特許異議申立
2024-700860
発光装置
- 審判番号
- 2024-700860
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-030357
- 登録番号
- 7452086
- 請求日
- 2024年09月10日
- 審決日
- 2026年06月19日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サンケン電気株式会社
- 【権利者代理人】好宮 幹夫
- 【権利者代理人】小林 俊弘
- 【権利者代理人】大塚 徹
- 【異議申立人】西林 晴子
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 横井 亜矢子
- 分類
- P1651.121-YAA(H01L) / P1651.113-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7452086号発明「発光装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7452086号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第7452086号の請求項1~5、7~9に係る特許を維持する。
特許第7452086号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7452086号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和2年2月26日の出願であって、令和6年3月11日にその特許権の設定登録がされ、同月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和6年9月10日に、特許異議申立人西林晴子(以下「申立人」という。)による請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 9月10日 : 申立人による特許異議の申立て
令和7年 1月 9日付け: 取消理由通知書
同年 3月13日 : 特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年 4月24日 : 申立人による意見書の提出
同年 6月27日 : 申立人による手続補正書(方式)の提出
同年10月16日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
同年12月15日 : 特許権者との面接
同月19日 : 特許権者による意見書、訂正請求書(以下
「本件訂正請求書」という。)の提出
令和8年 2月12日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和8年2月12日付けの通知書において、申立人に対して期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人は応答しなかった。
以下、本件訂正請求書による訂正請求及び訂正をそれぞれ「本件訂正請求」及び「本件訂正」という。
第2 本件訂正について
1 本件訂正請求の趣旨
本件訂正に係る請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求めるものである。
2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~9の記載(特許権の設定登録時における特許請求の範囲の記載)は、次のとおりである。
「【請求項1】
発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含み、
前記第1の範囲が500~700nmであり、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度が、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含み、
前記第1の範囲が500~700nmであり、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記発光装置の出射光は少なくとも第1の発光ピークと第2の発光ピークを有し、前記第1の発光ピークのピーク波長が前記第2の範囲にあり、第2の発光ピークのピーク波長が380~480nmにあることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
前記出射光は第3の発光ピークをさらに有し、前記第3の発光ピークのピーク波長が前記第1の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含み、
前記第1の範囲が500~700nmであり、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記第1の蛍光体及び前記第2の蛍光体の少なくとも一方は、複数種類の蛍光体を含むものであることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含み、
前記第1の範囲が500~700nmであり、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記発光素子に電流を65mA流したときの781~1042nmの光出力において、15.0mW以上の発光量を有するものであることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度が、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度よりも低いものであることを特徴とする請求項2~5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1の蛍光体が可視光発光蛍光体であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第2の蛍光体が近赤外発光蛍光体であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第2の蛍光体がCr又はCuを含むものであることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の発光装置。」
3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~9の記載は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。
「【請求項1】
発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの第2の蛍光体とを含み、
前記第1の範囲が500~700nmであり、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの第2の蛍光体とを含み、
前記第1の範囲が500~700nmであり、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであり、
前記発光装置の出射光は少なくとも第1の発光ピークと第2の発光ピークを有し、前記第1の発光ピークのピーク波長が前記第2の範囲にあり、第2の発光ピークのピーク波長が380~480nmにあり、
前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の合計に対する前記第1の蛍光体の比率が20~90質量%であることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
前記出射光は第3の発光ピークをさらに有し、前記第3の発光ピークのピーク波長が前記第1の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの第2の蛍光体とを含み、
前記第1の範囲が500~700nmであり、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであり、
前記第1の蛍光体及び前記第2の蛍光体の少なくとも一方は、複数種類の蛍光体を含むものであることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの第2の蛍光体とを含み、
前記第1の範囲が500~700nmであり、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであり、
前記発光素子に電流を65mA流したときの781~1042nmの光出力において、15.0mW以上の発光量を有するものであることを特徴とする発光装置。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記第1の蛍光体が可視光発光蛍光体であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第2の蛍光体がCaCuSi4O10蛍光体であることを特徴とする請求項1~5、7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第2の蛍光体がCr又はCuを含むものであることを特徴とする請求項1~5、7のいずれか一項に記載の発光装置。」
4 本件訂正の内容
本件訂正は、一群の請求項〔1~9〕について訂正するものであり、その内容は、以下の(1)から(8)に示す特許請求の範囲の記載に係る訂正事項1~8からなる。
(1) 訂正事項1(請求項1の記載に係る訂正)
訂正事項1は、請求項1の記載に係る訂正であって、以下のア、イに示す訂正事項1-1、1-2から構成される。
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項1の記載を直接引用する請求項7~9も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含み」
(イ) 訂正後の記載
「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの第2の蛍光体とを含み」
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項1の記載を直接引用する請求項7~9も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度が、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものである」
(イ) 訂正後の記載
「前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものである」
(2) 訂正事項2(請求項2の記載に係る訂正)
訂正事項2は、請求項2の記載に係る訂正であって、以下のア~ウに示す訂正事項2-1~2-3で構成される。
ア 訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項2の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項2の記載を直接引用する請求項3、7~9も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含み」
(イ) 訂正後の記載
「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの第2の蛍光体とを含み」
イ 訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項2の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項2の記載を直接引用する請求項3、7~9も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記発光装置の出射光は少なくとも第1の発光ピークと第2の発光ピークを有し、前記第1の発光ピークのピーク波長が前記第2の範囲にあり、第2の発光ピークのピーク波長が380~480nmにある」
(イ) 訂正後の記載
「前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであり、
前記発光装置の出射光は少なくとも第1の発光ピークと第2の発光ピークを有し、前記第1の発光ピークのピーク波長が前記第2の範囲にあり、第2の発光ピークのピーク波長が380~480nmにあり、」
ウ 訂正事項2-3
特許請求の範囲の請求項2の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項2の記載を直接引用する請求項3、7~9も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「 前記発光装置の出射光は少なくとも第1の発光ピークと第2の発光ピークを有し、前記第1の発光ピークのピーク波長が前記第2の範囲にあり、第2の発光ピークのピーク波長が380~480nmにある」
(イ) 訂正後の記載
「 前記発光装置の出射光は少なくとも第1の発光ピークと第2の発光ピークを有し、前記第1の発光ピークのピーク波長が前記第2の範囲にあり、第2の発光ピークのピーク波長が380~480nmにあり、
前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の合計に対する前記第1の蛍光体の比率が20~90質量%である」
(3) 訂正事項3(請求項4の記載に係る訂正)
訂正事項3は、請求項4の記載に係る訂正であって、以下のア、イに示す訂正事項3-1、3-2から構成される。
ア 訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項4の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項4の記載を直接引用する請求項7~9も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含み」
(イ) 訂正後の記載
「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの第2の蛍光体とを含み」
