特許異議申立
2023-700712
電装品および冷凍装置
- 審判番号
- 2023-700712
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-058039
- 登録番号
- 7208550
- 請求日
- 2023年07月11日
- 審決日
- 2024年09月02日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】吉竹 英俊
- 【権利者代理人】有田 貴弘
- 【権利者代理人】福市 朋弘
- 【異議申立人】小倉 良則
- 【異議申立人代理人】原田 寛
- 【異議申立人代理人】中村 政美
- 審判長/審判官
- 審判長 恩田 春香
- 審判官 三浦 みちる
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P1651.121-YAA(H01L) / P1651.113-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7208550号発明「電装品および冷凍装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7208550号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第7208550号の請求項1~7、9~10に係る特許を維持する。
特許第7208550号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7208550号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和3年3月30日に出願され、令和5年1月11日にその特許権の設定登録がされ、同年1月19日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 7月11日 :特許異議申立人 小倉 良則(以下、「申立人」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和5年10月18日付け:取消理由通知書
令和5年12月 6日 :特許権者との面接審理
令和5年12月21日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 2月 7日 :申立人による意見書の提出
令和6年 3月15日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年 5月16日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、この訂正請求書を「本件訂正請求書」、この訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)の提出(なお、本件訂正により、令和5年12月21日提出の訂正請求書による訂正は、取り下げられたものとみなす。)
令和6年 7月 1日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、次のとおりである。(下線は訂正箇所を示すために当審で付した。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「第1面(400b)と、前記第1面に対向する第2面(400a)とを有する基板(400)と、
前記第1面側に配置される第1部品(412)と、
前記第2面側に配置される本体(401a)と、前記本体から延びて前記第2面を経由して前記第1面に達する突起(401b)とを有する第2部品(401)と、
前記第1面側に配置され、前記突起を介した前記本体の放熱と、前記第1部品の放熱とに共用される第1放熱部材(31,34)と
を備える電装品(1)。」
と記載されているのを、
「第1面(400b)と、前記第1面に対向する第2面(400a)とを有する基板(400)と、
前記第1面側に配置される第1部品(412)と、
前記第2面側に配置される本体(401a)と、前記本体から延びて前記第2面を経由して前記第1面に達する突起(401b)とを有する第2部品(401)と、
前記第1面側に配置され、前記突起を介した前記本体の放熱と、前記第1部品の放熱とに共用される第1放熱部材(31,34)と
を備え、前記突起の少なくとも一部は、前記基板と前記第1放熱部材との間において露出されている電装品(1)。」
に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7、9~10も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の電装品(1)」と記載されているのを、「請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の電装品(1)」に訂正する。(請求項9の記載を直接的に引用する請求項10も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
明細書の段落【0009】に
「本開示の電装品(1)の第1の態様は、基板(400)と、第1部品(412)と、第2部品(401)と、第1放熱部材(31,34)とを備える。前記基板(400)は、第1面(400b)と、前記第1面に対向する第2面(400a)とを有する。前記第1部品(412)は前記第1面側に配置される。前記第2部品(401)は、前記第2面側に配置される本体(401a)と、前記本体から延びて前記第2面を経由して前記第1面に達する突起(401b)とを有する。前記第1放熱部材(31,34)は、前記第1面側に配置され、前記突起を介した前記本体の放熱と、前記第1部品の放熱とに共用される。」
と記載されているのを、
