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特許異議申立

2021-700567

吸水性樹脂組成物及びその製造方法

審判番号
2021-700567
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-007514外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6800585
請求日
2021年06月15日
審決日
2022年04月25日
公報発行日
2022年08月26日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6800585号発明「吸水性樹脂組成物及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6800585号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第6800585号の請求項1、5、7、10及び11に係る特許を維持する。 特許第6800585号の請求項2~4、6、8及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6800585号(請求項の数11。以下、「本件特許」という。)は、平成28年1月19日(優先権主張 平成27年1月19日)を出願日とする特願2016-7514号に係る特許であって、令和2年11月27日に設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は同年12月16日である。)。 その後、令和3年6月15日に、本件特許の請求項1~11に係る特許に対して、特許異議申立人である金田綾香(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。その後の経緯は、以下のとおりである。 令和3年 9月30日付け取消理由通知書 同年12月 1日 意見書、訂正請求書(特許権者) 同年12月29日 意見書(申立人) 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和3年12月1日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(以下、本件特許の願書に添付された明細書を、「本件明細書」という。)。 (1)訂正事項1 請求項1における「有機疎水性抗菌剤と、親水性かつ不揮発性の有機溶媒と、吸水性樹脂とを有する吸水性樹脂組成物であって、 前記有機疎水性抗菌剤は、25℃の純水100gに対する溶解度が40g以下であり、 前記有機溶媒は25℃における蒸気圧が30Pa以下であり、」を、 「有機疎水性抗菌剤と、親水性かつ不揮発性の有機溶媒と、吸水性樹脂とを有する吸水性樹脂組成物であって、 前記吸水性樹脂はポリアクリル酸のナトリウム塩であり、 前記有機疎水性抗菌剤は、25℃の純水100gに対する溶解度が40g以下であり、 前記有機疎水性抗菌剤が、セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンであり、 前記有機溶媒は25℃における蒸気圧が30Pa以下であり、」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2~4、6、8及び9を削除する。 (3)訂正事項3 請求項5に「請求項1ないし4のいずれか一項に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法であって、 有機疎水性抗菌剤を有機溶媒に溶解してなる抗菌剤溶液と、吸水性樹脂とを混合する工程を有し、 前記有機疎水性抗菌剤は、25℃の純水100gに対する溶解度が40g以下であり、 前記有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒である、吸水性樹脂組成物の製造方法。」とあるのを、 「請求項1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法であって、 有機疎水性抗菌剤を有機溶媒に溶解してなる抗菌剤溶液と、吸水性樹脂とを混合する工程を有し、 前記吸水性樹脂はポリアクリル酸のナトリウム塩であり、 前記有機疎水性抗菌剤は、25℃の純水100gに対する溶解度が40g以下であり、 前記有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒であり、 前記有機疎水性抗菌剤が、セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンである、吸水性樹脂組成物の製造方法。」に訂正する。 (4)訂正事項4 請求項7に「請求項5又は6に記載の」とあるのを「請求項5に記載の」に訂正する。 (5)訂正事項5 請求項10に、「請求項5ないし9のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項5又は7に記載の」に訂正する。 (6)訂正事項6 請求項11に、「請求項1ないし4のいずれか一項に記載の吸水性樹脂組成物」とあるのを、「請求項1に記載の吸水性樹脂組成物」に訂正する。 (7)一群の請求項 訂正前の請求項2~11は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、訂正事項1~6に係る訂正は、一群の請求項〔1~11〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1及び3について 訂正事項1及び3は、訂正前の請求項1及び5を、本件明細書の【0024】及び【0040】を基に、吸水性樹脂及び有機疎水抗菌剤について限定するものであり、さらに訂正事項3は請求項5において引用する請求項から請求項2~4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2~4、6、8、9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項4~6について 訂正事項4~6は、訂正事項2により請求項2~4、6、8及び9を削除したことに伴い、請求項7、10及び11において引用する請求項から請求項2~4、6、8及び9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮あるいは明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 訂正の適否についての判断のまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1、5、7、10及び11に係る発明は、訂正された特許請求の範囲の請求項1、5、7、10及び11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 (以下、請求項1~11に係る発明を、項番のとおり、「本件発明1」等という。) 