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特許異議申立

2025-700022

電子部品包装用カバーテープおよび電子部品包装体

審判番号
2025-700022
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-154551
登録番号
7517378
請求日
2024年12月24日
審決日
2025年11月07日
公報発行日
2026年02月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友ベークライト株式会社
  • 【権利者代理人】速水 進治
  • 【異議申立人】末成 幹生
審判長/審判官
  • 審判長 神山 茂樹
  • 審判官 長谷川 一郎
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.536-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7517378号発明「電子部品包装用カバーテープおよび電子部品包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7517378号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 特許第7517378号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7517378号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和2年3月5日に出願された特願2020-37899号の一部を令和4年9月28日に新たな特許出願としたものであって、令和6年7月8日にその特許権の設定登録がされ、令和6年7月17日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~10に係る特許に対し、令和6年12月24日に特許異議申立人末成幹生(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。それ以降の経緯は以下のとおりである。 令和7年 3月14日付け:取消理由通知書 令和7年 4月23日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 令和7年 5月 8日 :特許権者による訂正請求書についての手続補正書(方式)の提出 なお、令和7年7月3日付けで当審から申立人に対して訂正請求があった旨の通知を行い、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に申立人から応答はなかった。 また、申立人は、遅くとも令和7年9月25日には死亡していたことが確認された。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年5月8日の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書による訂正の請求(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7517378号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は当審において訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記基材層は、ポリエステルを含み、かつ、10~30μmの厚みを有し、」とあるのを、 「前記基材層は、ポリエステルからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項3~10も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記基材層は、ポリエステルを含み、かつ、10~30μmの厚みを有し、」とあるのを、 「前記基材層は、ポリエステルからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し、」に訂正する。 (請求項2の記載を引用する請求項3~8、10も同様に訂正する。) (3)一群の請求項について 本件訂正前の請求項1、3~10は、請求項3~10が、本件訂正の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前の請求項1、3~10に対応する訂正後の請求項1、3~10は、一群の請求項である。 また、本件訂正前の請求項2~8、10は、請求項3~8、10が、本件訂正の対象である請求項2の記載を引用する関係にあるから、訂正前の請求項2~8、10に対応する訂正後の請求項2~8、10は、一群の請求項である。 そして、これらの一群の請求項は、共通する請求項3~8、10を有するから組み合わされて一群の請求項となるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~10〕に対して請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1、2は、請求項1、2に記載の「基材層」がポリエステルからなることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0039】及び【0057】~【0060】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 3 訂正の適否のまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備え、さらに、前記基材層と前記シーラント層との間に中間層を備え、前記中間層と前記シーラント層とは直接接しており、前記シーラント層をキャリアテープにヒートシールして用いる電子部品包装用カバーテープであって、 前記基材層は、ポリエステルからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し、 以下[条件1]により求められる剥離強度の平均値をFLowとし、以下[条件2]により求められる剥離強度の平均値をFHighとしたとき、FHigh/FLowの値が1.0~2.0であるカバーテープ(ただし、キャリアテープからの剥離時に、シーラント層が凝集破壊されることでキャリアテープの面にシーラント層の一部が残るカバーテープを除く)。 [条件1] シール条件:前記カバーテープを5.3mm幅にスリットして長尺状としたものを、シーラント層側の面で、デンカ株式会社製のキャリアテープ用シート「クリアレンCST2401」の表面と接触させ、そして、160℃、4kg/cm2、0.1秒の条件で熱シールし、複合体を得る。 