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特許異議申立

2025-700974

離型フィルム付き粘着シート

審判番号
2025-700974
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-245614
登録番号
7659962
請求日
2025年10月09日
審決日
2026年06月16日
公報発行日
2026年09月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日東電工株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人はるか国際特許事務所
  • 【異議申立人】佐々木 香織
審判長/審判官
  • 審判長 光本 美奈子
  • 審判官 山田 貴之
  • 審判官 関根 裕
分類
P1651.537-YAA(C09J) / P1651.536-YAA(C09J) / P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7659962号発明「離型フィルム付き粘着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7659962号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 特許第7659962号の請求項1、6及び7に係る特許を維持する。 特許第7659962号の請求項2~5に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7659962号に係る特許(以下「本件特許」ともいう。)についての出願は、平成29年12月21日にされたものであって、令和7年4月2日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月10日に特許掲載公報が発行された。その後の特許異議の申立ての手続の経緯は次のとおりである。 令和7年10月 9日 特許異議申立人 佐々木 香織(以下「申 立人」という。)による全請求項に係る特 許に対する特許異議の申立て 同年12月23日付け 取消理由通知書 令和8年 3月 3日 意見書及び訂正請求書(特許権者) 同年 3月31日付け 訂正請求があった旨の通知書 なお、前記訂正請求があった旨の通知書に対して、申立人からの応答はなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和8年3月3日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、次のとおりである。 (1)訂正事項1-1 請求項1に「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;および前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シート」と記載されているのを、 「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シート」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項6、7も同様に訂正する。) (2)訂正事項1-2 請求項1の「前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーおよび紫外線吸収剤を含み、」との記載の直後に、 「波長380nmの光透過率が10%以下であり、」を付加する訂正を行う。(請求項1の記載を引用する請求項6、7も同様に訂正する。) (3)訂正事項1-3 前記訂正事項1-2の「波長380nmの光透過率が10%以下であり、」との記載の直後に、 「前記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、単官能モノマーと1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含み、モノマー成分全量100重量部に対する前記多官能モノマーの量が0.05重量部以上であり、」を付加する訂正を行う。(請求項1の記載を引用する請求項6、7も同様に訂正する。) (4)訂正事項1-4 請求項1に「Si原子含有量が0.02~0.07g/m2である、」と記載されているのを、 「Si原子含有量が0.02~0.07g/m2であり、前記第一離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力が、前記第二離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力よりも大きい、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項6、7も同様に訂正する。) (5)訂正事項2 請求項2~5を削除する。 (6)訂正事項3 請求項6に「請求項1~5のいずれか1項に記載の」と記載されているのを、 「請求項1に記載の」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。) (7)訂正事項4 請求項7に「請求項1~6のいずれか1項に記載の」と記載されているのを、 「請求項1または6に記載の」に訂正する。 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~7において、請求項2~7は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1-1~訂正事項1-4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。 3 訂正要件についての判断 (1)訂正事項1-1について ア 訂正の目的 訂正事項1-1は、本件訂正前の請求項1の「粘着シート」の「第二主面」の構成を具体的に特定するもの、すなわち、「第二主面」が「第二離型フィルム」を備えることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項1-1は、訂正前の請求項2の「さらに、前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える」との記載等に基づいて導かれるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか 訂正事項1-1は、前記アのとおり、本件訂正前の請求項1の「粘着シート」の「第二主面」の構成を特定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 (2)訂正事項1-2について ア 訂正の目的 訂正事項1-2は、本件訂正前の請求項1の「粘着シート」について、380nmの光透過率の範囲を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項1-2は、本件訂正前の請求項4の「粘着シートは、波長380nmの光透過率が10%以下である」との記載、及び、本件明細書の段落【0050】の「粘着シート50の波長380nmにおける光透過率は、10%以下が好ましく」との記載等に基づいて導かれるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか 訂正事項1-2は、前記アのとおり、本件訂正前の請求項1の「粘着シート」の光透過率を特定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 (3)訂正事項1-3について ア 訂正の目的 訂正事項1-3は、本件訂正前の請求項1の「粘着シート」に含まれるアクリル系ポリマーの組成を具体的に特定、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項1-3は、本件明細書の【0029】の「アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分が、単官能モノマーと多官能モノマーとを含む場合は」との記載及び同【0027】の「多官能モノマーの使用量は、モノマー成分全量に対して・・・0.05重量部以上であり得る」との記載等に基づいて導かれるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか 訂正事項1-3は、前記アのとおり、本件訂正前の請求項1の「粘着シート」に含まれるアクリル系ポリマーの組成を特定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 (4)訂正事項1-4について ア 訂正の目的 訂正事項1-4は、本件訂正前の請求項1の「粘着シート」の剥離力を限定するものであるから、その訂正の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項1-4は、訂正前の請求項3の「前記第一離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力が、前記第二離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力よりも大きい」との記載等に基づいて導かれるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか 訂正事項1-4は、前記アのとおり、本件訂正前の請求項1の「粘着シート」の剥離力を特定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 (5)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2~5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項2は、訂正前の請求項2~5を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか 訂正事項2は、訂正前の請求項2~5を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 (6)訂正事項3、4について ア 訂正の目的 訂正事項3、4は、本件訂正前の請求項2~5が削除されたことに対応するため、請求項6、7が引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項3、4は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか 訂正事項3、4は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 4 独立特許要件について 本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~7に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項により読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。 5 訂正の適否についての小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載 前記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の請求項1~7に係る発明(以下、項番に対応して「本件訂正発明1」等といい、まとめて「本件訂正発明」ともいう。)は、次のとおりのものである。請求項1の(a,g)等の符号は、分説のため、特許異議申立書17頁の記号を参考にして、合議体が付した。 「【請求項1】 (a,g)第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シートであって、 (b)前記第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え、 (c)前記離型層と前記粘着シートとが接しており、 (d)前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーおよび紫外線吸収剤を含み、 (i)波長380nmの光透過率が10%以下であり、 (j’)前記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、単官能モノマーと1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含み、モノマー成分全量100重量部に対する前記多官能モノマーの量が0.05重量部以上であり、 (e)前記離型層は、分子中に3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、11-ドデセニル基から選ばれるアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの熱硬化物を含むシリコーン系離型層であり、 (f)Si原子含有量が0.02~0.07g/m2であり、 (h)前記第一離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力が、前記第二離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力よりも大きい、離型フィルム付き粘着シート。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 前記紫外線吸収剤がトリアジン系紫外線吸収剤である、請求項1に記載の離型フィルム付き粘着シート。 【請求項7】 前記粘着シートは、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、前記紫外線吸収剤を0.1~10重量部含有する、請求項1または6に記載の離型フィルム付き粘着シート。」 