「【請求項1】 有機疎水性抗菌剤と、親水性かつ不揮発性の有機溶媒と、吸水性樹脂とを有する吸水性樹脂組成物であって、 前記吸水性樹脂はポリアクリル酸のナトリウム塩であり、 前記有機疎水性抗菌剤は、25℃の純水100gに対する溶解度が40g以下であり、 前記有機疎水性抗菌剤が、セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンであり、 前記有機溶媒は25℃における蒸気圧が30Pa以下であり、 前記有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、 前記有機疎水性抗菌剤と前記有機溶媒とが前記吸水性樹脂の表面に島状に付着しており、 前記有機疎水性抗菌剤が前記吸水性樹脂の表面を被覆する被覆率が5%以上40%以下である、吸水性樹脂組成物。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】 請求項1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法であって、 有機疎水性抗菌剤を有機溶媒に溶解してなる抗菌剤溶液と、吸水性樹脂とを混合する工程を有し、 前記吸水性樹脂はポリアクリル酸のナトリウム塩であり、 前記有機疎水性抗菌剤は、25℃の純水100gに対する溶解度が40g以下であり、 前記有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒であり、 前記有機疎水性抗菌剤が、セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンである、吸水性樹脂組成物の製造方法。 【請求項6】(削除) 【請求項7】 前記抗菌剤溶液と前記吸水性樹脂とを混合した後、前記有機溶媒を残留させたままにしておく請求項5に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。 【請求項8】(削除) 【請求項9】(削除) 【請求項10】 請求項5又は7に記載の製造方法によって製造された吸水性樹脂組成物を、風送によって搬送する工程を含む吸収性物品の製造方法。 【請求項11】 請求項1に記載の吸水性樹脂組成物を有する吸収性物品。」 第4 特許異議申立書の申立理由と当審が通知した取消理由 1 特許異議申立書の申立理由 本件訂正前の本件発明1~11は、下記(1)のとおりの取消理由があるから、本件特許の本件発明1~11に係る特許は、特許法第113条第2号又は第4号に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、下記(2)の甲第1号証~甲第12号証を提出する。 (当審注:各申立理由における括弧内の記号は、申立人が特許異議申立書に記載した箇所を示す。) (1)申立ての理由 申立理由1-1(新規性) 請求項1、2、4~8、10及び11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 申立理由1-2(新規性) 請求項1、2、5、7及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 申立理由2-1(進歩性) 請求項1~11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第1、3~8及び10~12号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 申立理由2-2(進歩性) 請求項1、2、5、7及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明及び甲第2、5及び10~12号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 申立理由3(実施可能要件) 請求項1~4及び11に係る特許は、以下の点で、その発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 <3-ア> 本件発明1の「吸水性樹脂」はNaを含まないものであってもよく、本件明細書の【0069】の計算式で「抗菌剤」の「被覆率」を求めることはできない(c-3)。 <3-イ> 本件発明2の「有機疎水性抗菌剤」がNaを含む場合に、検出されたNaが母体吸収性樹脂由来であるのか抗菌剤由来であるのかの区別がつかず、「抗菌剤」の「被覆率」を測定できない(c-4)。 <3-ウ> 本件明細書の【0069】には市販の吸水性物品から取り出した吸水性樹脂における「抗菌剤」の「被覆率」の測定方法を開示するが、「抗菌剤」の「被覆率」の算出に用いる未処理(母体吸収性樹脂)を得る方法の開示がない(c-5)。 <3-エ> 吸水性樹脂の表面のNaの分布をESCAで確認できたとしても、Naが不存在の領域を示すにすぎず、それが「抗菌剤」及び「有機溶媒」由来であるのか判別できず、本件明細書には、抗菌剤及び有機溶媒が島状に付着していることの確認方法は一切記載されていない(g)。 申立理由4(サポート要件) 請求項1~11に係る特許は、以下の点で、その特許請求の範囲が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 <4-ア> 請求項1には「抗菌剤」の「被覆率」の測定方法が特定されておらず、実施例のX線電子分光法(ESCA)以外の方法で測定される場合に課題を解決するか否かが不明である。シリカ添加の有無で被覆率が異なり、有機溶媒による被覆もあるから、他の添加剤の量により変動し、「抗菌剤」の「被覆率が5%以上40%以下である」ことを一義的に定めることはできない(b)(c-1)。 <4-イ> 請求項1及び5には、有機疎水性抗菌剤及び有機溶媒の含有量(添加量)やその抗菌剤濃度が何ら規定されておらず、吸水性樹脂の質量を基準にした抗菌剤溶液中の有機疎水性抗菌剤の質量が少なすぎる場合に十分な抗菌効果を達成できず、これが多すぎる場合に高い吸水性能を達成できないことは明らかである。また、吸水性樹脂の質量を基準にした抗菌剤溶液中の有機溶媒の質量が少なすぎる場合に抗菌剤と吸水性樹脂とを均一混合させることができず、十分な抗菌効果を達成できないことは明らかである(d-1)。 <4-ウ> 本件発明1の課題である吸水性樹脂組成物の取り扱い性、特に流動性を良好にすることは、抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合するときの両者の比率を適切な範囲にすることにより解決されるが、高粘性液体であるエチレングリコール等の有機溶媒は抗菌剤とともに吸水性樹脂の表面に残存するため、抗菌剤溶液中の抗菌剤や有機溶媒の質量が多い場合に、本件発明の課題を解決できない(d-3)。 <4-エ> 本件発明1及び5において、「抗菌剤溶液」における「有機疎水性抗菌剤」の濃度の下限値が特定されておらず、本件明細書の【0107】に、比較例3及び4では10%濃度の有機疎水性抗菌剤は溶解できなかったこと、及び、抗菌剤の濃度を10%未満とした場合に、仮に抗菌剤が溶解したとしても吸水性樹脂組成物の流動性が悪くなり、「容易に安定した吸収性能かつ抗菌性能を発現する吸収性物品を製造することが困難になる」ことが記載されているから、本件課題を解決し得るか不明である(e) <4-オ> 本件発明1において、有機疎水性抗菌剤がNaを含む場合に抗菌剤の被覆率を測定できず、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えている(h)。 <4-カ> 本件明細書に開示のないすべての有機疎水性抗菌剤で、「5%以上40%以下」である本件被覆率が達成されることはあり得ない(h)。 <4-キ> 有機疎水性抗菌剤であればどれでも吸水性樹脂と組み合わせて抗菌効果を発揮するものでなく、実施例1~14で上記効果が確認されているのは、セチルリン酸ベンザルコニウム(25℃の純水100gに対する溶解度が0.002g)及びピロクトンオラミン(同じく溶解度が0.02g)の2種類のみであり、上記溶解度が0.02g超40g以下である上記2種類以外の有機疎水性抗菌剤の全てで、本件発明の課題を解決できるのか不明である(h)。 申立理由5(明確性) 請求項1~4及び11に係る特許は、以下の点で、その特許請求の範囲が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 <5-ア> 本件発明1の「抗菌剤」の「被覆率」は、請求項1にその測定方法が特定されていないから、一義的に定まらない(a)。 <5-イ> 吸収性樹脂組成物におけるシリカの添加量が同じでも、添加順序によって、ESCAによる測定値を用いた「抗菌剤」の「被覆率」の値が異なり、一義的に定まらない(c-2)。 <5-ウ> 本件発明2の「抗菌剤」がNaを含む場合、抗菌剤中のNa濃度によっては、抗菌剤処理後のNaの表面元素濃度が増加するため、明瞭でない(c-4)。 <5-エ> 本件発明1の「前記有機疎水性抗菌剤と前記有機溶媒とが前記吸水性樹脂の表面に島状に付着して」とあるが、本件明細書の【0068】の「吸水性樹脂の表面に不連続に付着した状態」との記載を参酌しても、いかなる付着状態を「島状」とするのか不明である(f)。 <5-オ> 本件請求項1には抗菌剤の定義や化合物がないため、吸水性樹脂に含まれる無数の添加剤のうちで、それら添加剤が本件でいう有機疎水性抗菌剤に該当するかが明瞭でない(h)。 (2)証拠方法 甲第1号証:特表2010-540004号公報 甲第2号証:特表2013-503219号公報 甲第3号証:特表2000-513408号公報 甲第4号証:特開2006-191966号公報 甲第5号証:特願2016-7514号の令和2年2月6日提出の意見書 甲第6号証:特願2016-7514号の令和2年8月26日提出の審判請求書 甲第7号証:日本エアロジル株式会社、AEROSIL○R(当審注:○は丸付き文字を表す。)カタログ、1997年12月 甲第8号証:浅原照三ら編、「溶剤ハンドブック」、株式会社講談社サイエンティフィック、847~850頁、2001年8月10日 甲第9号証:Fredric L. Buchholz et al., Modern Superabsorbent Polymer Technology, WILEY-VCH, p.19,58,59,69,72,73,97,98,103,117及び部分訳 甲第10号証:トリクロサン標準品の安全データシート、富士フイルム和光純薬株式会社、2021年4月9日改訂、1~6頁 甲第11号証:Triclosanの安全データシート、東京化成工業株式会社、2019年10月23日改訂、1~4頁 甲第12号証:Martha Windholz et al., The Merck Index, Tenth Edition, Merck & Co., Inc., 1983, p.1381及び部分訳 (以下、甲第1号証~甲第12号証を、順に「甲1」等という。) 2 当審が通知した取消理由 当審が令和3年9月30日付け取消理由通知で通知した理由は、以下のとおりである。 取消理由1(明確性) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 <1-ア> 本件発明1~11は、(ア)吸水性樹脂がNa元素を含まない場合、(イ)吸水性樹脂と抗菌剤がともにNa元素を含む場合、及び(ウ)有機溶媒による被覆の観点で、抗菌剤の被覆率の算出方法が判然としない。 <1-イ> 本件発明4~11は、抗菌剤による被覆と無機微粒子による被覆を区別し、抗菌剤の被覆率による「抗菌剤処理後の「Na」の表面元素濃度の減少量」を測定することはできないと解されるから、抗菌剤の被覆率の算出方法は判然としない。 取消理由2(新規性) 請求項1、2、5、7及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 取消理由3(進歩性) 請求項1、2、5、7、8及び11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第5 当審の判断 以下に述べるように、当審が通知した取消理由、及び、特許異議申立書の申立理由によっては、本件発明1、5、7、10及び11に係る特許は取り消すことはできない。 1 本件発明2~4、6、8及び9に係る特許に対する申立ての却下 本件発明2~4、6、8及び9に係る特許は、第2及び第3で示したとおり、訂正により削除され、これらの特許に対する申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 2 当審が通知した取消理由について (1)取消理由1(明確性) <1-ア>について 本件訂正により、本件発明1は、吸水性樹脂がポリアクリル酸のナトリウム塩であること、及び、有機疎水性抗菌剤が、セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンであることが特定された。これにより、吸水性樹脂がNaを含有し、有機疎水性抗菌剤がNa元素を含有しないものとなり、上記(ア)及び(イ)の場合における抗菌剤の被覆率の計算方法が明らかとなり、抗菌剤の被覆率が明確になった。 また、上記(ウ)について、本件発明1の「有機疎水性抗菌剤」である「セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミン」が、「有機溶媒」である「エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコール」に完全溶解することは、本件明細書の【0100】に記載されるとおりであるから、上記抗菌剤が存在する領域と有機溶媒が存在する領域とが一致し、吸水性樹脂の表面のNa元素が抗菌剤に被覆されたNaの表面元素濃度の減少量と、同じく有機溶媒に被覆されたNaの表面元素濃度の減少量とが等しくなると解される。これによって、本件発明1における抗菌剤の被覆率は、【0069】の式により計算されることが理解できる。 そうすると、本件発明1、及び、これを直接又は間接的に引用する本件発明5、7、10及び11における抗菌剤の被覆率は明確であるといえる。 <1-イ>について 本件訂正により、本件発明4は削除され、本件発明4を直接又は間接的に引用する発明も存在しなくなったから、この取消理由の対象がなくなった。 したがって、本件発明1、5、7、10及び11は明確である。 (2)甲2を主引用文献とする取消理由2(新規性)及び取消理由3(進歩性) なお、申立理由1-2(新規性)及び申立理由2-2(進歩性)は、甲2を主引用文献とする理由であるから、取消理由2及び3と併せて検討する。 