「本開示の電装品(1)の第1の態様は、基板(400)と、第1部品(412)と、第2部品(401)と、第1放熱部材(31,34)とを備える。前記基板(400)は、第1面(400b)と、前記第1面に対向する第2面(400a)とを有する。前記第1部品(412)は前記第1面側に配置される。前記第2部品(401)は、前記第2面側に配置される本体(401a)と、前記本体から延びて前記第2面を経由して前記第1面に達する突起(401b)とを有する。前記第1放熱部材(31,34)は、前記第1面側に配置され、前記突起を介した前記本体の放熱と、前記第1部品の放熱とに共用される。前記突起の少なくとも一部は、前記基板と前記第1放熱部材との間において露出されている。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
明細書の段落【0016】を削除する。
(6)一群の請求項について
訂正前の請求項1~10について、請求項2~10は、いずれも請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1により訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項〔1~10〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の適否
以下、訂正事項1~5の、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について検討する。
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、「突起」について、「前記突起の少なくとも一部」が「前記基板と前記第1放熱部材との間において露出」することを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0037】の「電解コンデンサ401は、本体401aと一対のリード401bとを有する。本体401aは面400a側に配置される。リード401bは本体401aから延びて面400aを経由して面400bに達する突起として捉えられ得る。」との記載と、願書に添付した図面の図2~4から、リード401bの少なくとも一部が、基板400とヒートシンク31、34との間において露出することが見て取れること、に基づくものである。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
エ 小括
上記ア~ウによれば、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項8を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項2により請求項8を削除したことに伴い、訂正前の請求項9の引用請求項から請求項8を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項1により訂正される特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正事項2により訂正される特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1~5に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記「第2 訂正の適否」のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1面(400b)と、前記第1面に対向する第2面(400a)とを有する基板(400)と、
前記第1面側に配置される第1部品(412)と、
前記第2面側に配置される本体(401a)と、前記本体から延びて前記第2面を経由して前記第1面に達する突起(401b)とを有する第2部品(401)と、
前記第1面側に配置され、前記突起を介した前記本体の放熱と、前記第1部品の放熱とに共用される第1放熱部材(31,34)と
を備え、前記突起の少なくとも一部は、前記基板と前記第1放熱部材との間において露出されている電装品(1)。
【請求項2】
前記第1放熱部材(31,34)と前記突起(401b)との間に挟まれる第2放熱部材(33,30)
を更に備える、請求項1に記載の電装品(1)。
【請求項3】
一つの前記第2部品(401)は複数の前記突起(401b)を有し、
前記第2放熱部材は前記第1放熱部材(31,34)と前記複数の前記突起との間に挟まれ、絶縁性を有する、請求項2に記載の電装品(1)。
【請求項4】
前記第2部品は、電解コンデンサである、請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の電装品(1)。
【請求項5】
前記第2部品は、誘導性素子である、請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の電装品(1)。
【請求項6】
前記第1部品はパワーモジュールである、請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の電装品(1)。
【請求項7】
前記第2面(400a)側に配置される第3部品(403)
を更に備え、
前記第1面から前記第2面に向かう方向(Z)に沿って見て、前記第2部品と前記第1部品との間の距離(L1)は、前記第2部品と前記第3部品との間の距離(L2)よりも短い、請求項4に記載の電装品(1)。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の電装品(1)を備えた、冷凍装置(19)。
【請求項10】
冷凍回路(9)
を更に備え、
前記電装品(1)は前記冷凍回路(9)の動作を制御する、請求項9記載の冷凍装置(19)。」
第4 取消理由及び特許異議申立理由
1 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
当審が令和6年3月15日付けで通知した取消理由通知書(決定の予告)(以下、単に「取消理由通知書(決定の予告)」という。)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由3(サポート要件) 本件特許は、令和5年12月21日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の、請求項8及び請求項8を直接的又は間接的に引用する請求項9~10に係る発明について、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下、「取消理由3」という。)
