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特許異議申立

2024-700062

溶接方法および溶接装置

審判番号
2024-700062
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-081019外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7335923
請求日
2024年01月26日
審決日
2024年11月27日
公報発行日
2025年03月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(B23K) / P1651.537-YAA(B23K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の5第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7335923号発明「溶接方法および溶接装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7335923号の特許請求の範囲を、令和6年6月25日提出の訂正請求書に添付され、令和6年10月31日提出の手続補正書により補正がされた訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕、13、〔14~30〕、31について訂正することを認める。
特許第7335923号の請求項1、3~14、16~31に係る特許を維持する。
特許第7335923号の請求項2、15に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 38項目
理 由

第1 手続の経緯

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1 特許掲載公報の発行までの経緯

特許第7335923号(以下「本件特許」という。)の請求項1~31に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)3月5日(優先権主張 平成29年3月3日(以下「優先日」という。)、平成29年3月31日)を国際出願日とする国際特許出願である特願2019-503169号の一部を、令和3年5月12日に新たな特許出願としたものであって、令和5年8月22日にその特許権の設定登録がされ、同月30日に特許掲載公報が発行されたものである。

2 特許異議の申立て以降の経緯

本件特許についての特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。

(1)令和6年1月26日

特許異議申立人 西村 裕之(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~31に係る特許に対する特許異議の申立て(申立てのために提出された特許異議申立書を、以下「申立書」という。)

(2)令和6年4月24日付け(発送日:同月26日)

特許の取消しの理由の通知(発送された取消理由通知書を、以下「取消理由通知」という。)

(3)令和6年6月6日、11日

特許権者 古河電気工業株式会社(以下単に「特許権者」という。)との電話及び電子メールでの応対(同月12日格納の応対記録を参照。)

(4)令和6年6月12日

特許権者との面接審理(同月13日格納の面接記録を参照。)

(5)令和6年6月25日

特許権者による、訂正の請求(請求された訂正を、以下「本件訂正」といい、本件訂正のために提出された訂正請求書を、以下単に「訂正請求書」という。)、及び意見書の提出

(6)令和6年8月2日

申立人による、意見書(以下「申立人意見書」という。)の提出

(7)令和6年10月2日付け(発送日:同月8日)

訂正拒絶理由の通知(発送された訂正拒絶理由通知書を、以下「訂正拒絶理由通知」という。)

(8)令和6年10月31日

特許権者による、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲を補正の対象とする手続補正書、及び意見書の提出

3 訂正特許請求の範囲の補正について

上記2(8)における補正は、訂正特許請求の範囲の請求項12において、重複して記載された行の一方を削除するものにすぎず、軽微な瑕疵の補正であるから、当該補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではない(特許法第17条の5第1項、審判便覧67-05.3 4.(3)ア及びイ)。

また、申立人は、申立人意見書において、特許権者から新たな訂正請求書及び意見書が提出された場合には、これに対し意見書を提出する機会が申立人に与えられるべき旨を主張している(申立人意見書第8~9ページ)ところ、上記2(8)で提出された手続補正書及び意見書は、上記2(5)における訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲を対象とした補正に係るものであって、新たに訂正の請求がされたものではないし、上記2(5)における訂正請求書に対しては、上記2(6)のとおり、申立人は意見を述べているので、再度の訂正があった旨の通知は行わない。

なお、令和6年6月25日提出の訂正請求書に添付され、令和6年10月31日提出の手続補正書により補正がされた訂正特許請求の範囲を、以下単に「訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲」という。

第2 本件訂正の適否

1 本件訂正の内容について

特許権者は、本件訂正の請求により、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~31について訂正することを求めるところ、本件訂正の内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付して示す。)。

<請求項1~12について>

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1における、

「前記レーザ光は主ビームと、掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、」との記載を、

「前記レーザ光は1つのみの主ビームと、前記主ビームに対して掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、」に訂正する。

(請求項1の記載を引用する請求項3~12も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3における、

「請求項1または2に記載の溶接方法。」との記載を、

「請求項1に記載の溶接方法。」に訂正する。

(請求項3の記載を引用する請求項7~12も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4における、

「請求項1または2に記載の溶接方法。」との記載を、

「請求項1に記載の溶接方法。」に訂正する。

(請求項4の記載を引用する請求項7~12も同様に訂正する。)

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項5における、

「請求項1または2に記載の溶接方法。」との記載を、

「請求項1に記載の溶接方法。」に訂正する。

(請求項5の記載を引用する請求項7~12も同様に訂正する。)

(6)訂正事項6

特許請求の範囲の請求項6における、

「請求項1または2に記載の溶接方法。」との記載を、

「請求項1に記載の溶接方法。」に訂正する。

(請求項6の記載を引用する請求項7~12も同様に訂正する。)

(7)訂正事項7

特許請求の範囲の請求項7における、

「請求項1から請求項6の何れか1項に記載の溶接方法。」との記載を、

「請求項1、請求項3から請求項6の何れか1項に記載の溶接方法。」に訂正する。

(請求項7の記載を引用する請求項8~12も同様に訂正する。)

(8)訂正事項8

特許請求の範囲の請求項9における、

「請求項1から請求項8の何れか1項に記載の溶接方法。」との記載を、

「請求項1、請求項3から請求項8の何れか1項に記載の溶接方法。」に訂正する。

(請求項9の記載を引用する請求項10~12も同様に訂正する。)

(9)訂正事項9

特許請求の範囲の請求項11における、

「請求項1から請求項10の何れか1項に記載の溶接方法。」との記載を、

「請求項1、請求項3から請求項10の何れか1項に記載の溶接方法。」に訂正する。

(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)

(10)訂正事項10

特許請求の範囲の請求項12における、

「請求項1から請求項11の何れか1項に記載の溶接方法。」との記載を、

「請求項1、請求項3から請求項11の何れか1項に記載の溶接方法。」に訂正する。

<請求項13について>

(11)訂正事項11

特許請求の範囲の請求項13における、

「前記レーザ光は主ビームと、掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、」との記載を、

「前記レーザ光は1つのみの主ビームと、前記主ビームに対して掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、」に訂正する。

<請求項14~30について>

(12)訂正事項12

特許請求の範囲の請求項14における、

「前記レーザ光は主ビームと、掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、」との記載を、

「前記レーザ光は1つのみの主ビームと、前記主ビームに対して掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、」に訂正する。

(請求項14の記載を引用する請求項16~30も同様に訂正する。)

(13)訂正事項13

特許請求の範囲の請求項15を削除する。

(14)訂正事項14

特許請求の範囲の請求項16における、

「請求項14または15に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「請求項14に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

(請求項16の記載を引用する請求項20~30も同様に訂正する。)

(15)訂正事項15

特許請求の範囲の請求項17における、

「請求項14または15に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「請求項14に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

(請求項17の記載を引用する請求項20~30も同様に訂正する。)

(16)訂正事項16

特許請求の範囲の請求項18における、

「請求項14または15に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「請求項14に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

(請求項18の記載を引用する請求項20~30も同様に訂正する。)

(17)訂正事項17

特許請求の範囲の請求項19における、

「請求項14または15に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「請求項14に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

(請求項19の記載を引用する請求項20~30も同様に訂正する。)

(18)訂正事項18

特許請求の範囲の請求項20における、

「請求項14から請求項19の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「請求項14、請求項16から請求項19の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

(請求項20の記載を引用する請求項21~30も同様に訂正する。)

(19)訂正事項19

特許請求の範囲の請求項21における、

「前記光学ヘッドは前記レーザ発振器と前記加工対象との間に配置されたビームシェイパを含み、前記回折光学素子は前記単一のレーザ発振器から発振された光から前記主ビームおよび前記副ビームを形成する、請求項14から請求項20の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「前記光学ヘッドは前記レーザ発振器と前記加工対象との間に配置されたビームシェイパを含み、前記ビームシェイパは前記単一のレーザ発振器から発振された光から前記主ビームおよび前記副ビームを形成する、請求項14、請求項16から請求項20の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

(請求項21の記載を引用する請求項22、24~30も同様に訂正する。)

(20)訂正事項20

特許請求の範囲の請求項23における、

「請求項14から請求項20の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「請求項14、請求項16から請求項20の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

(請求項23の記載を引用する請求項24~25、27~30も同様に訂正する。)

(21)訂正事項21

特許請求の範囲の請求項24における、

「請求項14から請求項23の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「請求項14、請求項16から請求項23の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

(請求項24の記載を引用する請求項25、27~30も同様に訂正する。)

(22)訂正事項22

特許請求の範囲の請求項25における、

「請求項14から請求項24の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「請求項14、請求項16から請求項24の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

(請求項25の記載を引用する請求項27~30も同様に訂正する。)

(23)訂正事項23

特許請求の範囲の請求項27における、

「請求項14から請求項26の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「請求項14、請求項16から請求項26の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

(請求項27の記載を引用する請求項29~30も同様に訂正する。)

(24)訂正事項24

特許請求の範囲の請求項28における、

「請求項14から請求項26の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「請求項14、請求項16から請求項26の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

(請求項28の記載を引用する請求項29~30も同様に訂正する。)

