特許異議申立
2024-700133
ダイシングテープ、及び、ダイシングダイボンドフィルム
- 審判番号
- 2024-700133
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-118614外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7328807
- 請求日
- 2024年02月14日
- 審決日
- 2025年03月05日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日東電工株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人藤本パートナーズ
- 【異議申立人】西郷 新
- 分類
- P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7328807号発明「ダイシングテープ、及び、ダイシングダイボンドフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7328807号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7328807号の請求項1、3~7に係る特許を維持する。
特許第7328807号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7328807号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和1年6月26日の出願であって、令和5年8月8日にその特許権の設定登録がされ、令和5年8月17日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 6年 2月14日 : 特許異議申立人西郷新(以下「申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 6年 3月 6日付け: 手続補正指令書(方式)
令和 6年 3月13日 : 申立人による手続補正書(方式)の提出
令和 6年 5月17日付け: 取消理由通知書
令和 6年 7月18日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 6年 8月 9日付け: 手続補正指令書(方式)
令和 6年 9月10日 : 特許権者による手続補正書(方式)の提出(以下、この手続補正書(方式)により補正された訂正請求書を単に「訂正請求書」という。また、「訂正請求書」による訂正請求を「本件訂正請求」といい、「本件訂正請求」による訂正を「本件訂正」という。)
当審は、特許法第120条の5第5項の規定に基づき、期間を指定して、申立人に意見書を提出する機会を与えたが、その指定期間内に、申立人から意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否についての判断
特許権者は、特許第7328807号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について、以下の事項により特定されるとおりに訂正することを請求する(下線は訂正箇所を示すため当審が付した。)。
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「 動的粘弾性測定によって測定される貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”との比(E”/E’)であるTanδについて、
-5℃におけるTanδの値(B)に対する、-15℃におけるTanδの値(A)の比(A/B)が0.75以上2.00以下であり、
前記-15℃におけるTanδの値(A)及び前記-5℃におけるTanδの値(B)が、いずれも0.05以上0.50以下である、ダイシングテープ。」と記載されているのを、
「 基材層と、該基材層よりも粘着性が高い粘着剤層とを備え、
前記基材層は、アイオノマー樹脂又はポリプロピレン系エラストマー樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体とを含み、
動的粘弾性測定によって測定される貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”との比(E”/E’)であるTanδについて、
-5℃におけるTanδの値(B)に対する、-15℃におけるTanδの値(A)の比(A/B)が0.75以上2.00以下であり、
前記-15℃におけるTanδの値(A)及び前記-5℃におけるTanδの値(B)が、いずれも0.05以上0.50以下である、ダイシングテープ。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~7も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「 基材層と、該基材層よりも粘着性が高い粘着剤層とを備え、
前記基材層の厚さが80μm以上150μm以下である、請求項1又は2に記載のダイシングテープ。」と記載されているのを、
「 前記基材層の厚さが80μm以上150μm以下である、請求項1に記載のダイシングテープ。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1~4のいずれか1項に記載のダイシングテープと、該ダイシングテープに貼り合わされたダイボンド層とを備える、ダイシングダイボンドフィルム。」と記載されているのを、
「請求項1、3、4のいずれか1項に記載のダイシングテープと、該ダイシングテープに貼り合わされたダイボンド層とを備える、ダイシングダイボンドフィルム。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6、7も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
明細書の段落【0099】、及び、段落【0105】の【表1】中に、
「“実施例1”、“実施例2”、“実施例5”、“実施例6”」と記載されているのを、
「“参考例1”、“参考例2”、“参考例5”、“参考例6”」に訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の段落【0106】に、
「<動的粘弾性測定による各温度(-15℃、-5℃)でのTanδ>
