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特許異議申立

2023-701121

研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法、および半導体基板の製造方法

審判番号
2023-701121
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-054905
登録番号
7261630
請求日
2023年10月20日
審決日
2024年09月04日
公報発行日
2024年12月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社フジミインコーポレーテッド
  • 【権利者代理人】IBC一番町弁理士法人
  • 【異議申立人】佐藤 祥徳
審判長/審判官
  • 審判長 恩田 春香
  • 審判官 河本 充雄
  • 審判官 大橋 達也
分類
P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7261630号発明「研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法、および半導体基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7261630号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10、12、13〕、11について訂正することを認める。 特許第7261630号の請求項1、2、4、7~13に係る特許を維持する。 特許第7261630号の請求項3、5、6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7261630号の請求項1~13に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成31年3月22日の出願であって、令和5年4月12日にその特許権の設定登録がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和5年10月20日:特許異議申立人 佐藤祥徳(以下、「申立人」という。)による請求項1~13に係る特許に対する特許異議の申立て 令和6年 1月17日付け:取消理由通知 同年 3月22日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出 なお、令和6年5月1日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知をし、期間を指定して意見を提出する機会を与えたが、申立人から応答はなかった。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 令和6年3月22日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物(ただし、アミノアセトニトリルを除く)」と記載されているのを、「一分子中に下記表Iの(1)、(3)、(14)、(15)、(21)、(37)、(39)および(56)に示す電子求引部および電子供与部の組み合わせの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)及び「【表4】 [図:0001417623000001.jpg] 」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4、7~10、12、13も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記電子求引部は、-NO2基、-SO2CH3基、-CN基、-CnF2n+1基(nは1~8の整数)、-Cm+1F3m構造を有する基(mは1~8の整数)、-COCH3基、-CHO基、-F基、-Cl基、および-Br基からなる群より選択される少なくとも1種である」と記載されているのを、「前記化合物が有する前記電子求引部および前記電子供与部の組み合わせは、前記表Iの前記(1)、前記(3)、前記(14)、前記(15)、前記(21)および前記(56)に示す組み合わせの少なくとも1つである」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4、7~10、12、13も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「前記化合物が有する前記電子求引部および前記電子供与部の組み合わせは、下記表1の(1)~(66)に示す組み合わせの少なくとも1つである、請求項1~3のいずれか1項に記載の研磨用組成物。 【表1-1】 [図:0001417623000002.jpg] 【表1-2】 [図:0001417623000003.jpg] 」と記載されているのを、「前記化合物が有する前記電子求引部および前記電子供与部の組み合わせは、前記表Iの前記(1)、前記(3)、前記(14)、前記(15)、前記(21)、前記(37)および前記(39)に示す組み合わせの少なくとも1つである、請求項1に記載の研磨用組成物。」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~10、12、13も同様に訂正する)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか1項に記載の研磨用組成物」と記載されているのを、「請求項1、2、4のいずれか1項に記載の研磨用組成物」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~10、12、13も同様に訂正する)。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか1項に記載の研磨用組成物」と記載されているのを、「請求項1、2、4、7のいずれか1項に記載の研磨用組成物」に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9、10、12、13も同様に訂正する)。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか1項に記載の研磨用組成物」と記載されているのを、「請求項1、2、4、7、8のいずれか1項に記載の」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10、12、13も同様に訂正する)。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~9のいずれか1項に記載の研磨用組成物」と記載されているのを、「請求項1、2、4、7~9のいずれか1項に記載の研磨用組成物」に訂正する(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12、13も同様に訂正する)。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に「一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物(ただし、アミノアセトニトリルを除く)」と記載されているのを、「一分子中に下記表Iの(1)、(3)、(14)、(15)、(21)、(37)、(39)および(56)に示す電子求引部および電子供与部の組み合わせの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)」及び「【表5】 [図:0001417623000004.jpg] 」に訂正する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~10のいずれか1項に記載の研磨用組成物」と記載されているのを、「請求項1、2、4、7~10のいずれか1項に記載の研磨用組成物」に訂正する(請求項12の記載を引用する請求項13も同様に訂正する)。 (13)訂正事項13 願書に添付した明細書の【0031】に記載された「日本化学会編「化学便覧基礎編II 改訂4版」(平成5年9月30日、丸善株式会社発行)379ページ」を「日本化学会編「化学便覧 基礎編II 改訂4版」(平成5年9月30日、丸善株式会社発行)II-347ページ」に訂正し、同【0031】に記載された「代表的な置換基について、日本化学会編「化学便覧 基礎編II 改訂4版」(平成5年9月30日、丸善株式会社発行)に記載されている置換基定数σp0の値を下記表Aに示す。」を削除する。 (14)訂正事項14 願書に添付した明細書の【0032】を削除する。 (15)訂正事項15 願書に添付した明細書の【0035】に記載された「上記電子供与部は、-N(CH3)2基(ジメチルアミノ基)、-NH2基(アミノ基)、-OH基(ヒドロキシ基)、-OCH3基(メトキシ基)、-CH3基(メチル基)、および-C6H5基(フェニル基)、からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。」を「上記電子供与部は、-N(CH3)2基(ジメチルアミノ基)、-NH2基(アミノ基)、-OH基(ヒドロキシ基)、-OCH3基(メトキシ基)および-CH3基(メチル基)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。」に訂正する。 (16)訂正事項16 願書に添付した明細書の【0038】に記載された「下記表1の(1)~(66)に示す組み合わせ」を「下記表1の(1)~(5)、(7)~(11)、(13)~(17)、(19)~(23)、(25)~(29)、(31)~(35)、(37)~(41)、(43)~(47)、(49)~(53)、(55)~(59)および(61)~(65)に示す組み合わせ」に訂正する。 (17)訂正事項17 願書に添付した明細書の【0039】に記載された【表2-1】「 [図:0001417623000005.jpg] 」を「 [図:0001417623000006.jpg] 」に訂正する。 (18)訂正事項18 願書に添付した明細書の【0040】に記載された【表2-2】「 [図:0001417623000007.jpg] 」を「 [図:0001417623000008.jpg] 」に訂正する。 (19)訂正事項19 願書に添付した明細書の【0041】に記載された「下記表2の(1)~(41)、(43)~(47)、(49)~(52)、(55)~(58)、および(61)~(64)に示す組み合わせ」を「下記表2の(1)~(5)、(7)~(11)、(13)~(17)、(19)~(23)、(25)~(29)、(31)~(35)、(37)~(41)、(43)~(47)、(49)~(52)、(55)~(58)、および(61)~(64)に示す組み合わせ」に訂正する。 (20)訂正事項20 願書に添付した明細書の【0042】に記載された【表3-1】「 [図:0001417623000009.jpg] 」を「 [図:0001417623000010.jpg] 」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1による訂正は、「一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物(ただし、アミノアセトニトリルを除く)」について、「一分子中に下記表Iの(1)、(3)、(14)、(15)、(21)、(37)、(39)および(56)に示す電子求引部および電子供与部の組み合わせの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)」及び「【表4】 [図:0001417623000011.jpg] 」との事項を限定するとともに、「2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く」ものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0038】、【0039】の【表2-1】「表1」及び【0040】の【表2-2】「表1の続き」の記載に基づくものであり、かつ、「一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物」について、「2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く」ものであるから、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項1による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2による訂正は、「前記化合物が有する前記電子求引部および前記電子供与部の組み合わせ」について、「前記表Iの前記(1)、前記(3)、前記(14)、前記(15)、前記(21)および前記(56)に示す組み合わせの少なくとも1つである」との事項を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2による訂正は、本件明細書等の【0038】、【0039】の【表2-1】「表1」及び【0040】の【表2-2】「表1の続き」の記載に基づくものであるから、訂正事項2による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項2による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3による訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4による訂正は、「前記化合物が有する前記電子求引部および前記電子供与部の組み合わせ」について、「前記表Iの前記(1)、前記(3)、前記(14)、前記(15)、前記(21)、前記(37)および前記(39)に示す組み合わせの少なくとも1つである」との事項を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項4による訂正は、本件明細書等の【0038】、【0039】の【表2-1】「表1」及び【0040】の【表2-2】「表1の続き」の記載に基づくものであるから、訂正事項4による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項4による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5による訂正は、請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6について 訂正事項6による訂正は、請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)訂正事項7について 訂正事項7による訂正は、訂正事項3、5、6による訂正により請求項3、5、6を削除したことに伴い、請求項7の引用請求項から請求項3、5、6を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8)訂正事項8について 訂正事項8による訂正は、訂正事項3、5、6による訂正により請求項3、5、6を削除したことに伴い、請求項8の引用請求項から請求項3、5、6を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (9)訂正事項9について 訂正事項9による訂正は、訂正事項3、5、6による訂正により請求項3、5、6を削除したことに伴い、請求項9の引用請求項から請求項3、5、6を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (10)訂正事項10について 訂正事項10による訂正は、訂正事項3、5、6による訂正により請求項3、5、6を削除したことに伴い、請求項10の引用請求項から請求項3、5、6を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (11)訂正事項11について 訂正事項11は、訂正事項1と同様の内容であるから、訂正事項11による訂正は、上記(1)で検討したのと同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (12)訂正事項12 訂正事項12による訂正は、訂正事項3、5、6による訂正により請求項3、5、6を削除したことに伴い、請求項12の引用請求項から請求項3、5、6を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (13)訂正事項13、14について 本件明細書等の【0031】の「「Hammett則」とは、芳香族化合物における置換基が芳香環の電子状態に与える効果を説明するために用いられる経験則であり、通常は、日本化学会編「化学便覧基礎編II 改訂4版」(平成5年9月30日、丸善株式会社発行)379ページに記載されているように、無置換の安息香酸のpKaからその置換基を有する安息香酸のpKaを減算した値として算出される。」の「379ページ」は、甲第8号証の記載から、「II-347ページ」の誤記であることは明らかである。 また、同【0031】の「代表的な置換基について、日本化学会編「化学便覧 基礎編II 改訂4版」(平成5年9月30日、丸善株式会社発行)に記載されている置換基定数σp0の値を下記表Aに示す。」、及び、同【0032】に記載の「表A」は、甲第8号証の記載から、誤記であることは明らかである。 したがって、訂正事項13、14による訂正は、誤記の訂正を目的とするものであって、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (14)訂正事項15について 訂正事項15による訂正は、本件明細書等の【0035】の「上記電子供与部は、-N(CH3)2基(ジメチルアミノ基)、-NH2基(アミノ基)、-OH基(ヒドロキシ基)、-OCH3基(メトキシ基)、-CH3基(メチル基)、および-C6H5基(フェニル基)、からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。」との記載のうち、「-C6H5基(フェニル基)」を削除するものであるところ、本件明細書等の【0030】には、「本明細書において、「電子求引部」とは、Hammett則における置換基定数σp0(以下、単に「置換基定数σp0」とも称する)の値が正の値を示す基のことを指すものとする。同様に、「電子供与部」とは、Hammett則における置換基定数σp0の値が負の値を示す基のことを指すものとする。」と記載されており、甲第8号証のII-347ページの記載によれば、-C6H5基の置換基定数は0.05、すなわち、正の値であって、-C6H5基は電子求引部であるから、上記【0035】の「電子供与部」における「-C6H5基(フェニル基)」についての記載は誤記である。 したがって、訂正事項15による訂正は、誤記の訂正を目的とするものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (15)訂正事項16~18について 上記(14)で検討したとおり、-C6H5基は、電子求引部であるところ、訂正事項16は、本件明細書等の【0039】の【表2-1】「表1」の電子供与部に「-C6H5基」と記載されている、組み合わせNo.(6)、(12)、(18)、(24)、(30)、(36)、(42)の欄を削除するものであり、訂正事項17は、同【0040】の【表2-2】「表1の続き」の電子供与部に「-C6H5基」と記載されている、組み合わせNo.(48)、(54)、(60)、(66)の欄を削除するものであり、訂正事項18による訂正は、同【0038】において、訂正事項16、17による訂正で削除する組み合わせNo.を全て削除するものであるから、訂正事項16~18による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (16)訂正事項19、20について 訂正事項20による訂正は、本件明細書等の【0042】の【表3-1】「表2」の電子供与部に-C6H5基と記載されている、組み合わせNo.(6)、(12)、(18)、(24)、(30)、(36)の欄を削除するものであり、訂正事項19による訂正は、同【0041】において、訂正事項20による訂正で削除する組み合わせNo.を削除するものであるから、上記(15)で検討したのと同様に、訂正事項19、20による訂正は、誤記の訂正を目的とするものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 まとめ 本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号~第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10、12、13〕、11について訂正を認める。 第3 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~13の特許に係る発明(以下、「本件発明1~13」といい、まとめて、「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 砥粒と、 一分子中に下記表Iの(1)、(3)、(14)、(15)、(21)、(37)、(39)および(56)に示す電子求引部および電子供与部の組み合わせの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)と、 分散媒と、 を含む、研磨用組成物であって、 前記砥粒は、コロイダルシリカを含み、 前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない、研磨用組成物。 【表4】 [図:0001417623000012.jpg] 【請求項2】 前記化合物が有する前記電子求引部および前記電子供与部の組み合わせは、前記表Iの前記(1)、前記(3)、前記(14)、前記(15)、前記(21)および前記(56)に示す組み合わせの少なくとも1つである、請求項1に記載の研磨用組成物。 【請求項3】(削除) 【請求項4】 前記化合物が有する前記電子求引部および前記電子供与部の組み合わせは、前記表Iの前記(1)、前記(3)、前記(14)、前記(15)、前記(21)、前記(37)および前記(39)に示す組み合わせの少なくとも1つである、請求項1に記載の研磨用組成物。 【請求項5】(削除) 【請求項6】(削除) 【請求項7】 前記化合物は、ハロゲン化アルコールである、請求項1、2、4のいずれか1項に記載の研磨用組成物。 【請求項8】 前記化合物の含有量は、1mM以上50mM以下である、請求項1、2、4、7のいずれか1項に記載の研磨用組成物。 【請求項9】 pHが7未満である、請求項1、2、4、7、8のいずれか1項に記載の研磨用組成物。 【請求項10】 酸化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する用途で用いられる、請求項1、2、4、7~9のいずれか1項に記載の研磨用組成物。 