(25)訂正事項25

特許請求の範囲の請求項29における、

「請求項14から請求項28の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「請求項14、請求項16から請求項28の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

(26)訂正事項26

特許請求の範囲の請求項30における、

「請求項14から請求項28の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」との記載を、

「請求項14、請求項16から請求項28の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。」に訂正する。

<請求項31について>

(27)訂正事項27

特許請求の範囲の請求項31における、

「前記レーザ光は主ビームと、掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、」との記載を、

「前記レーザ光は1つのみの主ビームと、前記主ビームに対して掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、」に訂正する。

2 一群の請求項について

本件訂正前の請求項1~12については、請求項2~12がそれぞれ請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。

また、本件訂正前の請求項14~30については、請求項15~30がそれぞれ請求項14の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあって、訂正事項12によって記載が訂正される請求項14に連動して訂正されるものである。

したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項〔1~12〕、13、〔14~30〕、31について請求をするものである。

3 独立特許要件について

本件特許異議の申立ては、全ての請求項を対象としているので、訂正事項1~27に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

4 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

<一群の請求項〔1~12〕について>

(1)訂正事項1

ア 訂正の目的について

訂正事項1は、請求項1におけるレーザ光を構成する主ビームが「1つのみの主ビーム」であると訂正することで、主ビームの数を限定するものであり、また、副ビームの少なくとも一部が位置する掃引方向前方が「主ビームに対して」であると訂正することで、主ビームに対する副ビームの位置関係を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について

訂正事項1に関し、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0059】~【0064】には、第1実施形態に関して、図3A~3F等とともに、次の記載がある。

「【0059】
次に、図3A~3Fを参照しながら、加工対象上におけるレーザ光のパワー密度の移動方向に関するプロファイルが、パワー密度が高い主ビームよりも移動方向前方に、主ビームよりもパワー密度が低い副ビームを有するための、レーザ光の断面形状の例を説明する。図3A~3Fに示すレーザ光の断面形状の例は、必須の構成ではないが、図3A~3Fに例示されるレーザ光の断面形状が加工対象Wの表面に実現されるように、回折光学素子123を設計することで、本発明の実施に好適なレーザ光のプロファイルが実現される。なお、図3A~3Fに例示されるレーザ光の断面形状は、全て紙面上方(図中矢印v)を移動方向としている。
【0060】
図3Aは、ピークP1を有しパワー密度が高い主ビームB1よりも移動方向前方に、ピークP2を有し、主ビームB1よりもパワー密度が低い副ビームB2を1つ有する例である。図3Aに示すように、副ビームB2の周辺における加工対象を溶融し得るパワー密度の領域は、主ビームB1の周辺における加工対象を溶融し得るパワー密度の領域よりも、移動方向の直交方向に関して幅が広いことが好ましい。したがって、図3Aに示すように、副ビームB2は点形状とせずに連続した領域に拡張されていてもよい。
続きを表示(全12行)
【0061】
図3Bは、パワー密度が高い主ビームB1よりも移動方向前方に、主ビームB1よりもパワー密度が低い副ビームB2を有するのみならず、主ビームB1の移動方向後方にも、主ビームB1よりもパワー密度が低い副ビームB2を有する例である。溶接加工は必ずしも前進のみではなく、後進も行うこともある。したがって、図3Bに示される例のように、主ビームB1の移動方向後方にも、主ビームB1よりもパワー密度が低い副ビームB2を設ければ、光学ヘッドの向きを変えずとも本発明の効果を得ることができる。
【0062】
図3Cは、パワー密度が高い主ビームB1よりも移動方向前方に、主ビームB1よりもパワー密度が低い副ビームB2を有するのみならず、主ビームB1の移動方向横方向にも、主ビームB1よりもパワー密度が低い副ビームB2を有する例である。溶接加工は必ずしも直線に沿って行われるとは限らない。したがって、図3Cに示される例のように、主ビームB1の移動方向横方向にも、主ビームB1よりもパワー密度が低い副ビームB2を設ければ、角部分の溶接時等にも本発明の効果を得ることができる。
【0063】
図3Dは、パワー密度が高い主ビームB1よりも移動方向前方に、主ビームB1よりもパワー密度が低い副ビームB2を有するのみならず、主ビームB1の移動方向の後方および横方向にも、主ビームB1よりもパワー密度が低い副ビームB2を有する例である。つまり、図3Dに示される例は、図3Bおよび3Cに示される例の両方のメリットを併せ持つことになる。
【0064】
図3Eは、主ビームB1の周囲に、主ビームB1よりもパワー密度が低い副ビームB2を分散して有する例である。図3A~3Dに示される例は、副ビームB2が線状に構成されていたが、ある程度近い間隔で副ビームB2を配置すれば、必ずしも副ビームB2が連続している必要はない。ある程度近い間隔で副ビームB2を配置すれば、浅瀬領域Rが繋がるので、実効的な効果が得られるからである。図3Fは、主ビームB1の周囲に、主ビームB1よりもパワー密度が低い副ビームB2をリング状に有する例である。図3Eとは逆に、副ビームB2を連続的に一周する形で設けることも可能である。」
「【図3A】
[図:0001420312000001.jpg]
【図3B】
[図:0001420312000002.jpg]
続きを表示(全13行)
【図3C】
[図:0001420312000003.jpg]
【図3D】
[図:0001420312000004.jpg]
【図3E】
[図:0001420312000005.jpg]
【図3F】
[図:0001420312000006.jpg]
」

また、本件明細書の段落【0106】、【0108】、【0109】、【0111】、【0116】には、第7実施形態に関して、図14B等とともに、次の記載がある。

「【0106】
(第7実施形態)
第7実施形態に係る溶接装置は、図1に示す第1実施形態に係る溶接装置100によって実現できる。」
「【0108】
第7実施形態に係る光学ヘッド120は、コリメートレンズ121と集光レンズ122との間にビームシェイパとしての回折光学素子123を備えている。回折光学素子123は、加工対象W上におけるレーザ光Lのパワー密度の掃引方向に関するプロファイルが、主ビームよりも掃引方向前方に位置する副ビームを有するように、レーザ光Lを成型するためのものである。・・・
【0109】
加工対象W上におけるレーザ光Lのパワー密度の掃引方向に関するプロファイルが、主ビームと、主ビームよりも掃引方向前方に位置する副ビームを有することの作用は、以下の通りである。図14A、14Bは、レーザ光が加工対象を溶融する状況の比較を示す図である。」
「【0111】
一方、図14Bに示すように、第11実施形態(当審注:「第7実施形態」の誤記と認める。)に係る溶接装置およびこれを用いた溶接方法では、加工対象W上におけるレーザ光のパワー密度の掃引方向に関するプロファイルが、主ビームB1と副ビームB2とを有している。そして、パワー密度が高い主ビームB1よりも掃引方向(矢印v)の前方に、主ビームB1よりもパワー密度が低い副ビームB2を有する。・・・」
「【0116】
加工対象上におけるレーザ光のパワー密度の掃引方向に関するプロファイルが、主ビームよりも掃引方向前方に位置する副ビームを有するための、レーザ光の断面形状の例は、図3A~3F、11、12に示すとおりである。」
「【図14B】
[図:0001420312000007.jpg]
」

以上のとおり、副ビームの少なくとも一部が主ビームに対して掃引方向前方に位置することは、明細書に記載されており、また、主ビームが1つのみであることは、図面の記載からみて明らかである。したがって、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

訂正事項1は、上記アのとおり、本件訂正前の請求項1において特定されていた主ビーム及び副ビームに関する事項を具体的に限定するように訂正するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

(2)訂正事項2

ア 訂正の目的について

訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(3)訂正事項3~10

ア 訂正の目的について

訂正事項3~10は、訂正事項2による請求項2の削除に伴い、請求項3~7、9、11~12におけるそれぞれの引用請求項から請求項2を除いて記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

訂正事項3~10は、上記アのとおり、請求項3~7、9、11~12におけるそれぞれの引用請求項から請求項2を単に除くものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項3~10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

<請求項13について>

(4)訂正事項11

ア 訂正の目的について

訂正事項11による請求項13についての訂正は、訂正事項1による請求項1についての訂正と、実質的に同様の事項で限定して訂正するものであるから、上記(1)アと同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

訂正事項11による請求項13についての訂正は、上記アのとおり、請求項1を訂正する訂正事項1と実質的に同様の事項にて訂正するものであるから、訂正事項11は、上記(1)イ及びウで検討した訂正事項1と同様に、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

<一群の請求項〔14~30〕について>

(5)訂正事項12

ア 訂正の目的について

訂正事項12による請求項14についての訂正は、訂正事項1による請求項1についての訂正と、実質的に同様の事項で限定して訂正するものであるから、上記(1)アと同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

訂正事項12による請求項14についての訂正は、上記アのとおり、請求項1を訂正する訂正事項1と実質的に同様の事項にて訂正するものであるから、訂正事項12は、上記(1)イ及びウで検討した訂正事項1と同様に、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(6)訂正事項13

ア 訂正の目的について

訂正事項13は、請求項15を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

訂正事項13は、請求項15を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(7)訂正事項14~26

ア 訂正の目的について

訂正事項14~26による引用請求項に関する訂正については、訂正事項13による請求項15の削除に伴い、請求項16~21、23~25、27~30におけるそれぞれの引用請求項から請求項15を除いて記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