第4 特許異議の申立ての理由、取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載された申立理由 申立人は、後記3の甲第1号証~甲第5号証(以下、番号順に「甲1」等という。)を提出し、次の(1)~(4)の申立理由を主張した。 (1)申立理由1(新規性、進歩性) ア (甲1主の新規性) 本件訂正前の請求項1~3、5に係る発明(以下、項番に対応して「本件発明1」等という。)は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明である。 イ (甲1主の進歩性) 本件発明1~7は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明、甲2及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ (甲2主の進歩性) 本件発明1~7は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ (甲3主の進歩性) 本件発明1~7は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)申立理由2(実施可能要件) ア 本件発明1の(e)の離型層は、どのようにして熱硬化させるものであるのか、明細書には何ら記載されていない。また、明細書の段落0062には、離型層として種々の市販品が例示されているが、いずれの製品が(e)を満たす離型層を形成可能なものであるのか、記載されていない。したがって、本件発明の詳細な説明は、本件発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 イ 本件発明1の(d)について、実施例では、特定の光硬化型アクリル系ポリマーと紫外線吸収剤とを含有する態様が記載されているのみであり、どのような光硬化型アクリル系ポリマーと紫外線吸収剤とを使用しても、光照射面側において、第一離型フィルムの剥離力の増加が生じるものとは想定できない。従って、本件発明の詳細な説明は、本件発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 ウ 本件発明4において、「前記粘着シートは、波長380nmの光透過率が10%以下である」こと(i)が規定されているが、本件明細書段落0050等には、波長380nmにおける光透過率が10%以下が好ましい旨の記載があるものの、実施例において光透過率が測定されておらず、実施例及び比較例が、(i)を満たすものであるのか、記載も示唆もされていない。すなわち、明細書には、どのようにすれば波長380nmにおける光透過率が10%以下である粘着シートが得られるのか、記載されていない。従って、本件発明の詳細な説明は、本件発明4を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (3)申立理由3(サポート要件) ア 本件発明1の(f)について、発明の詳細な説明には、課題を解決するために、離型層のSi原子含有量を定めたことが記載され、離型層中のSi原子含有量を小さくすることにより、離型層中の未反応の熱反応性官能基の量が低減されることが記載されている。しかし、離型層中の未反応の熱反応性基の量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のアルケニル基の含有割合や、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン中のヒドロシリル基の含有割合によって大きく変動するから、離型層中のSi原子含有量に依存するものとはいえない。従って、(f)の範囲であれば、課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体的又は説明が記載されておらず、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 イ 本件発明1では、第一離型フィルム側から光照射を行うのか、その反対面である第二離型フィルム側から光照射を行うのか規定されていないが、本件明細書では、第一離型フィルム側から光照射を行う態様しか記載されていないから、第二離型フィルム側から光照射を行う態様をも含む本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 ウ 本件発明1の(d)について、光硬化型アクリルポリマー及び紫外線吸収剤を含むすべての粘着シートにおいて、光硬化後の剥離量の過度の上昇という課題が存在するものであるか不明であり、さらに、(a)~(c)、(e)、(f)を満たす第一離型フィルムにより、光硬化型アクリルポリマー及び紫外線吸収剤を含むすべての粘着シートに対して、光硬化後の剥離量の過度な上昇が抑制されているともいえない。従って、本件発明1及びこれに直接的又は間接的に従属する本件発明2~7は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて、特許を請求しようとしたものである。 エ 本件発明1では(g)第二離型フィルムを備えることが特定されておらず、本件発明1、2では(h)第一離型フィルムと第二離型フィルムの剥離力の関係が特定されていないから、第一離型フィルムに加えて第二離型フィルムを有することが規定されておらず、また、第一離型フィルムと粘着シートとの剥離力が、第二離型フィルムと粘着シートとの剥離力よりも小さいような態様をも含む本件発明1、2の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。従って、本件発明1及び2、並びにこれらに直接的又は間接的に従属する本件発明4~7は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて、特許を請求しようとしたものである。 オ 本件発明4は、前記粘着シートは、(i)波長380nmの光透過率が10%以下であることを規定するが、実施例において、粘着シートの波長380nmにおける光透過率が測定されておらず、実施例及び比較例が、要件iを満たすものであるのか、記載も示唆もされていないから、出願時の技術常識に照らしても、本件発明4の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。従って、本件発明4、及びこれに直接的又は間接的に従属する本件発明5~7は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて、特許を請求しようとしたものである。 カ 本件発明5は、(j)アクリル系ポリマーが、モノマー成分として1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマー成分を含むことを規定するが、実施例では、プレポリマー100重量部に対して、多官能モノマー成分としてヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を0.15重量部添加して得られた粘着剤組成物が使用されているのみである。従って、多官能モノマー成分の範囲及びその含有量が規定されていない要件jの範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。以上より、本件発明5、及びこれに直接的又は間接的に従属する本件発明6、7は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて、特許を請求しようとしたものである。 (4)申立理由4(明確性要件) 本件発明1では、「第一主面側」、「第一離型フィルム側」から光照射を行うのか、その反対面である「第二主面側」、「第二離型フィルム側」から光照射を行うのか規定されていない。本件明細書によれば、「第一主面側」、「第一離型フィルム側」から光照射を行うことが必須のものであるから、本件発明1、2及びこれに直接的又は間接的に従属する本件発明3~7は、特許を受けようとする発明が明確でない。 2 取消理由通知書による取消理由 取消理由では、前記1(1)の申立理由1の新規性、進歩性のうち、イの甲1を主引例とした進歩性の理由と、前記1(3)の申立理由3のサポート要件のうち、ア~ウに対応する理由を通知した。 3 証拠方法 甲第1号証:特開2015-151473号公報 甲第2号証:特開2016-155981号公報 甲第3号証:特開2017-3906号公報 甲第4号証:特開2012-193221号公報 甲第5号証:特開昭62-86061号公報 4 甲号証の記載 (1)甲1には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は、支持体、光反応性組成物を光反応させて得られる光反応物層、基材フィルム上に剥離剤層を有する光透過性フィルムがこの順で貼り合わされてなる光反応物層含有シート、及び、その製造方法に関する。」 「【0008】 そこで、本発明は、支持体、光反応性組成物を光反応させて得られる光反応物層、基材フィルム上に剥離剤層を有する光透過性フィルムがこの順で貼り合わされてなる光反応物層含有シートであって、前記光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力が大きくなり過ぎることなく、必要時に、光反応物層を変形させることなく、当該光透過性フィルムを光反応物層から容易に剥離することができ、かつ、光透過性フィルムを剥離する際に光反応物層が支持体より剥離してしまうことがなく、光反応物層を目的の用途に使用する前まで光反応物層が支持体から剥離することがない、光反応物層含有シートを提供することを目的とする。また、本発明は、光反応物含有シートの製造方法を提供することも目的とする。」 「【0029】 (1)光透過性フィルム 本発明で使用する光透過性フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に剥離剤層が形成されたものであればよく、基材フィルムの片面だけに剥離剤層が形成されていても、基材フィルムの両面に剥離剤層が形成されてもよい。 【0030】 前記剥離剤層は、分子中に、一般式(1): 【化4】 [図:0001439226000001.jpg] (式中、nは、2~10の整数である) で示される官能基を有するポリオルガノシロキサン、及び、分子中に官能基としてヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン架橋剤を含有する、付加型シリコーン系剥離剤組成物から形成されたものである。 ・・・ 【0033】 一般式(1)で示される官能基としては、3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、11-ドデセニル基等を挙げることができる。これらの中でも、光反応物層に対する剥離力の観点から、5-ヘキセニル基が好ましい。」 「【0051】 乾燥後の剥離剤層の厚さは、30~500nm程度であることが好ましく、40~400nm程度がより好ましく、50~300nm程度がさらに好ましい。剥離剤層の厚さが30nm未満である場合、光透過性フィルムの剥離力が高くなりすぎる場合があり、逆に500nmを超える場合、光透過性フィルムをロール状に巻き取った時に接触する基材と剥離剤層とがブロッキングしやすくなるという問題や、光透過性フィルムの剥離力が高くなるという問題が生じる場合がある。」 「【0085】 さらに、本発明で使用する光反応性組成物には、必要に応じて、粘度調整剤、剥離調整剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤(顔料、染料など)、pH調整剤(酸又は塩基)、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を、本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。」 「【0089】 (3)支持体 本発明で使用する支持体は、光を透過するものであっても、光を透過しないものであってもよい。具体的には、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、紙等が用いられる。また、かかる支持体には必要に応じて、離型処理を施すことができる。 【0090】 支持体への剥離処理としては、特に限定されるものではなく、支持体の光反応物層に対する剥離力が、光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力より高くなるような剥離処理であればよい。具体的には、溶剤可溶性オルガノポリシロキサンレジンを配合して剥離力を調整する方法があり、R73SiO1/2(式中、R7は1価の炭化水素基)及びSiO4/2で示されるシロキサン単位からなるMQレジンを付加型シリコーン組成物等に配合する方法等を挙げることができる。 【0091】 市販されているMQレジンとしては、信越化学工業(株)製のKS-3800、X-92-183、東レ・ダウコーニング社製のSD7292、BY24-843等が挙げられる。また、MQレジンを配合する以外の方法としては、例えば、ビニル基含有付加型シリコーン系剥離剤(-CH=CH2基を有する付加型シリコーン系剥離剤)を使用することもできる。」 「【実施例】 【0107】 以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、以下において「部」および「%」は、別の記載が無い限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。 