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特許異議申立

2023-701068

分散剤及び研磨剤組成物

審判番号
2023-701068
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-566824
登録番号
7255711
請求日
2023年10月05日
審決日
2024年12月04日
公報発行日
2025年03月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】東亞合成株式会社
  • 【権利者代理人】山田 強
  • 【権利者代理人】日野 京子
  • 【異議申立人】高橋 和枝
審判長/審判官
  • 審判長 河本 充雄
  • 審判官 恩田 春香
  • 審判官 松永 稔
分類
P1651.537-YAA(H01L) / P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.536-YAA(H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7255711号発明「分散剤及び研磨剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7255711号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 特許第7255711号の請求項2~4、8~11に係る特許を維持する。 特許第7255711号の請求項1、5~7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7255711号の請求項1~11に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)9月28日(優先権主張 令和1年12月27日、令和1年12月27日、令和1年12月27日 )を国際出願日とする出願であって、令和5年4月3日にその特許権の設定登録がされ、同年同月11日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 5年10月 5日 :特許異議申立人高橋和枝(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て 令和 6年 2月 6日付け :取消理由通知書 令和 6年 4月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、この訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、「本件訂正請求後」を「訂正後」といい、「本件訂正請求前」を「訂正前」という。)の提出(これに対する申立人による意見書の提出はなかった。) 第2 訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 特許権者は、特許請求の範囲の請求項1~11を、以下の事項により特定されるとおりに訂正することを請求する(下線は訂正箇所を示すため当審が付した。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、「前記構造単位UAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を含む、請求項1に記載の分散剤。 CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1) (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基であるか、又はR2とR3とが互いに結合してR2及びR3が結合する窒素原子と共に環を形成する基である。)」と記載されているのを、「絶縁層及び配線層のうち少なくともいずれかの表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の分散剤であって、 重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を含有し、 前記重合体ブロックAは、アミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位UAを有し、 前記重合体ブロックBは、イオン性官能基を有する構造単位UBを有し、 前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩であり、 前記重合体ブロックAは、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有さず、 前記構造単位UAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を含む、分散剤。 CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1) (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基であるか、又はR2とR3とが互いに結合してR2及びR3が結合する窒素原子と共に環を形成する基である。R2及びR3のうち少なくとも一方が、置換された1価の炭化水素基である場合、該置換された1価の基はヒドロキシアルキル基である。)」に訂正する。 また、請求項2の記載を引用する請求項8~11についても同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、「絶縁層及び配線層のうち少なくともいずれかの表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の分散剤であって、 重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を含有し、 前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、イオン性官能基を有する構造単位を有し、 前記ブロック共重合体(P)は、下記の条件I及び条件IIのうち少なくとも一方を満たす重合体である、分散剤。 条件I:前記重合体ブロックAが有するイオン性官能基と、前記重合体ブロックBが有するイオン性官能基とが異なる。 条件II:前記重合体ブロックAのイオン性官能基の含有量と、前記重合体ブロックBのイオン性官能基の含有量とが異なる。」と記載されているのを、「絶縁層及び配線層のうち少なくともいずれかの表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の分散剤であって、 重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を含有し、 前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、イオン性官能基を有する構造単位を有し、 前記ブロック共重合体(P)は、下記の条件I及び条件IIのうち少なくとも一方を満たす重合体であり、 前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である、分散剤。 条件I:前記重合体ブロックAが有するイオン性官能基と、前記重合体ブロックBが有するイオン性官能基とが異なり、前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBのうち一方がスルホン酸基を有し、他方がカルボキシル基を有する。 条件II:前記重合体ブロックAのイオン性官能基の含有量と、前記重合体ブロックBのイオン性官能基の含有量とが異なる。」に訂正する。 また、請求項3の記載を引用する請求項8~11についても同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、「絶縁層及び配線層のうち少なくともいずれかの表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の分散剤であって、 重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を含有し、 前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有する、分散剤。 CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1) (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基であるか、又はR2とR3とが互いに結合してR2及びR3が結合する窒素原子と共に環を形成する基である。)」と記載されているのを、「絶縁層及び配線層のうち少なくともいずれかの表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の分散剤であって、 重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を含有し、 前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有し、 前記重合体ブロックAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、1級アミド基及び水酸基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含み、 前記重合体ブロックBは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、2級アミド基及び3級アミド基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含む、分散剤。 CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1) (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基であるか、又はR2とR3とが互いに結合してR2及びR3が結合する窒素原子と共に環を形成する基である。R2及びR3のうち少なくとも一方が、置換された1価の炭化水素基である場合、該置換された1価の基はヒドロキシアルキル基である。)」に訂正する。 また、請求項4の記載を引用する請求項8~11についても同様に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に、「前記ブロック共重合体(P)における前記重合体ブロックAと前記重合体ブロックBとの比率(A/B)が、質量比で10/90~90/10である、請求項1~7のいずれか一項に記載の分散剤。」とあるうち、請求項1、5~7を引用するものについては除外し、「前記ブロック共重合体(P)における前記重合体ブロックAと前記重合体ブロックBとの比率(A/B)が、質量比で10/90~90/10である、請求項2~4のいずれか一項に記載の分散剤。」に訂正する。 また、請求項8の記載を引用する請求項9~11についても同様に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に、「前記重合体ブロックBは、炭素数1~10のアルキル基を側鎖部分に有する構造単位をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の分散剤。」とあるうち、請求項1、5~7を引用するものについては除外し、「前記重合体ブロックBは、炭素数1~10のアルキル基を側鎖部分に有する構造単位をさらに含む、請求項2~4、8のいずれか一項に記載の分散剤。」に訂正する。 また、請求項9の記載を引用する請求項10、11についても同様に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に、「前記ブロック共重合体(P)の数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwとの比で表される分子量分散度(Mw/Mn)が2.0以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の分散剤。」とあるうち、請求項1、5~7を引用するものについては除外し、「前記ブロック共重合体(P)の数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwとの比で表される分子量分散度(Mw/Mn)が2.0以下である、請求項2~4、8、9のいずれか一項に記載の分散剤。」に訂正する。 また、請求項10の記載を引用する請求項11についても同様に訂正する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に、「絶縁層及び配線層のうち少なくともいずれかの表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の研磨剤組成物であって、 請求項1~10のいずれか一項に記載の分散剤と、酸化セリウムとを含有する、研磨剤組成物。」とあるうち、請求項1、5~7を引用するものについては除外し、「絶縁層及び配線層のうち少なくともいずれかの表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の研磨剤組成物であって、 請求項2~4、8~10のいずれか一項に記載の分散剤と、酸化セリウムとを含有する、研磨剤組成物。」に訂正する。 なお、本件訂正は、一群の請求項1~11について請求されている。 2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、独立特許要件 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項の規定に適合する。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、願書に添付した明細書(以下、単に「明細書」ともいう。)、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1~11について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 さらに前記目的に加え、訂正事項2は、重合体ブロックA及び重合体ブロックBという発明特定事項につき、重合体ブロックAの構造単位の限定を加えるとともに重合体ブロックBのイオン性官能基の限定を加えることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項の規定に適合する。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改め、さらに、重合体ブロックA及び重合体ブロックBという発明特定事項につき、重合体ブロックAの構造単位の限定を加えるとともに重合体ブロックBのイオン性官能基の限定を加えることで、概念的により下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2のうち、「前記重合体ブロックAは、アミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位UAを有し、」との訂正事項は、訂正前請求項1に択一的に記載されていたエステル基含有ビニル単量体を削除したことで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 また、「前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩であり、」との訂正事項は、明細書の段落【0031】の記載に基づいて導き出される構成である。 「前記重合体ブロックAは、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有さず、」との訂正事項は、明細書の段落【0045】の記載に基づいて導き出される構成である。 「R2及びR3のうち少なくとも一方が、置換された1価の炭化水素基である場合、該置換された1価の基はヒドロキシアルキル基である。」との訂正事項は、明細書の段落【0023】の記載に基づいて導き出される構成である。 したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1~11について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3のうち、「前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である」とする訂正事項は、重合体ブロックA及び重合体ブロックBに限定を加えることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 また、訂正事項3のうち、「り、前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBのうち一方がスルホン酸基を有し、他方がカルボキシル基を有する。」