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特許異議申立

2025-700469

樹脂組成物及び電子部品装置

審判番号
2025-700469
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-559094
登録番号
7573358
請求日
2025年04月25日
審決日
2026年04月27日
公報発行日
2026年08月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社レゾナック
  • 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
  • 【異議申立人】芦塚 和昭
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 浩子
  • 審判官 細井 龍史
  • 審判官 藤井 勲
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第131条の2第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7573358号発明「樹脂組成物及び電子部品装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7573358号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、8、9について訂正することを認める。 特許第7573358号の請求項1~4、6及び7に係る特許を維持する。 特許第7573358号の請求項5、8及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7573358号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成29年12月19日を国際出願日(優先日 平成28年12月27日(2件)、日本国)とする特願2018-559094号に係る出願であって、令和6年10月17日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年4月25日に特許異議申立人 芦塚 和昭(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~9)がされたものである。 その後の手続は以下のとおりである。 令和7年 6月20日付け 取消理由通知 同年 8月25日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 9月12日付け 手続補正指令(方式) 同年10月20日 手続補正書(方式)の提出 令和8年 1月 7日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 2月10日 意見書の提出(申立人) 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和7年8月25日に提出されるとともに同年10月20日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(5)のとおりである。 なお、当該手続補正書(方式)による補正は、令和7年9月12日付けの手続補正指令(方式)に対してなされたもので、特許法第131条の2第1項第3号に適合するものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記無機充填材は体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとを含み、」とあるのを、「前記無機充填材は体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、」と訂正(以下「訂正事項1-1」という。)し、特許請求の範囲の請求項1に記載の無機粒子Aについて含有率が特定されていないのを、「前記無機粒子Aの割合が前記無機充填材全体の3質量%~10質量%であり、」と訂正(以下「訂正事項1-2」という。)する(請求項1の記載を引用する請求項2、4、6及び7も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に「前記無機充填材は体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとを含み、」とあるのを、「前記無機充填材は体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、」と訂正(以下「訂正事項2-1」という。)し、特許請求の範囲の請求項3に記載の無機粒子Aについて含有率が特定されていないのを、「前記無機粒子Aの割合が前記無機充填材全体の3質量%~10質量%であり、」と訂正(以下「訂正事項2-2」という。)する(請求項3の記載を引用する請求項4、6及び7も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5、8及び9を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~請求項5のいずれか1項に記載」とあるのを、「請求項1~請求項4のいずれか1項に記載」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~請求項6のいずれか1項に記載」とあるのを、「請求項1~請求項4及び請求項6のいずれか1項に記載」に訂正する。 なお、訂正前の請求項1、2、4~7について、請求項2、4~7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1、2、4~7に対応する訂正後の請求項1、2、4~7は、一群の請求項を構成する。また、訂正前の請求項3~7について、請求項4~7は、請求項3を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項2によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項3~7に対応する訂正後の請求項3~7は、一群の請求項を構成する。そして、一群の請求項である請求項1、2、4~7と一群の請求項である請求項3~7は、共通する請求項4~7に引用されているため、請求項1~7が一群の請求項を構成する。 したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1及び2による訂正について 訂正事項1及び2による請求項1及び3についての訂正は、前記無機充填材について「体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとを含み、」とあるのを、「前記無機充填材は体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、」と限定し、前記無機粒子Aの割合を「前記無機充填材全体の3質量%~10質量%であり、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、訂正事項1-1、訂正事項2-1は、本件特許の願書に添付した明細書の【実施例】の実施例1、3に記載されており、訂正事項1-2、訂正事項2-2は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0017】に記載されている。そうすると、訂正事項1及び2による請求項1及び3についての訂正は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。 また、請求項1の記載を引用する請求項2、4、6及び7も同様である。 (2)訂正事項3による訂正について 訂正事項3による請求項5、8及び9についての訂正は、請求項5、8及び9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。また、この訂正は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。 (3)訂正事項4及び5による訂正について 訂正事項4及び5による請求項6及び7についての訂正は、引用していた請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。また、この訂正は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。 3 むすび 以上のとおり、請求項1~9についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項で準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、8、9について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1~9を総称して「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「 【請求項1】 硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、 前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、 前記無機粒子Aの比重Aの、前記無機粒子Bの比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2であり、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 前記無機粒子Aの割合が前記無機充填材全体の3質量%~10質量%であり、 溶剤を含まない、樹脂組成物。 【請求項2】 前記無機粒子Bは前記無機粒子Aと同じ材質の無機粒子を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。 【請求項3】 硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、 前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、 前記無機粒子Bは前記無機粒子Aと同じ材質の無機粒子を含み、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 前記無機粒子Aの割合が前記無機充填材全体の3質量%~10質量%であり、 溶剤を含まない、樹脂組成物。 