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特許異議申立

2023-700019

感光性着色組成物、着色スペーサー及び画像表示装置

審判番号
2023-700019
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-011372外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7099563
請求日
2023年01月11日
審決日
2024年08月30日
公報発行日
2024年12月27日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(G03F) / P1651.113-YAA(G03F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7099563号発明「感光性着色組成物、着色スペーサー及び画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7099563号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。 特許第7099563号の請求項1~3、5~13に係る特許を維持する。 特許第7099563号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7099563号(請求項の数13。以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2021-11372号。以下「本件特許出願」という。)は、2014年(平成26年)9月22日(優先権主張 平成25年9月25日)を国際出願日とする特願2015-506015号の一部を令和元年2月27日に新たな特許出願(特願2019-34154号)とし、当該特願2019-34154号の一部を令和3年1月27日に新たな特許出願としたものであって、令和4年7月4日にその特許権の設定登録がされ、同月12日に特許掲載公報が発行された。 その後、特許掲載公報の発行の日から六月以内である令和5年1月11日に特許異議申立人(以下「申立人」という。)より本件特許の請求項1~13に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされ、同年6月27日付けで取消理由が通知され、同年8月25日に特許権者から訂正請求書及び意見書が提出され、同年12月27日に申立人から意見書が提出され、令和6年2月19日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、同年4月19日に特許権者から訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求により請求された訂正を「本件訂正」という。また、特許法120条の5第7項の規定により、本件訂正請求がされたことによって、令和5年8月25日にされた訂正の請求は取り下げられたものとみなす。)及び意見書が提出され、同年5月23日に申立人から意見書が提出された。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 本件訂正請求の趣旨は、特許第7099563号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める、というものであって、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなる(下線は訂正箇所を表す。)。 訂正事項1: 請求項1に 「 (A)色材、(B)分散剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を少なくとも含有する感光性着色組成物であって、 前記(A)色材が(A-1)下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含み、 前記(A)色材の含有量が、感光性着色組成物中の全固形分量に対して20質量%以上であり、かつ、 前記(B)分散剤が4級アンモニウム塩基を官能基として有する高分子分散剤を含み、 前記(C)アルカリ可溶性樹脂が、下記アルカリ可溶性樹脂(c1)及び下記アルカリ可溶性樹脂(c2)の少なくともいずれかを含む、感光性着色組成物。 【化1】 [図:0001417592000001.jpg] [式(1)中、R1およびR6は互いに独立して水素原子、CH3、CF3、フッ素原子または塩素原子である;R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11R12、CN、OH、OR11、COCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR11R12、NO2、NH2、NHR11、NR11R12、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR11R12、SH、SR11、SOR11、SO2R11、SO3R11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR11R12である;且つ、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R7とR8、R8とR9、及びR9とR10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR11ブリッジによって互いに結合することもできる;R11およびR12は互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基である。] <アルカリ可溶性樹脂(c1)> エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸及び/又はその無水物を反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。 <アルカリ可溶性樹脂(c2)> エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール、並びに多塩基酸及び/又はその無水物と反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。」 とあるのを、 「 (A)色材、(B)分散剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を少なくとも含有する感光性着色組成物であって、 前記(A)色材が(A-1)下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含み、 前記(A)色材の含有量が、感光性着色組成物中の全固形分量に対して20質量%以上であり、かつ、 前記(B)分散剤が、下記一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩基及び3級アミンを官能基として有する高分子分散剤であり、 前記(B)分散剤の含有量が、感光性着色組成物中の全固形分量に対して1質量%以上30質量%以下であり、 前記(C)アルカリ可溶性樹脂が、下記アルカリ可溶性樹脂(c1)及び下記アルカリ可溶性樹脂(c2)の少なくともいずれかを含む、感光性着色組成物。 