋状のフィルム製容器において、蒸気抜き部の底面側に底面とほぼ平行な開封部を有し、かつ、蒸気抜き部を有する一方の側面の蒸気抜き部下方底面側と、他方の側面の上方側に、幅広のシール部を有することを特徴とするフィルム製容器である場合」を除く訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正請求により訂正された請求項1~6に係る発明(以下「本件発明○」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 対向する2枚の胴部材シートと、底面に折り込まれる底部材シートと、からなり、 左側面と右側面と底面との周縁をシールしてそれぞれシール部を形成し、さらに内容物を胴部材シートの上部から充填した後に前記上部を密封シールすることにより、内容物を収容する収容空間を有し、 左右側面のシール部の少なくとも一方に、加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための通蒸部と、前記通蒸部下方底面側に底面とほぼ平行な開封部と、を備える通蒸型パウチであって、 前記胴部材シートは、最外層、中間層、および、無延伸フィルムにより構成されるシーラント層をこの順に含み、 前記最外層が、無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されており、 前記中間層がポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されており、 前記開封部には、前記中間層に易開封線が形成されており、前記易開封線が前記中間層のみに形成されていることを特徴とする通蒸型パウチ(但し、通蒸型パウチが、少なくとも前面フィルムと、背面フィルムと、底面に折り込まれる底面フィルムと、からなり、左側面と右側面と底面との周縁部にシール部を有し、左右側面の一方に蒸気抜き部を有する袋状のフィルム製容器において、蒸気抜き部の底面側に底面とほぼ平行な開封部を有し、かつ、蒸気抜き部を有する一方の側面の蒸気抜き部下方底面側と、他方の側面の上方側に、幅広のシール部を有することを特徴とするフィルム製容器である場合を除く。)。 【請求項2】 前記易開封線は、レーザー加工によって、連続的あるいは間欠的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の通蒸型パウチ。 【請求項3】 前記左右側面のシール部の少なくとも一方にあって、前記通蒸部下方底面側にノッチを有し、かつ、前記ノッチは、その先端部が前記易開封線を延長した仮想線上に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の通蒸型パウチ。 【請求項4】 前記胴部材シートのシーラント層は、耐熱性と、幅方向の易引き裂き性を有する材料によって構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の通蒸型パウチ。 【請求項5】 前記シーラント層を構成する材料は無延伸ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の通蒸型パウチ。 【請求項6】 前記底部材シートが、前記対向する2枚の胴部材シートの間に折り込まれた後、ガセット部を有する形式で形成シールされ、底部が角底に成形された請求項1~5のいずれか一項に記載の通蒸型パウチ。」 第4 取消理由(決定の予告)の概要 令和7年5月20日付けで当審が通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 取消理由1 (進歩性)本件特許の請求項1~2、4~6に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に、甲第1号証に記載された技術、甲第2号証に記載された技術及び周知技術をそれぞれ適用することにより、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~2、4~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 取消理由2 (実施可能要件)本件特許の明細書は、当業者が請求項1~2、4~6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないため、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由3 (サポート要件)本件特許は、請求項1~2、4~6に係る発明の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由4 (明確性要件)本件特許は、請求項1~2、4~6に係る発明と発明の詳細な説明に開示された内容とに矛盾があり、その構成が明確に特定できないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 <証拠一覧> (申立人が提示した甲第1~4号証) 甲第1号証:特開2017-222369号公報 甲第2号証:特開2008-308183号公報 甲第3号証:特開2018-114995号公報 甲第4号証:特開2018-15906号公報 以下、順に「甲1」~「甲4」という。 (当審において職権で探知して引用した文献。以下「周知例1」~「周知例3」という。) 周知例1:実願昭62-40475号(実開昭63-147450号)のマイクロフィルム 周知例2:国際公開第2006/067880号 周知例3:特開2017-222370号公報 第5 当審の判断 当審は、上記第4での取消理由1及び2は解消していないと判断する。また、上記取消理由3及び4は解消したと判断する。 また、周知例4~6として、以下の文献を追加する。 周知例4:特開2019-199259号公報 周知例5:特開2019-137466号公報 周知例6:特開2018-127257号公報 取消理由1 (進歩性)本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 取消理由2 (実施可能要件)本件特許は、明細書の記載が下記2の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 1 特許法第29条第2項(進歩性)について (1) 甲号証等の記載及び引用発明 ア 甲3 (ア) 甲3記載事項 甲3には以下の記載がある(下線は当審で付した。「・・・」は省略を示す。以下、他の甲号証等も同様。)。 「【請求項1】 対向する第1シートおよび第2シートを含むシートと、内容物を収容可能な収容空間が前記第1シートと前記第2シートとの間に形成されるように前記シートをシールするシール部と、前記収容空間を開口する開口部と、前記開口部を閉鎖する閉鎖シール部の形成が予定されたシール予定部と、前記閉鎖シール部が形成された状態における前記収容空間の圧力の上昇により開口するように前記シートに形成された通蒸部と、前記閉鎖シール部が形成された状態における前記閉鎖シール部の切り取りをガイドする切取線とを含む蒸気抜きパウチであって、 前記シートは、第1延伸フィルムにより構成される最外層、第2延伸フィルムにより構成される中間層、および、無延伸フィルムにより構成される最内層を含み、 前記切取線は、前記最外層および前記中間層の両方に連続して切り込まれた部分が存在しないように前記最外層、前記中間層、および、前記最内層のうちの1層または2層に形成されている 蒸気抜きパウチ。」 「【請求項3】 前記切取線は前記最外層、前記中間層、および、前記最内層のうちの前記中間層だけに形成されている 請求項1に記載の蒸気抜きパウチ。」 「【請求項9】 前記最外層を構成する材料はポリエチレンテレフタレートであり、 前記中間層を構成する材料はナイロンであり、 前記最内層を構成する材料は無延伸ポリプロピレンである 請求項1~8のいずれか一項に記載の蒸気抜きパウチ。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 特許文献1に記載の蒸気抜きパウチが加熱されたことにともない収容空間の圧力が上昇した場合に、シート(101a、101b)のうちの引裂き誘導部(20)に相対的に強い応力が生じると考えられる。蒸気を通蒸部から適切に排出させるためには、引裂き誘導部(20)に強い応力が生じた場合でも引裂き誘導部(20)が裂けないことが好ましい。特許文献1では、収容空間の圧力の上昇にともない引裂き誘導部(20)に生じる応力について特に検討していない。このため、パウチの開口部を容易に開封でき、蒸気を適切に排出できる蒸気抜きパウチが提供されることが望まれる。」 「【0016】 (実施形態) 図1は、加熱に適した内容物Cの収容、および、内容物Cから発生した蒸気の排出が可能な蒸気抜きパウチ10の一例を示している。内容物Cは加熱されることにより水蒸気を発生する被加熱物である。内容物Cの一例は食品である。食品の一例はシチューおよびスープ等のように流動性を有する食品である。蒸気抜きパウチ10は内容物Cの品質を保ちながら長期間保存できるように構成されている。蒸気抜きパウチ10は種々の形状を取り得る。蒸気抜きパウチ10が取り得る形状の例は、平袋タイプ、スタンディングタイプ、ガゼットタイプ、および、ピラータイプである。図1に例示される蒸気抜きパウチ10の形状はスタンディングタイプである。以下では、蒸気抜きパウチ10の正面視における蒸気抜きパウチ10の左右方向を標準幅方向と称し、標準幅方向と直交する方向を標準高さ方向と称する。 【0017】 蒸気抜きパウチ10はシート20、シール部30、開口部40、ガイド部50、および、通蒸部60を含む。図1等のドットはシール部30を表している。シート20は第1シート21、第2シート22、および、底シート23を含む。第1シート21および第2シート22は内容物Cを収容する収容空間10Cが各シート21、22の間に形成されるように対向している。底シート23は第1シート21の底部21Aと第2シート22の底部22Aとの間を閉じるように各シート21、22の底部21A、22Aに配置されている。シート20の構成は任意に選択できる。第1例では、1枚のシートが折り曲げられることにより、対向する各シート21、22、および、各シート21、22の底部21A、22Aに配置された底シート23が形成される。第2例では、各シート21~23は個別に形成された3枚のシートである。」 「【0020】 最外層20Aは主に光沢、印刷適正、および、耐レトルト性に優れる。最外層20Aを構成する材料の一例はポリエチレンテレフタレートである。中間層20Bは主に耐レトルト性、防湿性、および、ガス遮断性に優れる。中間層20Bを構成する材料の一例はナイロンである。最内層20Cは耐レトルト性、ヒートシール性、および、耐衝撃性に優れる。最内層20Cを構成する材料の一例は直鎖状低密度ポリエチレンである。第1接着層20Dを構成する材料の一例はポリエステル系接着剤である。第2接着層20Eを構成する材料の一例はポリエステル系接着剤である。 【0021】 図1に示されるシール部30は、各シート21~23が分離しないように各シート21~23を接合している。