特許異議申立
2016-701182
硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
- 審判番号
- 2016-701182
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-058079外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月26日
- 審決日
- 2018年04月17日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.121-YAA(G03F) / P1651.113-YAA(G03F) / P1651.537-YAA(G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5941180号発明「硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5941180号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1ないし6〕について訂正することを認める。
特許第5941180号の請求項1,3ないし6に係る特許を維持する。
同請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5941180号(請求項の数6。以下,「本件特許」という。)は,平成27年3月20日の出願であって,平成28年5月27日に特許権の設定登録がされたものである。
その後,平成28年6月29日に特許掲載公報の発行がなされたところ,平成28年12月26日に特許異議申立人により請求項1ないし6に係る特許について特許異議の申立てがされ,平成29年3月9日付けで特許権者に取消理由が通知され,同年5月12日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ,同年6月16日に異議申立人より意見書が提出され,同年7月12日付けで特許権者に取消理由通知(決定の予告)がされ,同年9月19日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ,同年12月7日に異議申立人より意見書が提出され,同年12月19日付けで特許権者に取消理由が通知され,平成30年2月20日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下,当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい,本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。なお,特許法120条の5第7項の規定により,本件訂正請求より先にした訂正の請求は取り下げられたものとみなす。)がされた。
なお,本件訂正について,異議申立人に対して,訂正請求があった旨の特許法120条の5第5項の規定に基づく通知がされたが,指定された期間内に異議申立人による意見書の提出はなされなかった。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
(1)訂正前後の記載
本件訂正請求は,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1ないし6について訂正することを求めるものであるところ,一群の請求項〔1ないし6〕ごとに請求するものであるから,特許法120条の5第4項の規定に適合して請求されたものである。
しかるに,本件訂正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
ア 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
(A)アルカリ現像性樹脂,(B)エポキシ樹脂,(C)光反応開始剤,(D)光重合性モノマー((A)アルカリ現像性樹脂および(E)表面処理された無機フィラーを除く)および(E)表面処理された無機フィラーを含有する硬化性樹脂組成物であって,
前記(B)エポキシ樹脂は,(b)軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂と,(b’)軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂との混合物であり,
前記(b)軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂のエポキシ基(b1)と,前記軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂のエポキシ基(b’1)との合計が,前記(A)アルカリ現像性樹脂のアルカリ現像性基1当量に対して1.2当量以上2.5当量以下であり,
前記(D)光重合性モノマーの含有量は,前記硬化性樹脂組成物に含まれる前記(A)アルカリ現像性樹脂,(B)エポキシ樹脂,(C)光反応開始剤および(D)光重合性モノマーの合計中で10質量%以下であり,
前記(E)表面処理された無機フィラーは,前記(A)アルカリ現像性樹脂,前記(B)エポキシ樹脂および(D)光重合性モノマーの少なくともいずれか1種と反応可能な反応性基を有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(E)表面処理された無機フィラーは,表面処理されたシリカである請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b)軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂のエポキシ基(b1)と,前記軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂のエポキシ基(b’1)との比が,1:0.1~1:9である請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の硬化性樹脂組成物を,フィルム上に塗布乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物または請求項4記載のドライフィルムの樹脂層を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物を具備することを特徴とするプリント配線板。」
イ 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
(A)アルカリ現像性樹脂,(B)エポキシ樹脂,(C)光反応開始剤,(D)光重合性モノマー((A)アルカリ現像性樹脂および(E)表面処理された無機フィラーを除く)および(E)表面処理された無機フィラーを含有し,タルクを含有しない硬化性樹脂組成物であって,
前記(A)アルカリ現像性樹脂が,カルボキシル基を含む樹脂であり,
前記(B)エポキシ樹脂は,(b)軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂と,(b’)軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂との混合物であり,
前記(b)軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂のエポキシ基(b1)と,前記(b’)軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂のエポキシ基(b’1)との合計が,前記(A)アルカリ現像性樹脂のアルカリ現像性基1当量に対して1.5当量以上2.5当量以下であり,
前記(D)光重合性モノマーの含有量は,前記硬化性樹脂組成物に含まれる前記(A)アルカリ現像性樹脂,(B)エポキシ樹脂,(C)光反応開始剤および(D)光重合性モノマーの合計中で10質量%以下であり,
前記(E)表面処理された無機フィラーは,前記(A)アルカリ現像性樹脂,前記(B)エポキシ樹脂および(D)光重合性モノマーの少なくともいずれか1種と反応可能な(メタ)アクリロイル基,ビニル基および環状(チオ)エーテル基のいずれか1種の反応性基を有するシリカを含み,含有量が硬化性樹脂組成物の全固形分を基準として10~80質量%であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記(b)軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂のエポキシ基(b1)と,前記(b’)軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂のエポキシ基(b’1)との比が,1:0.1~1:9である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または3記載の硬化性樹脂組成物を,フィルム上に塗布乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項5】
請求項1もしくは3記載の硬化性樹脂組成物または請求項4記載のドライフィルムの樹脂層を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物を具備することを特徴とするプリント配線板。」
(2)訂正事項
本件訂正は,次の訂正事項からなる。
ア 訂正事項1
(ア) 請求項1の「無機フィラーを含有する硬化性樹脂組成物」という記載を,「無機フィラーを含有し,タルクを含有しない硬化性樹脂組成物」という記載に訂正する。
(イ) 請求項1の「前記(B)エポキシ樹脂は,(b)軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂と,」という記載の前に,「前記(A)アルカリ現像性樹脂が,カルボキシル基を含む樹脂であり,」という記載を挿入する。
