特許異議申立
2025-700643
接合体
- 審判番号
- 2025-700643
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-539577
- 登録番号
- 7606650
- 請求日
- 2025年06月19日
- 審決日
- 2026年02月25日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本碍子株式会社
- 【権利者代理人】高村 雅晴
- 【権利者代理人】長谷川 悠
- 【権利者代理人】河内 亮
- 【異議申立人】小澤 佳郎
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 金 公彦
- 審判官 深草 祐一
- 分類
- P1651.113-YAA(C04B) / P1651.121-YAA(C04B) / P1651.536-YAA(C04B) / P1651.537-YAA(C04B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7606650号発明「接合体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7606650号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、〔12~18〕について訂正することを認める。
特許第7606650号の請求項1~5、7~11に係る特許を維持する。
特許第7606650号の請求項6、12~18に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7606650号の請求項1~18に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2023年(令和5年)11月20日を国際出願日とするものであり、令和6年12月17日にその特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和7年6月19日に、特許異議申立人 小澤 佳郎(以下「申立人」という。)による請求項1~18に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年 6月19日 :申立人による特許異議の申立て
同年 9月10日付け:取消理由通知
同年11月 4日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年11月18日付け:訂正請求があった旨の通知
同年12月18日 :申立人による意見書の提出
以下、令和7年11月4日にされた訂正請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正の適否について
1 本件訂正の内容
本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~11〕、〔12~18〕を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記セラミックプレートと前記接合層との間の接合界面がMg含有層を含む、接合体」と記載されているのを「前記セラミックプレートと前記接合層との間の接合界面がMg含有層を含み、かつ、前記MMCプレートが、前記接合層と前記MMCプレートとの間の接合界面から所定の深さDAlにわたって前記接合層に由来するAlが拡散されたAl拡散層を有しており、前記Al拡散層の深さDAlが40μm以上である、接合体」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5、7~11も同様に訂正する)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に「請求項6に記載の接合体」と記載されているのを「請求項1に記載の接合体」に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項13を削除する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項14を削除する。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項15を削除する。
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項16を削除する。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項17を削除する。
(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項18を削除する。
2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は「MMCプレート」について「前記MMCプレートが、前記接合層と前記MMCプレートとの間の接合界面から所定の深さDAlにわたって前記接合層に由来するAlが拡散されたAl拡散層を有しており、前記Al拡散層の深さDAlが40μm以上である」と、さらに限定するものであるから、訂正事項1は「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、明細書の【0011】の「本発明の第二の態様においては、図2により具体的に示されるように、MMCプレート14が、接合層16とMMCプレート14との間の接合界面22から所定の深さDAlにわたって接合層16に由来するAlが拡散されたAl拡散層26を有する。Al拡散層の深さDAlは40μm以上であるのが好ましい。」との記載に基づくものであり、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、それぞれ「本件特許明細書」などといい、まとめて「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項6を削除するものであるから「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項2により請求項6が削除されたこと、そして、訂正事項1により、訂正前の請求項6に記載されていた「前記MMCプレートが、前記接合層と前記MMCプレートとの間の接合界面から所定の深さDAlにわたって前記接合層に由来するAlが拡散されたAl拡散層を有して」いる点が請求項1に追加されたことに伴い、請求項1を引用する請求項6を引用していた請求項7について、請求項1を引用するように変更するものである。したがって、訂正事項3は「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 訂正事項4~10について
訂正事項4~10は、それぞれ請求項12~18を削除するものであるから「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5) 独立特許要件について
本件訂正は、請求項1~18について「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正を含むが、本件特許の請求項1~18の全ての請求項に係る特許について特許異議の申立てがされたので、本件訂正後における、削除されていない請求項1~5、7~11に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(独立特許要件)は適用されない。
3 訂正の適否についての結論
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、〔12~18〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、本件特許異議の申立てに係る請求項1~18のうち、本件訂正により削除されなかった本件訂正後の請求項1~5、7~11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~5、7~11に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
酸化アルミニウムを含むセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの一方の側と対向して設けられ、Si、C及びTiを含む金属基複合材料(MMC)で構成されるMMCプレートと、
前記セラミックプレートと前記MMCプレートとの間に設けられ、前記セラミックプレート及び前記MMCプレートを接合する接合層であって、Alを主成分として含み、かつ、Si及びMgを副成分として含む接合層と、
を備え、前記セラミックプレートと前記接合層との間の接合界面がMg含有層を含み、かつ、前記MMCプレートが、前記接合層と前記MMCプレートとの間の接合界面から所定の深さDAlにわたって前記接合層に由来するAlが拡散されたAl拡散層を有しており、前記Al拡散層の深さDAlが40μm以上である、接合体。
【請求項2】
前記Mg含有層が、Al及びOをさらに含む、請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記Mg含有層における、Al:Mg:Oの重量比が1:0.01~0.50:0.001~0.100である、請求項2に記載の接合体。
【請求項4】
前記Mg含有層の厚さが、1~10μmである、請求項1又は2に記載の接合体。
【請求項5】
前記セラミックプレート、前記接合層及び前記MMCプレートの接合を、熱圧接により行うことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。
【請求項7】
前記MMCプレートが、前記接合層と前記MMCプレートとの間の接合界面から所定の深さDMgにわたって前記接合層に由来するMgが拡散されたMg拡散層を有している、請求項1に記載の接合体。
【請求項8】
前記Al拡散層の深さDAlが前記Mg拡散層の深さDMgよりも大きい、すなわちDAl>DMgを満たす、請求項7に記載の接合体。
【請求項9】
前記MMCプレートの接合界面側の表面が、0.01~1.0μmの算術平均粗さRaを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の接合体。
【請求項10】
4点曲げ試験において200MPa以上の接合強度を呈する、請求項1~3のいずれか一項に記載の接合体。
【請求項11】
前記セラミックプレートが、内部電極が埋設されたものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の接合体。」
第4 当審の取消理由及び申立人による特許異議の申立理由の概要
1 当審が通知した取消理由の概要
(1) 新規性欠如
設定登録時の請求項1、2、4、5、11に係る発明は、下記3に記載の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、それらの特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである(以下「取消理由1」という。)。
(2) サポート要件違反
設定登録時の請求項1~18に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記(3)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下「取消理由2」という。)。
(3) 取消理由2の内容
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、【0011】に「接合体10は、セラミックプレート12と、MMCプレート14と、接合層16とを含む」こと「セラミックプレート12は酸化アルミニウム及び/又は窒化アルミニウムを含み、内部電極18が埋設されている」こと「MMCプレート14は、金属基複合材料(MMC)で構成されるプレートであり、セラミックプレート12の一方の側と対向して設けられ」、「金属基複合材料(MMC)はSi、C及びTiを含むのが好ましい」こと「接合層16は、セラミックプレート12及びMMCプレート14を接合する層であって、セラミックプレート12とMMCプレート14との間に設けられ」、「接合層16は、Alを主成分として含み、かつ、Si及びMgを副成分として含む」こと、そして「本発明の第一の態様においては、セラミックプレート12と接合層16との間の接合界面20がMg含有層24を含む」こと、一方「本発明の第二の態様においては、・・・MMCプレート14が、接合層16とMMCプレート14との間の接合界面22から所定の深さDAlにわたって接合層16に由来するAlが拡散されたAl拡散層26を有」し「Al拡散層の深さDAlは40μm以上であるのが好ましい」こと、また「第一の態様は第二の態様の特徴を含んでいてもよく、その逆もまた然りである」こと、が記載されている。
