特許異議申立
2023-700234
硬化性樹脂組成物およびドライフィルム
- 審判番号
- 2023-700234
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-108031外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7130095
- 請求日
- 2023年03月01日
- 審決日
- 2024年09月25日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第4項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7130095号発明「硬化性樹脂組成物およびドライフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7130095号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、8について訂正することを認める。
特許第7130095号の請求項1~3、5~8に係る特許を維持する。
特許第7130095号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7130095号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和3年6月29日(優先日 令和2年11月17日)を出願日とする出願(特願2021-108031号)であって、令和4年8月25日に特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年9月2日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和5年3月1日に、特許異議申立人である小黒 佑子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~8)がされた。
その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和5年 6月26日付け 取消理由通知
同年 8月24日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 9月21日付け 訂正請求があった旨の通知(申立人宛て)
同年10月25日 意見書の提出(申立人)
同年11月28日付け 訂正拒絶理由通知(特許権者宛て)
同年12月20日 補正書、意見書の提出(特許権者)
令和6年 3月 4日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 5月 2日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 5月13日付け 訂正請求があった旨の通知(申立人宛て)
なお、令和6年5月2日に訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、先にした令和5年8月24日の訂正請求は取り下げられたものとみなす。
また、申立人に対し、令和6年5月13日付け通知書により、同年同月2日に訂正請求書の提出があった旨を通知し、意見を述べる機会を与えたが、申立人から意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否
1 請求の趣旨
特許第7130095号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
令和6年5月2日に提出の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は、当審で付した。以下同様。)。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1を、
「(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上であり、
前記硬化性樹脂組成物を用いて形成した縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であることを特徴とする、硬化性樹脂組成物。」から、
「(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)硬化性樹脂が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20~50質量%であり、
前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であり、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上50質量%以下であり、
前記硬化性樹脂組成物を用いて形成した縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であり、かつ、溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内であることを特徴とする、硬化性樹脂組成物。」
に訂正する。
また、請求項1を引用する請求項2~7も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項2を、
「前記完全乾燥塗膜の溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。」から、
「前記完全乾燥塗膜の溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から10秒以内であり、かつ、溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から25秒以内である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。」
に訂正する。
また、請求項2を引用する請求項3~7も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項3を、
「前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、45質量%以下である、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。」から、
「前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上40質量%以下である、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。」
に訂正する。
また、請求項3を引用する請求項4~7も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
訂正前の請求項5を、
「前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が、6000以下である、請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。」から、
「前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が、2000以上6000以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。」
に訂正する。
また、請求項5を引用する請求項6、7も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
訂正前の請求項6を、
「ソルダーレジスト層の形成に用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。」から、
「ソルダーレジスト層の形成に用いられる、請求項1~3、5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。」
に訂正する。
(7)訂正事項7
訂正前の請求項7を、
「層間絶縁層の形成に用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。」から、
「層間絶縁層の形成に用いられる、請求項1~3、5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。」
に訂正する。
(8)訂正事項8
訂正前の請求項8を、
「第一のフィルムと、前記第一のフィルム上に形成された硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備える、ドライフィルムであって、
前記硬化性樹脂組成物が、(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上であり、
前記ドライフィルムから得られた縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であることを特徴とする、ドライフィルム。」から、
「第一のフィルムと、前記第一のフィルム上に形成された硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備える、ドライフィルムであって、
前記硬化性樹脂組成物が、(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有し、前記(A)硬化性樹脂が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20~50質量%であり、前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上50質量%以下であり、
前記ドライフィルムから得られた縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であり、かつ、溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内であることを特徴とする、ドライフィルム。」
に訂正する。
(9)一群の請求項について
訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
よって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正前の請求項1において、「前記(A)硬化性樹脂が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20~50質量%であり、」、「前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であり、」が追加される訂正を行うとともに、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量」の上限を「50質量%以下であ」ること、及び「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する」「溶解完了時間」を「前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内である」ことが追加される訂正を行うものである。
この訂正は、「硬化性樹脂組成物」の構成成分である「(A)硬化性樹脂」及び「(B)フィラー」の「種類」及び「含有量」をそれぞれ限定し、さらに「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量」の上限を加えて数値範囲を狭め、「溶解完了時間」なる発明特定事項を更に付加するものである。
してみると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1の「前記(A)硬化性樹脂が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂」に係る事項は、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)、特許請求の範囲又は図面(以下、本件明細書と特許請求の範囲又は図面とを合わせて「本件明細書等」という。)において、「【請求項5】 前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が、6000以下である」との記載、「カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、好ましくは6,000以下であり、」との記載(【0052】)、「カルボキシル基含有樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物中において、固形分換算で、好ましくは20~80質量%、・・・、さらに好ましくは20~50質量%である」との記載(【0053】)から、訂正事項1の「前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含」むに係る事項は、「フィラーとしては、・・・、分散性の観点より、シリカ、硫酸バリウムが好ましい」との記載(【0059】)から、訂正事項1の「前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であ」るに係る事項は、「フィラーの含有量は、硬化性樹脂組成物中において、好ましくは45質量%以下であり、・・・、より好ましくは10質量%以下であり」との記載(【0063】)から、訂正事項1の「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量」の上限が「50質量%以下」に係る事項は、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量は、前記硬化性樹脂組成物中において、・・・、好ましくは50質量%以下であり」との記載(【0066】)から、訂正事項1の「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する」「溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内である」に係る事項は、「【請求項2】 前記プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間において、溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内である」との記載、「完全乾燥塗膜の溶解完了時間が、洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内であることが好ましく」との記載(【0021】)から、それぞれ導き出される事項であるから、本件明細書等のすべてを総合することにより導き出される技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、上記訂正事項1に係る訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。
(2)訂正事項2について
訂正前の請求項2において、「前記完全乾燥塗膜の溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内である」ことから、訂正後の請求項2において、「前記完全乾燥塗膜の溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から10秒以内であり、かつ、溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から25秒以内である」ことに訂正するものである。
この訂正は、「完全乾燥塗膜」の「溶解開始時間」なる発明特定事項を更に付加した上で、「溶解完了時間」の上限を下げて数値範囲を狭めるものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2の「溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から10秒以内であ」るに係る事項及び「溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から25秒以内である」に係る事項は、本件明細書等に、「溶解開始時間が、洗浄溶剤への浸漬開始から・・・、10秒以内出ることがより好ましく、・・・溶解完了時間が、洗浄溶剤への浸漬開始から・・・25秒以内であることが最も好ましい」との記載(【0021】)から、それぞれ導き出される事項であるから、本件明細書等のすべてを総合することにより導き出される技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、上記訂正事項2に係る訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。
(3)訂正事項3について
訂正前の請求項3において、「前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、45質量%以下である」ことから、訂正後の請求項3において、「前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上40質量%以下である」ことに訂正するものである。
この訂正は、「(B)フィラーの含有量」の含有量に下限を設け、更に上限を下げて数値範囲を狭めるものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3の「(B)フィラーの含有量」に係る事項は、「フィラーの含有量は、硬化性樹脂組成物中において、・・・、より好ましくは40質量%であり、・・・、さらに好ましくは20質量%以上である」との記載(【0063】)から導き出される事項であるから、本件明細書等のすべてを総合することにより導き出される技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、上記訂正事項3に係る訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5について
訂正前の請求項5において、「前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が、6000以下である」ことから、訂正後の請求項5において、「前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が、2000以上6000以下である」ことに訂正するとともに、訂正事項4における請求項4の削除に伴って、引用する請求項の番号を訂正するものである。
この訂正により、「カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量」の下限を加えて数値範囲を狭めるとともに、引用する請求項を減らすものであるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項5の「カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量」の下限に係る事項は、「カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、・・・また、好ましくは2,000以上である。・・・また、重量平均分子量が2,000以上のカルボキシル基含有樹脂を用いることにより、解像性やタックフリー性能を向上させることができる」との記載(【0052】)から導き出される事項であるから、本件明細書等のすべてを総合することにより導き出される技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、上記訂正事項5に係る訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。
(6)訂正事項6、7について
訂正前の請求項6、7において、当該請求項が引用する請求項に関して、「請求項1~5のいずれか一項」であることから、訂正後の請求項6、7において、「請求項1~3、5のいずれか一項」であることに訂正するものである。
この訂正により、引用する請求項を減らすものであるから、訂正事項6、7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項6,7は、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7)訂正事項8について
訂正前の請求項8において、「前記(A)硬化性樹脂が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20~50質量%であり、前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であり、」が追加される訂正を行うとともに、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量」の上限を「50質量%以下」であること、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する」「溶解完了時間」を「前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内である」ことが追加される訂正を行うものである。
この訂正は、上記(1)で示したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等から、それぞれ導き出される事項であるから、本件明細書等のすべてを総合することにより導き出される技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、上記訂正事項8に係る訂正が、上述のとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。
4 独立特許要件
訂正前の全ての請求項1~8について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
5 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。
第3 訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正請求により訂正された請求項1~8に係る発明(以下、順に「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)硬化性樹脂が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20~50質量%であり、
前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であり、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上50質量%以下であり、
前記硬化性樹脂組成物を用いて形成した縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であり、かつ、溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内であることを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記完全乾燥塗膜の溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から10秒以内であり、かつ、溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から25秒以内である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上40質量%以下である、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が、2000以上6000以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