2 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要
(1)取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。なお、理由番号は当審で付した。
申立理由1(新規性) 請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(以下、「申立理由1」という。)
申立理由2(進歩性) 請求項1~10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第7号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(以下、「申立理由2」という。)
申立理由3(実施可能要件) 本件特許は、請求項8に係る発明について、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下、「申立理由3」という。)
(2)申立人が提出した証拠は次のとおりである。
甲第1号証:特開2018-014415号公報
甲第2号証:特開2015-177070号公報
甲第3号証:特開2019-125640号公報
甲第4号証:特開平11-287506号公報
甲第5号証:特開2019-128118号公報
甲第6号証:特開2007-123447号公報
甲第7号証:特開2019-169638号公報
以下、上記「甲第1号証」~「甲第7号証」を、それぞれ「甲1」~「甲7」という。
第5 当審の判断
1 申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について
(1)甲1の記載、甲1発明
ア 甲1には、次の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。)
「【背景技術】
・・・
【0004】
上述のような電子部品の熱を放熱する放熱構造において、放熱効率の向上が求められている。そこで、例えば図4に示す電子機器100のように、電子部品の熱を、冷却器といった放熱部に、電子基板を介することなく伝達させる放熱構造が考えられる。
なお、以下に示す各図には、説明と理解を容易にするために、図中にXYZ直交座標系を設けたが、これらは単に図中の向きを統一して説明するために設定したものであり、絶対的な座標を示すものではない。
【0005】
電子機器100は、第1の電子部品10、第2の電子部品20、電子基板30、ヒートシンク40、放熱グリス50、60、および半田部70を備える。
【0006】
第1の電子部品10は、電子基板30の他方の面(Yプラス方向側の面)にスルーホール実装される。具体的には、第1の電子部品10は、電子基板30の他方の面側に設けられ、本体11と、本体11の一方の面から伸びる2つの端子12と、を備える。2つの端子12のそれぞれは、電子基板30に設けられた2つのスルーホールのそれぞれに挿通された状態で、半田部70により電子基板30に固着される。
一方、第2の電子部品20は、電子基板30の他方の面に表面実装される。
【0007】
ヒートシンク40は、電子基板30の他方の面側に、電子基板30との間に間隔を空けて設けられる。
ヒートシンク40には、凹部41が形成される。凹部41には、第1の電子部品10の本体11が、凹部41の壁部に当接しない状態で挿入される。凹部41の壁部と本体11との間には、放熱グリス50が設けられる。
また、ヒートシンク40と第2の電子部品20との間には、放熱グリス60が設けられる。
【0008】
以上の電子機器100では、第1の電子部品10の熱は、電子基板30を介してではなく、放熱グリス50を介してヒートシンク40に伝達される。また、第2の電子部品20の熱は、電子基板30を介してではなく、放熱グリス60を介してヒートシンク40に伝達される。」
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0011】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、電子部品の熱の放熱効率を十分に向上させる放熱構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1またはそれ以上の実施形態は、電子基板の一方の面に実装された電子部品の熱を放熱する放熱構造であって、前記電子基板の他方の面側に、前記電子基板との間に間隔を空けて設けられた放熱部と、前記電子部品の端子と前記放熱部との間に設けられた熱伝導部と、を備えることを特徴とする。」
「【0016】
<第1実施形態>
図1を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明による放熱構造を用いた電子機器1を示す側面図である。電子機器1は、図4に示した従来例に係る電子機器100とは、第1の電子部品10の代わりに第1の電子部品10Aを備える点と、ヒートシンク40の代わりにヒートシンク40Aを備える点と、放熱グリス50の代わりに放熱グリス50Aを備える点と、で異なっており、他の部分については同様の形態をしている。このため、電子機器100と同様の形態をしている部分については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0018】
第1の電子部品10Aは、第1の電子部品10と同様に、本体11と、本体11の一方の面から伸びる2つの端子12と、を備える。これら2つの端子12は、銅で構成される。
第1の電子部品10Aは、電子基板30の一方の面(Yマイナス方向側の面)にスルーホール実装される。具体的には、第1の電子部品10Aは、電子基板30の一方の面側に設けられ、2つの端子12のそれぞれは、電子基板30に設けられた2つのスルーホールのそれぞれを介して電子基板30の他方の面側に突出する。端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分は、半田部70により電子基板30に固着される。