とする訂正事項は、条件Iに限定を加えることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、特許法第120条の5第2項の規定に適合する。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3のうち、「前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である」との訂正事項は、重合体ブロックA及び重合体ブロックBという発明特定事項につき、重合体ブロックA及び重合体ブロックBのイオン性官能基の限定を加えることで、概念的により下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 また、訂正事項3のうち、「り、前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBのうち一方がスルホン酸基を有し、他方がカルボキシル基を有する。」との訂正事項は、条件Iという発明特定事項につき、重合体ブロックA及び重合体ブロックBのイオン性官能基の限定を加えることで、概念的により下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3のうち、「前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である」との訂正事項は、明細書の段落【0089】、段落【0100】の記載に基づいて導き出される構成である。 また、訂正事項3のうち、「前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBのうち一方がスルホン酸基を有し、他方がカルボキシル基を有する。」との訂正事項は、明細書の段落【0102】の記載に基づいて導き出される構成である。 したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1~11について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、重合体ブロックA及び重合体ブロックBという発明特定事項につき、重合体ブロックA及び重合体ブロックBの構造単位の限定を加えることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、特許法第120条の5第2項の規定に適合する。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は、重合体ブロックA及び重合体ブロックBという発明特定事項につき、重合体ブロックA及び重合体ブロックBの構造単位の限定を加えることで、概念的により下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4のうち、「前記重合体ブロックAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、1級アミド基及び水酸基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含み、」及び「前記重合体ブロックBは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、2級アミド基及び3級アミド基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含む」との訂正事項は、訂正前の請求項5、6に記載される構成要件の全てを訂正前の請求項4に組み込むものである。 また、訂正事項4のうち、「R2及びR3のうち少なくとも一方が、置換された1価の炭化水素基である場合、該置換された1価の基はヒドロキシアルキル基である。」との訂正事項は、明細書の段落【0023】の記載に基づいて導き出される構成である。 したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1~11について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項4に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、請求項5を削除するというものであるから、当該訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項の規定に適合する。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項5は、請求項5を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項5は、請求項5を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1~11について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項5に係る訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正事項6は、請求項6を削除するというものであるから、当該訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項の規定に適合する。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項6は、請求項6を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項6は、請求項6を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1~11について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項6に係る訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (7)訂正事項7 ア 訂正の目的について 訂正事項7は、請求項7を削除するというものであるから、当該訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項の規定に適合する。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項7は、請求項7を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項7は、請求項7を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1~11について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項7に係る訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (8)訂正事項8~11について 訂正事項8~11は、訂正事項1、5~7に伴い、請求項8~11について、請求項1、5~7を引用するものについては除外するものであるところ、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、同法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項の規定に適合する。 また、訂正事項8~11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 また、本件においては、訂正前の全ての請求項1~11について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項7に係る訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 上記のとおり、訂正事項1~11にかかる本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項の規定に適合し、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、令和6年4月5日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~11に係る発明(以下、順にそれぞれ「本件訂正発明1」~「本件訂正発明11」という。また、訂正後の請求項1~11に係る発明をまとめて「本件訂正発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】 絶縁層及び配線層のうち少なくともいずれかの表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の分散剤であって、 重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を含有し、 前記重合体ブロックAは、アミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位UAを有し、 前記重合体ブロックBは、イオン性官能基を有する構造単位UBを有し、 前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩であり、 前記重合体ブロックAは、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有さず、 前記構造単位UAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を含む、分散剤。 CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1) (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基であるか、又はR2とR3とが互いに結合してR2及びR3が結合する窒素原子と共に環を形成する基である。R2及びR3のうち少なくとも一方が、置換された1価の炭化水素基である場合、該置換された1価の基はヒドロキシアルキル基である。) 【請求項3】 絶縁層及び配線層のうち少なくともいずれかの表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の分散剤であって、 重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を含有し、 前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、イオン性官能基を有する構造単位を有し、 前記ブロック共重合体(P)は、下記の条件I及び条件IIのうち少なくとも一方を満たす重合体であり、 前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である、分散剤。 条件I:前記重合体ブロックAが有するイオン性官能基と、前記重合体ブロックBが有するイオン性官能基とが異なり、前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBのうち一方がスルホン酸基を有し、他方がカルボキシル基を有する。 条件II:前記重合体ブロックAのイオン性官能基の含有量と、前記重合体ブロックBのイオン性官能基の含有量とが異なる。 【請求項4】 絶縁層及び配線層のうち少なくともいずれかの表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の分散剤であって、 重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を含有し、 前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有し、 前記重合体ブロックAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、1級アミド基及び水酸基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含み、 前記重合体ブロックBは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、2級アミド基及び3級アミド基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含む、分散剤。 CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1) (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基であるか、又はR2とR3とが互いに結合してR2及びR3が結合する窒素原子と共に環を形成する基である。R2及びR3のうち少なくとも一方が、置換された1価の炭化水素基である場合、該置換された1価の基はヒドロキシアルキル基である。) 【請求項5】(削除) 【請求項6】(削除) 【請求項7】(削除) 【請求項8】 前記ブロック共重合体(P)における前記重合体ブロックAと前記重合体ブロックBとの比率(A/B)が、質量比で10/90~90/10である、請求項2~4のいずれか一項に記載の分散剤。 【請求項9】 前記重合体ブロックBは、炭素数1~10のアルキル基を側鎖部分に有する構造単位をさらに含む、請求項2~4、8のいずれか一項に記載の分散剤。 【請求項10】 前記ブロック共重合体(P)の数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwとの比で表される分子量分散度(Mw/Mn)が2.0以下である、請求項2~4、8、9のいずれか一項に記載の分散剤。 【請求項11】 絶縁層及び配線層のうち少なくともいずれかの表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の研磨剤組成物であって、 請求項2~4、8~10のいずれか一項に記載の分散剤と、酸化セリウムとを含有する、研磨剤組成物。」 第4 令和6年2月6日付け取消理由通知書に記載した取消理由について 1 取消理由通知書に記載した取消理由の概要 当審が令和6年2月6日付けで特許権者に通知した取消理由(以下「取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。 (1)取消理由1(サポート要件) 本件の請求項1~11に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(明確性要件) 本件の請求項1、2、8~11に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (3)取消理由3(新規性) 本件特許の請求項1~5、8、10、11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、本件特許の請求項1に発明は、甲第2号証に記載された発明であり、本件特許の請求項1、11に発明は、甲第5号証に記載された発明であり、本件特許の請求項3、11に発明は、甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~5、8、10、11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (4)取消理由4(進歩性) 本件特許の請求項1~11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1、8、9、11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1、11に係る発明は、甲第5号証に記載された発明に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項3、9、11に係る発明は、甲第6号証に記載された発明に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。 <引用文献等一覧> 1.甲第1号証:特表2012-503880号公報 2.甲第2号証:特開2015-151509号公報 3.甲第3号証:再公表特許WO2013/137212号 4.甲第4号証:特開2006-303348号公報 5.甲第5号証:国際公開第2019/177802号 6.甲第6号証:特開2017-183297号公報 2 取消理由1(サポート要件)について (1)本件訂正発明2について ア 本件訂正発明2の「化学機械研磨用の分散剤」は、「前記重合体ブロックAは、アミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位UAを有し」、「前記重合体ブロックAは、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有さず」、「前記構造単位UAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を含む、分散剤」であって、「前記重合体ブロックBは、イオン性官能基を有する構造単位UBを有し、前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩であ」るものである。 イ 本件訂正発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落【0007】の記載から、「砥粒の分散安定性が高く、せん断力による砥粒の凝集を抑制することができる分散剤を提供すること」である。 ウ 本件特許明細書の段落【0022】には、「重合体ブロックAは、構造単位UAとして少なくともアミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位を有することが好ましい。重合体ブロックAがアミド基含有単量体に由来する構造単位を有することで、砥粒(特に酸化セリウム)に良好な分散安定性を付与でき、せん断力による砥粒凝集の抑制効果を高めることができる点で好ましい。中でも、構造単位UAは、下記式(1)で表されるアミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位を含むことが好ましい。」と記載されており、また、同段落【0031】には、重合体ブロックBが有するイオン性官能基について、砥粒(特に酸化セリウム)に対し適度な吸着性を示し、砥粒に良好な分散安定性を付与できる点で、「カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩であることがあることが特に好ましい」と記載されている。 エ そして、本件特許明細書には、実施例について、重合体ブロックAを構成するモノマーとして、アミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位UAを有し、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有さず、式(1)(式(1)中、R1は水素原子であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又はR2とR3とが互いに結合してR2及びR3が結合する窒素原子と共に環を形成する基である。)で表されるビニル単量体に由来する構造単位であるアクリルアミド(AAm)、アクリロイルモルホリン(ACMO)を用い、かつ、重合体ブロックBを構成するモノマーとして、カルボキシル基又はスルホン酸基を有する構造単位UBであるアクリル酸(AA)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)を用いて得たブロック共重合体について記載されている。 さらに、第1実施形態の実施例1A、3A~6A、9A、10A、第3実施形態の実施例2Cが記載されており、砥粒の分散安定性が高く、せん断力による砥粒の凝集を抑制することができることが、重合体ブロックBを有さず重合体ブロックAのみを有する比較例1A~4A、1C、2C、及び、重合体ブロックAが有する構造単位UA(VP)が式(1)で表されるものではなく、かつ、重合体ブロックBが有する構造単位UB(AAm)が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有さない比較例3Cとの対比により具体的に確認されている(段落【0083】の【表2】、段落【0085】、段落【0086】、段落【0178】の【表6】)。 オ したがって、本件特許明細書を見た当業者であれば、重合体ブロックA、重合体ブロックBを構成するモノマーとして、重合体ブロックAとして、式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を含み、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有さないブロックを有し、重合体ブロックBとしてカルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有するブロックを有するブロック共重合体を含有する分散剤において、本件訂正発明の課題を解決できることを認識できるといえる。 (2)本件訂正発明3について ア 本件訂正発明3の「化学機械研磨用の分散剤」は、「前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、イオン性官能基を有する構造単位を有し、前記ブロック共重合体(P)は、下記の条件I及び条件IIのうち少なくとも一方を満たす重合体であり、 前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である、分散剤。 条件I:前記重合体ブロックAが有するイオン性官能基と、前記重合体ブロックBが有するイオン性官能基とが異なり、前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBのうち一方がスルホン酸基を有し、他方がカルボキシル基を有する。 条件II:前記重合体ブロックAのイオン性官能基の含有量と、前記重合体ブロックBのイオン性官能基の含有量とが異なる」ものである。 イ 上述したとおり、本件訂正発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落【0007】の記載から、「砥粒の分散安定性が高く、せん断力による砥粒の凝集を抑制することができる分散剤を提供すること」である。 ウ 本件特許明細書の段落【0042】や段落【0101】、段落【0102】、段落【0104】の記載によると、本件訂正発明3は、条件I及び条件IIのうち少なくとも一方を満たすブロック共重合体(P)を含有することによって、砥粒の分散安定性を高め、せん断力による砥粒の凝集を抑制しようとするものであると理解できる。 さらに、本件特許明細書には、[第2実施形態]について、段落【0089】には、重合体ブロックAが有するイオン性官能基について、砥粒(特に酸化セリウム)に対し適度な吸着性を示し、砥粒に良好な分散安定性を付与できる点で、「カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩であることが特に好ましい。」と記載されており、同段落【0100】には、重合体ブロックBが有するイオン性官能基について、「カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩であることが特に好ましい。」と記載されている。 エ そして、本件特許明細書には、実施例として、重合体ブロックAのイオン性官能基及び重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基又はスルホン酸基であり、かつ、条件I:重合体ブロックAが有するイオン性官能基と、重合体ブロックBが有するイオン性官能基とが異なり、重合体ブロックA及び重合体ブロックBのうち一方がスルホン酸基を有し、他方がカルボキシル基を有することを満たすブロック共重合体を用いた第1実施形態の実施例2A、8A、第2実施形態の実施例1B、2B、6B、7B、及び、重合体ブロックAのイオン性官能基及び重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基又はスルホン酸基であり、かつ、条件II:重合体ブロックAのイオン性官能基の含有量と、重合体ブロックBのイオン性官能基の含有量とが異なることを満たすブロック共重合体を用いた第2実施形態の実施例2B~5B、8B、9Bが記載されており、砥粒の分散安定性が高く、せん断力による砥粒の凝集を抑制することができることが、重合体ブロックBを有さず重合体ブロックAのみを有する比較例1A~4A、1B、2Bとの対比により具体的に確認されている(段落【0083】の【表2】、段落【0133】の【表4】、段落【0135】、段落【0136】)。 オ したがって、本件特許明細書を見た当業者であれば、重合体ブロックAのイオン性官能基及び重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩であり、かつ重合体ブロックAのイオン性官能基の含有量と、重合体ブロックBのイオン性官能基の含有量とが異なるか、又は、重合体ブロックAが有するイオン性官能基と、重合体ブロックBが有するイオン性官能基とが異なり、重合体ブロックA及び重合体ブロックBのうち一方がスルホン酸基を有し、他方がカルボキシル基を有するブロック共重合体を含有する分散剤によれば、本件訂正発明の課題を解決できることを認識できるといえる。 (3)本件訂正発明4について ア 本件訂正発明4の「化学機械研磨用分散剤」は、「前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有し、前記重合体ブロックAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、1級アミド基及び水酸基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含み、前記重合体ブロックBは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、2級アミド基及び3級アミド基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含む、分散剤」であって、「CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1) (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基であるか、又はR2とR3とが互いに結合してR2及びR3が結合する窒素原子と共に環を形成する基である。R2及びR3のうち少なくとも一方が、置換された1価の炭化水素基である場合、該置換された1価の基はヒドロキシアルキル基である。)」である。 イ 本件訂正発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落【0007】の記載から、「砥粒の分散安定性が高く、せん断力による砥粒の凝集を抑制することができる分散剤を提供すること」である。 ウ 本件特許明細書には、[第3実施形態]について、段落【0137】に、「《分散剤》本開示の第3実施形態における分散剤は、水溶性重合体として、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有する重合体ブロックAと、単量体組成が重合体ブロックAと異なるセグメントであって下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有する重合体ブロックBと、を有するブロック共重合体(P)を含有する。 CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1) (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基であるか、又はR2とR3とが互いに結合してR2及びR3が結合する窒素原子と共に環を形成する基である。)」と記載されており、同【0138】に、重合体ブロックAが有する式(1)で表されるビニル単量体(特定ビニル単量体)について、「特定ビニル単量体は、1級アミド基(-CONH2)、2級アミド基(-CONHR2、-CONHR3)又は3級アミド基(-CONR2R3)を有するビニル単量体である。上記式(1)において、R2及びR3のうち少なくとも一方が、置換された1価の炭化水素基である場合、該置換された1価の炭化水素基としては、・・・ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。」と記載されており、同段落【0140】に、「構造単位UA-3を構成する特定ビニル単量体としては、水系への溶解性が高い重合体を得る観点から水溶性モノマーが好ましい。構造単位UA-3を構成する特定ビニル単量体は、中でも、1級アミド基及び水酸基のうち少なくともいずれかを有するビニル単量体が好ましく、(メタ)アクリルアミド及び2-ヒドロキシエチルアクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましい。」と記載されており、同段落【0149】に、「構造単位UB-3を構成する特定ビニル単量体は、水系への溶解性が高い重合体を得る観点から水溶性モノマーが好ましく、中でも、2級アミド基及び3級アミド基のうち少なくともいずれかを有するビニル単量体が好ましい。具体的には、構造単位UB-3を構成する特定ビニル単量体は、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、及び4-(メタ)アクリロイルモルホリンよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。特に、構造単位UA-3が1級アミド基及び水酸基の少なくともいずれかを有し、構造単位UB-3が2級アミド基及び3級アミド基の少なくともいずれかを有する場合、砥粒及び研磨対象物への吸着性の相違をセグメント間でより大きくでき、せん断力による砥粒の凝集構造の形成を抑制する効果を高くできるため好ましい。」と記載されている。 エ そして、本件特許明細書には、実施例として、重合体ブロックAを構成するモノマーとして、式(1)(式(1)中、R1は水素原子であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は置換の1価の炭化水素基である。R2及びR3のうち少なくとも一方が、置換された1価の炭化水素基である場合、該置換された1価の基はヒドロキシアルキル基である。)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、1級アミド基及び水酸基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を構成するモノマーとして2-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)又はアクリルアミド(AAm)を用い、重合体ブロックBを構成するモノマーとして、式(1)(式(1)中、R1は水素原子であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基であるか、又はR2とR3とが互いに結合してR2及びR3が結合する窒素原子と共に環を形成する基である。)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、2級アミド基及び3級アミド基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を構成するモノマーとしてN,N-ジエチルアクリルアミド(DEAA)、4-アクリロイルモルホリン(ACMO)又は2-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)を用いたブロック共重合体を用いた第3実施形態の実施例1C~6Cが記載されており、砥粒の分散安定性が高く、せん断力による砥粒の凝集を抑制することができることが、重合体ブロックBを有さず重合体ブロックAのみを有する比較例1C、2C、及び、重合体ブロックAが有する構造単位UA(VP)が式(1)で表されるものではなく、かつ、重合体ブロックBが有する構造単位UB(AAm)が、2級アミド基及び3級アミド基のいずれも有するものではない比較例3Cとの対比により具体的に確認されている(段落【0178】の【表6】、段落【0180】、段落【0181】)。 オ したがって、本件特許明細書を見た当業者であれば、重合体ブロックAが、式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、1級アミド基及び水酸基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含み、重合体ブロックBが、式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、2級アミド基及び3級アミド基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含むブロック共重合体を含有する分散剤によれば、本件訂正発明の課題を解決できることを認識できるといえる。 (4)本件訂正発明8~11について 本件訂正発明8~11は、本件訂正発明2~4のいずれかの構成を有するものであるから、本件訂正発明2~4と同様に、本件訂正発明の課題を解決できることを認識できるといえる。 (5)小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明2~4、8~11は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしており、請求項2~4、8~11に係る特許を、取消理由1によって取り消すことはできない。 