一例では、シール部30は第1シート21の最内層20C、第2シート22の最内層20C、および、底シート23の最内層20Cを接合している。シール部30を形成する方法の一例はヒートシールである。正面視における蒸気抜きパウチ10の外郭形状は任意に選択できる。図1に示される例では、蒸気抜きパウチ10の外郭形状は長方形である。シート20はシール部30に囲まれた部分(以下「内方部24」という)とシール部30とに区分できる。収容空間10Cは第1シート21の内方部24と第2シート22の内方部24と底シート23の内方部24とに囲まれた空間であり、蒸気抜きパウチ10の外部と連通しないようにシール部30により閉じられている。 【0022】 シール部30は開口部40を閉鎖する閉鎖シール部31(以下では「第1シール部31」という)を含む。一例では、シール部30は第2シール部32、第3シール部33、および、第4シール部34をさらに含む。第1シール部31は標準高さ方向において内方部24の上側に設けられている。第2シール部32は標準高さ方向において内方部24の下側に設けられている。第3シール部33は標準幅方向において内方部24の右側または左側に設けられている。第4シール部34は標準幅方向において内方部24の左側または右側に設けられている。 【0023】 第1シール部31における内方部24側の縁である内縁31A、第2シール部32における内方部24側の縁である内縁32A、第3シール部33における内方部24側の縁である内縁33A、および第4シール部34における内方部24側の縁である内縁34Aは、内方部24の外郭を規定している。第1シール部31における内縁31Aとは反対側の縁である外縁31B、第2シール部32における内縁32Aとは反対側の縁である外縁32B、第3シール部33における内縁33Aとは反対側の縁である外縁33B、および、第4シール部34における内縁34Aとは反対側の縁である外縁34Bは、蒸気抜きパウチ10の外郭を規定している。 【0024】 各シール部31~34の幅は任意に選択できる。各シール部31~34の幅は各シール部31~34の中心線の法線における内縁31A~34Aと外縁31B~34Bとの間の長さである。各シール部31~34の中心線は内縁31A~34Aと外縁31B~34Bとの間を通過する仮想の線分である。各シール部31~34の幅が部位毎に異なる場合、例えば最大の幅、または、各シール部31~34のそれぞれにおける複数の部位の幅の平均がそのシール部の幅を代表する。」 「【0027】 ガイド部50は分離予定部10Bをパウチ本体10Aから分離する場合に各シート21、22が容易に切断されるようにパウチ本体10Aと分離予定部10Bとの間に形成されている。ガイド部50は切取線51およびノッチ52を含む。切取線51は各シール部33、34および各シート21、22の内方部24に形成されたミシン目の集合であり、直線状に形成されている。ノッチ52は、ノッチ52の先端部が切取線51を延長した仮想線上に位置するように第3シール部33および第4シール部34の少なくとも一方に形成される。図1では、第3シール部33および第4シール部34のそれぞれにノッチ52が形成された例を示している。 【0028】 蒸気抜きパウチ10は内容物Cを加熱するために加熱手段により加熱される。加熱手段の一例は電子レンジである。蒸気抜きパウチ10が加熱されることにともない内容物Cから水蒸気が発生する。閉鎖後の蒸気抜きパウチ10では収容空間10Cがシール部30により閉じられているため、水蒸気の発生にともない収容空間10Cの圧力が上昇する。通蒸部60は収容空間10Cの圧力の上昇にともない開口し、収容空間10Cの水蒸気を蒸気抜きパウチ10の外部に排出できるように構成されている。好ましい例では、通蒸部60は収容空間10Cの圧力が所定の圧力範囲内の圧力まで上昇した場合に開口するように構成される。通蒸部60は種々の形態を取り得る。第1例では、通蒸部60はシール部30の一部を構成する。第1例の具体例では、通蒸部60は第3シール部33および第4シール部34の少なくとも一方に設けられる。第2例では、通蒸部60はシール部30とは独立し、各シート21、22の内方部24に設けられる。第2例の具体例では、各シート21、22の内方部24に各シート21、22を貫通する孔(図示略)が形成される。収容空間10Cと孔とが連通しないように孔の周囲をシールする通蒸部60が各シート21、22の内方部24に形成される。 【0029】 図1では、通蒸部60が第4シール部34だけに設けられた第1例を示している。通蒸部60の形状は標準幅方向の外側から内側に凹む形状である。通蒸部60における標準幅方向の最も内側の部分である先端部61は、各シート21、22のうちの収容空間10Cの圧力が上昇した場合に強い応力集中が生じる場所に設けられている。収容空間10Cの圧力が所定の圧力範囲内の圧力まで上昇した場合、通蒸部60が開口する。具体的には、収容空間10Cの上昇にともない通蒸部60の先端部61において接合されている第1シート21と第2シート22とが剥離し、図4に示されるように収容空間10Cと蒸気抜きパウチ10の外部とを連通する蒸気抜き通路62が通蒸部60に形成される。通蒸部60が剥離する範囲は収容空間10Cの圧力の大きさに応じて異なる。収容空間10Cの圧力が高い場合、通蒸部60の根元の部分まで剥離が進行することもある。蒸気抜き通路62の通路面積は通蒸部60の剥離が進行するにつれて広くなる。通蒸部60が開口した場合、収容空間10Cの水蒸気が蒸気抜き通路62を通過して蒸気抜きパウチ10の外部に排出される。水蒸気が排出されることにより、収容空間10Cの圧力の上昇が抑えられ、蒸気抜きパウチ10の破裂が回避される。 【0030】 図3は開口部40が閉じられる前の蒸気抜きパウチ10(以下「閉鎖前の蒸気抜きパウチ10」という場合がある)である。閉鎖前の蒸気抜きパウチ10の開口部40から収容空間10Cに内容物Cが投入される。内容物Cが投入された後に第1シール部31の形成が予定されたシール予定部70にヒートシールが施されることにより、第1シール部31が形成され、図1に示される閉鎖後の蒸気抜きパウチ10が得られる。 【0031】 図6は分離予定部10Bがパウチ本体10Aから分離され、開口部40が開封された蒸気抜きパウチ10(以下「開封後の蒸気抜きパウチ10」という場合がある)を示している。閉鎖後の蒸気抜きパウチ10(図1参照)の開口部40を開封する場合、ノッチ52の先端部から各シート21、22が引き裂かれ、各シート21、22の引き裂きが切取線51に沿って進行するように各シート21、22に力がかけられる。分離予定部10Bがパウチ本体10Aから分離された場合、開口部40の全体が開封される。 【0032】 切取線51が形成されたガイド部50は、切取線51が形成されていない各シート21、22の他の部分よりも引裂強度が低い。このため、ガイド部50に対して切取線51に沿う方向に力が加えられた場合、各シート21、22が切取線51に沿って容易に引き裂かれる。切取線51は標準幅方向において不連続に形成された複数の切込51Aを含む。切取線51を形成する手段は例えばミシン目加工機である。」 「【0036】 第2グループは最外層20A、中間層20B、および、最内層20Cのうちの中間層20Bだけに切込51Aが形成される複数の形態を含む。図7(d)に示される第2グループの第1形態では、中間層20Bを貫通するように中間層20Bに切込51Aが形成される。図7(e)に示される第2グループの第2形態では、中間層20Bを貫通しないように、かつ、切込51Aの開口部51Bが中間層20Bにおける蒸気抜きパウチ10の外部側の面に開口するように中間層20Bに切込51Aが形成される。図7(f)に示される第2グループの第3形態では、中間層20Bを貫通しないように、かつ、切込51Aの開口部51Bが中間層20Bにおける蒸気抜きパウチ10の収容空間10C側の面に開口するように中間層20Bに切込51Aが形成される。」 「【0064】 (実施例) 本願発明者は実施例および比較例の試料を用いて、ガイド部50の構成と蒸気抜きパウチ10の各種性能との関係を確認する第1試験~第3試験、および、ガイド部50の構成がシート20の製造に及ぼす影響を確認する第4試験を実施した。図11は第1試験~第4試験の結果を示す。以下の説明では、説明の便宜上、比較例の試料における実施例の試料と共通する部分について同一の符号を付している。実施例の試料は実施形態に関する蒸気抜きパウチ10である。比較例の試料は実施例の蒸気抜きパウチ10とは異なる構成を備える蒸気抜きパウチ10である。 【0065】 各比較例の蒸気抜きパウチ10は次の点において実施例の蒸気抜きパウチ10と相違し、その他の点において実施例の蒸気抜きパウチ10と同じ構成を備える。比較例1および比較例2の蒸気抜きパウチ10は最外層20A、中間層20B、および、最内層20Cのいずれの層にも切込51Aが形成されていない。比較例2の蒸気抜きパウチ10の各シート21、22の中間層20Bを構成する材料は直進カット性を有する二軸延伸ナイロンである。比較例3の蒸気抜きパウチ10の切取線51は最外層20Aおよび中間層20Bをそれぞれ貫通する切込51Aを含む。最内層20Cには切込51Aが形成されていない。 比較例4の蒸気抜きパウチ10の切取線51は最外層20A、中間層20B、および、最内層20Cに形成された切込51Aを含む。最外層20Aおよび中間層20Bに形成された切込51Aは最外層20Aおよび中間層20Bをそれぞれ貫通する。最内層20Cに形成された切込51Aは最内層20Cを貫通しないように、かつ、開口部51Bが最内層20Cにおける蒸気抜きパウチ10の外部側の面に開口するように最内層20Cに形成されている。 ・・・ 【0068】 第1試験では、閉鎖後の蒸気抜きパウチ10を加熱手段により加熱した場合にガイド部50が破断することなく水蒸気が収容空間10Cから蒸気抜きパウチ10の外部に適切に排出されたか否かを確認した。具体的には、閉鎖後の蒸気抜きパウチ10を電子レンジにより加熱し、加熱が終了するまでにガイド部50が破断した回数を測定した。ガイド部50が破断した回数が規定回数未満である場合に水蒸気が適切に排出されたと評価し、ガイド部50が破断した回数が規定回数以上である場合に水蒸気が適切に排出されていないと評価した。試行回数は50回である。規定回数は1回である。内容物Cは水200gである。電子レンジの出力は1800Wである。加熱時間は1.5分である。図11の第1試験に関する「○」の表記は50回の試行においてガイド部50が破断した回数が0回であることを示している。図11の第1試験に関する「×」の表記は50回の試行においてガイド部50が破断した回数が1回以上であることを示している。実施例の試料によれば、閉鎖後の蒸気抜きパウチ10が加熱された場合にガイド部50が破断しないことが確認された。」 「【図1】 [図:0001431106000001.jpg] 【図2】 [図:0001431106000002.jpg] 」 「【図6】 [図:0001431106000003.jpg] 【図7】 [図:0001431106000004.jpg] 【図8】 [図:0001431106000005.jpg] 【図9】 [図:0001431106000006.jpg] 」 (イ) 引用発明 上記(ア)の【図1】からはガイド部50の切取線51が底面とほぼ平行に設けられており、ガイド部50は通蒸部60の上方に配置されている事項が看取される。 