剥離条件:前記複合体を、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、剥離強度を測定する。 [条件2] 熱シールの温度を200℃とした以外は、[条件1]と同じ条件。 【請求項2】 基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備え、さらに、前記基材層と前記シーラント層との間に中間層を備え、前記シーラント層をキャリアテープにヒートシールして用いる電子部品包装用カバーテープであって、 前記基材層は、ポリエステルからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し、 前記シーラント層は、樹脂を1種類のみ含み、複数種類の樹脂を含まず、 以下[条件1]により求められる剥離強度の平均値をFLowとし、以下[条件2]により求められる剥離強度の平均値をFHighとしたとき、FHigh/FLowの値が1.0~2.0であるカバーテープ(ただし、キャリアテープからの剥離時に、シーラント層が凝集破壊されることでキャリアテープの面にシーラント層の一部が残るカバーテープを除く)。 [条件1] シール条件:前記カバーテープを5.3mm幅にスリットして長尺状としたものを、シーラント層側の面で、デンカ株式会社製のキャリアテープ用シート「クリアレンCST2401」の表面と接触させ、そして、160℃、4kg/cm2、0.1秒の条件で熱シールし、複合体を得る。 剥離条件:前記複合体を、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、剥離強度を測定する。 [条件2] 熱シールの温度を200℃とした以外は、[条件1]と同じ条件。 【請求項3】 請求項1または2に記載の電子部品包装用カバーテープであって、 前記[条件1]の試験の際の、測定時間を横軸に、剥離に測定された力の大きさを縦軸にプロットしたグラフにおいて、力の大きさの最大値をfmax、力の大きさの最小値をfminとしたとき、fmax/fminの値が1~1.6であるカバーテープ。 【請求項4】 請求項1~3のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、 前記基材層が含む前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートを含むカバーテープ。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、 前記中間層は、ポリエチレンを含むカバーテープ。 【請求項6】 請求項1~5のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、 前記シーラント層は、(メタ)アクリル系樹脂を含むカバーテープ。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、 前記シーラント層の厚みは0.1~3μmであるカバーテープ。 【請求項8】 請求項1~7のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープであって、 前記シーラント層は、シーラント層を構成する成分を有機溶剤に溶解または分散させた塗布液を塗布し、有機溶剤を乾燥させることにより設けられるカバーテープ。 【請求項9】 請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープであって、 前記シーラント層は、樹脂を1種類のみ含み、複数種類の樹脂を含まないカバーテープ。 【請求項10】 電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、請求項1~9のいずれか1項に記載のカバーテープとを備え、 前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。」 第4 取消理由通知について 1 取消理由の概要 訂正前の特許請求の範囲の請求項1~10に対し、当審において通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (以下、申立人が提出した甲第○号証は「甲○」という。) 取消理由(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 本件明細書の【0021】、【0024】には、カバーテープのFHigh/FLowの値を1.0~2.0に調整するために、ポリエステル樹脂を選択する必要があることが示されており、【0057】~【0060】には、FHigh/FLowの値が1.0~2.0に調整された基材層の具体的な構成として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡社製、エスペット(登録商標)E5100)を選択した実施例のみが記載されているとともに、【0039】には、「例えば、東洋紡社のエスペット(登録商標)フィルムT7410などを好ましく用いることができる。詳細は不明だが、このフィルムを用いることで、FHigh/FLowの値を1.0~2.0に設計しやすくなる」と記載されている。 そうすると、本件発明の課題を解決する手段として、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」であるカバーテープを製造するために、「基材層は、ポリエステルからなる」ことが必須の構成要件であるといえる。 しかしながら、本件特許の請求項1には、「前記基材層は、ポリエステルを含み」と記載されており、本件特許の請求項1に係る発明は、基材層が、ポリエステルをその一部としてのみ含むものを包含するものである。 2 当審における判断 当審合議体は以下のとおり、上記取消理由で通知した取消理由によっては、本件発明1~10に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。 本件訂正により、請求項1、2における基材層は、「ポリエステルからなる」ことが特定されたから、上記取消理由は解消した。 第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 特許異議申立書(以下「申立書」という。)で申立人が主張する申立理由のうち、取消理由で採用しなかったものの概要は、次の通りである。 (1)申立理由1(甲1又は甲2に基づく新規性) 本件特許の請求項1、2、4~6、8、9に係る発明は甲1に記載された発明であり、本件特許の請求項1~6、8、9に係る発明は甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 (2)申立理由2(甲1又は甲2を引用例とする進歩性) 本件特許の請求項1~10に係る発明は、甲1又は甲2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 (3)申立理由3(実施可能要件) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が以下の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 本件明細書には、基材層について、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム以外にどのような素材を用いれば「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」を実現できるのか記載されておらず、シーラント層について、アクリル系シーラント樹脂(DIC社製、A450A)以外にどのような(メタ)アクリル樹脂を用いれば「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」が実現できるのか記載されておらず、シーラント層に無機粒子を使用しない場合又は平均粒径100nmの酸化アルミニウム以外の無機粒子を用いた場合にどのようにして「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」を実現できるか記載されておらず、カバーテープが接着層を備えていない場合にどのようにして「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」を実現できるのか記載されていない。 (4)申立理由4(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 請求項1~10においては、基材層について、延伸していない場合も含み、シーラント層について、アクリル系シーラント樹脂(DIC社製、A450A)以外の場合も含み、シーラント層に無機粒子を使用しない場合又は平均粒径100nmの酸化アルミニウム以外の無機粒子を用いた場合も含み、カバーテープについて、接着層を備えていない場合も含み、ヒートシール条件について何ら特定されておらず、キャリアテープ表面に小さな凹凸がある場合も含むところ、そのような場合においても、請求項1~10に係る発明が「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」を実現できることを当業者は認識できない。 (5)申立理由5(明確性要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 請求項1、2の記載において剥離強度の平均値FLowを特定するための条件に記載される「デンカ株式会社製のキャリアテープ用シート「クリアレンCST2401」」は、常に一定の品質、組成、構成を持つ商品であるとはいえないから、条件1も不明確である。 (6)証拠一覧 甲1:特開2005-96852号公報 甲2:特開2010-13135号公報 甲3:特開2005-281875号公報 甲4:特開2004-154949号公報 甲5:特開2019-156405号公報 甲6:特開2010-18687号公報 甲7:永田公一、「連載(III) セラミックグリーンシートにおけるサスペンジョンの3要素とその相互作用」、ニューセラミックスレター、ニューセラミックス懇話会、2017年61巻、p.9-18 甲8:特開平7-178335号公報 甲9:特開2017-88586号公報 甲10:特開2019-29589号公報 参考文献1:特開2021-138412号公報 2 当審における判断 当審合議体は以下のとおり、上記申立理由1~5によっては、本件発明1~10に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。 (1)各甲号証に記載された発明 ア 甲1について 甲1の【0014】~【0015】【表1】、【0017】の記載を参照すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「膜厚25μmの二軸延伸ポリエステルフィルムである外層2、 ポリエチレンからなる中間層3Aとポリエチレン100重量部及びメチルメタクリレート-スチレン共重合体30重量部を配合してなる中間層3Bとを膜厚30μmに成膜した中間層3、及び ポリメチレルメタクリレート100重量部に対して粒径1.4μmのシリカ粒子を3重量部配合してなり膜厚1μmに成膜したヒートシーラント層4をこの順に積層してなる、 電子部品包装用カバーテープ1。」 イ 甲2について 甲2の【0030】、【0033】【表1】、【図1】の実施例10の記載を参照すると、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 「基材層20として、二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ16μm、幅900mm、Sタイプ、ユニチカ株式会社製)に、AC剤として、EL-510(東洋モートン株式会社製)を塗布乾燥して、基材層フィルムを得、 前記基材層フィルムのAC剤を塗布した面に、中間層30としてポリエチレン樹脂(L-705、住友化学株式会社製)を厚さ30μmで押し出し、 アンチモンドープ酸化スズ球状粒子(平均粒子径0.02μm、CV値45%)10質量部をシーラント材(アクリル樹脂、LR-1065、三菱レイヨン株式会社製)100質量部に添加して塗工液を調製し、 中間層40の面をコロナ処理した後、シーラント層として該処理面に前記塗工液を10μm塗工し、乾燥し、4μmのシーラント層30を形成して得た、カバーテープ10。」 (2)甲1に基づく申立理由1、2(新規性、進歩性) ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「膜厚25μmの二軸延伸ポリエステルフィルムである外層2」、「中間層3」、「ヒートシーラント層4」はそれぞれ、本件発明1の「ポリエステルからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し」てなる「基材層」、「中間層」、「シーラント層」に相当する。 甲1発明の「電子部品包装用カバーテープ1」は、ヒートシーラント層4によりキャリアテープにヒートシールされていることは技術常識から明らかであるから、本件発明1の「前記シーラント層をキャリアテープにヒートシールして用いる電子部品包装用カバーテープ」に相当する。 