特許異議申立
2025-700859
シーラントフィルム、包装材及び包装袋
- 審判番号
- 2025-700859
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-084941
- 登録番号
- 7658497
- 請求日
- 2025年09月02日
- 審決日
- 2025年12月22日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【異議申立人】鈴木 多香子
- 【異議申立人】柏木 香陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 長清 吉範
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.121-Y (B32B) / P1651.536-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7658497号発明「シーラントフィルム、包装材及び包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7658497号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7658497号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和6年5月24日(優先権主張令和5年5月29日)の出願であって、令和7年3月31日にその特許権の設定登録がされ、令和7年4月8日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~8に係る特許に対し、令和7年9月2日に特許異議申立人鈴木多香子(以下「申立人A」といい、特許異議申立書について「申立書A」という。)により、及び令和7年10月1日に特許異議申立人柏木香陽子(以下「申立人B」といい、特許異議申立書について「申立書B」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」等という。まとめて「本件発明」ということもある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルムであって、
前記リサイクル材含有層が、前記シーラントフィルムを平面視する方向から透過観察したときに透過明度が周囲よりも小さいドメインを含み、
前記ドメインは、最大面積が1000μm2以下であり、且つ、最大アスペクト比が10以下であり、
前記シーラント層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含む、
シーラントフィルム。
【請求項2】
前記リサイクル材含有層は、HSV色空間データにおける明度の平均値が200以上であり、且つ、明度の標準偏差が10以下である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項3】
前記リサイクル材含有層の他方の主面に積層された補助層を更に備え、
前記補助層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含む、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項4】
前記リサイクル材に含まれる前記2種以上の樹脂のうちの含有比率が最も大きい樹脂が、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のシーラントフィルムを備える、包装材。
【請求項6】
前記リサイクル材に含まれるプラスチック材料の含有量が、包装材におけるプラスチック材料全量を基準として、10質量%以上である、請求項5に記載の包装材。
【請求項7】
請求項5に記載の包装材から製袋される包装袋。
【請求項8】
請求項6に記載の包装材から製袋される包装袋。」
第3 申立理由の概要
申立人A、Bは、以下に示す証拠を提出し、本件発明1~8に係る特許は、以下の理由により取り消すべきものである旨を主張する。(以下、申立人Aが提出した甲第○号証を「甲A○」といい、申立人Bが提出した甲第○号証を「甲B○」という。)
1 申立理由1(甲A1、甲B1又は甲B2を主引例とする進歩性)(申立人A、B)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲A1に記載された発明、もしくは、甲B1又は甲B2に記載された発明及び甲B3に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである。
2 申立理由2(サポート要件)(申立人A、B)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
(1)本件明細書の実施例で本件課題(ヒートシール性及び機械的特性)が解決していることを検証しているのは特定の樹脂の組み合わせ(リサイクル材1~3)のみであるところ、請求項1では「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材」と特定するのみであるから、本件発明は、本件課題を解決できない態様を広範囲に包含しているからサポート要件を充足しない。(申立書Aの第39~第40ページ)