なお、本実施形態では、図1に示すように、半田部70は、端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分を、全て覆っている。このため、放熱グリス50Aは、端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分に、半田部70を介して接することになる。
【0019】
放熱部としてのヒートシンク40Aは、電子基板30の他方の面側に、電子基板30との間に間隔を空けて設けられる。なお、図4に示したヒートシンク40には、凹部41が形成されていたが、本実施形態に係るヒートシンク40Aには、ヒートシンク40Aの放熱特性に影響を与える第1の電子部品10Aの本体11が、その壁部に当接しない状態で挿入されるような凹部41は形成されない。
【0020】
熱伝導部としての放熱グリス50Aは、端子12とヒートシンク40Aとの間に設けられる。
・・・
【0023】
以上のように、電子機器1は、電子基板30の一方の面に第1の電子部品10Aを実装し、電子基板30の他方の面にヒートシンク40Aを設ける。また、第1の電子部品10Aの端子12のうち電子基板30の他方の面側に突出している部分と、ヒートシンク40Aと、の間に放熱グリス50Aを設ける。このため、第1の電子部品10Aの熱を、端子12および放熱グリス50Aを介してヒートシンク40Aに伝達することができる。
このため、第1の電子部品10Aの本体11を挿入するための凹部41(図4参照)が不要になる。したがって、ヒートシンク40Aの体積を確保することができるので、第1の電子部品10Aの熱の放熱効率を十分に向上させることができる。
また、第1の電子部品10Aとヒートシンク40Aとを、それぞれ電子基板30の異なる面側に設けることができる。このため、電子部品とヒートシンクとを、本実施形態のようにそれぞれ電子基板30の異なる面側に設ける場合と、図4に示したように電子基板30の同一の面側に設ける場合と、を選択することができる。したがって、電子部品を含む回路の回路設計の自由度を、向上させることもできる。
・・・
【0027】
また、本実施形態では、半田部70により、端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分を、全て覆った。しかし、これに限らず、端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分に、半田部70で覆われていない部分があってもよい。具体例としては、端子12に半田付けを行った後に、端子12の先端部をカットすることにより、端子12の先端部が半田に覆われていない場合や電子基板30からの離脱を防止するために、端子12の折り曲げ処理を行なった後に、端子12の先端部のみに半田付けを行なう場合がある。上記の例示では、端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分であって、半田部70に覆われていない部分は、半田部70を介することなく放熱グリス50Aに直接接することになる。」
「【図1】
[図:0001417612000001.jpg]
」
「【図4】
[図:0001417612000002.jpg]
」
イ 甲1に記載された事項
(ア)上記アの段落0004、0005によれば、図4に示す電子機器100は、「第1の電子部品10」と、「第2の電子部品20」と、「電子基板30」と、「ヒートシンク40」と、「放熱グリス50、60」と、「半田部70」とを備えるものである。
また、同段落0006によれば、「第2の電子部品20」は、「電子基板30」の「他方の面」に表面実装され、同段落0007によれば、「放熱グリス60」は、ヒートシンク40と「第2の電子部品20」との間に設けられ、同段落0008によれば、「第2の電子部品20」の熱は、「放熱グリス60」を介してヒートシンク40に伝達されるものである。
そして、同段落0017によれば、図1に示す「電子機器1」は、図4に示す電子機器100とは、第1の電子部品10の代わりに「第1の電子部品10A」と、ヒートシンク40の代わりに「ヒートシンク40A」と、放熱グリス50の代わりに「放熱グリス50A」とを備える点で異なり、他の部分については同様の形態をしているものである。
したがって、「電子機器1」は、「第1の電子部品10A」と、「第2の電子部品20」と、「電子基板30」と、「ヒートシンク40A」と、「放熱グリス50A、60」と、「半田部70」とを備え、「第2の電子部品20」は、「電子基板30」の「他方の面」に表面実装され、「放熱グリス60」は、「ヒートシンク40A」と「第2の電子部品20」との間に設けられ、「第2の電子部品20」の熱は、「放熱グリス60」を介して「ヒートシンク40A」に伝達されるものである。
(イ)上記アの段落0018によれば、「第1の電子部品10A」は、「本体11」と、「本体11」の「一方の面」から伸びる「2つの端子12」とを備え、「電子基板30」の「一方の面」にスルーホール実装され、「2つの端子12」のそれぞれは、「電子基板30」に設けられた2つのスルーホールのそれぞれを介して「電子基板30」の「他方の面」側に突出し、「端子12」のうち、「電子基板30」の「他方の面」側に突出している部分は、「半田部70」により電子基板30に固着され、「放熱グリス50A」は、「端子12」のうち、「電子基板30」の「他方の面」側に突出している部分に、半田部70を介して接するものである。
(ウ)上記アの段落0019によれば、「ヒートシンク40A」は、「電子基板30」の「他方の面」側に、「電子基板30」との間に間隔を空けて設けられるものである。
(エ)上記アの段落0020、0023によれば、「放熱グリス50A」は、「端子12」と「ヒートシンク40A」との間に設けられ、「第1の電子部品10A」の熱は、「端子12」及び「放熱グリス50A」を介して「ヒートシンク40A」に伝達されるものである。