3 取消理由2(明確性要件)について (1)本件訂正発明2において、「重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を含有し、前記重合体ブロックAは、アミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位UAを有し、前記重合体ブロックBは、イオン性官能基を有する構造単位UBを有し」、「前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩であり、前記重合体ブロックAは、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有さず、前記構造単位UAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を含む」と特定されている。 (2)そうすると、例えば、アミド基を含有し、かつ、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩でイオン性官能基を有する構造単位を有する重合体ブロックは、本件訂正発明2の重合体ブロックBに該当するといえることが明確であり、また、アミド基を含有し、かつ、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩でイオン性官能基を有さない重合体ブロックは、本件訂正発明2の重合体ブロックAに該当するといえる。 (3)また、アクリルアミド(AAm)は、アミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位UAを有し、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩でイオン性官能基を有さず、構造単位UAは、式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を含む。また、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)は、スルホン酸基であるイオン性官能基を有する構造単位UBを有する。 したがって、例えば、AAmからなる重合体ブロックと、ATBSからなる重合体ブロックを有するブロック共重合体は、AAmからなる重合体ブロックが、本件訂正発明2の重合体ブロックAに該当し、ATBSからなる重合体ブロックが、本件訂正発明2の重合体ブロックBに該当するといえるから、本件訂正発明2のブロック共重合体(P)に相当するといえる。 (4)したがって、本件訂正発明2において、ブロック共重合体(P)の重合体ブロックAと重合体ブロックBの構成は明確である。 よって、本件訂正発明2及び請求項2の記載を引用する本件訂正発明8~11は、明確である。 (5)小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明2、8~11は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしており、請求項2、8~11に係る特許を、取消理由2によって取り消すことはできない。 4 甲号証の記載と甲号証に記載された発明 (1)甲第1号証の記載と甲第1号証に記載された発明について ア 甲第1号証の記載 甲第1号証には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 化学機械研磨用の安定なコロイド分散液であって: (a)研磨剤成分、並びに (b)研磨剤成分の約0.05%~約10重量%の: (i)1以上のカチオン性モノマー単位を含む少なくとも1つのパートB、及び (ii)1以上のアニオン性モノマー単位を含む少なくとも1つのパートA を含む水溶性ポリマー を含み、約1.5~約6のpHを有する、分散液。」 「【請求項6】 前記研磨剤成分が: (a)セリウム、チタン、ケイ素、ジルコニウム、マンガン、アルミニウム又は鉄の酸化物、水酸化物又はオキシ水酸化物、 (b)セリウムの酸化物、水酸化物又はオキシ水酸化物と、希土類金属又はスズから選択される少なくとも1つの他の元素との混合物、及び (c)ジルコニウムの酸化物、水酸化物又はオキシ水酸化物と、三価希土類金属の酸化物、水酸化物又はオキシ水酸化物との混合物 からなる群から選択される粒子を含む、請求項1に記載の分散液。」 「【技術分野】 ・・・ 【0002】 本発明は、研磨用途で使用される研磨剤組成物及び方法、さらに詳細には基材の化学機械研磨処理において使用される研磨剤組成物及び方法に関する。 【背景技術】 【0003】 CMP(「化学機械平坦化」又は「化学機械研磨」)プロセスは当該技術分野で公知である。CMPプロセスは、一般的に、基材表面、典型的には半導体に関連する基材上の平坦でない形状から平坦化された(すなわち平坦な)表面が形成されるまで物質を除去することを含む。CMPプロセスは、研磨組成物(又は別名ゾル若しくはスラリーとして知られる)及び研磨パッドと関連して用いられる。研磨組成物は、典型的にはアルカリ性溶液又は他の液体担体中に分散された研磨剤粒子を含有する。研磨組成物を、(多くの場合は研磨組成物で飽和させた)研磨パッドを用いて基材表面に塗布する。回転ヘッドは回転する基材を研磨パッドに押しつけて、基材表面を平坦化又は研磨する。 【0004】 このCMPプロセスは、研磨剤粒子を用いた平滑化の「機械的」効果と、酸性又は塩基性溶液を用いたエッチングの「化学的」効果とを兼ね備える。これによって、たとえばフォトリソグラフィーにおいては、より高い精密度が得られ、層に対して最小及び/又は許容できる高さ変動がもたらされる。 【0005】 伝統的なCMPプロセスでは、窒化物フィルムの損失を最小限に抑えるためには、高い二酸化ケイ素除去速度と低い窒化ケイ素除去速度が望ましい。窒化ケイ素の除去速度に対する二酸化ケイ素の除去速度の比は、「選択性」又は「選択比」と定義される。その一方、逆の、すなわち高い窒化物除去速度と低い酸化物除去速度が望ましい新規用途が存在する。しかし、このような逆の用途を達成するのは困難であった。(窒化ケイ素除去速度の二酸化ケイ素除去速度に対する比は、「逆選択性」又は「逆選択比」として定義される。)」 「【0023】 本発明は、無機粒子及びポリマーの液相中コロイド分散液、並びにこのような分散液を研磨プロセスにおいて使用する方法に関する。一実施形態において、本発明は、溶媒又は水中に分散された研磨成分及び両性ポリマーを含む。本発明は、研磨における逆選択性を改善することができ、逆選択性とは、窒化ケイ素の除去速度の酸化ケイ素の除去速度に対する比である。本明細書においては基材の「研磨」という用語と、基材の「平坦化」という用語とは、これらの用語が当該技術分野で知られるように交換可能に用いられると解釈される。 【0024】 このようなコロイド分散液に関する従来の問題の1つは、それらの安定性、特にpHの関数としてのそれらの安定性である。安定性を有する分散液とは、これらを構成するコロイド状粒子が、最適な使用に十分な期間にわたって起こる沈降によって分離することなく液相中懸濁液の状態である必要があることを意味すると解釈される。加えて、可能な限り多様な用途及び条件下でこれらを有効に使用することを可能にするかなりのpH範囲にわたって安定である分散液が望ましい。理論によって拘束されないが、分散液中の粒子は、粒子間のファン・デル・ワールス力に対抗する反発力プロファイルを示すと考えられる。これは、固液界面で生じる電荷(静電的安定化)及び/又は粒子表面上の吸収されたポリマー(立体安定化)又は両者によって得られる。 【0025】 従って、本発明は、改善された安定性を有する分散液を含む。本発明の研磨組成物の改善された安定性は、本発明と従来技術との間のゼータ電位の比較からわかる。本明細書において記載するように、ゼータ電位は、分散液中の互いに隣接する同じ荷電粒子間の反発力の程度を示す。高いゼータ電位、一般的には±15mVよりも高いゼータ電位が測定されるコロイド分散液は、安定性に対する傾向を示す。すなわち、分散液は凝集に対して抵抗する傾向がある。低いゼータ電位は、不安定性に対する傾向を示す。すなわち、分散された粒子間で引力が反発力を上回る場合、分散液は壊れて凝集する傾向がある。」 「【0027】 一実施形態において、本発明は、半導体基板を研磨する方法を包含する。半導体基板は、少なくとも酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層を含む。酸化ケイ素又は酸化ケイ素層を、たとえば化学気相堆積をはじめとする公知方法によって下部の基板上に堆積させることができる。他の物質層がさらに基板上に存在してもよい。この実施形態において、研磨が酸化ケイ素層に達するまで窒化ケイ素層を研磨し、窒化ケイ素の層と酸化ケイ素との両方が共存する面が露出したら、窒化ケイ素層の研磨を終了するか、または実質的に終了する。窒化ケイ素が研磨停止層である従来法と異なり、この場合は酸化ケイ素層が研磨停止層になる。ダマシン金属ゲート処理、シャロー・トレンチ・アイソレーション(STI)処理などを包含するが、これらに限定されるものではない、半導体装置の製造における任意の好適な処理段階においてCMPプロセスを利用することができる。本発明の研磨組成物(すなわち、CMP用コロイド分散液)を使用する際、逆選択性は、少なくとも20、さらに典型的には少なくとも27、なお一層典型的には少なくとも50であり得る。」 「【0032】 粒子は、一実施形態においては無機酸化物、別の実施形態においては無機水酸化物、別の実施形態においては無機オキシ水酸化物、またはさらに別の実施形態においてはそれらの任意の組み合わせから構成され得る。好適な粒子としては、これらに限定されるものではないが、セリウム、チタン、ジルコニウム、ケイ素、アルミニウム、マンガン、スズ、鉄、シリカをはじめとする単一元素の酸化物、水酸化物及び/又はオキシ水酸化物、及びそれらの混合物、並びにこのような元素の混合物の酸化物、水酸化物及び/又はオキシ水酸化物(たとえば、セリウム-ジルコニウム酸化物)が挙げられる。典型的には、粒子は、セリウム又はジルコニウムの酸化物、水酸化物又はオキシ水酸化物、さらに典型的にはセリウムの酸化物から構成される。」 「【0092】 一実施形態において、コポリマーは、1又は2つの高分子鎖Bを示し得、高分子鎖Bは高分子鎖Aに、後者の一端又は両端で結合する。高分子鎖Bは「ブロックB」と結合することができ、高分子鎖Aは「ブロックA」と結合することができる。両性コポリマーは両性「ブロックコポリマー」と呼ぶことができる。典型的には、高分子鎖A及びBは、炭素-炭素結合により互いに結合する。両性コポリマーは、特に次のコポリマー:(i)(ブロックA)-(ブロックB)ジブロックコポリマー(パートAはブロックAを構成し、高分子鎖BはブロックBを構成する)、及び(ii)(ブロックB)-(ブロックA)-(ブロックB)トリブロックコポリマー(パートAはブロックAを構成し、高分子鎖BはブロックBを構成する)から選択することができる。別の実施形態において、コポリマーは直線状ジブロック又はトリブロックコポリマーであり、そのブロックA及び/又はブロックBは、エチレン性不飽和モノマー由来であり、典型的にはモノ-α-エチレン性不飽和モノマー及び/又は共重合性ジアリルタイプのモノマー、たとえばN,N-ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(DADMAC)由来である。」 「【0097】 カチオン性モノマーの具体例としては:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジ-tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、エチレンイミン、・・・のモノマーが挙げられる。」 「【0099】 一実施形態において、ポリマーのアニオン性モノマー単位は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の塩、メタクリル酸の塩、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩、ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸の塩、アルファ-アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、アルファ-アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の塩、2-スルホエチルメタクリレート、2-スルホエチルメタクリレートの塩、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の塩、並びにスチレンスルホネート(SS)及びSSの塩から選択される1以上のアニオン性モノマーから誘導される。 【0100】 高分子鎖A又は高分子鎖Bは、アニオン性又はカチオン性基由来以外のモノマー単位を含み得る。これらは特に配合物のpH条件で中性であり、どんなpHでも中性のままである中性モノマー由来のモノマー単位を含む。好適な中性モノマーとしては、たとえば、エチレンオキシド、及びプロピレンオキシドなどのアルキルオキシド、 【0101】 アクリルアミド、メタクリルアミド、 【0102】 アルファ-エチレン性不飽和、典型的にはモノ-アルファ-エチレン性不飽和モノカルボン酸のアミド、 【0103】 アルファ-エチレン性不飽和、典型的にはモノ-アルファ-エチレン性不飽和モノカルボン酸のエステル、たとえばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートなどのアルキルエステル、又は2-ヒドロキシエチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルエステル、 ・・・ 【0112】 スチレンなどのビニル芳香族化合物、並びにこれらの混合物が挙げられる。」 「【0114】 一実施形態において、ポリマーは、アニオン性ブロック及び中性ブロックを有するブロックコポリマー、たとえばポリ(スチレンスルホネート)-b-ポリアクリルアミド)ブロックコポリマーである。一実施形態において、本発明のコポリマーは、ジブロッックコポリマーであり、この場合、ブロックAはアクリル酸由来であり、ブロックBはDADMAC、MAPTAC及びAPTACから選択されるカチオン性モノマー、さらに典型的にはDADMAC由来である。」 「【0119】 一実施形態において、コポリマーは、Quirk及びLee(Polymer International 27, 359(1992))により定義されるリビング重合又は制御重合によって調製される。実際、この特定の方法は、分散度が狭く、パートの長さ及び組成が化学量論及び変換度によって制御されるポリマーを調製することを可能にする。この種類の重合に関して、任意のいわゆるリビング重合又は制御重合法、たとえば:出願WO98/58974及び米国特許第6,153,705号の教示にしたがってキサントゲン酸エステルによって制御されるフリーラジカル重合、又は出願WO98/01478の教示にしたがってジチオエステルによって制御されるフリーラジカル重合によって得ることができるポリマーがさらに詳細には推奨される。」 「【0127】 本発明の範囲から逸脱することなく、ブロックコポリマーを得る製造プロセスを用い、適合させ、適切ならば、その後に修飾して(たとえば、特定の段階中あるいは分解及び/又は不活性化及び/又は精製段階中)、ジブロックコポリマーを得る。特に、いくつかの移動基(たとえば、トリチオカーボネートZ-S-CS-S-Z)を含む移動剤を用いて、R-[(ブロックB)-(ブロックA)]w型のテレキーレックコポリマー、たとえば(コア)-[(ブロックA)-(ブロックB)]x型のトリブロック(たとえば、(ブロックA)-(ブロックB)-R-(ブロックB)-(ブロックA)、たとえばトリブロック(ブロックA)-(ブロックB)-(コア)-(ブロックB)-(ブロックA))を得、次いでテレキーレックコポリマーをコアで破断(分割、「切断」)して、ジブロックコポリマー(ブロックA)-(ブロックB)を得ることが想定できる。分割は、加水分解中に起こり得る。」 「【0137】 実施例2 この実施例は、P(アクリル酸-ブロック-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー:P(AA-DADMAC)の合成に関する。 【0138】 実施例1で記載するように、第1ブロックの合成の最後に、温度を65℃まで下げる。この温度が安定した時点で、706gのジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)の65重量%水中溶液、及び4gのWakoにより販売されているV50開始剤固体(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジンン)二塩酸塩)を導入する。反応を次にこの温度で12時間維持する。4時間反応させ、8時間反応させた後、4gのV50開始剤をそのたびごとに反応媒体に添加する。反応の最後に、試料を採取する。