【請求項4】 前記無機粒子Aの比表面積が15m2/g以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 電子部品装置の封止材として用いるための、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。 【請求項7】 素子と、前記素子を封止する請求項1~請求項4及び請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物とを備える電子部品装置。 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 (削除)」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要、証拠方法及び取消理由の概要 1 令和7年4月25日に申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要 (1)申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1~4、6~9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1~9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(甲第2号証を主引用文献とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1~3、6~9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1~9に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由3(甲第3号証を主引用文献とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1~3、6~9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1~9に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由4(甲第4号証を主引用文献とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1~3、6~9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1~9に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由5(甲第5号証を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由6(明確性要件) 本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由の概要は以下の通り。 本件請求項1、請求項3、請求項8及び請求項9の各々には、「…前記無機充填材は…無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとを含み、…」との記載がある。 この記載によると、「無機粒子B」とは「無機充填材」中の「無機粒子A」以外の全ての粒子のことであると解釈するのが自然ではあるが、「無機充填材」が「無機粒子A」及び「無機粒子B」以外の粒子を更に含むことが許容されているという解釈も成り立ちうる。 しかし、いずれの解釈が妥当であるかを、本件明細書の記載を参酌しても、理解することはできない。 (7)申立理由7(サポート要件) 本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由の概要は以下の通り。 i.本件請求項1では、「無機充填材」中の「無機粒子A」及び「無機粒子B」の割合が、特定されていない。 一方、本件明細書には、実施例として、無機充填材A1(体積平均粒子径9.0μmのアルミナ粒子)を2200部、無機充填材A2(体積平均粒子径0.1μmのアルミナ粒子、比表面積5.1m2/g)を20部配合した実施例1、無機充填材A1を1350部、無機充填材A2を200部、無機充填材S1(体積平均粒子径2.6μmのシリカ粒子)を270部配合した実施例2、及び無機充填材A1を2200部、無機充填材A2を100部配合した実施例3が、記載されているのみである。これらの実施例を、本件請求項1で特定される範囲まで拡張ないし一般化することはできない。 ii.本件請求項1には、「体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子A」及び「前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり」との記載がある。 一方、本件明細書には、特定の実施例が記載されているのみである。これらの実施例を、本件請求項1で特定される「体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子A」及び「前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり」との範囲まで拡張ないし一般化することはできない。 iii.本件請求項4には、「前記無機粒子Aの比表面積が15m2/g以下である、」と記載されている。 一方、本件明細書には、特定の実施例が記載されているのみである。これらの実施例を、本件請求項1で特定される「前記無機粒子Aの比表面積が15m2/g以下である、」との範囲まで拡張ないし一般化することはできない。 iv.本件請求項8及び9の各々には、「前記無機粒子Aを構成する物質の屈折率Aの、前記無機粒子Bを構成する物質の屈折率Bに対する比率(A/B)が、0.9~1.5であり、」と記載されている。 一方、本件明細書には、特定の実施例が記載されているのみである。これらの実施例を、本件請求項8及び9で特定される「前記無機粒子Aを構成する物質の屈折率Aの、前記無機粒子Bを構成する物質の屈折率Bに対する比率(A/B)が、0.9~1.5であり、」との範囲まで拡張ないし一般化することはできない。(申立書第40~44ページ)。 (8)申立理由8(実施可能要件) 本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由の概要は上記(7)と同じ。 2 申立人が提出した証拠方法 (1)甲第1号証:特開2006-045343号公報 (2)甲第2号証:特開2004-277509号公報 (3)甲第3号証:特開2004-292515号公報 (4)甲第4号証:特開2004-300214号公報 (5)甲第5号証:特開2005-200533号公報 (6)甲第6号証:特開2004-273437号公報 以下「甲第1号証」等を、順に「甲1」等という。 3 取消理由通知書に記載した取消理由の概要 当審において令和7年6月20日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 (1)取消理由1(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1~4、6、8、9に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~4、6~9に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)取消理由2(甲2を主引用文献とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1~3、6~9に係る発明は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~3、6~9に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)取消理由3(明確性要件) 本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由の概要は以下の通り。 無機粒子Bの体積平均粒子径は、0.5μm~15μmであるところ、無機充填材は、無機粒子Aと前記無機粒子A以外の無機粒子Bとを「含」むもので、無機粒子Aと前記無機粒子A以外の無機粒子B「のみからなる」とは特定されていないため、無機充填材には、無機粒子Aと無機粒子B以外の無機粒子を含んでいてもよいと解釈される。 一方、上記請求項の記載は、「特定無機粒子である無機粒子Aと前記無機粒子A以外の無機粒子Bからなる」と解釈することができる。 このため、本件特許発明1、3、8及び9は二つの解釈を含み得ることからから、明確でない。また、本件特許発明1、3を直接又は間接的に引用する本件特許発明2、4~7も同様に不明確である。 第5 当審の判断 上記第2に示したように、本件訂正により請求項5、8及び9は削除され、申立ての対象がなくなったため、当該請求項に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 また、以下に述べるように、本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許は、当審において通知した取消理由及び申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 1 取消理由1(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性)及び申立理由1(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性)について 取消理由1及び申立理由1は、甲1を主引用文献とするものであるから、併せて検討する。 (1)甲1に記載された発明 甲1の比較例6に着目すると、以下の発明が記載されていると認める。 「以下に示す、主剤と充填材と硬化剤を混合装置を用いて混合した後、真空脱泡して得られた注形用エポキシ樹脂組成物であって、 主剤が、以下の【化2】で示されるビスフェノールA骨格の繰返し単位がn=0~3の混合体である大日本インキ化学工業(株)エピクロン850 100重量部 【化2】 [図:0001438278000001.jpg] 充填剤が、商品名AS-50(昭和電工(株)、丸み状アルミナ、平均粒径9μm) 300重量部 と商品名AKP-50(住友化学工業(株)、破砕状アルミナ、平均粒径0.2μm) 50重量部 硬化剤が、商品名CATALYST11(日本エイブルスティック(株)、芳香族ポリアミン系硬化剤) 18重量部 である、注形用エポキシ樹脂組成物。」