また、訂正事項19による、請求項21における「ビームシェイパを含み、前記回折光学素子は」との記載を「ビームシェイパを含み、前記ビームシェイパは」と訂正することは、「前記回折光学素子」との記載が、その直前の「ビームシェイパを含み」との記載からみて、「前記」された「ビームシェイパ」を意図した「前記ビームシェイパ」の誤記であったことが明らかであるから、訂正事項19は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

訂正事項14~26による引用請求項に関する訂正については、上記アのとおり、請求項16~21、23~25、27~30におけるそれぞれの引用請求項から請求項15を単に除くものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

また、訂正事項19による、請求項21における「前記回折光学素子」との記載を「前記ビームシェイパ」と訂正する点に関し、本件特許の出願の願書に最初に添付した明細書の段落【0108】には、次のとおり記載される。

「【0108】
第7実施形態に係る光学ヘッド120は、コリメートレンズ121と集光レンズ122との間にビームシェイパとしての回折光学素子123を備えている。回折光学素子123は、加工対象W上におけるレーザ光Lのパワー密度の掃引方向に関するプロファイルが、主ビームよりも掃引方向前方に位置する副ビームを有するように、レーザ光Lを成型するためのものである。したがって、第7実施形態に係る溶接装置100は、同一のレーザ発振器110から出射されたレーザ光を、回折光学素子123によって分離する構成であり、結果として、主ビームおよび副ビームの両方のビームを形成するレーザ光の波長が同一である。」

また、本件特許の出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項11には、

「前記主ビームおよび前記副ビームは、前記発振器と前記加工対象との間に配置されたビームシェイパによって形成される」と記載されている。

以上の記載からみて、訂正事項19は、本件特許の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、訂正事項19は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

そして、訂正事項19による、請求項21における「前記回折光学素子」との記載を「前記ビームシェイパ」と訂正する点は、上記のとおり、誤記を訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項14~26は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

<請求項31について>

(8)訂正事項27

ア 訂正の目的について

訂正事項27による請求項31についての訂正は、訂正事項1による請求項1についての訂正と、実質的に同様の事項で限定して訂正するものであるから、上記(1)アと同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

訂正事項27による請求項31についての訂正は、上記アのとおり、請求項1を訂正する訂正事項1と実質的に同様の事項にて訂正するものであるから、訂正事項27は、上記(1)イ及びウで検討した訂正事項1と同様に、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

5 小括

上記4(1)~(8)のとおり、訂正事項1~27に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~12〕、13、〔14~30〕、31について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり本件訂正は認められることから、本件特許の請求項1~31に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明31」という。なお、請求項2及び請求項15は削除されている。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~31に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。

「 【請求項1】
レーザ装置からのレーザ光を加工対象に向かって照射し、前記加工対象を溶融して溶接を行う、
工程を含み、
前記レーザ光は1つのみの主ビームと、前記主ビームに対して掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、前記主ビームのパワー密度は、少なくともキーホールを発生させ得る強度であり、前記副ビームのパワー密度は、少なくとも前記加工対象を溶融し得る強度であり、
続きを表示(全87行)
前記レーザ光は、前記副ビームが照射される領域に、前記主ビームが照射される領域に形成される溶融池より浅い溶融池である浅瀬領域を形成し、
前記主ビームを形成するレーザ光の波長および前記副ビームを形成するレーザ光の波長は、前記加工対象の赤外領域における反射率よりも低い反射率を持つ青色領域の波長である、
加工対象をレーザによって溶接する方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記レーザ光は、前記主ビームの掃引方向後方に、前記主ビームよりもパワー密度が低い副ビームをさらに有する、請求項1に記載の溶接方法。
【請求項4】
前記レーザ光は、前記主ビームの掃引方向横方向に、前記主ビームよりもパワー密度が低い副ビームをさらに有する、請求項1に記載の溶接方法。
【請求項5】
前記レーザ光は、前記主ビームの周囲に、前記主ビームよりもパワー密度が低い副ビームをさらに分散して有する、請求項1に記載の溶接方法。
【請求項6】
前記副ビームは、前記主ビームの周囲を囲むリング形状または前記主ビームの周囲を囲むリング形状の一部である円弧形状を持つ、請求項1に記載の溶接方法。
【請求項7】
前記レーザ光の前記主ビームと前記副ビームは、前記主ビームで形成された溶融池と、前記副ビームで形成された溶融池の少なくとも一部が重なる様に構成される、請求項1、請求項3から請求項6の何れか1項に記載の溶接方法。
【請求項8】
前記主ビームと前記副ビームとの間の距離は、前記副ビームのビーム径の2倍未満である、請求項7に記載の溶接方法。
【請求項9】
前記主ビームおよび前記副ビームは、前記発振器と前記加工対象との間に配置されたビームシェイパによって形成される、請求項1、請求項3から請求項8の何れか1項に記載の溶接方法。
【請求項10】
前記ビームシェイパは回折光学素子である、ことを特徴とする請求項9に記載の溶接方法。
【請求項11】
前記加工対象は溶接されるべき少なくとも2つの部材であり、前記加工対象をレーザ光の照射される領域に配置する前記工程は、前記少なくとも2つの部材を重ねる、または接触させる、または隣接させるように配置する工程である、請求項1、請求項3から請求項10の何れか1項に記載の溶接方法。
【請求項12】
前記副ビームのビーム径は、前記主ビームのビーム径と略等しい又は大きい、請求項1、請求項3から請求項11の何れか1項に記載の溶接方法。
【請求項13】
レーザ装置からのレーザ光を加工対象に向かって照射し、前記加工対象を溶融して溶接を行う、
工程を含み、
前記レーザ光は1つのみの主ビームと、前記主ビームに対して掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、前記主ビームは、少なくともキーホールを発生させ得る強度であり、前記副ビームは、少なくとも前記加工対象を溶融し得る強度であり、
前記レーザ光は、前記副ビームが照射される領域に、前記主ビームが照射される領域に形成される溶融池より浅い溶融池である浅瀬領域を形成し、
前記主ビームを形成するレーザ光の波長および前記副ビームを形成するレーザ光の波長は、前記加工対象の赤外領域における反射率よりも低い反射率を持つ青色領域の波長である、
加工対象をレーザによって溶接する方法。
【請求項14】
レーザ発振器と、
レーザ発振器から発振された光を受け取ってレーザ光を生成し、前記生成されたレーザ光を加工対象に向かって照射して照射された部分の前記加工対象を溶融して溶接を行う光学ヘッドと、
によって構成され、
前記光学ヘッドは前記レーザ光と前記加工対象とが相対的に移動可能な様に構成され、前記レーザ光を前記加工対象上で掃引しつつ、前記溶融を行なって溶接を行い、
前記レーザ光は1つのみの主ビームと、前記主ビームに対して掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、前記主ビームのパワー密度は、少なくともキーホールを発生させ得る強度であり、前記副ビームのパワー密度は、少なくとも前記加工対象を溶融し得る強度であり、
前記レーザ光は、前記副ビームが照射される領域に、前記主ビームが照射される領域に形成される溶融池より浅い溶融池である浅瀬領域を形成し、
前記主ビームを形成するレーザ光の波長および前記副ビームを形成するレーザ光の波長は、前記加工対象の赤外領域における反射率よりも低い反射率を持つ青色領域の波長である、
加工対象をレーザによって溶接するレーザ溶接装置。
【請求項15】
(削除)
【請求項16】
前記レーザ光は、前記主ビームの掃引方向後方に、前記主ビームよりもパワー密度が低い副ビームをさらに有する、請求項14に記載のレーザ溶接装置。
【請求項17】
前記レーザ光は、前記主ビームの掃引方向横方向に、前記主ビームよりもパワー密度が低い副ビームをさらに有する、請求項14に記載のレーザ溶接装置。
【請求項18】
前記レーザ光は、前記主ビームの周囲に、前記主ビームよりもパワー密度が低い副ビームをさらに分散して有する、請求項14に記載のレーザ溶接装置。
【請求項19】
前記副ビームは前記主ビームの周囲を囲むリング形状または前記主ビームの周囲を囲むリング形状の一部である円弧形状を持つ、請求項14に記載のレーザ溶接装置。
【請求項20】
前記レーザ光の前記主ビームと前記副ビームは、前記主ビームで形成された溶融池と、前記副ビームで形成された溶融池の少なくとも一部が重なる様に構成される、請求項14、請求項16から請求項19の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項21】
前記光学ヘッドは前記レーザ発振器と前記加工対象との間に配置されたビームシェイパを含み、前記ビームシェイパは前記単一のレーザ発振器から発振された光から前記主ビームおよび前記副ビームを形成する、請求項14、請求項16から請求項20の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項22】
前記ビームシェイパは回折光学素子である、ことを特徴とする請求項21に記載のレーザ溶接装置。
【請求項23】
前記レーザ発振器は異なる2つのレーザ発振器から構成され、前記主ビームおよび前記副ビームは、それぞれ前記異なる2つの発振器から出射されたレーザ光である、請求項14、請求項16から請求項20の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項24】
前記加工対象は溶接されるべき少なくとも2つの部材である、請求項14、請求項16から請求項23の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項25】
前記副ビームのビーム径は、前記主ビームのビーム径と略等しい又は大きい、請求項14、請求項16から請求項24の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項26】
前記ビームシェイパは、回転可能に設けられている、請求項21に記載のレーザ溶接装置。
【請求項27】
前記レーザ発振器は複数あり、
前記光学ヘッドは前記複数の発振器から出射された光を内部で合波して前記レーザ光を生成する、請求項14、請求項16から請求項26の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項28】
前記レーザ発振器は複数あり、
前記複数のレーザ発振器から出射された光を内部で合波して前記光学ヘッドへ導くマルチコアファイバを、さらに備える、請求項14、請求項16から請求項26の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項29】
前記光学ヘッドは前記レーザ光を、固定されている前記加工対象に対して掃引可能に構成される、請求項14、請求項16から請求項28の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項30】
前記光学ヘッドからのレーザ光の照射位置は固定され、前記加工対象が前記固定されたレーザ光に対して移動可能に保持される、請求項14、請求項16から請求項28の何れか1項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項31】
レーザ発振器と、
レーザ発振器から発振された光を受け取ってレーザ光を生成し、前記生成されたレーザ光を加工対象に向かって照射して照射された部分の前記加工対象を溶融して溶接を行う光学ヘッドと、
によって構成され、
前記レーザ光は1つのみの主ビームと、前記主ビームに対して掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、前記主ビームは、少なくともキーホールを発生させ得る強度であり、前記副ビームは、少なくとも前記加工対象を溶融し得る強度であり、
前記レーザ光は、前記副ビームが照射される領域に、前記主ビームが照射される領域に形成される溶融池より浅い溶融池である浅瀬領域を形成し、
前記主ビームを形成するレーザ光の波長および前記副ビームを形成するレーザ光の波長は、前記加工対象の赤外領域における反射率よりも低い反射率を持つ青色領域の波長である、
加工対象をレーザによって溶接するレーザ溶接装置。」