ウ 上記イの記載事項から、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「電子機器1において、第1の電子部品10Aと、第2の電子部品20と、電子基板30と、ヒートシンク40Aと、放熱グリス50A、60と、半田部70とを備え、
第1の電子部品10Aは、本体11と、本体11の一方の面から伸びる2つの端子12とを備え、電子基板30の一方の面にスルーホール実装され、
2つの端子12のそれぞれは、電子基板30に設けられた2つのスルーホールのそれぞれを介して電子基板30の他方の面側に突出し、
端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分は、半田部70により電子基板30に固着され、
放熱グリス50Aは、端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分に、半田部70を介して接し、端子12とヒートシンク40Aとの間に設けられ、
第1の電子部品10Aの熱は、端子12及び放熱グリス50Aを介してヒートシンク40Aに伝達され、
ヒートシンク40Aは、電子基板30の他方の面側に、電子基板30との間に間隔を空けて設けられ、
第2の電子部品20は、電子基板30の他方の面に表面実装され、
放熱グリス60は、ヒートシンク40Aと第2の電子部品20との間に設けられ、第2の電子部品20の熱は、放熱グリス60を介してヒートシンク40Aに伝達される、
電子機器1。」
(2)甲6の記載、甲6発明
ア 甲6には、次の記載がある。
「【0031】
(実施形態1)
図1,図2に示すように、本実施形態の電子機器Aは、矩形の実装基板1の表面に電子部品5を実装し、実装基板1の裏面に電子部品6を実装し、上面を開口した矩形箱状の金属ケース3の内底面に実装基板1の裏面が対向するように、実装基板1を金属ケース3内に収納している。そして、金属ケース3の内面は絶縁材からなるフィルム(以下、絶縁板4と称す)で覆われており、実装基板1の裏面と絶縁板4との間に樹脂2を充填している。なお、図1は電子部品5,6の概略の配置を示すものとする。
・・・
【0033】
図4は、挿通孔20の近傍を実装基板1の表面側からみた透視図であり、実装基板1の裏面側に実装されている電子部品6は発熱部品であり、これらの電子部品6は放熱のために樹脂2で覆う必要がある。これらの電子部品6と挿通孔20との間には、φ3mmの円形の第1の孔10,第2の孔11が設けられており、第1の孔10は電子部品6に近い側に位置し、第2の孔11は挿通孔20の近傍に位置する。
【0034】
そして、金属ケース3の内面に絶縁板4を配置し、樹脂2を絶縁板4上の1点に流し入れて実装基板1を金属ケース3内に装着すると、樹脂2は実装基板1の裏面によって平面的にならされていくので、実装基板1の周縁に向かって広がる形になる。そして、実装基板1の裏面に実装した電子部品6にも樹脂2が流れてまわり込み、さらに挿通孔20に向かって広がるが、樹脂2は、電子部品6と挿通孔20との間に設けた第1の孔10を介して実装基板1の裏面側から表面側に挿通し、挿通孔20にまでまわり込むことはない。このように、第1の孔10を設けることによって樹脂2のまわり込みを制御して、樹脂2を充填したい範囲外に樹脂が流れ出さないようにするとともに必要なところには樹脂2がまわり込んでいることを容易に確認できる。さらに、挿通孔20の近傍に位置する第2の孔11によって、樹脂2のまわり込みを防ぎたい挿通孔20には樹脂2がまわり込んでいないことを容易に確認できる。
【0035】
したがって、必要なところには確実に樹脂2がまわり込んで電子部品6の放熱性能を向上させているが、実装基板1と金属ケース3との間を電気的に導通させるために設けたねじ孔51(図23参照)には樹脂2がかかることがなく、実装基板1と金属ケース3との間を確実に電気的に導通させることができ、雑音性能等の低下を防ぐことができる。
【0036】
すなわち、本実施形態は、樹脂2のまわり込みを制御するとともに樹脂2のまわり込みを確認する第1の孔10を樹脂2を充填する所定範囲の端部近傍に設け、樹脂2の充填範囲が所定範囲を超えていないことを確認する第2の孔11を、樹脂2を充填する所定範囲外に設けることで、樹脂2の流れ込みを制御するとともに充填範囲を容易に確認できるものである。なお、ジャンパー線30の他端が挿入された状態で半田付けされていない孔22を、上記第2の孔として用いてもよい。」
「【0043】
さらに、図7に示すように、インダクタLF1はコアLF1aに巻線LF1bを巻回した巻線部品であり、本実施形態では、第1の孔10を介して実装基板1の表面側に露出した樹脂2はインダクタLF1のコアLF1aに密着しており、樹脂2による放熱効果でインダクタLF1の発熱が放熱されやすくなるとともに、コアLF1aが樹脂2を介して実装基板1に固定されるので、インダクタLF1の振動による騒音を低減することができる。」
「【0052】
さらに、図10に示すように、インダクタL1はコアL1aに巻線L1bを巻回した巻線部品であり、本実施形態では、第1の孔10を介して実装基板1の表面側に露出した樹脂2はインダクタL1のコアL1aに密着しており、樹脂2による放熱効果でインダクタL1の発熱が放熱されやすくなるとともに、コアL1aが樹脂2を介して実装基板1に固定されるので、インダクタL1の振動による騒音を低減することができる。」
「【0059】
さらに、本実施形態では、第1の孔10を整流器K6の近傍に設けることで、第1の孔10を介して実装基板1の表面側に露出した樹脂2が整流器K6に密着し、樹脂2による放熱効果で整流器K6の発熱が放熱されやすくなる。」
「【0074】
本実施形態の実装基板1は、実施形態1の構成に付加して、コア5dに巻線5eを巻回した巻線部品5cを実装基板1の表面に実装し、巻線部品5cの近傍に孔13を設けたもので、図17に示すように、孔13を介して実装基板1の表面側に露出した樹脂2は巻線部品5cのコア5dに密着しており、樹脂2による放熱効果で巻線部品5cの発熱が放熱されやすくなるとともに、コア5dが樹脂2を介して実装基板1に固定されるので、巻線部品5cの振動による騒音を低減することができる。」
