特許異議申立
2024-700999
溶接方法および溶接装置
- 審判番号
- 2024-700999
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-541282
- 登録番号
- 7470639
- 請求日
- 2024年10月11日
- 審決日
- 2025年10月30日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】古河電気工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】西村 裕之
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 刈間 宏信
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P1651.113-YAA(B23K) / P1651.121-YAA(B23K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7470639号発明「溶接方法および溶接装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7470639号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕、〔15~33〕について訂正することを認める。
特許第7470639号の請求項1~7、9~20及び24~33に係る特許を維持する。
特許第7470639号の請求項8及び21~23に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許掲載公報の発行までの経緯
特許第7470639号(以下「本件特許」という。)の請求項1~33に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)9月4日(優先権主張 平成30年(2018年)9月4日)を国際出願日とする出願であって、令和6年4月10日にその特許権の設定登録がされ、同月18日に特許掲載公報が発行された。
2 特許異議の申立て以降の経緯
本件特許についての特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。
(1)令和6年10月11日
特許異議申立人 西村 裕之(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~33に係る特許に対する特許異議の申立て
(2)令和7年2月25日付け
取消理由通知書による取消理由(以下「本件取消理由」という。)の通知
(3)令和7年4月16日
特許権者 古河電気工業株式会社(以下「特許権者」という。)と審判合議体の面接
(4)令和7年4月18~22日
特許権者と審判官との電話及び電子メールによる応対
(5)令和7年4月28日
特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
(6)令和7年5月13日付け
手続補正指令書による手続補正指令
(7)令和7年6月13日
特許権者による手続補正書の提出
(以下、当該手続補正書により補正がされた訂正請求書に係る訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)
(8)令和7年8月29日
申立人による意見書の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正請求の趣旨及び内容について
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~33について訂正することを求める、というものである。
そして、本件訂正の内容は、以下の2(1)及び3(1)のとおりである。(下線は、本件訂正による訂正箇所を示すために、訂正前後の双方の特許請求の範囲に対して当審で付したものである。)
2 請求項1~14に係る訂正について
(1)請求項1~14に係る訂正事項
ア 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記レーザ光は主パワー領域と、前記主パワー領域の掃引方向側方に少なくともその一部がある副パワー領域とによって構成され、前記主パワー領域のパワー密度は前記副パワー領域のパワー密度以上であり、
前記主パワー領域のパワー密度は、少なくともキーホールを発生させうるパワー密度であり、
前記レーザ光は、前記主パワー領域の掃引方向側方のみに、前記主パワー領域よりもパワー密度が低い副パワー領域をさらに有する、溶接方法。」
と記載されているのを、
「前記レーザ光は主パワー領域と、前記主パワー領域の掃引方向側方に少なくともその一部がある副パワー領域とによって構成され、前記主パワー領域のパワー密度は前記副パワー領域のパワー密度より大きく、
前記主パワー領域のパワー密度は、少なくともキーホールを発生させうるパワー密度であり、
前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、および前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた部位を含むビームのみを有する、溶接方法。」
に訂正する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~7及び9~14も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、
「前記レーザ光は、前記主パワー領域の掃引方向側方および後方のみに、前記副パワー領域を有する、溶接方法。」
と記載されているのを、
「前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた部位を含むビーム、および前記主パワー領域に対して前記掃引方向後方の部位を含むビームのみを有する、溶接方法。」
に訂正する。
(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~7及び9~14も同様に訂正する。)
ウ 訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、
「前記副パワー領域は、前記主パワー領域の周囲を囲む略リング形状の一部である円弧形状を持つ、溶接方法。」
と記載されているのを、
「前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた第一部位を含むビーム、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた第二部位を含むビーム、前記主パワー領域に対して前記掃引方向後方の第三部位を含むビーム、および前記主パワー領域の周囲を囲むとともに前記第一部位から前記第三部位を経由して前記第二部位に至る略リング形状の一部である円弧形状を成す第四部位を含むビームのみを有する、溶接方法。」
に訂正する。
(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~7及び9~14も同様に訂正する。)
エ 訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に、
「前記レーザ光の前記主パワー領域が主ビームで構成され、
前記主ビームの少なくとも一部はそれぞれの前記副ビームと重ならない領域を有する、溶接方法。」
と記載されているのを、
「前記レーザ光の前記主パワー領域が主ビームで構成され、
前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、および前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた部位を含むビームのみを有し、
前記主ビームの少なくとも一部はそれぞれの前記副ビームと重ならない領域を有する、溶接方法。」
に訂正する。
(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9~14も同様に訂正する。)
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
カ 訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1~8のいずれか1項」
と記載されているのを、
「請求項1~7のいずれか1項」
に訂正する。
(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10~14も同様に訂正する。)
キ 訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項10に、
「請求項1~9のいずれか1項」
と記載されているのを、
「請求項1~7、9のいずれか1項」
に訂正する。
(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12~14も同様に訂正する。)
ク 訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項11に、
「請求項1~10のいずれか1項」
と記載されているのを、
「請求項1~7、9のいずれか1項」
に訂正する。
(請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12~14も同様に訂正する。)
ケ 訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項12に、
「請求項1~11のいずれか1項」