ア 甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明 甲2には、【0017】、【0020】、【0085】及び【0087】の記載があり、参照例2に着目すると、以下の発明が記載されているといえる。 「1kgの超吸収材粉末(BASF SE社から入手可能なHysorb(登録商標)T8400)をミキサー内に置き、1.5gのプロピレングリコールの1.5gのトリクロサン溶液を、シリンジを用いてポリマー粉末に60rpmの混合速度で滴加し、これによって得られた1500質量ppmのトリクロサン含量を有する超吸収材」(以下、「甲2発明1」という。) 「1kgの超吸収材粉末(BASF SE社から入手可能なHysorb(登録商標)T8400)をミキサー内に置き、1.5gのプロピレングリコールの1.5gのトリクロサン溶液を、シリンジを用いてポリマー粉末に60rpmの混合速度で滴加し、これによって1500質量ppmのトリクロサン含量を有する超吸収材を得る方法」(以下、「甲2発明2」という。) イ 当審の判断 (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲2発明1を対比する。 甲2発明1の「超吸収材粉末」である「Hysorb(登録商標)」シリーズは、ポリアクリル酸ナトリウムで構成される吸水性樹脂であることは、本件優先日時点の技術常識であるから、本件発明1の「前記吸水性樹脂はポリアクリル酸のナトリウム塩であり」に相当する。 甲2発明1の「トリクロサン」は、本件明細書の【0026】及び【0042】の記載を併せ読むと、本件発明1の「25℃の純水100gに対する溶解度が40g以下であ」る「有機疎水性抗菌剤」に相当する。 甲2発明1の「プロピレングリコール」は、本件発明1の「25℃における蒸気圧が30Pa以下であ」る「親水性かつ不揮発性の有機溶媒」として選択される化合物であるから、本件発明1の「25℃における蒸気圧が30Pa以下であ」る「親水性かつ不揮発性の有機溶媒」に相当する。 そして、甲2発明1の「超吸収材」は、「超吸収材粉末」と、「プロピレングリコール」を溶媒とする「トリクロサン」の溶液とを混合して得られたものであり、これらを含むものであるから、本件発明1の「吸水性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明1とは、 「有機疎水性抗菌剤と、親水性かつ不揮発性の有機溶媒と、吸水性樹脂とを有する吸水性樹脂組成物であって、 前記吸水性樹脂はポリアクリル酸のナトリウム塩であり、 前記有機疎水性抗菌剤は、25℃の純水100gに対する溶解度が40g以下であり、 前記有機溶媒は25℃における蒸気圧が30Pa以下であり、 前記有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、吸水性樹脂組成物。」の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点2A:本件発明1は、「前記有機疎水性抗菌剤と前記有機溶媒とが前記吸水性樹脂の表面に島状に付着して」いるのに対して、甲2発明1は、本件発明1の上記「島状に付着して」いるか不明である点 相違点2B:本件発明1は、「前記有機疎水性抗菌剤が前記吸水性樹脂の表面を被覆する被覆率が5%以上40%以下である」のに対して、甲2発明1は、本件発明1の上記「被覆率」を満たすものであるか不明である点 相違点2C:有機疎水性抗菌剤が、本件発明1は、「セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミン」であるのに対して、甲2発明1は、トリクロサンである点 b 相違点の検討 第2及び第3に示したとおり、本件訂正により、本件訂正前の本件発明3にあった抗菌剤の特定事項が本件発明1に加えられた。取消理由2及び3は、本件訂正前の本件発明3に対して通知しておらず、本件訂正後の本件発明1は取消理由2及び3の対象ではなく、取消理由は解消されたことは明らかであるが、念のため、上記相違点について検討する。 事情に鑑みて、相違点2Cから検討する。 まず、甲2発明1は、プロピレングリコールのトリクロサン溶液を超吸収材粉末に滴加して得られたものであり、セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンを用いるものではないから、相違点2Cは実質的な相違点であり、本件発明1は甲2に記載された発明ではない。 次に、容易想到性を検討すると、甲2発明1は、甲2の請求項1に記載された「トリクロサンを含む水性スラリー」を用いるものではなく、甲2の請求項1に係る発明の比較例である。そして、甲2には、比較例である甲2発明1において、セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンを用いることを動機づける記載はない。 また、甲3には、ヒドロゲル形成吸収ポリマー、及び、式(1)で表される1-ヒドロキシー2-ピロリドン誘導体を含有する抗菌剤を含む抗菌性ヒドロゲル形成吸収ポリマーが記載されており(請求項1)、上記抗菌剤としてピロクトンオルアミン(別名1-ヒドロキシ-4-メチル-6-(2,4,4-トリメチルペンチル)-2(1H)-ピロリンドンモノエタノールアミン塩)を用いること(請求項3、19頁9~12行)、前記抗菌剤を溶媒に溶解し、得られた溶液を粒子上に適用すること(請求項11)が記載されており、上記塩は本件発明1の「ピロクトンオラミン」に相当する抗菌剤であるといえる。しかしながら、甲3には、エチレングリコール、プロピレングリコール及びブチレングリコールを用いることは記載されておらず、有機溶媒に不溶性の抗菌剤を使用し、親水性有機溶媒と水との混合溶媒が好ましいこと、上記有機溶媒として、メタノール、エタノールまたはプロパノール等の低分子量アルコール、ジメチルホルムアミドやジメチルスルフォキサイド等を用いていることが記載されており(22頁6~14行)、上記エタノール等の低分子量アルコールや、ジメチルホルムアミドやジメチルスルフォキサイドは、本件明細書の比較例(比較例1及び2、5及び6)で用いられた有機溶媒である。 また、甲4には、吸液性の繊維材料に高吸収性ポリマーの粒子が混合された吸収性コアとトップシートとの間に、抗菌剤と活性炭とが配されてなる吸収性物品、及び、抗菌剤としてセチルリン酸ベンザルコニウムの水溶液を水で希釈した後、繊維シートに含浸させる方法が記載されているが(請求項1,【0036】)、エチレングリコール、プロピレングリコール及びブチレングリコールを用いることは記載されていないし、上記吸収性物品は上記抗菌剤を高吸水性ポリマーの表面に被覆したものではない。 そうすると、甲3及び甲4に、抗菌剤として本件発明1の「セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミン」が記載されていても、甲2発明1において、これと有機溶媒が異なる甲3に記載された事項や、甲2発明と抗菌剤の適用箇所が異なる甲4に記載された事項を適用することが動機づけられるとはいえない。甲3及び甲4の記載、並びに、申立理由2-2で挙げられた甲5及び甲10~12の記載をみても、トリクロサンに代えて、セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンを用いることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。 