特許異議申立
2025-700950
ロール製品
- 審判番号
- 2025-700950
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-071655
- 登録番号
- 7656479
- 請求日
- 2025年10月02日
- 審決日
- 2025年11月20日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本製紙クレシア株式会社
- 【権利者代理人】杉村 憲司
- 【権利者代理人】杉村 光嗣
- 【権利者代理人】柿沼 公二
- 【権利者代理人】唐牛 乾
- 【異議申立人】塩野 啓二
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 岩谷 一臣
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-Y (B65D) / P1651.536-Y (B65D) / P1651.537-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7656479号発明「ロール製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7656479号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7656479号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和3年4月21日に出願され、令和7年3月26日にその特許権の設定登録がされ、令和7年4月3日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年10月2日に特許異議申立人塩野啓二(以下「申立人」という。)により、請求項1~6に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされ、令和7年10月22日に特許異議申立書を補正対象とする手続補正書が提出された。
第2 本件発明
特許第7656479号の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~6の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
長尺の紙製シートをロール状に巻き取ったロールをガゼット袋に包装したロール製品であって、
前記ガゼット袋は、前記ロールを収納する収納部と、前記収納部の上端から上方に立ち上がる中間部と、前記収納部及び前記中間部の幅方向両側に位置するガゼット部と、前記中間部の頂部から上方に立ち上がる把手部と、前記収納部及び/又は前記ガゼット部の表面に設けられた印刷部と、を有し、
前記ガゼット袋は、樹脂フィルムを含んで構成され、
前記樹脂フィルムは、バイオマス由来の原料を全原料の1質量%以上75質量%以下含有し、
前記樹脂フィルムのTD方向のヤング率が150MPa以上600MPa以下、MD方向のヤング率が100MPa以上400MPa以下であり、
前記ガゼット部における印刷面積率が20%以上95%以下であり、ガゼット率が20%以上95%以下であり、
前記ガゼット袋表面の前記印刷部が形成されていない非印刷部の動摩擦係数が0.01以上0.50以下である、ロール製品。
【請求項2】
前記ガゼット袋の印刷されていない内側表面の動摩擦係数が0.01以上0.5以下である、請求項1に記載のロール製品。
【請求項3】
前記把手部を除く前記ガゼット袋の全表面積に対する前記印刷部の面積の比率が20%以上である、請求項1又は請求項2に記載のロール製品。
【請求項4】
前記樹脂フィルムがポリエチレンを含有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のロール製品。
【請求項5】
前記樹脂フィルムの厚みが20μm以上60μm以下である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のロール製品。
【請求項6】
前記ロールが、トイレットロール又はキッチンタオルロールである、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のロール製品。」
第3 申立理由の概要
申立人は、以下に示す甲第1号証~甲第13号証(以下「甲1」等という。)を提出し、本件発明1~6に係る特許は、以下の理由により、取り消すべきものである旨主張する。
