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特許異議申立

2025-700532

レーザ溶接方法およびレーザ溶接装置

審判番号
2025-700532
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-511766
登録番号
7585464
請求日
2025年05月16日
審決日
2026年06月09日
公報発行日
2026年09月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】古河電気工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
  • 【異議申立人】西村 裕之
審判長/審判官
  • 審判長 本庄 亮太郎
  • 審判官 征矢 崇
  • 審判官 鈴木 貴雄
分類
P1651.121-YAA(B23K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7585464号発明「レーザ溶接方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7585464号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~7〕について訂正することを認める。 特許第7585464号の請求項1~3に係る特許を維持する。 特許第7585464号の請求項4~7に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 特許掲載公報の発行までの経緯 特許第7585464号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)4月4日(優先権主張 令和3年4月2日)を国際出願日とする国際特許出願であって、令和5年9月26日に国内書面が提出され、令和6年11月8日に特許権の設定登録がされ、同月18日に特許掲載公報が発行された。 2 特許異議の申立て以降の経緯 本件特許異議申立事件に係る特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。 (1)令和7年5月16日 特許異議申立人 西村 裕之(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て (申立てのために提出された特許異議申立書を以下「申立書」という。) (2)同年7月30日付け(発送日:同年8月1日) 取消理由通知書による取消理由の通知(以下「取消理由通知」という。) (3)同年9月22日(同日作成の応対記録参照) 特許権者 古河電気工業株式会社(以下単に「特許権者」という。)代理人弁理士と主任審判官との電話応対 (4)同年9月30日 特許権者による、訂正の請求(請求のために提出された訂正請求書を以下「訂正請求書1」という。)、及び意見書の提出 (5)同年10月9日付け(発送日:同月14日) 手続補正指令書(方式)による、訂正請求書1に対する補正の指令 (6)同年11月5日 特許権者による、訂正請求書1を補正の対象とする手続補正書の提出 (7)同年12月8日 申立人による、意見書(以下「申立人意見書1」という。)の提出 (8)令和8年1月29日付け(発送日:同年2月4日) 取消理由通知書(決定の予告)による取消理由の通知(以下「決定の予告」という。) (9)同年3月9日~16日 特許権者代理人弁理士と主任審判官との応対(同月17日作成の応対記録) (10)同年3月17日 特許権者との面接審理(同日作成の面接記録) (11)同年4月6日 特許権者による、訂正の請求(請求された訂正を以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求のために提出された訂正請求書を以下「訂正請求書2」又は単に「訂正請求書」という。)、及び意見書の提出 (12)同年5月19日 申立人による、意見書(以下「申立人意見書2」という。)の提出 3 付記 上記(11)の訂正の請求がされたため、先にした上記(4)の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の請求の趣旨及び内容について 特許権者は、本件訂正により、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求めるところ、本件訂正の内容は、以下のとおりである(訂正個所に下線を付して示す。訂正特許請求の範囲に付された下線個所とは異なる。)。 1-1 特許請求の範囲の請求項1~5について (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における、 「前記第一端部および前記第二端部のうち少なくとも一方に、前記第一方向と交差した所定の方向に走査しながらレーザ光を照射する工程と、」 との記載を、 「前記第一端部および前記第二端部に、前記第一方向と交差した所定の方向に走査しながらレーザ光を照射する工程と、」 に、訂正をするとともに、 「前記レーザ光を照射する工程において、 前記第一端部または前記第二端部のレーザ光を照射する領域で、レーザ光の照射位置に応じて照射するレーザ光のパワーを変更し、 前記第一端部または前記第二端部におけるレーザ光の照射位置の走査経路が、直線状に走査される線状走査区間と、湾曲または屈曲して走査される非線状走査区間と、を含み、 前記非線状走査区間において、前記線状走査区間の少なくとも一部に対して照射するレーザ光のパワーよりも低いパワーでレーザ光を照射する、」 との記載を、 「前記レーザ光を照射する工程において、 前記第一端部または前記第二端部のレーザ光を照射する領域で、レーザ光の照射位置に応じて照射するレーザ光のパワーを変更し、 レーザ光の照射位置の走査経路は、前記第一端部の前記第二方向における第一中央部より前記第二端部に近い第一領域で走査される第一走査経路と、当該第一走査経路での走査の後に前記第二端部の前記第二方向における第二中央部より前記第一端部に近い第二領域で走査される第二走査経路と、を有し、 前記第一走査経路および前記第二走査経路は、それぞれ、 前記第一端部または前記第二端部の前記第一方向および前記第二方向と交差する第三方向における第三中央部より前記第三方向の反対方向の端縁に近い位置から、前記第三中央部より前記第三方向の端縁に近い位置まで前記第三方向に直線状に走査される第一区間、 当該第一区間に対して前記第二方向の反対方向に間隔をあけて離れた位置で、前記第三中央部より前記第三方向の端縁に近い位置から、前記第三中央部より前記第三方向の反対方向の端縁に近い位置まで前記第三方向の反対方向に直線状に走査される第二区間、および 前記第一区間の終端から前記第二区間の始端まで前記第三方向に膨らむように湾曲して走査される湾曲区間、 を有し、 前記第一走査経路および前記第二走査経路のそれぞれにおいて、前記照射位置は、前記第一区間、前記湾曲区間、および前記第二区間の順に連続的に走査され、 前記湾曲区間では、前記第一区間および前記第二区間の少なくとも一部に対して照射するレーザ光のパワーよりも低いパワーで一定の状態で、レーザ光が走査される、」 に、訂正をする。(請求項1の記載を引用する請求項2~3についても同様に、訂正をする。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2における、 「前記線状走査区間は、第一区間と、当該第一区間とは逆方向に走査される第二区間と、を含み、 前記第一区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値と、前記第二区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値と、が同じである、」 との記載を、 「前記第一区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値と、前記第二区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値と、が同じであり、 前記第一区間は、レーザ光のパワーが前記湾曲区間よりも高くかつ一定の状態で前記第三方向に走査される第一パワー一定区間と、当該第一パワー一定区間と前記湾曲区間との間で前記第三方向に走査され前記第一パワー一定区間から前記湾曲区間に近づくにつれてレーザ光のパワーが前記第一パワー一定区間でのパワーから前記湾曲区間でのパワーに向けて減少するパワー減少区間と、を含み、 前記第二区間は、レーザ光のパワーが前記湾曲区間よりも高くかつ一定の状態で前記第三方向の反対方向に走査される第二パワー一定区間と、前記湾曲区間と前記第二パワー一定区間との間で前記第三方向の反対方向に走査され前記湾曲区間から前記第二パワー一定区間に近づくにつれてレーザ光のパワーが前記湾曲区間でのパワーから前記第二パワー一定区間でのパワーに向けて増加するパワー増加区間と、を含む、」 に、訂正をする。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3における、 「前記線状走査区間は、第一区間と、当該第一区間とは逆方向に走査される第二区間と、を含み、 前記第一区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値と、前記第二区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値と、が互いに異なる、」 との記載を、 「前記第二区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値が、前記第一区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値よりも大きく、 前記第二区間は、レーザ光のパワーが前記湾曲区間よりも高くかつ一定の状態で前記第三方向の反対方向に走査される第二パワー一定区間と、前記湾曲区間と前記第二パワー一定区間との間で前記第三方向の反対方向に走査され前記湾曲区間から前記第二パワー一定区間に近づくにつれてレーザ光のパワーが前記湾曲区間でのパワーから前記第二パワー一定区間でのパワーに向けて増加するパワー増加区間と、を含む、」 に、訂正をする。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 1-2 特許請求の範囲の請求項6~7について (1)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (2)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 1-3 明細書について (1)訂正事項8 明細書における【発明の名称】の、 「レーザ溶接方法およびレーザ溶接装置」との記載を、 「レーザ溶接方法」に、訂正をする。 (2)訂正事項9 明細書における段落【0001】の、 「本発明は、レーザ溶接方法およびレーザ溶接装置に関する。」との記載を、 「本発明は、レーザ溶接方法に関する。」に、訂正をする。 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~5については、請求項2~5がそれぞれ請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあって、請求項2~3は、訂正事項1によって記載の訂正がされる請求項1に連動して、訂正がされるものである(なお、請求項4~5は訂正事項4~5によって削除される。)。 また、本件訂正前の請求項6~7については、請求項7が請求項6の記載を引用する関係にある(なお、請求項6~7は訂正事項6~7によって削除される。)。 したがって、本件訂正のうち特許請求の範囲の訂正である訂正事項1~5及び訂正事項6~7はそれぞれ、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項〔1~5〕及び請求項〔6~7〕について、上記1の1-1及び1-2のとおり、当該一群の請求項ごとに請求をするものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 3-1 一群の請求項〔1~5〕に係る訂正事項1~5について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について (ア)訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1の 「前記第一端部および前記第二端部のうち少なくとも一方に、前記第一方向と交差した所定の方向に走査しながらレーザ光を照射する工程と、」 との記載を、 「前記第一端部および前記第二端部に、前記第一方向と交差した所定の方向に走査しながらレーザ光を照射する工程と、」 と訂正をする点は、レーザ光を照射する工程が、第一端部及び前記第二端部の双方にレーザ光を照射することを具体的に限定するものである。 (イ)また、訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1の 「前記レーザ光を照射する工程において、 前記第一端部または前記第二端部のレーザ光を照射する領域で、レーザ光の照射位置に応じて照射するレーザ光のパワーを変更し、 前記第一端部または前記第二端部におけるレーザ光の照射位置の走査経路が、直線状に走査される線状走査区間と、湾曲または屈曲して走査される非線状走査区間と、を含み、」 との記載を、 「前記レーザ光を照射する工程において、 前記第一端部または前記第二端部のレーザ光を照射する領域で、レーザ光の照射位置に応じて照射するレーザ光のパワーを変更し、 レーザ光の照射位置の走査経路は、前記第一端部の前記第二方向における第一中央部より前記第二端部に近い第一領域で走査される第一走査経路と、当該第一走査経路での走査の後に前記第二端部の前記第二方向における第二中央部より前記第一端部に近い第二領域で走査される第二走査経路と、を有し、 前記第一走査経路および前記第二走査経路は、それぞれ、 前記第一端部または前記第二端部の前記第一方向および前記第二方向と交差する第三方向における第三中央部より前記第三方向の反対方向の端縁に近い位置から、前記第三中央部より前記第三方向の端縁に近い位置まで前記第三方向に直線状に走査される第一区間、 当該第一区間に対して前記第二方向の反対方向に間隔をあけて離れた位置で、前記第三中央部より前記第三方向の端縁に近い位置から、前記第三中央部より前記第三方向の反対方向の端縁に近い位置まで前記第三方向の反対方向に直線状に走査される第二区間、および 前記第一区間の終端から前記第二区間の始端まで前記第三方向に膨らむように湾曲して走査される湾曲区間、 を有し、 前記第一走査経路および前記第二走査経路のそれぞれにおいて、前記照射位置は、前記第一区間、前記湾曲区間、および前記第二区間の順に連続的に走査され、」 と訂正をする点は、レーザ光を照射する工程に関し、 上記(ア)の訂正に関連して、第一端部及び第二端部にそれぞれ「第一走査経路」及び「第二走査経路」を有することを、走査される位置及び順番とともに具体的に特定し、 本件訂正前における「直線状に走査される線状走査区間」を、当該第一走査経路及び第二走査経路のそれぞれにおいて有する「第一区間」及び「第二区間」として、その位置とともに具体的に限定し、 本件訂正前における「湾曲または屈曲して走査される非線状走査区間」を、当該第一走査経路及び第二走査経路のそれぞれにおいて有する「湾曲区間」として湾曲に限定するとともに、第一区間及び第二区間との位置関係並びに順番及び連続的に走査されることについて、具体的に限定するものである。 (ウ)さらに、訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1の 「前記非線状走査区間において、前記線状走査区間の少なくとも一部に対して照射するレーザ光のパワーよりも低いパワーでレーザ光を照射する、」 との記載を、 「前記湾曲区間では、前記第一区間および前記第二区間の少なくとも一部に対して照射するレーザ光のパワーよりも低いパワーで一定の状態で、レーザ光が走査される、」 と訂正をする点は、レーザ光を照射する工程に関し、 本件訂正前における「非線状走査区間」と「線状走査区間の少なくとも一部」とに対して照射するレーザ光のパワーの大小関係について、上記(ア)~(イ)の訂正に合わせて、「湾曲区間」では「第一区間」及び「第二区間」の少なくとも一部よりも低いパワーであることを特定するとともに、当該「湾曲区間」ではレーザ光のパワーが「一定の状態」でレーザ光が走査されることを具体的に限定するものである。 (エ)したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無について (ア)本件特許の明細書の段落【0098】~【0100】には、次の記載がある(なお、「,」は「、」と表記する。以下同様。)。 「【0098】 [走査経路の照射位置による光源出力の変更の別の例] 図11は、端部21a、22aにおけるレーザ光Lの走査経路R100の一例を示す平面図である。図11の例では、レーザ光LのスポットS(図2参照)は、Z方向と交差する方向に、走査経路R100に沿って移動する(走査される)。走査経路R100は、スポットSの中心の移動軌跡を示している。レーザ光Lは、端部21a上で略U字状に走査された後、端部22a上で略U字状に走査される。端部21a、22aの双方において、走査経路R100は、領域A1、A2内に設定されている。端部21a上での走査経路R100の形状と、端部22a上での走査経路R100の形状とは、略同一である。また、端部21a、22a間での移動経路Tにおいては、光学ヘッド120からレーザ光Lは照射されない。 【0099】 図12は、各端部21a、22aにおけるレーザ光Lの走査経路R100の平面図である。なお、図12では、わかりやすさのため、走査経路R100は幅を持たせて描かれているが、図12中の走査経路R100の幅は、スポットSのサイズとは無関係である。 【0100】 図12に示されるように、走査経路R100は、区間R101~R109をこの順に含んでいる。スポットSは、区間R101~R105において、Y方向に直線状に移動する。次に、スポットSは、区間R106において、スポットSは、Y方向の反対方向に開放された略U字状に曲がりながら移動する。次に、スポットSは、区間R107~R109において、Y方向の反対方向に直線状に移動する。図12の例では、区間R101~R105、および区間R107~R109は、線状走査区間の一例であり、区間R106は、非線状走査区間の一例である。また、区間R101~R105は、第一区間の一例であり、区間R107~R109は、第二区間の一例である。」 また、本件特許の図11~12には、次の内容が図示される。 「【図11】 [図:0001439197000001.jpg] 【図12】 [図:0001439197000002.jpg] 」 そして、図11における各符号に関し、明細書の段落【0052】、【0064】には次の記載がある。 「【0052】 二つの部材20は、いずれもZ方向に延びており、Z方向の端部20a(21a、22a)を有している。端部20aは、Z方向と交差して広がっている。すなわち、端部20aは、X方向に延びるとともにY方向に延びている。Z方向は、第一方向の一例である。端部21aは、第一端部の一例であり、端部22aは、第二端部の一例である。」 「【0064】 また、図6の例では、レーザ光Lは、例えば、端部21aのX方向の中心C1よりも端部22aに近い領域A1と、端部22aのX方向の中心C2よりも端部21aに近い領域A2と、において走査されている。」 (イ)してみると、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)には、訂正事項1のうち、上記ア(ア)に関する、第一端部(21a)及び第二端部(22a)の双方に、第一方向(Z方向)と交差した所定の方向に走査しながらレーザ光を照射する工程が記載されているといえる。 (ウ)また、訂正事項1のうち、上記ア(イ)に関して、本件明細書等には、レーザ光(L)の照射位置(スポットS)の走査経路(R100)は、第一端部(21a)の第二方向(X方向)における第一中央部(C1)より第二端部(22a)に近い第一領域(A1)で走査される第一走査経路(図11の右側のR100)と、当該第一走査経路(図11の右側のR100)での走査の後に第二端部(22a)の第二方向(X方向)における第二中央部(C2)より第一端部(21a)に近い第二領域(A2)で走査される第二走査経路(図11の左側のR100)と、を有することが記載されているといえる。 そして、本件明細書等には、第一走査経路(図11の右側のR100)及び第二走査経路(図11の左側のR100)のそれぞれについて、第三方向(Y方向)における第三中央部(図11の上下方向の中央部)より第三方向の反対方向の端縁(21a1、22a1)に近い位置から、第三中央部より第三方向の端縁(21a2、22a2)に近い位置まで第三方向に直線状に走査される第一区間(R101~R105)、 当該第一区間(R101~R105)に対して第二方向(X方向)の反対方向(図11の左方向)に間隔をあけて離れた位置で、第三中央部より第三方向の端縁(21a2、22a2)に近い位置から、第三中央部より第三方向の反対方向の端縁(21a1、22a1)に近い位置まで第三方向の反対方向に直線状に走査される第二区間(R107~R109)、および 第一区間の終端(図12のR105の上端)から第二区間の始端(図12のR107の上端)まで第三方向(Y方向、図11~12の上方)に膨らむように湾曲して走査される湾曲区間(R106)、を有することが記載されているといえる。 