【0108】 製造例1(光反応性組成物の調製) 2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)40.5質量部、イソステアリルアクリレート(ISA)40.5質量部、4-ヒドロキブチルアクリレート(4HBA)1質量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18質量部に、光重合開始剤として、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン0.05質量部を4つロフラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に暴露することによって部分的に光重合したシロップを得た。この部分重合したシロップ100質量部に、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート0.3質量部を均一に混合し、アクリル系粘着剤(1)(光反応性組成物)を得た。」 「【0111】 製造例4(付加型シリコーン系剥離剤組成物の調製) ヘキセニル基含有付加型シリコーン(商品名:LTC300B、30%トルエン溶液、東レ・ダウコーニング社製)100質量部、白金触媒(商品名:SRX212、東レ・ダウコーニング社製)1質量部、希釈溶媒としてのトルエン1500質量部、ノルマルヘキサン1500質量部を混合し、付加型シリコーン系剥離剤組成物(1)を製造した。 【0112】 製造例5~9(付加型シリコーン系剥離剤組成物の調製) 下記表1に示す組成にした以外は、製造例4と同様の方法で付加型シリコーン系剥離剤組成物(2)~(6)を製造した。 【0113】 【表1】 [図:0001439226000002.jpg] 【0114】 表1中の略記は、それぞれ以下の通りである。 LTC300B:ヘキセニル基含有付加型シリコーン(分子中にヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン、及び、分子中にヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン架橋剤を含有する、付加型シリコーン系剥離剤、30%トルエン溶液、東レ・ダウコーニング社製) LTC761:ヘキセニル基含有付加型シリコーン(分子中にヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン、及び、分子中にヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン架橋剤を含有する、付加型シリコーン系剥離剤、30%トルエン溶液、東レ・ダウコーニング社製) SRX211:ビニル基含有付加型シリコーン(30%トルエン溶液、東レ・ダウコーニング社製) KS-847T:ビニル基含有付加型シリコーン(30%トルエン溶液、信越化学工業(株)製) X-62-2829:ビニル基含有付加型シリコーン(30%トルエン溶液、信越化学工業(株)製) SRX212:白金触媒(東レ・ダウコーニング社製) CAT-PL-50T:白金触媒(信越化学工業(株)製) 【0115】 実施例1 (離型処理した光透過性フィルムの作製) マイヤーバー#6を用いて、製造例4で製造した付加型シリコーン系剥離剤組成物(1)を厚さ50μmのポリエステルフィルム(基材フィルム、商品名:ルミラーS-10、東レ社製)に塗布した後、熱風乾燥機で130℃×1分間加熱し、剥離剤層(塗布量:0.07g/m2、厚さ:70nm)を有する光透過性フィルムを作製した。 【0116】 (支持体の作製) ビニル基含有シリコーン剥離剤(商品名:KS-3703、信越化学工業(株)製)92質量部、シリコンコントール剤(商品名:KS-3800、信越化学工業(株)製)8質量部、白金触媒(商品名:CAT-PL-50T、信越化学工業(株)製)3質量部、希釈溶媒としてのトルエン680質量部、ノルマルヘキサン680質量部を混合し、支持体用剥離剤溶液(1)を調整した。マイヤーバー#6を用いて、調整した支持体用剥離剤溶液(1)を厚さ50μmのポリエステルフィルム(基材フィルム、商品名:ルミラーS-10、東レ社製)に塗布した後、熱風乾燥機で130℃×1分間加熱し、剥離剤層(塗布量:0.1g/m2)を有する支持体(1)を作製した。 【0117】 (光反応物層含有シートの作製) 製造例1で得られたアクリル系粘着剤(1)を、前記光透過性フィルムの剥離層面にベーカー式アプリケーターを用いて、光反応後のアクリル系粘着剤層(光反応物層)の厚みが100μmとなるように塗布して塗布層を形成した。支持体(1)上の剥離剤層と前記塗布層と接するように、支持体(1)を前記塗布層上に貼り合せてサンプルを作製した。 当該サンプルの光透過性フィルム側から、ブラックライトを照度5mW/cm2、光量300mJ/cm2・minで3分間照射して光反応を行い、光反応物層含有シートを作製した。」 「【0128】 前記実施例及び比較例で得られた光反応物層含有シートについて以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。 【0129】 <光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力> 実施例及び比較例で得られた光反応物層含有シートを50mm幅に切り出し、ブラックライト照射から23℃で0.5時間保存後、引張試験機を用いて、光反応物層含有シートから光透過性フィルムを剥離する際の剥離力を測定した。剥離条件は、以下の通りである。 (剥離条件) 剥離角度:180° 引張速度:0.3m/min 測定温度:23℃ 【0130】 <支持体の光反応物層に対する剥離力> 光反応物層含有シートから支持体を剥離したこと以外は、前記<光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力>と同様の方法で剥離力を測定した。 【0131】 【表2】 [図:0001439226000003.jpg] 【0132】 実施例で得られた光反応物層含有シートは、支持体の光反応物層に対する剥離力が、光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力より高く、かつ、光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力が、0.5N/50mm以下であるため、光反応物層が支持体より剥離することなく、光透過性フィルムを光反応物層から容易に剥離することができた。また、実施例で得られた光反応物層含有シートでは、光透過性フィルムを剥離した際に、光反応物層が変形することがなかった。」 (2)甲2には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は、画像表示装置におけるカバーガラス又はカバープラスチックと偏光フィルムとの間に位置する粘着剤層を形成するための紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物に関する。また本発明は、前記紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物から形成される紫外線硬化型アクリル系粘着剤層、前記紫外線硬化型アクリル系粘着剤層を有する粘着剤層付き偏光フィルム、前記紫外線硬化型アクリル系粘着剤層の製造方法、及び画像表示装置に関する。・・・」 「【発明の効果】 【0021】 本発明の紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物は、紫外線照射による重合方法で紫外線吸収機能を有する粘着剤層を形成することができるため、150μm以上の厚手の粘着剤層も形成が可能になり、幅広い厚みの粘着剤層を形成することができるものである。本発明の粘着剤層は優れた紫外線吸収機能を有するため、当該粘着剤層を画像表示装置に用いることで、液晶パネル、有機EL素子、偏光子等をはじめとする光学部材の劣化を抑制することができる。」 「【0046】 前記(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、前記例示の単官能性モノマーの他に、粘着剤の凝集力を調整するために、必要に応じて多官能性モノマーを含有することができる。 【0047】 多官能性モノマーは、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を少なくとも2つ有するモノマーであり、例えば、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート・・・を好適に使用することができる。多官能性モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 【0048】 多官能性モノマーの使用量は、その分子量や官能基数等により異なるが、単官能性モノマーの合計100重量部に対して、3重量部以下で用いることが好ましく、2重量部以下がより好ましく、1重量部以下がさらに好ましい。また、下限値としては特に限定されないが、0重量部以上であることが好ましく、0.001重量部以上であることがより好ましい。多官能性モノマーの使用量が前記範囲内であることにより、接着力を向上することができる。」 「【0050】 本発明の紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物は、紫外線吸収剤を含むものである。 【0051】 紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、1分子中にヒドロキシル基を2個以下有するトリアジン系紫外線吸収剤、及び、1分子中にベンゾトリアゾール骨格を1個有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも1種の紫外線吸収剤であることが、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物の形成に用いられるモノマーへの溶解性が良好であり、かつ、波長380nm付近での紫外線吸収能力が高いため特に好ましい。」 「【0084】 本発明の紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物により形成された粘着剤層の波長380nmにおける透過率が40%以下あり、20%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましい。波長380nmにおける透過率波長が前記範囲であることにより、入射する紫外線を十分に遮断することができるため、液晶パネル、有機EL素子、偏光子等をはじめとする光学部材の劣化を抑制することができる。」 「【0117】 前記剥離フィルムの厚みは、通常5~200μmであり、好ましくは5~100μm程度である。前記剥離フィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型及び防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理をすることもできる。特に、前記剥離フィルムの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜行うことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。」 「【実施例】 【0125】 以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部及び%はいずれも重量基準である。実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。 【0126】 製造例1 (アクリル系粘着剤組成物(a-1)の製造) アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)78重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18重量部、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)4重量部から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤(先添加光重合開始剤)として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、BASF社製)0.035重量部、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:イルガキュア651、BASF社製)0.035重量部を配合した後、粘度(計測条件:BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物(重合率:8%)を得た。次に、該プレポリマー組成物に、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.15重量部、シランカップリング剤(商品名:KBMー403、信越化学工業(株)製)0.3重量部を添加して混合し、紫外線照射することでアクリル系粘着剤組成物(a-1)を得た。 ・・・ 【0128】 実施例1 アクリル系粘着剤組成物(a-1)に、ブチルアクリレートに固形分15%となるように溶解させた2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名:Tinosorb S、BASFジャパン社製)1.4部と、後添加重合開始剤として、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、BASFジャパン社製)0.2部を添加し撹拌することにより紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物を得た。 