と記載されているのを、
「請求項1~7、9~11のいずれか1項」
に訂正する。
(請求項12の記載を直接的又は間接的に引用する請求項13~14も同様に訂正する。)
コ 訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項14に、
「請求項1~13のいずれか1項」
と記載されているのを、
「請求項1~7、9~13のいずれか1項」
に訂正する。
(2)一群の請求項について
ア 本件訂正前の請求項1、5~14について、請求項5~14は請求項1を引用しているものであって、上記訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1、5~14に対応する訂正後の請求項1、5~14は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。
イ 本件訂正前の請求項2、5~14について、請求項5~14は請求項2を引用しているものであって、上記訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項2、5~14に対応する訂正後の請求項2、5~14は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。
ウ 本件訂正前の請求項3、5~14について、請求項5~14は請求項3を引用しているものであって、上記訂正事項3によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項3、5~14に対応する訂正後の請求項3、5~14は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。
エ 本件訂正前の請求項4、8~14について、請求項8~14は請求項4を引用しているものであって、上記訂正事項4によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項4、8~14に対応する訂正後の請求項4、8~14は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。
オ 上記ア~エの一群の請求項は、請求項8~14を共通とするものであるから、組み合わされて1つの一群の請求項となる(特許法施行規則45条の4)。
したがって、訂正前の請求項1~14に対応する訂正後の請求項1~14は、一群の請求項〔1~14〕である。
(3)独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、請求項1~14を含む全ての請求項を対象としているので、訂正事項1~10に関して、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
(4)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「主パワー領域のパワー密度は前記副パワー領域のパワー密度以上であり」という事項を、「前記主パワー領域のパワー密度は前記副パワー領域のパワー密度より大きく」という事項に改めることで、主パワー領域と副パワー領域のパワー密度が等しい場合を削除するように限定するものである。
また、本件訂正前の「前記レーザ光は、前記主パワー領域の掃引方向側方のみに、前記主パワー領域よりもパワー密度が低い副パワー領域をさらに有する」という事項を、「前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、および前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた部位を含むビームのみを有する」という事項(以下、当該事項を「構成A1」という。)に改めることで、「掃引方向側方」について、「掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位」及び「第一方向と反対方向にずれた部位」に限定するものである。
したがって、訂正事項1の訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
(イ)新規事項の有無について
訂正事項1のうち、主パワー領域のパワー密度が副パワー領域のパワー密度より大きいことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の【0062】に「2つの副ビームB2は、いずれもパワー密度が主ビームB1よりも低く」として、実質的に記載されている。
また、訂正事項1のうち、構成A1は、本件明細書等の図3及び図6B、並びに、それらの図面を説明する【0055】及び【0068】に記載されているから、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に記載された「前記レーザ光は、前記主パワー領域の掃引方向側方および後方のみに、前記副パワー領域を有する」という事項を、「前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた部位を含むビーム、および前記主パワー領域に対して前記掃引方向後方の部位を含むビームのみを有する」という事項(以下、当該事項を「構成A2」という。)に改めることで、「掃引方向側方および後方」について、「掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位」、「第一方向と反対方向にずれた部位」及び「掃引方向後方の部位」に限定するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
(イ)新規事項の有無について
構成A2は、本件明細書等の図6D及び当該図面を説明する【0070】に記載されているから、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に記載された事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。
ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3に記載された「前記副パワー領域は、前記主パワー領域の周囲を囲む略リング形状の一部である円弧形状を持つ」という事項を、「前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた第一部位を含むビーム、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた第二部位を含むビーム、前記主パワー領域に対して前記掃引方向後方の第三部位を含むビーム、および前記主パワー領域の周囲を囲むとともに前記第一部位から前記第三部位を経由して前記第二部位に至る略リング形状の一部である円弧形状を成す第四部位を含むビームのみを有する」という事項(以下、当該事項を「構成A3」という。)に改めることで、「略リング形状の一部である円弧形状」について、「掃引方向と垂直な第一方向にずれた第一部位」、「第一方向と反対方向にずれた第二部位」、「掃引方向後方の第三部位」及び「主パワー領域の周囲を囲むとともに前記第一部位から前記第三部位を経由して前記第二部位に至る略リング形状の一部である円弧形状を成す第四部位」に限定するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
(イ)新規事項の有無について
構成A3は、本件明細書等の図6E及び当該図面を説明する【0071】に記載されているから、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3に記載された事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。
エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項4に、新たに構成A1(上記ア(ア))を付加して限定するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
(イ)新規事項の有無について
構成A1は、訂正事項1の構成A1について検討したとおり、本件明細書等に記載されているから、訂正事項4は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項4を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。
オ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項8を削除するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項5は、請求項8を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正でないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5及び6項に適合する。
カ 訂正事項6~10について
(ア)訂正の目的について
訂正事項6~10は、本件訂正前の請求項9~12及び14において、それぞれ引用する請求項の数が減少するように削除するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項6~10は、請求項9~12及び14が引用する請求項の数を減少させるものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正でないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5及び6項に適合する。
