特許異議申立
2022-701146
ダイシングダイボンドフィルム
- 審判番号
- 2022-701146
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-190407外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7075326
- 請求日
- 2022年11月18日
- 審決日
- 2023年03月01日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日東電工株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人G-chemical
- 【異議申立人】西郷 新
- 分類
- P1652.121-Y (H01L) / P1652.113-Y (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7075326号発明「ダイシングダイボンドフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7075326号の請求項に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7075326号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成30年10月 5日に出願され、令和 4年 5月17日にその特許権の設定登録がされ、令和 4年 5月25日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1に係る特許に対し、令和 4年11月18日に特許異議申立人西郷新は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1の特許に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、この請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。
「【請求項1】
基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープと、
前記ダイシングテープにおける前記粘着剤層に剥離可能に密着している接着剤層とを備え、
放射線硬化前の前記粘着剤層表面の、温度23℃、周波数100Hzの条件におけるナノインデンテーション法による硬さが0.04~0.8MPaであり、
温度23℃、剥離速度300mm/分の条件でのT型剥離試験における、放射線硬化前の前記粘着剤層と前記接着剤層との間の剥離力が0.3N/20mm以上である、ダイシングダイボンドフィルム。」
第3 申立理由の概要
特許異議申立人西郷新は、主たる証拠として以下の甲第1号証、甲第4号証、及び、従たる証拠として以下の甲第2、3、5号証を提出し、以下のとおり主張する。
1 請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第3号証に基づいて、当業者が容易に想到可能であるので、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1に係る特許を取り消すべきものである。
2 請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1に係る特許を取り消すべきものである。
<証拠一覧>
甲第1号証:特開2018-019022公報
甲第2号証:特開2013-177487号公報
甲第3号証:特開2014-135467号公報
甲第4号証:特開2015-195266号公報
甲第5号証:特開2015-198118号公報
第4 甲号証の記載、甲号証に記載された発明
1 甲第1号証の記載、甲1発明
(1)甲第1号証の記載(下線は合議体が付加した。以下同じ。)
「【0001】
本発明は、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム、及び、半導体装置の製造方法に関する。」
「【0023】
(ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム)
本発明の一実施形態に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムについて、図面を参照しつつ、以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの一例を示す断面模式図である。図1で示されるように、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、基材21上に粘着剤層22が設けられたダイシングテープ2と、フリップチップ型半導体裏面用フィルム40(以下、「半導体裏面用フィルム40」ともいう)とを備える構成である。(略)」
「【0035】
半導体裏面用フィルム40は、半導体ウエハの裏面(回路非形成面)に対して接着性(密着性)を有していることが重要である。半導体裏面用フィルム40は、例えば、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂を含む樹脂組成物により形成することができる。(略)」
「【0118】
[ピックアップ工程]
ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1に接着固定された半導体チップ5を回収する為に、図6で示されるように、半導体チップ5のピックアップを行って、半導体チップ5を半導体裏面用フィルム40とともにダイシングテープ2より剥離させる(工程D)。(略)」
「【実施例】
【0150】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の要旨をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
【0151】
まず、実施例、比較例に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの製造方法について以下に説明する。
(略)
【0152】
(実施例1)
<半導体裏面用フィルムの作製>
(略)
【0153】
<ダイシングテープの作製>
冷却管、窒素導入管、温度計、及び、撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸-2-エチルヘキシル(以下、「2EHA」ともいう)100部、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」ともいう)19部、過酸化ベンゾイル0.4部、及び、トルエン80部を入れ、窒素気流中で60℃にて10時間重合処理をし、アクリル系ポリマーAを得た。
【0154】
アクリル系ポリマーAに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」ともいう)12部を加え、空気気流中で50℃にて60時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。」
「【0164】
(実施例4)
<ダイシングテープの作製>
実施例1で作製したアクリル系ポリマーA’100部(固形分)に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)8部、及び、光重合開始剤(イルガキュア369、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)2部をトルエンに加えて、固形分濃度が28%になるように粘着剤溶液(「粘着剤溶液D」ともいう)を作製した。
【0165】
前記で調製した粘着剤溶液Dを、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱乾燥し、厚さ30μmの粘着剤層Dを形成した。次いで、粘着剤層Dの露出面に、厚さ80μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせ、23℃にて72時間保存し、ダイシングシートDを得た。
「【0181】
[剥離力の測定]
(略)
実施例4、比較例1~3については、作製したダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの半導体裏面用フィルム側にテープ(日東電工(株)製、商品名;BT-315)を常温で貼り合わせ補強した。カッターナイフで20mm幅×120mm長に切断した。その後、ダイシングテープの粘着剤層と半導体裏面用フィルムをチャッキングし、23℃において、引張試験機((株)島津製作所製、商品名;AGS-J)を用いて、剥離速度300mm/min、T型剥離試験で粘着剤層と半導体裏面用フィルムとを引き剥がした際の力(最大荷重、単位:N/20mm)を読み取った。結果を表1に示す。
なお、この剥離力測定は、ダイシング時(ピックアップ時)の剥離力を想定したものである。」
「【0190】
【表1】
[図:0001395265000001.jpg]
」
「【図1】
[図:0001395265000002.jpg]
」
「【図6】
[図:0001395265000003.jpg]
」
(2)甲第1号証の記載事項
上記記載から、甲第1号証には、次の技術的事項が記載されている。
ア ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムであること(【0001】)。
イ ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、基材21上に粘着剤層22が設けられたダイシングテープ2と、フリップチップ型半導体裏面用フィルム40(以下、「半導体裏面用フィルム40」ともいう)とを備える構成であること(【0023】、【図1】)。
ウ 半導体裏面用フィルム40は接着性(密着性)を有し、粘着剤層22に剥離可能に密着していること(【0035】、【0118】、【図1】、【図6】)。
エ 実施例1では、アクリル酸-2-エチルヘキシル(以下、「2EHA」という。)100重量部、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」ともいう)19重量部を加えて得たアクリル系ポリマーAに、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」という。)12重量部を加えてアクリル系ポリマーA’を得ている。
ここで、2EHA(化学式:C11H20O2)の分子量は184.3、HEA(化学式:C5H8O3)の分子量は116、MOI(化学式:C7H9NO3)の分子量は155であるから、実施例1のアクリル系ポリマーA’における各配合物のモル比は、2EHAのモル量を100とすると、HEAが30.2、MOIが14.3となる。