イ 訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項4の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項4の記載を直接引用する請求項7~9も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記第1の蛍光体及び前記第2の蛍光体の少なくとも一方は、複数種類の蛍光体を含むものである」
(イ) 訂正後の記載
「前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであり、
前記第1の蛍光体及び前記第2の蛍光体の少なくとも一方は、複数種類の蛍光体を含むものである」
(4) 訂正事項4(請求項5の記載に係る訂正)
訂正事項4は、請求項5の記載に係る訂正であって、以下のア、イに示す訂正事項4-1、4-2から構成される。
ア 訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項5の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項5の記載を直接引用する請求項7~9も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体とを含み」
(イ) 訂正後の記載
「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの第2の蛍光体とを含み」
イ 訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項5の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項5の記載を直接引用する請求項7~9も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記発光素子に電流を65mA流したときの781~1042nmの光出力において、15.0mW以上の発光量を有するものである」
(イ) 訂正後の記載
「前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであり、
前記発光素子に電流を65mA流したときの781~1042nmの光出力において、15.0mW以上の発光量を有するものである」
(5) 訂正事項5(請求項6に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(6) 訂正事項6(請求項7の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項7の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項7の記載を直接引用する請求項8、9も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「請求項1~6のいずれか一項に記載の」
(イ) 訂正後の記載
「請求項1~5のいずれか一項に記載の」
(7) 訂正事項7(請求項8の記載に係る訂正)
訂正事項7は、請求項8の記載に係る訂正であって、以下のア、イに示す訂正事項7-1、7-2から構成される。
ア 訂正事項7-1
特許請求の範囲の請求項8の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前の記載
「前記第2の蛍光体が近赤外発光蛍光体である」
(イ) 訂正後の記載
「前記第2の蛍光体がCaCuSi4O10蛍光体である」
イ 訂正事項7-2
特許請求の範囲の請求項8の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前の記載
「請求項1~7のいずれか一項に記載の」
(イ) 訂正後の記載
「請求項1~5、7のいずれか一項に記載の」
(8) 訂正事項8(請求項9の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項9の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前の記載
「請求項1~8のいずれか一項に記載の」
(イ) 訂正後の記載
「請求項1~5、7のいずれか一項に記載の」
5 本件訂正の適否についての当合議体の判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的
(ア) 訂正事項1-1について
訂正事項1-1に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「第2の蛍光体」を、「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの」と限定するものである。
したがって、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ) 訂正事項1-2について
訂正事項1-2に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「第2の蛍光体」を、「前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものである」と限定するものである。
したがって、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加
(ア) 訂正事項1-1について
明細書の段落【0049】~【0069】の実施例についての記載において、第2の蛍光体として「CaCuSi4O10(CCSO)蛍光体」が例示されているところ、技術常識を踏まえると、当該蛍光体の発光中心は一つであって当該蛍光体の発光スペクトルは励起波長を変えても変化しないものといえるから、前記ア(ア)における限定が明細書に記載された範囲内のものであることは当業者に明らかである。
そうすると、訂正事項1-1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(イ) 訂正事項1-2について
前記(ア)のとおり、明細書には、実施例における第2の蛍光体として「CaCuSi4O10(CCSO)蛍光体」が例示されているところ、技術常識を踏まえると、当該蛍光体の380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものは第1の範囲である500~700nmにおける励起スペクトルのピーク強度の半分以下であるといえるから、前記ア(イ)における限定が明細書に記載された範囲内のものであることは当業者に明らかである。
そうすると、訂正事項1-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
前記ア及びイに検討したとおり、訂正事項1-1及び1-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、訂正事項1-1及び1-2に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的
(ア) 訂正事項2-1について
訂正事項2-1に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2における「第2の蛍光体」を、「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの」と限定するものである。
したがって、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ) 訂正事項2-2について
訂正事項2-2に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2における「第2の蛍光体」を、「前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものである」と限定するものである。
したがって、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(ウ) 訂正事項2-3について
訂正事項2-3に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2における「第1の蛍光体」及び「第2の蛍光体」を「前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の合計に対する前記第1の蛍光体の比率が20~90質量%である」と限定するものである。
したがって、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加
(ア) 訂正事項2-1について
前記(1)イ(ア)における説示と同様に、訂正事項2-1に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(イ) 訂正事項2-2について
訂正事項2-2に係る訂正は、前記(1)イ(イ)における説示と同様に、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(ウ) 訂正事項2-3について
「第1の蛍光体」及び「第2の蛍光体」を「前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の合計に対する前記第1の蛍光体の比率が20~90質量%である」と限定する訂正事項は、次に摘記する本件特許の明細書の段落【0060】及び【0061】等の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項2-3に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
「【0060】
表4、図7に実施例6-12の光出力評価結果を示す。表4中で、赤色蛍光体とNIR蛍光体の数値は、合計を100としたときの比率である。また、作製した発光装置の発光スペクトルを図8,9に示す。
【0061】
【表4】
[図:0001439175000001.jpg]
」
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
前記ア及びイに検討したとおり、訂正事項2-1から2-3までに係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、訂正事項2-1から2-3までに係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(3) 訂正事項3について
ア 訂正の目的
(ア) 訂正事項3-1について
訂正事項3-1に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4における「第2の蛍光体」を、「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの」と限定するものである。
したがって、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ) 訂正事項3-2について
訂正事項3-2に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4における「第2の蛍光体」を、「前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであり」と限定するものである。
したがって、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加
(ア) 訂正事項3-1について
前記(1)イ(ア)における説示と同様に、訂正事項3-1に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(イ) 訂正事項3-2について
前記(1)イ(イ)における説示と同様に、訂正事項3-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
前記ア及びイに検討したとおり、訂正事項3-1及び3-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、訂正事項3-1及び3-2に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(4) 訂正事項4について
ア 訂正の目的
(ア) 訂正事項4-1について
訂正事項4-1に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5の「第2の蛍光体」を、「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの」と限定するものである。
したがって、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ) 訂正事項4-2について
訂正事項4-2に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5の「第2の蛍光体」を、「前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであり」と限定するものである。
したがって、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加
(ア) 訂正事項4-1について
前記(1)イ(ア)における説示と同様に、訂正事項4-1に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(イ) 訂正事項4-2について
前記(1)イ(イ)における説示と同様に、訂正事項4-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
前記ア及びイに検討したとおり、訂正事項4-1及び4-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、訂正事項4-1及び4-2に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(5) 訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項6を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項6を削除するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。