しかしながら、前記「第一の態様」の特徴(以下「特徴A」という。)及び/又は前記「第二の態様」の特徴(以下「特徴B」という。)を有するようにすることで、高い接合強度を有するセラミックプレート12及びMMCプレート14の接合体10を提供することができる旨記載されてはいるものの、実際に接合体の特徴と接合強度の高さとの相関については「特徴A」及び「特徴B」をいずれも有する接合体が、いずれの特徴も有しない接合体よりも、接合強度が高かったことが示されているだけである。
本件発明のように3つの層からなる接合体には、直接接合する2つの層の接合界面が2つあるところ、2つの接合界面のいずれか一方の接合強度が高かったとしても、他方の接合界面の接合強度が低ければ、接合強度が低い界面近傍から破壊が起こり、全体としては接合強度が高くならないのが技術常識であるから、発明の詳細な説明の記載から理解できるのは「特徴A」及び「特徴B」をいずれも有する接合体であれば接合強度が高く、本件発明の課題を解決することができることにとどまるというべきである。
設定登録時の本件特許請求の範囲の請求項1では「特徴A」のみが特定されており、また、請求項12では「特徴B」のみが特定されている。そして、請求項1又は12に従属する他の請求項でも「特徴A」及び「特徴B」をいずれも特定した請求項はない。
そうすると、設定登録時の請求項1~18に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された本件課題を解決できる態様以外の「特徴A」又は「特徴B」のいずれか一方の特徴のみを有する態様をも広く包含しており、当業者において、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして、本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえない。
2 申立人による特許異議の申立理由の概要
(1) 進歩性欠如
設定登録時の請求項1~18に係る発明は、下記3に記載の甲第1号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下「申立理由1」という。)。
(2) 実施可能要件違反
本件特許は、設定登録時の請求項1~18に対応する本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が下記(3)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下「申立理由2」という。)。
(3) 申立理由2の内容
本件特許の発明の詳細な説明には、接合体の製造時に、セラミックプレート、MMCプレート、及び、接合層を超音波洗浄するときの時間を制御することでMg含有層の形成/非形成を制御し、かつ、Al拡散層の深さ及びMg拡散層の深さを変化させることができることが記載されている。しかし、本件発明の「接合体」が備える「Mg含有層」、「Al拡散層」及び「Mg拡散層」の少なくとも1つについて、本件特許の設定登録時の請求項3、4、6~8、12~14に記載されているような構造又は組成を有する接合体を具体的に製造する方法は記載も示唆もされていない。
本件特許の発明の詳細な説明に記載されている内容では、設定登録時の.請求項3、4、6~8、12~14のそれぞれに係る発明である接合体を作るために、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるから、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が設定登録時の請求項3、4、6~8、12~14のそれぞれに係る発明の接合体を作れるように記載されていない。
(4) サポート要件違反
設定登録時の請求項1~18に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記(5)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下「申立理由3」という。)。
(5) 申立理由3の内容
設定登録時の本件特許の請求項1には「前記セラミックプレートと前記接合層との間の接合界面がMg含有層を含む」ことが記載されており、請求項12には「前記MMCプレートが、前記接合層と前記MMCプレートとの間の接合界面から所定の深さDAlにわたって前記接合層に由来するAlが拡散されたAl拡散層を有しており、前記Al拡散層の深さDAlが40μm以上である」ことが記載されている。
一方、本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明の接合体の製造時に、有機溶媒での超音波洗浄を行うことなく、本件特許の請求項1に対応するように、接合体のセラミックプレートと接合層との間の接合界面に、Mg含有層が形成されること、及び、請求項12に対応するように、MMCプレートがAl拡散層を有しており、Al拡散層の深さDAlが40μm以上となることは、記載も示唆もされていない。
よって、超音波洗浄処理を施されていない部材を用いて製造される接合体も含まれる設定登録時の本件特許の請求項1、12に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるといえない。
また、本件特許の発明の詳細な説明には、設定登録時の本件特許の請求項12に関し「セラミックプレートと接合層との間の接合界面におけるMg含有層」がない場合であって「MMCプレートのAl拡散層の深さDAl」が40μm以上となっている実施例は記載も示唆もされていないし「セラミックプレートと接合層との間の接合界面におけるMg含有層」がない接合体の接合強度が、例えば、設定登録時の本件特許の請求項18に記載されているように「4点曲げ試験において200MPa以上の接合強度を呈する」こととなるか否かは読み取れない。
よって、設定登録時の本件特許の請求項12において、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決する手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになる。
3 証拠方法
甲第1号証:特開2023-109671号公報
甲第2号証:特開平6-24855号公報
甲第3号証:特開2018-32732号公報
甲第4号証:特開2012-164710号公報
甲第5号証:特開2003-286087号公報
甲第6号証:特開2022-75025号公報
以下、上記甲第1号証等を、それぞれ「甲1」等という。
第5 当審の判断
1 取消理由1及び申立理由1について
(1) 各甲号証に記載された事項
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。下線は当審で付した。以下同様である。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
前記セラミック基材の下面側に設けられた冷却基材と、
前記冷却基材の下面に開口するように前記冷却基材に設けられた冷媒流路溝と、
を備えたウエハ載置台。
【請求項2】
前記冷却基材は、金属とセラミックとの複合材料で形成されている、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記冷却基材は、金属接合層を介して前記セラミック基材の下面に接合されている、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。」
(イ)「【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。・・・
【0023】
・・・ウエハ載置台10は、セラミック基材20と、冷却基材30と、金属接合層40とを備えている。
【0024】
・・・セラミック基材20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成されている。・・・
【0025】
セラミック基材20の中央部22は、ウエハ載置面22aに近い側に、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。・・・
【0026】
・・・冷却基材30の材料としては、金属とセラミックとの複合材料などが好ましい。こうした複合材料としては、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット、MMC)やセラミックマトリックス複合材料(セラミック・マトリックス・コンポジット、CMC)などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料、Al2O3とTiCとの複合材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。セラミック基材20がアルミナ基材の場合、冷却基材30に用いる複合材料としてはCTEがアルミナに近いAlSiCやSiSiCTiなどが好ましい。・・・
【0027】
金属接合層40は、セラミック基材20の下面と冷却基材30の上面とを接合する。金属接合層40は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。」
(ウ)「【0037】
TCBは、例えば以下のように行われる。金属接合材の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層になる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。」
イ 甲1に記載された発明
(ア) 甲1には、前記ア(ア)には「上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、前記セラミック基材の下面側に設けられた冷却基材と、・・・を備えたウエハ載置台。」(【請求項1】)が記載されており「前記冷却基材は、金属とセラミックとの複合材料で形成されている」(【請求項2】)こと「前記冷却基材は、金属接合層を介して前記セラミック基材の下面に接合されている」(【請求項3】)ことが記載されている。
(イ) そして、前記ア(イ)には「セラミック基材20は、アルミナ・・・などに代表されるセラミック材料で形成されている」(【0024】)こと、また「冷却基材30の材料としては、・・・金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット、MMC)・・・などが挙げられ・・・こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料・・・などが挙げられ・・・Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTi・・・とい」(【0026】)うこと「セラミック基材20がアルミナ基材の場合、冷却基材30に用いる複合材料としてはCTEがアルミナに近い・・・SiSiCTiなどが好ましい」(【0026】)ことが記載されている。これらの記載事項から、セラミック基材がアルミナ基材の場合、冷却基材はSi,SiC及びTiを含む金属マトリックス複合材料(MMC)が好ましいことが記載されているといえる。
(ウ) また、前記ア(イ)には「金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。」(【0027】)と記載され、前記ア(ウ)には「TCBは、例えば以下のように行われる。金属接合材の固相線温度以下(・・・)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層になる。このときの金属接合材としては、・・・Al-Si-Mg系接合材を使用することができる。」(【0037】)と記載されている。これらの記載事項から、前記金属接合層は、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法であるTCBにより形成され、Al-Si-Mg系接合材を使用したTCBにより、この接合材が接合層になることが記載されているといえる。
(エ) これらの記載事項を「ウエハ載置台」に着目して整理すると、甲1には、次の発明が記載されている。
(甲1発明1)
「上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、前記セラミック基材の下面側に設けられた冷却基材と、を備えたウエハ載置台であって、
前記冷却基材は、金属とセラミックとの複合材料で形成されており、
前記冷却基材は、金属接合層を介して前記セラミック基材の下面に接合されており、