1 申立理由1(進歩性)
本件発明1~6は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 申立理由2(実施可能要件)
本件特許は、請求項1~6に関する明細書の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(1)明細書の【0037】には、実施例4、実施例5、比較例2、比較例3の樹脂フィルムに「ポリエステル樹脂」が含まれるものが記載されているのに対して、【0042】【表1】及び【0043】【表2】には、樹脂フィルムの材質として「PE」が記載されており、両者の記載内容が整合しない。
(2)明細書の【0037】、【0042】【表1】及び【0043】【表2】に記載された実施例及び比較例において、フィルムに用いた樹脂が明記されていない。
(3)明細書の【0043】【表2】に記載された比較例のバイオマス由来原料配合率が不明である。
3 申立理由3(サポート要件)
明細書の【0037】、【0042】【表1】及び【0043】【表2】に記載された実施例及び比較例において、フィルムに用いた樹脂が明記されておらず、また、明細書の【0043】【表2】に記載された比較例のバイオマス由来原料配合率が不明であるから、本件特許の請求項1~6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
したがって、請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[引用文献等一覧]
甲1 特開2017-12368号公報
甲2 特開2011-73693号公報
甲3 特開2021-35771号公報
甲4 再公表特許WO2019/93217号
甲5 特開2020-192811号公報
甲6 特開2009-96474号公報
甲7 意匠登録第1206498号公報
甲8 意匠登録第1264688号公報
甲9 意匠登録第1490881号公報
甲10 意匠登録第1493931号公報
甲11 特開2014-88476号公報
甲12 特開2019-14521号公報
甲13 再公表特許WO00/47406号
第4 当審の判断
1 引用文献の記載等
(1)甲1の記載
甲1には次の記載がある。(なお、下線は当審が付した。「・・・」は省略した部分を表す。以下同様。)
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した特許文献3記載の技術は、包装袋と別体の帯状の把持部を接合したタイプに関するものであるが、包装袋の対向する上辺から上方に向かって切妻屋根型に延びて接合される把持部を設けたガゼットタイプに長巻のロール製品を包装すると、包装袋の上辺と把持部の間に荷重が掛かり、この部位のロール製品の端部が潰れる場合があった。
従って、本発明は、長巻のロール製品をガゼットタイプの包装袋に収納したロール製品パッケージにおいて、持ち運び易く、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難く、包装袋内でロール製品を安定して保持できるロール製品パッケージの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のロール製品パッケージは、フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙の2plyのシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段または3段重ねて前記包装袋に包装してなり、前記包装袋は筒状のガゼット袋から構成され、前記ロール製品を囲む略直方体状の本体部と、前記本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合された把持部と、を有し、前記把持部には指掛け穴が形成されており、前記ロール製品の巻長が63~103m、コアを除く1ロールの質量が200~360g、巻き硬さが1.0~3.0mmであり、前記フィルムの坪量が18~43g/m2であり、前記長辺から前記把持部までの前記包装袋の傾斜角θが25~45度であり、前記長辺同士の間隔Wが105~134mmである。」
「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、包装袋100の把持部4側を「上端」側とし、その反対側を「下端」側とする。