(6) 訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6に係る訂正は、訂正事項5により請求項6を削除したことに伴い、訂正前の請求項7において「請求項1~6のいずれか一項に記載の」と記載されているのを「請求項1~5のいずれか一項に記載の」に訂正するものであるから、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項6の訂正は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。
(7) 訂正事項7について
ア 訂正の目的
(ア) 訂正事項7-1について
訂正事項7-1に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8の「第2の蛍光体」を、「CaCuSi4O10蛍光体である」と限定するものである。
したがって、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ) 訂正事項7-2について
訂正事項7-2に係る訂正は、訂正事項5により請求項6を削除したことに伴い、訂正前の請求項8において「請求項1~7のいずれか一項に記載の」と記載されているのを「請求項1~5、7のいずれか一項に記載の」に訂正するものであるから、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加
(ア) 訂正事項7-1について
明細書の段落【0049】~【0069】には、実施例における第2の蛍光体として「CaCuSi4O10(CCSO)蛍光体」が例示されている。
そうすると、訂正事項7-1に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(イ) 訂正事項7-2について
訂正事項7-2の訂正は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合することは、明らかである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
前記ア及びイに検討したとおり、訂正事項7-1及び7-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、訂正事項7-1及び7-2に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(8) 訂正事項8について
ア 訂正の目的
訂正事項8に係る訂正は、訂正事項5により請求項6を削除したことに伴い、訂正前の請求項9において「請求項1~8のいずれか一項に記載の」と記載されているのを「請求項1~5、7のいずれか一項に記載の」に訂正するものであるから、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項8の訂正は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。
(9) 独立特許要件
この特許異議の申立てにおいては、全請求項である請求項1~9について特許異議の申立てがされているから、削除された請求項6を除く、本件訂正後における請求項1~5、7~9に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する要件は課されない。
(10) 本件訂正についてのむすび
前記(1)~(9)において検討したとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、本件訂正は適法なものである。
よって、前記結論のとおり、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
1 本件訂正発明の認定
前記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~5、7~9に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件訂正発明1」などという。また、これらを総称して「本件訂正発明」ということもある。)は、それぞれ、前記第2の3に示した本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~5、7~9に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 本件訂正発明が解決しようとする課題・技術効果
本件特許の明細書の記載によると、本件訂正発明が解決しようとする課題及び技術効果は、次のとおりである。
<本件訂正発明が解決しようとする課題及び技術効果>
従来の近赤外蛍光体の多くは、励起スペクトルのピークが青色領域にない。そのため、青色発光素子(青色LED)と組み合わせた場合に、発光効率が悪いという問題があり(【0006】)、
青色LEDからの発光により励起され難い蛍光体の場合には、発光強度や温度特性に優れた高品質で低コストのものが比較的容易に入手が可能な青色LEDに組み合わせることができないという問題がある(【0007】)ところ、
本件訂正発明1は、上記問題を解決するためになされたものであり、高品質で低コストである青色LEDからの光による励起がされ難い蛍光体を使用した場合でも、発光強度が強く、温度特性にも優れた発光装置を提供することを目的とし(【0008】)、
高品質で低コストの青色LEDを使用しながら、励起スペクトルのピーク位置に制限されることなく様々な蛍光体が適用可能なものであり、発光強度が強く、温度特性にも優れた発光装置となるという効果を奏する(【0027】)。
第4 取消理由の概要
令和7年10月16日付け取消理由通知書(決定の予告)において通知した取消理由1、2の要旨は、それぞれ以下の1、2に示すとおりである。
1 取消理由1(明確性要件違反)
請求項1~9の記載においては、「励起スペクトル」又は「発光スペクトル」を特定するための情報が欠落しており、本件訂正発明1~9は発明が不明確であるから、本件訂正発明1~9に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条4号に該当し、取り消すべきものである。
2 取消理由2(進歩性の欠如)
本件訂正発明1~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において発行された下記の文献に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明1~9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
記
<主たる引用文献>
甲第1号証:国際公開第2019/063309号
<従たる引用文献>
引用文献A:Wuzhao Yanほか、"Near infrared long-persistent phosphorescence in La3Ga5GeO14:Cr3+ phosphor"、OPTICS EXPRESS、2010年9月、Vol. 18, No. 19、p. 20215-20221
甲第2号証:国際公開第2017/159175号
引用文献Aは、職権調査により発見した文献である。
以下、各甲号証は「第」及び「号証」を略して「甲1」などという。
第5 当審における判断
当合議体は、それぞれ1、2において検討するとおり、取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由1、2によっては、本件訂正発明1~5、7~9に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1 取消理由1(明確性要件違反)について
本件訂正発明1、2、4、5において、「第2の蛍光体」は「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみ」と特定されている。
本件訂正により「発光中心が1つのみ」と限定され、「励起スペクトルのピーク波長」が「モニター波長」によらないこと及び「発光スペクトルのピーク波長」が「励起波長」によらないことが明確になり「励起スペクトル」及び「発光スペクトル」を特定するための条件が明確になったといえるから、請求項1、2、4、5及びこれらの請求項の記載を直接引用する請求項3、7~9に係る発明、すなわち、本件訂正発明1~5、7~9についての前記明確性要件違反は解消している。
2 取消理由2(進歩性欠如)について
(1) 各甲号証並びに各甲号証に記載された発明及び技術事項の認定
ア 申立人が提出した証拠(各甲号証)
令和6年9月10日に申立人が行った特許異議の申立てで提出された証拠は以下のとおりである。
甲1:国際公開第2019/063309号
甲2:国際公開第2017/159175号
甲3:中国特許出願公開第110660892号明細書
甲4:中国特許出願公開第110330970号明細書
また、令和7年4月24日に申立人が意見書と同時に提出した証拠は、次のとおりである。
甲5:特開2019-102806号公報
甲6:国際公開第2019/208562号
甲7:特開2014-130998号公報
甲8:特開2014-175322号公報
甲9:特開2016-072614号公報
甲10:特開2017-117875号公報
甲11:Lei Wangほか、"Enriching red emission of Y3Al5O12:Ce3+ by codoping Pr3+ and Cr3+ for improving color rendering of white LEDs"、OPTICS EXPRESS、2010年11月、Vol.18,No.24、p. 25177-25182
甲12:S.Butkute、"Sol-gel combustion synthesis of high-quality chromium-doped mixed-metal garnets Y3Ga5O12 and Gd3Sc2Ga3O12"、Journal of Alloys and Compounds、2017年12月、739号、p. 504-509
イ 甲1の記載事項及び甲1発明の認定
(ア) 甲1の記載事項
本件特許の出願前に日本国内又は外国において発行された甲1には、次の記載がある。括弧内に、甲1の日本語ファミリー文献である特表2020-524392号公報(以下「ファミリー文献1」という。)の該当記載をそのまま日本語訳として記載した。参照の便宜に供するため、ファミリー文献1の段落番号も併せて記載している。また、後記(イ)の甲1発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。
「CLAIMS:
1. A device comprising:
a light source emitting first light; and
a wavelength converting structure disposed in a path of light emitted by the light source, the wavelength converting structure comprising:
a first phosphor that emits infrared light; and
a second phosphor that absorbs the first light and emits second light, which second light is visible light,
wherein the first phosphor absorbs the first light and emits third light,
wherein the first phosphor absorbs the second light and emits fourth light, and
wherein the third light and the fourth have different peak wavelengths in the infrared emission range.」
(【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を放射する光源と、
前記光源により放射される光の光路に配置された波長変換構造と、
を有する装置であって、
前記波長変換構造は、
赤外光を放射する第1の蛍光体と、
前記第1の光を吸収し、可視光である第2の光を放射する第2の蛍光体と、
を有し、
前記第1の蛍光体は、前記第1の光を吸収して、第3の光を放射し、
前記第1の蛍光体は、前記第2の光を吸収して、第4の光を放射し、
前記第3の光および前記第4の光は、赤外放射範囲において異なるピーク波長を有する、装置。」)
「 Fig.1 illustrates a NIR emitting device according to some embodiments. A light source 100, which may be an LED or any other suitable source, emits first light 104. A portion of the first light 104 is incident on a NIR phosphor 108. The NIR phosphor 108 absorbs the first light 104 and emits second light 112. A portion of the first light 104 is incident on a second phosphor 102. The second phosphor absorbs the first light 104 and emits third light 106. Third light 106 may be visible, though this is not required. The third light 106 is incident on the NIR phosphor 108. The NIR phosphor 108 absorbs all or a portion of the third light 106 and emits fourth light 110.