セラミック基材がアルミナ基材の場合、冷却基材はSi、SiC及びTiを含む金属マトリックス複合材料(MMC)が好ましく、
前記金属接合層は、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法であるTCBにより形成され、Al-Si-Mg系接合材を使用したTCBにより、この接合材が接合層になる
ウエハ載置台。」
(オ) また「ウエハ載置台の製造方法」に着目して整理すると、甲1には、次の発明も記載されている。
(甲1発明2)
「上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、前記セラミック基材の下面側に設けられた冷却基材と、を備えたウエハ載置台の製造方法であって、
前記冷却基材は、金属とセラミックとの複合材料で形成されており、
前記冷却基材は、金属接合層を介して前記セラミック基材の下面に接合されており、
セラミック基材がアルミナ基材の場合、冷却基材はSi、SiC及びTiを含む金属マトリックス複合材料(MMC)が好ましく、
前記金属接合層を、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法であるTCBにより形成し、Al-Si-Mg系接合材を使用したTCBにより、この接合材が接合層になる、
ウエハ載置台の製造方法。」
ウ 甲2に記載された事項
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルミナ製部材と金属製部材の接合体において、金属製部材とアルミナ製部材の間に、スピネル(MgO・Al2O3)と、Al2O3、MgO、AlならびにOよりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の物質とからなる反応層が存在することを特徴とする金属・セラミックス接合体。
【請求項2】 前記金属製部材が、Mgを含有する合金であることを特徴とする金属・セラミックス接合体。
【請求項3】 前記金属製部材の少なくともアルミナとの被接合面が、Mgを含有するAl合金層で形成されていることを特徴とする金属・セラミックス接合体。
【請求項4】 前記金属製部材が、純Alからなる芯材の少なくともアルミナとの被接合側表面にAl-Si-Mg系合金を配置した3層構造体であることを特徴とする請求項1記載の金属・セラミックス接合体。
【請求項5】 アルミナ製部材の表面に、少なくとも該アルミナとの被接合面がMgを含有する合金層からなる金属製部材を接触させた状態で、該合金層の固相線以下の温度に加熱した後加圧し、該合金層とアルミナ製部材との接合界面にスピネル(MgO・Al2O3)と、Al2O3、MgO、AlならびにOよりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の物質からなる反応層を形成させることを特徴とする金属・セラミックス接合体の製造方法。」
(イ)「【0005】本発明の目的は、強度が高く、気密性に優れた接合界面を有する金属・セラミックス接合体とその簡単な接合方法、特にアルミナと金属の接合体とその接合方法並びに、この金属・アルミナ接合体をさらに他の金属体に接合した金属セラミックス複合構造体を提供することである。」
(ウ)「【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための本発明による金属・セラミックス接合体は、アルミナと金属の接合を例にとって説明すると、アルミナ製部材と金属製部材の接合界面に、
(1)スピネル(MgO・Al2O3)
または、
(2)スピネルと、Al2O3、MgO、AlならびにOよりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の物質からなる反応層を存在させる。この場合には、金属製部材の少なくともアルミナとの被接合面をMgを含有する合金で構成する。
【0007】また、本発明による金属・セラミックス接合体の製造方法は、アルミナ製部材の表面に、少なくとも該アルミナとの被接合面がMgを含有する合金層からなる金属製部材を接触させた状態で該合金層の固相線以下の温度に加熱保持した後加圧し、該合金層とアルミナ製部材との接合界面にスピネル(MgO・Al2O3)またはスピネル、Al2O3、MgO、AlならびにOよりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の物質からなる反応層を形成させる。
・・・
【0010】本発明の金属・セラミックス接合体のアルミナ製部材と金属製部材の間の接合界面に形成される反応層を構成するスピネルは、MgAl2O4なる化学式を有する複酸化物であるが、該化学式の組成を有する酸化物ばかりでなく、Mg、AlならびにOの比率がこの組成からはずれたもの、あるいはこの化合物に、Mg、Alならびに不可避の不純物の1つ以上が固溶した固溶体も含むものでも良い。
【0011】上記スピネルは、アルミナ製部材と金属製部材の間にMg含有合金を介在させて接合温度まで昇温すると、昇温過程で該合金中のMgが表面に拡散して、該合金の表面にMgが濃縮するので、該合金の融点以下の温度でアルミナ製部材と該合金表面層中のMgを反応させて形成させる。この場合、該合金とアルミナの接合界面全面にわたってスピネルを形成するのが望ましいが該スピネルにAl2O3、MgO、並びにAlが混在しても良い。」
(エ)「【0016】
【作用】本発明の金属・セラミックス接合体では、アルミナを例に挙げて説明すると、接合界面にAl2O3とMgOの化学反応で生ずるスピネル(MgO・Al2O3)を形成させることでアルミナと金属を化学的に接合させる。このスピネルを構成するAl2O3は、被接合体であるアルミナ自身の構成成分を利用する。もう一方のスピネル構成成分であるMgOは、合金中のMgによる上記アルミナの還元反応で生成するMgOを利用する。この反応を促進するため、Mg含有合金中のMgを非酸化性雰囲気中での加熱により表面に濃縮させる。かかるAl2O3とMgおよびMgOとの反応は、アルミナ表面にMgが濃縮した該合金表面を高温で加圧・接触させて行なう。この場合の非酸化性雰囲気としては、真空、窒素、不活性ガス等が利用できる。
【0017】この場合の接合は、Mg含有合金が溶融しない温度で、出来るだけ高温で行なうのが好ましい。Mg含有合金が溶融する温度では、該合金表面に濃縮したMgが合金中へ再溶解したり、蒸発したりして表面のMg濃度が減少し、アルミナとの反応性が低下する。また、溶融合金中のAlやSiがアルミナ表面に接触して、アルミナとMgの直接的接触を妨げるので好ましくない。
【0018】本発明において、アルミナ製部材とMg含有合金からなる金属製部材の接合界面にスピネルを主体とする反応層を形成して、アルミナと該Mg含有合金の接合を行なうのは、スピネルが化学的に安定で、耐食性に優れているばかりでなく、表1に示す如く、熱膨張係数がアルミナの熱膨張係数に近いからである。また、スピネルは、図1に示す如く、比較的広い組成範囲で固溶体を形成するからである。
【0019】
【表1】
[図:0001435198000001.jpg]
アルミナと金属製部材の接合界面に形成される反応層の熱膨張係数がアルミナのそれに近いことは、反応層とアルミナの界面に発生する熱応力が小さくなり、良好な接合界面が形成されることを意味するので、好ましいものである。また、反応層が広い組成域の固溶体を形成することは、反応するMgOとAl2O3の割合がずれても、目標とする反応層が容易に形成されることを意味するので、好ましいものである。
【0020】本発明の金属・セラミックス接合体の製造に使用する金属製部材または金属製部材表面の少なくともアルミナとの被接合面層の基材となる金属は、使用目的、被接合金属部材とセラミックス部材の熱膨張係数の差、使用温度や使用雰囲気等の環境条件等に応じて、融点、硬さ並びに耐食性等を考慮して、選択すれば良いが、酸化物の標準生成自由エネルギーがMgOの標準生成自由エネルギーより大きい金属が好ましい。・・・
【0021】例えば、アルミナ製部材とAl合金製金属体の間にAl合金製金属部材を介在させて同時に接合して、アルミナ製部材とAl合金製金属体からなる複合構造体を作製する場合には、接合温度がAl合金製金属体の融点で規制されるので、金属製部材または該金属製部材の表面層を構成する合金は、Al合金製金属体の融点以下の融点を有するAl基合金が好ましい。かかるAl基合金に添加するMg以外の金属成分としては、Al基合金の融点を低下させたり、Mgの拡散に好影響を与える元素が好ましい。SiはAl基合金の融点を低下させたり、Mg2Siなる金属間化合物を形成して、合金表面へのMgの拡散に好影響を与えるのでAl-Mg合金への添加成分として好ましいものである。Si以外の金属元素でもAl-Mg合金中でSiと同じ作用を有するものは、もちろん添加成分として有効である。」
(オ)「【0023】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。まず、αアルミナ製部材とMg含有Al合金からなる金属製部材の接合界面近傍の断面について、成分分析を実施したところ、予想通り接合界面に反応層が形成されていることが確認された。得られた結果から接合界面に形成されている反応層の構成物質を推定して、作成した模式図を図2に示す。
【0024】本発明の金属・セラミックス接合体では、図2に示す如く、αアルミナ製セラミックス部材31とMg含有Al合金からなる金属製部材33との間に、反応層32が存在する。この反応層は、スピネル(MgO・Al2O3)、MgO、Al2O3並びにAlで構成されていると考えられる。反応層中のAl濃度は、金属製部材表面からアルミナ表面に向かって連続的に減少する。Al2O3の濃度はアルミナ表面から金属製部材表面に向かって連続的に減少し、スピネルとMgOは反応層中で一様な濃度分布をしている。
【0025】次に、実験例1および実験例2として、アルミナ製部材と金属製部材の接合界面に前記の反応層が存在することを示す根拠を述べる。
実験例1(加熱による金属製部材表面へのMgO濃縮層形成の証明)
実験例1は、Al-10wt%Si-1.5wt%Mg合金からなる金属製部材を10-3Paの真空雰囲気中で、該合金の固相線より約10℃低温の550℃に加熱した後、該合金表面層の組成をX線光電子分析法(XPS)により分析し、加熱前の表面層の組成と比較した例である。得られた結果を表2、図3並びに図4に示す。測定は、島津製作所製のX線光電子分析装置(ESCA-1000)を使用、スポット寸法:0.6mmφの部分について8KV-30mAで行なった。深さ方向の分析は、50nmずつ表面をイオンエッチングで削るごとに測定を繰り返して行なった。
【0026】表2は上記合金の加熱前後の表面組成を測定した結果を示したものである。この表に示す如く、加熱前の合金表面からは、Al、Al2O3、Siが検出された。一方、加熱後の合金表面からは、MgOのみが検出された。
【0027】
【表2】
[図:0001435198000002.jpg]
図3は、加熱前の合金について、表面から深さ方向のAl、Si、Mg並びにOの濃度を測定した結果である。図中のエッチング時間は、試料表面を10nm/minの速度で削った時間を意味する。図3には、5分間ずつイオンエッチングで試料表面を削りながら、測定を繰り返し、表面から200mn(0.2μm)の深さまでの結果が示されている。また、図4は、同じ合金を10-3Paの真空雰囲気中で、該合金の固相線より約10℃低温の550℃まで昇温して冷却した試料について同じ測定をした結果が示されている。図4の結果は、本発明の金属・セラミックス接合体の接合に際し、所定の接合温度で加圧する直前の金属製部材表面の状態を示していることになる。
【0028】図3と図4の対比から明らかな如く、加熱前の合金表面ではAl2O3(図3:AおよびD参照)およびSi(図3:B)のピークが観察される。表面から50nm削った位置では、Al2O3、Mg2Si(図3:C)およびSiのピークが観察されるようになる。AlとMg2SiとSiのピークは、表面から深く削ることによって強くなる傾向がある。一方、加熱後の合金表面では、MgO(図4:CおよびD)のピークのみが観察され、Al2O3のピークは消失している。表面から50nm削った位置では、Al(図4:A)、MgO、Mg2Siのピークが観察される。Alのピークは、表面から深く削ることによって強くなる傾向があるが、MgOのピークは、表面のピークが一番強い。このことは、加熱前に合金表面に存在したAl2O3層の外側に、加熱によってMgが拡散、Al2O3を還元し、MgO層を形成していることを意味していると考えられる。加熱後の合金表面では、Si(図4:B)は、表面から200nm削っても未だ検出されない。
【0029】以上述べたことから、Al-10wt%Si-1.5wt%Mg合金からなる金属製部材を10-3Paの真空雰囲気中で、該合金の固相線以下の550℃に加熱すると、該合金の表面にMgOの濃縮層が形成されることが明らかである。従って、金属製部材表面のMgO濃縮層とアルミナ製部材とを接触させて、高温で加圧し、Mgとアルミナの反応を生じさせれば、本発明の金属・セラミックス接合体とすることができる。・・・