ソルダーレジスト層の形成に用いられる、請求項1~3、5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
層間絶縁層の形成に用いられる、請求項1~3、5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
第一のフィルムと、前記第一のフィルム上に形成された硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備える、ドライフィルムであって、
前記硬化性樹脂組成物が、(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有し、前記(A)硬化性樹脂が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20~50質量%であり、前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上50質量%以下であり、
前記ドライフィルムから得られた縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であり、かつ、溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内であることを特徴とする、ドライフィルム。」
第4 特許異議申立書の申立理由と当審が通知した取消理由
1 特許異議申立書(以下「申立書」ということがある。)の申立理由
(1)申立理由1-1(甲第1号証に基づく新規性欠如)
本件の請求項1~5、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~5、7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2(甲第2号証に基づく新規性欠如)
本件の請求項1~5、7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~5、7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由1-3(甲第3号証に基づく新規性欠如)
本件の請求項1~8に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由2-1(甲第1号証に基づく進歩性欠如)
本件の請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由2-2(甲第2号証に基づく進歩性欠如)
本件の請求項1~7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)申立理由2-3(甲第3号証に基づく進歩性欠如)
本件の請求項1~8に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(7)申立理由3(実施可能要件違反)
本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由の概要は以下のとおり。
ア 本件特許の請求項1、8では、物の発明の発明特定事項として、完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤に対する溶解開始時間による発明特定事項を有するが、物の形状、構造、組成等の具体的な手段ではなく、その物が有する作用、機能、性質又は特性によるものであり、発明の詳細な説明に、物の形状、構造、組成等の具体的な手段が記載されなければならない。
しかしながら、参考資料1(国際公開第2018/123695号の審査過程で、特許権者が提出した意見書と同時に提出した実験成績証明書)の実施例2と本件特許の実施例6とは類似組成であるにもかかわらず、洗浄除去性に違いがあり、熱硬化反応に寄与する成分の有無が影響していると推察したとしても、感光性樹脂を塗膜形成の主成分とする硬化性樹脂組成物は多数存在するものであり、従来技術に比べて、何ら新しい発明ではない。
イ 一方、完全乾燥塗膜における洗浄除去性が熱硬化反応に寄与する成分の有無で決まらないとすれば、上記溶解開始時間による発明特定事項に対応する技術的手段を具現すべき材料等が不明瞭であり、その具現すべき材料等について出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないことになる。
ウ 本件特許の実施例では、カルボキシ基含有感光性樹脂として、アルキレンオキサイド変性したものと、していないものとを用いているが、カルボキシル基含有樹脂の溶剤への溶解性は樹脂骨格によって異なることが技術常識であり、どのような樹脂骨格であれば、アルキレンオキサイドの有無により洗浄溶解性に差異が出て、本願特許発明の効果を奏するのか不明確であるし、どのようなアルキレンオキサイド変性した樹脂骨格を用いれば良いのか、当業者は理解することができない。
(8)申立理由4(明確性要件違反)
本件の特許請求の範囲の請求項1~8の記載は、同項に記載された特許を受けようとする発明が、明確とはいえないため、特許法第36条第6項第2号に適合するものでないから、本件の請求項1~8に係る発明の特許は、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
具体的理由の概要は以下のとおり。
上記(7)と同様の理由により、出願時の技術常識を考慮すると、機能、特性等によって記載された発明特定事項が技術的に十分に特定されていないことが明らかであり、明細書及び図面の記載を考慮しても、当業者が請求項の記載から発明を明確に把握できない。
2 証拠方法
申立人が、申立書に添付した証拠は、以下のとおりである。
・甲第1号証:特開2019-53266号公報
・甲第2号証:特開2019-117259号公報
・甲第3号証:国際公開第2018/051941号
・参考資料1:国際公開第2018/123695号
・参考資料2:日産化学工業社のオルガノシリカゾル(標準グレード)資料
・参考資料3:日本化薬社のKAYARADシリーズ資料(一部抜粋)
・参考資料4:特開2007-334290号公報
・参考資料5:特開2013-50712号公報
・参考資料6:特開2016-186550号公報
(以下、甲第1号証~甲第3号証をそれぞれ「甲1」~「甲3」、参考資料1~参考資料6をそれぞれ「参1」~「参6」という。)
3 当審が通知した令和6年3月4日付け取消理由通知(決定の予告)
当審で通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は以下のとおりである。
(1)取消理由1(実施可能要件違反)
本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由の概要は以下のとおり。
「硬化性樹脂組成物」からなる「完全乾燥塗膜」が、洗浄溶剤である「PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)」に対する溶解開始時間が浸漬開始から特定時間以内であり、かつ、溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から特定時間以内であることは、「溶解除去性」の優劣を判断するための目安であるところ、この目安に「(B)フィラー」、「(C)有機溶剤」中のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが寄与することが理解できる一方で、「(A)硬化性樹脂」が如何なるものであればよいのか、本件明細書には具体的に記載されていない。
(2)取消理由2(新規性、進歩性欠如)
ア 参4に基づく新規性欠如
本件特許の請求項1~3、6~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった参4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
イ 参4に基づく進歩性欠如
本件特許の請求項1~3、6~8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった参4に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第5 当審の判断
以下に述べるように、当審が通知した取消理由通知(決定の予告)の取消理由、及び、特許異議申立書の申立理由によっては、本件発明1~8に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由3(実施可能要件違反)ア~ウ及び取消理由1(実施可能要件違反)
(1)特許法第36条第4項第1号の判断手法について
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。
この判断手法に則り、以下判断する。
(2)本件発明1について
ア 申立理由3ア、イ及び取消理由1について
申立理由3ア、イと取消理由1とは、同旨であるので、併せて検討する。
本件発明1は、上記第3に示したとおりのものである。
すなわち、本件発明1は、「硬化性樹脂組成物」に係る発明であり、該「硬化性樹脂組成物」が、「(A)硬化性樹脂」、「(B)フィラー」、および「(C)有機溶剤」を含有すること、前記「(A)硬化性樹脂」が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、その含有量が、前記「硬化性樹脂組成物」中において、20~50質量%であること、前記「(B)フィラー」が、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、その含有量が、前記「硬化性樹脂組成物」中において、10質量%以上45質量%以下であること、「プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート」の含有量が、前記「硬化性樹脂組成物」中において、20質量%以上50質量%以下であること、「前記硬化性樹脂組成物を用いて形成した縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であり、かつ、溶解完了時間が、前記洗浄剤への浸漬開始から40秒以内である」こと(以下、「本件物性」という。)を特定するものである。
以下、これらの特定事項について検討する。
(ア)「(A)硬化性樹脂」が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20~50質量%であることについて
本件発明1の「(A)硬化性樹脂」について、本件明細書には以下の事項が記載されている。
段落【0024】には、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、光硬化性熱硬化性樹脂が挙げられること、同【0034】には、熱硬化性成分として、組成物にアルカリ現像性を付与できる点において、アルカリ可溶性基を有するアルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましく、中でも下地との密着性が向上するため、カルボキシル基含有樹脂またはフェノール樹脂であることが好ましく、特に現像性に優れるため、カルボキシル基含有樹脂であることがより好ましいこと、同【0035】~【0048】には、カルボキシル基含有樹脂として分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種樹脂が使用できることとし、(1)~(12)に示されるような、種々の具体的なカルボキシル基含有樹脂があげられること、同【0052】には、カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が6000以下であること、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を用いることにより、完全乾燥塗膜の溶解溶剤への溶解性を向上させ、洗浄除去性を改善できること、同【0053】には、カルボキシル基含有樹脂の含有量が、硬化性樹脂組成物中において、固形分換算で、2~50質量%であることが好ましく、20質量%以上とすることで硬化塗膜の強度を向上させることができ、80質量%以下とすることで硬化性樹脂組成物の粘性が適当となり加工性が向上することが記載されている。
これらの記載によると、「(A)硬化性樹脂」が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含むことで、完全乾燥塗膜の溶解溶剤への溶解性を向上させて洗浄除去性を改善し、特定の含有量とすることで、硬化性樹脂としての性能に優れることが理解できる。
(イ)「(B)フィラー」が、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、「(B)フィラー」の含有量が、硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であることについて
「(B)フィラー」について、本件明細書の段落【0059】には、フィラーとしては公知のものをいずれも用いることができること、フィラーとしては、分散性の観点より、シリカ、硫酸バリウムが好ましいこと、同【0064】には、フィラーの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下であり、また、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であること、フィラーの含有量が上記範囲内であることで、硬化物を高強度にしながら、完全乾燥塗膜の洗浄除去性を改善できることが記載されている。
これらの記載によると、「(B)フィラー」として、シリカ又は硫酸バリウムが好ましく、「(B)フィラー」の含有量を上記範囲内にすることで、完全乾燥塗膜の洗浄除去性を改善できることが理解できる。
(ウ)本件発明1の「(C)有機溶剤」であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上50質量%以下であることについて
「(C)有機溶剤」について、本件明細書の段落【0064】には、組成物の調製や、基板やフィルムに塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有できること、有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類など、公知慣用の有機溶剤が使用でき、この中でも、本発明における硬化性樹脂組成物が非晶質シリカのような多孔質のものを使用した場合、硬化や乾燥の際にシリカ表面に吸油しやすい結果、形成された硬化塗膜の光沢度がより低くなる点で、エステル類が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましいこと、同【0066】には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量は、前記硬化性樹脂組成物中において、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であること、硬化性樹脂組成物中のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量とは、(C)有機溶剤として配合したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの量だけでなく、他の成分(上記の(A)硬化性樹脂および(B)フィラー等)の調製に用いた液体成分中のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの量も含めた値であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が上記範囲内であることで、完全乾燥塗膜の洗浄除去性を改善することができることが記載されている。
これらの記載によると、「(C)有機溶剤」としては、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」の含有量を上記範囲内とすることで、完全乾燥塗膜の洗浄除去性を改善できることが理解できる。
(エ)本件発明1の本件物性について
本件明細書の段落【0020】~【0023】には、「洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有率に対する」「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」について記載されている。具体的には、段落【0021】には、「[物性]」として、「本発明の硬化性樹脂組成物は、縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であり、15秒以内であることが好ましく、10秒以内であることがより好ましく、9秒以内であることがさらに好ましく、8秒以内であることが特に好ましいこと、完全乾燥塗膜の溶解完了時間が、洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましく、28秒以内であることがさらに好ましく、26秒以内であることが特に好ましく、25秒以内であることが最も好ましい。」こと、同【0022】には、「本発明における完全乾燥塗膜の形成について、完全乾燥塗膜中の含有溶剤が十分に揮発していることが重要である。」こと、同【0020】には、本件物性を満たすことで、ソルダーレジストインキの製造過程で用いる配合桶や器具に付着して乾燥した場合でも洗浄除去性に優れるものとなること、乾燥した組成物(完全乾燥塗膜)の洗浄除去性(洗浄溶剤への溶解性)は、主に洗浄溶剤に対する溶解開始時間に反映されるためであると推測されることが記載されている。
これらの記載によると、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」からなる完全乾燥塗膜が、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートによって溶解を開始する時間(溶解開始時間)が浸漬開始から20秒以内であり、かつ、溶解完了時間が、洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内であれば、つまり本件物性を満たせば、ソルダーレジストインキの製造過程で用いる配合桶や器具の洗浄除去性に優れることが読み取れる。
そして、上記(ア)~(ウ)より、「(A)硬化性樹脂」であるカルボキシル基含有樹脂、「(B)フィラー」、「(C)有機溶剤」中のプロピレングルコールモノメチルエーテルアセテートが、完全乾燥塗膜の洗浄除去性に関する本件物性に寄与することが理解できる程度に、本件明細書には具体的に記載されている。
(オ)本件明細書の実施例の記載(具体的記載)について
本件明細書の段落【0096】~【0112】には、実施例が記載されており、同【0105】の【表1】、同【0111】の【表2】には、実施例1~7及び比較例1~3のデータが示されている。
具体的には、以下のとおりである。
a 実施例1~7には、「(A)硬化性樹脂」として、段落【0097】、【0098】に記載された「硬化性樹脂溶液A-1(カルボキシル基含有樹脂;重量平均分子量約2,500)」を使用したもの(実施例1、3~5)、「硬化性樹脂溶液A-2(カルボキシル基非含有樹脂)」を使用したもの(実施例2)、又は「硬化性樹脂溶液A-1(カルボキシル基含有樹脂)」と同【0106】に記載された「エポキシ樹脂(DIC株式会社製、HP-7200L)のカルビトールアセテートカット品」を使用したもの(実施例6、7(実施例7はドライフィルムの形態))、「(B)フィラー(スラリー)」として、同【0101】、【0102】に記載された「表面処理無しシリカスラリー」を使用したもの(実施例1、2、4~7)、「表面処理有りシリカスラリー」を使用したもの(実施例3)、「(C)有機溶剤」として、「PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)」を使用したものが記載され、該「PMA」は、上記「硬化性樹脂溶液A-1」、「硬化性樹脂溶液A-2」、「(B)フィラー(スラリー)」における「有機溶剤」としても使用されている。
さらに、実施例1、3~7では、硬化性樹脂組成物の全量が243.15(実施例4)~353.15質量部(実施例6)であること、「硬化性樹脂組成物」中のカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が約2500、その含有量が約15.3(実施例6)~約22.2質量%(実施例4)、「PMA」の含有量が29~33質量%であること、「硬化性樹脂組成物」中のフィラー(固形分)の含有量が23~34質量%であることが示されており、これら実施例1、3~7(実施例7は、ドライフィルムの形態を経る)において、浸漬開始からの「溶解開始時間」、「溶解完了時間」、「洗浄除去性」を評価し、いずれも好適な試験結果となっている。
b 比較例1~3には、「(A)硬化性樹脂」として、段落【0099】に記載された「硬化性樹脂溶液A-3(カルボキシル基含有樹脂);重量平均分子量約8,000」を使用したもの(比較例1)、同【0100】に記載された「硬化性樹脂溶液A-4(カルボキシル基含有樹脂;重量平均分子量約18,000)」を使用したもの(比較例2)、「(B)フィラー(スラリー)」として、同【0103】に記載された「硫酸バリウムスラリー」を使用したもの(比較例1)、「表面処理無しシリカスラリー」を使用したもの(比較例2、3)、「(C)有機溶剤」として、「PMA」を使用したものが記載され、該「PMA」は、上記「硬化性樹脂溶液A-1」、「硬化性樹脂溶液A-2」、「(B)フィラー(スラリー)」における有機溶剤としても使用されている。なお、比較例3では、「表面処理無しシリカスラリー」が1500質量部使用されている。
さらに、比較例1~3では、「硬化性樹脂組成物」の全量が313.15~1663.15質量部であること、比較例1、2では、「硬化性樹脂組成物」中の「PMA」の含有量が、それぞれ1質量%、13質量%であること、比較例3では、「硬化性樹脂組成物」中の「フィラー」(固形分)の含有量が63質量%であることが示されている。
そして、比較例1~3における浸漬開始からの「溶解開始時間」、「溶解完了時間」、「洗浄除去性」を評価し、いずれも好ましくない試験結果となっている。
c 上記aによると、実施例1、3~7から、「硬化性樹脂組成物」中のカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が本件発明1で特定する上限(6000)以下であり、かつ、その含有量が約15.3~約22.2質量%であって、「PMA」の含有量が本件発明1で特定する数値範囲(10~45質量%)であり、かつ、「硬化性樹脂組成物」中のフィラー(固形分)の含有量が本件発明1で特定する数値範囲(20~50質量%)であると、浸漬開始からの「溶解開始時間」、「溶解完了時間」、「洗浄除去性」が好ましいことが理解できる。
上記bによると、比較例1、2は、「(A)硬化性樹脂組成物」としてカルボキシル基含有樹脂を用いるものの、重量平均分子量が本件発明1で特定する上限(6000)を超え、かつ、硬化性樹脂組成物中のPMAの含有量が本件発明1で特定する下限(20質量%)を下回るものであり、比較例3は、「(B)フィラー」が、硬化性樹脂組成物中のフィラー(固形分)の含有量が本件発明1で特定する上限(45質量%)を超えると、浸漬開始からの「溶解開始時間」、「溶解完了時間」、「洗浄除去性」が好ましくないことが理解できる。
上述のことから、本件明細書に記載された事項に基づくと、「(A)硬化性樹脂」であるカルボキシル基含有樹脂、「(B)フィラー」、及び「(C)有機溶剤」であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの各々が本件発明1に係る発明特定事項、すなわち、「(A)硬化性樹脂」が重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、「(B)フィラー」がシリカ又は硫酸バリウムであり、「(C)有機溶剤」がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む硬化性樹脂組成物であって、上記カルボキシル基含有樹脂、上記(B)フィラー、及び上記プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの各々が、硬化性樹脂組成物中において特定の含有量であること(以下、「本件物性の要件」という。)が、「本件物性」を満たすための指針となることを把握できる。