図1は、本発明の実施形態に係るロール製品パッケージ200の斜視図を示す。ロール製品パッケージ200は、フィルムからなる包装袋100に、後述するロール製品50を軸方向を上下にして一列に2個並べた段を、2段または3段重ねて収納してなる。なお、ロール製品50が2個並ぶ方向を長手方向Lとする。
包装袋100は、本体部6と、本体部6の上端側の把持部4を備えている。断面図2に示すように、包装袋100は、チューブ状(筒状)フィルムの左右両側をガゼット8として内側に対称的に折り込み、各ガゼット8の折り込み端縁8aが包装袋100の長手方向L(図1参照)中央付近で近接するように平面状に折り畳み、上端で折り畳み部分の適所をヒートシール等で接合して形成されている。このようにしてヒートシールで一体化され固定された矩形の扁平部分が把持部4をなしている。
本体部6は下端が開口し、下端側からロール製品を収納し、開口端をヒートシールして封止部201が形成されている。又、ロール製品を収納した際に本体部6のガゼットが展開され、本体部6は4つの側面6a~6dを有する矩形断面で略直方体を構成するようになっている。
【0011】
把持部4は、本体部6の上辺のうち、互いに対向する長辺45,55から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合されてなり、長辺45,55と把持部4との間に、それぞれ切妻屋根状のパネル部41、51が傾斜して形成されている
パネル部41は、長辺45と、パネル部山折り稜線43とを有し、パネル部山折り稜線43は長手方向Lに垂直で、パネル部41の妻側の端縁を構成している。同様に、パネル部51は、長辺55と、パネル部山折り稜線53とを有し、パネル部山折り稜線53は長手方向Lに垂直で、パネル部51の妻側の端縁を構成している。なお、パネル部山折り稜線43、53は同じ向きに位置する。」
「【0016】
包装袋100を構成するフィルムの坪量が18~43g/m2である。
フィルムの坪量が18g/m2未満であると、強度が低下し、パッケージの運搬時等に包装袋が破れる。フィルムの坪量が43g/m2を超えると、強度が高くなり過ぎ、ロール製品を包装した際、ロール製品を締め付ける力が増してロール製品が潰れやすくなったり、フィルムがゴワゴワする。フィルムの坪量は、好ましくは22~38g/m2、より好ましくは27~34g/m2である。
フィルムの材質は制限されないが、破れにくい(伸びやすい)ポリエチレンを含む組成が好ましい。また、フィルムの片面が印刷されていても良く、印刷面(印刷層)は包装袋100の外面(消費者が手で触る面)側でもよく、内面(包装袋100内のトイレットロール等に接する面)側にあってもよい。但し、印刷層が包装袋100の外面側に位置すると、ロール製品パッケージの商品を陳列する場合、擦れ等により印刷層が傷ついたり剥がれるおそれがあることから、印刷層を包装袋100の内面に向けることが好ましい。なお、フィルムを積層(ラミ)構造とすると、印刷層の両面をフィルムで挟む構造となり、印刷層を内外面のどちらに向けても傷が付き難いが、コストアップになる。」
「【0026】
なお、図7に示すようにして、把持部4の長さを調整できる。図7において、ロール製品50の巻直径を117mmとすると、ロール製品50を一列に2個並べたときの外周長さは602mmと計算され、若干の余裕を持たせた筒状の包装袋100の周長の一例を610mmとする。
図7(a)の包装袋100では、長手方向の長さ(=把持部の長さ)を215mmとし、ガゼット部の長さを45mmとするので、把持部4の長さは、(巻直径×2)の92%(=215mm÷234mm)となる。
一方、図7(a)の包装袋100では、長手方向の長さ(=把持部の長さ)を165mmと短くし、ガゼット部の長さを70mmとするので、把持部4の長さは、(巻直径×2)の71%(=165mm÷234mm)となる。」
「【図1】
[図:0001430049000001.jpg]
【図2】
[図:0001430049000002.jpg]
」
「【図7】
[図:0001430049000003.jpg]
」
(2)甲1の記載から認定される事項
上記(1)により、甲1には次の事項が記載されていると認められる。
甲1の【0011】、【図1】の記載から、側面6aの上辺が長辺45であり、側面6cの上辺が長辺55である。
(3)甲1に記載された発明
上記(1)、(2)により、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「長巻のロール製品をガゼットタイプの包装袋に収納したロール製品パッケージであって、(【0006】)