【0030】実験例2(アルミナとAl-Si-Mg合金接合界面の反応層の組成)
実験例2は、直径12mmφ、長さ25mmのアルミナ丸棒と直径12mmφ、厚さ10mmのAl-Mn合金円柱の間に、厚さ:0.5mmのAl-10wt%Si-1.5wt%Mg合金板を挟み、10-3Paの真空雰囲気中で、該合金板の固相線より約10℃低温の550℃で、40MPaの加圧を行なって接合した接合体について、アルミナと該合金板の接合界面に形成される反応層が、本発明の如き組成を有するかを検討した実験例である。この実験例のアルミナ丸棒、Al-Mn合金円柱、Al-Si-Mg合金板がそれぞれ本発明のセラミックス製部材、金属体、金属製部材、接合体が金属セラミックス複合構造体に相当する。
【0031】この実験では、上記条件で接合した接合体の接合界面と平行にAl-10wt%Si-1.5wt%Mg合金層の部分とアルミナの部分で切断した厚さ約10mmの円板を、合金層側から該合金層の厚さが約5μm程度になるまで機械的に研磨して試料とした。この試料の研磨面表面から約10μmの深さまで、アルミナ表面の方向へ、X線光電子分析法により組成を分析した。測定は、1回の測定毎のイオンエッチングによる削り量を約250nmとした他は、実験例1と同条件で行なった。得られた結果を図5に示す。
【0032】図5に示す如く、接合界面近傍は、以下の3つの組成域に分けられる。
(A)試料表面から約2.5μm深さまでの部分
この部分は、Al-Si-Mg合金の構成成分である、Al、Si、Mgが検出されるので、Al-Si-Mg合金層と考えられる。
(B)試料表面から約2.5~約5μmまでの深さの部分
この部分は、Al2O3、Al、Mg、Oが検出されるので、Al-Si-Mg合金層とアルミナの反応層と考えられる。この部分で検出されたMgは、測定部の深さが増すにつれて、エネルギーのピーク位置が金属Mgの位置からMgOの位置に近い高エネルギー側へシフトしている。このピークが金属Mgによるものでないことを示唆している。
【0033】(C)試料表面から約5μm以上深い部分この部分は、Al2O3とOのみで構成されているので、アルミナ層と考えられる。なお、比較例として、スピネルの焼結体について、同じ方法でエネルギーのピーク位置を測定したところ、Al2O3とMgOのそれぞれとほぼ同じエネルギーレベルの位置にピークを示した。従って、上記(B)の領域で、測定されたAl2O3と高エネルギー側にシフトしたMgのピークの両方にスピネルのピークが重なっている可能性がある。
【0034】以上の結果に示されるごとく、アルミナとAl-Si-Mg合金層との接合界面にはスピネル(MgO・Al2O3)またはスピネルおよびAl2O3、MgO、Al並びにOよりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の物質からなる反応層が形成されていることが確かめられた。次に、実験例3として、本発明の製造方法で作られた接合体の接合界面が、接合強度及び耐食性に優れることを示す。
【0035】
実験例3(複合体の接合強度向上への効果)
実験例3は、本発明の方法(固相接合)で製造された金属・セラミックス接合体の接合界面の接合強度と耐食性を従来の方法により接合体と比較した例である。直径12mmφ、厚さ5mmのAl-Mn合金円柱の両側に、直径12mmφ、厚さ1mmの純Al板の両面に厚さ0.1mmのAl-10wt%Si-1.5wt%Mg合金の箔を配置した3層構造の金属製部材を介して、直径12mmφ、長さ25mmのアルミナ丸棒を配置した組立体を作り、該組立体を真空プレス中にセットして、10-3Paの真空雰囲気中で、上記Al-Si-Mg合金箔の固相線より約10℃低温の550℃で、40MPaの加圧を行なって接合した中心部がAl-Mn合金、両端がアルミナからなる直径12mmφ、長さ56mmの接合体(固相接合体:実施例)と接合温度のみ600℃とし、その他の条件は同一とした接合体(液相接合体:比較例1)および金属製部材を純Al製、接合温度を600℃とし、その他の条件は実施例と同一とした接合体(固相接合体:比較例2)を作製した。次にこれらの接合体から、中心部がAl-Mn合金、両端がアルミナからなる3×3×40mmの試験片を切り出して、4点曲げ試験片とした。なお、この実験のアルミナ丸棒、Al-Mn合金円柱、3層構造の金属部材が、それぞれ本発明のセラミックス製部材、金属体、金属製部材に相当し、接合体が金属セラミックス複合構造体に相当する。
【0036】
【表3】
[図:0001435198000003.jpg]
これらの試験片について、4点曲げ強度を測定した結果を表3に示す。接合したままの試験片では、実施例と比較例のいずれにおいても、破断が接合界面近傍のアルミナ部分で生じたため、アルミナと金属製部材との接合界面の真の接合強度は求められなかった。しかし、いずれの接合体においても、接合強度がアルミナの曲げ強度以上であることが解る。・・・」
(カ)「【図2】
[図:0001435198000004.jpg]
」
(キ)「【図5】
[図:0001435198000005.jpg]
」
エ 甲3に記載された事項
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス部材と、SiCからなる多孔質体及びこの多孔質体に含浸されたケイ素含有量が0.1原子%以上であるAl-Si合金からなるアルミニウム材を有するAl-SiC複合材料とを接合するセラミックス/Al-SiC複合材料接合体の製造方法であって、
前記セラミックス部材および前記Al-SiC複合材料のうちの少なくとも一方の表面に、厚さが0.1μm以上10μm以下のマグネシウム層を形成する工程と、
前記セラミックス部材と前記Al-SiC複合材料とを、前記マグネシウム層を介して積層して、積層体を得る工程と、
前記積層体を550℃以上575℃以下の温度範囲で加熱することによって、前記セラミックス部材と前記Al-SiC複合材料とを接合する工程と、
を備えていることを特徴とするセラミックス/Al-SiC複合材料接合体の製造方法。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、セラミックス部材とAl-SiC複合材料とを、比較的低温での加熱によって、Al-SiC複合材料中のアルミニウム材を溶出させずに、かつ高強度で接合することができるセラミックス/Al-SiC複合材料接合体の製造方法、及び、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を提供することを目的とする。」
(ウ)「【課題を解決するための手段】
・・・
【0009】
この構成のセラミックス/Al-SiC複合材料接合体の製造方法によれば、Al-SiC複合材料のアルミニウム材が、ケイ素含有量が0.1原子%以上であるAl-Si合金で構成されていて、セラミックス部材とAl-SiC複合材料との間に配置されたマグネシウム層がAl-Si合金と接触しているので、550℃以上575℃以下と比較的低温での加熱によって、セラミックス部材とAl-SiC複合材料を接合することができる。
即ち、マグネシウム層のマグネシウムがセラミックス部材やAl-SiC複合材料の表面の酸化被膜を除去するとともに、Al-SiC複合材料のアルミニウム材へ拡散して、セラミックス部材とAl-SiC複合材料との間に、アルミニウムと、マグネシウムと、ケイ素と、拡散してきたマグネシウムとケイ素との反応によって形成されたMg2Siとによって、固相と液相が混在した固液共存領域が形成される。そして、この固液共存領域が凝固することによって、セラミックス部材とAl-SiC複合材料とが、アルミニウムとマグネシウムとケイ素を含む接合部を介して接合される。また、これらの酸化被膜とマグネシウムの反応によってマグネシウム酸化物が生じる。
そして、この液相が凝固した部分(接合部)によって、セラミックス部材とAl-SiC複合材料とを高強度で接合することができる。」
(エ)「【発明を実施するための形態】
・・・
【0026】
ここで、セラミックス基板11とヒートシンク20との接合部分の構造について、図2を用いて説明する。
【0027】
図2において、セラミックス基板11とヒートシンク20であるAl-SiC複合材料30とは、接合部40を介して接合されている。図2の(a)は、Al-SiC複合材料30がスキン層33を有する場合であり、接合部40は、スキン層33内に形成されている。(b)は、Al-SiC複合材料30がスキン層33を有しない場合であり、接合部40は、Al-SiC複合材料30のアルミニウム材32内に形成されている。
【0028】
接合部40は、アルミニウムとマグネシウムとケイ素を含む。接合部40は、後述するヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法において、セラミックス基板11とAl-SiC複合材料30とを、マグネシウム層を介して積層した積層体を加熱することによって生成した、アルミニウムとマグネシウムとケイ素を含む固液共存領域が凝固して形成された層である。
【0029】
接合部40には、マグネシウム酸化物41が析出している。マグネシウム酸化物41は、セラミックス基板11と接合部40との接合界面近傍に析出している。マグネシウム酸化物41は、通常、酸化マグネシウム(MgO)、スピネル(MgAl2O4)およびこれらの複合物である。マグネシウム酸化物41は、後述するヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法において、セラミックス基板11の表面と、Al-SiC複合材料30の表面とにそれぞれ存在していた酸化被膜と、マグネシウム層中のマグネシウムが反応することによって生成した生成物である。接合部40にはさらに、Mg2Siが析出している場合もある。」
(オ)「【0032】
(ヒートシンク接合工程S02)
次に、パワーモジュール用基板10のセラミックス基板11と、ヒートシンク20となるAl-SiC複合材料30とを接合して、ヒートシンク付パワーモジュール用基板1を製造する。このヒートシンク接合工程S02は、図3に示すように、マグネシウム層形成工程S21と積層工程S22と接合工程S23とを有する。
【0033】
マグネシウム層形成工程S21において、図4に示すように、セラミックス基板11およびAl-SiC複合材料30のうちの少なくとも一方の表面にマグネシウム層53を形成する。本実施形態では、マグネシウム層53はAl-SiC複合材料30の表面に形成されている。
【0034】
マグネシウム層53は、マグネシウム濃度が80原子%以上であることが好ましく、90原子%以上であることが特に好ましい。マグネシウム層53のマグネシウム濃度が80原子%以上であると、後述の接合工程S23において、固液共存領域が生成し易くなり、また固液共存領域中にMg2Siが生成し易くなる。
【0035】
マグネシウム層53の厚さは、0.1μm以上10μm以下(セラミックス基板11およびAl-SiC複合材料30の両方に形成される場合は、合計の厚さ)の範囲とされている。マグネシウム層53の厚さが薄くなりすぎると、後述の接合工程S23において、生成するMg2Siの量が少なくなり、セラミックス基板11とAl-SiC複合材料30との接合強度が低下する。一方、マグネシウム層53の厚さが厚くなりすぎると、後述の接合工程S23において、固液共存領域中に液相が過剰に生成して、セラミックス基板11とAl-SiC複合材料30との接合性が低下するおそれがある。
【0036】
マグネシウム層53の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、マグネシウム粉末のペーストを塗布して乾燥する方法を用いることができる。」
(カ)「【実施例】
【0046】
本発明の有効性を確認するために行った確認実験について説明する。
【0047】
[本発明例1~16、比較例1~5]
表1に示すように、回路層形成用金属板と、セラミックス基板(40mm×40mm、AlN及びAl2O3の場合:厚さ0.635mm、SiNの場合:0.32mm)と、Al-SiC複合材料(AlSiC)の板材(50mm×60mm×厚さ5mm(スキン層が有る場合:スキン層は両面、片面の厚さは0.2mm))と、ろう材とを準備した。
なお、Al-SiC複合材料のアルミニウム材の融点は、ADC12が570℃、4Nアルミニウムが660℃、3Nアルミニウムが655℃、2Nアルミニウムが650℃である。
・・・
【0057】
【表1】
[図:0001435198000006.jpg]
」
オ 甲4に記載された事項