第4 申立人が主張する申立ての理由の概要

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1 申立書における申立ての理由

申立人による申立ての理由は、以下のとおり整理することができる。

(1)進歩性欠如(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)

本件訂正前の請求項1~31:甲第1号証記載の発明、及び、甲第2号証~甲第7号証に記載された技術常識から当業者が容易に想到し得たものである(申立書第1~7、8、29~44、46~47ページ参照)。

(2)サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号、同法第113条第4号)

本件訂正前の請求項2、及び、請求項2の記載を引用する請求項3~12、並びに、

本件訂正前の請求項15、及び、請求項15の記載を引用する請求項16~30(申立書第7、8、44~46、47ページ参照)

(3)明確性要件違反(特許法第36条第6項第2号、同法第113条第4号)

本件訂正前の請求項2の記載を引用する請求項9~12、並びに、

本件訂正前の請求項15の記載を引用する請求項21、22、24~30(申立書第7、8、46、47ページ参照)

2 申立人意見書による申立ての理由の主張

上記1(1)の申立ての理由:進歩性欠如(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)に関し、本件訂正に対応して、技術常識であることを示すための新たな証拠を提示して、次の主張をしている。

請求項1:甲第1号証記載の発明、及び、本件訂正に伴い新たに提示する甲第8号証~甲第9号証に記載された技術常識から当業者が容易に想到し得たものである(申立人意見書第2~6ページ参照)。

請求項14、31:甲第1号証記載の発明、及び、甲第8号証~甲第9号証に記載された技術常識から当業者が容易に想到し得たものである(申立人意見書第6ページ参照)。

請求項3~13、16~30:甲第1号証記載の発明、及び、甲第2号証~甲第9号証に記載された技術常識から当業者が容易に想到し得たものである(申立人意見書第6ページ参照)。

3 証拠方法

<申立書に添付された証拠方法(書証)>

甲第1号証:特開2015-217422号公報
甲第2号証:マグローヒル科学技術用語大辞典(第1版),「青」の項目,昭和54年3月20日,p.5
甲第3号証:吉田涼平ほか,「青色レーザの各種金属の吸収特性および焼入性」,溶接学会全国大会講演概要,第99集,2016年9月,p.78~79
甲第4号証:特開2015-205327号公報
甲第5号証:特許第5496370号公報
甲第6号証:特開2012-110905号公報
甲第7号証:特開2016-173472号公報

<申立人意見書に添付された証拠方法(書証)>

甲第8号証:国際公開第2013/186862号
甲第9号証:特開2007-319878号公報

(以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。)

4 甲8~甲9の取扱いについて

申立人意見書における甲8~甲9を追加しての意見(申立人意見書第2~6ページ)は、実質的に新たな証拠に基づくものである。しかし、甲8~甲9は、本件訂正により追加された訂正事項1、11、12及び27により訂正された請求項1、13、14、31についての見解のために提示されたものであって、本件訂正の内容に付随して生じる理由のためのものであると認められることから、甲8~甲9も証拠として採用し、以下判断する。

第5 当審より通知した取消理由の概要

1 理由1(新規性)

本件訂正前の請求項1、3~4、7~14、16~17、20~25、29、31に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、3~4、7~14、16~17、20~25、29、31に係る本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

2 理由2(進歩性)

本件訂正前の請求項1、3~14、16~31に係る発明は、甲1に記載された発明、及び、甲2~甲7に記載された技術的事項に基づいて、本件特許出願に係る優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3~14、16~31に係る本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3 理由3(サポート要件)

本件訂正前の特許は、特許請求の範囲の記載が次の(1)~(2)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(1)本件訂正前の請求項2について

発明の詳細な説明には、副ビームを青色領域の波長とすることは記載されるものの、主ビームは、副ビームと同じ青色領域の波長か、高出力レーザ発振器からの赤外波長である実施形態しか記載されておらず、本件発明2に特定されるような、主ビームを、副ビームとは異なる青色領域の波長とすることについては開示されておらず、また、技術常識に照らしても発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内であるということもできない。

(2)本件訂正前の請求項3~12、15~30について

請求項2の記載を引用する本件発明3~12、請求項2と同様に特定される本件発明15、請求項15の記載を引用する本件発明16~30についても、上記(1)と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

4 理由4(明確性)

本件訂正前の特許は、特許請求の範囲の記載が次の(1)~(3)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(1)本件訂正前の請求項2を引用する請求項9について

請求項9にて特定される、主ビームおよび副ビームが「ビームシェイパ」によって形成される場合、両ビームは同じ波長になると解されるところ、請求項2にて特定される、主ビームと副ビームとが異なる波長であることと整合しない。

したがって、請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9に係る発明は、明確でない。

(2)本件訂正前の請求項10~12、21~22、24~30について

請求項2の記載を引用する請求項9の記載をさらに引用する請求項10~12に係る発明、請求項9と同様に特定される請求項15の記載を直接的又は間接的に引用する請求項21に係る発明、及び、当該請求項21の記載を引用する請求項22、24~30に係る発明についても、上記(1)と同様の理由により、明確でない。

(3)本件訂正前の請求項21~22、24~30について

請求項21において、「前記回折光学素子は前記単一のレーザ発振器から発振された光から前記主ビームおよび前記副ビームを形成する」と特定されるものの、「回折光学素子」は、請求項21、及び、請求項21が記載を引用する請求項14~20において、前記されていない。

したがって、請求項21に係る発明、及び、当該請求項21の記載を直接的又は間接的に引用する請求項22、24~30に係る発明は、明確でない。

なお、理由2は、訂正前の請求項2、15を除き、進歩性欠如に係る申立ての理由と同趣旨のものであり、理由3~4は、サポート要件違反及び明確性要件違反に係る申立ての理由と同趣旨のものである。

第6 請求項1、3~14、16~31に係る特許についての新規性、進歩性の判断

本件発明1、3~14、16~31について、取消理由通知における理由1(新規性、上記第5の1)及び理由2(進歩性、上記第5の2)を、以下検討する。

1 本件発明1について

(1)本件発明1の認定

本件発明1は、上記第3の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

(2)甲1に記載された発明の認定

ア 甲1には、以下の事項が記載されている。

(ア)技術分野

「【0001】
本開示は、密閉電池などで電極として用いられる積層箔の積層体を含む集電部などをレーザビームで溶接する方法に関し、特に、レーザを用いた場合に溶接部に発生する空隙などの品質不良を防止するレーザ溶接方法に関する。」

(イ)背景技術

「【0004】
発電要素の芯体と呼ばれる金属積層箔と集電体を電気的に接合して集電する方法としては、機械的なカシメ、溶接等の方法があるが、高出力が要求される電池の集電体の接合方法としては溶接が適している。また、リチウムイオン二次電池においては、低抵抗化を実現するために、正極側の積層箔及び集電体材料としてはアルミニウム又はアルミニウム合金が使用され、負極側の積層箔及び集電体材料としては銅又は銅合金が使用されている。しかし、アルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金は、その特性として電気抵抗が小さく、熱伝導率が大きいため、溶接するためには非常に大きなエネルギーが必要となる。」