3 請求項15~33に係る訂正について
(1)請求項15~33に係る訂正事項
ア 訂正事項11
訂正前の特許請求の範囲の請求項15に、
「前記レーザ光は、前記主パワー領域の掃引方向側方のみに、前記副パワー領域をさらに有する、溶接装置。」
と記載されているのを、
「前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、および前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた部位を含むビームのみを有する、溶接装置。」
に訂正する。
(請求項15の記載を直接的又は間接的に引用する請求項18~20、24~33も同様に訂正する。)
イ 訂正事項12
訂正前の特許請求の範囲の請求項16に、
「前記レーザ光は、前記主パワー領域の掃引方向側方および後方のみに、前記副パワー領域をさらに有する、溶接装置。」
と記載されているのを、
「前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた部位を含むビーム、および前記主パワー領域に対して前記掃引方向後方の部位を含むビームのみを有する、溶接装置。」
に訂正する。
(請求項16の記載を直接的又は間接的に引用する請求項18~20、24~33も同様に訂正する。)
ウ 訂正事項13
訂正前の特許請求の範囲の請求項17に、
「前記レーザ発振器は異なる2つのレーザ発振器から構成され、前記主パワー領域および前記副パワー領域は、それぞれ前記異なる2つの発振器から出射されたレーザ光で構成される、溶接装置。」
と記載されているのを、
「前記レーザ発振器は異なる2つのレーザ発振器から構成され、前記主パワー領域および前記副パワー領域は、それぞれ前記異なる2つの発振器から出射されたレーザ光で構成され、
前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた第一部位を含むビーム、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた第二部位を含むビーム、前記主パワー領域に対して前記掃引方向後方の第三部位を含むビーム、および前記主パワー領域の周囲を囲むとともに前記第一部位から前記第三部位を経由して前記第二部位に至る略リング形状の一部である円弧形状を成す第四部位を含むビームのみを有する、溶接装置。」
に訂正する。
(請求項17の記載を直接的又は間接的に引用する請求項24、29~33も同様に訂正する。)
エ 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項21を削除する。
オ 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項22を削除する。
カ 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項23を削除する。
キ 訂正事項17
訂正前の特許請求の範囲の請求項24に、
「請求項15~23のいずれか1項」
と記載されているのを、
「請求項15~20のいずれか1項」
に訂正する。
(請求項24の記載を直接的又は間接的に引用する請求項29~33も同様に訂正する。)
ク 訂正事項18
訂正前の特許請求の範囲の請求項25に、
「請求項15~24のいずれか1項」
と記載されているのを、
「請求項15、16、18、19のいずれか1項」
に訂正する。
(請求項25の記載を直接的又は間接的に引用する請求項26~29及び32~33も同様に訂正する。)
ケ 訂正事項19
訂正前の特許請求の範囲の請求項29に、
「請求項15~28のいずれか1項」
と記載されているのを、
「請求項15~20、24~28のいずれか1項」
に訂正する。
(請求項29の記載を直接的又は間接的に引用する請求項32~33も同様に訂正する。)
コ 訂正事項20
訂正前の特許請求の範囲の請求項30に、
「請求項15~29のいずれか1項」
と記載されているのを、
「請求項15~20、24のいずれか1項」
に訂正する。
(請求項30の記載を直接的又は間接的に引用する請求項32~33も同様に訂正する。)
サ 訂正事項21
訂正前の特許請求の範囲の請求項31に、
「請求項15~29のいずれか1項」
と記載されているのを、
「請求項15~20、24のいずれか1項」
に訂正する。
(請求項31の記載を直接的又は間接的に引用する請求項32~33も同様に訂正する。)
シ 訂正事項22
訂正前の特許請求の範囲の請求項32に、
「請求項15~31のいずれか1項」
と記載されているのを、
「請求項15~20、24~31のいずれか1項」
に訂正する。
(請求項32の記載を直接的に引用する請求項33も同様に訂正する。)
ス 訂正事項23
訂正前の特許請求の範囲の請求項33に、
「請求項15~32のいずれか1項」
と記載されているのを、
「請求項15~20、24~32のいずれか1項」
に訂正する。
(2)一群の請求項について
ア 本件訂正前の請求項15、18~33について、請求項18~33は請求項15を引用しているものであって、上記訂正事項11によって記載が訂正される請求項15に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項15、18~33に対応する訂正後の請求項15、18~33は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。
イ 本件訂正前の請求項16、18~33について、請求項18~33は請求項16を引用しているものであって、上記訂正事項12によって記載が訂正される請求項16に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項16、18~33に対応する訂正後の請求項16、18~33は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。
ウ 本件訂正前の請求項17、21~33について、請求項21~33は請求項17を引用しているものであって、上記訂正事項13によって記載が訂正される請求項17に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項17、21~33に対応する訂正後の請求項17、21~33は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。
エ 上記ア~ウの一群の請求項は、請求項21~33を共通とするものであるから、組み合わされて1つの一群の請求項となる(特許法施行規則45条の4)。
したがって、訂正前の請求項15~33に対応する訂正後の請求項15~33は、一群の請求項〔15~33〕である。。
(3)独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、請求項15~33を含む全ての請求項を対象としているので、訂正事項11~23に関して、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
(4)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
ア 訂正事項11について
(ア)訂正の目的について
訂正事項11は、本件訂正前の請求項15に記載された「前記レーザ光は、前記主パワー領域の掃引方向側方のみに、前記副パワー領域をさらに有する」という事項を、構成A1(上記2(4)ア(ア))に改めることで、「掃引方向側方」について、「掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位」及び「第一方向と反対方向にずれた部位」に限定するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
(イ)新規事項の有無について
構成A1は、訂正事項1の構成A1について検討したとおり、本件明細書等に記載されているから、訂正事項11は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項11は、本件訂正前の請求項15に記載された事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項11は、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。
イ 訂正事項12について
(ア)訂正の目的について
訂正事項12は、本件訂正前の請求項16に記載された「前記レーザ光は、前記主パワー領域の掃引方向側方および後方のみに、前記副パワー領域をさらに有する」という事項を、構成A2(上記2(4)イ(ア))に改めることで、「掃引方向側方および後方」について、「掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位」、「第一方向と反対方向にずれた部位」及び「掃引方向後方の部位」に限定するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
(イ)新規事項の有無について
構成A2は、訂正事項2の構成A2について検討したとおり、本件明細書等に記載されているから、訂正事項12は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項12は、本件訂正前の請求項16に記載された事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項12は、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。
ウ 訂正事項13について