さらに、本件明細書等には、第一走査経路(図11の右側のR100)及び第二走査経路(図11の左側のR100)のそれぞれにおいて、照射位置(スポットS)は、第一区間(R101~R105)、湾曲区間(R106)、及び第二区間(R107~R109)の順に連続的に走査されることが記載されているといえる。 (エ)さらに、本件明細書の段落【0102】~【0104】には、図13とともに、次の記載がある。 「【0102】 図13は、各端部21a、22aでの図12に示された走査経路R100における光源出力(パワー)の経時変化の一例を示すグラフである。図13では、ビームB1を形成する第一レーザ光を出力するレーザ装置111の出力の合計値が実線で示され、ビームB2を形成する第二レーザ光を出力するレーザ装置112の出力の合計値が実線(当審注:「破線」の誤記であることは明らか。)で示されている。 【0103】 図13に示されるように、ビームB2に対応した光源出力は、区間R101~R109の間で一定である。また、ビームB1に対応した光源出力は、区間R101では0であり、区間R104、R108では一定であり、区間R102、R103、R105、R107、R109では経時的に変化している。この場合、区間R101、R104、R108は、光学ヘッド120から照射されるレーザ光Lのパワーが一定の状態で照射位置(スポットS)が移動するパワー一定区間の一例である。また、区間R102、R103、R107は、光学ヘッド120から照射されるレーザ光Lのパワーが経時的に増加する状態で照射位置(スポットS)が移動するパワー増加区間の一例であり、パワー変更区間の一例である。また、区間R105、R109は、光学ヘッド120から照射されるレーザ光Lのパワーが経時的に減少する状態で照射位置(スポットS)が移動するパワー減少区間の一例である。 【0104】 図13から明らかとなるように、図12の区間R101~R105におけるY方向へのレーザ光Lの走査から、区間R107~R109におけるY方向の反対方向へのレーザ光Lの走査への折り返し区間となる区間R106における光源出力は、その前後の区間R104、R108での光源出力よりも低く、例えば80[%]以下となるように、設定されている。区間R106のような湾曲した区間や、屈曲した(折れ曲がった)区間(不図示)のような、非線状走査区間での移動中においては、レーザ光LのスポットSは比較的近くに留まるため、照射エネルギ密度が高くなりやすい。そこで、図13の例のように、非線状走査区間としての区間R106では、線状走査区間としての区間R104、R108よりも低いパワーで照射することにより、区間R106において、他の区間R101~R105、R107~R109よりも照射エネルギ密度が高くなるのを抑制し、端部21a、22aの場所による照射エネルギ密度の差(ばらつき)を減らし、ひいては溶融池の過度な温度上昇によるスパッタの発生や、溶融池のこぼれ落ちを抑制することができる。」 「【図13】 [図:0001439197000003.jpg] 」 同様に、本件明細書の段落【0113】~【0114】には、図14とともに、次の記載がある。 「【0113】 [走査経路の照射位置による光源出力の変更のさらに別の例] 図14は、各端部21a、22aでの図12に示された走査経路R100における光源出力(パワー)の経時変化の別の一例を示すグラフである。図14でも、ビームB1を形成する第一レーザ光を出力するレーザ装置111の出力の合計値が実線で示され、ビームB2を形成する第二レーザ光を出力するレーザ装置112の出力の合計値が実線(当審注:「破線」の誤記であることは明らか。)で示されている。 【0114】 図13と図14とを比較すれば明らかとなるように、図14の例では、区間R104における光源出力を、区間R108における光源出力よりも低く設定している。発明者の実験的な研究により、区間R102、R103において、レーザ装置111の光源出力が低い状態から急激に上昇すると、溶融池の動きが激しくなり、スパッタが生じやすい場合があることが判明した。そこで、図14の例では、区間R104における光源出力を、区間R108における光源出力よりも低く設定している。言い換えると、区間R101~R105における光源出力の最大値を、区間R107~区間R109における光源出力の最大値よりも低く設定している。これにより、溶融池の状態をより穏やかにし、スパッタを抑制することができる。なお、区間R104における光源出力の値は、図14の例では、区間R106における光源出力と同じ値に設定されているが、これには限定されず、例えば、区間R106における光源出力より大きく、かつ区間R108の光源出力より低く設定するなど、適宜に変更して設定することができる。」 「【図14】 [図:0001439197000004.jpg] 」 (オ)してみると、上記(ア)と(エ)とを併せてみれば、本件明細書等には、訂正事項1のうち、上記ア(ウ)に関して、湾曲区間(R106)では、第一区間(R101~R105)及び第二区間(R107~R109)の少なくとも一部(図13のR104、R108、図14のR108)に対して照射するレーザ光(L)のパワー(光源出力)よりも低いパワーで、かつ、一定の状態で、レーザ光が走査されることが記載されているといえる。 (カ)したがって、訂正事項1は、上記(ア)~(オ)のとおり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるといえるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張ないし変更の存否について 訂正事項1は、上記アのとおり、本件訂正前の請求項1において特定された「レーザ光を照射する工程」に関して、第一端部及び前記第二端部の双方にレーザ光を照射すること、第一端部及び第二端部のそれぞれの第一走査経路及び第二走査経路に、「線状走査区間」を具体的に限定した「第一区間」及び「第二区間」並びに「非線状走査区間」を具体的に限定した「湾曲区間」を有すること、さらに、「湾曲区間」における、「第一区間」及び「第二区間」に対するレーザ光のパワーの大小関係及び一定の状態であることを、より具体的に限定する訂正であるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について (ア)訂正事項2のうち、本件訂正前の請求項2の、 「前記線状走査区間は、第一区間と、当該第一区間とは逆方向に走査される第二区間と、を含み、」 との記載を削除した点は、当該「第一区間」と「第二区間」とが、訂正事項1によって請求項1において特定された(上記(1)ア(イ))ことから、請求項1の記載を引用する請求項2において重複する事項を削除して、訂正事項1との整合を図るものであるといえるため、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (イ)また、訂正事項2のうち、本件訂正前の請求項2に、 「前記第一区間は、レーザ光のパワーが前記湾曲区間よりも高くかつ一定の状態で前記第三方向に走査される第一パワー一定区間と、当該第一パワー一定区間と前記湾曲区間との間で前記第三方向に走査され前記第一パワー一定区間から前記湾曲区間に近づくにつれてレーザ光のパワーが前記第一パワー一定区間でのパワーから前記湾曲区間でのパワーに向けて減少するパワー減少区間と、を含み、 前記第二区間は、レーザ光のパワーが前記湾曲区間よりも高くかつ一定の状態で前記第三方向の反対方向に走査される第二パワー一定区間と、前記湾曲区間と前記第二パワー一定区間との間で前記第三方向の反対方向に走査され前記湾曲区間から前記第二パワー一定区間に近づくにつれてレーザ光のパワーが前記湾曲区間でのパワーから前記第二パワー一定区間でのパワーに向けて増加するパワー増加区間と、を含む、」 との事項を追加する訂正は、 本件訂正前の請求項2において特定され、訂正事項1により請求項1において特定された「第一区間」に関して、「第一パワー一定区間」と「パワー減少区間」とを含むことを具体的に限定し、さらに、 本件訂正前の請求項2において特定され、訂正事項1により請求項1において特定された「第二区間」に関して、「第二パワー一定区間」と「パワー増加区間」とが含まれることを具体的に限定するものであるといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (ウ)したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無について 本件明細書等には、上記(1)イ(ア)及び(エ)に示した事項が記載されており、特に、当該(エ)の段落【0102】~【0103】及び図12~13には、 訂正事項2のうち、上記ア(イ)に関する、「第一区間(R101~R105)」が、レーザ光のパワーが湾曲区間(R106)よりも高くかつ一定の状態で第三方向(Y方向)に走査される「第一パワー一定区間(R104)」と、当該第一パワー一定区間(R104)と湾曲区間(R106)との間で第三方向(Y方向)に走査され第一パワー一定区間(R104)から湾曲区間(R106)に近づくにつれてレーザ光のパワーが第一パワー一定区間(R104)でのパワーから湾曲区間(R106)でのパワーに向けて減少する「パワー減少区間(R105)」と、を含むこと、及び、 「第二区間(R107~R109)が、レーザ光のパワーが湾曲区間(R106)よりも高くかつ一定の状態で第三方向(Y方向)の反対方向(図12の下方向)に走査される「第二パワー一定区間(R108)」と、湾曲区間(R106)と第二パワー一定区間(R108)との間で第三方向(Y方向)の反対方向(図12の下方向)に走査され湾曲区間(R106)から第二パワー一定区間(R108)に近づくにつれてレーザ光のパワーが湾曲区間(R106)でのパワーから第二パワー一定区間(R108)でのパワーに向けて増加する「パワー増加区間(R107)」と、を含むことが記載されているといえる。 したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるといえるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張ないし変更の存否について 訂正事項2は、上記ア(イ)のとおり、本件訂正前の請求項2において特定された、「第一区間」及び「第二区間」に含まれる各区間を、より具体的に限定する訂正であり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について (ア)訂正事項3のうち、本件訂正前の請求項3の、 「前記線状走査区間は、第一区間と、当該第一区間とは逆方向に走査される第二区間と、を含み、」 との記載を削除した点は、当該「第一区間」と「第二区間」とが、訂正事項1によって請求項1において特定された(上記(1)ア(イ))ことから、請求項1の記載を引用する請求項3において重複する事項を削除して、訂正事項1との整合を図るものであるといえるため、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (イ)また、訂正事項3のうち、本件訂正前の請求項3の、 「前記第一区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値と、前記第二区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値と、が互いに異なる、」 との記載を、 「前記第二区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値が、前記第一区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値よりも大きく、」 と訂正をする点は、第一区間と第二区間とで照射されるレーザ光のパワーの最大値が異なる態様として、第二区間の方が第一区間よりも大きいことを具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (ウ)さらに、訂正事項3のうち、本件訂正前の請求項3に、 「前記第二区間は、レーザ光のパワーが前記湾曲区間よりも高くかつ一定の状態で前記第三方向の反対方向に走査される第二パワー一定区間と、前記湾曲区間と前記第二パワー一定区間との間で前記第三方向の反対方向に走査され前記湾曲区間から前記第二パワー一定区間に近づくにつれてレーザ光のパワーが前記湾曲区間でのパワーから前記第二パワー一定区間でのパワーに向けて増加するパワー増加区間と、を含む、」 との事項を追加する訂正は、 本件訂正前の請求項3において特定され、訂正事項1により請求項1において特定された「第二区間」に関して、「第二パワー一定区間」と「パワー増加区間」とが含まれることを具体的に限定するものであるといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (エ)したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無について 本件明細書等には、上記(1)イ(ア)及び(エ)に示した事項が記載されており、特に、当該(エ)の段落【0113】~【0114】及び図12、図14には、 訂正事項3のうち、上記ア(イ)に関する、第二区間(R107~R109)において照射されるレーザ光のパワーの最大値(図14のR108における光源出力)が、第一区間(R101~R105)において照射されるレーザ光のパワーの最大値(図14のR104における光源出力)よりも大きいこと(段落【0114】、図14)、及び、 訂正事項3のうち、上記ア(ウ)に関する、第二区間(R107~R109)が、レーザ光のパワーが湾曲区間(R106)よりも高くかつ一定の状態で第三方向(Y方向)の反対方向(図12の下方向)に走査される「第二パワー一定区間(R108)」と、湾曲区間(R106)と第二パワー一定区間(R108)との間で第三方向(Y方向)の反対方向(図12の下方向)に走査され湾曲区間(R106)から第二パワー一定区間(R108)に近づくにつれてレーザ光のパワーが湾曲区間(R106)でのパワーから第二パワー一定区間(R108)でのパワーに向けて増加する「パワー増加区間(R107)」と、を含むことが記載されているといえる。 したがって、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるといえるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張ないし変更の存否について 訂正事項3は、上記ア(イ)~(ウ)のとおり、本件訂正前の請求項3において特定された、「第一区間」と「第二区間」とのレーザ光のパワーの最大値の大小関係、及び、「第二区間」に含まれる各区間を、より具体的に限定する訂正であり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4~5について ア 訂正の目的について 訂正事項4~5は、請求項4~5をそれぞれ削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張ないし変更の存否について 訂正事項4~5は、請求項を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4~5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 3-2 一群の請求項〔6~7〕に係る訂正事項6~7について (1)訂正の目的について 訂正事項6~7は、請求項6~7をそれぞれ削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (2)新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張ないし変更の存否について 訂正事項6~7は、請求項を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項6~7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 3-3 明細書に係る訂正事項8~9について (1)訂正の目的について 訂正事項8~9は、訂正事項6~7による請求項6~7の削除により、特許請求の範囲から「レーザ溶接装置」に関する発明が削除されたことに伴い、本件訂正前の本件明細書の【発明の名称】及び段落【0001】の記載から、「およびレーザ溶接装置」の記載を削除することで、本件訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (2)新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張ないし変更の存否について 訂正事項8~9は、訂正事項6~7による請求項6~7の削除に伴い、本件訂正前の本件明細書の【発明の名称】及び段落【0001】の記載から「およびレーザ溶接装置」の記載を単に削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項8~9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)明細書の訂正と関連する請求項について 訂正事項8~9による明細書の訂正は、上記(1)~(2)のとおり、訂正事項6~7により請求項6~7を削除して「レーザ溶接方法」に関する発明のみとする特許請求の範囲の訂正(訂正事項1~7)と整合を図るものであって、一群の請求項の全てである請求項〔1~5〕、〔6~7〕について行われたものである(特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項)。 4 独立特許要件について 本件特許異議の申立ては、全ての請求項を対象としているので、訂正事項1~9に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 5 小括 上記3のとおり、訂正事項1~9に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~7〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められることから、本件特許の請求項1~3に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである(各発明を以下「本件発明1」等という。なお、請求項4~7は削除されたため、以下の第4~第9においては、請求項1~3に係る特許について検討する。)。 「【請求項1】 金属材料で作られた第一部材の第一方向の第一端部と、金属材料で作られた第二部材の前記第一方向の第二端部と、をレーザ溶接するレーザ溶接方法であって、 前記第一端部および前記第二端部を前記第一方向と交差した第二方向に隣り合うように配置する工程と、 前記第一端部および前記第二端部に、前記第一方向と交差した所定の方向に走査しながらレーザ光を照射する工程と、 前記レーザ光を照射する工程において前記第一端部と前記第二端部との間で掛け渡された状態で形成された溶融池を固化する工程と、 を備え、 前記レーザ光を照射する工程において、 前記第一端部または前記第二端部のレーザ光を照射する領域で、レーザ光の照射位置に応じて照射するレーザ光のパワーを変更し、 レーザ光の照射位置の走査経路は、前記第一端部の前記第二方向における第一中央部より前記第二端部に近い第一領域で走査される第一走査経路と、当該第一走査経路での走査の後に前記第二端部の前記第二方向における第二中央部より前記第一端部に近い第二領域で走査される第二走査経路と、を有し、 前記第一走査経路および前記第二走査経路は、それぞれ、 前記第一端部または前記第二端部の前記第一方向および前記第二方向と交差する第三方向における第三中央部より前記第三方向の反対方向の端縁に近い位置から、前記第三中央部より前記第三方向の端縁に近い位置まで前記第三方向に直線状に走査される第一区間、 当該第一区間に対して前記第二方向の反対方向に間隔をあけて離れた位置で、前記第三中央部より前記第三方向の端縁に近い位置から、前記第三中央部より前記第三方向の反対方向の端縁に近い位置まで前記第三方向の反対方向に直線状に走査される第二区間、および 前記第一区間の終端から前記第二区間の始端まで前記第三方向に膨らむように湾曲して走査される湾曲区間、 を有し、 前記第一走査経路および前記第二走査経路のそれぞれにおいて、前記照射位置は、前記第一区間、前記湾曲区間、および前記第二区間の順に連続的に走査され、 前記湾曲区間では、前記第一区間および前記第二区間の少なくとも一部に対して照射するレーザ光のパワーよりも低いパワーで一定の状態で、レーザ光が走査される、レーザ溶接方法。 