(ウ) 請求項1の「前記軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂のエポキシ基(b’1)との合計が,」という記載を,「前記(b’)軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂のエポキシ基(b’1)との合計が,」という記載に訂正する。
(エ) 請求項1の「1.2当量以上」という記載を,「1.5当量以上」という記載に訂正する。
(オ) 請求項1の「少なくともいずれか1種と反応可能な反応性基」という記載を,「少なくともいずれか1種と反応可能な(メタ)アクリロイル基,ビニル基および環状(チオ)エーテル基のいずれか1種の反応性基」という記載に訂正する。
(カ) 請求項1の「有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。」という記載を,「有するシリカを含み,含有量が硬化性樹脂組成物の全固形分を基準として10~80質量%であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。」という記載に訂正する。
イ 訂正事項2
請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
(ア) 請求項3の「前記軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂」という記載を,「前記(b’)軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂」という記載に訂正する。
(イ) 請求項3の「請求項1または2に記載の」という記載を,「請求項1に記載の」という記載に訂正する。
エ 訂正事項4
請求項4の「請求項1~3のいずれか1項記載の」という記載を,「請求項1または3記載の」という記載に訂正する。
オ 訂正事項5
請求項5の「請求項1~3のいずれか1項に記載の」という記載を,「請求項1もしくは3記載の」という記載に訂正する。
2 訂正の目的の適否について
訂正事項1のうち(ア)に係る訂正は,請求項1に係る発明及び当該請求項1の記載を引用する形式で記載された請求項2ないし6に係る発明において,本件訂正前にはタルクを含有するのか否かは任意であった「硬化性樹脂組成物」について,タルクを含有しないものに限定しようとする訂正であり,訂正事項1のうち(イ)に係る訂正は,請求項1に係る発明及び当該請求項1の記載を引用する形式で記載された請求項2ないし6に係る発明において,本件訂正前にはカルボキシル基を含むのか否かは任意であった「(A)アルカリ現像性樹脂」について,カルボキシル基を含むものに限定しようとする訂正であり,訂正事項1のうち(エ)に係る訂正は,請求項1に係る発明及び当該請求項1の記載を引用する形式で記載された請求項2ないし6に係る発明において,「(A)アルカリ現像性樹脂のアルカリ現像性基1当量」に対する「(b)軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂のエポキシ基(b1)と,(b’)軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂のエポキシ基(b’1)との合計」の当量数を,「1.2当量以上2.5当量以下」という範囲から「1.5当量以上2.5当量以下」という範囲に限定しようとする訂正であり,訂正事項1のうち(オ)及び(カ)に係る訂正は,請求項1に係る発明及び当該請求項1の記載を引用する形式で記載された請求項2ないし6に係る発明において,「(A)アルカリ現像性樹脂,前記(B)エポキシ樹脂および(D)光重合性モノマーの少なくともいずれか1種と反応可能な反応性基」を有する「(E)表面処理された無機フィラー」について,本件訂正前には材質及び含有量,並びに反応性基の種類が(無機材料であること以外は)任意であったものを,材質がシリカであり,含有量が硬化性樹脂組成物の全固形分を基準として10~80質量%であり,反応性基が(メタ)アクリロイル基,ビニル基および環状(チオ)エーテル基のいずれか1種であることを特定しようとする訂正であるから,これらの訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また,訂正事項1のうち(ウ)に係る訂正,及び訂正事項3のうち(ア)に係る訂正は,本件訂正前には「(b’)」という符号が付された「軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂」と,当該符号が付されていない「軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂」とが混在していたものを,当該符号が付された表現に統一しようとするものであるから,同条ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
さらに,訂正事項2,訂正事項3のうち(イ)に係る訂正,訂正事項4及び訂正事項5は,特許請求の範囲から請求項2を削除しようとする訂正であるから,同条ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
3 新規事項の追加の有無について
訂正事項1のうち(ア)に係る訂正の限定事項は,当業者によって,本件訂正前の明細書(特許された時点での明細書である。以下,「特許明細書」という。)のすべての記載(特に,【0084】の表1,【0085】の表2,【0086】の表3,【0091】,【0093】の表4,【0094】の表5,及び【0095】の表6等)を総合することにより導かれる技術的事項であって,訂正事項1のうち(ア)に係る訂正は,当該技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではなく,訂正事項1のうち(イ)に係る訂正の限定事項は,特許明細書の【0011】ないし【0013】,【0017】,【0087】等に記載された事項であり,訂正事項1のうち(エ)に係る訂正の限定事項は,特許明細書の【0022】に記載された事項であり,訂正事項1のうち(オ)に係る訂正の限定事項は,特許明細書の【0055】等に記載された事項であり,訂正事項1のうち(カ)に係る訂正の限定事項は,特許明細書の【0056】,【0057】等に記載された事項であるから,これらの訂正は,本件訂正前の願書に添付された特許請求の範囲,明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
また,訂正事項1のうち(ウ)に係る訂正,及び訂正事項3のうち(ア)に係る訂正の前後で,その内容に差異はないから,これらの訂正は,本件訂正前の願書に添付された特許請求の範囲,明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに,訂正事項2,訂正事項3のうち(イ)に係る訂正,訂正事項4及び訂正事項5は,特許請求の範囲から請求項2を削除しようとする訂正であって,これらの訂正が,本件訂正前の願書に添付された特許請求の範囲,明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。
したがって,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
4 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否について
訂正事項1ないし5が,いずれも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかであるから,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
5 小括
前記2ないし4のとおりであって,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1ないし6〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許の請求項1ないし6に係る発明
前記第2 5で述べたとおり,本件訂正は適法になされたものであるから,本件特許の請求項1,3ないし6に係る発明(以下,それぞれを「本件訂正発明1」,「本件訂正発明3」ないし「本件訂正発明6」といい,これらを総称して「本件訂正発明」という。)は,それぞれ,前記第2 1(1)イにおいて,本件訂正後の特許請求の範囲の記載として示した請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。
2 取消理由の概要
(1) 本件訂正前の各請求項に係る特許に対して通知された取消理由は,概略次のとおりである。なお,当該取消理由の通知において,取り上げなかった異議申立理由はない。
ア 取消理由1(明確性要件違反:平成29年12月19日付けで通知したもの)
平成29年9月19日にした訂正請求による訂正後の請求項1の記載では,請求項1,3ないし6に係る発明の硬化性樹脂組成物について,表面処理されているか否かにかかわらずタルクを含有しないものに特定しているのか,それとも,表面処理されていないタルクを含有することが許容されているのかが,明確でないから,その特許は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
イ 取消理由2(進歩性欠如:平成29年7月12日付けで通知したもの)
平成29年5月12日にした訂正請求による訂正後の請求項1ないし6に係る発明は,甲1に記載された発明及び周知技術(周知例:甲2,甲3,参考資料2,参考資料3)に基づいて,あるいは,甲1に記載された発明,前記周知技術及び参考文献1に記載された技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
ウ 取消理由3(サポート要件違反:平成29年7月12日付けで通知したもの)