The NIR phosphor 108 and the second phosphor 102 may be structured such that little or no first light or third light is part of the final emission spectrum from the device, though this is not required.
In some embodiments, first light 104 is blue light. First light 104 may have a peak wavelength between, for example, 440 nm and 460 nm in some embodiments. In some embodiments, both second light 112 and the fourth light 110 are near-infrared and have different peak wavelengths. In some embodiments, the third light 106 is red.
Wavelength converting materials such as phosphors typically include a host lattice and at least one dopant species. The atoms of the dopant species function as light emitting centers. In some embodiments, NIR phosphor is at least one phosphor with at least Cr(III) (Cr3+) as the dopant species. The Cr(III) phosphor is excited by the first light 104 via 4A2 → 4T1 electron transitions. The third light 106 excites the Cr(III) phosphor via 4A2 → 4T2 electron transitions. The combined excitation lights lead to emission light by the Cr(III) phosphor via 4T2 → 4A2 (second light 112) and 2E → 4A2 (fourth light 110) emission channels.
…中略…
The device illustrated in Fig. 1 may have a very broad infrared emission range between 700 nm and 1200 nm, with only one type of pump light. The broad emission range may be useful for NIR spectroscopy applications.」
「[Fig. 1]
[図:0001439175000002.jpg]
」(2頁13~34行、3頁9~11行、図1)
(【0007】
図1には、ある実施例によるNIR放射装置を示す。LEDまたは他の任意の好適なソースである光源100は、第1の光104を放射する。第1の光104の一部は、NIR蛍光体108に入射される。NIR蛍光体108は、第1の光104を吸収し、第2の光112を放射する。第1の光104の一部は、第2の蛍光体102に入射される。第2の蛍光体は、第1の光104を吸収し、第3の光106を放射する。第3の光106は、可視光であってもよいが、これは必ずしも必要ではない。第3の光106は、NIR蛍光体108に入射される。NIR蛍光体108は、第3の光106の全てまたは一部を吸収し、第4の光110を放射する。
【0008】
NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、わずかの第1の光もしくは第3の光が、装置からの最終放射スペクトルの一部となるように、または第1の光もしくは第3の光が全く最終放射スペクトルを構成しないように、構造化されてもよい。ただし、これは必須ではない。
【0009】
ある実施例では、第1の光104は、青色光である。ある実施例では、第1の光104は、例えば、440nmと460nmの間にピーク波長を有してもよい。ある実施例では、第2の光112と第4の光110の両方が、近赤外光であり、異なるピーク波長を有してもよい。ある実施例では、第3の光106は、赤色である。
【0010】
通常、蛍光体のような波長変換材料は、ホスト格子と、少なくとも一つのドーパント種とを有する。ドーパント種の原子は、発光中心として機能する。ある実施例では、NIR蛍光体は、ドーパント種として少なくともCr(III)(Cr3+)を有する、少なくとも一つの蛍光体である。Cr(III)蛍光体は、第1の光104により、4A2→4T1電子遷移を介して励起される。第3の光106は、4A2→4T2電子遷移を介してCr(III)蛍光体を励起する。組み合わされた励起光により、4T2(合議体注:甲1原文の記載から4A2の記載は、4T2の誤記であることが明らかである。)→4A2(第2の光112)、および2E→4A2(第4の光110)放射チャネルを介して、Cr(III)蛍光体により光が放射される。
…(中略)…
【0012】
図1に示す装置は、一種類の励起光のみで、700nmから1200nmの間の極めて広い赤外放射範囲を有してもよい。広い放射範囲は、NIR分光用途に有益であり得る。
【図1】
[図:0001439175000003.jpg]
)
「 The NIR phosphor 108 may emit light having a peak wavelength of at least 700 nm in some embodiments and no more than 1100 nm in some embodiments. NIR phosphor 108 may have a distributed emission intensity within the 700 - 1100 nm range; for example, in some embodiments, NIR phosphor 108 may have a full width at half maximum of at least 1700 cm-1 in some embodiments and no more than 3000 cm-1 in some embodiments.」(3頁12~16行)
(【0013】
NIR蛍光体108は、ある実施例では、少なくとも700nmのピーク波長を有する光を放射し、ある実施例では、1100nm以下のピーク波長を有する光を放射してもよい。NIR蛍光体108は、700-1100nmの範囲内に分布放射強度を有してもよい。例えば、ある実施例では、NIR蛍光体108は、少なくとも1700cm-1の半値全幅を有し、ある実施例では、3000cm-1以下の半値全幅を有してもよい。)
「 In some embodiments, the NIR phosphor 108 is La3Ga5-ySiO14:Cry, also known as Langasite, which shows an optical band gap at 5.1 eV. In some embodiments, the NIR phosphor 108 is one or more gallogermanate compounds of composition La3Ga5-xGe1-ySiyO14:Crx, 0 ≦ y < 1, which show optical band gaps in the range of 4.6 - 5.1 eV. In some embodiments, the optical band gap of a gallogermanate material may be increased by partial substitution of Ga by Al and/or Sc, and/or by replacing part of the La by the smaller rare earth elements Nd, Gd, and Yb. Nd3+ and Yb3+ show additional emission in the 950 - 1070 nm wavelength range which can be beneficial for certain applications.