(以下、「甲1比較例6発明」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1 (ア)対比 本件特許発明1と甲1比較例6発明とを対比する。 甲1比較例6発明の「ビスフェノールA骨格(当審注:構造式)の繰返し単位がn=0~3の混合体である大日本インキ化学工業(株)エピクロン850」、「注形用エポキシ樹脂組成物」は、本件特許発明1の「硬化性樹脂」、「樹脂組成物」に相当する。 ここで、本件特許発明1の「体積平均粒子径」の定義について確認すると、本件特許明細書の段落【0015】には、「本開示において、特定無機粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern Instruments社製、「マスターサイザー3000」)を用いて、湿式分散にて測定される体積基準の粒度分布において、小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)である。」と記載されていることから、「D50」である。 そして、商品カタログ(https://www.resonac.com/sites/default/files/2024-10/pdf-filler-AS-20241010.pdf)によると、商品名AS-50の平均粒径は、「D50」で表記されている。 また、例えば、甲5に「【請求項6】前記(C)成分の無機質充填剤の平均粒子径d50が20μm以下である」と記載されているように、無機質充填剤の平均粒子径を「D50」である「体積平均粒子径」で表記するのが本件優先日時の技術常識である。 そうすると、甲1比較例6発明の「商品名AS-50(昭和電工(株)、丸み状アルミナ、平均粒径9μm)」のみならず、「商品名AKP-50(住友化学工業(株)、破砕状アルミナ平均粒径0.2μm)」も、各々「体積平均粒子径が0.2μm」、「体積平均粒子径が9μm」であるものと認められる。 そして、甲1比較例6発明の充填剤である「商品名AKP-50(住友化学工業(株)、破砕状アルミナ、平均粒径0.2μm)」は、材質がアルミナであり、体積平均粒子径が0.2μmであることから、本件特許発明1の「アルミナ粒子」である「体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機充填剤A」に相当する。また、甲1比較例6発明の「商品名AS-50(昭和電工(株)、丸み状アルミナ、平均粒径9μm)」は、体積平均粒子径が9μmであることから、「体積平均粒子径が0.5μm~15μm」である「無機充填剤A以外の無機充填剤B」に相当する。 甲1比較例6発明の「商品名AKP-50(住友化学工業(株)、破砕状アルミナ平均粒径0.2μm)」と「商品名AS-50(昭和電工(株)、丸み状アルミナ、平均粒径9μm)」の材質は共に「アルミナ」であるため、両者の比重は同じでその比率は「1.0」となるから、本件特許発明1の「前記無機粒子Aの比重Aの、前記無機粒子Bの比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2」の範囲と重複一致する。 甲1比較例6発明の無機充填材は、「商品名AKP-50(住友化学工業(株)、破砕状アルミナ、平均粒径0.2μm)」300重量部、「商品名AS-50(昭和電工(株)、丸み状アルミナ、平均粒径9μm)」50重量部からなるものであるため、本件特許発明1の無機粒子Aに相当する「商品名AKP-50(住友化学工業(株)、破砕状アルミナ、平均粒径0.2μm)」の割合は、無機充填材全体の「14.3質量%」(=50/(50+300)×100)となる。 また、甲1比較例6発明は、成分に「溶剤」を含んでいない。 そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、 前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、 前記無機粒子Aの比重Aの、前記無機粒子Bの比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2であり、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 溶剤を含まない、樹脂組成物。 <相違点1-1> 無機充填材全体の無機粒子Aの割合が、本件特許発明1は「3質量%~10質量%」であるのに対し、甲1比較例6発明は「14.3質量%」である点 (イ)相違点の検討 当該<相違点1-1>は、数値として明らかに異なるものであるから、実質的な相違点である。 そうすると、本件特許発明1は甲1比較例6発明ではない。 次いで、当該相違点の容易想到性について検討するに、甲1比較例6発明は、甲1の課題を解決することができない比較例であるから、当該比較例に基づいて、無機充填材の配合割合を変更する動機付けはない。 そうすると、甲1比較例6発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の特定事項を当業者が容易に想到することができたとはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 本件特許発明1は、本件特許明細書の段落【0008】から、流動性に優れるという効果を奏するものである。そして、本件特許発明1の実施態様である実施例3(無機充填材全体の無機粒子Aの割合が「4.3質量%」)は、流動距離が「245μm」となっており、本件特許発明1の範囲外となる実施例1(無機充填材全体の無機粒子Aの割合が0.9質量%)の流動距離は「191μm」)、実施例2(無機充填材全体の無機粒子Aの割合が11質量%)」 の流動距離は「217μm」)よりも流動性が向上していることが示されている。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は甲1に記載された発明ではないし、また甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明3 (ア)対比 本件特許発明3と甲1比較例6発明とを対比する。 甲1比較例6発明の充填剤である「商品名AKP-50(住友化学工業(株)、破砕状アルミナ、平均粒径0.2μm)」と「商品名AS-50(昭和電工(株)、丸み状アルミナ、平均粒径9μm)」の材質は共にアルミナで、「同じ材質」であるから、甲1比較例6発明は、本件特許発明3の「前記無機粒子Bは前記無機粒子 Aと同じ材質の無機粒子を含」む事項を満たす。 そして、上記ア(ア)で対比した相当関係を参酌すると、本件特許発明3と甲1比較例6発明とは以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、 前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、 前記無機粒子Bは前記無機粒子Aと同じ材質の無機粒子を含み、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 溶剤を含まない、樹脂組成物。 <相違点1-3> 無機充填材全体の無機粒子Aの割合が、本件特許発明3は「3質量%~10質量%」であるのに対し、甲1比較例6発明は「14.3質量%」である点 (イ)相違点の検討 <相違点1-3>は、上記ア(ア)の<相違点1-1>と同じである。 そうすると、上記ア(イ)で説示したのと同様の理由により、本件特許発明3は甲1比較例6発明ではないし、また、甲1比較例6発明において、相違点1-3に係る本件特許発明3の特定事項を当業者が容易に想到することができたとはいえない。 (ウ)本件特許発明3の効果について 本件特許発明3は、本件特許明細書の段落【0008】から、流動性に優れるという効果を奏するものである。そして、本件特許発明3の実施態様である実施例3(無機充填材全体の無機粒子Aの割合が「4.3質量%」は、流動距離が「245μm」となっており、本件特許発明3の範囲外となる実施例1(無機充填材全体の無機粒子Aの割合が0.9質量%」の流動距離は「191μm」)よりも流動性が向上していることが示されている。 (エ)小括 したがって、本件特許発明3は甲1に記載された発明ではないし、また甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明2、4、6及び7 本件特許発明2、4、6及び7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するもので、特許発明1の発明特定事項を全て有するものであり、本件特許発明4、6及び7は、本件特許発明3を直接又は間接的に引用するもので、本件特許発明3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1及び3と同様の理由により、本件特許発明2、4、6及び7は、甲1に記載された発明ではないし、また甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立人の主張について 申立人は、意見書において、「無機粒子Aの割合は、流動性の観点から規定されているが、無機粒子の粒径や配合量が流動性に影響することは根拠を挙げるまでもなく知られていることである。このため、特定の粒径の無機粒子の配合割合を、適切な流動性を得るために適宜調整することは、当業者が通常の能力の範囲内で適宜なしうる設計事項に過ぎない。・・・したがって、本件訂正発明1の「前記無機粒子Aの割合が前記無機充填材全体の3質量%~10質量%である、」における特に上限値の「10質量%」に、臨界的意義があるとは認められない。」(第5~7ページ)と主張している。 しかしながら、上記(2)ア(イ)で説示したように、甲1の課題を解決することができない比較例である甲1比較例6発明に基づいて、無機充填材の配合割合を変更する動機付けはなく、本件特許発明1において、臨界的意義が求められるものではない。 したがって、申立人の上記主張は首肯することができない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件特許発明1~4、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許は、取消理由1及び申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 取消理由2(甲2を主引用文献とする新規性・進歩性)及び申立理由2(甲2を主引用文献とする新規性・進歩性)について 取消理由2及び申立理由2は、甲2を主引用文献とするものであるから、併せて検討する。 (1) 甲2に記載された発明 甲2の比較例4に着目すると、以下の発明が記載されていると認める。 「カップリング剤処理アルミナC(アルミナP(平均粒径8.2μm、比表面積1.1m2/g、極大ピーク粒径9.8μm、最大粒径45μm以下)100重量%にγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3重量%を添加し、ヘンシェルミキサーにて3分間混合したもの。) 64.00重量% カップリング剤処理アルミナN(アルミナU(平均粒径0.1μm、比表面積30.0m2/g、極大ピーク粒径0.1μm、最大粒径45μm以下)100重量%にγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3重量%を添加し、ヘンシェルミキサーにて3分間混合したもの。) 20.00重量% ビフェニル型エポキシとトリフェノールメタン型エポキシの混合物(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコートYL6677、エポキシ当量163) 8.12重量% トリフェノールメタン型フェノール樹脂(明和化性(株)MEH-7500-3S、軟化点83℃、水酸基当量103) 5.28重量% 1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下「DBU」という) 0.20重量% 臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂 0.50重量% 三酸化アンチモン 1.00重量% カルナバワックス 0.30重量% カーボンブラック 0.30重量% を、常温においてミキサーで混合し、70~120℃で2本ロールにより混練し、冷却後粉砕して得られた高熱伝導エポキシ樹脂組成物。」(以下「甲2比較例4発明」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1 (ア)対比 本件特許発明1と甲2比較例4発明とを対比する。 甲2比較例4発明の「ビフェニル型エポキシとトリフェノールメタン型エポキシの混合物(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコートYL6677、エポキシ当量163)」、「トリフェノールメタン型フェノール樹脂(明和化性(株)MEH-7500-3S、軟化点83℃、水酸基当量103)」及び「臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂」は、本件特許発明1の「硬化性樹脂」に相当し、甲2比較例4発明の「エポキシ樹脂組成物」は、本件特許発明1の「樹脂組成物」に相当する。 ここで、上記1(2)ア(イ)に示したように、本件特許発明1の「体積平均粒子径」は、「D50」であり、無機質充填剤の平均粒子径を「D50」である「体積平均粒子径」で表記するのが本件優先日時の技術常識である。そうすると、甲2比較例4発明の「カップリング剤処理アルミナN」と「カップリング剤処理アルミナC」は、各々「体積平均粒子径が0.1μm」、「体積平均粒子径が8.2μm」であると認められる。 そして、甲2比較例4発明の「カップリング剤処理アルミナN」は、材質がアルミナであり、体積平均粒子径が0.1μmであることから本件特許発明1の「アルミナ粒子」である「体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機充填剤A」に相当する。また、甲2比較例4発明の「カップリング剤処理アルミナC」は、体積平均粒子径が8.2μmであることから、「体積平均粒子径が0.5μm~15μm」である「無機充填剤A以外の無機充填剤B」に相当する。 甲2比較例4発明の「カップリング剤処理アルミナN」と「カップリング剤処理アルミナC」の材質は共に「アルミナ」であるため、両者の比重は同じでその比率は「1.0」となるから、本件特許発明1の「前記無機粒子Aの比重Aの、前記無機粒子 Bの比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2」の範囲と重複一致する。 甲2比較例4発明の無機充填材は、「カップリング剤処理アルミナN」20.00重量%と「カップリング剤処理アルミナC」64.00重量%からなるものであるため、本件特許発明1の無機粒子Aに相当する「カップリング剤処理アルミナN」の割合は、無機充填材全体の「23.8質量%」(=20/(64+20)×100)となる。 また、甲2比較例4発明は、成分に「溶剤」を含んでいない。 そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、 前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、 前記無機粒子Aの比重Aの、前記無機粒子Bの比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2であり、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 溶剤を含まない、樹脂組成物。 <相違点2-1> 無機充填材全体の無機粒子Aの割合が、本件特許発明1は「3質量%~10質量%」であるのに対し、甲2比較例4発明は「23.8質量%」である点 (イ)相違点の検討 当該<相違点2-1>は、数値として明らかに異なるものであるから、実質的な相違点である。 そうすると、本件特許発明1は甲2比較例4発明ではない。 次いで、当該相違点の容易想到性について検討するに、甲2比較例4発明は、甲2の課題を解決することができない比較例であるから、当該比較例に基づいて、無機充填材の配合割合を変更する動機付けはない。 そうすると、甲2比較例4発明において、相違点2-1に係る本件特許発明1の特定事項を当業者が容易に想到することができたとはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 上記1(2)ア(ウ)で示したとおりである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は甲2に記載された発明ではないし、また甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明3 (ア)対比 本件特許発明3と甲2比較例4発明とを対比する。 甲2比較例4発明の充填剤である「カップリング剤処理アルミナN」と「カップリング剤処理アルミナC」の材質は共にアルミナで、「同じ材質」であるから、甲2比較例4発明は、本件特許発明3の「前記無機粒子Bは前記無機粒子Aと同じ材質の無機粒子を含」む事項を満たす。 そして、上記ア(ア)で対比した相当関係を参酌すると、本件特許発明3と甲2比較例4発明とは以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、 前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、 前記無機粒子Bは前記無機粒子Aと同じ材質の無機粒子を含み、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 溶剤を含まない、樹脂組成物。 <相違点2-3> 無機充填材全体の無機粒子Aの割合が、本件特許発明3は「3質量%~10質量%」であるのに対し、甲2比較例4発明は「23.8質量%」である点 (イ)相違点の検討 <相違点2-3>は、各々上記ア(ア)の<相違点2-1>と同じである。 そうすると、上記ア(イ)同様、甲2比較例4発明において、相違点2-3に係る本件特許発明3の特定事項を当業者が容易に想到することができたとはいえない。 (ウ)本件特許発明3の効果について 上記1(2)イ(ウ)で示したとおりである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明3は甲2に記載された発明ではないし、また甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明2、4、6及び7 本件特許発明2、4、6及び7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するもので、特許発明1の発明特定事項を全て有するものであり、本件特許発明4、6及び7は、本件特許発明3を直接又は間接的に引用するもので、本件特許発明3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1及び3と同様の理由により、本件特許発明2、6及び7は、甲2に記載された発明ではないし、また、本件特許発明2、4、6及び7は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立人の主張について 申立人は、意見書において、上記1(3)と同じ主張をしている。 しかしながら、上記1(3)で説示したように、申立人の上記主張は首肯することができない。 (4)まとめ したがって、本件特許発明1~3、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許は、取消理由2及び申立理由2によっては取り消すことはできない。 3 取消理由3(明確性要件)及び申立理由6(明確性要件)について 取消理由3及び申立理由6は、いずれも明確性要件に関するするものであるため、併せて検討する。 上記第2に示したように、本件訂正により本件特許発明1及び3は、「前記無機充填材は体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからな」るものに特定されたことから、取消理由3及び申立理由6の具体的理由は解消された。 そして、この他に、本件特許発明1及び3、さらに当該発明を引用する本件特許発明2、4、6及び7に不明確な点はない。 したがって、本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由3及び申立理由6によっては取り消すことはできない。 4 申立理由3(甲3を主引用文献とする新規性・進歩性)について (1)甲3に記載された発明 甲3の比較例2に着目すると、以下の発明が記載されていると認める。 