【請求項2】 前記第一区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値と、前記第二区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値と、が同じであり、 前記第一区間は、レーザ光のパワーが前記湾曲区間よりも高くかつ一定の状態で前記第三方向に走査される第一パワー一定区間と、当該第一パワー一定区間と前記湾曲区間との間で前記第三方向に走査され前記第一パワー一定区間から前記湾曲区間に近づくにつれてレーザ光のパワーが前記第一パワー一定区間でのパワーから前記湾曲区間でのパワーに向けて減少するパワー減少区間と、を含み、 前記第二区間は、レーザ光のパワーが前記湾曲区間よりも高くかつ一定の状態で前記第三方向の反対方向に走査される第二パワー一定区間と、前記湾曲区間と前記第二パワー一定区間との間で前記第三方向の反対方向に走査され前記湾曲区間から前記第二パワー一定区間に近づくにつれてレーザ光のパワーが前記湾曲区間でのパワーから前記第二パワー一定区間でのパワーに向けて増加するパワー増加区間と、を含む、請求項1に記載のレーザ溶接方法。 【請求項3】 前記第二区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値が、前記第一区間において照射されるレーザ光のパワーの最大値よりも大きく、 前記第二区間は、レーザ光のパワーが前記湾曲区間よりも高くかつ一定の状態で前記第三方向の反対方向に走査される第二パワー一定区間と、前記湾曲区間と前記第二パワー一定区間との間で前記第三方向の反対方向に走査され前記湾曲区間から前記第二パワー一定区間に近づくにつれてレーザ光のパワーが前記湾曲区間でのパワーから前記第二パワー一定区間でのパワーに向けて増加するパワー増加区間と、を含む、請求項1に記載のレーザ溶接方法。 【請求項4】(削除) 【請求項5】(削除) 【請求項6】(削除) 【請求項7】(削除)」 第4 申立人が主張する申立ての理由の概要 1 申立書における申立ての理由について 本件訂正前(すなわち、特許掲載公報の特許請求の範囲。以下同様。)の請求項1~3に係る特許に対して、申立書に記載の申立ての理由は、以下のとおり整理することができる。 (1)申立ての理由1:本件訂正前の請求項1~3 下記3(1)の甲第1号証に記載された主引用発明、並びに、甲第3号証~甲第4号証に記載の技術常識、及び、甲第6号証に記載の技術常識に基づく、進歩性欠如(特許法第29条第2項、同法第113条第2号、申立書1~4、10~17、24~32、33~37、40~44、55ページ) (2)申立ての理由2:本件訂正前の請求項1~3 下記3(1)の甲第2号証に記載された主引用発明、並びに、甲第1号証に記載の技術常識、甲第3号証~甲第4号証に記載の技術常識、及び、甲第6号証に記載の技術常識に基づく、進歩性欠如(特許法第29条第2項、同法第113条第2号、申立書4~7、12~13、17~24、24~32、47~52、55ページ) 2 申立人意見書1における申立ての理由について 訂正請求書1に添付された訂正特許請求の範囲(以下「訂正1」という。)の請求項1~3に係る特許に対して、申立人意見書1にて示された実質的に新たな理由は、甲7~甲8に記載の技術常識を補充した、以下のとおりと整理することができる。 (1)申立ての理由1’: 訂正1の請求項1~3 下記3(1)の甲第1号証に記載された主引用発明、甲第3号証~甲第4号証に記載の技術常識、及び、甲第6号証に記載の技術常識、並びに、下記3(2)の甲第7号証~甲第8号証に記載の技術常識に基づく、進歩性欠如(特許法第29条第2項、同法第113条第2号、申立人意見書1の5~13ページ) (2)申立ての理由2’: 訂正1の請求項1~3 下記3(1)の甲第2号証に記載された主引用発明、甲第1号証に記載の技術常識、甲第3号証~甲第4号証に記載の技術常識、及び、甲第6号証に記載の技術常識、並びに、下記3(2)の甲第7号証~甲第8号証に記載の技術常識に基づく、進歩性欠如(特許法第29条第2項、同法第113条第2号、申立人意見書1の5~13ページ) 3 申立人意見書2における申立ての理由について 本件発明1~3(すなわち、訂正請求書2に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明)に係る特許に対して、申立人意見書2にて示された実質的に新たな理由は、甲9に記載の技術常識を補充した、以下のとおりと整理することができる。 (1)申立ての理由1”:本件発明1~3 下記3(1)の甲第1号証に記載された主引用発明、甲第3号証~甲第4号証に記載の技術常識、及び、甲第6号証に記載の技術常識、並びに、下記3(2)の甲第7号証~甲第8号証に記載の技術常識、及び、下記3(3)の甲第9号証に記載の技術常識に基づく、進歩性欠如(特許法第29条第2項、同法第113条第2号、申立人意見書2の4~9ページ) (2)申立ての理由2”:本件発明1~3 下記3(1)の甲第2号証に記載された主引用発明、甲第1号証に記載の技術常識、甲第3号証~甲第4号証に記載の技術常識、及び、甲第6号証に記載の技術常識、並びに、下記3(2)の甲第7号証~甲第8号証に記載の技術常識、及び、下記3(3)の甲第9号証に記載の技術常識に基づく、進歩性欠如(特許法第29条第2項、同法第113条第2号、申立人意見書2の4~9ページ) 4 証拠方法 申立人による証拠方法は、書証として提出された、次の甲第1号証~甲第9号証である。 (1)申立書に添付された証拠方法 甲第1号証:特開2018-20340号公報 甲第2号証:国際公開第2019/159737号 甲第3号証:特開2007-203346号公報 甲第4号証:特開2018-30162号公報 甲第5号証:特開2000-218383号公報 甲第6号証:特開平9-225666号公報 (2)申立人意見書1に添付された証拠方法 甲第7号証:特開平9-150282号公報 甲第8号証:特開2007-196254号公報 (3)申立人意見書2に添付された証拠方法 甲第9号証:特開2018-87590号公報 (以下「甲第1号証」~「甲第9号証」をそれぞれ「甲1」~「甲9」という。) 第5 当審から通知した取消理由の概要 1 取消理由通知 取消理由通知における、本件訂正前の請求項1~3に係る特許に対する取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)取消理由1-1:本件訂正前の請求項1の進歩性欠如 本件訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許出願前(優先権主張に係る先の出願前)に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明、甲2及び甲4に記載された周知の技術的手段1、並びに、甲3~甲4に記載された周知の技術的手段2に基づいて、本件特許出願前(優先権主張に係る先の出願前)に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)取消理由1-2:本件訂正前の請求項2~3の進歩性欠如 本件訂正前の請求項2~3に係る発明は、本件特許出願前(優先権主張に係る先の出願前)に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明、甲2及び甲4に記載された周知の技術的手段1、甲3~甲4に記載された周知の技術的手段2、並びに、甲5~甲6に記載された技術的事項に基づいて、本件特許出願前(優先権主張に係る先の出願前)に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項2~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 決定の予告 決定の予告における、訂正1の請求項1~3に係る特許に対する取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)取消理由1-1:訂正1の請求項1の進歩性欠如 訂正1の請求項1に係る発明は、本件特許出願前(優先権主張に係る先の出願前)に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明、甲2、甲4及び甲8に記載された周知の技術的手段1、並びに、甲7~甲8に記載された周知の技術的手段2に基づいて、本件特許出願前(優先権主張に係る先の出願前)に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正1の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)取消理由1-2:訂正1の請求項2~3の進歩性欠如 訂正1の請求項1に係る発明は、本件特許出願前(優先権主張に係る先の出願前)に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明、甲2、甲4及び甲8に記載された周知の技術的手段1、甲7~甲8に記載された周知の技術的手段2、並びに、甲5~甲6に記載された技術的事項に基づいて、本件特許出願前(優先権主張に係る先の出願前)に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正1の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)取消理由2:訂正1の請求項2~3の簡潔性要件 訂正1の請求項2~3にはそれぞれ、「走査される走査される第二パワー一定区間」と「走査される」が重複して記載されており、記載が必要以上に冗長であるといえるため、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第3号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第6 甲1~甲9に記載された発明又は技術的事項について 1 甲1に記載された発明及びその課題 (1)甲1に記載された発明(甲1発明) 甲1の、段落【0001】、【0018】~【0021】、【0026】~【0027】及び【0041】の記載、並びに、図1~2、4~5及び9の図示内容を、本件発明1の発明特定事項に合わせて整理すると、甲1には、段落【0041】及び図9に示される実施形態として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる(括弧内に、甲1に記載の事項に対応する本件発明1の発明特定事項、又は、甲1の参照箇所を示す。また、第6において以下同様に、各甲号証に記載の事項に対応する本件特許の請求項1~3に係る発明の発明特定事項、又は、各甲号証の参照箇所を示す。)。 