また、実施例4では、実施例1で作製したアクリル系ポリマーA’100重量部(固形分)に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)8重量部を加えた粘着剤溶液Dを用いて粘着剤層Dを形成している。
したがって、実施例4では、アクリル系ポリマーA’における各配合物のモル比が、2EHAのモル量を100とすると、HEAが30.2、MOIが14.3であり、アクリル系ポリマーA’100重量部に対し、コロネートLを8重量部加えた粘着剤溶液を用いて粘着剤層を形成するといえる(【0150】~【0154】、【0164】、【0165】)。
オ ダイシングテープの粘着剤層と半導体裏面用フィルムの剥離力が測定され、その結果を示す【表1】の実施例4のプロセス欄に「UV照射なし」と記載されていることから、実施例4では紫外線照射されていないダイシングテープの粘着剤層と半導体裏面用フィルムの剥離力が測定されているといえる。
したがって、紫外線照射されていないダイシングテープの粘着剤層と半導体裏面用フィルムの剥離力が、23℃、剥離速度300mm/min、T型剥離試験において0.82[N/20mm]であるといえる(【0181】、【0190】、【表1】)。
(3)甲1発明
上記(1)、(2)から、甲第1号証には、実施例4について、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「基材上に粘着剤層が設けられたダイシングテープと、半導体裏面用フィルムとを備え、
半導体裏面用フィルムは粘着剤層に剥離可能に密着しており、
アクリル系ポリマーA’における各配合物のモル比が、2EHAのモル量を100とすると、HEAが30.2、MOIが14.3であり、アクリル系ポリマーA’100重量部に対し、コロネートLを8重量部加えた粘着剤溶液を用いて粘着剤層が形成され、
紫外線照射されていないダイシングテープの粘着剤層と半導体裏面用フィルムの剥離力が、23℃、剥離速度300mm/min、T型剥離試験において0.82[N/20mm]である、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム。」
2 甲第2号証(以下、「甲2文献」という。)の記載
「【0106】
<非粘着層表面の凸部分におけるナノインデンターによる80℃での押し込み硬さの測定>
非粘着層を以下の条件で押し込み試験を行い、その結果から押し込み硬さを求めた。なお、比較例1のように非粘着層を備えない粘着テープにおいては、粘着剤層と反対側の最外層表面について測定した。
(略)
(測定方法)
上記の装置を使用し、室温から80℃に上昇させ1時間保持後、バーコビッチ型ダイヤモンド製圧子を用いて形状像を測定した。次に凸部として観察された部分を上述の圧子で表面から深さ100nmまで垂直に押し込んだ。解析ソフト「Triboscan Ver.9.2.12.0」を用いて、圧子を押し込んだときに得られた変位、荷重と理論的に算出された圧痕面積から表面の押し込み硬さを求めた。また、圧子を除去した後得られた変位、荷重と理論的に算出された圧痕面積から、弾性率を求めた。」
「【0112】
〔実施例1〕
シリコーン樹脂(KS-723A、信越化学工業製)60重量部、シリコーン樹脂(KS-723B、信越化学工業製)40重量部、アクリル共重合ポリマー(メチルメタクリレート(MMA)/ブチルアクリレート(BA)/ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=90/10/10)50重量部、スズ系触媒(Cat-PS3、信越化学工業製)10重量部を、溶液状態で混合して、混合溶液(1)を得た。混合溶液(1)中のシリコーンと(メタ)アクリル系ポリマーの混合比は、重量比で、シリコーン:(メタ)アクリル系ポリマー=2:1であった。また、アクリル共重合ポリマーの計算Tgは67.8℃、SP値は10.7(cal/cm3)0.5であった。
製造例1で製造した軟質ポリ塩化ビニルフィルムの片方の面に、上記混合溶液(1)を塗布して、厚さ1.0μm、算術平均表面粗さRa=0.5μmの非粘着層を形成させた。
このようにして、粘着テープ用フィルム(1)を得た。(略)」
3 甲第3号証(以下、「甲3文献」という。)の記載
「【0022】
(ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム)
図1で示されるように、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、基材31上に粘着剤層32が設けられたダイシングテープ3と、粘着剤層32上に設けられたフリップチップ型半導体裏面用フィルム(以下、「半導体裏面用フィルム」という場合がある)2とを備える構成である。(略)」
「【0043】
前記半導体裏面用フィルムは、樹脂組成物により形成することができ、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含む樹脂組成物により構成することができる。なお、半導体裏面用フィルムは、熱硬化性樹脂が用いられていない熱可塑性樹脂組成物で構成されていてもよく、熱可塑性樹脂が用いられていない熱硬化性樹脂組成物で構成されていてもよい。」
「【0144】
(略)
