特許異議申立
2018-700972
アルミニウム複合材料のフラックスフリー接合
- 審判番号
- 2018-700972
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-539157外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年11月30日
- 審決日
- 2019年06月28日
- 公報発行日
- 2019年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ハイドロ アルミニウム ロールド プロダクツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
- 【権利者代理人】越川 隆夫
- 【異議申立人】株式会社 UACJ
- 【異議申立人代理人】特許業務法人あいち国際特許事務所
- 分類
- P1651.121-YAA(B23K) / P1651.537-YAA(B23K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6335308号発明「アルミニウム複合材料のフラックスフリー接合」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6335308号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15について訂正することを認める。
特許第6335308号の請求項1ないし2、4ないし8、11ないし12に係る特許を維持する。
特許第6335308号の請求項3、9、10及び13ないし15に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第6335308号の請求項1-15に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)12月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年12月13日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成30年5月11日にその特許権の設定登録がされ、平成30年5月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年11月30日に特許異議申立人株式会社UACJ(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、平成31年2月6付け(平成31年2月8日発送)で取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和元年5月9日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、令和元年6月18日に意見書を提出した。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のア-チのとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「- H2SO4、HCl、HF又はH3PO4の群からの少なくとも1種類の鉱酸若しくはギ酸とフッ化物、シトラート、オキサラート又はホスファートの群からの少なくとも1種類の錯形成剤、又は
- HF20ppmから3重量%若しくはH3PO4 0.1%から20重量%の群由来の錯化鉱酸
を含有する酸洗浄水溶液」
とあるのを、
「- 0.1%から20重量%のH2SO4、20ppmから1000ppmのHF及び少なくとも1種類の界面活性剤
を含有する酸洗浄水溶液」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2-7も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1~3の何れか一項に記載」
とあるのを、
「請求項1又は2に記載」
に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1~4の何れか一項に記載」
とあるのを、
「請求項1、2又は4の何れか一項に記載」
に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1~5の何れか一項に記載」
とあるのを、
「請求項1、2、4又は5の何れか一項に記載」
に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1~6の何れか一項に記載」
とあるのを、
「請求項1、2、4、5又は6の何れか一項に記載」
に訂正する。
キ 訂正事項7
明細書の段落【0011】に
「- 少なくとも1種類の鉱酸若しくは短鎖カルボン酸の群の少なくとも1種類の酸と少なくとも1種類の錯形成剤、又は
- 少なくとも1種類の錯化鉱酸。」
とあるのを、
「- 0.1%から20重量%のH2SO4、20ppmから1000ppmのHF及び少なくとも1種類の界面活性剤。」
に訂正する。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に
「前記アルミニウム複合材料が、H2SO4、HCl、HF又はH3PO4の群からの少なくとも1種類の鉱酸若しくはギ酸とフッ化物、シトラート、オキサラート又はホスファートの群からの少なくとも1種類の錯形成剤又はHF20ppmから3重量%若しくはH3PO4 0.1%から20重量%の群由来の錯化鉱酸を含む洗浄水溶液で洗浄される」
とあるのを、
「前記アルミニウム複合材料が、0.1%から20重量%のH2SO4、20ppmから1000ppmのHF及び少なくとも1種類の界面活性剤を含む洗浄水溶液で洗浄される」
に訂正する。
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1~7の何れか一項に記載」
とあるのを、
「請求項1、2、4、5、6又は7の何れか一項に記載」
に訂正する。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項8~10の何れか一項に記載」