「金属材料で作られた平角線20a(第一部材)のz軸方向(第一方向)の端面24a(第一端部、段落【0018】~【0021】、図2、4)と、金属材料で作られた平角線20b(第二部材)の前記z軸方向(第一方向)の端面24b(第二端部、段落【0026】~【0027】、図4~5)と、をレーザ溶接するレーザ溶接方法(段落【0001】、【0020】)であって、 前記端面24a(前記第一端部)及び前記端面24b(前記第二端部)を前記z軸方向(前記第一方向)と交差したy軸方向(第二方向)に隣り合うように、突き合わせ面23a、23bを突き合わせて配置する工程(段落【0021】、図4)と、 前記端面24a(前記第一端部)及び前記端面24b(前記第二端部)に、前記z軸方向(前記第一方向)と交差したxy平面内で(所定の方向に)走査しながらレーザビーム(レーザ光)を照射する工程(段落【0020】~【0021】、【0041】、図2、5、9)と、 前記レーザビーム(前記レーザ光)を照射する工程において前記端面24a(前記第一端部)と前記端面24b(前記第二端部)との間で掛け渡された状態で形成された溶融池30(溶融池)を固化する工程(溶融池30が最終的に固化して、段落【0019】、図1に示される接合部25となることは自明。)と、 を備え、 前記レーザビーム(前記レーザ光)を照射する工程において、 レーザビーム(レーザ光)の照射位置の走査軌跡(走査経路)は、前記端面24a(前記第一端部)の前記y軸方向(前記第二方向)における第一中央部より前記端面24b(前記第二端部)に近い第一領域で走査される走査軌跡(第一走査経路。図9における端面24aの下半分領域の走査軌跡。以下「第一走査軌跡」という。なお、図9におけるループ状の走査軌跡は、図2に基づき時計回りであると仮定する。)と、当該第一走査軌跡(第一走査経路)での走査の後に前記端面24b(前記第二端部)の前記y軸方向(前記第二方向)における第二中央部より前記端面24a(前記第一端部)に近い第二領域で走査される走査軌跡(第二走査経路。図9における端面24bの上半分領域の走査軌跡。以下「第二走査軌跡」という。)と、を有し(段落【0041】、図9)、 前記第一走査軌跡(前記第一走査経路)は、 前記端面24a(前記第一端部)の前記z軸方向(前記第一方向)及び前記y軸方向(前記第二方向)と交差するx軸方向(第三方向)における第三中央部より前記x軸方向(前記第三方向)の反対方向の端縁に近い位置(図9の左側)から、前記第三中央部より前記x軸方向(前記第三方向)の端縁に近い位置(図9の右側)まで前記x軸方向(前記第三方向、図9の右方向)に直線状に走査される区間(第一区間、図9における端面24a内の矩形状のループの上辺、以下「線状区間A1」という。)、 当該線状区間A1(第一区間)に対して前記y軸方向(前記第二方向)の反対方向(図9の下方向)に間隔をあけて離れた位置で、前記第三中央部より前記x軸方向(前記第三方向)の端縁に近い位置(図9の右側)から、前記第三中央部より前記x軸方向(前記第三方向)の反対方向の端縁に近い位置(図9の左側)まで前記x軸方向(前記第三方向)の反対方向(図9の左方向)に直線状に走査される区間(第二区間、図9における端面24a内の矩形状のループの下辺、以下「線状区間A2」という。)、及び 前記線状区間A1(前記第一区間)の終端から前記線状区間A2(前記第二区間)の始端まで前記y軸方向(前記第二方向)の反対方向(図9の下方向)に屈曲し、前記y軸方向(前記第二方向)の反対方向(図9の下方向)に直線状に走査され、さらに前記x軸方向(前記第三方向)の反対方向(図9の左方向)に屈曲して走査される屈曲-線状-屈曲区間(図9における端面24a内の右辺とその上下の角部、以下「屈曲-線状-屈曲区間A3」という。本件発明1の湾曲区間とは「接続区間」という概念で一致する。)、 を有し(段落【0041】、図9)、 前記第二走査軌跡(前記第二走査経路)は、 前記第一走査軌跡(前記第一走査経路)の前記線状区間A1に対して前記y軸方向(前記第二方向)の反対方向(図9の下方向)に間隔をあけて離れた位置で、前記第三中央部より前記x軸方向(前記第三方向)の端縁に近い位置(図9の右側)から、前記第三中央部より前記x軸方向(前記第三方向)の反対方向の端縁に近い位置(図9の左側)まで前記x軸方向(前記第三方向)の反対方向(図9の左方向)に直線状に走査される区間(第二区間、図9における端面24b内の矩形状のループの下辺、以下「線状区間B2」という。)、及び 前記第一走査軌跡(前記第一走査経路)の前記線状区間A1の終端から前記線状区間B2(前記第二区間)の始端まで前記y軸方向(前記第二方向)の反対方向(図9の下方向)に屈曲し、前記y軸方向(前記第二方向)の反対方向(図9の下方向)に端面24aと端面24bに跨がって直線状に走査され、さらに前記x軸方向(前記第三方向)の反対方向(図9の左方向)に屈曲して走査される屈曲-線状-屈曲区間(図9における端面24aと端面24bに跨がる右辺とその上下の角部、以下「屈曲-線状-屈曲区間B3」という。)、 を有し(段落【0041】、図9)、 前記第一走査軌跡(前記第一走査経路)において、前記照射位置は、前記線状区間A1(前記第一区間)、前記屈曲-線状-屈曲区間A3、及び前記線状区間A2(前記第二区間)の順に連続的に走査され(段落【0041】、図9)、 前記第二走査軌跡(前記第二走査経路)において、前記照射位置は、前記屈曲-線状-屈曲区間B3、及び前記線状区間B2(前記第二区間)の順に連続的に走査される(段落【0041】、図9)、レーザ溶接方法。」 (2)甲1に記載された甲1発明の課題 甲1の、段落【0041】の記載から、上記(1)の甲1発明は、次の課題(以下「甲1発明の課題」という。)を内在するものである。 「角部(屈曲、非線状走査区間)でレーザビーム(レーザ光)の走査方向を変更する必要があり、レーザビームを滑らかに走査させることができないため、角部に熱が集中し易く、楕円状や円状の場合に比べ、スパッタが発生し易いこと。」 2 甲2に記載された技術的事項 甲2の、段落[0001]、[0017]、[0028]、[0034]~[0035]、[0049]~[0051]、[0056]~[0058]及び[0061]の記載、並びに、図2C、4及び7の図示内容から、甲2には、本溶接パターンのみの照射パターン([0061]、図2C)に関して、次の技術的事項(以下「甲2記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 「金属(金属材料、段落[0031])で作られた一対の剥離部6d(第一部材及び第二部材)のコア4の軸方向(第一方向、段落[0028]、図4)の矩形状の先端面6eR(第一端部)と先端面6eL(第二端部)とをレーザ溶接するレーザ溶接方法(段落[0001]、[0028]、[0034]~[0035]、図7)の、 前記先端面6eR(前記第一端部)及び前記先端面6eL(前記第二端部)に、前記コア4の軸方向(前記第一方向、段落[0028]、図4)と交差した平面6eC内で(所定の方向に)本溶接パターン34の移動軌跡で移動(走査)しながらレーザ光Lb(レーザ光)を照射する工程(段落[0049]~[0051]、[0061]、図2C)において、 前記先端面6eR(前記第一端部)または前記先端面6eL(前記第二端部)のレーザ光Lb(レーザ光)を照射する領域で、平面6eCの面積や先端面6eR、6eLの縦及び横寸法等の、入力装置12により入力された溶接条件(レーザ光の照射位置)に基づいて(応じて)、照射するレーザ光Lbの出力及び移動速度(レーザ光のパワー)を変更すること(段落[0017]、[0056]~[0058])。」 3 甲3に記載された技術的事項 甲3の、段落【0001】~【0004】、【0010】、【0016】~【0017】、【0026】~【0028】、【0033】及び【0039】の記載から、甲3には、レーザ加工に関して、次の技術的事項(以下「甲3記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 「直線経路から屈曲経路に変化する部分などの実送り速度が加工プログラムで予め指定された送り速度より低くなる経路部分において、過剰なエネルギーが加えられて加工切断面の不良や溶融等が発生することがなく、コーナ部において良好な加工品質を得るため、 実送り速度を検出することで、レーザ光の加減速経路部分又は屈曲経路部分などにおいて送り速度の低下する部分を識別し、実送り速度及びコーナ部のコーナ角に対応するレーザ出力条件を求めることで、レーザ光の送り速度が低くなる経路部分においてコーナ角に対応する最適なレーザ出力条件に変更すること。」 4 甲4に記載された技術的事項 甲4の、段落【0001】~【0003】、【0008】、【0028】及び【0035】の記載から、甲4には、レーザ溶接(段落【0008】)に関して、次の技術的事項(以下「甲4記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 「ワークとレーザ加工ヘッドとの相対速度が低下する加工経路にあるコーナ部での、ワークに加えられる加工長あたりのエネルギーの変化に伴う、加工精度の低下、加工断面の粗さ、ワークの材質悪化等の悪影響等が生じることを抑制するため、 レーザ加工ヘッドとワークとの相対移動が等速運動から減速に転じたときは、出力パワーを減ずる制御を行うこと。」 5 甲5に記載された技術的事項 甲5の、段落【0001】~【0003】、【0008】、【0011】~【0012】、【0014】~【0016】、【0025】、【0029】、【0031】、【0034】~【0039】、【0058】~【0059】及び【0065】~【0066】の記載、並びに、図1、5及び11の図示内容からみて、甲5には、次の技術的事項(以下「甲5記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 「金属板等のワーク101のレーザ光100が照射される面(以下「照射面A」という。)と、金属板等のワーク101のレーザ光100が照射される面(以下「照射面B」という。)と、をレーザ溶接する(段落【0002】及び図11(a)から2つのワーク101を突合せ溶接することが看取され、図1及び図5にそれぞれ図示されるレーザ溶接装置1、6においても同様の溶接が可能といえる。)レーザ溶接装置1、6(段落【0014】~【0016】、図1、段落【0034】~【0039】、図6)において、 前記照射面Aまたは前記照射面Bのレーザ光100を照射する領域において、レーザ光100の照射位置の溶接部102の温度に応じてレーザ光100を照射するレーザ発振器105のレーザ出力または相対移動速度を変更し(段落【0001】、【0008】、【0011】、【0016】、【0037】~【0038】、【0058】~【0059】、【0065】)、 赤外線センサ2によって検出された温度が高いほど、レーザ光100を照射するレーザ発振器105への供給電力に基づくレーザ出力を下げる制御、および前記相対移動速度を高くする制御のうち、少なくとも一方を実行する(段落【0029】、【0038】、【0058】、【0065】)こと。」 