本発明の接着シートがダイボンドフィルムである場合、ダイボンドフィルムとしての機能を有する程度に組成や含有量を変更した上で、上記フリップチップ型半導体裏面用フィルムと同様の構成を採用することができる。(略)」
4 甲第4号証の記載、甲4発明
(1)甲第4号証の記載
「【0001】
本発明は、ダイシングシート付きダイボンドフィルム、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法に関する。」
「【0029】
図1に示すように、ダイシングシート付きダイボンドフィルム10は、ダイシングシート11上にダイボンドフィルム16が積層された構成を有する。ダイシングシート11は基材12上に粘着剤層14を積層して構成されており、ダイボンドフィルム16は、粘着剤層14上に設けられている。」
「【0061】
例えば、図1に示すダイボンドフィルム16のウエハ貼り付け部分16aに合わせて放射線硬化型の粘着剤層14を硬化させることにより、粘着力が著しく低下した前記部分14aを容易に形成できる。硬化し、粘着力の低下した前記部分14aにダイボンドフィルム16が貼付けられるため、粘着剤層14の前記部分14aとダイボンドフィルム16との界面は、ピックアップ時に容易に剥がれる性質を有する。(略)」
「【実施例】
【0105】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の要旨をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
【0106】
<ダイボンドフィルムの作製>
(実施例1)
(略)
【0107】
(略)
【0108】
(実施例2)
下記(a)~(b)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(略)
【0109】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmのダイボンドフィルムBを作製した。」
「【0118】
<ダイシングシート>
実施例1~3、及び、比較例1~2に係るダイシングシートA(実施例1~3、及び、比較例1~2で共通)を下記のようにして準備した。
【0119】
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)75部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)20部、過酸化ベンゾイル0.2部、及び、トルエン60部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、アクリル系ポリマーAを得た。
このアクリル系ポリマーAに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)8部を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。
次に、アクリル系ポリマーA’100部に対し、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)1部、及び、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)4部を加えて、粘着剤溶液を作製した。
前記で調製した粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ30μmの粘着剤層前駆体を形成した。次いで、ポリプロピレン層(厚さ40μm)とポリエチレン層(厚さ40μm)の2層構造を有する厚さ80μmの基材フィルムを準備し、当該粘着剤前駆体表面にポリプロピレン層を貼り合わせ面として基材フィルムを貼り合わせた。その後、50℃にて24時間保存をした。粘着剤層前駆体の半導体ウェハ貼り付け部分(直径200mm)に相当する部分(直径220mm)にのみ紫外線を500mJ照射して、粘着剤層を形成した。これにより、ダイシングシートAを得た。
なお、基材の幅は、390mm、長さは200000mmである。また、紫外線は、各円形照射間の中心間距離が380mmとなるように照射した。」
「【0122】
(実施例2)
ダイボンドフィルムBを直径330mmに300枚打ち抜き、これを、長尺のダイシングシートAに、間隔50mmをあけて、1列に貼り合わせた。これにより、実施例1(当審注:「実施例2」の誤記と考えられる。)に係るダイシングシート付きダイボンドフィルムAとした。貼り合わせ条件は、40℃、10mm/秒、線圧30kgf/cmとした。」
「【0126】
(ダイシングシートからダイボンドフィルムを剥離する際の剥離力の測定)
引張試験機((株)島津製作所製、商品名「AGS-J」)を用いて、測定温度0℃、引張速度300mm/分、T型剥離試験の条件下で、ダイシングシートからダイボンドフィルムを剥離し、その際の剥離力を測定した。その際、ダイボンドフィルムの裏打ちテープとして日東電工製、BT-315を使用した。結果を表1に示す。」
「【0128】
【表1】
[図:0001395265000004.jpg]
」
「【図1】
[図:0001395265000005.jpg]
」
(2)甲第4号証の記載事項
上記記載から、甲第4号証には、次の技術的事項が記載されている。
ア ダイシングシート付きダイボンドフィルムであること(【0001】)。