本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を特許請求の範囲に記載された「アルカリ現像樹脂」全般にまで拡張ないし一般化できるとはいえないから,本件特許の請求項1ないし6に係る発明の特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
エ 取消理由4(新規性欠如,進歩性欠如:平成29年3月9日付けで通知したもの)
本件特許の請求項1,3ないし6に係る発明は,甲1に記載された発明であって,特許法29条1項3号に該当するから,その特許は同項の規定に違反してされたものであり,本件特許の請求項1ないし6に係る発明は,甲1に記載された発明に基づいて,又は甲1に記載された発明及び甲2ないし甲4からそれぞれ把握される各技術事項のいずれかに基づいて(少なくとも,甲1の記載から把握される発明,甲2ないし甲4の記載からそれぞれ把握される各技術事項,及び周知技術の適宜組合せによって),当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は同条2項の規定に違反してされたものである。
オ 取消理由5(明確性要件違反:平成29年3月9日付けで通知したもの)
本件特許の請求項1に記載された「アルカリ現像性樹脂」は,一般的な技術用語でなく,いかなる樹脂が含まれるのかが明確でなく,請求項1に記載された「表面処理」は,いかなる処理が含まれるのか明確でなく,さらに,請求項1に記載された「反応性基」について,「アルカリ現像性樹脂」が不明確である結果,いかなる基が「反応性基」に含まれるのか把握できないことから,本件特許の請求項1ないし6に係る発明は明確でないから,その特許は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
カ 取消理由6(サポート要件違反:平成29年3月9日付けで通知したもの)
本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を特許請求の範囲に記載された「アルカリ現像樹脂」,「表面処理」,「無機フィラー」及び「反応性基」にまで拡張ないし一般化できるとはいえないから,本件特許の請求項1ないし6に係る発明の特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2) 取消理由2及び3で引用した引用例は次のとおりである。
甲1:国際公開第2014/117496号
甲2:特開2008-102486号公報
甲3:特開2013-84815号公報
甲4:特開平11-288091号公報
甲5:”製品案内 2016年12月”,[online],三菱化学スペシャリティケミカルズ事業部,[平成28年12月16日検索],インターネット<URL:http://www.mcc-epoxy.jp/catalog/pdf/catalog.pdf>
甲6:特開平6-263832号公報
甲7:”High dispersibility Barium Sulfate 高分散性硫酸バリウム BARIACE○R B-30 Series”,[online],堺化学工業株式会社,[平成28年12月16日検索],インターネット<URL:http://www.sakai-chem.co.jp/jp/products/pdf/bar06043.pdf>(注:表題中の「BARIACE」に続く「○R」は,○囲み文字の「R」を表す。)
甲8:伊藤征司郎,”-解説- 粉体の表面化学”,近畿アルミニウム表面処理研究会会誌(Alminum finishing society of Kinki),1982年11月,No.97,p.8-14(インターネット<URL:https://kindai.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=1702&item_no=1&page_id=13&block_id=21>より電子データを入手可能。)
甲9:特開平11-209699号公報
甲10:特開2011-164306号公報
参考資料1:特開2014-235376号公報
参考資料2:特開2011-13622号公報
参考資料3:2011-95731号公報
3 引用例
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1(国際公開第2014/117496号)は,本件特許に係る特許出願の出願の時より前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ,当該甲1には次の記載がある。(日本語訳における下線は,後述する「甲1発明」の認定に特に関係する箇所を示す。なお,日本語訳において,原文に付された下線は省略した。)
(ア) 「
」
[日本語訳]
「技術分野
本発明は,プリント配線板のソルダーレジスト等の形成に適したアルカリ現像型の感光性樹脂組成物及びその硬化物に関し,特に紫外線露光及び希アルカリ水溶液による現像にて画像形成が可能であり,とりわけ爆孔耐性,空泡耐性,及びTH(through hole)内の銅との密着性とクラック耐性に優れた,硬化塗膜が得られるアルカリ現像型の感光性樹脂組成物とその硬化物,並びにプリント配線板に関する。
背景技術
現在,一部の民生用プリント配線板並びにそのほとんどの産業用プリント配線板のソルダーレジストには,高精度,高密度の観点から,紫外線露光後,現像することにより画像形成し,熱及び光照射で仕上げ硬化(本硬化)する液状現像型のソルダーレジストが使用されている。また,環境問題への配慮から,現像液として希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型の液状ソルダーレジストが主流になっている。このような希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型のソルダーレジストとしては,例えば,特許文献1に記載されているような,ノボラック型エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸の反応生成物に多塩基酸無水物を付加した活性エネルギー線硬化性樹脂,光重合開始剤,希釈剤及びエポキシ化合物からなる液状ソルダーレジスト組成物が広く用いられている。
しかしながら,上記従来の液状ソルダーレジスト組成物を,例えばTHを有する配線板にも直接充填するような仕様で用いる場合,形成したソルダーレジスト膜は,はんだレベラー時にTH周辺が浮き上がってしまうという現象(以下,単に「空泡」という),あるいはポストキュアやはんだレベリング時にTH内に充填された塗膜が吐出してしまうという現象(以下,単に「爆孔」という)を招きやすいという問題があった。
特に中国をはじめとするアジア地域では,銅TH配線板のような配線板の貫通孔の全てを液状ソルダーレジスト組成物で充填する仕様の配線板が主流であり,上記空泡や爆孔の問題に対応したソルダーレジスト組成物が求められてきた。例えば,特許文献2又は特許文献3に記載されているような,感光性とアルカリ現像性を有したビスフェノール型樹脂,クレゾールノボラック型樹脂,共重合型樹脂を併用して得られる液状ソルダーレジスト組成物が広く知られている。
一方,プリント配線板は,年々軽薄短小化するとともに多種多様の孔径を有するプリント配線板が用いられている。その中でも孔径がΦ500以上のプリント配線板に上記の空泡と爆孔耐性を有するソルダーレジスト組成物を用いると,TH内の銅とソルダーレジスト組成物の界面との密着性不足によるクラックが生じる不具合が発生することがある。図1はその不具合の形状を示している。このような不具合は,フラックス塗布時にフラックスがTH内に入り込み易くなり,フラックス塗布面の反対面までフラックスが回り込んでしまい,基板表面の汚染,TH内残留フラックスが後処理のレベラー時に膨れるといった新たな不具合を生じさせる可能性があることから,爆孔耐性,空泡耐性,およびTH内の銅との密着性とクラック耐性に優れたソルダーレジスト組成物が望まれている。
特許文献1:特開昭61-243869号
特許文献2:特開2008-116813号
特許文献3:国際公開番号2003-059975号
特許文献4:特開2002-256060号
発明の内容
技術的課題
本発明は,爆孔耐性,空泡耐性,及びTH内の銅との密着性とクラック耐性に優れた,硬化塗膜が得られるアルカリ現像型の感光性樹脂組成物とその硬化物並びにプリント配線板を提供することを目的とする。その主たる目的は,TH内の銅との密着性とクラック耐性に優れた,プリント配線板用のソルダーレジスト組成物に適したアルカリ現像型の感光性樹脂組成物を提供することにある。
より具体的には,ソルダーレジストに要求される爆孔耐性,空泡耐性はもちろん従来技術では不十分であったTH内の銅との密着性に優れクラック耐性に優れた,感光性樹脂組成物を提供することにある。
解決方法
発明者らは,上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果,(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)光重合開始剤,(C)希釈溶剤,(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物,及び(E)タルクを含有し,(A)カルボキシル基含有樹脂として,少なくとも1種類のビスフェノール型エポキシ化合物(a)と不飽和カルボン酸(b)とのエステル化反応により生成するエポキシ基のエステル化生成物と飽和又は不飽和多塩基酸無水物(c)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂(A-1)を含み,かつ(E)タルクの含有率が全量の10重量%以上,60重量%以下であることを特徴とするアルカリ現像型の感光性樹脂組成物が上記課題を解決できることを見いだし,本発明を完成するに至った。