【化1】 [図:0001417592000002.jpg] [式(1)中、R1およびR6は互いに独立して水素原子、CH3、CF3、フッ素原子または塩素原子である;R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11R12、CN、OH、OR11、COCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR11R12、NO2、NH2、NHR11、NR11R12、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR11R12、SH、SR11、SOR11、SO2R11、SO3R11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR11R12である;且つ、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R7とR8、R8とR9、及びR9とR10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR11ブリッジによって互いに結合することもできる;R11およびR12は互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基である。] 【化2】 [図:0001417592000003.jpg] [式(i)中、R31~R33は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、R31~R33のうち2つ以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。R34は水素原子又はメチル基である。Xは2価の連結基であり、Y-は対アニオンである。] 【化3】 [図:0001417592000004.jpg] [式(ii)中、R35及びR36は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、R35及びR36が互いに結合して環状構造を形成してもよい。R37は水素原子又はメチル基である。Zは2価の連結基である。] 【化4】 [図:0001417592000005.jpg] [式(iii)中、R40はエチレン基又はプロピレン基であり、R41は置換基を有していてもよいアルキル基であり、R42は水素原子又はメチル基である。nは1~20の整数である。] <アルカリ可溶性樹脂(c1)> エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸及び/又はその無水物を反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。 <アルカリ可溶性樹脂(c2)> エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール、並びに多塩基酸及び/又はその無水物と反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。」 に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する形式で記載された請求項2、3、5~13も同様に訂正する。) 訂正事項2: 請求項4を削除する。 訂正事項3: 請求項5に「請求項1~請求項4のいずれか1項」とあるのを、「請求項1~請求項3のいずれか1項」に訂正する。(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する形式で記載された請求項6~13も同様に訂正する。) 訂正事項4: 請求項8に「請求項1~請求項7のいずれか1項」とあるのを、「請求項1~請求項3及び請求項5~請求項7のいずれか1項」に訂正する。(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する形式で記載された請求項9~13も同様に訂正する。) 訂正事項5: 請求項9に「請求項1~請求項8のいずれか1項」とあるのを、「請求項1~請求項3及び請求項5~請求項8のいずれか1項」に訂正する。(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する形式で記載された請求項10~13も同様に訂正する。) 訂正事項6: 請求項10に「請求項1~請求項9のいずれか1項」とあるのを、「請求項1~請求項3及び請求項5~請求項9のいずれか1項」に訂正する。(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する形式で記載された請求項11~13も同様に訂正する。) 本件訂正請求は、一群の請求項〔1-13〕に対して請求されたものである。 2 訂正の適否の判断 (1)訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1に係る発明の感光性着色組成物に含有されている(B)分散剤が、本件訂正前には、4級アンモニウム塩基を官能基として有する高分子分散剤であること以外にはその構造が任意であったものを、一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩基及び3級アミンを官能基として有する高分子分散剤であるものに限定するとともに、当該(B)分散剤の含有量が、本件訂正前には任意であったものを、感光性着色組成物中の全固形分量に対して1質量%以上30質量%以下に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2は、特許請求の範囲から、請求項4を削除する訂正であり、訂正事項3~6は、請求項5~請求項13から、請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する部分を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 よって、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものである。 (2)新規事項の追加の有無について 訂正事項1による限定事項のうち(B)分散剤の構造に係る限定事項は、本件特許明細書の【0099】~【0101】、【0106】~【0108】及び【0116】~【0118】に記載された事項であり、(B)分散剤の含有量に係る限定事項は、本件特許明細書の【0238】に記載された事項であるから、訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 また、訂正事項2~6による訂正が、本件特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。 