(ア)訂正の目的について
訂正事項13は、本件訂正前の請求項17に、新たに構成A3(上記2(4)ウ(ア))を付加して限定するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
(イ)新規事項の有無について
構成A3は、訂正事項3の構成A3について検討したとおり、本件明細書等に記載されているから、訂正事項13は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項13は、本件訂正前の請求項17を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項13は、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。
エ 訂正事項14~16について
(ア)訂正の目的について
訂正事項14~16は、本件訂正前の請求項21~23を削除するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項14~16は、請求項21~23を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正でないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5及び6項に適合する。
オ 訂正事項17~23について
(ア)訂正の目的について
訂正事項17~23は、本件訂正前の請求項24~25及び29~33において、それぞれ引用する請求項の数が減少するように削除するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項17~23は、請求項24~25及び29~33が引用する請求項の数を減少させるものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正でないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5及び6項に適合する。
4 小括
上記2~3のとおり、本件訂正は、訂正の要件をすべて満たすものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~14〕、〔15~33〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認容されたから、本件特許の請求項1~33に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などという。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~33に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
レーザ光を加工対象に向かって照射しながら前記レーザ光と前記加工対象とを相対的に移動させ、前記レーザ光を前記加工対象上で掃引しつつ、照射された部分の前記加工対象を溶融して溶接を行う、
工程を含み、
前記レーザ光は主パワー領域と、前記主パワー領域の掃引方向側方に少なくともその一部がある副パワー領域とによって構成され、前記主パワー領域のパワー密度は前記副パワー領域のパワー密度より大きく、
前記主パワー領域のパワー密度は、少なくともキーホールを発生させうるパワー密度であり、
前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、および前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた部位を含むビームのみを有する、溶接方法。
【請求項2】
レーザ光を加工対象に向かって照射しながら前記レーザ光と前記加工対象とを相対的に移動させ、前記レーザ光を前記加工対象上で掃引しつつ、照射された部分の前記加工対象を溶融して溶接を行う、
工程を含み、
前記レーザ光は主パワー領域と、前記主パワー領域の掃引方向側方に少なくともその一部がある副パワー領域とによって構成され、前記主パワー領域のパワー密度は前記副パワー領域のパワー密度以上であり、
前記主パワー領域のパワー密度は、少なくともキーホールを発生させうるパワー密度であり、
前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた部位を含むビーム、および前記主パワー領域に対して前記掃引方向後方の部位を含むビームのみを有する、溶接方法。
【請求項3】
レーザ光を加工対象に向かって照射しながら前記レーザ光と前記加工対象とを相対的に移動させ、前記レーザ光を前記加工対象上で掃引しつつ、照射された部分の前記加工対象を溶融して溶接を行う、
工程を含み、
前記レーザ光は主パワー領域と、前記主パワー領域の掃引方向側方に少なくともその一部がある副パワー領域とによって構成され、前記主パワー領域のパワー密度は前記副パワー領域のパワー密度以上であり、
前記主パワー領域のパワー密度は、少なくともキーホールを発生させうるパワー密度であり、
前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた第一部位を含むビーム、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた第二部位を含むビーム、前記主パワー領域に対して前記掃引方向後方の第三部位を含むビーム、および前記主パワー領域の周囲を囲むとともに前記第一部位から前記第三部位を経由して前記第二部位に至る略リング形状の一部である円弧形状を成す第四部位を含むビームのみを有する、溶接方法。
【請求項4】
レーザ光を加工対象に向かって照射しながら前記レーザ光と前記加工対象とを相対的に移動させ、前記レーザ光を前記加工対象上で掃引しつつ、照射された部分の前記加工対象を溶融して溶接を行う、
工程を含み、
前記レーザ光は主パワー領域と、前記主パワー領域の掃引方向側方に少なくともその一部がある副パワー領域とによって構成され、前記主パワー領域のパワー密度は前記副パワー領域のパワー密度以上であり、
前記主パワー領域のパワー密度は、少なくともキーホールを発生させうるパワー密度であり、
前記レーザ光の前記副パワー領域が複数の副ビームで構成され、
前記レーザ光の前記主パワー領域が主ビームで構成され、
前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、および前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた部位を含むビームのみを有し、
前記主ビームの少なくとも一部はそれぞれの前記副ビームと重ならない領域を有する、溶接方法。
【請求項5】
前記レーザ光の前記主パワー領域と前記副パワー領域で溶融池が形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項6】
前記レーザ光の前記主パワー領域と前記副パワー領域は、前記主パワー領域で形成された溶融池と、前記副パワー領域で形成された溶融池の少なくとも一部が重なる様に構成される、請求項1~3、5のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項7】
前記レーザ光の前記副パワー領域が複数の副ビームで構成され、
前記レーザ光の前記主パワー領域が主ビームで構成され、
前記主ビームの少なくとも一部はそれぞれの前記副ビームと重ならない領域を有する、請求項1~3、5、6のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
前記主パワー領域を形成するレーザ光の波長は、前記副パワー領域を形成するレーザ光の波長と同一である、請求項1~7のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項10】
前記主パワー領域および前記副パワー領域は、同一の発振器から出射されたレーザ光で構成される、請求項1~7、9のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項11】
前記主パワー領域および前記副パワー領域は、異なる発振器から出射されたレーザ光で構成される、請求項1~7、9のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項12】
前記主パワー領域および前記副パワー領域は、ビームシェイパによって形成される、請求項1~7、9~11のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項13】
前記ビームシェイパは回折光学素子である、ことを特徴とする請求項12に記載の溶接方法。
【請求項14】
前記加工対象は溶接されるべき少なくとも2つの部材であり、前記加工対象をレーザ光の照射される領域に配置する工程は、前記少なくとも2つの部材を重ねる、または接触させる、または隣接させるように配置する工程である、請求項1~7、9~13のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項15】
レーザ発振器と、
レーザ発振器から発振された光を受け取ってレーザ光を生成し、前記生成されたレーザ光を加工対象に向かって照射して照射された部分の前記加工対象を溶融して溶接を行う光学ヘッドと、
によって構成され、
前記光学ヘッドは前記レーザ光と前記加工対象とが相対的に移動可能な様に構成され、前記レーザ光を前記加工対象上で掃引しつつ、前記溶融を行なって溶接を行い、
前記レーザ光は主パワー領域と、掃引方向側方に少なくともその一部がある副パワー領域によって構成され、主パワー領域のパワー密度は副パワー領域のパワー密度以上であり、