In some embodiments, the NIR phosphor 108 includes multiple NIR phosphors that are mixed. For example, RE3Ga5-x-yAxSiO14:Cry (RE= La, Nd, Gd, Yb, Tm; A= Al, Sc) may be combined with a second wide band gap phosphor material such as one or more chromium doped garnets of composition Gd3-xRExSc2-y-zLnyGa3-wAlwO12:Crz (Ln = Lu, Y, Yb, Tm; RE= La, Nd), where 0 ≦ x ≦ 3; 0 ≦ Sy ≦ 1.5; 0 ≦ z ≦ 0.3; and 0 ≦ w ≦ 2, and/or one or more chromium doped colquiriite materials of composition AAEM1-xF6:Crx (A = Li, Cu; AE = Sr, Ca; M = Al, Ga, Sc) where 0.005 ≦ x ≦ 0.2.
Fig.2 illustrates the emission spectra of two garnet NIR phosphor powders according to some embodiments. Curve A is the emission spectrum of Gd2.8La0.2Sc1.7Lu0.2Ga3O12:Cr0.1 when excited by 440 nm light. Curve B is the emission spectrum of Gd2.4La0.6Sc1.5Lu0.4Ga3O12:Cr0.1 when excited by 440 nm light. The synthesis of these materials is described below in the Examples.
Any suitable second phosphor 102 may be used. In some embodiments, second phosphor 102 is an Eu2+ doped red emitting material such as BSSNE type phosphors of composition M2-xSi5-yAlyOyN8-y:Eux(M = Ba, Sr, Ca), such as, for example Ba0.2Ca0.06Sr1.64Si4.98Al0.02O0.02N7.98:Eu0.1; CASN or SCASN type phosphors of composition M1-xSiAlN3:Eux(M = Sr, Ca) such as, for example Ca.985SiAlN3:Eu0.015; or M1-xLiAl3N4:Eux(M = Ba, Sr, Ca) such as, for example, (Ba0.5Ca0.5)0.995LiAl3N4:Eu0.005, which may crystallize in an ordered structure variant of the UCr4C4 structure type with Ba and Ca occupying specific lattice sites. Similar ordered variants are known for oxides like RbNaLi6Si2O8. In (Ba0.5Ca0.5)1-xLiAl3N4:Eux narrow band emission at ~630 nm is obtained for Eu on Ba sites while NIR emission at wavelengths > 700 nm is obtained for Eu on Ca sites.」(4頁7行~5頁2行)
「[Fig. 2]
[図:0001439175000004.jpg]
」
(【0018】
ある実施例では、NIR蛍光体108は、ランガサイトとしても知られる、La3Ga5-ySiO14:Cryであり、これは、5.1eVで光学バンドギャップを示す。ある実施例では、NIR蛍光体108は、組成物La3Ga5-xGe1-ySiyO14:Cry、ここで0≦y<1、の1または2以上のガロゲルマネート化合物であり、これは、4.6から5.1eVの範囲の光学バンドギャップを示す。ある実施例では、ガロゲルマネート材料の光学バンドギャップは、Alおよび/もしくはScによるGaの部分置換、ならびに/または小さな希土類元素Nd、Gd、YbによりLaの一部を置換することにより上昇する。Nd3+およびYb3+は、950-1070nmの波長範囲で追加の放射を示し、これは、ある用途において有益である。
【0019】
ある実施例では、NIR蛍光体108は、混合された複数のNIR蛍光体を有する。例えば、RE3Ga5-x-yAxSiO14:Cry(RE=La,Nd,Gd,Yb,Tm;A=Al,Sc)は、組成がGd3-xRExSc2-y-zLnyGa3-wAlwO12:Crz(Ln=Lu,Y,Yb,Tm;RE=La,Nd)、ここで0≦x≦3;0≦y≦1.5;0≦z≦0.3;および0≦w≦2、の1もしくは2以上のクロムドープされたガーネット、ならびに/または組成がAAEM1-xF6:Crx(A=Li,Cu;AE=Sr,Ca;M=Al,Ga,Sc)、ここで0.005≦x≦0.2、の1もしくは2以上のクロムドープされたコルキライト材料のような、第2の、広いバンドギャップの蛍光体材料と組み合わされてもよい。
【0020】
図2には、ある実施例による2つのガーネットNIR蛍光体粉末の放射スペクトルを示す。曲線Aは、440nmの光で励起された際のGd2.8La0.2Sc1.7Lu0.2Ga3O12:Cr0.1の放射スペクトルである。曲線Bは、440nmの光で励起された際のGd2.4La0.6Sc1.5Lu0.4Ga3O12:Cr0.1の放射スペクトルである。これらの材料の合成法は、以降の実施例に記載されている。
【0021】
いかなる好適な第2の蛍光体102が使用されてもよい。ある実施例では、第2の蛍光体102は、Eu2+ドープされた赤色放射材料であり、例えば、Ba0.2Ca0.06Sr1.64Si4.98Al0.02O0.02N7.98:Eu0.1のような、組成M2-xSi5-yAlyOyN8-y:Eux(M=Ba,Sr,Ca);例えばCa.985SiAlN3:Eu0.015のような、組成がM1-xSiAlN3:Eux(M=Sr,Ca)の、CASNもしくはSCASNタイプの蛍光体;または例えば(Ba0.5Ca0.5)0.995LiAl3N4:Eu0.005のような、M1-xLiAl3N4:Eux(M=Ba,Sr,Ca)である。これらは、BaおよびCaが特定の格子サイトを占める、UCr4C4構造タイプの規則構造異形に結晶化してもよい。同様の規則化異形は、RbNaLi6Si2O8のような酸化物において、知られている。(Ba0.5Ca0.5)1-xLiAl3N4:Euxでは、~630nmにおいて、BaサイトのEuの狭小バンド放射が観測され、波長700nm超において、CaサイトのEuのNIR放射が観測される。
)
(イ) 甲1発明の認定
前記(ア)に摘記した甲1の記載事項から、甲1には、図1に示される実施例のNIR放射装置に係る次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、括弧内に、認定の根拠となる甲1の記載箇所を「[]」で示し、ファミリー文献1の対応する記載箇所を「【】」で示す。
<甲1発明>
「NIR放射装置であって、([2頁13行](【0007】))
第1の光104を放射する光源100と、
前記光源100により放射される光の光路に配置された波長変換構造と、を有し、
前記波長変換構造は、
赤外光を放射するNIR蛍光体108と、
前記第1の光104を吸収し、可視光である第3の光106を放射する第2の蛍光体102と、を有し、
前記NIR蛍光体108は、前記第1の光104を吸収して、第2の光112を放射し、
前記NIR蛍光体108は、前記第3の光106を吸収して、第4の光110を放射し、
前記第2の光112および前記第4の光110は、赤外放射範囲において異なるピーク波長を有し、([請求項1]、[2頁13~19行](【請求項1】、【0007】))
光源100は、LEDであり、([2頁13~14行](【0007】))
NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、わずかの第1の光もしくは第3の光が、装置からの最終放射スペクトルの一部となるように、構造化されてもよく、([2頁20~22行](【0008】))
第1の光104は、青色光であって、440nmと460nmの間にピーク波長を有し、([2頁23~24行](【0009】))
第2の光112と第4の光110の両方が、近赤外光であり、([2頁24~26行](【0009】))
第3の光106は、赤色であり、([2頁24~26行](【0009】))
NIR蛍光体は、ドーパント種として少なくともCr(III)(Cr3+)を有する、少なくとも一つの蛍光体であり、[2頁29~30行](【0010】)
Cr(III)蛍光体は、第1の光104により、4A2→4T1電子遷移を介して励起され、[2頁30行](【0010】)