1H NMR分析により、98.2%のDADMAC変換率を得る。Mn及びMw/Mnは、水中SECにより、ポリ(エチレンオキシド)較正曲線を用いて測定する:Mn=2500、Mw/Mn=1.50。実施例1及び実施例2から得られる生成物の2つのクロマトグラムを重ね合わせることによって、形成されたコポリマーがジブロック性であると結論づけることができる。これは、実施例1から得られる生成物のSECクロマトグラムが、実施例2から得られる生成物の合成の最後で高分子量範囲へと完全にシフトするからである。」 「【0142】 実施例4 この実施例は、P(アクリル酸-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー:P(AA-APTAC)の合成に関する。」 「【0147】 実施例6 この実施例は、P(アクリルアミド-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー:P(AM-APTAC)の合成に関する。」 「【0152】 実施例8 この実施例は、P(アクリルアミド-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー:P(AM-APTAC)の合成に関する。」 イ 甲1発明(1) 甲第1号証の上記箇所の記載(特に、【請求項1】、段落【0003】、【0027】を参照。)から、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明(1)」という。)が記載されている。 「少なくとも酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層を含む半導体基板の窒化ケイ素層を研磨する際に使用する化学機械研磨用のコロイド分散液に含まれる水溶性ポリマーであって、 (i)1以上のカチオン性モノマー単位を含む少なくとも1つのパートB、及び (ii)1以上のアニオン性モノマー単位を含む少なくとも1つのパートAを含む水溶性ポリマー。」 ウ 甲1A発明(1) 甲第1号証の上記箇所の記載(特に、段落【0003】、【0027】、【0142】を参照。)から、甲第1号証には、実施例4について、以下の発明(以下「甲1A発明(1)」という。)が記載されている。 「少なくとも酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層を含む半導体基板の窒化ケイ素層を研磨する際に使用する化学機械研磨用のコロイド分散液に含まれ、 P(アクリル酸-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマーを含有する、水溶性ポリマー。」 エ 甲1B発明(1) 甲第1号証の上記箇所の記載(特に、【請求項1】、段落【0003】、【0027】、【0147】、【0152】を参照。)から、甲第1号証には、実施例6、8について、以下の発明(以下「甲1B発明(1)」という。)が記載されている。 「少なくとも酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層を含む半導体基板の窒化ケイ素層を研磨する際に使用する化学機械研磨用のコロイド分散液に含まれ、 P(アクリルアミド-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマーを含有する、水溶性ポリマー。」 オ 甲1発明(2) 甲第1号証の上記箇所の記載(特に、【請求項1】、【請求項6】、段落【0003】、【0027】を参照。)から、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明(2)」という。)が記載されている。 「少なくとも酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層を含む半導体基板の窒化ケイ素層を研磨する際に使用する化学機械研磨用のコロイド分散液であって、 (a)研磨剤成分と、 (b)(i)1以上のカチオン性モノマー単位を含む少なくとも1つのパートB、及び (ii)1以上のアニオン性モノマー単位を含む少なくとも1つのパートA を含む水溶性ポリマーを含み、 前記研磨剤成分がセリウムの酸化物の粒子を含む、分散液。」 カ 甲1A発明(2) 甲第1号証の上記箇所の記載(特に、【請求項1】、【請求項6】、段落【0003】、【0027】、【0142】を参照。)から、甲第1号証には、実施例4について、以下の発明(以下「甲1A発明(2)」という。)が記載されている。 「少なくとも酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層を含む半導体基板の窒化ケイ素層を研磨する際に使用する化学機械研磨用のコロイド分散液であって、 (a)研磨剤成分と、 (b)水溶性ポリマーを含み、 前記研磨剤成分がセリウムの酸化物の粒子を含み、 前記水溶性ポリマーがP(アクリル酸-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマーを含有する、分散液。」 キ 甲1B発明(2) 甲第1号証の上記箇所(特に、【請求項1】、【請求項6】、段落【0003】、【0027】、【0147】、【0152】を参照。)の記載から、甲第1号証には、実施例6、8について、以下の発明(以下「甲1B発明(2)」という。)が記載されている。 「少なくとも酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層を含む半導体基板の窒化ケイ素層を研磨する際に使用する化学機械研磨用のコロイド分散液であって、 (a)研磨剤成分と、 (b)水溶性ポリマーを含み、 前記研磨剤成分がセリウムの酸化物の粒子を含み、 前記水溶性ポリマーがP(アクリルアミド-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマーを含有する、分散液。」 (2)甲第3号証の記載 甲第3号証は、【請求項1】、段落【0026】、【0028】、【0029】等を参照されたい。 甲第3号証には、「砥粒及び水溶性高分子を含有する研磨用組成物において、砥粒の例として、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア等の金属酸化物が挙げられること。」が記載されている。 (3)甲第4号証の記載 甲第4号証は、【請求項1】、段落【0011】等を参照されたい。 甲第4号証には、「化学的機械的研磨用研磨剤であって、当該研磨剤が、酸化セリウム粒子、水および添加剤を含んでなり、当該添加剤が、水溶性有機高分子化合物およびアニオン界面活性剤からなる群から選択される1種類以上を含む」ものが記載されている。 (4)甲第6号証の記載と甲6発明(1)、甲6発明(2)について ア 甲第6号証の記載 甲第6号証には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 砥粒と、過酸化水素と、ケイモリブデン酸化合物と、水溶性高分子と、を含有する、タングステン用研磨剤。 ・・・ 【請求項3】 前記水溶性高分子が、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種を重合させて得られる構造を有する重合体を含む、請求項1又は2に記載の研磨剤。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、タングステン用研磨剤、研磨剤用貯蔵液及び研磨方法に関する。特に、本発明は、化学機械研磨(以下、「CMP」という。)に使用されるタングステン用研磨剤、研磨剤用貯蔵液及び研磨方法に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、半導体集積回路(以下、「LSI」という。)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。CMPはその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁材料の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成等において頻繁に利用される技術である。 【0003】 CMPを用いた埋め込み配線形成としては、ダマシン法が知られている。例えば、酸化珪素等の絶縁材料の表面にあらかじめ溝を形成した後、絶縁材料の表面に追従する形状のバリア材料(例えばバリア膜)を形成し、更に、溝を埋め込むようにバリア材料全体の上に配線金属を堆積する。次に、溝に埋め込まれた配線金属以外の不要な配線金属を除去した後、配線金属の下層のバリア材料の一部をCMPにより除去して埋め込み配線を形成する。 【0004】 LSIでは、多種多様な物質が用いられる。また、LSIは、複数の層構造を有しており、それぞれの層構造を得るために各段階でCMPが行われる。そのため、CMPに用いられる研磨剤としては、どの材料を除去するか、又は、どの材料を除去しないかに応じて構成成分が調整されることから、多種多様な研磨剤がある。 【0005】 近年、LSIには、配線金属又はバリア材料としてタングステン材料が用いられており、タングステン材料を除去するための研磨剤が必要とされている。タングステン用研磨剤としては、例えば、下記特許文献1~4に記載されている研磨剤が挙げられる。」 「【0011】 本発明は、タングステン材料を高い研磨速度で研磨できると共に、タングステン材料に対するエッチング速度を抑制できる研磨剤を提供することを目的とする。また、本発明は、前記研磨剤を得るための研磨剤用貯蔵液、及び、前記研磨剤を用いる研磨方法を提供することを目的とする。」 「【0036】 (砥粒) 本実施形態に係る研磨剤は、砥粒を含有する。砥粒の構成材料としては、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア等の酸化物、セリウム等の水酸化物、樹脂などが挙げられる。これらは、一種類を単独で又は二種類以上を組み合わせて使用できる。中でも、砥粒の構成材料としては、他の種類の砥粒と比較してタングステン材料との親和性が高く、タングステン材料との接触頻度が増加し、タングステン材料に対する良好な研磨速度が得られ易い観点から、酸化物が好ましく、シリカ及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、シリカが更に好ましい。」 「【0052】 (水溶性高分子) 本実施形態に係る研磨剤は、水溶性高分子を含有する。研磨剤が水溶性高分子を含有することにより、タングステン材料に対するエッチング速度が抑制される。このような作用機序が得られ易い観点から、水溶性高分子は、カルボキシル基を有する重合体を含むことが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種を重合させて得られる構造を有する重合体を含むことがより好ましい。アクリル酸及びメタクリル酸に由来するカルボキシル基が、酸化されたタングステン材料(例えばH2WO4)の水酸基と相互作用して新たな反応層が形成され易いと考えられる。 【0053】 水溶性高分子としては、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種を単量体成分として含む組成物を重合させて得られる構造を有する共重合体(以下「(メタ)アクリル酸系重合体」という)、アクリル酸及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも一種を単量体成分として含む組成物を重合させて得られる構造を有する共重合体等が挙げられ、(メタ)アクリル酸系重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸系重合体は、アクリル酸の単独重合体(ポリアクリル酸)、メタクリル酸の単独重合体(ポリメタクリル酸)であってもよい。水溶性高分子は、一種類を単独で又は二種類以上を組み合わせて使用できる。(メタ)アクリル酸系重合体を得るための組成物は、アクリル酸及びメタクリル酸以外の単量体成分(例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキル)を含んでいてもよい。なお、(メタ)アクリル酸系重合体としては、アクリル酸及びメタクリル酸からなる単量体成分を重合させて得られる構造を有する共重合体(アクリル酸/メタクリル酸共重合体)が好ましい。 【0054】 (メタ)アクリル酸系重合体は、アクリル酸及びメタクリル酸以外の前記単量体成分を用いることにより、アミド基、水酸基、ウレア基、カルボキシル基、アルキル基(メチル基等)、スルホ基等の側鎖を有していてもよい。(メタ)アクリル酸系重合体の重合形態としては、特に制限はないが、ブロック共重合、ランダム共重合等が挙げられる。 【0055】 (メタ)アクリル酸系重合体における、アクリル酸及びメタクリル酸の共重合比(モル比)は特に制限はないが、メタクリル酸に対するアクリル酸の共重合比(アクリル酸/メタクリル酸)は、タングステン材料に対する高い研磨速度と、タングステン材料に対する低いエッチング速度を更に高度に両立する観点、及び、溶解性に優れる観点から、1/99~95/5が好ましい。 【0056】 水溶性高分子の重量平均分子量の下限は、タングステン材料に対するエッチング速度が抑制され易い観点から、1000以上が好ましい。水溶性高分子の重量平均分子量の下限は、高い研磨速度が発現し易い観点から、3000以上がより好ましく、4000以上が更に好ましく、5000以上が特に好ましい。水溶性高分子の重量平均分子量の上限は、特に制限はないが、研磨剤への溶解性及び研磨剤の保存安定性に優れる観点から、500万以下が好ましく、100万以下がより好ましく、50万以下が更に好ましく、10万以下が特に好ましく、5万以下が極めて好ましく、3万以下が非常に好ましく、1万以下がより一層好ましい。前記観点から、水溶性高分子の重量平均分子量は、1000以上500万以下が好ましい。」 「【0059】 (液状媒体) 本実施形態に係る研磨剤は、他の成分の分散媒又は溶媒として作用する液状媒体を含有することが好ましい。液状媒体としては、純水、超純水、蒸留水等の水;アルコール類、エーテル類、エステル類等の有機溶媒(例えば、水に対して溶解性を有する有機溶媒)が挙げられる。液状媒体は、一種類を単独で又は二種類以上を組み合わせて使用できる。」 「【0065】 (研磨剤のpH) 本実施形態に係る研磨剤のpHの下限は、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましく、2.2以上が特に好ましく、2.3以上が極めて好ましい。研磨剤のpHがこのような範囲であると、タングステン材料の表面が負のゼータ電位を有し、かつ、当該ゼータ電位の絶対値が充分に大きくなる。これにより、タングステン材料に吸着する砥粒の量を充分に確保し易いため、充分な機械的研磨力が得られ易い。本実施形態に係る研磨剤のpHの上限は、砥粒の分散安定性が良好な観点から、6.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.5以下が更に好ましく、4.0以下が特に好ましい。これらの効果を両立する観点から、研磨剤のpHは、1.0~6.0が好ましい。研磨剤のpHは、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドリド)等の塩基成分、前記酸成分などにより調整してもよい。なお、研磨剤のpHは、液温25℃におけるpHと定義する。」 「【実施例】 【0079】 以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例においてpHの調整には、必要に応じてアンモニア又はリンゴ酸を用いた。 【0080】 <研磨剤の調製> (実施例1) ケイモリブデン酸0.40質量部と、水溶性高分子(アクリル酸/メタクリル酸共重合体1(AA/MA共重合体)、ブロック共重合体、共重合比:1/99、Mw:7000)0.05質量部とを容器に入れた。そして、超純水X質量部を容器に注いだ後、攪拌して各成分を溶解させた。次に、シリカ粒子の含有量として2.00質量部に相当する量のコロイダルシリカ(シリカ含有液)を添加した。最後に、過酸化水素の含有量として3.00質量部に相当する量の過酸化水素水を添加して研磨剤を得た。超純水の前記含有量Xとしては、研磨剤が100質量部となるように調整される含有量を用いた。 【0081】 (実施例2) ケイモリブデン酸の含有量を0.40質量部から0.10質量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして研磨剤を得た。 【0082】 (実施例3) 砥粒の含有量を2.00質量部から0.50質量部に変えたこと、及び、pHを2.6から2.5に変えたこと以外は実施例1と同様にして研磨剤を得た。 【0083】 (実施例4) 過酸化水素の含有量を3.00質量部から0.50質量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして研磨剤を得た。 