ロール製品パッケージ200は、フィルムからなる包装袋100に、ロール製品50を軸方向を上下にして一列に2個並べた段を、2段または3段重ねて収納してなり、ロール製品50が2個並ぶ方向を長手方向Lとして、
包装袋100は、本体部6と、本体部6の上端側の把持部4を備えており、包装袋100は、チューブ状(筒状)フィルムの左右両側をガゼット8として内側に対称的に折り込み、各ガゼット8の折り込み端縁8aが包装袋100の長手方向L中央付近で近接するように平面状に折り畳み、上端で折り畳み部分の適所をヒートシール等で接合して形成されており、ヒートシールで一体化され固定された矩形の扁平部分が把持部4をなしており、
ロール製品を収納した際に本体部6のガゼットが展開され、本体部6は4つの側面6a~6dを有する矩形断面で略直方体を構成するようになっており、(【0010】)
把持部4は、互いに対向する、側面6aの上辺である長辺45と側面6cの上辺である長辺55から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合されてなり、長辺45、55と把持部4との間に、それぞれ切妻屋根状のパネル部41、51が傾斜して形成されており、(【0011】、上記(2))
フィルムの包装袋100の外面側に印刷層が印刷された、(【0016】)
ロール製品パッケージ。」
2 申立理由1(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「包装袋」は、「ガゼットタイプ」であるから、本件発明1の「ガゼット袋」に相当し、甲1発明の「長巻のロール製品をガゼットタイプの包装袋に収納したロール製品パッケージ」は、本件発明1の「長尺の紙製シートをロール状に巻き取ったロールをガゼット袋に包装したロール製品」に相当する。
甲1発明の「本体部6」は、「ロール製品を収納した際に本体部6のガゼットが展開され、本体部6は4つの側面6a~6dを有する矩形断面で略直方体を構成するようになって」いるから、本件発明1の「ロールを収納する収納部」に相当する。
甲1発明は、「側面6aの上辺である長辺45と側面6cの上辺である長辺55から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合されてなり、長辺45、55と把持部4との間に、それぞれ切妻屋根状のパネル部41、51が傾斜して形成されて」いること、から、甲1発明の「パネル部41、51」及び「パネル部41」と「パネル部51」をつなぐフィルム部分は、本件発明1の「前記収納部の上端から上方に立ち上がる中間部」に相当し、また、当該「把持部4」は、本件発明1の「前記中間部の頂部から上方に立ち上がる把手部」に相当する。
甲1発明の「ガゼット8」は、「チューブ状(筒状)フィルムの左右両側」に位置しているから、本件発明1の「前記収納部及び前記中間部の幅方向両側に位置するガゼット部」に相当する。
甲1発明「フィルムの包装袋100の外面側に印刷層が印刷された」ことと、本件発明1の「前記収納部及び/又は前記ガゼット部の表面に設けられた印刷部」を有することとは、ガゼット袋の表面に設けられた印刷部を有する限りで一致する。
甲1発明において「包装袋100」が「フィルムからなる」ことは、本件発明1において「前記ガゼット袋は、樹脂フィルムを含んで構成され」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「長尺の紙製シートをロール状に巻き取ったロールをガゼット袋に包装したロール製品であって、
前記ガゼット袋は、前記ロールを収納する収納部と、前記収納部の上端から上方に立ち上がる中間部と、前記収納部及び前記中間部の幅方向両側に位置するガゼット部と、前記中間部の頂部から上方に立ち上がる把手部と、前記ガゼット袋の表面に設けられた印刷部と、を有し、
前記ガゼット袋は、樹脂フィルムを含んで構成された、
ロール製品。」
[相違点1]
ガゼット袋の表面に設けられた印刷部を有することに関して、本件発明1は、「前記収納部及び/又は前記ガゼット部の表面に設けられた印刷部」を有するのに対し、甲1発明は、「フィルムの包装袋100の外面側に印刷層が印刷され」ている点。
[相違点2]
本件発明1は、「前記樹脂フィルムは、バイオマス由来の原料を全原料の1質量%以上75質量%以下含有」するのに対して、甲1発明は、そのようなものであるか不明な点。
[相違点3]
本件発明1は、「前記樹脂フィルムのTD方向のヤング率が150MPa以上600MPa以下、MD方向のヤング率が100MPa以上400MPa以下であ」るのに対して、甲1発明は、そのようなものであるか不明な点。
[相違点4]