(2)請求項1では「前記ドメインは、最大面積が1000μm2以下であり、且つ、最大アスペクト比が10以下である」と特定してるが、なぜ「1000μm2」や「10」という具体的な数値が課題解決のための臨界値となるのかの技術的根拠が発明の詳細な説明に示されていない。
また、実施例の最大面積1000μm2と比較例の1100μm2の境界においてなぜ性能が急激に変化するのかの合理的な説明がなされていない。
さらに、本件明細書の【0042】にはドメインの最大面積の下限値が記載されているが、この下限値と上限値の間の広範囲においてなぜ一律に課題が解決できるのか不明である。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項1に記載された数値限定の技術的根拠が十分に開示されておらず、本件発明はサポート要件を充足しない。(申立書Aの第40ページ)
(3)本件明細書の【0039】には低透過明度領域の最大面積及び最大アスペクト比を実体顕微鏡による観察画像を二値化処理して算出することが記載されており、当該手法による解析を可能とするためにはシーラントフィルムがインキ層や金属箔層などがさらに積層されたものであってはならないところ、かかる事項が請求項1では特定されていないから、本件発明は、インキ層や金属箔層等がさらに積層されて透過明度が解析できない結果、ドメインの最大面積が0μm2(=1000μm2以下)とされるものも包含されるから、サポート要件を充足しない。(申立書Bの第28~第29ページ)
3 申立理由3(実施可能要件)(申立人A、B)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が以下の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
(1)本件明細書を参酌しても、どのようにして低透過明度領域の最大面積及び最大アスペクト比を請求項1で特定される範囲に制御できるのか理解できないから、実施可能要件を充足しない。(申立書Aの第41~第42ページ)
(2)本件明細書の【0039】にはドメインの最大面積及び最大アスペクト比を実体顕微鏡による観察画像(243μm×851μm)を二値化処理して算出することが記載されているところ、本件発明には、観察画像サイズ以上の面積を有するドメインが存在することにより透過明度が解析できない結果、ドメインの最大面積が0μm2(=1000μm2以下)とされるものも包含され、このようなシーラントフィルムは本件課題を解決しているとはいえないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件を充足しない。(申立書Bの第30~第31ページ)
(3)本件明細書の【0039】にはドメインの最大面積及び最大アスペクト比を実体顕微鏡による観察画像を無作為に10箇所取得して二値化処理して算出することが記載されているところ、無作為の10箇所の観察画像において偶然「最大面積が1000μm2以下」であったとしても、それ以外の箇所に最大面積が1000μm2以上のドメインが存在する場合には、本件課題を解決しているとはいえないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件を充足しない。(申立書Bの第31~第34ページ)
4 申立理由4(明確性要件)(申立人A)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
請求項1の「2種以上の樹脂」について、どの程度の相違があれば「異なる樹脂」と判定されるのか、本件明細書を参酌しても不明確であるから、本件発明は明確性要件を充足しない。(申立書Aの第42~第43ページ)
[証拠一覧]
甲A1:特開2002-52669号公報
甲A2:特許第3772564号公報
甲A3:特許第5754688号公報
甲B1:特開2002-113830号公報
甲B2:特開平7-329262号公報
甲B3:国際公開第2022/124229号
第4 当審における判断
事案に鑑み、記載要件から判断する。
1 申立理由2(サポート要件)について
(1)判断規範
特許請求の範囲の記載が、本件明細書のサポート要件を満たすか否かは、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この点について検討する。
(2)発明の課題を解決できると認識できるか否か
本件発明の課題は「ヒートシール性及び機械的特性を十分に有しつつ、2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材のマテリアルリサイクルを可能とするシーラントフィルム、包装材及び包装袋を提供すること」(【0012】)であり、本件課題を解決するための手段は「前記リサイクル材含有層が、前記シーラントフィルムを平面視する方向から透過観察したときに透過明度が周囲よりも小さいドメインを含み、前記ドメインは、最大面積が1000μm 2以下であり、且つ、最大アスペクト比が10以下」(【0014】)とすることであり、当該手段により課題が解決される機序は、【0041】に記載されており、本件明細書の【0120】~【0148】には、2種以上の樹脂を含むリサイクル材1~3が含まれるリサイクル材含有層と、シーラント層を備えるシーラントフィルムにおいて、低透過明度領域が「最大面積が1000μm2以下であり、且つ、最大アスペクト比が10以下」を満たす実施例1~7はヒートシール強度、破断強度、外観(色見)及び色見(表面平滑性)が良好であり、一方、低透過明度領域が前記条件を満たさない比較例1~6は、前記評価結果が不良であったことが示されている。