その上で、上記指針にそって、「本件物性の要件」に基づいて適宜実験を行うことで、「本件物性」を満たすようにすることは、通常の試行錯誤の範囲内であって、過度の試行錯誤とまではいえない。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1に係る硬化性樹脂組成物を製造できるように明確かつ十分に記載したものであり、発明の詳細な説明は、本件発明1に係る硬化性樹脂組成物を当業者が製造できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
イ 申立理由3ウについて
申立理由3ウは、カルボキシル基含有樹脂の溶剤への溶解性は樹脂骨格によって異なることが技術常識であるところ、どのような樹脂骨格であれば、アルキレンオキサイド変性の有無により洗浄溶解性に差が出て、本件発明の効果を奏するのか不明であり、どのようなアルキレンオキサイド変性した樹脂骨格を用いれば良いのか、当業者は理解することができないというものである。
ここで、本件発明1は、上記アに示したように、「本件物性の要件」を指針として、通常の試行錯誤の範囲内で、「本件物性」を満たす硬化性樹脂組成物を製造できることが、本件明細書には記載されている。
そして、本件明細書には、カルボキシル基含有樹脂として、段落【0036】~【0048】に記載されたものが挙げられると同時に、同【0052】では、重量平均分子量が6000以下であるカルボキシル基含有樹脂とすることで溶解溶剤への溶解性が向上することが記載されており、樹脂骨格というよりは、重量平均分子量の影響を大きく受けることが把握でき、そのような好適なカルボキシル基含有樹脂は、本件明細書に記載されている。
また、申立人は、カルボキシル基含有樹脂の洗浄溶剤への溶解性に対して、該カルボキシル基含有樹脂の樹脂骨格がどの程度影響するものであるのか、その際にアルキレンオキサイド変性の有無やその化学構造の違いが溶剤溶解性にどの程度寄与するのかについて、具体的な証拠を示して説明することなく、上述のような洗浄溶剤への溶解性について、その可能性を指摘するのみである。
さらに、申立書において、上述のアルキレンオキサイド変性したこと以上に、熱硬化性樹脂を含む系において熱硬化反応を促進する硬化剤又は硬化触媒等を含む組成物であるか否かによる方が洗浄溶解性の相違への影響が大きいと考えられるとも指摘している。
しかしながら、硬化剤又は硬化触媒等を含むとはいえ、熱硬化反応前の組成物であれば、カルボキシル基含有樹脂を含む組成物であることにかわりはないから、上述のとおり、「本件物性の要件」を指針として最適化することで、「本件物性」を満たす硬化性樹脂組成物を製造できることが、本件明細書には記載されているといえ、これもまた妥当でないものである。
ウ 小括
以上を踏まえると、本件明細書は、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」の製造、調製について、当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されている。
(3)本件発明2、3、5~8について
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、3、5~7、及び本件発明1と同様の発明特定事項を有する本件発明8についても、順に、本件明細書の段落【0021】、【0063】、【0052】、【0087】、【0089】に記載されており、発明の詳細な説明に具体的に記載されている。
そうすると、上記(2)を踏まえれば、本件明細書は、本件発明2、3、5~7に係る硬化性樹脂組成物、本件発明8に係るドライフィルムを、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1~3、5~8について、本件明細書の「発明の詳細な説明の記載」には、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されており、特許法第36条第4項第1項に規定する要件を満たしているといえる。
よって、取消理由1及び申立理由3によっては、本件特許の請求項1~3、5~8に係る特許を取り消すことができない。
2 取消理由2(参4に基づく新規性、進歩性欠如)
(1)参4に記載された事項及び参4に記載された発明
ア 参4に記載された事項
参4には、以下の記載がある。
「【請求項1】
熱架橋剤として、エチレン性不飽和化合物及び/又は分子内にエポキシ基を有する化合物を含有し、更に光重合開始剤を含有し、
ガラス基板平面上に膜厚2μmで塗布し、線幅25μmの細線パターンを有するマスクを介して波長365nmの紫外光を100mJ/cm2で照射し、23℃・水圧0.25MPaでシャワー現像処理を施し、更に230℃で30分間の加熱処理を施すことにより当該ガラス基板上に凸状に形成される細線画像の凸部側面が当該ガラス基板に対してなすテーパ角は、40°以上であることを特徴とする保護膜用感光性熱硬化性組成物。
【請求項2】
熱架橋剤として、エチレン性不飽和化合物及び/又は分子内にエポキシ基を有する化合物を含有し、更に光重合開始剤を含有し、
ガラス基板上に設けた赤、緑、又は青のカラーフィルタ画素平面上に膜厚2μmで塗布し、線幅25μmの細線パターンを有するマスクを介して波長365nmの紫外光を100mJ/cm2で照射し、23℃・水圧0.25MPaでシャワー現像処理を施し、更に230℃で30分間の加熱処理を施すことにより当該カラーフィルタ画素上に凸状に形成される細線画像の凸部側面が当該カラーフィルタ画素平面に対してなすテーパ角は、40°以上であることを特徴とする保護膜用感光性熱硬化性組成物。
【請求項3】
更に、以下の関係式を満たすアルカリ可溶性樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の保護膜用感光性熱硬化性組成物。
[関係式]
V2/V3 ≧ 1.3
(V2:ポリスチレンを標準物質とするGPC法により微分分子量分布曲線を得た場合の、最大ピーク値に相当する分子量(M1)の101/2倍の分子量(M2)を有するアルカリ可溶性樹脂の重量含有率。
V3:最大ピーク値に相当する分子量(M1)の10-1/2倍の分子量(M3)を有するアルカリ可溶性樹脂の重量含有率。)
・・・
【請求項8】
更に、シリカゾルを含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の保護膜用感光性熱硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の保護膜用感光性熱硬化性組成物により形成される保護膜を有するカラーフィルタ。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の保護膜用感光性熱硬化性組成物により形成される保護膜を有する液晶表示装置。」
「【0013】
[1]保護膜用感光性熱硬化性組成物
本実施の形態の保護膜用感光性熱硬化性組成物(以下、単に「感光性熱硬化性組成物」と称することがある。)には、以下の各成分を配合することができる。
[1-1]熱架橋剤
[1-2]硬化剤
[1-3]光重合性モノマー
[1-4]光重合開始剤
[1-5]アルカリ可溶性樹脂
[1-6]その他成分
[1-7]有機溶剤
・・・
【0097】
[1-5]アルカリ可溶性樹脂
アルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性の溶媒で溶解可能な樹脂であれば特に限定はないが、例えば、カルボキシル基や水酸基を含む樹脂を挙げることができる。
より具体的には、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸、酢酸ビニル、マレイミド等にエポキシ基を導入した、不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、マレイミド等に水酸基又はカルボキシル基を導入した、水酸基又はカルボキシル基含有ビニル系樹脂;ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース等が挙げられる。
【0098】
中でも、アルカリ現像性と画像形成性の面から、不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂とカルボキシル基含有ビニル系樹脂が好適である。以下、これらの化合物について、更に詳述する。
【0099】
[1-5-1]不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂
不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂のα,β-不飽和基含有カルボン酸付加体に、多価カルボン酸及び/又はその無水物が付加された、不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂が挙げられる。即ち、(i)エポキシ樹脂のエポキシ基に、(ii)α,β-不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基が開環付加されることにより、エポキシ樹脂にエステル結合(-COO-)を介してエチレン性不飽和結合が付加されていると共に、その際生じた水酸基に、(iii)多価カルボン酸若しくはその無水物のカルボキシル基が付加されたものが挙げられる。以下、不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂の構成成分について説明する。
【0100】
[1-5-1-1]エポキシ樹脂
不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂の原料となるエポキシ樹脂としては、[1-1-2]欄等に例示したエポキシ化合物の中から適宜選択して用いることができる。より具体的には、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールSエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、フェノールとジシクロペンタンとの重合エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、高い硬化膜強度の観点から、フェノールノボラックエポキシ樹脂、又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールとジシクロペンタジエンとの重合エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレートとアルキル(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体などが好ましい。さらに、光透過性の観点から、グリシジルメタアクリレートとアルキル(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が好ましい。
【0101】
[1-5-1-2]α,β-不飽和モノカルボン酸
α,β-不飽和モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等、及び、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート無水琥珀酸付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート無水琥珀酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート無水フタル酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、(メタ)アクリル酸とε-カプロラクトンとの反応生成物等が挙げられる。
中でも、感度の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0102】
[1-5-1-3]多価カルボン酸若しくはその無水物
多価カルボン酸若しくはその無水物としては、例えば、琥珀酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸、及びそれらの無水物等が挙げられる。
中でも、画像再現性、現像性の観点から、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、又はヘキサヒドロフタル酸無水物が好ましく、テトラヒドロフタル酸無水物が更に好ましい。
【0103】
本実施の形態において、感光性熱硬化性組成物としての感度、解像性、及び基板に対する密着性等を改良する観点から、不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂としてフェノールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、ヒドロキシフルオレンエポキシ(樹脂)、又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂を用い、α,β-不飽和モノカルボン酸として(メタ)アクリル酸を用い、多価カルボン酸若しくはその無水物としてテトラヒドロフタル酸無水物を用いて得られるものが好ましい。
また、不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂としては、酸価が20~200mg-KOH/gであるものが好ましく、30~180mg-KOH/gであるものが更に好ましい。
更に、不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂の分子量としては、通常1,000以上、好ましくは1,500以上であり、通常30,000以下、好ましくは20,000以下、更に好ましくは10,000以下である。
【0104】
本実施の形態における上記不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂は、従来公知の方法により合成することができる。具体的には、前記エポキシ樹脂を有機溶剤に溶解させ、触媒と熱重合禁止剤の共存下、前記α,β-不飽和モノカルボン酸を加えて付加反応させ、更に多価カルボン酸若しくはその無水物を加えて反応を続ける方法を用いることができる。
ここで、上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤が挙げられる。
また、上記触媒としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリベンジルアミン等の第3級アミン類、又は、テトラメチルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンミニウム塩類、又は、トリフェニルホスフィン等の燐化合物、又は、トリフェニルスチビン等のスチビン類、等が挙げられる。更に、上記熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルハイドロキノン等が挙げられる。
上記α,β-不飽和モノカルボン酸の配合量としては、エポキシ樹脂のエポキシ基の1化学当量に対して通常0.7~1.3化学当量、好ましくは0.9~1.1化学当量となる量とすることができる。また、付加反応時の温度としては、通常60~150℃、好ましくは80~120℃の温度とすることができる。更に、多価カルボン酸若しくはその無水物の配合量としては、前記付加反応で生じた水酸基の1化学当量に対して、通常0.1~1.2化学当量、好ましくは0.2~1.1化学当量となる量とすることができる。
【0105】
上述した不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂について、構成繰返し単位の具体例を以下に示す。
【0106】
【化5】
[図:0001417596000001.jpg]
【0107】
【化6】
[図:0001417596000002.jpg]
【0108】
[1-5-2]カルボキシル基含有ビニル系樹脂
カルボキシル基含有ビニル系樹脂としては、例えば、不飽和カルボン酸とビニル化合物との共重合体等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0109】
また、ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチルアダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチルアダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル等が挙げられる。
中でも、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートは、後加熱による接触角の変化率が大きく、低接触角の液晶保護層を安定して形成させるとともに、現像時間や現像液劣化などに対する広いラチチュードを与える点で好ましい。そのようなジシクロペンタニル(メタ)アクリレートとしては、例えば特開2001-89533号公報に挙げられる化合物、例えばジシクロペンタジエン骨格、ジシクロペンタニル骨格、ジシクロペンテニル骨格、ジシクロペンテニルオキシアルキル骨格の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0110】
上記の共重合体(カルボキシル基含有ビニル系樹脂)の中では、画像形状、感度、硬化膜強度の観点から、スチレン-(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。中でも、スチレン3~30モル%、(メタ)アクリレート10~70モル%、(メタ)アクリル酸5~60モル%からなる共重合体が更に好ましい。特に、スチレン5~25モル%、(メタ)アクリレート20~60モル%、(メタ)アクリル酸10~50モル%からなる共重合体が好ましい。
【0111】
また、これらカルボキシル基含有ビニル系樹脂の酸価としては、通常10~250mg-KOH/g、好ましくは、20~200mg-KOH/g、更に好ましくは、30~150mg-KOH/gである。
更に、これらカルボキシル基含有ビニル系樹脂の分子量としては、通常1,000以上、好ましくは1,500以上、更に好ましくは2,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは50,000以下、更に好ましくは20,000以下、特に好ましくは10,000以下である。上記範囲の分子量を有するカルボキシル基含有ビニル系樹脂を含有する場合は、感光性熱硬化性組成物の加熱時の変形が大きい(接触角の変化が大きい)ため好ましい。
【0112】
また、上記カルボキシル基含有ビニル系樹脂としては、側鎖にエチレン性不飽和結合を有する化合物が好適である。
このような化合物としては、例えば、カルボキシル基含有重合体に脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物、又は脂環式エポキシ基含有不飽和化合物を反応させて得られた反応生成物;カルボキシル基含有重合体に2種以上の不飽和基を有する化合物と、不飽和カルボン酸、又は更に不飽和カルボン酸エステルとを反応させて得られた反応生成物が挙げられる。
【0113】
(i)カルボキシル基含有重合体に脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物、又は脂環式エポキシ基含有不飽和化合物を反応させて得られた反応生成物
脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネート、クロトニルグリシジルエーテル、イタコン酸モノアルキルモノグリシジルエステル、フマル酸モノアルキルモノグリシジルエステル、マレイン酸モノアルキルモノグリシジルエステル等が挙げられる。
また、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、7,8-エポキシ〔トリシクロ[5.2.1.0]デシ-2-イル〕オキシメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物、又は脂環式エポキシ基含有不飽和化合物の配合量としては、上記カルボキシル基含有重合体の有するカルボキシル基に対するエポキシ基含有不飽和化合物のモル%として、通常5~90モル%、好ましくは30~70モル%である。
【0114】
(ii)カルボキシル基含有重合体に、2種以上の不飽和基を有する化合物と、不飽和カルボン酸、又は更に不飽和カルボン酸エステルとを反応させて得られた反応生成物
2種以上の不飽和基を有する化合物としては、アリル(メタ)アクリレート、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、クロトニル(メタ)アクリレート、メタリル(メタ)アクリレート、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド、ビニル(メタ)アクリレート、1-クロロビニル(メタ)アクリレート、2-フェニルビニル(メタ)アクリレート、1-プロペニル(メタ)アクリレート、ビニルクロトネート、ビニル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
また、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルの配合量としては、不飽和基を有する化合物に対する配合量(モル%)として、通常10~90モル%、好ましくは30~80モル%である。
【0115】
本実施の形態におけるアルカリ可溶性樹脂としては、芳香族環を含有しないもの、若しくは、無置換又はp(パラ)位に置換基を有するフェニル基を含有するものが好適である。この場合、保護膜の加熱処理による変色(赤色着色)が抑えられ、また熱によるクラックの発生も抑えられる傾向となる。
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、例えばスチレン又はジシクロペンタニル(メタ)アクリレートの共重合体;ビスフェノールA型エポキシ化合物若しくはエポキシ樹脂、又は、置換基を有していてもよいフルオレン骨格を有するエポキシ化合物若しくはエポキシ樹脂に、α,β-不飽和基含有カルボン酸付加させて得られる付加体化合物;上記付加体化合物に、更に多価カルボン酸及びその無水物を付加させて得られる化合物;が挙げられる。
【0116】
本実施の形態の感光性熱硬化性組成物中に占める、アルカリ可溶性樹脂の含有量としては、全固形分に対して、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下である。アルカリ可溶性樹脂の量が過度に少ないと、画像断面形状の再現性不良、耐熱性の低下等を招く場合があり、過度に多いと、感度の低下、現像溶解速度の低下を招く場合がある。
【0117】
また、本実施の形態の感光性熱硬化性組成物は、加熱時のレジスト画像の変形量を大きくする観点から、アルカリ可溶性樹脂の含有量と光重合性モノマーの含有量とが特定の比率で混合されることが好ましい。
全透過の保護膜の場合、そのような混合比率としては、アルカリ可溶性樹脂の含有量/光重合性モノマーの含有量(重量比)として、通常0.5以上、好ましくは0.7以上であり、通常2以下、好ましくは1.5以下である。
また、半透過の保護膜及び薄膜トランジスタ用絶縁性保護膜の場合には、通常0.5以上、好ましくは0.75以上であり、通常2以下、好ましくは1.5以下である。
重量比が過度に大きいと、画像形成性が低下し、非画線部分に保護膜の残渣が発生し易くなる場合がある。一方、過度に低いと、加熱処理時に大きな熱収縮を起こし易くなる場合がある。