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の一方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム層が形成されたパワーモジュール用基板を製造する方法であって、
前記セラミックス基板の一方の面のうち少なくとも前記アルミニウム層が形成される領域に、Mg,Ca及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を固着し、前記添加元素を含有する固着層を形成する固着工程と、
前記固着層が形成された前記セラミックス基板を鋳型内に配置し、この鋳型内に溶融アルミニウムを充填し、前記セラミックス基板と前記溶融アルミニウムとを接触させる溶融アルミニウム充填工程と、
前記セラミックス基板と接触した状態で前記溶融アルミニウムを凝固させる凝固工程と、を備えていることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
・・・
【請求項4】
前記固着工程においては、めっき、蒸着、CVD、スパッタリング、コールドスプレー、又は、粉末が分散しているペースト及びインクの塗布によって、前記添加元素を固着させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
・・・
【請求項6】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載されたパワーモジュール用基板の製造方法によって製造されたパワーモジュール用基板であって、
前記アルミニウム層において、前記セラミックス基板との界面から50μmの位置における前記添加元素濃度と、前記セラミックス基板との界面から100μmの位置における前記添加元素濃度との濃度差が0.1質量%以下とされており、
前記セラミックス基板と前記アルミニウム層との界面には、前記添加元素濃度が前記アルミニウム層中の前記添加元素濃度の2倍以上とされた添加元素高濃度部が形成されていることを特徴とするパワーモジュール用基板。
・・・
【請求項9】
前記セラミックス基板がAl2O3で構成されており、前記セラミックス基板と前記アルミニウム層との界面をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、前記添加元素、Oの質量比が、Al:添加元素:O=50~90質量%:1~30質量%:0~45質量%とされていることを特徴とする請求項6の記載のパワーモジュール用基板。」
(イ)「【0065】
本実施形態であるパワーモジュール用基板210は、セラミックス基板211と、このセラミックス基板211の一方の面に配設された回路層212と、他方の面に配設された金属層213とを備えている。
セラミックス基板211は、その一方の面側と他方の面側との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAl2O3(アルミナ)で構成されている。また、セラミックス基板211の厚さは、0.2~1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0066】
回路層212は、セラミックス基板211の一方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる溶融アルミニウムを接触して凝固することにより形成されたものである。本実施形態においては、回路層212は、純度が99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)で構成されている。
・・・
【0069】
そして、セラミックス基板211と回路層212との界面230を透過電子顕微鏡において観察した場合には、図12に示すように、界面230に、Mg,Ca及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素が濃縮した添加元素高濃度部232が形成されている。なお、本実施形態では、添加元素としてMgが濃縮している。この添加元素高濃度部232においては、添加元素濃度(Mg濃度)が、回路層212中の添加元素濃度(Mg濃度)よりも高くなっており、具体的には、界面230における添加元素濃度(Mg濃度)が、回路層212中の添加元素濃度(Mg濃度)の2倍以上とされている。ここで、本実施形態では、添加元素高濃度部232の厚さHは4nm以下とされている。
・・・
【0071】
また、この界面230をエネルギー分散型X線分析法(EDS)で分析した際のAl、添加元素(Mg)、Oの質量比が、Al:添加元素(Mg):O=50~90質量%:1~30質量%:0~45質量%の範囲内に設定されている。なお、EDSによる分析を行う際のスポット径は1~4nmとされており、界面230を複数点(例えば、本実施形態では100点)で測定し、その平均値を算出している。また、回路層212の結晶粒界とセラミックス基板211との界面230は測定対象とせず、回路層212の結晶粒とセラミックス基板211との界面230のみを測定対象としている。
・・・
【0085】
また、本実施形態であるパワーモジュール用基板210では、回路層212において厚さ方向に添加元素(Mg)の濃度分布が認められず、金属層213において厚さ方向に添加元素(Mg)の濃度分布が認められている。これは、回路層212が溶融アルミニウムMをセラミックス基板211に接触させて形成していることから、添加元素(Mg)が溶融アルミニウムM内に容易に拡散するためである。一方、金属層213は、セラミックス基板211との接合界面236近傍のみに溶融金属領域227が形成されることから、添加元素(Mg)が金属板223の内部を拡散することになるため、添加元素(Mg)の濃度勾配が形成されるのである。」
カ 甲5に記載された事項
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 以下の工程1~3を経由することを特徴とする接合体の製造方法。
工程1:金属箔とろう材合金箔からなる帯状積層物のろう材合金箔面に、セラミックス基板の適宜数を配列してから、金属箔とろう材合金箔からなる別の積層物でセラミックス基板の表面を覆い帯状構造体とする工程。
工程2:この帯状構造体を、非酸化性雰囲気の高温下に保持された、予熱部、仮接合部、拡散部を有する接合炉を通過させて帯状接合体とする工程。
工程3:この帯状接合体を個々の単位接合体に切断する工程。ここで、予熱部とは、ろう材合金箔の融点よりも低い温度に保持された領域であり、仮接合部とは、ろう材合金箔の融点以上の温度領域で帯状構造体を加圧しながらろう材成分とセラミックス基板とを反応させる領域であり、拡散部とは、ろう材合金箔の融点以上の温度領域で帯状構造体の加圧を解いて、ろう材成分を金属箔へ拡散させる領域である、と定義される。」
(イ)「【0005】本発明の目的は、上記に鑑み、生産性の極めて高いセラミックス基板と金属箔からなる接合体の製造方法を提供することである。本発明の目的は、非酸化性雰囲気の高温下に保持された接合炉に帯状構造体を搬入し、予熱部、仮接合部、拡散部を経由させることによって帯状接合体となし、それを接合炉から搬出し、個々の単位接合体に切断することによって達成することができる。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、以下の工程1~3を経由することを特徴とする接合体の製造方法。
工程1:金属箔とろう材合金箔からなる帯状積層物のろう材合金箔面に、セラミックス基板の適宜数を配列してから、金属箔とろう材合金箔からなる別の帯状積層物でセラミックス基板の表面を覆い帯状構造体とする工程。
工程2:この帯状構造体を、非酸化性雰囲気の高温下に保持された、予熱部、仮接合部、拡散部を有する接合炉を通過させて帯状接合体とする工程。
工程3:この帯状接合体を個々の単位接合体に切断する工程。ここで、予熱部とは、ろう材合金箔の融点よりも低い温度に保持された領域であり、仮接合部とは、ろう材合金箔の融点以上の温度領域で帯状構造体を加圧しながらろう材成分とセラミックス基板とを反応させる領域であり、拡散部とは、ろう材合金箔の融点以上の温度領域で帯状構造体の加圧を解いて、ろう材成分を金属箔へ拡散させる領域である、と定義される。
【0007】この場合において、セラミックス基板が窒化アルミニウム製又は窒化ケイ素製であり、金属箔がAl製又はAl合金製であり、ろう材合金箔がAlとCuを主成分とするものであることが好ましい。また、仮接合部の雰囲気温度が620~650℃であり、帯状構造体に圧力2MPa以上のロール加圧を行いながら仮接合部の通過速度を0.1~10mm/secとすることが更に好ましい。
・・・
【0011】本発明で用いられるろう材合金箔は帯状物である。成分はAlとCuを主成分とするものが好ましく、例示すればCu1~6%、特に1.5~5%のAl-Cu合金箔、4%Cuと0.5%Mgとを含む2018合金箔、0.5%のMnを含む2017合金箔、更にはJIS合金の2001、2003、2005、2007、2011、2014、2024、2025、2030、2034、2036、2048、2090、2117、2124、2218、2224、2324、7050等の合金箔である。Mg、Zn、In、Mn、Cr、Ti、Bi等の第三成分は合計で5%まで含ませることができる。
・・・
【0024】拡散部では、金属箔とセラミックス基板間の十分な接合強度を確保するため、ろう材成分の一部の金属成分を金属箔中に拡散させることが必要である。たとえば、金属箔がAlで、ろう材合金箔成分がAl-Cu系である場合には、Al中にCuを拡散させる。拡散距離は50~100μm程度であることが好ましい。」
(ウ)「【0027】
【実施例】以下、実施例と参考例をあげて更に具体的に本発明を説明する。
【0028】実施例1~3
セラミックス基板として、表面研削や反り直し等の後加工のない焼成されたままの窒化アルミニウム基板を準備した。厚みは0.635mm、大きさは2インチ角、熱伝導率は170W/mK、曲げ強さは400MPaである。また、金属箔とろう材合金箔の帯状物の巻物(表1)を用意した。
【0029】金属箔とろう材合金箔の巻物から帯状物をベルトコンベヤーに引き出し両者を積層して帯状積層物とした。この帯状積層物のろう材合金箔面に、上記セラミックス基板の複数個を適宜間隔(約10mm)を設けて配列すると共に、その上面を更に上記と同じ帯状積層物で覆って図1に示される帯状構造体とした。この帯状構造体を、酸素濃度20ppmの高温窒素雰囲気に保持され、予熱部、仮接合部、拡散部(各部の条件は表2)を有する、ベルト搬送方式のステンレス製筒状構造の接合炉(寸法:開口部幅300mm、高さ50mm、長さ8m、断熱材:アルミナ繊維)に搬入し、熱処理を行って帯状構造体を帯状接合体となし、それを接合炉から搬出させ、個々の単位接合体に切断(切断方法は表2)して接合体を製造した。
【0030】実施例4
窒化アルミニウム基板の代わりに窒化ケイ素基板(厚み0.635mm、大きさは2インチ角、熱伝導率70W/mK、曲げ強さ800MPa)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして回路基板を製造した。」
キ 甲6に記載された事項
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスからなる静電チャック部材と、金属からなる温度調整用ベース部材と、接着剤層と、を備える静電チャック装置であって、
前記静電チャック部材と前記温度調整用ベース部材とが接合する接合面において、前記静電チャック部材と前記温度調整用ベース部材のいずれか一方に粗面を有し、
前記接着剤層を介して、前記静電チャック部材と前記温度調整用ベース部材が接合されていることを特徴とする静電チャック装置。
・・・
【請求項4】
前記粗面において、前記接合面の算術平均粗さ(Ra)を0.01μm以上2.0μm以下とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の静電チャック装置。」
(イ)「【背景技術】
・・・
【0003】
静電チャック部材は、接着剤層を介して温度調整用ベース部材と接合・一体化され、温度調整用ベース部材によって温度が一定に保たれる。
従来、接着剤層の厚さを一定に保つために、接着剤層内には、スペーサが設けられている(例えば、特許文献1、2参照)。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、接着剤層内に、接着剤層とは組成が異なるスペーサを設けると、使用時の熱応力によって、スペーサが静電チャック部材もしくは温度調整用ベース部材がから剥離し、それに起因して、静電チャック部材の載置面の温度の均一性が損なわれたり、静電チャック部材に電圧を印加した際に放電が生じたりするという課題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、静電チャック部材の載置面の温度の均一性を長期間確保し、静電チャック部材に電圧を印加した際に放電が生じることを抑制する静電チャック装置および静電チャック装置の製造方法を提供することを目的とする。」