そうすると、「ドメインは、最大面積が1000μm2以下であり、且つ、最大アスペクト比が10以下」であることを特定する本件発明は、本件課題を解決できることを当業者は認識できる。
そして、本件発明1において、当該課題解決手段が反映されていることは明らかである。
そうすると、本件の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(3)申立人の主張について
a 申立人Aは上記第3の2(1)のとおり主張する。しかしながら、本件発明は、【0011】にあるように異なる種類の樹脂が混在した場合に凝集体が形成されてフィルムの平滑性や物性に影響を及ぼし、フィルムのヒートシール性や機械的特性が損なわれることを発見し、これを凝集体(ドメイン)の最大面積と最大アスペクトを小さくすることで解決するものであるから、本件発明において、樹脂の種類や組み合わせ等を特定することは要しない。よって、当該主張は採用できない。
b 申立人Aは上記第3の2(2)のとおり主張する。しかしながら、最大面積と最大アスペクト比が最大値を超えた場合に本件課題を解決できなくなる機序については【0041】に記載があるし、「1000μm2」及び「10」以下の場合に本件課題が解決され、「1000μm2」又は「10」を超える場合に本件課題が解決できないことは、【0145】【表1】及び【0146】【表2】に示されているし、「1000μm2」を境界として性能が急激に変化することの機序は【0041】に記載されており、これらを踏まえれば、その課題及び解決手段は理解できるものである。よって、当該主張も採用できない。
c 申立人Bは上記第3の2(3)のとおり主張する。しかしながら、ドメインの実際の最大面積及び最大アスペクト比が請求項1に記載の範囲を満たさないものは、本件発明に含まれないことは明らかであるから、当該主張も採用できない。
(4)サポート要件についての小括
よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
2 申立理由3(実施可能要件)について
(1)判断規範
発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすか否かは、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この点について検討する。
(2)過度の試行錯誤を要することなく実施できるか否か
本件明細書の【0017】~【0119】には本件発明の実施の形態が記載されており、同【0120】~【0148】の実施例においては、具体的な成分を記載したリサイクル材1~3の何れかを含み、本件課題が解決できている実施例1~6に係るシーラントフィルムが製造できることが記載されているから、本件明細書には、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施することができる程度の記載があるといえる。
(3)申立人の主張について
a 申立人Aは上記第3の3(1)のとおり主張する。しかしながら、ドメインの最大面積と最大アスペクト比を調整する手段は【0049】及び【0074】に記載されており、当該記載及び技術常識を参酌することにより当業者は本件発明を実施することができるといえる。よって、当該主張は採用できない。
b 申立人Bは上記第3の3(2)及び(3)のとおり主張する。しかしながら、ドメインの最大面積及び最大アスペクト比の解析方法は、明細書に記載の方法のほか、種々知られた方法が採用可能であることは、当業者であれば技術常識として理解できる。そうすると、明細書に記載の方法に拘泥した該主張も採用できない。
(4)実施可能要件についての小括
よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
3 申立理由4(明確性要件)について
(1)判断規範
特許請求の範囲の記載が、明確性要件を満たすか否かは、特許請求の範囲に記載された発明が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この点について検討する。
(2)第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確か否か
「2種以上の樹脂」とは技術常識を踏まえると、異なる種別の樹脂、例えば、「ポリエチレン」と「ポリプロピレン」と「ポリエステル」や、「HDPE」と「LDPE」など、異なる一般名称で流通している樹脂を意味すると当業者は理解する。そして、本件明細書の【0120】~【0148】においては、LLDPEとPETとNyを含むリサイクル材1、PPとPETとNyを含むリサイクル材2、LLDPEとHDPEを含むリサイクル材3を用いた実施例1~7及び比較例1~6を記載しており、上記理解と整合している。そうすると、請求項1の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(3)申立人の主張について