6 甲6に記載された技術的事項 甲6の、段落【0001】、【0023】~【0025】及び【0030】の記載から、甲6には、レーザ溶接に関して、次の技術的事項(以下「甲6記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 「欠陥発生の少ない溶接をするため、 CCDカメラで溶接中の溶融池近傍の状況を取り込んだ画像を処理して監視し、溶融池形状の良否をリアルタイムで判定したり、加工テーブルの移動速度を管理したり、溶融池形状の変動に即応して、レーザ発振器の出力や溶接速度等の溶接条件をリアルタイムで制御して変更すること。」 7 甲7に記載された技術的事項 申立人意見書1に添付された甲7の、段落【0001】~【0003】、【0014】、【0022】、【0025】、【0030】、【0033】~【0035】の記載、及び、図3、6、8~10の図示内容から、甲7には、レーザ加工に関する、段落【0022】及び【0035】並びに図3及び図10に示される実施形態として、次の技術的事項(以下「甲7記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 「点Aから点Bまで直線移動、点Bで直角に曲がり、点Bから点Cまで直線移動してレーザ加工をする(段落【0022】、図3)にあたり、コーナ等の低速部での加工品質の悪化の抑制のため(段落【0002】~【0003】)、レーザ光の照射位置の走査経路が、 出力パワーが一定で維持される、点Aから点Bに向かう直線の区間(以下「区間ア」という。図6、図10)と、 区間アに続いて点Bに近づくまでの、点Bに近づくにつれて出力パワーが減少する直線の区間(以下「区間イ」という。図6、図10)と、 区間イに続く、直角に曲がる点B近傍の、出力パワーが最小の値で一定に維持される区間(以下「区間ウ」という。図10)と、 区間ウに続いて点Cに向かう、点Cに近づくにつれて出力パワーが増大する直線の区間(以下「区間エ」という。図6、図10)と、 区間エに続いて点Cまでの、出力パワーが一定で維持される、直線の区間(以下「区間オ」という。図6、図10)と、を含むこと。」 8 甲8に記載された技術的事項 申立人意見書1に添付された甲8の、段落【0002】、【0026】~【0036】、【0039】~【0041】、【0043】~【0045】、【0049】、【0054】の記載、及び、図4、7(a)(b)の図示内容から、甲8には、レーザ溶接(段落【0026】)に関する、段落【0054】及び図7(b)に示される実施形態として、次の技術的事項(以下「甲8記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 「コーナ部Bを含む経路A0に沿って、切断又は溶接(段落【0026】)等のレーザ加工をするにあたり、コーナ部Bを通過するときの加工速度の低下に伴い熱が過剰に蓄積されることを抑制するため、レーザ光の照射位置の走査経路A0が、 レーザ出力が一定で維持される、直線状の経路A1と、 レーザ出力が減少する直線状の経路A21の区間C1と、 レーザ出力が最小の値で一定に維持される、コーナ部Bにて屈曲して走査される経路A21の区間C2と、 レーザ出力が増大する直線状の経路A21の区間C3と、 レーザ出力が一定で維持される、直線状の経路A22と、を含むこと。」 ここで、上記甲8記載の技術的事項の認定にあたり、次の事項を考慮した。すなわち、図7(a)に対応する図4の切断条件(レーザ出力等:段落【0049】)では、経路A1と経路A2との境界にコーナ部Bが位置する。しかし、段落【0054】及び図7(b)の実施態様では、コーナ加工区間A21のほぼ中央にコーナ部Bが位置することから、当業者であれば、図7(b)に対応する切断条件(図4)においては、コーナ部Bは区間C2に位置するように調整される、との理解に基づく。 9 甲9に記載された技術的事項 申立人意見書2に添付された甲9の、段落【0001】、【0056】の記載、及び、図6の図示内容から、甲9には、レーザ溶接に関する、次の技術的事項(以下「甲9記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 「走査経路8-2を、円形の接合縁3に対して交差しかつ湾曲して細かく蛇行するようにして、U字形状を連続的に形成するようにウィービングして連続的にレーザー溶接すること。」 第7 本件発明1~3の進歩性(特許法第29条第2項)について 本件発明1~3が決定の予告で通知した取消理由1-1及び1-2(上記第5の2(1)及び(2))を有しているかについて、以下検討する。 1 本件発明1について (1)本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記第6の1(1)に括弧書きで併記した相当関係があると認められ、両者は、次の一致点で一致し、相違点1~2で相違する。 ア 一致点 「金属材料で作られた第一部材の第一方向の第一端部と、金属材料で作られた第二部材の前記第一方向の第二端部と、をレーザ溶接するレーザ溶接方法であって、 前記第一端部および前記第二端部を前記第一方向と交差した第二方向に隣り合うように配置する工程と、 前記第一端部および前記第二端部に、前記第一方向と交差した所定の方向に走査しながらレーザ光を照射する工程と、 前記レーザ光を照射する工程において前記第一端部と前記第二端部との間で掛け渡された状態で形成された溶融池を固化する工程と、 を備え、 前記レーザ光を照射する工程において、 レーザ光の照射位置の走査経路は、前記第一端部の前記第二方向における第一中央部より前記第二端部に近い第一領域で走査される第一走査経路と、当該第一走査経路での走査の後に前記第二端部の前記第二方向における第二中央部より前記第一端部に近い第二領域で走査される第二走査経路と、を有し、 前記第一走査経路は、 前記第一端部または前記第二端部の前記第一方向および前記第二方向と交差する第三方向における第三中央部より前記第三方向の反対方向の端縁に近い位置から、前記第三中央部より前記第三方向の端縁に近い位置まで前記第三方向に直線状に走査される第一区間、 当該第一区間に対して前記第二方向の反対方向に間隔をあけて離れた位置で、前記第三中央部より前記第三方向の端縁に近い位置から、前記第三中央部より前記第三方向の反対方向の端縁に近い位置まで前記第三方向の反対方向に直線状に走査される第二区間、および 前記第一区間の終端から前記第二区間の始端まで接続するように走査される接続区間、 を有し、 前記第一走査経路において、前記照射位置は、前記第一区間、前記接続区間、および前記第二区間の順に連続的に走査される、レーザ溶接方法。」 イ 相違点 (ア)相違点1 本件発明1においては、第一端部の「第一走査経路」及び第二端部の「第二走査経路」の「それぞれ」が、 第三中央部より第三方向の反対方向の端縁に近い位置から、第三中央部より第三方向の端縁に近い位置まで第三方向に直線状に走査される「第一区間」、 当該第一区間に対して第二方向の反対方向に間隔をあけて離れた位置で、第三中央部より第三方向の端縁に近い位置から、第三中央部より第三方向の反対方向の端縁に近い位置まで第三方向の反対方向に直線状に走査される「第二区間」、及び 第一区間の終端から第二区間の始端まで第三方向に膨らむように湾曲して走査される「湾曲区間」、 を有し、 「第一走査経路」及び「第二走査経路」のそれぞれにおいて、照射位置は、「第一区間」、「湾曲区間」、及び「第二区間」の順に連続的に走査されるのに対し、 甲1発明においては、端面24a(第一端部)の第一走査軌跡(第一走査経路)が、「線状区間A1(第一区間)」及び「線状区間A2(第二区間)」を有するものの、「屈曲-線状-屈曲区間A3」は、線状区間A1(第一区間)の終端から線状区間A2(第二区間)の始端まで「第三方向に膨らむように湾曲して走査される」ものでなく、 端面24b(第二端部)の第二走査軌跡(第二走査経路)が、「線状区間B2(第二区間)」を有するものの、「第一区間」に相当する区間を有するものでなく、かつ「屈曲-線状-屈曲区間B3」は、線状区間A1の終端から線状区間B2(第二区間)の始端まで「第三方向に膨らむように湾曲して走査される」ものでなく、端面24a及び端面24bを跨ぐ区間であり、 そのため、第一走査軌跡(第一走査経路)及び第二走査軌跡(第二走査経路)のそれぞれにおいて、「第一区間」、「湾曲区間」、及び「第二区間」に相当する各区間の順に、連続的に走査されるものでもない点。 (イ)相違点2 本件発明1においては、「レーザ光の照射位置に応じて照射するレーザ光のパワーを変更」するものであって、 「前記湾曲区間では、前記第一区間および前記第二区間の少なくとも一部に対して照射するレーザ光のパワーよりも低いパワーで一定の状態で、レーザ光が走査される」ものであるのに対し、 甲1発明においては、レーザビームの照射位置に応じてレーザビームのパワーを変更するか不明であり、また、上記(ア)のとおり、そもそも湾曲区間に相当する区間を有していない点。 (3)相違点に対する判断 上記相違点1に係る本件発明1の構成は、具体的には、上記第2の3の3-1(1)イ(ア)の図11に示すような、端部21a、22aのそれぞれに、図12に示される略U字状に走査される走査経路R100を有するものである。 一方、甲1発明のほか、甲2~甲9記載の技術的事項のいずれにも、「第一走査経路」及び「第二走査経路」の「それぞれ」が、「第一区間」、「第二区間」及び「湾曲区間」を有し、「第一走査経路」及び「第二走査経路」のそれぞれが「第一区間」、「湾曲区間」及び「第二区間」の順に連続的に走査される技術の開示がない。 例えば、申立人意見書2で添付された甲9には、甲9記載の技術的事項が開示されるものの、ループ状に走査させることを念頭においた甲1発明に、接合縁3に対して交差しかつ湾曲して細かく蛇行する甲9記載の技術的事項を適用する動機がない。そもそも、主引用発明である甲1発明は、走査軌跡のループ形状を徐々に大きく描き、端部21a、22aに跨がるようなループ形状の軌跡とすることを要旨とする発明であると解されることから、端部21a、22aのそれぞれにおいて、走査軌跡を描くように改変することには阻害要因があるともいえる。なお、甲1発明に甲9記載の技術的事項を適用することを仮に想到し得たとしても、甲9記載の技術的事項では、接合縁3に対して交差する走査方向であることを前提としてU字状に走査されるものであるから、甲1発明における矩形状にループする走査軌跡を、その角部を丸めて、楕円形状や円形状にループする走査経路に改変することを想到するにとどまり、相違点1に係る本件発明1の構成にまで容易に想到し得たということはできない。 さらにいえば、本件発明1は、相違点1に係る本件発明1の構成を前提としたうえで、さらに、その湾曲区間において、第一区間および第二区間の少なくとも一部に対して照射するレーザ光のパワーよりも低いパワーで一定の状態で、レーザ光が走査されるという、相違点2に係る本件発明1の構成を合わせて備えるものである。