イ ダイシングシート付きダイボンドフィルム10は、ダイシングシート11上にダイボンドフィルム16が積層された構成を有し、ダイシングシート11は基材12上に粘着剤層14を積層して構成されており、ダイボンドフィルム16は、粘着剤層14上に密着して設けられていること(【0029】、【図1】)。
ウ 粘着剤層14とダイボンドフィルム16は容易に剥がれること(【0061】)。
エ 実施例1~3では、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)75重量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)20重量部、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」ともいう)12重量部としたアクリル系ポリマーA’を得ている。
ここで、2EHAの分子量は184.3、HEAの分子量は116、MOIの分子量は155であるから、実施例のアクリル系ポリマーA’における各配合物のモル比は、2EHAのモル量を100とすると、HEAが42.4、MOIが12.7となる。
また、アクリル系ポリマーA’100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)1重量部を加えて、粘着剤層を形成している。
したがって、アクリル系ポリマーA’における各配合物のモル比が、2EHAのモル量を100とすると、HEAが42.4、MOIが12.7であり、アクリル系ポリマーA’100重量部に対し、コロネートLを1重量部加え、粘着剤層を形成するといえる(【0118】~【0119】)。
オ ダイボンドフィルム16は粘着剤層14上に設けられているから、【表1】に記載された「ダイシングシートからダイボンドフィルムを剥離する剥離力」は、粘着剤層とダイボンドフィルムの剥離力であるといえる。また、実施例2の「ダイシングシートからダンボンドフィルムを剥離する際の剥離力」は、【表1】を参照すると、1.5[N/20mm]である。
したがって、紫外線を照射して形成した粘着剤層とダイボンドフィルムの剥離力が、0℃、剥離速度300mm/min、T型剥離試験において1.5[N/20mm]であるといえる(【0119】、【0126】、【表1】)。
(3)甲4発明
上記(1)、(2)から、甲第4号証には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「ダイシングシート付きダイボンドフィルムについて、
ダイシングシート上にダイボンドフィルムが積層された構成を有し、ダイシングシートは基材上に粘着剤層を積層して構成されており、ダイボンドフィルムは、粘着剤層上に密着して設けられ、
粘着剤層14とダイボンドフィルム16は容易に剥がれ、
アクリル系ポリマーA’における各配合物のモル比が、2EHAのモル量を100とすると、HEAが42.4、MOIが12.7であり、アクリル系ポリマーA’100重量部に対し、コロネートLを1重量部加え、粘着剤層を形成し、
紫外線を照射したダイシングシートの粘着剤層とダイボンドフィルムの剥離力が、0℃、剥離速度300mm/min、T型剥離試験において1.5[N/20mm]である、ダイシングシート付きダイボンドフィルム。」
5 甲第5号証(以下、「甲5文献」という。)の記載
「【0106】
<実施例1~3及び比較例1~2>
〈ダイシングフィルムの製造〉
(製造例1)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)76部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)24部、及び、過酸化ベンゾイル0.2部及びトルエン60部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、アクリル系ポリマーAを得た。2EHAとHEAとのモル比は、100mol対20molとした。
【0107】
このアクリル系ポリマーAに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」という。)10部(HEAに対し80mol%)を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。
【0108】
次に、アクリル系ポリマーA’100部に対し、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)6部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)4部を加えて、粘着剤溶液を作製した。
【0109】
前記で調製した粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ30μmの粘着剤層前駆体を形成した。(略)。粘着剤層前駆体の半導体ウェハ貼り付け部分(直径200mm)に相当する部分(直径220mm)にのみ紫外線を照射して、粘着剤層を形成した。これにより、本製造例に係るダイシングフィルムAを作製した。なお、照射条件は下記の通りである。」
「【0124】
(剥離力測定)
作製したダイシング・ダイボンドフィルムにダイボンドフィルム側にテープ(日東電工(株)製、商品名;BT-315)を常温で貼り合わせ補強した。カッターナイフで100mm幅×120mm長に切断した。その後、ダイシングフィルムの粘着剤層とダイボンドフィルムをチャッキングし、0℃及び23℃のそれぞれにおいて、引張試験機((株)島津製作所製、商品名;AGS-J)を用いて、剥離速度300mm/min、T型剥離試験で粘着剤層とダイボンドフィルムとを引き剥がした際の力(最大荷重、単位:N/100mm)を読み取った。結果を表1に示す。」