申立人Aは上記第3の4のとおり主張する。しかしながら、本件発明では「透過明度が周囲より小さいドメインを含む」ことが特定されているところ、本件発明の課題に関する【0011】~【0012】の記載を踏まえると、「2種以上の樹脂」とは、完全には相溶せず凝集体を形成し、当該ドメインを形成する程度に種類の異なる樹脂を意味することは明らかである。よって、当該主張は採用できない。
(4)明確性要件についての小括
よって、本件発明は、明確である。
4 申立理由1(進歩性)について
(1)引用文献の記載等
ア 甲A1について
(ア)甲A1の記載
甲A1には、次の事項が記載されている。以下、下線は当審において付した。また、「・・・」は省略を示す。以下同様。
「【0103】[実施例1~8、比較例1~4]酸化防止剤(イルガノックス1076=0.1重量%、イルガフォス168=0.1重量%)とステアリン酸カルシウム(中和剤=0.1重量%)を配合した表2~表4に示すHDPE、HP-LDPE、LLDPEを、トミー機械工業(株)製3層インフレーション成形機(40mmφ押出機3台)を用い、成形リップギャップ3mm、成形温度200℃の条件下で成形し、巾が300mmであり、表2~表4に示す層厚み構成を有する積層体を製造した。ついで、O-ナイロン(厚み15μm、ユニチカ(株)製)を接着剤(アンカーコート剤:東洋モートンTM―329)を使用しドライラミネート法により貼り合わせた。
【0104】さらに、積層体の第III層同士を3kg荷重ヒートシール温度+5℃の温度で、圧力1kg/cm2、1秒間でヒートシールして内容量500mlのスタンディングパウチを製造し、積層体およびパウチの評価を行った。結果を表2~表4に示す。
【0105】[実施例9]実施例1の第II層のHDPEをポリプロピレン系樹脂(PP)に代えた以外は実施例1と同様に積層体およびパウチを製造し、その評価の結果を表3に示した。[実施例10]実施例1の第II層のHDPEをMDPEの代え、かつ実施例1で製造された積層体を粉砕したリサイクル樹脂(RC)を第I層として実施例1と同様に積層体およびパウチを製造し、その評価の結果を表3に示した。
[実施例11]実施例1の第II層のHDPEをMDPEの代え、かつ第III層のLLDPEを酸化防止剤が配合されていないLLDPE-3に代えて実施例1と同様に積層体およびパウチを製造し、その評価の結果を表3に示した。
【0106】
【表2】
[図:0001431167000001.jpg]
【0107】
【表3】
[図:0001431167000002.jpg]
」
(イ)甲A1から認定できる事項
上記(ア)の【0105】、【表2】(実施例1)及び【表3】(実施例10)から、実施例10のリサイクル樹脂(RC)は、実施例1の積層体を粉砕したものであると理解されるところ、実施例1のLLDPE-1の層厚は60μm(=30×2)、HDPEの層厚も60μmであるから、実施例10のリサイクル樹脂(RC)は、のLLDPE-1とHDPEを同量含有するものであることがわかる。
上記(ア)の【0104】から、第III層はヒートシール層であることがわかる。
上記(ア)の【表3】から、実施例10の積層体は、LLDPE-1からなる第III層、MDPEからなる第II層、リサイクル樹脂(RC)からなる第I層をこの順に積層してなる積層体であることがわかる。
(ウ)甲A1に記載された発明
上記(ア)及び(イ)を参照し、特に実施例10について着目すると、甲A1には以下の発明(以下「甲A1発明」という。)が記載されている。
「LLDPE-1からなるヒートシール層である第III層、MDPEからなる第II層、LLDPE-1とHDPEを同量含有するリサイクル樹脂からなる第I層をこの順に積層してなり、
ヘイズが1.6%である、積層体。」
イ 甲B1について
(ア)甲B1の記載
甲B1には以下の記載がある。
「【請求項1】融点が120~200℃のポリアミド樹脂からなる層(A)を最外層に有し、融点が120~200℃のポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂の混合物からなる層(B)を少なくとも1層以上有する積層フィルムであって、前記層(B)が、前記積層フィルムの製造時のスクラップを原料とする回収層であることを特徴とする積層フィルム。」
「【0033】(4)スクラップの調製法
積層フィルムのスクラップとして、表1記載のポリアミド樹脂(外層)/変性ポリオレフィン樹脂(B-1)(中間層)/ポリオレフィン樹脂(B-2)(内層)=30/10/50μmの3層共押出積層フィルムを粉砕後、造粒機でペレット化した。これに、バージンの原料をブレンドし、表1に示すスクラップ(ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂の混合物)を得た。
【0034】実施例1