「【図1】
[図:0001417612000003.jpg]
」
「【図2】
[図:0001417612000004.jpg]
」
「【図4】
[図:0001417612000005.jpg]
」
「【図7】
[図:0001417612000006.jpg]
」
「【図10】
[図:0001417612000007.jpg]
」
「【図17】
[図:0001417612000008.jpg]
」
イ 甲6に記載された事項
(ア)上記アの段落0031によれば、「電子機器A」は、「実装基板1」の「表面」に「電子部品5」を実装し、「実装基板1」の「裏面」に「電子部品6」を実装し、「金属ケース3」の内底面に「実装基板1」の「裏面」が対向するように、「実装基板1」を「金属ケース3」内に収納し、「実装基板1」の「裏面」と「金属ケース3」の内面との間に「樹脂2」を充填するものである。
(イ)上記アの段落0033によれば、「電子部品6」は、発熱部品であり、放熱のために「樹脂2」で覆われるものである。
(ウ)上記アの段落0036によれば、「樹脂2」を充填する所定範囲の端部近傍に「第1の孔10」が設けられ、「樹脂2」を充填する所定範囲外に「第2の孔11」が設けられ、「第1の孔10」は、樹脂2のまわり込みを制御するとともに樹脂2のまわり込みを確認するものであり、「第2の孔11」は、「樹脂2」の充填範囲が所定範囲を超えていないことを確認するものである。
ウ 上記イの記載事項から、甲6には次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲6発明>
「実装基板1の表面に電子部品5を実装し、
実装基板1の裏面に電子部品6を実装し、
金属ケース3の内底面に実装基板1の裏面が対向するように、実装基板1を金属ケース3内に収納し、
実装基板1の裏面と金属ケース3の内面との間に樹脂2を充填する電子機器Aにおいて、
電子部品6は、発熱部品であり、放熱のために樹脂2で覆われ、
樹脂2を充填する所定範囲の端部近傍に第1の孔10が設けられ、第1の孔10は、樹脂2のまわり込みを制御するとともに樹脂2のまわり込みを確認するものであり、
樹脂2を充填する所定範囲外に第2の孔11が設けられ、第2の孔11は、樹脂2の充填範囲が所定範囲を超えていないことを確認するものである、
電子機器A。」
(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「電子基板30」は、本件発明1の「基板(400)」に相当する。
また、上記(1)アの図1より、甲1発明の「電子基板30」は、互いに対向する、「一方の面」及び「他方の面」を有するものである。
したがって、甲1発明の「他方の面」及び「一方の面」を有する「電子基板30」は、本件発明1の「第1面(400b)と、前記第1面に対向する第2面(400a)とを有する基板(400)」に相当する。
(イ)甲1発明の「第2の電子部品20」は、「電子基板30」の「他方の面」に表面実装されるから、本件発明1の「前記第1面側に配置される第1部品(412)」に相当する。
(ウ)甲1発明の「第1の電子部品10A」の「本体11」は、「一方の面」側に配置されるものであるから、本件発明1の「前記第2面側に配置される本体(401a)」に相当し、甲1発明の「第1の電子部品10A」の「2つの端子12」は、「本体11」の一方の面から伸びて、「一方の面」から「他方の面」に達する突起であるといえるから、本件発明1の「前記本体から延びて前記第2面を経由して前記第1面に達する突起(401b)」に相当する。
したがって、甲1発明の「本体11と、本体11の一方の面から伸びる2つの端子12とを備え」る「第1の電子部品10A」は、本件発明1の「前記第2面側に配置される本体(401a)と、前記本体から延びて前記第2面を経由して前記第1面に達する突起(401b)とを有する第2部品(401)」に相当する。
(エ)甲1発明において「ヒートシンク40A」は、「電子基板30」の「他方の面」側に配置され、「第1の電子部品10Aの熱」が、「端子12」及び「放熱グリス50A」を介して伝達され、また、「第2の電子部品20の熱」が、「放熱グリス60」を介して伝達されるから、本件発明1の「前記第1面側に配置され、前記突起を介した前記本体の放熱と、前記第1部品の放熱とに共用される第1放熱部材(31,34)」に相当する。
(オ)甲1発明の「電子機器1」は、「電子基板30」に「第1の電子部品10A」及び「第2の電子部品20」を備えるから、本件発明1の「電装品(1)」といえる。
(カ)以上によれば、本件発明1と甲1発明とは次の点で一致し、相違する。
<一致点>
「第1面(400b)と、前記第1面に対向する第2面(400a)とを有する基板(400)と、
前記第1面側に配置される第1部品(412)と、
前記第2面側に配置される本体(401a)と、前記本体から延びて前記第2面を経由して前記第1面に達する突起(401b)とを有する第2部品(401)と、
前記第1面側に配置され、前記突起を介した前記本体の放熱と、前記第1部品の放熱とに共用される第1放熱部材(31,34)と
を備える電装品(1)。」
<相違点>
本件発明1では、「前記突起の少なくとも一部は、前記基板と前記第1放熱部材との間において露出されている」のに対し、甲1発明では、「端子12」についてそのような特定がない点。
イ 相違点の検討
上記相違点について検討する。
(ア)上記(1)アの段落0018には、「なお、本実施形態では、図1に示すように、半田部70は、端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分を、全て覆っている。このため、放熱グリス50Aは、端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分に、半田部70を介して接することになる。」と記載され、同段落0027には、「しかし、これに限らず、端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分に、半田部70で覆われていない部分があってもよい。・・・上記の例示では、端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分であって、半田部70に覆われていない部分は、半田部70を介することなく放熱グリス50Aに直接接することになる。」と記載されている。