【0084】 (実施例5) ケイモリブデン酸の含有量を0.40質量部から2.50質量部に変えたこと、及び、pHを2.6から2.4に変えたこと以外は実施例1と同様にして研磨剤を得た。 【0085】 (実施例6) 研磨剤のpHを2.6から3.5に変えたこと以外は実施例1と同様にして研磨剤を得た。 【0086】 (実施例7) アクリル酸/メタクリル酸共重合体1をアクリル酸/メタクリル酸共重合体2(ブロック共重合体、共重合比:60/40、Mw:8000)に変えたこと、及び、pHを2.6から2.4に変えたこと以外は実施例1と同様にして研磨剤を得た。」 イ 甲6発明(1) 甲第6号証の上記記載から、甲第6号証には、以下の発明(以下「甲6発明(1)」という。)が記載されている。 「配線金属又はバリア材料として用いられるタングステン材料用の化学機械研磨剤に含有される水溶性高分子であるブロック共重合体であって、 アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種を単量体成分として含む組成物を重合させて得られる構造を有する、ブロック共重合体。」 ウ 甲6発明(2) 甲第6号証の上記記載から、甲第6号証には、以下の発明(以下「甲6発明(2)」という。)が記載されている。 「配線金属又はバリア材料として用いられるタングステン材料用の化学機械研磨剤であって、 砥粒と、過酸化水素と、ケイモリブデン酸化合物と、水溶性高分子と、を含有し、 前記水溶性高分子が、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種を単量体成分として含む組成物を重合させて得られる構造を有するブロック共重合体であり、 砥粒として、セリアの酸化物を含有する、タングステン用の化学機械研磨剤。」 5 取消理由3(新規性)、取消理由4(進歩性)について(その1:主引例は甲第1号証) (1)本件訂正発明2について ア 本件訂正発明2と甲1発明(1)との対比・判断 (ア)a 甲1発明(1)の「窒化ケイ素層」、「化学機械研磨用のコロイド分散液に含まれる水溶性ポリマー」は、それぞれ本件訂正発明2の「絶縁層」、「化学機械研磨用の分散剤」に相当する。そして、甲1発明(1)の「化学機械研磨」プロセスは、典型的には半導体に関する基材上の平坦でない形状から平坦化された表面が形成されるまで物質を除去することを含むから(段落【0003】)、本件訂正発明2の「絶縁層及び配線層のうち少なくともいずれかの表面平坦化に用いられる化学機械研磨用」に相当する。 よって、甲1発明(1)の「少なくとも酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層を含む半導体基板の窒化ケイ素層を研磨する際に使用する化学機械研磨用のコロイド分散液に含まれる水溶性ポリマー」は、本件訂正発明2の「絶縁層の表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の分散剤」に相当する。 b また、甲1発明(1)の「1以上のカチオン性モノマー単位を含む少なくとも1つのパートB」及び「1以上のアニオン性モノマー単位を含む少なくとも1つのパートA」は、いずれも本件訂正発明2の重合体ブロックに対応するといえる。 したがって、本件訂正発明2と甲1発明(1)とは、「重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を有する」点で一致する。 (イ)したがって、本件訂正発明2と甲1発明(1)との一致点と相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「絶縁層の表面平坦化に用いられる化学機械研磨剤用の分散剤であって、 重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を含有する、分散剤。」 <相違点1> 本件訂正発明2は、「前記重合体ブロックAは、アミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位UAを有し」(以下、「相違点1-1」という。)、「前記重合体ブロックAは、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有さず」(以下、「相違点1-2」という。)、「前記構造単位UAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を含む」 「CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1) (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は置換若しくは無置換の1価の炭化水素基であるか、又はR2とR3とが互いに結合してR2及びR3が結合する窒素原子と共に環を形成する基である。R2及びR3のうち少なくとも一方が、置換された1価の炭化水素基である場合、該置換された1価の基はヒドロキシアルキル基である。)」(以下、単に「CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1)」と記載する。)(以下、「相違点1-3」という。)のに対し、甲1発明(1)では、パートB及びパートAについて、そのような特定はなされていない点。 <相違点2> 本件訂正発明2は、「前記重合体ブロックBは、イオン性官能基を有する構造単位UBを有し」、「前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩であ」るのに対し、甲1発明(1)では、パートB及びパートAについて、そのような特定はなされていない点。 (ウ)a まず、上記相違点1について検討する。 甲1発明(1)の「パートB」の「カチオン性モノマー」として、甲第1号証の段落【0097】には、「ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド」が記載されている。 ここで、「ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド」、「ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド」は、アミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位を有し、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有さないから、甲1発明(1)のカチオン性モノマー単位は、本件訂正発明2の「重合体ブロックA」に対応するといえる。 b しかしながら、「ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド」、「ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド」は、N原子を2つ含むので、本件訂正発明2の「下記式(1)で表されるビニル単量体」には該当しない。 そうすると、甲第1号証には、本件訂正発明2の「前記構造単位UAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を含む」、「CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1)」について、記載も示唆もされていないといえる。 c したがって、甲第1号証の段落【0097】等の記載を参照した当業者であっても、甲1発明(1)において、「パートB」が含む「カチオン性モノマー単位」として、相違点1-3に係る本件訂正発明2の「式(1)(CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3…(1) )で表されるビニル単量体に由来する構造単位を含む」ものを採用することは容易になし得たとはいえない。 よって、相違点1(相違点1-1、相違点1-2、及び相違点1-3)に係る本件訂正発明2の重合体ブロックAを採用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。 以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲1発明(1)及び甲第1号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明2と甲1B発明(1)との対比・判断 (ア)a 上記ア(ア)aの検討を参照すると、甲1B発明(1)の「少なくとも酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層を含む半導体基板の窒化ケイ素層を研磨する際に使用する化学機械研磨用のコロイド分散液に含まれ」る、「水溶性ポリマー」は、本件訂正発明2の「絶縁層の表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の分散剤」に相当する。 b 甲1B発明(1)の「P(アクリルアミド-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー」について、アクリルアミドは、アミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位を有し、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有さず、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドは、イオン性官能基を有する構造単位を有するといえるから、本件訂正発明2の「アミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位UAを有」する重合体ブロックAと、「イオン性官能基を有する構造単位UBを有する」重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)に相当する。 c 甲1B発明(1)の「P(アクリルアミド-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー」のアクリルアミドは、本件特許発明2の「下記式(1)で表されるビニル単量体」に相当する。 (イ)したがって、本件訂正発明2と甲1B発明(1)との一致点と相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「絶縁層の表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の分散剤であって、 重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を有し、 前記重合体ブロックAは、アミド基含有ビニル単量体に由来する構造単位UAを有し、 重合体ブロックBは、イオン性官能基を有する構造単位UBを有し、 前記重合体ブロックAは、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩を有さず、 前記構造単位UAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を含む、分散剤。 CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1)」 <相違点3> 本件訂正発明2では、「前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩」であるのに対し、甲1(B)発明(1)では、「P(アクリルアミド-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー」における「(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)」のイオン性官能基は、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩ではない点。 (ウ)以下、上記相違点3について検討する。 甲第1号証の段落【0092】には、両性ブロックコポリマーとして、「(ブロックA)-(ブロックB)ジブロックコポリマー(パートAはブロックAを構成し、高分子鎖BはブロックBを構成する)」を選択することができる旨が記載されているものの、甲第1号証には、(ブロックA)-(ブロックB)ジブロックコポリマーを構成するブロックBとして、「カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩」を選択することは記載も示唆もされていない。 また、甲第1号証に開示された実施例のうち、ポリマーが、(ブロックA)-(ブロックB)ジブロックコポリマーであって、アクリルアミドがブロックAを構成するものは実施例6、8のみであり、実施例6、8において、ブロックBは、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドで構成されており、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド以外のブロックBを構成するイオン性官能基を有する実施例は記載されていない。 そうすると、実施例6、8についての発明である甲1(B)発明(1)において、「水溶性ポリマー」が含有する「P(アクリルアミド-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー」の「(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)」のイオン性官能基を、「カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩」に代える動機付けは、当業者にはない。 したがって、甲1B発明(1)において、「水溶性ポリマー」が含有する上記ジブロックコポリマーの「(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)」が有するイオン性官能基を、「カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩」に代えることで、相違点3に係る本件訂正発明2とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。 よって、本件訂正発明2は、甲1B発明(1)ではなく、また、甲1B発明(1)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件訂正発明3について ア 本件訂正発明3と甲1発明(1)との対比・判断 (ア)本件訂正発明3は、「前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である」との構成を有するところ、上記(1)ア(ア)bにおける検討と同様に、甲1発明(1)の「1以上のカチオン性モノマー単位を含む少なくとも1つのパートB」及び「1以上のアニオン性モノマー単位を含む少なくとも1つのパートA」は、いずれも本件訂正発明3の重合体ブロックに対応するといえる。 (イ)一方、甲1発明(1)における「パートB」の「カチオン性モノマー」として、甲第1号証の段落【0097】には、「ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジ-tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、エチレンイミン」等のモノマーが記載されているものの、これらのカチオン性モノマーは、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である構造単位を有するものではない。 したがって、甲第1号証の段落【0097】等の記載を参照した当業者であっても、甲1発明(1)において、「パートB」が含む「カチオン性モノマー単位」として、本件訂正発明3の「前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である」ものを採用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。 よって、本件訂正発明3は、甲1発明(1)ではなく、また、甲1発明(1)及び甲第1号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明3と甲1A発明(1)との対比・判断 (ア)本件訂正発明3は、「前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である」との構成を有するところ、アクリル酸はイオン性官能基であるカルボキシル基を有するから、上記(1)イ(ア)bにおける検討と同様に、甲1A発明(1)の 「P(アクリル酸-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー」は、本件訂正発明3の「それぞれ、イオン性官能基を有する構造単位」を有する「重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)」に相当する。 