第3の光106は、4A2→4T2電子遷移を介してCr(III)蛍光体を励起するものであり、組み合わされた励起光により、4T2→4A2(第2の光112)、および2E→4A2(第4の光110)放射チャネルを介して、Cr(III)蛍光体により光が放射され、[2頁30~34行](【0010】)
NIR蛍光体108は、少なくとも700nmで1100nm以下のピーク波長を有する光を放射し、([3頁12~13行](【0013】))
NIR蛍光体108は、組成物La3Ga5-xGe1-ySiyO14:Crx、ここで0≦y<1、の1または2以上のガロゲルマネート化合物であり、([4頁8~10行](【0018】))
NIR蛍光体108は、混合された複数のNIR蛍光体を有し、([4頁15~16行](【0019】))
第2の蛍光体102は、Eu2+ドープされた赤色放射材料であり、組成がM1-xSiAlN3:Eux(M=Sr,Ca)の、CASNもしくはSCASNタイプの蛍光体である、([4頁26~32行](【0021】))
NIR放射装置。」
<参考図>
[図:0001439175000005.jpg]
(2) 本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1の分説
検討の便宜上、本件訂正発明1の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Gまでに分説する。
<本件訂正発明1の分説>
A:発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
B:前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体と、
C:モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの第2の蛍光体とを含み、
D:前記第1の範囲が500~700nmであり、
E:前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
F:前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であり、
G:前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであることを特徴とする
X:発光装置。
イ 対比分析
(ア) 構成Xの観点
構成Xは、「発光装置」の発明であることを特定するものである。
「発光装置」の発明である本件訂正発明1と「NIR放射装置」の発明である甲1発明は、「発光装置」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aの観点
構成Aは、「発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子」を含むことである。
a 甲1発明における「LEDであ[る]」「光源100」は、本件訂正発明1における「発光素子」に相当する。
b 甲1発明の「光源100」は、「第1の光104を放射する」ものであって「第1の光104は、青色光であって、440nmと460nmの間にピーク波長を有[する]」から、本件訂正発明1における「発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある」ことを充足する。
c そうすると、本件訂正発明1と甲1発明は、構成Aの点である次の点において一致する。
「発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子」を含む点。
(ウ) 構成B及びDの観点
構成Bは、「前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が第1の範囲にある第1の蛍光体」を含むことである。
構成Dは、「前記第1の範囲が500~700nmであ[る]」ことである。
a 甲1発明における「第2の蛍光体102」は、本件訂正発明1における「第1の蛍光体」に相当する。
b 甲1発明における「第2の蛍光体102」は「(光源100が放射する)前記第1の光104を吸収し、可視光である第3の光106を放射する」ものであるから、甲1発明における「第2の蛍光体102」は「光源100(「発光素子」に相当する。)」によって励起されるといえる。したがって、甲1発明は、本件訂正発明1でいう「第1の蛍光体」が「前記発光素子によって励起され[る]」ことを充足する。
c 甲1発明における「第2の蛍光体102」が放射する「第3の光106」は「赤色であり」、「第2の蛍光体102」は「Eu2+ドープされた赤色放射材料であ[る]」ことも踏まえると、赤色の範囲が620~780nmの範囲であることは技術常識であるから、甲1発明における「第2の蛍光体102」と本件訂正発明1における「第1の蛍光体」は、「発光ピーク波長が500~780nmである」点において共通する。
d 以上の検討結果をまとめると、本件訂正発明1と甲1発明の構成B及びDの観点における一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)のとおりである。
(a) 一致点
「前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が500~780nmの範囲にある第1の蛍光体」を含む点。
(b) 相違点
本件訂正発明1においては、前記発光素子によって励起された、第1の蛍光体の発光ピーク波長が、第1の範囲である500~700nmの範囲にあるのに対して、
甲1発明においては、「第2の蛍光体102」(「第1の蛍光体」に相当する。)の発光ピーク波長は赤色の範囲(620~780nmの範囲)にある点。
(エ) 構成C及びEの観点
構成Cは、「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの第2の蛍光体」を含むことである。
構成Eは、「前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であ[る]」ことである。
a 甲1発明における「NIR蛍光体108」は、本件訂正発明1における「第2の蛍光体」に相当する。
b 甲1発明における「NIR蛍光体108」は、「前記第3の光106を吸収して、第4の光110を放射」するものであるところ、「第4の光110……が、近赤外光であり」、「第3の光106は、赤色であ[る]」こと及び前記(ウ)cの検討結果を踏まえると、「NIR蛍光体108」の発光スペクトルのピーク波長は、「第1の範囲である500~700nmの範囲」とは異なる範囲である近赤外光の範囲(約780~1400nmの範囲)にあるといえる。
したがって、甲1発明は、本件訂正発明1でいう「発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲である500~700nmの範囲と異なる第2の範囲(700nm超、2000nm以下の範囲)にある」ことを充足する。
c 本件訂正発明1における「第2の蛍光体」について、励起スペクトルのピーク波長が第1の範囲である「500~700nm」の範囲にあるのに対して、甲1発明の「NIR蛍光体108」は、「前記第3の光106(赤色)を吸収[する]」ものの、その励起スペクトルのピーク波長は、第1の範囲である500~700nmの範囲にあるとはいえない。
d 本件訂正発明1における「第2の蛍光体」は、「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある」ものである。
一方、甲1発明における「NIR蛍光体108」は、波長の異なる励起光である「第1の光104」及び「第3の光106」を「吸収して」、「異なるピーク波長を有し[た]」「第2の光112および前記第4の光110」「を放射[する]」ものであるから、異なる励起波長に応じて異なる発光スペクトルを有するものといえる。
e 本件訂正発明1における「第2の蛍光体」の「発光中心」は「1つのみ」であり、「励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある」と特定されている。
f 一方、甲1発明における「NIR蛍光体108」は、次の(a)及び(b)にそれぞれ示す二つの電子遷移に基づく発光を有するものであるから、「Cr(III)蛍光体」における異なる「電子遷移」を介した異なる発光スペクトルを有するものである。
(a) 「Cr(III)蛍光体」が「第1の光104により、4A2→4T1電子遷移を介して励起され」「4T2→4A2(第2の光112)」を「放射」する発光(「前記第1の光104を吸収して、第2の光112を放射[する]」発光)
(b) 「Cr(III)蛍光体」が「第3の光106」により「4A2→4T2電子遷移を介して」「励起[され]」「2E→4A2(第4の光110)」を「放射」する発光(「前記第3の光106を吸収して、第4の光110を放射[する]」発光)
g 以上の検討結果をまとめると、本件訂正発明1と甲1発明の構成C及びEの観点における一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)のとおりである。
(a) 一致点
「発光スペクトルのピーク波長が第1の範囲である500~700nmの範囲と異なる第2の範囲にある第2の蛍光体」を含み、
「前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であ[る]」点。