上記(ア)の【図7】の第2グループ列から、中間層20Bだけに切込51Aが形成されている形態が看取される。 そうすると、上記(ア)から、甲3には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「対向する第1シートおよび第2シートを含むシートと、第1シートの底部と第2シートの底部との間を閉じるように各シートの底部に配置されている底シートと、からなり、 内容物を収容可能な収容空間が前記第1シートと前記第2シートとの間に形成されるように前記シートをシールするシール部であって、標準幅方向において内方部の右側及び左側に設けられている第3シール部及び第4シール部と、標準高さ方向において内方部の下側に設けられている第2シール部と、標準高さ方向において内方部の上側に設けられて内容物が投入された後にヒートシールが施されることにより開口部を閉鎖する閉鎖シール部である第1シール部と、からなるシール部と、 第4シール部に設けられ、加熱されることにともない発生する収容空間の水蒸気を外部に排出できる通蒸部と、前記通蒸部より上方で底面とほぼ平行に設けられた切取線を含むガイド部と、を備える蒸気抜きパウチであって、 前記シートは、最外層、中間層、および、無延伸フィルムにより構成されてヒートシールされる最内層を含み、 前記最外層を構成する材料はポリエチレンテレフタレートであり、 前記中間層を構成する材料は延伸ナイロンであり、 前記切取線は前記最外層、前記中間層、および、前記最内層のうちの前記中間層だけに形成されており、 前記切取線はミシン目の集合であって、直線状に形成されていて、標準幅方向において不連続に形成された複数の切込であり、 ノッチは、ノッチの先端部が切取線を延長した仮想線上に位置するように第3シール部および第4シール部の少なくとも一方に形成され、 前記シートの前記最内層は、耐レトルト性に優れ、 前記最内層を構成する材料は無延伸ポリプロピレンであり、 ガゼットタイプである、蒸気抜きパウチ。」 イ 甲1 (ア) 甲1記載事項 甲1には以下の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、フィルムで構成された食品用の容器であって、底面に折り込み部を有した自立性を有し、電子レンジ等で加熱調理すると共に、開封し、容器を器としてそのまま食すことができるフィルム製容器に関する。」 「【0005】 この電子レンジ用包装袋は、電子レンジで加熱された時に、内部圧力が上昇し、確実にコの字状シール部から剥離し、コの字状シール部で囲まれた未シール部の切込み、または、切欠で形成される通気孔が蒸気抜きの働きをして、一定の内部圧力を維持して調理することができる。 しかしながら、この通気孔周辺は非常に高温になるが、広幅シール部を少なくとも一つ設けるだけであると、フィルム製容器は傾きやすい。もし、通気孔が最も高い位置に保てないと、通気孔から内容物が噴出し、大きな火傷を負いやすいばかりでなく、容器があった周囲が汚れてしまうなどの問題が発生する恐れがあった。 また、加熱調理後、電子レンジ用の包装袋を開封するには、ノッチを胴部シール部の縁に形成して、このノッチを介して引き裂いて開封するとしているが、図で示されたノッチは、コの字状シール部よりも袋の上端側に記載されている。この場合、開口部はコの字状シール部により狭められて、内容物を取り出しにくくしていると共に、切込み、または、切欠によって切り欠きから内容物が漏れる恐れがある。 その為、加熱調理した内容物は、加熱調理後、他の容器に移すなどの対応が必要だった。」 「【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明のフィルム製容器は、 少なくとも前面フィルムと、背面フィルムと、底面に折り込まれる底面フィルムと、からなり、 左側面と右側面と底面との周縁部にシール部を有し、 左右側面の一方に蒸気抜き部を有する袋状のフィルム製容器において、 蒸気抜き部の底面側に底面とほぼ平行な開封部を有し、 かつ、蒸気抜き部を有する一方の側面の蒸気抜き部下方底面側と、他方の側面の上方側に、幅広のシール部を有することを特徴とするフィルム製容器である。 【発明の効果】 【0009】 本発明のフィルム製容器は、蒸気抜き部の底面側と、蒸気抜き部反対側側面上方の左右両方に広幅のシール部を有するので、容器を傾けないように広幅シール部でつかむことができる。その為、蒸気抜き部から内容物が噴出したりする恐れも無く、加熱した電子レンジ等から安心してフィルム製容器を取り出すことができる。 また、底面側に底面とほぼ平行な開封部を有するので、大きく開口でき、わざわざ、他の容器に移すことも無く、そのまま、内容物が冷えない内に食べることができる。」 「【0012】 そして、前面フィルム1と背面フィルム2は、互いに、左側面シール部61と右側面シール部62が融着されている。 また、底側には、前面・背面方向に折り畳まれた底面フィルム3があって、前面フィルム1と底面フィルム3が互いに、左側面シール部61と右側面シール部62と前底面シール部31などの周縁部でシールされ、底面形状を形成している。 同じように、背面フィルム2と底面フィルム3が互いに、左側面シール部61と右側面シール部62と背底面シール部32などの周縁部でシールされ、底面形状を形成している。 折り畳まれた底面フィルム3の中央を広げると、底面近傍の前面フィルム1と背面フィルム2が離れ、底面30を形成する。」 「【0015】 さらに、左側面シール部61と右側面シール部62の外側周縁両端において、蒸気抜き部5より底面側で、かつ、底面に平行に左ノッチ71と右ノッチ72を有している。 この左ノッチ71と右ノッチ72を直線で結ぶ線状に脆弱線73が走っていると、より確実にフィルム製容器を開封しやすい。 脆弱線73は、炭酸ガスレーザーを走査して基材フィルムを部分的に脆弱化したり、ビク刃などで、基材フィルムを半抜きにしたりして、引き裂きし易くすることで、対応できる。」 「【0022】 フィルム製容器内部の蒸気が完全に放出されると、内部の気圧は外気圧と同じになり、フィルム製容器はしぼむ。そして、底面に平行な左ノッチ71と右ノッチ72との間を、いずれか一方のノッチを基点にして前面フィルムとを背面フィルムを引き裂き、開封することができる。脆弱線73が加工されているようであれば、引き裂かれる破断線がずれないで、脆弱線に沿って破断しやすい。 【0023】 図3は、以上のように左ノッチ71から右ノッチ72にかけて開封部70を引き裂いたフィルム製容器の斜視図である。 開封部70を引き裂かれた本発明のフィルム製容器は、開封部70の内側に蒸気抜き部がないので、大きく開口し、さえぎる形状がない。さらに、開封部70近傍は、未シール部である収納部が外側に膨らんだ形状となっているので、お椀のように先端が一番広がる形状になっている。その為、非常に内容物を取り出しやすい形状となっている。 特に、左下融着部610と右下融着部620によって、底面周縁部の腰を強く、かつ、安定した自立性を確保しやすくなっている。 さらに、開封後も、蒸気抜き部があった側面には下広幅シール部622があるので、下広幅シール部622をつかんでいれば、持つ手も熱くならず、内容物を取り出しやすい。」 「【0026】 また、開封部の左右のノッチの間は、イットリウム・アルミニウム・ガーネットを用いた固体レーザーであるYAGレーザーなどのレーザー光を使用して、レーザー照射加工を行なって、脆弱化して、より直線状に引き裂き易くしても良い。 また、フィルム製容器の左右方向に基材の延伸をより強くしたフィルムを使用しても良い。」 「【図2】 [図:0001431106000007.jpg] 【図3】 [図:0001431106000008.jpg] 」 (イ) 甲1技術 上記(ア)を踏まえると、甲1には以下の技術(以下「甲1技術」という。)が記載されている。 「電子レンジで加熱調理され、開封部と蒸気抜き部を有する袋状のフィルム製容器において、利便性を高めるために、従来、蒸気抜き部の上方にあった開封部を、蒸気抜き部の底面側に配置する技術。」 ウ 甲2 (ア) 甲2記載事項 甲2には以下の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、電子レンジ加熱用包装食品に関し、詳しくは、袋入りのまま食品を電子レンジにて加熱した場合に、包装袋に穴が開くことがない電子レンジ加熱用包装食品に関する。」 「【0003】 従来、袋入りのまま食品を電子レンジにて加熱することができる電子レンジ加熱用包装袋が知られている。このような電子レンジ加熱用包装袋は、従来、多層フィルム構造体により構成されるものであり、最外層(基材層)としてポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、中間層として、例えば、二軸延伸ナイロンフィルム(ONy)や、ONy表面にアルミナ、シリカ等を蒸着したセラミック蒸着ONyフィルム等のナイロンフィルム、および最内層となるシーラント層として、ヒートシール性のある、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、直鎖低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)、低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)、高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)等のポリオレフィンフィルムを積層してなるもの、特に、PET/ONy/CPPの積層構成のものが一般的に用いられている。 【0004】 しかしながら、例えば内在する食品が、糖分を多く含んだり、食品中に粒胡椒や挽肉のように粒状のものが存在したりするような食品である場合には、当該食品を収容して密封した包装袋を、そのまま電子レンジにて加熱した場合に、包装袋に穴が開いてしまう場合がみられる。」 「【0008】 本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねる中で、特に、粘度が3000~20000mPa・sでかつブリックス(Brix)度が10~35%である食品、または粘度が3000~20000mPa・sでかつ粒径が1~5mmの固形物を1質量%以上含有する食品を、従来の包装袋、例えばPET/ONy/CPPの積層構成からなる包装袋に包装した場合に、電子レンジ加熱による包装袋の穴開きが顕著となり、その穴開きが中層部分のONy(ナイロン層)で生じることが判明した。」 「【0010】 すなわち、本発明は、(1)バリアー層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材層、(2)当該基材層の内面側に積層したポリエチレンテレフタレートフィルムからなる中間層、(3)当該中間層に積層したヒートシール性を有するポリオレフィンフィルムからなるシーラント層の3層からなるラミネートフィルムから形成される包装袋に、食品を密封包装してなる、電子レンジ加熱用包装食品を提供するものである。 