よって、本件訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (3)特許請求の範囲の拡張・変更の有無について 本件訂正は、特許請求の範囲を減縮するものであって、本件訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなることはないから、本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、本件訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 3 小括 前記2のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。 第3 本件特許の請求項1~3、5~13に係る発明 前記第2 3で述べたとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~3、5~13に係る発明(請求項4は削除された。以下、それぞれを「本件訂正発明1」~「本件訂正発明3」、「本件訂正発明5」~「本件訂正発明13」といい、本件訂正発明1~3、5~13を総称して「本件訂正発明」ということがある。)は、本件訂正後の請求項1~3、5~13に記載されたとおりの次のものと認められる。 【請求項1】 (A)色材、(B)分散剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を少なくとも含有する感光性着色組成物であって、 前記(A)色材が(A-1)下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含み、 前記(A)色材の含有量が、感光性着色組成物中の全固形分量に対して20質量%以上であり、かつ、 前記(B)分散剤が、下記一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩基及び3級アミンを官能基として有する高分子分散剤であり、 前記(B)分散剤の含有量が、感光性着色組成物中の全固形分量に対して1質量%以上30質量%以下であり、 前記(C)アルカリ可溶性樹脂が、下記アルカリ可溶性樹脂(c1)及び下記アルカリ可溶性樹脂(c2)の少なくともいずれかを含む、感光性着色組成物。 【化1】 [図:0001417592000006.jpg] [式(1)中、R1およびR6は互いに独立して水素原子、CH3、CF3、フッ素原子または塩素原子である;R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11R12、CN、OH、OR11、COCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR11R12、NO2、NH2、NHR11、NR11R12、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR11R12、SH、SR11、SOR11、SO2R11、SO3R11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR11R12である;且つ、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R7とR8、R8とR9、及びR9とR10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR11ブリッジによって互いに結合することもできる;R11およびR12は互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基である。] 【化2】 [図:0001417592000007.jpg] [式(i)中、R31~R33は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、R31~R33のうち2つ以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。R34は水素原子又はメチル基である。Xは2価の連結基であり、Y-は対アニオンである。] 【化3】 [図:0001417592000008.jpg] [式(ii)中、R35及びR36は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、R35及びR36が互いに結合して環状構造を形成してもよい。R37は水素原子又はメチル基である。Zは2価の連結基である。] 【化4】 [図:0001417592000009.jpg] [式(iii)中、R40はエチレン基又はプロピレン基であり、R41は置換基を有していてもよいアルキル基であり、R42は水素原子又はメチル基である。nは1~20の整数である。] <アルカリ可溶性樹脂(c1)> エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸及び/又はその無水物を反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。 <アルカリ可溶性樹脂(c2)> エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール、並びに多塩基酸及び/又はその無水物と反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。 【請求項2】 前記一般式(1)において、 式中、R2、R4、R5、R7、R9およびR10は互いに独立して水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、R3およびR8は互いに独立して水素原子、NO2、OCH3、OC2H5、臭素原子、塩素原子、CH3、C2H5、N(CH3)2、N(CH3)(C2H5)、N(C2H5)2、α-ナフチル、β-ナフチル、SO3HまたはSO3-であり、R1はR6と同一であり、R2はR7と同一であり、R3はR8と同一であり、R4はR9と同一であり、R5はR10と同一である、請求項1に記載の感光性着色組成物。 【請求項3】 前記(A)色材が下記一般式(2)で表される化合物である有機黒色顔料と、下記一般式(2)のスルホン酸誘導体を含む、請求項1又は請求項2に記載の感光性着色組成物。 【化5】 [図:0001417592000010.jpg] 【請求項5】 前記(A)色材が、さらに(A-2)有機着色顔料を含有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の感光性着色組成物。 【請求項6】 前記(A-2)有機着色顔料が、以下の顔料のうち少なくとも1種以上を含有する、請求項5に記載の感光性着色組成物。 青:カラーインデックスピグメントブルー60、又は15:6 赤:カラーインデックスピグメントレッド177、254、又は272 紫:カラーインデックスピグメントバイオレット23、又は29 橙:カラーインデックスピグメントオレンジ43、64、又は72 【請求項7】 前記(A)色材100質量%に対する、前記(A-1)有機黒色顔料の含有割合が30~90質量%、前記(A-2)有機着色顔料の含有割合が10~70質量%である、請求項5又は請求項6に記載の感光性着色組成物。 【請求項8】 前記(A)色材がさらに(A-3)カーボンブラックを含有する、請求項1~請求項3及び請求項5~請求項7のいずれか1項に記載の感光性着色組成物。 