したがって、相違点2A及び2Bについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明、並びに甲3~5及び甲10~12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明5、7、10及び11について 本件発明5、7、10及び11は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1について上記(ア)で述べたのと同じ理由により、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明、並びに甲3~5及び甲10~12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1、5、7、10及び11に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は同法同条第2項の規定に違反してされたものでないから、取り消すことはできない。 3 取消理由通知に採用しなかった申立理由について (1)甲1を主引用文献とする申立理由1-1(新規性)及び申立理由2-1(進歩性) ア 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明 甲1には、請求項1、4,7及び8、【0017】、【0019】、【0022】、【0047】、【0050】、【0054】、【0057】、【0060】~【0066】の記載があり、請求項1、4及び8の記載に着目すると、以下の発明が記載されているといえる。 「超吸収体と、トリクロサンである抗菌剤および1,2-プロパンジオールを有する溶液とを、前記超吸収体を表面架橋剤と接触させるのと同時にまたは接触させた直後に、且つ表面架橋を完成させる硬化段階に先立って接触させることを含む製造方法により得られた、抗菌剤のコーティングを有する超吸収体」(以下、「甲1発明1」という。) 「甲1発明1の超吸収体を含む衛生用品」(以下、「甲1発明2」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 甲1発明1の「超吸収体」は、【0002】の「一般に超吸収体は…“吸水性樹脂”等の名称で公知である」との記載から、本件発明1の「吸水性樹脂」に相当するといえる。 また、甲1発明1の「抗菌剤であるトリクロサン」は、本件明細書の【0026】及び【0042】の記載を併せ読むと、本件発明1の「25℃の純水100gに対する溶解度が40g以下であ」る「有機疎水性抗菌剤」に相当する。 そして、甲1発明1の「1,2-プロパンジオール」は、本件発明1の「親水性かつ不揮発性の有機溶媒」であり、「25℃における蒸気圧が30Pa以下であ」る「プロピレングリコール」に相当する。 甲1発明1の「抗菌剤のコーティングを有する超吸収体」は、本件発明1の「吸水性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明1は、 「有機疎水性抗菌剤と、親水性かつ不揮発性の有機溶媒と、吸水性樹脂とを有する吸水性樹脂組成物であって、 前記有機疎水性抗菌剤は、25℃の純水100gに対する溶解度が40g以下であり、 前記有機溶媒は25℃における蒸気圧が30Pa以下であり、 前記有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、吸水性樹脂組成物。」の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1A:吸水性樹脂が、本件発明1では「ポリアクリル酸のナトリウム塩」であるのに対して、甲1発明では「超吸収体」である点 相違点1B:有機疎水性抗菌剤が、本件発明1では「セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンであ」るのに対して、甲1発明1では「トリクロサン」である点 相違点1C:本件発明1は「前記有機疎水性抗菌剤と前記有機溶媒とが前記吸水性樹脂の表面に島状に付着して」いるのに対して、甲1発明1は、本件発明1の上記「島状に付着して」いるか不明である点 相違点1D:本件発明1は「前記有機疎水性抗菌剤が前記吸水性樹脂の表面を被覆する被覆率が5%以上40%以下である」のに対して、甲1発明1は、本件発明1の上記「被覆率」を満たすものであるか不明である点 (イ)検討 事案に鑑みて、相違点1C及び相違点1Dから検討する。 甲1には、単純であり、かつ抗菌剤の十分な量が少なくとも適度に一様にコーティングされている超吸収体を簡単且つ経済的にもたらすことができる、抗菌剤でコーティングされた超吸収体の製造方法を提供することを課題とするものであり(【0017】)、超吸収体はその表面に抗菌剤が一様にコーティングされているものと解される。そして、甲1には、有機疎水性抗菌剤と有機溶媒とが吸水性樹脂の表面に島状に付着していること及び有機疎水性抗菌剤が吸水性樹脂の表面を被覆する被覆率は、記載も示唆もされていない。 そうすると、相違点1C及び相違点1Dは実質的な相違点であり、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。 また、甲3~8及び甲10~12の記載を見ても、甲1発明1において、「抗菌剤のコーティング」を島状にすることが動機づけられるとはいえず、ましてや、上記抗菌剤が吸水性樹脂の表面を被覆する被覆率が5%以上40%以下とすることは動機づけられるものではない。 そして、本件発明1は、「前記有機疎水性抗菌剤と前記有機溶媒とが前記吸水性樹脂の表面に島状に付着しており、前記有機疎水性抗菌剤が前記吸水性樹脂の表面を被覆する被覆率が5%以上40%以下である」ことにより、吸水性樹脂組成物の流動性が一層向上するという効果を奏するものであり(【0068】)、当該効果は実施例1~3、5~14により具体的に示されている。一方、甲1には、上述のように、上記課題が記載されているにとどまるものである。 そうすると、相違点1A及び1Bについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明、並びに甲3~8及び甲10~12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明5、7、10及び11について 本件発明5、7、10及び11は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1について上記イで述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明でなく、また、甲1に記載された発明、並びに甲3~8及び甲10~12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)申立理由3(実施可能要件) ア 実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)の判断手法 特許法第36条第4項第1号は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。 