【0129】 上記紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物を、剥離フィルムの剥離処理された面上に、粘着剤層形成後の厚さが150μmになるように塗布して塗布層を形成し、次いで、該塗布層の表面に剥離フィルムを貼り合わせた。その後、照度:6.5mW/cm2、光量:1500mJ/cm2の条件で紫外線照射を行い、前記塗布層を光硬化させて、粘着剤層の両面に剥離フィルムを有する粘着シートを形成した。」 (3)甲3には、次の記載がある。 「【0157】 また、前記粘着剤層A、粘着剤層Bは、支持体に形成したのち、片保護偏光フィルムに転写することができる。前記支持体としては、例えば、剥離処理したシートを用いることができる。剥離処理したシートとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。・・・ ・・・ 【0162】 シリコーン系離型層としては、例えば、付加反応型シリコーン樹脂が挙げられる。例えば、信越化学工業製KS-774,KS-775,KS-778,KS-779H,KS-847H,KS-847T,東芝シリコーン製TPR-6700,TPR-6710,TPR-6721,東レ・ダウ・コーニング製SD7220,SD7226等が挙げられる。シリコーン系離型層の塗布量(乾燥後)は0.01~2g/m2、好ましくは0.01~1g/m2、さらに好ましくは0.01~0.5g/m2の範囲が好ましい。」 「【0173】 紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤・・・等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、1分子中にヒドロキシル基を2個以下有するトリアジン系紫外線吸収剤、及び、1分子中にベンゾトリアゾール骨格を1個有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも1種の紫外線吸収剤であることが、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物の形成に用いられるモノマーへの溶解性が良好であり、かつ、波長380nm付近での紫外線吸収能力が高いため特に好ましい。 ・・・ 【0179】 紫外線吸収剤合は、粘着剤層Aに含有されている態様が好ましい。前記紫外線吸収剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分100重量部に対して、0.1~5重量部程度であることが好ましく、0.5~3重量部程度であることがより好ましい。紫外線吸収剤の添加量を前記範囲とすることで、粘着剤層の紫外線吸収機能を十分に発揮することでき、かつ、紫外線重合の妨げとはならないため、好ましい。」 「【0187】 <粘着剤層Aの作製> 粘着剤層Aは、下記のように表1の記載に従って調製した。 【0188】 製造例1(A-1) <プレポリマーの調製> 温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、モノマー成分として、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)40部、イソステアリルアクリレート40部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18部および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)2部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」,BASF社製)0.2部を配合した後、粘度(計測条件:BH粘度計No.ローター,10rpm,測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。 【0189】 <アクリル系粘着剤の調製> 次に、該プレポリマー組成物100部に、多官能性モノマーとしてヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.2部、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」,信越化学工業株式会社製)0.3部を添加して混合し、紫外線硬化型アクリル系粘着剤を得た。 【0190】 製造例2、3、5(A-2、A-3、A-5) 製造例1において、表1に示すように、<プレポリマーの調製>における、モノマー成分、光重合開始剤の使用量を変更したこと、<アクリル系粘着剤の調製>における多官能性モノマーの種類、使用量を変更したこと以外は製造例1と同様にして、プレポリマーを調製して、紫外線硬化型アクリル系粘着剤を得た。なお、製造例3では、紫外線硬化型アクリル系粘着剤を調製する際に、Tinosorb Sを1部配合した。 【0191】 <粘着剤層Aの形成> 片面をシリコーンで剥離処理した厚み50μmのポリエステルフィルム(剥離ライナー)の剥離処理面に、上記製造例1~3、5で得られた紫外線硬化型アクリル系粘着剤(A-1、2、3、5)を塗布し、表2に示す厚さの塗布層(粘着剤層)を形成した。次いで、塗布された粘着剤層の表面に、片面をシリコーンで剥離処理した厚み75μmのポリエステルフィルム(剥離ライナー)を、当該フィルムの剥離処理面が塗布層側(粘着剤層)になるように貼り合せた。これにより、モノマー成分の塗布層を酸素から遮断した。このようにして得られた塗布層を有するシートに厚み50μmのポリエステルフィルムの面上から、ランプ直下の照射面における照射強度が5mW/cm2になるように位置調節したブラックライトにより、積算光量が3000mJ/cm2となるまで紫外線照射を行って、塗布層を硬化(第1硬化)させて粘着剤層Aを形成した。これにより、粘着剤層Aの両面に剥離ライナーを有する粘着シートを作製した。」 「【0196】 【表1】 [図:0001439226000004.jpg] 【0197】 表1中、 2EHAは、2-エチルヘキシルアクリレート; ISTAは、イソステアリルアクリレート NVPは、N-2-ビニルピロリドン; 2HBAは、2-ヒドロキシブチルアクリレート; HDAAは、ヘキサンジオールジアクリレート; TMPTAは、トリメチロールプロパントリアクリレート; KBM-403は、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」,信越化学工業株式会社製); タケネートD110Nは、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井化学(株)製「タケネートD110N」); イルガキュア184は、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」,BASF社製); AIBNは、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル; Tinosorb Sは、2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製)を、示す。」 (4)甲4には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は、紫外線硬化粘着剤層が高速においても安定な剥離特性を有する粘着シートに関するものである。」 「【0004】 離型フィルムに要求される特性として紫外線硬化反応に影響を与えず、剥離速度の影響が少ないことが求められる。」 「【0025】 次に離型層の形成について説明する。すなわち、本発明における離型フィルムを構成する離型層は上述の塗布延伸法(インラインコーティング)等のフィルム製造工程内において、ポリエステルフィルム上に設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、何れの手法を採用してもよい。・・・ 【0026】 また、本発明における離型フィルムを構成する離型層は離型性を良好とするために硬化型シリコーン樹脂を含有するのが好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。 【0027】 硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等、何れの硬化反応タイプでも用いることができる。具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS-774、KS-775、KS-778、KS-779H、KS-847H、KS-856、X-62-2422、X-62-2461、X-62-1387、KNS-3051、X-62-1496、KNS320A、KNS316、X-62-1574A/B、X-62-7052、X-62-7028A/B、X-62-7619、X-62-7213、GE東芝シリコーン(株)製YSR-3022、TPR-6700、TPR-6720、TPR-6721、TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9425、XS56-A2775、XS56-A2982、UV9430、TPR6600、TPR6604、TPR6605、SM3200、SM3030、東レ・ダウコーニング(株)製DKQ3-3061、DKQ3-202、DKQ3-203、DKQ3-204、DKQ3-205、DKQ3-210、SRX357、SRX211、SD7220、LTC303E、LTC750A、LTC760A、SP7259、BY24-468C、SP7248S、BY24-452、SP7268S、SP7265S、LTC1000M、LTC1050L、SYLOFF7900、SYLOFF7198、SYLOFF22A等が例示される。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。 【0028】 本発明においては、硬化反応後のシリコーン層中にケイ素-水素結合(SiH)の残存量が1平方メートル当たり20ミリモル以下とする必要がある。20ミリモル%を超えると、高速剥離時に剥離力が大きくなり好ましくない。 ・・・ 【0030】 本発明において、・・・離型層の塗工量は塗工性の面から、通常0.01~0.5g/m2、好ましくは0.05~0.2g/m2の範囲である。塗工量が0.01g/m2未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な剥離特性を得るのが困難になる場合がある。一方、0.5g/m2を超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。」 (5)甲5には、次の記載がある。 ア 1頁左下欄2~3行 「1.発明の名称 剥離被覆用シリコーン組成物」 イ 1頁右下欄下4行~2頁左上欄6行 「〔産業上の利用分野〕 本発明は接着性物質の基材からの剥離を助けるための基材を処理するための改良された組成物及び方法に関する。具体的には、本発明はSiH基とオレフィン基の金属触媒反応により硬化するシリコーン組成物に関する。より詳しくは、本発明はより低温において、より迅速に且つより少ない残存反応性官能基をもって硬化し、その結果塗布される接着剤とのその後の相互作用が最少化されるシリコーン組成物に関する。」 ウ 3頁左下欄下5行~4頁左上欄12行 「本発明の硬化性組成物はオレフィン系ポリジオルガノシロキサン、金属ヒドロシリル化触媒、メチルヒドロゲンボリシロキサン及び金属ヒドロシリル化触媒のための抑制剤を含むものである。 ・・・ このオレフィン系重合体は一般式R’2SiOのジオルガノシロキサン単位と一般式R’3SiO1/2(式中R’はメチル基或いは末端不飽和結合を含有する炭化水素基を示す)で表わされる鎖末端単位により構成される。一般的に、これらの重合体中のR’基は90~99.5モル%のメチル基及び0.5~10モル%の末端不飽和基を含有する炭化水素基である。不飽和基は独立にビニル基及び一般式-R(CH2)mCH-CH2〔式中Rは-(CH2)n-或いは-(CH2)pCH-CH-を表わし、mは1,2、又は3の値を表わし、nは3又は6の値を有し、及びpは3,4、或いは5の値を有する〕により表わされる高級アルケニル基よりなる群から独立に選ばれる。不飽和基の少なくとも50モル%は高級アルケニル基である。高級アルケニル基を含有するシロキサン重合体はSiH官能性重合体との金属触媒硬化反応においてビニル含有重合体よりもより速く且つ完全に反応することが見出された。その結果、重合体中の実質的に全ての不飽和基が高級アルケニル基であることがより好ましい。」 