本件発明1は、「前記ガゼット部における印刷面積率が20%以上95%以下であり、ガゼット率が20%以上95%以下であ」るのに対して、甲1発明は、そのようなものであるか不明な点。
[相違点5]
本件発明1は、「前記ガゼット袋表面の前記印刷部が形成されていない非印刷部の動摩擦係数が0.01以上0.50以下である」のに対して、甲1発明は、そのようなものであるか不明な点。
イ 本件発明1の技術的意義について
本件特許の明細書には、本件発明1の技術的意義に関して次の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載されるようなバイオマス樹脂を含有するバイオマスフィルムをトイレットロールやキッチンタオルロールのガセット包装袋に用いると、開口不良が発生する場合がある。例えば、ガセット袋の内面同士が疑似接着してしまうブロッキングと言われる不具合である。また、フィルム粘着性が増すため、内容物と疑似接着してしまう恐れがある。特に、内容物が長尺のトイレットロール製品やキッチンタオルロール製品である場合、フィルムとロールが強く密着するため、発生しやすくなる。これらの問題は、例えばバイオマスフィルムに通常のフィルムをラミネート加工することで解決するが、フィルムコストが高くなり、実用的ではない。また、フィルムに添加するシリカ等のアンチブロッキング剤を通常よりも増量して解決する方法もあるが、その場合、インキ抜け等の印刷不良が発生したり、ヒートシール強度が不足したりする等の問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ロールをガゼット包装で収納し、開口不良、印刷不良及び開封不良の発生や内容物との疑似接着が抑制された環境配慮型ガゼット包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ガゼット包装袋を構成する樹脂フィルムにおける樹脂フィルムの全原料中のバイオマス由来の原料の割合、樹脂フィルムのTD方向のヤング率、ガゼット部における印刷面積率、ガゼット率をそれぞれ所定の範囲とすることで、ガゼット包装体としての、所望のロール製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、下記のロール製品を提供する。
【0010】
(1)長尺の紙製シートをロール状に巻き取ったロールをガセット袋に包装したロール製品であって、
前記ガセット袋は、前記ロールを収納する収納部と、前記収納部の上端から上方に立ち上がる中間部と、前記収納部及び前記中間部の幅方向両側に位置するガゼット部と、前記中間部の頂部から上方に立ち上がる把手部と、前記収納部及び/又は前記中間部の表面に設けられた印刷部と、を有し、
前記ガゼット袋は、樹脂フィルムを含んで構成され、
前記樹脂フィルムは、バイオマス由来の原料を全原料の1質量%以上75質量%以下含有し、
前記樹脂フィルムのTD方向のヤング率が150MPa以上600MPa以下であり、
前記ガゼット部における印刷面積率が20%以上95%以下であり、ガゼット率が20%以上95%以下である、ロール製品。
・・・」
「【0022】
(バイオマス由来原料の含有割合)
本実施形態の樹脂フィルムは、例えば、バイオマス系樹脂材料と石油系樹脂材料とを含んでいる。樹脂フィルムにおけるバイオマス由来原料の含有率は、バイオマス系樹脂材料と石油系樹脂材料とを合わせた全樹脂材料(全原料)の1質量%以上75質量%以下の範囲、好ましくは3質量%以上50質量%以下の範囲、より好ましくは5質量%以上25質量%以下の範囲である。バイオマス由来原料の含有率が1質量%未満では、環境配慮型の樹脂フィルムとは言い難い。バイオマス由来原料の含有率が75質量%を超えると、樹脂フィルム表面の粘着性が増し、中間部30におけるブロッキングが発生し易くなる傾向がある。バイオマス由来原料の含有割合は、ASTM D6866法によって測定される。
【0023】
(TD方向ヤング率)
樹脂フィルムのTD方向のヤング率は、150MPa以上600MPa以下の範囲、好ましくは200MPa以上500MPa以下の範囲、より好ましくは250MPa以上400MPa以下の範囲である。TD方向ヤング率が150MPa未満では、ガゼット包装するときに、樹脂フィルムが柔らかすぎて吸引パッド51と樹脂フィルムとの間に隙間が生じやすくなり、バキュームで吸引できないことから、開口不良が発生し易い傾向がある。TD方向ヤング率が600MPa超えると、ガゼット包装袋が広がりにくく、内容物であるロール10の形状に十分追従せず、包装不良が発生する傾向がある。」