甲1発明は、「外層2」と「中間層3」と「ヒートシーラント層4」「をこの順に積層してなる」から、本件発明1の「基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備え、さらに、前記基材層と前記シーラント層との間に中間層を備え、前記中間層と前記シーラント層とは直接接して」いる構成を満たす。 以上を総合すると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点1] 「基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備え、さらに、前記基材層と前記シーラント層との間に中間層を備え、前記中間層と前記シーラント層とは直接接しており、前記シーラント層をキャリアテープにヒートシールして用いる電子部品包装用カバーテープであって、前記基材層は、ポリエステルからなり、かつ、10~30μmの厚みを有する、カバーテープ。」 [相違点1] 本件発明1は、「キャリアテープからの剥離時に、シーラント層が凝集破壊されることでキャリアテープの面にシーラント層の一部が残るカバーテープを除く」のに対し、甲1発明は、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点2] 本件発明1は、「以下[条件1]により求められる剥離強度の平均値をFLowとし、以下[条件2]により求められる剥離強度の平均値をFHighとしたとき、FHigh/FLowの値が1.0~2.0である」 「[条件1] シール条件:前記カバーテープを5.3mm幅にスリットして長尺状としたものを、シーラント層側の面で、デンカ株式会社製のキャリアテープ用シート「クリアレンCST2401」の表面と接触させ、そして、160℃、4kg/cm2、0.1秒の条件で熱シールし、複合体を得る。 剥離条件:前記複合体を、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、剥離強度を測定する。 [条件2] 熱シールの温度を200℃とした以外は、[条件1]と同じ条件。」のに対し、甲1発明は、かかる構成を有するか不明な点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点2について検討する。 まず、相違点2は実質的なものである。 そして、熱シール温度が160℃の場合の剥離強度と、熱シール温度が200℃の場合の剥離強度を測定し、その比を所定範囲内に収めるということについて、甲1には記載も示唆もなく、申立人が提出した他の証拠にも記載も示唆もない。 そして、甲1の例えば【0004】には、剥離強度がシール温度に依存することの示唆はあるものの、シール温度が160℃の場合の剥離強度とシール温度が200℃の場合の剥離強度の比に着目することは記載も示唆もされていないから、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成を採用する動機付けもない。したがって、甲1発明に基づいて、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)申立人の主張について a 主張の概要(申立書27~29ページ) 本件明細書の【0024】、【0026】~【0028】、【0030】、【0031】、【0042】の記載を踏まえると、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」となる条件は、(a)基材がポリエステルを含み、厚さが10~30μmであり、(b)シーラント層が(メタ)アクリル系樹脂を含み、厚みが0.1~5μmであり、(c)シーラント層が、樹脂100重量部に対して1~20重量部の無機粒子を含む、(d)中間層を設ける、ことであるところ、これらの条件(a)~(d)を全て満たす甲1発明は、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」を満たす蓋然性が高いから、かかる構成は実質的な相違点ではない。 b 当審における判断 申立人が主張する条件(a)~(d)はいずれも、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」に調整しやすくなる条件として記載されているものであり、これらの条件が、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」となる十分条件として記載されているものではない。 そうすると、甲1発明が、これらの(a)~(d)の条件を満たしていたとしても、それをもって「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」を満たす蓋然性が高いとまではいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件発明2について (ア)対比 本件発明2と甲1発明を対比する。 甲1発明の「膜厚25μmの二軸延伸ポリエステルフィルムである外層2」、「中間層3」、「ポリメチレルメタクリレート100重量部に対して粒径1.4μmのシリカ粒子を3重量部配合してなり膜厚1μmに成膜したヒートシーラント層4」はそれぞれ、本件発明2の「ポリエステルからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し」てなる「基材層」、「中間層」、「樹脂を1種類のみ含み、複数種類の樹脂を含ま」ない「シーラント層」に相当する。 甲1発明の「電子部品包装用カバーテープ」は、ヒートシーラント層4によりキャリアテープにヒートシールされていることは技術常識から明らかであるから、本件発明2の「前記シーラント層をキャリアテープにヒートシールして用いる電子部品包装用カバーテープ」に相当する。 甲1発明は、「外層2」と「中間層3」と「ヒートシーラント層4」「をこの順に積層してなる」から、本件発明2の「基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備え、さらに、前記基材層と前記シーラント層との間に中間層を備え」ている構成を満たす。 以上を総合すると、本件発明2と甲1発明は、以下の一致点2で一致し、上記相違点1及び2と同じ点で相違する。 [一致点2] 「基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備え、さらに、前記基材層と前記シーラント層との間に中間層を備え、前記シーラント層をキャリアテープにヒートシールして用いる電子部品包装用カバーテープであって、 前記基材層は、ポリエステルからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し、 前記シーラント層は、樹脂を1種類のみ含み、複数種類の樹脂を含まないカバーテープ。」 (イ)判断及び申立人の主張について 上記ア(イ)及び(ウ)のとおり。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件発明3~10について 本件発明3~10は、本件発明1又は2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記ア又はイと同様の理由により、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)甲2に基づく申立理由1、2(新規性、進歩性) ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の「基材層20として、二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ16μm、幅900mm、Sタイプ、ユニチカ株式会社製)に、AC剤として、EL-510(東洋モートン株式会社製)を塗布乾燥して」なる「基材層フィルム」、「中間層30」、「シーラント層30」はそれぞれ、本件発明1の「ポリエステルからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し」てなる「基材層」、「中間層」、「シーラント層」に相当する。 甲2発明の「カバーテープ10」は、シーラント層30によりキャリアテープにヒートシールされていることは技術常識から明らかであるから、本件発明1の「前記シーラント層をキャリアテープにヒートシールして用いる電子部品包装用カバーテープ」に相当する。 甲2発明は、「基材層フィルム」と「中間層30」と「シーラント層30」をこの順に積層してなるから、本件発明1の「基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備え、さらに、前記基材層と前記シーラント層との間に中間層を備え、前記中間層と前記シーラント層とは直接接して」いる構成を満たす。 以上を総合すると、本件発明1と甲2発明は、上記一致点1と同じ点で一致し、上記相違点1及び2と同じ点で相違する。 (イ)判断 事案に鑑み相違点2について検討する。 まず、相違点2は実質的なものである。 そして、熱シール温度が160℃の場合の剥離強度と、熱シール温度が200℃の場合の剥離強度を測定し、その比を所定範囲内に収めるということについて、甲2には記載も示唆もなく、申立人が提出した他の証拠にも記載も示唆もない。 そして、甲2には、剥離強度と熱シール温度の関連に着目した記載も示唆もなく、熱シール温度が160℃の場合の剥離強度と熱シール温度が200℃の場合の剥離強度の比に着目することは記載も示唆もされていないから、甲2発明において、相違点2に係る本件発明1の構成を採用する動機付けもない。 したがって、甲2発明に基づいて、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)申立人の主張について a 主張の概要(申立書38~40ページ) 本件明細書の【0024】、【0026】~【0028】、【0030】、【0031】、【0042】の記載を踏まえると、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」となる条件は、(a)基材がポリエステルを含み、厚さが10~30μmであり、(b)シーラント層が(メタ)アクリル系樹脂を含み、厚みが0.1~5μmであり、(c)シーラント層が、樹脂100重量部に対して1~20重量部の無機粒子を含む、(d)中間層を設ける、ことであるところ、これらの条件(a)~(d)を全て満たす甲2発明は、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」を満たす蓋然性が高いから、かかる構成は実質的な相違点ではない。 b 当審における判断 上記aの主張は上記(2)ア(ウ)aと同様のものであるから、それについていての当審における判断も、上記(2)ア(ウ)bのとおりである。 (エ)小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件発明2について (ア)対比 本件発明2と甲2発明を対比する。 甲2発明の「基材層20として、二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ16μm、幅900mm、Sタイプ、ユニチカ株式会社製)に、AC剤として、EL-510(東洋モートン株式会社製)を塗布乾燥して」なる「基材層フィルム」、「中間層30」、「アンチモンドープ酸化スズ球状粒子(平均粒子径0.02μm、CV値45%)10質量部をシーラント材(アクリル樹脂、LR-1065、三菱レイヨン株式会社製)100質量部に添加して塗工液を調製し、中間層40の面をコロナ処理した後、シーラント層として該処理面に前記塗工液を10μm塗工し、乾燥し、」て得た「4μmのシーラント層30」はそれぞれ、本件発明2の「ポリエステルからなり、かつ、10~30μmの厚みを有し」てなる「基材層」、「中間層」、「樹脂を1種類のみ含み、複数種類の樹脂を含ま」ない「シーラント層」に相当する。 甲2発明の「カバーテープ10」は、シーラント層30によりキャリアテープにヒートシールされていることは技術常識から明らかであるから、本件発明2の「前記シーラント層をキャリアテープにヒートシールして用いる電子部品包装用カバーテープ」に相当する。 甲2発明は、「基材層フィルム」と「中間層30」と「シーラント層30」をこの順に積層してなるから、本件発明2の「基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられたシーラント層とを備え、さらに、前記基材層と前記シーラント層との間に中間層を備え」ている構成を満たす。 以上を総合すると、本件発明2と甲2発明は、上記一致点2と同じ点で一致し、上記相違点1及び2と同じ点で相違する。 (イ)判断及び申立人の主張について 上記ア(イ)及び(ウ)のとおり。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件発明3~10について 本件発明3~10は、本件発明1又は2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記ア又はイと同様の理由により、甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)申立理由3(実施可能要件)について ア 実施可能要件の判断基準 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすか否かは、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この点について検討する。 