すなわち,本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物は,(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)光重合開始剤,(C)希釈溶剤,(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物,および(E)タルクを含有し,(A)カルボキシル基含有樹脂として,少なくとも1種類のビスフェノール型エポキシ化合物(a)と不飽和カルボン酸(b)とのエステル化反応により生成するエポキシ基のエステル化生成物と飽和又は不飽和多塩基酸無水物(c)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂(A-1)を含み,かつ(E)タルクの含有率が全量の10重量%以上,60重量%以下であることを特徴とする。
また,TH充填用途であることが好ましい。
また,(E)タルク以外の(F)フィラーを含有することが好ましい。
また,(G)熱硬化性成分を含有することが好ましい。
また,銅上に塗布して用いられることが好ましい。
また,本発明のドライフィルムは,前記アルカリ現像型感光性樹脂組成物を,キャリアフィルムに塗布,乾燥して得られることを特徴とする。
また,本発明の硬化物は,前記アルカリ現像型感光性樹脂組成物を銅上に塗布,乾燥して得られる塗膜,もしくは該感光性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布,乾燥して得られる光硬化性のドライフィルムを銅上にラミネートして得られる塗膜を,光硬化して得られることを特徴とする。
また,本発明のプリント配線板は,前記アルカリ現像型感光性樹脂組成物を基材上に塗布,乾燥して得られる塗膜,もしくは該感光性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布,乾燥して得られる光硬化性のドライフィルムを基材上にラミネートして得られる塗膜を,光硬化させた後,熱硬化して得られる硬化物を具備することを特徴とする。
本発明の感光性樹脂組成物は,(A)カルボキシル基含有樹脂として,少なくとも1種類のビスフェノール型エポキシ化合物(a)と不飽和カルボン酸(b)とのエステル化反応により生成するエポキシ基のエステル化生成物と飽和又は不飽和多塩基酸無水物(c)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂(A-1)を含み,かつ(E)タルクの含有率が全量の10重量%以上,60重量%以下であることに最大の技術的特徴がある。
このような本発明の特徴的構成によれば,カルボキシル基含有樹脂(A)として可撓性を有する上記カルボキシル基含有樹脂(A-1)を用い,かつ(E)タルクの含有率が全量の10重量%以上,60重量%以下とすることで,硬化物の硬度を柔らかくし,その感光性樹脂組成物に柔軟性が付与される。その結果,ポストキュア時の感光性樹脂組成物が硬化する際の硬化収縮を緩和し,その感光性樹脂組成物の柔軟性によってTH内の銅表面の凹凸にしっかり感光性樹脂組成物が追随して硬化することができることによって,TH内の銅と感光性樹脂組成物の界面でのクラックを防止することができるのである。また,アルカリ現像型感光性樹脂組成物の流動性が良好となり,印刷時にTH内への埋め込み性が良好となるのである。
これに対し,従来の空泡耐性を有するソルダーレジスト組成物では,空泡耐性は得られるものの,TH内の銅との密着性を十分に得ることができない。その理由は,従来のソルダーレジスト組成物では,上記カルボキシル基含有樹脂(A-1)と(F)フィラーは含有するものの,(F)フィラーには鉱物の硬さの尺度であるモース硬度が高い硫酸バリウム(モース硬度;3)やシリカ(モース硬度;7)を用いるのが一般的であったからである。モース硬度の硬さの尺度は,1から10までの整数値が用いられ,数字が大きい程,鉱物の硬さが高い事を意味する。モース硬度が高い硫酸バリウムやシリカを用いることにより,その感光性樹脂組成物に十分な柔軟性が付与されない。その結果,ポストキュア時の硬化収縮の緩和が十分でなく,TH内の銅表面の凹凸に十分に追随して硬化する事が困難となり,TH内の銅との密着性を十分に得ることができない。
このように,上述した従来の感光性樹脂組成物では,十分な柔軟性が不足し,TH内の銅との密着性を付与することは困難である。そこで本発明において,モース硬度が1であり,鉱物の中で最も柔らかい鉱物の一つである(E)タルクを用いることによって,前記の改善を図った。
有益な効果
以上のことから,本発明により,TH内の銅との密着性,爆孔耐性,空泡耐性,およびクラック耐性に優れた感光性樹脂組成物,及びその硬化物を提供することができる。」
(イ) 「
・・・(中略)・・・
・・・(中略)・・・
・・・(中略)・・・
・・・(中略)・・・
・・・(中略)・・・
・・・(中略)・・・
・・・(中略)・・・
・・・(中略)・・・
・・・(中略)・・・
・・・(中略)・・・
・・・(中略)・・・
・・・(中略)・・・
・・・(中略)・・・
」
[日本語訳]
「具体的実施方式
以下,本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物における各構成成分について説明する。
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物は,(E)タルクを必須成分として含有することを特徴とすることから,先ず(E)タルクについて説明する。
(E)タルク
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物に用いられる(E)タルクは,TH内の銅との密着性とクラック耐性を高める為に用いられている。
このような(E)タルクとしては,母岩が炭酸マグネシウム,蛇紋岩,シリカ/シリカ-アルミナ,マグネシウム堆積物の何れかで良く,所謂,珪酸塩鉱物の一種であれば良く,形状が塊状でも微粉状でも構わない。表面処理に関しても有っても無くても構わない。
これらの(E)タルクの配合割合は,全量の10重量%以上,60重量%以下が適当である。10重量%未満だとTH内の銅との密着性とクラック耐性が十分に得られず,60重量%を超えるとアルカリ現像型感光性樹脂組成物の流動性が悪くなり印刷時にTH内への埋め込み性が悪くなるので好ましくない。
(A)カルボキシル基含有樹脂
まず,本発明のカルボキシル基含有樹脂(A)である,少なくとも1種類のビスフェノール型エポキシ化合物(a)と不飽和カルボン酸(b)とのエステル化反応により生成するエポキシ基のエステル化生成物と飽和又は不飽和多塩基酸無水物(c)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂(A-1)について説明する。
このカルボキシル基含有樹脂(A-1)の製造に使用される少なくとも1種類のビスフェノール型エポキシ化合物(a)としては,ビスフェノールA型またはビスフェノールF型のアルコール性水酸基にエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンをアルコール性水酸基1当量に対して1当量以上使用して付加したものを用いる。
前記ビスフェノール型エポキシ化合物のエポキシ基に付加する不飽和カルボン酸(b)としては,アクリル酸,アクリル酸の二量体,メタアクリル酸,ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート,フェニルグリシジル(メタ)アクリレート,(メタ)アクリル酸カプロラクトン付加物など水酸基含有アクリレートの不飽和二塩基酸無水物付加物などが挙げられる。ここで特に好ましいのは,アクリル酸,メタアクリル酸である。これら不飽和基含有モノカルボン酸は単独または混合して用いることができる。
前記ビスフェノール型エポキシ化合物と前記不飽和カルボン酸とのエステル化反応により生成するエステル化物中のアルコール性水酸基と反応させる飽和又は不飽和多塩基酸無水物(c)としては,メチルテトラヒドロ無水フタル酸,テトラヒドロ無水フタル酸,ヘキサヒドロ無水フタル酸,メチルヘキサヒドロ無水フタル酸,無水コハク酸,無水マレイン酸,無水フタル酸,無水イタコン酸などの脂肪族または芳香族二塩基酸無水物が挙げられる。
・・・(中略)・・・
上記のようなカルボキシル基含有樹脂(A)は,バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため,希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
また,上記カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は,40~200mgKOH/gの範囲が望ましく,より好ましくは45~120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり,一方,200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために,必要以上にラインが痩せたり,場合によっては,露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい,正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
・・・(中略)・・・
このようなカルボキシル基含有樹脂(A)の配合量は,全組成物の20~60質量%の範囲が望ましく,好ましくは30~50質量%である。カルボキシル基含有樹脂(A)の配合量が上記範囲より少ない場合,塗膜強度が低下したりするので好ましくない。一方,上記範囲より多い場合,組成物の粘性が高くなったり,塗布性等が低下するので好ましくない。
(B)光重合開始剤
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物に好適に用いることができる光重合開始剤(B)としては,
・・・(中略)・・・
2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン等のアミノアセトフェノン類;
・・・(中略)・・・