【請求項11】 砥粒と、一分子中に下記表Iの(1)、(3)、(14)、(15)、(21)、(37)、(39)および(56)に示す電子求引部および電子供与部の組み合わせの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)と、分散媒と、を混合することを含む、研磨用組成物の製造方法であって、 前記砥粒は、コロイダルシリカを含み、 前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない、研磨用組成物の製造方法。 【表5】 [図:0001417623000013.jpg] 【請求項12】 請求項1、2、4、7~10のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて、研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法。 【請求項13】 請求項12に記載の研磨方法を有する、半導体基板の製造方法。」 第4 申立理由の概要 申立人は、証拠として甲第1号証~甲第13号証(以下、「甲1」~「甲13」という。)を提出し、以下の理由により、本件請求項1~13に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 1 申立理由1(新規性) (1)本件請求項1~6、9~13に係る発明は、甲1に記載された発明であり、 (2)本件請求項1~13に係る発明は、甲2に記載された発明であり、 (3)本件請求項1、3、8~13に係る発明は、甲3に記載された発明であり、 (4)本件請求項1、3、8~13に係る発明は、甲4に記載された発明であり、 (5)本件請求項1、3、8、10~13に係る発明は、甲5に記載された発明であり、 (6)本件請求項1、3、8、10~13に係る発明は、甲6に記載された発明であり、 (7)本件請求項1、3、11、12に係る発明は、甲7に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2 申立理由2(進歩性) (1)本件請求項1~6、9~13に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、 (2)本件請求項1~13に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (3)本件請求項1、3、8~13に係る発明は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (4)本件請求項1、3、8~13に係る発明は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (5)本件請求項1、3、8、10~13に係る発明は、甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (6)本件請求項1、3、8、10~13に係る発明は、甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (7)本件請求項1、3、11、12に係る発明は、甲7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 申立理由3(サポート要件) 本件請求項1~13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件請求項1~13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 4 申立理由4(明確性) 本件請求項1~3、7~13に係る発明は、明確でないから、本件請求項1~3、7~13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 [証拠方法] 甲1:国際公開第2011/096331号 甲2:特開2005-26604号公報 甲3:特開2013-251561号公報 甲4:特開2016-69438号公報 甲5:国際公開第2018/055985号 甲6:特開2017-57263号公報 甲7:特開2015-90922号公報 甲8:日本化学会編、「化学便覧 基礎編II 改訂4版」、丸善株式会社、平成5年9月30日、II-347~II-350ページ、II-378~II-381ページ、 甲9:都野雄甫、「Hammett則」、有機合成化学、第23巻、第8号、1965年、631~642ページ 甲10:湯川泰秀編、「理論有機化学(反応編)」、株式会社化学同人、1974年11月1日、63~85ページ 甲11:杉森彰著、「演習有機化学」、株式会社サイエンス社、昭和58年6月10日、36~41ページ 甲12:CORWIN HANSCH, et al.,“A Survey of Hammett Substituent Constants and Resonance and Field Parameters”,Chemical Reviews,1991,Vol.91,No.2,165~195ページ 甲13:Oliver Bruegner(当審注:「Bruegner」の「ue」はuウムラウトである。), et al., “Substituent Correlations Characterized by Hammett Constants in the Spiropyran-Merocyanine Transition”, The Journal of Physical Chemistry A,2017,121,13,2683~2687ページ 第5 取消理由の概要 当審において、令和6年1月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1 取消理由1(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~13の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 取消理由2(明確性) 本件特許は、特許請求の範囲の請求項3~10、12、13の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 取消理由3(新規性) (1)本件請求項1~6、10~13に係る発明は、甲1に記載された発明であり、 (2)本件請求項1、3、8~13に係る発明は、甲3に記載された発明であり、 (3)本件請求項1、3、8~13に係る発明は、甲4に記載された発明であり、 (4)本件請求項1、3、8、10~13に係る発明は、甲5に記載された発明であり、 (5)本件請求項1、3、11~13に係る発明は、甲6に記載された発明であり、 (6)本件請求項1、3、11、12に係る発明は、甲7に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1~6、8~13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 4 取消理由4(進歩性) (1)本件請求項1~6、9~13に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (2)本件請求項1~7、9~13は、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (3)本件請求項1、3、8~13は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (4)本件請求項1、3、8~13は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (5)本件請求項1、3、8、10~13は、甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (6)本件請求項1、3、9、11~13は、甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (7)本件請求項1、3、11、12は、甲7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第6 取消理由1(サポート要件)、申立理由3(サポート要件)について 1 本件訂正により訂正された明細書(以下、「訂正明細書」という。)には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 「【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0006】 したがって、本発明は、研磨対象物を高い研磨速度で研磨することができる手段を提供することを目的とする。」 「【発明を実施するための形態】 【0009】 本発明は、砥粒と、一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物と、分散媒と、を含む、研磨用組成物である。当該研磨用組成物によれば、研磨対象物を高い研磨速度で研磨することができる。 【0010】 本発明の研磨用組成物により上記効果が得られる理由の詳細は不明であるが、下記のようなメカニズムが考えられる。ただし、下記メカニズムはあくまで推測であり、これによって本発明の範囲が限定されることはない。 【0011】 一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物は、その分子中に分極を有している。この分極が研磨対象物に対して何らかの化学的作用をすることにより、研磨対象物が機械的作用によって除去しやすい形態となり、研磨速度を向上させることができると考えられる。」 「【0015】 [砥粒] 本発明の研磨用組成物に使用される砥粒の種類としては、特に制限されず、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の酸化物が挙げられる。該砥粒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。該砥粒は、それぞれ市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。 【0016】 砥粒の種類としては、好ましくはシリカであり、より好ましくはコロイダルシリカである。・・・」 「【0034】 本発明の効果をより効率的に得るという観点から、上記電子求引部は、-NO2基(ニトロ基)、-SO2CH3基(メタンスルホニル基)、-CN基(シアノ基)、-CnF2n+1基(nは1~8の整数)、-Cm+1F3m構造を有する基(mは1~8の整数)、-COCH3基(アセチル基)、-CHO基(ホルミル基)、-F基(フルオロ基)、および-Cl基(クロロ基)、および-Br基(ブロモ基)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。 【0035】 本発明の効果をより効率的に得るという観点から、上記電子供与部は、-N(CH3)2基(ジメチルアミノ基)、-NH2基(アミノ基)、-OH基(ヒドロキシ基)、-OCH3基(メトキシ基)および-CH3基(メチル基)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。」 「【0060】 [その他の添加剤] 本発明の研磨用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、キレート剤、増粘剤、酸化剤、分散剤、表面保護剤、濡れ剤、界面活性剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤等の公知の添加剤をさらに含有してもよい。