第5 取消理由で通知した理由についての当審の判断 1 取消理由1(甲1を主引例とした進歩性) (1)甲1に記載された発明 甲1の【0115】~【0117】の「実施例1」の「光反応物層含有シート」に着目し、「製造例4」の「付加型シリコーン系剥離剤組成物(1)」について【0111】の記載を参照し、「製造例1」の「アクリル系粘着剤(光反応性組成物)」について【0108】の記載を参照し、剥離力について【0131】の【表1】の結果を参照すれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲1発明) 「製造例4で製造した付加型シリコーン系剥離剤組成物(1)、すなわち、ヘキセニル基含有付加型シリコーン100質量部と、白金触媒1質量部を、希釈溶媒で混合して調整した製造例4の付加型シリコーン系剥離剤組成物(1)を、ポリエステルフィルムに塗布した後、熱風乾燥機で加熱し、剥離剤層(塗布量:0.07g/m2、厚さ:70nm)を有する光透過性フィルムを作製し、 ビニル基含有シリコーン剥離剤92質量部、シリコンコントール剤8質量部、白金触媒3質量部、希釈溶媒としてのトルエン680質量部、ノルマルヘキサン680質量部を混合して調整した支持体用剥離剤溶液(1)をポリエステルフィルムに塗布した後、熱風乾燥機で加熱し、剥離剤層(塗布量:0.1g/m2)を有する支持体(1)を作製し、 前記光透過性フィルムの剥離剤層の面に、製造例1のアクリル系粘着剤(1)(光反応性組成物)を塗布して、塗布層を形成し、前記塗布層に、剥離剤層(塗布量:0.1g/m2)を有する支持体(1)の剥離剤層の面を貼り合わせてサンプルを作製し、 前記サンプルに対して、光透過性フィルム側からブラックライトを照射して光反応を行って作製した、光反応物層含有シートであって、 前記製造例1のアクリル系粘着剤(光反応性組成物)は、2-エチルヘキシルアクリレートとイソステアリルアクリレートと4-ヒドロキシブチルアクリレートとN-ビニルピロリドンに光重合開始剤を加えて部分的に光重合して得たシロップ100質量部に架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート0.3質量部を混合して得たものであり、 光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力は0.43N/50mmであり、支持体の光反応物層に対する剥離力は0.8N/mmである、 光反応物層含有シート」 (2)対比・判断 ア 本件訂正発明1 (ア)甲1発明の「光透過性フィルム」が本件訂正発明1の「第一離型フィルム」に、「支持体(1)」が「第二離型フィルム」に相当するものとした場合について 本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「光透過性フィルム」及び「支持体(1)」は、本件訂正発明1の「第一離型フィルム」及び「第二離型フィルム」のいずれにも対応させ得るが、まず、甲1発明の「光透過性フィルム」が本件訂正発明1の「第一離型フィルム」に、「支持体(1)」が「第二離型フィルム」に相当するものとして対比を行うと、甲1発明の「光反応物層」、「光透過性フィルム」、「支持体(1)」及び「光反応物層含有シート」は、本件訂正発明1の(a,g)の「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート」、「粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム」、「粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルム」及び「離型フィルム付き粘着シート」に、それぞれ相当する。 甲1発明の「剥離剤層(塗布量:0.07g/m2、厚さ:70nm)を有する光透過性フィルム」は、本件訂正発明1の「(b)前記第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え」に相当する。 甲1発明の「光反応物層」は、「光透過性フィルムの剥離剤層の面」に形成された「塗布層」が光反応して「光反応物層」となったものであるから、甲1発明は、本件訂正発明1の「(c)前記離型層と前記粘着シートとが接しており」に相当する構成を備える。 甲1発明の「光透過性フィルム」の「剥離剤層」は、「ヘキセニル基含有付加型シリコーン」由来の「製造例4で製造した付加型シリコーン系剥離剤組成物(1)」を塗布・加熱して作製したものであるから、本件訂正発明1の「(e)前記離型層は、分子中に3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、11-ドデセニル基から選ばれるアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの熱硬化物を含むシリコーン系離型層であり」に相当する。 甲1発明の「光反応物層」は、「2-エチルヘキシルアクリレート」等のモノマーを部分重合させたシロップ100質量部に、多官能モノマーである「トリメチロールプロパントリアクリレート」0.3質量部を混合して得た「製造例1のアクリル系粘着剤(光反応性組成物)」を塗布して得た「塗布層」が光反応して「光反応物層」となったものであるから、甲1発明は、本件訂正発明1の「(h)前記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、単官能モノマーと1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含み、モノマー成分全量100重量部に対する前記多官能モノマーの量が0.05重量部以上であり」に相当する構成を備える。 してみれば、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「(a,g)第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シートであって、 (b)前記第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え、 (c)前記離型層と前記粘着シートとが接しており、 (j’)前記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、単官能モノマーと1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含み、モノマー成分全量100重量部に対する前記多官能モノマーの量が0.05重量部以上であり、 (e)前記離型層は、分子中に3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、11-ドデセニル基から選ばれるアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの熱硬化物を含むシリコーン系離型層である、離型フィルム付き粘着シート。」 <相違点1-1> 本件訂正発明1は「(d)前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーおよび紫外線吸収剤を含み、(i)波長380nmの光透過率が10%以下であ」るのに対し、甲1発明は、紫外線吸収剤を含まず、波長380nmの光透過率も不明である点。 <相違点1-2> 第一離型フィルムの離型層が、本件訂正発明1は「(f)Si原子含有量が0.02~0.07g/m2」であるのに対し、甲1発明はSi原子含有量が不明である点。 <相違点1-3> 本件訂正発明1は「(h)前記第一離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力が、前記第二離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力よりも大きい」のに対し、甲1発明は、光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力は0.43N/50mmであり、支持体の光反応物層に対する剥離力は0.8N/50mmであって、本件訂正発明1の剥離力の大小関係とは逆の関係にある点。 事案に鑑み、まず、相違点1-3について検討する。甲1発明の解決しようとする課題は、甲1の【0008】に記載されるとおり、光透過性フィルムを光反応物層から容易に剥離することができ、かつ、光透過性フィルムを剥離する際に光反応物層が支持体より剥離してしまうことがない光反応物層含有シートを提供することである。そして、その課題を解決する手段として、光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力を、支持体の光反応物層に対する剥離力よりも小さくすることを必須の構成としており、さらに、同【0132】には、甲1の「実施例で得られた光反応物層含有シートは、支持体の光反応物層に対する剥離力が、光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力より高く、かつ、光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力が、0.5N/50mm以下であるため、光反応物層が支持体より剥離することなく、光透過性フィルムを光反応物層から容易に剥離することができた。」と記載されるとおりの効果を奏するものである。 すなわち、甲1発明では、光透過性フィルムが容易に剥離されること、及び光反応物層が支持体側に残ること、を両立させるために、光透過性フィルムの剥離力は、支持体の剥離力よりも小さく設定されている。このように、甲1発明は、第一離型フィルムの剥離力が第二離型フィルムの剥離力よりも大きいことを要件とする本件訂正発明1とは、剥離力の関係において、相反する技術思想を有するものである。 そうすると、甲1発明において、光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力を、支持体の光反応物層に対する剥離力よりも大きくすることは、当該発明の目的に反するものであり、当業者が容易になし得たことではないから、他の甲号証の記載を検討するまでもなく、前記相違点1-3は容易想到なものではない。 (イ)甲1発明の「光透過性フィルム」が本件訂正発明1の「第二離型フィルム」に、「支持体(1)」が「第一離型フィルム」に相当するものとした場合について 次に、甲1発明の「支持体(1)」が本件訂正発明1の「第一離型フィルム」に、「光透過性フィルム」が「第二離型フィルム」に相当するものとして対比を行うと、甲1発明の「光反応物層」、「支持体(1)」、「光透過性フィルム」及び「光反応物層含有シート」は、本件訂正発明1の(a,g)の「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート」、「粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム」、「粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルム」及び「離型フィルム付き粘着シート」に、それぞれ相当する。 甲1発明の「剥離剤層(塗布量:0.1g/m2)を有する支持体(1)」は、本件訂正発明1の「(b)前記第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え」に相当する。 甲1発明の「塗布層」は、光反応を経て「光反応物層」となるものであって、「剥離剤層(塗布量:0.1g/m2)を有する支持体(1)の剥離剤層の面」が貼り合わせられているから、甲1発明は、本件訂正発明1の「(c)前記離型層と前記粘着シートとが接しており」に相当する構成を備える。 甲1発明の「光反応物層」は、「2-エチルヘキシルアクリレート」等の単官能モノマーを部分重合させたシロップ100質量部に、多官能モノマーである「トリメチロールプロパントリアクリレート」0.3質量部を混合して得た「製造例1のアクリル系粘着剤(光反応性組成物)」を塗布して得た「塗布層」が光反応して「光反応物層」となったものであるから、本件訂正発明1の「(j’)前記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、単官能モノマーと1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含み、モノマー成分全量100重量部に対する前記多官能モノマーの量が0.05重量部以上であり」に相当する構成を備える。 甲1発明の「光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力は0.43N/50mmであり、支持体の光反応物層に対する剥離力は0.8N/mmである」は、本件訂正発明1の「(h)前記第一離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力が、前記第二離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力よりも大きい」に相当する。 してみれば、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「(a,g)第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シートであって、 (b)前記第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え、 (c)前記離型層と前記粘着シートとが接しており、 (j’)前記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、単官能モノマーと1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含み、モノマー成分全量100重量部に対する前記多官能モノマーの量が0.05重量部以上であり、 (h)前記第一離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力が、前記第二離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力よりも大きい、離型フィルム付き粘着シート。」 <相違点1-1> 本件訂正発明1は「(d)前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーおよび紫外線吸収剤を含み、(i)波長380nmの光透過率が10%以下であ」るのに対し、甲1発明は、紫外線吸収剤を含まず、波長380nmの光透過率も不明である点。 <相違点1-2> 本件訂正発明1は「(f)Si原子含有量が0.02~0.07g/m2」であるのに対し、甲1発明はSi原子含有量が不明である点。 <相違点1-4> 本件訂正発明1は「(e)前記離型層は、分子中に3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、11-ドデセニル基から選ばれるアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの熱硬化物を含むシリコーン系離型層」であるのに対し、甲1発明は「ビニル基含有シリコーン剥離剤」の熱硬化物を含む剥離剤層である点。 