【請求項9】 前記(D)光重合開始剤が、オキシムエステル開始剤、及び/又はケトオキシムエステル開始剤である、請求項1~請求項3及び請求項5~請求項8のいずれか1項に記載の感光性着色組成物。 【請求項10】 請求項1~請求項3及び請求項5~請求項9のいずれか1項に記載の感光性着色組成物を硬化して得られる硬化物。 【請求項11】 請求項10に記載の硬化物から形成されるブラックマトリクス。 【請求項12】 請求項10に記載の硬化物から形成される着色スペーサー。 【請求項13】 請求項11に記載のブラックマトリクス又は請求項12に記載の着色スペーサーを含む画像表示装置。 第4 取消理由通知に記載された取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~13に係る特許に対して、令和6年2月19日付けで特許権者に通知された取消理由は、概略次のとおりである。 取消理由(進歩性欠如):本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許に係る優先権主張の基礎とした先の出願(以下「基礎出願」という。)の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、基礎出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1~6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。 取消理由(進歩性欠如)に関して、引用された引用例及び周知例は、次のとおりである。 甲1:特表2012-515233号公報(主引用例) 甲2:特表2012-515240号公報 甲3:特開2009-20501号公報 甲4:国際公開第2013/115268号(主引用例) 周知例1:特開2004-302242号公報 周知例2:特開2010-79095号公報 周知例3:特開2002-179979号公報 周知例4:特開2013-83932号公報 周知例5:特開2013-130632号公報 周知例6:特開2013-122543号公報 周知例7:国際公開第2013/031753号 2 主引用例に記載された発明 (1)甲1に記載された発明 甲1の記載(特に、【0013】、【0014】、【0019】、【0057】、【0063】、【0064】、【0070】、【0071】、【0074】、【0075】、【0077】、【0078】、【0083】、【0087】、【0094】~【0096】等の記載を参照。)から、甲1には、光開始剤として、Irgacure OXE 02を用いた実施例9の混合液に係る発明(以下「甲1発明」という。)として、次の発明が記載されていると認められる。 「LCD中で使用されるブラックマトリックス(カラムスペーサ、バリアリブ等を包含する。)を製造する際のレジスト組成物として有用な混合液であって、(【0013】) 75mlのトルエンに溶かした2.3gの2,5-ジヒドロキシベンゼン-1,4-二酢酸(Aldrich)、3.0gのイサチン(98%、Aldrich)及び0.7gのp-トルエンスルホン酸一水和物(Flukapurum)の混合液を110℃に加熱し、これを水を除去して7時間撹拌し、更に14時間撹拌し、この混合液を冷却し、黒色の懸濁液を濾過し、残留物を100mlのメタノールで洗い、60℃/104Paで乾燥させて得られた生成物2.0gを、(【0087】) 2.0gのEFKA(登録商標)4046、0.1gのSolsperse(登録商標)S5000、結合剤(メタクリル酸と芳香族メタクリレートとのコポリマー)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶かした4.0gの25%溶液及び7.0gのPGMEAと混合し、30gのジルコニウムビーズ(直径0.5mm)の添加後、混合物をSkandex(登録商標)ペイントコンディショナー内で15時間振盪させ、ビーズを濾過により黒色の分散液から除去した後、5gの分散液を、0.4gのジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート及び0.1gの光開始剤(Irgacure OXE 02)と混合することによって得られた、(【0094】~【0096】) 混合液。」 (2)甲4に記載された発明 ア 甲4の記載(特に、[0001]、[0011]、[0017]、[0022]、[0030]、[0034]、[0037]、[0041]、[0042]、[0044]~[0050]、[0075]、[0079]、[0094]、[0100]~[0103]、[0126]、[0132]、[0140]~[0142]、[0163]~[0165]、[0188]、[0189]、[0208]~[0214]、[0218]~[0221]、[0279]、[0299]、[0300]、[0303]、[0304]、[0310]~[0317]、[0328]の表2、[0329]等の記載を参照、)から、甲4には、実施例1の着色感光性組成物に係る発明、当該着色感光性組成物を用いて形成されたブラックフォトスペーサーに係る発明、及び当該ブラックフォトスペーサーを有する液晶ディスプレイに係る発明(以下「甲4発明」という。)として、次の発明が記載されていると認められる。 「顔料、バインダー樹脂、光重合性モノマー、及び光重合開始剤を含み、前記顔料が、下記[顔料]の(A)に示す顔料及び(B)に示す顔料を含む着色感光性組成物であって、([0011]) 前記(A)に示す顔料及び(B)に示す顔料として、それぞれ、C.I.ピグメントオレンジ64(OR64)及びC.I.ピグメントブルー60(B60)を用い、前記バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤として、日本化薬(株)製「ZCR-1569H」及び日本化薬(株)製「ZCR-1642」、日本化薬(株)製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、下記[光重合開始剤の式]で表される化合物をそれぞれ用い、([0011]、[0303]、[0304]、[0310]~[0313]、[0315]の表1、[0316]、[0328]の表2) 下記[成分及び質量比]に示された成分及び質量比で配合、攪拌して得られ、([0315]の表1、[0316]、[0328]の表2) 液晶ディスプレイ等のカラーフィルターにおいてブラックフォトスペーサー等の形成に好ましく用いられる着色感光性組成物。([0001]) [顔料] (A)C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、及びC.I.ピグメントオレンジ72からなる群より選ばれる1つ (B)C.I.ピグメントブルー60([0011]) [光重合開始剤の式] [図:0001417592000011.jpg] [成分及び質量比] 顔料分散液-1 1.69 C.I.ピグメントレッド254(R254) 100 分散剤(固形分換算):DISPERBYK-2000 33 バインダー樹脂-1:日本化薬(株)製「ZCR-1569H」 50 溶剤 PGMEA 316 MB 110 顔料分散液-2 3.40 C.I.