「【0125】
【表1】
[図:0001395265000006.jpg]
」
第5 当審の判断
1 甲1発明を主引例とする進歩性について
(1)対比
本件発明と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「ダイシングテープ」は「基材上に粘着剤層」が設けられているから積層構造を有するといえる。そうすると、甲1発明の「基材」、「粘着剤層」及び「ダイシングテープ」は、本件発明の「基材」、「粘着剤層」及び「積層構造を有するダイシングテープ」にそれぞれ相当する。
したがって、本件発明と甲1発明は、「基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープ」を備える点で一致する。
イ 甲1発明の「半導体裏面用フィルム」は接着性を有し、粘着剤層に剥離可能に密着している。
そうすると、甲1発明の「半導体裏面用フィルム」は、本件発明の「ダイシングテープにおける前記粘着剤層に剥離可能に密着している接着剤」に相当するといえる。
したがって、本件発明と甲1発明は、「ダイシングテープにおける前記粘着剤層に剥離可能に密着している接着剤層」を備える点で一致する。
ウ 甲1発明は、「紫外線照射されていないダイシングテープの粘着剤層と半導体裏面用フィルムの剥離力が、23℃、剥離速度300mm/min、T型剥離試験において0.82[N/20mm]」である。
ここで、甲1発明の剥離力「0.82[N/20mm]」は、本件発明の「0.3N/20mm以上」の範囲に含まれる。
また、本件特許の明細書の【0028】に「また、本明細書において、「放射線硬化前」とは、放射線照射により粘着剤層が硬化していない状態をいい、粘着剤層が後述の放射線硬化型粘着剤層でない場合も含む。」と、同【0057】に「上記放射線硬化性粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、又はX線の照射により硬化するタイプの粘着剤を用いることができ、紫外線照射によって硬化するタイプの粘着剤(紫外線硬化性粘着剤)を特に好ましく用いることができる。」と、それぞれ記載されている。
そうすると、甲1発明では、「粘着剤層」は「紫外線照射されていない」ものであるから、甲1発明の「粘着剤層」は本件発明の「放射線硬化前の(前記)粘着剤層」に相当するといえる。
したがって、本件発明と甲1発明は、「温度23℃、剥離速度300mm/分の条件でのT型剥離試験における、放射線硬化前の前記粘着剤層と前記接着剤層との間の剥離力が0.3N/20mm以上である」点で一致する。
エ 甲1発明はダイシングに用いるフィルムであるといえる。
したがって、本件発明と甲1発明は、「ダイシングに用いるフィルム」である点で一致する。
オ したがって、本件発明と甲1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープと、
前記ダイシングテープにおける前記粘着剤層に剥離可能に密着している接着剤層とを備え、
温度23℃、剥離速度300mm/分の条件でのT型剥離試験における、放射線硬化前の前記粘着剤層と前記接着剤層との間の剥離力が0.3N/20mm以上である、ダイシングに用いるフィルム。」
<相違点>
<相違点1>
本件発明は「ダイシングダイボンドフィルム」であるのに対し、甲1発明は「ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム」であり、ダイボンドフィルムとして利用することが記載されていない点。
<相違点2>
本件発明は「放射線硬化前の前記粘着剤層表面の、温度23℃、周波数100Hzの条件におけるナノインデンテーション法による硬さが0.04~0.8MPa」であるのに対し、甲1発明は、粘着剤層のナノインデンテーション法による硬さについて記載されていない点。
(2)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点2について
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
甲第1号証には接着剤層22のナノインデンテーション法による硬さについて記載されていないことから、組成の観点からナノインデンテーション法による硬さについて検討を行う。
(ア)本件特許の明細書の【0048】に「第1アクリル系ポリマーが、ヒドロキシ基含有モノマー由来の構成単位と、イソシアネート基及びラジカル重合性官能基を有する化合物由来の構造部とを有する場合、第1アクリル系ポリマーにおける、イソシアネート基及びラジカル重合性官能基を有する化合物由来の構造部の、ヒドロキシ基含有モノマー由来の構成単位に対するモル比率は、0.7以上が好ましく、より好ましくは0.75以上である。また、上記モル比率は、0.9以下が好ましく、より好ましくは0.85以下である。上記モル比率が上記範囲内であると、上記ナノインデンテーション法による硬さを上記範囲内とし、且つ上記剥離力を上記範囲内とすることをより容易とすることができる。」と記載されている。