(ウ)発明が解決しようとする課題

「【0011】
また、レーザ溶接方法を用いた場合、そのスパッタ対策として、レーザピークパワーの低い熱伝導溶接を用いることが一般的であるが、その場合、ピークパワーが低い為、集電部全体を溶融接合させようと思うと、通常10kW以上のパワーが必要であり現実性が低い。また、スパッタ発生よりも接合を優先させた場合、レーザピークパワーの大きなキーホール溶接を用いることになるが、その場合、溶融深さは稼げても、高エネルギーが積層箔からなる集電部に照射される為、溶融部に空隙が発生するという問題がある。」
「【0014】
本開示は、積層箔により構成された集電体部の溶融部に発生する空隙の発生を抑制しながら溶接するレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置を提供することを目的とする。」

(エ)発明を実施するための形態

「【0018】
第1の態様に係るレーザ溶接方法は、第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材との間に設けられた第3の部材と、からなる被溶接部材をレーザビームで溶接するレーザ溶接方法であって
前記レーザビームが、第1のレーザビーム、第2のレーザビーム、及び、第3のレーザビームを有するレーザビームであり、前記第2及び第3のレーザビームが、前記第1のレーザビームの内側に存在し、かつ前記第1のレーザビームの第1のレーザパワー密度よりも高い第2及び第3のレーザパワー密度をそれぞれ有するレーザビームを用いて、前記第1の部材に前記第1のレーザビームを照射して、前記第1の部材の表面を溶融させて溶融部を形成する第1溶融工程と、
前記第1溶融工程で溶融している前記溶融部に前記第2のレーザビームを照射し、前記第2のレーザビームに沿って、前記溶融部より高温の溶融部からなる第1のキーホールを発生させる第2溶融工程と、
前記第1溶融工程で溶融している前記溶融部に前記第3のレーザビームを照射し、前記第3のレーザビームに沿って、前記溶融部より高温の溶融部からなる第2のキーホールを発生させる第3溶融工程と、
を含み、前記第1の部材と、前記第2の部材と、前記第3の部材と、を溶融させて前記被溶接部材を溶接することを特徴とする。」

(オ)実施の形態1<レーザ溶接装置>

「【0028】

(実施の形態1)

<レーザ溶接装置>

図3は、実施の形態1に係るレーザ溶接装置40の構成を示すブロック図である。このレーザ溶接装置40は、第1の部材18と、第2の部材19と、第1の部材18と第2の部材19との間に設けられた第3の部材15と、からなる被溶接部材についてレーザビームを照射しながら走査して溶接するレーザ溶接装置であって、第1のレーザ部41と、第2のレーザ部42と、第3のレーザ部43と、走査部44と、を備える。第1のレーザ部41は、第1の部材18の表面を溶融させるが、第1の部材18を貫通しない第1のレーザパワー密度を有する第1のレーザビーム30を第1の部材18に照射する。第2のレーザ部42は、第1のレーザビーム30の内側に、第1のレーザビーム30の第1のレーザパワー密度より高い第2のレーザパワー密度を有する第2のレーザビーム31を照射する。第3のレーザ部43は、第1のレーザビーム30の内側に、第2のレーザビーム31と並んで、第1のレーザビーム30の第1のレーザパワー密度より高い第3のレーザパワー密度を有する第3のレーザビーム32を照射する。走査部44は、第2のレーザビーム31、及び、第3のレーザビーム32を第1の部材18について走査する。

【0029】

実施の形態1に係るレーザ溶接装置40によれば、第1のレーザ部41から照射される第1のレーザビーム30は、比較的広い範囲にわたって照射されるが、その第1のレーザパワー密度は弱いので、被溶接部材である第1の部材18の表面について熱伝導溶融させる。

【0030】

また、第2のレーザ部42から照射する第2のレーザビーム31は、第1のレーザビーム30の内側に照射される。この第2のレーザビーム31は、第1のレーザビーム30の第1のレーザパワー密度より高い第2のレーザパワー密度を有するので、第1のレーザビーム30によって溶融している第1の部材18の溶融部30aの中で、第2のレーザビーム31に沿って、より高温の溶融部31aからなる第1のキーホールを生じさせる。その結果、より高温の第1のキーホール31aの下部の溶融部30aは、熱伝導溶融によってさらに第3の部材15を溶融し始める。この場合、通常のキーホール溶接の場合とは異なり、第1の部材18から第3の部材15にわたる溶融部30aの生成において、すでに溶融状態にある溶融部30aの深さの変化として生じるのでスパッタや空隙の発生を抑制できる。

【0031】

さらに、第3のレーザビーム32は、第2のレーザビーム31と同様に、第1のレーザパワー密度より高い第3のレーザパワー密度を有するので、溶融部30aの中で、第3のレーザビーム32に沿って、より高温の溶融部32aからなる第2のキーホールを生じさせる。その結果、より高温の第2のキーホール32aの下部の溶融部30aは、熱伝導溶融によってさらに第2の部材19を溶融し始める。この場合にも通常のキーホール溶接の場合とは異なり、第1の部材18、第3の部材15、及び、第2の部材にわたる溶融部30aの生成において、すでに溶融状態にある溶融部30aの深さの変化として生じるのでスパッタや空隙の発生を抑制できる。なお、第3のレーザビーム32の第3のレーザパワー密度を、第2のレーザビーム31の第2のレーザパワー密度よりも大きくすることによって、第2のキーホールの溶融部32aの深さを第1のキーホールの溶融部31aの深さより深くすることができる。

【0032】

具体的には、各レーザ部41、42、43の種類としては、例えば、基本波である波長1070nm程度のものを用いることができる。なお、レーザの波長は上記に限られない。また、レーザとしては、例えば、Nd:YAGレーザ(発振波長:1064nm)、炭酸ガスレーザ(発振波長:9.6μm、10.6μm)、Arレーザ(発振波長:480.0nm、514.5nm)、アレキサンドライトレーザ、エキシマレーザ等を使用できる。なお、上記レーザの種類に限られるものではなく、その他のレーザも使用できる。レーザパワーとしては、被溶接部材である上板(第1の部材)18、下板(第2の部材)19、積層箔(第3の部材)15の特性に依存するところが大きい。一例として、各部材18、19、15の材質をアルミニウム、厚みをそれぞれ順に上板18の厚さ0.4mm、下板19の厚さ0.8mm、積層箔の総厚0.5mmとした場合、加工速度150mm/sの場合には、第1のレーザビーム30は、300W、第2のレーザビーム31は、600W、第3のレーザビーム32は、1000Wとビーム強度を変えてもよい。また、照射の範囲も第1のレーザビーム30は、スポット径で、例えば約1000μmと比較的広く設定し、第2のレーザビーム31、及び、第3のレーザビーム32は、それぞれ約100μm程度になるようにビームプロファイルを設定してもよい。これによって空隙の発生を抑制したレーザ溶接が実現出来る。

【0033】

また、第1から第3のレーザ部41、42、43としては、上記のレーザ溶接装置40では、互いに異なるビーム強度を有する3つのレーザ部41、42、43を独立に設け、同時に照射して溶接しているが、このような構成に限られない。このレーザプロファイルの作り方としては、3つの独立したレーザから同一スポットに向けてそれぞれ照射することで実現してもよく、あるいは回折格子などを用いて1つのレーザビームを3つに分けた後、同一スポットに向けて照射してもよい。この場合、第1のレーザビーム30は、広い範囲にわたって第1の部材18を照射すると共に、レーザパワー密度が相対的に低い。一方、第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32は、狭い範囲について照射すると共に、レーザパワー密度が第1のレーザビームに比べて相対的に高い。そこで、1つのレーザビームを3つに分岐させる場合には、レーザビームの照射範囲の広狭を制御して、照射範囲の広狭とレーザパワー密度の強弱とを同時に制御してもよい。具体的には、第1のレーザビーム30の照射範囲を広くしてレーザパワー密度を相対的に低くすればよい。また、第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32の照射範囲を狭い範囲に集中することによってレーザパワー密度を相対的に高くすればよい。さらに、第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32の照射範囲を第1のレーザビームの内側とすることによって上記構成を実現できる。

【0034】

走査部44は、第2のレーザビーム31と、第3のレーザビーム32とを第1の部材18について走査できればよい。この場合、第2のレーザビーム31と、第3のレーザビーム32とを、第1のレーザビーム30の照射範囲の内側で走査する。さらに、走査部44は、第1のレーザビーム30についても第1の部材18に対して走査してもよい。なお、第1のレーザビーム30の照射範囲は、第2及び第3のレーザビーム31、32の照射範囲と対比して広いので、第1のレーザビーム30は、第2及び第3のレーザビーム31、32の走査と同時に走査する必要はないが、第1のレーザビーム30、第2のレーザビーム31、第3のレーザビーム32を一体的に走査してもよい。