イ 当審における判断 本件明細書には、本件発明が解決しようとする課題が【0006】に、課題を解決するための手段が【0007】~【0011】に、発明を実施するための形態が【0014】~【0055】に、実施例が【0056】~【0070】に記載されている。 そして、実施例1~4において、本件発明に係る「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」を満たすカバーテープが得られているし、本件明細書には、FHigh/FLowの値を1.0~2.0に調整しやすくする条件として、(1)基材層がポリエステルを含み、厚みを10~30μmとすること(【0024】、【0042】)、(2)シーラント層が(メタ)アクリル系樹脂を含み、厚みを0.1~5μmとすること(【0026】、【0027】、【0030】)、(3)シーラント層が無機粒子を含み、その含有量を樹脂(熱可塑性樹脂)100質量部に対し、1~20質量部とすること(【0028】)、中間層を設けること(【0031】)が記載されているから、これらの記載を参照して各条件を調整することで、FHigh/FLowの値を1.0~2.0に調整することは十分可能であるといえる。 よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~10に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。 ウ 申立人の主張 申立人は上記1(3)のとおり主張しているところ、当該主張は要するに、本件明細書において、FHigh/FLowの値を1.0~2.0に調整しやすいとされている条件を備えないカバーテープにおいて、どのようにしてFHigh/FLowの値を1.0~2.0に調整するか記載されていないというものである。 しかしながら、本件発明1~10において、上記条件を備えないことが特定されているわけではないから、申立人の上記主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、実施可能要件に係る申立理由3には理由がない。 (5)申立理由4(サポート要件)について ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件を満たすか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この点について検討する。 イ 当審における判断 本件明細書の【0006】には、本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)として、「キャリアテープからカバーテープを剥離する際の、カバーテープの破断を抑えること」が記載されており、【0009】には、本件課題を解決するための手段が記載されている。そして、【0021】~【0023】には、本件課題が解決される機序として、基材層をポリエステルからなる厚み10~30μmの基材層とすることでカバーテープの基礎的な強度を担保するとともに、ヒートシール条件(温度、時間、押圧力等)の変動によるシール強度のムラに起因するカバーテープ剥離時の破断を抑制するため、ヒートシール条件が変動してもシール強度がさほど変化しないように、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」とする、すなわち、160℃でのヒートシールと200℃でのヒートシールで、シール強度がさほど変動しないようにすることで、カバーテープ剥離時の破断を抑制できることが説明されている。そして、【0056】~【0070】において、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」である実施例1~4においては、カバーテープ剥離時のテープ切れが発生せず、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」を満たさない比較例1、2においてはテープ切れが発生していることが示されている。 そうすると、「FHigh/FLowの値が1.0~2.0」である本件発明1~10は、本件課題を解決できると当業者であれば認識できる範囲のものである。 よって、本件発明1~10は、発明の詳細な説明に記載したものである。 ウ 申立人の主張 申立人は上記1(4)のとおり主張しているところ、当該主張は要するに、本件明細書において、FHigh/FLowの値を1.0~2.0に調整しやすいとされている条件を備えないカバーテープにおいて、どのようにしてFHigh/FLowの値を1.0~2.0に調整するかを当業者が認識できないというものである。 しかしながら、本件発明1~10において、上記条件を備えないことが特定されているわけではないから、申立人の上記主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、サポート要件に係る申立理由4には理由がない。 (6)申立理由5(明確性要件)について ア 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確性要件を満たすか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この点について検討する。 イ 当審における判断 本件発明1~10は、特許請求の範囲の請求項1~10の記載により特定されるものであるところ、請求項1~10の記載に不明確なところはない。 よって、本件発明1~10に係る発明は、明確である。 ウ 申立人の主張 申立人は上記1(5)のとおり主張しているところ、当該主張は要するに、請求項1、2の記載において剥離強度を測定するために使用される「デンカ株式会社製のキャリアテープ用シート「クリアレンCST2401」」が常に一定の品質、組成、構成を持つ商品ではないというものである。 しかしながら、上記キャリアテープ用シートは商品番号が付されて販売されているものであるから、商品番号が同じである限り、一定の品質、組成、構成を維持していると考えるのが通常であるし、申立人は、当該キャリアテープが一定の品質、組成、構成を持つ商品ではないことを示す証拠を何ら示していない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、明確性要件に係る申立理由5には理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1~10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700022

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