これらの記載によれば、甲1には、端子12が、半田部70を介して放熱グリス50Aに接する場合と、端子12が、半田部70を介さずに放熱グリス50Aに直接接する場合が開示されている。言い換えると、甲1には、端子12の全体が、半田部70を介して又は介さずに、放熱グリス50Aによって覆われることが開示されている。しかしながら、甲1には、端子12の少なくとも一部が、半田部70にも放熱グリス50Aにも覆われずに「露出されている」構成については、開示も示唆もされていない。
したがって、上記相違点は実質的なものである。
(イ)同段落0011には、「そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、電子部品の熱の放熱効率を十分に向上させる放熱構造を提供する。」と記載され、甲1発明が解決すべき課題は、電子部品の熱の放熱効率を十分に向上させる放熱構造を提供することであるといえる。
そして、同段落0012には、上記課題を解決するための手段として、「電子基板の一方の面に実装された電子部品の熱を放熱する放熱構造であって、・・・放熱部と、・・・熱伝導部と、を備える」と記載され、同段落0020には、「熱伝導部としての放熱グリス50Aは、端子12とヒートシンク40Aとの間に設けられる。」と記載され、同段落0023には、「第1の電子部品10Aの熱を、端子12および放熱グリス50Aを介してヒートシンク40Aに伝達することができる。」と記載され、甲1発明において、第1の電子部品10Aの熱をヒートシンク40Aに伝達する熱伝導部としての放熱グリス50Aは、上記課題を解決するための手段に他ならない。
そうすると、甲1発明において、端子12の少なくとも一部が、熱伝導部としての放熱グリス50Aによって覆われない構成とすることは、上記の電子部品の熱の放熱効率を十分に向上させるという課題に反することになるから、上記構成を採用する動機付けが存在せず、むしろ阻害要因を有するといえる。
したがって、甲1発明を、相違点に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、他の甲号証の記載にかかわらず、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 申立人の主張の検討
(ア) 申立人は、令和6年2月7日提出の意見書、及び令和6年7月1日提出の意見書において、次の主張をしている。
a 「甲第1号証の段落[0027]には、『・・・端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分に、半田部70で覆われていない部分があってもよい。・・・』との記載がある通り、端子12が半田部70で覆われていない部分を含むことが記載されている。また、甲第1号証における請求項1において、熱伝導部は、電子部品の端子と放熱部との間に設けられることを前提とされてはいるものの、端子のうち電子基板と放熱部との間に位置する部分の全体を直接的または間接的に熱伝導部によって覆うことまでは前提とされておらず、かつ、当該事項が、電子部品の熱の放熱効率を十分に向上させるという甲第1号証における課題を解決するために必須な事項でもないことは明らかである。」
(令和6年7月1日提出の意見書第3ページ第7行~同ページ第15行)
b 「・・・甲第1号証において、電子部品の端子のうち基板と放熱部との間に設けられる部分の一部を熱伝導部によって覆わずに露出させることは排除されるものではない。・・・甲第1号証の段落[0027]に『・・・上記の例示では、端子12のうち、電子基板30の他方の面側に突出している部分であって、半田部70に覆われていない部分は、半田部70を介することなく放熱グリス50Aに直接接することになる。』との記載がある・・・が、当該記載のみからでは、端子12のうち半田部70に覆われていない部分の全体が放熱グリス50Aと接触していなければならないとまでは読み取れないし、課題や明細書等の他の記載を参酌しても、端子12のうち半田部70に覆われていない部分の全体が放熱グリス50Aと接触していなければならないとは読み取れない。」
(令和6年7月1日提出の意見書第4ページ第20行~同ページ第31行)
c 「・・・電子部品から延びる端子が基板を貫通し、当該端子のうち基板を貫通して突出した部分が、当該基板と、当該基板が対向する部材との間において露出される構成は、周知の技術的事項である。したがって、当該周知の技術的事項を参酌しつつ、必要となる放熱性や、他の部材との配置関係、熱伝導部の材質などを考慮して、甲1発明において端子のうち電子基板と放熱部との間に位置する部分の一部を露出させることは、適宜設計される設計的事項に過ぎない。」
(令和6年2月7日提出の意見書第5ページ第12行~同ページ第17行)
d 「したがって、甲第6号証には、『実装基板の表面側に配置される本体と本体から延びて表面を経由して裏面に達する端子とを有する電子部品と、実装基板の裏面側に配置され端子を介した電子部品の本体の放熱に用いられる樹脂と、を備え、端子は実装基板の裏面側において少なくとも一部が露出している電子部品。』が記載されているといえる。そのため、甲第6号証に記載された当該事項を参酌して、甲1発明において端子のうち電子基板と放熱部との間に位置する部分の少なくとも一部を露出させることは、甲第1号証及び甲第6号証に接した当業者であれば容易に想到できたことである。」
(令和6年7月1日提出の意見書第4ページ第6行~同ページ第13行)
(イ) 上記(ア)の申立人の主張について検討する。
a 上記(ア)aの主張について、上記イ(ア)で検討したとおり、甲1には、端子12の全体が、半田部70を介して又は介さずに、放熱グリス50Aによって覆われることが開示されているものの、端子12の少なくとも一部が、半田部70にも放熱グリス50Aにも覆われずに「露出されている」構成については、開示も示唆もされていない。したがって、甲1発明においては、むしろ、端子12の全体を放熱グリス50Aによって覆うことが前提とされているといえる。