上記添加剤の含有量は、その添加目的に応じて適宜設定すればよい。 【0061】 ただし、本発明の研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しないことが好ましい。ここでいう酸化剤の具体例としては、過酸化水素(H2O2)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等が挙げられる。なお、「研磨用組成物が酸化剤を実質的に含有しない」とは、少なくとも意図的には酸化剤を含有させないことをいう。したがって、原料や製法等に由来して微量の酸化剤が不可避的に含まれている研磨用組成物は、ここでいう酸化剤を実質的に含有しない研磨用組成物の概念に包含され得る。例えば、研磨用組成物中における酸化剤のモル濃度が0.0005モル/L以下、好ましくは0.0001モル/L以下、より好ましくは0.00001モル/L以下、特に好ましくは0.000001モル/L以下である。」 「【0071】 <研磨用組成物の調製> (実施例1) 砥粒としてコロイダルシリカ(平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径70nm、平均会合度2.0)を、研磨用組成物の総質量を100質量%として1質量%の濃度となるように水に加えた。さらに、pH調整剤として乳酸を、pHが3となるように添加した。その後、室温(25℃)で30分攪拌混合し、研磨用組成物を調製した。 ・・・ 【0073】 (実施例2~11、比較例1~3) 電子求引部および電子供与部を有する化合物の種類および添加量、ならびにpHを下記表4のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、各研磨用組成物を調製した。 ・・・ 【0080】 【表5】 [図:0001417623000014.jpg] 」 2 本件発明が解決しようとする課題 発明の詳細な説明の【0006】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「研磨対象物を高い研磨速度で研磨することができる手段を提供すること」(以下、「本件課題」という。)である。 3 本件発明が、訂正明細書に記載された発明であって、訂正明細書の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できるか否かについて (1)ア 訂正明細書の【0009】~【0011】には、砥粒と、一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物と、分散媒と、を含む、本件発明の研磨用組成物によれば、研磨対象物を高い研磨速度で研磨することができること(【0009】)、本件発明の研磨用組成物により上記効果が得られる理由の詳細は不明であるが(【0010】)、一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物は、その分子中に分極を有しており、この分極が研磨対象物に対して何らかの化学的作用をすることにより、研磨対象物が機械的作用によって除去しやすい形態となり、研磨速度を向上させることができるとのメカニズムが考えられること(【0011】)、ただし、当該メカニズムはあくまで推測であり、これによって本件発明の範囲が限定されることはないこと(【0010】)が記載されている。 イ 訂正明細書の【0015】、【0016】には、本発明の研磨用組成物に使用される砥粒の種類としてはシリカが挙げられ、より好ましくはコロイダルシリカであることが記載されている。 ウ 訂正明細書の【0034】には、本発明の効果をより効率的に得るという観点から、上記電子求引部は、-NO2基、-CN基、-CnF2n+1基(nは1~8の整数)、-COCH3基、及び、-Cl基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましいこと、同【0035】には、本発明の効果をより効率的に得るという観点から、上記電子供与部は、-N(CH3)2基、-NH2基、及び、-OH基(ヒドロキシ基)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましいことが記載されている。 エ 訂正明細書の【0061】には、本発明の研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しないことが好ましいことが記載されている。 オ 上記ア~エによれば、砥粒と、一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物と、分散媒と、を含む研磨用組成物であって、 砥粒は、コロイダルシリカを含み、 電子求引部は、-NO2基、-CN基、-CnF2n+1基(nは1~8の整数)、-COCH3基、及び、-Cl基からなる群より選択される少なくとも1種であり、 電子供与部は、-N(CH3)2基、-NH2基、及び、-OH基(ヒドロキシ基)からなる群より選択される少なくとも1種であり、 酸化剤を実質的に含まない、研磨用組成物(以下、「訂正明細書に記載された発明」という。)は、研磨対象物を高い研磨速度で研磨することができる、すなわち、上記本件課題を解決し得るといえ、このことは、訂正明細書の【0080】の【表5】「表4」における実施例1~実施例11において裏付けられている。 といえる。 (2)ここで、本件発明1と上記訂正明細書に記載された発明とは、同様の内容であるといえる。 そうすると、本件発明1は、訂正明細書に記載された発明であって、上記本件課題を解決し得るものである。 また、本件発明2、4は、訂正明細書の【0038】、【0039】の【表2-1】「表1」及び【0040】の【表2-2】「表1の続き」に記載され、本件発明7は、同【0048】に記載され、本件発明8は、同【0049】に記載され、本件発明9は、同【0052】に記載され、本件発明10は、同【0014】に記載され、本件発明12、13は、同【0064】に記載されているから、本件発明2、4、7~10、12、13は、訂正明細書に記載された発明である。 そして、本件発明2、4、7~10、12、13は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、上記本件課題を解決し得るものである。 さらに、本件発明11は、本件発明1に対応する方法の発明であるから、本件発明1と同様の理由により、訂正明細書に記載された発明であって、上記本件課題を解決し得るものであるといえる。 したがって、本件発明1、2、4、7~10、12、13は、訂正明細書に記載された発明であって、訂正明細書の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できるものである。 4 まとめ 以上のとおりであるから、請求項1、2、4、7~13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 したがって、取消理由1及び申立理由3には、理由がない。 第7 取消理由2(明確性)、申立理由4(明確性)について 1 訂正前の請求項3の記載は、「前記電子供与部は、-N(CH3)2基、-NH2基、-OH基、-OCH3基、-CH3基、および-C6H5基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。」であって、電子供与部である置換基を特定するものであるところ、その置換基の中に、電子供与部でない-C6H5基が含まれており明確でなかった。 しかし、本件訂正により、請求項3は削除された。 2 また、上記第2 2(13)の検討を参酌すると、発明の詳細な説明の【0031】の記載は、本件訂正により明確となり、同【0032】の【表1】の表Aの記載は、本件訂正により削除された。 3 申立人の主張 申立人は、特許異議申立書の76ページ11~21行において、本件明細書には、「代表的な置換基について、日本化学会編『化学便覧 基礎編II 改訂4版』(平成5年9月30日、丸善株式会社発行)に記載されている置換基定数(σp0の値を下記表Aに示す。なお、本発明においては、上記文献に置換基定数(σp0の値が記載されている基については、その値を用いるものとし・・・」と記載されているが(【0031】)、本件明細書の【表1】(表A)(【0032】)に記載されている置換基定数σp0の値は、「化学便覧 基礎編II 改訂4版」に記載されている値と一致しない(甲8)から、本件特許において参照すべき置換基定数σp0は不明というべきであり、「電子求引部」及び「電子供与部」を一意に決定することができないから、本件発明1~3及び7~13は明確でない旨主張している。 しかし、上記2で検討したとおり、発明の詳細な説明の【0031】の記載は、本件訂正により明確となり、同【0032】の【表1】表Aの記載は、本件訂正により削除されたから、本件特許において参照すべき置換基定数σp0は、日本化学会編『化学便覧 基礎編II 改訂4版』(平成5年9月30日、丸善株式会社発行)のII-347~348ページ(甲8)に記載されている置換基定数であって、本件発明の「電子求引部」及び「電子供与部」は一意に決定することができる。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、請求項1、2、4、7~13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 したがって、取消理由2及び申立理由4には、理由がない。 第8 取消理由3(新規性)、取消理由4(進歩性)、申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について 1 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明 (1)甲1(国際公開第2011/096331号) 甲1の[0001] 、[0017]、[0028]、[0029]、[0081]~[0087]([表1]~[表6])の実施例4、13、22、23、25、[0136]の記載によれば、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「砥粒としてコロイダルシリカ20重量%、 水溶液中で水素イオンを放出する電解質または電解質の塩からなる添加剤として、グリコール酸0.5重量%、アスパラギン酸0.5重量%、アスパラギン0.5重量%、メチルスルホン酸0.5重量%、乳酸0.5重量%、アラニン0.5重量%、酒石酸0.5重量%、又は、クエン酸0.5重量%、 pH調整剤であるアンモニア、及び、 水からなり、 シリコン酸化物(SiOx(0<x≦2))を研磨する用途に用いられる、研磨用組成物。」