また、本発明は、(1)バリアー層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材層、(2)当該基材層の内面側に積層したヒートシール性を有するポリオレフィンフィルムからなるシーラント層の2層からなるラミネートフィルムから形成される包装袋に、食品を密封包装してなる、電子レンジ加熱用包装食品を提供するものである。」 「【0013】 上記基材層としては、アルミナ蒸着PET、シリカ蒸着PET等のセラミック蒸着PET、バリア樹脂コートPET等が挙げられるが、一般的に食品用包材に使用できるものであれば特に限定されるものではない。基材層の厚みは、バリアー層が好ましくは0.003~5μm、より好ましくは0.005~1μm程度で、PET層が好ましくは7~25μm、より好ましくは9~16μm程度である。」 (イ) 甲2技術 上記(ア)を踏まえると、甲2には以下の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されている。 「電子レンジで加熱調理される包装袋において、内容物である食品によっては、従来一般的に用いられているPET/ONy/CPP(ポリエチレンテレフタレートフィルム/延伸ナイロンフィルム/無延伸ポリプロピレンフィルム)では加熱時に穴が空いてしまう課題を解決するために、セラミック蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材層、当該基材層の内面側に積層したポリエチレンテレフタレートフィルムからなる中間層、当該中間層に積層したヒートシール性を有する無延伸ポリプロピレンからなるシーラント層の3層からなるラミネートフィルムから形成される包装袋とする技術。」 エ 周知例3(特開2017-222370号公報) 周知例3には以下の記載がある。 「【0026】 また、開封部の左右の開封開始部の間は、炭酸ガスレーザーを走査して基材フィルムを部分的に脆弱化したり、ビク刃などで、基材フィルムを半抜きにしたりして、より直線状に引き裂きし易くしても良い。 また、フィルム製容器の左右方向に基材の延伸をより強くしたフィルムを使用しても良い。」 「【図2】 [図:0001431106000009.jpg] 」 オ 周知例4(特開2019-199259号公報) 周知例4には以下の記載がある。 「【発明を実施するための形態】 【0012】 本発明のスタンディングパウチの実施形態について、図で説明する。 図1は、本発明に係るスタンディングパウチ1を示す正面図である。 スタンディングパウチ1は、前フィルム2と後フィルム3とのシーラント面を向かい合わせ、周囲に天シール部11、左側シール部12、右側シール部13、および底部にシーラント層を表側にして折り曲げた底フィルム4を前フィルム2と後フィルム3との間に挟んでガゼットとした底シール部14から構成されている。 このスタンディングパウチは、レトルトによって加工するためのパウチである為、前フィルムと後フィルムとのシーラント層が、無延伸ポリプロピレン樹脂層から構成するシーラントで形成しておく。 【0013】 左側シール部12、又は、右側シール部13の上方近傍に、蒸気抜き部15が設けられている。図1では蒸気抜き部15が右側シール部13の開封開始点より上方に設けられている。 蒸気抜き部15は、パウチが電子レンジなどによって高周波加熱され、パウチ内部が高温になるに連れ、内容物が持つ水分等が水蒸気になって、パウチ内部の圧力が上昇した時に、パウチが破裂しないように、一定の内圧を保つように剥離して、発生した蒸気を逃がす弁の機能を果たすものである。 【0014】 左側シール部12に左易開封開始点51、右側シール部13に右易開封開始点52を有している。 左易開封開始点51と右易開封開始点52との間には、破断容易な脆弱線によって形成することもできる。 例えば、レーザー光を走査したり、ビク刃やロータリー刃でハーフカットをしたりしても良い。また、前フィルム、後フィルムを引き裂き性を向上させた一軸延伸フィルムを含む積層シートにすることよって形成しても良い。 ハーフカットにする場合には、2軸延伸フィルムなどの基材に切れ目が入るが、少なくともシーラント層には刃が入っていない状態に加工する。」 「【図1】 [図:0001431106000010.jpg] ・・・ 【図3】 [図:0001431106000011.jpg] 」 カ 周知例5(特開2019-137466号公報) 周知例5には以下の記載がある。 「【0024】 第1側部シール部13a、第2側部シール部14a、蒸気抜きシール部20a及び上部シール部は、第1フィルム15の内面と第2フィルム16の内面とを接合することによって構成されるシール部である。・・・」 「【0032】 第1部材及び第2部材 ・・・ 【0033】 第1部材31は、第1接合部31aを含むベースフィルム31cと、第1嵌合部31b とを有する。・・・ 【0034】 第2部材32は、第2接合部32aと第2嵌合部32bとを有する。・・・」 「【0042】 破断機構 次に、破断機構33について説明する。破断機構33は、第1フィルム15を破断させて上述の空間19に連通する開口部を第1フィルム15に形成するための構成要素である。図1A及び図2に示すように、破断機構33は、第1接合部31aと第2接合部32aとの間の位置において第1フィルム15を破断させ、開口部を形成するための構成要素である。」 「【0061】 (第1の変形例) 上述の実施の形態においては、蒸気抜き機構20が、第1部材31及び第2部材32よりも下部12側に設けられている袋10について説明した。しかしながら、これに限られることはなく、図11に示すように、蒸気抜き機構20が、第1部材31及び第2部材32よりも上部11側に設けられていてもよい。 【0062】 (第2の変形例) ・・・ 【0063】 上述の蒸気抜き機構20は、図12に示すように、第1部材31及び第2部材32よりも上部11側に設けられていてもよい。また、図13に示すように、第1部材31及び第2部材32よりも下部12側に設けられていてもよい。」 「【図11】 [図:0001431106000012.jpg] 【図12】 [図:0001431106000013.jpg] 【図13】 [図:0001431106000014.jpg] 」 キ 周知例6(特開2018-127257号公報) 周知例6には以下の記載がある。 「【課題を解決するための手段】 【0006】 上記課題を解決するため、本発明は、蒸通機構を備え、底部ガセット部を有するパウチであって、表面フィルムと、裏面フィルムと、前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの間に位置する底面フィルムと、を有し、前記蒸通機構より下方に開封手段が設けられていることを特徴とする電子レンジ用パウチを提供する。」 「【0015】 (各シール部) 実施形態の電子レンジ用パウチは、図1に示すように、側部シール部5aと、底部シール部と、を備え、上部4に開口部15が形成されている。側部シール部5aは、表面フィルム1と裏面フィルム2がシールされて接合されたものである。蒸通機構10に近い側(図1では蒸通機構10に接している側)の側部シール部5aを第1側部シール部5aaと称し、蒸通機構10から遠い側の側部シール部5aを第2側部シール部5abとも称する。図1に示すように、第1側部シール部5aaは、蒸通機構10の上端より上側のシール幅W2を蒸通機構10の下端より下側のシール幅W1より大きくしてもよい。また、図1に示すように、第2側部シール部5abは、蒸通機構10の下端より上側のシール幅W5を蒸通機構10の下端より下側のシール幅W4より大きくしてもよい。シール幅W1、シール幅W4は、5mm以上8mm以下とすることができ、シール幅W2、シール幅W5は、8mm以上15mm以下とすることができる。なお、シール幅は、シール部が延びる方向と直交する方向における幅である。」 「【0028】 (開封手段) 図1に示すように、開封手段18は、蒸通機構10より下方であって、且つ、折込部3aより上方に設けられている。図1では、第1側部シール部5aaおよび第2側部シール部5abに開封手段18を設けた例が示されているが、どちらか一方の側部シール部5aに設けるようにしてもよい。例えば、第2側部シール部5abのみに開封手段18を設けるようにしてもよい。電子レンジで加熱直後において蒸通機構10周辺は熱くなっているため、使用者がより安全に開封することができる。なお、開封手段18は、蒸気抜けした後、内容物の上面よりも上方となるように設けられる。 【0029】 また、図1の例では、開封手段18として、側部シール部5aの外縁を切り欠くように切り欠きを設ける例が示されているが、開封手段18は、切り込みであってもよいし、フィルムの一部または全部を貫通する傷痕群であってもよい。あるいは、開封手段18は、第1側部シール部5aaから第2側部シール部5abに向かって延びるハーフカット線であってもよい。ハーフカット線は、連続的に延びる線であってもよいし、断続的に延びる線であってもよい。また、ハーフカット線は、パウチの一方の側縁から他方の側縁に至るよう設けてもよい。」 「【図1】 [図:0001431106000015.jpg] 」 ク 周知技術 (ア) 周知技術1 上記オのとおり、周知例4には蒸気抜き部15を右側シール部13の開封開始点より上方に設ける事項(【0013】及び【図1】、【図3】)が記載されているが、【図1】、【図3】から看取されるように、蒸気抜き部15を有する一方の側面となる右側シール部13の蒸気抜き部15下方底面側と、他方の側面となる左側シール部12の上方側は、幅広のシール部ではない。 上記カのとおり、周知例5には、蒸気抜き機構20を、破断機構33をその間に備える第1部材31及び第2部材32よりも上部11側に設ける事項(【0061】~【0062】及び【図11】、【図13】)が記載されているが、【図11】及び【図13】から看取されるように、蒸気抜き機構20を有する一方の側面となる第1側部シール部13aの蒸気抜き機構20下方底面側と、他方の側面となる第2側部シール部14aの上方側は、幅広のシール部ではない(当審注:周知例5の【0062】における図12及び図13についての記載と【図12】及び【図13】は蒸気抜き機構20と破断機構33をその間に備える第1部材31及び第2部材32との位置関係が逆となっており、誤記と考えられるが、蒸気抜き機構20と破断機構33との上下関係について両方の例が記載されていることから、周知例5における周知技術2の認定を左右するものではない。)。 上記キのとおり、周知例6には蒸通機構10より下方に開封手段18を設ける事項(【0025】及び【図1】)が記載されているが、蒸通機構10に近い側の第1側部シール部5aa及び蒸通機構10から遠い側の第2側部シール部5abのそれぞれにおいて、蒸通機構10の上端より上側のシール幅W2及びW5を蒸通機構10の下端より下側のシール幅W1及びW4より大きくしているから(【0015】)、【図1】からも看取されるように、蒸通機構10を有する一方の側面となる第1側部シール部5aaの蒸通機構10下方底面側と、他方の側面となる第2側部シール部5abの上方側は、幅広のシール部ではない。 