前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、および前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた部位を含むビームのみを有する、溶接装置。
【請求項16】
レーザ発振器と、
レーザ発振器から発振された光を受け取ってレーザ光を生成し、前記生成されたレーザ光を加工対象に向かって照射して照射された部分の前記加工対象を溶融して溶接を行う光学ヘッドと、
によって構成され、
前記光学ヘッドは前記レーザ光と前記加工対象とが相対的に移動可能な様に構成され、前記レーザ光を前記加工対象上で掃引しつつ、前記溶融を行なって溶接を行い、
前記レーザ光は主パワー領域と、掃引方向側方に少なくともその一部がある副パワー領域によって構成され、主パワー領域のパワー密度は副パワー領域のパワー密度以上であり、
前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた部位を含むビーム、および前記主パワー領域に対して前記掃引方向後方の部位を含むビームのみを有する、溶接装置。
【請求項17】
レーザ発振器と、
レーザ発振器から発振された光を受け取ってレーザ光を生成し、前記生成されたレーザ光を加工対象に向かって照射して照射された部分の前記加工対象を溶融して溶接を行う光学ヘッドと、
によって構成され、
前記光学ヘッドは前記レーザ光と前記加工対象とが相対的に移動可能な様に構成され、前記レーザ光を前記加工対象上で掃引しつつ、前記溶融を行なって溶接を行い、
前記レーザ光は主パワー領域と、掃引方向側方に少なくともその一部がある副パワー領域によって構成され、主パワー領域のパワー密度は副パワー領域のパワー密度以上であり、
前記レーザ発振器は異なる2つのレーザ発振器から構成され、前記主パワー領域および前記副パワー領域は、それぞれ前記異なる2つの発振器から出射されたレーザ光で構成され、
前記副パワー領域は、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記掃引方向と垂直な第一方向にずれた第一部位を含むビーム、前記掃引方向側方の一部であって前記主パワー領域に対して前記第一方向と反対方向にずれた第二部位を含むビーム、前記主パワー領域に対して前記掃引方向後方の第三部位を含むビーム、および前記主パワー領域の周囲を囲むとともに前記第一部位から前記第三部位を経由して前記第二部位に至る略リング形状の一部である円弧形状を成す第四部位を含むビームのみを有する、溶接装置。
【請求項18】
前記レーザ光の前記主パワー領域と前記副パワー領域は、それぞれ溶融池を形成する様に構成される、請求項15または16に記載の溶接装置。
【請求項19】
前記レーザ光の前記主パワー領域と前記副パワー領域は、前記主パワー領域で形成された溶融池と、前記副パワー領域で形成された溶融池の少なくとも一部が重なる様に構成される、請求項15、16、18のいずれか1項に記載の溶接装置。
【請求項20】
前記レーザ発振器は異なる2つのレーザ発振器から構成され、前記主パワー領域および前記副パワー領域は、それぞれ前記異なる2つの発振器から出射されたレーザ光で構成される、請求項15、16、18、19のいずれか1項に記載の溶接装置。
【請求項21】(削除)
【請求項22】(削除)
【請求項23】(削除)
【請求項24】
前記主パワー領域を構成するレーザ光の波長は、前記副パワー領域を構成するレーザ光の波長と同一である、請求項15~20のいずれか1項に記載の溶接装置。
【請求項25】
前記光学ヘッドは単一のレーザ発振器から発振された光から前記主パワー領域および前記副パワー領域からなる前記レーザ光を生成する、請求項15、16、18、19のいずれか1項に記載の溶接装置。
【請求項26】
前記光学ヘッドは前記レーザ発振器と前記加工対象との間に配置されたビームシェイパを含み、前記ビームシェイパは前記単一のレーザ発振器から発振された光から前記主パワー領域および前記副パワー領域を形成する、請求項25に記載の溶接装置。
【請求項27】
前記ビームシェイパは回折光学素子である、請求項26に記載の溶接装置。
【請求項28】
前記ビームシェイパは、回転可能に設けられている、請求項26または27に記載の溶接装置。
【請求項29】
前記加工対象は溶接されるべき少なくとも2つの部材である、請求項15~20、24~28のいずれか1項に記載の溶接装置。
【請求項30】
前記レーザ発振器として複数のレーザ発振器を含み、
前記光学ヘッドは前記複数のレーザ発振器から出射された光を内部で合波して前記レーザ光を生成する、請求項15~20、24のいずれか1項に記載の溶接装置。
【請求項31】
前記レーザ発振器として複数のレーザ発振器を含み、
前記複数のレーザ発振器から出射された光を内部で合波して前記光学ヘッドへ導くマルチコアファイバを、さらに備える、請求項15~20、24のいずれか1項に記載の溶接装置。
【請求項32】
前記光学ヘッドは前記レーザ光を、固定されている前記加工対象に対して掃引可能に構成される、請求項15~20、24~31のいずれか1項に記載の溶接装置。
【請求項33】
前記光学ヘッドからのレーザ光の照射位置は固定され、前記加工対象が前記固定されたレーザ光に対して移動可能に保持される、請求項15~20、24~32のいずれか1項に記載の溶接装置。」
第4 本件取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~33に係る特許に対して、当審が令和7年2月25日付けで特許権者に通知した本件取消理由の概要は、次のとおりである。
1 新規性の取消理由
本件訂正前の請求項1~10、12~19、21~27及び29に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された発明あって、特許法29条1項3号に該当するから、本件訂正前の請求項1~10、12~19、21~27及び29に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
2 進歩性の取消理由
本件訂正前の請求項11~13、17、20、28及び30~33に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項11~13、17、20、28及び30~33に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第5 当審の判断
1 申立人が提出した証拠
(1)特許異議申立書に添付した証拠
甲第 1号証:特開2015-163412号公報
甲第 2号証:特開2002-219590号公報
甲第 3号証:特開2015-205327号公報
甲第 4号証:特開2018-51607号公報
甲第 5号証:特開2012-110905号公報
甲第 6号証:特開平9-288243号公報
甲第 7号証:特開2000-233289号公報
甲第 8号証:特開2016-173472号公報
(2)令和7年8月29日に提出した意見書に添付した証拠
甲第 9号証:特開2013-139039号公報
甲第10号証:特表2010-508149号公報
(以下、各甲号証を「甲1」などという。)
2 各甲号証に記載された発明及び技術的事項について
(1)甲1発明について
甲1に記載された事項を整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内に、本件発明1で相当する構成や、甲1の根拠箇所を示す。)
「第1レーザ光1及び第2レーザ光2(レーザ光、【0032】)を第1部材10及び第2部材20(加工対象、【0032】)に向かって照射しながら前記第1レーザ光1及び第2レーザ光2と第1部材10及び第2部材20を相対的に移動させ(【0032】)、前記第1レーザ光1及び第2レーザ光2を前記第1部材10及び第2部材20上で移動しつつ(前記レーザ光を前記加工対象上で掃引しつつ、【0032】)、照射された部分の前記第1部材10及び第2部材20を溶融して溶接を行う(【0033】)、
工程を含み、
前記第1レーザ光1及び第2レーザ光2は、第1レーザ光1による照射領域(主パワー領域、【0031】)と、前記第1レーザ光1による照射領域の溶接進行方向Gの側方(掃引方向側方、図1)に少なくともその一部がある第2レーザ光2による照射領域(副パワー領域、【0031】)とによって構成され、前記第1レーザ光1による照射領域の出力密度(主パワー領域のパワー密度、【0029】)は前記第2レーザ光2による照射領域の出力密度より大きく(副パワー領域のパワー密度より大きく、【0029】)、
前記第1レーザ光1による照射領域の出力密度は、少なくともキーホールを発生させうる出力密度であり(【0024】及び【0031】)、
前記第2レーザ光2による照射領域は、前記第1レーザ光1による照射領域の前記溶接進行方向Gの側方の一部であって前記第1レーザ光1による照射領域に対して前記溶接進行方向Gと垂直な方向にずれた部位を含む第2レーザ光2のみを有する(図1)、溶接方法。」
(2)甲2発明について
甲2に記載された事項を整理すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内に、本件発明2で相当する構成や、甲2の根拠箇所を示す。)
「第1レーザービーム、第2及び第3レーザービーム(レーザ光、【0051】~【0052】及び【0056】)を上側亜鉛めっき鋼板1及び下側亜鉛めっき鋼板2(加工対象、【0030】及び【0068】)に向かって照射しながら前記第1レーザービーム、前記第2及び第3レーザービームと前記上側亜鉛めっき鋼板1及び下側亜鉛めっき鋼板2とを相対的に移動させ、前記第1レーザービーム、前記第2及び第3レーザービームを前記上側亜鉛めっき鋼板1及び下側亜鉛めっき鋼板2上で掃引しつつ、照射された部分の前記上側亜鉛めっき鋼板1及び下側亜鉛めっき鋼板2を溶融して溶接を行う(【0030】及び【0067】)、