【0118】
更に、アルカリ可溶性樹脂としては、本実施の形態の感光性熱硬化性組成物を加熱した場合に発生ガスを抑制する観点、乃至耐熱性を向上させる観点から、以下の関係式を満たすものであることが好ましい。
[関係式]
V2/V3 ≧ 1.3
(V2:ポリスチレンを標準物質とするGPC法により微分分子量分布曲線を得た場合の、最大ピーク値に相当する分子量(M1)の101/2倍の分子量(M2)を有するアルカリ可溶性樹脂の重量含有率。
V3:最大ピーク値に相当する分子量(M1)の10-1/2倍の分子量(M3)を有するアルカリ可溶性樹脂の重量含有率。)
【0119】
なお、微分分子量分布曲線とは、アルカリ可溶性樹脂に含まれる各分子量に対するその分子量に相当するアルカリ可溶性樹脂の重量含有率を意味する。また、このような微分分子量分布曲線は、上述した分子量測定法と同様、ポリスチレンを標準物質とするGPC法により測定されるものである。
【0120】
上記V2/V3値としては、通常、1.3以上、好ましくは1.5以上、さらに好ましくは1.8以上であり、通常、1,000以下、好ましくは100以下、更に好ましくは50以下である。このように低分子量の成分が少ない分子量分布を有するアルカリ可溶性樹脂を用いることにより、画像形成性が高まると共に、保護膜強度が向上し、保護層上のITO膜のひび割れ欠陥の発生を抑制することができる。
【0121】
なお、上述の特定の分子量分布のアルカリ可溶性樹脂は、例えば、通常得られるアルカリ可溶性樹脂を[1-7]欄で後述するイソプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤に溶解させて樹脂溶液とした後、メタノール等のアルカリ可溶性樹脂の貧溶媒と混合して樹脂を析出させ、つづいて析出した樹脂をろ過し、例えば減圧下、40℃、12時間風乾させる等の処理により得ることができる。」
「【0148】
また、本実施の形態の感光性熱硬化性組成物は、更に、硬化物としての強度の向上と共に、アルカリ可溶性樹脂との適度な相互作用(マトリックス構造)により、優れた塗膜の平坦性とテーパ角の向上等を目的として、無機充填剤成分を含有していてもよい。そのような無機充填剤としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、前記[1-1-1-5]欄中に記載されたシリカゾルにエチレン性基を付加導入したもの、或いは、このシリカゾルを前記[1-6-1]欄中に記載された各種シランカップリング剤により表面処理したもの、更には無処理のシリカゾル、等が挙げられる。
【0149】
本実施の形態の感光性熱硬化性組成物中に占める無機充填剤成分の含有量としては、全固形分に対して、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下である。」
「【実施例】
【0170】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0171】
(実施例1~8、比較例1,2)
表1に示す配合にて感光性熱硬化性組成物を調製した。得られた感光性熱硬化性樹脂組成物をガラス基板(旭硝子株式会社製カラーフィルタ用ガラス板「AN100」)上に塗布し、ホットプレート上で80℃にて3分間乾燥し、乾燥膜厚2μmの塗布膜を得た。その後、この塗布膜にマスクを介して露光し、露光塗膜を形成した。使用したマスクは、線幅25μm、線間125μmの繰り返し細線パターンを有するマスクであった。マスク設置位置は、塗布面から150μm離れた位置であった。露光光源は3kW高圧水銀であり、波長365nmの紫外光が100mJ/cm2となるように露光した。
【0172】
次いで、上記露光塗膜に現像処理を施し、更に加熱処理を施して細線画像を得た。現像処理は、1重量%の炭酸カリウムを含有する水溶液(現像液)を用い、23℃において水圧0.25MPaのシャワー現像を施した後、純水にて現像を停止し、水洗スプレーにてリンスする方法を用いた。ここで、シャワー現像時間は10~120秒間の間で調整し、感光層が溶解除去される時間(ブレーク時間)の2倍とした。一方、加熱処理は、230℃で30分間の加熱処理とした。
得られた細線画像のテーパ角、及び細線再現性について評価した。結果を表1に併記した。
【0173】
【表1】
[図:0001417596000003.jpg]
【0174】
M-1:日本化薬株式会社製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)。[1-1]熱架橋剤、及び[1-3]光重合性モノマーとして機能する。
【0175】
M-2:下記式で示される化合物。[1-1]熱架橋剤、及び[1-3]光重合性モノマーとして機能する。
【化7】
[図:0001417596000004.jpg]
【0176】
P-3:ビスフェノールとエピクロヒドリンとの付加重合エポキシ樹脂にアクリル酸と酸無水物を付加させて得られる、下記式で示されるアルカリ可溶性樹脂(重量平均分子量6000、酸価98)を、イソプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにいったん溶解させ、固形分62重量%の樹脂溶液とした。その後、この樹脂溶液に、該樹脂溶液の1.5倍量のメタノールを滴下、析出させ、つづいて析出した樹脂をろ過し、40℃にて風乾させたものをP-3とした。V2/V3は5であった。
【0177】
【化8】
[図:0001417596000005.jpg]
(式中、Rは水素原子を示す。mは自然数を示す。)
【0178】
P-4:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン20重量部、グリシジルメタクリレート57重量部及びトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成(株)製「FA-513M」)82重量部を滴下し、更に140℃で2時間攪拌し続けた。次に、反応容器内を空気置換し、アクリル酸27重量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部及びハイドロキノン0.12重量部を投入し、120℃で6時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)52重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、120℃で3.5時間反応させ、アルカリ可溶性樹脂P-4を得た。こうして得られたP-4の重量平均分子量MwをGPCにより測定したところ、約5000であった。V2/V3は4であった。
【0179】
S-1:チバスペシャルケミカルズ(株)社製「イルガキュアー907」
S-2:β-イミダゾール(2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体)
S-3:チバスペシャルケミカルズ(株)社製「イルガキュアー369」
【0180】
J-1:2-メルカプトベンズイミダゾール。[1-6-3]その他添加剤に含まれる重合加速剤に該当する。
R-1:グリシジルメタアクリレート/ジシクロペンタニル共重合体(仕込みモル比2:1)。重量平均分子量(Mw)6000。[1-1-2]分子内にエポキシ基を有する化合物に該当する。
SH-1:γ-グシリドキシプロピルトリメトキシシラン。[1-6-1]接着助剤に含まれるシランカップリング剤に該当する。
【0181】
I-1:下記式で示される化合物。[1-6-3]その他添加剤に含まれるアルキル化変性メラミンに該当する。
【化9】
[図:0001417596000006.jpg]
【0182】
F-1:ビックケミカル社製シリコーン系界面活性剤「BYK323」。[1-6-2]界面活性剤に該当する。
TI-1:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤「TINUVIN400」。[1-6-3]その他添加剤に含まれる紫外線吸収剤に該当する。
PGMA:イソプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MBA:メトキシブチル酢酸エステル
SS-1:PGMA分散シリカゾル溶液「日産化学社製PMA-ST」。粒径約20nm、固形分濃度30重量%。表1中の重量部は、固形分であるシリカゾルの重量部である。なお、[1-6-3]その他添加剤に含まれるシリカゾルに該当する。
【0183】
エポキシ化合物の配合率:上記R-1成分が、感光性熱硬化性組成物の固形分中に占める割合である。
アルキル化変性メラミンの配合率:上記I-1成分が、感光性熱硬化性組成物の固形分中に占める割合である。
アルカリ可溶性樹脂の分子量分布:アルカリ可溶性樹脂のV2/V3値である。
【0184】
テーパ角:細線画像の断面形状を日立製作所社製走査型電子顕微鏡「S4100」にて観察し、テーパ角(°)を求めた。
細線再現性:加熱後の細線画像の線幅を測定し、露光時に使用したマスクの線幅(25μm)からの太りを測定した。下記基準で評価した。
A:得られた保護膜細線の幅が28μm未満。
B:得られた保護膜細線の幅が28μm以上35未満。
C:得られた保護膜細線の幅が35μm以上。」
「【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明によれば、例えば高解像で、且つテーパ角の高い高品質画像形成性を有する保護膜用感光性熱硬化性組成物を提供することができる。また、ITOの断線がなく経時安定性に優れ、更には保護膜を拭き取るなどした際の淵部分の残渣が少なく基板及びシール剤との接着性にも優れた保護膜を形成可能な保護膜用感光性熱硬化性組成物を提供することができる。更に、これにより高品質なカラーフィルタ及び液晶表示装置を提供することができる。従って、保護膜用感光性熱硬化性組成物、及び液晶表示装置の分野において、本発明の産業上の利用可能性は極めて高い。
【0191】
また、本発明によれば、例えばプリント配線板、液晶表示素子、プラズマディスプレイ、大規模集積回路、薄型トランジスタ、半導体パッケージ、カラーフィルタ、有機エレクトロルミネッセンス等におけるソルダーレジスト膜やカバーレイ膜、又は各種電子部品の絶縁被覆層等の形成に有用な、感光性熱硬化性組成物を提供することができる。更に、本発明によれば、液晶ディスプレイ等の液晶パネルに用いられるカラーフィルタ用、ブラックマトリックス用、リブ用及びスペーサー用等として有用な感光性熱硬化性組成物を提供することができる。従って、当該分野においても、本発明の産業上の利用可能性は極めて高い。」
イ 参4に記載された発明
参4の実施例6に着目し、感光性熱硬化性樹脂組成物として整理すると、以下の発明が記載されている。
「下記[1-1]熱架橋剤、及び[1-3]光重合性モノマーとして機能する化合物M-1:45重量部、下記[1-5]アルカリ可溶性樹脂P-3:45重量部、下記[1-4]光重合開始剤S-1:5重量部、下記[1-6]その他成分SH-1:5重量部、同F-1:0.1重量部、同SS-1:55重量部、下記[1-7]有機溶剤PGMA:200重量部、同MBA:200重量部を含む感光性熱硬化性樹脂組成物。
・M-1:日本化薬株式会社製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)
・P-3:ビスフェノールとエピクロヒドリンとの付加重合エポキシ樹脂にアクリル酸と酸無水物を付加させて得られる、下記式で示されるアルカリ可溶性樹脂(重量平均分子量6000、酸価98)を、イソプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにいったん溶解させ、固形分62重量%の樹脂溶液とし、その後、この樹脂溶液に、該樹脂溶液の1.5倍量のメタノールを滴下、析出させ、つづいて析出した樹脂をろ過し、40℃にて風乾させたものをP-3とした。V2/V3は5であった。
[図:0001417596000007.jpg]
(式中、Rは水素原子を示す。mは自然数を示す。)
・S-1:チバスペシャルケミカルズ(株)社製「イルガキュアー907」
・SH-1:γ-グシリドキシプロピルトリメトキシシラン。
・F-1:ビックケミカル社製シリコーン系界面活性剤「BYK323」。
・SS-1:PGMA分散シリカゾル溶液「日産化学社製PMA-ST」。粒径約20nm、固形分濃度30重量%。表1中の重量部は、固形分であるシリカゾルの重量部である。
・PGMA:イソプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・MBA:メトキシブチル酢酸エステル」(以下、「参4発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と参4発明とを対比する。
(ア)参4発明の「感光性熱硬化性樹脂組成物」は、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
(イ)参4発明の「[1-5]アルカリ可溶性樹脂P-3」は、重量平均分子量6000であり、その樹脂骨格と側鎖の構造からみて、アクリル基とカルボキシル基を有することから、本件発明1の「(A)硬化性樹脂」である「重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂」に相当する。
そして、参4発明では、「感光性熱硬化性組成物」の全量555.1重量部に対して「[1-5]アルカリ可溶性樹脂P-3」を45重量部含むことから、「[1-5]アルカリ可溶性樹脂P-3」の含有量が、「感光性熱硬化性樹脂組成物」中において、約8.1重量%(=45×100/555.1)含むものである。
そうすると、参4発明の「[1-5]アルカリ可溶性樹脂P-3」の含有量が、「感光性樹脂組成物」中において約8.1質量%であることと、本件発明1の「前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20~50質量%であ」ることとは、「カルボキシル基含有樹脂の含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であ」る限りにおいて一致する。
(ウ)参4発明の「[1-6]その他成分SS-1」は、PGMA分散シリカゾル溶液(固形分濃度が30重量%)であるから、本件発明1の「(B)フィラー」に相当する。
そして、参4発明の「感光性熱硬化性樹脂組成物」の全量が551.1重量部であり、上記「[1-6]その他成分SS-1」55重量部は、固形分でのシリカゾルの重量部であるから、上記「感光性熱硬化性樹脂組成物」中に固形分でのシリカゾルを約10重量%(≒55×100/555.1)含むものである。
そうすると、参4発明の「[1-6]その他成分SS-1」を55重量部含むことは、本件発明1の「前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であ」ることに相当する。
(エ)参4発明の「PGMA」は、「イソプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」と記載されている。ここで、「SS-1」の説明として、PGMA分散シリカゾル溶液「日産化学社製 PMA-ST」であることが記載されているところ、日産化学(株)のホームページによると、「PMA-ST」はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散シリカゾルであることが記載されている(https://db.nissanchem.co.jp/db/detail.cgi?id=177)ことから、上記「PGMA」は、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」のことであると認める。
そうすると、参4発明の「感光性熱硬化性樹脂組成物」は、「PGMA」を200重量部含むものであるから、「PGMA」を「感光性熱硬化性樹脂組成物」中に36重量%(≒200×100/555.1)含むものである。
してみると、参4発明の「[1-7]有機溶剤PGMA:200重量部」を含む「感光性熱硬化性樹脂組成物」は、本件発明1の「プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上50質量%以下である」ことに相当する。
以上から、本件発明1と参4発明とは、
「(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)硬化性樹脂が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、カルボキシル基含有樹脂の含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であり、
前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であり、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上50質量%以下である、硬化性樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
硬化性樹脂組成物中におけるカルボキシル基含有樹脂の含有量に関し、本件発明1では、「20~50質量%であ」るのに対し、参4発明では、約8.1重量%である点
<相違点2>
硬化性樹脂組成物において、本件発明1では、前記硬化性樹脂組成物を用いて形成した縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であり、かつ、溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内であること(以下、「本件物性」という。)を満たすのに対し、参4発明では、「本件物性」を満たすか不明である点
イ 判断
上記相違点1と相違点2を併せて検討する。
参4発明では、カルボキシル基含有樹脂の含有量が、感光性熱硬化性組成物中に約8.1重量%であるところ、本件発明1のカルボキシル基含有樹脂の含有量の下限未満であるから、上記相違点1は、実質的な相違点である。
さらに、参4発明には、「本件物性」における「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」に係る発明特定事項がなく、また、参4においても同様に、「本件物性」における「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」について何ら記載されていないことから、「本件物性」を満たしていないと認められ、上記相違点2は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、参4発明ではない。
ついで、進歩性について検討する。
上述のとおり、参4には、感光性熱硬化性組成物の「本件物性」における「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」について何ら記載されていないのであるから、参4発明において、「本件物性」とすること、併せて、「本件物性」とするために感光性熱硬化性樹脂組成物中におけるカルボキシル基含有樹脂の含有量を変更する動機付けもない。
そうすると、相違点2に係る「本件物性」はもちろんのこと、相違点1に係るカルボキシル基含有樹脂の含有量も、当業者が容易に想到し得たものではない。
そして、本件発明1は、「(A)硬化性樹脂」が重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、「(B)フィラー」がシリカ又は硫酸バリウムであり、「(C)有機溶剤」がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む硬化性樹脂組成物であって、上記カルボキシル基含有樹脂、上記(B)フィラー、及び上記プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの各々が硬化性樹脂組成物中において特定の含有量であることにより、「本件物性」を満たし、洗浄除去性に優れるという効果を奏するものである。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、参4に記載された発明でないし、参4に記載された発明並びに参4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)本件発明2、3、6、7について
本件発明2、3、6、7は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記(2)で述べたのと同じ理由により、本件発明2、3、6、7は、参4に記載された発明でないし、参4に記載された発明並びに参4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(4)本件発明8について
本件発明8は、第一のフィルムと、前記第一のフィルム上に形成された硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備える、ドライフィルムであって、上記硬化性樹脂組成物が、本件発明1であることを特定したものである。
まず、本件発明1については、上記(2)に示したとおりであり、参4発明の「感光性熱硬化性樹脂組成物」は、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当し、この点において両者は相違しない。
そうすると、本件発明8と参4発明とは、上記(2)アにおける相違点1、2に加えて、相違点3で相違する以外の発明特定事項は一致する。
<相違点3>
本件発明8では、「第一のフィルムと、前記第一のフィルム上に形成された硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備える、ドライフィルム」であるのに対し、参4発明では、そのような特定がない点
そこで、相違点1、2について検討すると、上記(2)イと同様の理由により、参4に記載された発明及び参4の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件発明8は、相違点3について検討するまでもなく、参4に記載された発明でないし、参4に記載された発明並びに参4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(5)小括
以上から、本件特許の請求項1~3、6~8に係る発明は、参4に記載された発明でないし、参4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、取消理由2によっては、本件特許の請求項1~3、6~8に係る特許を取り消すことができない。
3 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった申立理由について
(1)申立理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)
申立理由1-1及び同2-1は、いずれも甲1に基づくものであるから、併せて検討する。
ア 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
樹脂(A)、シランカップリング剤(B)、重合性化合物(C)、光重合開始剤(D)及び溶剤(E)を含む感光性樹脂組成物であって、
樹脂(A)が、下記(a)と(b)との共重合体に、(c)次いで(d)を反応させた樹脂を含み、
シランカップリング剤(B)の含有量が、感光性樹脂組成物の全固形分中、5~20質量%である感光性樹脂組成物。
(a):炭素数2~4の環状エーテル骨格及びエチレン性不飽和結合を有する単量体
(b):(a)と共重合可能な不飽和結合を有し、(a)とは異なる単量体
(c):不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種
(d):無水コハク酸」
「【0001】
本発明は感光性樹脂組成物、ならびにそれを用いた硬化膜に関する。該硬化膜は、タッチパネル、液晶表示装置、有機EL装置等に用いられる、層間絶縁膜やオーバーコート膜に好適に用いることができる。
・・・
【0003】