各種パーオキサイド類などが挙げられ,これら公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・(中略)・・・
これらの光重合開始剤(B)の配合割合は,前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して,0.01~30質量部が適当であり,好ましくは5~25質量部である。光重合開始剤の使用量が上記範囲より少ない場合,組成物の光硬化性が悪くなり,一方,多過ぎる場合は,ソルダーレジストとしての特性が低下するので好ましくない。
(C)有機溶剤
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物に用いられる有機溶剤(C)は,前記カルボキシル基含有樹脂(A)の合成や組成物の調製のため,又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため,有機溶剤を使用することができる。
このような有機溶剤としては,ケトン類,芳香族炭化水素類,グリコールエーテル類,グリコールエーテルアセテート類,エステル類,アルコール類,脂肪族炭化水素,石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン,キシレン,テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ,メチルセロソルブ,ブチルセロソルブ,カルビトール,メチルカルビトール,ブチルカルビトール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,ジプロピレングリコールモノメチルエーテル,ジプロピレングリコールジエチルエーテル,トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル,酢酸ブチル,ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート,プロピレングリコールメチルエーテルアセテート,プロピレングリコールエチルエーテルアセテート,プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール,プロパノール,エチレングリコール,プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン,デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル,石油ナフサ,水添石油ナフサ,ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は,単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
(D)分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物に用いられる分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(D)は,活性エネルギー線照射により光硬化して,前記カルボキシル基含有樹脂(A)をアルカリ水溶液に不溶化し又は不溶化を助けるものである。このような化合物の具体例としては,
・・・(中略)・・・
ヘキサンジオール,トリメチロールプロパン,ペンタエリスリトール,ジペンタエリスリトール,トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;
・・・(中略)・・・
及びメラミンアクリレート,及び上記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくとも何れか1種などが挙げられる。
・・・(中略)・・・
このような分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(D)の配合量は,前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して,5~100質量部の割合が望ましく,より好ましくは10~70質量部の割合である。前記配合量が,前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対し5質量部未満の場合,得られるアルカリ現像型感光性樹脂組成物の光硬化性が低下し,活性エネルギー線照射後のアルカリ現像により,パターン形成が困難となるので,好ましくない。一方,100質量部を超えた場合,アルカリ水溶液に対する溶解性が低下や,硬化塗膜が脆くなるので,好ましくない。
(F)フィラー
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物は,耐熱性とTH内の銅との密着性を高める為に,(F)フィラーを用いる事ができる。
このような(F)フィラーとしては,硫酸バリウム,チタン酸バリウム,酸化ケイ素粉,球状シリカ,クレー,炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム,酸化アルミニウム,水酸化アルミニウム,ガラス繊維,炭素繊維,雲母粉などの公知慣用の無機又は有機フィラーが挙げられる。これらの(F)フィラーには表面処理が有っても無くても良い。
これらの(F)フィラーの配合割合は,全量の0.01重量%以上,50重量%以下が適当である。0.01重量%未満だとTH内の銅との密着性と耐熱性が十分に得られず,50重量%を超えるとアルカリ現像型感光性樹脂組成物の流動性が悪くなり,印刷時にTH内への埋め込み性が悪くなるので好ましくない。
(G)熱硬化性成分
本発明に用いるアルカリ現像型感光性樹脂組成物は,耐熱性とクラック耐性を付与するために,分子中に2個以上の反応基(環状エーテル基及び環状チオエーテル基の少なくとも何れか1種(以下,環状(チオ)エーテル基と略す))を有する熱硬化性成分(G)を配合する。
熱硬化性成分(G)は,分子中に3,4または5員環の環状エーテル基,又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を2個以上有する化合物であり,例えば,分子内に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する化合物,すなわち多官能エポキシ化合物(G-1),分子内に少なくとも2つ以上のオキセタニル基を有する化合物,すなわち多官能オキセタン化合物(G-2),分子内に2個以上のチオエーテル基を有する化合物,すなわちエピスルフィド樹脂(G-3)などが挙げられる。
前記多官能エポキシ化合物(G-1)としては,例えば,三菱化学社製のエピコート828,エピコート834・・・(中略)・・・等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;・・・(中略)・・・東都化成社製のエポトートYDCN-701,YDCN-704・・・(中略)・・・等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;・・・(中略)・・・等が挙げられるが,これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は,単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にビスフェノールA型エポキシ樹脂又はそれらの混合物が好ましい。
・・・(中略)・・・
前記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分(G)の配合量は,前記カルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基1当量に対して,環状(チオ)エーテル基が好ましくは0.6~2.0当量,より好ましくは,0.8~1.5当量となる範囲にある。分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分(G)の配合量が0.6未満である場合,ソルダーレジスト膜にカルボキシル基が残り,耐熱性,耐アルカリ性,電気絶縁性などが低下するので,好ましくない。一方,2.0当量を超える場合,低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより,塗膜の強度などが低下するので,好ましくない。
・・・(中略)・・・
その他の成分
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物は,さらに必要に応じて,フタロシアニン・ブルー,フタロシアニン・グリーン,アイオジン・グリーン,ジスアゾイエロー,クリスタルバイオレット,酸化チタン,カーボンブラック,ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤,ハイドロキノン,ハイドロキノンモノメチルエーテル,t-ブチルカテコール,ピロガロール,フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤,微粉シリカ,有機ベントナイト,モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤,シリコーン系,フッ素系,高分子系などの消泡剤及びレベリング剤の少なくとも何れか1種,イミダゾール系,チアゾール系,トリアゾール系等の密着性付与剤やシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物をプリント配線板のソルダーレジスト形成に用いる場合には,必要に応じて塗布方法に適した粘度に調整した後,これを例えば予め回路形成されたプリント配線板にスクリーン印刷法,カーテンコート法,スプレーコート法,ロールコート法等の方法により塗布し,必要に応じて例えば約60~100℃の温度で乾燥処理することにより,タックフリーの塗膜を形成できる。その後,所定の露光パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性光線により露光し,未露光部をアルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成でき,さらに,例えば約140~180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより,前記熱硬化性成分の硬化反応に加えて感光性樹脂成分の重合が促進され,得られるレジスト皮膜の耐熱性,耐溶剤性,耐酸性,耐吸湿性,PCT耐性,密着性,電気特性などの諸特性を向上せしめることができる。