(以下、「甲1物発明」という。) (2)甲2(特開2005-26604号公報) 甲2の【0008】、【0013】~【0015】、【0027】、【0028】、【0030】~【0032】の記載によれば、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「(A)砥粒としてシリカ粒子、 (B)2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール及び2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミドからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物、 (C)上記(B)成分以外の有機成分として、水溶性重合体、界面活性剤及び有機酸から選択される少なくとも一種成分、及び、 水系媒体を含み、 さらにpHを調整するための有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を含んでおり、pHは4~10である化学機械研磨用水系分散体であって、 (B)2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール及び2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミドからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物の配合量は、水系分散体の全量を100質量%とした場合に、0.0002~0.2質量%であり、 酸化シリコンを含む被研磨材を研磨する用途で用いられる、化学機械研磨用水系分散体。」(以下、「甲2物発明」という。) (3)甲3(特開2013-251561号公報) 甲3の【0012】、【0024】【0028】、【0030】の参考例1~21及び参考例22~26、【0033】(【表1】)の参考例18~21、【0035】の参考例101~123、【0036】、【0038】(【表3】)の参考例107~112、117の記載によれば、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。 「コロイダルシリカである砥粒、 窒素含有化合物として、0.05mol/Lのグリシン、0.05mol/Lのアラニン、0.05mol/Lのパリン、0.05mol/LのN-メチルグリシンのいずれか、又は、両性界面活性剤として、0.02g/Lのアルキル(C12~C14)ジメチルアミノ酢酸ベタイン、0.02g/Lのラウリルヒドロキシスルホベタイン、0.02g/Lのラウリルアミノプロピオン酸のいずれか、pH調整剤、及び、水を含む、研磨用組成物であって、 研磨用組成物は、酸化剤を含有せず、 窒素含有化合物を含む場合のpHは5.0であり、 両性界面活性剤が、アルキル(C12~C14)ジメチルアミノ酢酸ベタインの場合のpHは2.0~6.5であり、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウリルアミノプロピオン酸の場合のpHは5.0であり、 シリコン基板の上に形成された酸化シリコン膜を研磨する用途で使用される、研磨用組成物。」(以下、「甲3物発明」という。) (4)甲4(特開2016-69438号公報) 甲4の【0008】、【0009】、【0018】、【0048】、【0052】(【表1】)の実施例1、2の記載によれば、甲4には、以下の発明が記載されていると認められる。 「表面にスルホン酸を固定化したコロイダルシリカと、有機酸と、共役塩基と、液状媒体である水とを混合した研磨用組成物であって、 有機酸はクエン酸、共役塩基はクエン酸アンモニウム、研磨用組成物のpHは5.16である、又は、有機酸は酢酸、共役塩基は酢酸アンモニウム、研磨用組成物のpHは5.26であり、 研磨用組成物中の有機酸の含有量(濃度)は、0.01g/L以上100g/L以下であり、 二酸化ケイ素を研磨する用途で用いられる、研磨用組成物。」(以下、「甲4物発明」という。) (5)甲5(国際公開第2018/055985号) 甲5の[0001]、[0065]の実施例1、[0066]の実施例2~6、[0080]([表1])の記載によれば、甲5には、以下の発明が記載されていると認められる。 「水に、砥粒としてのコロイダルシリカ、研磨促進剤としてのシステイン0.05mol/L、pH調整剤としての水酸化カリウムをそれぞれ加えて混合した、研磨用組成物であって、 研磨用組成物のpHは10.5であり、 シリカを含む研磨対象物を研磨する用途で用いられる、研磨用組成物。」(以下、「甲5物発明」という。) (6)甲6(特開2017-57263号公報) 甲6の【0002】、【0015】、【0066】、【0068】の実施例2~9、【0071】の実施例12の記載によれば、甲6には、以下の発明が記載されていると認められる。 「砥粒、第4級アンモニウム塩、界面活性剤、及び水を混合した研磨用組成物であって、 砥粒はコロイダルシリカであり、第4級アンモニウム塩はベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドであり、界面活性剤はラウリル硫酸アンモニウムであり、 研磨用組成物中の砥粒の濃度は2.0質量%であり、 研磨用組成物中のラウリル硫酸アンモニウムの濃度は0.10質量%であり、 研磨用組成物のpHは10.0である、研磨用組成物。」(以下、「甲6物発明」という。) (7)甲7(特開2015-90922号公報) 甲7の【0001】、【0022】、【0050】の[実施例1]の記載によれば、甲7には、以下の発明が記載されていると認められる。 「砥粒としてのコロイダルシリカ3.0質量%、アンモニア水(NH3として)0.56質量%、グリシン5.0質量%、アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン1.20質量%、消泡剤0.01質量%、DI水 残を配合した研磨組成物であって、 pHは9.37である、研磨組成物。」(以下、「甲7物発明」という。) 2 甲1に記載された発明を主引用発明とした新規性、進歩性について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1物発明とを対比する。 (ア)甲1物発明の「砥粒」は、「コロイダルシリカ」であるから、本件発明1と甲1物発明とは、「砥粒」を含み、「前記砥粒は、コロイダルシリカを含」む点で一致する。 (イ)甲1物発明は「水溶液中で水素イオンを放出する電解質または電解質の塩からなる添加剤として、グリコール酸0.5重量%、アスパラギン酸0.5重量%、アスパラギン0.5重量%、メチルスルホン酸0.5重量%、乳酸0.5重量%、アラニン0.5重量%、酒石酸0.5重量%、又は、クエン酸0.5重量%」を含むものである。 a グリコール酸について グリコール酸は、-COOH基及び-OH基を有するものである。 そして、-COOH基は、甲9の634ページの表2、甲10の68ページの表4-2の記載によれば、置換基定数σpは正の値であるから、電子求引部である。 一方、-OH基は、訂正明細書【0039】の【表2-1】「表1」に記載されているとおり、電子供与部である。 そうすると、甲1物発明の「グリコール酸」は、一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)であるといえる。 b アスパラギン酸について アスパラギン酸は、-COOH基及び-OH基を有するものである。 そして、-COOH基は、上記aで検討したとおり、電子求引部である。 一方、-OH基は、上記aで検討したとおり、電子供与部である。 そうすると、甲1物発明の「アスパラギン酸」は、一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)であるといえる。 c アスパラギンについて アスパラギンは、-COOH基、-CONH2基及び-OH基を有するものである。 そして、-COOH基は、上記aで検討したとおり、電子求引部であり、-CONH2基は、甲8のII-347ページの記載によれば、置換基定数σp0は0.31(正の値)であるから電子求引部である。 一方、-OH基は、上記aで検討したとおり、電子供与部である。 そうすると、甲1物発明の「アスパラギン」は、一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)であるといえる。 d メチルスルホン酸について メチルスルホン酸は、-SO2CH3基及び-OH基を有するものである。 そして、-SO2CH3基は、訂正明細書【0039】の【表2-1】「表1」に記載されているとおり、電子求引部である。 一方、-OH基は、上記aで検討したとおり、電子供与部である。 そうすると、甲1物発明の「メチルスルホン酸」は、一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)であるといえる。 e 乳酸 甲1物発明の「乳酸」は、-COOH基、-OH基及び-CH3基を有するものである。 そして、-COOH基は、上記aで検討したとおり、電子求引部である。 一方、-OH基は、上記aで検討したとおり、電子供与部であり、-CH3基は、訂正明細書【0039】の【表2-1】「表1」に記載されているとおり、電子供与部である。 したがって、甲1物発明の「乳酸」は、一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)であるといえる。 f アラニン アラニンは、-COOH基、-NH2基及び-CH3基を有するものである。 そして、-COOH基は、上記aで検討したとおり、電子求引部である。 一方、-NH2基及び-CH3基は、訂正明細書【0039】の【表2-1】「表1」に記載されているとおり、いずれも電子供与部である。 そうすると、甲1物発明の「アラニン」は、一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)であるといえる。 g 酒石酸 酒石酸は、-COOH基及び-OH基を有するものである。 そして、-COOH基は、上記aで検討したとおり、電子求引部である。 一方、-OH基は、上記aで検討したとおり、電子供与部である。 そうすると、甲1物発明の「酒石酸」は、一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)であるといえる。 h クエン酸 クエン酸は、-COOH基及び-OH基を有するものである。 そして、-COOH基は、上記aで検討したとおり、電子求引部である。 一方、-OH基は、上記aで検討したとおり、電子供与部である。 そうすると、甲1物発明の「クエン酸」は、一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)であるといえる。 i 以上によれば、本件発明1と甲1物発明とは、「一分子中に」「電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)」を含む点で共通する。 (ウ)本件発明1の「分散媒」について、発明の詳細な説明の【0050】には、「分散媒としては、有機溶媒、水が挙げられるが、その中でも水を含むことが好ましい。」と記載されているから、甲1物発明の「水」は、本件発明1の「分散媒」に相当する。 (エ)甲1物発明の「研磨用組成物」は、本件発明1の「研磨用組成物」に相当し、また、甲1物発明の「研磨用組成物」は、「砥粒」、「水溶液中で水素イオンを放出する電解質または電解質の塩からなる添加剤」、「pH調整剤であるアンモニア」、及び「水」からなるものであるから、酸化剤を含有しない。 したがって、本件発明1と甲1物発明とは、「前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない」点で一致する。 (オ)以上によれば、本件発明1と甲1物発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「砥粒と、 一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)と、 分散媒と、 を含む、研磨用組成物であって、 前記砥粒は、コロイダルシリカを含み、 前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない、研磨用組成物。」 <相違点> 相違点1:一分子中に電子求引部および電子供与部の組み合わせの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)について、本件発明1は、「下記表Iの(1)、(3)、(14)、(15)、(21)、(37)、(39)および(56)に示す」 「【表4】 [図:0001417623000015.jpg] 」化合物(以下、「本件化合物」という。)であるのに対し、甲1物発明は、「グリコール酸」、「アスパラギン酸」、「アスパラギン」、「メチルスルホン酸」、「乳酸」、「アラニン」、「酒石酸」、又は、「クエン酸」である点。 イ 相違点についての判断 (ア)甲1物発明の「水溶液中で水素イオンを放出する電解質または電解質の塩からなる添加剤」である「グリコール酸」、「アスパラギン酸」、「アスパラギン」、「メチルスルホン酸」、「乳酸」、「アラニン」、「酒石酸」、又は、「クエン酸」は、いずれも、本件発明1の「本件化合物」ではないから、相違点1は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲1物発明ではない。 (イ)甲1には、「水溶液中で水素イオンを放出する電解質または電解質の塩からなる添加剤」である「グリコール酸」、「アスパラギン酸」、「アスパラギン」、「メチルスルホン酸」、「乳酸」、「アラニン」、「酒石酸」、又は、「クエン酸」に換えて「本件化合物」を用いることについて記載も示唆もされていない。 また、研磨用組成物において、「水溶液中で水素イオンを放出する電解質または電解質の塩からなる添加剤」である「グリコール酸」、「アスパラギン酸」、「アスパラギン」、「メチルスルホン酸」、「乳酸」、「アラニン」、「酒石酸」、又は、「クエン酸」に換えて「本件化合物」を用いることが記載又は示唆されている証拠は示されていない。 したがって、甲1物発明において、「水溶液中で水素イオンを放出する電解質または電解質の塩からなる添加剤」である「グリコール酸」、「アスパラギン酸」、「アスパラギン」、「メチルスルホン酸」、「乳酸」、「アラニン」、「酒石酸」、又は、「クエン酸」に換えて「本件化合物」を用いること、すなわち、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得るものであるとはいえない。 ウ 小括 以上から、本件発明1は、甲1物発明ではないし、甲1物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2、4、7~13について 本件発明2、4、7~10、12、13は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1物発明ではないし、甲1物発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 また、本件発明11は、本件発明1に対応する方法の発明であり、相違点1に係る本件発明1と同様の構成を有しているから、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 3 甲2に記載された発明を主引用発明とした場合について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2物発明とを対比する。 (ア)甲2物発明の「砥粒」は、本件発明1の「砥粒」に相当する。 (イ)甲2物発明は、「(B)2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール及び2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミドからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物」を含むものであるところ、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールは、いずれも、-NO2基、-Br基及び-OH基を有するものである。 そして、-NO2基は、訂正明細書【0039】の【表2-1】の「表1」に記載されているとおり、電子求引部であり、-Br基は、訂正明細書【0040】の【表2-2】の「表1の続き」に記載されているとおり、電子求引部である。 一方、-OHは、上記2(1)ア(イ)aで検討したとおり、電子供与部である。 そうすると、甲2物発明の「2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール」、「2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオール」、「2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール」は、いずれも、一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物であるといえる。 したがって、本件発明1と甲2物発明とは、「一分子中に」「電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物」を含む点で共通する。 (ウ)上記2(1)ア(ウ)の検討を参酌すると、甲2物発明の「水系媒体」は、本件発明1の「分散媒」に相当する。 (エ)甲2物発明の「化学機械研磨用水系分散体」は、本件発明1の「研磨用組成物」に相当し、また、甲2物発明の「化学機械研磨用水系分散体」は、酸化剤を含有しないから、本件発明1と甲2物発明とは、「前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない」点で一致する。 (オ)以上によれば、本件発明1と甲2物発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「砥粒と、 一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物と、 分散媒と、を含む、研磨用組成物であって、 前記砥粒は、コロイダルシリカを含み、 前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない、研磨用組成物。」 <相違点> 相違点2-1:一分子中に電子求引部および電子供与部の組み合わせの少なくとも1つを有する化合物について、本件発明1は、「本件化合物」であるのに対し、甲2物発明は、「2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール及び2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミドからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物」である点。 相違点2-2:本件発明1は、「前記砥粒は、コロイダルシリカを含み」との構成を有しているのに対し、甲2物発明は、そのような構成を備えていない点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点2-1について、甲2物発明の「2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール」は、いずれも、本件発明1の本件化合物から除かれているから、相違点2-1は実質的な相違点である。 したがって、相違点2-2について判断するまでもなく、本件発明1は、甲2物発明ではない。 (イ)甲2には、「2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール」に換えて「本件化合物」を用いることについて記載も示唆もされていない。 また、化学機械研磨用水系分散体において、「2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール」に換えて「本件化合物」を用いることが記載されている証拠は示されていない。 したがって、甲2物発明において、「2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール」に換えて「本件化合物」を用いること、すなわち、相違点2-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得るものであるとはいえない。 よって、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2物発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 ウ 小括 以上から、本件発明1は、甲2物発明ではないし、甲2物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2、4、7~13について 本件発明2、4、7~10、12、13は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2物発明ではないし、甲2物発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 また、本件発明11は、本件発明1に対応する方法の発明であり、相違点2-1に係る本件発明1と同様の構成を有しているから、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 4 甲3に記載された発明を主引用発明とした場合について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3物発明とを対比する。 (ア)甲3物発明の「砥粒」は、「コロイダルシリカ」であるから、本件発明1と甲3物発明とは、「砥粒」を含み、「前記砥粒は、コロイダルシリカを含」む点で一致する。 (イ)甲3物発明は、「窒素含有化合物として、0.05mol/Lのグリシン、0.05mol/Lのアラニン、0.05mol/Lのパリン、0.05mol/LのN-メチルグリシン、又は、両性界面活性剤として、0.02g/Lのアルキル(C12~C14)ジメチルアミノ酢酸ベタイン、0.02g/Lのラウリルヒドロキシスルホベタイン、0.02g/Lのラウリルアミノプロピオン酸」を含むものであるところ、グリシン、アラニン、パリンは、いずれも-COOH基、-NH2基を有するものであり、N-メチルグリシン、アルキル(C12~C14)ジメチルアミノ酢酸ベタインは、いずれも-COOH基、-CH3基を有するものであり、ラウリルヒドロキシスルホベタインは、-SO3H基、-OH基及び-CH3基を有するものであり、ラウリルアミノプロピオン酸は、-COOH基、-CH3基を有するものである。 そして、-COOH基は、上記2(1)ア(イ)aで検討したとおり、電子求引部である。 一方、-NH2基及び-CH3基は、上記2(1)ア(イ)fで検討したとおり、いずれも電子供与部であり、-OH基は、上記2(1)ア(イ)aで検討したとおり、電子供与部である。 そうすると、甲3物発明の「グリシン」、「アラニン」、「パリン」、「N-メチルグリシン」、「アルキル(C12~C14)ジメチルアミノ酢酸ベタイン」、「ラウリルヒドロキシスルホベタイン」、「ラウリルアミノプロピオン酸」は、いずれも、一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物であるといえる。 