液晶表示装置、有機EL表示装置等のフラットパネルディスプレイに関しても、製造工程における基板や回路へのダメージ低減、省エネルギー化等の観点から各部材に対する低温焼成の要求が高まっている。
【0004】
層間絶縁膜としては他にも、高精細化のトレンドのためフォトリソグラフィで微細パターン形成を可能とする高解像性、絶縁膜上に配したITOを部分的にエッチングして電極形成する製造プロセスを経る場合にはエッチング工程で使用される薬剤に対する薬品耐性(耐アルカリ性、耐酸性)、上部層形成工程に影響を与えないため低脱ガス量であること、タッチパネルに用いられる場合には高硬度、といった特性を備える必要がある。」
「【0101】
溶剤(E)は、感光性樹脂組成物中の固形分合計100質量部に対して、200~4000質量部の量で用いることができる。」
「【0118】
無機微粒子(F)の添加量は感光性樹脂組成物における固形分中、5~80質量%が好ましく、10~60質量%がさらに好ましく、15~50質量%が特に好ましい。添加量が5質量%未満である場合は硬度、エッチャント耐性の向上などの効果が得られにくく、一方で80質量%を超える場合は、現像性、密着性が低下するなどの問題が起こることがある。」
「【実施例】
【0143】
以下に、実施例により本発明を説明する。なお、実施例中の「部」及び「%」とは、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。また、「PGMEA」とはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味する。
【0144】
実施例に先立ち、樹脂の重量平均分子量の測定方法について説明する。
【0145】
(樹脂の重量平均分子量)
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
【0146】
続いて、実施例及び比較例で用いた樹脂溶液、重合性化合物の製造方法について説明する。
【0147】
<樹脂溶液の製造方法>
(樹脂溶液(A-1))
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にPGMEA100部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら120℃に加熱して、同温度で滴下管よりスチレン5.2部、グリシジルメタクリレート35.5部、ジシクロペンタニルメタクリレート41.0部、アゾビスイソブチロニトリル2.5部の混合物を2.5時間かけて滴下し重合反応を行った。
次にフラスコ内を空気置換し、アクリル酸17.0部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.3部、及びハイドロキノン0.3部を投入し、120℃で5時間反応を続け固形分酸価=0.8となったところで反応を終了し、重量平均分子量が約5,000の樹脂溶液を得た。
さらに無水コハク酸20.0部、トリエチルアミン0.5部を加え120℃で4時間反応させ、不揮発分が40%になるようにPGMEAを添加して樹脂溶液(A-1)を調製した。
【0148】
(樹脂溶液(A-2~3))
表1に示す組成、及び配合量(質量部)に変更した以外は、樹脂溶液(A-1)と同様にして、樹脂溶液(A-2~3)を合成した。
【0149】
【表1】
[図:0001417596000008.jpg]
【0150】
<重合性化合物の製造>
(重合性化合物(C-1))
内容量が1リットルの5つ口反応容器に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(アロニックスM-400(東亞合成社製))623g、ヘキサメチレンジイソシアネート44gを仕込み、60℃で8時間反応させ、多官能ウレタンアクリレート(1)を含む生成物を得た。生成物中、多官能ウレタンアクリレート(1)の占める割合は、45質量%であり、残部を他の光重合性モノマーで占めている重合性化合物(C-1)を得た。
なお、IR分析により、反応生成物中にイソシアネート基が存在しないことを確認した。
【0151】
(重合性化合物(C-2))
内容量が1リットルの5つ口反応容器に、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(コロネートHL(東ソー社製))600g、ペンタエリスリトールトリアクリレート950gを仕込み、60℃で8時間反応させ、多官能ウレタンアクリレート(2)を含む生成物を得た。生成物中、多官能ウレタンアクリレート(2)の占める割合は、80質量%であり、残部を他の光重合性モノマーで占めている重合性化合物(C-2)を得た。
なお、IR分析により、反応生成物中にイソシアネート基が存在しないことを確認した。
【0152】
<感光性樹脂組成物の製造>
[実施例1]
(感光性樹脂組成物(R1))
下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、感光性樹脂組成物(R1)を得た。
樹脂溶液(A-1) :32.45部
KBM-403 : 2.00部
(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製))
重合性化合物(C-1) : 4.00部
Irg.907 : 1.00部
(イルガキュア907(BASF社製))
BYK-330 2%溶液 :1.00部
(ポリエーテル構造含有ジメチルシロキサンのPGMEA溶液(ビックケミー社製))
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :39.55部
プロピレングリコールメチルエーテル :20.00部
【0153】
[実施例2~38、比較例1~4]
(感光性樹脂組成物(R2~42))
表2~7に示した組成、及び配合量(質量部)に変えた以外は、感光性樹脂組成物(R1)と同様にして、混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、感光性樹脂組成物(R2~42)を得た。
【0154】
<感光性樹脂組成物の評価>
得られた感光性樹脂組成物(R1~R42)について、以下の方法で評価を行った。結果を表2~7に示す。
【0155】
(脱ガス性)
感光性樹脂組成物を、100mm×100mm、0.7mmのガラス基板(コーニング社製ガラス イーグル2000)にスピンコーターを用いて100℃60分加熱後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次に、80℃に加熱したホットプレート上で2分間保持した後、超高圧水銀ランプを用いて、照度20mW/cm2、露光量100mJ/cm2で紫外線露光を行った。露光後の塗膜を有機アルカリ現像液NMD-3(東京応化工業社製)で1分、パドル現像を行った。パドル現像後、20秒スピンシャワーにて純水でリンスを行い、スピン乾燥により基板を乾燥させた後クリーンオーブン中100℃で60分間加熱した。
作製した塗膜を5mg剥がして採取し、TG/DTA測定を行い、初期質量に対する質量減少率を測定し、下記基準で評価した。TG/DTAはセイコーインスツルメンツ社のEXSTARTG/DTA6200を用い、窒素流量200mL/min、室温から5℃/minで150℃まで昇温し20分保持するプログラムで測定した。
○:質量減少率が1.0%未満(良好なレベル)
△:質量減少率が1.0%以上、2.0%未満(実用可能なレベル)
×:質量減少率が2.0%以上(実用には適さないレベル)
【0156】
(薬品耐性)
≪ITOエッチャント耐性≫
感光性樹脂組成物を、100mm×100mm、0.7mm厚のITO基板(ジオマテック社製)にスピンコーターを用いて100℃60分加熱後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次に、80℃に加熱したホットプレート上で2分間保持した後、超高圧水銀ランプを用いて、照度20mW/cm2、露光量100mJ/cm2で紫外線露光を行った。塗布基板を100℃で60分加熱、放冷して評価用基板を作製した。その後、ITOエッチャント;硝酸/塩酸/水=0.1/1/1に40℃で5分間浸漬し、純水にて洗浄後、24時間放置した。得られた基板をJIS K5600-5-6に準じた付着性(クロスカット法)試験により塗膜の基材密着性を評価し、碁盤目25個中の剥離個数を数え、下記基準で評価した。
〇:碁盤目の剥離個数が0個(良好なレベル)
△:碁盤目の剥離個数が1個以上、3個未満(実用可能なレベル)
×:碁盤目の剥離個数が3個以上(実用には適さないレベル)
【0157】
≪Moエッチャント耐性≫
ITOエッチャント耐性の評価と同じ方法で、Mo基板(東邦化研社製)上に塗膜を作製した後、Moエッチャント;リン酸/酢酸/硝酸/水=80/5/5/10に40℃で5分間浸漬し、純水にて洗浄後、24時間放置した。得られた基板をJIS K5600-5-6に準じた付着性(クロスカット法)試験により塗膜の基材密着性を評価し、碁盤目25個中の剥離個数を数え、下記基準で評価した。
〇:碁盤目の剥離個数が0個(良好なレベル)
△:碁盤目の剥離個数が1個以上、3個未満(実用可能なレベル)
×:碁盤目の剥離個数が3個以上(実用には適さないレベル)
【0158】
≪膨潤試験≫
感光性樹脂組成物を、100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基板(コーニング社製ガラス イーグル2000)上に、スピンコーターを用いて100℃60分加熱後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次に、80℃に加熱したホットプレート上で2分間保持した後、塗膜にフォトマスクを介して、超高圧水銀ランプを用いて100mJ/cm2の紫外線を照射した。露光後の塗膜を有機アルカリ現像液NMD-3(東京応化工業社製)で1分、パドル現像を行った。パドル現像後、20秒スピンシャワーにて純水でリンスを行い、スピン乾燥により基板を乾燥させた後クリーンオーブン中100℃で60分間加熱した。得られた画素パターンの膜厚を表面形状測定器DEKTAK150(アルバックイーエス社製)で測定した後、ITOエッチャント;硝酸/塩酸/水=0.1/1/1に40℃で5分間浸漬し、純水にて洗浄後膜厚を測定した。下記計算式により、膜厚膨潤率を求めた。
膜厚膨潤率(%)=(溶剤浸漬後の膜厚/溶剤浸漬前の膜厚)×100
膜厚膨潤率は95-105%の範囲であることが好ましく、97-103%の範囲であることがより好ましい。
【0159】
(解像性)
100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基板(コーニング社製ガラス イーグル2000)上に、スピンコーターを用いて100℃60分加熱後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次に、80℃に加熱したホットプレート上で2分間保持した後、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長で1000J/m2の露光を行った。露光は、5.0μm四方の正方形の遮光部と透過部が市松模様に並んだフォトマスクを通して行った。露光後の塗膜を有機アルカリ現像液NMD-3(東京応化工業社製)で1分、パドル現像を行った。パドル現像後、20秒スピンシャワーにて純水でリンスを行い、スピン乾燥により基板を乾燥させた後クリーンオーブン中100℃で60分間加熱した。得られた画素パターンについて、遮光部により形成されたホール画素パターンを走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製「S-3000N」)を用いて観察し、下記基準で評価した。
◎: ホール寸法が4.8μm以上、5.0μm未満(非常に良好なレベル)
○: ホール寸法が4.5μm以上、4.8μm未満(良好なレベル)
△: ホール寸法が4.0μm以上、4.5μm未満(実用可能なレベル)
×: ホール寸法が4.0μm未満(実用には適さないレベル)
【0160】
(鉛筆硬度)
感光性樹脂組成物を、100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基板(コーニング社製ガラス イーグル2000)に、スピンコーターを用いて100℃60分加熱後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次に、80℃に加熱したホットプレート上で2分間保持した後、超高圧水銀ランプを用いて、照度20mW/cm2、露光量100mJ/cm2で紫外線露光を行った。塗布基板を100℃で60分加熱、放冷した。この基板を、JIS K-5400-1990の8.4.1鉛筆引っかき試験により保護膜の鉛筆表面硬度を測定し、下記基準で評価を行った。
○:鉛筆表面硬度が2H以上(良好なレベル)
△:鉛筆表面硬度がH(実用可能なレベル)
×:鉛筆表面硬度がF以下(実用には適さないレベル)
【0161】
【表2】
[図:0001417596000009.jpg]
【0162】
【表3】
[図:0001417596000010.jpg]
【0163】
【表4】
[図:0001417596000011.jpg]
【0164】
【表5】
[図:0001417596000012.jpg]
【0165】
【表6】
[図:0001417596000013.jpg]
【0166】
【表7】
[図:0001417596000014.jpg]
【0167】
表2~7中の略語について以下に示す。
≪シランカップリング剤(B)≫
KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
KBM-503:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
KBM-5103:3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
KBM-803:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
KBM-9659:トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越シリコーン社製)
KBE-9007:3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製)
≪重合性化合物(C)≫
C-1:前記合成した重合性化合物。多官能ウレタンアクリレート45質量%含有
C-2:前記合成した重合性化合物。多官能ウレタンアクリレート80質量%含有
C-3(M402):アロニックスM-402(東亞合成社製)
ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレートの混合物
≪光重合開始剤(D)≫
Irg.907:イルガキュア907(BASF社製)
2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン
Irg.OXE-01:イルガキュアOXE-01(BASF社製)
1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]
≪無機微粒子(F)≫
PMA-ST:シリカ微粒子(日産化学社製、固形分30質量%)
PGM-AC-2140Y:シリカ微粒子(日産化学社製、固形分42質量%)
AS-520-A:アルミナ微粒子(日産化学社製、固形分20質量%)
ZR-20AS:ジルコニア微粒子(日産化学社製、固形分20質量%)
≪紫外線吸収剤(G)≫
紫外線吸収剤(G-1):(ベンゾトリアゾール系化合物) 2-(3-tブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール
(BASF社製「TINUVIN 326」(吸光度0.48))
紫外線吸収剤(G-2):(ベンゾフェノン系有機化合物) 2,2-ジヒドロキシ-4,4-ジメトキシベンゾフェノン
(シプロ化成社製「シーソーブ107」(吸光度0.60))
紫外線吸収剤(G-3):(トリアジン系有機化合物)2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン
(ADEKA社製「アデカスタブ LA-F70」(吸光度0.90))
紫外線吸収剤(G-4):(ベンゾフェノン系有機化合物)[2-ヒドロキシ-4-(オクヒロキシ)フェニル](フェニル)メタノン
(ADEKA社製「アデカスタブ 1413」(吸光度0.10))
≪重合禁止剤≫
MH:メチルヒドロキノン(精工化学社製「MH」)
≪レべリング剤≫
BYK-330 2%:ポリエーテル構造含有ジメチルシロキサンのPGMEA
溶液(不揮発分2質量%に調整(ビックケミー社製)
≪溶剤(E)≫
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0168】
表2~7に示すように、無水コハク酸を用いた特定樹脂(A)と、シランカップリング剤(B)を組成物の全固形分に対して5~20質量%で含む本願の感光性樹脂組成物は、脱ガス、薬品耐性、解像性、硬度評価の全てにおいて実用可能なレベルを満足するものであった。一方で比較例1~4に示すように、無水コハク酸ではなく、テトラヒドロ無水フタル酸を用いた樹脂(A-3)を使用した比較例1は、脱ガス性及び薬品耐性が実用レベルに達していない。また、シランカップリング剤(B)が感光性樹脂組成物の全固形分に対して5質量%未満若しくは20質量%を超えている比較例2~4は、脱ガス性、薬品耐性、解像度のいずれかで実用レベルに達しなかった。
【0169】
以上の結果より、本願の感光性樹脂組成物により、基板への密着性と高い解像性を両立しながら、120℃以下の硬化温度であっても薬品耐性が良好で、脱ガス量の少なく、高い硬度の硬化膜を形成することが可能であった。すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、タッチパネル、液晶表示装置、有機EL装置等に用いられる、層間絶縁膜やオーバーコート膜に好適に用いることができるものである。」
(イ)甲1に記載された発明
甲1の実施例2に着目すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。
「セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にPGMEA100部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら120℃に加熱して、同温度で滴下管よりスチレン5.2部、グリシジルメタクリレート35.5部、ジシクロペンタニルメタクリレート41.0部、アゾビスイソブチロニトリル2.5部の混合物を2.5時間かけて滴下し重合反応を行い、
次にフラスコ内を空気置換し、アクリル酸17.0部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.3部、及びハイドロキノン0.3部を投入し、120℃で5時間反応を続け固形分酸価=0.8となったところで反応を終了し、重量平均分子量が約5,000の樹脂溶液を得、
さらに無水コハク酸20.0部、トリエチルアミン0.5部を加え120℃で4時間反応させ、不揮発分が40%になるようにPGMEAを添加して樹脂溶液A-1を調製し、
該樹脂溶液A-1を19.95質量部、KBM-403を1.00質量部、多官能性ウレタンアクリレートを含む重合性化合物を4.00質量部、Irg.907を1.00質量部、PMA-STを20.00質量部、BYK-330を1.00質量部、PGMEAを33.05質量部、PGMEを20.00質量部(総計100質量部)の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して得られた感光性樹脂組成物。」(以下、「甲1発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「感光性樹脂組成物」は、光重合開始剤(D)としてIrg.907を含むものであるから、上記「感光性樹脂組成物」は光硬化を意図しているものであり、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
b 甲1発明の「樹脂溶液A-1」中の「樹脂」は、スチレン、グリシジルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートを重合した後、アクリル酸を投入して反応させて得られた重量平均分子量が約5000のエチレン性不飽和基を有する感光性樹脂に、さらに無水コハク酸を反応させて得られたエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂である。
まず、上記エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂は、本件発明1の「(A)硬化性樹脂」であり、「カルボキシル基含有樹脂」に相当する。
そして、甲1発明の「樹脂溶液A-1」は不揮発分40%、残部がPGMEAであって、感光性樹脂組成物100質量部に「樹脂溶液A-1」を19.95質量部含むから、「樹脂」は、感光性樹脂組成物中に7.98質量%(=19.95×0.4×100/100)含むものである。
そうすると、甲1発明の「樹脂」の含有量が、感光性樹脂組成物中において7.98質量%であることと、本件発明1の「前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20~50質量%であ」ることとは、「カルボキシル基含有樹脂の含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であ」る限りにおいて一致する。
c 甲1発明の「PMA-ST」は、シリカ微粒子(日産化学社製、固形分30質量%)であるから、本件発明1の「(B)フィラー」であり、「前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含」むことに相当する。
そして、甲1発明の「PMA-ST」が、シリカ微粒子(日産化学社製、固形分30質量%)であって、感光性樹脂組成物中100質量部にシリカ粒子を20質量部含むから、シリカ粒子の固形分は、感光性樹脂組成物中に6質量%(=20×0.3×100/100)含むものである。
そうすると、甲1発明のシリカ粒子の含有量が、感光性樹脂組成物中において6質量%であることと、本件発明1の「前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であ」ることとは、「(B)フィラーの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であ」る限りにおいて一致する。
d 甲1発明の「PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)」は、「樹脂溶液A-1」、「BYK-330」及び「感光性樹脂組成物」に含まれるものであり、「PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)」とともに、本件発明1の「有機溶剤」に相当する。
そして、甲1発明の「PMA-ST」が、日産化学株式会社のホームページにおける、オルガノシリカゾル(標準グレード、疎水性溶媒に分散したシリカゾル)(https://www.nissanchem.co.jp/products/materials/inorganic/products/02/)によると、分散剤がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで、固形分が30wt%であることが示されていること、及び甲1の段落【0168】と上述のホームページの開示に基づくと、上記「PGMEA」は、「樹脂溶液A-1」の不揮発分が40%であること、「PMA-ST」の固形分が30質量%であること、「BYK-330」の不揮発分が2質量%であるから、「樹脂溶液A-1」中の「PGMEA」が11.97質量部、「PMA-ST」中の「PGMEA」が14質量部、「BYK-330」中の「PGMEA」が0.98質量部、そして「感光性樹脂組成物」中の溶剤として「PGMEA」が33.05質量部含まれており、感光性樹脂組成物100質量部中に「PGMEA」を60質量部含むから、「PGMEA」は、感光性樹脂組成物中に60質量%(=60×100/100)含むものである。