一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と定めている。 これは、当業者が明細書に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、物の発明については、その物を作れ、かつ、その物を使用することができ、物を生産する方法の発明については、その方法により物を生産することができる程度に、発明の詳細な説明を記載しなければならないことを意味するものである。そこで、この点について以下に検討する。 イ 本件発明1について 本件発明1には、「有機疎水性抗菌剤」、「有機溶媒」及び「吸水性樹脂」の種類が具体的に特定されており、本件明細書には、本件発明1の実施例1~3、5~14が具体的に記載されている。 (ア)本件発明1の「島状に付着」について 本件発明1の「前記有機疎水性抗菌剤と前記有機溶媒とが前記吸水性樹脂の表面に島状に付着しており」に関して、本件明細書には、「この吸水性樹脂組成物において、抗菌剤の疎水性に起因して…場合によっては抗菌剤と有機溶媒とが、吸収性樹脂(当審注:「吸水性樹脂」の誤記と解される。以下同様。)の表面に不連続に付着した状態となる。換言すれば、吸水性樹脂の表面を海としたとき…場合によっては抗菌剤と有機溶媒とが、海の中に島状に点在した状態で存在している。」(【0068】)と記載され、技術的に合理的な説明がされている。そして、本件発明1の「有機疎水性抗菌剤」であるセチルリン酸ベンザルコニウムもピロクトンオラミンも「25℃の純水100gに対する溶解度が40g以下」を満たし(必要があれば、特許異議申立書の74頁22~28行も参照)、疎水性である。また、本件発明1の「有機疎水性抗菌剤」であるセチルリン酸ベンザルコニウム及びピロクトンオラミンと、「有機溶媒」であるエチレングリコール、プロピレングリコール及びブチレングリコールとは、【0100】に示されるように完全溶解し、抗菌剤溶液を形成しているものと解される。 そうすると、本件発明1の「有機疎水性抗菌剤」と「有機溶媒」とは、【0068】に記載されるとおり、「吸水性樹脂の表面に島状に付着」することができるものと解される。 (イ)本件発明1の「被覆率が5%以上40%以下」について 上記(ア)で述べたように、本件発明1は「前記有機疎水性抗菌剤と前記有機溶媒とが前記吸水性樹脂の表面に島状に付着して」いるものである。 そして、本件発明1における「前記有機疎水性抗菌剤が前記吸水性樹脂の表面を被覆する被覆率」は、本件明細書の【0069】に記載されるように、[抗菌剤処理後の「Na」の表面元素濃度の減少量]/[未処理(母体吸収性樹脂)の「Na」の表面元素濃度]で表される式により計算することができ、上記表面元素濃度はX線電子分光法(ESCA)によって測定できるものと解される。 また、本件発明1において、「吸水性樹脂」はポリアクリル酸のナトリウム塩であって、Naを含有するものであり、「有機疎水性抗菌剤」及び「有機溶媒」はNaを含有しないものであって完全溶解して抗菌剤溶液を形成しているから、上記式の表面元素濃度をESCAにより測定し、抗菌剤の被覆率を計算することができると解される。 (ウ)小括 発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 ウ 本件発明5、7、10及び11について 本件発明5、7、10及び11は、本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であり、本件発明1について上記イで述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明5、7、10及び11を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 エ 各申立理由の具体的な主張について <3-ア>について この申立ては、本件発明1の「吸水性樹脂」はNaを含まないものであってもよく、【0069】の計算式で「抗菌剤」の「被覆率」を求めることはできない、というものである。 本件訂正により、本件発明1の「吸水性樹脂」は「ポリアクリル酸のナトリウム塩」に訂正され、Naを含むものとなったため、上記<3-ア>の申立理由は根拠がないものとなった。 <3-イ>について この申立ては、本件発明2の「有機疎水性抗菌剤」がNaを含む場合に、検出されたNaが母体吸収性樹脂由来であるのか抗菌剤由来であるのかの区別がつかず、「抗菌剤」の「被覆率」を測定できない、というものである。 本件訂正により、本件発明1の「吸水性樹脂」が「ポリアクリル酸のナトリウム塩」に訂正され、「有機疎水性抗菌剤」がNaを含まない「セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミン」に訂正されたから、上記<3-イ>の申立理由は根拠がないものとなった。 <3-ウ>について この申立ては、本件明細書の【0069】には市販の吸水性物品から取り出した吸水性樹脂における「抗菌剤の被覆率」の測定方法を開示するが、本件発明1の「抗菌剤」の「被覆率」の算出に用いる未処理(母体吸収性樹脂)を得る方法の開示がない、というものである。 本件明細書の【0069】には、有機疎水性抗菌剤で被覆した後の吸水性樹脂の取り出し方が記載されているのであって、有機疎水性抗菌剤で被覆する前の未処理の吸水性樹脂の取り出し方が記載されているのではない。 よって、本件明細書の【0069】の記載から、未処理の母体吸水性樹脂を得る方法の開示がないとする<3-ウ>の申立理由は理由がない。 なお、本件明細書の実施例では、未処理の母体吸水性樹脂である「アクリアリックCA」(日本触媒株式会社製)を用いて、「抗菌剤の被覆率」が測定・算出されている(本件明細書の【0100】、表1及び表2)。 <3-エ>について この申立ては、吸水性樹脂の表面のNaの分布をESCAで確認できたとしても、Naが不存在の領域を示すにすぎず、それが「抗菌剤」及び「有機溶媒」由来であるのか判別できず、本件明細書には、抗菌剤及び有機溶媒が島状に付着していることの確認方法は一切記載されていない、というものである。 本件訂正により、本件発明1の「吸水性樹脂」が「ポリアクリル酸のナトリウム塩」に訂正され、「有機疎水性抗菌剤」がNaを含まない「セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミン」に訂正された。これらを含む吸水性樹脂組成物において、ESCAで確認したNaの不存在の領域は、上記イ(イ)で述べたように、抗菌剤及び有機溶媒に由来するものであることは明らかである。また、上記イ(ア)で述べたように、本件明細書には、吸水性樹脂の表面に抗菌剤と有機溶媒とが島状に付着していることが合理的に説明されている。 そうすると、上記<3-エ>の申立理由は理由がない。 オ まとめ 以上のとおりであるから、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1、5、7、10及び11を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 (3)申立理由4(サポート要件) ア 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の判断手法 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点に立って判断する。 