以下のようにして、各ダイシングテープについて、各温度におけるTanδを算出した。
ダイボンドフィルムから、下記に示すサイズ(幅)の試験サンプルを切り出して試験サンプルを作製した。固体粘弾性測定装置(測定装置:RSA-G2、TA社製)を用いて、下記の試験条件において、引張モードにて動的貯蔵弾性率を測定した。
試験サンプルの幅:10mm、
チャック間距離:20mm、
昇温速度:10℃/分、
試験温度:-30~100℃、
周波数:1Hz
-15℃、及び、-5℃における貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”とをそれぞれ測定し、Tanδ=E”/E’ の算出式によって、Tanδを算出した。3回の各測定値の平均値を採用した。Tanδが高いほど、粘性の性質が高いことを示す。なお、測定は、MD方向及びTD方向の両方について実施し、測定値が高い方を結果に採用した。」と記載されているのを、
「<動的粘弾性測定による各温度(-15℃、-5℃)でのTanδ>
以下のようにして、各ダイシングテープについて、各温度におけるTanδを算出した。
ダイシングテープから、下記に示すサイズ(幅)の試験サンプルを切り出して試験サンプルを作製した。固体粘弾性測定装置(測定装置:RSA-G2、TA社製)を用いて、下記の試験条件において、引張モードにて動的貯蔵弾性率を測定した。
試験サンプルの幅:10mm、
チャック間距離:20mm、
昇温速度:10℃/分、
試験温度:-30~100℃、
周波数:1Hz
-15℃、及び、-5℃における貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”とをそれぞれ測定し、Tanδ=E”/E’ の算出式によって、Tanδを算出した。3回の各測定値の平均値を採用した。Tanδが高いほど、粘性の性質が高いことを示す。なお、測定は、MD方向及びTD方向の両方について実施し、測定値が高い方を結果に採用した。」に訂正する。
なお、本件訂正は、一群の請求項1~7について請求されている。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、独立特許要件
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正後の請求項1は、「ダイシングテープ」を、「基材層」と「該基材層よりも粘着性が高い粘着剤層」とを備える「ダイシングテープ」へ更に限定するものである。また、「前記基材層」を、「アイオノマー樹脂又はポリプロピレン系エラストマー樹脂」と「エチレン-酢酸ビニル共重合体」とを含む「基材層」へ更に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、「ダイシングテープ」を更に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1における「ダイシングテープ」が「基材層」と「該基材層よりも粘着性が高い粘着剤層」とを備えることは、訂正前の請求項3に基づいて導き出される構成である。
また、訂正事項1における「前記基材層」が「アイオノマー樹脂又はポリプロピレン系エラストマー樹脂」と「エチレン-酢酸ビニル共重合体」とを含むことは、願書に添付した明細書の段落[0029]及び[0099]等の記載から導き出される。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1~7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1~7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正事項1に係る訂正及び訂正事項2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲における記載の整合を図るため、訂正前の請求項3の記載の一部及び引用請求項を削除するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同法同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、訂正事項1に係る訂正及び訂正事項2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲における記載の整合を図るため、訂正前の請求項3の記載の一部及び引用請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、訂正事項1に係る訂正及び訂正事項2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲における記載の整合を図るため、訂正前の請求項3の記載の一部及び訂正請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1~7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正事項2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲における記載の整合を図るため、訂正前の請求項5の引用請求項の一部を削除するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同法同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、訂正事項2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲における記載の整合を図るため、訂正前の請求項5の引用請求項の一部を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、訂正事項2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲における記載の整合を図るため、訂正前の請求項5の引用請求項の一部を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1~7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項5に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正事項1に係る訂正に伴って、訂正前の段落[0099]に記載されていた「実施例1」、「実施例2」、「実施例5」、及び「実施例6」が訂正後の請求項1で規定される発明ではなくなるため、「参考例1」、「参考例2」、「参考例5」、及び「参考例6」へそれぞれ訂正するものである。