(カ)実施の形態1<レーザ溶接方法>、図面

「【0035】
<レーザ溶接方法>
次に、実施の形態1に係るレーザ溶接方法に関して、同じく図2(a)~図2(e)を用いて説明する。図2(a)~図2(e)は、本実施の形態1における集電体部のレーザ溶接方法の各工程を経時的に示す断面図である。図2(a)から図2(e)の順に時間経過を示している。
【0036】
(a)まず、図2(a)は、レーザ溶接前の被溶接部材の構成を表している。図2(a)に示すように、本実施の形態1における溶接方法では、被溶接部材は、例えば、下板(第2の部材)19、積層箔(第3の部材)15、上板(第1の部材)18の順に重ね合わせている。積層箔15は、薄い金属箔が重ねられたもので、電池の場合、アルミニウムまたは銅を用いる場合が多いが、これに限られない。また厚みは5~100μm程度と幅広いが、主に5~20μm程度の場合が多く、箔厚みが薄い程、本発明の効果が大きい。積層箔15内の箔枚数は10~100枚程度のものがあり、枚数が多い程、本発明の効果が大きい。上板18の厚みは0.2~2mm程度であり、材質は電池の場合、アルミニウムまたは銅を用いる場合が多いが、その限りではない。下板19も上板18と同様であるが、上板厚みが下板厚みより薄い方が本発明の効果が大きい。なお、上板18、下板19、積層箔15は、いずれも同一金属であっても、あるいは、それぞれ異なる金属からなる場合であってもよい。ここでは主に10枚~100枚の金属箔が重ねられている積層箔15の部分に着目し、説明を行う。
【0037】
なお、本開示のレーザ溶接方法を電池の集電体、積層箔、集電体受け部品のレーザ溶接に用いる場合、積層箔としては正極箔又は負極箔のいずれであってもよい。さらに、積層箔は、巻回形のものであっても積層形のものであってもよい。またさらに、電池としては、一次電池、非水電解質二次電池、又は、水性電解質二次電池であってもよい。」
「【図2(a)】
[図:0001420312000008.jpg]
」
「【0038】
(b)図2(b)は、第1のレーザビームを照射する第1溶融工程の概略断面図である。図2(b)では、弱いビームである第1のレーザビーム30の照射によって熱伝導溶融のために上板(第1の部材)18の上部30aに金属溶融が発生していることを示している。第1のレーザビーム30の第1のレーザパワー密度が相対的に低い為、このレーザビーム30のみでは上板18を貫通するだけの溶融は出来ない。つまり表面のみ溶融した状態になる。
なお、第1のレーザビーム30は、相対的に弱いビームであるので、熱伝導溶融が生じる。この熱伝導溶融とは、ビームが弱い場合にビームの熱が低速に伝わりながら溶融が起こる状態を示している。」
「【図2(b)】
[図:0001420312000009.jpg]
」
「【0039】
(c)続いて、図2(c)は、第2のレーザビームを照射する第2溶融工程の概略断面図である。図2(c)では、弱い第1のレーザビーム30が通過し、その後、第2のレーザビーム31である強いビーム31が到着し、溶融部30aの中に第2のレーザビーム31に沿って深い溶融部(第1のキーホール)31aが形成されることが示されている。第2のレーザビーム31の第2のレーザパワー密度は、第1のレーザパワー密度より高い。この工程によって、溶融深さが全体的に深くなる。溶融部30aの深さが深くなるのは、第2のレーザビーム31に沿って、高パワーで溶融している溶融部(第1のキーホール)31aの熱の影響により、通常以上に溶融部30aが熱伝導溶融するパワーを有するからである。
【0040】
第2のレーザビーム31は、相対的に強いビームであるのでキーホール溶融が生じる。ここで、ビームが強い、弱いとは、例えば、単位面積当たりのビーム強度(レーザパワー密度)のことを示しており、4kW/mm2以上のものを強いビーム、それ以下のものを弱いビームと位置づけている。なお、材料、加工条件などによって上記条件は変化するため、4kW/mm2との指標に限られるものではない。
【0041】
また、「キーホール」とは、ビームが強い場合にレーザビームが溶融部を掘りながら溶融していく状態を示している。具体的には、「キーホール」とは、溶接用語の一つであって、溶融池の先端部分で熱源が母材(被溶接部材、ここでは、第1の部材、積層箔、及び第2の部材)の裏側へ貫通してできる円孔と定義されている(JIS Z3001 2676)。
なお、ここでは第1のレーザビームによって熱伝導溶融している溶融部30aの中でさらに第2のレーザビーム31に沿って生じる、より高温の溶融部の箇所を第1のキーホール31aと呼んでいる。この第1のキーホール31aは、溶融部30aと比べて、レーザパワー密度の差に起因して溶融池の温度が高いと考えられる。その結果、第1のキーホール31aの下部の溶融部30aにおける熱伝導溶融も進行して、溶融部30a自体の深さが深くなっていくと考えられる。
【0042】
但し、第2のレーザビーム31には、上板18を貫通して第3の部材である積層箔15に達する程のレーザパワー密度は持たず、第2のレーザビーム31だけでは積層箔15へ到達することはない。つまり、第1のレーザビーム30の内側の溶融部30aに第2のレーザビーム31を照射することによって、溶融部30aの内部により高温の第1のキーホール31aを生じさせ、熱伝導溶融による溶融部30aをさらに深くできる。
なお、通常のキーホール溶接では、急激な溶融加工である為、スパッタや空隙の発生が考えられるが、本開示ではすでに溶融中である溶融部30a上へのレーザ照射である為、スパッタや空隙の発生を抑制できる。」
「【図2(c)】
[図:0001420312000010.jpg]
」
「【0043】
(d)次に、図2(d)では、第2溶融工程において、さらに第1のレーザビーム30及び第2のレーザビーム31が進行することにより、弱い第1のレーザビーム30による溶融部30aの深さが増加し、積層箔15の部分で溶融が開始されることが示されている。
なお、従来の強いレーザビームであれば、レーザビームが積層箔15に到達した時点で金属蒸気や有機蒸気などが急激に発生し、溶融部の内部に空隙を形成する。一方、本開示では相対的に弱い第1のレーザビーム30を使用しており、キーホール溶接ではなく、熱伝導溶融による溶融速度の遅い溶接の為、溶融状態を維持しながら溶融部30aの深さが変化する。このため、溶融部30aにおける空隙の発生を抑制できる。」
「【図2(d)】
[図:0001420312000011.jpg]
」
「【0044】
(e)図2(e)は、第3のレーザビームを照射する第3溶融工程の概略断面図である。図2(d)の後、図2(e)に示すように、さらに第3の強いレーザビーム32が到着し、溶融部30aはさらに深くまで溶け込み、下板19までも溶け込みが発生し、集電体全体が接合される。この時、強い第3のレーザビーム32は、積層箔15内を通過することになるが、その時点では、積層箔15自体は溶融部32aとして多層の積層箔ではなく一体化されていることもあり、熱逃げの場所もあれば、また箔内にあったエアーなどもすでに熱伝導溶融時に抜けている為、空隙が発生することはほとんどない。
なお、ここでは第1のレーザビームによって熱伝導溶融している溶融部30aの中でさらに第3のレーザビーム32に沿って、第2のキーホール32aが生じている。この第2のキーホール32aは、溶融部30aと比べて、レーザパワー密度の差に起因して溶融池の温度が高いと考えられる。その結果、第2のキーホール32aの下部の溶融部30aにおける熱伝導溶融も進行して、溶融部30a自体の深さがさらに深くなっていくと考えられる。」
「【図2(e)】
[図:0001420312000012.jpg]
」
「【0045】
以上によって、上板18、積層箔15、及び、下板19が溶融され、被溶接部材が溶接される。
なお、上記第1溶融工程において、第1の部材18の両端部から間隔を空けて第1のレーザビーム30を照射して、第1の部材18の両端部にレーザ加工無し部分を形成してもよい。」

(キ)実施例1[集電体のレーザ溶接]

「【0059】
今回、被溶接部材として、上板18、下板19を用いて積層箔15をはさんだ状態でレーザ加工を行ったが、片側だけの場合、積層箔15自体に剛性が無い為、上下板で挟んだ場合と同程度に強固に押さえることが難しく、本発明の効果を実現することは難しかった。これにより、上板18と下板19とで積層箔15を挟みこむことが必須であると考えられる。
【0060】
また実験結果より、上板18の厚さと下板19の厚さとを比較した場合、上板18の厚さ<下板19の厚さの場合、つまり上板18の厚さを下板19の厚さより薄くした方が溶融部における空隙の発生が少ないことを本発明者は確認している。この理由としては上板18を厚くすると上板18を積層箔15の近くまで溶融する為には大きなパワーが必要であり、その場合、積層箔15には大きなパワーのレーザが照射されてしまう可能性があり、そのリスクを避ける為にも下板19よりも上板18が薄いことが望ましい。」

イ 甲1には、以下の技術的事項が記載されている、といえる。

(ア)甲1の段落【0018】、【0028】、【0032】、【0035】、【0036】、【0059】の記載から、甲1には、レーザ溶接装置40からのレーザビームを、第1の部材としての上板18と、第2の部材としての下板19と、上板18と下板19との間に設けられた第3の部材としての積層箔15と、からなる被溶接部材に向かって照射し、被溶接部材を溶融して溶接を行う工程を含む、被溶接部材をレーザビームで溶接するレーザ溶接方法が記載されている。