イ 本件発明が解決しようとする課題 本件明細書には、吸水性樹脂が排泄物を吸収した状態において悪臭が発生するのを防止するために抗菌剤を付与する技術が知られており(本件明細書の【0002】)、従来技術では、有機溶媒による悪臭が生じる、人体に対する安全性に問題がある、引火や爆発に対する安全性が懸念される、抗菌剤が均一に付着しない可能性があるといった欠点があること(【0005】)が記載されている。そして、同【0006】には、「本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸水性樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある」と記載されている。 そうすると、本件発明が解決しようとする課題は、有機溶媒による悪臭が生じる、人体に対する安全性に問題がある、引火や爆発に対する安全性が懸念される、抗菌剤が均一に付着しない可能性があることといった従来技術の欠点を解決した吸水性樹脂組成物を提供することであると解される。 ウ 本件発明1について 本件発明1に係る吸水性樹脂組成物は、有機溶媒である「エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種」を含むものであり、これらの有機溶媒は、「人体に対する安全性が高く、悪臭を生じることがなく・・・引火や爆発のおそれが低い」(【0055】)ものであるし、有機疎水性抗菌剤を有機溶媒に溶解して抗菌剤溶液となし・・・抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合することで、該吸水性樹脂に均一に有機疎水性抗菌剤を付着させることができる」(【0043】)、「抗菌剤の疎水性に起因して、少なくとも抗菌剤が…場合によっては抗菌剤と有機溶媒とが、吸収性樹脂の表面に不連続に付着した状態となる。換言すれば、吸水性樹脂の表面を海としたとき、少なくとも抗菌剤が…場合によっては抗菌剤と有機溶媒とが、海の中に島状に点在した状態で存在している」(【0068】)ものである。そして、本件発明1の具体例である実施例1~3、5~14では、「有機疎水性抗菌剤は有機溶媒に完全溶解」(【0100】)して抗菌剤溶液を形成し、吸水性樹脂に抗菌剤と有機溶媒が均一に付着していることが示されているといえる。 そうすると、発明の詳細な説明は、本件発明1が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。 エ 本件発明5、7、10及び11について 本件発明5、7、10及び11は、本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であり、本件発明1について上記ウで述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明には、本件発明5、7、10及び11が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。 オ 各申立理由の具体的な主張について <4-ア>について この申立ては、請求項1には「抗菌剤」の「被覆率」の測定方法が特定されておらず、実施例のX線電子分光法(ESCA)以外の方法で測定される場合に課題を解決するか否かが不明である。シリカ添加の有無で被覆率が異なり、有機溶媒による被覆もあるから、他の添加剤の量により被覆率が変動し、抗菌剤の「被覆率が5%以上40%以下である」ことを一義的に定めることはできない、というものである。 上記(2)イ(イ)で述べたように、上記「抗菌剤」の「被覆率」は本件明細書の【0069】に記載の式により計算され、その計算に用いる「Na」の表面元素濃度はX線電子分光法(ESCA)により測定されるものであるし、この測定方法以外の方法で測定される場合について記載されていないからといって、上記アの判断手法によって判断されるサポート要件を満たさないとまではいえない。また、上記ウで述べたように、本件訂正により抗菌剤と有機溶媒の化合物が特定され、上記抗菌剤と有機溶媒とは完全溶解して抗菌剤溶液を形成するものであり、抗菌剤による被覆の領域と、有機溶媒による被覆の領域とが同じ領域になる(令和3年12月1日提出の意見書(特許権者)の第3頁17~33行を参照)ものと解される。これらのことから、上記「被覆率」の定義は明確であり、一義的に定まるものである。 そして、本件発明が上記課題を解決するものであることは、上記イ~エで述べたとおりである。そして、本件明細書には、「吸水性樹脂の表面を海としたとき、少なくとも抗菌剤が…場合によっては抗菌剤と有機溶媒とが、海の中に島状に点在した状態で存在している。このような状態で少なくとも抗菌剤が吸水性樹脂の表面を被覆していることで、吸水性樹脂組成物はその流動性が一層向上する。この流動性の向上効果を一層顕著なものとする観点から、吸水性樹脂の表面を被覆する抗菌剤の被覆率は、5%以上であることが好ましく…40%以下であることが好ましく」(【0069】)と記載され、本件発明1における「前記有機疎水性抗菌剤が前記吸水性樹脂の表面を被覆する被覆率が5%以上40%以下である」ことと流動性の向上効果との関連性は示されているのみであり、上記課題との関連性については示されていない。 また、本件訂正により、吸水性樹脂組成物が「無機微粒子」を含むことを特定事項とする本件訂正前の請求項4及び6に係る発明は削除され、本件発明1、5、7、10及び11のいずれにも、「無機微粒子」を含むことを特定事項はない。 そうすると、上記<4-ア>の申立理由は理由がない。 <4-イ>について この申立ては、請求項1及び5には、有機疎水性抗菌剤及び有機溶媒の含有量(添加量)やその抗菌剤濃度が何ら規定されておらず、吸水性樹脂の質量を基準にした抗菌剤溶液中の有機疎水性抗菌剤の質量が少なすぎる場合に十分な抗菌効果を達成できず、これが多すぎる場合に高い吸水性能を達成できないことは明らかである。また、吸水性樹脂の質量を基準にした抗菌剤溶液中の有機溶媒の質量が少なすぎる場合に抗菌剤と吸水性樹脂とを均一混合させることができず、十分な抗菌効果を達成できないことは明らかである、というものである。 有機疎水性抗菌剤はその目的が抗菌効果であるから、抗菌効果が得られないほど微量で添加されるものでないことは明らかであるし、吸水性樹脂組成物が所定の吸水性能を達成できないほど多量で添加されるものでないことも明らかである。また、本件発明1の抗菌剤と有機溶媒は完全溶解し、抗菌剤を吸水性樹脂に均一に付着させるものであるから(本件明細書の【0043】)、抗菌剤を溶解する量の有機溶媒を用いることも明らかである。 そうすると、上記<4-イ>の申立理由は理由がない。 <4-ウ>について この申立ては、本件発明1の課題である吸水性樹脂組成物の取り扱い性、特に流動性を良好にすることは、抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合するときの両者の比率を適切な範囲にすることにより解決されるが、高粘性液体であるエチレングリコール等の有機溶媒は抗菌剤とともに吸水性樹脂の表面に残存するため、抗菌剤溶液中の抗菌剤や有機溶媒の質量が多い場合に、本件発明の課題を解決できない、というものである。 