また、訂正前の段落[0105]の[表1]に記載されていた「実施例1」及び「実施例2」などをそれぞれ同様に訂正するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、訂正事項1に係る訂正に伴って、段落[0099]、段落[0105]の[表1]における用語の一部を適切なものに訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、訂正事項1に係る訂正に伴って、段落[0099]、段落[0105]の[表1]における記載の一部を適切な用語へ訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
「ダイボンドフィルム」という用語が段落[0106]のみに存在すること、直前に「各ダイシングテープについて」という記載があること、及び、段落[0022]、[0104]、[0110]等の記載内容から、元の記載である「ダイボンドフィルム」が誤記であり、「ダイシングテープ」が正しい記載であることは明らかである。
したがって、本件特許の明細書の段落[0106]における訂正は、「ダイボンドフィルム」という誤記を「ダイシングテープ」へ訂正することを目的とするものである。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記のとおり、訂正事項6は、誤記を訂正するものであるから、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記のとおり、訂正事項6は、誤記を訂正するものであるから、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
3 小括
上記のとおり、訂正事項1~訂正事項6に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号~第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
本件訂正後の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ順に「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、下記のとおりのものである。
「【請求項1】
基材層と、該基材層よりも粘着性が高い粘着剤層とを備え、
前記基材層は、アイオノマー樹脂又はポリプロピレン系エラストマー樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体とを含み、
動的粘弾性測定によって測定される貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”との比(E”/E’)であるTanδについて、
-5℃におけるTanδの値(B)に対する、-15℃におけるTanδの値(A)の比(A/B)が0.75以上2.00以下であり、
前記-15℃におけるTanδの値(A)及び前記-5℃におけるTanδの値(B)が、いずれも0.05以上0.50以下である、ダイシングテープ。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記基材層の厚さが80μm以上150μm以下である、請求項1に記載のダイシングテープ。
【請求項4】
前記粘着剤層の厚さが、5μm以上40μm以下である、請求項3に記載のダイシングテープ。
【請求項5】
請求項1、3、4のいずれか1項に記載のダイシングテープと、該ダイシングテープに貼り合わされたダイボンド層とを備える、ダイシングダイボンドフィルム。
【請求項6】
前記ダイボンド層の厚さが50μm以上135μm以下である、請求項5に記載のダイシングダイボンドフィルム。
【請求項7】
0℃以下において前記ダイボンド層にウエハが接着された状態で延伸されるクールエキスパンド工程において使用され、
前記クールエキスパンド工程では、前記ウエハが前記ダイボンド層とともに割断される、請求項5又は6に記載のダイシングダイボンドフィルム。」
第4 特許異議の申立ての理由の概要
本件訂正前の請求項1~7に係る特許に対する、特許異議の申立ての理由の要旨は、次のとおりである。
1 特許異議の申立ての理由1(明確性要件) 請求項2~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきである。
2 特許異議の申立ての理由2(サポート要件) 請求項2~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきである。
3 特許異議の申立ての理由3(新規性) 請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである。
4 特許異議の申立ての理由4(進歩性) 請求項2~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項、又は、甲第4号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、また、請求項5~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項、若しくは、甲第4号証に記載された発明、又は、甲第4号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきである。
<証拠一覧>
甲第1号証:特開2018-182054号公報
甲第2号証:特開2011-74598号公報
甲第3号証:小坂勇次郎「エチレン-酢酸ビニル共重合体の構造と物性(I)」、「高分子」、1969年、Vol.18、No.206、310~315ページ
甲第4号証:特開2010-225753号公報
甲第5号証:特開2014-195424号公報
甲第6号証:特開2019-16633号公報
甲第7号証:特開2015-185584号公報
第5 取消理由通知書に記載した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、当審が令和6年5月17日付けで特許権者に通知した取消理由(以下「取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。