ポリアミド樹脂A-1にエチレンビスステアリン酸アミド1000ppmを添加したポリアミド樹脂組成物(外層)とポリオレフィン樹脂B-2(中間層)(当審注:「B-1(中間層)」の誤記と認める。)およびスクラップ(内層,回収層)をφ40mm押出機3台を使用して別々に溶融させ、水冷インフレーション用ダイ(プラコー社製)を用いて、外層が30μm、中間層が10μm、そして内層が50μmの各々よりなる3層構成の積層フィルムを得た。得られたフィルムについて、前記の方法により外観、透明性、引張強度を評価した。その結果を、各層の組成と共に、表1に示す。」
「【0039】
【表1】
[図:0001431167000003.jpg]
」
(イ)甲B1に記載された発明
上記(ア)の記載を総合し、特に実施例1について着目すると、甲B1には次の発明(以下「甲B1発明」という。)が記載されている。
「ポリアミド樹脂A-1にエチレンビスステアリン酸アミド1000ppmを添加したポリアミド樹脂組成物(外層)とポリオレフィン樹脂B-1(中間層)およびスクラップ(内層、回収層)からなり、外層が30μm、中間層が10μm、そして内層が50μmである、3層構成の積層フィルムであって、
前記スクラップは、ポリアミド樹脂(外層)/変性ポリオレフィン樹脂(B-1)(中間層)/ポリオレフィン樹脂(B-2)(内層)=30/10/50μmの3層共押出積層フィルムを粉砕後ペレット化し、これにバージンの原料をブレンドし、組成(質量%)が10/3.3/86.7であるスクラップである、
積層フィルム。」
ウ 甲B2について
(ア)甲B2の記載
甲B2には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】(A) ポリオレフィン系再生樹脂(リサイクル樹脂)からなるA層と、(B) メタロセン触媒を用いて製造された、下記に示す○1~○3(当審注:○の中に数字の代用表記、以下同様。)の性状を有するエチレン・炭素数3~18のα-オレフィン共重合体とからなるB層とを積層してなることを特徴とする再生樹脂積層フィルム。・・・」
「【0005】[発明の具体的説明]
[I] 再生樹脂積層フィルムの構成
(1) 構成層の材料成分
(A) A層
本発明の再生樹脂積層フィルムにおけるA層には、ポリオレフィン系再生樹脂(リサイクル樹脂)が用られる。
(a) 再生樹脂(リサイクル樹脂)の種類
この様なポリオレフィン系再生樹脂(リサイクル樹脂)の具体例としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレン系樹脂、及び、プロピレン単独重合体、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α-オレフィンブロック共重合体等のプロピレン系樹脂、及び、その他のオレフィン系重合体及び共重合体等のいわゆる汎用ポリオレフィン系樹脂であればいずれでも良い。また、これらのポリオレフィン系樹脂は単一種類のものが好ましいが、混合体であっても構わない。また、これらのポリオレフィン系樹脂中には、少量の他の樹脂、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂を含んでいても良い。」
[【0008】○2密度
本発明におけるB層のエチレン・炭素数3~18のα-オレフィン共重合体の密度は、0.88~0.935g/cm3、好ましくは0.89~0.925g/cm3、特に好ましくは0.895~0.915g/cm3である。上記密度が高すぎる場合には、ヒートシール性、透明性が悪化するので好ましくない。また、上記密度が低すぎる場合には、フィルムがブロッキングし易くなるので好ましくない。」
「【0035】[III] 実験例
実施例1
A層 :リサイクル樹脂:エチレン系重合体○1
B層 :以下に述べる方法で製造したエチレン・1-ヘキセン共重合体○1
B´層:B層と同じ」
「【0050】
【表1】
[図:0001431167000004.jpg]
」
(イ)甲B2の記載から認定できる事項
上記(ア)の【0008】から、B層はヒートシール層であることがわかる。
また、上記(ア)の【表1】から、実施例1の再生樹脂積層フィルムのHAZEは1.5%であることがわかる。
(ウ)甲B2に記載された発明
上記(ア)、(イ)を総合し、特に実施例1について着目すると、甲B2には次の発明(以下「甲B2発明」という。)が記載されている。
「リサイクル樹脂であるエチレン系重合体からなるA層と、
エチレン・1-ヘキサン共重合体からなるヒートシール層であるB層と、
B層と同じB´層とを順に積層してなり、
HAZEが1.5%である、
再生樹脂積層フィルム。」
(2)甲A1を主引例とする進歩性
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲A1発明を対比する。
甲A1発明の「LLDPE-1からなるヒートシール層である第III層」は本件発明1の「シーラント層」に相当する。
甲A1発明の「LLDPE-1とHDPEを同量含有するリサイクル樹脂からなる第I層」は本件発明1の「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層」に相当する。
甲A1発明の「積層体」はヒートシール層を含みフィルムの態様を有するから、本件発明1の「シーラントフィルム」に相当する。