「アルミナA(平均粒径8.2μm、比表面積1.1m2/g、極大値粒径9.8μm、最大粒径24μm以下) 64.00重量% アルミナG(平均粒径0.1μm、比表面積30m2/g、極大値粒径0.1μm、最大粒径24μm以下) 20.00重量% 式(3)であらわされる多官能フェノール樹脂(a)と式(5)であらわされるフェノール類(b)を重量比(a)/(b)=4で混合してグリシジルエーテル化したもの(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコートYL6677、エポキシ当量163。以下「エポキシ樹脂1」という。) 8.18重量% [図:0001438278000002.jpg] [図:0001438278000003.jpg] 式(3)であらわされる多官能フェノール樹脂硬化剤(明和化成(株)製、MEH-7500-3S、軟化点83℃、水酸基当量103) 5.32重量% γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 0.20重量% 1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU) 0.20重量% 臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(軟化点63℃、エポキシ基当量359、臭素含有量48重量%) 0.50重量% 三酸化アンチモン 1.00重量% カルナバワックス 0.30重量% カーボンブラック 0.30重量% を、常温においてミキサーで混合し、70~120℃で2本ロールにより混練し、冷却後粉砕して得られたエポキシ樹脂組成物。」(以下、「甲3比較例2発明」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1 (ア)対比 本件特許発明1と甲3比較例2発明とを対比する。 甲3比較例2発明の「エポキシ樹脂1」は、本件特許発明1の「硬化性樹脂」に相当し、甲3比較例2発明の「エポキシ樹脂組成物」は、本件特許発明1の「樹脂組成物」に相当する。 ここで、上記1(2)ア(イ)に示したように、本件特許発明1の「体積平均粒子径」は、「D50」であり、無機質充填剤の平均粒子径を「D50」である「体積平均粒子径」で表記するのが本件優先日時の技術常識である。そうすると、甲3比較例2発明の「アルミナG(平均粒径0.1μm)」と「アルミナA(平均粒径8.2μm)」は、各々「体積平均粒子径が0.1μm」、「体積平均粒子径が8.2μm」であると認められる。 そして、甲3比較例2発明の「アルミナG(平均粒径0.1μm)」は、材質がアルミナであり、体積平均粒子径が0.1μmであることから、本件特許発明1の「アルミナ粒子」である「体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機充填剤A」に相当する。また、甲3比較例2発明の「アルミナA(平均粒径8.2μm)」は、体積平均粒子径が8.2μmであることから、「体積平均粒子径が0.5μm~15μm」である「無機充填剤A以外の無機充填剤B」に相当する。 甲3比較例2発明の「アルミナG(平均粒径0.1μm)」と「アルミナA(平均粒径8.2μm)」の材質は共に「アルミナ」であるため、両者の比重は同じでその比率は「1.0」となるから、本件特許発明1の「前記無機粒子Aの比重Aの、前記無機粒子 Bの比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2」の範囲と重複一致する。 甲3比較例2発明の無機充填材は、「アルミナG(平均粒径0.1μm)」20.00重量%と「アルミナA(平均粒径8.2μm)」64.00重量%からなるものであるため、本件特許発明1の無機粒子Aに相当する「アルミナG(平均粒径0.1μm)」の割合は、無機充填材全体の「23.8質量%」(=20/(20+64)×100)である。 また、甲3比較例2発明は、成分に「溶剤」を含んでいない。 そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、 前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、 前記無機粒子Aの比重Aの、前記無機粒子Bの比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2であり、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 溶剤を含まない、樹脂組成物。 <相違点3-1> 無機充填材全体の無機粒子Aの割合が、本件特許発明1は「3質量%~10質量%」であるのに対し、甲3比較例2発明は「23.8質量%」である点 (イ)相違点の検討 当該<相違点3-1>は、数値として明らかに異なるものであるから、実質的な相違点である。 そうすると、本件特許発明1は甲3比較例2発明ではない。 次いで、当該相違点の容易想到性について検討するに、甲3比較例2発明は、甲3の課題を解決することができない比較例であるから、当該比較例に基づいて、無機充填材の配合割合を変更する動機付けはない。 そうすると、甲3比較例2発明において、相違点3-1に係る本件特許発明1の特定事項を当業者が容易に想到することができたとはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 上記1(2)ア(ウ)で示したとおりである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は甲3に記載された発明ではないし、また甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明3 (ア)対比 本件特許発明3と甲3比較例2発明とを対比する。 甲3比較例2発明の充填剤である「アルミナG(平均粒径0.1μm)」と「アルミナA(平均粒径8.2μm)」の材質は共にアルミナで、「同じ材質」であるから、甲3比較例2発明は、本件特許発明3の「前記無機粒子Bは前記無機粒子Aと同じ材質の無機粒子を含」む事項を満たす。 そして、上記ア(ア)で対比した相当関係を参酌すると、本件特許発明3と甲3比較例2発明とは以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、 前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、 前記無機粒子Bは前記無機粒子Aと同じ材質の無機粒子を含み、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 溶剤を含まない、樹脂組成物。 <相違点3-3> 無機充填材全体の無機粒子Aの割合が、本件特許発明3は「3質量%~10質量%」であるのに対し、甲3比較例2発明は「23.8質量%」である点 (イ)相違点の検討 <相違点3-3>は、上記ア(ア)の<相違点3-1>と同じである。 そうすると、上記ア(イ)同様、甲3比較例2発明において、相違点3-3に係る本件特許発明3の特定事項を当業者が容易に想到することができたとはいえない。 (ウ)本件特許発明3の効果について 上記1(2)イ(ウ)で示したとおりである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明3は甲3に記載された発明ではないし、また甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明2、4、6及び7 本件特許発明2、4、6及び7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するもので、特許発明1の発明特定事項を全て有するものであり、本件特許発明4、6及び7は、本件特許発明3を直接又は間接的に引用するもので、本件特許発明3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1及び3と同様の理由により、本件特許発明2、4、6及び7は、甲3に記載された発明ではないし、また甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立人の主張について 申立人は、意見書において、上記1(3)と同じ主張をしている。 しかしながら、上記1(3)で説示したように、申立人の上記主張は首肯することができない。 (4)まとめ したがって、本件特許発明1~4、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許は、申立理由3によっては取り消すことはできない。 5 申立理由4(甲4を主引用文献とする新規性・進歩性)について (1)甲4に記載された発明 甲4の比較例2に着目すると、以下の発明が記載されていると認める。 「アルミナA(平均粒径7.7μm、比表面積1.1m2/g、極大値粒径9.8μm、最大粒径24μm以下) 64.00重量% アルミナE(平均粒径0.1μm、比表面積30m2/g、極大点粒径0.1μm、最大粒径24μm以下) 20.00重量% 式(1)であらわされる多官能フェノール樹脂と式(2)であらわされるフェノール類を混合してグリシジルエーテル化したもの(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコートYL6677、エポキシ当量163。以下「エポキシ樹脂1」という。) 8.18重量% [図:0001438278000004.jpg] [図:0001438278000005.jpg] 式(1)であらわされる多官能フェノール樹脂硬化剤(明和化成(株)製、MEH-7500-3S、軟化点83℃、水酸基当量103) 5.32重量% γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 0.20重量% 1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU) 0.20重量% 臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(軟化点63℃、エポキシ基当量359、臭素含有量48重量%) 0.50重量% 三酸化アンチモン 1.00重量% カルナバワックス 0.30重量% カーボンブラック 0.30重量% を、常温においてミキサーで混合し、70~120℃で2本ロールにより混練し、冷却後粉砕して得られたエポキシ樹脂組成物。」