取消理由1(サポート要件) 請求項1~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきである。
取消理由2(明確性要件) 請求項2~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきである。
取消理由3(新規性) 請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである。
取消理由4(進歩性) 請求項2~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項、又は、甲第4号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、また、請求項5~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項、若しくは、甲第4号証に記載された発明、又は、甲第4号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきである。
記(引用文献等については引用文献等一覧参照)
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2018-182054号公報
甲第2号証:特開2011-74598号公報
甲第3号証:小坂勇次郎「エチレン-酢酸ビニル共重合体の構造と物性(I)」、「高分子」、1969年、Vol.18、No.206、310~315ページ
甲第4号証:特開2010-225753号公報
甲第5号証:特開2014-195424号公報
甲第6号証:特開2019-16633号公報
甲第7号証:特開2015-185584号公報
第6 取消理由1(サポート要件)、取消理由2(明確性要件)、特許異議の申立ての理由1(明確性要件)、特許異議の申立ての理由2(サポート要件)についての当審の判断
1 本件発明1~7について
(1)取消理由1(サポート要件)について
本件発明1~7に対するサポート要件についての取消理由は、発明の詳細な説明の段落【0105】の【表1】には、実施例及び比較例の各ダイシングテープの物性が示されている旨が記載されており、また、発明の詳細な説明の段落【0106】には、「以下のようにして、各ダイシングテープについて、各温度におけるTanδを算出した。」と記載されているものの、発明の詳細な説明には、ダイシングテープのTanδの算出手順について、具体的に記載されていない。そうすると、発明の詳細な説明に記載されているのは、ダイシングテープとダイボンド層とを備えるダイボンドフィルムにおけるTanδの値であって、ダイシングテープにおけるTanδの値であるとはいえない。そして、請求項1に「ダイシングテープ」と記載されているように、請求項1に係る発明はダイシングテープに係る発明である」から、請求項1に係る発明及び請求項1の記載を引用する請求項2~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるということはできないというものであった。
しかしながら、本件訂正の訂正事項6により、明細書の段落【0106】の「ダイボンドフィルム」という誤記は「ダイボンドテープ」へ訂正され、「ダイシングテープ」におけるTanδの値であることが発明の詳細な説明に記載されていることとなったので、本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載したものとなり、当該取消理由は解消した。
2 本件発明2~7について
(1)取消理由1(サポート要件)・特許異議の申立ての理由2(サポート要件)について
本件発明2~7に対するサポート要件についての取消理由は、本件訂正前の請求項2に記載されている「-15℃における25%引張時の強度が15[N/20mm ]以上である」との事項は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえないから、請求項2に係る発明及び請求項2の記載を引用して特定された請求項3~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるということはできないというものであった。
しかしながら、本件訂正の訂正事項2により、訂正前の請求項2は削除され、訂正事項3、4により、請求項2の記載を引用する、訂正前の請求項3及び請求項5は、請求項2の記載を引用しないものに訂正されたから、当該取消理由及び特許異議の申立ての理由2(サポート要件)は解消した。
(2)取消理由2(明確性要件)・特許異議の申立ての理由1(明確性要件)について
本件発明2~7に対する明確性要件についての取消理由は、本件訂正前の請求項2に記載された、「-15℃における25%引張時の強度」の単位「[N/20mm]は明確でないから、請求項2に係る発明及び請求項2の記載を引用して特定された請求項3~7に係る発明は、明確でないというものであった。
しかしながら、本件訂正の訂正事項2により、訂正前の請求項2は削除され、訂正事項3、4により、請求項2の記載を引用する、訂正前の請求項3及び請求項5は、請求項2の記載を引用しないものに訂正されたから、当該取消理由及び特許異議の申立ての理由1(明確性要件)は解消した。
第7 取消理由3(新規性)、特許異議の申立ての理由3(新規性)、取消理由4(進歩性)、特許異議の申立ての理由4(進歩性)についての当審の判断
1 甲号証の記載等について
(1)甲第1号証の記載、甲1発明
ア 甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は、合議体が付加した。以下、同じ。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハのダイシング等に使用することのできるウエハ加工用粘着シートに関する。」
「【実施例】
【0052】
〔実施例1〕
〈粘着剤溶液の調製〉