そうすると、甲1発明の「PGMEA」の含有量が、感光性樹脂組成物中において60質量%であることと、本件発明1の「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上50重量%以下であ」ることとは、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であ」る限りにおいて一致する。
以上から、本件発明1と甲1発明とは、
「(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)硬化性樹脂が、カルボキシル基含有樹脂を含み、前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であり、
前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、(B)フィラーの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であり、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合である、硬化性樹脂組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4>
カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量に関し、本件発明1では、「6000以下」であるのに対し、甲1発明では「6000以下」であるか不明である点
<相違点5>
硬化性樹脂組成物中におけるカルボキシル基含有樹脂、(B)フィラー、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの各々の含有量に関し、本件発明1では、順に、「20~50質量%」、「10質量%以上45質量%以下」、「20質量%以上50質量%以下」であるのに対し、甲1発明では、順に、7.98質量%、6質量%、60質量%である点
<相違点6>
硬化性樹脂組成物において、本件発明1では、「本件物性」が特定されているのに対し、甲1発明では、「本件物性」が特定されていない点
(イ)判断
事案に鑑みて、上記相違点5及び相違点6について併せて検討する。
甲1発明では、感光性樹脂組成物中において、カルボキシル基含有樹脂、(B)フィラー、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの各々の含有量が、それぞれ7.98質量%、6質量%、60質量%であるところ、本件発明1の各々の含有量と重複しないから、上記相違点5は、実質的な相違点である。
さらに、甲1発明には、「本件物性」における「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」に係る発明特定事項がなく、また、甲1においても同様に、「本件物性」における「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」について何ら記載されていないことから、「本件物性」を満たしていないと認められ、上記相違点6は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲1発明ではない。
ついで、進歩性について検討する。
上述のとおり、甲1には、感光性樹脂組成物の「本件物性」における「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」について何ら記載されていないのであるから、甲1発明において、「本件物性」とすること、併せて、「本件物性」とするために感光性樹脂組成物中における各々の成分の含有量を変更する動機付けもない。
また、甲2、3、参1~6には、「本件物性」に関して何ら記載されていない。
そうすると、相違点6に係る「本件物性」はもちろんのこと、相違点5に係る各々の成分の含有量も、当業者が容易に想到し得たものではない。
そして、本件発明1は、「(A)硬化性樹脂」が重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、「(B)フィラー」がシリカ又は硫酸バリウムであり、「(C)有機溶剤」がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む硬化性樹脂組成物であって、上記カルボキシル基含有樹脂、上記(B)フィラー、及び上記プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの各々が硬化性樹脂組成物中において特定の含有量であることにより、「本件物性」を満たし、洗浄除去性に優れるという効果を奏するものである。
(ウ)小括
以上から、本件発明1は、相違点4について検討するまでもなく、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明及び甲1~3、参1~6の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
ウ 本件発明2、3、5~7について
本件発明2、3、5~7は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記イで述べたのと同じ理由により、本件発明2、3、5、7は、甲1に記載された発明でないし、本件発明2、3、5~7は、甲1に記載された発明及び甲1~3、参1~6の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 小括
以上から、本件特許の請求項1~3、5、7に係る発明は、甲1に記載された発明でないし、同請求項1~3、5~7に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、申立理由1-1及び同2-1によっては、本件特許の請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すことができない。
(2)申立理由1-2(甲2に基づく新規性欠如)及び申立理由2-2(甲2に基づく進歩性欠如)
申立理由1-2及び同2-2は、いずれも甲2に基づくものであるから、併せて検討する。
ア 甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明
(ア)甲2に記載された事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
樹脂(A)、デンドリマー構造を有する重合性多分岐ウレタン化合物(B)、無機微粒子(C)、光重合開始剤(D)、及び溶剤(E)を含む感光性樹脂組成物であって、樹脂(A)が、下記(a)と(b)との共重合体に、(c)および(d)を反応させてなる樹脂を含み、重合性多分岐ウレタン化合物(B)が、下記一般式(1)で表される化合物であり、無機微粒子(C)が、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモン及び
セリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の無機微粒子を含有する感光性樹脂組成物。
(a):炭素数2~4の環状エーテル骨格及びエチレン性不飽和結合を有する単量体
(b):(a)と共重合可能な不飽和結合を有し、(a)とは異なる単量体(c):不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種 (d):無水コハク酸
【化1】
[図:0001417596000015.jpg]
(式中、X1は下記に示す3価、4価または6価の有機残基であり、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に、炭素数1~12の直鎖状または分岐状アルキレン基を示し、R3は水素原子またはメチル基を示し、mは、0、3、4、6の整数、nは、mが0の場合、3、4、6の整数であり、mが3、4、6の場合、n=2mの整数である。)
【化2】
[図:0001417596000016.jpg]
【化3】
[図:0001417596000017.jpg]
【化4】
[図:0001417596000018.jpg]
【化5】
[図:0001417596000019.jpg]
(上記に示す3価、4価、または6価の有機残基における*は、一般式(1)と結合するサイトである。)」
「【0001】
本発明は感光性樹脂組成物、ならびにそれを用いた硬化膜に関する。該硬化膜は、タッチパネル、液晶表示装置、有機EL装置等に用いられる、層間絶縁膜やオーバーコート膜に好適に用いることができる。
・・・
【0003】
液晶表示装置、有機EL表示装置等のフラットパネルディスプレイに関しても、製造工程における基板や回路へのダメージ低減、省エネルギー化等の観点から各部材に対する低温焼成の要求が高まっている。
【0004】
層間絶縁膜としては他にも、高精細化のトレンドのためフォトリソグラフィで微細パターン形成を可能とする高解像性、絶縁膜上に配したITOを部分的にエッチングして電極形成する製造プロセスを経る場合にはエッチング工程で使用される薬剤に対する薬品耐性(耐アルカリ性、耐酸性)、上部層形成工程に影響を与えないため低脱ガス量であること、タッチパネルに用いられる場合には高硬度、といった特性を備える必要がある。」
「【0114】
無機微粒子(C)の添加量は感光性樹脂組成物における固形分中、5~80質量%が好ましく、10~60質量%がさらに好ましく、15~50質量%が特に好ましい。添加量が5質量%未満である場合は硬度、エッチャント耐性の向上などの効果が得られにくく、一方で80質量%を超える場合は、現像性、密着性が低下するなどの問題が起こることがある。」
「【0123】
溶剤(E)は、感光性樹脂組成物中の固形分合計100質量部に対して、200~4000質量部の量で用いることができる。」
「【実施例】
【0176】
以下、実施例において本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例にのみ限定されるものではない。なお、下記の実施例における「部」及び「%」とは、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。また、「PGMEA」とは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味する。
【0177】
実施例に先立ち、樹脂の重量平均分子量、及び酸価の測定について説明する。
【0178】
(樹脂の重量平均分子量)
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
【0179】
(酸価)
樹脂溶液0.5~1gに、アセトン80ml及び水10mlを加えて攪拌して均一に溶解させ、0.1mol/LのKOH水溶液を滴定液として、自動滴定装置(「COM-555」平沼産業製)を用いて滴定し、樹脂溶液の酸価を測定した。そして、樹脂溶液の酸価と樹脂溶液の固形分濃度から、樹脂の固形分あたりの酸価を算出した。
【0180】
続いて、実施例及び比較例で用いた樹脂(A)溶液、重合性多分岐ウレタン化合物(B)、重合性化合物(G)の製造方法について説明する。
【0181】
<樹脂(A)溶液の製造>
(樹脂溶液(A-1))
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にPGMEA100部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら120℃に加熱して、同温度で滴下管よりスチレン5.2部、グリシジルメタクリレート35.5部、ジシクロペンタニルメタクリレート41.0部、アゾビスイソブチロニトリル2.5部の混合物を2.5時間かけて滴下し重合反応を行った。
次にフラスコ内を空気置換し、アクリル酸17.0部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.3部、及びハイドロキノン0.3部を投入し、120℃で5時間反応を続け固形分酸価=0.8mgKOH/gとなったところで反応を終了し、重量平均分子量が約5,000の樹脂溶液を得た。
さらに無水コハク酸20.0部、トリエチルアミン0.5部を加え120℃で4時間反応させ、不揮発分が40%になるようにPGMEAを添加して樹脂溶液(A-1)を調製した。
【0182】
(樹脂溶液(A-2~3))
表1に示す組成、及び配合量(質量部)に変更した以外は、樹脂溶液(A-1)と同様にして、樹脂溶液(A-2~3)を合成した。
【0183】
【表1】
[図:0001417596000020.jpg]
【0184】
<重合性多分岐ウレタン化合物(B)の製造>
(重合性多分岐ウレタン化合物(B-1))
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、トリメチロールプロパントリアクリレート8.0部、ジエタノールアミン8.5部、テトラヒドロフラン(THF)60部を仕込み、室温で4時間撹拌してから1時間還流し、1H-NMRで反応が完結していることを確認した。エバポレーターで溶媒を留去し、下記化学式(3)で表される前駆体化合物を無色透明粘性液体として16部得た。
【0185】
化学式(3)
【化26】
[図:0001417596000021.jpg]
【0186】
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、化学式(3)で表される前駆体化合物15部、ジ-n-ブチルチンジラウリレート0.1部、クペロン(重合禁止剤)1.8部、THF50部を仕込み室温で撹拌した。ここに、イソシアナトメチルアクリレート16部、THF50部を混合したものを2時間かけて滴下し、5時間還流し、FT-IRで反応が完結していることを確認した。エバポレーターで溶媒を留去し、下記化学式(4)で表されるアクリレートデンドリマーを濃褐色高粘度液体の化合物(B-1)として28部得た。
【0187】
化学式(4)
化合物(B-1)
【化27】
[図:0001417596000022.jpg]
・・・
【0228】
<重合性化合物(G)の製造>
(重合性化合物(G-1))
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(アロニックスM-400(東亞合成社製))623部、ヘキサメチレンジイソシアネート44部を仕込み、60℃で8時間撹拌させ、FT-IRで反応が完結していることを確認し、多官能ウレタンアクリレート(1)を含む生成物を得た。生成物中、多官能ウレタンアクリレート(1)の占める割合は、45質量%であり、残部を他の光重合性モノマーで占めている重合性化合物(G-1)を得た。
【0229】
(重合性化合物(G-2))
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(コロネートHL(東ソー社製))600部、ペンタエリスリトールトリアクリレート950部を仕込み、60℃で8時間撹拌させ、FT-IRで反応が完結していることを確認し、多官能ウレタンアクリレート(2)を含む生成物を得た。生成物中、多官能ウレタンアクリレート(2)の占める割合は、80質量%であり、残部を他の光重合性モノマーで占めている重合性
化合物(G-2)を得た。
【0230】
<感光性樹脂組成物の製造>
[実施例1]
(感光性樹脂組成物(R1)
下記組成の混合物を均一になるように撹拌混合した後、孔径1μmフィルタで濾過して、感光性樹脂組成物(R1)を得た。
樹脂溶液(A-1) :27.5部
重合性多分岐ウレタン化合物(B-1) :2.00部
PMA-ST :20.0部
(シリカ微粒子 固形分42質量%(日産化学社製))
Irg.907 :1.00部
(イルガキュア907(BASF社製))
BYK-330 2%溶液 :1.00部
(ポリエーテル構造含有ジメチルシロキサンのPGMEA溶液(ビックケミー社
製))
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :28.6部
プロピレングリコールメチルエーテル :20.0部
【0231】
[実施例2~40、比較例1~5]
(感光性樹脂組成物(R2~45))
表2~4に示した組成及び配合量(質量部)に変えた以外は、感光性樹脂組成物(R1)と同様にして、混合物を均一になるように撹拌混合した後、孔径1μmフィルタで濾過して、感光性樹脂組成物(R2~45を得た。
【0232】
<感光性樹脂組成物の評価>
得られた感光性樹脂組成物(R1~45について、以下の方法で評価を行った。結果を表5に示す。
【0233】
(薬品耐性)
≪ITOエッチャント耐性≫
感光性樹脂組成物を、100mm×100mm、0.7mm厚のITO基板(ジオマテック社製)にスピンコーターを用いて100℃60分間加熱後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次に、80℃に加熱したホットプレート上で2分間保持した後、超高圧水銀ランプを用いて、照度20mW/cm2、露光量100mJ/cm2で紫外線露光を行った。塗布基板を100℃で60分間加熱、放冷して評価用基板を作製した。その後、ITOエッチャント;硝酸/塩酸/水=0.1/1/1に40℃で5分間浸漬し、純水にて洗浄後、24時間放置した。得られた基板をJIS K5600-5-6に準じた付着性(クロスカット法)試験により塗膜の基材密着性を評価し、碁盤目25個中の剥離個数を数え、下記基準で評価した。
〇:碁盤目の剥離個数が0個(良好なレベル)
△:碁盤目の剥離個数が1個以上、3個未満(実用可能なレベル)
×:碁盤目の剥離個数が3個以上(実用には適さないレベル)
【0234】
≪Moエッチャント耐性≫
ITOエッチャント耐性の評価と同じ方法で、Mo基板(東邦化研社製)上に塗膜を作製した後、Moエッチャント;リン酸/酢酸/硝酸/水=80/5/5/10に40℃で5分間浸漬し、純水にて洗浄後、24時間放置した。得られた基板をJIS K5600-5-6に準じた付着性(クロスカット法)試験により塗膜の基材密着性を評価し、碁盤目25個中の剥離個数を数え、下記基準で評価した。
〇:碁盤目の剥離個数が0個(良好なレベル)
△:碁盤目の剥離個数が1個以上、3個未満(実用可能なレベル)
×:碁盤目の剥離個数が3個以上(実用には適さないレベル)
【0235】
(鉛筆硬度)
感光性樹脂組成物を、100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基板(コーニング社製ガラスイーグル2000)に、スピンコーターを用いて100℃60分間加熱後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。
次に、80℃に加熱したホットプレート上で2分間保持した後、超高圧水銀ランプを用いて、照度20mW/cm2、露光量100mJ/cm2で紫外線露光を行った。塗布基板を100℃で60分間加熱、放冷した。この基板を、JIS K5400-1990の8.4.1鉛筆引っかき試験により保護膜の鉛筆表面硬度を測定し、下記基準で評価を行った。
○:鉛筆表面硬度が2H以上(良好なレベル)
△:鉛筆表面硬度がH(実用可能なレベル)
×:鉛筆表面硬度がF以下(実用には適さないレベル)
【0236】
(解像性)
100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基板(コーニング社製ガラスイーグル2000)上に、スピンコーターを用いて100℃60分間加熱後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次に、80℃に加熱したホットプレート上で2分間保持した後、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長で1000J/m2の露光を行った。露光は、5.0μm四方の正方形の遮光部と透過部が市松模様に並んだフォトマスクを通して行った。露光後の塗膜を有機アルカリ現像液NMD-3(東京応化工業社製)で1分間、パドル現像を行った。パドル現像後、20秒間スピンシャワーにて純水でリンスを行い、スピン乾燥により基板を乾燥させた後クリーンオーブン中100℃で60分間加熱した。得られた画素パターンについて、遮光部により形成されたホール画素パターンを走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製「S-3000N」)を用いて観察し、下記基準で評価した。
○: ホール寸法が4.5μm以上、5.0μm未満(良好なレベル)
△: ホール寸法が4.0μm以上、4.5μm未満(実用可能なレベル)
×: ホール寸法が4.0μm未満(実用には適さないレベル)
【0237】
(脱ガス)
感光性樹脂組成物を、100mm×100mm、0.7mmのガラス基板(コーニング社製ガラスイーグル2000)にスピンコーターを用いて100℃60分間加熱後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布した基板を得た。次に、80℃に加熱したホットプレート上で2分間保持した後、超高圧水銀ランプを用いて、照度20mW/cm2、露光量100mJ/cm2で紫外線露光を行った。露光後の塗膜を有機アルカリ現像液NMD-3(東京応化工業社製)で1分間、パドル現像を行った。パドル現像後、20秒間スピンシャワーにて純水でリンスを行い、スピン乾燥により基板を乾燥させた後クリーンオーブン中100℃で60分間加熱した。
作製した塗膜を5mg剥がして採取し、TG/DTA測定を行い、初期質量に対する質量減少率(%)を測定し、下記基準で評価した。TG/DTAはセイコーインスツルメンツ社のEXSTAR TG/DTA6200を用い、窒素流量200mL/min、室温から5℃/minで150℃まで昇温し20分間保持するプログラムで測定した。
○:質量減少率が1.0%未満(良好なレベル)
△:質量減少率が1.0%以上、2.0%未満(実用可能なレベル)
×:質量減少率が2.0%以上(実用には適さないレベル)
【0238】
【表2】
[図:0001417596000023.jpg]
【0239】
【表3】
[図:0001417596000024.jpg]
【0240】
【表4】
[図:0001417596000025.jpg]
【0241】
【表5】
[図:0001417596000026.jpg]
【0242】
以下、表2~5中の略語について示す。
【0243】
≪無機微粒子(C)≫
PMA-ST:シリカ微粒子(日産化学社製、固形分30質量%)
PGM-AC-2140Y:シリカ微粒子(日産化学社製、固形分42質量%)
AS-520-A:アルミナ微粒子(日産化学社製、固形分20質量%)
ZR-20AS:ジルコニア微粒子(日産化学社製、固形分20質量%)
【0244】
≪光重合開始剤(D)≫
Irg.907:イルガキュア907(BASF社製)
2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン
Irg.OXE-01:イルガキュアOXE-01(BASF社製)
1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]
【0245】
≪溶剤(E)≫
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0246】
≪シランカップリング剤(F)≫
KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
KBM-503:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
KBM-5103:3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
KBM-803:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
【0247】
≪重合性化合物(G)≫
G-1:前記合成した重合性化合物。多官能ウレタンアクリレート45質量%含有