工程を含み、
前記第1レーザービーム、前記第2及び第3レーザービームは第1ビームスポット39a(主パワー領域、【0067】及び図3)と、前記第1ビームスポット39aの溶接方向51の側方(主パワー領域の掃引方向側方、図3)に少なくともその一部がある第2ビームスポット40a及び第3ビームスポット41b(副パワー領域、図3)とによって構成され、前記第2ビームスポット40a及び前記第3ビームスポット41bのレーザーエネルギ密度E2/前記第1ビームスポット39aのレーザーエネルギ密度E1の数値が1.0以下であり(主パワー領域のパワー密度は副パワー領域のパワー密度以上であり、表2のE2/E1の列の数値)、
前記第1ビームスポット39aのレーザーエネルギ密度E1は、少なくともキーホールを発生させうるレーザーエネルギ密度であり(【0058】)、
前記前記第2ビームスポット40a及び前記第3ビームスポット41bは、前記第1ビームスポット39aの溶接方向51の側方に少なくともその一部がある、溶接方法。」
(3)甲3発明について
甲3に記載された事項を整理すると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内に、本件発明3で相当する構成や、甲3の根拠箇所を示す。)
「レーザ光1(レーザ光、【0023】)を被溶接材6(加工対象、【0023】)に向かって照射しながら前記レーザ光1と前記被溶接材6とを相対的に移動させ、前記レーザ光1を前記被溶接材6上で掃引しつつ、照射された部分の前記被溶接材6を溶融して溶接を行う(【0016】~【0018】)、
工程を含み、
前記レーザ光1はメインスポット41(主パワー領域、【0023】、【0034】及び図5D)と、前記メインスポット41の移動方向7の側方(掃引方向側方、【0034】)に少なくともその一部がある先行スポット42(副パワー領域、【0023】、【0033】~【0034】及び図5D)とによって構成され、前記メインスポット41のエネルギ強度(パワー密度、【0017】~【0018】)は前記先行スポット42のエネルギ強度以上(【0017】~【0018】及び図2)であり、
前記主メインスポット41のエネルギ強度は、少なくともキーホールを発生させうるエネルギ強度であり(図3~4には、メインスポット41によって深い溶融池51が生じる旨の図示があるため、キーホールを発生させうるパワー密度であると認められる。【0023】)、
前記先行スポット42は、前記メインスポット41の周囲を囲む略リング形状である円弧形状(図5D)を持つ、溶接方法。」
(4)甲4発明について
甲4に記載された事項を整理すると、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内に、本件発明3で相当する構成や、甲4の根拠箇所を示す。)
「レーザ光200a~200i(レーザ光、【0016】)を溶接部10c(加工対象、【0011】)に向かって照射しながら前記レーザ光200a~200iと前記溶接部10cとを相対的に移動させ、前記レーザ光200a~200iを前記溶接部10c上で掃引しつつ、照射された部分の前記溶接部10cを溶融して溶接を行う(【0027】及び図9)、
工程を含み、
前記レーザ光200a~200iはレーザ光200aが照射される領域(主パワー領域、図9)と、前記レーザ光200aの掃引方向側方に少なくともその一部があるレーザ光200b~200iが照射される領域(副パワー領域、図9)とによって構成され、前記レーザ光200aが照射される領域のパワー密度は前記レーザ光200b~200iが照射される領域のパワー密度以上(【0027】及び図9から、レーザ光200b~200iの出力は、レーザ光200aの出力の2倍であるのに対して、レーザ光200b~200iの照射面積は、レーザ光200aの照射面積の8倍といえるから、レーザ光200aが照射される領域のパワー密度はレーザ光200b~200iが照射される領域のパワー密度以上であると認められる。)であり、
前記レーザ光200aが照射される領域のパワー密度は、少なくともキーホールを発生させうるパワー密度であり(【0012】)、
前記レーザ光200b~200iが照射される領域は、前記レーザ光200aが照射される領域の周囲を囲む略リング形状である円弧形状(図9)を持つ、溶接方法。」
(5)甲9の記載事項及び甲9記載の技術的事項について
ア 甲9の記載事項
甲9には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、光ファイバからレーザ光を照射するレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。」
「【0005】
そこで、本願出願人は、複数の半導体レーザ素子と複数の光ファイバを連結させて、光ファイバからレーザ光を照射するレーザ加工装置又はレーザ加工方法であって、複数の半導体レーザ素子と光ファイバを介して連結される接続手段と、光ファイバの照射側先端が連結される多芯コネクタと、多芯コネクタに接続される第1の光ファイバと、接続手段と半導体レーザ素子とを接続する第2の光ファイバを備え、前記第1の光ファイバのうちのいくつかを接続してスイッチングすることを特徴とする装置を既に提供している(特願2010-96562号)。この装置によれば、図9に示すよう蛇腹状の薄板重ね部のような金属の接触部の溶接などを行う場合に、直線、円形や、リング(ドーナツ型)等のスポットパターンを作成することができる(図10)。」
「【0014】
・・・
【図10】従来のレーザ加工装置によるスポットパターンの例を説明する図である。
・・・」
「【0022】
したがって、上記構成のレーザ加工装置1は、前記駆動機構である着脱部材7により複数の光ファイバ3の位置を移動させながら、或いは移動させた後停止させると、複数の光ファイバ3からの光はコリメータレンズ5により平行光にされてコンデンサレンズ6に送られ、コンデンサレンズ6で集光Mされる。そして、加工部品Bの加工箇所(溶接箇所)に点在させたり、重なり合いを維持したり、ときに一点に集中させたりする。本実施の形態の6個の光強度分布は、同じであるが、異なる光強度分布とすることもできる。すなわち、図10(a)(b)に示すような点在状態の直線状や円形状は勿論、次のような連続した直線や連続した円弧状や連続したリング状にスポットパターンを形成でき、ワーク形状や加工法に応じて最適なスポット形状、サイズ或いは強度分布を多様な内容で変化させることができる」
図10
「
[図:0001432049000001.jpg]
」
イ 甲9記載の技術的事項
上記アの記載事項から、甲9には、次の技術的事項(以下「甲9記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。
「光ファイバからレーザ光を照射するレーザ加工装置において、3個の点在状態の直線状のスポットパターンや、6個の点在状態の円形状のスポットパターンを形成できること。」
(6)甲10の記載事項及び甲10記載の技術的事項について
ア 甲10の記載事項
甲10には、以下の事項が記載されている。
「【0113】
図1は、2つのレーザービームを使用した、本発明に係るレーザー切断加工の1つの実施形態についての概略的な横断面図を示している。ワークピース1は、ワークピース1から材料の一部を溶融して蒸発させることによってキーホール3を形成する、いわゆる溶融ビームである高強度レーザービーム2に晒されている。図1における矢印によって示されるような切断方向に溶融ビーム2が前進することは、切断方向に広がる切断前線4を形成する。溶融ビーム2によって発生された溶融物5は、溶融ビーム2の周囲を流れる。
【0114】
溶融物の表面7に衝突する、いわゆる溶融物排出ビームである第2のレーザービーム6は、表面7から薄層内において溶融物5をさらに加熱し、材料の一部を蒸発させる。いわゆるクヌーセン層8である溶融物の表面7上の薄層において、表面7を離れる気相分子の反跳力は、表面7内へと垂直に向けられた十分な蒸発圧を発生させる。蒸発圧は、溶融物5を囲む気相における他の分子との衝突に起因して、クヌーセン層の厚みに一致する表面7からのいくつかの平均自由行程長内で衰える。溶融物の表面7上に作用する蒸発圧は、溶融物排出ビーム6が溶融物5と相互に作用する選択された表面領域から、溶融物5を離れさせる。したがって、溶融物5は、下向き方向に流され、最終的にはワークピース1から離れ、これにより、ワークピース1から材料を除去し、切断前線4及び側壁10を有する切り口9を形成する。」
図1
「
[図:0001432049000002.jpg]
」
「【0130】
図7において示される構成において、溶融物排出ビーム6は、U字状の横断面64を有するビームである。そのようなU字状横断面64は、回折光学素子(DOE)を用いて形成され得る。これは、複雑な横断面ビームプロファイルを有する溶融物排出ビーム6が、簡便なレーザー源を使用した簡便な光学セットアップを用いて設けることができ、精巧な多重ビームの調整の必要性を低減し、加工の安定性を増加させるという効果を有する。」
図7
「
[図:0001432049000003.jpg]
」
「【0134】