(イ)甲1の段落【0028】、【0030】、【0031】の記載から、甲1に記載のレーザ溶接方法におけるレーザビームは、第1の部材としての上板18に照射され、第1の部材としての上板18の表面を溶融させるが、第1の部材としての上板18を貫通しない第1のレーザパワー密度を有する第1のレーザビーム30と、第1のレーザビーム30の内側に照射され、第1のレーザパワー密度より高い第2及び第3のレーザパワー密度をそれぞれ有する第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32とによって構成されることがわかる。そして、甲1の段落【0038】~【0042】の記載、及び、図2(b)~(c)、並びに、段落【0043】~【0045】の記載、及び、図2(d)~(e)を併せてみれば、甲1に記載のレーザ溶接方法におけるレーザビームは、第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32と、それらのレーザビーム31及び32に対して走査方向前方に少なくともその一部がある第1のレーザビーム30によって構成され、第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32の第2及び第3のレーザパワー密度は、少なくとも第1のキーホール31a及び第2のキーホール32aを生じさせる強度であり、第1のレーザビーム30のレーザパワー密度は、被溶接部材の第1の部材としての上板18の表面のみ溶融し得る強度である、といえる。

(ウ)上記(イ)から、甲1に記載のレーザ溶接方法におけるレーザビームは、第1のレーザビーム30が照射される領域に、第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32が照射される領域に形成される溶融池より浅い溶融池である浅瀬領域を形成するものである、といえる。

(エ)甲1の段落【0028】、【0032】の記載から、甲1に記載のレーザ溶接方法におけるレーザ溶接装置40は、第1~第3のレーザビーム30~32を照射する第1~第3のレーザ部41、42、43を備え、第1~第3のレーザ部41、42、43は、例えば、Arレーザ(発振波長:480.0nm、514.5nm)を使用できることがわかる。また、甲1の段落【0004】、【0032】、【0036】に記載されるように、甲1に記載のレーザ溶接方法における被溶接部材は、例えば、アルミニウム又は銅であることがわかる。

ウ 上記ア~イから、甲1に記載された事項を請求項1の記載に合わせて整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されている、といえる。

(括弧内には、甲1に記載された事項に対応する本件発明1の発明特定事項、又は、上記ア~イの参照箇所を示す。以下同様。)

「レーザ溶接装置40(レーザ装置)からのレーザビーム(レーザ光)を、第1の部材としての上板18と、第2の部材としての下板19と、前記上板18と前記下板19との間に設けられた第3の部材としての積層箔15と、からなる被溶接部材(加工対象)に向かって照射し、前記被溶接部材(前記加工対象)を溶融して溶接を行う、
工程を含み(上記イ(ア))、
前記レーザビーム(前記レーザ光)は第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32(主ビーム)と、前記第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32(前記主ビーム)に対して走査方向(掃引方向)前方に少なくともその一部がある第1のレーザビーム30(副ビーム)によって構成され(上記イ(イ))、前記第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32(前記主ビーム)のレーザパワー密度(パワー密度)は、第1のキーホール31a及び第2のキーホール32a(キーホール)を生じさせる(発生させ得る)強度であり、前記第1のレーザビーム30(前記副ビーム)のレーザパワー密度(パワー密度)は、被溶接部材の第1の部材18の表面のみ(前記加工対象)を溶融し得る強度であり(上記イ(イ))、
前記レーザビーム(レーザ光)は、前記第1のレーザビーム30(前記副ビーム)が照射される領域に、前記第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32(前記主ビーム)が照射される領域に形成される溶融池より浅い溶融池である浅瀬領域を形成し(上記イ(ウ))、
前記第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32(前記主ビーム)を形成するレーザビーム(レーザ光)の波長および前記第1のレーザビーム30(前記副ビーム)を形成するレーザビーム(レーザ光)の波長は、アルミニウム又は銅である被溶接部材を溶融する、Arレーザにより発振される480.0nmを含む(上記イ(エ))、
被溶接部材(加工対象)をレーザビームで溶接する(レーザによって溶接する)レーザ溶接方法(方法、上記イ(ア))。」

(3)本件発明1と甲1発明1との対比

本件発明1と甲1発明1とを対比すると、以下の相違点1~2で一応相違し、その余の点で一致する。

<相違点1>

レーザ光(レーザビーム)を構成する主ビームに関して、

本件発明1においては、1つのみの主ビームであるのに対し、

甲1発明1においては、第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32である点。

<相違点2>

主ビーム(第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32)を形成するレーザ光(レーザビーム)の波長、及び、副ビーム(第1のレーザビーム30)を形成するレーザ光(レーザビーム)の波長に関して、

本件発明1においては、「加工対象の赤外領域における反射率よりも低い反射率を持つ青色領域の波長である」のに対し、

甲1発明1においては、「アルミニウム又は銅である被溶接部材を溶融する、Arレーザにより発振される480.0nmを含む」点。

(4)新規性についての判断

相違点1について検討する。

甲1発明1における主ビームは、第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32の2つのレーザビームからなり、1つのみの主ビームである本件発明1とは明らかに相違する。そのため、本件発明1は、少なくとも相違点1で相違するから、甲1発明1であるとはいえない。

(5)進歩性についての判断

上記相違点1について検討する。

甲1発明1は、甲1の記載を総合してみると、第1の部材としての上板18と、第2の部材としての下板19と、前記上板18と前記下板19との間に設けられた第3の部材としての積層箔15と、からなる被溶接部材を対象として、レーザビームで溶接するレーザ溶接方法であり(上記(2)イ(ア)参照)、そのレーザビームは、甲1発明1として認定したとおり、

ア 第1の部材18に照射され、第1の部材18の表面を溶融させるが、第1の部材18を貫通しない第1のレーザパワー密度を有する「第1のレーザビーム30」(段落【0028】)、

イ 第1のレーザパワー密度より高い第2のレーザパワー密度を有し、第1のレーザビーム30によって溶融している第1の部材18の溶融部30aの中で、より高温の溶融部31aからなる第1のキーホールを生じさせる「第2のレーザビーム31」(段落【0030】)、及び、

ウ 第1のレーザパワー密度より高い第3のレーザパワー密度を有し、溶融部30aの中で、より高温の溶融部32aからなる第2のキーホールを生じさせる「第3のレーザビーム32」(段落【0031】)

という、3つのレーザビーム30、31、32によって構成されるものである。

そして、当該被溶接部材を当該レーザビームで溶接する態様は、

エ 第1のレーザビーム30の照射によって熱伝導溶融のために上板(第1の部材)18の上部30aに金属溶融が発生し(段落【0038】、図2(b))、

オ 第2のレーザビーム31である強いビーム31が到着し、溶融部30aの中に第2のレーザビーム31に沿って深い溶融部(第1のキーホール)31aが形成されるも、第2のレーザパワー密度は、上板18を貫通して第3の部材である積層箔15に達する程のレーザパワー密度を持たず、第2のレーザビーム31だけでは積層箔15へ到達することはなく(段落【0039】、【0042】、図2(c))、

カ 第1のレーザビーム30及び第2のレーザビーム31が進行することにより、弱い第1のレーザビーム30による溶融部30aの深さが増加し、積層箔15の部分で溶融が開始され(段落【0043】、図2(d))、

キ 第3の強いレーザビーム32が到着し、溶融部30aはさらに深くまで溶け込み、下板19までも溶け込みが発生し、集電体全体が接合される(段落【0044】、図2(e))

ことが開示されるのみである。

しかも、甲1の段落【0059】には、上板18と下板19とで積層箔15を挟みこむことが必須であることが明記されるように、甲1発明1が適用される被溶接部材においては、上板18及び下板19は、欠くことのできない部材である。その前提のもと、甲1発明1に係る溶接方法では、ビームの熱が低速に伝わりながら溶融が起こる状態である熱伝導溶融が生じる第1のレーザビーム30のみでは上板18を貫通するだけの溶融は出来ない(段落【0038】)ため、第1のキーホール31aを形成する第2のレーザビーム31を必須とし(上記オ)、他方、スパッタや空隙の発生を抑制するために、第2のレーザビーム31には、上板18を貫通して第3の部材である積層箔15に達する程のレーザパワー密度は持たず、第2のレーザビーム31だけでは積層箔15へ到達することはない(段落【0042】)ような第2のレーザパワー密度とされるものである(上記オ)。そして、第2のレーザビーム31が通過した後の第1のレーザビーム30による溶融部30aの深さが増加し、積層箔15の部分で溶融が開始され(上記カ)、その後、集電体全体が接合されるように、第3のレーザビーム32が到着し、溶融部30aはさらに深くまで溶け込み、下板19までも溶け込みが発生する(上記キ)ものであることがわかる。

以上の作用機序を踏まえると、甲1発明1においては、被溶接部材として、積層箔15を挟み込むために上板18及び下板19を必須とし、それらを一体に接合するためには、主ビームとしての第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32をいずれも必要とするものであるといえる。

してみると、申立人が新たに甲8~甲9を提出し、主張するように、レーザ装置からのレーザ光を加工対象に向かって照射し、加工対象を溶融して溶接を行う工程を含むレーザ溶接方法において、本件特許の優先日前において、

「レーザ光が1つのみの主ビームと、主ビームに対して掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成すること。」