事案に鑑み、まず、相違点1-4について検討する。甲1発明の「剥離剤層(塗布量:0.1g/m2)を有する支持体(1)」の「剥離剤層」について、甲1の【0090】及び【0091】には「支持体への剥離処理としては、特に限定されるものではなく、支持体の光反応物層に対する剥離力が、光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力より高くなるような剥離処理であればよい。具体的には、溶剤可溶性オルガノポリシロキサンレジンを配合して剥離力を調整する方法があり、R73SiO1/2(式中、R7は1価の炭化水素基)及びSiO4/2で示されるシロキサン単位からなるMQレジンを付加型シリコーン組成物等に配合する方法等を挙げることができる。・・・また、MQレジンを配合する以外の方法としては、例えば、ビニル基含有付加型シリコーン系剥離剤(-CH=CH2基を有する付加型シリコーン系剥離剤)を使用することもできる。」と記載され、甲1発明の「支持体(1)」の「剥離剤層」は、支持体の光反応物層に対する剥離力が、光透過性フィルムの光反応物層に対する剥離力より高くなるように、同【0030】の「-(CH2)n-CH=CH2(nは2~10)」の官能基を必須とする「光透過性フィルム」の「剥離剤層」ではなく、あえて、ビニル基含有付加型シリコーン系剥離剤(前記式でnが0の官能基に該当)を使用するものである。 そうすると、「支持体(1)」の光反応物層に対する剥離力が、「光透過性フィルム」の光反応物層に対する剥離力より高くなるようにしたい甲1発明において、ビニル基含有付加型シリコーン系剥離剤の熱硬化物を含む「支持体(1)」の「剥離剤層」を、分子中に3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、11-ドデセニル基から選ばれるアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの熱硬化物に変更することは、甲1発明の設計思想に反するものであり、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。また、他の甲号証も、甲1発明においてそのように変更することを動機づけるものではない。 (ウ)本件訂正発明1の小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件訂正発明6、7 本件訂正発明6、7は、本件訂正発明1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、前記アの相違点に係る特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件訂正発明6、7は、前記アと同じ理由により、甲1発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 取消理由2(サポート要件:申立理由3(前記第4の1(3)ア~ウに対応。) (1)前提 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。 (2)本件訂正発明の解決しようとする課題 本件訂正発明の課題は、本件特許の明細書の段落【0007】等の記載からみて、「紫外線吸収剤を含む光硬化性粘着剤組成物に、離型フィルムを介して紫外線を照射して光硬化を行うと、光照射面の離型フィルムと光硬化後の粘着シートとの剥離力が大幅に上昇し、被着体との貼り合わせ時に離型フィルムの剥離が困難となる場合がある」との知見のもと、「紫外線カット性を有し、かつ離型フィルムとの剥離性が良好な離型フィルム付き粘着シート」を提供することと認められる。 (3)本件訂正発明1 ア 離型層のSi原子含有量と剥離力の関係 本件訂正発明1において、「(a,g)・・・前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルム・・・」を備え、「(h)前記第一離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力が、前記第二離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力よりも大きい」ことが特定された。 また、第一離型フィルムの離型層は、「(f)Si原子含有量が0.02~0.07g/m2」であることが特定されている。 イ 光照射の方向 本件訂正発明1において、光照射の方向は特定されていない。 ウ 粘着シートに含まれるアクリル系ポリマー及び紫外線吸収剤 本件訂正発明1の粘着シートに含まれる「光硬化型アクリル系ポリマー」について、「(j’)前記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、単官能モノマーと1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含み、モノマー成分全量100重量部に対する前記多官能モノマーの量が0.05重量部以上」であることが特定された。 また、本件訂正発明1の粘着シートに含まれる「紫外線吸収剤」について、「(i)波長380nmの光透過率が10%以下」であることが特定された。 エ 課題との関係 本件訂正発明1は、前記アのとおり、粘着シートとの剥離力が大きい「第一離型フィルム」の離型層のSi原子含有量が0.02~0.07g/m2であること(f)を特定する。 加えて、第一離型フィルムの離型層は、「(e)前記離型層は、分子中に3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、11-ドデセニル基から選ばれるアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの熱硬化物を含むシリコーン系離型層」であることが特定されており、このような特定の高級アルケニル基を有する付加反応型のシリコーン離型剤については、特許権者が令和8年3月3日提出の意見書(13頁下8行~14頁最終行)において、「ビニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いた場合、Si原子とC=C結合の距離が小さいため、ビニル基のC=C結合はポリオルガノシロキサンの樹脂マトリクス中に埋まりやすく、未反応で残存しやすい一方、3-ブテニル基、4-ペンテニル基・・・11-ドデセニル基は、ポリオルガノシロキサンのSi原子から離れた位置にC=C結合を有しているため、アルケニルのC=C結合は未反応で残存し難いため、熱硬化後のシリコーン離型層では、ポリオルガノシロキサンのアルケニル基の大半が反応しているが、不可避的に一定量のC=C結合が未反応で残存し、粘着剤組成物を光硬化する際の剥離力上昇の原因となる」との趣旨の説明をしている。この説明を要約すると、シリコーン系離型層の原料として、(e)で特定されるような高級アルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることにより、未反応で残存するC=C結合の量が少なくなり、未反応のC=C結合量が少ない場合は、単位面積あたりのSi原子の量と、未反応で残存するC=C結合の量の間に一定の相関関係が生じる、というものである。 この説明について、本件明細書の発明の詳細な説明をみると、発明の課題を解決する手段として、【0009】に「・・・光硬化性粘着剤組成物への光照射面側に付設される第一離型フィルムとして、所定のシリコーン系離型層を備える離型フィルムを用いることにより、粘着剤が紫外線吸収剤を含む場合でも、剥離力の過度の上昇を抑制できる。第一離型フィルムのシリコーン系離型層は、Si原子含有量が0.02~0.07g/m2であることが好ましい。」と記載され、そのメカニズムについて、【0073】に「・・・紫外線吸収剤を含む光硬化性粘着剤組成物に照射した紫外光の大半は、紫外線吸収剤により吸収される。・・・紫外線吸収剤が光を吸収すると、光エネルギーが熱エネルギーに変換されて温度が上昇する。・・・そのため、離型層15中の未反応の熱反応性官能基(ビニル基、アルケニル基、アルコキシシリル基、シラノール基、ヒドロシリル基等)と粘着剤組成物中の化合物とが反応し、接着力(剥離力)が上昇すると考えられる。」と記載され、同【0074】には「シリコーン系離型層15の単位面積あたりのSi原子含有量を小さくすることにより、離型層15中の未反応の熱反応性官能基の量が低減する。そのため、本発明においては、粘着剤組成物層15中の化合物と反応可能な離型層15中の残存反応性官能基の量が小さく、光硬化後の粘着シート50と離型フィルム10との剥離力の過度の上昇を抑制できると考えられる。」と記載されている。 また、本件発明に対応する実施例として、本件明細書の【0093】の【表1】には、離型層のSi含有量(mgはgに換算)が0.0458~0.0626(g/m2)の実施例1~6は、剥離力が0.35~0.99(N/50mm)であり、離型層のSi含有量が0.0767~0.114(g/m2)の比較例1~3は、剥離力が1.23~2.46(N/50mm)であることが示され、全体として、粘着剤層のSi原子含有量が小さい方が、剥離力が小さい値になる傾向を読み取ることができる。 そうすると、一般的には、離型層のSi含有量と、離型層中の単位面積あたりの熱反応性官能基の量や剥離力との間に、相関関係がないことが技術常識であったとしても、本件訂正発明1で特定されるような特定の条件のもと、粘着シートとの剥離力が大きい方の「第一離型フィルム」の離型層において、「(e)前記離型層は、分子中に3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、11-ドデセニル基から選ばれるアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの熱硬化物を含むシリコーン系離型層」かつ「(f)Si原子含有量が0.02~0.07g/m2」であることが特定された離型層は、粘着シートとの剥離性が良好であることを理解でき、「第一離型フィルム」よりも粘着シートとの剥離力が小さい「第二離型フィルム」も同様に、粘着シートとの剥離性が良好であることを理解できる。 また、本件訂正発明1は、前記ウのとおり、「(i)波長380nmの光透過率が10%以下」であるから、紫外線カット性を有することを理解できる。 そうすると、前記イの光の照射方向が特定されていなくとも、本件訂正発明1は、(a,g)~(h)の特定事項により、前記(2)の「紫外線カット性を有し、かつ離型フィルムとの剥離性が良好な離型フィルム付き粘着シート」を提供するとの課題を解決できることを理解できる。 オ 本件訂正発明1のまとめ 以上をまとめると、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 (4)本件訂正発明6、7 本件訂正発明6及び7は、課題を解決できることを理解できる本件訂正発明1の記載を引用する形式で特定されたものであるから、同様に、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 第6 取消理由で通知しなかった理由についての当審の判断 1 申立理由1(前記第4の1(1)アの甲1を主引例とした新規性) (1)本件訂正発明1 前記第5の1で検討したとおり、本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、相違点1-1~1-3,又は相違点1-1、1-2、1-4があり、それらのうち、少なくとも相違点1-3及び相違点1-4は実質的な相違点であるから、本件訂正発明1は、甲1発明に対して新規性を有する。 (2)本件訂正発明6、7 本件訂正発明6、7は、本件訂正発明1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、前記(1)の相違点に係る特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件訂正発明6、7は、前記(1)と同じ理由により、甲1発明に対して新規性を有する。 2 申立理由1(前記第4の1(1)ウの甲2を主引例とした進歩性) (1)甲2に記載された発明 甲2(前記第4の4(2)参照。)の【0128】及び【0129】の「実施例1」の「粘着剤層の両面に剥離フィルムを有する粘着シート」に着目し、「紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物」について、同【0126】の記載を参酌すれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲2発明) 「紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物を、剥離フィルムの剥離処理された面上に塗布して塗布層を形成し、次いで、該塗布層の表面に剥離フィルムを貼り合わせ、紫外線照射を行い、前記塗布層を光硬化させて、粘着剤層の両面に剥離フィルムを有する粘着シートであって、 前記紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物は、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)78重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18重量部、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)4重量部から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤(先添加光重合開始剤)として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.035重量部、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン0.035重量部を配合した後、紫外線を照射して上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物に、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.15重量部、シランカップリング剤0.3重量部を添加して混合し、紫外線照射して得たアクリル系粘着剤組成物(a-1)に、ブチルアクリレートに固形分15%となるように溶解させた2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名:Tinosorb S、BASFジャパン社製)1.4部と、後添加重合開始剤として、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド0.2部を添加し撹拌することにより得たものである、 粘着剤層の両面に剥離フィルムを有する粘着シート。」 (2)本件訂正発明1 本件訂正発明1と甲2発明を対比すると、甲2発明の「粘着剤層」、「剥離フィルム」及び「粘着剤層の両面に剥離フィルムを有する粘着シート」は、本件訂正発明1の(a,g)の「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート」、「粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム/粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルム」及び「離型フィルム付き粘着シート」に、それぞれ相当する。 甲2発明の「剥離フィルム」は、「剥離処理された面」を有するから、本件訂正発明1の「(b)前記第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え」に相当する。 甲2発明の「粘着剤層」は、「剥離フィルムの剥離処理された面上に塗布」した「塗布層」が光硬化したものであるから、甲2発明は、本件訂正発明1の「(c)前記離型層と前記粘着シートとが接しており」に相当する構成を備える。 甲2発明の「粘着剤層」は、「紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物」の光硬化物であって、紫外線吸収剤である「2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名:Tinosorb S、BASFジャパン社製)」を含むから、甲2発明は、本件訂正発明1の「(d)前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーおよび紫外線吸収剤を含み」に相当する構成を備える。 甲2発明の「粘着剤層」は、「アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)78重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18重量部、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)4重量部から構成されるモノマー混合物」合計100重量部と、多官能モノマーである「ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)」0.15重量部と、少量の「ブチルアクリレート」からなるものであるから、甲2発明は、本件訂正発明1の「(j’)前記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、単官能モノマーと1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含み、モノマー成分全量100重量部に対する前記多官能モノマーの量が0.05重量部以上であり」に相当する構成を備える。 してみれば、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「(a,g)第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シートであって、 (b)前記第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え、 (c)前記離型層と前記粘着シートとが接しており、 (d)前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーおよび紫外線吸収剤を含み、 (j’)前記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、単官能モノマーと1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含み、モノマー成分全量100重量部に対する前記多官能モノマーの量が0.05重量部以上である、離型フィルム付き粘着シート。」 <相違点2-1> 光透過率について、本件訂正発明1は「(i)波長380nmの光透過率が10%以下であ」るのに対し、甲2発明は、波長380nmの光透過率が不明である点。 <相違点2-2> 第一離型フィルムの離型層について、本件訂正発明1は「(e)前記離型層は、分子中に3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、11-ドデセニル基から選ばれるアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの熱硬化物を含むシリコーン系離型層」であり、「(f)Si原子含有量が0.02~0.07g/m2」であるのに対し、甲2発明は、「剥離処理された面」を有するものの、詳細は不明である点。 <相違点2-3> 本件訂正発明1は「(h)前記第一離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力が、前記第二離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力よりも大きい」のに対し、甲2発明は、剥離力が不明である点。 事案に鑑み、まず、相違点2-2について検討する。甲2発明の「剥離フィルム」について、甲2の【0117】には「・・・前記剥離フィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型及び防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理をすることもできる。特に、前記剥離フィルムの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜行うことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。」と記載され、甲2発明の「剥離処理された面」が、例えばシリコーン系、フッ素系等の離型剤で構成されている可能性はあるものの、離型剤に含まれる化合物が特定されていない以上、離型剤に含まれる化合物がいかなる官能基を有しているかや、Si原子をどれくらい含有しているかは不明というほかない。そして、甲2は、Si原子に着目して、その含有量等を調整することを記載や示唆するものではなく、また、離型層を構成するポリオルガノシロキサンの分子構造に着目し、「分子中に3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、11-ドデセニル基から選ばれるアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの熱硬化物を含むシリコーン系離型層」とすることを記載や示唆するものでもない。 そこで、離型層のSi原子の含有量について、他の甲号証の記載を検討すると、前記第5の1で検討したとおり、甲1発明の剥離剤層は、塗布量:0.07g/m2、厚さ:70nmであるが、甲1には、そのSi原子含有量に着目したり、含有量を計算したりすることについて、記載も示唆もない。 また、甲4の【0030】には「離型層の塗工量は塗工性の面から、通常0.01~0.5g/m2、好ましくは0.05~0.2g/m2の範囲である。塗工量が0.01g/m2未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な剥離特性を得るのが困難になる場合がある。一方、0.5g/m2を超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。」と記載されているものの、甲1と同様に、そのSi原子含有量に着目したり、含有量を計算したりすることについて、記載も示唆もない。 また、他の甲号証にも、好ましいSi原子含有量についての記載や示唆はない。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 申立人は、申立書において、離型層の厚さからSi原子の含有量を計算すると、本件訂正発明1の「(f)Si原子含有量が0.02~0.07g/m2」の範囲とするのは容易との趣旨の主張をしているので、以下、検討する。 甲1発明の剥離剤層は、前記第5の1で検討したとおり、塗布量:0.07g/m2、厚さ:70nmである。そして、甲1発明の剥離剤層を構成する化合物の主たる繰り返し単位の平均的な分子量が、ポリジメチルシロキサンユニット(-Si(CH3)2O-)の分子量であるとみなして、Si、O、CH3の分子量をそれぞれ28、16、15として計算すると、0.07×28/(28+16+15×2)≒0.0265(g/m2)となる。これは、厚さが70nmの場合のSi原子量であるから、好ましいとされる厚さ30~500nmの範囲に対応するSi原子量を計算すると、0.0265×30/70~0.0265×500/70≒0.0114~0.5(g/m2)となる。すなわち、甲1には、剥離剤層のSi原子量が0.0114g/m2未満であると剥離力が高くなりすぎる場合があり、0.5g/m2を超えるとブロッキングや剥離力が高くなるという問題が生じる場合があることが記載されているといえる。しかしながら、甲1には、この好ましいとされる0.0114~0.5(g/m2)という範囲を、本件訂正発明1の「(f)Si原子含有量が0.02~0.07g/m2」という狭い範囲に限定するさらなる動機付けについては記載も示唆もないから、甲1の記載をもって、前記相違点2-2が容易とはいえない。 同様に、甲4の【0030】には「離型層の塗工量は塗工性の面から、通常0.01~0.5g/m2、好ましくは0.05~0.2g/m2の範囲である。塗工量が0.01g/m2未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な剥離特性を得るのが困難になる場合がある。一方、0.5g/m2を超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。」と記載されている。そこで、甲4の離型層がポリジメチルシロキサンユニットで構成されていると仮定して、好ましとされる0.05~0.2g/m2の範囲について、前記甲1と同様の計算をすると、0.05×28/(28+16+15×2)~0.2×28/(28+16+15×2)≒0.019~0.076g/m2となるが、甲4の離型層は【0026】に「本発明における離型フィルムを構成する離型層は離型性を良好とするために硬化型シリコーン樹脂を含有するのが好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。」と記載されるとおり、離型層がポリジメチルシロキサンユニットのみで構成されているとは限らないから、この記載をもって、甲2発明の離型層のSi原子含有量について、「(f)Si原子含有量が0.02~0.07g/m2」の範囲にすることが容易ともいえない。 また、仮に、前記した「0.019~0.076g/m2」との計算結果に基づいて、甲2発明の離型層のSi原子含有量を「0.019~0.076g/m2」とすることが容易であったとしても、そのSi原子含有量の上限を「0.07g/m2」とすることが容易とまではいえない。すなわち、本件明細書の【0093】の【表1】には、Si量が0.0626g/m2の実施例6と、0.0767g/m2の比較例1との間で、カバー離型フィルムの剥離力が顕著に異なっており、本件訂正発明1の「(f)Si原子含有量が0.02~0.07g/m2」の範囲とすることにより、カバー離型フィルムの剥離力の過度の上昇を抑制し、作業性に優れた粘着シートを提供するという効果は、甲4等の記載から予測できるものではない。 (3)本件訂正発明6、7 本件訂正発明6、7は、本件訂正発明1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、前記(2)の相違点に係る特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件訂正発明6、7は、前記(2)と同じ理由により、甲2発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 申立理由1(前記第4の1(1)エの甲3を主引例とした進歩性) (1)甲3に記載された発明 甲3(前記第4の4(3)参照。)