G-2:前記合成した重合性化合物。多官能ウレタンアクリレート80質量%含有
G-3(M402):アロニックスM-402(東亞合成社製)
ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレートの混合物
【0248】
≪レベリング剤≫
BYK-330 2%:ポリエーテル構造含有ジメチルシロキサンのPGMEA溶液(不揮発分2質量%に調整(ビックケミー社製)
【0249】
表5に示すように、無水コハク酸を用いた特定樹脂(A)と、重合性多分岐ウレタン化合物(B)と、無機微粒子(C)とを含む本願の感光性樹脂組成物は、薬品耐性、硬度、解像性、脱ガス評価の全てにおいて実用可能なレベルを満足するものであった。一方、比較例1及び2に示した、重合性多分岐ウレタン化合物(B)を含むが、無機微粒子(C)を含まない感光性樹脂組成物は、薬品耐性、鉛筆硬度、解像性評価において劣る結果となった。また、比較例3及び4に示した、無機微粒子(C)を含むが、重合性多分岐ウレタン化合物(B)を含まない感光性樹脂組成物は、薬品耐性、鉛筆硬度及び脱ガス評価のいずれかにおいて実用レベルに達していない。さらに、無水コハク酸ではなく、テトラヒドロ無水フタル酸を用いた樹脂(A-3)を使用した比較例5では、薬品耐性及び脱ガス評価において実用レベルに達しなかった。
【0250】
以上の結果より、本願の感光性樹脂組成物により、基板への密着性と高い解像性を両立しながら、120℃以下の硬化温度であっても薬品耐性が良好で、脱ガス量が少なく、高い硬度の硬化膜を形成することが可能であった。すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、タッチパネル、液晶表示装置、有機EL装置等に用いられる、層間絶縁膜やオーバーコート膜に好適に用いることができるものである。」
(イ)甲2に記載された発明
甲2の実施例1に着目すると、甲2には次の発明が記載されていると認める。
「セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にPGMEA100部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら120℃に加熱して、同温度で滴下管よりスチレン5.2部、グリシジルメタクリレート35.5部、ジシクロペンタニルメタクリレート41.0部、アゾビスイソブチロニトリル2.5部の混合物を2.5時間かけて滴下し重合反応を行い、
次にフラスコ内を空気置換し、アクリル酸17.0部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.3部、及びハイドロキノン0.3部を投入し、120℃で5時間反応を続け固形分酸価=0.8mgKOH/gとなったところで反応を終了し、重量平均分子量が約5,000の樹脂溶液を得、
さらに無水コハク酸20.0部、トリエチルアミン0.5部を加え120℃で4時間反応させ、不揮発分が40%になるようにPGMEAを添加して樹脂溶液A-1を調製し、
該樹脂溶液A-1を27.5質量部、重合性多分岐ウレタン化合物を2.00質量部、PMA-ST20.00質量部、Irg.907を1.00質量部、PGMEAを28.5質量部、PGMEを20.00質量部、BYK-330を1.00質量部(総計100質量部)の混合物を均一になるように攪拌混合した後、孔径1μmのフィルタで濾過して得られた感光性樹脂組成物。」(以下、「甲2発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
a 甲2発明の「感光性樹脂組成物」は、光重合開始剤であるIrg.907を含むものであるから、上記「感光性樹脂組成物」は光硬化を意図しているものであり、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
b 甲2発明の「樹脂溶液A-1」の「樹脂」は、スチレン、グリシジルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートを重合した後、アクリル酸を投入して反応させて得られた重量平均分子量が約5000のエチレン性不飽和基を有する感光性樹脂に、さらに無水コハク酸を反応させて得られたエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂である。
まず、上記エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂は、本件発明1の「(A)硬化性樹脂」に相当する。
そして、甲2発明の「樹脂溶液A-1」は不揮発分40%、残部がPGMEAであって、感光性樹脂組成物100質量部に「樹脂溶液A-1」を27.5質量部含むから、「樹脂」は、感光性樹脂組成物中に11質量%(=27.5×0.4×100/100)含むものである。
そうすると、甲2発明の「樹脂」の含有量が、感光性樹脂組成物中において11質量%であることと、本件発明1の「前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20~50質量%であ」ることとは、「カルボキシル基含有樹脂の含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であ」る限りにおいて一致する。
c 甲2発明の「PMA-ST」は、甲2の段落【0230】の実施例1によれば、シリカ微粒子(日産化学社製、固形分42質量%)であるから、本件発明1の「(B)フィラー」に相当する。
そして、甲2発明の「PMA-ST」が、シリカ微粒子(日産化学社製、固形分42質量%)であって、感光性樹脂組成物中100質量部にシリカ粒子を20質量部含むから、シリカ粒子は、感光性樹脂組成物中に8.4質量%(=20×0.42×100/100)含むものである。
他方、甲2発明の「PMA-ST」は、日産化学株式会社のホームページによると、オルガノシリカゾル(標準グレード、疎水性溶媒に分散したシリカゾル)(https://www.nissanchem.co.jp/products/materials/inorganic/products/02/)によれば、分散剤がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで、固形分が30wt%となっていることから、シリカ粒子は、感光性樹脂組成物中に6質量%(=20×0.3×100/100)含むものともいえる。
ここで、上記「PMA-ST」の固形分において、どちらかに誤記があると推察されるが、以下、両方について検討することにする。
甲2発明のシリカ粒子の含有量は、「感光性樹脂組成物」中において8.4質量%又は6質量%であることと、本件発明1の「前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であ」ることとは、「(B)フィラーの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であ」る限りにおいて一致する。
d 甲2発明の「PGMEA」は、「樹脂溶液A-1」、「BYK-330」及び「感光性樹脂組成物」に含まれるものであり、「PGME」とともに、本件発明1の「有機溶剤」に相当する。
そして、上記「PGMEA」は、「樹脂溶液A-1」の不揮発分が40%であること、「PMA-ST」の固形分が30質量%又は42質量%であること、「BYK-330」の不揮発分が2質量%であることから、「樹脂溶液A-1」中の「PGMEA」が11.97質量部、「PMA-ST」中の「PGMEA」が11.6質量部又は14質量部、「BYK-330」中の「PGMEA」が0.98質量部、そして「感光性樹脂組成物」中の溶剤として「PGMEA」が33.05質量部が含まれていることになり、「PGMEA」は感光性樹脂組成物100質量部中57.6質量部又は60質量部含むから、「PGMEA」は、「感光性樹脂組成物」中に57.6質量%又は60質量%含むものである。
そうすると、甲2発明の「PGMEA」の含有量は、「感光性樹脂組成物」中において、57.6質量%又は60質量%であることと、本件発明1の「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上50質量%以下であ」ることとは、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であ」る限りにおいて、一致する。
以上から、本件発明1と甲2発明とは、
「(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)硬化性樹脂が、カルボキシル基含有樹脂を含み、前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であり、
前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、(B)フィラーの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であり、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合である、硬化性樹脂組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点7>
カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量に関し、本件発明1では、「6000以下」であるのに対し、甲2発明では「6000以下」であるか不明である点
<相違点8>
硬化性樹脂組成物中におけるカルボキシル基含有樹脂、(B)フィラー、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの各々の含有量に関し、本件発明1では、順に、「20~50質量%」、「10質量%以上45質量%以下」、「20質量%以上50質量%以下」であるのに対し、甲2発明では、順に、11質量%、8.4質量%又は6質量%、57.6質量%である点
<相違点9>
硬化性樹脂組成物において、本件発明1では、「本件物性」が特定されているのに対し、甲2発明では、「本件物性」が特定されていない点
(イ)判断
事案に鑑みて、上記相違点8及び相違点9について併せて検討する。
甲2発明では、感光性樹脂組成物中において、カルボキシル基含有樹脂、(B)フィラー、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの各々の含有量が、それぞれ11質量%、8.4質量%又は6質量%、57.6質量%であるところ、本件発明1の各々の含有量と重複しないから、上記相違点8は、実質的な相違点である。
さらに、甲2発明には、「本件物性」における「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」に係る発明特定事項がなく、また、甲2においても同様に、「本件物性」における「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」について何ら記載されていないことから、「本件物性」を満たしていないと認められ、上記相違点9は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲2発明ではない。
ついで、進歩性について検討する。
上述のとおり、甲2には、感光性樹脂組成物の「本件物性」における「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」について何ら記載されていないのであるから、甲2発明において、「本件物性」とすること、併せて、「本件物性」とするために感光性樹脂組成物中における各々の成分の含有量を変更する動機付けもない。
また、甲1、3、参1~6には、「本件物性」に関して何ら記載されていない。
そうすると、相違点9に係る「本件物性」はもちろんのこと、相違点8に係る各々の成分の含有量も、当業者が容易に想到し得たものではない。
そして、本件発明1は、「(A)硬化性樹脂」が重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、「(B)フィラー」がシリカ又は硫酸バリウムであり、「(C)有機溶剤」がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む硬化性樹脂組成物であって、上記カルボキシル基含有樹脂、上記(B)フィラー、及び上記プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの各々が硬化性樹脂組成物中において特定の含有量であることにより、「本件物性」を満たし、洗浄除去性に優れるという効果を奏するものである。
(ウ)小括
以上から、本件発明1は、相違点7について検討するまでもなく、甲2に記載された発明でないし、甲2に記載された発明及び甲1~3、参1~6の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
ウ 本件発明2、3、5~7について
本件発明2、3、5~7は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記イで述べたのと同じ理由により、本件発明2、3、5、7は、甲2に記載された発明でないし、本件発明2、3、5~7は、甲2に記載された発明及び甲1~3、参1~6の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 小括
以上から、本件特許の請求項1~3、5、7に係る発明は、甲2に記載された発明でないし、同請求項1~3、5~7に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、申立理由1-2及び同2-2によっては、本件特許の請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すことができない。
(3)申立理由1-3(甲3に基づく新規性欠如)及び申立理由2-3(甲3に基づく進歩性欠如)
申立理由1-3及び同2-3は、いずれも甲3に基づくものであるから、併せて検討する。
ア 甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明
(ア)甲3に記載された事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
「[請求項1]
平均粒径が50nm以下の湿式シリカ粒子(A)、重合性化合物(B)、重合開始剤(C)及び着色剤(D)を含有する硬化性組成物。」
「[0028]
本発明の硬化性組成物において、上記シリカ粒子(A)の含有量は、特に限定されるものではないが、上記着色剤(D)100質量部に対して、好ましくは0.1~70質量部、より好ましくは0.5~50質量部であり、更に好ましくは、5~20質量部である。シリカ粒子(A)の含有量が上述の範囲の場合、シリカ粒子及び着色剤の分散性に優れた硬化性組成物並びに抵抗が高く、高精細を備えた硬化物が得られることから好ましい。」
「[0074]
本発明の硬化性組成物において、重合性化合物(B)の含有量は、特に限定されるものではないが、シリカ粒子(A)、重合性化合物(B)、重合開始剤(C)及び着色剤(D)の合計100質量部に対して、硬化性が良好なことから好ましくは、10~70質量部、より好ましくは、20~50質量部であり、更に好ましくは、30~50質量部である。重合性化合物(B)の含有量が、上記の範囲内である場合、得られる硬化物が硬化性及び遮光性に優れることから好ましい。」
「[0129]
本発明の硬化性組成物において、上記着色剤(D)の含有量は、特に限定されるものではないが、上記重合性化合物(B)100質量部に対して、好ましくは、50~500質量部、より好ましくは、150~350質量部であり、更に好ましくは、150~300質量部である。着色剤の含有量が上記の範囲内である場合、着色剤の凝集を伴わない保存安定性に優れた硬化性組成物となり、硬化性組成物の硬化物が、遮光性が高いことから好ましい。」
「[0136]
本発明の硬化性組成物において、上記溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、硬化性組成物全量に対して70~95質量%になることが好ましい。溶剤の含有量が上記範囲の場合、ハンドリング性(硬化性組成物の粘度や濡れ性)及び液安定性(組成物に含まれる成分の析出や沈降を伴わない)に優れる硬化性組成物並びに硬化物の厚さを適切にコントロールできることから好ましい。」
「[0138]
本発明の硬化性組成物には、更に無機化合物を含有させることができる。該無機化合物としては、例えば、・・・、これらの中でも、酸化チタン、シリカ、層状粘土鉱物、及び銀等が好ましい。本発明の硬化性組成物において、無機化合物の含有量は、上記重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~50質量部、より好ましくは0.5~20質量部であり、これらの無機化合物は1種又は2種以上を使用することができる。」
「[0149]
本発明の硬化性組成物は、硬化性塗料、ワニス、硬化性接着剤、プリント基板、或いはカラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末及びデジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示パネルにおけるカラーフィルタ、携帯情報端末及びデジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示パネルにおけるブラックカラムスペーサー、種々の表示用途用のブラックカラムスペーサー、有機ELの黒色隔壁、CCDイメージセンサのカラーフィルタ、タッチパネル、プラズマ表示パネル用の電極材料、粉末コーティング、印刷インク、印刷版、接着剤、ゲルコート、電子工学用のフォトレジスト、電気メッキレジスト、エッチングレジスト、はんだレジスト、絶縁膜、ブラックマトリクス、種々の表示用途用のカラーフィルタ、プラズマ表示パネル、電気発光表示装置、及びLCDの製造工程において構造を形成するためのレジスト、電気及び電子部品を封入するための組成物、ソルダーレジスト、磁気記録材料、微小機械部品、導波路、光スイッチ、めっき用マスク、エッチングマスク、カラー試験系、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷用ステンシル、ステレオリトグラフィによって三次元物体を製造するための材料、ホログラフィ記録用材料、画像記録材料、微細電子回路、脱色材料、画像記録材料のための脱色材料、マイクロカプセルを使用する画像記録材料用の脱色材料、印刷配線板用フォトレジスト材料、UV及び可視レーザー直接画像系用のフォトレジスト材料、プリント回路基板の逐次積層における誘電体層形成に使用するフォトレジスト材料及び保護膜等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
・・・
[0151]
硬化性組成物の塗布方法は、ロールコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段であり、ガラス、金属、紙、プラスチック等の支持基体上に適用される。また、一旦フィルム等の支持基体上に施した後、他の支持基体上に転写すること、即ちドライフィルムの形態として使用することもでき、その適用方法に制限はない。」
「実施例
[0160]
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
[0161]
[製造例1]重合性化合物No.1のPGMEA溶液調製
1,1-ビス〔4-(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル〕インダン184g、アクリル酸58g、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.26g、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド0.11g及びPGMEA105gを仕込み、120℃で16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、PGMEA160g、ビフタル酸無水物59g及びテトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド0.24gを加えて、120℃で4時間撹拌した。更に、テトラヒドロ無水フタル酸20gを加え、120℃で4時間、100℃で3時間、80℃で4時間、60℃で6時間、40℃で11時間撹拌した後、PGMEA128gを加えて、重合性化合物No.1のPGMEA溶液を得た(Mw=5000、Mn=2100、酸価(固形分)92.7mgKOH/g)。
[0162]
[製造例2]重合性化合物No.2のPGMEA溶液調製
1,1-ビス〔4-(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル〕インダン43g、アクリル酸13.5g、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.05g、テトラブチルアンモニウムアセテート0.11g及びPGMEA23gを仕込み、120℃で16時間撹拌した。室温まで冷却し、PGMEA35g及びビフタル酸無水物11.5gを加えて120℃で8時間撹拌した。更にテトラヒドロ無水フタル酸7.4gを加えて120℃で4時間、100℃で3時間、80℃で4時間、60℃で6時間、40℃で11時間撹拌後、PGMEA34.4gを加えて、重合性化合物No.2のPGMEA溶液を得た(Mw=4000、Mn=2100、酸価(固形分)86mgKOH/g)。
[0163]
[製造例3]重合性化合物No.3のPGMEA溶液製造
9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン75.0g、アクリル酸23.8g、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.273g、テトラブチルアンモニウムクロリド0.585g、及びPGMEA65.9gを仕込み、90℃で1時間、100℃で1時間、110℃ で1時間及び120℃ で14時間撹拌した。室温まで冷却し、無水コハク酸25.9g、テトラブチルアンモニウムクロリド0.427g、及びPGMEA1.37gを加えて、100℃で5時間撹拌した。更に、9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン30.0g、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.269g、及びPGMEA1.50gを加えて、90℃で90分、120℃ で4時間撹拌後、PGMEA122.2gを加えて、重合性化合物No.3のPGMEA溶液を得た(Mw=4190、Mn=2170,酸価(固形分)52mg・KOH/g)
[0164]
[製造例4]カーボンブラックNo.1の製造
MA100(三菱化学社製カーボンブラック)150g及びペルオキソ2硫酸ナトリウム脱イオン水溶液(濃度2.0N)3000mlを混合し、60℃で10時間撹拌した。ろ過し、得られたスラリーを水酸化ナトリウムで中和し、ダイアフィルトレーションにより処理し、得られた固体を75℃で一晩乾燥し、黒色粉末としてカーボンブラックNo.1を得た。
[0165]
[製造例5]カーボンブラックNo.2の製造
MA100(三菱化学社製カーボンブラック)150g及びスルホラン400mlを混合し、アミド硫酸15gを添加して140~150℃で10時間撹拌した。得られたスラリーを水酸化リチウムで中和し、ダイアフィルトレーションにより処理し、得られた固体を75℃で一晩乾燥し、黒色粉末としてカーボンブラックNo.2を得た。
[0166]
[製造例6]カーボンブラック分散液No.1の製造
カーボンブラックNo.1を16g、重合性化合物No.1のPGMEA溶液を3.6g、DISPERBYK-161(ビックケミー製、分散剤)を2.4g及びPGMEAを78g、それぞれ秤量して合わせ、ビーズミルにより処理して、カーボンブラック分散液No.1を得た。