上記現像に使用されるアルカリ水溶液としては,水酸化カリウム,水酸化ナトリウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,リン酸ナトリウム,ケイ酸ナトリウム,アンモニア,アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。また,光硬化させるための照射光源としては,低圧水銀灯,中圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯,半導体レーザー,固体レーザー,キセノンランプ又はメタルハライドランプなどが適当である。」
(ウ) 「
・・・(中略)・・・
」
[日本語訳]
「実施例
本発明を実施例および比較例に基づき,更に詳しく説明するが本発明の技術範囲およびその実施態様はこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例中の「部」または「%」は特記しない限り重量基準である。以下に述べる手法により,本実施例の組成物の性状値試験を行った。
合成例1
ガス導入管,撹拌装置,冷却管,温度計,及び連続滴下用の滴下ロートを備えた反応容器にカルボン酸当量86g/当量の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸86部とビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製,エピコート828,エポキシ当量189g/当量)378部を仕込み,窒素雰囲気下にて,撹拌下110℃で溶解させた。その後,トリフェニルホスフィン0.3部を添加し,反応容器内の温度を150℃まで昇温し,温度を150℃で保持しながら,約90分間反応させ,エポキシ当量464g/当量のエポキシ化合物を得た。次にフラスコ内の温度を40℃まで冷却し,カルビトールアセテート390部を加え,加熱溶解し,メチルハイドロキノン0.46部と,トリフェニルホスフィン1.38部を加え,95~105℃に加熱し,アクリル酸72部を徐々に滴下し,16時間反応させた。この反応生成物を,80~90℃まで冷却し,テトラヒドロフタル酸無水物190部を加え,8時間反応させた。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は,不揮発分65%,固形分の酸価100mgKOH/gであった。以下この樹脂溶液をワニスAと称す。
・・・(中略)・・・
上記合成例1-2のカルボキシル基含有樹脂溶液(ワニスA,ワニスB)を用い,表1に示す種々の成分と割合(質量部)にて配合し,攪拌機にて予備混合した後,3本ロールミルで混練し,アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。ここで,得られたアルカリ現像型感光性樹脂組成物の分散度をエリクセン社製グラインドメータによる粒度測定にて評価したところ15μm以下であった。
表1
性能評価:
(1)爆孔耐性
上記の実施例1-4及び比較例1-3の各アルカリ現像型感光性樹脂組成物をΦ0.5,0.8mmtの基板に充填した後,光硬化と熱硬化させて硬化した塗膜をJIS C6481の試験方法に従いロジン系及び水溶性フラックスを用いて288℃のはんだ浴に10秒3回浸漬させた。その後TH部分の塗膜の状態を目視で観察した。評価基準は以下の通りである。
○:φ500のTH500穴中塗膜の突出が全くないもの
△:φ500のTH500穴中塗膜の突出が5個未満のもの
×:φ500のTH500穴中塗膜の突出が5個以上のもの
(2)空泡耐性
上記の実施例1-4及び比較例1-3の各アルカリ現像型感光性樹脂組成物をΦ0.5,0.8mmtの基板に充填した後,光硬化と熱硬化させて硬化した塗膜をJIS C6481の試験方法に従いロジン系及び水溶性フラックスを用いて288℃のはんだ浴に10秒3回浸漬させた。その後テープピールを行い,TH周辺の剥がれの状態を確認した。評価基準は以下の通りである。
○:φ500のTH500穴中空泡の発生が全くないもの
△:φ500のTH500穴中空泡の発生が5個未満のもの
×:φ500のTH500穴中空泡の発生が5個以上のもの
(3)TH内の銅との密着性
上記実施例1-4及び比較例1-3の各アルカリ現像型感光性樹脂組成物をΦ0.5,0.8mmtの基板に充填した後,光硬化と熱硬化させて硬化塗膜を形成する。その後基板の断面状態を光学顕微鏡にて確認した。評価基準は以下の通りである。断面形状の模式図を図に示す。
○:THの銅と塗膜に剥がれ等異常のないこと
×:THの銅と塗膜に剥がれのあるもの
(4)クラック耐性
上記の実施例1-4及び比較例1-3の各アルカリ現像型感光性樹脂組成物をΦ0.5,0.8mmtの基板に充填した後,光硬化と熱硬化させて硬化塗膜を形成させる。その後TH部分の塗膜の状態を光学顕微鏡で観察した。評価基準は以下の通りである。
○:φ500のTH500穴中クラックが全くないもの
△:φ500のTH500穴中クラックの発生が5個未満のもの
×:φ500のTH500穴中クラックの発生が5個以上のもの
上記各試験の結果を表2に示す。
表2
以上のことから,実施例1-4の組成に調整することで爆孔耐性,空泡耐性,およびTH内の銅との密着性とクラック耐性に優れた感光性樹脂組成物が得られる事が分かる。それに対し比較例1は,(E)タルクの含有率が低い為に十分な密着性が不足し,その結果,TH内の銅との密着性が得られなかった。比較例2は,(E)タルクの含有率は足りるもののカルボキシル基含有樹脂(A-1)を含有していない為に十分な柔軟性が不足し,その結果,爆孔耐性,空泡耐性が得られなかった。比較例3は,(E)タルクを含有していない為に十分な密着性と柔軟性が不足し,その結果,TH内の銅との密着性とクラック耐性が得られなかった。」
(エ) 「
」
[日本語訳]
「請求の範囲
1.(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)光重合開始剤,(C)希釈溶剤,(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物,及び(E)タルクを含有し,(A)カルボキシル基含有樹脂として,少なくとも1種類のビスフェノール型エポキシ化合物(a)と不飽和カルボン酸(b)とのエステル化反応により生成するエポキシ基のエステル化生成物と飽和又は不飽和多塩基酸無水物(c)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂(A-1)を含み,かつ(E)タルクの含有率が全量の10重量%以上,60重量%以下であることを特徴とするアルカリ現像型感光性樹脂組成物。
2.スルーホール(TH)充填用途であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ現像型感光性樹脂組成物。
3.(E)タルク以外の(F)フィラーを含有することを特徴とする請求項1に記載のアルカリ現像型感光性樹脂組成物。
4.(G)熱硬化性成分を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルカリ現像型感光性樹脂組成物。
5.銅上に塗布して用いられることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ現像型感光性樹脂組成物。
6.請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアルカリ現像型感光性樹脂組成物を,キャリアフィルムに塗布,乾燥して得られることを特徴とする光硬化性のドライフィルム。
7.請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアルカリ現像型感光性樹脂組成物を銅上に塗布,乾燥して得られる塗膜,もしくは該感光性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布,乾燥して得られる光硬化性のドライフィルムを銅上にラミネートして得られる塗膜を,光硬化して得られることを特徴とする硬化物。
8.請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアルカリ現像型感光性樹脂組成物を基材上に塗布,乾燥して得られる塗膜,もしくは該感光性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布,乾燥して得られる光硬化性のドライフィルムを基材上にラミネートして得られる塗膜を,光硬化させた後,熱硬化して得られる硬化物を具備することを特徴とするプリント配線板。」
イ 甲1に記載された発明
前記ア(ア)ないし(エ)を含む甲1の全記載から,甲1に,実施例1のアルカリ現像型感光性樹脂組成物に対応する発明が記載されていると認めることができるところ,当該発明の構成は次のとおりである。
「(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)光重合開始剤,(C)希釈溶剤,(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物,及び(E)タルクを含有し,前記(A)カルボキシル基含有樹脂として,少なくとも1種類のビスフェノール型エポキシ化合物(a)と不飽和カルボン酸(b)とのエステル化反応により生成するエポキシ基のエステル化生成物と飽和又は不飽和多塩基酸無水物(c)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂(A-1)を含み,かつ前記(E)タルクの含有率が全量の10重量%以上,60重量%以下である,プリント配線板のソルダーレジスト等の形成に適したアルカリ現像型感光性樹脂組成物であって,