「【0030】
(印刷面積率及びガゼット率)
ガゼット部35(ここでは収納部20中のガゼット部35aと中間部30中のガゼット部35bとの合計)は、印刷面積率が20%以上95%以下の範囲、好ましくは30%以上95%以下の範囲、より好ましくは40%以上95%以下の範囲であり、ガゼット率が20%以上95%以下の範囲、好ましくは30%以上95%以下の範囲、より好ましくは40%以上95%以下の範囲である。ここで、印刷面積率とは、収納部20と中間部30との全面積に対するガゼット35a、35bに設けられた印刷部の全面積の百分率(%)、又はガゼット袋の全面積(把手部40を除く)に対する印刷部の全面積の百分率である。
【0031】
図4に示すガゼット部35bの水平方向断面図を示す。ガゼット袋では、外側に位置する樹脂フィルムABは、内側に折り込まれた樹脂フィルムAFと二重に重なるマチ部分を形成し、このマチ部分がガゼット部35bである。他の3つのガゼット部35bも、外側と内側とで樹脂フィルムが二重に重なったマチ部分である。図4において、ガゼット率(%)=(辺AFの長さ+辺EFの長さ+辺BCの長さ+辺CDの長さ)÷(辺ABの長さ+辺DEの長さ)×100で表される。
【0032】
図5に基づいて、ガゼット率を20%以上95%以下に設定した理由を説明する。ガゼット率が前述の範囲にあると、図5(a)に示すように、辺AF及び辺EFが適度な長さになって(折り目A、E、F間の距離が適切な長さになって)、ガゼット袋にロール10を収納しても、樹脂フィルムが拡がるゆとりがあるので、樹脂フィルムは非常に破れにくくなり、折り目B、C、Dでも同様である。ガゼット率が20%未満では、図5(b)に示すように、折り目A、E、F間の距離、及び折り目B、C、D間の距離が短くなりすぎて、ガゼット袋にロール10を収納するときに、樹脂フィルムに膨張しようとする比較的大きな応力が必要になり、吸引による開口時及び包装時に樹脂フィルムが破れ易い傾向がある。一方、ガゼット率が95%超えると、図5(c)に示すように、樹脂フィルムの内側への折り込みにばらつきを生じたときに、折り目C、Fが非常に近接して疑似接着を起こし易くなり、結果として開口時にブロッキングが発生し易くなる傾向がある。」
以上の記載を総合すると、本件発明1は、バイオマス由来の原料を含有する樹脂フィルムに用いた場合に問題が生じることを前提として、「前記樹脂フィルムは、バイオマス由来の原料を全原料の1質量%以上75質量%以下含有し、前記樹脂フィルムのTD方向のヤング率が150MPa以上600MPa以下」であり、「前記ガゼット部における印刷面積率が20%以上95%以下であり、ガゼット率が20%以上95%以下であ」るという発明特定事項を有することにより、「ロールをガゼット包装で収納し、開口不良、印刷不良及び開封不良の発生や内容物との疑似接着が抑制された環境配慮型ガゼット包装体」とするという技術的意義を有するものである。
ウ 判断
上記イに照らすと、相違点2~4係る事項は、いずれもバイオマス由来の原料を含有することに起因するものであり、それぞれが独立した別個のパラメータとして理解するのではなく、互いに関連するものとして総合的に理解することが要されるところ、甲1及び他のいずれの証拠にも、当該相違点2~4に係る事項に関し、互いに関連するパラメータとして総合的に得ることは記載も示唆もされていない。また、それらを関連するものとして総合する動機づけもない。さらに、当該相違点2~4に係る事項に関し、互いに関連するパラメータとして総合的に得る動機付けがないことは、提出された他の証拠を参照しても同様である。
そして、本件発明1は、そのような構成によって「ロールをガゼット包装で収納し、開口不良、印刷不良及び開封不良の発生や内容物との疑似接着が抑制された環境配慮型ガゼット包装体」を得るという格別な効果を奏するものである。
そうすると、甲1発明において、相違点2~4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものではない。
エ 申立人の主張について