図10は、本発明のさらなる有利な実施形態を示しており、切り口9の側壁10に沿って案内される溶融物制御ビーム65a、65bは、上述したいずれかの実施形態に係る溶融物排出ビーム6によって形成された溶融物の流動障壁に組み合わされる。溶融物制御ビーム65a、65bは、例えばDOEによって形成されるような凹状の溶融物排出ビームを補完してもよい。溶融物制御ビーム65a、65bは、切り口の壁に沿った溶融物の流動を最小化し、矢印によって示されるように、内側に向けられた溶融物の流動を形成するように適応されている。あるいは、側壁10に添って案内される溶融物制御ビーム65a、65b、障壁形成溶融物排出ビーム6、及び、任意には溶融ビーム2もまた、単一のDOEを使用して設けられている。」
「【0147】
図19において示された実施形態は、ビーム調整及び集束用の2つの光学ユニット22、23を有し、光ファイバ26を介した光学ユニット22、23のそれぞれには、3つの分割したレーザービームが供給される。ビーム調整光学系22、23を用いて、レーザービームは、切断又は溶接等の加工用途に応じたエネルギ分布に組み合わされ、ワークピース1上に集束される。光学ユニット22は、ワークピース材料を溶融してキーホールを形成するように適応されたいわゆる溶融ビームである少なくとも1つの第1のレーザービームを形成しており、他方の光学ユニット23は、溶融物の選択された表面領域を加熱するように適応された、例えば切断用途におけるいわゆる溶融物排出ビームである少なくとも1つの第2のレーザービームを形成しており、これにより、材料は、材料の表面から蒸発され、溶融物を加工領域から押し出すための蒸発圧を発生させる。」
「【0159】
ここで、図23から図25を参照する。本発明に係る好ましい実施形態において、全てのレーザービーム33aは、単一の光学ユニット21を介して設けられている。単一の光学ユニット21は、実質的に全ての要求されたビーム調整及び集束機能を組み込むとともに、加工領域上に与えられるべき所望のエネルギ分布の構築を扱う。実際には、単一の光学ユニット21は、本発明に係るレーザー加工システムに着脱可能に固定され得るレーザー加工ヘッドとして作用する。レーザー加工ヘッドは、加工制御のための調整可能な特徴を備えてもよく、及び/又は、薄板切断、厚板における切断、大きい断面の溶接、突き合わせ溶接、異なる材料の溶接等の所定のタイプの加工のために設計されてもよい。
【0160】
以下において、多数の光学ユニットがレーザー切断タイプの加工ヘッドとして記載される。示される実施形態はまた、溶接用途に使用されてもよいことに留意されたい。」
イ 甲10記載の技術的事項
上記アの記載事項から、甲10には、次の技術的事項(以下「甲10記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。(括弧内は、甲10の根拠箇所を示す。)
「高強度レーザービーム2でワークピース1を溶融及び蒸発させてキーホール3を形成し(【0113】)、溶融物排出ビーム6で溶融物5をさらに加熱して、下向き方向に流してワークピース1から除去して切り口9を形成する(【0114】及び図1)レーザー切断加工(【0113】)において、
溶融物排出ビーム6をU字状の横断面64を有するビームとし(【0130】及び図7)、
光学ユニットを溶接用途に使用できる(【0160】)こと。」
3 本件発明1の新規性について
本件取消理由で引用した文献は甲1である。
(1)本件発明1と甲1発明の対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、以下の一致点で一致し、以下の相違点1で相違する。
[一致点]
「レーザ光を加工対象に向かって照射しながら前記レーザ光と前記加工対象とを相対的に移動させ、前記レーザ光を前記加工対象上で掃引しつつ、照射された部分の前記加工対象を溶融して溶接を行う、
工程を含み、
前記レーザ光は主パワー領域と、前記主パワー領域の掃引方向側方に少なくともその一部がある副パワー領域とによって構成され、前記主パワー領域のパワー密度は前記副パワー領域のパワー密度より大きく、
前記主パワー領域のパワー密度は、少なくともキーホールを発生させうるパワー密度である、溶接方法。」
である点。
[相違点1]
本件発明1は、構成A1(上記第2の2(4)ア(ア))を備えるのに対して、甲1発明は、副パワー領域は、掃引方向側方の一部であって主パワー領域に対して掃引方向と垂直な方向にずれた部位を含むビームのみを有するという構成を備える点。
(2)新規性の判断
上記(1)のとおり、本件発明1と甲1発明を対比すると、相違点1が存在するから、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。
4 本件発明2の新規性について
本件取消理由で引用した文献は甲2である。
(1)本件発明2と甲2発明の対比
本件発明2と甲2発明を対比すると、以下の一致点で一致し、以下の相違点2で相違する。
[一致点]
「レーザ光を加工対象に向かって照射しながら前記レーザ光と前記加工対象とを相対的に移動させ、前記レーザ光を前記加工対象上で掃引しつつ、照射された部分の前記加工対象を溶融して溶接を行う、
工程を含み、
前記レーザ光は主パワー領域と、前記主パワー領域の掃引方向側方に少なくともその一部がある副パワー領域とによって構成され、前記主パワー領域のパワー密度は前記副パワー領域のパワー密度以上であり、
前記主パワー領域のパワー密度は、少なくともキーホールを発生させうるパワー密度である、溶接方法。」
である点。
[相違点2]
本件発明2は、構成A2(上記第2の2(4)イ(ア))を備えるのに対して、甲2発明は、副パワー領域は、主パワー領域の掃引方向側方に少なくともその一部があるという構成を備える点。
(2)新規性の判断
上記(1)のとおり、本件発明2と甲2発明を対比すると、相違点2が存在するから、本件発明2は、甲2発明であるとはいえない。
5 本件発明3の新規性について
本件取消理由で引用した文献は甲3又は甲4である。
(1)本件発明3と甲3発明の対比
本件発明3と甲3発明を対比すると、以下の一致点で一致し、以下の相違点3で相違する。
[一致点]
「レーザ光を加工対象に向かって照射しながら前記レーザ光と前記加工対象とを相対的に移動させ、前記レーザ光を前記加工対象上で掃引しつつ、照射された部分の前記加工対象を溶融して溶接を行う、
工程を含み、
前記レーザ光は主パワー領域と、前記主パワー領域の掃引方向側方に少なくともその一部がある副パワー領域とによって構成され、前記主パワー領域のパワー密度は前記副パワー領域のパワー密度以上であり、
前記主パワー領域のパワー密度は、少なくともキーホールを発生させうるパワー密度である、溶接方法。」
である点。
[相違点3]
本件発明3は、構成A3(上記第2の2(4)ウ(ア))を備えるのに対して、甲3発明は、副パワー領域は、主パワー領域の周囲を囲む略リング形状である円弧形状を持つという構成を備える点。
(2)本件発明3と甲4発明の対比
本件発明3と甲4発明を対比すると、上記甲3発明との一致点と同じ点で一致し、上記相違点3と同様の点で相違する。
(3)新規性の判断
上記(1)及び(2)のとおり、本件発明3と甲3発明又は甲4発明を対比すると、相違点3が存在するから、本件発明3は、甲3発明又は甲4発明であるとはいえない。
6 本件発明4の新規性について
本件取消理由で引用した文献は甲1~4である。
本件発明4は、本件発明1と同様に構成A1を備えるところ、本件発明4と甲1発明を対比すると、相違点1と同様の点で相違し、甲2~甲4発明と対比した場合にも少なくとも相違点1と同様の点で相違するから、本件発明4は、甲1発明~甲4発明であるとはいえない。
7 本件発明5~7、9~10及び12~14の新規性について
本件発明5~7、9~10及び12~14は、本件発明1~4のいずれかを含む発明であるから、本件発明1~4と同様に、甲1発明~甲4発明であるとはいえない。
8 本件発明11~13の進歩性について
本件発明11~13は、本件発明1~4のいずれかを含む発明であるから、本件発明11~13の進歩性を検討する前提として、まず、本件発明1~4の進歩性を検討すると、以下に示すとおり、本件発明1~4は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、本件発明11~13は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(1)本件発明1の進歩性について
本件発明1と甲1発明を対比すると相違点1が存在するところ(上記3(1))、相違点1に係る構成A1、すなわち、副パワー領域が、主パワー領域に対して掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビームと、第一方向と反対方向にずれた部位を含むビームのみを有するという構成は、申立人が提出したいずれの証拠にも記載や示唆がない。
特に、甲9記載の技術的事項を検討すると、レーザ加工装置において、「3個の点在状態の直線状のスポットパターン」を形成できることまでは示されているが、3つのスポットパターンのパワー密度の大小が不明であるから、3つのスポットパターンのいずれが、主パワー領域や副パワー領域に相当するのか不明である。また、3つのスポットパターンの掃引方向も不明であるから、相違点1に係る構成A1が示されているとはいえない。
したがって、相違点1に係る構成A1は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえないから、本件発明1は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2の進歩性について
本件発明2と甲2発明を対比すると相違点2が存在するところ(上記4(1))、相違点2に係る構成A2、すなわち、副パワー領域が、主パワー領域に対して掃引方向と垂直な第一方向にずれた部位を含むビーム、第一方向と反対方向にずれた部位を含むビーム、及び、主パワー領域に対して掃引方向後方の部位を含むビームのみを有するという構成は、申立人が提出したいずれの証拠にも記載や示唆がない。