含有成分として下記のものを用い,当該各含有成分を配合し,攪拌機にて予備混合した後,3本ロールミルで混練することにより調製したアルカリ現像型感光性樹脂組成物。
[含有成分]
(A)カルボキシル基含有樹脂
下記ワニスA(不揮発分65%,固形分の酸価100mgKOH/g)
150質量部
(B)光重合開始剤
2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン 10質量部
(C)希釈溶剤
カルビトールアセテート 20質量部
(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 15質量部
(E)タルク
富士タルク工業社製 LMP-100 70質量部
(F)フィラー
龍森社製シリカ ヒューズレックスWX 70質量部
(G)熱硬化性成分
三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂
jER-834(エポキシ当量250) 20質量部
東都化成社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
YDCN-704P(エポキシ当量210) 30質量部
その他の含有成分
フタロシアニングリーン 1質量部
ジシアンジアミド 0.4質量部
微粉メラミン 4質量部
シリコーン系消泡剤 3質量部
[ワニスA]
ガス導入管,撹拌装置,冷却管,温度計,及び連続滴下用の滴下ロートを備えた反応容器にカルボン酸当量86g/当量の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸86部とビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製,エピコート828,エポキシ当量189g/当量)378部を仕込み,窒素雰囲気下にて,撹拌下110℃で溶解させ,その後,トリフェニルホスフィン0.3部を添加し,反応容器内の温度を150℃まで昇温し,温度を150℃で保持しながら,約90分間反応させ,エポキシ当量464g/当量のエポキシ化合物を得,次にフラスコ内の温度を40℃まで冷却し,カルビトールアセテート390部を加え,加熱溶解し,メチルハイドロキノン0.46部と,トリフェニルホスフィン1.38部を加え,95~105℃に加熱し,アクリル酸72部を徐々に滴下し,16時間反応させ,得られた反応生成物を,80~90℃まで冷却し,テトラヒドロフタル酸無水物190部を加え,8時間反応させることにより得られる樹脂溶液。」(以下,「甲1発明」という。)
4 取消理由1(明確性要件違反)についての判断
本件訂正後の請求項1の記載においては,本件訂正発明1,3ないし6の硬化性樹脂組成物が,表面処理されているか否かにかかわらずタルクを含有しないことが明らかであるから,本件訂正発明1,3ないし6に対して取消理由1は成り立たない。
5 取消理由2(進歩性欠如)及び取消理由3(新規性欠如,進歩性欠如)についての判断
(1)本件訂正発明1について
ア 甲1発明との対比
(ア) 甲1発明の「(B)光重合開始剤」である「2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1」,「(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物」である「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」及び「アルカリ現像型感光性樹脂組成物」は,それらの作用,機能等からみて,本件訂正発明1の「(C)光反応開始剤」,「(D)光重合性モノマー((A)アルカリ現像性樹脂および(E)表面処理された無機フィラーを除く)」及び「硬化性樹脂組成物」にそれぞれ相当する。
また,甲1発明の「ワニスA」の固形分は,酸価が100mgKOH/gのカルボキシル基含有樹脂であって,側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有しており,希アルカリ水溶液による現像が可能であるから,「アルカリ現像性樹脂」といえる。したがって,甲1発明の「ワニスA」中の固形分は,本件訂正発明1の「(A)アルカリ現像性樹脂」に相当する。
また,甲1発明の「(G)熱硬化性成分」は,「三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂 jER-834」と「東都化成社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 YDCN-704P」とからなるところ,これらはいずれも「エポキシ樹脂」であるから,甲1発明の「(G)熱硬化性成分」は,本件訂正発明1の「(B)エポキシ樹脂」に相当する。
さらに,甲1発明の「(F)フィラー」である「龍森社製シリカ ヒューズレックスWX」は「無機フィラー」であるから,本件訂正発明1の「(E)表面処理された無機フィラー」と,「(E)無機フィラー」である点で共通する。
したがって,甲1発明は,本件訂正発明1と「(A)アルカリ現像性樹脂,(B)エポキシ樹脂,(C)光反応開始剤,(D)光重合性モノマー((A)アルカリ現像性樹脂および(E)無機フィラーを除く)および(E)無機フィラーを含有する硬化性樹脂組成物」である点で共通する。
(イ) 甲1発明の「ワニスA」中の固形分はカルボキシル基を有しているから,「カルボキシル基を含む樹脂であ」るという本件訂正発明1の「(A)アルカリ現像性樹脂」に係る発明特定事項に相当する構成を具備している。
(ウ) 甲5(「製品案内 2016年12月」,三菱化学 スペシャリティケミカルズ事業部)の「はじめに」の欄の記載によれば,「エピコート」は「jER」の旧商品名と認められるから,甲1発明の「三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂 jER-834」は,本件特許明細書の【0023】に「(b)軟化点60℃以下の多官能エポキシ樹脂」の例として記載された「エピコート834」と同一商品と認められる。したがって,甲1発明の「三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂 jER-834」は,本件訂正発明1の「(b)軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂」に相当する。
また,甲6(特開平6-263832号公報)の【0006】の記載によれば,甲1発明の「東都化成社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 YDCN-704P」の軟化点は80℃以上と認められるから,本件訂正発明1の「(b’)軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂」に相当する。
したがって,甲1発明の「三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂 jER-834」と「東都化成社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 YDCN-704P」とからなる「(G)熱硬化性成分」は,「(b)軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂と,(b’)軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂との混合物であ」るという本件訂正発明1の「(B)エポキシ樹脂」に係る発明特定事項に相当する構成を具備している。
(エ) 甲1発明の「ワニスA」は,その不揮発分が65%であり,固形分の酸価が100mgKOH/gであり,アルカリ現像型感光性樹脂組成物393.4gにおける含有量が150gであるところ,KOHの分子量は約56.1であるから,アルカリ現像型感光性樹脂組成物393.4g中での「ワニスA」の固形分中の「カルボキシル基」の量は約0.174(≒150×65/100×100/1000÷56.1)モルである。
一方,甲1発明の「三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂 jER-834」のエポキシ当量は250であり,アルカリ現像型感光性樹脂組成物393.4gにおける含有量が20gであるから,アルカリ現像型感光性樹脂組成物393.4g中での「三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂 jER-834」のエポキシ基の量は0.080(=20/250)モルであり,「東都化成社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 YDCN-704P」のエポキシ当量は210であり,アルカリ現像型感光性樹脂組成物393.4gにおける含有量が30gであるから,アルカリ現像型感光性樹脂組成物393.4g中での「東都化成社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 YDCN-704P」のエポキシ基の量は約0.143(≒30/210)モルである。したがって,アルカリ現像型感光性樹脂組成物393.4g中での「三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂 jER-834」のエポキシ基と「東都化成社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 YDCN-704P」のエポキシ基との合計は約0.223(≒0.08+0.143)モルである。