とあるのを、
「請求項8に記載」
に訂正する。
ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項8~11の何れか一項に記載」
とあるのを、
「請求項8又は11に記載」
に訂正する。
セ 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項13を削除する。
ソ 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項14を削除する。
タ 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項15を削除する。
本件訂正請求は、一群の請求項〔1-15〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-15〕について請求されたものである。
なお、訂正請求書には訂正事項17が記載されているが、訂正事項7と同一の内容であるので、改めて列挙はしない。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1
訂正事項1は、「酸洗浄水溶液」の含有成分を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、限定された成分は、明細書の段落【0012】、【0027】、【0034】に記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2、10、11及び14-16
訂正事項2は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項3-6、9、12及び13
訂正事項3-6は、引用先を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項7
訂正事項7は上記訂正事項1及び後述の訂正事項8に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
オ 訂正事項8
訂正事項8は、訂正事項1と同様の訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。
3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1-15に係る発明(以下「本件発明1-15」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも1種類のアルミニウムコア合金と、前記アルミニウムコア合金の片側又は両側に形成されたアルミニウムろう付け合金からなる少なくとも1個の外側ろう付け層とからなる、熱接合法におけるアルミニウム複合材料の使用であって、前記アルミニウムろう付け層が酸洗浄面を有し、前記アルミニウム複合材料がフラックスフリー熱接合法に使用され、前記接合法が保護性ガスの存在下で実施される使用であって、
前記アルミニウムろう付け層の前記洗浄面が、
- 0.1%から20重量%のH2SO4、20ppmから1000ppmのHF及び少なくとも1種類の界面活性剤
を含有する酸洗浄水溶液で洗浄されたことを特徴とし、
前記洗浄における材料の除去が0.05g/m2から6g/m2である、
使用。
【請求項2】
前記アルミニウム複合材料がフラックスフリーCABろう付け法に使用されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
アルミニウムコア合金としてタイプAA1xxx、AA2xxx、AA3xxx、AA5xxx又はAA6xxxのアルミニウム合金が用意され、前記アルミニウムコア合金のMg含有量が各場合において最高1.0重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
前記アルミニウムろう付け合金が重量%単位の以下の組成、すなわち、
6.5%≦Si≦15%、
Fe≦1%、
Cu≦0.3%、
Mg≦2.0%、
Mn≦0.15%、
Zn≦0.15%、
Ti≦0.30%、
残りのAl、及び個々に最高0.05%の量、合計して最高0.15%の不可避不純物、
を有することを特徴とする、請求項1、2又は4の何れか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記アルミニウム複合材料が、前記洗浄前に軽く焼きなまし、再焼きなまし、又は固溶化焼きなましされたことを特徴とする、請求項1、2、4又は5の何れか一項に記載の使用。
【請求項7】
少なくとも1個のアルミニウムろう付け合金層の平均厚さが少なくとも10μmであることを特徴とする、請求項1、2、4、5又は6の何れか一項に記載の使用。
【請求項8】
少なくとも1種類のアルミニウムコア合金と、前記アルミニウムコア合金の片側又は両側に形成されたアルミニウムろう付け合金からなる少なくとも1個の外側ろう付け層とからなる、特に請求項1、2、4、5、6又は7の何れか一項に記載の使用のための、帯状アルミニウム複合材料を製造する方法であって、帯状アルミニウム複合材料が圧延接合又は同時鋳造とそれに
続く圧延によって製造され、前記帯状アルミニウム複合材料の前記アルミニウムろう付け層が次いで酸洗浄溶液で洗浄される方法において、
前記アルミニウム複合材料が、0.1%から20重量%のH2SO4、20ppmから1000ppmのHF及び少なくとも1種類の界面活性剤を含む洗浄水溶液で洗浄されることを特徴とし、前記洗浄における材料の除去が0.05g/m2から6g/m2である、
方法。
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】
前記洗浄溶液中の前記帯状アルミニウム複合材料の滞留時間が1から20秒、好ましくは2から8秒であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記洗浄溶液の温度が40℃から80℃であることを特徴とする、請求項8又は11に記載の方法。
【請求項13】(削除)
【請求項14】(削除)
【請求項15】(削除)」