[0167]
[製造例7]カーボンブラック分散液No.2の製造
カーボンブラックNo.2を16g、重合性化合物No.1のPGMEA溶液を3.6g、DISPERBYK-161を2.4g及びPGMEAを78g、それぞれ秤量して合わせ、ビーズミルにより処理して、カーボンブラック分散液No.2を得た。
[0168]
[実施例1~16及び比較例1~4]硬化性組成物の調製
[表2]~[表4]の配合に従って各成分を混合し、硬化性組成物(実施例1~16及び比較例1~4)を得た。尚、表中の配合の数値は質量部を表す。
また、表中の各成分の符号は、下記の成分を表す。
A-1 PL-2L-PGME (コロイダルシリカ;扶桑化学社製)
A-2 YA010C-LDI (コロイダルシリカ;アドマテックス社製)
A-3 PMA-ST (コロイダルシリカ;日産化学社製)
A-4 YA050C-LHI (コロイダルシリカ;アドマテックス社製)
A-5 YA010C-SP3 (粉末シリカ;アドマテックス社製)
A’-1 AEROSIL 100 (粉末シリカ;アエロジル社製)
A’-2 AEROSIL OX-50 (粉末シリカ;アエロジル社製)
A’-3 SC2050-MB (コロイダルシリカ;アドマテックス社製)
B-1 重合性化合物No.1のPGMEA溶液 (固形分 45wt%)
B-2 重合性化合物No.2のPGMEA溶液 (固形分 45wt%)
B-3 重合性化合物No.3のPGMEA溶液 (固形分 45wt%)
B-4 カヤラッドDPHA (重合性化合物;日本化薬社製)
C-1 化合物No.C1
C-2 化合物No.C2
D-1 カーボンブラック分散液 No.1
D-2 カーボンブラック分散液 No.2
E-1 PGMEA
F-1 KBM-403 (カップリング剤;信越化学社製)
[0169]
上記シリカ粒子のパラメーターを[表1]に纏めた。
[表1]
[図:0001417596000027.jpg]
[0170]
[表2]
[図:0001417596000028.jpg]
[0171]
[表3]
[図:0001417596000029.jpg]
[0172]
[表4]
[図:0001417596000030.jpg]
[0173]
[評価例1~16及び比較評価例1~4]
実施例1~16で得られた硬化性組成物No.1~No.16及び比較例1~4で得られた比較硬化性組成物No.1~No.4について、下記のようにして最小密着線幅、表面粗さRa、体積抵抗率、テーパー角及びOD値の評価を行った。結果を[表5]~[表7]に示す。
[0174]
(最小密着線幅)
硬化性組成物をガラス基板(10cm×10cm)にスピン塗布し、100℃にて100秒間加熱することにより、ガラス基板の表面に1.0μmの塗布膜を形成させた。その後、マイクロテック社製プロキシミティ露光機を使用し、1-20μmのパターンの形成されたネガ型マスクを介して、露光量40mJ/cm2(Gap100μm)で露光させた。露光後の膜を、23℃の0.04質量%KOH水溶液で40秒間現像後、230℃にて30分間焼成処理を行なった。光学顕微鏡を観察し、ガラス基板上に残存した最小のフォトマスクパターンを最小密着線幅とした。最小密着線幅が6μm以下であれば高精細である。一方、7μm以上の場合高精細とはいえない。
[0175]
(表面粗さRa)
硬化性組成物をガラス基板(10cm×10cm)にスピン塗布し、100℃にて100秒間加熱することにより、ガラス基板の表面に1.0μmの塗布膜を形成させた。その後、230℃にて30分間焼成処理を行なった。アルバック社表面段差計(DEKTAK6M)を利用し、膜の表面粗さRaを測定した。表面粗さRaが100Å以下であれば、着色剤とシリカがよく分散されていることを示し、表面がなめらかとなり、充分な遮光性が得られる。一方、100Å以上の場合、着色剤とシリカがよく分散されておらず表面が荒れてしまい、充分な遮光性(OD値)が得られない。
[0176]
(体積抵抗率)
クロムスパッタされた基板に硬化性組成物の厚さが4μmとなるようにスピンコーティングし、プレベイクとして110℃にて2分焼成した後、光源として高圧水銀ランプを用い100mJ/cm2で露光し、次いでポストベイクとして230℃にて180分焼成して硬化物を作成した。硬化物の上に白金電極をスパッタ処理により作成した。クロム部位と白金電極に導線をつけ、抵抗測定器をつなげて体積抵抗率の測定を行った。単位はΩ・cmである。
体積抵抗率が1010Ω・cm以上の硬化物はIPS液晶ディスプレイのカラーフィルタ用高抵抗ブラックマトリクスとして使用することができ、体積抵抗率が1011Ω・cm以上の硬化物はブラックマトリクスとしてより好ましく使用することができる。
[0177]
(OD値)
基板上に上記硬化性組成物又は比較硬化性組成物をスピンコート(1300rpm、50秒間)し乾燥させた後、100℃で100秒間プリベークを行った。
光源として超高圧水銀ランプを用いて100mJ/cm2で露光後した後、230℃で30分間ベークして硬化物を作成した。得られた膜のOD値を、マクベス透過濃度計を用いて測定し、該OD値をポストベイク後の厚さで割って、厚さあたりのOD値を算出した。
厚さあたりのOD値が3.0以上の硬化物はブラックマトリクスとして使用することができ、厚さあたりのOD値が3.5以上の硬化物はブラックマトリクスとして好ましく使用することができる。
[0178]
(テーパー角)
硬化性組成物をガラス基板(10cm×10cm)に硬化性組成物をスピン塗布し、100℃にて100秒間加熱することにより、ガラス基板の表面に1.0μmの塗布膜を形成させた。その後、マイクロテック社製プロキシミティ露光機を使用し、6μmのパターンの形成されたネガ型マスクを介して、露光量40mJ/cm2(Gap100μm)で露光させた。露光後の膜を、23℃の0.04質量%KOH水溶液で40秒間現像後、230℃にて30分間焼成処理を行い、走査電子顕微鏡にてパターンと基板との間の接合角度(テーパー角)を測定した。このテーパー角は、下記に示す図1の(a)及び(b)における角θに対応する。(a)テーパー角が鋭角の場合、パターンにアンダーカットが存在しないことを意味し、(b)テーパー角が鈍角の場合、パターンにアンダーカットが存在することを意味する。パターンにアンダーカットが存在すると表示不良が起きる場合があるので好ましくない。テーパー角が70~90°の場合、得られる硬化物のパターンが高精細になることから良好である。
[0179]
[表5]
[図:0001417596000031.jpg]
[0180]
[表6]
[図:0001417596000032.jpg]
[0181]
[表7]
[図:0001417596000033.jpg]
[0182]
以上の結果より、本発明の硬化性組成物は、高体積抵抗及び高遮光性(OD値)に優れ、高精細(最小密着線幅、テーパー角)なパターン形状を有した硬化物を提供できることから有用であることが明らかである。従って、本発明の硬化性樹脂及び硬化物は、電子材料用硬化性樹脂組成物、特にブラックマトリクスに有用である。
産業上の利用可能性
[0183]
本発明の硬化性組成物は、高抵抗及び高精細なパターンの形成を満足できる水準で満たす硬化物を得ることができるため、カラーフィルタ用途のレジストとして有用である。また、着色剤として黒色顔料を用いた硬化性組成物の場合、高遮光な硬化物が作製できるため、ブラックマトリクス形成材料として特に有用である。」
(イ)甲3に記載された発明
甲3の実施例4に着目すると、甲3には次の発明が記載されていると認める。
「1,1-ビス〔4-(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル〕インダン184g、アクリル酸58g、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.26g、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド0.11g及びPGMEA105gを仕込み、120℃で16時間撹拌し、
反応液を室温まで冷却し、PGMEA160g、ビフタル酸無水物59g及びテトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド0.24gを加えて、120℃で4時間撹拌し、
更に、テトラヒドロ無水フタル酸20gを加え、120℃で4時間、100℃で3時間、80℃で4時間、60℃で6時間、40℃で11時間撹拌した後、PGMEA128gを加えて、重合性化合物No.1のPGMEA溶液(Mw=5000、Mn=2100、酸価(固形分)92.7mgKOH/g、固形分 45wt%)を得(以下、「B-1」という。)、
A-1:コロイダルシリカ(分散媒PGM、シリカ濃度25wt%)4.5質量部、
B-1:重合性化合物No.1のPGMEA溶液(固形分45wt%)9.4質量部、
B-4:カヤラッドDPHA(重合性化合物;日本化薬社製)1.9質量部、
C-1:化合物No.C1 0.6質量部
[図:0001417596000034.jpg]
D-1:カーボンブラック分散液No.1(カーボンブラックNo.1を16g、重合性化合物No.1のPGMEA溶液を3.6g、DISPERBYK-161(ビックケミー製、分散剤)を2.4g及びPGMEAを78gをビーズミルにより処理)55.5質量部、
E-1:PGMEA 27.8質量部、
F-1:KBM-403(カップリング剤;信越化学社製)0.3質量部、
を混合して得られた硬化性組成物。」(以下、「甲3発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
a 甲3発明の「硬化性組成物」の「重合性化合物No.1」は、1,1-ビス〔4-(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル〕インダン、アクリル酸を反応させた後、ビフタル酸無水物を加えて撹拌し、更に、テトラヒドロ無水フタル酸を加えて攪拌して得られるものであって、重量平均分子量が約5000のエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有重合性化合物である。
まず、「重合性化合物No.1」は、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂であるから、本件発明1の「(A)硬化性樹脂」に相当する。
ついで、上記「重合性化合物No.1」が、重量平均分子量が約5000のエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂であるから、上記「重合性化合物No.1」を含むことは、本件発明1の「前記(A)硬化性樹脂が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含」むことに相当する。
そして、甲3発明の「重合性化合物No.1のPGMEA溶液」は固形分45wt%であって、硬化性組成物100質量部に「重合性化合物No.1のPGMEA溶液」を9.4質量部含むから、「重合性化合物No.1」は、硬化性組成物中に4.23質量%(=9.4×0.45×100/100)含むものである。
そうすると、甲3発明の「重合性化合物No.1」の含有量が、硬化性組成物中において4.23質量%であることと、本件発明1の「前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20~50質量%であ」ることとは、「カルボキシル基含有樹脂の含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であ」る限りにおいて一致する。
b 甲3発明の「コロイダルシリカ(分散媒PGM、シリカ濃度25wt%)」は、本件発明1の「(B)フィラー」であり、「前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含」むことに相当する。
そして、甲3発明の「コロイダルシリカ」がシリカ濃度25wt%であって、硬化性組成物中100質量部にシリカ粒子を20質量部含むから、シリカ粒子は、硬化性組成物中に1.125質量%(=4.5×0.25×100/100)含むものである。
そうすると、甲3発明の「コロイダルシリカ」の含有量が、硬化性組成物中において1.125質量%であることと、本件発明1の「前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、10質量%以上45質量%以下であ」ることとは、「(B)フィラーの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であ」る限りにおいて一致する。
c 甲3発明の「PGMEA」は、「B-1:重合性化合物No.1のPGMEA溶液(固形分45wt%)」、「D-1:カーボンブラック分散液No.1(カーボンブラックNo.1を16g、重合性化合物No.1のPGMEA溶液を3.6g、DISPERBYK-161(ビックケミー製、分散剤)を2.4g及びPGMEAを78gをビーズミルにより処理)」及び「硬化性組成物」中に「E-1 PGMEA」として含まれるものであるから、本件発明1の「有機溶剤」に相当する。
そして、甲3発明の「PGMEA」について、「B-1:重合性化合物No.1のPGMEA溶液」の固形分が45wt%であること(9.4×0.55≒5.2質量部)、「D-1:カーボンブラック分散液No.1」に「重合性化合物No.1のPGMEA溶液」及び「PGMEA」として含有すること((3.6×0.55+78)×55.5/100≒44.4質量部)、「硬化性組成物」中に「PGMEA」(27.8質量部)を含有することから、「PGMEA」の総含有量は77.4質量部(5.2+44.4+27.8)となり、硬化性組成物100質量部に対して77.4質量%の含有率となる。
そうすると、甲3発明の「PGMEA」の含有量が、硬化性組成物中において77.4質量%であることと、本件発明1の「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上50重量%以下であ」ることとは、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であ」る限りにおいて一致する。
d 上記aで述べたとおり、甲3発明の「硬化性組成物」は、「重合性化合物No.1」であるエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂を含むものであるから、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
以上から、本件発明1と甲3発明とは、
「(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)硬化性樹脂が、重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、前記カルボキシル基含有樹脂の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であり、
前記(B)フィラーが、シリカおよび硫酸バリウムの少なくとも1種を含み、(B)フィラーの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合であり、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、硬化性樹脂組成物中において、特定の含有割合である、硬化性樹脂組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点10>
硬化性樹脂組成物中におけるカルボキシル基含有樹脂、(B)フィラー、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの各々の含有量に関し、本件発明1では、順に、「20~50質量%」、「10質量%以上45質量%以下」、「20質量%以上50質量%以下」であるのに対し、甲3発明では、順に、4.23質量%、1.125質量%、77.4質量%である点
<相違点11>
硬化性樹脂組成物において、本件発明1では、「本件物性」が特定されているのに対し、甲3発明では、「本件物性」が特定されていない点
(イ)判断
上記相違点10及び相違点11について併せて検討する。
甲3発明では、硬化性組成物中において、カルボキシル基含有樹脂、(B)フィラー、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの各々の含有量が、それぞれ4.23質量%、1.125質量%、77.4質量%であるところ、本件発明1の各々の含有量と重複しないから、上記相違点10は、実質的な相違点である。
さらに、甲3発明には、「本件物性」における「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」に係る発明特定事項がなく、また、甲3においても同様に、「本件物性」における「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」について何ら記載されていないことから、「本件物性」を満たしていないと認められ、上記相違点11は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲3発明ではない。
ついで、進歩性について検討する。
上述のとおり、甲3には、硬化性組成物の「本件物性」における「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」について何ら記載されていないのであるから、甲3発明において、「本件物性」とすること、併せて、「本件物性」とするために硬化性組成物中における各々の成分の含有量を変更する動機付けもない。
また、甲1、2、参1~6には、「本件物性」に関して何ら記載されていない。
そうすると、相違点11に係る「本件物性」はもちろんのこと、相違点10に係る各々の成分の含有量も、当業者が容易に想到し得たものではない。
そして、本件発明1は、「(A)硬化性樹脂」が重量平均分子量が6000以下のカルボキシル基含有樹脂を含み、「(B)フィラー」がシリカ又は硫酸バリウムであり、「(C)有機溶剤」がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む硬化性樹脂組成物であって、上記カルボキシル基含有樹脂、上記(B)フィラー、及び上記プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの各々が硬化性樹脂組成物中において特定の含有量であることにより、「本件物性」を満たし、洗浄除去性に優れるという効果を奏するものである。
(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明でないし、甲3に記載された発明及び甲1~3、参1~6の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
ウ 本件発明2、3、5~7について
本件発明2、3、5~7は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記イで述べたのと同じ理由により、本件発明2、3、5~7は、甲3に記載された発明でないし、甲3に記載された発明及び甲1~3、参1~6の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 本件発明8について
本件発明8は、第一のフィルムと、前記第一のフィルム上に形成された硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備える、ドライフィルムであって、上記硬化性樹脂組成物が、本件発明1であることを特定したものである。
そうすると、本件発明8と甲3発明とは、上記イ(ア)における相違点10、11に加えて、相違点12で相違する以外の発明特定事項は一致する。
<相違点12>
本件発明8では、「第一のフィルムと、前記第一のフィルム上に形成された硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備える、ドライフィルム」であるのに対し、甲3発明では、そのような特定がない点
そこで、相違点10、11について検討すると、上記イ(イ)と同様の理由により、甲3に記載された発明及び甲3の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件発明8は、相違点12について検討するまでもなく、甲3に記載された発明でないし、甲3に記載された発明及び甲1~3、参1~6の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
オ 小括
以上から、本件特許の請求項1~3、5~8に係る発明は、甲3に記載された発明でないし、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、申立理由1-3及び同2-3によっては、本件特許の請求項1~3、5~8に係る特許を取り消すことができない。
(4)申立理由4(明確性要件違反)
申立理由4は、上記1で述べたことを受けて、出願時の技術常識を考慮すると、本件発明1の本件物性に係る発明特定事項では、機能、特性等によって記載された発明特定事項であって、技術的に十分に特定されていないことが明らかであり、明細書及び図面の記載を考慮しても、当業者が請求項の記載から発明を明確に把握できないというものである。
そこで、検討する。
上記本件物性について、本件発明1には、「前記硬化性樹脂組成物を用いて形成した縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であり、かつ、溶解完了時間が、前記洗浄溶剤へ浸漬開始から40秒以内である」ことが記載されている。
まず、「前記硬化性樹脂組成物」は、本件発明1において、本件物性に関する発明特定事項の前に、(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、及び(C)有機溶剤を含有し、それらの各成分の内訳と組成物中での含有量が具体的に記載されている。
ついで、「洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する」「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」については、それぞれ20秒以内、40秒以内であることが特定されている。
さらに、当該「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」については、図1に見られるような試験片の「縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜」部分を用いて、本件明細書の段落【0109】に記載された測定方法に則って、実際に測定し、実施例1~7、比較例1~3として、表2に測定結果を示している。
そうすると、本件発明1の「本件物性」に係る発明特定事項には、何ら不明なことがない。
そして、請求項2において、引用する請求項1を更に限定した「溶解開始時間」及び「溶解完了時間」に関する発明特定事項があるところ、上述と同様の理由により、明確である。
また、請求項1、2を直接又は間接的に引用する請求項3~7、及び同じ「本件物性」に関する発明特定事項を有する請求項8についても同様である。
よって、申立理由4によっては、本件特許の請求項1~3、5~8に係る特許を取り消すことができない。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許に対する訂正は適法であるから、これを認める。
そして、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1~3、5~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~3、5~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項4は、本件訂正により削除されたため、請求項4に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700234