申立人は、相違点2について、ロール製品の包装袋の原料として、バイオマス原料を用いることが周知技術(甲2、甲3)であること、相違点3について、包装分野ではフィルムのMD方向及びTD方向のヤング率を100~600MPaとすることが周知技術(甲4、甲5)であること、相違点4について、ロール製品の包装袋の技術分野では直方体の形状のガゼット包装袋の正面(背面)及び側面に印刷面積率が20%~95%で一連のデザインを印刷することが周知技術(甲6~甲10)であり、甲1(【0026】、【図7】)にはガゼット率が41.9%及び84.8%の包装袋が記載されていることから、本件発明1は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかしながら、相違点に係る各構成が周知技術又は甲1に記載された事項だとしても、各周知技術等が、バイオマス由来の原料を含有する樹脂フィルムに用いた場合に問題が生じることを前提としたものでない。すなわち上記ウで示したとおり、当該相違点2~4に係る事項に関し、互いに関連するパラメータとして総合的に得る動機付けは得られない以上、それら周知技術等を寄せ集めて、甲1発明において相違点に係る本件発明1の構成とすることは容易に想到できたものではない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
オ 小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)と同様の理由により、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 申立理由2(実施可能要件)について
(1)実施可能要件についての判断
上記第2のとおり、本件発明は、本件特許の請求項1~6に記載のとおりのものであるところ、発明の詳細な説明の【0013】~【0035】には、本件発明を実施するための形態について記載されるとともに、【0036】~【0044】には実施例が示され、【0042】の【表1】における、本件発明の発明特定事項を有する実施例1~15が【0007】~【0008】の記載から把握できる、「ロールをガゼット包装で収納し、開口不良、印刷不良及び開封不良の発生や内容物との疑似接着が抑制された環境配慮型ガゼット包装体」を提供することであるとする、本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決するものとして記載されている。
これらの記載を参照することにより、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施できるものである。
一方で、発明の詳細な説明の【0037】の記載と、【0042】【表1】及び【0043】【表2】の記載において「材質(PE)」と記載されていることは、互いに整合していない。これに関し、本件発明の発明が解決しようとする課題は、上記【0007】~【0008】から把握されるとおりのものであるところ、当該課題は、樹脂としてポリエチレンであろうとポリエステルであろうと、バイオマス由来の原料を含むことに起因して生じるものと理解される。このことは、請求項1において「前記ガセット袋は、樹脂フィルムを含んで構成され、前記樹脂フィルムは、バイオマス由来の原料を・・・含有し」と記載され、また、【0021】においてポリエチレンやポリエステル等を含む様々な樹脂が例示されていることからみても整合する。そして、本件特許の発明の詳細な説明には、ガセット袋に用いる樹脂フィルムとしてどのようなものを採用すべきか記載(【0020】~【0022】、【0037】)されており、さらに、バイオマス由来原料の好ましい配合割合も記載(【0022】)されているものである。これらの理解を踏まえれば、【0042】【表1】及び【0043】【表2】において「材質(PE)」と記載され、【0037】の記載と整合していないことをもって、直ちに本件発明を実施することが困難であるということはできない。
仮に、【0042】【表1】に記載の「ポリエチレン」と、【0037】に記載の「ポリエステル」の一方で実施できないとしても、両方を試す程度のことは過度の試行錯誤を要するとはいえない。
(2)申立人の主張について
ア 上記第3の2(1)の主張について
上記(1)のとおり、発明の詳細な説明の【0037】の記載と、【0042】【表1】及び【0043】【表2】との記載が整合しないことをもって、本発明を実施することが困難であるということはできない。
イ 上記第3の2(2)の主張について
実施例に関する【0037】と【0042】【表1】には、樹脂フィルムに用いられた樹脂が記載されている。
そして、実施例の樹脂フィルムに用いられた樹脂がいかなるものであるか不明であったとしても、発明の詳細な説明の【0022】には、樹脂フィルムである熱可塑性樹脂フィルムに用いられる樹脂が例示されており、当該【0022】の記載に基づき当業者が選択調整し得るものであり、過度の試行錯誤を要することなく実施可能である。
ウ 上記第3の2(3)の主張について