が技術常識であったとしても、甲1発明1においては、主ビームとして第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32をいずれも必要とするものであるから、甲1発明1に甲8~甲9に記載される技術常識を適用することには阻害要因がある。

また、甲2~甲7の記載を参照しても、甲1発明1における、主ビームとして第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32をいずれも必要とすることを改変して、相違点1に係る本件発明1のように1つのみの主ビームとすることを想到し得る技術的事項が開示されているともいえない。

以上のとおり、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1及び甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(6)小括

したがって、本件発明1は、甲1発明1であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとはいえず、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。

また、本件発明1は、甲1発明1及び甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるともいえない。

2 本件発明3~12について

(1)判断

本件発明3~12は、直接的又は間接的に請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明1が、上記1(4)~(5)のとおり、甲1発明1でなく、また、甲1発明1及び甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明3~4、7~12についても同様に、甲1発明1でなく、また、本件発明3~12は、甲1発明1及び甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)小括

したがって、本件発明3~4、7~12は、甲1発明1であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとはいえず、請求項3~4、7~12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。

また、本件発明3~12は、甲1発明1及び甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項3~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるともいえない。

3 本件発明13について

(1)対比・判断

本件発明13と、甲1発明1とを対比すると、上記1(3)に示した相違点1と同様の点(以下「相違点3」という。)で少なくとも相違し、その相違点3に係る本件発明13の構成については、上記1(5)で検討したように、甲1発明1及び甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)小括

したがって、本件発明13は、甲1発明1であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとはいえず、請求項13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。

また、本件発明13は、甲1発明1及び甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるともいえない。

4 本件発明14、16~30、31について

(1)甲1に記載された発明の認定

甲1には、レーザ溶接方法に係る甲1発明1のほか、甲1発明1に対応するレーザ溶接装置に係る発明(以下「甲1発明14」という。)も記載されている。

(2)対比・判断

本件発明14及び31と、甲1発明14とを対比すると、上記1(3)に示した相違点1と同様の点(以下「相違点4」という。)で少なくとも相違し、その相違点4に係る本件発明14、31の構成については、上記1(5)での検討と同様に、甲1発明14及び甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

また、本件発明16~30は、直接的又は間接的に請求項14の記載を引用するものであるところ、本件発明14が、上記のとおり、甲1発明14でなく、また、甲1発明14及び甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明16~17、20~25、29についても同様に、甲1発明14でなく、また、本件発明16~30は、甲1発明14及び甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)小括

したがって、本件発明14、16~17、20~25、29、31は、甲1発明14であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとはいえず、請求項14、16~17、20~25、29、31に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。

また、本件発明14、16~30、31は、甲1発明14及び甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項14、16~30、31に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるともいえない。

第7 請求項2~12、15~30に係る特許についてのサポート要件の判断

請求項2~12、15~30に係る特許について、取消理由通知における理由3(サポート要件、上記第5の3)を、以下検討する。

1 取消理由通知の理由3

取消理由通知の理由3は、上記第5の3(1)~(2)のとおりである。

2 本件訂正について

本件訂正により、請求項2及び請求項15は削除され(訂正事項2、13)、取消理由の対象が存在しない。

また、請求項3~12、請求項16~30は、請求項2及び請求項15の記載を引用するものではないから、取消理由通知における理由3により、請求項3~12、請求項16~30に係る特許を取り消すことはできない。

3 小括

したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

第8 請求項9~12、21~22、24~30に係る特許についての明確性要件の判断

請求項9、当該請求項9を引用する請求項10~12、請求項21、及び、当該請求項21を引用する請求項22、24~30に係る特許について、取消理由通知における理由4(明確性要件、上記第5の4)を、以下検討する。

1 取消理由通知の理由4

取消理由通知の理由4は、上記第5の4(1)~(3)のとおりである。

2 本件訂正について

本件訂正により、請求項2及び請求項15は削除され(訂正事項2、13)、また、請求項9及び請求項21におけるそれぞれの引用請求項から請求項2又は請求項15が除かれた(訂正事項8、19)。ここで、請求項9にて特定される、主ビームおよび副ビームが「ビームシェイパ」によって形成される場合、両ビームは同じ波長になると解釈されるところ、この解釈を妨げる理由はないから、請求項9の「ビームシェイパ」の記載は明確である。

そして、請求項9の記載をさらに引用する請求項10~12に係る発明、請求項9と同様に特定される請求項21に係る発明、及び、当該請求項21の記載を引用する請求項22、24~30に係る発明についても、請求項9と同様に、「ビームシェイパ」の記載は明確である。

したがって、取消理由通知における理由4の(1)~(2)により、請求項9~12、21~22、24~30に係る特許を取り消すことはできない。

また、請求項21における「前記ビームシェイパ」との記載における「ビームシェイパ」は、請求項21において「前記加工対象との間に配置されたビームシェイパを含み」と記載されるように、前記されているため、本件発明21は明確であり、取消理由通知における理由4の(3)により、請求項21~22、24~30に係る特許を取り消すことはできない。

3 小括

したがって、本件の請求項9~12、21~22、24~30に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

第9 申立人意見書における主張について

1 申立人の申立人意見書における主張

申立人は申立人意見書において、以下の点を主張する。

(1)本件訂正により「前記レーザ光は1つのみの主ビームと、前記主ビームに対して掃引方向前方に少なくともその一部がある副ビームによって構成され、」と特定された点について、そもそも1つの主ビームと、主ビームに重畳する副ビームとによってレーザ光を構成することは、技術常識であって、主ビームを1つのみにしたことによる格別な効果は存在しないから、主ビームを1つのみに特定したとしても発明の進歩性は認められない(申立人意見書第2~6ページ、3.2)。

(2)引用文献から引用発明を認定する場合、引用文献に多数工程からなる方法が記載されていたときには、多数工程のうちの一部の工程を引用発明として認定することは当然に許される。実際、申立書では、甲1の場合、第2のレーザビームのみを本件発明1の「主ビーム」に相当するとして甲1発明を認定し、第1部材16と第3部材(箔)とを溶接するだけであれば、主ビームとしては第2のレーザビームのみで足りるものである(申立人意見書第6~7ページ、3.3(1))。

(3)特許権者の主張する阻害要因は、板/箔/板からなる3部材からなる対象物を溶接接合する場合のものであるが、本件発明1の溶接対象物は3つの部材に特定されているわけではないから、本件発明1の記載に基づくものではない(申立人意見書第7~8ページ、3.3(2))。

2 当審の判断

上記1の主張について検討する。

(1)上記1(1)についてみると、上記第6の1(5)にて検討したように、1つの主ビームと、主ビームに重畳する副ビームとによってレーザ光を構成することが技術常識であったとしても、甲1発明1においては、被溶接部材として上板18及び下板18が必須であることに起因して、主ビームとして第2のレーザビーム31及び第3のレーザビーム32をいずれも必要とするものであるから、甲1発明1に甲8~甲9に記載される技術常識を適用することには阻害要因があるというほかない。

(2)上記1(2)についてみると、上記第6の1(5)にて検討したように、甲1においては、上板18と下板19が必須であり、前記上板18と前記下板19との間に設けられた積層箔15からなる被溶接部材を対象として、レーザビームで溶接するレーザ溶接方法が記載されていることが明らかであり、甲1の記載から、第1部材16と第3部材(箔)とを溶接するだけの技術を抽出することは、本件発明をみたうえでなければ想到し得ない後知恵であるといわざるを得ない。引用文献に多数工程からなる方法が記載されていたときに、事案によっては、多数工程のうちの一部の工程を引用発明として認定することが可能な場合があるとしても、本件については、甲1から主引用発明を認定するにあたっては、上記第6の1(5)にて検討したように、甲1の記載を総合的にみれば、上板18及び下板18が必須であることに起因して、上板18と下板19との間に積層箔15が設けられた集電体全体が接合される必要があり、第2の部材としての下板19や第3のレーザビーム32を捨像して、第1部材16と第3部材(箔)とを溶接するだけの技術として、第1のレーザビーム30と第2のレーザビーム31のみを抽出して主引用発明とすることは認められない。

(3)上記1(3)についてみると、進歩性に判断にあたっては、主引用発明から出発して当業者が本件発明に容易に到達する論理付けができるか否かを判断することが一般的であって(特許・実用新案審査基準 第III部 第2章第2節 進歩性 3.進歩性の具体的な判断)、本件発明1の溶接対象物が3つの部材に特定されているか否かが、その判断に影響を与えるものではない。すなわち、本件においては、甲1の記載から主引用発明を認定する以上、甲1に記載された板/箔/板からなる3部材からなる対象物を溶接接合する場合を前提として、容易想到性を判断することに誤りはない。

第10 むすび

以上のとおり、本件特許の請求項1、3~14、16~31に係る特許は、取消理由通知に示した取消理由(上記第5~第8を参照。)、又は、申立書に記載された申立ての理由(上記第4、第6~第8を参照。)によっては、取り消すことはできない。

また、本件特許の請求項1、3~14、16~31に係る特許を取り消すべき他の理由も発見しない。

そして、本件特許の請求項2、15は、上記第2及び第3のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による本件特許の請求項2、15に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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2024-700062

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