リービッヒ冷却器と、窒素導入管と、分液ロートと、温度計と、撹拌装置とを備える反応容器たる容量1Lの丸底セパラブルフラスコ内で、メタクリル酸ラウリル(商品名「エキセパールL-MA」,花王株式会社製)83質量部と、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(商品名「アクリエステルHO」,三菱レイヨン株式会社製)9質量部と、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名「カレンズMOI」,昭和電工株式会社製)8質量部と、熱重合開始剤としての2,2'-ゾビスイソブチロニトリル(キシダ化学株式会社製)0.2質量部と、溶媒としての酢酸エチル50質量部とを含む混合物を、60℃±2℃の温度条件で6時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。これにより、ベースポリマーP1を含有するベースポリマー溶液を得た。次に、このベースポリマー溶液に、光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」,BASF社製)と、架橋剤としてのポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」,日本ポリウレタン株式会社製)と、可塑剤としてのテレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(商品名「アデカサイザー D-810」,株式会社ADEKA製)と、溶媒としての酢酸エチルとを加えて混合し、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液において、ベースポリマー100質量部に対して光重合開始剤の含有量は5質量部、架橋剤の含有量は2.5質量部、可塑剤たるテレフタル酸ジ-2-エチルヘキシルの含有量は5質量部であり、固形分濃度(酢酸エチル以外の成分の濃度)は20質量%である。
【0053】
〈基材の作製〉
ポリオレフィン系樹脂たるエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)よりなる基材(EVA基材)を次のようにして作製した。まず、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「エバフレックスP1007」,三井・デュポンポリケミカル株式会社製)をTダイ押出法によって製膜し、厚さ100μmのEVAフィルムを得た。次に、このEVAフィルムの片面にコロナ処理を施した。このようにして、EVA基材(厚さ100μm)を作製した。
【0054】
〈ウエハ加工用粘着シートの作製〉
軽剥離化のためのシリコーン処理の施された面を有するPET剥離ライナーのシリコーン処理面上に本実施例における上述の粘着剤溶液を塗布して塗膜を形成した。次に、この塗膜について80℃で2分間加熱して脱溶媒し、厚さ15μmの粘着剤層を形成した。次に、この粘着剤層の露出面に、ハンドローラーを使用して上述のEVA基材を貼り合わせ、その後、50℃で72時間のエージング処理を行った。このエージング処理により、基材に対する粘着剤層の密着化を図るとともに、粘着剤層中の可塑剤について、部分的な基材への移行、即ち基材への拡散を図った。以上のようにして、基材と粘着剤層とを含む積層構造を有する実施例1のウエハ加工用粘着シートを作製した。実施例1のウエハ加工用粘着シートに関する構成を表1に掲げる(後記の実施例および比較例についても同様である。また、表1において、組成を表す各数値の単位は、相対的な“質量部”である)。
【0055】
〔実施例2,3〕
粘着剤溶液の調製において、可塑剤としてのテレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(商品名「アデカサイザー D-810」,株式会社ADEKA製)の配合量を5質量部に代えて20質量部(実施例2)および40質量部(実施例3)としたこと、以外は実施例1のウエハ加工用粘着シートと同様にして、実施例2,3のウエハ加工用粘着シートを作製した。
【0056】
〔実施例4〕
粘着剤溶液の調製において、可塑剤としてのテレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(商品名「アデカサイザー D-810」,株式会社ADEKA製)5質量部に代えてポリエステル系可塑剤(商品名「ポリサイザー W-360-ELS」,DIC株式会社製)20質量部を用いたこと、以外は実施例1のウエハ加工用粘着シートと同様にして、実施例4のウエハ加工用粘着シートを作製した。
【0057】
〔実施例5〕
リービッヒ冷却器と、窒素導入管と、分液ロートと、温度計と、撹拌装置とを備える反応容器内のトルエン溶媒中で、アクリル酸2-エチルへキシル0.75molと、N-アクリロイルモルホリン0.25molと、アクリル酸2-ドロキシエチル0.22molとを共重合させて、アクリル系共重合体を得た。この重合反応では、反応温度を60℃とし、反応時間を8時間とした。そして、このアクリル系共重合体に対し、0.11 molの2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加反応させ、ポリマー分子内側鎖に炭素-炭素二重結合を導入した。この付加反応では、反応温度を50℃とし、反応時間を6時間とした。これにより、ベースポリマーP2を含有するベースポリマー溶液を得た。次に、このベースポリマー溶液に、光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」,BASF社製)と、架橋剤としてのポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」,日本ポリウレタン株式会社製)と、可塑剤としてのテレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(商品名「アデカサイザー D-810」,株式会社ADEKA製)と、溶媒としての酢酸エチルとを加えて混合し、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液において、ベースポリマー100質量部に対して光重合開始剤の含有量は5質量部、架橋剤の含有量は2.5質量部、可塑剤たるテレフタル酸ジ-2-エチルヘキシルの含有量は20質量部であり、固形分濃度(酢酸エチル以外の成分の濃度)は20質量%である。そして、この粘着剤溶液を実施例1において上述した粘着剤溶液の代わりに用いたこと以外は実施例1のウエハ加工用粘着シートと同様にして、実施例5のウエハ加工用粘着シートを作製した。」
「【0064】
【表1】
[図:0001423465000001.jpg]
」
イ 上記アから、甲第1号証には、以下の技術的事項が記載されているといえる。