(以下、「甲4比較例2発明」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1 (ア)対比 本件特許発明1と甲4比較例2発明とを対比する。 甲4比較例2発明の「エポキシ樹脂1」は、本件特許発明1の「硬化性樹脂」に相当し、甲4比較例2発明の「エポキシ樹脂組成物」は、本件特許発明1の「樹脂組成物」に相当する。 ここで、上記1(2)ア(イ)に示したように、本件特許発明1の「体積平均粒子径」は、「D50」であり、無機質充填剤の平均粒子径を「D50」である「体積平均粒子径」で表記するのが本件優先日時の技術常識である。そうすると、甲4比較例2発明の「アルミナE(平均粒径0.1μm)」と「アルミナA(平均粒径7.7μm)」は、各々「体積平均粒子径が0.1μm」、「体積平均粒子径が7.7μm」であると認められる。 そして、甲4比較例2発明の「アルミナE(平均粒径0.1μm)」は、材質がアルミナであり、体積平均粒子径が0.1μmであることから本件特許発明1の「アルミナ粒子」である「0.07μm~0.3μmの無機充填剤A」に相当する。また、甲4比較例2発明の「アルミナA(平均粒径7.7μm)」は、体積平均粒子径が7.7μmであることから「体積平均粒子径が0.5μm~15μm」である「無機充填剤A以外の無機充填剤B」に相当する。 甲4比較例2発明の「アルミナE(平均粒径0.1μm)」と「アルミナA(平均粒径7.7μm)」の材質は共に「アルミナ」であるため、両者の比重は同じでその比率は「1.0」となるから、本件特許発明1の「前記無機粒子Aの比重Aの、前記無機粒子Bの比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2」の範囲と重複一致する。 甲4比較例2発明の無機充填材は、「アルミナE(平均粒径0.1μm)」20.00重量%と「アルミナA(平均粒径7.7μm)」64.00重量%からなるものであるため、本件特許発明1の無機粒子Aに相当する「アルミナE(平均粒径0.1μm)」の割合は、無機充填材全体の「23.8質量%」(=20/(20+64)×100)となる。 また、甲4比較例2発明は、成分に「溶剤」を含んでいない。 そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、 前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、 前記無機粒子Aの比重Aの、前記無機粒子Bの比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2であり、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 溶剤を含まない、樹脂組成物。 <相違点4-1> 無機充填材全体の無機粒子Aの割合が、本件特許発明1は「3質量%~10質量%」であるのに対し、甲4比較例2発明は「23.8質量%」である点 (イ)相違点の検討 当該<相違点4-1>は、数値として明らかに異なるものであるから、実質的な相違点である。 そうすると、本件特許発明1は甲4比較例2発明ではない。 次いで、当該相違点の容易想到性について検討するに、甲4比較例2発明は、甲4の課題を解決することができない比較例であるから、当該比較例に基づいて、無機充填材の配合割合を変更する動機付けはない。 そうすると、甲4比較例2発明において、相違点4-1に係る本件特許発明1の特定事項を当業者が容易に想到することができたとはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 上記1(2)ア(ウ)で示したとおりである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は甲4に記載された発明ではないし、また甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明3 (ア)対比 本件特許発明3と甲4比較例2発明とを対比する。 甲4比較例2発明の充填剤である「アルミナE(平均粒径0.1μm)」と「アルミナA(平均粒径7.7μm)」の材質は共にアルミナで、「同じ材質」であるから、甲4比較例2発明は、本件特許発明3の「前記無機粒子Bは前記無機粒子Aと同じ材質の無機粒子を含」む事項を満たす。 そして、上記ア(ア)で対比した相当関係を参酌すると、本件特許発明3と甲4比較例2発明とは以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、 前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、 前記無機粒子Bは前記無機粒子Aと同じ材質の無機粒子を含み、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 溶剤を含まない、樹脂組成物。 <相違点4-3> 無機充填材全体の無機粒子Aの割合が、本件特許発明3は「3質量%~10質量%」であるのに対し、甲4比較例2発明は「23.8質量%」である点 (イ)相違点の検討 <相違点4-3>は、上記ア(ア)の<相違点4-1>と同じである。 そうすると、上記ア(イ)同様、甲3比較例2発明において、相違点4-3に係る本件特許発明3の特定事項を当業者が容易に想到することができたとはいえない。 (ウ)本件特許発明3の効果について 上記1(2)イ(ウ)で示したとおりである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明3は甲4に記載された発明ではないし、また甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明2、4、6及び7 本件特許発明2、4、6及び7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するもので、特許発明1の発明特定事項を全て有するものであり、本件特許発明4、6及び7は、本件特許発明3を直接又は間接的に引用するもので、本件特許発明3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1及び3と同様の理由により、本件特許発明2、6及び7は、甲4に記載された発明ではないし、また、本件特許発明2、4、6及び7は、甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立人の主張について 申立人は、意見書において、上記1(3)と同じ主張をしている。 しかしながら、上記1(3)で説示したように、申立人の上記主張は首肯することができない。 (4)まとめ したがって、本件特許発明1~3、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許は、申立理由4によっては取り消すことはできない。 6 申立理由5(甲5を主引用文献とする進歩性)について (1)甲5に記載された発明 甲5の実施例5、6に着目すると、以下の発明が記載されていると認める。 「以下の(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分のフェノール樹脂と(C)成分の無機質充填剤、さらにシランカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン0.4質量%とカルナバワックス0.3質量%と硬化促進剤1・2MZ-P(商品名、四国化成株式会社製)0.1質量%とカーボンブラック0.2質量%とを、常温にてドライブレンドした後、樹脂温度90~100℃で加熱溶融して混練し、これらを冷却した後に粉砕して作製されたエポキシ樹脂組成物。 (A)成分のエポキシ樹脂として、エポキシ樹脂1・YL-6121H(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)5.64質量%、臭素化エポキシ樹脂・BREN-105(商品名、日本化薬株式会社製) 1.0質量% (B)成分のフェノール樹脂硬化剤として、フェノール樹脂1・MEH-7500(商品名、明和化成株式会社製) 3.36質量% (C)成分の無機質充填剤として、球状アルミナ・球状シリカ混合物4(電気化学工業株式会社製、平均径7.6μm、比表面積2.3m2/g、シーラス920粒度分布48μm以下の比率87%、アルミナ:シリカ質量比95:5)83質量%、球状アルミナ2・AO-502(商品名、株式会社アドマテックス製、平均径、0.7μm、比表面積8.6m2/g、シーラス920粒度分布48μm以下の比率100%)3質量%、球状シリカ2・SO-25R(商品名、株式会社アドマテックス製、平均径0.5μm、比表面積5.8m2/g、シーラス920粒度分布48μm以下の比率100%) 3質量%」 (以下「甲5実施例5発明」という。) 「以下の(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分のフェノール樹脂と(C)成分の無機質充填剤、さらにシランカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン0.4質量%とカルナバワックス0.3質量%と硬化促進剤1・2MZ-P(商品名、四国化成株式会社製)0.1質量%とカーボンブラック0.2質量%とを、常温にてドライブレンドした後、樹脂温度90~100℃で加熱溶融して混練し、これらを冷却した後に粉砕して作製されたエポキシ樹脂組成物。 (A)成分のエポキシ樹脂として、エポキシ樹脂1・YL-6121H(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)5.64質量%、臭素化エポキシ樹脂・BREN-105(商品名、日本化薬株式会社製) 1.0質量% (B)成分のフェノール樹脂硬化剤として、フェノール樹脂1・MEH-7500(商品名、明和化成株式会社製) 3.36質量% (C)成分の無機質充填剤として、球状アルミナ・球状シリカ混合物4(電気化学工業株式会社製、平均径7.6μm、比表面積2.3m2/g、シーラス920粒度分布48μm以下の比率87%、アルミナ:シリカ質量比95:5)80質量%、球状アルミナ2・AO-502(商品名、株式会社アドマテックス製、平均径0.7μm、比表面積8.6m2/g、シーラス920粒度分布48μm以下の比率100%)6質量%、球状シリカ2・SO-25R(商品名、株式会社アドマテックス製、平均径0.5μm、比表面積5.8m2/g、シーラス920粒度分布48μm以下の比率100%) 3質量%」 (以下「甲5実施例6発明」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1 (ア)甲5実施例5発明との対比・検討 a 対比 本件特許発明1と甲5実施例5発明とを対比する。 