比較例のバイオマス由来原料配合率が不明であることが直ちに実施可能要件を満たしていないことにはならない。
(3)申立理由2のまとめ
よって、請求項1~6に関して、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
4 申立理由3(サポート要件)について
(1)発明が解決しようとする課題
発明の詳細な説明の【0008】の記載によると、本件発明の解決しようとする課題は「ロールをガゼット包装で収納し、開口不良、印刷不良及び開封不良の発生や内容物との疑似接着が抑制された環境配慮型ガゼット包装体を提供すること」(以下「本件課題」という。)である。
(2)本件課題を解決するための手段
発明の詳細な説明の【0010】には、本件課題を解決するための手段について、「長尺の紙製シートをロール状に巻き取ったロールをガセット袋に包装したロール製品であって、
前記ガセット袋は、前記ロールを収納する収納部と、前記収納部の上端から上方に立ち上がる中間部と、前記収納部及び前記中間部の幅方向両側に位置するガゼット部と、前記中間部の頂部から上方に立ち上がる把手部と、前記収納部及び/又は前記中間部の表面に設けられた印刷部と、を有し、
前記ガゼット袋は、樹脂フィルムを含んで構成され、
前記樹脂フィルムは、バイオマス由来の原料を全原料の1質量%以上75質量%以下含有し、
前記樹脂フィルムのTD方向のヤング率が150MPa以上600MPa以下であり、
前記ガゼット部における印刷面積率が20%以上95%以下であり、ガゼット率が20%以上95%以下である、ロール製品。」と記載されている。
ここで、発明の詳細な説明の【0022】、【0023】、【0030】~【0032】の記載を参照すると、本件課題を解決するための手段は、「前記ガゼット袋は、樹脂フィルムを含んで構成され、前記樹脂フィルムは、バイオマス由来の原料を全原料の1質量%以上75質量%以下含有し、前記樹脂フィルムのTD方向のヤング率が150MPa以上600MPa以下であり、前記ガゼット部における印刷面積率が20%以上95%以下であり、ガゼット率が20%以上95%以下である」(以下「本件課題解決手段」という。)ことといえ、発明の詳細な説明の【0036】~【0044】において、【0042】【表1】における本件課題解決手段を含むロール製品である実施例1~15が、本件課題を解決していることを確認している。
そうすると、当業者は本件課題解決手段を含むロール製品は本件課題を解決できると認識できる。
そして、本件発明1は、本件課題を解決できると認識できる本件課題解決手段をさらに限定したものであるから、本件発明1及び本件発明1をさらに限定した本件発明2~6は、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(3)申立人の主張について
申立人は、明細書の【0037】、【0042】【表1】及び【0043】【表2】に記載された実施例及び比較例において、フィルムに用いた樹脂が明記されておらず、また、明細書の【0043】【表2】に記載された比較例のバイオマス由来原料配合率が不明である旨主張する。
しかしながら、本件課題を解決するための手段は、上記(3)で示した本件課題解決手段のとおり、樹脂フィルムにおけるバイオマス由来の原料の含有割合、樹脂フィルムのTD方向のヤング率、ガゼット部における印刷面積率及びガゼット率によるものであって、フィルムに用いた樹脂の種類によるものではない。
また、申立人は、比較例について、石油系樹脂を100%用いたものであると仮定した主張をしている。しかしながら、本件発明においては、バイオマス由来の原料を全原料の1質量%以上75質量%以下としているのであるから、比較例のものには、バイオマス由来の原料がこの範囲にないものが含まれることは合理的に理解できる。
そうすると、比較例について、石油系樹脂を100%用いたものであると仮定し、これを前提とした主張は根拠がない。
さらに、比較例のバイオマス由来原料配合率が不明であることは、必ずしも比較例が本件課題解決手段を備えていないことと矛盾するものではない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(4)申立理由3のまとめ
よって、本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載したものである。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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