(ア)本発明は、ウエハのダイシング等に使用することのできるウエハ加工用粘着シートに関するものであること。(【0001】)
(イ)実施例1~5のウエハ加工用粘着シートは、エチレン-酢酸ビニル共重合体(商品名「エバフレックス P1007」,三井・デュポン ポリケミカル株式会社製)からなるEVA基材と、粘着剤層とを含む積層構造を有すること。(【0053】~【0057】、【0064】の【表1】)
ウ 上記イによれば、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が、記載されている。
「ウエハのダイシング等に使用することのできるウエハ加工用粘着シートであって、
エチレン-酢酸ビニル共重合体(商品名「エバフレックス P1007」,三井・デュポン ポリケミカル株式会社製)からなるEVA基材と、粘着剤層とを含む積層構造を有する、ウエハ加工用粘着シート。」
(2)甲第4号証の記載、甲4発明
ア 甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングテープなどに関する。特に、本発明のダイシングテープは、半導体ウエハなどを素子の小片に切断分離(ダイシング)する際に、当該半導体ウエハなどの被切断体を固定するために用いる半導体ウエハダイシングテープなどに関する。」
「【実施例】
【0034】
次に本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
使用した粘着剤の種類を以下に示す。
粘着剤組成物(A)
2-エチルヘキシルアクリレート(75mol%)、メタクリル酸(1mol%)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(24mol%)の共重合体に、光重合性炭素-炭素二重結合および官能基を有する化合物として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、重合禁止剤としてハイドロキノンを適宜加え反応温度および反応時間を調整して、光重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を得た。この化合物100質量部に対して、ポリイソシアネートとして日本ポリウレンタン社製:コロネートLを2質量部、光重合開始剤として日本チバガイギー社製:イルガキュアー184を0.5質量部加えて合し、紫外線硬化性粘着剤組成物(A)を調製した。
【0036】
使用した基材フィルムの種類を以下に示す。
以下に示す樹脂材料を、押出機を使用して押出加工することにより基材フィルムを作成した。
樹脂材料
基材フィルムA:エチレン-酢酸ビニル共重合体
東ソー(株)製ウルトラセン631
(100μm厚)
基材フィルムB:エチレン-アクリル酸共重合体アイオノマー(亜鉛架橋)
三井デュポンポリケミカル(株)製ハイミラン1855
(100μm厚)
基材フィルムC:エチレン-メタクリル酸共重合体
三井デュポンポリケミカル(株)製ニュクレルNO35C
(100μm厚)
基材フィルムD:ポリプロピレン-熱可塑性エラストマー混合樹脂
ポリプロピレン:ノバテックPPFG3DC 60%
熱可塑性エラストマー:JSR(株)製ダイナロン1320p 40%
(100μm厚)
基材フィルムE:エチレン-アクリル酸共重合体アイオノマー(ナトリウム架橋)
三井デュポンポリケミカル(株)製ハイミラン1601
(100μm厚)
基材フィルムF:ポリプロピレン-熱可塑性エラストマー混合樹脂
ポリプロピレン:ノバテックPPFG3DC 80%
熱可塑性エラストマー:JSR(株)製ダイナロン1320P 20%
(100μm厚)」
「【0038】
(ダイシングテープの作製)
粘着剤として粘着剤組成物(A)を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルムに乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布し、80℃で5分間乾燥した後、上記の各種基材フィルムと張り合わせることでダイシングテープを作製した。」
「【0044】
【表1】
[図:0001423465000002.jpg]
」
イ 上記アから、甲第4号証には、次の技術的事項が記載されているといえる。
(ア)甲第4号証の実施例1のダイシングテープは、エチレン-酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製ウルトラセン631)からなる基材フィルムAと、粘着剤層とを備えること。(段落【0036】、【0038】、【0044】の【表1】)
ウ 上記イによれば、甲第4号証には、実施例1について、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。
「エチレン-酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製ウルトラセン631)からなる基材フィルムAと、粘着剤層とを備える、ダイシングテープ。」
2 本件発明1について
(1)甲1発明を主引例とする対比・判断
ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「エチレン-酢酸ビニル共重合体(商品名「エバフレックス P1007」,三井・デュポン ポリケミカル株式会社製)からなるEVA基材」、「粘着剤層」は、それぞれ本件発明1の「基材層」、「粘着剤層」に相当する。
(イ)甲1発明の「ウエハ加工用粘着シート」は、「ウエハのダイシング等に使用することのできる」ものであるから、本件発明1の「ダイシングテープ」に相当する。
(ウ)したがって、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも以下の相違点1の点で相違する。
<相違点1>
「基材層」について、本件発明1では、「前記基材層は、アイオノマー樹脂又はポリプロピレン系エラストマー樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体とを含」むのに対し、甲1発明の「EVA基材」は、「エチレン-酢酸ビニル共重合体(商品名「エバフレックス P1007」,三井・デュポン ポリケミカル株式会社製)からな」り、本件発明1のこのような特定はなされていない点。
イ 相違点1について検討する。