また、本件訂正発明3と甲1A発明(1)とは、「前記ブロック共重合体(P)は、下記の条件I」を「満たす重合体であり」、「条件I:前記重合体ブロックAが有するイオン性官能基と、前記重合体ブロックBが有するイオン性官能基とが異な」るものである点で一致する。 (イ)しかしながら、甲1A発明(1)の「P(アクリル酸-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー」の「(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)」(本件訂正発明3の「重合体ブロックB」に相当)は、「イオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である」ものではないので、甲1A発明(1)は、「前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である」ものではない点で、少なくとも本件訂正発明3と相違する。 甲第1号証の段落【0092】には、両性ブロックコポリマーとして、「(ブロックA)-(ブロックB)ジブロックコポリマー(パートAはブロックAを構成し、高分子鎖BはブロックBを構成する)」を選択することができる旨が記載されているものの、甲第1号証には、(ブロックA)-(ブロックB)ジブロックコポリマーを構成するブロックBとして、「カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩」を選択することは記載も示唆もされていない。 また、甲第1号証に開示された実施例のうち、ポリマーが、(ブロックA)-(ブロックB)ジブロックコポリマーであって、アクリル酸がブロックAを構成するものは実施例4のみであり、実施例4において、ブロックBは、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドで構成されており、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド以外のブロックBを構成するイオン性官能基を有する実施例は記載されていない。 そうすると、実施例4についての発明である甲1A発明(1)において、「水溶性ポリマー」が含有する「P(アクリル酸-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー」の「(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)」のイオン性官能基を、「カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩」に代える動機付けは、当業者にはない。 したがって、甲1A発明(1)において、「水溶性ポリマー」が含有する上記ジブロックコポリマーの「(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)」が有するイオン性官能基を、「カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩」に代えることで、本件訂正発明3の「前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である」ものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。 よって、本件訂正発明3は、甲1A発明(1)ではなく、また、甲1A発明(1)及び甲第1号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件訂正発明4について ア 本件訂正発明4と甲1発明(1)との対比・判断 (ア)本件訂正発明4は、「前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有」する、「分散剤」、「CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1)」との構成を有するところ、上記(1)ア(ア)bにおける検討のとおり、甲1発明(1)の「1以上のカチオン性モノマー単位を含む少なくとも1つのパートB」及び「1以上のアニオン性モノマー単位を含む少なくとも1つのパートA」は、いずれも本件訂正発明4の重合体ブロックに対応するといえる。 (イ)一方、甲1発明(1)における「パートB」の「カチオン性モノマー」(本件訂正発明4の「重合体ブロックAに相当)として、甲第1号証の段落【0097】に記載されている「ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド」は、上記(1)ア(ウ)bにおける検討を参酌すると、本件訂正発明4の「下記式(1)で表されるビニル単量体」には相当しない。 したがって、甲第1号証の段落【0097】等の記載を参照した当業者であっても、甲1発明(1)において、「パートB」が含む「カチオン性モノマー単位」として、本件訂正発明4の「下記式(1)で表されるビニル単量体」、「CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1)」を採用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。 よって、本件訂正発明4は、甲1発明(1)ではなく、また、甲1発明(1)及び甲第1号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明4と甲1B発明(1)との対比・判断 (ア)本件訂正発明4は、「前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有し」、「前記重合体ブロックAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、1級アミド基及び水酸基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含み」、「CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1)」との構成を有するところ、アクリルアミド(AAm)は、式(1)を満たし、かつ1級アミド基を有するから、上記(1)イ(ア)cにおける検討のとおり、甲1B発明(1)の「P(アクリルアミド-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー」は、本件訂正発明4の「下記式(1)で表されるビニル単量体」に相当する。 したがって、本件訂正発明4と甲1B発明とは、「前記重合体ブロックA」は「下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有」する点で共通し、「前記重合体ブロックAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、1級アミド基を有する構造単位を含」む点で一致する。 (イ)しかしながら、甲1B発明(1)の「P(アクリルアミド-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー」の「(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)」(本件訂正発明4の「重合体ブロックB」に相当)は、式(1)を満たさないので、甲1B発明(1)は、「前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有」するものではない点で、少なくとも本件訂正発明4と相違する。 甲第1号証の段落【0092】には、両性ブロックコポリマーとして、「(ブロックA)-(ブロックB)ジブロックコポリマー(パートAはブロックAを構成し、高分子鎖BはブロックBを構成する)」を選択することができる旨が記載されているものの、甲第1号証には、(ブロックA)-(ブロックB)ジブロックコポリマーを構成するブロックBとして、「カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩」を選択することは記載も示唆もされていない。 また、甲第1号証に開示された実施例のうち、ポリマーが、(ブロックA)-(ブロックB)ジブロックコポリマーであって、アクリルアミドがブロックAを構成するものは実施例6、8のみであり、実施例6、8において、ブロックBは、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドで構成されており、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド以外のブロックBを構成するイオン性官能基を有する実施例は記載されていない。 そうすると、実施例6、8についての発明である甲1B発明(1)において、「水溶性ポリマー」が含有する「P(アクリルアミド-ブロック-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー」の「(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)」を、「下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位」を有するものに代える動機付けは、当業者にはない。 したがって、甲1B発明(1)において、「水溶性ポリマー」が含有する上記ジブロックコポリマーの「(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド)」を、「下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位」を有するものに代えることで、本件訂正発明4の「前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有」するものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。 よって、本件訂正発明4は、甲1B発明(1)ではなく、また、甲1B発明(1)及び甲第1号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件訂正発明8~10について 本件訂正発明8~10は、いずれも、本件訂正発明2~4のいずれかについて、更に技術的事項を追加したものを含む、分散剤に係る発明である。 よって、上記(1)~(3)で示した理由と同様の理由により、本件訂正発明8、10は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明(1)、甲1A発明(1)、甲1B発明(1))であるということはできず、また、本件訂正発明8~10は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明(1)、甲1A発明(1)、甲1B発明(1))に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件訂正発明11について 本件訂正発明11は、本件訂正発明2~4、8~11のいずれかに係る分散剤を含有し、更に技術的事項を追加した、研磨剤組成物に係る発明である。 よって、上記(1)~(4)で示した理由と同様の理由により、本件訂正発明11は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明(2)、甲1A発明(2)、甲1B発明(2))であるということはできず、また、本件訂正発明11は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明(2)、甲1A発明(2)、甲1B発明(2))に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明2~4、8~11は、特許法第29条第1項、第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、請求項2~4、8~11に係る特許を、取消理由3、4(その1)によって取り消すことはできない。 6 取消理由3(新規性)、取消理由4(進歩性)について(その2:主引例は甲第2号証) (1)本件訂正発明8、9、11について ア 取消理由において、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明(甲2発明(1))であり、また、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明(甲2発明(1))に基づいて、訂正前の請求項8、9に係る発明は、甲第2号証に記載された発明(甲2発明(1))及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、訂正前の請求項11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明(甲2発明(2))及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとされた。 そして、取消理由の「●取消理由3(新規性)、取消理由4(進歩性)について(その2:主引例は甲第2号証)」では、「(5)本件特許発明8について」及び「(6)本件特許発明9について」の「・甲2発明(1)との対比・判断」、並びに「(7)本件特許発明(11)について」の「・甲2発明(2)との対比・判断」のそれぞれにおいて、「上記(4)本件特許発明1について」を参照している。 したがって、訂正前の請求項8、9、11に対する取消理由4(その2)は、訂正前の請求項1に係る発明の構成が、甲第2号証に記載されているといえることに基づき、対比・判断をしている。 また、取消理由4(その2)は、訂正前の請求項1、8、9、11に対してのみ通知されている。 イ 一方、本件訂正請求によって、訂正前の請求項1は削除され、訂正後の請求項8、9、11に係る発明は、訂正前の請求項1に係る発明の構成を有するものではなくなった。 したがって、本件訂正発明8、9、11は、甲第2号証に記載された発明(甲2発明(1)、甲2発明(2))及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明8、9、11は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、請求項8、9、11に係る特許を、取消理由4(その2)によって取り消すことはできない。 7 取消理由3(新規性)、取消理由4(進歩性)について(その3:主引例は甲第5号証) (1)本件訂正発明11について ア 取消理由において、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第5号証に記載された発明(甲5発明(1))であり、訂正前の請求項11係る発明は甲第5号証に記載された発明(甲5発明(2))であり、また、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第5号証に記載された発明(甲5発明(1))に基づいて、訂正前の請求項11に係る発明は、甲第5号証に記載された発明(甲5発明(1))に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとされた。 そして、取消理由の「●取消理由3(新規性)、取消理由4(進歩性)について(その3:主引例は甲第5号証)」では、「(3)本件特許発明11について」の「・本件特許発明11と甲5発明(2)との対比・判断」において、「上記(2)本件特許発明1について」を参照している。 したがって、訂正前の請求項11に対する取消理由3、4(その3)は、訂正前の請求項1に係る発明の構成が、甲第5号証に記載されているといえることに基づき、対比・判断をしている。 また、取消理由4(その3)は、訂正前の請求項1、11に対してのみ通知されている。 イ 一方、本件訂正請求によって、訂正前の請求項1は削除され、訂正後の請求項11に係る発明は、訂正前の請求項1に係る発明の構成を有するものではなくなった。 したがって、本件訂正発明11は、甲第5号証に記載された発明(甲5発明(1))ではなく、また、甲第5号証に記載された発明(甲5発明(2))に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明11は、特許法第29条第1項、第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、請求項11に係る特許を、取消理由3、4(その3)によって取り消すことはできない。 8 取消理由3(新規性)、取消理由4(進歩性)について(その4:主引例は甲第6号証) (1)本件訂正発明3について ア 本件訂正発明3と甲6発明(1)との対比・判断 (ア)a 甲6発明(1)の「ブロック共重合体」は、「配線金属又はバリア材料として用いられるタングステン材料用の化学機械研磨剤に含有される」ものであるから、「配線金属又はバリア材料として用いられるタングステン材料用の化学機械研磨剤に含有される」は、本件訂正発明3の「配線層の表面平坦化に用いられる化学機械研磨用の」であることに相当する。 