以上を総合すると、次の事項は当業者にとって従来から周知の技術的事項(以下「周知技術1」という。)である。 「側面シール部の幅に関係なく、蒸気抜き部下方底面側に開封部を設けること。」 (イ) 周知技術2 上記イ(ア)の甲1【0015】や【0026】、上記エの周知例3【0026】、及び上記オの周知例4【0014】に、レーザー加工でパウチの脆弱線を設ける事項が記載されていることからみて、次の事項は、従来から当業者にとって周知の技術的事項(以下「周知技術2」という。)である。 「パウチにおける脆弱部の加工をレーザーで行うこと。」 (2) 本件発明1 ア 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 引用発明における「対向する第1シートおよび第2シート」は、本件発明1における「対向する2枚の胴部材シート」に相当する。 引用発明における「第1シートの底部と第2シートの底部との間を閉じるように各シートの底部に配置されている底シート」は本件発明1における「底面に折り込まれる底部材シート」と対比して、折り込まれるかどうかはさておき、「底面に配置されている底部材シート」に限って一致する。 引用発明における「内容物を収容可能な収容空間」は、本件発明1の「内容物を収容する収容空間」に相当する。 引用発明における「内容物を収容可能な収容空間が前記第1シートと前記第2シートとの間に形成されるように前記シートをシールするシール部であって、標準幅方向において内方部の右側及び左側に設けられている第3シール部及び第4シール部と、標準高さ方向において内方部の下側に設けられている第2シール部と」を形成する事項は、本件発明1における「左側面と右側面と底面との周縁をシールしてそれぞれシール部を形成」する事項に相当する。 引用発明における「内容物を収容可能な収容空間が前記第1シートと前記第2シートとの間に形成されるように前記シートをシールするシール部であって、」「標準高さ方向において内方部の上側に設けられて内容物が投入された後にヒートシールが施されることにより開口部を閉鎖する閉鎖シール部である第1シール部」を形成する事項は、本件発明1における「内容物を胴部材シートの上部から充填した後に前記上部を密封シールする」事項に相当する。 引用発明の「第4シール部」は「標準幅方向において内方部の右側及び左側」のいずれかに設けられているものであり、「標準幅方向において内方部の右側及び左側」は、本件発明1の「左右側面のシール部」に相当するから、引用発明における「第4シール部に設けられ、加熱されることにともない発生する収容空間の水蒸気を外部に排出できる通蒸部」は、本件発明1における「左右側面のシール部の少なくとも一方に、加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための通蒸部」に相当する。 引用発明における「前記通蒸部より上方で底面とほぼ平行に設けられた切取線を含むガイド部」は、本件発明1における「前記通蒸部下方底面側に底面とほぼ平行な開封部」と対比して、通蒸部との位置関係はさておき、「底面とほぼ平行な開封部」である限りにおいて一致する。 引用発明における「蒸気抜きパウチ」は、本件発明1における「通蒸型パウチ」に相当する。 引用発明における「前記シート」は「対向する第1シートおよび第2シートを含むシート」であって「底シート」とは異なるから、本件発明1における「前記胴部材シート」といえる。また、引用発明の「無延伸フィルムにより構成されてヒートシールされる最内層」はヒートシールされている点で、本件発明1の「無延伸フィルムにより構成されるシーラント層」に相当する。そうすると、引用発明の「前記シートは、最外層、中間層、および、無延伸フィルムにより構成されてヒートシールされる最内層を含み」という事項は、本件発明1の「前記胴部材シートは、最外層、中間層、および、無延伸フィルムにより構成されるシーラント層をこの順に含み」という事項に相当する。 引用発明の「切取線」は本件発明1の「易開封線」に相当するから、引用発明における「前記切取線は前記最外層、前記中間層、および、前記最内層のうちの前記中間層だけに形成されて」いる事項は、本件発明1における「前記開封部には、前記中間層に易開封線が形成されており、前記易開封線は前記中間層のみに形成されている」という事項に相当する。 引用発明の「第3シール部および第4シール部」は、甲3に通蒸部の高さを基準にその上方と下方とでシール幅を変化させる旨の明示的な記載がなく、甲3の図1等から看取される構成を踏まえても、通蒸部付近の上下で同じ程度のシール幅のものであるから、引用発明は、本件発明1における「(但し、通蒸型パウチが、少なくとも前面フィルムと、背面フィルムと、底面に折り込まれる底面フィルムと、からなり、左側面と右側面と底面との周縁部にシール部を有し、左右側面の一方に蒸気抜き部を有する袋状のフィルム製容器において、蒸気抜き部の底面側に底面とほぼ平行な開封部を有し、かつ、蒸気抜き部を有する一方の側面の蒸気抜き部下方底面側と、他方の側面の上方側に、幅広のシール部を有することを特徴とするフィルム製容器である場合を除く。)」という事項で除かれる対象ではない。 してみると、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点1> 「対向する2枚の胴部材シートと、底面に配置される底部材シートと、からなり、 左側面と右側面と底面との周縁をシールしてそれぞれシール部を形成し、さらに内容物を胴部材シートの上部から充填した後に前記上部を密封シールすることにより、内容物を収容する収容空間を有し、 左右側面のシール部の少なくとも一方に、加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための通蒸部と、底面とほぼ平行な開封部と、を備える通蒸型パウチであって、 前記胴部材シートは、最外層、中間層、および、無延伸フィルムにより構成されるシーラント層をこの順に含み、 前記開封部には、前記中間層に易開封線が形成されており、前記易開封線が前記中間層のみに形成されている通蒸型パウチ(但し、通蒸型パウチが、少なくとも前面フィルムと、背面フィルムと、底面に折り込まれる底面フィルムと、からなり、左側面と右側面と底面との周縁部にシール部を有し、左右側面の一方に蒸気抜き部を有する袋状のフィルム製容器において、蒸気抜き部の底面側に底面とほぼ平行な開封部を有し、かつ、蒸気抜き部を有する一方の側面の蒸気抜き部下方底面側と、他方の側面の上方側に、幅広のシール部を有することを特徴とするフィルム製容器である場合を除く。)。」 <相違点1> 底部材シートに関し、本件発明1は底部材シートが「底面に折り込まれる」ものであるのに対し、引用発明は底シートが折り込まれるものであるかどうかが明示的に特定されていない点。 <相違点2> 開封部と通蒸部との位置関係に関し、本件発明1は「前記通蒸部下方底面側に」開封部を備えているのに対し、引用発明は通蒸部の上方に切取線を含むガイド部を備えている点。 <相違点3> 最外層及び中間層の材質に関し、本件発明1は「前記最外層が、無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されており、前記中間層がポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されて」いるのに対し、引用発明は最外層を構成する材料がポリエチレンテレフタレートであるものの無機薄膜が蒸着されておらず、中間層の材質も異なる点。 イ 判断 以下、上記相違点1~3について検討する。 (ア) 相違点1について 対向する2枚の胴部材シートと、底面に配置される底部材シートとからなり、周縁部をシールして形成されるパウチにおいて、底部材シートが底面で折り曲げられているのは技術常識(明示的に記載されている事項が必要であれば、上記(1)イ(ア)における甲1の【0001】、【0008】、【0012】を参照されたい。)であるし、上記(1)ア(ア)における甲3の【0016】には蒸気抜きパウチ10が取り得る形状の例として「ガゼットタイプ」が記載されている。そうすると、引用発明において、底シートが折り込まれるものとし、上記相違点1に係る本件発明1の構成にすることは、当業者が容易になし得たことである。 (イ) 相違点2について 上記(1)イ(イ)のとおり、甲1には、電子レンジで加熱調理され、開封部と蒸気抜き部を有する袋状のフィルム製容器において、利便性を高めるために、従来、蒸気抜き部の上方にあった開封部を、蒸気抜き部の底面側に配置する技術(「甲1技術」)が記載されている。 ここで、甲1の【0005】(上記(1)イ(ア)参照。)には「広幅シール部を少なくとも一つ設けるだけであると、フィルム製容器は傾きやすい」という電子レンジ加熱直後における開封前の容器保持に関する課題と、「ノッチは、コの字状シール部よりも袋の上端側に記載されている。この場合、開口部はコの字状シール部により狭められて、内容物を取り出しにくくしていると共に、切込み、または、切欠によって切り欠きから内容物が漏れる恐れがある。」という開封に関する課題とが記載されているところ、これらの課題はそれぞれ独立した別意のものと理解される。また、甲1の【0009】(上記(1)イ(ア)参照。)には「蒸気抜き部の底面側と、蒸気抜き部反対側側面上方の左右両方に広幅のシール部を有するので、容器を傾けないように広幅シール部でつかむことができる。」という効果と、「底面側に底面とほぼ平行な開封部を有するので、大きく開口でき、わざわざ、他の容器に移すことも無く、そのまま、内容物が冷えない内に食べることができる。」という効果が分かれて記載されているところ、これらも別意のものと理解できる。そうすると、「左右両方に広幅のシール部を有する」という事項は、上記甲1技術とは別の課題に対する構成であり、甲1技術と一体不可分の構成ではない。 また、開封部と蒸気抜き部との配置における上下関係がシール部幅に依存しないことは、上記甲1技術と同様に、側面シール部の幅に関係なく、蒸気抜き部下方底面側に開封部を設ける周知技術1からも明らかである。 そして、引用発明と甲1技術や周知技術1とは、ともに電子レンジで加熱調理され、開封部と蒸気抜き部を有する袋状のフィルム製容器という点で同一の技術分野に属し、開封部に関し、底面とほぼ平行に線状の脆弱部分を設けているという点でも共通する。 利便性や機能性を高めることは周知の課題であり、引用発明にも内在する課題であるから、引用発明において甲1技術や周知技術1を適用することで、引用発明の「切取線を含むガイド部」を通蒸部の下方となる配置とし、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 なお、甲1技術は上述のとおり、シール幅を変化させる事項は含んでいないから、引用発明に甲1技術を適用しても、蒸気抜き部を有する一方の側面の蒸気抜き部下方底面側と、他方の側面の上方側に、幅広のシール部を備えること、すなわち本件発明1で除かれる構成にはならない。 (ウ) 相違点3について 上記(1)ウ(イ)のとおり、甲2には、電子レンジで加熱調理される包装袋において、内容物である食品によっては、従来一般的に用いられているPET/ONy/CPP(ポリエチレンテレフタレートフィルム/延伸ナイロンフィルム/無延伸ポリプロピレンフィルム)では加熱時に穴が空いてしまう課題を解決するために、セラミック蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材層、当該基材層の内面側に積層したポリエチレンテレフタレートフィルムからなる中間層、当該中間層に積層したヒートシール性を有する無延伸ポリプロピレンフィルムからなるシーラント層の3層からなるラミネートフィルムから形成される包装袋とする技術(「甲2技術」という。)が記載されている。 引用発明と甲2技術とは、ともにシチュー等の食品を内容物とし、電子レンジで加熱調理される包装袋という点で同一の技術分野に属する。 そして、包装容器において、破損を避けることは周知の課題であって、引用発明においても内在する課題であるから、層構成がPET/ONy/CPP(ポリエチレンテレフタレートフィルム/延伸ナイロンフィルム/無延伸ポリプロピレンフィルム)となっている引用発明において、甲2技術を適用して、最外層をセラミック蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、中間層をポリエチレンテレフタレートフィルムとすることで、上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。 (エ)本件発明1の効果について 本件発明1の効果は、引用発明、甲1技術、甲2技術及び周知技術1のそれぞれが有する効果の総和を超えるものではないから、当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別顕著なものではない。 (オ) 特許権者の主張について ア 特許権者は令和7年7月18日に提出した意見書5(4)ウにおいて、甲1に関し、「以上によれば、甲1に記載された発明(以下「甲1発明」と言う。)において、「加熱調理後、内容物の噴出を抑えるなど、安全に電子レンジから取り出し、開封できる容器であると共に、開封後、他の容器に移し替えなくても、そのまま内容物を食べやすいフィルム性容器を得る」という課題を解決するため、蒸気抜き部50の底面30側に底面30とほぼ平行な開封部を有し、かつ、蒸気抜き部50を有する一方の側面の蒸気抜き部下方底面側と、他方の側面側の上方側に、幅広のシール部611,622を有するという構成が必須であると解される。」と主張する。 しかしながら、上記(イ)のとおりであって、甲1において、「蒸気抜き部50の底面30側に底面30とほぼ平行な開封部を有」する構成は「開封できる容器であると共に、開封後、他の容器に移し替えなくても、そのまま内容物を食べやすい」という開封後の容器の使用用途についての課題に対応し、「蒸気抜き部50を有する一方の側面の蒸気抜き部下方底面側と、他方の側面側の上方側に、幅広のシール部611,622を有する」という構成は「加熱調理後、内容物の噴出を抑えるなど、安全に電子レンジから取り出」すという電子レンジ加熱直後における開封前の容器保持についての課題に対応するものであって、この2つの課題は異なるものであるから、互いに影響しないこの2つの構成は分離不可分なものではない。そうすると、甲1技術において、この2つの構成の両方を有することは、必須の構成ではない。 この点に関し、甲1の【0005】には「しかしながら、この通気孔周辺は非常に高温になるが、広幅シール部を少なくとも一つ設けるだけであると、フィルム製容器は傾きやすい。もし、通気孔が最も高い位置に保てないと、通気孔から内容物が噴出し、大きな火傷を負いやすいばかりでなく、容器があった周囲が汚れてしまうなどの問題が発生する恐れがあった。」と「また、加熱調理後、電子レンジ用の包装袋を開封するには、ノッチを胴部シール部の縁に形成して、このノッチを介して引き裂いて開封するとしているが、図で示されたノッチは、コの字状シール部よりも袋の上端側に記載されている。この場合、開口部はコの字状シール部により狭められて、内容物を取り出しにくくしていると共に、切込み、または、切欠によって切り欠きから内容物が漏れる恐れがある。」といったように、課題が並列に分けて記載されている。 そして、特許権者が甲1の課題と主張する【0007】の課題は、【0005】に記載された、特許文献1に記載された特定の電子レンジ用包装袋についての課題であるところ、甲3の【0023】~【0024】及び【図1】、【図6】(上記(1)ア(ア)参照。)からみても、側面の一方のみ「広幅シール部」を設けている事項は見当たらないから、甲3発明は「広幅シール部を少なくとも一つ設けるだけであると、フィルム製容器は傾きやすい。」という甲1でのシール幅に関する課題を有さない。 そうすると、「広幅シール部を少なくとも一つ設けるだけ」というものではない甲3発明において、「蒸気抜き部50を有する一方の側面の蒸気抜き部下方底面側と、他方の側面側の上方側に、幅広のシール部611,622を有する」という構成を適用する必然性は生じない。 なお、特許権者は、甲1における上記2つの構成が有機的関係にある理由として、「甲1の【0023】には「開封部70近傍が、未シール部である収納部が外側に膨らんだ形状となっているので、お椀のように先端が一番広がる形状になっている。その為、非常に内容物を取り出しやすい形状となっている」と記載されている。「未シール部である収納部が外側に膨らんだ形状」となるのは、蒸気抜き部50を有する一方の側面の蒸気抜き部下方底面側に「幅広のシール部622」が形成されているためと解される。」と主張するが、「未シール部である収納部が外側に膨らんだ形状」となるのは、単に底面のシール部(前底面シール部31及び背底面シール部32)からの高さ方向での距離が開口部70近傍で最も生じているために、開口部70近傍の中央部分が変形しやすくなっているためであって、下方底面側の一方のみを幅広シール部とすることで「未シール部である収納部が外側に膨らんだ形状」となったわけではない。また、特許権者は「甲1の同段落には「幅広のシール部622」に関して「開封後も、蒸気抜き部があった側面には下広幅シール部622があるので、下広幅シール部622をつかんでいれば、持つ手も熱くならず、内容物を取り出しやすい。」と記載されており、「幅広のシール部611,622」(特に「幅広のシール部622」)は「蒸気抜き部50の底面30側に底面30とほぼ平行な開封部」を設けたことと有機的関係にあると言える。」と主張するが、開封後は「幅広のシール部611」は除去されているし、「下広幅シール部622をつかんでいれば、持つ手も熱くならず、内容物を取り出しやすい」のはシール幅が広いと持ちやすいということであって、下側にある「幅広のシール部622」の配置が、側面の一方側であることとは関係しない。そうすると、甲1の2つの構成について、特許権者のいう「有機的関係」があるとはいえない。 してみれば、上記意見書5(4)ウにおける主張は、いずれも理由がないから、採用できない。 イ 特許権者は令和7年7月18日に提出した意見書5(4)オにおいて「上記のとおり、甲3においては、図1に示された蒸気抜きパウチ10に対してガイド部50の破断についての評価がなされており、甲3発明におけるガイド部50の配置は第1シール部31の配置とともに確立されたものとして記載されている。そうすると、甲3発明において、切取線を含むガイド部を通蒸部60の下方に移動させる動機付けがないと思料する。」と主張する。 しかしながら、甲3発明においてガイド部を通蒸部の下方に移動させる動機付けについては、上記(イ)のとおりである。そして、甲3における評価は、甲3の【0065】(上記(1)ア(ア)参照。)に「各比較例の蒸気抜きパウチ10は次の点において実施例の蒸気抜きパウチ10と相違し、その他の点において実施例の蒸気抜きパウチ10と同じ構成を備える。・・・」とあり、実施例と比較例との相違は、切取線51についての各層における切込の有無(【図7】~【図9】のそれぞれである実施例に対して、切込51Aのない比較例1、2や、切込51Aが最外層20Aおよび中間層20Bをそれぞれ貫通して最内層20Cには形成されていない比較例3、最内層20Cにおける中間層20B側を除く部分に切込51A及び51Bを設けた比較例4)や中間層20Bの材質(比較例2のみ)であって、切取線の高さ位置の違いについての評価ではないから、甲3におけるガイド部50の破断についての評価は、甲3発明においてガイド部を通蒸部の下方に移動させるにあたっての阻害要因とはならない。 また、意見書の同項における、甲3発明に甲1発明を組み合わせた際の構成についての主張は、上記アで採用できない、とした主張を前提としており、その前提を欠く。 してみると、特許権者の上記意見書5(4)オにおける主張は、採用できない。 (カ) 小括 したがって、本件発明1は、引用発明に甲1技術、甲2技術及び周知技術1を適用することで、当業者が容易に想到し得たものである。 (3) 本件発明2 本件発明2と引用発明とを対比する。 引用発明における切取線が「ミシン目の集合であって、直線状に形成されていて、標準幅方向において不連続に形成された複数の切込」である態様は本件発明2の易開封線が「連続的あるいは間欠的に形成されている」態様に相当するから、本件発明2と引用発明とを対比すると、上記(2)での一致点1に加えて次の一致点2で一致し、上記(2)での相違点1~3に加えて次の相違点4で相違する。 <一致点2> 「前記易開封線は、レーザー加工によって、連続的あるいは間欠的に形成されている点。」 <相違点4> 易開封線の形成手段に関し、本件発明2はレーザー加工であるのに対し、引用発明はレーザー加工ではない点。 相違点1~3については検討済みであるから、以下、相違点4について検討する。 引用発明における切取線の形成手段として、上記(1)ク(ア)の周知技術2のとおり、パウチにおける脆弱部の加工手段をレーザーで行うことは、当業者にとって周知技術である。 そして、一定の課題を解決するための均等物による置換は、当業者にとって通常の創作能力の発揮にすぎないから、引用発明の切取線を周知技術であるレーザー加工によるものとし、上記相違点4に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。 したがって、本件発明2は、引用発明に甲1技術、甲2技術及び上記周知技術1、2を適用することで、当業者が容易に想到し得たものである。 (4) 本件発明3 本件発明3と引用発明とを対比する。 引用発明の「第3シール部および第4シール部の少なくとも一方に形成され」た「ノッチ」を有する事項は、本件発明3の「前記左右側面のシール部の少なくとも一方にあって、前記通蒸部下方底面側にノッチを有」する事項と対比して、「前記左右側面のシール部の少なくとも一方に」「ノッチを有」する事項に限り一致する。また、引用発明の「ノッチは、ノッチの先端部が切取線を延長した仮想線上に位置する」事項は本件発明3の「前記ノッチは、その先端部が前記易開封線を延長した仮想線上に位置する」事項に相当する。 そうすると、両者は、上記(2)~(3)での一致点1~2に加えて次の一致点3で一致し、上記(2)~(3)での相違点1~4に加えて次の相違点5で相違する。 <一致点3> 「前記左右側面のシール部の少なくとも一方にノッチを有し、かつ、前記ノッチは、その先端部が前記易開封線を延長した仮想線上に位置するように形成されている点。」 <相違点5> ノッチの位置に関し、本件発明3は、前記通蒸部下方底面側に有るのに対し、引用発明はそのような構成を有していない点 相違点1~4については検討済みであるから、以下、相違点5について検討する。 引用発明のノッチの位置は、ノッチの先端部が切取線を延長した仮想線上に位置するものである。そうすると、上記(1)イ(イ)の相違点2で検討したとおり、引用発明に甲1技術や周知技術1を適用し、引用発明の「切取線を含むガイド部」を通蒸部の下方となる配置とすることは容易であり、その際に、引用発明のノッチの位置も通蒸部下方底面側になるから、引用発明のノッチも上記相違点5に係る本件発明3の構成になるといえる。 したがって、本件発明3は、引用発明に甲1技術、甲2技術及び上記周知技術1、2を適用することで、当業者が容易に想到し得たものである。 (5) 本件発明4~5 本件発明4に従属する本件発明5と引用発明とを対比する。 引用発明の「前記最内層」は本件発明4の「前記胴部材シートのシーラント層」かつ本件発明5の「シーラント層」に相当するから、引用発明における「前記最内層を構成する材料は無延伸ポリプロピレン」は、本件発明4に従属する本件発明5における「前記シーラント層を構成する材料は無延伸ポリプロピレン」に相当する。 そうすると、両者は、上記(2)~(4)での一致点1~3に加えて次の一致点4で一致し、上記(2)~(4)での相違点1~5に加えて次の相違点6で相違する。 <一致点4> 「前記胴部材シートのシーラント層を構成する材料は無延伸ポリプロピレンである点。」 <相違点6> 前記胴部材シートのシーラント層に関し、本件発明4を引用する本件発明5は「耐熱性と、幅方向の易引き裂き性を有する材料」であるのに対し、引用発明の最内層は「耐熱性と、幅方向の易引き裂き性を有する材料」であるかどうか明らかではない点。 相違点1~5については検討済みであるから、以下、上記相違点6について検討する。 本件明細書の【0021】に「シーラント層20Cは、耐熱性、ヒートシール性、および耐衝撃性に優れる。シーラント層20Cを構成する材料の一例はMD方向の引き裂き性に優れた無延伸ポリプロピレン(以下では、「CPP」という)である。」と記載されているように、本件発明4の「耐熱性と、幅方向の易引き裂き性を有する材料」の具体的な材料の一つが、本件発明5の「無延伸ポリプロピレン」であるから、「無延伸ポリプロピレン」で構成された引用発明の最内層も「耐熱性と、幅方向の易引き裂き性を有する材料」で構成されているといえる。そうすると、上記相違点6は実質的な相違点ではないから、本件発明4に従属する本件発明5は、引用発明に甲1技術、甲2技術及び上記周知技術1、2を適用することで、当業者が容易に想到し得たものである。 また、本件発明4は、本件発明4に従属する本件発明5から「前記シーラント層を構成する材料は無延伸ポリプロピレンである」という限定を除いたものであるから、同様に、引用発明に甲1技術、甲2技術及び上記周知技術1、2を適用することで、当業者が容易に想到し得たものである。 したがって、本件発明4~5は、引用発明に甲1技術、甲2技術及び上記周知技術1、2を適用することで、当業者が容易に想到し得たものである。 (6) 本件発明6 ア 本件発明6と引用発明とを対比する。 引用発明の「ガゼットタイプ」は、本件発明6の「ガセット部を有する形式」に相当するから、引用発明における「ガゼットタイプである、蒸気抜きパウチ」は、本件発明6における「前記底部材シートが、前記対向する2枚の胴部材シートの間に折り込まれた後、ガセット部を有する形式で形成シールされ、底部が角底に成形された」「通蒸型パウチ」と対比して、「ガセット部を有する形式」の「通蒸型パウチ」に限り一致する。 そうすると、両者は、上記(2)~(5)での一致点1~4に加えて次の一致点5で一致し、上記(2)~(5)での相違点1~6に加えて次の相違点7及び8で相違する。 <一致点5> 「ガセット部を有する形式の通蒸型パウチ。」 <相違点7> 本件発明6は前記底部材シートが、前記対向する2枚の胴部材シートの間に折り込まれた後、ガセット部を有する形式で形成シールされた通蒸型パウチであるのに対し、引用発明は、ガゼットタイプである、蒸気抜きパウチではあるものの、当該構成が、底部材シートが、前記対向する2枚の胴部材シートの間に折り込まれた後、形成シールされたものであるかどうかが明らかでない点。 <相違点8> 本件発明6は底部が角底に成形された通蒸型パウチであるのに対し、引用発明は、底部が角底であるかどうかが明らかでない点。 イ 相違点1~6については検討済みであるから、以下、上記相違点7及び8について検討する。 (ア) 相違点7について 「前記底部材シートが、前記対向する2枚の胴部材シートの間に折り込まれた後、ガセット部を有する形式で形成シールされ」る事項及び「底部が角底に成形された」事項は、「底部材シート」が「ガセット部」であるパウチが通常備える事項にすぎない。上記(2)イ(ア)における相違点1で検討したように、引用発明をガセット部を有する形式の通蒸型パウチとすることは容易になし得たことであり、その際に、引用発明も「前記底部材シートが、前記対向する2枚の胴部材シートの間に折り込まれた後、ガセット部を有する形式で形成シールされ」る事項及び「底部が角底に成形された」事項を備えることとなる。 してみると、引用発明において上記相違点7に係る本件発明6の構成を備えることは、当業者が容易になし得たものである。 (イ) 相違点8について 甲3の【図1】や【図6】を参照すると、第1シート及び第2シートと底部材シートとをシールする第2シール部32における内縁32Aは、中央部で略水平となっているから、引用発明の底部形状は、第1シール側の内縁32Aと第2シール側の内縁32Aとが中央部で平行となる、六角形状等、すなわち、角底である蓋然性が高い。そうすると、上記相違点8は実質的な相違点ではない。 また、仮に引用発明の底部が角底でなく、上記相違点8が実質的な相違点であったとしても、一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用は当業者にとって通常の創作能力の発揮にすぎないから、引用発明のガセット部を形成するにあたり、既知の形状である角底とし、上記相違点8に係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。 ウ したがって、本件発明6は、引用発明に甲1技術、甲2技術及び上記周知技術1、2を適用することで、当業者が容易に想到し得たものである。 2 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 物の発明について実施をすることができるとは、その物を作れ、かつ、その物を使用できることである。よって、「発明の実施の形態」は、これらが可能となるように(具体的には、「物の発明」について明確に説明され、「その物を作れる」ように記載され、そして、「その物を使用できる」ように)記載されなければならない。 そして、当業者が発明を実施できるように発明を説明するためには、通常、「発明の実施の形態」が用いられ、必要である場合には、発明の実施の形態として「実施例」が用いられる(特許法施行規則第24条様式第29〔備考〕14ホ参照)。実施例とは、発明の実施の形態を具体的に示したものである。 以下、本件特許の発明の詳細な説明において、当業者が本件発明1~6を作れるように記載されているか、検討する。 (1)本件特許の明細書の記載 中間層に易開封線を形成する手段に関し、本件特許の明細書には以下の記載がある(下線は当審で付した。)。 「【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明は、上記した問題を解消するために、 本発明の請求項1によると、 対向する2枚の胴部材シートと、底面に折り込まれる底部材シートと、からなり、 左側面と右側面と底面との周縁をシールしてそれぞれシール部を形成し、さらに内容物を胴部材シートの上部から充填した後に前記上部を密封シールすることにより、内容物を収容する収容空間を有し、 左右側面のシール部の少なくとも一方に、加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための通蒸部と、前記通蒸部下方底面側に底面とほぼ平行な開封部と、を備える通蒸型パウチであって、 前記シートは、最外層、中間層、および、無延伸フィルムにより構成されるシーラント層をこの順に含み、 前記開封部には、前記中間層に易開封線が形成されていることを特徴とする通蒸型パウチである。 【0009】 内容物が収容空間に収容された後、密封シールされた状態で、通蒸型パウチが加熱された場合、収容空間の圧力の上昇にともない収容空間と外部の空間とを連通する通路が通蒸部に形成される。このため、収容空間の水蒸気が通蒸部に形成された通路を通過して通蒸型パウチの外部に排出され、収容空間の圧力の上昇が抑えられる。また、通蒸部の底面側に底面とほぼ平行な開封部があり、胴部材シートの中間層に形成された易開封線にそってシートを幅方向に容易に引き裂くことができる。また、中間層にだけ形成するので胴部材シートは貫通することがなく蒸気が外に漏れないのでパウチの膨張状態が保持され、好適に蒸らしを行うことができる。そして、胴部材シートが引き裂かれた部分から内容物を容易に取り出すことができる。 【0010】 また、本発明の請求項2によると、前記易開封線は、レーザー加工によって、連続的あるいは間欠的に形成されている。レーザーヘッドの出力と走査速度を調整することで、易開封線の形状や深さを比較的容易に調節することができるため、中間層にだけ易開封線を形成することが可能になる。」 「【0026】 易開封線52は、胴部材シート20の中間層上に形成された、レーザー加工による小孔の集合であり、胴部材シート20のMD方向に沿うように形成されている。ノッチ51は、ノッチ51の先端部が易開封線52の端部を延長した仮想線上に位置するように、右側面シール部33および左側面シール部34の少なくとも一方に形成される。図1では、左側面シール部34にノッチ51が形成された例を示している。」 「【0028】 易開封線52が形成された開封部50は、易開封線52が形成されていない胴部材シート20の他の部分よりも引裂強度が低い。このため、開封部50に対して易開封線52に沿う方向に力が加えられた場合、胴部材シート20が易開封線52に沿って容易に引き裂かれる。易開封線52は標準幅方向において不連続に形成された複数の切込52Aを含む。易開封線52を形成する手段は例えばレーザー加工機である。 【0029】 易開封線52は、胴部材シート20の最外層20A側からのレーザー照射によるレーザー加工機で形成する。レーザー加工機を用いた方法によれば、材質によってエネルギーの吸収の仕方が異なるのを利用して、特定の層だけをカットするようなことができる。このような例としては、レーザーとして、波長が10.6μmの炭酸ガスレーザーを用い、材質によってレーザーヘッドの出力と走査速度を調整することで、易開封線52の形状や深さを比較的容易に調節することができる。」 