の【0191】の「粘着剤層Aの両面に剥離ライナーを有する粘着シート」に着目し、粘着剤層Aとして、同【0196】の【表1】の「製造例3:A-3」を採用し、同【0187】~【0190】、【0197】及び【0215】の【表3】(粘着剤層A-3の厚みが200μm)の記載を参酌すれば、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲3発明) 「片面をシリコーンで剥離処理した厚み50μmのポリエステルフィルム(剥離ライナー)の剥離処理面に、製造例3で得られた紫外線硬化型アクリル系粘着剤(A-3)を塗布して塗布層(粘着剤層)を形成し、塗布された粘着剤層の表面に、片面をシリコーンで剥離処理した厚み75μmのポリエステルフィルム(剥離ライナー)を、当該フィルムの剥離処理面が塗布層側(粘着剤層)になるように貼り合せ、得られた塗布層を有するシートに、厚み50μmのポリエステルフィルムの面上から紫外線照射を行って、塗布層を硬化(第1硬化)させて作製した、粘着剤層Aの両面に剥離ライナーを有する粘着シートであって、 製造例A-3の紫外線硬化型アクリル系粘着剤は、2EHA(2-エチルヘキシルアクリレート)、NVP(N-2-ビニルピロリドン)、2HEA(2-ヒドロキシエチルアクリレート)、光重合開始剤を配合した後、紫外線を照射してモノマーの一部が重合したプレポリマー組成物を得て、該プレポリマー組成物100部に、多官能性モノマーとしてTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)0.2部、シランカップリング剤0.3部、Tinosorb S(2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン)1部を添加して混合して得た紫外線硬化型アクリル系粘着剤である、 粘着剤層Aの両面に剥離ライナーを有する粘着シート。」 (2)本件訂正発明1 本件訂正発明1と甲3発明を対比すると、甲3発明の「粘着剤層A」、「厚み50μmのポリエステルフィルム(剥離ライナー)」、「厚み75μmのポリエステルフィルム(剥離ライナー)」及び「粘着剤層Aの両面に剥離ライナーを有する粘着シート」は、本件訂正発明1の(a,g)の「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート」、「粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム」、「粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルム」及び「離型フィルム付き粘着シート」に、それぞれ相当する。 甲3発明の「厚み50μmのポリエステルフィルム(剥離ライナー)」は、「片面をシリコーンで剥離処理」したものであるから、甲3発明は、本件訂正発明1の「(b)前記第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え」に相当する構成を備える。 甲3発明の「粘着剤層A」は、「厚み50μmのポリエステルフィルム(剥離ライナー)の剥離処理面」に塗布した「塗布層」が紫外線照射により硬化したものであるから、甲3発明は、本件訂正発明1の「(c)前記離型層と前記粘着シートとが接しており」に相当する構成を備える。 甲3発明の「粘着剤層A」は、「製造例A-3の紫外線硬化型アクリル系粘着剤」であって、紫外線吸収剤である「Tinosorb S(2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン)」を含むから、甲3発明は、本件訂正発明1の「(d)前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーおよび紫外線吸収剤を含み」に相当する構成を備える。 甲3発明の「粘着剤層A」は、「2EHA(2-エチルヘキシルアクリレート)、NVP(N-2-ビニルピロリドン)、2HEA(2-ヒドロキシエチルアクリレート)、光重合開始剤を配合した後、紫外線を照射してモノマーの一部が重合したプレポリマー組成物」100重量部に、多官能性モノマーである「TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)0.2部」を含むものであるから、甲3発明は、本件訂正発明1の「(j’)前記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、単官能モノマーと1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含み、モノマー成分全量100重量部に対する前記多官能モノマーの量が0.05重量部以上であり」に相当する構成を備える。 してみれば、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「(a,g)第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シートであって、 (b)前記第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え、 (c)前記離型層と前記粘着シートとが接しており、 (d)前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーおよび紫外線吸収剤を含み、 (j’)前記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、単官能モノマーと1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含み、モノマー成分全量100重量部に対する前記多官能モノマーの量が0.05重量部以上である、離型フィルム付き粘着シート。」 <相違点3-1> 光透過率に関し、本件訂正発明1は「(i)波長380nmの光透過率が10%以下であ」るのに対し、甲3発明は、波長380nmの光透過率が不明である点。 <相違点3-2> 第一離型フィルムの剥離層について、本件訂正発明1は「(e)前記離型層は、分子中に3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、11-ドデセニル基から選ばれるアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの熱硬化物を含むシリコーン系離型層」であり、「(f)Si原子含有量が0.02~0.07g/m2」であるのに対し、甲3発明は、「シリコーンで剥離処理」されているものの、シリコーン樹脂がアルケニル基を有するか否かは不明である点。 <相違点3-3> 本件訂正発明1は「(h)前記第一離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力が、前記第二離型フィルムと前記粘着シートとの剥離力よりも大きい」のに対し、甲3発明は、剥離力が不明である点。 事案に鑑み、まず、相違点3-2について検討する。甲3発明の「片面をシリコーンで剥離処理した厚み50μmのポリエステルフィルム(剥離ライナー)の剥離処理面」について、甲3の【0162】には「・・・シリコーン系離型層の塗布量(乾燥後)は0.01~2g/m2、好ましくは0.01~1g/m2、さらに好ましくは0.01~0.5g/m2の範囲が好ましい。」と記載されているが、甲3は、Si原子に着目して、その含有量等を調整することを記載や示唆するものではなく、また、離型層を構成するポリオルガノシロキサンの分子構造に着目し、「分子中に3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、11-ドデセニル基から選ばれるアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの熱硬化物を含むシリコーン系離型層」とすることを記載や示唆するものでもない。 そこで、離型層のSi原子の含有量について、他の甲号証の記載を検討すると、前記第5の1で検討したとおり、甲1発明の剥離剤層は、塗布量:0.07g/m2、厚さ:70nmであるが、甲1には、そのSi原子含有量に着目したり、含有量を計算したりすることについて、記載も示唆もない。 また、甲4の【0030】には「離型層の塗工量は塗工性の面から、通常0.01~0.5g/m2、好ましくは0.05~0.2g/m2の範囲である。塗工量が0.01g/m2未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な剥離特性を得るのが困難になる場合がある。一方、0.5g/m2を超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。」と記載されているものの、甲1と同様に、そのSi原子含有量に着目したり、含有量を計算したりすることについて、記載も示唆もない。 また、他の甲号証にも、好ましいSi原子含有量についての記載や示唆はない。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲3発明及び甲1~甲5記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 申立人は、申立書において、離型層の厚さからSi原子の含有量を計算すると、本件訂正発明1の「(f)Si原子含有量が0.02~0.07g/m2」の範囲とするのは容易との趣旨の主張をしているが、前記2(2)で検討したとおり、他の甲号証の記載及びその計算結果に基づいて、甲3発明の離型層のSi原子含有量を「0.02~0.07g/m2」とすることが容易であったとはいえないし、その効果についても、甲4等の記載から予測できるものではない。 (3)本件訂正発明6、7 本件訂正発明6、7は、本件訂正発明1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、前記(2)の相違点に係る特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件訂正発明6、7は、前記(2)と同じ理由により、甲3発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 申立理由2(前記第4の1(2)の実施可能要件) (1)離型層の熱硬化について(前記第4の1(2)アに対応。) 本件訂正発明1の(e)の「シリコーン系離型層」について、本件明細書の【0087】には、離型剤溶液Aを、ワイヤーバー(#9)を用いて塗布し、130℃の熱風乾燥機で1分間加熱し、離型層を形成したことが記載されており、同【0093】の【表1】に、離型剤溶液のシリコーン濃度(wt%)と、ワイヤーバーの番手と、Si量(mg/m2)の対応関係が記載されており、これらの記載から、離型剤溶液のシリコーン濃度(wt%)と、ワイヤーバーの番手を調整することにより、(e)のシリコーン系離型層を形成可能であることを理解できる。 (2)第一離型フィルムの剥離力について(前記第4の1(2)イに対応。) 本件訂正発明1の(d)の「光硬化型アクリル系ポリマー」について、本件明細書の【0093】の【表1】には、離型剤溶液のシリコーン濃度(wt%)と、ワイヤーバーの番手を調整することにより、カバー離型フィルムの剥離力を所定の値に調整できることが示されており、実施例1~3をみれば、粘着剤組成物の種類(A~C)による影響は少ないことを理解できる。 (3)粘着シートの波長380nmの光透過率(前記第4の1(2)ウに対応。) 本件訂正発明1の(i)の「光透過率」について、紫外線吸収剤の添加量を増やせば波長380nmの光透過率が下がることは技術常識から明らかであるから、紫外線吸収剤の添加量を調整することにより、波長380nmにおける光透過率が10%以下である粘着シートが得られることを理解できる。 (4)実施可能要件の小括 前記(1)~(3)のとおりであるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。 5 申立理由3(前記第4の1(3)のサポート要件) 前記第5の2で検討したとおり、本件訂正発明1は、(a,g)の事項を満たすことにより、発明の詳細な説明に記載された課題を解決するものであるから、申立人の前記第4の1(3)エ及びオの主張をもって、本件訂正発明1がサポート要件を満たさないということはできない。 また、前記第4の1(3)カの主張について、本件明細書の実施例の「プレポリマー100重量部に対して、多官能モノマー成分としてヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を0.15重量部添加して得られた粘着剤組成物」は、粘着剤組成物の一例として示されたものにすぎず、多官能モノマーの種類や添加量が実施例に示された組合せ以外の場合に、発明が解決しようとする課題を解決できないといえる具体的な理由もない。 そうすると、本件訂正発明1は、この点において、サポート要件を満たさないものではない。 したがって、本件訂正発明1は、サポート要件を満たさないものとはいえない。 また、本件訂正発明1を引用する形式で特定された本件訂正発明6及び7についても同様に、本件特許における発明の課題を解決することを理解できるから、サポート要件を満たさないものとはいえない。 6 申立理由4(前記第4の1(4)の明確性要件) 本件訂正発明1は、「離型フィルム付き粘着シート」という物の発明であって、光照射を行う方向が特定されていなくとも、物の発明としての構成は明確である。 したがって、本件特許の請求項1の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。 請求項1を引用する請求項6及び7の記載も同様に不明確とはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1、6及び7に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由のいずれによっても取り消すことができない。 また、他に、請求項1、6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項2~5に係る特許は本件訂正により削除された。これにより、請求項2~5に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700974

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