本件発明が解決しようとする課題は上記イで述べたとおりであり、吸水性樹脂組成物の流動性の改善は、本件明細書から把握される本件発明の課題ではないから、上記<4-ウ>の申立理由は理由がない。 <4-エ>について この申立ては、本件発明1及び5において、「抗菌剤溶液」における「有機疎水性抗菌剤」の濃度の下限値が特定されておらず、本件明細書の【0107】に、比較例3及び4では10%濃度の有機疎水性抗菌剤は溶解できなかったこと、及び、抗菌剤の濃度を10%未満とした場合に、仮に抗菌剤が溶解したとしても吸水性樹脂組成物の流動性が悪くなり、「容易に安定した吸収性能かつ抗菌性能を発現する吸収性物品を製造することが困難になる」ことが記載されているから、本件課題を解決し得るか不明である、というものである。 本件発明1の「有機溶媒」は、「エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種」と限定されており、比較例3及び4は、有機溶媒をポリエチレングリコールとするものであって本件発明1の具体例ではないし、本件発明の課題は上記イで述べたとおりであり、吸水性樹脂組成物の流動性の改善は本件発明1の効果ではあるものの、本件明細書から把握される本件発明の課題ではない。 そうすると、上記<4-エ>の申立理由は理由がない。 <4-オ>について この申立ては、本件発明1において、有機疎水性抗菌剤がNaを含む場合に抗菌剤の被覆率を測定できず、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えている、というものである。 本件訂正により、有機疎水性抗菌剤がNaを含まないセチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンに限定されたから、上記<4-オ>の申立理由は根拠がないものとなった。 <4-カ>について この申立ては、本件明細書に開示のないすべての有機疎水性抗菌剤で、「5%以上40%以下」である本件被覆率が達成されることはあり得ない、というものである。 本件訂正により、本件発明の「有機疎水性抗菌剤」が実施例で用いられたセチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンに限定されたから、上記<4-カ>の申立理由は根拠がないものとなった。 <4-キ>について この申立ては、有機疎水性抗菌剤であればどれでも吸水性樹脂と組み合わせて抗菌効果を発揮するものでなく、実施例1~3、5~14で上記効果が確認されているのは、セチルリン酸ベンザルコニウム(25℃の純水100gに対する溶解度が0.002g)及びピロクトンオラミン(同じく溶解度が0.02g)の2種類のみであり、上記溶解度が0.02g超40g以下である上記2種類以外の有機疎水性抗菌剤の全てで、本件発明の課題を解決できるのか不明である、というものである。 本件訂正により、本件発明の「有機疎水性抗菌剤」が実施例で用いられたセチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンに限定されたから、上記<4-キ>の申立理由は根拠がないものとなった。 カ まとめ 以上のとおりであるから、発明の詳細な説明には、本件発明1、5、7、10及び11が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されている。 (4)申立理由5(明確性) <5-ア>について この申立ては、本件発明1の「抗菌剤」の「被覆率」は、請求項1にその測定方法が特定されていないから、一義的に定まらない、というものである。 本件発明1における「前記有機疎水性抗菌剤が前記吸水性樹脂の表面を被覆する被覆率」は、上記(3)オの「<4-ア>について」で述べたとおり、本件明細書の【0069】の式により計算されるものであり、上記被覆率は明確であるといえる。 そうすると、上記<5-ア>の申立理由は理由がない。 <5-イ>について この申立ては、吸収性樹脂組成物におけるシリカの添加量が同じでも、添加順序によって、ESCAによる測定値を用いた「抗菌剤の被覆率」の値が異なり、一義的に定まらない、というものである。 本件発明1の「抗菌剤」の「被覆率」は、上記「<5-ア>について」で述べたとおり、明確である。また、本件発明は、シリカ等の無機微粒子を有することを特定するものではない。 そうすると、上記<5-イ>の申立理由は理由がない。 <5-ウ>について この申立ては、本件発明2の「抗菌剤」がNaを含む場合、抗菌剤中のNa濃度によっては、抗菌剤処理後のNaの表面元素濃度が増加するため、明瞭でない、というものである。 本件訂正により、本件発明1は、「有機疎水性抗菌剤」がNaを含まないセチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンに限定され、「有機溶媒」もNaを含まないものであるから、上記<5-ウ>の申立理由は根拠がないものとなった。 <5-エ>について この申立ては、本件発明1に「前記有機疎水性抗菌剤と前記有機溶媒とが前記吸水性樹脂の表面に島状に付着して」とあるが、本件明細書の【0068】の「吸水性樹脂の表面に不連続に付着した状態」との記載を参酌しても、いかなる付着状態を「島状」とするのか不明である、というものである。 本件明細書の【0068】に記載されるように、「この吸水性樹脂組成物においては、抗菌剤の疎水性に起因して、少なくとも抗菌剤が、吸収性樹脂の表面に不連続に付着した状態となり・・・換言すれば、吸水性樹脂の表面を海としたとき、少なくとも抗菌剤が、海の中に島状に点在した状態で存在して」いることが記載され、この状態を本件発明1の「島状に付着」と表現していることは明らかである。そして、本件発明1は、上記「島状」の形を特定するものではない。 そうすると、本件発明1の「島状に付着」は明確である。 <5-オ>について この申立ては、本件請求項1には抗菌剤の定義や化合物がないため、吸水性樹脂に含まれる無数の添加剤のうちで、それら添加剤が本件でいう有機疎水性抗菌剤に該当するかが明瞭でない、というものである。 本件訂正により、有機疎水性抗菌剤がセチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンに限定されたから、上記<5-オ>の申立理由は根拠がないものとなった。 第6 結び 以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由及び特許異議申立ての申立理由によっては、本件発明1、5、7、10及び11に係る特許は取り消すことはできない。 他に本件発明1、5、7、10及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件発明2~4、6、8及び9に係る特許は、本件訂正により削除され、本件発明2~4、6、8及び9に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700567

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