甲5実施例5発明の「エポキシ樹脂1・YL-6121H(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)」及び「臭素化エポキシ樹脂・BREN-105(商品名、日本化薬株式会社製)」は、本件特許発明1の「硬化性樹脂」に相当し、甲5実施例5発明の「エポキシ樹脂組成物」は、本件特許発明1の「樹脂組成物」に相当する。 ここで、上記1(2)ア(イ)に示したように、本件特許発明1の「体積平均粒子径」は、「D50」であり、無機質充填剤の平均粒子径を「D50」である「体積平均粒子径」で表記するのが本件優先日時の技術常識である。そして、甲5の【請求項6】には、「 前記(C)成分の無機質充填剤の平均粒子径d50が20μm以下である」と記載されている。そうすると、甲5実施例5発明の球状アルミナ・球状シリカ混合物4(電気化学工業株式会社製、平均径7.6μm)、球状アルミナ2・AO-502(商品名、株式会社アドマテックス製、平均径0.7μm)、球状シリカ2・SO-25R(商品名、株式会社アドマテックス製、平均径、0.5μm)は、各々「体積平均粒子径が7.6μm」、「体積平均粒子径が0.7μm」、「体積平均粒子径が0.5μmであるものと認められる。このため、甲5実施例5発明の「(C)成分の無機質充填剤」は本件特許発明1の「体積平均粒子径が0.5μm~15μm」である「無機粒子B」に相当する。 また、甲5実施例5発明は、成分に「溶剤」を含んでいない。 そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は無機粒子Bを含み、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 溶剤を含まない、樹脂組成物。 <相違点5-1-1> 前記無機充填材が、本件特許発明1は「体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、 前記無機粒子Aの比重Aの、前記無機粒子Bの比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2であり、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 無機粒子Aの割合が前記無機充填材全体の3質量%~10質量%」であるのに対し、甲5実施例5発明は無機粒子Bのみからなる点 b 相違点の検討 甲5の段落【0019】には、「上記した(C)成分の無機質充填剤のうち、球状アルミナとしては平均径が30μm以下、最大径が75μm以下のものが好ましく用いられる。球状アルミナの最大径が75μmを超えると、狭部への充填性が劣る等して成形性が低下する。球状アルミナの平均径が30μmを超えると、樹脂成分への分散性が低下して例えば成形品が不均一になったり、また成形性の低下等が生じやすくなる。球状アルミナの平均径は20μm以下であることがより好ましい。ただし、球状アルミナの平均径が小さすぎるとエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇しやすいため、球状アルミナの平均径は10μm以上であることが好ましい。」と記載されている。 そうすると、甲5実施例5発明における0.7μmの球状アルミナの平均径を、「球状アルミナの平均径は10μm以上であることが好ましい。」と記載されている上で、さらに小さくする動機付けはないし、むしろ阻害要因があるといえる。 したがって、甲5実施例5発明における球状アルミナの体積平均粒子径を「0. 07μm~0.3μm」とすることは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (イ)甲5実施例6発明との対比・検討 甲5実施例6発明も甲5実施例5発明と同じく、無機充填剤は、球状アルミナ・球状シリカ混合物4(電気化学工業株式会社製、平均径7.6μm)、球状アルミナ2・AO-502(商品名、株式会社アドマテックス製、平均径0.7μm)、球状シリカ2・SO-25R(商品名、株式会社アドマテックス製、平均径、0.5μm)を使用するものである。 そうすると、本件特許発明1と甲5実施例6発明は、上記(ア)aと同様の点で一致、相違し、当該相違点を当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 上記1(2)ア(ウ)で示したとおりである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明3 (ア)甲5実施例5発明との対比・検討 a 対比 本件特許発明3と甲5実施例5発明とを対比する。 上記ア(ア)で対比した相当関係を参酌すると、本件特許発明3と甲5実施例5発明とは以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は無機粒子Bを含み、 前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 溶剤を含まない、樹脂組成物。 <相違点5-3-1> 前記無機充填材が、本件特許発明1は「体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからなり、前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、 前記無機粒子Bは前記無機粒子Aと同じ材質の無機粒子を含み、 無機粒子Aの割合が前記無機充填材全体の3質量%~10質量%」であるのに対し、甲5実施例5発明は無機粒子Bのみからなる点 b 相違点の検討 上記ア(イ)で説示したのと同様、甲5実施例5発明における球状アルミナの体積平均粒子径を「0. 07μm~0.3μm」とすることは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (イ)甲5実施例6発明との対比・検討 甲5実施例6発明も甲5実施例5発明と同じく、無機充填剤は、球状アルミナ・球状シリカ混合物4(電気化学工業株式会社製、平均径7.6μm)、球状アルミナ2・AO-502(商品名、株式会社アドマテックス製、平均径0.7μm)、球状シリカ2・SO-25R(商品名、株式会社アドマテックス製、平均径、0.5μm)を使用するものである。 そうすると、本件特許発明3と甲5実施例6発明は、上記(ア)aと同様の点で一致、相違し、当該相違点を当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (ウ)本件特許発明3の効果について 上記1(2)イ(ウ)で示したとおりである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明3は甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明2、4、6及び7 本件特許発明2、4、6及び7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するもので、特許発明1の発明特定事項を全て有するものであり、本件特許発明4、6及び7は、本件特許発明3を直接又は間接的に引用するもので、本件特許発明3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1及び3と同様の理由により、本件特許発明2、4、6及び7は、甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立人の主張について 申立人は、意見書において、上記1(3)と同じ主張をしている。 しかしながら、上記1(3)で説示したように、申立人の上記主張は首肯することができない。 (4)まとめ したがって、本件特許発明1~4、6及び7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許は、申立理由4によっては取り消すことはできない。 7 申立理由7(サポ-ト要件違反)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)検討 ア 本件特許発明は、本件特許明細書の段落【0006】等から、「流動性に優れる樹脂組成物、及びこれを用いて封止された素子を備える電子部品装置を提供すること」を課題とするものである。 イ 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比してみる。 まず、本件特許明細書の発明の詳細な説明の一般的記載について見てみる。 本件特許明細書には、以下の記載がされている。 「【0010】 <樹脂組成物> 本開示の一実施形態である樹脂組成物は、樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は、体積平均粒子径が0.07μm~0.5μmの無機粒子(以下、特定無機粒子ともいう)を含む。 【0011】 本発明者らの検討により、無機充填材が特定無機粒子を含む樹脂組成物は、無機充填材が特定無機粒子を含まない樹脂組成物に比べて流動性に優れていることがわかった。 【0012】 無機充填材が特定無機粒子を含む樹脂組成物がなぜ流動性に優れているのかは必ずしも明らかではないが、特定無機粒子がこれより粒子径の大きい無機充填材(大径粒子)の間に存在することで、大径粒子間の摩擦抵抗を低減していることが理由の一つとして考えられる。 【0013】 さらに、本発明者らの検討により、無機充填材に含まれる無機粒子の体積平均粒子径が0.07μmよりも小さくても0.5μmより大きくても流動性の向上効果が得られないことがわかった。この理由は必ずしも明らかではないが、体積平均粒子径が0.07μmよりも小さい無機粒子は大径粒子間で凝集体を形成すること、体積平均粒子径が0.5μmよりも大きい無機粒子は大径粒子間に存在しているとその移動をかえって妨げること等が原因となって、大径粒子間の摩擦抵抗を低減する役割を果たさないことが考えられる。」 「【0017】 無機充填材全体に占める特定無機粒子の割合は、特に制限されない。特定無機粒子による流動性の向上効果を充分に得る観点からは、特定無機粒子の割合は無機充填材全体の3質量%~10質量%であることが好ましい。また、特定無機粒子の割合が無機充填材全体の3質量%~10質量%であり、かつ無機充填材全体の体積平均粒子径が0.2μm~20μmであることがより好ましい。