次に、本件特許の明細書の【0041】に「上記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、・・・等が挙げられる。」と記載され、同【0049】に「イソシアネート基及びラジカル重合性官能基を有する化合物としては、例えば、・・・等が挙げられる。中でも、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。」と記載されている。
また、本件特許の明細書の【0156】に「実施例1(ダイシングテープ)冷却管と、窒素導入管と、温度計と、撹拌装置とを備える反応容器内で、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)100モルと、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)20モルと、・・・」と、同【0157】に「次に、このアクリル系ポリマーP1を含有するポリマー溶液と、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)と、付加反応触媒としてのジブチル錫ジラウリレートとを含む混合物を、50℃で48時間、空気雰囲気下で撹拌した(付加反応)。当該反応溶液において、MOIの配合量は16モルである。」とそれぞれ記載されている。
ここで、本件特許の明細書の【0156】に記載された「2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)」が、同【0041】に記載された「アクリル酸2-ヒドロキシエチル」であることは自明である。
したがって、本件特許の明細書には、実施例1として、粘着剤層として用いられるポリマー溶液におけるイソシアネート基及びラジカル重合性官能基を有する化合物由来の構造部の、ヒドロキシ基含有モノマー由来の構成単位に対するモル比率(以下、「MOI/HEAモル比」という。)が、0.8(16/20)であることが記載されている。そして、上記モル比は本件特許の明細書の【0048】に記載された範囲と一致する。
(イ)甲1発明では、粘着剤層を形成するアクリル系ポリマーA’における各配合物のモル比が、2EHAのモル量を100とすると、HEAが30.2、MOIが14.3であるから、MOI/HEAモル比は、約0.47(14.3/30.2)であるといえる。
そして、上記モル比は本件特許の明細書の【0048】に記載された範囲と一致しない。
(ウ)したがって、甲1発明は本件特許の明細書に記載されたナノインデンテーション法による硬さに関する組成の条件を満たしていないことは明らかであるから、甲1発明のナノインデンテーション法による硬さが、本件発明の硬さと一致するとはいえない。
イ まとめ
したがって、<相違点1>について判断するまでもなく、本件発明は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人西郷新は、特許異議申立書3(4)ウ(ア)の「(a)甲第1号証を主引例とする進歩性欠如の理由」(P.9~)において、甲第1号証には、粘着剤層のナノインデンテーション法による硬さが明記されていないものの、弾性率の観点、組成の観点の一方又は両方によって、甲第1号証の実施例4に係る粘着剤層が本件発明のナノインデンテーション法による硬さに係る構成を充足しているといえる旨を主張している。
以下、上記主張について検討する。
(ア)弾性率の観点
特許異議申立書P.9の「(1)弾性率の観点」では、甲2文献に記載された弾性率とナノインデンテーション法による硬さの関係を、甲1発明の粘着剤層に適用して、甲1発明の弾性率から甲1発明のナノインデンテーション法による硬さを推認している。
しかしながら、甲1発明の粘着剤層はアルキル系ポリマーを主成分としており弾性率は1MPaであるが、甲2文献に記載された技術はシリコーン樹脂を主成分としており弾性率は約100MPa程度である。したがって、両者は主な材料が異なり弾性率が大きく異なるといえる。
加えて、甲1発明は引張試験機を用いて弾性率を評価しているが、甲2文献は、ナノインデンターを用いて、圧子を押し込み、除去した後得られた変位等から弾性率を求めている。したがって、両者は測定している弾性率の種類が異なるといえる。
そうすると、甲1発明と甲2文献に記載された技術は、主な材料が異なり弾性率が大きく異なる上に、測定している弾性率の種類も異なることから、甲2文献に記載されたナノインデンテーション法による硬さと弾性率の関係を甲1発明の粘着剤層に適用しても、有意な値を推認できるとはいえない。
(イ)組成の観点
上記1(2)アにおいて検討したように、甲1発明の粘着剤層を形成するポリマー溶液におけるMOI/HEAモル比は、約0.47であり、本件特許の明細書の【0048】に記載された範囲と一致しない。
ここで、本件特許の明細書の【表1】、【表2】に記載された実施例1、2、比較例1の粘着剤層はMOI/HEAモル比が0.8(16/20)であり、本件特許の明細書の【0048】に記載された範囲と一致する。したがって、MOI/HEAモル比が本件特許の明細書の【0048】に記載された範囲と一致する場合に、コロネートLの配合量を変化させるとナノインデンテーション法による硬さが変化するといえる。
しかしながら、MOI/HEAモル比が本件特許の明細書の【0048】に記載された範囲と一致しない甲1発明においてコロネートLの配合量を変化させたとしても、ナノインデンテーション法による硬さが変化するかは不明である。