4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1-15に係る特許に対して、当審が平成31年2月6付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 請求項1-15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
イ 請求項3-15に係る特許は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)甲号証の記載
甲第1号証(特開平7-164139号公報)には、段落【0001】、【0005】、【0007】、【0010】及び【0012】-【0015】の記載からすると、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。
「アルミニウム合金A3003と、前記アルミニウム合金A3003の両側に形成された、Al-10%Siからなる外側ろう付け層とからなる、ブレージング用アルミニウムクラッド材を用いたろう付け方法であって、前記外側ろう付け層が弗化水素水溶液による処理面を有し、前記ブレージング用アルミニウムクラッド材がフラックスを使用しないろう付け方法に使用され、前記ろう付けは窒素雰囲気ろう付けである、ろう付け方法であって、
前記外側ろう付け層の前記処理面が、
5.0%のH2SO4と1.0%のHFを含有する、弗化水素水溶液で、40℃の温度で1分間処理されるものである、ろう付け方法。」
(3)当審の判断
ア 特許法第29条第2項について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、本件発明1が「20ppmから1000ppmのHF」及び「界面活性剤」を含有するのに対して、甲1発明は「1.0%のHF」を含有する点で少なくとも相違する。
ここで、甲第1号証の請求項2には「0.01%~40%の濃度の弗化水素」と記載されている。そうすると、20ppmから1000ppmは、%に換算すると0.002%~0.1%となり、数値上は0.01%~0.1%の範囲で重複する。
しかしながら、甲第1号証には、0.01%~0.1%の範囲で実施した実施例は存在せず、HFだけをみても0.5%~2%の実施例しか存在しない。
してみると、甲第1号証の「0.01%~40%」という記載に接した当業者が、実施例を無視して、あえて下限値近傍の「0.01%~0.1%」を選択して実施するという動機付けがあったものとは認められない。
国際公開第2013/164466号、甲第5号証(特公昭53-28245号公報)には、界面活性剤を添加する旨が記載されている。そして、甲第5号証においてはH2SO4やHFの濃度についても記載されている。しかしながら、界面活性剤を用いればHFの濃度を少なくすることができるという技術思想が示されているわけでもなく、甲第5号証の技術をろう付けに用いることが技術常識とまではいえないので、やはり、甲1発明において、HFの濃度を低くする動機付けがあったものとは認められない。
したがって、界面活性剤の添加の容易性について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 特許法第36条第6項第1号について
請求項3に記載された事項が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨を通知したが、訂正により、請求項3が削除されたため、当該取消理由は解消した。
ウ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、本件発明1と甲1発明とは、数値範囲が重複するから、相違点ではない旨主張しているが、上記アのとおりであり、例えば、先行文献に0-100%との記載があるからといって、後願の数値限定が全て排除できるものではないことは明らかであるから、特許異議申立人のかかる主張は、採用することができない。
また、特許異議申立人は、界面活性剤の添加について主張しているが、上記アのとおり界面活性剤を添加することで、容易性を否定しているわけではない。
さらに、特許異議申立人は、記載要件違反として「界面活性剤」及び「洗浄における材料の除去」の量について言及しているが、どちらも明細書に記載されており、技術常識を勘案すると明らかに発明として成り立たない範囲が含まれているともいうことはできない。すなわち、例えば酸洗浄水溶液の濃度が変化すれば除去量が変化することは、技術常識として理解できるところ、6g/m2が、技術常識から外れていることの説明がなされているわけでもないので、特許異議申立人のかかる主張は、採用することができない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、サポート要件違反及び明確性要件違反を主張しているので、順次検討する。
(1)請求項1、2、7、8、11、12
訂正前の請求項1及び8の記載は、不明瞭ともいえなくもない記載は存在したものの、訂正により、特許異議申立人が主張する、サポート要件違反及び明確性要件違反は解消した。
(2)請求項3、9、10、13-15
訂正により削除されたので、サポート要件違反及び明確性要件違反はない。
(3)請求項4、5
請求項の記載を実施例のみに限定しなければならない理由はないので、実施例以外の態様が含まれることをもってサポート要件違反とすることはできない。
(4)請求項6
「軽く」という文言が記載されているからといって技術的に理解することができないとまではいうことはできない。
したがって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし2、4ないし8、11ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし2、4ないし8、11ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項3、9、10及び13ないし15に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項3、9、10及び13ないし15に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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