甲A1発明の「LLDPE-1からなるヒートシール層である第III層、MDPEからなる第II層、LLDPE-1とHDPEを同量含有するリサイクル樹脂からなる第I層をこの順に積層してな」る構成と、本件発明1の「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える」構成は、「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層に積層されたシーラント層と、を備える」構成である限りにおいて一致する。
甲A1発明は、ヒートシール層が「LLDPE-1からな」り、リサイクル樹脂が「LLDPE-1とHDPEを同量含有する」から、本件発明1の「前記シーラント層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含む」構成を満たす。
以上を総合すると、本件発明1と甲A1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点A]
「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルムであって、
前記シーラント層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含む、
シーラントフィルム。」
[相違点A-1]
リサイクル材含有層とシーラント層との積層構成について、本件発明1では、シーラント層が「前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層」されているのに対し、甲A1発明では、リサイクル樹脂からなる第I層とヒートシール層である第III層の間に「MDPEからなる第II層」が介在している点。
[相違点A-2]
本件発明1は、「前記リサイクル材含有層が、前記シーラントフィルムを平面視する方向から透過観察したときに透過明度が周囲よりも小さいドメインを含み、前記ドメインは、最大面積が1000μm2以下であり、且つ、最大アスペクト比が10以下であ」るのに対し、甲A1発明のリサイクル樹脂からなる第I層がかかる構成を有するか不明な点。
(イ)判断
事案に鑑み相違点A-2について検討する。
甲A1発明はヘイズが1.6%であるものの、甲A1にはリサイクル樹脂からなる第I層中の凝集体に着目する記載はなく、ヘイズが1.6%であるとしても凝集体の最大面積や最大アスペクト比が本件発明1の数値範囲を満たす蓋然性が高いとまではいえない。
そして、本件発明1はリサイクル材含有層中の凝集体に着目して、凝集体の最大面積と最大アスペクト比を所定数値以下とすることで、「ヒートシール性及び機械的特定を十分に有しつつ、・・・リサイクル材のマテリアルリサイクルを可能とする」(【0012】)という格別な作用効果を有するものである。
さらに、甲A1の記載のほか、申立人A、Bが提出する他の証拠にも、リサイクル材含有層中の凝集体の大きさに着目する点は記載も示唆もない。
したがって、甲A1発明において、相違点A-2に係る本件発明1の構成とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)申立人Aの主張について
a 主張の概要
(a)甲A1の実施例10はヘイズ値1.6%だから「最大面積が1000μm2以下」を満たす蓋然性が高い。(申立書Aの第29~第30ページ)
(b)甲A2(請求項2、【0014】)、甲A3(請求項1、【0021】、【0027】)にあるようにシーラント層において不相溶成分のアスペクト比を10以下に制御することは、密封性と開封性の観点から周知技術である。(申立書Aの第30ページ第7行~第31ページ第1行)
b 当審における判断
上記a(a)について検討するに、甲A1発明のヘイズ値が1.6%であったとしても、甲A1発明のリサイクル樹脂からなる第I層が含有し得る凝集体の最大面積が1000μm2以下である蓋然性が高いとまではいえないし、申立人Aはヘイズ値と凝集体の面積の相関を示す証拠を何ら示していない。よって、当該主張は採用できない。
次に、上記a(b)について検討するに、甲A2は【0014】等の記載からみてシーラント層に不相溶成分をあえて混合する技術であるし、甲A3は【0008】、【0013】等の記載からみて、島状粒子を形成する酸変性ポリオレフィン系重合体を、フィルムにシーラント性を付与するためにあえて混合する技術であるところ、甲A1には、甲A1発明のリサイクル樹脂からなる第I層中の凝集体に着目する記載も示唆もないから、甲A1発明に甲A2及び甲A3に記載された不溶成分又は島状粒子をあえて混合する周知技術を適用する動機付けはない。よって、当該主張も採用できない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲A1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲B1を主引例とする進歩性
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲B1発明を対比する。