b 甲6発明(1)の「ブロック共重合体」は、「アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種を単量体成分として含む組成物を重合させて得られる構造を有する」ものであるところ、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」はいずれもイオン性官能基を有するから、甲6発明(1)の「アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種を単量体成分として含む組成物を重合させて得られる構造を有する、ブロック共重合体」は、本件訂正発明3の「重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)を含有し、前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、イオン性官能基を有する構造単位を有」するに相当する。 (イ)したがって、本件訂正発明3と甲6発明(1)との一致点と相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「配線層の表面平坦化に用いられる化学機械研磨剤に使用されるブロック共重合体(P)であって、 前記ブロック共重合体(P)は、重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有し、 前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、イオン性官能基を有する構造単位を有する、ブロック共重合体(P)。」 <相違点4> 本件訂正発明3のブロック共重合体(P)は、分散剤であるのに対し、甲6発明(1)の「ブロック共重合体」は、分散剤であるのかが不明である点。 <相違点5> 本件訂正発明3では、「前記ブロック共重合体(P)は、下記の条件I及び条件IIのうち少なくとも一方を満たす重合体であり」、「条件I:前記重合体ブロックAが有するイオン性官能基と、前記重合体ブロックBが有するイオン性官能基とが異なり、前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBのうち一方がスルホン酸基を有し、他方がカルボキシル基を有する」、「条件II:前記重合体ブロックAのイオン性官能基の含有量と、前記重合体ブロックBのイオン性官能基の含有量とが異なる」のに対し、甲6発明(1)では、その点が不明である点。 <相違点6> 本件訂正発明3では、「前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である」のに対し、甲6発明(1)では、その点が不明である点。 (ウ)a 上記相違点5、6は、いずれも、「ブロック共重合体(P)」が有する「重合体ブロックA」及び「重合体ブロックB」に関するものであるから、まず、上記相違点5、6について、まとめて検討する。 甲6発明(1)の「ブロック共重合体」は、「アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種を単量体成分として含む組成物を重合させて得られる構造を有する」ものであるところ、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」はいずれもスルホン酸基又はスルホン酸基の塩を有するものではないから、本件訂正発明3の「条件I:前記重合体ブロックAが有するイオン性官能基と、前記重合体ブロックBが有するイオン性官能基とが異なり、前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBのうち一方がスルホン酸基を有し、他方がカルボキシル基を有する」のうちの「前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBのうち一方がスルホン酸基を有し、他方がカルボキシル基を有する」を満たすものではない。 また、甲第6号証には、(メタ)アクリル酸系重合体のアクリル酸のイオン性官能基であるカルボキシル基と、メタクリル酸のイオン性官能基であるカルボキシル基の含有量とが異なることについては記載されていないから、甲第6号証に、本件訂正発明3の「条件II:前記重合体ブロックAのイオン性官能基の含有量と、前記重合体ブロックBのイオン性官能基の含有量とが異なる」を満たすものが開示されているということもできない。 したがって、甲6発明(1)において、相違点5、6に係る本件訂正発明3の「条件I及び条件IIのうちの少なくとも一方を満たす重合体であり」、「前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である」との構成を採用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。 よって、本件訂正発明3は、甲6発明(1)であるということはできず、また、相違点4について検討するまでもなく、甲6発明(1)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件訂正発明9について 本件訂正発明9は、本件訂正発明2~4のいずれかに対して、更に技術的事項を追加したものを含む、分散剤に係る発明である。 よって、上記(1)で示した理由と同様の理由により、本件訂正発明9は、甲第6号証に記載された発明(甲6発明(1))に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件訂正発明11について 本件訂正発明11は、本件訂正発明2~4のいずれかに係る分散剤を含有し、更に技術的事項を追加した、研磨剤組成物に係る発明である。 よって、上記(1)で示した理由と同様の理由により、本件訂正発明11は、甲第6号証に記載された発明(甲6発明(2))であるということはできず、また、本件訂正発明11は、甲第6号証に記載された発明(甲6発明(2))に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明3、9、11は、特許法第29条第1項、第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、請求項3、9、11に係る特許を、取消理由3、4(その4)によって取り消すことはできない。 第5 取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)違反について (1)ア 申立人は、特許異議申立書17~18ページの「イ)」において、「本件特許発明3には、あらゆる種類のイオン性官能基を有する構造単位が包含されるところ、本件特許発明3の実施例には、イオン性官能基を有する構造単位は、アクリル酸(AA)、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)の2種類に過ぎない(段落0133、表4)。イオン性官能基を有する構造単位として、上記以外のあらゆる種類の単量体を選択したブロック共重合体について、本件発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは言えない。 本件特許請求項3に従属する請求項8~11についても同様に当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは言えない。」と主張する。 イ しかしながら、本件特許明細書の段落【0133】の【表4】には、「重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)」であって、「前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、イオン性官能基を有する構造単位を有し、前記ブロック共重合体(P)は、下記の条件I及び条件IIのうち少なくとも一方を満たす重合体であり、前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基」「である、分散剤。 条件I:前記重合体ブロックAが有するイオン性官能基と、前記重合体ブロックBが有するイオン性官能基とが異なり、前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBのうち一方がスルホン酸基を有し、他方がカルボキシル基を有する。 条件II:前記重合体ブロックAのイオン性官能基の含有量と、前記重合体ブロックBのイオン性官能基の含有量とが異なる。」として、イオン性官能基がカルボキシル基であるAAと、イオン性官能基がスルホン酸基であるATBSを、重合体ブロックAまたは重合体ブロックBに含み、条件Iを満たす実施例1B、2B、6B、7B、条件IIを満たす実施例2B~9Bの重合体A2~I2が記載されており、段落【0120】~【0129】には、重合体A2~I2の合成について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。 したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明3、8~11を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 よって、申立人の上記主張を採用することはできない。 (2)ア 申立人は、特許異議申立書18ページの「ウ)」において、「本件特許発明4には、あらゆる種類の式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位が包含されるところ、本件特許発明4の実施例には、式(1)で表されるビニル単量体として、・・・(HEAA)、・・・(DEAA)、・・・(AAm)、・・・(ACMO)のわずか4種類に過ぎない(段落0178、表6)。式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、上記以外のあらゆる種類の単量体を選択したブロック共重合体について、本件発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは言えない。 本件特許請求項4に従属する請求項5~11についても同様に当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは言えない。」と主張する。 イ しかしながら、本件特許明細書の段落【0178】の【表6】には、「重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するブロック共重合体(P)」であって、「前記重合体ブロックA及び前記重合体ブロックBはそれぞれ、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有し、前記重合体ブロックAは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、1級アミド基及び水酸基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含み、前記重合体ブロックBは、下記式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、2級アミド基及び3級アミド基のうち少なくともいずれかを有する構造単位を含む、分散剤。 CH2=CR1-C(=O)-NR2-R3 …(1)」として、式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位として、1級アミド基及び水酸基のうち少なくともいずれかを有するAAm、HEAAを有する構造単位を含む重合体ブロックAと、2級アミド基及び3級アミド基のうち少なくともいずれかを有するHEAA、ACMOを有する構造単位を含む重合ブロックBとを有する、実施例2C~6Cの重合体B3~F3が記載されており、段落【0167】~【0174】には、重合体B3~F3の合成について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。 したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明4、8~11を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 よって、申立人の上記主張を採用することはできない。 2 特許法第29条第1項第3号(新規性)、同法同条第2項(進歩性)について(その1:主引例は甲第1号証) (1)本件訂正発明9について ア 申立人は、特許異議申立書33~34ページにおいて、本件特許請求項9に係る発明について、甲第1号証に記載された発明である旨主張する。 イ しかしながら、上記第4の5(4)のとおり、本件訂正発明9は、本件訂正発明2~4のいずれかに対して、更に技術的事項を追加したものを含む、分散剤に係る発明であり、そして、上記第4の5(1)~(3)によると、本件訂正発明2~4は、甲第1号証に記載された発明と相違点を有するといえる。 したがって、本件訂正発明9は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。 よって、申立人の上記主張を採用することはできない。 (2)本件訂正発明8、10について ア 申立人は、特許異議申立書の33~35ページにおいて、甲第1号証の実施例2についての記載(段落【0137】~【0138】)に基づき、本件特許請求項8、10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。 イ しかしながら、実施例2で合成された「P(アクリル酸-ブロック-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)ジブロックコポリマー:P(AA-DADMAC)」について、アクリル酸(AA)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)は、本件訂正発明2、本件訂正発明4における式(1)で表されるビニル単量体に由来する構造単位を有するブロックではない。 また、本件訂正発明3は、「前記重合体ブロックAのイオン性官能基及び前記重合体ブロックBのイオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩である」ものの、実施例2における、AAは、カルボキシル基を有するものの、DADMACは、「カルボキシル基、スルホン酸基又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基の塩」を有さない。 したがって、本件訂正発明8、10は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、申立人の上記主張を採用することはできない。 3 特許法第29条第2項(進歩性)について(その2:主引例は甲第2号証) (1)本件訂正発明8~11について ア 申立人は、特許異議申立書の43~48ページにおいて、訂正前の請求項1に係る発明、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項8~11に係る発明について、甲第2号証~甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。 イ しかしながら、上記第4の6(1)ア、イのとおり、訂正前の請求項8、9、11に対する取消理由の取消理由4(その2)は、訂正前の請求項1に係る発明の構成が、甲第2号証に記載されているといえることに基づき、対比・判断をしており、本件訂正請求によって、訂正前の請求項1は削除され、訂正後の請求項8、9、11に係る発明は、訂正前の請求項1に係る発明の構成を有するものではなくなった。 また、甲第3号証、甲第4号証には、訂正前の請求項1に係る発明の構成は記載されていない。 したがって、本件訂正発明8~11は、甲第2号証~甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、申立人の上記主張を採用することはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2~4、8~11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項2~4、8~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件請求項1、5~7は上記のとおり、本件訂正請求により削除された。これにより、本件特許の請求項1、5~7に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701068

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