(ウ)「【0017】
「静電チャック部材」
静電チャック部材2は、上面が半導体ウエハ等の板状試料を載置する載置面11aとされたセラミックスからなる載置板11と、載置板11の載置面11aとは反対の面側に設けられた支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に挟持された静電吸着用電極13と、載置板11と支持板12とに挟持され静電吸着用電極13の周囲を囲む環状の絶縁材14と、静電吸着用電極13に接するように支持板12の貫通孔15内に設けられた給電端子16と、温度調節用ベース部材3の固定孔17内に設けられた電極ピン18と、を有している。
・・・
【0020】
「支持板」
支持板12は、載置板11と静電吸着用電極13を下側から支持している。
【0021】
支持板12の材料は、載置板11の材料と同一である。
【0022】
支持板12は、温度調節用ベース部材3と接合する面(接合面)12aが粗面となっている。具体的には、支持板12は、温度調節用ベース部材3と接合する面(接合面)12aの粗面は、突起19であることが好ましい。
突起19は、接着剤層4の厚さを均一にするために設けられたものである。
・・・
【0026】
接合面12aの算術平均粗さ(Ra)は0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1.5μm以下であることがより好ましい。接合面12aの算術平均粗さ(Ra)が前記下限値以上であれば、接着剤層4の厚さを均一にすることができる。接合面12aの算術平均粗さ(Ra)が前記上限値以下であれば、アンカー効果による接着性の向上が得られ、さらに接着剤層4と接合面に気泡が残らないので好ましい。接合面12aの算術平均粗さ(Ra)が前記範囲内であれば、静電チャック部材2の載置面(載置板11の載置面11a)の温度の均一性を確保することができる。また、静電チャック部材2に電圧を印加した際に放電が生じることを抑制することができる。
・・・
【0043】
「接着剤層」
接着剤層4は、静電チャック部材2と、温度調整用ベース部材3とを接着一体化するものである。
【0044】
接着剤層4は、例えば、シリコーン系樹脂組成物を加熱硬化した硬化体、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等で形成されている。
シリコーン系樹脂組成物は、シロキサン結合(Si-O-Si)を有するケイ素化合物であり、耐熱性、弾性に優れた樹脂であるので、より好ましい。」
(2) 本件発明1について
ア 対比
(ア) 本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1の「セラミック基材」は、本件発明1の「セラミックプレート」に相当し、甲1発明1の「セラミック基材がアルミナ基材の場合」は、本件発明1のセラミックプレートが「酸化アルミニウムを含むセラミックプレート」であることに相当する。
(イ) そして、甲1発明1の「冷却基材」は、本件発明1の「MMCプレート」と「プレート」である点で共通し、甲1発明1の冷却基材が「Si、SiC及びTiを含む金属マトリックス複合材料(MMC)」であることは、本件発明1の「Si、C及びTiを含む金属基複合材料(MMC)で構成されるMMCプレート」に相当する。
(ウ) また、甲1発明1の「前記冷却基材は、金属接合層を介して前記セラミック基材の下面に接合されて」いる点は、本件発明1のMMCプレートが「前記セラミックプレートの一方の側と対向して設けられ」ている点に相当する。
(エ) さらに、甲1発明1の「前記冷却基材は、金属接合層を介して前記セラミック基材の下面に接合されて」いる点は、本件発明1の「前記セラミックプレートと前記MMCプレートとの間に設けられ、前記セラミックプレート及び前記MMCプレートを接合する接合層」を備える点に相当する。そして、甲1発明1の「Al-Si-Mg系接合材を使用したTCBにより、この接合材が接合層になる」点は、一般に「Al-Si-Mg系」とはMgとSiを添加したAl基合金を指す用語として慣用される表現であるから、本件発明1の「Alを主成分として含み、かつ、Si及びMgを副成分として含む接合層」を備える点に相当する。
(オ) そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、
「酸化アルミニウムを含むセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの一方の側と対向して設けられ、Si、C及びTiを含む金属基複合材料(MMC)で構成されるMMCプレートと、
前記セラミックプレートと前記MMCプレートとの間に設けられ、前記セラミックプレート及び前記MMCプレートを接合する接合層であって、Alを主成分として含み、かつ、Si及びMgを副成分として含む接合層と、
を備える接合体。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では「前記セラミックプレートと前記接合層との間の接合界面がMg含有層を含む」のに対し、甲1発明1では、このMg含有層を含むか否か明らかでない点。
<相違点2>
本件発明1では「前記MMCプレートが、前記接合層と前記MMCプレートとの間の接合界面から所定の深さDAlにわたって前記接合層に由来するAlが拡散されたAl拡散層を有しており、前記Al拡散層の深さDAlが40μm以上である」のに対し、甲1発明1では、この所定の深さのAl拡散層を含むか否か明らかでない点。
イ 相違点に対する判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
(ア) 甲5には、【請求項1】に「以下の工程1~3を経由することを特徴とする接合体の製造方法。
工程1:金属箔とろう材合金箔からなる帯状積層物のろう材合金箔面に、セラミックス基板の適宜数を配列してから、金属箔とろう材合金箔からなる別の帯状積層物でセラミックス基板の表面を覆い帯状構造体とする工程。
工程2:この帯状構造体を、非酸化性雰囲気の高温下に保持された、予熱部、仮接合部、拡散部を有する接合炉を通過させて帯状接合体とする工程。
工程3:この帯状接合体を個々の単位接合体に切断する工程。ここで、予熱部とは、ろう材合金箔の融点よりも低い温度に保持された領域であり、仮接合部とは、ろう材合金箔の融点以上の温度領域で帯状構造体を加圧しながらろう材成分とセラミックス基板とを反応させる領域であり、拡散部とは、ろう材合金箔の融点以上の温度領域で帯状構造体の加圧を解いて、ろう材成分を金属箔へ拡散させる領域である、と定義される」と記載され、【0024】には「拡散部では、金属箔とセラミックス基板間の十分な接合強度を確保するため、ろう材成分の一部の金属成分を金属箔中に拡散させることが必要である。たとえば、金属箔がAlで、ろう材合金箔成分がAl-Cu系である場合には、Al中にCuを拡散させる。拡散距離は50~100μm程度であることが好ましい」と記載されている。これらの記載から、甲5には、金属箔とろう材合金箔との接合に関し、前記工程2において接合炉の「予熱部」、「仮接合部」、「拡散部」を通過させることで、ろう材成分の一部の金属成分を金属箔中に拡散させ、十分な接合強度を確保することが記載されているといえる。
(イ) しかしながら、上記のように接合する材料については、【0007】に「金属箔がAl製又はAl合金製であり、ろう材合金箔がAlとCuを主成分とするものであることが好ましい。」との記載、【0011】に「本発明で用いられるろう材合金箔は帯状物である。成分はAlとCuを主成分とするものが好ましく、例示すればCu1~6%、特に1.5~5%のAl-Cu合金箔、4%Cuと0.5%Mgとを含む2018合金箔、0.5%のMnを含む2017合金箔、更にはJIS合金の2001、2003、2005、2007、2011、2014、2024、2025、2030、2034、2036、2048、2090、2117、2124、2218、2224、2324、7050等の合金箔である。Mg、Zn、In、Mn、Cr、Ti、Bi等の第三成分は合計で5%まで含ませることができる。」との記載があるとおり、金属箔が「Al又はAl合金」で、ろう材合金箔成分が「AlとCuを主成分とするもの」であり、それらの材料に対して上記工程2のような加熱加圧を行った場合に「Al中にCuを拡散させ・・・拡散距離は50~100μm程度である」ということが記載されているにとどまる。
(ウ) 一方、甲1発明1の「Si、SiC及びTiを含む金属マトリックス複合材料(MMC)」の接合に用いられる「金属接合層」は「Al-Si-Mg系接合材を使用したTCBにより、この接合材が接合層になる」ものであって、甲5に記載されるろう材合金のようにCuを含むものではなく、Al中にCuを拡散させることは想定されない。そして、甲1発明1における接合は「金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法であるTCB」により形成されるものであり、甲5に記載されたろう材金属箔の融点以上の温度領域で加圧する方法とは熱処理条件が異なる。すなわち、甲1発明1の接合と甲5に記載された接合は、接合対象の成分組成も接合方法も異なるものである。そうすると、甲1発明1のMMCと金属接合層との接合において、どのような成分の拡散がどの程度の深さまで起こり、実際に十分な接合強度が得られるのか、当業者が予測し得るほどの事項が甲5に記載されているとはいえない。
(エ) したがって、甲5の記載事項を考慮しても、甲1発明1が相違点2に係る本件発明1の構成を有しているとはいえないから、相違点2は実質的な相違点である。
(オ) 次に、相違点2に係る本件発明1の構成が容易に想到し得るものか否かについて検討する。
(カ) 甲5には上記(ア)~(イ)の事項が記載されているが、上記(ウ)で検討したとおり、甲5の記載を参照しても、接合条件も接合対象の成分組成も異なる甲1発明1のMMCと金属接合層との接合において、どのような成分の拡散がどの程度の深さまで起こり、実際に十分な接合強度が得られるのか不明と言わざるを得ないから、甲1発明1において、MMCが金属接合層との間の接合界面から深さ40μm以上にわたって金属接合層に由来するAlが拡散されたAl拡散層を有するようにすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。また、甲1発明1において、当該発明にとって重要な接合方法を、金属接合材の固相線温度以下で行うTCBから、甲5に記載されたろう材の融点以上に加熱する方法に変更し、甲5に記載されたような成分の拡散が起こるようにする動機付けもない。
(キ) さらに、甲2~4、6の記載事項を参照しても、MMCと金属接合層との接合界面に関し、接合界面から所定の深さDAlにわたって接合層に由来するAlが拡散されたAl拡散層を有している点について、記載も示唆もされていない。
(ク) そうすると、甲1発明1において、MMCプレートが、金属接合層とMMCプレートとの間の接合界面から所定の深さDAlにわたって前記金属接合層に由来するAlが拡散されたAl拡散層を有し、前記Al拡散層の深さDAlが40μm以上となるようにし、相違点2に係る本件発明1の構成を備えたものとすることが当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア) 申立人は、特許異議申立書の53ページ下から3行~55ページ16行において、甲5の記載事項を摘示しつつ、以下のように主張している。
「したがって、甲第5号証に記載の「金属箔」を本件特許発明6の「MMC材料」とし、甲第5号証に記載の「ろう材合金箔成分」を本件特許発明6の「Alを含む接合材」とすると、MMC材料側に融点の低いAlが拡散していることが、甲第5号証に記載されていると言える。すなわち、甲第5号証には、ろう材合金箔に由来するAlが拡散されたAl拡散層を有する接合体が記載されている。」
(イ) また、申立人は、令和7年12月18日に提出された意見書の3ページ3行~4ページ下から7行において、以下のように主張している。