甲B1発明の「ポリアミド樹脂(外層)/変性ポリオレフィン樹脂(B-1)(中間層)/ポリオレフィン樹脂(B-2)(内層)=30/10/50μmの3層共押出積層フィルムを粉砕後ペレット化し、これにバージンの原料をブレンドし、組成(質量%)が10/3.3/86.7であるスクラップ」は、本件発明1の「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材」に相当する。そうすると、甲B1発明のスクラップ(内層、回収層)は、本件発明1の「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層」に相当する。
甲B1発明の「ポリアミド樹脂組成物(外層)」がポリオレフィン樹脂B-1(中間層)を挟んで「スクラップ(内層、回収層)」に積層されている構成は、本件発明1の「前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層」と、「前記リサイクル材含有層に積層された樹脂層」である限りにおいて一致する。
甲B1発明の「積層フィルム」は本件発明1の「シーラントフィルム」と「積層フィルム」である限りにおいて一致する。
以上を総合すると、本件発明1と甲B1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点B1]
「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層に積層された樹脂層と、を備える、
積層フィルム。」
[相違点B1-1]
リサイクル材含有層に積層された樹脂層について、本件発明1は、「前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層」であって、さらに「前記シーラント層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含む」のに対し、甲B1発明の「ポリアミド樹脂組成物(外層)」は、リサイクル材からなる「スクラップ(内層、回収層)」に対し、「ポリオレフィン樹脂B-1(中間層)」を挟んで積層されている上、そもそもシーラント層といってよいかも不明な点。
[相違点B1-2]
本件発明1は、「前記リサイクル材含有層が、前記シーラントフィルムを平面視する方向から透過観察したときに透過明度が周囲よりも小さいドメインを含み、前記ドメインは、最大面積が1000μm2以下であり、且つ、最大アスペクト比が10以下であ」るのに対し、甲B1発明のスクラップ(内層、回収層)がかかる構成を有するか不明な点。
(イ)判断
相違点B1-1について検討するに、甲B1の記載から、甲B1発明の「ポリアミド樹脂組成物(外層)」がシーラント層であると理解すべき記載は見当たらない。この点に関し、甲B1の【0029】には、当該積層フィルムの用途として、「・・・デスクマットやファイル、フォルダーなど文具シート等として、幅広い分野で利用できる」と記載されており、おおよそシーラント層が不要な用途も念頭においている。
そうすると、甲B1発明の「ポリアミド樹脂組成物(外層)」は、むしろシーラント層ではなく、また、当該用途に鑑みれば、シーラント層とすることは、動機付けがないものと言わざるを得ない。
ただし、甲B1発明の層構成において、「ポリアミド樹脂組成物(外層)」は文字どおり外層であるから、念のためシーラント層であると仮定して検討を進める。まず、甲B1発明は、「ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂からなる積層フィルムの製造において、発生するスクラップの有効な回収再生利用法を提供することを課題とする」(【0005】)ものであり、その解決手段は「融点が120~200℃のポリアミド樹脂からなる層(A)を最外層に有し、融点が120~200℃のポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂の混合物からなる層(B)を少なくとも1層以上有する積層フィルムであって、前記層(B)が、前記積層フィルムの製造時のスクラップを原料とする回収層である」(【0006】)とするものである。そうすると、甲B1発明における「ポリアミド樹脂組成物(外層)」をポリアミド樹脂組成物以外のものとする余地はない。
一方、甲B1発明の「スクラップ(内層、回収層)」については、「ポリアミド樹脂の配合量が30重量%より大きく、かつポリオレフィン樹脂が70重量%未満の場合、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂の相溶性から好ましくない。」(【0023】)とされており、相溶性の観点から、スクラップ(内層、回収層)の主成分をポリアミド樹脂とする余地もない。
そうすると、甲B1発明における「ポリアミド樹脂組成物(外層)」を、「スクラップ(内層、回収層)」における含有比率が最も多い樹脂組成物を含むものとすることは、阻害事由がある。
したがって、甲B1発明において、相違点B1-1に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)申立人Bの主張について
申立人Bはシーラント層とリサイクル材含有層の主成分を同種とすることは、甲B3に記載されていると主張する。(申立書Bの第25ページ)