無機充填材の詳細については、後述する。」 「【0019】 特定無機粒子の材質は、特に制限されない。例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機物が挙げられる。難燃効果を有する無機物であってもよい。難燃効果を有する無機物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。特定無機粒子の材質は、1種のみであっても2種以上の組み合わせであってもよい。特定無機粒子は、アルミナ粒子(特定アルミナ粒子)であることが好ましい。」 「【0021】 (樹脂) 樹脂組成物に含まれる樹脂は、熱硬化性であっても熱可塑性であってもよく、光硬化性であってもよい。信頼性の観点からは、硬化性樹脂であることが好ましい。硬化性樹脂は、自己重合により硬化するものであっても、硬化剤、架橋剤等との反応により硬化するものであってもよい。」 「【0044】 特定無機粒子以外の無機粒子の平均粒子径は、無機充填材全体の体積平均粒子径が上述した範囲となるような平均粒子径であることが好ましい。例えば、体積平均粒子径が0.2μm~20μmであることが好ましく、0.5μm~15μmであることがより好ましい。」 上記段落【0011】【0012】には、「体積平均粒子径が0.07μm~0.5μmの無機粒子を用いることにより、これより粒子径の大きい0.2μm~20μmの大径無機粒子の間に存在することで、大径無機粒子間の摩擦抵抗を低減し、樹脂組成物の流動性が向上する」という作用機序が記載されている。さらに、【0017】には、特定無機粒子による流動性の向上効果を充分に得る観点からは、特定無機粒子の割合は無機充填材全体の3質量%~10質量%であることが好ましいことも記載されている。 そうすると、上記記載より、「樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0.07μm~0.5μmの特定無機粒子と、特定無機粒子以外の無機粒子を含み、 特定無機粒子以外の無機粒子の体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、 特定無機粒子の割合は無機充填材全体の3質量%~10質量%である樹脂組成物」という技術的事項(以下「技術的事項1」という。)を備えることにより、樹脂組成物の流動性が向上することが認識できる。 ウ 次いで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の上記一般的記載を除く、【実施例】について見てみる。 実施例、比較例は樹脂としてエポキシ樹脂を用いている。そして、無機充填材として、「無機充填材A1…体積平均粒子径9.0μmのアルミナ粒子」に加え、「体積平均粒子径が0.07μm~0.5μm」の範囲内である「無機充填材A2…体積平均粒子径0.1μmのアルミナ粒子」を4.3質量%用いた実施例3は、流動距離が245cmとなっている。一方、無機充填材として無機充填材A1しか用いていない比較例1の流動距離は176cmであり、実施例1において無機充填材A2の代わりに、「体積平均粒子径が0.07μm~0.5μm」の範囲外である「無機充填材S2…体積平均粒子径0.03μmのシリカ粒子」、「無機充填材S3…体積平均粒子径0.8μmのシリカ粒子」を用いた比較例2、比較例3の流動距離は163cm、167cmと、実施例3よりも流動性が劣る結果が示されている。また、「無機充填材A1…体積平均粒子径9.0μmのアルミナ粒子」に加え、「体積平均粒子径が0.07μm~0.5μm」の範囲内である「無機充填材A2…体積平均粒子径0.1μmのアルミナ粒子」を0.9質量%、11質量%用いた実施例1及び2は、流動距離が各々191cm、217cmと実施例3よりも流動性が劣る結果が示されている。 そうすると、本件特許明細書の一般的記載の記載事項が、【実施例】により裏付けられているといえる。 以上より、上記技術的事項1により、本件特許発明の課題が解決されることが認識できる。 エ そして、本件特許発明1、及び本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2、4、6及び7は、上記技術的事項1を備えるものである。また、本件特許発明3、及び本件特許発明3を直接又は間接的に引用する本件特許発明4、6及び7も、上記技術的事項1を備えるものである。 したがって、本件特許発明1~4、6及び7は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 (4)申立人の主張について 申立人は、申立書において、上記具体的理由i~iii(なお、具体的理由ivは本件訂正により削除された請求項8及び9に対するもので、申立ての対象がなくなっている。)を述べると共に、令和8年2月10日提出の意見書において、以下の概要の主張を行っている。 「本件訂正発明1の「前記無機粒子Aの割合が前記無機充填材全体の3質量%~10質量%である、」における特に上限値の「10質量%」に、臨界的意義があるとは認められないことを理由に、本件特許明細書に記載された発明が、本件訂正発明1の範囲まで拡張ないし一般化できるものではない。」(第7~8ページ) そこで、以下、申立の具体的理由i~iii及び意見書の主張について検討する。 ア 上記申立の具体的理由iの要旨は、本件特許発明1及び3は、「無機充填材」中の「無機粒子A」及び「無機粒子B」の割合が、特定されておらず、サポート要件についての不備がある、というものである。 しかしながら、上記第2に示したように、本件訂正により本件特許発明1及び3は、「前記無機充填材は体積平均粒子径が0. 07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとからな」るものであり、「無機粒子Aの割合は無機充填材全体の3質量%~10質量%である」と、「無機充填材」中の「無機粒子A」及び「無機粒子B」の割合が特定されたものとなった。そして、上記(3)で説示したように、本件特許発明1~4、6及び7は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 したがって、申立人の上記主張を首肯することはできない。 イ 上記申立理由の具体的理由iiの要旨は、実施例を、本件特許発明1で特定される「体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子A」及び「前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり」との範囲まで拡張ないし一般化することはできない、というものである。 しかしながら、上記(3)で説示したように、本件特許明細書の段落【0011】【0012】には、「体積平均粒子径が0.07μm~0.5μmの無機粒子を用いることにより、これより粒子径の大きい0.2μm~20μmの大径無機粒子の間に存在することで、大径無機粒子間の摩擦抵抗を低減し、樹脂組成物の流動性が向上する」という作用機序が記載されており、実際、【実施例】において、「体積平均粒子径が0.07μm~0.5μm」の範囲内である無機粒子Aを用いた実施例は、当該粒子径の範囲外である比較例2、比較例3よりも流動性が優れた結果が示されている。 したがって、申立人の上記主張を首肯することはできない。 ウ 上記申立理由の具体的理由iiiの要旨は、本件には、請求項4に関し、実施可能要件及びサポート要件についての不備があるというものである。 しかしながら、上記(3)で説示したように、上記技術的事項1により、本件特許発明の課題が解決されることが理解でき、本件特許発明4は、当該技術的事項1を備えるものである。 したがって、申立人の上記主張を首肯することはできない。 エ 上記意見書について検討するに、明細書に関するサポート要件の充足性と、進歩性における臨界的意義の有無は観点が異なるものであり、進歩性における臨界的意義の有無が、サポート要件の判断に影響を及ぼすものではない。 したがって、申立人の上記主張を首肯することはできない。 (5)まとめ 以上のとおり、本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由7によっては取り消すことはできない。 8 申立理由8(実施可能要件違反)について (1)実施可能要件の判断基準 物の発明の場合に実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 (2)検討 本件特許明細書には、樹脂に関しては、段落【0021】~【0037】に記載され、無機充填材には、段落【0038】~【0047】に記載され、樹脂組成物の調製方法には、段落【0060】及び【0061】に記載されている。 そして、実際、【実施例】において、樹脂としてエポキシ樹脂を用い、本件特許発明1及び3に規定される無機粒子を用いた具体的な樹脂組成物を製造し、当該樹脂組成物は、流動性が良好であることが示されている。 そうすると、本件特許発明1及び本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2、4、6及び7、本件特許発明3及び本件特許発明3を直接又は間接的に引用する本件特許発明4、6及び7について、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があるものといえる。 (3)申立人の主張について 申立人は、申立書において、上記具体的理由i~iiiを述べている。 しかしながら、当該具体的理由は、実質的にサポート要件に関するものであり、本件特許発明を製造し、使用することついて、当業者が過度な試行錯誤を要することを具体的に主張するものではないため、申立人の上記主張を首肯することはできない。 (4)まとめ したがって、本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由8によっては取り消すことはできない。 第6 むすび 上記第5のとおり、本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許は、当審において通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件特許の請求項5、8及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700469

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