「【0031】 好ましい例では、切込52Aは胴部材シート20を構成する最外層20A、中間層20B、および、シーラント層20Cの3層の全部を貫通せず、かつ、3層のうちの1層に形成される。切込52Aが胴部材シート20の3層を貫通していないため、収容空間11に収容された内容物15が易開封線52から外部に通過することがない。本実施形態では、切込52Aは胴部材シート20のうちの中間層20Bのみを貫通するように設けられる。」 「【実施例】 【0040】 実施例および比較例の試料を用いて、レーザー加工を有する胴部材シート20の層構成と、電子レンジ調理性、開封性の関係を確認する試験を実施した。試料は、レトルト用パウチで、内容物はカレーである。試料を600Wの電子レンジで1分間加熱調理後、電子レンジ調理時に不具合がなかったか、また胴部材シート20を引き裂いた時の開封性を、官能評価した。層構成は、透明蒸着PET12/PET12/CPP60である。また、レーザー加工としては、波長が10.6μmの炭酸ガスレーザーを用い、加工を施した。なお、材料に関する用語の意味は以下のとおりである。 【0041】 <透明蒸着PET12> 酸化アルミニウムをポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)に蒸着した透明蒸着フィルム。 【0042】 <PET12> ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)。 【0043】 <CPP60> 耐熱性の無延伸ポリプロピレンフィルム(厚み60μm)。 【0044】 【表1】 [図:0001431106000016.jpg] 【0045】 表1の実施例1~3の結果からわかるように、胴部材シート20の中間層であるPET12にだけレーザー加工を施した場合は、切込の形状が、直線状、ミシン目線状でも、また本数が、標準高さ方向において一本ないしそれ以上でも、電子レンジ調理が可能であり、また開封性においても直線カットが可能である。比較例1のように、最外層である透明蒸着PET12にレーザー加工を施すと、開封性は良いがガスバリア性が低下したため、電子レンジ調理性が悪かった。また、レーザー加工を施さなかった比較例2では、電子レンジ調理性は良かったが、開封性が悪く、内容物を取り出すことができなかった。」 (2)中間層への易開封線の形成手段 上記(1)のとおり、本件明細書では、易開封線を形成する具体的な手段として、レーザーを用いる事項が記載されている。そして、易開封線を中間層にレーザーで形成するには、レーザーヘッドの出力と走査速度を調整し、材質によってエネルギーの吸収の仕方が異なるのを利用して、胴部材シート20の最外層20A側からのレーザー照射により、特定の層だけをカットするようなことができる(特に、本件明細書【0010】、【0029】)としている。 一方、本件発明1は「前記最外層が、無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されており、前記中間層がポリエチレンテレフタレートフィルムで構成され」ているから、最外層及び中間層を構成するフィルムの材質はどちらもポリエチレンテレフタレートである。そうすると、最外層のポリエチレンテレフタレート部分と、中間層のポリエチレンテレフタレートとでは、材質によってエネルギーの吸収の仕方が異なることを利用できないから、本件明細書で開示された方法では最外層のポリエチレンテレフタレート部分をカットせず、中間層を構成するポリエチレンテレフタレートだけをカットすることはできないと考えられる。 なお、【0040】には「層構成は、透明蒸着PET12/PET12/CPP60である。また、レーザー加工としては、波長が10.6μmの炭酸ガスレーザーを用い、加工を施した。」とあり、【0044】【表1】にはレーザー加工位置として「中間層PET12に加工」という結果は示されているが、【0040】は本件発明1と同じく、最外層及び中間層にPET12を含んでいるから、材質によってエネルギーの吸収の仕方が異なるという事項を使えない点で上記【0029】に矛盾するし、PET12をカットするための波長が10.6μmの炭酸ガスレーザーを最外層側から照射すると、中間層のみならず、最外層のPET12もカットされてしまうと考えられる。そうすると、【0040】の層構成及びレーザーで、【0044】【表1】の結果を得るためには、最外層と中間層とで同じ材質がある場合にレーザー照射側(最外層)の材質をカットすることなく、特定層(中間層)の同材質をカットするための何らかの追加の技術が必要とも考えられるが、本件明細書には、そのような事項は開示されていない。 また、本件明細書に、中間層をカットするための他の手段は開示されていない。 (3) 特許権者の主張について ア 特許権者は令和7年7月18日に提出した意見書5(6)アにおいて、「本件特許明細書の実施例における「透明蒸着PET12」及び「PET12」は、前者には「透明蒸着」が形成されている点で後者と材質が異なる。」と主張する。 しかしながら、蒸着とは基材の表面に薄膜を形成する技術である。上記(1)のとおり、本件明細書の【0041】によれば、「透明蒸着PET12」とは「酸化アルミニウムをポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)に蒸着した透明蒸着フィルム」であるから、「透明蒸着PET12」とは、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)を基材とし、その表面に酸化アルミニウム薄膜がある2層構成であって、ポリエチレンテレフタレートフィルムと酸化アルミニウムとが混在した構成ではないし、蒸着によって基材部分のPET12自体が異なる材質になるとはいえない。そして、本件明細書の【0042】によれば、「PET12」とは「酸化アルミニウムをポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)」であり、「透明蒸着PET12」の基材である「ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)」とは、本件明細書において同一の表記がなされた材料であり、この「ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)」の材質をこれ以上特定する情報は本件明細書には記載も示唆もされていないから、本件明細書に接した当業者は、最外層の「透明蒸着PET12」を構成する「PET12」と中間層の「PET12」とで材質に違いを見いだすことができない。 このため、本件明細書の【0040】に記載された、透明蒸着PET12/PET12/CPP60となる層構成の実施例に対して、材質によってエネルギーの吸収の仕方が異なるのを利用し、特定の層だけをカットするレーザー加工機を用い、最外層側から材質が「PET」の層だけをカットする加工を行った場合、中間層の「PET12」を構成するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)だけでなく、最外層の「透明蒸着PET12」のうち、基材部分となるポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)についてもカット加工がされることとなる。これは、「易開封線が中間層のみに形成されている」本件発明1ではない。 そうすると、特許権者の主張を踏まえても、当業者が本件発明1を実施できるように本件明細書に明確かつ十分に記載があるとはいえないから、当該主張は採用できない。 イ 特許権者は、上記意見書5(6)アにおいて「同じPETに分類される樹脂フィルムであっても、樹脂の重合度や添加剤の配合によってエネルギーの吸収の仕方を互いに異なるようにすることは可能である。」とも主張する。 しかしながら、本件明細書には「樹脂の重合度や添加剤の配合によってエネルギーの吸収の仕方を互いに異なるようにする」ことについて記載も示唆もされていない。 特許法36条4項1号は、特許による技術の独占が発明の詳細な説明をもって当該技術を公開したことへの代償として付与されるという仕組みを踏まえ、発明の詳細な説明の記載につき実施可能要件を定める。このような同号の趣旨に鑑みると、仮に、本件発明の詳細な説明に記載も示唆もない新たな技術的事項によって本件発明1が実現できるとしても、それは本件発明の詳細な説明で本件発明1を実施するための技術を公開したことにはならない。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明が、実施可能要件に適合していることにはならないから、上記主張は採用できない。 ウ 更に、特許権者は上記意見書5(6)アにおいて、また、令和7年1月31日に提出した意見書5(5)において、当業者であれば、本件特許の出願時の公知技術(技術常識)に基づいて「中間層だけ」に易開封線を形成することは可能である、とも主張する。 しかしながら、上記イでも説示したとおり、仮に、本件発明の詳細な説明に記載も示唆もない新たな技術的事項によって本件発明1が実施できるとしても、それは本件明細書の発明の詳細な説明が、実施可能要件に適合していることにはならないから、上記主張は採用できない。 (4)小括 上記(1)~(3)から、本件発明1は、出願時の技術常識を踏まえても、本件明細書及び図面に記載された発明の実施についての説明からは、どのように実施するかを当業者が理解できない。 本件発明1を引用する本件発明2~6についても、同様である。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について 本件訂正によって、本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載された「中間層のみ」に易開封線を形成した発明となった。 したがって、本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、先の取消理由通知(決定の予告)における取消理由3は解消した。 4 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について 本件訂正によって、本件発明1~6の「易開封線」は「中間層のみ」に形成されていることが特定されたため、発明の詳細な説明の「易開封線」と矛盾しないものとなった。 したがって、本件発明1~6は明確であり、先の取消理由通知(決定の予告)における取消理由4は解消した。 第6 むすび 以上により、本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 したがって、本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第113条第2号及び第4号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700590

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