ピグメントオレンジ64(OR64) 100 分散剤(固形分換算):DISPERBYK-2000 20 バインダー樹脂-1:日本化薬(株)製「ZCR-1569H」 50 溶剤 PGMEA 304 MB 102 顔料分散液-3 6.25 C.I.ピグメントブルー60(B60) 100 分散剤(固形分換算):DISPERBYK-2000 20 バインダー樹脂-1:日本化薬(株)製「ZCR-1569H」 50 溶剤 PGMEA 304 MB 102 バインダー樹脂-2(固形分換算):日本化薬(株)製「ZCR-1642」 6.03 光重合性モノマー:日本化薬(株)製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 3.73 光重合開始剤:[光重合開始剤の式]で表される化合物 0.88 界面活性剤:大日本インキ化学社製「メガファック F-475」 0.02 溶剤:PGMEA 78([0315]の表1、[0316]、[0328]の表2)」 第5 合議体の判断 1 甲1を主引用例とする取消理由について (1)本件訂正発明1について ア 対比 (ア) 甲1発明が含有する「生成物」は、2.3gの2,5-ジヒドロキシベンゼン-1,4-二酢酸(Aldrich)と、3.0gのイサチン(98%、Aldrich)と、0.7gのp-トルエンスルホン酸一水和物(Flukapurum)とを反応させて得られる化合物であるから、甲1の【0019】に示された式 [図:0001417592000012.jpg] の化合物又はそれらの互変異性体からなる黒色着色剤と認められるところ(甲2:特表2012-515240号公報の【0068】ないし【0071】についても参照。)、当該化合物又はそれらの互変異性体からなる黒色着色剤は、本件訂正発明1の「(A)色材」に相当するとともに「一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料」に相当する(甲1の【0019】に示された式の化合物は、本件訂正発明1の一般式(1)において、R1ないしR10としていずれも水素原子を選択とした化合物又はその異性体である。)。 また、甲1の【0075】及び【0077】によると、甲1発明が含有する「EFKA(登録商標)4046」は分散剤であるから、本件訂正発明1の「(B)分散剤」と分散剤である点で一致当する。 また、甲1の【0083】及び【0096】に記載されているとおり、甲1発明は、塗布・乾燥してフォトレジスト層を形成した後、露光し、KOH水溶液により現像することにより、パターン形成ができるのであるから、甲1発明が含有する「結合剤(メタクリル酸と芳香族メタクリレートとのコポリマー)」がアルカリ可溶性であることは明らかである。したがって、甲1発明が含有する「結合剤(メタクリル酸と芳香族メタクリレートとのコポリマー)」は、本件訂正発明1の「(C)アルカリ可溶性樹脂」に相当する。 また、甲1発明が含有する「光開始剤(Irgacure OXE 02)」は、本件訂正発明1の「(D)光重合開始剤」に相当する。 そして、甲1発明の「混合液」は、「式 [図:0001417592000013.jpg] の化合物又はそれらの互変異性体からなる黒色着色剤」を含有することでブラックマトリックスを製造するのに適した黒色を呈しているとともに、「光開始剤(Irgacure OXE 02)」及び「ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート」を含有することで光重合が可能な組成物であるから、「感光性着色組成物」といえる。 したがって、本件訂正発明1と甲1発明は、「(A)色材、(B)分散剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を少なくとも含有する感光性着色組成物であって、 前記(A)色材が(A-1)下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含」む点で、一致する。 (イ) 甲1発明における全固形分量に対する生成物の含有量は、約30.3質量%(={5×分散液における生成物濃度}/{5×分散液における固形分濃度+0.4+0.1}×100=(5×2.0/15.1)/(5×5.1/15.1+0.4+0.1)×100)であるから、甲1発明は、本件訂正発明1の「(A)色材の含有量が、感光性着色組成物中の全固形分量に対して20質量%以上であ」るとの要件を満足する。 (ウ) 特開2007-262177号公報の【0080】の記載や、特開2008-56867号公報の【0024】の記載によれば、「EFKA(登録商標)4046」は高分子分散剤であるから、本件訂正発明1の「(B)分散剤」と甲1発明の「EFKA(登録商標)4046」は、「高分子分散剤であ」る点で一致する。 (エ) 甲1発明における全固形分量に対する「EFKA(登録商標)4046」の含有量は、約30.3質量%(={5×分散液における分散剤濃度}/{5×分散液における分散剤濃度+0.4+0.1}×100=(5×2.0/15.1)/(5×5.1/15.1+0.4+0.1)×100)であるから、甲1発明は、本件訂正発明1の「(B)分散剤の含有量が、感光性着色組成物中の全固形分量に対して1質量%以上30質量%以下であ」るとの要件を満足しない。 (オ) 前記(ア)ないし(エ)に照らせば、本件訂正発明1と甲1発明は、 「(A)色材、(B)分散剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を少なくとも含有する感光性着色組成物であって、 前記(A)色材が(A-1)下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含み、 前記(A)色材の含有量が、感光性着色組成物中の全固形分量に対して20質量%以上であり、かつ、 前記(B)分散剤が高分子分散剤を含む、感光性着色組成物。 [図:0001417592000014.jpg] [式(1)中、R1およびR6は互いに独立して水素原子、CH3、CF3、フッ素原子または塩素原子である;R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11R12、CN、OH、OR11、COCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR11R12、NO2、NH2、NHR11、NR11R12、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR11R12、SH、SR11、SOR11、SO2R11、SO3R11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR11R12である;且つ、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R7とR8、R8とR9、及びR9とR10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR11ブリッジによって互いに結合することもできる;R11およびR12は互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基である。]」