そうすると,甲1発明において,「三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂 jER-834」のエポキシ基と「東都化成社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 YDCN-704P」のエポキシ基との合計は,「ワニスA」の固形分中の「カルボキシル基」1当量に対して約1.28(≒0.223/0.174)当量であるから,本件訂正発明1のアルカリ現像性基1当量に対するエポキシ基の合計の「1.5当量以上2.5当量以下」という数値範囲内にはない。
(オ) 甲1発明の「(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物」である「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」の含有量は,甲1発明に含まれる「ワニスA」中の固形分,「三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂 jER-834」及び「東都化成社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 YDCN-704P」,「(B)光重合開始剤」である「2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1」,「(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物」である「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」の合計に対して,約8.7(≒15/(150×0.65+(20+30)+10+15))質量%であるから,本件訂正発明1の「硬化性樹脂組成物に含まれる(A)アルカリ現像性樹脂,(B)エポキシ樹脂,(C)光反応開始剤および(D)光重合性モノマーの合計中」での「(D)光重合性モノマーの含有量」の「10質量%以下」という数値範囲内にある。
したがって,甲1発明は,本件訂正発明1の「(D)光重合性モノマーの含有量は,硬化性樹脂組成物に含まれる(A)アルカリ現像性樹脂,(B)エポキシ樹脂,(C)光反応開始剤および(D)光重合性モノマーの合計中で10質量%以下であ」るという発明特定事項に相当する構成を具備している。
カ 甲1発明が含有する「龍森社製シリカ ヒューズレックスWX」はシリカであり,その含有量は,アルカリ現像型感光性樹脂組成物の全固形分を基準として約22(≒70/(150×0.65+10+15+70+70+20+30+1+0.4+4+3)×100)質量%であるから,本件訂正発明1と,「(E)無機フィラーは,シリカを含み,含有量が硬化性樹脂組成物の全固形分を基準として10~80質量%である」である点で共通する。
キ 前記アないしカに照らせば,本件訂正発明1と甲1発明は,
「(A)アルカリ現像性樹脂,(B)エポキシ樹脂,(C)光反応開始剤,(D)光重合性モノマー((A)アルカリ現像性樹脂および(E)表面処理された無機フィラーを除く)および(E)無機フィラーを含有する硬化性樹脂組成物であって,
前記(A)アルカリ現像性樹脂が,カルボキシル基を含む樹脂であり,
前記(B)エポキシ樹脂は,(b)軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂と,(b’)軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂との混合物であり,
前記(D)光重合性モノマーの含有量は,前記硬化性樹脂組成物に含まれる前記(A)アルカリ現像性樹脂,(B)エポキシ樹脂,(C)光反応開始剤および(D)光重合性モノマーの合計中で10質量%以下であり,
前記(E)無機フィラーは,シリカを含み,含有量が硬化性樹脂組成物の全固形分を基準として10~80質量%である硬化性樹脂組成物。」
である点で一致し,次の点で相違する。
相違点1:
本件訂正発明1の「(E)無機フィラー」は,表面処理されたものであり,当該「無機フィラー」が含む「シリカ」は,「(A)アルカリ現像性樹脂,(B)エポキシ樹脂および(D)光重合性モノマーの少なくともいずれか1種と反応可能な(メタ)アクリロイル基,ビニル基および環状(チオ)エーテル基」のいずれか1種の反応性基を有するのに対して,
甲1発明の「龍森社製シリカ ヒューズレックスWX」は表面処理されたものではなく,「(メタ)アクリロイル基,ビニル基および環状(チオ)エーテル基」のいずれも有していない点。
相違点2:
本件訂正発明1は,タルクを含有しないのに対して,
甲1発明は,タルクである「富士タルク工業社製 LMP-100」を含有する点。
相違点3:
本件訂正発明1の「(b)軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂」と「軟化点が60℃を超える多官能エポキシ樹脂」は,そのエポキシ基の合計が,「(A)アルカリ現像性樹脂」の「アルカリ現像性基」1当量に対して1.5当量以上2.5当量以下であるのに対して,
甲1発明の「三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂 jER-834」と「東都化成社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 YDCN-704P」は,そのエポキシ基の合計が,「ワニスA」の固形分中の「カルボキシル基」1当量に対して約1.28当量である点。
(2)判断
ア 新規性欠如について
本件訂正発明1と甲1発明との間には,前述した相違点1ないし3が存在するから,本件訂正発明1と甲1発明は同一ではない。
イ 進歩性欠如について
事案に鑑み,まず相違点2について判断する。
前記3(1)ア(ア)で摘記した甲1の記載によれば,甲1発明は,ソルダーレジストに要求される爆孔耐性,空泡耐性はもちろん従来技術では不十分であったTH(through hole)内の銅との密着性に優れクラック耐性に優れた感光性樹脂組成物を提供することを課題とするものであるところ,前記3(1)ア(ア)で摘記した甲1の記載から理解されるように,「(E)タルク」成分の機能は,前記課題におけるTH内の銅との密着性とクラック耐性を高めるというものであり,前記3(1)ア(エ)で摘記した甲1の特許請求の範囲の各請求項の記載から明らかなように,「(E)タルク」は,甲1発明における必須成分である。
そうすると,甲1発明において,「(E)タルク」を含有しないものとすることは,甲1発明の目的に反することであって,甲1発明を,相違点2に係る本件訂正発明1の構成要件に相当する構成を具備したものとすることには阻害要因があるといわざるを得ない。
したがって,相違点1及び3について判断するまでもなく,本件訂正発明1は,甲1発明,並びに甲2ないし甲10及び参考文献1ないし3に記載された技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件訂正発明3ないし6について
本件訂正後の請求項3ないし6は,請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであって,本件訂正発明3ないし6は,本件訂正発明1の全構成要件を具備し,これにさらに限定を加えたものに該当するところ,前記(1)ア及びイで述べたとおり,本件訂正発明1が,甲1発明と同一でなく,かつ,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正発明3ないし6についても,同様の理由で,甲1発明と同一でなく,かつ,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)取消理由3(サポート要件違反)及び取消理由6(サポート要件違反)について
本件訂正後の請求項1には,「アルカリ現像性樹脂」がカルボキシル基を含む樹脂であること,及び「無機フィラー」が「(メタ)アクリロイル基,ビニル基および環状(チオ)エーテル基のいずれか1種」を有するシリカを含むことが特定されているところ,このような「アルカリ現像性樹脂」や「無機フィラー」を用いた硬化性樹脂組成物が「高感度で解像性とクラック耐性のバランスに優れる硬化物を得ることが可能」であることは,本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された各実施例の評価結果等から,当業者が認識できることであるから,本件訂正発明は,発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものと認められる。
したがって,本件訂正によって取消理由3及び取消理由6は解消した。
(4)取消理由5(明確性要件違反)について
本件訂正後の請求項1には,「アルカリ現像性樹脂」がカルボキシル基を含む樹脂であることが記載されているところ,カルボキシル基を含む樹脂がアルカリ現像液に溶解し,現像することが可能であることは当業者に自明である。
また,本件訂正後の請求項1には,無機フィラーに含まれる「シリカ」が有する反応性基について,「(メタ)アクリロイル基,ビニル基および環状(チオ)エーテル基のいずれか1種」であることが記載されているところ,「表面処理」によって,当該「(メタ)アクリロイル基,ビニル基および環状(チオ)エーテル基のいずれか1種」がシリカに導入されることが当業者に自明である。
したがって,本件訂正によって取消理由5は解消した。
第4 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては,本件特許の請求項1,3ないし6に係る特許を取り消すことはできない。また,他に本件特許の請求項1,3ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2は,訂正により削除されたため,本件特許の請求項2に対して,特許異議申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しない。
よって,結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-701182