しかしながら、甲B3に相違点B1-1に係る構成が記載されていたとしても、上記(イ)のとおり、甲B1発明において、ポリアミド樹脂組成物(外層)をスクラップ(内層、回収層)の主成分とすることは、阻害要因がある。よって、当該主張は採用できない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲B1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)甲B2を主引例とする進歩性
ア 本件発明1について
(ア)対比
甲B2発明の「リサイクル樹脂であるエチレン系重合体からなるA層」は本件発明1の「2種以上の樹脂が含まれるリサイクル材」と「リサイクル材を含有するリサイクル材含有層」である限りにおいて一致する。
甲B2発明の「エチレン・1-ヘキサン共重合体からなるヒートシール層であるB層」はA層に直接積層されているから、本件発明1の「前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層」に相当する。
甲B2発明の「B層」は、「エチレン・1-ヘキサン共重合体からなる」ものであって、「リサイクル樹脂であるエチレン系重合体からなるA層」における含有比率が最も大きい樹脂を含むものであるから、本件発明1の「前記シーラント層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含む」構成を満たす。
甲B2発明の「再生樹脂積層フィルム」はヒートシール層を有するから、本件発明1の「シーラントフィルム」に相当する。
以上を総合すると、本件発明1と甲B2発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点B2]
「リサイクル材を含有するリサイクル材含有層と、前記リサイクル材含有層の一方の主面に積層されたシーラント層と、を備える、シーラントフィルムであって、
前記シーラント層が、前記リサイクル材含有層における含有比率が最も大きい樹脂と同種の樹脂を含む、
シーラントフィルム。」
[相違点B2-1]
リサイクル材について、本件発明1では、「2種以上の樹脂が含まれる」であるのに対し、甲B2発明では、「エチレン系重合体からなる層」である点。
[相違点B2-2]
本件発明1は、「前記リサイクル材含有層が、前記シーラントフィルムを平面視する方向から透過観察したときに透過明度が周囲よりも小さいドメインを含み、前記ドメインは、最大面積が1000μm2以下であり、且つ、最大アスペクト比が10以下であ」るのに対し、甲B2発明は、かかる構成を有するか不明な点。
(イ)判断
事案に鑑み相違点B2-1及び相違点B2-2について総合的に判断する。
甲B2発明はHAZEが1.5%であり、この値は、甲B2の「本発明は、・・・未使用のバージン樹脂の単層フィルムと比較して、透明性、衝撃強度、ヒートシール性が著しく優れている・・・再生樹脂積層フィルムに関するものである。」(【0001】)との記載も踏まえると、高い透明性を示すものといえる。
甲B2には、リサイクル樹脂であるA層について、「これらのポリオレフィン系樹脂は単一種類のものが好ましいが、混合体であっても構わない。また、・・・、少量の他の樹脂、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂を含んでいても良い。」(【0005】)との記載を踏まえると、混合樹脂としてもよい旨が示唆されているといえる。
しかしながら、甲B2には、リサイクル樹脂からなるA層を混合樹脂とした場合のHAZEの値については記載されていない。
そうすると、甲B2においてリサイクル樹脂からなるA層を混合樹脂とした場合においても、相違点B2-2に係る構成を有する蓋然性が高いとはいえない。
また、仮に混合樹脂とした場合、なおもってHAZEが小さい値を維持したとしても、上記(2)ア(イ)のと同様である。
したがって、甲B2発明において、相違点B2-1及び相違点B2-2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)申立人Bの主張について
a 申立人Bは、最大面積と最大アスペクト比について、甲B2の「スクリュー回転数:二軸部800rpm 一軸部80rpm」(【0033】)との記載から満たす蓋然性が高いと主張する。(申立書Bの第17ページ第1~6行)
しかしながら、申立人Bが指摘する甲B2の【0033】の記載箇所は、実施例及び比較例に用いるエチレン重合体及びプロピレン重合体の混錬条件ではあるものの、実施例及び比較例として、リサイクル樹脂であるA層が混合樹脂であるものは記載されておらず、仮にリサイクル樹脂からなるA層が混合樹脂である場合に同条件で混錬されたとしても、その場合のHAZE値は不明であるし、仮にHAZE値が低かったとしても、A層中の凝集体が、相違点B2-2に係る構成を満たす蓋然性が高いとまではいえないし、申立人Bはヘイズ値と凝集体の面積の相関を示す証拠を何ら示していない。よって、当該主張は採用できない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲B2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおり、請求項1~8に係る特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700859