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1-1: 本件訂正発明1の「(B)分散剤」は、一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩基及び3級アミンを官能基として有する高分子分散剤(以下構造式及びその説明は省略する。)であるのに対して、 甲1発明の「EFKA(登録商標)4046」は、高分子分散剤であるものの、本件訂正発明1の「(B)分散剤」のような繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩及び3級アミンを官能基として有するものでない点。 相違点1-2: 本件訂正発明1の「(B)分散剤」の含有量は、感光性着色組成物中の全固形分量に対して1質量%以上30質量%以下であるのに対して、 甲1発明の「EFKA(登録商標)4046」の含有量は、混合液中の全固形分に対して30質量%を超えている点。 相違点1-3: 本件訂正発明1の「(C)アルカリ可溶性樹脂」が、アルカリ可溶性樹脂(c1)及びアルカリ可溶性樹脂(c2)の少なくともいずれかを含み、前記アルカリ可溶性樹脂(c1)及び前記アルカリ可溶性樹脂(c2)がそれぞれ、 <アルカリ可溶性樹脂(c1)> エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸及び/又はその無水物を反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。 <アルカリ可溶性樹脂(c2)> エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール、並びに多塩基酸及び/又はその無水物と反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。 であるのに対して、 甲1発明の「結合剤(メタクリル酸と芳香族メタクリレートとのコポリマー)」は、下記アルカリ可溶性樹脂(c1)及び下記アルカリ可溶性樹脂(c2)のいずれでもない点。 イ 相違点1-1について (ア) 取消理由通知書において例示された周知例4~7によれば、「一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩基及び3級アミンを官能基として有する高分子分散剤」に該当するビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(本件特許明細書に記載された実施例において用いられている分散剤)は、本件特許の優先権主張の基礎とされた先の出願の出願前に周知であったと認められる。 ここで、甲1の【0078】には、甲1発明において用いる分散剤について、「コポリマーの選択は、顔料分散液の粘度に影響を及ぼす。従って、有利には、顔料分散液側に低粘度をもたらすコポリマーが使用され、例は両性のコポリマー、又は特にカチオン性コポリマーである。16質量%の固体を含有する顔料分散液は、有利には25℃で25cP以下の粘度を有するべきである。」と記載され、【0077】には、甲1発明に用いることができる分散剤が列挙されているが、「一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩基及び3級アミンを官能基として有する高分子分散剤」は、挙げられていない。 また、前述した周知のビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」は、甲1の【0078】に、甲1発明において用いるのに適した分散剤として記載された「カチオン性コポリマー」に該当するものの、「カチオン性コポリマー」に分類される分散剤は、ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」に限られず、無数に存在するのであって、甲1発明に用いる分散剤として、「EFKA(登録商標)4046」に代えて、無数に存在する「カチオン性コポリマー」の分散剤の中から、ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」を選択して、これを用いること、すなわち相違点1-1に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは、たとえビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」が周知の分散剤であるとしても、当業者が容易に想到し得たことではない。この点、取消理由通知書で引用された他の引用例及び周知例や、申立人が提出した他の証拠について検討してみても、結論は変わらない。 そして、本件特許明細書の記載からみて、「一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料」に、「一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩基及び3級アミンを官能基として有する高分子分散剤」を用いることで、優れた分散性が得られるものと認められるから(次の「(イ)」欄を参照。)、甲1発明において、相違点1-1に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することが、単なる設計事項ということもできない。 (イ) 申立人は、令和6年5月23日に提出した意見書(7ページ11行~9頁2行)において、本件訂正発明1であっても、作用効果等の顕著性を把握することはできない、特許権者が主張する作用効果は、あくまでも側鎖に3級アミノ基とブチル基を有する「分散剤-III」を用いた顔料分散液-9に係る比較例5との対比だけであって、本件訂正で特定された3級アミンの官能基を作用効果を表しているとはいえない、などと主張する。 そこで検討するに、本件特許明細書の【0274】~【0276】、【0314】~【0319】の記載(特に、表5に示された実施例9及び比較例5の粘度の値)から、「一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩基及び3級アミンを官能基として有する高分子分散剤」である実施例9のビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」は、3級アミンを官能基として含有し、4級アンモニウム塩基を官能基として含有しない比較例5のビックケミー社製「DISPERBYK-2000」よりも、BASF社製「Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF」の分散性に優れていることを把握できる。 また、粘度の値や分散性について直接示されてはいないものの、本件特許明細書【0302】の表1に、分散剤としてビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」を用いた顔料分散液-1~顔料分散液-5、顔料分散液-7における分散剤の含有量が20質量部であるのに対して、分散剤として「4級アンモニウム塩基を含有し、3級アミノ基を含有しない」ビックケミー社製「DISPERBYK-2000」を用いた顔料分散液-6における分散剤の含有量が50質量部であることからは、ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」は、ビックケミー社製「DISPERBYK-2000」よりも、顔料の分散性に優れているものと強く推認される。 