また、上記イ(イ)で検討したとおり、甲1発明において、端子12の少なくとも一部が放熱グリス50Aによって覆われない構成とすることは、電子部品の熱の放熱効率を十分に向上させるという甲1発明が解決すべき課題に反するものであるから、動機付けが存在せず、また、阻害要因を有するといえる。
b 上記(ア)bの主張について、上記aで検討したとおり、甲1には、端子12の少なくとも一部が、半田部70にも放熱グリス50Aにも覆われずに「露出されている」構成については、開示も示唆もされていないから、甲1発明においては、むしろ、端子12の全体を放熱グリス50Aによって覆うことが前提とされているといえる。
c 上記(ア)cの主張について、上記イ(イ)で検討したとおり、甲1発明において、端子12の少なくとも一部が放熱グリス50Aによって覆われない構成とすることは、電子部品の熱の放熱効率を十分に向上させるという甲1発明が解決すべき課題に反するものであるから、当業者により適宜設計される設計的事項に過ぎないとはいえない。
d 上記(ア)dの主張について、上記(2)アのとおり、甲6には、段落0033に「実装基板1の裏面側に実装されている電子部品6は発熱部品であり、これらの電子部品6は放熱のために樹脂2で覆う必要がある」、段落0035に「したがって、必要なところには確実に樹脂2がまわり込んで電子部品6の放熱性能を向上させている」、段落0043に「さらに、図7に示すように、インダクタLF1はコアLF1aに巻線LF1bを巻回した巻線部品であり、本実施形態では、第1の孔10を介して実装基板1の表面側に露出した樹脂2はインダクタLF1のコアLF1aに密着しており、樹脂2による放熱効果でインダクタLF1の発熱が放熱されやすくなる」、段落0052に「さらに、図10に示すように、インダクタL1はコアL1aに巻線L1bを巻回した巻線部品であり、本実施形態では、第1の孔10を介して実装基板1の表面側に露出した樹脂2はインダクタL1のコアL1aに密着しており、樹脂2による放熱効果でインダクタL1の発熱が放熱されやすくなる」、段落0059に「さらに、本実施形態では、第1の孔10を整流器K6の近傍に設けることで、第1の孔10を介して実装基板1の表面側に露出した樹脂2が整流器K6に密着し、樹脂2による放熱効果で整流器K6の発熱が放熱されやすくなる」、段落0074に「図17に示すように、孔13を介して実装基板1の表面側に露出した樹脂2は巻線部品5cのコア5dに密着しており、樹脂2による放熱効果で巻線部品5cの発熱が放熱されやすくなる」との記載がある。
そして、これらの記載によると、甲6において、実装基板1の表面側に実装されるインダクタLF1、インダクタL1、整流器K6、巻線部品5cについては、実装基板1の表面側に露出した樹脂2によって放熱が行われるものの、その他の、実装基板1の表面側に実装される電子部品5は、樹脂2による放熱を行う必要がない部品といえるから、令和6年7月1日提出の意見書第3ページの[図1]に示される甲6における電子部品5は、樹脂2による放熱を行う必要がないものといえる。
[図:0001417612000009.jpg]
そうすると、甲6発明に記載された放熱を行う必要のない電子部品5についての事項を、甲1発明において、電子基板30の一方の面に実装された、放熱を行う電子部品10Aに適用する動機付けは見いだせない。
(ウ)したがって、申立人の意見書における主張は、いずれも採用することができない。
エ 小括
上記イ、ウのとおりであるから、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~7、9~10について
本件発明2~7、9~10は、本件発明1に対して、さらに発明特定事項を追加したものを含む発明である。
よって、上記(3)で示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2~7、9~10は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、申立理由1によって請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、本件発明1~7、9~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、申立理由2によって請求項1~7、9~10に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由3(実施可能要件)について
上記「第3 訂正後の本件発明」のとおり、本件訂正前の請求項8は削除された。これにより、申立人による請求項8に係る特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
3 取消理由3(サポート要件)について
上記「第3 訂正後の本件発明」のとおり、本件訂正前の請求項8は削除された。これにより、請求項8に係る取消理由3は、その対象が存在しないものとなった。
また、本件訂正前の請求項9~10に係る取消理由3は、本件訂正前の請求項8を直接的又は間接的に引用する請求項9~10に対するものであったから、本件訂正前の請求項8が削除された以上、取消理由3によって請求項9~10に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
そして、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~7、9~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~7、9~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正前の請求項8は、上記のとおり削除された。これにより、本件特許の請求項8に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700712