そのため、甲1発明を主引用発明として、相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成に到達するには、まず、端部21a、22aに跨がる矩形状の走査軌跡を、端部21a、22aそれぞれの矩形状の走査軌跡に変更し、次に、それぞれの走査軌跡のコ字状の折り返し部を、例えば甲9記載の技術的事項を参考として、U字状の湾曲区間を有するように変更し、その上でさらに、例えば甲2、甲4、甲7又は甲8記載の技術的事項を参照して(ただし、いずれの角部でのレーザ光のパワーを減少するものであり、湾曲区間に関するものではない。)、湾曲区間のレーザ光のパワーを減少するという、多段階の改変を必要とすることも明らかである。 してみると、甲1発明を出発点として、甲2~甲9記載の技術的事項を適用したとしても、相違点1及び相違点2に係る本件発明1のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことであるとまで、いうことはできない。 (4)申立人意見書2における申立人の主張について 申立人は、申立人意見書2において、走査経路をループ状とするにあたり、直線とU字状の組合せである陸上トラックのようなstadium形状を採用することに格別な困難性は存在しない旨を主張する。 しかしながら、甲1発明では、ループ形状を徐々に大きく描き、端部21a、22aに跨がるループ形状となるような走査軌跡とすることを要旨とする発明であると解されることからみて、本件発明1に係る、第一走査経路及び第二走査経路のそれぞれが、第一区間、湾曲区間、及び第二区間を有するような経路となるように、端部21a、22aのそれぞれにおいて、ループ状のstadium形状の走査軌跡へと改変することには、上記(3)のとおり、困難性があるといわざるを得ない。 (5)請求項1に係る特許についての小括 したがって、本件発明1は、甲1発明、及び、甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 2 本件発明2~3について (1)判断 本件発明2~3は、請求項1の記載を引用するものであるから、甲1発明とは少なくとも上記相違点1~2と同様の点で相違し、上記1(3)と同様の理由により、当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。 (2)請求項2~3に係る特許についての小括 したがって、本件発明2~3は、甲1発明、及び、甲2~甲9記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項2~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 第8 本件発明2~3の簡潔性(特許法第36条第6項第3号)について 本件発明2~3が、職権により決定の予告で通知した取消理由2(上記第5の2(3))を有しているかについて、以下検討する。 1 請求項2について 本件訂正後の請求項2においては、「前記第二区間は、レーザ光のパワーが前記湾曲区間よりも高くかつ一定の状態で前記第三方向の反対方向に走査される第二パワー一定区間」と記載される(上記第3参照)。 そのため、訂正1の請求項2における、「走査される」が重複して記載された点は、本件訂正により簡潔となった。 2 請求項3について 請求項3についても、本件訂正により簡潔となった。 3 小括 したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第3号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである、ということはできない。 第9 取消理由通知及び決定の予告で採用されなかった申立ての理由について 1 甲1記載の比較例2を主引用発明とした進歩性欠如について 申立書では、甲1の段落【0057】及び図15に、比較例2として示される、突き合わせた一対の平角線の中央部において、接合面(突き合わせ面)に対してレーザビームを平行に往復走査させた技術から、甲1発明1(2)を認定し(申立書16~17ページ)、請求項1~3に係る発明の進歩性欠如について主張している(申立書40~44ページ)ことから、当該甲1に記載された比較例2から主引用発明(以下「甲1に記載された比較例2に係る発明」という。)を認定した場合について、以下検討する。 甲1には、実施例1と比較するために、甲1発明1(2)の認定のもととなる、突き合わせた一対の平角線の中央部において、接合面(突き合わせ面)に対してレーザビームを平行に往復走査させた比較例2が示される。 しかしながら、当該比較例2では、スパッタが多く確認され(段落【0059】)、三角形状の接合面の両端部において、溶け落ちが確認され(段落【0060】)、接合面の隙間0.1mmでもレーザビーム漏れが確認された(段落【0061】)ことが課題として示されるように、甲1に記載された比較例2に係る発明を主引用発明として認定した場合には、その課題を解決するために、実施例1のように改良しようと想到することが当業者であれば最も自然であると解するのが相当である。 また、甲1には、比較例2とともに、段落【0056】及び図15に、突き合わせた一対の平角線の中央部において、接合面(突き合わせ面)に対してレーザビームを垂直に往復走査させた比較例1も、実施例との比較のために示されるところ、甲1に記載された技術に、甲9記載の技術的事項であるU字形状を連続的に形成してレーザ溶接をするとの技術思想を適用しようとした場合には、その走査経路の方向からみて、接合面に垂直な走査経路を有する甲1の比較例1の方を主引用発明として、甲9記載の技術的事項を適用し、湾曲した経路への変更を試みることになるといえ、甲1に記載された比較例2に係る発明を主引用発明として甲9記載の技術的事項を適用するには、本件特許に係る発明に接するなどの、いわゆる後知恵を必要とする、とも解される。 さらにいえば、本件発明1と甲1に記載された比較例2に係る発明とを対比すると、甲1に記載された比較例2に係る発明が、上記相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成である「湾曲区間」を有するものではない点で、相違する。すなわち、本件発明1は、「第一走査経路」及び「第二走査経路」の「それぞれ」が「湾曲区間」を有する(相違点1に係る構成)を前提としたうえで、さらに、その「湾曲区間」において、第一区間および第二区間の少なくとも一部に対して照射するレーザ光のパワーよりも低いパワーで一定の状態で、レーザ光が走査される(相違点2に係る構成)ものである。そのため、甲1発明を主引用発明とした場合(上記第7の1(3))と同様に、甲1に記載された比較例2に係る発明を主引用発明として、相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成に到達するには、まず、それぞれの走査経路の折り返し部を、例えば甲9記載の技術的事項を参考として、湾曲区間を有するように改変したうえで、例えば甲2、甲4、甲7又は甲8記載の技術的事項を参照して(ただし、いずれの角部でのレーザ光のパワーを減少するものであり、湾曲区間に関するものではない。)、湾曲区間のレーザ光のパワーを減少するという、多段階の改変を必要とすることも明らかである。 してみると、甲1発明や甲1に記載された比較例2に係る発明を出発点として、甲2~甲9記載の技術的事項を適用したとしても、相違点1及び相違点2に係る本件発明1のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである、とまでいうことはできない。 2 甲2に記載された発明を主引用発明とした進歩性欠如について 申立書では、甲2に記載された技術から、甲2発明1を認定し(申立書23~24ページ)、請求項1~3に係る発明の進歩性欠如について主張している(申立書47~51ページ)ことから、当該甲2に記載された発明を主引用発明とした場合について、以下検討する。 甲2に記載された発明では、上記第6の2に示した甲2記載の技術的事項として示したように、 「先端面6eR(第一端部)及び先端面6eL(第二端部)に、コア4の軸方向(第一方向、段落[0028]、図4)と交差した平面6eC内で(所定の方向に)本溶接パターン34の移動軌跡で移動(走査)しながらレーザ光Lb(レーザ光)を照射する工程(段落[0049]~[0051]、[0061]、図2C)」を有するといえる。 そして、本件発明1と甲2に記載された発明とを対比すると、甲2に記載された発明における「本溶接パターン34」は、先端面6eR(第一端部)及び先端面6eL(第二端部)の境界28を横切って連続的に一周する照射パターンである(段落[0049]、図1~2)ことから、上記第7の1(1)イ(ア)に示した相違点1と同様に、本件発明1における「第一走査経路」及び「第二走査経路」のそれぞれが「第一区間」、「湾曲区間」及び「第二区間」を有することとは異なる点で相違するといえる。 そして、当該構成については、上記第7の1(3)や上記1で検討したように、甲1発明や甲1に記載された比較例2に係る発明、及び甲3~甲9記載の技術的事項として開示されたものではないから、甲2に記載された発明に甲1発明や甲1に記載された比較例2に係る発明、及び甲3~甲9記載の技術的事項を適用したとしても、当業者が容易に本件発明1を想到し得たとまでいうことはできない。 第10 むすび 本件特許の請求項1~3に係る発明は、上記第7及び第9の1のとおり、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証~甲第9号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、本件特許の請求項1~3に係る発明は、上記第9の2のとおり、甲第2号証に記載された発明、並びに、甲第1号証及び甲第3号証~甲第9号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 さらに、本件特許の請求項2~3の記載は、上記第8のとおり、簡潔であるから、本件特許は、特許法第36条第6項第3号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるともいえない。 また、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき他の理由も発見しない。 一方、本件特許の請求項4~7は、上記第2及び第3のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による本件特許の請求項4~7に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700532

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