ここで、本件訂正発明1の「(B)分散剤」は、一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有することが特定されていて、その構造が相当程度限定されているところ、当該「(B)分散剤」の分散性は、「(B)分散剤」と同様に、一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する実施例9のビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」と同等であろうと推察される。 そうすると、分散剤として一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する高分子分散剤として「一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩基及び3級アミンを官能基として有する高分子分散剤」を採用すること(相違点1-1に係る発明特定事項を採用すること)で、優れた分散性が得られることは、本件特許明細書の記載から把握できることがらである。 よって、申立人の主張を採用することはできない。 ウ 小括 甲1発明において、相違点1-1に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することが、当業者が容易に想到し得たことでない以上、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 (2)本件訂正発明2、3、5~13について 本件訂正後の請求項2、3、5~13は、本件訂正後の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、本件訂正発明2、3、5~13は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。 したがって、本件訂正発明1が、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件訂正発明2、3、5~13も、同様の理由で、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 2 甲4を主引用例とする取消理由について (1)本件訂正発明1について ア 対比 (ア) 甲4発明の「C.I.ピグメントオレンジ64(OR64)及びC.I.ピグメントブルー60(B60)」、「分散剤:DISPERBYK-2000」、「[光重合開始剤の式]で表される化合物からなる光重合開始剤」及び「着色感光性組成物」 は、本件訂正発明1の「(A)色材」、「(B)分散剤」、「(D)光重合開始剤」及び「感光性着色組成物」にそれぞれ対応する。 (イ) 甲4発明で用いている分散剤:DISPERBYK-2000は、4級アンモニウム塩基を官能基として含有する高分子分散剤であるから(例えば、本件特許明細書の【0285】のほか、特開2011-70171号公報の【0307】を参照。)、本件訂正発明1と甲4発明は、「(B)分散剤」を「少なくとも含有」し、「前記(B)分散剤が4級アンモニウム塩基を官能基とする高分子分散剤」である点で一致する。 (ウ) 甲4発明における分散剤の含有量は、着色感光性組成物中の全固形分量に対して約3.0質量%(={1.69×33/(100+33+50+316+110)+3.40×20/(100+20+50+304+102)+6.25×20/(100+20+50+304+102)}/{1.69×(100+33+50)/(100+33+50+316+110)+3.40×(100+20+50)/(100+20+50+304+102)+6.25×(100+20+50)/(100+20+50+304+102)+6.03+3.73+0.88+0.02})であるから、甲4発明は、本件訂正発明1の「(B)分散剤の含有量が、感光性着色組成物中の全固形分量に対して1質量%以上30質量%以下であり、」なる要件を満足する。 (エ) 甲4の[0041]、[0042]、[0100]~[0103]、[0126]、[0132]、[0303]、[0304]によれば、甲4発明の「バインダー樹脂-1:日本化薬(株)製『ZCR-1569H』」及び「バインダー樹脂-2:日本化薬(株)製『ZCR-1642』」は、いずれも、エポキシ樹脂又はエポキシ化合物にα、β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα、β-不飽和モノカルボン酸を付加させ、さらに、多塩基酸又はその無水物を反応させることにより合成されるエポキシアクリレート樹脂であって、一般式(1-a)で表されるエポキシ樹脂(a)と不飽和基含有カルボン酸(b)との反応物を、更に多塩基酸又はその無水物(c)のうち少なくとも一方と反応させて得られる「アルカリ可溶性樹脂(A)」である。 そうすると、甲4発明の「バインダー樹脂-1:日本化薬(株)製『ZCR-1569H』」及び「バインダー樹脂-2:日本化薬(株)製『ZCR-1642』」は、いずれも、本件訂正発明1の「(C)アルカリ可溶性樹脂」に相当するとともに、「<アルカリ可溶性樹脂(c1)> エポキシ樹脂にα、β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα、β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸及び/又はその無水物を反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。」にも相当する。 したがって、本件訂正発明1と甲4発明は、「(C)アルカリ可溶性樹脂」を「少なくとも含有する」点、及び「前記(C)アルカリ可溶性樹脂が、下記アルカリ可溶性樹脂(c1)及び下記アルカリ可溶性樹脂(c2)の少なくともいずれかを含む」点で一致する。 (オ) 甲4発明における色材の含有量は、着色感光性組成物中の全固形分量に対して約14質量%(={1.69×100/(100+33+50+316+110)+3.40×100/(100+20+50+304+102)+6.25×100/(100+20+50+304+102)}/{1.69×(100+33+50)/(100+33+50+316+110)+3.40×(100+20+50)/(100+20+50+304+102)+6.25×(100+20+50)/(100+20+50+304+102)+6.03+3.73+0.88+0.02})である。 (カ) 前記(ア)ないし(オ)に照らせば、本件訂正発明1と甲4発明は、 「(A)色材、(B)分散剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を少なくとも含有する感光性着色組成物であって、 前記(B)分散剤が4級アンモニウム塩基を官能基として有する高分子分散剤であり、 前記(B)分散剤の含有量が、感光性着色組成物中の全固形分量に対して1質量%以上30質量%以下であり、 前記(C)アルカリ可溶性樹脂が、下記アルカリ可溶性樹脂(c1)及び下記アルカリ可溶性樹脂(c2)の少なくともいずれかを含む、感光性着色組成物。 <アルカリ可溶性樹脂(c1)> エポキシ樹脂にα、β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα、β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸及び/又はその無水物を反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。 <アルカリ可溶性樹脂(c2)> エポキシ樹脂にα、β-不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα、β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール、並びに多塩基酸及び/又はその無水物と反応させることによって得られたアルカリ可溶性樹脂。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点2-1: 本件訂正発明1の「(A)色材」が、(A-1)一般式(1) (以下構造式及びその説明は省略する。) で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含むのに対して、 甲4発明の顔料は、C.I.ピグメントレッド254(R254)、C.I.ピグメントオレンジ64(OR64)及びC.I.ピグメントブルー60(B60)であって、一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料は含まない点。 相違点2-2: 本件訂正発明1における(A)色材の含有量が、感光性着色組成物中の全固形分量に対して20質量%以上であるのに対して、 甲4発明における顔料の含有量は、着色感光性組成物中の全固形分量に対して約14質量%である点。 相違点2-3: 本件訂正発明1の(B)分散剤が、一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩基及び3級アミンを官能基として有する高分子分散剤であるのに対して、 甲4発明の分散剤(固形分換算):DISPERBYK-2000は、4級アンモニウム塩基を官能基として有する高分子分散剤であるものの、本件訂正発明1の「(B)分散剤」のような繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩及び3級アミンを官能基として有するものでない点。 イ 相違点2-3について 事案に鑑みて、相違点2-3から判断する。 甲4の[0219]には、甲4発明の分散剤として用いることができる高分子分散剤の具体例が列挙されているが、「一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩基及び3級アミンを官能基として有する高分子分散剤」は、挙げられていない。 また、甲4の[0219]に列挙された具体例中に、「DisperBYK(ビックケミー社製)」が挙げられており、前記1(1)イ(ア)で述べた「DisperBYK(ビックケミー社製)」K(ビックケミー社製)」に該当する高分子分散剤は、「DISPERBYK-LPN21116」以外にも多数存在するのであって、甲4発明において、分散剤として、甲4の[0219]に列挙された具体例の中から「DisperBYK(ビックケミー社製)」を選択し、さらに「DisperBYK(ビックケミー社製)」に該当する多数の高分子分散剤の中から、「DISPERBYK-LPN21116」を選択して、これを用いること、すなわち相違点2-3に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは、たとえビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」が周知の分散剤であるとしても、当業者が容易に想到し得たことではできない。この点、取消理由通知書で引用された他の引用例及び周知例や、申立人が提出した他の証拠について検討してみても、結論は変わらない。 そして、本件特許明細書の記載からみて、「一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料」に、「一般式(i)で表される繰り返し単位、一般式(ii)で表される繰り返し単位及び一般式(iii)で表される繰り返し単位を含有する、4級アンモニウム塩基及び3級アミンを官能基として有する高分子分散剤」を用いることで、優れた分散性が得られるものと認められるから(次の「(イ)」欄を参照。)、甲1発明において、相違点1-1に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することが、単なる設計事項ということもできない。 (イ) 申立人は、令和6年5月23日に提出した意見書(17ページ10行~18頁下から5行)において、甲1を主引用例とする取消理由での主張と同様の主張を行っているが、前記1(1)イ(イ)で述べたのと同様の理由で、申立人の主張を採用することはできない。 ウ 小括 甲4発明において、相違点2-3に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することが、当業者が容易に想到し得たことでない以上、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 (2)本件訂正発明2、3、5~13について 前記1(2)でも述べたとおり、本件訂正発明2、3、5~13は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。 したがって、本件訂正発明1が、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件訂正発明2、3、5~13も、同様の理由で、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明1~3は、甲4に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、それらに係る特許は、同項の規定に違反してされたものである(以下「申立理由」という。)、と主張している。 しかしながら、前記第5 2(1)ア(カ)で認定したように、本件訂正発明1と甲4発明とを対比すると、両者は、相違点2-1~相違点2-3で相違するから、本件訂正発明1は甲4発明ではない。 よって、申立人が主張する申立理由によって、本件訂正後の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正後の請求項1~3、5~13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正後の請求項1~3、5~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項4に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700019

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