「甲第5号証に記載されている、金属からなる部材とセラミックスからなる部材とを接合する接合層に含まれる成分のうちの金属成分を金属からなる部材中に拡散させることは、特定の元素に限定されるものではなく、「金属接合において十分な接合強度を得るためには、接合界面近傍の反応のみならず、金属からなる部材の内部、例えば、50~100μmのオーダーの深さまで及ぶ拡散領域(相互作用領域)を形成し、物理的な一体化を図るべきである」という、金属接合のメカニズムに基づく一般的な設計指針を示している。・・・訂正請求項1に係る発明において、セラミックプレートとMMCプレートが「Alを主成分として含み、かつ、Si及びMgを副成分として含む」接合層により接合するとき、金属をマトリックスとするMMCプレートにおいて、接合層に含まれるアルミニウムを拡散させて「接合層に由来するAlが拡散されたAl拡散層」を形成することにより、セラミックプレートとMMCプレート間の十分な接合強度を確保することは、当業者は、甲第5号証を参酌すれば、容易に想到することができる。なお、接触する一対の部材のうちの一方の部材に含まれる成分が他方の部材内に拡散する深さは、温度と時間の関数によって表すことが可能である。したがって、訂正請求項1に係る発明において、拡散層の厚さ(成分が拡散する深さ)を制御することは、材料系が多少異なったとしても、当業者が予備実験を通じて日常的に行うプロセス条件の最適化(設計事項)の範疇に過ぎない。・・・このように、訂正請求項1に係る発明の構成(F)は、甲第5号証に基づいて、使用する材料の組み合わせに合わせて拡散条件を最適化した結果であり、一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用に過ぎない・・・また、訂正請求項1に係る発明において、上記のような公知の技術手段を組み合わせた結果により得られる効果も、公知の技術手段のそれぞれが本来有する効果の総和に過ぎず、予測される範囲内の強度向上に留まり、格別な相乗効果は見出せない。・・・40μmを境界とする臨界的意義は全く認められない。」
(ウ) しかしながら、前記イ(イ)~(ウ)で検討したとおり、甲5には、金属箔が「Al又はAl合金」で、ろう材合金箔成分が「AlとCuを主成分とするもの」であり、それらの材料に対して前記工程2のようなろう材の融点以上に加熱する加熱加圧を行った場合に「Al中にCuを拡散させ・・・拡散距離は50~100μm程度である」という技術的事項、すなわち、甲1発明1とは接合方法も接合対象の成分組成も異なる技術が記載されているにとどまるというべきである。申立人は、甲5に記載された技術的事項を拡大解釈しつつ、本件発明1の構成との比較において本件発明1の進歩性欠如を主張しているが、いずれも本件発明1の構成を見た上で一般論から推論を述べるのみで、甲5以上の具体的な証拠は示されていない。そして、甲1を主たる証拠として認定した甲1発明1を出発点として本件発明1が容易に発明をすることができるか否かについて検討すれば、前記イ(カ)~(ク)で検討したとおり、甲1発明1のMMCと金属接合材との接合において、どのような成分の拡散がどの程度の深さまで起こり、実際に十分な接合強度が得られるのか、当業者が予測し得るほどの事項が甲5に記載されているとはいえないし、甲1発明1にとって重要なTCBによる接合に替えて、加熱条件のみならず具体的に想定される接合対象の成分組成も異なる甲5に記載された接合方法を適用して、甲5に記載されたような成分の拡散を起こさせる動機付けもないから、前記イの判断が上記申立人の主張によって左右されることはない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1は甲1発明1ではないし、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1発明1及び甲2~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1及び甲2~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3) 本件発明2~4、7~11について
本件発明2~4、7~11は、本件発明1を引用し、これを、さらに限定するものであるところ、本件発明1が、甲1発明1ではなく、甲1発明1及び甲2~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~4、7~11も、甲1発明1ではないし、甲1発明1及び甲2~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4) 本件発明5について
本件発明5は「前記セラミックプレート、前記接合層及び前記MMCプレートの接合を、熱圧接により行うことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の接合体の製造方法」であり、本件発明1の特徴を全て備える接合体の製造方法について「前記セラミックプレート、前記接合層及び前記MMCプレートの接合を、熱圧接により行う」点を特定したものである。
前記(1)イ(オ)で認定した接合体の製造方法の発明である甲1発明2と本件発明5とを対比すると、少なくとも実質的に相違点1及び2と同じ点で相違する。
そして、前記(2)で検討したとおり、本件発明1が甲1発明1ではなく、甲1発明1及び甲2~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないところ、本件発明1の特徴を有する接合体の製造方法である本件発明5は甲1発明2であるとはいえないし、甲1発明2と甲2~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5) 小括
以上のとおりであるから、取消理由1及び申立理由1には理由がない。
2 取消理由2及び申立理由3について
(1) サポート要件の判断手法について
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
以下、この観点に立って検討する。
(2) 本件発明の課題について
本件発明の課題は「高い接合強度を有するセラミックプレート及びMMCプレートの接合体を提供すること」(【0008】)である。
(3) 発明の詳細な説明の記載について
ア 発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
(ア)「【発明を実施するための形態】
【0011】
接合体
図1に本発明による接合体の一例を示す。図1に示される接合体10は、セラミックプレート12と、MMCプレート14と、接合層16とを含む。好ましくは、セラミックプレート12は酸化アルミニウム及び/又は窒化アルミニウムを含み、内部電極18が埋設されている。MMCプレート14は、金属基複合材料(MMC)で構成されるプレートであり、セラミックプレート12の一方の側と対向して設けられる。金属基複合材料(MMC)はSi、C及びTiを含むのが好ましい。接合層16は、セラミックプレート12及びMMCプレート14を接合する層であって、セラミックプレート12とMMCプレート14との間に設けられる。接合層16は、Alを主成分として含み、かつ、Si及びMgを副成分として含む。本発明の第一の態様においては、セラミックプレート12と接合層16との間の接合界面20がMg含有層24を含む。一方、本発明の第二の態様においては、図2により具体的に示されるように、MMCプレート14が、接合層16とMMCプレート14との間の接合界面22から所定の深さDAlにわたって接合層16に由来するAlが拡散されたAl拡散層26を有する。Al拡散層の深さDAlは40μm以上であるのが好ましい。第一の態様は第二の態様の特徴を含んでいてもよく、その逆もまた然りである。このように、(1)MMCプレート14とセラミックプレート12との間に所定の接合層16を設け、かつ、(2a)セラミックプレート12と接合層16との間の接合界面20がMg含有層24を含むようにすることで、及び/又は(2b)MMCプレート14が、接合層16とMMCプレート14との間の接合界面22から所定の深さ(厚さ)にわたってAl拡散層26を有するようにすることで、高い接合強度を有するセラミックプレート12及びMMCプレート14の接合体10を提供することができる。すなわち、所定の接合層16の採用のみならず、Mg含有層24及び/又はAl拡散層26を設けることで、MMCプレート14とセラミックプレート12との間で高い接合強度を実現することができる。」
(イ)「【0023】
接合体の製造方法
本発明の接合体は、所定の層構成の接合体が得られるかぎり、いかなる方法により製造されたものであってもよいが、以下に好ましい製造方法を説明する。
【0024】
まず、内部電極が埋設されたセラミックプレート、MMCプレート、及び接合層を用意する。各部材の詳細については上述したとおりである。セラミックプレート、MMCプレート、及び接合層はいずれも、公知のものを使用することができるが、公知の方法に基づき適宜製造してもよい。
【0025】
次に、セラミックプレート、MMCプレート、及び接合層の各々に対して、有機溶剤を用いて超音波洗浄を行う。超音波洗浄により各部材の表面に付着した汚れを除去することができ、各部材と接合層との接合性が向上し、結果として高い接合強度を実現ことができる。有機溶剤の好ましい例としては、アセトンやイソプロピルアルコール(IPA)が挙げられる。超音波洗浄時間を長くすることで汚れをより一層除去することができ、熱圧接時にMgやAlといった元素の移動や拡散を促進することができる。したがって、超音波洗浄時間を制御することで、後続の熱圧接において、Mg含有層の形成/非形成を制御し、かつ、Al拡散層の深さ(厚さ)及びMg含有層の深さ(厚さ)を変化させることができる。例えば、超音波洗浄時間を長くすることで、Mg含有層を形成させ、かつ、Al拡散層の深さ及びMg含有層の深さを大きくすることができる。各部材の表面に付着した汚れをより効果的に除去する観点から、アセトンを用いた超音波洗浄と、イソプロピルアルコール(IPA)を用いた超音波洗浄の両方を行うのが望ましい。超音波洗浄が施されたセラミックプレート及びMMCプレートは、純水を用いた流水洗浄、N2ガスでのブロー、有機溶媒(IPA等)を含浸させたワイプシートでの拭き取り、及び乾燥を施すことで更に清浄化されるのが好ましい。また、超音波洗浄が施された接合層は、N2ガスでのブローを施すことで更に清浄化されるのが好ましい。」
(ウ)「【実施例】
【0027】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の例に限定されるものではない。
・・・
【0032】
(4)清浄化工程
セラミックプレート及びMMCプレートの各々に対して以下の清浄化工程(i)~(v)を順に行う一方、Si及びMg含有Al合金シートに対して以下の清浄化工程(i)、(ii)及び(iv)のみを順に行った。
<清浄化工程>
(i)アセトンを用いた超音波洗浄(例9では実施せず)
(ii)イソプロピルアルコール(IPA)を用いた超音波洗浄(例9では実施せず)
(iii)純水を用いた流水洗浄
(iv)N2ガスでのブロー
(v)120℃で10分間の乾燥
【0033】
このとき、(i)アセトンを用いた超音波洗浄と(ii)イソプロピルアルコール(IPA)を用いた超音波洗浄との合計洗浄時間、すなわち有機溶剤での超音波洗浄時間を表1に示されるように実験例ごとに変化させた。したがって、上述のとおり、例9については上記(i)及び(ii)の超音波洗浄は行わなかった。
・・・
【0041】
【表1】
[図:0001435198000007.jpg]
」
イ 前記ア(ア)から、「接合体10は、セラミックプレート12と、MMCプレート14と、接合層16とを含む」こと、「セラミックプレート12は酸化アルミニウム及び/又は窒化アルミニウムを含み、内部電極18が埋設されている」こと、「MMCプレート14は、金属基複合材料(MMC)で構成されるプレートであり、セラミックプレート12の一方の側と対向して設けられ」、「金属基複合材料(MMC)はSi、C及びTiを含むのが好ましい」こと、「接合層16は、セラミックプレート12及びMMCプレート14を接合する層であって、セラミックプレート12とMMCプレート14との間に設けられ」、「接合層16は、Alを主成分として含み、かつ、Si及びMgを副成分として含む」こと、そして「本発明の第一の態様においては、セラミックプレート12と接合層16との間の接合界面20がMg含有層24を含む」こと、一方「本発明の第二の態様においては、・・・MMCプレート14が、接合層16とMMCプレート14との間の接合界面22から所定の深さDAlにわたって接合層16に由来するAlが拡散されたAl拡散層26を有」し「Al拡散層の深さDAlは40μm以上であるのが好ましい」こと、また「第一の態様は第二の態様の特徴を含んでいてもよく、その逆もまた然りである」こと、が記載されており、「(1)MMCプレート14とセラミックプレート12との間に所定の接合層16を設け、かつ、(2a)セラミックプレート12と接合層16との間の接合界面20がMg含有層24を含むようにすることで、及び/又は(2b)MMCプレート14が、接合層16とMMCプレート14との間の接合界面22から所定の深さ(厚さ)にわたってAl拡散層26を有するようにすることで、高い接合強度を有するセラミックプレート12及びMMCプレート14の接合体10を提供することができる」ことが記載されている。