仮に、甲1発明においてコロネートLの配合量を変化させるとナノインデンテーション法による硬さが変化するとしても、甲1発明の粘着剤層は、MOI/HEAモル比は、約0.47であり、本件特許の明細書の【0048】に記載された範囲と一致しないから、甲1発明の粘着剤層が本件発明の「ナノインデンテーション法による硬さが0.04~0.8MPa」である条件を満たすかは不明である。
(ウ)検討結果
上記(ア)、(イ)より、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
(3) 小括
以上のとおり、本件発明は、甲1発明及び甲2文献、甲3文献に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
2 甲4発明を主引例とする新規性について
(1)対比
ア 甲4発明の「基材上に粘着剤層を積層して構成」されている「ダイシングシート」は、本件発明の「基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープ」に相当する。
したがって、本件発明と甲4発明は、「基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープ」を備える点で一致する。
イ 甲4発明の「ダイボンドシート」は粘着剤層と密着しており、かつ粘着剤層から容易に剥がせる。
そうすると、甲4発明の「ダイボンドシート」は、本件発明の「ダイシングテープにおける前記粘着剤層に剥離可能に密着している接着剤」に相当するといえる。
したがって、本件発明と甲4発明は、「ダイシングテープにおける前記粘着剤層に剥離可能に密着している接着剤層」を備える点で一致する。
ウ 甲4発明はダイシングシート付きダイボンドフィルムであるから、ダイシングに利用できるとともにダイボンドにも利用できるといえる。
したがって、本件発明と甲4発明は、「ダイシングダイボンドフィルム」である点で一致する。
エ したがって、本件発明と甲4発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープと、
前記ダイシングテープにおける前記粘着剤層に剥離可能に密着している接着剤層とを備える、ダイシングダイボンドフィルム。」
<相違点>
<相違点3>
本件発明は、「放射線硬化前の前記粘着剤層表面の、温度23℃、周波数100Hzの条件におけるナノインデンテーション法による硬さが0.04~0.8MPa」であるのに対し、甲4発明では、粘着剤層のナノインデンテーション法による硬さについて記載されていない点。
<相違点4>
本件発明は、「温度23℃、剥離速度300mm/分の条件でのT型剥離試験における、放射線硬化前の前記粘着剤層と前記接着剤層との間の剥離力が0.3N/20mm以上である」のに対し、甲4発明は、粘着剤層とダイボンドフィルムの剥離力が1.5N/20mmであることが記載されているが、甲4発明の剥離力は、試験温度が0℃である点と紫外線を照射した後の測定値である点。
(2)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点3について
甲第4号証には接着剤層22のナノインデンテーション法による硬さについて記載されていないことから、組成の観点からナノインデンテーション法による硬さについて検討を行う。
(ア)本件特許の明細書に記載されたナノインデンテーション法による硬さに関する組成の条件は上記1(2)ア(ア)に記載したとおりである。
(イ)甲4発明では、粘着剤層を形成するアクリル系ポリマーA’における各配合物のモル比は、2EHAのモル量を100とすると、HEAが42.4、MOIが12.7であるから、MOI/HEAモル比は、約0.30(12.7/42.4)であるといえる。
そして、上記モル比は本件特許の明細書の【0048】に記載された範囲と一致しない。
(ウ)したがって、甲4発明は本件特許の明細書に記載されたナノインデンテーション法による硬さに関する組成の条件を満たしていないことは明らかであるから、甲4発明のナノインデンテーション法による硬さは、本件発明のナノインデンテーション法による硬さと一致するとはいえない。
イ まとめ
したがって、<相違点4>について判断するまでもなく、本件発明は、甲4発明ではない。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人西郷新は、特許異議申立書3(4)ウ(ア)の「(b)甲第4号証を主引例とする新規欠如の理由」(P.12~)において、甲第4号証の実施例2における2EHA、HEA、MOIのモル比が本件特許の明細書に記載された実施例1のモル比に近い点、コロネートLの配合量が多い点から、甲第4号証の実施例2が本件発明のナノインデンテーション法による硬さに係る構成を充足しているといえる旨を主張している。
しかしながら、これらの点については上記1(2)ア~ウに示したとおり、2EHA、HEA、MOIのモル比が本件特許の明細書に記載された実施例1のモル比に近い点、コロネートLの配合量が多い点を根拠として、甲4発明の粘着剤層のナノインデンテーション法による硬さが、本件発明に記載された範囲となるかは不明である。
したがって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
(3) 小括
以上のとおり、本件発明は、甲4発明ではない。
したがって、本件発明は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701146