したがって、相違点2に係る構成A2は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえないから、本件発明2は、甲甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明3の進歩性について
ア 本件発明3と甲3発明又は甲4発明を対比すると相違点3が存在するところ(上記5(1)又は(2))、相違点3に係る構成A3、すなわち、副パワー領域が、主パワー領域に対して掃引方向と垂直な第一方向にずれた第一部位を含むビーム、第一方向と反対方向にずれた第二部位を含むビーム、主パワー領域に対して掃引方向後方の第三部位を含むビーム、及び、主パワー領域の周囲を囲むとともに前記第一部位から前記第三部位を経由して前記第二部位に至る略リング形状の一部である円弧形状を成す第四部位を含むビームのみを有するという構成は、申立人が提出したいずれの証拠にも記載や示唆がない。
イ 特に、甲9記載の技術的事項を検討すると、「6個の点在状態の円形状のスポットパターン」を形成できることまでは示されているが、スポットパターンの掃引方向が不明であるから、6個のスポットのうち、いずれが構成A3に係る第一部位~第四部位に相当するのか不明である。
また、掃引方向の前方側のスポットパターンを削除する動機を示す証拠はなく、甲3発明又は甲4発明に甲9記載の技術的事項を適用して、さらに、掃引方向の前方側のスポットパターンを削除するように改変することが、当業者にとって容易に想到できるとはいえない。
ウ さらに、甲10記載の技術的事項を検討すると、甲10記載の技術的事項には、「溶融物排出ビーム6をU字状の横断面64を有するビーム」とすることまでは示されているが、そのようなビームは、構成A3に係る第一部位~第四部位を含むビームに相当するものとはいえない。
エ したがって、相違点3に係る構成A3は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえないから、本件発明3は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明4の進歩性について
本件発明4は、本件発明1と同様に構成A1を備えるところ、本件発明1について検討したとおり、構成A1は、申立人が提出したいずれの証拠にも記載や示唆がない。
したがって、本件発明4は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明11~13の進歩性の小括
以上のとおり、本件発明1~4は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明1~4のいずれかを引用する本件発明11~13は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
9 本件発明15の新規性について
本件取消理由で引用した文献は甲1又は甲4である。
本件発明15は、本件発明1と同様に構成A1を備えるところ、本件発明1の新規性(上記3(1))について検討したとおり、甲1発明は、構成A1を備えるものとはいえない。
また、本件発明4の新規性(上記6)について検討したとおり、甲4発明は、構成A1を備えるものとはいえない。
したがって、本件発明15は、甲1発明又は甲4であるとはいえない。
10 本件発明16の新規性について
本件取消理由で引用した文献は甲2である。
本件発明16は、本件発明2と同様に構成A2を備えるところ、本件発明2の新規性(上記4(1))について検討したとおり、甲2発明は、構成A2を備えるものとはいえない。
したがって、本件発明16は、甲2発明であるとはいえない。
11 本件発明17の新規性及び進歩性について
本件取消理由の新規性で引用した文献は甲2であり、進歩性で引用した文献は、甲1~甲4である。
本件発明17は、本件発明3と同様に構成A3を備えるところ、本件発明3の進歩性(上記8(3))について検討したとおり、構成A3は、申立人が提出したいずれの証拠にも記載や示唆がない。
したがって、本件発明17は、甲2発明であるとはいえないし、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
12 本件発明18~19、21~27及び29の新規性について
本件発明18~19、21~27及び29は、本件発明15~17のいずれかを含む発明であるから、本件発明15~17と同様に、甲1発明~甲2発明又は甲4発明であるとはいえない。
13 本件発明20、28及び30~33の進歩性について
本件発明20、28及び30~33は、本件発明15~17のいずれかを含む発明であるところ、本件発明15~17は、構成A1~構成A3のいずれかを備えている。そして、本件発明1~4の進歩性(上記8(1)~(4))について検討したとおり、構成A1~構成A3は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえないから、本件発明15~17を引用する本件発明20、28及び30~33は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 本件取消理由で採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。
(1)甲1を主引用例とする新規性の理由
本件訂正前の請求項1、5~6、8~10、12~15、18~19、21、24~27、29に係る発明は、甲1に記載された発明である。
(2)甲2を主引用例とする新規性の理由
本件訂正前の請求項2、4~11、14、16~21、24~25、29に係る発明は、甲2に記載された発明である。
(3)甲3を主引用例とする新規性の理由
本件訂正前の請求項3~10、12~14に係る発明は、甲3に記載された発明である。
(4)甲4を主引用例とする新規性の理由
本件訂正前の請求項3~10、12~14に係る発明は、甲4に記載された発明である。
(5)甲1~甲8に基づく進歩性の理由
本件訂正前の請求項1~33に係る発明は、甲1~甲8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 本件取消理由で採用しなかった特許異議申立理由の整理
上記1(1)~(4)の新規性の理由のうち、本件訂正前の請求項1~10、12~19、21~27及び29の理由は、本件取消理由の新規性の取消理由(上記第4の1)と同趣旨のものであり、請求項8及び21~23は削除されたので、以下では、本件発明11及び20の新規性(上記1(2)における、甲2を主引用発明とする、請求項2を引用する本件発明11、20の新規性)について検討する。
また、上記1(5)の進歩性の理由のうち、本件訂正前の請求項11~13、17、20、28及び30~33の理由は、本件取消理由の進歩性の取消理由(上記第4の2)と同趣旨のものであり、請求項8及び21~23は削除されたので、以下では、本件発明1~7、9~10、14~16、18~19、24~27及び29の進歩性について検討する。
3 本件発明11及び20の新規性について
請求項2を引用する本件発明11は、本件発明2が甲2発明であるとはいえない(上記第5の4(2))から、本件発明11が甲2発明であるとはいえない。
同様に、本件発明20は、本件発明16を引用するところ、本件発明16が甲2発明であるとはいえない(上記第5の10)から、本件発明20が甲2発明であるとはいえない。
4 本件発明1~7、9~10、14~16、18~19、24~27及び29の進歩性について
(1)本件発明1~4の進歩性について
本件発明11~13の進歩性を検討する前提として、本件発明1~4の進歩性を検討したとおり(上記第5の8(1)~(4))、本件発明1~4は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明5~7、9~10及び14の進歩性について
本件発明5~7、9~10及び14は、本件発明1~4のいずれかを含む発明であるから、本件発明1~4と同様に、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明15~16の進歩性について
本件発明15は、本件発明1と同様に構成A1を備え、本件発明16は、本件発明2と同様に構成A2を備えるところ、構成A1~構成A2は、申立人が提出したいずれの証拠にも記載や示唆がない。
したがって、本件発明15~16は、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明18~19、24~27及び29の進歩性について
本件発明18~19、24~27及び29は、本件発明15~17のいずれかを含む発明であるから、本件発明15~17と同様に、甲1~甲10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件取消理由、及び、特許異議申立理由、並びに、令和7年8月29日に申立人により提出された意見書における、甲9及び甲10を追加して主張する理由によっては、本件特許の請求項1~7、9~20及び24~33に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~7、9~20及び24~33に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項8及び21~23に係る特許は、上記第2及び第3のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による請求項8及び21~23に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700999