(b) 相違点
本件訂正発明1においては、「第2の蛍光体」の「励起スペクトルのピーク波長」が、「モニター波長によらず」「前記第1の範囲」である500~700nm「の範囲にあり」、かつ、「第2の蛍光体」の「発光スペクトルのピーク波長が」、「励起波長によらず」「第1の範囲と異なる第2の範囲にあ[り]」、
「第2の蛍光体」の「発光中心が1つのみ」であるのに対して、
甲1発明においては、「NIR蛍光体108」(「第2の蛍光体」に相当する。)の「励起スペクトルのピーク波長」が、第1の範囲である500~700nmの範囲にあるとはいえず、
甲1発明においては、「NIR蛍光体108」は、異なる励起波長に応じて異なる発光スペクトルを有し、「Cr(III)蛍光体」における異なる「電子遷移」を介した異なる発光スペクトルを有するものであって、「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの第2の蛍光体」とはいえない点。
(オ) 構成Fの観点
構成Fは、「前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であ[る]」ことである。
a 甲1発明の「第2の蛍光体102」は、「Eu2+ドープされた赤色放射材料であり、組成がM1-xSiAlN3:Eux(M=Sr,Ca)の、CASNもしくはSCASNタイプの蛍光体である」ことから、甲1発明は、本件訂正発明1における「前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であ[る]」ことを充足する。
b したがって、本件訂正発明1と甲1発明は、構成Fの点である次の点において一致する。
「前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体であ[る]」点。
(カ) 構成G及びDの観点
構成Gは、「前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであ[る]」ことである。
構成Dは「前記第1の範囲が500~700nmであ[る]」ことである。
本件訂正発明1と甲1発明の構成D及び構成Gの観点における相違点は、次のとおりである。
本件訂正発明1においては、「前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲である500~700nmの範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであ[る]」のに対して、
甲1発明においては、「NIR蛍光体108」(「第2の蛍光体」に相当する。)の励起スペクトルは明らかではなく、380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度と500~700nmの範囲における励起スペクトルの強度との関係が不明である点。
ウ 一致点及び相違点の認定
前記イの対比分析を踏まえると、本件訂正発明1と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
(ア) 一致点
「発光ピーク波長が380~480nmの範囲にある発光素子と、
前記発光素子によって励起され、発光ピーク波長が500~780nmの範囲にある第1の蛍光体と、
発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲である500~700nmの範囲と異なる第2の範囲にある、第2の蛍光体とを含み、
前記第2の範囲が700nm超、2000nm以下であり、
前記第1の蛍光体は、SCASN、CASN、Sr2Si5N8:Eu2+及びK2SiF6:Mn4+から選択される赤色蛍光体である、
発光装置」の発明である点。
(イ) 相違点
a 相違点1(第1蛍光体関連)
本件訂正発明1においては、前記発光素子によって励起された、第1の蛍光体の発光ピーク波長が、第1の範囲である500~700nmの範囲にあるのに対して、
甲1発明においては、「第2の蛍光体102」(「第1の蛍光体」に相当する。)の発光ピーク波長は赤色の範囲(620~780nmの範囲)にある点。
b 相違点2(第2蛍光体関連)
本件訂正発明1においては、「第2の蛍光体」の「励起スペクトルのピーク波長」が、「モニター波長によらず」「前記第1の範囲」である500~700nm「の範囲にあり」、かつ、「第2の蛍光体」の「発光スペクトルのピーク波長が」、「励起波長によらず」「第1の範囲と異なる第2の範囲にあ[り]」、
「第2の蛍光体」の「発光中心が1つのみ」であるのに対して、
甲1発明においては、「NIR蛍光体108」(「第2の蛍光体」に相当する。)の「励起スペクトルのピーク波長」が、第1の範囲である500~700nmの範囲にあるとはいえず、
甲1発明においては、「NIR蛍光体108」は、異なる励起波長に応じて異なる発光スペクトルを有し、「Cr(III)蛍光体」における異なる「電子遷移」を介した異なる発光スペクトルを有するものであって、「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみの第2の蛍光体」とはいえない点。
c 相違点3 (ピーク強度関連)
本件訂正発明1においては、「前記第2の蛍光体は、前記380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度のうち最も大きいものが、前記第1の範囲である500~700nmの範囲における励起スペクトルのピーク強度の半分以下のものであ[る]」のに対して、
甲1発明においては、「NIR蛍光体108」(「第2の蛍光体」に相当する。)の励起スペクトルは明らかではなく、380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度と500~700nmの範囲における励起スペクトルの強度との関係が不明である点。
エ 相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点2から判断する。
(ア) 「NIR蛍光体108」中の「Cr(III)蛍光体」の励起・発光過程
甲1発明における「NIR蛍光体108」は、波長の異なる励起光である「第1の光104」及び「第3の光106」を「吸収して」、「異なるピーク波長を有し[た]」「前記第4の光110」と「第2の光112」をそれぞれ「放射」するものであるところ(前記イ(エ)d)、より具体的には、甲1発明における「NIR蛍光体108」中の「Cr(III)蛍光体」の励起及び発光の過程は、次のaとbに示すとおりであり(前記イ(エ)f)、異なる「電子遷移」を介した異なるピーク波長を有する発光スペクトルを示すものである。
a 「Cr(III)蛍光体」の第1の励起及び発光の過程
「第1の光104により、4A2→4T1電子遷移を介して励起され、」「4T2→4A2(第2の光112)」を「放射」する。
b 「Cr(III)蛍光体」の第2の励起及び発光の過程
「第3の光106」により「4A2→4T2電子遷移を介して」「励起[され]」、「2E→4A2(第4の光110)」を「放射」する。
(イ) 甲1発明の用途及び目的とする技術効果
ここで、甲1には下記のとおり、甲1発明の用途としてNIR分光測定が例示され、広い放射範囲がNIR分光用途に有益であることが記載されている(括弧内に、ファミリー文献1の該当記載をそのまま日本語訳として記載した。)。
「 Embodiments of the invention include devices such as PCLEDs that emit infrared, particularly near- infrared (NIR) radiation, for example via a NIR emitting luminescent material such as a phosphor. For economy of language, infrared radiation may be referred to herein as "light." NIR emitting PCLEDs may be used for any suitable purpose such as for example, NIR spectroscopy.」(2頁9~12行)
(【0006】本発明の実施例は、赤外放射線、例えば、蛍光体のような、NIR放射発光材料を介して、特に近赤外(NIR)放射線を放射する、PCLEDのような装置を含む。記載の簡略化のため、赤外放射線は、「光」と称される。NIR放射PCLEDは、例えば、NIR分光法のような、いかなる好適な目的にも使用することができる。)
「 The device illustrated in Fig. 1 may have a very broad infrared emission range between 700 nm and 1200 nm, with only one type of pump light. The broad emission range may be useful for NIR spectroscopy applications.」(3頁9~11行)
(【0012】図1に示す装置は、一種類の励起光のみで、700nmから1200nmの間の極めて広い赤外放射範囲を有してもよい。広い放射範囲は、NIR分光用途に有益であり得る。)
「 6. Phosphor mixtures.