したがって、本件発明1と甲3物発明とは、「一分子中に」「電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)」を含む点で共通する。 (ウ)上記2(1)ア(ウ)の検討を参酌すると、甲3物発明の「水」は、本件発明1の「分散媒」に相当する。 (エ)甲3物発明の「研磨用組成物」は、本件発明1の「研磨用組成物」に相当し、また、甲3物発明の「研磨用組成物」は、「酸化剤を含有」していないから、本件発明1と甲3物発明とは、「前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない」点で一致する。 (オ)以上によれば、本件発明1と甲3物発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「砥粒と、 一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物と、 分散媒と、を含む、研磨用組成物であって、 前記砥粒は、コロイダルシリカを含み、 前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない、研磨用組成物。」 <相違点> 相違点3:一分子中に電子求引部および電子供与部の組み合わせの少なくとも1つを有する化合物について、本件発明1は、「本件化合物」であるのに対し、甲3物発明は、「グリシン」、「アラニン」、「パリン」、「N-メチルグリシン」、「アルキル(C12~C14)ジメチルアミノ酢酸ベタイン」、「ラウリルヒドロキシスルホベタイン」、「ラウリルアミノプロピオン酸」である点。 イ 相違点についての判断 (ア)甲3物発明の「窒素含有化合物」である「グリシン」、「アラニン」、「パリン」、「N-メチルグリシン」、「アルキル(C12~C14)ジメチルアミノ酢酸ベタイン」、「ラウリルヒドロキシスルホベタイン」、「ラウリルアミノプロピオン酸」は、いずれも、本件発明1の「本件化合物」ではないから、相違点3は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲3物発明ではない。 (イ)甲3には、「窒素含有化合物」である「グリシン」、「アラニン」、「パリン」、「N-メチルグリシン」、「アルキル(C12~C14)ジメチルアミノ酢酸ベタイン」、「ラウリルヒドロキシスルホベタイン」、「ラウリルアミノプロピオン酸」に換えて「本件化合物」を用いることについて記載も示唆もされていない。 また、研磨用組成物において、「窒素含有化合物」である「グリシン」、「アラニン」、「パリン」、「N-メチルグリシン」、「アルキル(C12~C14)ジメチルアミノ酢酸ベタイン」、「ラウリルヒドロキシスルホベタイン」、「ラウリルアミノプロピオン酸」に換えて「本件化合物」を用いることが記載又は示唆されている証拠は示されていない。 したがって、甲3物発明において、「窒素含有化合物」である「グリシン」、「アラニン」、「パリン」、「N-メチルグリシン」、「アルキル(C12~C14)ジメチルアミノ酢酸ベタイン」、「ラウリルヒドロキシスルホベタイン」、「ラウリルアミノプロピオン酸」に換えて「本件化合物」を用いること、すなわち、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得るものであるとはいえない。 ウ 小括 以上から、本件発明1は、甲3物発明ではないし、甲3物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2、4、7~13について 本件発明2、4、7~10、12、13は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲3物発明ではないし、甲3物発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 また、本件発明11は、本件発明1に対応する方法の発明であり、相違点3に係る本件発明1と同様の構成を有しているから、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 5 甲4に記載された発明を主引用発明とした場合について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲4物発明とを対比する。 (ア)甲4の【0006】には、「砥粒は表面に有機酸を固定化したシリカであってもよい」と記載されているから、甲4物発明の「表面にスルホン酸を固定化したコロイダルシリカ」は砥粒であるといえる。 したがって、甲4物発明の「表面にスルホン酸を固定化したコロイダルシリカ」は、本件発明1の「砥粒」に相当し、本件発明1と甲4物発明とは、「砥粒」を含み、「前記砥粒は、コロイダルシリカを含」む点で一致する。 (イ)甲4物発明の「有機酸」は、「クエン酸」又は「酢酸」であるところ、クエン酸は、-COOH基、-OH基を有し、酢酸は、-COOH基、-CH3基を有するものである。 そして、-COOH基は、上記2(1)ア(イ)aで検討したとおり、電子求引部である。 一方、-CH3基は、上記2(1)ア(イ)fで検討したとおり、電子供与部であり、-OH基は、上記2(1)ア(イ)aで検討したとおり、電子供与部である。 そうすると、甲4物発明の「クエン酸」、「酢酸」は、いずれも、一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物であるといえる。 したがって、本件発明1と甲4物発明とは、「一分子中に」「電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)」を含む点で共通する。 (ウ)上記2(1)ア(ウ)の検討を参酌すると、甲4物発明の「液状媒体である水」は、本件発明1の「分散媒」に相当する。 (エ)甲4物発明の「研磨用組成物」は、本件発明1の「研磨用組成物」に相当し、また、甲4物発明の「研磨用組成物」は、酸化剤を含有しないから、本件発明1と甲4物発明とは、「前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない」点で一致する。 (オ)以上によれば、本件発明1と甲4物発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「砥粒と、 一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物と、 分散媒と、を含む、研磨用組成物であって、 前記砥粒は、コロイダルシリカを含み、 前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない、研磨用組成物。」 <相違点> 相違点4:一分子中に電子求引部および電子供与部の組み合わせの少なくとも1つを有する化合物について、本件発明1は、「本件化合物」であるのに対し、甲4物発明は、「クエン酸」、「酢酸」である点。 イ 相違点についての判断 (ア)甲4物発明の「有機酸」である「クエン酸」、「酢酸」は、いずれも、本件発明1の「本件化合物」ではないから、相違点4は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲4物発明ではない。 (イ)甲4には、「有機酸」である「クエン酸」、「酢酸」に換えて「本件化合物」を用いることについて記載も示唆もされていない。 また、研磨用組成物において、「有機酸」である「クエン酸」、「酢酸」に換えて「本件化合物」を用いることが記載又は示唆されている証拠は示されていない。 したがって、甲4物発明において、「有機酸」である「クエン酸」、「酢酸」に換えて「本件化合物」を用いること、すなわち、相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得るものであるとはいえない。 ウ 小括 以上から、本件発明1は、甲4物発明ではないし、甲4物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2、4、7~13について 本件発明2、4、7~10、12、13は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲4物発明ではないし、甲4物発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 また、本件発明11は、本件発明1に対応する方法の発明であり、相違点4に係る本件発明1と同様の構成を有しているから、甲4に記載された発明ではないし、甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 6 甲5に記載された発明を主引用発明とした場合について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲5物発明とを対比する。 (ア)甲5物発明の「砥粒」は、「コロイダルシリカ」であるから、本件発明1と甲5物発明とは、「砥粒」を含み、「前記砥粒は、コロイダルシリカを含」む点で一致する。 (イ)甲5物発明は、「研磨促進剤としてのシステイン0.05mol/L」を含むものであるところ、システインは-COOH基、-NH2基を有するものである。 そして、-COOH基は、上記2(1)ア(イ)aで検討したとおり、電子求引部である。 一方、-NH2基は、上記2(1)ア(イ)fで検討したとおり、電子供与部である。 そうすると、甲5物発明の「システイン」は、一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物であるといえる。 したがって、本件発明1と甲5物発明とは、「一分子中に」「電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)」を含む点で共通する。 (ウ)上記2(1)ア(ウ)の検討を参酌すると、甲5物発明の「水」は、本件発明1の「分散媒」に相当する。 (エ)甲5物発明の「研磨用組成物」は、本件発明1の「研磨用組成物」に相当し、また、甲5物発明の「研磨用組成物」は、酸化剤を含有しないから、本件発明1と甲5物発明とは、「前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない」点で一致する。 (オ)以上によれば、本件発明1と甲5物発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「砥粒と、 一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物と、 分散媒と、を含む、研磨用組成物であって、 前記砥粒は、コロイダルシリカを含み、 前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない、研磨用組成物。」 <相違点> 相違点5:一分子中に電子求引部および電子供与部の組み合わせの少なくとも1つを有する化合物について、本件発明1は、「本件化合物」であるのに対し、甲5物発明は、「システイン」である点。 イ 相違点についての判断 (ア)甲5物発明の「研磨促進剤」である「システイン」は、いずれも、本件発明1の「本件化合物」ではないから、相違点5は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲5物発明ではない。 (イ)甲5には、「研磨促進剤」である「システイン」に換えて「本件化合物」を用いることについて記載も示唆もされていない。 また、研磨用組成物において、「研磨促進剤」である「システイン」に換えて「本件化合物」を用いることが記載又は示唆されている証拠は示されていない。 