ウ そして、上記の特徴を有する接合体を製造するには、前記ア(イ)に「セラミックプレート、MMCプレート、及び接合層を用意」し(【0024】)「次に、セラミックプレート、MMCプレート、及び接合層の各々に対して、有機溶剤を用いて超音波洗浄を行う」方法が記載され「超音波洗浄時間を長くすることで汚れをより一層除去することができ、熱圧接時にMgやAlといった元素の移動や拡散を促進することができ」、「超音波洗浄時間を制御することで、後続の熱圧接において、Mg含有層の形成/非形成を制御し、かつ、Al拡散層の深さ(厚さ)及びMg含有層の深さ(厚さ)を変化させることができる」こと(【0025】)が説明されている。
エ さらに、前記ア(ウ)に、実施例として「セラミックプレート及びMMCプレートの各々に対して以下の清浄化工程(i)~(v)を順に行う一方、Si及びMg含有Al合金シートに対して以下の清浄化工程(i)、(ii)及び(iv)のみを順に行った」こと(【0032】)、「このとき、(i)アセトンを用いた超音波洗浄と(ii)イソプロピルアルコール(IPA)を用いた超音波洗浄との合計洗浄時間、すなわち有機溶剤での超音波洗浄時間を表1に示されるように実験例ごとに変化させた。したがって、上述のとおり、例9については上記(i)及び(ii)の超音波洗浄は行わなかった」こと(【0033】)が記載され、【表1】にその結果得られた接合体が示されている。
オ ここで、【表1】には、前記超音波洗浄処理の時間が2.5~8minである「例1」~「例7」は「セラミックプレートと接合層との間の接合界面におけるMg含有層の有無」が「有り」であり「MMCプレート内のAl拡散層の深さDAl」が50~500nmであったことが示されている。反面、前記超音波洗浄処理の時間が1minである「例8」及び0minである「例9」では「セラミックプレートと接合層との間の接合界面におけるMg含有層の有無」が「無し」であり「MMCプレート内のAl拡散層の深さDAl」が30nm及び20nmであったことが示されており、セラミックプレート、MMCプレート、及び接合層に対して前記超音波洗浄処理を所定時間以上行った場合に、前記「第一の態様」の特徴(以下「特徴A」という。)及び「第二の態様」におけるDAlが40nm以上という好ましい特徴(以下「特徴B」という。)をいずれも有する接合体を得ることができ、これら両方の特徴を有する「例1」~「例7」の接合体は、いずれの特徴も有しない「例8」、「例9」の接合体よりも接合強度が高かったことが示されている。
カ そうすると、前記イのとおり、「(2a)セラミックプレート12と接合層16との間の接合界面20がMg含有層24を含むようにすることで、及び/又は(2b)MMCプレート14が、接合層16とMMCプレート14との間の接合界面22から所定の深さ(厚さ)にわたってAl拡散層26を有するようにすることで、高い接合強度を有するセラミックプレート12及びMMCプレート14の接合体10を提供することができる」と記載され、「特徴A」及び/又は「特徴B」を有するようにすることで高い接合強度が得られる旨の記載はあるものの、前記オのとおり、実際に接合体の特徴と接合強度の高さとの相関については「特徴A」及び「特徴B」をいずれも有する接合体が、いずれの特徴も有しない接合体よりも、接合強度が高かったことが示されているにとどまる。
キ そして、本件発明のように3つの層からなる接合体には、直接接合する2つの層の接合界面が2つあるところ、2つの接合界面のいずれか一方の接合強度が高かったとしても、他方の接合界面の接合強度が低ければ、接合強度が低い界面近傍から破壊が起こり、全体としては接合強度が高くならないのが技術常識であるから、接合体が「特徴A」又は「特徴B」のいずれか一方しか有さない場合は、高い強度を有するとはいえない。したがって、当業者は、発明の詳細な説明の記載から、上記カで述べたとおり「特徴A」及び「特徴B」をいずれも有する接合体であれば接合強度が高く、本件発明の課題を解決することができることを理解できるといえる。
(4) 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比、検討
ア 本件特許請求の範囲の請求項1では「前記セラミックプレートと前記接合層との間の接合界面がMg含有層を含む」という、上記(3)で理解した「特徴A」と「前記MMCプレートが、前記接合層と前記MMCプレートとの間の接合界面から所定の深さDAlにわたって前記接合層に由来するAlが拡散されたAl拡散層を有しており、前記Al拡散層の深さDAlが40μm以上である」という「特徴B」がいずれも特定されている。すなわち、本件発明1は、上記(3)で理解した、発明の詳細な説明に記載された本件課題を解決できる態様が全て特定されている。
イ したがって、本件発明1は、当業者において、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして、本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、前記(1)の判断手法に照らせば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は明細書のサポート要件に適合する。
ウ 本件発明1を引用する本件発明2~5、7~11についても事情は同じである。
(5) 申立人の主張について
ア 申立人は、特許異議申立書の72ページ5行~76ページ8行において、本件特許の発明の詳細な説明には、接合体の製造時に、有機溶媒での超音波洗浄を行うことなく、接合体のセラミックプレートと接合層との間の接合界面に、Mg含有層が形成されること、及び、MMCプレートがAl拡散層を有しており、Al拡散層の深さDAlが40μm以上となることは、記載も示唆もされていないから、超音波洗浄処理を施されていない部材を用いて製造される接合体も含まれる範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるといえない旨主張している。
イ しかしながら、上記(4)で検討したとおり、発明の詳細な説明には、超音波洗浄を適度に行うという工夫によって得られた接合強度に優れた接合体の「物」としての特徴に着目して「セラミックプレートと接合層との間の接合界面におけるMg含有層」を有するという「特徴A」、及び「MMCプレートが、接合層とMMCプレートとの間の接合界面から所定の深さDAlにわたって接合層に由来するAlが拡散されたAl拡散層」を有し「Al拡散層の深さDAlは40μm以上である」という「特徴B」の両方を有することで、本件課題が解決できる事が理解できるように記載されている。すなわち、超音波洗浄を施すことにより製造された物か否かに関わらず、接合体が「物」として、上記の「特徴A」及び「特徴B」を有することが肝要であることを当業者は理解できるといえる。したがって、上記申立人の主張は採用できない。
(6) 小括
以上のとおり、本件特許の請求項1~5、7~11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するから、取消理由2及び申立理由3には理由がない。
3 申立理由2について
(1) 物の発明又は物の製造方法の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。
以下、この観点に立って検討する。
(2) 実施可能要件についての判断
ア 本件発明の接合体を製造する方法について、前記2(3)ア(イ)には「セラミックプレート、MMCプレート、及び接合層の各々に対して、有機溶剤を用いて超音波洗浄を行う。超音波洗浄により各部材の表面に付着した汚れを除去することができ、各部材と接合層との接合性が向上し、結果として高い接合強度を実現ことができる。・・・超音波洗浄時間を長くすることで汚れをより一層除去することができ、熱圧接時にMgやAlといった元素の移動や拡散を促進することができる。したがって、超音波洗浄時間を制御することで、後続の熱圧接において、Mg含有層の形成/非形成を制御し、かつ、Al拡散層の深さ(厚さ)及びMg含有層の深さ(厚さ)を変化させることができる。例えば、超音波洗浄時間を長くすることで、Mg含有層を形成させ、かつ、Al拡散層の深さ及びMg含有層の深さを大きくすることができる。」(【0025】)と記載されており、超音波洗浄処理を行うことにより、MgやAlの拡散を促進することができることが説明されている。
イ そして、前記2(3)ア(ウ)には、実施例として、セラミックプレート及びMMCプレートの各々に対して清浄化工程(i)~(v)を施し、有機溶剤での超音波洗浄時間を表1に示されるように実験例ごとに変化させた結果が示されており、超音波洗浄時間が「0min」の例9と「1min」の例8は「セラミックプレートと接合層との間の接合界面におけるMg含有層」が「無し」であったこと、「MMCプレート内のAl拡散層の深さDAl」及び「MMCプレート内のMg拡散層の深さDMg」がいずれも浅かったことが示され、一定時間以上の超音波洗浄を行った例1~7では、本件発明の特徴を有する接合体が得られたことが具体的に示されている。
ウ 以上のとおり、発明の詳細な説明には、本件発明の接合体を製造するための工夫がその作用とともに説明され、その方法により具体的に本件発明の接合体を製造した実施例も記載されていることから、当業者は、超音波処理に限らず、接合面に付着した汚れを除去する処理を行うことでMgやAlの拡散が起こりやすくなり、Mg含有層やAl拡散層が形成されて接合強度が向上することを理解できる。そうすると、当業者は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができるといえる。
エ そうすると、前記(1)の観点に立って検討すれば、本件発明は実施可能要件に適合する。
(3) 申立人の主張について
ア 申立人は、特許異議申立書の、68ページ11行~72ページ4行において、本件明細書の表1を参照しつつ、「例えば、「例2」の接合体と「例4」の接合体は、超音波洗浄の時間が同じであるものの、Mg含有層におけるAl:Mg:Oの重量比や、Al拡散層の深さDAlが異なっている。また、・・・超音波洗浄時間と、Mg含有層におけるAl:Mg:Oの重量比、Al拡散層の深さDAl、および、Mg拡散層の深さDMgとの間に何らかの関係があるようには認められない。」と主張し、設定登録時の本件特許の請求項3、4、6~8、12~14に記載されているような構造又は組成を有する接合体を具体的に製造する方法は記載も示唆もされていないから、本件発明の接合体を作るために、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要がある旨主張している。
イ しかしながら、上記(2)で検討したとおり、発明の詳細な説明には、本件発明の接合体を製造するための超音波洗浄の工夫がその作用とともに説明され、超音波洗浄を行って具体的に製造した実施例とともに、不十分であった比較例も記載されており、接合面に付着した汚れを除去してMgやAlの拡散が起こりやすくすることが肝要であることを理解できる。そして、本件発明1~5、7~11の特定事項を満足する接合体を具体的に作製した実施例も記載されているから、当業者は、実施例、比較例の実験結果を参考にしつつ、必要に応じて汚れをどの程度丁寧に除去するかを検討し、超音波洗浄の時間等を調整して、MgやAlの拡散を適度に促進することで、過度の試行錯誤を要することなく本件発明の構成を有する接合体を製造することができるといえるから、申立人の主張は採用できない。
(4) 小括
以上のとおり、本件特許の請求項1~5、7~11に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合するから、申立理由2には理由がない。
第6 むすび
上記第5で検討したとおり、本件特許の請求項1~5、7~11に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものであるとも、同法第36条第4項第1号並びに同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということもできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、前記取消理由1、2及び前記申立理由1~3では、本件特許1~5、7~11を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1~5、7~11を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項6、12~18に係る特許に対する特許異議の申立てについては、請求項6、12~18は本件訂正により削除され、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700643