For infrared illumination applications like NIR spectroscopy it is often preferable to have a broad, continuous emission intensity distribution. Accordingly, in some embodiments, the NIR phosphor 108 includes one or more longer wavelength emitting materials, for example from the class of Cr doped calcium gallogermanate type phosphors illustrated by e.g. examples 1) and 2), combined with one or more shorter wavelength emitting materials, for example from the class of Cr doped garnets illustrated by e.g. examples 3) and 4), and/or with materials from the class of Cr doped colquiirite materials illustrated by e.g. example 5).」(10頁20~27行)
(【0051】
6.蛍光体混合物
NIR分光測定のような赤外照射用途では、しばしば、ブロードで、連続的な放射強度分布を有することが好ましい。従って、ある実施例では、NIR蛍光体108は、例えば、例1)および2)に示されているCrドープカルシウムガロゲルマネートタイプの蛍光体の分類からの、1または2以上の長波長放射材料を有し、これは、例えば、例3)および4)に示された、Crドープガーネットの分類からの、1または2以上の短波長放射材料、ならびに/または例5)に示されたCrドープコルキライト材料の分類からの材料、と組み合わされる。)
(ウ) 相違点2についての想到の容易性の評価
a 甲1発明は、第1の光104による励起と第3の光106による励起とにより、赤外放射範囲において異なるピーク波長を有する第2の光112及び第4の光110を得ることを前提とするものであり、このような構成によって広い赤外放射範囲を実現するものである。したがって、甲1発明において、当該異なるピーク波長を生じる構成を解消し、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にあるような第2の蛍光体に置換する動機付けは見いだせない。
b したがって、甲1発明において、前記相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
オ よって、相違点1及び相違点3について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3) 本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1に「前記発光装置の出射光は少なくとも第1の発光ピークと第2の発光ピークを有し、前記第1の発光ピークのピーク波長が前記第2の範囲にあり、第2の発光ピークのピーク波長が380~480nmにあり、前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体の合計に対する前記第1の蛍光体の比率が20~90質量%であること」との事項が追加されたものであるところ、前記相違点2に係る構成を含むものであるから、前記(2)エにおいて説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 本件訂正発明3について
本件訂正発明3は、本件訂正発明2の全ての構成を含むものであって、前記相違点2に係る構成を含むものであるから、前記(2)エにおいて説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明3は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5) 本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、本件訂正発明1に「前記第1の蛍光体及び前記第2の蛍光体の少なくとも一方は、複数種類の蛍光体を含むものである」との事項が追加されたものであるところ、前記相違点2に係る構成を含むものであるから、前記(2)エにおいて説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明4は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6) 本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明1に「前記発光素子に電流を65mA流したときの781~1042nmの光出力において、15.0mW以上の発光量を有するものである」との事項が追加されたものであるところ、前記相違点2に係る構成を含むものであるから、前記(2)エにおいて説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明5は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7) 本件訂正発明7について
本件訂正発明7は、本件訂正発明1~5のいずれかの全ての構成を含むものであって、前記相違点2に係る構成を含むものであるから、前記(2)エにおいて説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明7は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(8) 本件訂正発明8について
本件訂正発明8は、本件訂正発明1~5、7のいずれかの全ての構成を含むものであって、前記相違点2に係る構成を含むものであるから、前記(2)エにおいて説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明8は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(9) 本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、本件訂正発明1~5、7のいずれかの全ての構成を含むものであって、前記相違点2に係る構成を含むものであるから、前記(2)エにおいて説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明9は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
申立人は、次の(1)~(3)に示す申立理由1~3を主張している。
(1) 申立理由1(新規性欠如)
ア 請求項2~4、7~9に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、請求項2~4、7~9に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。
イ 請求項5、7~9に係る発明は、甲3に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、請求項5、7~9に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。
(2) 申立理由2(進歩性欠如)
ア 請求項1、6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1、6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。
イ 請求項2~5、7~9に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項2~5、7~9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。
ウ 請求項5、7~9に係る発明は、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項5、7~9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。
エ 請求項5、7~9に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項5、7~9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。
オ 請求項6~9に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項6~9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。
カ 請求項6~9に係る発明は、甲3に記載された発明並びに甲4の記載事項及び甲2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項6~9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。
キ 請求項7~9に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項7~9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。
(3) 申立理由3(明確性要件違反)
請求項1、6~9に係る特許は、「380~480nmの範囲のどの波長の励起スペクトルの強度と第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度とを比べればよいのか不明である」点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条4号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由の検討
(1) 申立理由1及び2について
本件訂正発明における「第2の蛍光体」が「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみ」であることについては、申立人が提出したいずれの文献にも記載も示唆もされていないから、本件訂正発明は、甲1、甲3のいずれを主たる引用文献として検討しても、新規性又は進歩性が欠如しているとはいえない。
(2) 申立理由3について
本件訂正発明において「第2の蛍光体」は、「モニター波長によらず励起スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲にあり、かつ、励起波長によらず発光スペクトルのピーク波長が前記第1の範囲と異なる第2の範囲にある、発光中心が1つのみ」と特定されるものであるから、「第1の範囲における励起スペクトルのピーク強度」と比べるべき「380~480nmの範囲における励起スペクトルの強度」は明らかであるといえ、本件訂正発明は明確性要件を満たすものといえる。
第7 むすび
前記第5において検討したとおり、請求項1~5、7~9に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由により取り消すことはできない。
また、前記第6において検討したとおり、請求項1~5、7~9に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっても、取り消すことができない。
そして、他に請求項1~5、7~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項6に係る特許についての特許異議の申立てについては、請求項6は本件訂正により削除され、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700860