したがって、甲5物発明において、「研磨促進剤」である「システイン」に換えて「本件化合物」を用いること、すなわち、相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得るものであるとはいえない。 ウ 小括 以上から、本件発明1は、甲5物発明ではないし、甲5物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2、4、7~13について 本件発明2、4、7~10、12、13は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲5物発明ではないし、甲5物発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 また、本件発明11は、本件発明1に対応する方法の発明であり、相違点5に係る本件発明1と同様の構成を有しているから、甲5に記載された発明ではないし、甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 7 甲6に記載された発明を主引用発明とした場合について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲6物発明とを対比する。 (ア)甲6物発明の「砥粒」は、「コロイダルシリカ」であるから、本件発明1と甲6物発明とは、「砥粒」を含み、「前記砥粒は、コロイダルシリカを含」む点で一致する。 (イ)甲6物発明は、「界面活性剤」として「ラウリル硫酸アンモニウム」を含むものであるところ、ラウリル硫酸アンモニウムは、-SO3基、-CH3基を有するものである。 そして、-SO3基は、甲8のII-348ページの記載によれば、置換基定数σp0は0.09(正の値)であるから、電子求引部である。 一方、-CH3基は、上記2(1)ア(イ)fで検討したとおり、電子供与部である。 そうすると、甲6物発明の「ラウリル硫酸アンモニウム」は、一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物であるといえる。 したがって、本件発明1と甲6物発明とは、「一分子中に」「電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)」を含む点で共通する。 (ウ)上記2(1)ア(ウ)の検討を参酌すると、甲6物発明の「水」は、本件発明1の「分散媒」に相当する。 (エ)甲6物発明の「研磨用組成物」は、本件発明1の「研磨用組成物」に相当し、また、甲6物発明の「研磨用組成物」は、酸化剤を含有しないから、本件発明1と甲6物発明とは、「前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない」点で一致する。 (オ)以上によれば、本件発明1と甲6物発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「砥粒と、 一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物と、 分散媒と、を含む、研磨用組成物であって、 前記砥粒は、コロイダルシリカを含み、 前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない、研磨用組成物。」 <相違点> 相違点6:一分子中に電子求引部および電子供与部の組み合わせの少なくとも1つを有する化合物について、本件発明1は、「本件化合物」であるのに対し、甲6物発明は、「ラウリル硫酸アンモニウム」である点。 イ 相違点についての判断 (ア)甲6物発明の「界面活性剤」である「ラウリル硫酸アンモニウム」は、本件発明1の「本件化合物」ではないから、相違点6は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲6物発明ではない。 (イ)甲6には、「界面活性剤」である「ラウリル硫酸アンモニウム」に換えて「本件化合物」を用いることについて記載も示唆もされていない。 また、研磨用組成物において、「界面活性剤」である「ラウリル硫酸アンモニウム」に換えて「本件化合物」を用いることが記載されている証拠は示されていない。 したがって、甲6物発明において、「界面活性剤」である「ラウリル硫酸アンモニウム」に換えて「本件化合物」を用いること、すなわち、相違点6に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得るものであるとはいえない。 ウ 小括 以上から、本件発明1は、甲6物発明ではないし、甲6物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2、4、7~13について 本件発明2、4、7~10、12、13は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲6物発明ではないし、甲6物発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 また、本件発明11は、本件発明1に対応する方法の発明であり、相違点6に係る本件発明1と同様の構成を有しているから、甲6に記載された発明ではないし、甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 8 甲7に記載された発明を主引用発明とした場合について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲7物発明とを対比する。 (ア)甲7物発明の「砥粒」は、「コロイダルシリカ」であるから、本件発明1と甲7物発明とは、「砥粒」を含み、「前記砥粒は、コロイダルシリカを含」む点で一致する。 (イ)甲7物発明は、「アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン」を含むものであるところ、アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミンは、-SO3基、-CH3基を有するものである。 そして、-SO3基は、上記7(1)ア(イ)で検討したとおり、電子求引部である。 一方、-CH3基は、上記2(1)ア(イ)fで検討したとおり、電子供与部である。 そうすると、甲7物発明の「アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン」は、一分子中に電子求引部および電子供与部を有する化合物であるといえる。 したがって、本件発明1と甲7物発明とは、「一分子中に」「電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物(ただし、アミノアセトニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ブタンジオールおよび2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールのいずれも除く)」を含む点で共通する。 (ウ)上記2(1)ア(ウ)の検討を参酌すると、甲7物発明の「DI水」(イオン交換水)は、本件発明1の「分散媒」に相当する。 (エ)甲7物発明の「研磨組成物」は、本件発明1の「研磨用組成物」に相当し、 また、甲7物発明の「研磨組成物」は、酸化剤を含有しないから、本件発明1と甲7物発明とは、「前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない」点で一致する。 (オ)以上によれば、本件発明1と甲7物発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「砥粒と、 一分子中に電子求引部および電子供与部の組合せの少なくとも1つを有する化合物と、 分散媒と、を含む、研磨用組成物であって、 前記砥粒は、コロイダルシリカを含み、 前記研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しない、研磨用組成物。」 <相違点> 相違点7:一分子中に電子求引部および電子供与部の組み合わせの少なくとも1つを有する化合物について、本件発明1は、「本件化合物」であるのに対し、甲7物発明は、「アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン」である点。 イ 相違点についての判断 (ア)甲7物発明の「アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン」は、本件発明1の「本件化合物」ではないから、相違点7は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲7物発明ではない。 (イ)甲7には、「アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン」に換えて「本件化合物」を用いることについて記載も示唆もされていない。 また、研磨組成物において、「アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン」に換えて「本件化合物」を用いることが記載又は示唆されている証拠は示されていない。 したがって、甲7物発明において、「アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン」に換えて「本件化合物」を用いること、すなわち、相違点7に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得るものであるとはいえない。 ウ 小括 以上から、本件発明1は、甲7物発明ではないし、甲7物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2、4、7~13について 本件発明2、4、7~10、12、13は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲7物発明ではないし、甲7物発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 また、本件発明11は、本件発明1に対応する方法の発明であり、相違点7に係る本件発明1と同様の構成を有しているから、甲7に記載された発明ではないし、甲7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 9 まとめ 以上のとおりであるから、請求項1、2、4、7~13に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではない。 したがって、取消理由3、取消理由4、申立理由1及び申立理由2は、いずれも理由がない。 第9 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2、4、7~13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2、4、7~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項3、5、6は、本件訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3、5、6に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701121

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