甲1発明において、「EVA基材]は、「エチレン-酢酸ビニル共重合体(商品名「エバフレックス P1007」,三井・デュポン ポリケミカル株式会社製)」からなるものであり、「アイオノマー樹脂又はポリプロピレン系エラストマー樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体」とを含むものではないから、相違点1は、実質的なものである。
よって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。
(2)甲4発明を主引例とする対比・判断
ア 本件発明1と甲4発明とを対比する。
(ア)甲4発明の「基材フィルムA」、「粘着剤層」、「ダイシングテープ」は、それぞれ本件発明1の「基材層」、「粘着剤層」、「ダイシングテープ」に相当する。
(イ)したがって、本件発明1と甲4発明とは、少なくとも以下の相違点2の点で相違する。
<相違点2>
「基材層」について、本件発明1では、「前記基材層は、アイオノマー樹脂又はポリプロピレン系エラストマー樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体とを含」むのに対し、甲4発明の「基材フィルムA」は、「エチレン-酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製ウルトラセン631)からな」り、本件発明1のこのような特定はなされていない点。
イ 相違点2について検討する。
甲4発明において、「基材フィルムA]は、「エチレン-酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製ウルトラセン631)」からなるものであり、「アイオノマー樹脂又はポリプロピレン系エラストマー樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体」とを含むものではないから、相違点2は、実質的なものである。
よって、本件発明1は、甲4発明であるとはいえない。
3 本件発明3、4について
(1)本件発明3、4は、本件発明1の構成を備えるものであるところ、本件発明1について、上記「2(1)甲1発明を主引例とする対比・判断」で検討したとおり、相違点2は、実質的なものであり、また、上記「2(2)甲4発明を主引例とする対比・判断」で検討したとおり、相違点2は、実質的なものである。
したがって、本件発明3、4は、甲1発明又は甲4発明であるとはいえない。
(2)そして、甲第7号証には、相違点1、2に係る本件発明1の構成に関連する記載はなく、甲第7号証に記載された事項を甲1発明又は甲4発明に適用しても、相違点1、2に係る本件発明1の構成とすることはできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3、4は、甲1発明又は甲4発明、及び甲第7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 本件発明5~7について
(1)本件発明5~7は、本件発明1の構成を備えるものであるところ、本件発明1について、上記「2(1)甲1発明を主引例とする対比・判断」で検討したとおり、相違点1は、実質的なものであり、また、上記「2(2)甲4発明を主引例とする対比・判断」で検討したとおり、相違点2は、実質的なものである。
(2)そして、甲第1号証の上記1(1)ア以外のその他の箇所にも、相違点1に係る本件発明1の構成に関連する記載はなく、甲第1号証に記載された事項を甲1発明に適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成とすることはできない。
また、上記3(2)のとおり、甲第7号証には、相違点1に係る本件発明1の構成に関連する記載はなく、甲第7号証に記載された事項を甲1発明に適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成とすることはできない。
そして、甲第4号証の上記1(2)ア以外のその他の箇所にも、相違点2に係る本件発明1の構成に関連する記載はなく、甲第4号証に記載された事項を甲4発明に適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成とすることはできない。
また、上記3(2)のとおり、甲第7号証には、相違点2に係る本件発明1の構成に関連する記載はなく、甲第7号証に記載された事項を甲4発明に適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成とすることはできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5~7は、甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項、若しくは、甲第4号証に記載された発明、又は、甲第4号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 小括
上記2~4のとおり、本件発明1、3、4は、甲1発明又は甲4発明であるとはいえず、本件発明3、4は、甲1発明又は甲4発明、及び甲第7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、また、本件発明5~7は、甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項、若しくは、甲第4号証に記載された発明、若しくは、甲第4号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、取消理由3(新規性)及び特許異議の申立ての理由3(新規性)、並びに、取消理由4(進歩性)及び特許異議の申立ての理由4(進歩性)は解消した。
なお、上記第2のとおり、本件訂正前の請求項2は本件訂正により削除され、本件訂正後の請求項[1~7]について訂正することを認めるから、本件発明2については、判断しない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1、3~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、3~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正前の請求項2は、上記のとおり本件訂正により削除された。これにより、本件特許の請求項2に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700133